(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175434
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01G 17/02 20060101AFI20231205BHJP
G01D 21/02 20060101ALI20231205BHJP
G01G 9/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01G17/02 Z
G01D21/02
G01G9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087872
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】真木 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 和史
(72)【発明者】
【氏名】原 仁
【テーマコード(参考)】
2F076
【Fターム(参考)】
2F076BA01
2F076BD02
2F076BD05
2F076BD10
2F076BD17
2F076BE09
(57)【要約】
【課題】生産ラインを移動する被測定物の状態についてより正確な情報を得ることが可能な測定装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る測定装置1は、生産ラインを移動する被測定物Aの表面の第1領域R1にプローブL1を照射するプローブ部11と、被測定物Aの第1パラメータの情報を含むプローブL1を検出する第1検出部12と、を有する第1測定モジュール10と、第1領域R1と重なる第2領域R2に照射光を照射する照射部21と、被測定物Aの第2パラメータの情報を含む照射光を検出する第2検出部22と、を有する第2測定モジュール20と、第1領域R1へのプローブL1の照射タイミングと、第2領域R2への照射光の照射タイミングと、が互いに同一となるようにプローブ部11及び照射部21を制御する制御部31と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ラインを移動する被測定物の表面の第1領域にプローブを照射するプローブ部と、前記被測定物の第1パラメータの情報を含む前記プローブを検出する第1検出部と、を有する第1測定モジュールと、
前記第1領域と重なる第2領域に照射光を照射する照射部と、前記被測定物の第2パラメータの情報を含む前記照射光を検出する第2検出部と、を有する第2測定モジュールと、
前記第1領域への前記プローブの照射タイミングと、前記第2領域への前記照射光の照射タイミングと、が互いに同一となるように前記プローブ部及び前記照射部を制御する制御部と、
を備える、
測定装置。
【請求項2】
前記表面上で前記第1領域と前記第2領域とが互いに重なるように、前記プローブ及び前記照射光の少なくとも一方を反射させる反射系を備える、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記反射系は、前記照射部から前記第2領域までを結ぶ光路上で前記照射光を反射させる光学ミラーを含む、
請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記プローブ部と前記第1検出部とを結ぶ前記第1測定モジュールの軸及び前記第2測定モジュールの光軸の少なくとも一方が前記表面に対して斜めに傾く、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記第1測定モジュールの軸は前記表面に対して直交し、
前記第2測定モジュールの光軸は前記表面に対して斜めに傾く、
請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記制御部は、測定された前記第1パラメータ及び前記第2パラメータに基づいて前記被測定物の第3パラメータを算出する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記被測定物の状態が不適切であると判定すると、前記第1パラメータ及び前記第2パラメータの少なくとも一方を最適化するように前記生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記第1パラメータは、坪量を含み、
前記第2パラメータは、厚さを含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
生産ラインを移動する被測定物の表面の第1領域にプローブを照射するステップと、
前記被測定物の第1パラメータの情報を含む前記プローブを検出するステップと、
前記第1領域と重なる第2領域に照射光を照射するステップと、
前記被測定物の第2パラメータの情報を含む前記照射光を検出するステップと、
を含み、
前記第1領域への前記プローブの照射タイミングと、前記第2領域への前記照射光の照射タイミングと、が互いに同一となる、
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産ラインを移動方向に移動する被測定物に対して、その厚さ及び坪量などを含むパラメータを測定する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、放射線源から放射され、被測定物を透過してくる放射線を放射線検出器により検出し、被測定物の坪量の測定を行う放射線検査装置が開示されている。特許文献1に記載の放射線検査装置は、温度センサで検出した温度と気圧センサで検出した気圧とに基づいて大気重量を計算し、計算した大気重量に基づいて坪量を補正する。
【0004】
特許文献1に記載のような坪量計に加えて、例えばレーザを用いた厚さ計なども有する測定装置を構築することも可能である。このような測定装置は、被測定物に対して複数のパラメータを測定可能である。このような測定装置では、同一フレーム上に配置された坪量計及び厚さ計などの測定モジュールは、生産ラインを移動する被測定物の移動方向と直交する方向にそれぞれ移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術のように、同一フレーム上で複数の測定モジュールを稼働させることは可能である。しかしながら、各測定モジュール間に所定の物理的距離が生じる。これにより、複数の測定モジュールで同一時刻に測定を実行したとしても、被測定物における異なる位置での状態を反映した測定結果しか得ることができない。すなわち、複数の測定モジュールを用いて、被測定物における同一位置での状態を反映させた測定結果を得ることは困難であった。したがって、被測定物の状態についてより正確な情報を測定により得ることが困難であった。
