(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175451
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】微粒子製造装置及び微粒子製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20231205BHJP
C23C 14/00 20060101ALI20231205BHJP
H05H 1/42 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B01J19/08 K
C23C14/00 A
H05H1/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087892
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】永井 久雄
(72)【発明者】
【氏名】小岩崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】丸山 大貴
【テーマコード(参考)】
2G084
4G075
4K029
【Fターム(参考)】
2G084AA15
2G084BB12
2G084BB14
2G084CC09
2G084CC23
2G084CC33
2G084DD12
2G084DD25
2G084DD67
2G084FF04
2G084FF33
2G084FF36
2G084FF38
4G075AA27
4G075AA62
4G075BA06
4G075BB02
4G075BB08
4G075CA02
4G075CA03
4G075CA17
4G075CA48
4G075CA65
4G075DA02
4G075EC01
4G075EC21
4G075ED13
4G075FB02
4G075FB06
4G075FC02
4K029BA48
4K029CA03
4K029DA04
4K029DB15
4K029DD06
(57)【要約】
【課題】少量の反応性ガスでも、材料の反応(酸化など)を高精度に制御し、製造される材料の組成比バラツキを低減させて、高品質な微粒子を製造できる微粒子製造装置を提供する。
【解決手段】微粒子製造装置は、真空チャンバーと、真空チャンバーの一端側に接続されて、材料の粒子を真空チャンバー内に材料供給口から供給する材料供給装置と、真空チャンバーに熱プラズマを発生させるプラズマ源と、真空チャンバーの他端側に接続されて微粒子を回収する回収装置と、を備え、真空チャンバー内で熱プラズマを発生させ、材料の粒子から微粒子を製造する微粒子製造装置であって、材料供給口から回収装置までの間にガスを供給する、ガス供給機構をさらに有し、ガス供給機構には、ガスを間欠供給できる電磁弁を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバーと、
前記真空チャンバーの一端側に接続されて、材料の粒子を前記真空チャンバー内に材料供給口から供給する材料供給装置と、
前記真空チャンバーに熱プラズマを発生させるプラズマ源と、
前記真空チャンバーの他端側に接続されて微粒子を回収する回収装置と、
を備え、
前記真空チャンバー内で熱プラズマを発生させ、前記材料の粒子から前記微粒子を製造する微粒子製造装置であって、
前記材料供給口から前記回収装置までの間にガスを供給する、ガス供給機構をさらに有し、
前記ガス供給機構には、前記ガスを間欠供給できる電磁弁を有する、微粒子製造装置。
【請求項2】
前記ガス供給機構により前記ガスを間欠供給する場所は、前記熱プラズマが発生する領域よりも前記材料が流れる下流側に位置し、前記熱プラズマを発生させる領域と同じ径の壁を有する、請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項3】
前記プラズマ源は、前記真空チャンバーの中間部に接続された複数の電極からなり、前記複数の電極には、其々交流電源が接続されて、前記交流電源から前記複数の電極に、位相が互いに異なる交流電力をそれぞれ印加してアーク放電を前記熱プラズマとして前記真空チャンバー内に生成する、請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項4】
前記ガスを間欠供給するための前記電磁弁は、複数の反応性ガス供給口とそれぞれの供給口に設置し、前記電磁弁には、それぞれ制御機構に接続されており、前記ガスの間欠供給するタイミングを前記交流電源からの信号を基に制御する機構を有する、請求項3に記載の微粒子製造装置。
【請求項5】
前記ガスを間欠供給するための前記電磁弁は、複数の反応性ガス供給口とそれぞれの供給口に設置し、前記電磁弁には、それぞれ制御機構に接続されており、前記ガスの間欠供給するタイミングを調整する機構を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の微粒子製造装置。
【請求項6】
熱プラズマを生成するステップと、
材料供給装置の材料供給口から前記熱プラズマの領域内に材料粒子を供給するステップと、
前記材料粒子が、前記熱プラズマの前記領域内を通過するときに、蒸発又は気化し、さらに、前記気化した材料が前記熱プラズマの前記領域から抜けると、前記気化した材料は冷やされて微粒子を生成するステップと、
