(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175443
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】色度計及び色度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01J 3/50 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G01J3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087883
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】真木 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 和史
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA22
2G020DA24
2G020DA32
2G020DA34
2G020DA42
2G020DA43
(57)【要約】
【課題】被測定物の色度をより正確に測定することが可能な色度計を提供する。
【解決手段】本開示に係る色度計1は、被測定物Aの色度を測定する色度計1であって、第1スペクトルS1を有する第1照射光を照射する第1光源部11と、第1スペクトルS1と異なる第2スペクトルS2を有する第2照射光を照射する第2光源部12と、第1照射光及び第2照射光を含む照射光が入射する積分球61と、積分球61から出射した照射光が被測定物Aに照射されることで生じる被測定光を検出する受光部20と、被測定光の検出信号に基づいて被測定光の分光スペクトルを算出する制御部50と、を備え、第1スペクトルS1と第2スペクトルS2との重ね合わせスペクトルSは、色度を算出する基準となる標準光源の基準スペクトルS0と対応する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の色度を測定する色度計であって、
第1スペクトルを有する第1照射光を照射する第1光源部と、
前記第1スペクトルと異なる第2スペクトルを有する第2照射光を照射する第2光源部と、
前記第1照射光及び前記第2照射光を含む照射光が入射する積分球と、
前記積分球から出射した前記照射光が前記被測定物に照射されることで生じる被測定光を検出する受光部と、
前記被測定光の検出信号に基づいて前記被測定光の分光スペクトルを算出する制御部と、
を備え、
前記第1スペクトルと前記第2スペクトルとの重ね合わせスペクトルは、前記色度を算出する基準となる標準光源の基準スペクトルと対応する、
色度計。
【請求項2】
前記第2スペクトルの中心波長は、前記第1スペクトルの裾又はディップに位置する、
請求項1に記載の色度計。
【請求項3】
前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルと異なる第3スペクトルを有する第3照射光を照射する第3光源部を備え、
前記照射光は、前記第1照射光、前記第2照射光、及び前記第3照射光を含み、
前記第1スペクトルと、前記第2スペクトルと、前記第3スペクトルとの重ね合わせスペクトルは、前記基準スペクトルと対応する、
請求項1又は2に記載の色度計。
【請求項4】
前記第3スペクトルの中心波長は、前記第1スペクトルの裾又はディップに位置する、
請求項3に記載の色度計。
【請求項5】
前記第1光源部は白色LED光源を含み、
前記第1照射光は白色光を含む、
請求項1又は2に記載の色度計。
【請求項6】
前記被測定光は、前記照射光が前記被測定物で拡散反射することで生じる反射光を含む、
請求項1又は2に記載の色度計。
【請求項7】
前記重ね合わせスペクトルは、前記色度を算出する基準となるD65標準光源の基準スペクトルと対応する、
請求項1又は2に記載の色度計。
【請求項8】
前記制御部は、前記被測定物の色度が不適切であると判定すると、前記色度を最適化するように前記被測定物の生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御する、
請求項1又は2に記載の色度計。
【請求項9】
被測定物の色度を測定する色度測定方法であって、
第1スペクトルを有する第1照射光を照射するステップと、
前記第1スペクトルと異なる第2スペクトルを有する第2照射光を照射するステップと、
前記第1照射光及び前記第2照射光を含む照射光を積分球に入射させるステップと、
前記積分球から出射した前記照射光を前記被測定物に照射するステップと、
前記積分球から出射した前記照射光が前記被測定物に照射されることで生じる被測定光を検出するステップと、
前記被測定光の検出信号に基づいて前記被測定光の分光スペクトルを算出するステップと、
を含み、
前記第1スペクトルと前記第2スペクトルとの重ね合わせスペクトルは、前記色度を算出する基準となる標準光源の基準スペクトルと対応する、
色度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、色度計及び色度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙などの被測定物に対して色を数値として測定する色測定に関連する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、印刷装置により紙に印刷される画像として、例えば蛍光ピンク又は蛍光イエローといった、蛍光色のインクにより形成された画像が含まれる場合に、紫LED(Light Emitting Diode)及び紫外LEDより長い波長域の光を光源とした蛍光測定により、複数の蛍光のそれぞれの蛍光特性を精度良く測定可能な分光測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、一般的な色度計ではLEDが白色光源として使用される。白色LED光源から被測定物に対して白色光を照射したときの反射率が測定される。そして、被測定物の色を数値で出力するために標準光源環境下での色度値が算出される。このとき、白色LED光源から照射される白色光のスペクトルには、標準光源の基準スペクトルよりも強度が大きく低下する波長領域が存在する。このような波長領域において被測定物から蛍光が発生すると、白色光のスペクトルに対する蛍光スペクトルの影響が大きくなり、反射率及び色度値を正確に算出することが困難であった。特許文献1に記載の発明では、このような問題点について考慮されていなかった。