【0007】
本開示は、生産ラインを移動する被測定物の状態についてより正確な情報を得ることが可能な測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態に係る測定装置は、生産ラインを移動する被測定物の表面の第1領域にプローブを照射するプローブ部と、前記被測定物の第1パラメータの情報を含む前記プローブを検出する第1検出部と、を有する第1測定モジュールと、前記第1領域と重なる第2領域に照射光を照射する照射部と、前記被測定物の第2パラメータの情報を含む前記照射光を検出する第2検出部と、を有する第2測定モジュールと、前記第1領域への前記プローブの照射タイミングと、前記第2領域への前記照射光の照射タイミングと、が互いに同一となるように前記プローブ部及び前記照射部を制御する制御部と、を備える。
【0009】
これにより、生産ラインを移動する被測定物の状態についてより正確な情報を得ることが可能である。測定装置は、第1領域及び第2領域を互いに重ね合わせ、かつ第1領域へのプローブの照射タイミングと第2領域への照射光の照射タイミングとを互いに同一とすることで、複数の測定モジュールに基づく複数のパラメータの同時同点の測定を可能にする。測定装置は、フレーム上で各測定モジュール間に所定の物理的距離が生じていたとしても、被測定物における同一位置及び同一時刻での状態を反映させた測定結果を容易に得ることができる。すなわち、測定装置は、被測定物の実態により即した被測定物の特性を調べることができる。
【0010】
一実施形態における測定装置は、前記表面上で前記第1領域と前記第2領域とが互いに重なるように、前記プローブ及び前記照射光の少なくとも一方を反射させる反射系を備えてもよい。これにより、被測定物の表面上で第1領域と第2領域とを互いに重ねるための照射光の光路を容易に構築することが可能となる。例えば、第1測定モジュールを構成するβ線坪量計及び第2測定モジュールを構成する非接触厚さ計のいずれに対しても被測定物に対する放射線及び照射光の垂直入射が実現されるように、照射光の光路を構築することも可能となる。これにより、線源部及び第1検出部の配置、並びに第2測定モジュールにおける光学系の配置がより簡易的となる。したがって、測定装置の製造が容易となり、その製造効率が向上する。
【0011】
一実施形態における測定装置では、前記反射系は、前記照射部から前記第2領域までを結ぶ光路上で前記照射光を反射させる光学ミラーを含んでもよい。これにより、上記と同様の効果が得られる。
【0012】
一実施形態における測定装置では、前記プローブ部と前記第1検出部とを結ぶ前記第1測定モジュールの軸及び前記第2測定モジュールの光軸の少なくとも一方が前記表面に対して斜めに傾いてもよい。これにより、反射系を用いずとも、被測定物の表面上で第1領域と第2領域とを互いに重ねることが容易となる。例えば、第1測定モジュールを構成するβ線坪量計及び第2測定モジュールを構成する非接触厚さ計のいずれか一方を被測定物の表面に対して斜めに傾けることで、被測定物の表面上で第1領域と第2領域とを互いに重ねることが容易となる。
【0013】
一実施形態における測定装置では、前記第1測定モジュールの軸は前記表面に対して直交し、前記第2測定モジュールの光軸は前記表面に対して斜めに傾いてもよい。これにより、上記と同様の効果が得られる。
【0014】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、測定された前記第1パラメータ及び前記第2パラメータに基づいて前記被測定物の第3パラメータを算出してもよい。これにより、被測定物の状態をより多くのパラメータに基づいて多角的に調べることができる。
【0015】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記被測定物の状態が不適切であると判定すると、前記第1パラメータ及び前記第2パラメータの少なくとも一方を最適化するように前記生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御してもよい。これにより、被測定物の生産プロセスを調整して、被測定物の状態を最適化することができる。例えば、測定装置は、材料を絞り出すノズルの温度分布及び押し出す圧力などを調整して、シート状の被測定物の厚さ及び密度などが均一となるように操作端をフィードバック制御することもできる。これにより、測定装置は、生産ライン上で生産される被測定物の品質を向上させることもできる。
【0016】
一実施形態における測定装置では、前記第1パラメータは、坪量を含み、前記第2パラメータは、厚さを含んでもよい。これにより、測定装置は、生産ラインを移動する被測定物の状態について、その坪量及び厚さに基づきより正確な情報を得ることが可能である。
【0017】
幾つかの実施形態に係る測定方法は、生産ラインを移動する被測定物の表面の第1領域にプローブを照射するステップと、前記被測定物の第1パラメータの情報を含む前記プローブを検出するステップと、前記第1領域と重なる第2領域に照射光を照射するステップと、前記被測定物の第2パラメータの情報を含む前記照射光を検出するステップと、を含み、前記第1領域への前記プローブの照射タイミングと、前記第2領域への前記照射光の照射タイミングと、が互いに同一となる。
【0018】
これにより、生産ラインを移動する被測定物の状態についてより正確な情報を得ることが可能である。測定方法を実行する測定装置は、第1領域及び第2領域を互いに重ね合わせ、かつ第1領域へのプローブの照射タイミングと第2領域への照射光の照射タイミングとを互いに同一とすることで、複数の測定モジュールに基づく複数のパラメータの同時同点の測定を可能にする。測定装置は、フレーム上で各測定モジュール間に所定の物理的距離が生じていたとしても、被測定物における同一位置及び同一時刻での状態を反映させた測定結果を容易に得ることができる。すなわち、測定装置は、被測定物の実態により即した被測定物の特性を調べることができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、生産ラインを移動する被測定物の状態についてより正確な情報を得ることが可能な測定装置及び測定方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る測定装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1の測定装置の第1測定モジュール及び第2測定モジュールの配置構成を示す模式図である。
【
図3】
図1の測定装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】本開示の第2実施形態に係る測定装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図4の測定装置の第1測定モジュール及び第2測定モジュールの配置構成の第1例を示す模式図である。