を含む、微粒子製造方法であって、
前記熱プラズマよりも前記材料が流れる下流域に、間欠的にガスを供給する、微粒子製造方法。
【請求項7】
前記熱プラズマよりも下流域に供給する前記ガスは、前記材料の流れの方向を軸として円周上に配置された複数の供給口から導入され、各供給口ごとに別々のタイミングで前記ガスを供給する、請求項6に記載の微粒子製造方法。
【請求項8】
前記熱プラズマは、位相が互いに異なる電力を交流電源から複数の電極に其々供給して、パルス的に放電させるアーク放電である、請求項6又は7に記載の微粒子製造方法。
【請求項9】
前記ガスは、前記複数の電極からの信号を基に間欠供給するタイミングを制御する、請求項8に記載の微粒子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、リチウムイオン電池の活物質材料、食品包装のフィルム材などへのコーティング材、又は電子機器配線用インク材料や抗菌・抗ウィルス材料などに利用される、微粒子製造装置及び微粒子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノメートルオーダーの微粒子は、様々なデバイスに応用が検討されている。例えばニッケルの金属微粒子は、現在、セラミックコンデンサに使用されており、次世代のセラミックコンデンサには、粒径100ナノメートル以下で分散性の良い微粒子の使用が検討されている。
【0003】
さらに、二酸化シリコンよりも酸化数の低い一酸化シリコン(SiOx:x=1~1.6)は、亜酸化ケイ素とも呼ばれ、光学レンズの反射防止膜又は食品包装用のガスバリアフィルムの蒸着材料として活用されている。最近では、リチウムイオン二次電池の負極活物質材料などへの応用が期待されている。また、酸化銅(CuO)よりも酸化数の少ない亜酸化銅(Cu2O)は、スマートフォンなどに用いられる電子回路基板の微細配線用のナノインク材料や短波長の光を吸収する透過型太陽電池の材料に活用されている。最近では、コロナウィルスなどのウィルスを不活性化する作用があるため、従来よく使用されている銀ナノ粒子に代わる安全で安価な抗菌・抗ウィルス材料として、活用が検討されている。
【0004】
また、TiOやTi2O3などに代表される低次酸化チタン(TiOx:0<x<2)は、その酸化数により様々な使用が検討されている。例えば、0.2<x<1.95で、カーボンブラックを代替可能な無機黒色顔料として、x=1.75付近で導電性塗料として、1<x<2で二次電池電極材料として、1.5<x<1.95で可視光応答触媒への使用が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これら亜酸化材料や低次酸化チタンなどの材料の組成比を制御した材料は、機能性材料として注目されている。
【0005】
これらナノメートルオーダーの微粒子の一般的な製造方法としては、原料となるバルク材をセラミック又はジルコニア等のビーズと一緒に導入し、機械的粉砕によって材料を微粒子化する方法、又は、材料を溶融及び蒸発させて空気又は水に噴射して微粒子を得る方法、又は、電解若しくは還元など化学的に微粒子を得る方法などがある。中でも、高周波放電、直流、又は交流アーク放電などの熱プラズマ(約10000℃)を利用し、気相中で原料を蒸発させ、急冷することで微粒子を作製する方法は、不純物(コンタミネーション)が少なく、生産された微粒子の分散性が優れる、及び、複数の種類の材料からなる複合微粒子の合成が容易である、などの観点から非常に有用である。
【0006】
図5に、従来例1の熱プラズマを利用した、微粒子の製造装置の概略断面図を示す。
図5に示すように、反応室101には、材料供給装置110と、アーク放電を生成する複数本の電極104と、生成した微粒子118を回収する微粒子回収部103、反応室101にガスを供給するガス供給管(図示せず)と圧力を調整するバルブ及びガスを排気するポンプ113とを備えた構成をしている。ガス供給管からアルゴンガスを反応室101に導入し、圧力を調整した後、複数の交流電源105から交流電力を複数本の電極104に印加することで熱プラズマ116を生成する。生成した熱プラズマ116に鉛直下方向から材料供給装置110内の材料粒子117をキャリアガスと一緒に導入する。導入した材料粒子117は、熱プラズマ116によって蒸発及び気化し、反応室101の上部で急冷及び凝固して微粒子118を生成する。生成された微粒子118は、反応室101内のガス流れに乗って、微粒子回収部103に導入され、微粒子回収部103内のフィルタによって回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開特許番号WO2010/104141Al
【特許文献2】特開2004-263257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に記載したように、機能性材料である亜酸化材料や低次酸化チタンなどのナノ粒子を作製するには、ナノ粒子作製時の酸素ガスの導入場所・流量制御が非常に重要になる。従来例1の微粒子製造装置を用いて亜酸化材料などを作製する場合、ナノ粒子の形成領域に反応性ガスである酸素ガスを導入し、導入した材料を反応させる必要がある。酸素ガスを電極104よりガス流れの上流(装置下部)から導入した場合、少量の酸素ガスでも比較的容易に熱プラズマ116の内部まで酸素ガスを導入でき、作製するナノ粒子の酸化度(組成比制御)は、酸素ガスの流量によって制御できる。しかしながら、ガス流れの上流から酸素ガスを導入することによって、熱プラズマ116は不安定になる。また導入した酸素ガスによって、タングステンなどの高融点金属から作製されている電極104を酸化させ、融点が低下することで電極材料が蒸発してしまい、著しく電極を消耗してしまう。さらには、蒸発した電極材料が、不純物・コンタミネーションとして、製品であるナノ粒子に混入してしまうという課題が生じる。