【0006】
本開示は、被測定物の色度をより正確に測定することが可能な色度計及び色度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る色度計は、被測定物の色度を測定する色度計であって、第1スペクトルを有する第1照射光を照射する第1光源部と、前記第1スペクトルと異なる第2スペクトルを有する第2照射光を照射する第2光源部と、前記第1照射光及び前記第2照射光を含む照射光が入射する積分球と、前記積分球から出射した前記照射光が前記被測定物に照射されることで生じる被測定光を検出する受光部と、前記被測定光の検出信号に基づいて前記被測定光の分光スペクトルを算出する制御部と、を備え、前記第1スペクトルと前記第2スペクトルとの重ね合わせスペクトルは、前記色度を算出する基準となる標準光源の基準スペクトルと対応する。
【0008】
これにより、被測定物の色度をより正確に測定することが可能である。色度計は、第1光源部に加えて、第1スペクトルとの重ね合わせスペクトルが色度を算出する基準となる標準光源の基準スペクトルと対応する第2スペクトルを有する第2照射光を照射する第2光源部を有する。これにより、白色LED光源単体を用いた従来の場合と比較して、重ね合わせスペクトルにおいて強度が極端に低下する波長領域が低減する。すなわち、第1スペクトルと第2スペクトルとの重ね合わせスペクトルのプロファイルが標準光源の基準スペクトルのプロファイルに近似する。これにより、標準光源と使用する光源との差に起因する蛍光の影響を抑制することが可能である。
【0009】
一実施形態における色度計では、前記第2スペクトルの中心波長は、前記第1スペクトルの裾又はディップに位置してもよい。例えば、第2スペクトルの中心波長が第1スペクトルの裾に位置することで、第1スペクトルよりも波長帯域が広い標準光源の基準スペクトルに合わせて重ね合わせスペクトルの波長帯域を広げることができる。これにより、第1スペクトルの裾が位置する波長領域において、蛍光の影響の抑制に関する上述した効果が同様に発揮される。
【0010】
一実施形態における色度計は、前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルと異なる第3スペクトルを有する第3照射光を照射する第3光源部を備え、前記照射光は、前記第1照射光、前記第2照射光、及び前記第3照射光を含み、前記第1スペクトルと、前記第2スペクトルと、前記第3スペクトルとの重ね合わせスペクトルは、前記基準スペクトルと対応してもよい。これにより、第1スペクトルと、第2スペクトルと、第3スペクトルとの重ね合わせスペクトルのプロファイルが標準光源の基準スペクトルのプロファイルにより近似する。
【0011】
一実施形態における色度計では、前記第3スペクトルの中心波長は、前記第1スペクトルの裾又はディップに位置してもよい。例えば、第3スペクトルの中心波長が第1スペクトルのディップに位置することで、第1スペクトルのディップが位置する波長領域において、蛍光の影響の抑制に関する上述した効果が同様に発揮される。
【0012】
一実施形態における色度計では、前記第1光源部は白色LED光源を含み、前記第1照射光は白色光を含んでもよい。これにより、第1スペクトルの裾及びディップが位置する波長領域を除き、可視光領域における大部分の波長領域において、標準光源の基準スペクトルに近いプロファイルを有する第1スペクトルを得ることが可能となる。
【0013】
一実施形態における色度計では、前記被測定光は、前記照射光が前記被測定物で拡散反射することで生じる反射光を含んでもよい。これにより、色度計は、正反射光を除いて色度をより精度良く測定することが可能となる。
【0014】
一実施形態における色度計では、前記重ね合わせスペクトルは、前記色度を算出する基準となるD65標準光源の基準スペクトルと対応してもよい。これにより、色度計は、D65標準光源を使用する国際規格に準拠した測定処理を実行することが可能となる。
【0015】
一実施形態における色度計では、前記制御部は、前記被測定物の色度が不適切であると判定すると、前記色度を最適化するように前記被測定物の生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御してもよい。これにより、被測定物の生産プロセスを調整して、被測定物の色度を最適化することができる。したがって、色度計は、生産ライン上で生産される被測定物の品質を向上させることもできる。
【0016】
幾つかの実施形態に係る色度測定方法は、被測定物の色度を測定する色度測定方法であって、第1スペクトルを有する第1照射光を照射するステップと、前記第1スペクトルと異なる第2スペクトルを有する第2照射光を照射するステップと、前記第1照射光及び前記第2照射光を含む照射光を積分球に入射させるステップと、前記積分球から出射した前記照射光を前記被測定物に照射するステップと、前記積分球から出射した前記照射光が前記被測定物に照射されることで生じる被測定光を検出するステップと、前記被測定光の検出信号に基づいて前記被測定光の分光スペクトルを算出するステップと、を含み、前記第1スペクトルと前記第2スペクトルとの重ね合わせスペクトルは、前記色度を算出する基準となる標準光源の基準スペクトルと対応する。
【0017】
これにより、被測定物の色度をより正確に測定することが可能である。色度測定方法を実行する色度計は、第1スペクトルとの重ね合わせスペクトルが色度を算出する基準となる標準光源の基準スペクトルと対応する第2スペクトルを有する第2照射光を照射する。これにより、白色LED光源単体を用いた従来の場合と比較して、重ね合わせスペクトルにおいて強度が極端に低下する波長領域が低減する。すなわち、第1スペクトルと第2スペクトルとの重ね合わせスペクトルのプロファイルが標準光源の基準スペクトルのプロファイルに近似する。これにより、標準光源と使用する光源との差に起因する蛍光の影響を抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、被測定物の色度をより正確に測定することが可能な色度計及び色度測定方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態に係る色度計の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1の色度計の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図2の光源部を拡大して主に示した拡大模式図である。
