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特開2023-175462駆動波形決定方法、駆動波形決定プログラムおよび駆動波形決定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175462
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】駆動波形決定方法、駆動波形決定プログラムおよび駆動波形決定装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20231205BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087910
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 寿郎
(72)【発明者】
【氏名】豊福 篤
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB08
2C056EB27
2C056EB29
2C056EC08
2C056EC38
2C056EC72
2C056FA03
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C057AF61
2C057AL11
2C057AL19
2C057AL35
2C057AM15
2C057AM16
2C057AN01
2C057AN05
2C057AR03
2C057AR08
2C057BA13
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】駆動パルスの波形の決定のためのユーザビリティを向上させる。
【解決手段】液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定方法であって、除外条件を取得する第1工程と、複数の候補波形および除外条件に基づいて、駆動パルスの波形を決定する第2工程と、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定方法であって、
除外条件を取得する第1工程と、
複数の候補波形および前記除外条件に基づいて、前記駆動パルスの波形を決定する第2工程と、を含む、
ことを特徴とする駆動波形決定方法。
【請求項2】
前記第1工程において、特許文献に関する条件を前記除外条件として取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動波形決定方法。
【請求項3】
前記第2工程において、前記複数の候補波形のうちの一部の候補波形が前記除外条件を満たす場合、当該一部の候補波形が前記駆動パルスの波形から除外されるように、前記駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項4】
前記第2工程において、前記複数の候補波形のうちの一部の候補波形が前記除外条件を満たす場合、その旨をユーザーに通知する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項5】
前記第2工程において、
前記複数の候補波形のそれぞれが前記除外条件を満たすか否かを判定し、
その判定の結果に基づいて、前記複数の候補波形のうち前記除外条件を満たさない候補波形を前記駆動パルスの波形として用いた場合における前記液体吐出ヘッドの吐出特性を取得し、
前記吐出特性に基づいて前記駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項6】
前記第2工程において、
前記複数の候補波形のそれぞれを前記駆動パルスの波形として用いた場合における前記液体吐出ヘッドの吐出特性を取得し、
前記吐出特性に基づいて少なくとも1つの仮波形を決定し、
前記少なくとも1つの仮波形のそれぞれが前記除外条件を満たすか否かを判定し、
その判定の結果に基づいて、前記少なくとも1つの仮波形のうち前記除外条件を満たさない仮波形を用いて、前記駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項7】
前記第2工程において、
前記複数の候補波形のそれぞれを前記駆動パルスの波形として用いた場合における前記液体吐出ヘッドの吐出特性を取得し、
前記吐出特性および前記除外条件を関数化することにより、前記駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項8】
前記第2工程において、
前記液体吐出ヘッドの吐出特性と前記除外条件とに基づいて前記複数の候補波形から一部の候補波形を選択し、
当該一部の候補波形をユーザーに通知し、
当該一部の候補波形のうちユーザーに選択された少なくとも1つの候補波形に基づいて、前記駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項9】
前記第1工程において、ユーザーの使用するクライアントで前記除外条件の入力を受け付けることにより、前記除外条件を取得する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項10】
前記クライアントで前記除外条件の入力を受け付けるための画像を表示部に表示させる第3工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の駆動波形決定方法。
【請求項11】
前記第1工程において、ユーザーの使用するクライアントに通信可能に接続されるサーバーで前記除外条件の入力を受け付けることにより、前記除外条件を取得する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項12】
前記第1工程において、記憶部に予め記憶された前記除外条件を読み出すことにより、前記除外条件を取得する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項13】
前記第1工程において、特許文献に関する情報が記憶されたデータベースサーバーとのネットワーク接続を介した入力を受け付けることにより、前記除外条件を取得する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項14】
前記除外条件は、波形を規定するパラメーターに関する条件である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項15】
前記除外条件は、吐出特性を示すパラメーターに関する条件である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項16】
液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定するための駆動波形決定プログラムであって、
除外条件を取得する第1工程と、
複数の候補波形および前記除外条件に基づいて、前記駆動パルスの波形を決定する第2工程と、をコンピューターに実行させる、
ことを特徴とする駆動波形決定プログラム。
【請求項17】
液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定装置であって、
除外条件を取得する取得部と、
複数の候補波形および前記除外条件に基づいて、前記駆動パルスの波形を決定する決定部と、を有する、
ことを特徴とする駆動波形決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動波形決定方法、駆動波形決定プログラムおよび駆動波形決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンター等の液体吐出装置では、一般に、圧電素子等の駆動素子に駆動パルスが印加されることにより、インク等の液体がノズルから吐出される。ここで、ヘッドの吐出特性が所望の特性となるように、駆動パルスの波形が決定される。
【0003】
例えば、特許文献1には、駆動パルスの波形を自動生成するための方法およびプログラムが記載される。特許文献1に記載の方法は、駆動パルスの波形を自動で生成する方式とユーザーによる手動で生成する方式とをユーザーにより選択可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-026566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、ヘッドメーカーがプリンターメーカーにヘッドのみを販売を行うビジネスモデルが存在する。このようなビジネスモデルのもとであっても、特許文献1に記載の方法を用いれば、ユーザーによるヘッドの様々な使用条件を加味した最適な吐出特性を実現し得る駆動パルスの波形を決定することができる。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法では、決定した駆動パルスの波形が吐出特性以外の条件について好ましい波形であるか否かが不明である。種々の理由から、吐出特性ではない条件も加味した上で駆動パルスの波形を決定したいというニーズも存在し、特許文献1の記載の方法は、そのニーズを満足する方法を提供できておらず、ユーザビリティに欠けるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る駆動波形決定方法は、液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定方法であって、除外条件を取得する第1工程と、複数の候補波形および前記除外条件に基づいて、前記駆動パルスの波形を決定する第2工程と、を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る駆動波形決定プログラムは、液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定するための駆動波形決定プログラムであって、除外条件を取得する第1工程と、複数の候補波形および前記除外条件に基づいて、前記駆動パルスの波形を決定する第2工程と、をコンピューターに実行させる。
