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特開2023-175466映像信号処理装置および映像信号処理方法
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  • 特開-映像信号処理装置および映像信号処理方法 図1
  • 特開-映像信号処理装置および映像信号処理方法 図2
  • 特開-映像信号処理装置および映像信号処理方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175466
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】映像信号処理装置および映像信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/268 20060101AFI20231205BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20231205BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H04N5/268
B60R1/26
H04N7/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087916
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍜治本 晋明
【テーマコード(参考)】
5C023
5C054
【Fターム(参考)】
5C023AA21
5C023AA27
5C023BA15
5C054CA04
5C054CC02
5C054DA01
5C054EA03
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】映像ソースからの映像信号を表示装置へ直接出力する場合でも、EMC性能を確保すること。
【解決手段】実施形態に係る映像信号処理装置は、プロセッサと、コントローラとを備える。上記プロセッサは、映像ソースからの映像信号に対し画像処理および周波数拡散処理を施して出力する。上記コントローラは、上記映像ソースまたは上記プロセッサからの映像信号を表示装置へ出力する。また、上記コントローラは、上記プロセッサからの映像信号を上記表示装置へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理を非実行とし、上記映像ソースからの映像信号を上記表示装置へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像ソースからの映像信号に対し画像処理および周波数拡散処理を施して出力するプロセッサと、前記映像ソースまたは前記プロセッサからの映像信号を表示装置へ出力するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記プロセッサからの映像信号を前記表示装置へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理を非実行とし、前記映像ソースからの映像信号を前記表示装置へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理を実行する、
映像信号処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記プロセッサの状態を検出し、前記プロセッサが正常な状態にある場合に前記プロセッサからの映像信号を前記表示装置へ出力し、前記プロセッサが正常な状態にない場合に前記映像ソースからの映像信号を前記表示装置へ出力する、
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
映像信号に対する周波数拡散処理を実行する場合に、前記プロセッサが実行する周波数拡散処理に関する設定情報を用いて周波数拡散処理を実行する、
請求項1または2に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記プロセッサの状態に基づいて前記表示装置へ出力する映像信号の入力を前記プロセッサから前記映像ソースへ切り替える場合に、前記設定情報を取得する、
請求項3に記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記プロセッサからの映像信号を前記表示装置へ出力している期間に前記設定情報を取得しておき、当該設定情報を用いて周波数拡散処理を実行する、
請求項3に記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
前記映像ソースは、車両に搭載されるカメラである、
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
映像ソースまたはプロセッサからの映像信号を表示装置へ出力するコントローラを備える映像信号処理装置が実行する映像信号処理方法であって、