【
図4】
図1の第1光源部に含まれる白色LED光源の第1スペクトルを示すグラフ図である。
【
図5】D65標準光源の基準スペクトルを示すグラフ図である。
【
図6】
図1の第1光源部、第2光源部、及び第3光源部に基づく重ね合わせスペクトルを示すグラフ図である。
【
図7】
図1の色度計の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】反射率に対する蛍光の影響を説明するための第1図である
【
図9】反射率に対する蛍光の影響を説明するための第2図である。
【
図10】反射率に対する蛍光の影響を説明するための第3図である。
【
図11】反射率に対する蛍光の影響を説明するための第4図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0021】
従来、色度計は、例えば抄紙中の紙などを含む被測定物の生産プロセス中に組み込まれ、当該被測定物の色を数値として出力する。場合によって、色度計は、被測定物の色が一定になるように被測定物の生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御し、被測定物の色が一定の数値の幅内に維持されるように生産管理を実行する。
【0022】
被測定物の色を表す数値は、被測定物に対して光源から照射される照射光によって変化する。したがって、被測定物の色測定のための標準光源が国際照明委員会(CIE)などで定められている。一般的な色度計では、LEDが白色光源として使用される。白色LED光源から被測定物に対して白色光を照射したときの反射率が測定される。そして、被測定物の色を数値で出力するために標準光源環境下での色度値が算出される。
【0023】
より具体的には、白色LED光源を用いて取得された反射率のデータと、標準光源を含む任意の仮想光源のスペクトルのデータと、を用いて、当該仮想光源下での色度値が容易に算出される。このとき、省スペース、点灯及び消灯制御の容易性、並びに安価といったLEDの利点を活かすことも可能となる。
【0024】
しかしながら、従来の反射率測定型の色度計では、被測定物から蛍光が発生する場合に、使用する光源により反射率が変化するという問題点があった。蛍光とは、例えば被測定物がある短波長の領域で光を吸収し、吸収した波長よりも長波長側の領域で光を放出する現象を意味する。例えば、白色LED光源から照射される白色光のスペクトルには、標準光源の基準スペクトルよりも強度が大きく低下する波長領域が存在する。このような波長領域において被測定物から蛍光が発生すると、白色光のスペクトルに対する蛍光スペクトルの影響が大きくなり、反射率及び色度値を正確に算出することが困難であった。
【0025】
図8乃至
図11を参照しながら、反射率に対する蛍光の影響を簡略的に説明する。
【0026】
図8は、反射率に対する蛍光の影響を説明するための第1図である。
図9は、反射率に対する蛍光の影響を説明するための第2図である。
図8及び
図9は、全波長域で反射率が80%であり、蛍光が存在しない例を示す。加えて、
図8は、全波長域で発光強度が一定のブロード光源を利用した例を示す。
図9は、長波長側で発光強度が低下する非ブロード光源を利用した例を示す。各図において、実線は光源の発光強度を示す。破線は被測定物で反射した反射光の強度を示す。丸点は、見かけ上の反射率を示す。
【0027】
各図において、反射光強度bは、光源強度aの80%の強度になっている。見かけ上の反射率zは、見かけ上の反射率z=反射光強度b/光源強度aで算出され、光源のスペクトル分布に依存せずに一定の値となる。
【0028】
図10は、反射率に対する蛍光の影響を説明するための第3図である。
図11は、反射率に対する蛍光の影響を説明するための第4図である。
図10及び
図11は、全波長域で反射率が80%であり、波長450nmで吸収された光に基づく蛍光が約10%の強度で波長650nmよりも長波長側の波長領域において発生する例を示す。
【0029】
加えて、
図10は、
図8に対応させて、全波長域で発光強度が一定のブロード光源を利用した例を示す。
図11は、
図9に対応させて、長波長側で発光強度が低下する非ブロード光源を利用した例を示す。各図において、実線は光源の発光強度を示す。破線は被測定物で反射した反射光の強度を示す。一点鎖線は被測定物から発生した蛍光の強度を示す。二重線は反射光の強度と蛍光の強度とを足し合わせた、光の見かけ上の反射強度を示す。丸点は、見かけ上の反射率を示す。
【0030】
各図において、反射光強度bは、光源強度aの80%の強度になっている。一方で、蛍光強度cは、波長650nmよりも長波長側の波長領域において所定の値を有している。分光器の検出部は、反射由来の光強度と蛍光由来の光強度とを互いに区別することができない。したがって、検出部によって検出される見かけ上の反射強度dは、反射光強度bと蛍光強度cとが合算された値になる。このとき、見かけ上の反射率zは以下のとおりとなる。
【0031】
見かけ上の反射率z=見かけ上の反射強度d/光源強度a
=(反射光強度b+蛍光強度c)/光源強度a
=(光源強度a×反射率+蛍光強度c)/光源強度a
=反射率+蛍光強度c/光源強度a
以上のように、光源強度aに対する蛍光強度cの比率に依存して、見かけ上の反射率zが実際の反射率よりも大きくなる。光源強度a、すなわち光源から被測定物への照射光の強度が蛍光強度cに対して低ければ低いほど、見かけ上の反射率zが大きくなる。
【0032】
以上のように、例えば、白色LED光源から照射される白色光のスペクトルにおいて、標準光源の基準スペクトルよりも強度が大きく低下する波長領域が存在する場合に、このような波長領域において被測定物から蛍光が発生すると、白色LED光源と標準光源との間で、測定される反射率が大きく相違してしまう。結果として、反射率及び色度値を正確に算出することが困難となる。