【0009】
本開示の一態様に係る駆動波形決定装置は、液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定装置であって、除外条件を取得する取得部と、複数の候補波形および前記除外条件に基づいて、前記駆動パルスの波形を決定する決定部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る駆動波形決定装置を含むシステムの構成例を示す概略図である。
図2】駆動パルスの波形の一例を示す図である。
図3】吐出特性の測定を説明するための図である。
図4】第1実施形態に係る駆動波形決定装置を示す図である。
図5】第1実施形態に係る駆動波形決定方法を示す図である。
図6】駆動波形決定装置の表示装置に表示される画像を説明するための図である。
図7】第2実施形態に係る駆動波形決定装置を示す図である。
図8】第2実施形態に係る駆動波形決定方法を示す図である。
図9】第3実施形態に係る駆動波形決定装置を示す図である。
図10】第3実施形態に係る駆動波形決定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0012】
1.第1実施形態
1-1.駆動波形決定装置を含むシステム
図1は、第1実施形態に係る駆動波形決定装置400を含むシステム100の構成例を示す概略図である。システム100は、「液体」の一例であるインクを吐出する際に用いる駆動パルスPDの波形を決定する。
【0013】
図1に示すように、システム100は、液体吐出装置200と、測定装置300と、駆動波形決定装置400と、サーバー500と、データベースサーバー600と、を有する。
【0014】
ここで、液体吐出装置200は、プリンターメーカーにより提供される。ただし、液体吐出装置200に組み込まれる後述の液体吐出ヘッド210は、当該プリンターメーカーと異なるヘッドメーカーにより提供される。また、駆動波形決定装置400は、ユーザーの所有物を用いてもよいし、プリンターメーカーにより提供されてもよい。サーバー500は、ヘッドメーカーがユーザーに必要なサービスを提供することが可能であればよく、ヘッドメーカー自身により所有されてもよいし、ヘッドメーカー以外のウェブサービス提供者により所有されてもよい。データベースサーバー600は、プリンターメーカー、ヘッドメーカーおよびユーザー、上記ウェブサービス提供者のいずれでもない第三者により所有され、当該第三者によって保守、管理される。
【0015】
なお、プリンターメーカー自身が液体吐出装置200を使用する場合、当該プリンターメーカーがユーザーである。また、プリンターメーカーが液体吐出装置200を第三者に販売し、当該第三者がその液体吐出装置200を使用する場合、当該第三者がユーザーである。また、サーバー500がヘッドメーカー以外のウェブサービス提供者により所有される場合、ヘッドメーカーの所有する処理装置は通信網を介してサーバー500と通信可能に接続される(不図示)。
【0016】
システム100では、駆動波形決定装置400が駆動パルスPDの波形を決定する。この決定は、液体吐出装置200および測定装置300を適宜に駆動したり、測定装置300、サーバー500およびデータベースサーバー600からの情報を適宜に用いたりすることにより行われる。
【0017】
以下、図1に基づいて、液体吐出装置200の構成を説明するとともにシステム100の液体吐出装置200以外の各部の概略を説明する。
【0018】
液体吐出装置200は、インクジェット方式により記録媒体に印刷するプリンターである。当該記録媒体は、液体吐出装置200が印刷可能な媒体であればよく、特に限定されず、例えば、各種紙、各種布または各種フィルム等である。なお、液体吐出装置200は、シリアル型のプリンターでもよいし、ライン型のプリンターでもよい。
【0019】
図1に示すように、液体吐出装置200は、液体吐出ヘッド210と移動機構220と電源回路230と駆動信号生成回路240と駆動回路250と通信回路260と記憶回路270と処理回路280とを有する。
【0020】
液体吐出ヘッド210は、インクを記録媒体に向けて吐出する。図1では、液体吐出ヘッド210の構成要素として、複数の駆動素子211が図示される。図示しないが、液体吐出ヘッド210は、駆動素子211のほか、インクを収容するキャビティと、当該キャビティに連通するノズルと、有する。ここで、駆動素子211は、キャビティごとに設けられており、当該キャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出させる。駆動素子211は、例えば、キャビティの壁面の一部を構成する振動板を変形させる圧電素子であるか、または、キャビティ内のインクを加熱するヒーターである。なお、以下では、液体吐出ヘッド210を単に「ヘッド」という場合がある。
【0021】
図1に示す例では、液体吐出装置200の有する液体吐出ヘッド210の数が1個であるが、当該数は、2個以上でもよい。この場合、例えば、2個以上の液体吐出ヘッド210がユニット化される。液体吐出装置200がシリアル型である場合、記録媒体の幅方向の一部にわたり複数のノズルが分布するように、液体吐出ヘッド210またはこれを2個以上含むユニットが用いられる。また、液体吐出装置200がライン型である場合、記録媒体の幅方向での全域にわたり複数のノズルが分布するように、2個以上の液体吐出ヘッド210を含むユニットが用いられる。
【0022】
移動機構220は、液体吐出ヘッド210と記録媒体との相対的な位置を変化させる。より具体的には、液体吐出装置200がシリアル型である場合、移動機構220は、記録媒体を所定方向に搬送する搬送機構と、液体吐出ヘッド210を当該記録媒体の搬送方向に直交する軸に沿って反復的に移動させる移動機構と、を有する。また、液体吐出装置200がライン型である場合、移動機構220は、2個以上の液体吐出ヘッド210を含むユニットの長手方向に交差する方向に記録媒体を搬送する搬送機構を有する。
【0023】
電源回路230は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、液体吐出装置200の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路230は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、液体吐出ヘッド210等に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路240等に供給される。
【0024】
駆動信号生成回路240は、液体吐出ヘッド210の有する各駆動素子211を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路240は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路240では、当該DA変換回路が処理回路280からの後述の波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路230からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することにより駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、駆動素子211に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。なお、駆動パルスPDについては、後に図2に基づいて詳述する。
【0025】
駆動回路250は、後述の制御信号SIに基づいて、複数の駆動素子211のそれぞれについて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える。駆動回路250は、例えば、トランスミッションゲート等の回路である。
【0026】