【
図6】
図4の測定装置の第1測定モジュール及び第2測定モジュールの配置構成の第2例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0022】
従来、生産ラインを移動方向に移動する被測定物に対して、その厚さ及び坪量などを含むパラメータを測定する複数の測定モジュールが知られている。
【0023】
例えば、透過式坪量計は、放射線が物質を透過する際に吸収及び散乱で減衰する性質を利用して被測定物の坪量を非接触で測定する測定モジュールである。透過式坪量計の1つの例として、β線坪量計が知られている。β線坪量計は、β線源から照射されたβ線が被測定物の坪量に応じて滅衰する性質を利用して被測定物の坪量を測定する。β線坪量計は、紙、並びに数ミリ以下の比較的薄いフィルム及びプラスチックシートなどを含む被測定物の坪量測定に多用される。被測定物の厚さ範囲に応じて、147Pm、85Kr、及び90Srなどを含むβ線源が多用される。β線坪量計は、被測定物の一方の面にβ線を照射し、被測定物を透過して他方の面から出射した後のβ線を検出する。
【0024】
例えば、非接触厚さ計は、レーザ変位センサを2台使用して、被測定物を上下から挟み込み、非接触で厚さを測定する測定モジュールである。非接触厚さ計では、被測定物に対して上方に配置された一方のレーザ変位センサが被測定物の上面の位置を測定し、被測定物に対して下方に配置された他方のレーザ変位センサが被測定物の下面の位置を測定する。非接触厚さ計は、測定された被測定物の上面及び下面のそれぞれの位置の差に基づいて被測定物の厚さを算出する。
【0025】
生産ラインを移動方向に移動するシート状の被測定物に対してそのパラメータを複数測定する場合、移動方向に直交する方向に延在するフレーム上に複数の測定モジュールが設置される。複数の測定モジュールの各々は、同一フレーム上に配置された状態で、生産ラインを移動する被測定物の移動方向と直交する方向に移動可能である。このように、同一フレーム上に複数の測定モジュールを設置することで、被測定物に対して様々なパラメータを同時に測定することが可能となる。
【0026】
以上のように、同一フレーム上で複数の測定モジュールを稼働させることは従来技術においても可能である。しかしながら、各測定モジュール間に所定の物理的距離が生じる。これにより、複数の測定モジュールで同一時刻に測定を実行したとしても、被測定物における異なる位置での状態を反映した測定結果しか得ることができない。すなわち、複数の測定モジュールを用いて、被測定物における同一位置での状態を反映させた測定結果を得ることは困難であった。したがって、被測定物の状態についてより正確な情報を測定により得ることが困難であった。
【0027】
加えて、生産ライン上での測定では、時間経過とともに被測定物が移動する。すなわち、測定モジュールが設置されたフレームと被測定物との間の位置関係が変化する。これにより、被測定物における同一位置での状態を反映させた測定結果を得ることがさらに困難であった。したがって、被測定物の状態をより詳細にかつより正確に確認したいというユーザの要求に応じることが困難であった。
【0028】
さらに、被測定物における同一位置での状態を測定することが困難であることで、複数の測定モジュールにより測定された複数のパラメータに基づいて被測定物の他のパラメータを算出するときに、被測定物における測定位置の違いによる誤差が生じることも問題となっていた。
【0029】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、生産ラインを移動する被測定物の状態についてより正確な情報を得ることが可能な測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る測定装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0031】
測定装置1は、生産ラインを移動方向に移動する被測定物に対してそのパラメータを複数測定する。本明細書において、「被測定物」は、例えば、紙、並びに数ミリ以下の比較的薄いフィルム及びプラスチックシートなどを含む。「パラメータ」は、例えば、厚さ、坪量、密度、材料の充填率、及び空隙率などを含む。測定装置1は、第1測定モジュール10、第2測定モジュール20、及び制御モジュール30を有する。
【0032】
測定装置1は、第1測定モジュール10を用いて、被測定物の第1パラメータを測定する。本明細書では、「第1パラメータ」は、例えば上記の複数のパラメータのうち坪量を含む。第1測定モジュール10は、例えばβ線坪量計を含む。第1測定モジュール10は、生産ラインを移動する被測定物の表面の第1領域に放射線を照射する線源部11と、被測定物の第1パラメータの情報を含む放射線を検出する第1検出部12と、を有する。「放射線」は、請求項に記載の「プローブ」に相当する。「線源部」は、請求項に記載の「プローブ部」に相当する。
【0033】
線源部11は、147Pm及び85Krなどを含む低エネルギーのβ線源を有する。線源部11は、生産ラインを移動する被測定物の表面の第1領域に低エネルギーのβ線を照射する。
【0034】
第1検出部12は、電離箱を有する。第1検出部12は、線源部11から第1領域に照射され被測定物を透過して減衰したβ線であって、被測定物の第1パラメータの情報を含むβ線を検出する。
【0035】
測定装置1は、第1測定モジュール10を用いて、β線源を有する線源部11から照射された低エネルギーのβ線が被測定物の坪量に応じて滅衰する性質を利用し、第1検出部12により検出されたβ線に基づいて被測定物の第1パラメータを測定する。被測定物の厚さ範囲に応じて、147Pm及び85Krなどを含む低エネルギーのβ線源の種類が決定される。第1測定モジュール10は、線源部11により被測定物の一方の面にβ線を照射し、被測定物を透過して他方の面から出射した後のβ線を第1検出部12により検出する。
【0036】
測定装置1は、第2測定モジュール20を用いて、被測定物の第2パラメータを測定する。本明細書では、「第2パラメータ」は、例えば上記の複数のパラメータのうち厚さを含む。第2測定モジュール20は、例えば非接触厚さ計を含む。第2測定モジュール20は、生産ラインを移動する被測定物の表面の第1領域と重なる第2領域に照射光を照射する照射部21と、被測定物の第2パラメータの情報を含む照射光を検出する第2検出部22と、を有する。加えて、第2測定モジュール20は、反射系23を有する。
【0037】
照射部21は、被測定物の第2領域に照射光を照射するレーザ光源を有する。当該レーザ光源から照射される照射光の波長帯域は、レーザ変位センサとして被測定物の厚みを非接触で測定可能な任意の波長領域に含まれる。