【0033】
色度計の値付け、校正、及び検査において世界中で用いられているBCRA IIタイルでも、蛍光の観測が報告されている。したがって、蛍光が発生しない被測定物の色度を測定するために実用される色度計であっても、値付け、校正、及び検査の段階では蛍光に関する上記の問題点が顕在化することになる。
【0034】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、被測定物の色度をより正確に測定することが可能な色度計及び色度測定方法を提供することを目的とする。以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0035】
図1は、本開示の一実施形態に係る色度計1の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2は、
図1の色度計1の概略構成を示す模式図である。
【0036】
色度計1は、被測定物Aの色度を測定する。本明細書において、「被測定物」は、例えば紙などを含む。
図1に示すとおり、色度計1は、第1光源部11、第2光源部12、第3光源部13、受光部20、記憶部30、通信部40、及び制御部50を有する。以下では、第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13をまとめて説明するときは、単に「光源部10」と表記する。
【0037】
第1光源部11は、第1スペクトルを有する第1照射光を照射する。第1光源部11は、白色LED光源を有する。当該白色LED光源から照射される第1照射光は、白色光を含む。
【0038】
第2光源部12は、第1スペクトルと異なる第2スペクトルを有する第2照射光を照射する。第2光源部12は、ピーク波長700nmで半値全幅50nmのLED光源を有する。
【0039】
第3光源部13は、第1スペクトル及び第2スペクトルと異なる第3スペクトルを有する第3照射光を照射する。第3光源部13は、ピーク波長485nmで半値全幅50nmのLED光源を有する。
【0040】
受光部20は、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を含む照射光が被測定物Aに照射されることで生じる被測定光を検出する。本明細書において、「被測定光」は、例えば照射光が被測定物Aで拡散反射することで生じる反射光を含む。すわなち、被測定光は、反射光のうち、正反射光を除いた他の拡散反射光を含む。受光部20は、被測定光を検出して分光可能な分光器を有する。当該分光器の波長帯域は、照射光の波長帯域に適合する。
【0041】
記憶部30は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを含む任意の記憶モジュールを有する。記憶部30は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部30は、色度計1の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部30は、受光部20により検出された被測定光の強度を記憶する。記憶部30は、制御部50により算出された情報を記憶する。記憶部30は、システムプログラム及びアプリケーションプログラムなどを記憶する。記憶部30は、色度計1に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートによって接続されている外付け型の記憶モジュールを有してもよい。
【0042】
通信部40は、被測定物Aを生産する生産ライン上に設置されている各種操作端と通信可能に接続される任意の通信モジュールを有する。本明細書において、「操作端」は、例えば材料を絞り出すノズル、及びスリットなどを含む。色度計1は、生産ライン上に設置されている各種操作端と通信部40を介して通信可能に接続されている。制御部50は、操作端の制御情報を、通信部40を介して操作端に送信可能である。制御部50は、操作端の動作状態に関する情報を、通信部40を介して操作端から受信可能である。
【0043】
制御部50は、1つ以上のプロセッサを有する。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部50は、色度計1を構成する各構成部と通信可能に接続され、色度計1全体の動作を制御する。
【0044】
制御部50は、光源部10を制御して、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光の照射タイミングを調整する。例えば、制御部50は、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を同時に照射するように第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13をそれぞれ制御する。
【0045】
制御部50は、受光部20から出力される被測定光の検出信号に基づいて被測定光の分光スペクトルを算出する。本明細書において、「分光スペクトル」は、例えば被測定光としての反射光の強度の波長依存性、及び当該波長依存性から算出可能な被測定物Aの反射率の波長依存性などを含む。
【0046】
図2を参照すると、色度計1は、
図1に記載の各構成部に加えて光学系60を有する。光学系60は、光源部10から受光部20までの光路を形成する。光学系60は、積分球61と、シリンドリカルミラー62と、ミラー63と、集光レンズ64と、を含む。
【0047】
第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13からそれぞれ出射した第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を含む照射光は、積分球61に入射する。積分球61は、第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13のそれぞれに含まれるLEDのような方向性のある光源を等方均質な光源に変換するために使用される。第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を含む照射光は、積分球61の内面で反射を繰り返すうちに拡散し、等方均質な光となる。