通信回路260は、駆動波形決定装置400に通信可能に接続される通信装置である。通信回路260は、例えば、USB(Universal Serial Bus)およびLAN(Local Area Network)等のインターフェイスを含む。なお、通信回路260は、例えば、Wi-FiまたはBluetooth等により駆動波形決定装置400に無線接続されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等を介して駆動波形決定装置400に接続されてもよい。なお、Wi-FiおよびBluetoothは、それぞれ、登録商標である。
【0027】
記憶回路270は、処理回路280が実行する各種プログラムと、処理回路280が処理する印刷データ等の各種データと、を記憶する。記憶回路270は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。印刷データは、例えば、駆動波形決定装置400から供給される。なお、記憶回路270は、処理回路280の一部として構成されてもよい。
【0028】
処理回路280は、液体吐出装置200の各部の動作を制御する機能と、各種データを処理する機能と、を有する。処理回路280は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路280は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0029】
処理回路280は、記憶回路270に記憶されるプログラムを実行することにより、液体吐出装置200の各部の動作を制御する。ここで、処理回路280は、液体吐出装置200の各部の動作を制御するための信号として、制御信号Sk、SIおよび波形指定信号dCom等の信号を生成する。
【0030】
制御信号Skは、移動機構220の駆動を制御するための信号である。制御信号SIは、駆動回路250の駆動を制御するための信号である。具体的には、制御信号SIは、駆動回路250が駆動信号生成回路240からの駆動信号Comを駆動パルスPDとして液体吐出ヘッド210に対して供給するか否かを所定の単位期間ごとに指定する。この指定により、液体吐出ヘッド210から吐出されるインク量等が指定される。波形指定信号dComは、駆動信号生成回路240で生成される駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。
【0031】
測定装置300は、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を測定するための装置である。当該吐出特性としては、例えば、吐出速度、吐出角度、吐出量、サテライトの数および安定性等が挙げられる。なお、以下では、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を単に「吐出特性」という場合がある。
【0032】
本実施形態の測定装置300は、液体吐出ヘッド210から吐出された飛翔中のインクを撮像する撮像装置である。具体的には、測定装置300は、例えば撮像光学系および撮像素子を有する。撮像光学系は、少なくとも1つの撮像レンズを含む光学系であり、プリズム等の各種の光学素子を含んでもよいし、ズームレンズまたはフォーカスレンズ等を含んでもよい。撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーまたはCMOS(Complementary MOS)イメージセンサー等である。当該撮像素子の撮像結果は、駆動波形決定装置400に入力され、駆動波形決定装置400では、当該撮像結果を用いた演算処理により各吐出特性が算出される。なお、測定装置300を用いた吐出特性の測定については、後に図3に基づいて詳述する。
【0033】
なお、前述の吐出特性のうちインク量は、測定装置300を用いずに、記録媒体等に着弾したインクを撮像する装置を用いたり、液体吐出ヘッド210から吐出されたインクの質量を測定する電子天秤を用いたりすることによっても測定可能である。また、吐出特性は、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出状態に関する特性であればよく、前述の特性のほか、液体吐出ヘッド210の駆動周波数または残留振動等も含む概念である。当該残留振動は、駆動素子211の駆動後に液体吐出ヘッド210におけるインクの流路に残留する振動であり、例えば、駆動素子211からの電圧信号として検出される。
【0034】
駆動波形決定装置400は、液体吐出装置200および測定装置300の動作を制御するコンピューターである。ここで、駆動波形決定装置400が液体吐出装置200、測定装置300、サーバー500およびデータベースサーバー600のそれぞれに無線または有線により互いに通信可能に接続される。なお、この接続には、LANまたはインターネットを含む通信網が介在してもよい。
【0035】
特に、駆動波形決定装置400は、駆動パルスPDの波形を決定する機能を有する。なお、駆動波形決定装置400の構成については、後に図4に基づいて詳述する。
【0036】
サーバー500は、クラウドサーバーとして機能するコンピューターであり、駆動波形決定装置400で駆動パルスPDの波形を決定するのに必要な情報の送受信を適宜に行う。具体的には、サーバー500は、駆動波形決定装置400からの要求に応じて、後述の除外条件情報D5またはその生成に必要な情報の一部または全部を駆動波形決定装置400に送信する。なお、サーバー500は、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0037】
データベースサーバー600は、特許文献に関する情報を記憶したデータベースを有するサーバーとして機能するコンピューターである。当該情報は、後述の特許文献情報D6またはその生成に必要な情報の一部または全部であり、必要に応じて、駆動波形決定装置400に取得される。なお、データベースサーバー600は、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0038】
1-2.駆動パルス
図2は、駆動パルスPDの波形の一例を示す図である。図2中、横軸は時間tであり、縦軸は電位Vである。図2では、駆動信号Comの電位の経時的変化が示される。図2に示すように、駆動信号Comは、所定周期の単位期間Tuごとに、駆動パルスPDaおよび駆動パルスPDbを含む。なお、図2に示す波形は、駆動素子211が圧電素子である場合に用いる波形の一例である。また、駆動パルスPDの波形は、図2に示す例に限定されない。
【0039】
駆動パルスPDaおよび駆動パルスPDbのそれぞれは、液体吐出ヘッド210のノズルからインクを吐出させる強さの圧力変動を液体吐出ヘッド210の圧力室に生じさせるように駆動素子211を駆動させる駆動パルスPDである。ここで、単位期間Tuは、駆動パルスPDaを含む期間Tu1と、駆動パルスPDbを含む期間Tu2と、に区分される。なお、以下では、駆動パルスPDaおよび駆動パルスPDbのそれぞれを駆動パルスPDという場合がある。
【0040】
図2に示す例では、駆動パルスPDaの波形は、期間Tu1において、中間電位Vcaから、第1電位VLa、第2電位VHaの順に、これらの電位を経由した後に中間電位Vcaに戻る波形である。第1電位VLaは、中間電位Vcaよりも低い電位である。これに対し、第2電位VHaは、中間電位Vcaよりも高い電位である。なお、中間電位Vcaは、前述のオフセット電位VBAまたはこれに所定バイアスを印加した基準電位である。
【0041】
ここで、駆動パルスPDaの波形は、開始点から終了点までの間に、第1期間P1aと第2期間P2aと第3期間P3aと第4期間P4aと第5期間P5aと第6期間P6aと第7期間P7aとをこの順で含む。第1期間P1aは、電位を中間電位VCaに維持する期間である。第2期間P2aは、電位を中間電位VCaから第1電位VLaに低下させる期間である。第3期間P3aは、電位を第1電位VLaに維持する期間である。第4期間P4aは、電位を第1電位VLaから第2電位VHaまで上昇させる期間である。第5期間P5aは、電位を第2電位VHaに維持する期間である。第6期間P6aは、電位を第2電位VHaから中間電位Vcaに低下させる期間である。第7期間P7aは、電位を中間電位Vcaに維持する期間である。なお、駆動パルスPDaの波形の開始点は、期間Tu1の開始点である。また、駆動パルスPDaの波形の終了点は、期間Tu1の終了点である。
【0042】
以上の駆動パルスPDaは、中間電位Vcaから第1電位VLaに変化させることにより液体吐出ヘッド210の圧力室を増大させ、第1電位VLaから第2電位VHaに変化させることにより当該圧力室の容積を急激に減少させる。このような圧力室の容積の変化により、当該圧力室内のインクの一部が液体吐出ヘッド210のノズルから液滴として吐出される。
【0043】