【0009】
一方、酸素ガスを電極104よりもガス流れの下流側(装置の上部)に導入する場合、熱プラズマ116を発生させる電極104の酸化は抑制でき、電極材料起因の不純物混入を低減することができる。しかしながら、作製する材料の酸化度を制御するため少量の酸素ガスを導入する場合、10000℃程度の熱プラズマ116の強い上昇気流に阻まれ、酸素ガスを熱プラズマ116の内部まで導入することができない。そのため、熱プラズマ116の外側を通過した材料は酸素ガスと反応し、酸化するが、熱プラズマ116の内側には、酸素ガスが少ないため、材料との酸化反応が起こりにくい。そのため、熱プラズマの外部で生成されたナノ粒子と内部で生成されたナノ粒子とでは、組成比割合(酸化度)にバラツキを生じてしまい、品質の低下を招くという課題があった。
【0010】
本開示は、上述された従来の課題を考慮し、少量の反応性ガスでも、材料の反応(酸化など)を高精度に制御し、製造される材料の組成比バラツキを低減させることで高品質な微粒子を製造できる微粒子製造装置及び微粒子製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本開示の1の態様に係る微粒子製造装置は、真空チャンバーと、真空チャンバーの一端側に接続されて、材料の粒子を真空チャンバー内に材料供給口から供給する材料供給装置と、真空チャンバーに熱プラズマを発生させるプラズマ源と、真空チャンバーの他端側に接続されて微粒子を回収する回収装置と、を備え、真空チャンバー内で熱プラズマを発生させ、材料の粒子から微粒子を製造する微粒子製造装置であって、材料供給口から回収装置までの間に、ガスを供給する、ガス供給機構をさらに有し、反応性ガス供給機構には、ガスを間欠供給できる電磁弁を有する。
【0012】
前記目的を達成するために、本開示の別の態様に係る微粒子製造方法は、熱プラズマを生成するステップと、材料供給装置の材料供給口から熱プラズマの領域内に材料粒子を供給し、材料粒子が、熱プラズマの領域内を通過するときに、蒸発又は気化し、さらに、気化した材料が熱プラズマの領域から抜けると、気化した材料は冷やされて微粒子を生成するステップと、を含む、微粒子製造方法であって、熱プラズマよりも材料が流れる下流域に、間欠的に反応性ガスを供給する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の前記態様によって、電磁弁によってガスを間欠供給することにより、ガス量を高精度で制御でき、少ないガス流量においても熱プラズマの内部までガスを到達させることができる。これにより、材料とガスとの反応を均一化できバラツキを少なくすることができるため、作製するナノ粒子の組成比を高精度に制御できる微粒子製造装置及び微粒子製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係る微粒子製造装置の断面構造を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る微粒子製造装置のガス導入領域の平面図である。
【
図3】多相交流アークプラズマの、ある瞬間の放電の様子の模式図である。
【
図4】実施の形態2に係る微粒子製造装置の断面構造を示す断面図である。
【
図5】従来例1の微粒子製造装置の断面構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の態様に係る微粒子製造装置は、真空チャンバーと、真空チャンバーの一端側に接続されて、材料の粒子を前記真空チャンバー内に材料供給口から供給する材料供給装置と、真空チャンバーに熱プラズマを発生させるプラズマ源と、真空チャンバーの他端側に接続されて微粒子を回収する回収装置と、を備え、真空チャンバー内で熱プラズマを発生させ、材料の粒子から微粒子を製造する微粒子製造装置であって、材料供給口から回収装置までの間にガスを供給する、ガス供給機構をさらに有し、ガス供給機構には、ガスを間欠供給できる電磁弁を有する。
【0016】
第2の態様に係る微粒子製造装置は、上記第1の態様において、ガス供給機構によりガスを間欠供給する場所は、熱プラズマが発生する領域よりも材料が流れる下流側に位置し、熱プラズマを発生させる領域と同じ径の壁を有してもよい。
【0017】
第3の態様に係る微粒子製造装置は、上記第1又は第2の態様において、プラズマ源は、真空チャンバーの中間部に接続された複数の電極からなり、複数の電極には、其々交流電源が接続されて、交流電源から複数の電極に、位相が互いに異なる交流電力をそれぞれ印加してアーク放電を熱プラズマとして真空チャンバー内に生成してもよい。
【0018】
