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特開2023-175447解析方法、プログラムおよび解析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175447
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】解析方法、プログラムおよび解析装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/06 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G21C17/06 040
G21C17/06 080
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087887
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真人
(72)【発明者】
【氏名】本間 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】村上 望
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA03
2G075CA38
2G075DA15
2G075DA17
2G075EA03
2G075EA07
2G075FB04
2G075FB05
2G075GA18
2G075GA19
(57)【要約】
【課題】運用時間を延ばす予定の燃料集合体を、運用前に適切に評価する。
【解決手段】本解析方法は、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を取得するステップと、曲がり量の測定値に基づいて、第1期間より長い第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり量による出力への影響度合いを示す曲がり係数の予測値を算出するステップと、曲がり係数の予測値に基づいて、第2期間の時間長さで運用される燃料集合体を評価するステップと、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を取得するステップと、
前記曲がり量の測定値に基づいて、前記第1期間より長い第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり量による出力への影響度合いを示す曲がり係数の予測値を算出するステップと、
前記曲がり係数の予測値に基づいて、前記第2期間の時間長さで運用される前記燃料集合体を評価するステップと、
を含む、
解析方法。
【請求項2】
前記曲がり係数の予測値を算出するステップにおいては、
前記曲がり量の測定値に基づいて、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける前記燃料集合体の曲がり量の予測値を算出し、
前記曲がり量の予測値に基づき、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける、隣り合う燃料集合体とのギャップ量の予測値を算出し、
前記ギャップ量の予測値に基づき、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける前記曲がり係数の予測値を算出する、請求項1に記載の解析方法。
【請求項3】
前記曲がり係数の予測値を算出するステップにおいては、
前記曲がり量の測定値に基づいて、曲がり量が前記第1期間の経過まで線形で変化したと仮定した場合の、曲がり量の単位時間当たりの変化量を算出し、
曲がり量が前記第2期間の経過まで線形で変化したと仮定して、前記単位時間当たりの変化量に基づいて、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける前記燃料集合体の曲がり量の予測値を算出する、請求項2に記載の解析方法。
【請求項4】
前記曲がり量を考慮しない場合の、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける出力を示す基準係数を算出するステップをさらに含み、
前記燃料集合体を評価するステップにおいては、前記基準係数と前記曲がり係数とに基づいて算出される熱流束熱水路係数に基づいて、前記第2期間の時間長さで運用される前記燃料集合体を評価する、請求項1又は請求項2に記載の解析方法。
【請求項5】
前記燃料集合体を評価するステップにおいては、
前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける前記熱流束熱水路係数のそれぞれが、閾値以下である場合には、その燃料集合体の設計が適切であると評価し、
前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける前記熱流束熱水路係数の少なくとも1つが、閾値より高い場合には、その燃料集合体の設計が不適切であると評価する、請求項4に記載の解析方法。
【請求項6】
前記燃料集合体の設計が不適切であると評価された場合に、燃料集合体を再設計するステップを更に含む、請求項5に記載の解析方法。
【請求項7】
第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を取得するステップと、