一方、駆動パルスPDbの波形は、期間Tu2において、中間電位Vcbから、第1電位VLb、第2電位VHbの順に、これらの電位を経由した後に中間電位Vcbに戻る波形である。第1電位VLbは、中間電位Vcbよりも低い電位である。これに対し、第2電位VHbは、中間電位Vcbよりも高い電位である。ただし、第1電位VLbと第2電位VHbとの電位差は、第1電位VLaと第2電位VHaとの電位差よりも大きい。図2に示す例では、第1電位VLbが第1電位VLaに等しい電位であるが、第2電位VHbが第2電位VHaよりも高い電位である。中間電位Vcbは、中間電位Vcaに等しい電位である。なお、駆動パルスPDbの各部の電位は、図2に示す例に限定されない。例えば、第1電位VLbが第1電位VLaと異なってもよいし、中間電位Vcbが中間電位Vcaと異なってもよい。
【0044】
ここで、駆動パルスPDbの波形は、開始点から終了点までの間に、第1期間P1bと第2期間P2bと第3期間P3bと第4期間P4bと第5期間P5bと第6期間P6bと第7期間P7bとをこの順で含む。第1期間P1bは、電位を中間電位VCbに維持する期間である。第2期間P2bは、電位を中間電位VCbから第1電位VLbに低下させる期間である。第3期間P3bは、電位を第1電位VLaに維持する期間である。第4期間P4bは、電位を第1電位VLbから第2電位VHbまで上昇させる期間である。第5期間P5bは、電位を第2電位VHbに維持する期間である。第6期間P6bは、電位を第2電位VHbから中間電位Vcbに低下させる期間である。第7期間P7bは、電位を中間電位Vcbに維持する期間である。なお、駆動パルスPDbの波形の開始点は、期間Tu2の開始点である。また、駆動パルスPDbの波形の終了点は、期間Tu2の終了点である。
【0045】
以上の駆動パルスPDbは、中間電位Vcbから第1電位VLbに変化させることにより液体吐出ヘッド210の圧力室を増大させ、第1電位VLbから第2電位VHbに変化させることにより当該圧力室の容積を急激に減少させる。このような圧力室の容積の変化により、当該圧力室内のインクの一部が液体吐出ヘッド210のノズルから液滴として吐出される。
【0046】
ここで、前述のように、第1電位VLbと第2電位VHbとの電位差が第1電位VLaと第2電位VHaとの電位差よりも大きいので、駆動パルスPDbを用いる場合、駆動パルスPDaを用いる場合に比べて、ノズルから吐出される液体の量が多い。したがって、駆動パルスPDaを用いる場合に液体吐出ヘッド210から吐出されるインクにより形成されるドットのサイズを第1サイズとすると、駆動パルスPDbを用いる場合に液体吐出ヘッド210から吐出されるインクにより形成されるドットのサイズは、第1サイズよりも大きい第2サイズである。
【0047】
以上のような駆動パルスPDaおよび駆動パルスPDbのそれぞれでは、前述の各電位または各期間を変更することにより、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を調整することができる。
【0048】
1-3.吐出特性の測定
図3は、吐出特性の測定を説明するための図である。図3に示すように、測定装置300は、液体吐出ヘッド210のノズルNから吐出されたインクの液滴DRの飛翔中の状態を吐出方向に対して直交または交差する方向から撮像する。
【0049】
図3に示す例では、液体吐出ヘッド210には、ノズルNが開口するノズル面212が設けられる。ノズル面212は、通常、記録媒体Mの印刷面に平行となるように設置される。
【0050】
液滴DRは、ノズルNから吐出されるメインの液滴である。図3に示す例では、液滴DRのほか、液滴DRの発生に伴って副次的に液滴DRに後続して発生するサテライトと呼ばれる複数の液滴DRaがノズルNから吐出される。液滴DRaは、液滴DRよりも小径であり、液滴DRaの発生の有無、数または大きさ等は、インクの種類、または、駆動パルスPDの波形等に応じて異なる。
【0051】
測定装置300は、飛翔中の液滴DRを連続的または微小な時間間隔で間欠的に撮像を行う。この撮像の結果に基づいて、記録媒体Mに対する液滴DRの到達タイミングを測定することができる。また、測定装置300の測定結果に基づいて、所定のタイミングごとの液滴DRの位置を測定したり、複数のタイミングでの当該位置に基づいて液滴DRの吐出方向、吐出速度または着弾位置を測定したりすることもできる。さらに、ノズルNから複数の液滴DRを連続して吐出させる場合、測定装置300の測定結果に基づいて、複数の液滴DRが合体するか否かを測定したり、その合体順を測定したりすることもできる。
【0052】
液体吐出ヘッド210からの液滴DRの飛翔距離が所定距離に到達するタイミングは、実際に液滴DRの飛翔距離が当該所定距離に達した時刻に基づいて算出してもよいし、液滴DRの吐出速度および当該所定距離に基づいて算出してもよい。ここで、当該所定距離がノズル面212と記録媒体Mとの間の距離PGである場合、液滴DRが記録媒体Mに到達するタイミングが測定される。
【0053】
液体吐出ヘッド210からの液滴DRの量である吐出量は、例えば、測定装置300の撮像画像を用いて、液滴DRの直径LBに基づいて液滴DRの体積として算出される。また、液体吐出ヘッド210からの液滴DRの吐出速度は、例えば、飛翔中の液滴DRの任意の2つの位置間の距離LCと時間とに基づいて算出される。図3では、当該所定時間後の液滴DRが二点鎖線で示される。また、液体吐出ヘッド210からのインクのアスペクト比(LA/LB)をインクの吐出特性として算出することもできる。当該所定時間前後の液滴DRの位置関係により、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出角度を求めることもできる。なお、液体吐出ヘッド210からの液滴DRの量は、液滴DRの直径LBと液滴DRの密度とに基づいて液滴DRの質量として算出されてもよい。
【0054】
1-4.駆動波形決定装置
図4は、第1実施形態に係る駆動波形決定装置400を示す図である。図4に示すように、駆動波形決定装置400は、「表示部」の一例である表示装置410と、入力装置420と、通信回路430と、「記憶部」の一例である記憶回路440と、処理回路450と、を有する。これらは、互いに通信可能に接続される。
【0055】
表示装置410は、処理回路450による制御のもとで各種の画像を表示する。ここで、表示装置410は、例えば、液晶表示パネルまたは有機EL(electro-luminescence)表示パネル等の各種の表示パネルを有する。なお、表示装置410は、駆動波形決定装置400の外部に設けられてもよい。また、表示装置410は、液体吐出装置200の構成要素であってもよい。
【0056】
入力装置420は、ユーザーからの操作を受け付ける機器である。例えば、入力装置420は、タッチパッド、タッチパネルまたはマウス等のポインティングデバイスを有する。ここで、入力装置420は、タッチパネルを有する場合、表示装置410を兼ねてもよい。なお、入力装置420は、駆動波形決定装置400の外部に設けられてもよい。また、入力装置420は、液体吐出装置200の構成要素であってもよい。
【0057】
通信回路430は、液体吐出装置200および測定装置300のそれぞれに通信可能に接続される通信装置である。通信回路430は、例えば、USBおよびLAN等のインターフェイスを含む。なお、通信回路430は、例えば、Wi-FiまたはBluetooth等により液体吐出装置200または測定装置300に無線接続されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等を介して液体吐出装置200または測定装置300に接続されてもよい。
【0058】
記憶回路440は、処理回路450が実行する各種プログラム、および処理回路450が処理する各種データを記憶する装置である。記憶回路440は、例えば、ハードディスクドライブまたは半導体メモリーを有する。なお、記憶回路440の一部または全部は、駆動波形決定装置400の外部の記憶装置またはサーバー等に設けてもよい。
【0059】
本実施形態の記憶回路440には、「駆動波形決定プログラム」の一例であるプログラムPG1と、目標値情報D1と、候補波形情報D2と、仮波形情報D3と、測定情報D4と、除外条件情報D5と、決定波形情報DPと、特許文献情報D6と、が記憶される。なお、記憶回路440には、これらの情報およびプログラム以外の情報、例えば、測定装置300による測定に用いた波形、温度等の測定条件に関する情報等が適宜に含まれてもよい。
【0060】
候補波形情報D2、仮波形情報D3および決定波形情報DPのそれぞれは、波形を規定する電圧、電位、電位変化の傾き等のパラメーターに関する情報であり、駆動パルスPDの波形を示す。
【0061】
ただし、候補波形情報D2および仮波形情報D3は、決定波形情報DPを生成するのに用いる情報である。より具体的には、候補波形情報D2は、互いに異なる複数の候補波形を示す情報であり、目標値情報D1等に基づいて後述の取得部451により生成される。仮波形情報D3は、少なくとも1つの仮波形を示す情報であり、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のうち除外条件情報D5の示す除外条件を満たさない一部の候補波形に基づいて後述の決定部452により生成される。決定波形情報DPは、少なくとも1つの波形を示す情報であり、仮波形情報D3の示す少なくとも1つの仮波形に基づいて後述の決定部452により生成される。例えば、決定波形情報DPは、駆動パルスPDの波形を規定するための各種パラメーターに関する情報である。