第4の態様に係る微粒子製造装置は、上記第3の態様において、ガスを間欠供給するための電磁弁は、複数の反応性ガス供給口とそれぞれの供給口に設置し、電磁弁には、それぞれ制御機構に接続されており、ガスの間欠供給するタイミングを交流電源からの信号を基に制御する機構を有してもよい。
【0019】
第5の態様に係る微粒子製造装置は、上記第1から第3のいずれかの態様において、ガスを間欠供給するための電磁弁は、複数の反応性ガス供給口とそれぞれの供給口に設置し、電磁弁には、それぞれ制御機構に接続されており、ガスの間欠供給するタイミングを調整する機構を有してもよい。
【0020】
第6の態様に係る微粒子製造方法は、熱プラズマを生成するステップと、材料供給装置の材料供給口から熱プラズマの領域内に材料粒子を供給するステップと、材料粒子が、熱プラズマの領域内を通過するときに、蒸発又は気化し、さらに、気化した材料が熱プラズマの領域から抜けると、気化した材料は冷やされて微粒子を生成するステップと、を含む、微粒子製造方法であって、熱プラズマよりも材料が流れる下流域に、間欠的にガスを供給する。
【0021】
第7の態様に係る微粒子製造方法は、上記第6の態様において、熱プラズマよりも下流域に供給するガスは、材料の流れの方向を軸として円周上に配置された複数の供給口から導入され、各供給口ごとに別々のタイミングでガスを供給してもよい。
【0022】
第8の態様に係る微粒子製造方法は、上記第6又は第7の態様において、熱プラズマは、位相が互いに異なる電力を交流電源から複数の電極に其々供給して、パルス的に放電させるアーク放電であってもよい。
【0023】
第9の態様に係る微粒子製造方法は、上記第8の態様において、ガスは、複数の電極からの信号を基に間欠供給するタイミングを制御してもよい。
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、実施の形態に係る微粒子製造装置について詳細に説明する。なお、図面において、実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0025】
(実施の形態1)
<微粒子製造装置>
図1は、実施の形態1に係る微粒子製造装置の概略断面図を示す。
図2は、実施の形態1に係る微粒子製造装置においてガス導入部分を横方向に切断した状態での平面図を示す。
図3は、実施の形態1に係る微粒子製造装置を上部からハイスピードカメラで観測した、ある瞬間の多相交流アークプラズマの様子を模式化した図を示す。また、便宜上、鉛直上方をZ方向、これに垂直な水平面内をXY平面として、紙面右側に向かう方向をX方向、紙面手前から奥に向かう方向をY方向として示している。
図1~3を用いて、一例として、TiOやTi
2O
3などに代表される低次酸化チタン(TiOx:0<x<2)のナノメートルオーダーの微粒子を製造する例を説明する。
【0026】
実施の形態1に係る微粒子製造装置は、少なくとも、真空チャンバーの一例としての反応室1と、材料供給装置10と、熱プラズマ16を生成する複数本の電極4と、生成した微粒子18を回収する回収装置の一例としての微粒子回収部3と、を備えて、反応室1内で熱プラズマ16を発生させ、材料粒子17から微粒子18を製造する。
【0027】
さらに、実施の形態1に係る微粒子製造装置では、前記構成に加えて、材料供給管11と、材料粒子17及び材料が気化した原料ガスの流れを制御する放電ガス供給管14と、気化した材料と反応させるガスや気化した材料を冷却するガス供給管15とが設置されている。また、微粒子回収部3の後段には、圧力調整バルブ6と、排気ポンプ7とを設けて、反応室1内の圧力を調整できる構成になっている。
【0028】
以下、微粒子製造装置の構成について、詳細に説明する。
【0029】
<材料供給装置>
材料供給装置10は、反応室1の底部下方に配置されて、材料供給管11の上端の材料供給口12からキャリアガスによって材料粒子17を反応室1内に上向き(Z方向)に供給している。
【0030】
<反応室(真空チャンバー)>
反応室(真空チャンバー)1の側壁には、図示していないが水冷機構を有している。さらに、反応室1の側壁の内面は、熱プラズマ16の熱を保持するため、炭素材料からなる円筒状の断熱部材2で覆われた構造になっている。断熱部材2の具体的な1つの実施例としては、断熱部材2の材料として炭素系材料を使用することができるが、作製する微粒子の種類又は使用するデバイスの種類によって、不純物が入りにくい材料(たとえば、セラミック系材料や石英材料など)を使用してもよい。
【0031】
<放電ガス供給管>
放電ガス供給管14は、反応室1の下側の複数の放電ガス供給管であって、断熱部材2の下側に、反応室1の中央向きに放電ガス供給可能で反応室1の中心軸周りに所定間隔毎に放射状に配置されている。具体的には、各放電ガス供給管14は、材料供給口12よりも反応室1の下部側に開口が配置され、ガス供給装置30からガス流量調整器31を介して、放電ガスを供給している。例えば、放電ガス供給管14は、
図1に示すように、水平面から鉛直上向きに方向に噴出させる構造になっているが、これに限られるものではなく、例えば、直上向き30°で、かつ、水平面内で半径方向に対して45°にしてもよい。こうすることで、旋回流を発生させ、熱プラズマの形状を変化させたり、導入した材料粒子17の流れ方を制御することができ、材料の処理効率を調整することができる。
【0032】
<ガス供給管>
