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特開2023-175480合成樹脂製容器の製造方法、成形装置、及び合成樹脂製容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175480
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器の製造方法、成形装置、及び合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20231205BHJP
   B29C 45/13 20060101ALI20231205BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20231205BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20231205BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C45/13
B29C45/26
B29C45/27
B65D1/26 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087938
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄一
(72)【発明者】
【氏名】石川 智規
【テーマコード(参考)】
3E033
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA13
3E033BB01
3E033DD05
3E033EA09
3E033FA02
4F202AG06
4F202AH55
4F202AH56
4F202AR08
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB21
4F202CB28
4F202CK06
4F206AG06
4F206AH55
4F206AH56
4F206AR08
4F206JA07
4F206JB21
4F206JB28
4F206JM04
4F206JN11
4F206JN12
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】容器の周壁部に濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分を設けた合成樹脂製容器の製造方法、成形装置、及び合成樹脂製容器を提案する。
【解決手段】本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法において、金型1は、容器11に対応するキャビティ6と、濃色の第一合成樹脂を射出する第一ゲート4と、淡色の第二合成樹脂を射出する第二ゲート5とを備え、第一ゲート4と第二ゲート5は、キャビティ6における容器11の底部12に対応する部位からキャビティ6内に第一合成樹脂と第二合成樹脂を射出するよう構成されていて、第一ゲート4から第一合成樹脂の射出を開始し、第一合成樹脂を所定量射出したときに第二ゲート5から第二合成樹脂の射出を開始して、キャビティ6内に第一合成樹脂と第二合成樹脂を充填する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に合成樹脂を射出して成形される有底筒状をなす合成樹脂製容器の製造方法であって、
前記金型は、前記容器に対応するキャビティと、濃色の第一合成樹脂を射出する第一ゲートと、淡色の第二合成樹脂を射出する第二ゲートとを備え、
前記第一ゲートと前記第二ゲートは、前記キャビティにおける前記容器の底部に対応する部位から該キャビティ内に前記第一合成樹脂と前記第二合成樹脂を射出するよう構成されていて、
前記第一ゲートから前記第一合成樹脂の射出を開始し、該第一合成樹脂を所定量射出したときに前記第二ゲートから前記第二合成樹脂の射出を開始して、前記キャビティ内に該第一合成樹脂と該第二合成樹脂を充填することにより、前記容器の周壁部に、前記第一合成樹脂を主とする濃色部分と、前記第二合成樹脂を主とする淡色部分と、該第一合成樹脂及び該第二合成樹脂によるグラデーション部分とを設ける合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