【0062】
目標値情報D1は、吐出特性の目標条件に関する設定情報であり、ユーザーからの入力に基づいて後述の取得部451により生成される。目標値情報D1の吐出特性としては、例えば、液体吐出ヘッド210からの1回の吐出あたりの液体量である吐出量、液体吐出ヘッド210の駆動周波数、液体吐出ヘッド210から吐出されるメインの液滴の吐出速度等が挙げられる。
【0063】
測定情報D4は、測定装置300の測定結果に基づく吐出特性に関する情報である。なお、測定情報D4には、測定装置300の測定結果に関する情報のほか、測定装置300の測定条件に関する情報、例えば、測定に用いた駆動パルスPDの波形に関する情報等の情報が含まれてもよい。
【0064】
除外条件情報D5は、決定波形情報DPの示す波形として除外すべき除外条件を示す情報である。除外条件は、ユーザーが任意に設定した条件でも良いし、ヘッドメーカーが記憶回路440または液体吐出ヘッド210のメモリーに予め記憶しておいた条件や追加で入力した条件でもよいし、自動で収集された条件でも良い。図4に示す例では、除外条件情報D5は、波形パラメーター情報D5aと吐出特性パラメーター情報D5bとを含む。除外条件情報D5の具体例は後述する。
【0065】
波形パラメーター情報D5aは、波形を規定する電圧、電位、電位変化の傾き等のパラメーターに関する情報である。吐出特性パラメーター情報D5bは、吐出速度、吐出角度、吐出量、サテライトの数および安定性等の吐出特性のパラメーターに関する情報である。
【0066】
特許文献情報D6は、特許文献に関する情報であり、存続期間中の特許権に係る波形または吐出特性のパラメーターに関する情報を含む。特許文献情報D6は、ユーザーによる設定内容に基づいて、データベースサーバー600から入力され、後述の取得部451により取得される。なお、特許文献情報D6は、特許権の設定登録があったときに発行される特許掲載公報や公開されたときに発行される特許公開公報に関する情報を含んでいればよい。この特許文献情報D6は、なくても良い。
【0067】
プログラムPG1は、駆動パルスPDの波形の決定のための各種機能を処理回路450に提供する。当該各種機能は、後述の取得部451および決定部452の機能を含む。
【0068】
処理回路450は、駆動波形決定装置400の各部、液体吐出装置200および測定装置300を制御する機能、および各種データを処理する機能を有する装置である。処理回路450は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを有する。なお、処理回路450は、単一のプロセッサーで構成されてもよいし、複数のプロセッサーで構成されてもよい。また、処理回路450の機能の一部または全部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで実現してもよい。
【0069】
処理回路450は、記憶回路440からプログラムPG1を読み込んで実行することにより、取得部451および決定部452として機能する。
【0070】
取得部451は、駆動パルスPDの波形の決定に必要な設定を行うとともに除外条件を取得する。具体的には、取得部451は、設定のためのGUI(Graphical User Interface)用の画像を表示装置410に表示させ、当該画像に基づく入力装置420の操作に従い、目標値情報D1および除外条件情報D5に関する入力を受け付け、これらの情報を生成する。
【0071】
本実施形態では、取得部451は、目標値情報D1の入力のためのGUI用の画像として後述の画像G2を表示装置410に表示させる。また、取得部451は、除外条件情報D5の入力のためのGUI用の画像として後述の画像G1を表示装置410に表示させる。
【0072】
決定部452は、取得部451の設定結果および取得結果に基づいて、駆動パルスPDの波形を決定する。本実施形態では、まず、決定部452は、目標値情報D1基づいて候補波形情報D2を生成する。次に、決定部452は、候補波形情報D2に基づいて測定装置300による測定を行うことにより測定情報D4を生成する。そして、決定部452は、目標値情報D1および測定情報D4に基づいて仮波形情報D3を生成した後、除外条件情報D5に基づいて仮波形情報D3を調整する。その後、決定部452は、この調整後の仮波形情報D3に基づいて、決定波形情報DPを生成する。決定波形情報DPの示す波形は、調整後の仮波形情報D3の示す波形そのものでもよいし、調整後の仮波形情報D3の示す波形をユーザーの操作等によりさらに調整した波形でもよい。このように、決定部452は、複数の候補波形および除外条件に基づいて、駆動パルスPDの波形を決定する。
【0073】
ここで、決定部452は、仮波形情報D3の示す少なくとも1つの仮波形が除外条件情報D5の示す除外条件を満たす波形を含む場合、必要に応じて、その旨を表示装置410に表示させる。この表示は、後述の図6に示す画像G3のように、除外条件を満たす波形を駆動パルスPDの波形の決定に用いるか否かの選択についてユーザーによる入力を受け付け可能である。例えば、ユーザーが保有するか、または、ユーザーが使用許諾をし得る特許権についての波形が除外条件を満たす仮波形として表示された場合、当該波形を除外しないようにユーザーが選択してもよい。
【0074】
1-5.駆動パルスの波形決定
図5は、第1実施形態に係る駆動波形決定方法を示す図である。当該駆動波形決定方法は、設定のための表示を行う第3工程S3と、除外条件を取得する第1工程S1と、駆動パルスPDの波形を決定する第2工程S2と、を含み、この順でこれらの工程を実行する。
【0075】
第3工程S3では、取得部451が、駆動パルスPDの波形の決定に必要な各種設定のための後述の画像GUを表示装置410に表示させ、当該各種設定を行う。具体的には、第3工程S3では、まず、取得部451は、ステップS11において、目標値を設定することにより、目標値情報D1を生成する。当該目標値の設定は、後述の画像GU内の画像G2を用いた入力に基づいて行われる。次に、取得部451は、ステップS12において、複数の候補波形を設定することにより、候補波形情報D2を生成する。当該複数の候補波形の設定は、当該目標値に応じて複数の波形を自動的に生成する波形生成プログラムを用いて行われる。なお、当該複数の候補波形の設定は、ユーザーの手動により行われてもよい。
【0076】
第1工程S1では、取得部451が、除外条件を取得する。具体的には、第1工程S1では、取得部451が、ステップS13において、除外条件を取得することにより、除外条件情報D5を生成する。当該除外条件の取得は、画像G1を用いてユーザーによる入力と、サーバー500からの入力と、駆動波形決定装置400の記憶回路440または液体吐出ヘッド210の図示しないメモリーからの入力と、データベースサーバー600からの入力と、のうちの1つ以上の入力により行われる。除外条件情報D5の生成には、必要に応じて、サーバー500またはデータベースサーバー600からの特許文献情報D6が用いられる。なお、ステップS13は、後述のステップS15とステップS16との間に実行されてもよい。
【0077】
第2工程S2では、決定部452が駆動パルスPDの波形を決定する。具体的には、第2工程S2では、まず、決定部452が、ステップS14において、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いた場合における液体吐出ヘッド210の吐出特性を取得することにより、測定情報D4を生成する。当該吐出特性の取得は、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いて液体吐出装置200を動作させ、測定装置300による測定結果を用いてもよいし、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いて吐出特性をシミュレーションした結果を用いてもよい。
【0078】
次に、決定部452は、ステップS15において、測定情報D4の示す吐出特性に基づいて少なくとも1つの仮波形を決定することにより、仮波形情報D3を生成する。当該仮波形の決定は、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のうち吐出量、吐出速度、安定性等の吐出特性が最適な候補波形を仮波形として自動で決定することにより行われるか、または、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のうちパレートな関係にある2以上の候補波形をユーザーに通知し、当該2以上の候補波形からユーザーにより選択される候補波形を仮波形として決定することにより行ってもよい。
【0079】
