(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175452
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】レーザ溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20231205BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20231205BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20231205BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20231205BHJP
【FI】
B23K26/21 P
B23K26/067
B23K26/064 A
B23K26/082
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087894
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥畑 佑介
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 洋一
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA30
4E168CB04
4E168CB12
4E168DA28
4E168EA05
4E168EA11
4E168EA15
4E168EA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】照射経路を辿ってレーザ光を被照射位置に照射するに当たり、各被照射位置に適切な照射パターンのレーザ光を照射して溶接できるレーザ溶接装置を提供する。
【解決手段】制御部160は、被照射位置HPが照射経路を辿って移動するように光学機構部130を制御すると共に、これに連動して、パターン部における回折レーザ光LBを出射する回折領域が、帯状の移動経路を辿って移動するように移動ユニット125を制御する連動制御部160である。パターン部は、被照射位置HPに応じた回折レーザ光LBの照射パターンPT0~PT4に変化させるように、移動経路内の各々の回折領域における回折光学パターンを形成してなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を被照射物の被照射位置に照射しつつ、予め定めた照射経路を辿って上記被照射位置を移動させて、上記照射経路に沿って上記被照射物をレーザ溶接するレーザ溶接装置であって、
レーザ発振器から出射した出射レーザ光を平行レーザ光に整形するコリメートレンズと、
入射した上記平行レーザ光を回折させた回折レーザ光を出射する回折光学部材と、
上記回折光学部材を保持し、かつ、上記回折光学部材を上記平行レーザ光の光軸に直交する直交方向に移動させる移動ユニットと、
上記回折レーザ光を上記被照射位置に照射する光学機構部と、
上記移動ユニット及び上記光学機構部を制御する制御部と、を備え、
上記回折光学部材は、
上記回折レーザ光の上記被照射位置における照射パターンを規定する回折光学パターンが形成された
パターン部を有しており、
上記制御部は、
上記回折レーザ光が照射された上記被照射位置が上記照射経路を辿って移動するように、上記光学機構部を制御すると共に、
上記照射経路を辿る上記被照射位置の移動に連動して、上記回折光学部材の上記パターン部における、上記平行レーザ光が入射し上記回折レーザ光を出射する回折領域が、予め定めた帯状の移動経路を辿って移動するように上記移動ユニットを制御する
連動制御部であり、
上記回折光学部材の上記パターン部は、
上記照射経路を辿る上記被照射位置の移動に従って、上記被照射位置に応じた上記回折レーザ光の上記照射パターンに変化させるように、上記移動経路内の各々の上記回折領域における上記回折光学パターンを形成してなる
レーザ溶接装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ溶接装置であって、
前記光学機構部は、
上記被照射物を載置する載置平面に沿いかつ互いに直交するX方向及びY方向に、前記回折レーザ光を偏向させるXYスキャナ部を有しており、
前記回折光学部材の前記パターン部は、
前記被照射位置に照射される上記回折レーザ光の前記照射パターンが、中心ビームと、上記中心ビームの周囲に配置された周囲ビームを有し、かつ、
上記被照射位置に向けて出射する上記回折レーザ光の偏向角θが30度以上(θ≧30deg)となる大偏向区間に照射する上記回折レーザ光の前記照射パターンは、上記偏向角θが30度未満(θ<30deg)の小偏向区間に照射する上記回折レーザ光の前記照射パターンに比して、上記周囲ビームの強度に対する上記中心ビームの強度の強度比が大きくなるように、
前記移動経路内の各々の前記回折領域における前記回折光学パターンを形成してなる