ガス供給管15は、熱プラズマ16を生成するための電極4よりも下流側(装置上部)で断熱部材2の間に設置し、反応室1の中央向き、かつ、上向き(Z方向)に反応性ガスを供給可能に反応室1の中心軸周りに所定間隔毎に放射状に配置されている。このような配置にすることで、プラズマガスよりも軽い反応性ガスは、電極よりも下流側(上部)に流れ、反応性ガスと電極との反応を低減することができる。具体的には、
図2の平面図に示すように各ガス供給管15は、それぞれの電極4の上方部に配置し、電磁弁32及びガス流量調整器31を介して、反応性ガスを間欠的にガス導入している。また、ガス供給管15は、断熱部材2の間からガス供給している。つまり、電極4近傍の放電領域と同等の空間径の部分に反応性ガスを導入し、反応領域での熱プラズマ16の温度を下げないようにしている。反応性ガス導入領域の空間径を大きくすると、ガス流速が遅くなり熱プラズマ16の温度が低下する。反応領域の温度が低下すると、蒸発した材料と反応ガスとの反応速度が遅くなったり、反応しなくなるため、蒸発した材料と反応ガスとを反応させるため、熱プラズマ16に反応ガスが衝突する反応領域の温度を下げないようにしている。例えば、ガス供給管15は、
図2に示すように、放射状に配置され、中心軸方向かつ直上向き30°で、6か所から反応性ガスを噴出させる構造になっているが、これに限られるものではなく、電極4の間にガス供給管15を追加設置してもよい。また、ガス供給管15の水平面からの角度は、例えば、0°~45°の範囲である。
【0033】
ガス供給管15に設置された電磁弁32は、例えば、各ガス供給管15に一つずつ電磁弁32を設置し、反応性ガスを間欠導入できる機構になっている。反応性ガスは、例えば、パルス的に導入してもよい。これにより、反応性ガス量を高精度に制御でき、さらに少ないガス流量でもパルスであるためガスの流れが強くなるので、熱プラズマ16の中央まで到達しやすくなる。同様に、アルゴン等の不活性ガスを供給した場合は、気化した材料を効率よく冷却することが可能になる。
また、各電磁弁32は、制御機構及び交流電源5-A~5-Fと接続されており、各反応性ガスをガス供給管15からガスを導入するタイミングは、交流電源5-A~5-Fからの信号や独自のタイミングで反応性ガスを噴出させることができる。つまり、後述するように、アーク放電は、複数の電極のうちの一部の電極間で生じており、いわゆる間欠放電によって熱プラズマを生成している(
図3)。アーク放電している領域では、ガスが膨張しているため、低いガス流速では導入することが困難である。そこで、アーク放電していない領域に反応性ガスを噴出させることによって、アーク放電していない領域を介して熱プラズマの中に反応性ガスを導入することができる。
また、例えば、電磁弁32の放射状に配置したガス供給管15を時計回りに順番に反応性ガスを供給することができる。これによって、螺旋状のガス流れを作ることで、材料粒子17と反応性ガスとの接触機会が増え、材料の反応性を制御できる。また、
図2に示すように放射状に配置されたガス供給管15に一つずつ電磁弁32を接続しているが、これに限られるものではなく、ガス配管のより上流側でガスを分岐される手前に電磁弁を1つ設けてもよい。
【0034】
<電極>
電極4に印加する交流電流は、変換回路に商用周波数の3相交流を印加すると、交流電源5-A~5-Fには、それぞれ60°の位相差を有した交流電流が印加される。交流電源5-A~5-Fで、電流調整を行い、各電極4に印加して、熱プラズマ16を生成する。
【0035】
熱プラズマ16を生成させる金属製の電極4は、作製する微粒子18の不純物として金属材料が混ざらないようにするため、図示はしていないが水冷及びシースガスを流して、金属電極の蒸発による消耗を低減させている。また、電極4の材料の一例として、TIG溶接の電極で使用されるような高融点金属であるタングステン電極に酸化ランタンを数%程度混ぜた材料を使用することができる。なお、電極は、上記材料に限定されるものではない。例えば、上記に代えて、タングステン又はタンタルなどの他の高融点金属、タングステンに酸化トリウム、酸化セリウム又は酸化イットリウムなどを数%混ぜた電極材料又は炭素材料で構成される電極を使用してもよい。
【0036】
電極4は、それぞれ独立するモータなどで構成される電極駆動装置8により、反応室1の中心に対して放射線方向に前後移動する可動式に構成している。電極駆動装置8としては、一例として、モータによりボールネジを正逆回転させて、ボールネジに螺合したナット部材に連結された電極4を軸方向に進退させるものである。
【0037】
<微粒子回収部>
微粒子回収部3は、反応室1の上端に接続されて配置され、排気ポンプ7により排気され、反応室1で生成された微粒子18を回収している。
【0038】
一例として前記実施の形態1では、6本の電極を放射状に配置した例を説明したが、電極数は、これに限られず、例えば、6の倍数であってもよい。このため、電極本数を増やしたり、又は、12本の電極を2段構造、さらに、3段以上の更なる多段化した電極配置にしてもよい。このような構成の電極により発生させるプラズマとして、例えば、多相交流アークプラズマがある。多相交流アークプラズマは、他の熱プラズマを発生させる方法に比べて電極配置の自由度が高いため、材料粒子17を蒸発させる熱プラズマ(アーク放電)16の大きさ又は形状を自由に設計することができる。そのため、多相交流アークプラズマとしては、縦長放電にしたり、平面的に面積の大きな放電にしたり、処理に合わせた任意の放電形状にすることができ、処理効率の向上又は処理量を増大させることが可能である。