【0038】
第2検出部22は、照射部21が有するレーザ光源から照射された照射光を検出可能なフォトディテクタを有する。当該フォトディテクタの波長帯域は、照射光の波長帯域に適合する。第2検出部22は、照射部21から第2領域に照射され被測定物の表面で反射した照射光であって、被測定物の第2パラメータの情報を含む照射光を検出する。
【0039】
反射系23は、被測定物の表面上で第1領域と第2領域とが互いに重なるように照射光を反射させる任意の光学系を含む。反射系23は、照射部21から第2領域までを結ぶ光路上で照射光を反射させる少なくとも1つの光学ミラーを含む。
【0040】
測定装置1は、第2測定モジュール20においてレーザ変位センサを2台使用し、被測定物を上下から挟み込んで、非接触で第2パラメータを測定する。測定装置1は、被測定物に対して上方に配置された一方のレーザ変位センサにより被測定物の上面の位置を測定し、被測定物に対して下方に配置された他方のレーザ変位センサにより被測定物の下面の位置を測定する。測定装置1は、第2測定モジュール20を用いて測定された被測定物の上面及び下面のそれぞれの位置の差に基づいて被測定物の厚さを算出する。
【0041】
図2は、
図1の測定装置1の第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20の配置構成を示す模式図である。測定装置1は、第1測定モジュール10を構成するβ線坪量計と第2測定モジュール20を構成する非接触厚さ計を組み合わせて構成される。
【0042】
第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20は、生産ラインを移動方向D1に移動するシート状の被測定物Aに対して、移動方向D1に直交する方向D2に延在するフレームF上に設置される。ここで、移動方向D1は、紙面に垂直な方向であって、紙面手前側から奥側に向かう方向を含む。方向D2は、左右方向を含む。
【0043】
第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20の各々は、同一フレームF上に配置された状態で、生産ラインを移動する被測定物Aの移動方向D1と直交する方向D2に移動可能である。測定装置1は、同一フレームF上に設置された第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20を用いて、被測定物Aに対して複数のパラメータを同時に測定する。測定装置1は、自動ステージシステムと連動し同一フレームF上で第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20の各々を移動させながら、被測定物Aの複数の位置で第1パラメータ及び第2パラメータを測定することも可能である。測定装置1は、被測定物Aにおけるそれぞれの位置での測定結果に基づいて被測定物Aの一面の厚さ変化及び坪量変化を測定することも可能である。
【0044】
第1測定モジュール10は、生産ラインを移動方向D1に移動する被測定物Aを上下方向に挟み込むように被測定物Aに対して配置されている。より具体的には、第1測定モジュール10の線源部11は、被測定物Aに対して下側に配置されている。第1測定モジュール10の第1検出部12は、線源部11と上下方向に対向するように、被測定物Aに対して上側に配置されている。線源部11と第1検出部12とを結ぶ第1測定モジュール10の軸は、被測定物Aの表面、すなわち上面及び下面に対して直交する。
【0045】
線源部11から照射された放射線L1は、被測定物Aの下面に垂直に入射する。放射線L1は、被測定物Aの下面から被測定物Aの内部を透過して被測定物Aの上面から垂直に出射する。被測定物Aの上面から垂直に出射した放射線L1は、第1検出部12により検出される。放射線L1は、被測定物Aに対して垂直に直進しながら、被測定物Aの上面及び下面のそれぞれの第1領域R1を通過する。
【0046】
第2測定モジュール20は、第1測定モジュール10と方向D2に並列して配置されている。第2測定モジュール20は、生産ラインを移動方向D1に移動する被測定物Aを上下方向に挟み込むように被測定物Aに対して配置されている。
【0047】
より具体的には、第2測定モジュール20の照射部21は、第1レーザ光源211及び第2レーザ光源212を有する。第2測定モジュール20の第2検出部22は、第1フォトディテクタ221及び第2フォトディテクタ222を有する。第1レーザ光源211及び第1フォトディテクタ221の組C1は、被測定物Aに対して下側に配置されている。第2レーザ光源212及び第2フォトディテクタ222の組C2は、組C1と上下方向に対向するように、被測定物Aに対して上側に配置されている。組C1と組C2とを結ぶ軸は、被測定物Aの表面、すなわち上面及び下面に対して直交する。
【0048】
照射部21の第1レーザ光源211から照射された第1照射光L21は、反射系23に含まれる2つの光学ミラー23a及び23bで反射して、被測定物Aに入射する直前の光路が放射線L1の入射領域内に重なるように伝搬する。第1照射光L21は、被測定物Aの下面に垂直に入射する。第1照射光L21は、被測定物Aの下面において第1領域R1に含まれる第2領域R2に照射され、第2領域R2で垂直に反射する。被測定物Aの下面から垂直に反射した第1照射光L21は、2つの光学ミラー23b及び23aで反射して元の光路を伝搬し、第1フォトディテクタ221により検出される。
【0049】
照射部21の第2レーザ光源212から照射された第2照射光L22は、反射系23に含まれる2つの光学ミラー23c及び23dで反射して、被測定物Aに入射する直前の光路が放射線L1の出射領域内に重なるように伝搬する。第2照射光L22は、被測定物Aの上面に垂直に入射する。第2照射光L22は、被測定物Aの上面において第1領域R1に含まれる第2領域R2に照射され、第2領域R2で垂直に反射する。被測定物Aの上面から垂直に反射した第2照射光L22は、2つの光学ミラー23d及び23cで反射して元の光路を伝搬し、第2フォトディテクタ222により検出される。
【0050】
図1を再度参照すると、制御モジュール30は、第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20と接続されて第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20の動作を制御する。制御モジュール30は、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、を有する。
【0051】
制御部31は、1つ以上のプロセッサを有する。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部31は、測定装置1を構成する各構成部と通信可能に接続され、測定装置1全体の動作を制御する。