前記コントローラが前記プロセッサからの映像信号を前記表示装置へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理を前記プロセッサが実行し、前記コントローラが前記映像ソースからの映像信号を前記表示装置へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理を前記コントローラが実行する、
映像信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、映像信号処理装置および映像信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるバックカメラ等のカメラや、ナビゲーション画像等を描画する描画装置といった複数の映像ソースから入力される映像信号を表示装置へ表示させる映像信号処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような映像信号処理装置において、EMC(Electromagnetic Compatibility)性能を確保するため、映像信号に対し周波数拡散を行うことが知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-081445号公報
【特許文献2】特開2015-105968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術には、映像ソースからの映像信号を表示装置へ直接出力する場合でも、EMC性能を確保するうえで、さらなる改善の余地がある。
【0006】
映像信号処理装置は、カメラ映像を出力させるカメラモード時、通常はカメラ映像に画像処理を施すプロセッサが周波数拡散を行い、周波数拡散後の映像信号を映像IC(Integrated Circuit)が表示装置に対して出力する。
【0007】
ところが、プロセッサからの出力が固着した場合やACC(Accessory)オンの直後などは、映像ICがプロセッサを経由せずにカメラからの映像信号を表示装置へ直接出力する場合がある。この場合、出力される映像信号は、周波数拡散が行われないこととなる。
【0008】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、映像ソースからの映像信号を表示装置へ直接出力する場合でも、EMC性能を確保することができる映像信号処理装置および映像信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係る映像信号処理装置は、プロセッサと、コントローラとを備える。前記プロセッサは、映像ソースからの映像信号に対し画像処理および周波数拡散処理を施して出力する。前記コントローラは、前記映像ソースまたは前記プロセッサからの映像信号を表示装置へ出力する。また、前記コントローラは、前記プロセッサからの映像信号を前記表示装置へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理を非実行とし、前記映像ソースからの映像信号を前記表示装置へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理を実行する。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、映像ソースからの映像信号を表示装置へ直接出力する場合でも、EMC性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る映像信号処理方法の概要説明図である。
図2図2は、実施形態に係る映像信号処理システムの構成例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る映像信号処理装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する映像信号処理装置および映像信号処理方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
また、以下では、映像ソースからの映像信号を表示装置へ直接出力することを、「バイパス出力」と言う場合がある。
【0014】
まず、実施形態に係る映像信号処理方法の概要について、図1を用いて説明する。図1は、実施形態に係る映像信号処理方法の概要説明図である。
【0015】
実施形態に係る映像信号処理方法は、図1に示す映像信号処理装置30によって実行される。映像信号処理装置30を含む映像信号処理システム1は、たとえばナビゲーションシステムとして構成される。
【0016】
図1に示すように、映像信号処理システム1は、カメラ10と、表示装置20と、映像信号処理装置30とを含む。映像信号処理装置30は、SoC(System on a Chip)31と、サブマイコン32と、映像IC33とを含む。
【0017】
SoC31は、「プロセッサ」の一例に相当する。サブマイコン32および映像IC33は、コントローラ40を構成する。
【0018】
カメラ10は、たとえば、車両に搭載されたカメラであり、車両の周囲を撮像したカメラ映像を映像信号として映像IC33へ出力する。カメラ10は、たとえば、車両の後方を撮像するバックカメラや、車両の前方を撮像するフロントカメラ、車両の側方を撮像するサイドカメラ等である。なお、カメラ10が撮像するカメラ映像は、アナログ映像であってもよいし、デジタル映像であってもよい。
【0019】