レーザ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部材(被照射物)を溶接するに当たり、レーザ溶接を用いることが知られており、このためのレーザ溶接装置も知られている。レーザ溶接によって溶接する2つの部材としては、例えば、直方体状の金属ケースを備える二次電池における、ケース本体とこのケース本体の開口部を閉塞する蓋体とが挙げられる。ケース本体の開口部と蓋体の外周縁部との間を、一周に亘りレーザ溶接する。このようなレーザ溶接に関し、例えば特許文献1,2には、レーザ光を回折光学素子(DOE)を用いて多点の照射パターン(回折マルチビーム)とした上で、予め定めた照射経路を辿って照射し、レーザ溶接する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-2562号公報
【特許文献2】特開2018-187636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、照射経路上の各被照射位置に照射されるレーザ光の照射パターンを変更したい場合がある。また、ガルバノミラーなどで構成されたXYスキャナによってレーザ光を偏向させて、レーザ光を各被照射位置に照射する場合には、レーザ光の偏向角の大きさに応じて、照射パターンを変化させたい場合もある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、予め定めた照射経路を辿ってレーザ光を被照射位置に照射するに当たり、各被照射位置に適切な照射パターンのレーザ光を照射して溶接できるレーザ溶接装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、レーザ光を被照射物の被照射位置に照射しつつ、予め定めた照射経路を辿って上記被照射位置を移動させて、上記照射経路に沿って上記被照射物をレーザ溶接するレーザ溶接装置であって、レーザ発振器から出射した出射レーザ光を平行レーザ光に整形するコリメートレンズと、入射した上記平行レーザ光を回折させた回折レーザ光を出射する回折光学部材と、上記回折光学部材を保持し、かつ、上記回折光学部材を上記平行レーザ光の光軸に直交する直交方向に移動させる移動ユニットと、上記回折レーザ光を上記被照射位置に照射する光学機構部と、上記移動ユニット及び上記光学機構部を制御する制御部と、を備え、上記回折光学部材は、上記回折レーザ光の上記被照射位置における照射パターンを規定する回折光学パターンが形成されたパターン部を有しており、上記制御部は、上記回折レーザ光が照射された上記被照射位置が上記照射経路を辿って移動するように、上記光学機構部を制御すると共に、上記照射経路を辿る上記被照射位置の移動に連動して、上記回折光学部材の上記パターン部における、上記平行レーザ光が入射し上記回折レーザ光を出射する回折領域が、予め定めた帯状の移動経路を辿って移動するように上記移動ユニットを制御する連動制御部であり、上記回折光学部材の上記パターン部は、上記照射経路を辿る上記被照射位置の移動に従って、上記被照射位置に応じた上記回折レーザ光の上記照射パターンに変化させるように、上記移動経路内の各々の上記回折領域における上記回折光学パターンを形成してなるレーザ溶接装置である。
【0007】
このレーザ溶接装置では、連動制御部が、回折レーザ光が照射された被照射物の被照射位置が照射経路上を移動するように、光学機構部を制御する。しかもこれと共に、照射経路を辿る被照射位置の移動に連動して、回折光学部材のパターン部のうち、平行レーザ光が入射し回折レーザ光を出射する回折領域が、予め定めた帯状の移動経路を辿って移動するように、回折光学部材を移動させる移動ユニットを制御する。
加えて、回折光学部材のパターン部は、照射経路を辿る被照射位置の移動に従って、被照射位置に応じた回折レーザ光の照射パターンになるように、移動経路内の各々の回折領域における回折光学パターンを形成してなる。
従って、このレーザ溶接装置では、被照射物の被照射位置に照射される回折レーザ光を、光学機構部により照射経路を辿って移動させると、これと共に、各被照射位置に応じた回折レーザ光の照射パターンを照射することができる。かくして、各被照射位置に適切な照射パターンのレーザ光を照射して、被照射物の各被照射位置をレーザ溶接することができる。
【0008】
「回折光学部材」は、回折レーザ光の被照射位置における照射パターンを規定する回折光学パターンが形成されたパターン部を有している。そのほか、このパターン部を保持する保持部などの部位を含むこともできる。
「パターン部」は、照射経路を辿る被照射位置の移動に従って、各被照射位置に照射される回折レーザ光の照射パターンが、当該被照射位置に応じて予め定めた照射パターンになるように、移動経路内の各々の回折領域における回折光学パターンを形成してなる。
なお、パターン部の各回折領域に形成する回折光学パターンとしては、出射する回折レーザ光に回折効果を生じさせるパターンを回折領域全体に形成する場合のほか、回折効果を生じさせるパターンを回折領域の一部に形成し、回折領域の残部には、例えば、平行レーザ光が透過する透明な平行平板形状や、凸レンズ形状、凹レンズ形状を形成する場合も含まれる。
【0009】
「光学機構部」は、回折光学部材のパターン部から出射した回折レーザ光を被照射位置に照射する機構を有する部位であり、例えば、2組のガルバノミラーを用い互いに直交する方向にレーザ光を偏向させるXYスキャナ部を備えた光学機構部が挙げられる。さらにこれに加え、回折レーザ光の焦点位置を制御するのに、F-θレンズを備えた光学機構部や、回折レーザ光の光軸方向の焦点を変化させるZレンズを備えた光学機構部も挙げられる。また、レーザヘッドをX軸及びY軸に移動可能に保持し、レーザヘッドからZ方向にレーザ光を放射する形態や、レーザヘッドは固定しておき、XYテーブル上に被照射物を載置して移動させる形態の光学機構部も挙げられる。