【0052】
制御部31は、第1領域R1への放射線L1の照射タイミングと、第2領域R2への第1照射光L21及び第2照射光L22を含む照射光の照射タイミングと、が互いに同一となるように線源部11及び照射部21を制御する。制御部31は、線源部11及び照射部21を互いに同期させて放射線L1及び照射光をそれぞれ照射させる。
【0053】
制御部31は、第1測定モジュール10の第1検出部12により検出された放射線L1の強度に基づいて、被測定物Aの第1パラメータを算出する。制御部31は、第2測定モジュール20の第2検出部22により検出された第1照射光L21及び第2照射光L22に基づいて、被測定物Aの第2パラメータを算出する。制御部31は、測定された第1パラメータ及び第2パラメータに基づいて被測定物Aの第3パラメータを算出する。「第3パラメータ」は、例えば上記の複数のパラメータのうち密度、充填率、及び空隙率などを含む。
【0054】
制御部31は、被測定物Aにおいて密度が不均一である場合、坪量[g/m2]÷厚さ[m]により見かけ上の密度ρ[g/m3]を算出する。制御部31は、被測定物Aにおいて密度が均一であり、かつ被測定物Aに空隙が混在している場合、見かけ上の密度ρ[g/m3]÷基準密度ρ0[g/m3]により充填率を算出する。制御部31は、1-充填率により空隙率を算出する。ここで、見かけ上の密度は、第1検出部12からの検出情報に基づいて算出された被測定物Aの第1パラメータ、及び第2検出部22からの検出情報に基づいて算出された被測定物Aの第2パラメータに基づいて算出された値を意味する。基準密度は、被測定物Aにおいて空隙が存在しない部分での均一な密度を意味する。
【0055】
記憶部32は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを含む任意の記憶モジュールを有する。記憶部32は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部32は、測定装置1の動作に用いられる任意の情報を記憶する。
【0056】
記憶部32は、第1検出部12により検出された放射線L1の強度を記憶する。記憶部32は、第2検出部22により検出された第1照射光L21及び第2照射光L22の強度を記憶する。記憶部32は、制御部31により算出された第1パラメータ、第2パラメータ、及び第3パラメータを記憶する。記憶部32は、システムプログラム及びアプリケーションプログラムなどを記憶する。記憶部32は、測定装置1に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートによって接続されている外付け型の記憶モジュールを有してもよい。
【0057】
通信部33は、被測定物Aを生産する生産ライン上に設置されている各種操作端と通信可能に接続される任意の通信モジュールを有する。本明細書において、「操作端」は、例えば材料を絞り出すノズル、及びスリットなどを含む。測定装置1は、生産ライン上に設置されている各種操作端と通信部33を介して通信可能に接続されている。制御部31は、操作端の制御情報を、通信部33を介して操作端に送信可能である。制御部31は、操作端の動作状態に関する情報を、通信部33を介して操作端から受信可能である。
【0058】
図2を再度参照すると、放射線L1の通過領域内に配置される2つの光学ミラー23b及び23dは、放射線L1による第1パラメータの測定を阻害しない範囲の面積で配置されている。すなわち、2つのレーザ光源からそれぞれ照射される2つの照射光のビーム径は、放射線L1のビーム径に比べて小さい。したがって、2つの光学ミラー23b及び23dによる放射線L1の減衰率は小さく、放射線L1による第1パラメータの測定は阻害されない。
【0059】
ここで、第1測定モジュール10を構成するβ線坪量計の測定原理と光学ミラーの有無による影響について説明する。放射線L1の透過特性は、一般的に以下の式1によって表される。
【0060】
[数1]
I=I0・exp(-α*BW) (式1)
Iは、第1検出部12での放射線L1の強度を表す。I0は、被測定物Aが存在しないときの放射線L1の強度、すなわち被測定物Aに入射する放射線L1の強度を表す。αは、物質によって定まる被測定物Aの吸収係数を表す。BWは、被測定物Aの坪量を表す。
【0061】
測定装置1の制御部31は、被測定物Aが存在する場合と存在しない場合とで第1検出部12により検出された放射線L1の強度の比I/I0を算出することで、被測定物Aの坪量BWを算出することができる。ここで、放射線L1の進路上に光学ミラー23b及び23dなどの障害物が配置されることで放射線L1が一定の割合で減衰したとしても、I及びI0の両方に対して同一の減衰率が乗算されるのでI/I0の比には影響が及ばない。したがって、測定装置1は、第1パラメータを正確に測定することができる。
【0062】
図3は、
図1の測定装置1の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図3を参照しながら、
図1の測定装置1により実行される測定方法を含む情報処理方法の一例について説明する。
【0063】
ステップS100では、測定装置1の制御部31は、第1測定モジュール10の線源部11を用いて、生産ラインを移動する被測定物Aの表面の第1領域R1に放射線L1を照射する。測定装置1の制御部31は、第2測定モジュール20の照射部21を用いて、第1領域R1と重なる第2領域R2に、第1照射光L21及び第2照射光L22を含む照射光を照射する。このとき、制御部31は、第1領域R1への放射線L1の照射タイミングと、第2領域R2への照射光の照射タイミングと、が互いに同一となるように線源部11及び照射部21を制御する。
【0064】
ステップS101では、制御部31は、第1測定モジュール10の第1検出部12を用いて、被測定物Aの第1パラメータの情報を含む放射線L1を検出する。制御部31は、第2測定モジュール20の第2検出部22を用いて、被測定物Aの第2パラメータの情報を含む照射光を検出する。
【0065】
ステップS102では、制御部31は、測定された第1パラメータ及び第2パラメータに基づいて被測定物Aの第3パラメータを算出する。
【0066】
ステップS103では、制御部31は、被測定物Aの状態が不適切か否かを判定する。本明細書において、「被測定物Aの状態」は、例えば被測定物Aの第1パラメータ、第2パラメータ、及び第3パラメータの少なくとも1つによって特徴づけられる被測定物Aの物理的な状態を含む。例えば、制御部31は、測定された第1パラメータ及び第2パラメータの少なくとも一方の値が被測定物Aの設計仕様の値から所定の割合だけずれていると被測定物Aの状態が不適切であると判定する。制御部31は、被測定物Aの状態が不適切であると判定すると、ステップS104の処理を実行する。制御部31は、被測定物Aの状態が不適切でない、すなわち適切であると判定すると、処理を終了する。