【0048】
積分球61で十分に拡散した照射光は、積分球61の下部に形成されている開口部から出射する。積分球61から出射した照射光の一部は、光軸を取り囲むように配置されているシリンドリカルミラー62で反射して被測定物Aに照射される。被測定物Aで拡散反射した光のうち鉛直上向きに伝搬する反射光は、ミラー63及び集光レンズ64を介して受光部20により被測定光として検出される。
【0049】
制御部50は、被測定光の反射強度を、受光部20に含まれる分光器を用いて算出する。制御部50は、反射率が既知の反射部材で反射した光の反射強度をあらかじめ記憶部30に格納しておくことで、被測定物Aの反射率を算出可能である。ここで、積分球61から出射した照射光は、均一な空間分布となるため、被測定物Aに対し方向によらず同一の強度で照射される。したがって、制御部50は、被測定物Aが反射率の方向特性を有していたとしても、被測定物Aの設置角度によらず反射率の測定処理を安定して実行可能である。
【0050】
図3は、
図2の光源部10を拡大して主に示した拡大模式図である。
図3は、積分球61の入口において第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13の3つの光源が配置されている様子を示す。
【0051】
色度計1は、第1光源部11に含まれる白色LED光源に加えて、任意の数の補助光源を有する。第2光源部12及び第3光源部13が、当該補助光源に相当する。第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13からそれぞれ照射される照射光は、積分球61に入射すると、積分球61内で十分に拡散される。したがって、照射光は、複数の光線を含む場合であっても均一になる。
【0052】
色度計1は、白色LED光源に加えて、これらの補助光源も同時に点灯させることで、第1スペクトル、第2スペクトル、及び第3スペクトルの重ね合わせスペクトルを標準光源の基準スペクトルに対応させる。より具体的には、色度計1は、重ね合わせスペクトルを基準スペクトルに近似させる。本明細書において、「標準光源」は、例えばD65標準光源を含む。
【0053】
図4は、
図1の第1光源部11に含まれる白色LED光源の第1スペクトルS1を示すグラフ図である。
図5は、D65標準光源の基準スペクトルS0を示すグラフ図である。
図6は、
図1の第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13に基づく重ね合わせスペクトルSを示すグラフ図である。
【0054】
D65標準光源では基準スペクトルS0がブロードな形状であるのに対して、一般的な白色LED光源では、第1スペクトルS1の強度は、波長480nm付近及び700nm付近において大きく低下する。より具体的には、
図4に示すとおり、白色LED光源では、波長480nm付近と波長675nmよりも長波長側の波長領域とにおいて発光強度が大きく低下している。一方で、
図5に示すとおり、D65標準光源の基準スペクトルS0では、同様の波長領域においても発光強度の変化がなだらかとなり、所定の発光強度が維持されている。
【0055】
したがって、特に、波長480nm付近と波長675nmよりも長波長側の波長領域とにおいて蛍光が発生する被測定物Aについては、白色LED光源を用いて測定される反射率とD65標準光源を用いて測定される反射率との間に大きな差異が生じる。そこで、色度計1は、D65標準光源と比較して第1照射光の第1スペクトルS1が凹んでいる波長領域で発光する上記の補助光源を有する。
【0056】
より具体的には、
図6に示すとおり、補助光源としての第2光源部12は、波長675nmよりも長波長側の波長領域において主に広がる第2スペクトルS2を有する第2照射光を照射する。第2スペクトルS2は、ピーク波長700nmであり、半値全幅50nmである。第2スペクトルS2の中心波長700nmは、第1スペクトルS1の裾に位置する。
【0057】
同様に、補助光源としての第3光源部13は、波長480nm付近において主に広がる第3スペクトルS3を有する第3照射光を照射する。第3スペクトルS3は、ピーク波長485nmであり、半値全幅50nmである。第3スペクトルS3の中心波長485nmは、第1スペクトルS1のディップに位置する。
【0058】
第1スペクトルS1と第2スペクトルS2との重ね合わせスペクトルSは、色度を算出する基準となるD65標準光源の基準スペクトルS0と対応する。より具体的には、重ね合わせスペクトルSでは、基準スペクトルS0と同様に、波長675nmよりも長波長側の波長領域であって、波長700nm付近の波長領域においても所定の発光強度が維持されている。第1スペクトルS1と、第2スペクトルS2と、第3スペクトルS3との重ね合わせスペクトルSは、基準スペクトルS0と対応する。より具体的には、重ね合わせスペクトルSでは、基準スペクトルS0と同様に、波長675nmよりも長波長側の波長領域であって、波長700nm付近の波長領域及び波長485nm付近の波長領域においても所定の発光強度が維持されている。
【0059】
制御部50は、第1スペクトルS1を示す第1光源部11への注入電流値に対して、第2スペクトルS2を示す第2光源部12及び第3スペクトルS3を示す第3光源部13への注入電流値を変化させながら各発光強度のバランスを最適化する。制御部50は、白色LED光源及び補助光源としての2つのLED光源が同時に点灯するように第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13を制御する。これにより、積分球61から出射した照射光は、
図6に示すような凹みが抑制された重ね合わせスペクトルSを有することになる。
【0060】
図7は、
図1の色度計1の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図7を参照しながら、
図1の色度計1により実行される色度測定方法を含む情報処理方法の一例について説明する。
【0061】