【0010】
「連動制御部」は、回折レーザ光が照射される被照射位置が被照射物上の照射経路を辿って移動するように、光学機構部を制御する。これと共に、この被照射位置の移動に連動して、回折光学部材のパターン部における平行レーザ光の回折領域が予め定めた帯状の移動経路を辿って移動するように、移動ユニットを制御する。
例えば、ケース本体の矩形環状の開口部とこれを閉塞する矩形板状の蓋体の周縁部とをレーザ溶接する場合(被照射物は、ケース本体及び蓋体を有する蓄電デバイス)、連動制御部は、ケース本体の開口部及び蓋体の周縁部を巡る矩形環状の照射経路を辿って、回折レーザ光が照射される各被照射位置が移動するように、光学機構部を制御する。加えて連動制御部は、この被照射位置の移動に連動して、回折光学部材のパターン部において、回折領域が、予め定めた矩形環状の移動経路や、コ字状(U字状)に往復する移動経路を辿って移動するように移動ユニットを制御する。
【0011】
(2)更に上述の(1)のレーザ溶接装置であって、前記光学機構部は、上記被照射物を載置する載置平面に沿いかつ互いに直交するX方向及びY方向に、前記回折レーザ光を偏向させるXYスキャナ部を有しており、前記回折光学部材の前記パターン部は、前記被照射位置に照射される上記回折レーザ光の前記照射パターンが、中心ビームと、上記中心ビームの周囲に配置された周囲ビームを有し、かつ、上記被照射位置に向けて出射する上記回折レーザ光の偏向角θが30度以上(θ≧30deg)となる大偏向区間に照射する上記回折レーザ光の前記照射パターンは、上記偏向角θが30度未満(θ<30deg)の小偏向区間に照射する上記回折レーザ光の前記照射パターンに比して、上記周囲ビームの強度に対する上記中心ビームの強度の強度比が大きくなるように、前記移動経路内の各々の前記回折領域における前記回折光学パターンを形成してなるレーザ溶接装置とすると良い。
【0012】
光学機構部にXYスキャナ部を有しているレーザ溶接装置では、被照射物に照射するレーザ光の偏向角θが大きくなるほど、被照射位置において回折レーザ光が斜めに入射するので、偏向角θが小さい被照射位置と比べ、照射パターンが崩れ、溶接状況も異なるものになりやすい。特に偏向角θが30度以上(θ≧30deg)の大偏向区間に回折レーザ光を照射する場合には、溶接状況への影響が大きく、溶接深さが浅くなりがちである。
【0013】
これに対し、上述のレーザ溶接装置では、移動経路内の各々の回折領域における回折光学パターンを上述のようにして形成してなる。このため、偏向角θが30度以上の大偏向区間に照射する回折レーザ光の照射パターンは、偏向角θが30度未満の小偏向区間に照射する回折レーザ光の照射パターンに比して、周囲ビームに対する中心ビームの強度比を大きくしている。このため、大偏向区間に回折レーザ光を照射する場合にも、溶接深さを確保したレーザ溶接を行いやすい。
【0014】
回折レーザ光の照射パターンが、中心ビームと、中心ビームの周囲に配置された周囲ビームを有する照射パターンである例としては、中心に位置する中心ビームとこの中心ビームを取り囲む円環状の周囲ビームとからなる照射パターンが挙げられる。また、サイコロの5の目に近似した配置、即ち、中心に位置する中心ビームとこの中心ビームを囲んで散点状に配置した複数の周囲ビームとからなる照射パターンも挙げられる。なお、中心ビームは、中心に位置する1つのビームで構成しても良いし、中心位置の近傍に互いに近接して配置された複数のビームで構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係り、レーザ溶接された電池の斜視図である。
【
図2】実施形態に係り、溶接前の電池の上面図である。
【
図3】実施形態に係り、レーザ溶接装置の概略構成を示す説明図である。
【
図4】実施形態に係り、レーザ溶接装置によるレーザビームの走査を示す説明図である。
【
図5】実施形態に係り、ビーム形成部をなす回折光学部材及び移動ユニットの概略構成と、移動ユニットによる回折光学部材の移動を示す平面図である。
【
図6】実施形態に係り、回折光学部材のパターン部における各パターン領域の配置、及び、パターン部に入射する平行レーザビームの回折領域とその移動経路を示す説明図である。
【
図7】実施形態に係り、回折光学部材のパターン部から出射して被照射位置に照射される回折マルチビームの照射パターンの基本形態を示す説明図である。
【
図8】実施形態に係り、回折光学部材のパターン部から出射して被照射位置に照射される回折マルチビームの各照射パターンを示す説明図であり、(a)は第1照射パターン、(b)は第2照射パターン、(c)は第3照射パターン、(d)は第4照射パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態に係り、レーザ溶接で容器本体11と蓋体12とを溶接した電池10の斜視図を、
図2に溶接前の電池10の上面図を示す。電池10は、その外形が扁平な直方体形状である。
【0017】
電池10は、