【0039】
<微粒子製造方法>
実施の形態1に係る微粒子製造方法は、上記態様に係る微粒子製造装置を使用してもよい。この微粒子製造方法は、例えば、以下の3つのステップで構成されている。
(1)熱プラズマ16を生成するステップ。
(2)材料粒子17を熱プラズマ16に供給するステップ。
(3)微粒子18を生成するステップ。
【0040】
(1)まず、熱プラズマ16を生成するとき、反応室1内で、電極4に互いに位相が異なる交流電力をそれぞれに印加して、材料粒子17が流れる方向(すなわち、下から上)に向かって縦長の熱プラズマ16を生成する。その後、ガス供給管15から反応性ガス流量を調整し導入する。
【0041】
(2)次いで、材料粒子17を熱プラズマ16に供給するとき、材料供給装置10の材料供給口12からキャリアガスと共に熱プラズマ16の領域内に材料粒子17を供給する。
【0042】
(3)次いで、微粒子18を生成するとき、材料粒子17が、熱プラズマ16の領域中を通過するときに、蒸発又は気化して材料ガスとなる。材料ガスは、ガス供給管15から導入された反応ガスと反応する。さらに、材料ガスが熱プラズマ16の領域から抜けた瞬間、材料ガスが急激に冷やされることで、所望の組成比を有する微粒子18が合成される。
【0043】
以下、この微粒子製造方法について、実際に行う手順に沿って詳しく説明する。
【0044】
(1-1)始めに、反応室1と微粒子回収部3と材料供給装置10とを排気ポンプ7によって数10Paまで排気することで、大気の酸素や水分の影響を低減させる。
【0045】
(1-2)次に、ガス供給装置30からガス流量調整器31を介して、材料供給装置10と放電ガス供給管14に供給し、排気ポンプ7の前段に取付けた圧力調整バルブ6で反応室1内の圧力を調整する。
【0046】
この第1実施形態の1つの実施例では、TiOやTi2O3などに代表される低次酸化チタン(TiOx:0<x<2)の微粒子を製造させるため、反応室1内には、ガス供給装置30から放電ガス供給管14を介して不活性ガスであるアルゴンガスをそれぞれ供給して、反応室1内を、アルゴンの不活性ガス雰囲気の0.3気圧以上1.2気圧以下の所望の圧力に維持して、以下の微粒子製造工程を行った。
【0047】
(1-3)次に、熱プラズマ16(言い換えれば、アーク放電)を生成させる。熱プラズマ16を生成させる金属製の電極4は、
図1~
図2に示すように、反応室1内に先端が上方向に突出した状態で、反応室1の円周壁に60°間隔で6本、配置している。
【0048】
これらの電極4の隣り合うそれぞれの電極4には、位相をずらした交流電力を印加する。電極4の6本に、それぞれ位相を60°ずつずらした商用周波数である60Hzの交流電力を印加し、約10000℃の縦長の熱プラズマ16を生成する。
【0049】
熱プラズマ16を着火させるときには、任意の2本もしくは3本の電極4を電極駆動装置8により反応室1の中心側に移動させた後、前記交流電力を印加する。電極4を電極駆動装置8により反応室1の中心側に移動させることにより、電極4の傾斜角度が反応室1の中心軸に対して0°を越えて60°以下の範囲である本実施の形態1においても、熱プラズマ16の着火が容易になる。熱プラズマ16が着火後、其々電極4を放射線方向(放射状に配置した其々電極4の先端同士で形成される円の中心位置から外側に向かう方向)に電極駆動装置8により移動させ、電極4をそれぞれ所望の位置に設定し、其々電極4にかかる電流が一定になるように電源を調整する。
【0050】
図3は、実施の形態1に係る微粒子製造装置を上部からハイスピードカメラで観測したある瞬間の多相交流アークプラズマの様子を模式化した図を示す。
図3に示した黒い三角印「▲」は、
図1、2で示した電極4の先端部20を表し、電極4は、60°間隔に放射状に6本配置している。電極4、すなわち、電極(1)から電極(6)までに、交流電力をその位相を60°ずつずらしてそれぞれ印加することで、熱プラズマ16を平面方向に生成することができる。
図3で示す、ある瞬間のアーク放電領域は、分光分析によるガス温度計測の結果、5000度以上の高温領域を示し、最も高温な場所は10000℃を超えている。
図3の(a)に示すように、ある瞬間、電極(1)の先端部20から放電(1)が発生し、電極(4)の先端部20から放電(4)が発生し、次の瞬間(
図3の(b)参照)、電極(2)から放電(2)が発生し、電極(5)から放電(5)が順次発生する。このように電極(1)から時計回りに電極(6)までアーク放電(1)~(6)が順次発生し、また電極(1)へと繰り返し放電が発生する。その際、アーク放電(1)自体も電極4に対し左側から右側にスイングしながら、他の電極4からの放電と重なってアーク放電領域が大きくなり、次の瞬間には消えていく。この電極(1)から電極(6)までのアーク放電は商用周波数の60Hzで駆動しており、1周期は16.7msで繰り返しアーク放電16が発生する。
【0051】
反応性ガスである酸素ガスは、