次に、決定部452は、ステップS16において、仮波形情報D3の示す少なくとも1つの仮波形のそれぞれが当該除外条件を満たすか否かを判定する。仮波形情報D3の示す少なくとも1つの仮波形のそれぞれが当該除外条件を満たす場合、決定部452は、前述のステップS15に戻り、当該仮波形とは異なる候補波形を再度決定する。例えば、吐出特性が2番目に適する候補波形を次の仮波形として決定しても良い。一方、仮波形情報D3の示す少なくとも1つの仮波形のそれぞれが当該除外条件を満たさない場合、決定部452は、ステップS17において、ステップS16での判定の結果に基づいて、当該少なくとも1つの仮波形のうち当該除外条件を満たさない仮波形を用いて、駆動パルスPDの波形を決定することにより、決定波形情報DPを生成する。
【0080】
なお、後述の図6に示す入力部G3aでNoが選択されるとともに入力部G3bでYesが選択され、かつ、ステップS16にて仮波形情報D3の示す少なくとも1つの仮波形のそれぞれが当該除外条件を満たさない場合、決定部452は、除外条件を満たす波形の使用を許容するか否かの入力を求める画像を表示装置410に表示させる。そして、除外条件を満たす波形の使用を許容する場合、決定部452は、ステップS17に移行し、一方、除外条件を満たす波形の使用を許容しない場合、決定部452は、ステップS15に戻る。
【0081】
1-6.GUI用画像
前述の第3工程S3、第1工程S1、第2工程S2で駆動パルスPDの波形の決定に必要な各種情報を入力するためのGUI用の画像が駆動波形決定装置400の表示装置410表示される。以下、この画像の具体例を参照しつつ、各工程の詳細について説明する。
【0082】
図6は、駆動波形決定装置400の表示装置410に表示される画像GUを説明するための図である。画像GUは、駆動パルスPDの波形の決定に必要な各種情報を入力するためのGUI用の画像である。画像GUは、画像G1と画像G2と画像G3と画像G4とを含む。
【0083】
画像G1は、除外条件に関する設定を行うための画像である。この設定に基づいて、ステップS13において除外条件が取得される。画像G1は、領域RE1と領域RE2とに区分される。
【0084】
領域RE1は、除外条件をユーザーの任意に設定するための領域であり、吐出特性および波形について除外条件を設定するための複数の領域RE1aを含む。図6に示す例では、領域RE1が4個の領域RE1aで構成される。領域RE1aは、入力部G1aと入力部G1bと入力部G1cとボタンG1eと、を含む。入力部G1aは、除外すべき吐出量の範囲を設定するための入力欄である。入力部G1bは、除外すべき吐出速度の範囲を設定するための入力欄である。つまり、入力部G1a、G1bは、除外すべき吐出特性パラメーター情報D5bの一部をユーザーに入力させるためのものである。入力部G1cは、除外すべきその他の吐出特性および波形の範囲を設定するための入力欄である。図6では省略しているが、入力部G1cのドロップダウンリストをクリックすると、波形を規定する電圧、電位、電位変化の傾き、吐出角度、サテライトの数、安定性などの項目が表示され、ユーザーはその中から1つの項目を選択することができる。そして、その項目について、除外すべき範囲を設定することができる入力欄が設けられている。つまり、入力部G1cは、除外すべき波形パラメーター情報D5aや、除外すべき吐出特性パラメーター情報D5bの一部をユーザーに入力させるためのものである。ボタンG1dは、領域RE1aを縮小したり拡大したりするためのボタンである。領域RE1aが複数設けられていることからわかるように、ユーザーは、複数の除外条件をまとめて入力することができる。
【0085】
領域RE2は、除外条件についてその他の設定を行うための領域であり、入力部G1fと入力部G1gと入力部G1hとを含む。
【0086】
入力部G1fは、予め記憶回路440等に記憶された情報に基づいて除外条件を入力するか否かを選択するためのドロップダウンリストである。この除外条件は、例えば、ヘッドメーカーが予め記憶させておいた、特許権を侵害するリスクが生じ得る波形パラメーター情報D5aや吐出特性パラメーター情報D5bの範囲(特許文献に関する条件の一例)である。この場合、その除外条件は、ヘッドメーカーが液体吐出ヘッド210を製造、販売した段階で公開または設定登録がなされており、リスクを認知し得たものに対応する。
【0087】
入力部G1gは、サーバー500からの情報に基づいて除外条件を入力するか否かを選択するためのドロップダウンリストである。この除外条件は、例えば、ヘッドメーカーがヘッド製造、販売後に追加で入力した、特許権を侵害するリスクが生じ得る波形パラメーター情報D5aや吐出特性パラメーター情報D5bの範囲(特許文献に関する条件の一例)である。この場合、その除外条件は、ヘッドメーカーが液体吐出ヘッド210を製造、販売した後に公開または設定登録がなされたため、その時点ではリスクを認知し得なかったものに対応する。
【0088】
入力部G1hは、データベースサーバー600からの情報に基づいて除外条件を入力するか否かを選択するためのドロップダウンリストである。この除外条件は、データベースサーバー600から収集され、記憶回路440に記憶された特許文献情報D6に対応する。
【0089】
画像G2は、目標値を入力するための画像である。画像G2に対するユーザーの入力に基づいて、ステップS11において目標値が設定される。画像G2は、入力部G2aと入力部G2bと入力部G2cとを含む。入力部G2aは、目標とする吐出量の範囲を設定するための入力欄である。入力部G2bは、目標とする吐出速度の範囲を設定するための入力欄である。入力部G2cは、目標とするその他の吐出特性および波形の範囲を設定するための入力欄である。
【0090】
画像G3は、候補波形が除外条件を満たす際の処理に関する設定を行うための領域であり、入力部G3aと入力部G3bとを含む。入力部G3aは、除外条件を満たす候補波形を自動的に削除するか否かを選択するためのドロップダウンリストである。入力部G3aをYesにした場合、ステップS12において候補波形を設定した後、それが除外条件を満足する場合には、その候補波形についてはステップS14の波形の印加、吐出、測定を行わない。つまりYesにすると、ステップS21で決定される波形が、除外条件を満足することはない。入力部G3aをNoにした場合は、除外条件を満足する場合であっても、自動的にその候補波形を削除することは行わない。入力部G3bは、候補波形が除外条件を満たす旨の通知を行うか否かを選択するためのドロップダウンリストである。入力部G3bをYesにした場合、候補波形が除外条件を満足する場合、その旨をユーザーに通知する。例えば、入力部G3aをNoにし、入力部G3bをYesにした場合には、候補波形が除外条件を満足する場合にユーザーにその旨を通知しつつ、その候補波形を採用するか否かをユーザーに選択させるためのステップを更に介在させても良い。入力部G3bをNoにした場合、候補波形が除外条件を満足する場合であっても、ユーザーへの通知を行わない。
【0091】
画像G4は、画像G1から画像G3に入力された設定内容に基づいて、駆動パルスPDの波形を決定する処理を開始するためのボタンである。
【0092】
以上の画像GUを用いて、目標値情報D1および除外条件情報D5の生成後に、駆動パルスPDの波形の決定が開始される。なお、画像GUは、目標値情報D1および除外条件情報D5を用いた駆動パルスPDの波形の決定に必要な設定を行うことができればよく、図6に示す例に限定されない。
【0093】
以上のように、「液体」の一例であるインクを吐出する液体吐出ヘッド210に設けられる駆動素子211に印加される駆動パルスPDの波形を決定する駆動波形決定方法が行われる。
【0094】
本実施形態の駆動波形決定方法は、第1工程S1と第2工程S2とを含む。第1工程S1は、除外条件情報D5の示す除外条件を取得する。第2工程S2は、候補波形情報D2の示す複数の候補波形と当該除外条件とに基づいて、駆動パルスPDの波形を決定する。
【0095】
以上の駆動波形決定方法では、当該複数の候補波形および当該除外条件に基づいて、駆動パルスPDの波形が決定されるので、当該除外条件を満たす波形が除外されるように、駆動パルスPDの波形を決定することができる。ここで、当該除外条件として吐出特性以外の条件を用いることにより、吐出特性だけでなく、吐出特性以外の条件についても好ましい駆動パルスPDの波形を決定することができる。したがって、ユーザーが吐出特性以外の条件についてヘッドメーカーに問い合わせたり自ら調べたりする必要がない。この結果、ユーザーの工数負荷が従来に比べて軽減されるので、優れたユーザビリティが実現される。
【0096】
また、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第1工程S1において、特許文献に関する条件を当該除外条件として取得する。このため、特許権を侵害しない駆動パルスPDの波形を決定することができる。
【0097】
さらに、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第2工程S2において、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のうちの一部の候補波形が除外条件情報D5の示す除外条件を満たす場合、当該一部の候補波形が駆動パルスPDの波形から除外されるように、駆動パルスPDの波形を決定する。このため、当該除外条件を満たさない駆動パルスPDの波形を決定することができる。