図1において、上方が開口した有底角筒状の容器本体11と、この容器本体11の上端の開口部11K内に挿入されて開口部11Kを閉塞する矩形板状の蓋体12の周縁部12Pとを、一周に亘りレーザ溶接で形成した溶接部14で接合してなる。容器本体11の内部には、図示しない電極体、電解液などが収容され、蓋体12を貫通して、正極端子15及び負極端子16が外部に突出している。蓋体12のうち、正極端子15と負極端子16の間には、図示しない注液孔を閉塞する注液孔封止部材17が蓋体12に固着されている。この電池10は,正極端子15及び負極端子16を通じて、充放電が可能な二次電池、具体的には、リチウムイオン二次電池である。また、本実施形態において、容器本体11及び蓋体12は、いずれもアルミニウムからなる。なお、本実施形態では、この電池10における直交する3方向を、
図1,
図2に示すように、蓋体12の長手方向をワークX方向XW、短手方向をワークY方向YW、容器本体11の深さ方向をワークZ方向ZWと定める。
【0018】
本実施形態の電池10の製造方法は、容器本体11の開口部11K内に蓋体12を挿入する挿入工程と、レーザビームを照射して容器本体11の開口部11Kと蓋体12の周縁部12Pとをレーザ溶接するレーザ溶接工程とを含んでいる。
【0019】
まず、挿入工程について説明する。
図1,
図2に示すように、蓋体12には、正極端子15及び負極端子16が内側から突出して形成されている。これら正極端子15と負極端子16で、容器本体11内に収容された図示しない電極体を保持している。挿入工程では、電極体を先に容器本体11内に挿入した上で、容器本体11の開口部11K内に蓋体12を挿入する。これにより、容器本体11の開口部11Kの開口内側面11KSと、蓋体12の周縁部12Pの外周面12PSとが当接或いは僅かな隙間Gを空けて対向する位置に配置する。
【0020】
また、本実施形態では、容器本体11の開口部11Kの端面である被照射面11KTと、蓋体12の周縁部12Pの上面である被照射面12PTとが、ワークZ方向ZWに一致するように、即ち、被照射面12PTと被照射面12PTとが面一となるように、蓋体12を容器本体11の開口部11Kに挿入する(
図2参照)。
【0021】
次いで、レーザ溶接装置100を用い、載置平面170上に載置固定した被照射物である電池10のうち、容器本体11の開口部11Kと蓋体12の周縁部12Pの各部を被照射位置HPとして、これらをロ字状(矩形環状)の照射経路RHPに沿ってレーザ溶接するレーザ溶接工程を行う。先ず、レーザ溶接に用いる本実施形態のレーザ溶接装置100を、
図3~
図8を用いて説明する。
【0022】
レーザ溶接装置100は、平行レーザビームLPを得る光源部110と、回折光学部材121を有し、この回折光学部材121に入射した平行レーザビームLPから、回折マルチビームLBを得るビーム形成部120と、回折マルチビームLBを被照射位置HPに照射する光学機構部130と、制御部160とを備える。なお、光学機構部130は、回折マルチビームLBの光軸LBXに沿う光軸方向LBHに焦点位置SPを調整する集光部131と、回折マルチビームLBを偏向させるXYスキャナ部141と、を有する。
【0023】
このうち、光源部110は、レーザ光を発生するレーザ発振器111と、その出射口111Sから出射した出射レーザ光LZを平行レーザビームLPに整形するコリメータ(コリメートレンズ)115とを有する。本実施形態では、レーザ発振器111としてファイバレーザを用いている。
【0024】
ビーム形成部120は、コリメータ115の下流側(
図3において下方)に配置された回折光学部材121と、この回折光学部材121を移動させる移動ユニット125とを有する。このうち、回折光学部材121は、コリメータ115から入射した平行レーザビームLPを回折マルチビームLBに変換して出射する。回折光学部材121(
図5参照)は、回折マルチビームLBの被照射位置HPにおける照射パターンPTを規定する回折光学パターン122Pが形成された円形平板状のパターン部122、及び、このパターン部122を保持する保持部123を有している。本実施形態では、具体的には、平行レーザビームLPは、回折光学部材121のパターン部122で回折されて、被照射位置HPにおいて、後述する複数のレーザビームLBC,LBC1~LBC4が集まった照射パターンPTとなる回折マルチビームLBに変換される(
図7参照)。
【0025】
一方、移動ユニット125は、保持部123に結合しており、回折光学部材121を平行レーザビームLPの光軸LPXに直交する直交方向HLPに、具体的には、光軸LPXに直交する部材X方向Xd(
図3,
図5において左右方向)、及び、光軸LPX及び部材X方向Xdに直交する部材Y方向Yd(
図3において紙面に垂直な方向,
図5において上下方向)に移動させ得るアクチュエータである。この移動ユニット125により、コリメータ115から入射する平行レーザビームLP(本実施形態では、移動しない)に対し、回折光学部材121およびそのパターン部122を相対移動させることができる。このため、パターン部122のうち、平行レーザビームLPが入射し回折マルチビームLBを出射する回折領域TPを移動させることができる。一方、パターン部122の各回折領域TPから出射する回折マルチビームLBの照射パターンPTは、各々の回折領域TPに形成されている回折光学パターン122Pに応じたパターンとなる。従って、予め回折光学部材121のパターン部122に形成する回折光学パターンを、領域毎に異ならせたり連続的に変化させたりしておき、移動ユニット125を用いて回折領域TPを移動させることで、回折マルチビームLBの照射パターンPTを変化させることができる。