ステップS100では、色度計1の制御部50は、光源部10を用いて照射光を照射する。より具体的には、制御部50は、第1光源部11を用いて、第1スペクトルS1を有する第1照射光を照射する。制御部50は、第2光源部12を用いて、第1スペクトルS1と異なる第2スペクトルS2であって、第1スペクトルS1との重ね合わせスペクトルSが基準スペクトルS0と対応する第2スペクトルS2を有する第2照射光を照射する。制御部50は、第3光源部13を用いて、第1スペクトルS1及び第2スペクトルS2と異なる第3スペクトルS3であって、第1スペクトルS1及び第2スペクトルS2との重ね合わせスペクトルSが基準スペクトルS0と対応する第3スペクトルS3を有する第3照射光を照射する。このとき、照射光は、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を含む。
【0062】
ステップS101では、色度計1は、ステップS100において照射された照射光を積分球61に入射させる。
【0063】
ステップS102では、色度計1は、ステップS101において積分球61に入射し、積分球61から出射した照射光を被測定物Aに照射する。
【0064】
ステップS103では、色度計1は、ステップS102において、積分球61から出射した照射光が被測定物Aに照射されることで生じる被測定光を検出する。
【0065】
ステップS104では、色度計1の制御部50は、ステップS103において取得された被測定光の検出信号に基づいて被測定光の分光スペクトル及び被測定物Aの色度を算出する。
【0066】
ステップS105では、制御部50は、被測定物Aの色度が不適切か否かを判定する。例えば、制御部50は、被測定物Aの色度が被測定物Aの設計仕様の値から所定の割合だけずれていたり、被測定物Aにおける位置ごとに不均一であったりすると被測定物Aの色度が不適切であると判定する。制御部50は、被測定物Aの色度が不適切であると判定すると、ステップS106の処理を実行する。制御部50は、被測定物Aの色度が不適切でない、すなわち適切であると判定すると、処理を終了する。
【0067】
ステップS106では、制御部50は、ステップS105において被測定物Aの色度が不適切であると判定すると、被測定物Aの色度を最適化するように被測定物Aの生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御する。
【0068】
以上のような一実施形態に係る色度計1によれば、被測定物Aの色度をより正確に測定することが可能である。色度計1は、第1光源部11に加えて、第1スペクトルS1との重ね合わせスペクトルSが色度を算出する基準となる標準光源の基準スペクトルS0と対応する第2スペクトルS2を有する第2照射光を照射する第2光源部12を有する。これにより、白色LED光源単体を用いた従来の場合と比較して、重ね合わせスペクトルSにおいて強度が極端に低下する波長領域が低減する。すなわち、第1スペクトルS1と第2スペクトルS2との重ね合わせスペクトルSのプロファイルが標準光源の基準スペクトルS0のプロファイルに近似する。これにより、標準光源と使用する光源との差に起因する蛍光の影響を抑制することが可能である。
【0069】
例えば、
図6に示すとおり、重ね合わせスペクトルSでは、基準スペクトルS0と同様に、波長675nmよりも長波長側の波長領域であって、波長700nm付近の波長領域においても所定の発光強度が維持されている。これにより、例えば波長450nmで励起されて波長700nmで被測定物Aから蛍光が発生する場合であっても、波長700nm付近の波長領域において光源の発光強度に対する蛍光強度の割合が低下する。したがって、重ね合わせスペクトルSを有する照射光を照射可能な光源と標準光源との間で、測定される反射率の差が抑制される。すなわち、国際規格の標準光源での反射率の測定結果により近似するデータを取得することが可能となる。結果として、色度計1を用いることで、反射率及び色度値を正確に算出することが容易となる。
【0070】
このとき、蛍光が発生する波長領域において基準スペクトルS0と同様に重ね合わせスペクトルSにおいて所定の発光強度が維持されているのであれば、励起波長が具体的に特定されていなくても、反射率及び色度値を正確に算出することが可能である。励起波長が具体的に特定されている場合であっても、例えば励起波長のみで被測定物Aを励起して蛍光スペクトルを測定するような校正作業を予め行わなくても反射率及び色度値を正確に算出することが可能である。
【0071】
以上により、色度計1の値付け、校正、及び検査の段階でも蛍光の影響を抑制して、色度値をより正確に算出することが可能である。
【0072】
第2スペクトルS2の中心波長が、
図6に示すように第1スペクトルS1の裾に位置することで、第1スペクトルS1よりも波長帯域が広い標準光源の基準スペクトルS0に合わせて重ね合わせスペクトルSの波長帯域を広げることができる。これにより、第1スペクトルS1の裾が位置する波長領域において、蛍光の影響の抑制に関する上述した効果が同様に発揮される。
【0073】
色度計1は、第1スペクトルS1及び第2スペクトルS2と異なる第3スペクトルS3であって、第1スペクトルS1及び第2スペクトルS2との重ね合わせスペクトルSが基準スペクトルS0と対応する第3スペクトルS3を有する第3照射光を照射する第3光源部13を有する。照射光は、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を含む。これにより、第1スペクトルS1と、第2スペクトルS2と、第3スペクトルS3との重ね合わせスペクトルSのプロファイルが標準光源の基準スペクトルS0のプロファイルにより近似する。
【0074】
例えば基準スペクトルS0の可視光領域における全波長領域において、重ね合わせスペクトルSのプロファイルを標準光源の基準スペクトルS0のプロファイルに近似させることも可能となる。したがって、可視光領域における全波長領域において、蛍光の影響の抑制に関する上述した効果が同様に発揮される。また、可視光領域における全波長領域において、重ね合わせスペクトルSのプロファイルを標準光源の基準スペクトルS0のプロファイルに近似させることが可能となるので、どの波長で被測定物Aが励起されようとも関係なく、励起波長が具体的に特定されていなくても蛍光の影響を抑制可能となる。