表示装置20は、たとえば、TFT(Thin-Film-Transistor)液晶等の液晶ディスプレイである。表示装置20は、映像IC33から出力された映像信号を映像として表示する。
【0020】
SoC31は、カメラ10からの映像信号に対して各種の画像処理を施す機能を有する。画像処理は、たとえば、カメラ映像に重畳するガイド線等の描画処理である。また、SoC31はさらに、映像信号に対し周波数拡散を施す周波数拡散処理を実行する。
【0021】
サブマイコン32は、車両信号を受信し、当該車両信号に応じて、表示装置20へ出力する映像の映像ソースをカメラ10とするカメラモードへの切り替えを行う。車両信号は、たとえば、車両のシフトレバーがリバースレンジに位置付けられた場合に出力されるリバース信号等である。
【0022】
映像IC33は、カメラ10およびSoC31に接続され、SoC31を経由する通常出力時には、SoC31で画像処理および周波数拡散処理が施された映像信号を表示装置20に対し出力する。また、映像IC33は、バイパス出力時には、SoC31を経由せずにカメラ10からの映像信号を表示装置20に対しダイレクトに出力する。映像IC33は、たとえば、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)により映像信号を出力する。
【0023】
映像信号処理装置30は、実施形態に係る映像信号処理方法を適用した映像信号処理を実行することで、通常出力時およびバイパス出力時の双方において、映像信号に対する周波数拡散を行うことを実現する。
【0024】
具体的には、実施形態に係る映像信号処理方法では、映像信号処理装置30のコントローラ40は、SoC31の状態に応じて、通常出力時であるかバイパス出力時であるかを検出する。そして、コントローラ40は、通常出力時には、映像IC33での映像信号に対する周波数拡散処理を非実行とする(ステップS1)。
【0025】
SoC31が正常な状態にある場合は、映像IC33からの出力は通常出力となる。一方、SoC31が正常な状態にない場合は、映像IC33からの出力はバイパス出力となる。
【0026】
SoC31が正常な状態にない場合とは、たとえば、SoC31の暴走やフリーズなどによってSoC31からの出力が固着している場合や、ACCオンの直後でSoC31が稼働前(起動前または起動中)の状態にある場合等である。なお、ここで言う「固着」とはSoC31から出力される映像が所定時間(たとえば10秒間)変化しない状態が続いていることを指し、たとえば、映像ICはSoC31から出力される映像のフレーム内の予め定められた複数の位置の画素値の時間変化をモニタリングすることで、SoC31からの出力が固着していることを検出することができる。SoC31は、リアルタイムOS(Operating System)以外のOSで動作する場合が多いため、ACCオンの直後は稼働前の状態であることが起こりうる。なお、ACCオンの直後とは、ACCオンを示す車両信号を受信してから予め決められた時間(たとえば30秒)以内であることを指す。一方、コントローラ40のサブマイコン32はリアルタイムOSで動作するため、ACCオンの直後であっても(たとえばACCオンから3秒以内に)稼働中の状態となることが可能である。
【0027】
通常出力時の場合、図1に示すように、カメラ10からの映像信号はSoC31を経由する。このため、コントローラ40は、通常出力時には、映像IC33での映像信号に対する周波数拡散処理は実行せず、SoC31に対し周波数拡散処理を実行させる。
【0028】
一方、バイパス出力時の場合、図1に示すように、カメラ10からの映像信号はSoC31を経由しない。このため、コントローラ40は、バイパス出力時には、映像IC33において映像信号に対する周波数拡散処理を実行する(ステップS2)。
【0029】
サブマイコン32は、たとえば図1に示す映像IC33の固着検出の結果に基づいて固着が発生したことを取得し、バイパス出力時であると判定する。また、サブマイコン32は、たとえばACCスイッチがオフの状態からオンの状態にされたことを示す車両信号に基づいて、ACCオンの直後であることを取得し、バイパス出力時であると判定する。なお、サブマイコン32は、たとえばACCスイッチがオフの状態からオンの状態にされたことを示す車両信号を受信してから、SoC31が起動したことを示すレディ信号を受信するまで、またはSoC31から映像信号が出力されてくるまでの間、バイパス出力時であると判定してもよい。
【0030】
そして、サブマイコン32は、バイパス出力時である場合、SoC31から周波数拡散に関する設定情報を取得し、当該設定情報を映像IC33へ通知して、図1に示すように映像IC33にカメラ10からの映像信号に対する周波数拡散処理を行わせる。
【0031】
これにより、通常出力時およびバイパス出力時の双方において、映像信号に対する周波数拡散を行うことができる。
【0032】
すなわち、実施形態に係る映像信号処理方法によれば、映像ソースからの映像信号をバイパス出力する場合でも、EMC性能を確保することができる。以下、実施形態に係る映像信号処理システム1の構成例について、より具体的に説明する。
【0033】
図2は、実施形態に係る映像信号処理システム1の構成例を示す図である。なお、図2では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0034】