【0026】
光学機構部130のうち集光部131は、回折光学部材121から出射した回折マルチビームLBの焦点位置SPを調整する光学系であり、Zレンズ133、集光レンズ135、及び保護ガラス137からなる。この集光部131のZレンズ133は、レンズ部分を光軸方向LBH(
図3において上下方向)に移動させることにより、透過する回折マルチビームLBの焦点位置SPを光軸方向LBHに移動させることができる。
【0027】
一方、光学機構部130のうちXYスキャナ部141は、ガルバノスキャナからなるX偏向部143と、同じく2ガルバノスキャナからなるY偏向部145を有している。X偏向部143は、Zレンズ133を透過して入射した回折マルチビームLBの光軸LBXを偏向させるものであり、その偏向角θxを変化させることにより、回折マルチビームLBの光軸LBXを被照射物(本実施形態では電池10)を載置する載置平面170に沿う偏向X方向Xsに偏向させる配置としてある。一方、Y偏向部145は、X偏向部143で反射した回折マルチビームLBの光軸LBXを偏向させるものであり、その偏向角θyを変化させることにより、回折マルチビームLBの光軸LBXを被照射物(本実施形態では電池10)を載置する載置平面170に沿い、偏向X方向Xsに直交する偏向Y方向Ysに偏向させる配置としてある。
【0028】
そして、Y偏向部145で反射・偏向された回折マルチビームLBは、集光レンズ135及び保護ガラス137を介して、外部に出射し、焦点位置SPで焦点を結ぶ。
このため、レーザ溶接装置100では、回折マルチビームLBが集光する焦点位置SPをZレンズ133によって光軸方向LBHに、従って、偏向X方向Xs及び偏向Y方向Ysに直交する偏向Z方向Zsに調整すると共に、XYスキャナ部141によって被照射物(電池10)各被照射位置HPに回折マルチビームLBを照射して、レーザ溶接することができる。しかも、XYスキャナ部141によって回折マルチビームLBを偏向させ得るので、照射経路RHPに沿って連続して回折マルチビームLBを照射してレーザ溶接を行うことができる。
【0029】
なお、レーザ発振器111、移動ユニット125、Zレンズ133、XYスキャナ部141(X偏向部143,Y偏向部145)は、制御部160により各動作が連動して制御される(
図3参照)。
【0030】
本実施形態では、電池10のレーザ溶接に当たり、電池10の開口部11K及び蓋体12の平面方向の中心点10Sが、偏向X方向Xs及び偏向Y方向Ysの原点に一致するように、電池10を載置平面170上に配置・固定する。このため、回折マルチビームLBは、XYスキャナ部141によって、中心点10Sを中心とする偏向角θ(θx,θy)の大きさで偏向されて、被照射位置HPに照射される(
図4参照)。
【0031】
さらに
図3,
図4に矢印で示すように、ワークX方向XW(蓋体12の長手方向)が偏向X方向Xsに一致し、ワークY方向YW(蓋体12の短手方向)が偏向Y方向Ysに一致し、ワークZ方向ZW(容器本体11の深さ方向)が偏向Z方向Zsに一致し、容器本体11の開口部11K及び蓋体12を光学機構部130(具体的には保護ガラス137)に向ける上向きの姿勢として、電池10を載置平面170上に配置・固定する。このため、回折マルチビームLBの光軸LBXをX偏向部143で偏向させると、容器本体11の開口部11K及び蓋体12の周縁部12Pに照射した回折マルチビームLBの被照射位置HPは、偏向X方向Xsに一致するワークX方向XW(蓋体12の長手方向)に移動することになる。また、回折マルチビームLBの光軸LBXをY偏向部145で偏向させると、電池10の開口部11K及び周縁部12Pに照射した回折マルチビームLBの被照射位置HPは、偏向Y方向Ysに一致するワークY方向YW(蓋体12の短手方向)に移動することになる。
【0032】
このレーザ溶接装置100を用い、電池10の容器本体11及び蓋体12のうち、これらの境界BD(
図2において一点鎖線で示す)に沿う容器本体11の開口部11K及び蓋体12の周縁部12Pに回折マルチビームLBを照射して、開口部11Kと周縁部12Pとを一周に亘りレーザ溶接する。
【0033】
容器本体11と蓋体12との境界BDは、ワークX方向XWに直線状に延びる第1長手区間X1及び第2長手区間X2、ワークY方向YWに直線状に延びる第1短手区間Y1及び第2短手区間Y2、弧状に90度方向変換する弧状区間R1~R4を含んでいる。本実施形態では、第1短手区間Y1内の溶接開始位置TSから、境界BD(各区間Y1,X1,Y2,X2,R1~R4)に各被照射位置HPが重なるようにしつつ、
図2において反時計回りに回折マルチビームLBを進行させて、全周に亘りレーザ溶接を行う(
図4も参照)。
なお、溶接開始位置TS付近において、レーザ溶接を重ねて行うべく、
図2に示すように、レーザ溶接の溶接終了位置TEを、反時計回りに溶接開始位置TSを通り過ぎた位置に定めてある。
【0034】