前記所定量は、前記キャビティに射出する前記第一合成樹脂の総量を基準として20~40%の量である、請求項1に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記第一ゲートから前記第一合成樹脂を射出する第一射出速度と前記第二ゲートから前記第二合成樹脂を射出する第二射出速度は、ともに等しい、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
前記第一射出速度と前記第二射出速度は、20~60mm/sである、請求項3に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
金型に合成樹脂を射出して有底筒状をなす合成樹脂製容器を成形する成形装置であって、
前記金型は、前記容器に対応するキャビティと、濃色の第一合成樹脂を射出する第一ゲートと、淡色の第二合成樹脂を射出する第二ゲートとを備え、
前記第一ゲートと前記第二ゲートは、前記キャビティにおける前記容器の底部に対応する部位から該キャビティ内に前記第一合成樹脂と前記第二合成樹脂を射出するよう構成されていて、
前記第一ゲートから前記第一合成樹脂の射出を開始し、該第一合成樹脂を所定量射出したときに前記第二ゲートから前記第二合成樹脂の射出を開始して、前記キャビティ内に該第一合成樹脂と該第二合成樹脂を充填することにより、前記容器の周壁部に、前記第一合成樹脂を主とする濃色部分と、前記第二合成樹脂を主とする淡色部分と、該第一合成樹脂及び該第二合成樹脂によるグラデーション部分とを設ける成形装置。
【請求項6】
金型に合成樹脂を射出して成形される有底筒状の合成樹脂製容器であって、
前記金型は、前記容器に対応するキャビティと、濃色の第一合成樹脂を射出する第一ゲートと、淡色の第二合成樹脂を射出する第二ゲートとを備え、
前記第一ゲートと前記第二ゲートは、前記キャビティにおける前記容器の底部に対応する部位から該キャビティ内に前記第一合成樹脂と前記第二合成樹脂を射出するよう構成されていて、
前記第一ゲートから前記第一合成樹脂の射出を開始し、該第一合成樹脂を所定量射出したときに前記第二ゲートから前記第二合成樹脂の射出を開始して、前記キャビティ内に該第一合成樹脂と該第二合成樹脂を充填することにより、前記容器の周壁部に、前記第一合成樹脂を主とする濃色部分と、前記第二合成樹脂を主とする淡色部分と、該第一合成樹脂及び該第二合成樹脂によるグラデーション部分とを備える合成樹脂製容器。
【請求項7】
前記グラデーション部分は、前記第一合成樹脂が前記周壁部の内周面に沿って周方向に延在する内層部分と、該第一合成樹脂が該周壁部の外周面に沿って周方向に延在する外層部分と、前記第二合成樹脂が該内層部分と該外層部分の間で周方向に沿って延在する中間層部分とを備える、請求項6に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器の製造方法、成形装置、及び合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、底部と、底部に一体的に連結する周壁部とを備える有底筒状の合成樹脂製容器が使用されている。このような合成樹脂製容器は、多くの場合、金型に合成樹脂を射出して成形される。
【0003】
またこの種の容器は、他の容器との差別化を図るべく様々な加飾が施されている。加飾方法としては、例えば印刷されたフィルムを容器の外側に設ける方法の他、インサート材を使用したり容器に装飾性の高い凹凸部を設けたりして加飾する方法がある(例えば特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-177973号公報
【特許文献2】特開2010-179654号公報
【特許文献3】特許第4640729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、合成樹脂製容器には様々な加飾が行われているものの、差別化のためには更なる目新しさが必要である。ここで本願発明者は、容器の周壁部に濃色部分、淡色部分、及び濃色と淡色が入り交じったグラデーション部分を設けて容器自体を加飾することによって、従来の容器との差別化を図ることとした。なお特許文献3には、所定の技術的特徴が盛込まれたプリフォームが示されていて、このプリフォームを2軸延伸ブロー成形することによって、グラデーションが高度に現出された壜体が得られることが記載されている。これに対して本発明においては、このような2軸延伸ブロー成形を行うことなく、金型から取り出した際に上記の加飾が施された有底筒状の容器が得られることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金型に合成樹脂を射出して成形される有底筒状をなす合成樹脂製容器の製造方法であって、