また、図2に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。たとえば、各ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0035】
また、図2を用いた説明では、既に説明済みの構成要素については、説明を簡略するか、説明を省略する場合がある。
【0036】
図2に示すように、映像信号処理システム1は、既に述べた通り、カメラ10と、表示装置20と、映像信号処理装置30とを含む。また、映像信号処理システム1はさらに、車両信号送信部50を含む。
【0037】
車両信号送信部50は、たとえばシフトレバーやACCスイッチ等である。なお、車両信号送信部50は他にも、カメラ10の起動スイッチや、ウィンカー(サイドカメラの起動スイッチ)等によって実現される。
【0038】
映像信号処理装置30は、SoC31と、サブマイコン32と、映像IC33とを含む。SoC31およびサブマイコン32は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、データフラッシュ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。SoC31は、既に述べた通り、リアルタイムOS以外のOS、たとえばLinux(登録商標)等により動作する。サブマイコン32は、リアルタイムOSにより動作する。
【0039】
CPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、SoC31の画像処理部31a、周波数拡散部31b、サブマイコン32の受信部32aおよびモード制御部32bとして機能する。
【0040】
また、SoC31の画像処理部31a、周波数拡散部31b、サブマイコン32の受信部32aおよびモード制御部32bの少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0041】
また、映像IC33は、ASICやFPGA等のハードウェアで実現される。映像IC33は、取得部33a、状態検出部33bおよび周波数拡散部33cの各機能を有する。なお、取得部33a、状態検出部33bおよび周波数拡散部33cの少なくともいずれか一つまたは全部をコンピュータが実行する各処理として実現してもよい。
【0042】
SoC31は、画像処理部31aと、周波数拡散部31bとを有する。画像処理部31aは、映像IC33によって取得されたカメラ10からの映像信号に対し、上述した描画処理等の画像処理を実行する。
【0043】
周波数拡散部31bは、画像処理部31aによって画像処理を施された映像信号に対する周波数拡散を行い、周波数拡散後の映像信号を映像IC33に対し出力する。
【0044】
サブマイコン32は、受信部32aと、モード制御部32bとを有する。受信部32aは、車両信号送信部50から車両信号を受信する。モード制御部32bは、受信部32aによって受信された車両信号に応じて、映像IC33の動作モードを切り替えるモード制御処理を実行する。
【0045】
モード制御部32bは、受信部32aによってたとえば前述のリバース信号が受信された場合(リバース信号がオンとなった場合)に、表示装置20にカメラ10のカメラ映像を通常出力またはバイパス出力するカメラモードを開始する。
【0046】
また、モード制御部32bは、受信部32aによってたとえばリバース信号が受信されなくなった場合(リバース信号がオフとなった場合)に、カメラモードを終了する。
【0047】
また、モード制御部32bは、映像IC33が検出するSoC31の状態を取得する。モード制御部32bは、SoC31の状態としてSoC31からの出力が固着していることを取得した場合に、バイパス出力時であるとして、映像IC33に周波数拡散処理を実行させる。
【0048】
また、モード制御部32bは、受信部32aによってたとえばACCオンを示す車両信号が受信され、このACCオンの直後でSoC31が稼働前の状態であると判定される場合に、バイパス出力時であるとして、映像IC33に周波数拡散処理を実行させる。
【0049】
なお、モード制御部32bは、映像IC33に周波数拡散処理を実行させる場合、SoC31から周波数拡散に関する設定情報を取得し、当該設定情報を映像IC33に通知することによって映像IC33に周波数拡散処理を実行させる。
【0050】
この映像IC33への通知は、モード制御部32bが、映像IC33の有する図示略のレジスタへ前述の設定情報を設定することによって行われる。モード制御部32bは、たとえば通常出力からバイパス出力への切り替えのタイミングでSoC31から設定情報を取得し、レジスタへの設定を行う。なお、設定情報をSoC31とは別に設けられたROM等に保持しておき、SoC31もサブマイコン32も共にこのROM等から設定情報を取得するようにしてもよい。SoC31が暴走やフリーズした場合にはSoC31から設定情報を取得することが不可能になることも考えられるが、このようにすることでサブマイコン32が確実に設定情報を取得することができる。また、サブマイコン32がバイパス出力への切り替えのタイミングで設定情報を取得する代わりに、他のタイミング、たとえば定期的または不定期的に設定情報を取得するようにしてもよい。たとえばサブマイコン32は、SoC31からの映像信号を表示装置20に出力している期間においても、定期的または不定期的にSoC31から設定情報を取得するようにしてもよい。このようにすることで、SoC31の暴走やフリーズでバイパス出力へ切り替える場合に、直前までSoC31で行われていた設定情報を引き継ぐことができる。