また、本実施形態でレーザ溶接を行う電池10は、比較的大型(例えば、幅310×厚さ40×高さ100mm)の電池であるため、容器本体11と蓋体12との境界BDのうち、第1長手区間X1の両端部X1a,X1b、第2長手区間X2の両端部X2a,X2b、弧状区間R1~R4、第1短手区間Y1、及び、第2短手区間Y2は、偏向角θが30deg以上となる大偏向区間RHPBである。一方、第1長手区間X1の中央部X1c及び第2長手区間X2の中央部X2cは、偏向角θが30deg未満の小偏向区間RHPAである。即ち、境界BDは、
図2において左側に位置する第1大偏向区間RHPB1のほか、第1小偏向区間RHPA1、第2大偏向区間RHPB2、及び、第2小偏向区間RHPA2の合計4つの区間で構成されているとも言える。
【0035】
次に、ビーム形成部120及びこのビーム形成部120から出射する回折マルチビームLBについて説明する。前述したように、ビーム形成部120(
図5参照)は、回折光学部材121と移動ユニット125とを有する。このうち、回折光学部材121は、円形平板状で、微細加工による所定の回折光学パターン122Pが形成されたパターン部122を有している。本実施形態では、このパターン部122には、このパターン部122の一部である回折領域TPに平行レーザビームLPが入射した場合、出射した回折マルチビームLBが、焦点位置SPにおいて、概ね、サイコロの5の目に似た、中央に位置しエネルギーが最も大きい中心ビームLBCと、その周囲のうち偏向X方向Xs及び偏向Y方向Ysの両方にずれた位置に配置された4つの周囲ビームLBPからなる照射パターンPT(
図7参照)となるように、回折光学パターン122Pが形成されている。
【0036】
従って、例えば、回折マルチビームLBを偏向X方向Xsに偏向させて、ワークX方向XW(蓋体12の長手方向)に進行させた場合、中心ビームLBCのほか、この中心ビームLBCの進行方向の斜め前の2点及び斜め後の2点にそれぞれ周囲ビームLBPが照射された状態で、回折マルチビームLBが進行することになる。回折マルチビームLBを偏向Y方向Ysに偏向させて、ワークY方向YW(蓋体12の短手方向)に進行させた場合も同様である。
【0037】
なお、4つの周囲ビームLBPのうち、中心ビームLBCの進行方向の斜め前に位置する一対の周囲ビームは、中心ビームLBCが通過するよりも前に進行方向に先行し、容器本体11の開口部11K及び蓋体12の周縁部12Pを事前に溶融させ合体させて隙間Gを埋めるように溶融池を形成し、中心ビームLBCが隙間Gを通って容器本体11内に入ってしまう、いわゆる「レーザ抜け」の発生を防ぐ役割を有している。
【0038】
詳細には、円形のパターン部122は、
図6に示すように、5本の縦縞状に仕切られ、且つ、2本目と4本目の縞状部分がさらに上下に仕切られて、合計7つのパターン領域122A,122B1,122B2,122C1,122C2,122D,122Eに分けられている。各パターン領域122A等には、合計5種類の回折光学パターン122AP~122EPが形成されている。
【0039】
各パターン領域122A等から出射される回折マルチビームLBの焦点位置SPにおける各照射パターンPT0~PT4(
図7,
図8参照)は、前述したように、概ね、中央に位置する中心ビームLBCと、その周囲に配置された4つの周囲ビームLBP1~LBP4からなる。但し、照射パターン毎に、4つの周囲ビームLBPの強度IP(IP1~IP4)に対する中心ビームLBCの強度ICの強度比RIが異ならせてある。加えて、4つの周囲ビームLBP1~LBP4の強度IP1~IP4も異ならせてある。即ち、
図7に示す基本照射パターンPT0は、4つの周囲ビームLBP1~LBP4の強度IP1~IP4を均等にした照射パターンである。また、
図8(a)~(d)に示す照射パターンPT1~PT4は、いずれも、基本照射パターンPT0に比して、中心ビームLBCの強度ICを相対的に強くし強度比RIを大きくしてある。なお、各照射パターンPT1~PT4は、中心ビームLBCの強度ICは互いに同じである。しかも、4つの周囲ビームLBP1~LBP4のうち、隣り合う2つの周囲ビームの強度を比較的強く、残る2つの周囲ビームの強度を比較的弱くした照射パターンとしてある。
【0040】
そして、
図6に示すパターン部122のうち、中央のパターン領域122Aには、此処から出射される回折マルチビームLBの焦点位置SPにおける照射パターンが基本照射パターンPT0となる回折光学パターン122APが形成されている。
【0041】
一方、2,4本目の縞状部分上側のパターン領域122B1,122B2には、それぞれ、図中左側の第2,第3周囲ビームLBP2,LBP3の強度IP2,IP3を第1,第4周囲ビームLBP1,LBP4の強度IP1,IP4に比して強くした第3照射パターンPT3(
図8(c)参照)を生成する回折光学パターン122BPが形成されている。
また、2,4本目の縞状部分下側のパターン領域122C1,122C2には、それぞれ、図中右側の第1,第4周囲ビームLBP1,LBP4の強度IP1,IP4を第2,第3周囲ビームLBP2,LBP3の強度IP2,IP3に比して強くした第1照射パターンPT1(
図8(a)参照)を生成する回折光学パターン122CPが形成されている。
更に、最も左側のパターン領域122Dには、図中下側の第3,第4周囲ビームLBP3,LBP4の強度IP3,IP4を第1,第2周囲ビームLBP1,LBP2の強度IP1,IP2に比して強くした第4照射パターンPT4(
図8(d)参照)を生成する回折光学パターン122DPが形成されている。