前記金型は、前記容器に対応するキャビティと、濃色の第一合成樹脂を射出する第一ゲートと、淡色の第二合成樹脂を射出する第二ゲートとを備え、
前記第一ゲートと前記第二ゲートは、前記キャビティにおける前記容器の底部に対応する部位から該キャビティ内に前記第一合成樹脂と前記第二合成樹脂を射出するよう構成されていて、
前記第一ゲートから前記第一合成樹脂の射出を開始し、該第一合成樹脂を所定量射出したときに前記第二ゲートから前記第二合成樹脂の射出を開始して、前記キャビティ内に該第一合成樹脂と該第二合成樹脂を充填することにより、前記容器の周壁部に、前記第一合成樹脂を主とする濃色部分と、前記第二合成樹脂を主とする淡色部分と、該第一合成樹脂及び該第二合成樹脂によるグラデーション部分とを設ける合成樹脂製容器の製造方法である。
【0007】
前記所定量は、前記キャビティに射出する前記第一合成樹脂の総量を基準として20~40%の量であることが好ましい。
【0008】
前記第一ゲートから前記第一合成樹脂を射出する第一射出速度と前記第二ゲートから前記第二合成樹脂を射出する第二射出速度は、ともに等しいことが好ましい。
【0009】
前記第一射出速度と前記第二射出速度は、20~60mm/sであることが好ましい。
【0010】
また本発明は、金型に合成樹脂を射出して有底筒状をなす合成樹脂製容器を成形する成形装置であって、
前記金型は、前記容器に対応するキャビティと、濃色の第一合成樹脂を射出する第一ゲートと、淡色の第二合成樹脂を射出する第二ゲートとを備え、
前記第一ゲートと前記第二ゲートは、前記キャビティにおける前記容器の底部に対応する部位から該キャビティ内に前記第一合成樹脂と前記第二合成樹脂を射出するよう構成されていて、
前記第一ゲートから前記第一合成樹脂の射出を開始し、該第一合成樹脂を所定量射出したときに前記第二ゲートから前記第二合成樹脂の射出を開始して、前記キャビティ内に該第一合成樹脂と該第二合成樹脂を充填することにより、前記容器の周壁部に、前記第一合成樹脂を主とする濃色部分と、前記第二合成樹脂を主とする淡色部分と、該第一合成樹脂及び該第二合成樹脂によるグラデーション部分とを設ける成形装置でもある。
【0011】
また本発明は、金型に合成樹脂を射出して成形される有底筒状の合成樹脂製容器であって、
前記金型は、前記容器に対応するキャビティと、濃色の第一合成樹脂を射出する第一ゲートと、淡色の第二合成樹脂を射出する第二ゲートとを備え、
前記第一ゲートと前記第二ゲートは、前記キャビティにおける前記容器の底部に対応する部位から該キャビティ内に前記第一合成樹脂と前記第二合成樹脂を射出するよう構成されていて、
前記第一ゲートから前記第一合成樹脂の射出を開始し、該第一合成樹脂を所定量射出したときに前記第二ゲートから前記第二合成樹脂の射出を開始して、前記キャビティ内に該第一合成樹脂と該第二合成樹脂を充填することにより、前記容器の周壁部に、前記第一合成樹脂を主とする濃色部分と、前記第二合成樹脂を主とする淡色部分と、該第一合成樹脂及び該第二合成樹脂によるグラデーション部分とを備える合成樹脂製容器でもある。
【0012】
前記グラデーション部分は、前記第一合成樹脂が前記周壁部の内周面に沿って周方向に延在する内層部分と、該第一合成樹脂が該周壁部の外周面に沿って周方向に延在する外層部分と、前記第二合成樹脂が該内層部分と該外層部分の間で周方向に沿って延在する中間層部分とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による合成樹脂製容器の製造方法において、金型に設けた濃色の第一合成樹脂を射出する第一ゲートと淡色の第二合成樹脂を射出する第二ゲートは、金型のキャビティにおける容器の底部に対応する部位からキャビティ内に第一合成樹脂と第二合成樹脂を射出するよう構成されている。そして、第一ゲートから第一合成樹脂の射出を開始し、第一合成樹脂を所定量射出したときに第二ゲートから前記第二合成樹脂の射出を開始して、キャビティ内に第一合成樹脂と第二合成樹脂を充填することにより、容器の周壁部に、第一合成樹脂を主とする濃色部分と、第二合成樹脂を主とする淡色部分と、第一合成樹脂及び第二合成樹脂によるグラデーション部分とを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る成形装置の一実施形態に関し、この成形装置が備える金型の断面図である。
図2図1に示した金型で成形される容器に関し、(a)は底面図であり、(b)はA-Aに沿う側面図である。
図3】確認試験1の条件で成形された容器の写真である。
図4】確認試験2の条件で成形された容器の写真である。
図5】確認試験3の条件で成形された容器の写真である。
図6】確認試験4の条件で成形された容器の写真である。