【0051】
映像IC33は、取得部33aと、状態検出部33bと、周波数拡散部33cとを有する。取得部33aは、カメラ10からカメラ映像の映像信号を取得する。状態検出部33bは、SoC31の状態を検出する。
【0052】
状態検出部33bは、SoC31が正常な状態にあることを検出した場合、映像IC33を通常出力モードで動作させる。つまり、この場合、映像IC33はSoC31経由でカメラ10のカメラ映像を表示装置20に対し出力する。
【0053】
また、状態検出部33bは、SoC31が正常な状態にないことを検出した場合、たとえばSoC31からの出力が固着していることを検出した場合、映像IC33をバイパス出力モードで動作させる。同様に、状態検出部33bは、SoC31が稼働前の状態であることを検出した場合、映像IC33をバイパス出力モードで動作させる。
【0054】
つまり、この場合、映像IC33はSoC31を経由しないでカメラ10のカメラ映像の映像信号を表示装置20に対しダイレクトに出力する。
【0055】
なお、状態検出部33bは、常にSoC31の状態を検出し、たとえばSoC31からの出力の固着が解消した場合、映像IC33をバイパス出力モードから通常出力モードへ切り替える。これにより、映像IC33は、カメラ10からの映像信号に代えて、SoC31からの映像信号を表示装置20へ出力する。
【0056】
固着の解消は、たとえばSoC31の処理待ち時間の経過等によって自動的に解消した場合であってもよいし、サブマイコン32が状態検出部33bの検出結果に基づいてSoC31を再起動することによって解消した場合であってもよい。
【0057】
また、状態検出部33bは、たとえばSoC31が稼働前の状態から稼働中の状態になったことを検出した場合、映像IC33をバイパス出力モードから通常出力モードへ切り替える。これにより、映像IC33は、カメラ10からの映像信号に代えて、SoC31からの映像信号を表示装置20へ出力する。
【0058】
周波数拡散部33cは、バイパス出力時に、モード制御部32bからの前述の設定情報の通知に基づいて、取得部33aによって取得された映像信号に対する周波数拡散処理を実行する。また、周波数拡散部33cは、周波数拡散処理を施した映像信号を表示装置20に対し出力する。一方、周波数拡散部33cは、通常出力時には、映像信号に対する周波数拡散処理を非実行とする。
【0059】
次に、実施形態に係る映像信号処理装置30が実行する処理手順について、図3を用いて説明する。図3は、実施形態に係る映像信号処理装置30が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0060】
なお、図3の処理手順では、前述の車両信号がリバース信号である場合を例に挙げ、リバース信号がオンとなった場合を「リバースオン」と表現する。また、リバース信号がオフとなった場合を「リバースオフ」と表現する。
【0061】
映像信号処理装置30のコントローラ40は、車両信号送信部50からリバースオンを受信したか否かを判定する(ステップS101)。
【0062】
リバースオンを受信していない場合(ステップS101,No)、コントローラ40は、ステップS101を繰り返す。リバースオンを受信した場合(ステップS101,Yes)、コントローラ40は、カメラモードを開始する(ステップS102)。
【0063】
そして、コントローラ40は、通常出力時であるか否かを判定する(ステップS103)。ここで、通常出力時である場合(ステップS103,Yes)、コントローラ40は、映像IC33による周波数拡散をオフ、すなわち非実行とする(ステップS104)。
【0064】
また、通常出力時でない場合(ステップS103,No)、すなわちバイパス出力時である場合、コントローラ40は、映像IC33による周波数拡散をオンにする(ステップS105)。つまり、コントローラ40は、映像IC33による周波数拡散を行う。
【0065】
そして、コントローラ40の映像IC33は、表示装置20に対し映像を出力する(ステップS106)。そして、コントローラ40は、車両信号送信部50からリバースオフを受信したか否かを判定する(ステップS107)。
【0066】
リバースオフを受信していない場合(ステップS107,No)、コントローラ40は、ステップS103からの処理を繰り返す。リバースオフを受信した場合(ステップS107,Yes)、コントローラ40は、カメラモードを終了する(ステップS108)。そして、コントローラ40は、ステップS101からの処理を繰り返す。
【0067】