また更に、最も右側のパターン領域122Eには、図中上側の第1,第2周囲ビームLBP1,LBP2の強度IP1,IP2を第3,第4周囲ビームLBP3,LBP4の強度IP3,IP4に比して強くした第2照射パターンPT2(
図8(b)参照)を生成する回折光学パターン122EPが形成されている。
【0042】
従って、後述するように、小偏向区間RHPA1,RHPA2(
図2参照)に照射する回折マルチビームLBの照射パターンを規定するパターン領域122Aには、基本照射パターンPT0の回折マルチビームLBが生じる回折光学パターン122APが形成されている。一方、大偏向区間RHPB1,RHPB2に照射する回折マルチビームLBの照射パターンを規定するパターン領域122B1~122Eには、基本照射パターンPT0に比して、中心ビームLBCの強度ICを相対的に強くし強度比RIを大きくした各照射パターンPT1~PT4の回折マルチビームLBが生じる回折光学パターン122BP~122EPがそれぞれ形成されている。
【0043】
そして、パターン部122から出射した回折マルチビームLBを、電池10の境界BD上の被照射位置HPに照射する(
図2参照)。その際、制御部160により、Zレンズ133の位置を調節して、焦点位置SPが被照射位置HPに一致するように制御する。加えて、制御部160の制御により、XYスキャナ部141のX偏向部143及びY偏向部145を偏向させて、溶接開始位置TSから溶接終了位置TEまで、被照射位置HPをロ字状(矩形環状)の照射経路RHPに沿って移動させてレーザ溶接を行う。
【0044】
さらに本実施形態では、制御部160の制御により、XYスキャナ部141(X偏向部143,Y偏向部145)の偏向に連動して、即ち、照射経路RHPを辿る回折マルチビームLBの被照射位置HPの移動に連動して、移動ユニット125を駆動し、回折光学部材121及びそのパターン部122を部材X方向Xd及び部材Y方向Ydに移動させて、パターン部122上の回折領域TPが移動経路RTPを辿るように移動させる(
図5,
図6参照)。これにより、各回折領域TPに形成されている回折光学パターン122P(122AP~122EP)に応じた照射パターンPT(PT0~PT4)を有する回折マルチビームLBが得られる。
【0045】
本実施形態では、制御部160の制御により、パターン部122のうち、
図6において左側に位置するパターン領域122D内の開始回折領域TPSから、反時計回りでロ字状(矩形環状)に移動経路RTPを辿り、各パターン領域122C1,122A,122C2,122E,122B2,122A,122B1を経由して、再びパターン領域122Dのうち開始回折領域TPSを越えた終了回折領域TPEまで、回折領域TPを移動させる。
【0046】
なお、制御部160は、回折マルチビームLBの被照射位置HPが、第1長手区間X1の中央部X1c内及び第2長手区間X2の中央部X2c内、即ち、第1小偏向区間RHPA1内及び第2小偏向区間RHPA2内(
図2参照)を移動する期間には、パターン部122において、回折領域TPが移動経路RTPのうち、概ねパターン領域122A内を移動するように回折光学部材121の移動を制御する。これにより、比較的小さな30deg未満の偏向角θとなる第1小偏向区間RHPA1内及び第2小偏向区間RHPA2内の各被照射位置HPでは、
図7に示す基本照射パターンPT0の回折マルチビームLBが照射される。即ち、第1小偏向区間RHPA1内及び第2小偏向区間RHPA2内の各被照射位置HPでは、入射角が小さく、溶接部14における溶けこみ深さを容易に確保できるので、周囲ビームLBP1~LBP4の強度IPに対する中心ビームLBCの強度ICの強度比RIを小さく、具体的には、周囲ビームLBP1~LBP4の強度IPを
図8の各照射パターンPT1等に比して大きくしてある。また、各被照射位置HP付近の容器本体11の開口部11K及び蓋体12の周縁部12Pを十分溶融させて、歪みを少なくしつつ溶接するべく、4つの周囲ビームLBP1~LBP4の強度IP1~IP4を均等にしてある。
【0047】
一方、制御部160は、回折マルチビームLBの被照射位置HPが、第1大偏向区間RHPB1内を移動する期間には、回折領域TPが移動経路RTPのうち、概ねパターン領域122B1,122D,122C1内を移動するように回折光学部材121の移動を制御する。また、被照射位置HPが、第2大偏向区間RHPB2内を移動する期間には、回折領域TPが移動経路RTPのうち、概ねパターン領域122B2,122E,122C2内を移動するように回折光学部材121の移動を制御する。
【0048】
これにより、偏向角θが30deg以上となる第1大偏向区間RHPB1内及び第2大偏向区間RHPB2内の各被照射位置HPには、
図7に示す基本照射パターンPT0に比して、周囲ビームLBP1~LBP4の強度IPに対する中心ビームLBCの強度ICの強度比RIを比較的大きくした、
図8(a)~(d)に示す、第1~第4照射パターンPT1~PT4の回折マルチビームLBが照射される。第1大偏向区間RHPB1内及び第2大偏向区間RHPB2内の各被照射位置HPには、30度以上の大きな偏向角θで偏向された回折マルチビームLBが照射されるため、各被照射位置HPにおいて回折マルチビームLBが斜めに入射する。即ち、入射角も偏向角θと同じく大きくなり、溶接部14の溶け込み深さが浅くなりがちである。そこで、第1大偏向区間RHPB1内及び第2大偏向区間RHPB2内の各被照射位置HPでも、溶接部14における溶けこみ深さを確保するべく、中心ビームLBCの強度ICを相対的に強くしている。