図1に示すように電磁弁32を介してガス供給管15から反応室1内に間欠供給する。電磁弁32は、例えば、数ms~数秒単位でオン/オフを行って反応性ガスを間欠供給できる。反応性ガスを間欠供給することで、酸素ガス量を高精度に制御でき、同じガス量でもガス流速が強いため、アーク放電16の内部までガスを供給することができる。同様に、不活性ガスの供給の場合は、気化した材料を効率よく冷却することができる。さらに電磁弁32には、交流電源5-A~5-Fからの信号で酸素ガスの噴出を制御できるため、
図3に示したアーク放電が切れている領域に向け、タイミングよく酸素ガスを噴出することができる。具体的には、
図3の(a)の瞬間では、電極(2)、電極(5)においてアーク放電が切れている。
図3の(b)の瞬間では、電極(3)、電極(6)においてアーク放電が切れている。
図3の(c)の瞬間では、電極(1)、電極(4)においてアーク放電が切れている。つまり、60Hzでアーク放電する領域、及び、アーク放電が切れている領域が回っている。そこで、それぞれの瞬間ごとに、アーク放電の切れている領域の直上に設置した反応性ガス供給管15から順に酸素ガスを間欠導入することができる。なお、上記の例では、交流電源5-A~5-Fからの信号によってアーク放電の切れている領域を特定したが、これに限られず、観測によってアーク放電の切れている領域を特定してもよい。これにより、より少量の酸素ガス量でも、アーク放電が切れている領域からアーク放電16の内部まで導入でき、材料17と反応ガスとの反応を均一化することができ、作製するナノ粒子の組成バラツキを低減できる。この反応性ガスの流量制御により低次酸化チタン(TiOx:0<x<2)の酸化量を制御でき、所望の組成比率を有するナノ粒子を作製することができる。反応性ガスの一例として酸素ガスを使用したが、作製するナノ粒子によって、窒素ガス、アンモニア、二酸化窒素などの窒化系ガス、メタンやアセチレンなどの炭化系ガスや水素ガスを導入してもよい。また、それらの反応性ガスとアルゴンなどの不活性ガスとを混合させたガスを導入してもよい。
【0052】
(2-1)次に、処理する材料の供給を開始する。微粒子18の原料となる材料粒子17は、約10ミクロンメートルのチタン粉末を用い、材料供給装置10内に設置する。この実施の形態1では、10ミクロンメートルの粒子を使用しているが、これに限られない。例えば、プラズマ条件にも依存するが100ミクロン以下の粒子径であれば、熱プラズマ16にて蒸発し、ナノメートルオーダーの微粒子18を製造することは可能である。100ミクロンメートルより大きい粒子径の材料を使用すると、材料を完全に蒸発させることができず、生成される微粒子がミクロンメートルオーダーに大きくなってしまうことがある。
【0053】
材料供給装置10は、局部流動式の粉末供給装置を用いることができる。この局部流動式の粉末供給装置では、キャリアガスの流量と材料を導入した器の回転数とによって材料の供給量を制御して、粉末材料を一定の割合で材料供給管11に送ることができる。材料供給装置10の他の例としては、レーザーなどを用いて、粉末材料の表面とノズルの距離とを制御する表面倣い式粉末供給器、又は、ホッパーなどから溝に定量の粉末材料を供給して吸引する定量式粉末供給器などがある。どの方式の粉末材料供給装置を使用してもよいが、供給する粉末材料の量又は粉末材料の種類又は粒子径によって、粉末材料供給装置の方式を使い分ける。
【0054】
(2-2)
図1に示すように、材料粒子17は、材料供給装置10から材料供給管11に送られ、材料供給口12から反応室1内に導入される。
(3-1)反応室1内に導入された材料粒子17は、熱プラズマ16の中を通過するときに、蒸発及び気化して材料粒子17はガス化する。
【0055】
(3-2)最後に、
図1に示すように、熱プラズマ16により生成された微粒子18は、放電ガス供給管14からのガスの流れ、熱プラズマ16による上昇気流又はガスの排気による流れにより微粒子回収部3に運ばれる。図示していないが、微粒子回収部3には、任意の微粒子径以上を分級できるサイクロンと、所望の微粒子を回収できるバグフィルタとが取付けられている。また、回収した微粒子を大気に取出す際は、発火の恐れがあるため、大気(酸素を含んだ気体)を1%程度含んだ雰囲気下で数時間放置し、徐酸化処理を行い、大気中に取り出す。これにより、安全に取出すことが可能になる。これらの上記のプロセスにより、バグフィルタからは10以上100ナノメートル以下の組成比(x)の制御した低次酸化チタン(TiOx:0<x<2)微粒子を回収することができる。
【0056】
第1実施例では、TiOやTi2O3などに代表される低次酸化チタン(TiOx:0<x<2)のナノメートルオーダーの微粒子を製造する方法について説明したが、一酸化シリコン(SiOx:x=1~1.6)、窒化シリコン(SiNx:x=0.1~1.3)又は炭化シリコン(SiCx:x=0.1~1)などの反応性ガスによって酸化、窒化、炭化を制御した微粒子生成に使用できる。さらには、内側にシリコンの核を有し、外側には非晶質酸化シリコン、アルミナ、又は炭化シリコンなどで覆われているような複数の材料から構成される複合材料の生成に利用することもできる。
【0057】
このように実施の形態1によれば、ガス供給管15に電磁弁32を設け、制御によって所望のタイミングで反応性ガスを間欠導入することで、熱プラズマ16の内部まで反応性ガスを導入できる。材料17と反応ガスとの反応が均一化され、作製するナノ粒子の組成比バラツキを低減できる。これにより、亜酸化材料や低次酸化チタンなどの、組成比制御が困難な材料においても高精度で材料合成をすることができる。