上述してきたように、実施形態に係る映像信号処理装置30は、SoC31(「プロセッサ」の一例に相当)と、コントローラ40とを備える。SoC31は、映像ソースからの映像信号に対し画像処理および周波数拡散処理を施して出力する。コントローラ40は、上記映像ソースまたはSoC31からの映像信号を表示装置20へ出力する。また、コントローラ40は、SoC31からの映像信号を表示装置20へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理を非実行とし、上記映像ソースからの映像信号を表示装置20へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理を実行する。
【0068】
したがって、実施形態に係る映像信号処理装置30によれば、映像ソースからの映像信号をバイパス出力する場合でも、EMC性能を確保することができる。また、SoC31側とコントローラ40側で二重に周波数拡散処理を行ってしまうことがなく、映像の乱れを防ぐことができる。
【0069】
また、コントローラ40は、SoC31の状態を検出し、SoC31が正常な状態にある場合にSoC31からの映像信号を表示装置20へ出力し、SoC31が正常な状態にない場合に上記映像ソースからの映像信号を表示装置20へ出力する。
【0070】
したがって、実施形態に係る映像信号処理装置30によれば、SoC31が正常な状態にある場合の通常出力時、SoC31が出力の固着や稼働前の状態等にあるバイパス出力時の双方で、EMC性能を確保することができる。
【0071】
また、コントローラ40は、映像信号に対する周波数拡散処理を実行する場合に、SoC31が実行する周波数拡散処理に関する設定情報を用いて周波数拡散処理を実行する。
【0072】
したがって、実施形態に係る映像信号処理装置30によれば、コントローラ40がSoC31側で行われていた周波数拡散処理の設定情報を引き継ぐことで、映像ソースからの映像信号をバイパス出力する場合でも適切な周波数拡散処理を行うことができる。
【0073】
また、コントローラ40は、SoC31の状態に基づいて表示装置20へ出力する映像信号の入力をSoC31から上記映像ソースへ切り替える場合に、上記設定情報を取得する。
【0074】
したがって、実施形態に係る映像信号処理装置30によれば、通常出力からバイパス出力への切り替えのタイミングで通常出力時に行われていた周波数拡散処理の設定情報をそのまま引き継ぐので、適切な周波数拡散処理を継続して行うことができる。つまり、映像信号処理装置30から表示装置20へはSoC31で行われる周波数拡散処理と同じ設定で周波数拡散処理された映像信号が出力されるので、表示装置20は周波数拡散処理された映像信号から、周波数拡散処理される前の映像信号を正しく復調/復号することが可能となる。
【0075】
また、コントローラ40は、SoC31からの映像信号を表示装置20へ出力している期間に上記設定情報を取得しておき、当該設定情報を用いて周波数拡散処理を実行する。
【0076】
したがって、実施形態に係る映像信号処理装置30によれば、たとえばサブマイコン32は、SoC31からの映像信号を表示装置20に出力している期間において定期的または不定期的にSoC31から設定情報を取得するようにすることで、SoC31が暴走やフリーズしてバイパス出力へ切り替える場合に、直前までSoC31で行われていた設定情報を引き継ぐことができる。
【0077】
また、上記映像ソースは、車両に搭載されるカメラ10である。
【0078】
したがって、実施形態に係る映像信号処理装置30によれば、車両に搭載されるナビゲーションシステム等の映像信号処理システムにおいて、カメラ10からの映像信号をバイパス出力する場合でも、EMC性能を確保することができる。
【0079】
また、実施形態に係る映像信号処理方法は、映像ソースまたはSoC31からの映像信号を表示装置20へ出力するコントローラ40を備える映像信号処理装置30が実行する映像信号処理方法である。実施形態に係る映像信号処理方法では、コントローラ40がSoC31からの映像信号を表示装置20へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理をSoC31が実行し、コントローラ40が上記映像ソースからの映像信号を表示装置20へ出力する場合には、映像信号に対する周波数拡散処理をコントローラ40が実行する。
【0080】
したがって、実施形態に係る映像信号処理方法によれば、映像ソースからの映像信号をバイパス出力する場合でも、EMC性能を確保することができる。また、SoC31側とコントローラ40側で二重に周波数拡散処理を行ってしまうことがなく、映像の乱れを防ぐことができる。
【0081】
なお、上述した実施形態では、映像信号処理システム1が、車両に搭載される車載システムである例を挙げたが、映像信号処理システム1は車載システムに限定されない。映像信号処理システム1は、たとえば映像ソースとして防犯カメラ等を含む車載以外のシステムであってもよい。この場合、上述した車両信号送信部50は、たとえば映像ソースを防犯カメラへ切り替える切り替え信号を送信するスイッチ等によって実現されることとなる。
【0082】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 映像信号処理システム
10 カメラ
20 表示装置
30 映像信号処理装置
31a 画像処理部
31b 周波数拡散部
32 サブマイコン
32a 受信部
32b モード制御部
33 映像IC
33a 取得部
33b 状態検出部
33c 周波数拡散部
40 コントローラ
50 車両信号送信部
図1
図2
図3