【0098】
また、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第2工程S2において、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のうちの一部の候補波形が除外条件情報D5の示す除外条件を満たす場合、その旨をユーザーに通知する。このため、ユーザーに当該除外条件のリスクを認知させることができる。
【0099】
さらに、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第2工程S2において、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いた場合における液体吐出ヘッド210の吐出特性を取得し、当該吐出特性に基づいて少なくとも1つの仮波形を決定し、当該少なくとも1つの仮波形のそれぞれが当該除外条件を満たすか否かを判定し、その判定の結果に基づいて、当該少なくとも1つの仮波形のうち当該除外条件を満たさない仮波形を用いて、駆動パルスPDの波形を決定する。このため、当該複数の候補波形のそれぞれについて当該除外条件を満たすか否かの判定を行う場合に比べて、当該除外条件を満たすか否かの判定のためのプロセッサー処理の負荷を低くすることができる。
【0100】
また、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第2工程S2において、液体吐出ヘッド210の吐出特性と除外条件情報D5の示す除外条件とに基づいて候補波形情報D2の示す複数の候補波形から一部の候補波形を選択し、当該一部の候補波形をユーザーに通知し、当該一部の候補波形のうちユーザーに選択された少なくとも1つの候補波形に基づいて、駆動パルスPDの波形を決定する。このため、駆動パルスPDの波形の決定についてユーザーの選択による自由度を高めることができる。
【0101】
さらに、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第1工程S1において、ユーザーの使用するクライアントの一例である駆動波形決定装置400で除外条件情報D5の示す除外条件の入力を受け付けることにより、当該除外条件を取得する。このため、ユーザーにより当該除外条件を設定することができる。
【0102】
また、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、駆動波形決定装置400で除外条件情報D5の示す除外条件の入力を受け付けるための画像G1を「表示部」の一例である表示装置410に表示させる第3工程S3をさらに含む。このため、表示装置410の表示によりユーザーによる除外条件の入力の負担を軽減することができる。
【0103】
さらに、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第1工程S1において、ユーザーの使用するクライアントの一例である駆動波形決定装置400に通信可能に接続されるサーバー500で除外条件情報D5の示す除外条件の入力を受け付けることにより、当該除外条件を取得する。このため、ヘッドメーカー等により当該除外条件を設定することができる。
【0104】
また、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第1工程S1において、「記憶部」の一例である記憶回路440に予め記憶された除外条件を読み出すことにより、当該除外条件を取得する。このため、ユーザーにより予め準備した除外条件を用いることができる。
【0105】
さらに、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第1工程S1において、特許文献に関する情報が記憶されたデータベースサーバー600とのネットワーク接続を介した入力を受け付けることにより、除外条件を取得する。このため、最新の特許文献に関する除外条件を容易に取得することができる。
【0106】
また、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、除外条件情報D5の示す除外条件は、波形を規定するパラメーターに関する条件を含む。このため、除外条件として、波形を規定する電位、印加電圧、電位変化の傾き等のパラメーターの条件を設定することができる。
【0107】
さらに、前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、除外条件情報D5の示す除外条件は、吐出特性を示すパラメーターに関する条件を含む。このため、除外条件として、吐出特性を示す吐出量、吐出速度、合体状態等のパラメーターの条件を設定することができる。
【0108】
以上の駆動波形決定方法は、前述のように、「駆動波形決定プログラム」の一例であるプログラムPG1をコンピューターに実行させることにより実現される。すなわち、プログラムPG1は、前述の第1工程S1と第2工程S2とをコンピューターに実行させる。
【0109】
ここで、駆動波形決定装置400は、当該コンピューターの一例である。すなわち、駆動波形決定装置400は、前述のように、除外条件情報D5の示す除外条件を取得する取得部451と、複数の候補波形および当該除外条件に基づいて、駆動パルスPDの波形を決定する決定部452と、を有する。以上の駆動波形決定装置400では、前述の駆動波形決定方法が実現される。
【0110】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0111】
図7は、第2実施形態に係る駆動波形決定装置400Aを示す図である。駆動波形決定装置400Aは、「駆動波形決定プログラム」としてプログラムPG1に代えてプログラムPG2を用いること以外は、前述の第1実施形態の駆動波形決定装置400と同様に構成される。
【0112】
駆動波形決定装置400Aでは、処理回路450がプログラムPG2を実行することにより取得部451および決定部452Aとして機能する。決定部452Aは、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれが除外条件情報D5の示す除外条件を満たすか否かを判定し、その判定の結果に基づいて、当該複数の候補波形のうち当該除外条件を満たさない候補波形を駆動パルスPDの波形として用いた場合における液体吐出ヘッド210の吐出特性を取得し、当該吐出特性に基づいて駆動パルスPDの波形を決定する。
【0113】
図8は、第2実施形態に係る駆動波形決定方法を示す図である。当該駆動波形決定方法は、第2工程S2に代えて第2工程S2Aを含むこと以外は、前述の第1実施形態の駆動波形決定方法と同様である。
【0114】
第2工程S2Aでは、決定部452Aが駆動パルスPDの波形を決定する。具体的には、第2工程S2Aでは、まず、決定部452Aが、ステップS19において、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれが除外条件情報D5の示す除外条件を満たすか否かを判定し、当該除外条件を満たす波形候補を除外する。
【0115】
次に、決定部452Aは、ステップS20において、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のうちステップS19で除外される候補波形以外の複数の候補波形を駆動パルスPDの波形として用いた場合における液体吐出ヘッド210の吐出特性を取得することにより、測定情報D4を生成する。当該吐出特性の取得は、当該除外後の複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いて液体吐出装置200を動作させた場合の測定装置300による測定結果を用いてもよいし、除外後の複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いて吐出特性をシミュレーションした結果を用いてもよい。
【0116】
次に、決定部452Aは、ステップS21において、測定情報D4の示す吐出特性に基づいて駆動パルスPDの波形を決定することにより、決定波形情報DPを生成する。当該波形の決定は、前述の除外後の複数の候補波形のうち吐出量、吐出速度、安定性等の吐出特性が最適な候補波形を駆動パルスPDの波形として自動で決定することにより行われるか、または、前述の除外後の複数の候補波形のうちパレートな関係にある2以上の候補波形をユーザーに通知し、当該2以上の候補波形からユーザーにより選択される候補波形を駆動パルスPDの波形として決定することにより行ってもよい。
【0117】
以上の第2実施形態によっても、駆動パルスの波形の決定のためのユーザビリティを向上させることができる。前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第2工程S2Aにおいて、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれが除外条件情報D5の示す除外条件を満たすか否かを判定し、その判定の結果に基づいて、当該複数の候補波形のうち当該除外条件を満たさない候補波形を駆動パルスPDの波形として用いた場合における液体吐出ヘッド210の吐出特性を取得し、当該吐出特性に基づいて駆動パルスPDの波形を決定する。このため、当該複数の候補波形のうち当該除外条件を満たす候補波形が除外された後に、吐出特性の取得が行われるので、吐出特性の取得に要する時間およびインク消費量を低減することができる。