前記曲がり量の測定値に基づいて、前記第1期間より長い第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり量による出力への影響度合いを示す曲がり係数の予測値を算出するステップと、
前記曲がり係数の予測値に基づいて、前記第2期間の時間長さで運用される前記燃料集合体を評価するステップと、
をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【請求項8】
第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を取得する測定値取得部と、
前記曲がり量の測定値に基づいて、前記第1期間より長い第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり量による出力への影響度合いを示す曲がり係数の予測値を算出する予測値算出部と、
前記曲がり係数の予測値に基づいて、前記第2期間の時間長さで運用される前記燃料集合体を評価する評価部と、
を含む、
解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析方法、プログラムおよび解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の特性を評価するための技術が知られている。例えば特許文献1には、燃料集合体の曲がり量の確率分布に基づいて摂動させた複数の曲がりパターンについて、曲がり量による不確かさを含む熱流束熱水路係数を算出する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-19280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、燃料集合体の1サイクル当たりの運用時間を延ばすことが検討されており、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を、運用前に適切に評価することが求められている。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を、運用前に適切に評価可能な解析方法、プログラムおよび解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る解析方法は、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を取得するステップと、前記曲がり量の測定値に基づいて、前記第1期間より長い第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり量による出力への影響度合いを示す曲がり係数の予測値を算出するステップと、前記曲がり係数の予測値に基づいて、前記第2期間の時間長さで運用される前記燃料集合体を評価するステップと、を含む。
【0007】
本開示に係るプログラムは、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を取得するステップと、前記曲がり量の測定値に基づいて、前記第1期間より長い第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり量による出力への影響度合いを示す曲がり係数の予測値を算出するステップと、前記曲がり係数の予測値に基づいて、前記第2期間の時間長さで運用される前記燃料集合体を評価するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0008】
本開示に係る解析装置は、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を取得する測定値取得部と、前記曲がり量の測定値に基づいて、前記第1期間より長い第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、前記第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり量による出力への影響度合いを示す曲がり係数の予測値を算出する予測値算出部と、前記曲がり係数の予測値に基づいて、前記第2期間の時間長さで運用される前記燃料集合体を評価する評価部と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を、運用前に適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、解析対象となる炉心を模式的に示す説明図である。
図2図2は、解析対象となる燃料集合体を軸方向に直交する面で切ったときの断面図である。
図3図3は、複数の燃料集合体の一部を模式的に示す説明図である。
図4図4は、本実施形態に係る解析装置の模式的なブロック図である。
図5図5は、曲がり係数の算出を説明するためのグラフである。
図6図6は、曲がり係数の予測値の算出を説明するためのグラフである。
図7図7は、基準係数の予測値の算出を説明するためのグラフである。
図8図8は、燃料集合体の評価を説明するためのグラフである。
図9図9は、本実施形態に係る解析装置の処理フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0012】