図7】グラデーション部分で容器を横方向に切断した断面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法、成形装置、及び合成樹脂製容器の一実施形態について説明する。
【0016】
まず、本実施形態の成形装置について説明する。本実施形態の成形装置は、不図示の射出成形機と、図1に示した金型1とを備えている。射出成形機は、溶融させた合成樹脂を金型1に射出するものである。本実施形態の射出成形機は、2種の合成樹脂(以下、第一合成樹脂、第二合成樹脂と称する)を溶融させて金型1に射出することが可能である。
【0017】
本実施形態において第一合成樹脂と第二合成樹脂は、互いに色が異なっていて、第一合成樹脂は濃色であり、第二合成樹脂は淡色である。本明細書等において濃色とは、例えば黒、紺、焦げ茶等であり、淡色とは、第一合成樹脂よりも淡い色、薄い色であって、例えば白、クリーム色等である。また第一合成樹脂が不透明の色合いである場合、第二合成樹脂の色合いには、それよりも透明度の高い半透明、透明が含まれる。
【0018】
金型1は、図1に示すように、キャビティ金型2とコア金型3を備えている。キャビティ金型2は、射出成形機から射出される第一合成樹脂が通過する第一ゲート4、及び第二合成樹脂が通過する第二ゲート5を備えている。本実施形態の第一ゲート4と第二ゲート5は、何れもピンゲートである。また金型1は、キャビティ金型2とコア金型3で区画されるとともに、第一ゲート4と第二ゲート5が通じるキャビティ6を備えている。本実施形態のキャビティ6は、図2に示した有底筒状の容器11に対応する形状をなしている。
【0019】
ここで、図2を参照しながら本実施形態の容器11について説明する。容器11は、円板状になる底部12と、底部12の外縁部に一体的に連結する円筒状の周壁部13を備えていて、周壁部13における底部12が位置する側に対して反対側には、開口部14が設けられている。図1図2に示したように第一ゲート4と第二ゲート5は、キャビティ6における底部12に対応する部位に設けられていて、第一ゲート4と第二ゲート5からキャビティ6に対して第一合成樹脂と第二合成樹脂を射出することにより、金型1で容器11を成形することができる。本実施形態における第一ゲート4と第二ゲート5は、図2(a)に示すように、底部12の中心Oを基準として180°ずれた位置に設けられている。また第一ゲート4と第二ゲート5は、何れも中心Oまでの距離よりも底部12の外縁部に近い位置に設けられている。
【0020】
上記の成形装置を用いて本願発明者が検討を重ねたところ、下記に説明する製造方法を用いることにより、周壁部13に、濃色部分と、淡色部分と、濃色と淡色が入り交じったグラデーション部分を設けることが可能であった。以下、この製造方法について説明する。
【0021】
まず、図1に示すようにキャビティ金型2とコア金型3を閉じておく。また射出成形機は、溶融させた第一合成樹脂と第二合成樹脂を第一ゲート4と第二ゲート5からキャビティ6内に射出できる状態にしておく。
【0022】
次いで、第一ゲート4からキャビティ6に向けて第一合成樹脂の射出を開始する。この時点において、第二ゲート5からキャビティ6内には第二合成樹脂は射出されておらず、第一合成樹脂のみがキャビティ6内を流動する。なお、第一合成樹脂の射出を開始してから終了するまでの射出速度(以下、第一射出速度という)は、一定である。
【0023】
そして第一合成樹脂を所定量射出したときに、第二ゲート5からキャビティ6に向けて第二合成樹脂の射出を開始する。なお、第二合成樹脂の射出を開始してから終了するまでの射出速度(以下、第二射出速度という)は、一定である。また第二合成樹脂を射出した後も、第一合成樹脂は予め定められた量まで継続して射出される。ここで第一合成樹脂における予め定められた量とは、キャビティ6の容積を基準として最大で50%に相当する量である。
【0024】
予め定められた量の第一合成樹脂を射出した後も、第二合成樹脂はキャビティ6内に継続して射出される。そしてキャビティ6が第一合成樹脂と第二合成樹脂で充填された後は、第二合成樹脂の射出圧力でもって所定時間保圧が行われる。これにより、金型1内で第一合成樹脂と第二合成樹脂がキャビティ6に倣う形状で固化される。
【0025】
その後はキャビティ金型2に対してコア金型3を移動させ、金型1から成形した容器11を取り出す。このようにして製造したところ、周壁部13に、濃色部分と、淡色部分と、濃色と淡色が入り交じったグラデーション部分を設けることができた。
【0026】