【0067】
ステップS104では、制御部31は、ステップS103において被測定物Aの状態が不適切であると判定すると、第1パラメータ及び第2パラメータの少なくとも一方を最適化するように生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御する。
【0068】
(第2実施形態)
図4は、本開示の第2実施形態に係る測定装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。
図5は、
図4の測定装置1の第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20の配置構成の第1例を示す模式図である。
図6は、
図4の測定装置1の第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20の配置構成の第2例を示す模式図である。
図4乃至
図6を参照しながら、第2実施形態に係る測定装置1の構成及び機能について主に説明する。
【0069】
第2実施形態に係る測定装置1は、第2測定モジュール20が反射系23を有さない点で第1実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例等については、第1実施形態と同様であり、対応する説明が、第2実施形態に係る測定装置1においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0070】
第2実施形態では、線源部11と第1検出部12とを結ぶ第1測定モジュール10の軸及び第2測定モジュール20の光軸の少なくとも一方が被測定物Aの表面に対して斜めに傾く。
【0071】
例えば、
図5を参照すると、第1測定モジュール10の軸X1は被測定物Aの表面に対して直交する。第1測定モジュール10は、第1実施形態と同様に構成される。一方で、第2測定モジュール20の光軸X2は被測定物Aの表面に対して斜めに傾く。第2測定モジュール20を構成する非接触厚さ計の光軸X2は被測定物Aの表面に対して垂直方向から角度θだけ傾く。
【0072】
より具体的には、第1レーザ光源211及び第1フォトディテクタ221の組C1は、被測定物Aに対して下側に配置されている。第2レーザ光源212及び第2フォトディテクタ222の組C2は、被測定物Aに対して上側に配置されている。組C1及び組C2のそれぞれにおける光軸X2は、被測定物Aの表面に対して斜めに傾く。
【0073】
照射部21の第1レーザ光源211から照射された第1照射光L21は、直進して、被測定物Aに入射する直前の光路が放射線L1の入射領域内に重なるように伝搬する。第1照射光L21は、被測定物Aの下面に対して斜め下方から入射角θで入射する。第1照射光L21は、被測定物Aの下面において第1領域R1に含まれる第2領域R2に照射され、第2領域R2で斜め下方に反射角θで反射する。被測定物Aの下面から斜め下方に反射した第1照射光L21は、直進して第1フォトディテクタ221により検出される。
【0074】
照射部21の第2レーザ光源212から照射された第2照射光L22は、直進して、被測定物Aに入射する直前の光路が放射線L1の入射領域内に重なるように伝搬する。第2照射光L22は、被測定物Aの上面に対して斜め上方から入射角θで入射する。第2照射光L22は、被測定物Aの上面において第1領域R1に含まれる第2領域R2に照射され、第2領域R2で斜め上方に反射角θで反射する。被測定物Aの上面から斜め上方に反射した第2照射光L22は、直進して第2フォトディテクタ222により検出される。
【0075】
ここで、第2測定モジュール20による被測定物Aの測定領域近傍において、被測定物Aの厚さ及び光学特性が均一であると仮定する。測定装置1の制御部31は、第2測定モジュール20を用いて測定された距離l(エル)に基づいて、その垂直成分、すなわちd=l・cosθとして被測定物Aの厚さdを算出可能である。
【0076】
例えば、
図6を参照すると、第2測定モジュール20の光軸X2は被測定物Aの表面に対して直交する。第2測定モジュール20は、反射系23を有さない点を除いて第1実施形態と同様に構成される。一方で、第1測定モジュール10の軸X1は被測定物Aの表面に対して斜めに傾く。第1測定モジュール10を構成するβ線坪量計の軸X1は被測定物Aの表面に対して垂直方向から角度θだけ傾く。
【0077】
より具体的には、線源部11は、被測定物Aに対して下側に配置されている。第1検出部12は、被測定物Aに対して上側に配置されている。線源部11から照射された放射線L1は、直進して、被測定物Aの下面に対して斜め下方から入射角θで入射する。放射線L1は、被測定物Aの内部を直進しながら透過して、被測定物Aの上面から斜め上方に出射角θで出射する。放射線L1は、直進して第1検出部12により検出される。
【0078】
ここで、第1測定モジュール10を構成するβ線坪量計の測定原理について説明する。放射線L1の透過特性は、以下の式2によって表される。
【0079】
[数2]
Iθ=I0θ・exp(-α*BWθ) (式2)
Iθは、第1検出部12での放射線L1の強度を表す。I0θは、被測定物Aが存在しないときの放射線L1の強度、すなわち被測定物Aに入射する放射線L1の強度を表す。αは、物質によって定まる被測定物Aの吸収係数を表す。BWθは、被測定物Aの軸X1上での坪量を表す。
【0080】
BWθは算出済みであり、被測定物Aの測定領域近傍において被測定物Aの厚さ及び坪量が均一であると仮定する。さらに、被測定物Aの当該測定領域近傍において放射線L1が被測定物Aを通過した距離が坪量に比例すると仮定する。このとき、測定装置1の制御部31は、被測定物Aの表面に対して垂直な方向の坪量BWを算出する。放射線L1が被測定物Aを通過した距離をl(エル)とすると、その垂直成分、すなわち被測定物Aの厚さdはl・cosθと表すことができる。制御部31は、被測定物Aの表面に対して垂直な方向で測定したときの坪量BWを、放射線L1の通過距離が坪量に比例する仮定を利用して、以下の式3によって算出可能である。
【0081】
[数3]
BW/BWθ=l・cosθ/l
BW=BWθ・cosθ (式3)
【0082】
(効果)
以上のような一実施形態に係る測定装置1によれば、生産ラインを移動する被測定物Aの状態についてより正確な情報を得ることが可能である。測定装置1は、第1領域R1及び第2領域R2を互いに重ね合わせ、かつ第1領域R1への放射線L1の照射タイミングと第2領域R2への照射光の照射タイミングとを互いに同一とすることで、複数の測定モジュールに基づく複数のパラメータの同時同点の測定を可能にする。測定装置1は、フレームF上で各測定モジュール間に所定の物理的距離が生じていたとしても、被測定物Aにおける同一位置及び同一時刻での状態を反映させた測定結果を容易に得ることができる。すなわち、測定装置1は、被測定物Aの実態により即した被測定物Aの特性を調べることができる。