【0049】
一方、4つの周囲ビームLBP1~LBP4に関しては、大きな偏向角θの場合でも、前述のように溶融池を形成してレーザ抜けを防ぐ役割を確実に果たさせるため、中心ビームLBCの進行方向の斜め前に位置する一対の周囲ビームの強度を相対的に高くしている。
即ち、回折マルチビームLBの被照射位置HPをワークX方向XWの一方側XW1(
図2において右側)に進行させる第1長手区間X1の両端部X1a,X1bに対応するパターン領域122C1,122C2には、前述したように、第1,第4周囲ビームLBP1,LBP4の強度IP1,IP4を強くした第1照射パターンPT1(
図8(a)参照)を生成する回折光学パターン122CPが形成されている。
また、回折マルチビームLBの被照射位置HPをワークY方向YWの一方側YW1(
図2において上側)に進行させる第2短手区間Y2と2つの弧状区間R2,R3に対応するパターン領域122Eには、前述したように、第1,第2周囲ビームLBP1,LBP2の強度IP1,IP2を強くした第2照射パターンPT2(
図8(b)参照)を生成する回折光学パターン122EPが形成されている。
更に、回折マルチビームLBの被照射位置HPをワークX方向XWの他方側XW2(
図2において左側)に進行させる第2長手区間X2の両端部X2a,X2bに対応するパターン領域122B1,122B2には、前述したように、第2,第3周囲ビームLBP2,LBP3の強度IP2,IP3を強くした第3照射パターンPT3(
図8(c)参照)を生成する回折光学パターン122BPが形成されている。
またさらに、回折マルチビームLBの被照射位置HPをワークY方向YWの他方側YW2(
図2において下側)に進行させる第1短手区間Y1と2つの弧状区間R1,R4に対応するパターン領域122Aには、前述したように、第3,第4周囲ビームLBP3,LBP4の強度IP3,IP4を強くした第4照射パターンPT4(
図8(d)参照)を生成する回折光学パターン122DPが形成されている。
【0050】
なお、各パターン領域122A~122Eを通る移動経路RTP内には、回折領域TPが2つのパターン領域(例えば、パターン領域122Aとパターン領域122B1)を跨ぐ位置となる部位も含む。このため例えば、回折領域TPの移動により、この回折領域TPがパターン領域122Aからパターン領域122B1に移動する場合には、得られる回折マルチビームLBの照射パターンPTは、第4照射パターンPT4(
図8(d)参照)から、2つの照射パターンPT4,PT1が混じった照射パターンを経由して、第1照射パターンPT1(
図8(a)参照)に連続的に変化する。
【0051】
そこでこれを利用し、照射パターンPTが、急激に変化するのを防止するため、例えば、第4照射パターンPT4から第1照射パターンPT1に徐々に変化するように、回折領域TPが2つのパターン領域(例えば、パターン領域122Aとパターン領域122B1)を跨ぐ位置において、回折領域TPの移動の速度を他の部位を移動する場合に比して遅くするなど、移動経路RTPを回折領域TPが移動する速度には、適宜変化させることもできる。
【0052】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。例えば実施形態では、
図6に示すように、回折光学部材121のパターン部122を7つの領域(パターン領域122A~122E)に分け、各領域に合計5種類の回折光学パターン122AP~122EPを形成した例を示した。
しかし、パターン部122を更に細かい領域に分けて多種類の回折光学パターンを形成したり、パターン部122に形成する回折光学パターンを連続的に変化させて、各被照射位置HPに適した照射パターンPTの回折マルチビームLBを照射するようにしても良い。
【符号の説明】
【0053】
10 電池(被照射物)
11 容器本体
11K (容器本体の)開口部
12 蓋体(第2部材)
12P (蓋体の)周縁部
HP 被照射位置
RHP 照射経路
RHPA,RHPA1,RHPA2 小偏向区間
RHPB,RHPB1,RHPB2 大偏向区間
14 溶接部
LZ 出射レーザ光
LP 平行レーザビーム(平行レーザ光)
LPX (平行レーザビームの)光軸
HLP 直交方向
LB 回折マルチビーム(回折レーザ光)
LBX (回折マルチビームの)光軸
LBH (回折マルチビームの光軸に沿う)光軸方向
PT 照射パターン
LBC 中心ビーム
IC (中心ビームの)強度
LBP 周囲ビーム
LBP1~LBP4 第1~第4周囲ビーム
IP,IP1~IP4 (周囲ビームの)強度
RI 強度比
100 レーザ溶接装置
111 レーザ発振器
115 コリメータ(コリメートレンズ)
120 ビーム形成部
121 回折光学部材
122 パターン部
122P 回折光学パターン
122AP~122EP 回折光学パターン
TP 回折領域
RTP 移動経路
123 保持部
125 移動ユニット
Xd 部材X方向
Yd 部材Y方向
130 光学機構部
131 集光部
133 Zレンズ
141 XYスキャナ部
143 X偏向部
145 Y偏向部
θ,θx,θy 偏向角
160 制御部(連動制御部)