(炉心)
図1は、解析対象となる炉心を模式的に示す説明図であり、図2は、解析対象となる燃料集合体を軸方向に直交する面で切ったときの断面図である。本実施形態に係る解析装置10は、原子炉の炉心特性を解析するための装置であり、さらに言えば、炉心内の燃料集合体6を評価するための装置である。図1に示すように、原子炉には、炉心設計の対象となる炉心5が格納されている。この炉心5は、複数の燃料集合体6を含む。なお、燃料の交換は、燃料集合体6単位で行われる。
【0013】
(燃料集合体および燃料棒)
各燃料集合体6は、燃料ペレット30と燃料ペレット30を覆う被覆管31とを有する複数の燃料棒29と、複数の燃料棒29の被覆管31を束ねる図示しないグリッドとを含む。燃料集合体6の内部は減速材(冷却材)33で満たされると共に、複数の制御棒34および炉内核計装35が挿入可能となるように構成されている。燃料棒29は、円柱形状となる複数の燃料ペレット30を軸方向に並べて配設し、その外側が被覆管31によって覆われている。
【0014】
燃料集合体6は、断面方形状に形成され、例えば、17×17のセル40で構成されている。そして、17×17のセル40のうち、24個のセル40には、それぞれ制御棒34が挿入され、集合体中心のセル40には、炉内核計装35が挿入される。このとき、制御棒34が挿入されるセル40を制御棒案内管、炉内核計装35が挿入されるセル40を計装案内管という。また、その他のセル40には、燃料棒29がそれぞれ挿入される。なお、燃料集合体6が沸騰水型軽水炉(BWR)に用いられる場合、燃料集合体6は、その外側がチャンネルボックスに覆われる。一方で、燃料集合体6が加圧水型軽水炉(PWR)に用いられる場合、燃料集合体6は、その外側が開放されている。そして、BWRの場合にはチャンネルボックスの外側に、PWRの場合には燃料集合体6の外側に、集合体間ギャップ32が存在する。
【0015】
(燃料集合体に生じる曲がりについて)
図3は、複数の燃料集合体の一部を模式的に示す説明図である。以下の説明では、適宜、燃料集合体6の軸方向を「Z方向」、軸方向と直交する一方向を「X方向」、X方向およびZ方向と直交する方向を「Y方向」と称する。図3に示すように、複数の燃料集合体6は、X方向およびY方向に沿って並んで配置されている。
【0016】
燃料集合体6には、曲がりが生じることがある。このとき、燃料集合体6は、図3に例示するように、X方向またはY方向に向けて凹凸を描くように湾曲する。その結果、隣り合う燃料集合体6同士のギャップGが変化することがある。そのように燃料集合体6同士のギャップGが変化すると、局所的に核分裂が促進され、局所的な出力が増加することがある。そのため、燃料集合体6の出力は、燃料集合体6に生じる曲がり(ギャップGの変化)の影響を受けることがある。本実施形態に係る解析装置10は、曲がりの影響を考慮しつつ、燃料集合体6の出力についての予測値を算出することで、燃料集合体6を評価する。なお、図3に示すように、本実施形態では、解析装置10は、燃料集合体6の曲がりが一次モードであると仮定して評価を行う。ただしそれに限られず、解析装置10は、燃料集合体6の曲がりが一次モード以外のモード(例えば二次モード又は三次モード)であると仮定して解析を行ってもよい。
【0017】
(解析装置)
解析装置10は、炉心特性を示すパラメータである熱流束熱水路係数Fを算出して、熱流束熱水路係数Fに基づいて燃料集合体6を評価する。熱流束熱水路係数Fは、燃料集合体6における局所的な出力の最大値を示すパラメータである。以下の説明では、適宜、熱流束熱水路係数Fを単に「係数F」と称する。
【0018】
図4は、本実施形態に係る解析装置の模式的なブロック図である。解析装置10は、本実施形態に係る解析方法を実行する装置である。図4に示すように、解析装置10は、入力部12と、表示部14と、記憶部16と、制御部18とを備える。なお、解析装置10は、単体の装置で構成してもよいし、他の装置と一体に構成してもよいし、演算装置及びデータサーバ等の各種装置を組み合わせたシステムとして構成してもよく、特に限定されない。
【0019】
入力部12は、例えばキーボード等の入力デバイスであり、解析装置10のユーザによる情報の入力を受け付ける。表示部14は、例えばモニタ等の表示デバイスであり、解析装置10による解析結果を表示する。記憶部16は、制御部18の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0020】
制御部18は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部18は、測定値取得部20と、予測値算出部22と、基準係数算出部24と、評価部26とを含む。制御部18は、記憶部16からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、測定値取得部20と予測値算出部22と基準係数算出部24と評価部26を実現して、その処理を実行する。なお、制御部18は、1つのCPUによって処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、測定値取得部20と予測値算出部22と基準係数算出部24と評価部26との少なくとも一部を、ハードウェア回路で実現してもよい。また、記憶部16が保存する制御部18用のプログラムは、解析装置10が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0021】