【0083】
これにより、測定装置1は、被測定物Aにおける同一位置での複数の測定データの比較を可能とする。例えば、測定装置1又はユーザは、局所的に坪量が増加しているときに厚さのデータも同時に確認することで、被測定物Aの状態が不適切となっているより詳細な原因をプロファイル比較で推定することもできる。測定装置1又はユーザは、被測定物Aの特定の位置に対して、どのパラメータが不適切になっているのかを容易に切り分けることができる。
【0084】
測定装置1は、このように被測定物Aにおける局所的な変化を早期に検知することで、被測定物Aを生産する生産ライン上の改善点を早期に識別可能である。これにより、測定装置1は、生産ラインにおいて測定装置1に対し上流側に設置されている各種操作端のうち制御すべき操作端を早期に特定し、当該操作端をより迅速にフィードバック制御することも可能となる。測定装置1は、改善すべき操作端を正確に特定して迅速にフィードバック制御することで、被測定物Aの生産プロセスを早期に最適化可能である。
【0085】
測定装置1は、被測定物Aにおける同一位置及び同一時刻での状態を反映させた測定結果を容易に得ることができるので、複数の測定モジュールにより測定された複数のパラメータに基づいて被測定物Aの他のパラメータを算出するときに、被測定物Aにおける測定位置の違いによる誤差を抑制することも可能となる。例えば、測定装置1は、被測定物Aの坪量及び厚さから密度、充填率、及び空隙率などのパラメータを算出するときに、測定位置の違いによる誤差を抑制して、より精度良くパラメータを算出可能である。
【0086】
上記第1実施形態において、第2測定モジュール20が照射光を反射させる反射系23を有することで、被測定物Aの表面上で第1領域R1と第2領域R2とを互いに重ねるための照射光の光路を容易に構築することが可能となる。例えば、
図2に示すように、第1測定モジュール10を構成するβ線坪量計及び第2測定モジュール20を構成する非接触厚さ計のいずれに対しても被測定物Aに対する放射線L1及び照射光の垂直入射が実現されるように、照射光の光路を構築することも可能となる。これにより、線源部11及び第1検出部12の配置、並びに第2測定モジュール20における光学系の配置がより簡易的となる。したがって、測定装置1の製造が容易となり、その製造効率が向上する。
【0087】
上記第1実施形態において、反射系23が照射部21から第2領域R2までを結ぶ光路上で照射光を反射させる光学ミラーを含むことで、上記と同様の効果が得られる。
【0088】
上記第2実施形態において、第1測定モジュール10の軸X1及び第2測定モジュール20の光軸X2の少なくとも一方が被測定物Aの表面に対して斜めに傾くことで、第1実施形態のような反射系23を用いずとも、被測定物Aの表面上で第1領域R1と第2領域R2とを互いに重ねることが容易となる。例えば、
図5及び
図6に示すように、第1測定モジュール10を構成するβ線坪量計及び第2測定モジュール20を構成する非接触厚さ計のいずれか一方を被測定物Aの表面に対して斜めに傾けることで、被測定物Aの表面上で第1領域R1と第2領域R2とを互いに重ねることが容易となる。
【0089】
上記第2実施形態において、第1測定モジュール10の軸X1が被測定物Aの表面に対して直交し、第2測定モジュール20の光軸X2が被測定物Aの表面に対して斜めに傾くことで、上記と同様の効果が得られる。
【0090】
上記一実施形態において、測定装置1は、測定された第1パラメータ及び第2パラメータに基づいて被測定物Aの第3パラメータを算出することで、被測定物Aの状態をより多くのパラメータに基づいて多角的に調べることができる。
【0091】
上記一実施形態において、測定装置1は、第1パラメータ及び第2パラメータの少なくとも一方を最適化するように生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御することで、被測定物Aの生産プロセスを調整して、被測定物Aの状態を最適化することができる。例えば、測定装置1は、材料を絞り出すノズルの温度分布及び押し出す圧力などを調整して、シート状の被測定物Aの厚さ及び密度などが均一となるように操作端をフィードバック制御することもできる。これにより、測定装置1は、生産ライン上で生産される被測定物Aの品質を向上させることもできる。
【0092】
上記一実施形態において、第1パラメータが坪量を含み、第2パラメータが厚さを含むことで、測定装置1は、生産ラインを移動する被測定物Aの状態について、その坪量及び厚さに基づきより正確な情報を得ることが可能である。
【0093】
(変形例)
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0094】
例えば、本開示は、上述した測定装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0095】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0096】
上記第1実施形態では、第2測定モジュール20は、反射系23を有すると説明したが、これに限定されない。第2測定モジュール20は、被測定物Aの表面上で第1領域R1と第2領域R2とが互いに重なるように照射光の光路を調整可能な任意の他の光学系を有してもよい。第2測定モジュール20に加えて、又は代えて、第1測定モジュール10が放射線L1を反射させる反射系を有してもよい。
【0097】
上記第1実施形態では、反射系23は、
図2に示すような配置で複数の光学ミラーを含むと説明したが、これに限定されない。反射系23は、第1領域R1と第2領域R2とが互いに重なるのであれば、任意の配置で少なくとも1つの光学ミラーを含んでもよい。
【0098】
上記第2実施形態では、第1測定モジュール10の軸X1及び第2測定モジュール20の光軸X2のいずれか一方が被測定物Aの表面に対して斜めに傾くと説明したが、これに限定されない。第1測定モジュール10の軸X1及び第2測定モジュール20の光軸X2の両方が被測定物Aの表面に対して斜めに傾いてもよい。
【0099】
上記一実施形態では、測定装置1は、測定された第1パラメータ及び第2パラメータに基づいて被測定物Aの第3パラメータを算出すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、このような算出処理を実行しなくてもよい。
【0100】