【0118】
3.第3実施形態
以下、本開示の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0119】
図9は、第3実施形態に係る駆動波形決定装置400Bを示す図である。駆動波形決定装置400Bは、「駆動波形決定プログラム」としてプログラムPG1に代えてプログラムPG3を用いること以外は、前述の第1実施形態の駆動波形決定装置400と同様に構成される。
【0120】
駆動波形決定装置400Bでは、処理回路450がプログラムPG3を実行することにより取得部451および決定部452Bとして機能する。決定部452Bは、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いた場合における液体吐出ヘッド210の吐出特性を取得し、当該吐出特性および除外条件情報D5の示す除外条件を関数化することにより、駆動パルスPDの波形を決定する。
【0121】
図10は、第3実施形態に係る駆動波形決定方法を示す図である。当該駆動波形決定方法は、第2工程S2に代えて第2工程S2Bを含むこと以外は、前述の第1実施形態の駆動波形決定方法と同様である。
【0122】
第2工程S2Bでは、決定部452Bが駆動パルスPDの波形を決定する。具体的には、第2工程S2Bでは、まず、決定部452Bが、ステップS22において、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いた場合における液体吐出ヘッド210の吐出特性を取得することにより、測定情報D4を生成する。当該吐出特性の取得は、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いて液体吐出装置200を動作させた場合の測定装置300による測定結果を用いてもよいし、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いて吐出特性をシミュレーションした結果を用いてもよい。
【0123】
次に、決定部452Bは、ステップS23において、測定情報D4の示す吐出特性と除外条件情報D5の示す除外条件とを関数化することにより、駆動パルスPDの波形を決定する。以下、当該関数化について説明する。
【0124】
測定情報D4の示す吐出特性をF(W)とし、目標値情報D1の示す吐出特性をF’とし、F(W)とFとの差を最小にする最適化を実施する際の評価関数をGとするとき、評価関数Gは、G=|F(W)-F’|で表される。
【0125】
例えば、吐出特性として吐出量、吐出速度および前述の図3に示す距離LAを用いて波形Wを評価する場合、測定情報D4の示す吐出量をA(W)とし、測定情報D4の示す吐出速度をB(W)とし、測定情報D4の示す距離LAをC(W)とし、目標値情報D1の示す吐出量をA’とし、目標値情報D1の示す吐出速度をB’とし、目標値情報D1の示す距離LAをC’とし、評価関数をG(W)とするとき、評価関数G(W)は、
G(W)=α|A(W)-A’|+β|B(W)-B’|+γ|C(W)-C’|
で表される。そして、評価関数G(W)が最小になるような波形Wを探索するアルゴリズムに基づいて、波形WのパラメーターPnが適時変更されながら評価される。なお、評価関数G(W)中、α、βおよびγのそれぞれは、重み係数である。
【0126】
また、ペナルティ関数をE(W)とし、波形選択関数をHとするとき、波形選択関数Hは、H=G(W)+E(W)で表される。そして、波形選択関数Hが最小または閾値以下となる波形Wが選択される。
【0127】
ここで、除外条件の数がm個である場合のペナルティ関数E(W)は、
E(W)=O(1)+O(2)+O(3)+・・・+O(m)で表される。この式中、「O」は、吐出特性の示す特性値の除外条件であるか、または、波形を規定するパラメーターの除外条件である。
【0128】
例えば、各「O」の条件が波形WのパラメーターPnの成分の範囲の条件であり、波形WのパラメーターPnが「O」の範囲内である場合、「O」は、ペナルティとして1以上の値を返す。また、例えば、「O」の条件が、複数の液滴を合体させる波形を用いる場合のその合体順の条件であり、測定情報D4の示す合体順が「O」の条件を満たす場合、「O」は、ペナルティとして1以上の値を返す。
【0129】
複数の除外条件を同時に満たす場合を回避するには、例えば、各「O」の返り値を1とし、E(W)が5以上である場合、波形選択関数Hとして不採用の波形であると判断することにより、波形が選択されるか、または、「O」の条件として複数の除外条件を同時に満たす場合に「O」がペナルティとして1以上の値を返す。
【0130】
以上のように、測定情報D4の示す吐出特性と除外条件情報D5の示す除外条件とが関数化されることにより、駆動パルスPDの波形が決定される。
【0131】
以上の第3実施形態によっても、駆動パルスの波形の決定のためのユーザビリティを向上させることができる。前述のように、本実施形態の駆動波形決定方法は、第2工程S2Bにおいて、候補波形情報D2の示す複数の候補波形のそれぞれを駆動パルスPDの波形として用いた場合における液体吐出ヘッド210の吐出特性を取得し、当該吐出特性および除外条件情報D5の示す除外条件を関数化することにより、駆動パルスPDの波形を決定する。このため、当該除外条件が多種多様であっても、当該除外条件を満たさないような駆動パルスPDの波形を自動的に決定することができる。
【0132】
4.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0133】
4-1.変形例1
前述の実施形態では、プログラムPG1は、インストールされる記憶回路と同一の装置に設けられる処理回路により実行される構成が例示されるが、当該構成に限定されず、インストールされる記憶回路と異なる装置に設けられる処理回路により実行されてもよい。例えば、駆動波形決定装置400の記憶回路440に記憶されるプログラムPG1を液体吐出装置200の処理回路280により実行してもよい。
【符号の説明】
【0134】
100…システム、200…液体吐出装置、210…液体吐出ヘッド、211…駆動素子、212…ノズル面、220…移動機構、230…電源回路、240…駆動信号生成回路、250…駆動回路、260…通信回路、270…記憶回路、280…処理回路、300…測定装置、400…駆動波形決定装置、400A…駆動波形決定装置、400B…駆動波形決定装置、410…表示装置(表示部)、420…入力装置、430…通信回路、440…記憶回路(記憶部)、450…処理回路、451…取得部、452…決定部、452A…決定部、452B…決定部、500…サーバー、600…データベースサーバー、Com…駆動信号、D1…目標値情報、D2…候補波形情報、D3…仮波形情報、D4…測定情報、D5…除外条件情報、D5a…波形パラメーター情報、D5b…吐出特性パラメーター情報、D6…特許文献情報、DP…決定波形情報、DR…液滴、DRa…液滴、G1…画像、G1a…入力部、G1b…入力部、G1c…入力部、G1d…ボタン、G1e…ボタン、G1f…入力部、G1g…入力部、G1h…入力部、G2…画像、G2a…入力部、G2b…入力部、G2c…入力部、G3…画像、G3a…入力部、G3b…入力部、G4…画像、GU…画像、LA…距離、LB…直径、LC…距離、M…記録媒体、N…ノズル、P1a…第1期間、P1b…第1期間、P2a…第2期間、P2b…第2期間、P3a…第3期間、P3b…第3期間、P4a…第4期間、P4b…第4期間、P5a…第5期間、P5b…第5期間、P6a…第6期間、P6b…第6期間、P7a…第7期間、P7b…第7期間、PD…駆動パルス、PDa…駆動パルス、PDb…駆動パルス、PG…距離、PG1…プログラム(駆動波形決定プログラム)、PG2…プログラム(駆動波形決定プログラム)、PG3…プログラム(駆動波形決定プログラム)、RE1…領域、RE1a…領域、RE2…領域、S1…第1工程、S11…ステップ、S12…ステップ、S13…ステップ、S14…ステップ、S15…ステップ、S16…ステップ、S17…ステップ、S19…ステップ、S2…第2工程、S20…ステップ、S21…ステップ、S22…ステップ、S23…ステップ、S2A…第2工程、S2B…第2工程、S3…第3工程、SI…制御信号、Sk…制御信号、Tu…単位期間、Tu1…期間、Tu2…期間、V…電位、VBA…オフセット電位、VBS…オフセット電位、VCa…中間電位、VCb…中間電位、VHV…電源電位、VHa…第2電位、VHb…第2電位、VLa…第1電位、VLb…第1電位、Vca…中間電位、Vcb…中間電位、dCom…波形指定信号、t…時間。
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