(測定値取得部)
測定値取得部20は、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の、曲がり量の測定値を取得する。第1期間の時間長さで運用された燃料集合体とは、第1期間の間、原子炉の運転に実際に用いられた燃料集合体を指す。すなわち、測定値取得部20は、運用開始から第1期間が経過した後の燃料集合体についての、曲がり量の実測値を取得する。例えば、任意の原子炉で第1期間の間運用された燃料集合体について、曲がり量が測定されて、測定値取得部20は、その測定された曲がり量の値を、曲がり量の測定値として取得する。ここでの曲がり量とは、例えば、図3に示すように、燃料集合体のZ方向の両端部における断面の中心点同士を結んだ直線AXと、燃料集合体のZ方向での所定位置における断面の中心点との間の距離Eを指してよい。本実施形態の例では、測定値取得部20は、燃料集合体のZ方向での中央位置P1と、中央位置P1よりも鉛直方向の上側に位置する上側位置P2とにおける、曲がり量の測定値を取得する。図3に示すように、例えば、中央位置P1における曲がり量は、直線AXと、中央位置P1における燃料集合体の断面の中心点との間の距離E1であり、上側位置P2における曲がり量は、直線AXと、上側位置P2における燃料集合体の断面の中心点との間の距離E2である。ただし、曲がり量は、上記のように測定されるものに限られず、燃料集合体の曲がり度合いを示す任意の指標であってよい。また、曲がり量を測定する位置は、中央位置P1と上側位置P2とに限られず、測定値取得部20は、任意の位置における曲がり量を取得してよい。
【0022】
測定値取得部20は、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を、任意の方法で取得してよい。例えば、測定値取得部20は、入力部12に入力された曲がり量の測定を取得してもよいし、図示しない通信部を介して、外部サーバなどから、曲がり量の測定を取得してもよい。なお、第1期間は任意の長さであってよいが、一般的な1サイクルの運用時間であることが好ましく、本実施形態の例では13カ月である。
【0023】
以降においては、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を、適宜、「曲がり量の測定値」と記載する。
【0024】
(予測値算出部)
予測値算出部22は、測定値取得部20が取得した曲がり量の測定値に基づいて、第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、第2期間経過後における曲がり係数FQBの予測値を算出する。第2期間の時間長さで運用される燃料集合体とは、第2期間の間、所定の原子炉での運転に用いられたと仮定した燃料集合体を指す。すなわち、測定値取得部20は、運用開始から第2期間が経過したと仮定した場合の、燃料集合体の曲がり係数FQBの予測値を算出する。第2期間とは、第1期間よりも長い任意の長さの期間であってよいが、本実施形態の例では18カ月である。曲がり係数FQBとは、曲がり量による、燃料集合体の出力への影響度合いを示す係数であり、曲がり量による係数Fへの影響度合いを示す係数といえる。なお、曲がり量の測定値の取得対象となった燃料集合体(第1期間後の曲がり量が測定された燃料集合体)と、第2期間経過後における曲がり係数FQBの予測値の算出対象となる燃料集合体とは、同じ設計がなされた物であることに限られないし、同じ原子炉で用いられるものにも限られない。
【0025】
図5は、曲がり係数の算出を説明するためのグラフである。本実施形態では、予測値算出部22は、曲がり量の測定値に基づいて、第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の曲がり量の予測値を算出する。本実施形態では、予測値算出部22は、曲がり量の測定値に基づいて、第2期間経過までの各時刻(第2期間が経過するまでの各タイミング)における曲がり量の予測値を算出する。なお、本実施形態における、第2期間が経過するまでの各タイミング(第2期間経過までの各時刻)は、第2期間が経過するまでの任意のタイミングであってよく、タイミングの数や、タイミング毎の周期(あるタイミングから次のタイミングまでの時間)は、任意であってよい。ただし、第2期間が経過するまでの各タイミングは、少なくとも、第2期間が経過したタイミングを含むことが好ましい。
【0026】
予測値算出部22は、曲がり量の測定値に基づいた任意の方法で、曲がり量の予測値を算出してもよいが、本実施形態では、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体が、第2期間まで、第1期間における曲がりの進行速度と同じ進行速度で曲がりが進行したと仮定して、曲がり量の予測値を算出する。より具体的には、本実施形態では、予測値算出部22は、曲がり量が第1期間の経過まで線形で変化したと仮定して、第1期間経過後の曲がり量の測定値に基づき、曲がり量の単位時間当たりの変化量を算出する。そして、予測値算出部22は、曲がり量が第2期間の経過まで線形で変化したと仮定して、曲がり量の単位時間当たりの変化量に基づいて、第2期間経過後における曲がり量の予測値を算出する。図5を例にすると、予測値算出部22は、横軸を運用期間として縦軸を中央位置P1での曲がり量とした場合における、時刻t0(運用開始タイミング)での曲がり量と時刻t1(第1期間が経過したタイミング)での曲がり量とを結ぶ直線L1の傾きを算出する。そして、予測値算出部22は、直線L1を第2時刻t2(第2期間が経過したタイミング)まで延長した直線LA1における各時刻における縦軸の値を、時刻t2までの各時刻における中央位置P1での曲がり量の予測値として算出する。なお、直線L2、LA2は、上側位置P2における曲がり量の測定値と予測値との例を示している。