【0075】
第3スペクトルS3の中心波長が、
図6に示すように第1スペクトルS1のディップに位置することで、第1スペクトルS1のディップが位置する波長領域において、蛍光の影響の抑制に関する上述した効果が同様に発揮される。
【0076】
第1光源部11が白色LED光源を含み、第1照射光が白色光を含む。これにより、
図6に示すとおり、第1スペクトルS1の裾及びディップが位置する波長領域を除き、可視光領域における大部分の波長領域において、標準光源の基準スペクトルS0に近いプロファイルを有する第1スペクトルS1を得ることが可能となる。
【0077】
照射光が被測定物Aで拡散反射することで生じる反射光を被測定光が含むことで、色度計1は、正反射光を除いて色度をより精度良く測定することが可能となる。
【0078】
重ね合わせスペクトルSが、色度を算出する基準となるD65標準光源の基準スペクトルS0と対応することで、色度計1は、D65標準光源を使用する国際規格に準拠した測定処理を実行することが可能となる。
【0079】
色度計1は、被測定物Aの色度を最適化するように被測定物Aの生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御することで、被測定物Aの生産プロセスを調整して、被測定物Aの色度を最適化することができる。これにより、色度計1は、生産ライン上で生産される被測定物Aの品質を向上させることもできる。
【0080】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0081】
例えば、本開示は、上述した色度計1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0082】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0083】
上記実施形態では、第2スペクトルS2の中心波長は、第1スペクトルS1の裾に位置すると説明したが、これに限定されない。第2スペクトルS2の中心波長は、第1スペクトルS1のディップに位置してもよい。
【0084】
上記実施形態では、照射光が、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を含むときに、色度計1の制御部50は、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を同時に照射するように第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13をそれぞれ制御すると説明したが、これに限定されない。制御部50は、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光のいずれか1つのみ又はいずれか2つを照射するように第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13をそれぞれ制御してもよい。
【0085】
例えば、波長700nmにおける被測定物Aの実際の反射率を測定したい場合、色度計1は、第1光源部11及び第3光源部13を消灯させて、波長700nmの第2光源部12のみを点灯させてもよい。これにより、被測定物Aが例えば波長450nmで励起されないので、波長700nmで被測定物Aから蛍光が発生することもない。したがって、色度計1は、第2光源部12からの第2照射光に基づいて、波長700nmにおける被測定物Aの実際の反射率を容易に測定可能である。
【0086】
以上のように、色度計1は、第2光源部12及び第3光源部13のいずれか一方のみを点灯させることで、観測波長領域で被測定物Aからの蛍光の影響を抑制し被測定物Aの実際の反射率を容易に測定可能である。
【0087】
上記実施形態では、照射光が、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を含むときに、色度計1の制御部50は、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を同時に照射するように第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13をそれぞれ制御すると説明したが、これに限定されない。制御部50は、互いに異なる照射タイミングで第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を照射するように第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13をそれぞれ制御してもよい。
【0088】
例えば、制御部50は、初めに第1光源部11のみを点灯させ第1照射光のみを照射させたのち、第2光源部12のみを点灯させ第2照射光のみを照射させてもよい。このとき、制御部50は、初めの第1照射光のみの照射の際には波長700nmでの見かけ上の反射率が15%であり、続く第2照射光のみの照射の際には波長700nmでの実際の反射率が10%であれば、その差分の5%に相当する光量を蛍光強度として算出可能である。このとき、励起波長が具体的に特定されていなくても問題ない。
【0089】
以上のように、色度計1は、第1光源部11のみを点灯させたときのデータと補助光源としての第2光源部12及び第3光源部13のいずれか一方のみを点灯させたときのデータとを比較することで、第1光源部11に含まれる白色LED光源に起因する蛍光強度を容易に測定可能である。
【0090】
以上の変形例については、照射光が、第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を含むときに限定して説明したが、照射光が、第1照射光及び第2照射光のみを含むときも同様の説明が当てはまる。また、照射光が、4つ以上の光を含むときにも同様の説明が当てはまる。
【0091】
上記実施形態では、色度計1は第3光源部13を有し、照射光は第1照射光、第2照射光、及び第3照射光を含むと説明したが、これに限定されない。色度計1は、第3光源部13を有さずに、第1光源部11及び第2光源部12のみを有してもよい。
【0092】