上記一実施形態では、測定装置1は、生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、このようなフィードバック制御を実行しなくてもよい。ユーザ自身がこれらの操作端を手動で調整してもよい。
【0101】
上記一実施形態では、第1パラメータは坪量を含み、第2パラメータは厚さを含むと説明したが、これに限定されない。第1パラメータ及び第2パラメータのいずれも、上記の複数のパラメータのうち任意の他のパラメータを含んでもよい。
【0102】
上記一実施形態では、第2領域R2の全体が第1領域R1に含まれると説明したが、これに限定されない。第1領域R1の全体が第2領域R2に含まれてもよいし、一方の領域の一部と他方の領域の一部とが互いに重なっていてもよい。
【0103】
上記一実施形態では、被測定物Aは、例えば、紙、並びに数ミリ以下の比較的薄いフィルム及びプラスチックシートなどを含むと説明したが、これに限定されない。被測定物Aは、金属製品を含んでもよい。このとき、第1測定モジュール10の線源部11は、137Cs及び241Amなどを含む透過力の強いγ線源を有してもよい。第1測定モジュール10の第1検出部12は、電離箱又はプラスチックシンチレーション検出器を有してもよい。被測定物Aは、ゴム及び比較的厚いプラスチックシートなどを含んでもよい。このとき、第1測定モジュール10の線源部11は、90Srなどを含む高いエネルギーのβ線源を有してもよい。
【0104】
上記一実施形態では、第1測定モジュール10は、放射線L1を用いる坪量計を含むと説明したが、これに限定されない。第1測定モジュール10は、他の任意の透過式坪量計を含んでもよい。例えば、第1測定モジュール10は、X線坪量計、赤外線坪量計、及びマイクロ波坪量計などを含んでもよい。このとき、プローブは、X線、赤外線、及びマイクロ波などを含んでもよい。プローブ部は、それぞれの電磁波を照射する照射部を含んでもよい。
【0105】
上記一実施形態では、第2測定モジュール20は、レーザ変位センサを有する非接触厚さ計を含むと説明したが、これに限定されない。第2測定モジュール20は、被測定物Aの表面までの距離を測定するレーザ変位センサに代えて、被測定物Aの厚さ自体を測定可能なOCT(Optical Coherence Tomography)などの干渉計を有する非接触厚さ計を含んでもよい。
【0106】
上記一実施形態では、制御モジュール30の制御部31が第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20を一括して制御すると説明したが、これに限定されない。第1測定モジュール10及び第2測定モジュール20の少なくとも一方が個別に制御部を有してもよい。このような制御部は、制御モジュール30の制御部31からの制御信号に応じて、又は制御部31とは無関係に独立して対応する測定モジュールを制御してもよい。
【0107】
本開示は、
(1)
生産ラインを移動する被測定物の表面の第1領域にプローブを照射するプローブ部と、前記被測定物の第1パラメータの情報を含む前記プローブを検出する第1検出部と、を有する第1測定モジュールと、
前記第1領域と重なる第2領域に照射光を照射する照射部と、前記被測定物の第2パラメータの情報を含む前記照射光を検出する第2検出部と、を有する第2測定モジュールと、
前記第1領域への前記プローブの照射タイミングと、前記第2領域への前記照射光の照射タイミングと、が互いに同一となるように前記プローブ部及び前記照射部を制御する制御部と、
を備える、
測定装置、
である。
【0108】
(2)
上記(1)に記載の測定装置は、
前記表面上で前記第1領域と前記第2領域とが互いに重なるように、前記プローブ及び前記照射光の少なくとも一方を反射させる反射系を備えてもよい。
【0109】
(3)
上記(2)に記載の測定装置では、
前記反射系は、前記照射部から前記第2領域までを結ぶ光路上で前記照射光を反射させる光学ミラーを含んでもよい。
【0110】
(4)
上記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の測定装置では、
前記プローブ部と前記第1検出部とを結ぶ前記第1測定モジュールの軸及び前記第2測定モジュールの光軸の少なくとも一方が前記表面に対して斜めに傾いてもよい。
【0111】
(5)
上記(4)に記載の測定装置では、
前記第1測定モジュールの軸は前記表面に対して直交し、
前記第2測定モジュールの光軸は前記表面に対して斜めに傾いてもよい。
【0112】
(6)
上記(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の測定装置では、
前記制御部は、測定された前記第1パラメータ及び前記第2パラメータに基づいて前記被測定物の第3パラメータを算出してもよい。
【0113】
(7)
上記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の測定装置では、
前記制御部は、前記被測定物の状態が不適切であると判定すると、前記第1パラメータ及び前記第2パラメータの少なくとも一方を最適化するように前記生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御してもよい。
【0114】
(8)
上記(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の測定装置では、
前記第1パラメータは、坪量を含み、
前記第2パラメータは、厚さを含んでもよい。
【0115】
本開示は、
(9)
生産ラインを移動する被測定物の表面の第1領域にプローブを照射するステップと、
前記被測定物の第1パラメータの情報を含む前記プローブを検出するステップと、
前記第1領域と重なる第2領域に照射光を照射するステップと、
前記被測定物の第2パラメータの情報を含む前記照射光を検出するステップと、
を含み、
前記第1領域への前記プローブの照射タイミングと、前記第2領域への前記照射光の照射タイミングと、が互いに同一となる、
測定方法、
である。
【符号の説明】
【0116】
1 測定装置
10 第1測定モジュール
11 線源部(プローブ部)
12 第1検出部
20 第2測定モジュール
21 照射部
211 第1レーザ光源
212 第2レーザ光源
22 第2検出部
221 第1フォトディテクタ
222 第2フォトディテクタ
23 反射系
23a 光学ミラー
23b 光学ミラー
23c 光学ミラー
23d 光学ミラー
30 制御モジュール
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
A 被測定物
C1 組
C2 組
D1 移動方向
D2 方向
F フレーム
L1 放射線(プローブ)
L21 第1照射光
L22 第2照射光
R1 第1領域
R2 第2領域
X1 軸
X2 光軸