【0027】
このように、本実施形態においては、曲がり量が線形に増加すると仮定して、第2期間経過後における曲がり量の予測値を算出するが、それに限られない。例えば、第1期間が経過するまでの曲がり量を逐次計測しておき、それに基づき、曲がり量の単位時間当たりの変化量を、時間帯毎に算出して、時間帯毎の曲がり量の単位時間当たりの変化量に基づき、第2期間経過後における曲がり量の予測値を算出してもよい。
【0028】
予測値算出部22は、第2期間経過後における曲がり量の予測値に基づき、第2期間経過後における、隣り合う燃料集合体とのギャップG(ギャップ量)の予測値を算出する。本実施形態では、予測値算出部22は、第2期間経過までの各時刻における曲がり量の予測値に基づき、第2期間経過までの各時刻におけるギャップGの予測値を算出する。なお、予測値算出部22は、曲がり量とギャップGとの対応関係を示す既知の計算コードを用いて、曲がり量の予測値に基づき、ギャップGの予測値を算出する。
【0029】
図6は、曲がり係数の予測値の算出を説明するためのグラフである。予測値算出部22は、第2期間経過後におけるギャップGの予測値に基づき、第2期間経過後における曲がり係数FQBの予測値を算出する。本実施形態では、予測値算出部22は、第2期間経過までの各時刻におけるギャップGの予測値に基づき、第2期間経過までの各時刻における曲がり係数FQBの予測値を算出する。図6の線LB1は、中央位置P1における曲がり係数FQBの予測値の一例を示しており、図6の線LB2は、上側位置P2における曲がり係数FQBの予測値の一例を示している。なお、予測値算出部22は、ギャップGと曲がり係数FQBとの対応関係を示す既知の計算コードを用いて、ギャップGの予測値に基づき、曲がり係数FQBの予測値を算出する。
【0030】
本実施形態では、予測値算出部22は、燃料集合体の曲がりが一次モードであると仮定して、曲がり係数FQBの予測値を算出する。ただし、予測値算出部22は、燃料集合体の曲がりモードを設定して、設定した曲がりモードにおける曲がり係数FQBの予測値を算出してもよい。予測値算出部22による曲がりモードの設定方法は任意であってよいが、例えば、解析対象となる燃料集合体の設計データに基づいて、曲がりモードを設定してもよい。この場合、予測値算出部22は、所定期間以上実際に運用された燃料集合体のうちで、解析対象となる燃料集合体の設計データとの類似度が閾値以上となる燃料集合体の実際の曲がりモードを、解析対象となる燃料集合体の曲がりモードに設定してよい。ここでの設計データとは、燃料集合体の特性の設計値を指し、例えば、燃料集合体の燃料濃縮度と、燃料集合体の長さと、燃料集合体の炉心内での設置位置との少なくとも1つなどが挙げられる。また、設計データの類似度についての閾値は、適宜設定されてよい。
【0031】
(基準係数算出部)
図7は、基準係数の予測値の算出を説明するためのグラフである。基準係数算出部24は、曲がり量を考慮しない場合の、燃料集合体の第2期間経過後における出力を示す基準係数FQZの予測値を算出する。基準係数FQZは、曲がり量をゼロとした場合における係数Fを指すともいえる。本実施形態では、基準係数算出部24は、第2期間経過までの各時刻における基準係数FQZの予測値を算出する。図7の線LC1は、中央位置P1における基準係数FQZの予測値の一例を示しており、図7の線LC2は、上側位置P2における基準係数FQZの予測値の一例を示している。なお、基準係数算出部24は、運用期間と基準係数FQZとの対応関係を示す既知の計算コードを用いて、運用期間に基づき、基準係数FQZの予測値を算出する。
【0032】
(評価部)
図8は、燃料集合体の評価を説明するためのグラフである。評価部26は、第2期間経過後における曲がり係数FQBの予測値に基づいて、第2期間の時間長さで運用される予定の燃料集合体を評価する。本実施形態では、評価部26は、第2期間経過までの各時刻における曲がり係数FQBの予測値に基づいて、第2期間の時間長さで運用される予定の燃料集合体を評価する。
【0033】
具体的には、評価部26は、基準係数FQZの予測値と曲がり係数FQBの予測値とに基づいて、係数Fの予測値を算出して、係数Fの予測値に基づいて、燃料集合体を評価する。本実施形態では、評価部26は、同じ時刻における、基準係数FQZの予測値と曲がり係数FQBの予測値を乗じた値を、その時刻における係数Fの予測値として算出する。評価部26は、第2期間経過までの各時刻における係数Fの予測値を算出する。そして、評価部26は、第2期間経過までの各時刻における係数Fの予測値が、閾値TH以下であるかを判断する。第2期間経過までの各時刻における係数Fの予測値の全てが閾値TH以下である場合には、評価部26は、その燃料集合体の設計(設計データ)が適切であると判断する。一方、第2期間経過までの各時刻における係数Fの予測値の少なくとも1つが閾値THより高い場合には、評価部26は、その燃料集合体の設計(設計データ)が不適切であると判断する。なお、図8の線LD1は、中央位置P1における係数Fの予測値の一例を示しており、図8の線LD2は、上側位置P2における係数Fの予測値の一例を示している。このようにZ方向での異なる位置で係数Fの予測値を算出する場合には、評価部26は、それぞれの位置において、係数Fの予測値が閾値TH以下であるかを判断する。そして、位置毎の係数Fの予測値のうちで閾値THより高いものがある場合には、評価部26は、その燃料集合体の設計(設計データ)が不適切であると判断する。なお、閾値THは、任意に設定してよい。