逆に、色度計1は、第1光源部11、第2光源部12、及び第3光源部13に加えて第4光源部を有してもよい。このような第4光源部は、第1スペクトルS1、第2スペクトルS2、及び第3スペクトルS3とは異なる第4スペクトルを有する第4照射光を照射してもよい。第4光源部は、ピーク波長775nmで半値全幅50nmのLED光源を有してもよい。これにより、色度計1は、重ね合わせスペクトルSの波長帯域を波長750nmよりもさらに長波長側まで広げることが可能であり、被測定物Aの反射率をより広範な波長領域で測定することも可能となる。
【0093】
上記実施形態では、第3スペクトルS3の中心波長は、第1スペクトルS1のディップに位置すると説明したが、これに限定されない。第3スペクトルS3の中心波長は、第1スペクトルS1の裾に位置してもよい。
【0094】
上記実施形態では、第1光源部11は白色LED光源を含み、第1照射光は白色光を含むと説明したが、これに限定されない。第1照射光の第1スペクトルS1は、可視光領域において任意の波長帯域を有してもよい。第1光源部11は、このような第1照射光を照射する任意の可視光光源を含んでもよい。同様に、第2光源部12及び第3光源部13についても、LED光源に限定されず、任意の可視光光源を含んでもよい。
【0095】
上記実施形態では、被測定光は、照射光が被測定物Aで拡散反射することで生じる反射光を含むと説明したが、これに限定されない。色度計1による色度の測定が可能であれば、被測定光は、正反射光を含んでもよいし、透過光を含んでもよい。
【0096】
上記実施形態では、重ね合わせスペクトルSは、色度を算出する基準となるD65標準光源の基準スペクトルS0と対応すると説明したが、これに限定されない。基準とする標準光源は、D65標準光源に限定されず、任意の他の標準光源を含んでもよい。
【0097】
上記実施形態では、色度計1は、被測定物Aの生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御すると説明したが、これに限定されない。色度計1は、このようなフィードバック制御を実行しなくてもよい。ユーザ自身がこれらの操作端を手動で調整してもよい。
【0098】
上記実施形態では、被測定物Aは、例えば紙などを含むと説明したが、これに限定されない。被測定物Aは、色度測定の対象となり得る任意の被測定物を含んでもよい。
【0099】
本開示は、
(1)
被測定物の色度を測定する色度計であって、
第1スペクトルを有する第1照射光を照射する第1光源部と、
前記第1スペクトルと異なる第2スペクトルを有する第2照射光を照射する第2光源部と、
前記第1照射光及び前記第2照射光を含む照射光が入射する積分球と、
前記積分球から出射した前記照射光が前記被測定物に照射されることで生じる被測定光を検出する受光部と、
前記被測定光の検出信号に基づいて前記被測定光の分光スペクトルを算出する制御部と、
を備え、
前記第1スペクトルと前記第2スペクトルとの重ね合わせスペクトルは、前記色度を算出する基準となる標準光源の基準スペクトルと対応する、
色度計、
である。
【0100】
(2)
上記(1)に記載の色度計では、
前記第2スペクトルの中心波長は、前記第1スペクトルの裾又はディップに位置してもよい。
【0101】
(3)
上記(1)又は(2)に記載の色度計は、
前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルと異なる第3スペクトルを有する第3照射光を照射する第3光源部を備え、
前記照射光は、前記第1照射光、前記第2照射光、及び前記第3照射光を含み、
前記第1スペクトルと、前記第2スペクトルと、前記第3スペクトルとの重ね合わせスペクトルは、前記基準スペクトルと対応してもよい。
【0102】
(4)
上記(3)に記載の色度計では、
前記第3スペクトルの中心波長は、前記第1スペクトルの裾又はディップに位置してもよい。
【0103】
(5)
上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の色度計では、
前記第1光源部は白色LED光源を含み、
前記第1照射光は白色光を含んでもよい。
【0104】
(6)
上記(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の色度計では、
前記被測定光は、前記照射光が前記被測定物で拡散反射することで生じる反射光を含んでもよい。
【0105】
(7)
上記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の色度計では、
前記重ね合わせスペクトルは、前記色度を算出する基準となるD65標準光源の基準スペクトルと対応してもよい。
【0106】
(8)
上記(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の色度計では、
前記制御部は、前記被測定物の色度が不適切であると判定すると、前記色度を最適化するように前記被測定物の生産ラインにおける上流側の操作端をフィードバック制御してもよい。
【0107】
本開示は、
(9)
被測定物の色度を測定する色度測定方法であって、
第1スペクトルを有する第1照射光を照射するステップと、
前記第1スペクトルと異なる第2スペクトルを有する第2照射光を照射するステップと、
前記第1照射光及び前記第2照射光を含む照射光を積分球に入射させるステップと、
前記積分球から出射した前記照射光を前記被測定物に照射するステップと、
前記積分球から出射した前記照射光が前記被測定物に照射されることで生じる被測定光を検出するステップと、
前記被測定光の検出信号に基づいて前記被測定光の分光スペクトルを算出するステップと、
を含み、
前記第1スペクトルと前記第2スペクトルとの重ね合わせスペクトルは、前記色度を算出する基準となる標準光源の基準スペクトルと対応する、
色度測定方法、
である。
【符号の説明】
【0108】
1 色度計
10 光源部
11 第1光源部
12 第2光源部
13 第3光源部
20 受光部
30 記憶部
40 通信部
50 制御部
60 光学系
61 積分球
62 シリンドリカルミラー
63 ミラー
64 集光レンズ
A 被測定物
S0 基準スペクトル
S1 第1スペクトル
S2 第2スペクトル
S3 第3スペクトル
S 重ね合わせスペクトル