【0058】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係る微粒子製造装置の断面構造を示す概略断面図を示す。
図4を用いて、実施の形態1と同様、低次酸化チタンのナノメートルオーダーの微粒子を製造する例を説明する。
【0059】
実施の形態2に係る微粒子製造装置は、少なくとも、反応室1と、材料供給装置10と、石英管23内に熱プラズマ16を生成するための高周波電源21と高周波電源21に接続したコイル22と、生成した微粒子18を回収する回収部の一例としての微粒子回収部3とを備えて、石英管23内で熱プラズマ16を発生させ、材料粒子17から微粒子18を製造するようにしている。
【0060】
以下、実施の形態2に係る微粒子製造装置の構成について、実施の形態1に係る微粒子製造装置との違いを説明する。
【0061】
材料供給装置10により、反応室1の上部から材料供給管11を介してキャリアガスによって材料粒子17を反応室1内に下向き(-Z方向)に供給している。放電ガス供給管14は、水冷された石英管23の上側に配置する。水冷機構を有した石英管23に設置したコイル22に1MHz~13.56MHzの高周波を印加することで石英管23内に熱プラズマ16を生成する。
【0062】
ガス供給管15は、熱プラズマ16を生成するためのコイル22よりも下流側(装置下部)に設置し、反応室1の中央下向きに反応性ガスを供給可能で、反応室1の中心軸周りに所定間隔毎に放射状に配置されている。ガス供給管15は、電磁弁32により反応性ガスを間欠的にガス導入できる。また、ガス供給管15の下部には、石英管と同等径になるように断熱部材2が設置している。反応ガス導入領域は、断熱部材2で囲まれ、熱プラズマ16が発生する石英管23と同等の空間径であり、反応領域での熱プラズマ16の温度を下げないようにしている領域である。反応ガス導入領域の空間径が大きくすると、ガス流速が遅くなり熱プラズマ16の温度が低下する。反応領域の温度が低下すると、蒸発した材料と反応ガスとの反応速度が遅くなったり、反応しなくなるため、熱プラズマ16と反応ガスが衝突する反応領域の温度を下げないようにしている。
【0063】
ガス供給管15に設置された電磁弁32は、各ガス供給管15に一つずつ電磁弁32を設置し、反応性ガスを間欠導入できる機構になっている。これにより、反応性ガス量を高精度に制御でき、さらに少ないガス流量でもガスの流れが強くなるので、熱プラズマ16の中央まで到達しやすくなる。各電磁弁32は、制御機構接続されており、各反応性ガスをガス供給管15からガスを噴出するタイミングは、任意に制御できる。例えば、電磁弁32の放射状に配置したガス供給管15を時計回りに順番に反応性ガスを供給することができ、螺旋状のガス流れを作ることで、材料粒子17と反応性ガスの接触機会が増えるため、材料の反応性を制御できる。
図2に示すように放射状に配置されたガス供給管15に一つずつ電磁弁32を接続しているが、これに限られるものではなく、ガス配管のより上流側でガスを分岐される手前に電磁弁を1つ設けてもよい。
【0064】
微粒子回収部3は、反応室1の上端に接続されて配置され、排気ポンプ7により排気され、反応室1で生成された微粒子18を回収している。
【0065】
この実施の形態2によれば、ガス供給管15に電磁弁32を設け、制御によって所望のタイミングで反応性ガスを間欠導入することで、高周波熱プラズマ装置でも実施の形態1と同様、熱プラズマ16の内部まで反応性ガスを導入できる。これにより、材料17と反応性ガスとの反応が均一化され、作製するナノ粒子の組成比バラツキを低減できる。これにより、亜酸化材料や低次酸化チタンなどの、組成比制御が困難な材料においても高精度で材料合成をすることができる。
【0066】
なお、前記様々な実施の形態又は変形例のうちの任意の実施の形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施の形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施の形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施の形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示の前記態様における微粒子製造装置及び微粒子製造方法は、材料と反応性ガスとの反応を均一化することができ、微粒子の組成バラツキを低減させ生産することができる。そのため、本開示の前記態様は、亜酸化材料や低次酸化チタンなどの組成比制御が必要な微粒子を生産でき、リチウムイオン二次電池の材料や抗菌・抗ウィルス材、触媒などに用いられる微粒子製造装置及び微粒子製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0068】
1,101 反応室
2 断熱部材
3,103 微粒子回収部
4 電極
5,105 交流電源
6 圧力調整バルブ
7,113 排気ポンプ
8 電極駆動装置
10,110 材料供給装置
11 材料供給管
12 材料供給口
14 放電ガス供給管
15 ガス供給管
16,116 熱プラズマ
17,117 材料粒子
18,118 微粒子
20 電極先端
21 高周波電源
22 コイル
23 石英管
30 ガス供給装置
31 ガス流量調整器
32 電磁弁