【0034】
評価部26は、燃料集合体についての評価結果を、表示部14に表示させてよい。例えば、評価部26は、燃料集合体の設計が不適切であると判断した場合には、設計が不適切である旨の情報を表示部14に表示させて、燃料集合体の設計が適切であると判断した場合には、設計が適切である旨の情報を表示部14に表示させてよい。
【0035】
ユーザは、燃料集合体の設計が不適切であると判断された場合に、燃料集合体の設計データを更新してよい。そして、設計データが更新された燃料集合体について、解析装置10により、上述と同様の方法で評価を行ってもよい。また、燃料集合体の設計が不適切であると判断された場合には、解析装置10が、自動で燃料集合体の設計データを更新してよい。この場合例えば、解析装置10は、設計が不適切と判断した燃料集合体についての係数Fの予測値に基づいて、例えば係数Fの予測値が低くなるように、燃料集合体の設計データを更新してよい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る解析装置10は、第1期間経過後の燃料集合体の曲がり量の測定値から、第1期間より長い第2期間経過後の燃料集合体の曲がり係数FQBの予測値を算出して、それに基づき、第2期間の時間長さで運用される予定の燃料集合体を評価する。本実施形態によると、第1期間経過後の曲がり量の実測値から、第2期間経過後の曲がり量が出力に与える影響度合い(曲がり係数FQB)を予測して、それに基づき第2期間で運用される予定の燃料集合体を評価する。従って、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を、運用前に適切に評価することができる。
【0037】
(処理フロー)
次に、解析装置10による処理の処理フローを説明する。図9は、本実施形態に係る解析装置の処理フローを説明するフローチャートである。図9に示すように、解析装置10は、測定値取得部20により、運用開始から第1期間が経過した後の燃料集合体の、曲がり量の測定値を取得し(ステップS10)、予測値算出部22により、取得した曲がり量の測定値に基づき、運用開始から第2期間経過までの各タイミングにおける、燃料集合体の曲がり量の予測値を算出する(ステップS12)。予測値算出部22は、曲がり量の予測値に基づき、第2期間経過までの各タイミングにおける燃料集合体のギャップの予測値を算出し(ステップS14)、ギャップの予測値に基づき、第2期間経過までの各タイミングにおける燃料集合体の曲がり係数FQBの予測値を算出する(ステップS16)。また、解析装置10は、基準係数算出部24により、曲がり量を考慮しない場合の、運用開始から第2期間経過までの各タイミングにおける燃料集合体の基準係数FQZの予測値を算出する(ステップS18)。なお、ステップS18と、ステップS10~S16との実施順序は任意であってよい。
【0038】
予測値算出部22は、曲がり係数FQBの予測値と、基準係数FQZの予測値とに基づき、第2期間経過までの各タイミングにおける燃料集合体の係数Fの予測値を算出して(ステップS20)、評価部26により、係数Fの予測値に基づいて、燃料集合体を評価する(ステップS22)。
【0039】
(効果)
本開示の第1態様に係る解析方法は、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を取得するステップと、曲がり量の測定値に基づいて、第1期間より長い第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり量による出力への影響度合いを示す曲がり係数FQBの予測値を算出するステップと、曲がり係数FQBの予測値に基づいて、第2期間の時間長さで運用される燃料集合体を評価するステップと、を含む。本開示によると、第1期間経過後の曲がり量の実測値から、第2期間経過までの曲がり量が出力に与える影響度合い(曲がり係数FQB)を予測して、それに基づき第2期間で運用される予定の燃料集合体を評価する。従って、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を、運用前に適切に評価することができる。
【0040】
本開示の第2態様に係る解析方法は、第1態様に係る解析方法であって、曲がり係数FQBの予測値を算出するステップにおいては、曲がり量の測定値に基づいて、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける燃料集合体の曲がり量の予測値を算出し、曲がり量の予測値に基づき、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける、隣り合う燃料集合体とのギャップ量の予測値を算出し、ギャップ量の予測値に基づき、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり係数FQBの予測値を算出する。本開示によると、第1期間経過後の曲がり量の実測値から第2期間経過までの曲がり量を予測し、それに基づき曲がり係数FQBを予測するため、第2期間経過までの曲がり係数Fを高精度に予測して、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を適切に評価できる。
【0041】
本開示の第3態様に係る解析方法は、第2態様に係る解析方法であって、曲がり係数FQBの予測値を算出するステップにおいては、曲がり量の測定値に基づいて、曲がり量が第1期間の経過まで線形で変化したと仮定した場合の、曲がり量の単位時間当たりの変化量を算出し、曲がり量が第2期間の経過まで線形で変化したと仮定して、単位時間当たりの変化量に基づいて、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける燃料集合体の曲がり量の予測値を算出する、本開示によると、第1期間経過後の曲がり量の実測値から第2期間経過までの曲がり量を予測する際に、曲がり量が線形に変化すると仮定するため、曲がり量を安全側に評価して、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を適切に評価できる。
【0042】
本開示の第4態様に係る解析方法は、第1態様から第3態様のいずれかに係る解析方法であって、曲がり量を考慮しない場合の、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける出力を示す基準係数FQZを算出するステップをさらに含み、燃料集合体を評価するステップにおいては、基準係数FQZと曲がり係数FQBとに基づいて算出される熱流束熱水路係数Fに基づいて、第2期間の時間長さで運用される燃料集合体を評価する。本開示によると、熱流束熱水路係数Fに基づいて燃料集合体を評価するため、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を適切に評価できる。
【0043】
本開示の第5態様に係る解析方法は、第4態様に係る解析方法であって、燃料集合体を評価するステップにおいては、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける熱流束熱水路係数Fのそれぞれが、閾値TH以下である場合には、その燃料集合体の設計が適切であると評価し、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける熱流束熱水路係数Fの少なくとも1つが、閾値THより高い場合には、その燃料集合体の設計が不適切であると評価する。本開示によると、タイミング毎の熱流束熱水路係数Fに基づいて燃料集合体を評価するため、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を適切に評価できる。
【0044】
本開示の第6態様に係る解析方法は、第5態様に係る解析方法であって、燃料集合体を評価するステップにおいては、燃料集合体の設計が不適切であると評価された場合に、燃料集合体を再設計するステップを更に含む。本開示によると、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を、出力が過大とならないように設計することが可能となる。
【0045】
本開示の第7態様に係るプログラムは、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を取得するステップと、曲がり量の測定値に基づいて、第1期間より長い第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり量による出力への影響度合いを示す曲がり係数FQBの予測値を算出するステップと、曲がり係数FQBの予測値に基づいて、第2期間の時間長さで運用される燃料集合体を評価するステップと、をコンピュータに実行させる。本開示によると、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を、運用前に適切に評価することができる。
【0046】
本開示の第8態様に係る解析装置10は、第1期間の時間長さで運用された燃料集合体の曲がり量の測定値を取得する測定値取得部20と、曲がり量の測定値に基づいて、第1期間より長い第2期間の時間長さで運用される燃料集合体の、第2期間が経過するまでの各タイミングにおける曲がり量による出力への影響度合いを示す曲がり係数FQBの予測値を算出する予測値算出部22と、曲がり係数FQBの予測値に基づいて、第2期間の時間長さで運用される燃料集合体を評価する評価部26と、を含む。本開示によると、運用時間を延ばす予定の燃料集合体を、運用前に適切に評価することができる。
【0047】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
10 解析装置
20 測定値取得部
22 予測値算出部
24 基準係数算出部
26 評価部
係数(熱流束熱水路係数)
QB 曲がり係数
QZ 基準係数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9