なお、上記の製造方法の比較例として、第一ゲート4からキャビティ6内に第一合成樹脂を射出すると同時に第二ゲート5からキャビティ6内に第二合成樹脂を射出させたところ、周壁部13には、濃色部分と淡色部分は設けられるものの、グラデーション部分は殆ど認められなかった。また、まず第二ゲート5からキャビティ6内に第二合成樹脂を所定量射出し、その後、第一ゲート4からキャビティ6に向けて第一合成樹脂を射出したときも、周壁部13には、基本的に濃色部分と淡色部分のみが設けられていて、グラデーション部分は殆ど認められなかった。そして、キャビティ6に向けて第一合成樹脂から射出する場合でも、途中で射出を停止した後に再び開始する間欠的な射出を行う場合は、グラデーション部分は殆ど認められなかった。なお、まず第二ゲート5からキャビティ6内に第二合成樹脂を所定量射出する場合に間欠的な射出を行っても、周壁部13に設けられるのは基本的に濃色部分と淡色部分のみであった。
【0027】
次に、上記の製造方法を用いた確認試験1~4について説明する。なお、確認試験1~4において、第一合成樹脂は黒色であり、第二合成樹脂は白色(やや半透明の白色)である。また、上述した第一合成樹脂における予め定められた量(キャビティ6内に射出される第一合成樹脂の総量)は、キャビティ6の容積を基準として33%に相当する。
【0028】
[確認試験1]
確認試験1では、第二ゲート5からキャビティ6に向けて第二合成樹脂の射出を開始するまでに第一ゲート4からキャビティ6に向けて射出される第一合成樹脂の射出量(先行射出量)を、下記の表1に示した条件A~Dの通りに設定して容器11を成形した。ここで、表1に示した先行射出量は、第一合成樹脂における予め定められた量(キャビティ6内に射出される第一合成樹脂の総量)を基準とした割合を示している。この点につき具体的に説明すると、例えば条件Bでは、最終的にキャビティ6内に射出される第一合成樹脂の総量を基準として、その40%に相当する量の第一合成樹脂を第一ゲート4からキャビティ6に向けて射出したタイミングで、第二ゲート5からキャビティ6に向けて第二合成樹脂の射出を開始している。
【0029】
そして条件A~Dの製造方法で得られた容器11に関し、周壁部13に設けられる濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分の状態を図3において写真で示した。なお、図3に示した条件A~Dの製造方法で得られた各容器11は、図2(a)において矢印Bに沿う向きからの周壁部13の写真であり、また図3においてA~Dと記載された側に底部12が位置している。また表1に示した周壁部13の評価において、「○」は、周壁部13に濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分がバランスよく現出されている状態(淡色部分は、周壁部13の周方向長さの概ね半分以下であり、グラデーション部分は、周壁部13の高さ(容器11の軸線方向に沿う長さ)に対して概ね半分以上である状態)であり、「△」は、周壁部13に現出された濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分のバランスが崩れている状態(一例として、淡色部分が周壁部13の周方向長さの半分より大である場合や、グラデーション部分が周壁部13の高さの半分より小である場合)である。
【0030】
【表1】
【0031】
表1、及び図3に示したように、条件C、条件Dの設定で容器11を成形した場合は、グラデーション部分が周壁部13の高さの半分よりも小さく(淡色部分が周壁部13の高さの半分よりも小さく)なっていて、濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分のバランスが崩れていた。また表1、図3では不図示であるが、第一合成樹脂の先行射出量が0%の場合(すなわち、第一合成樹脂を射出すると同時に第二合成樹脂を射出する場合)は、上述したように、周壁部13に対して濃色部分と淡色部分は設けられるものの、グラデーション部分は殆ど認められなかった。一方、条件A、条件Bの設定で容器11を成形した場合は、周壁部13に濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分がバランスよく現出されていた。よってこれらの結果を踏まえると、第二合成樹脂は、第一合成樹脂の先行射出量が20~40%に達したタイミングで第二ゲート5からキャビティ6に射出することが好ましいといえる。
【0032】
[確認試験2]
確認試験2では、第一射出速度と第二射出速度を、下記の表2に示した条件E~H(確認試験2の条件Bは、確認試験1の条件Bと同一)の通りに設定して容器11を成形した。すなわち条件E~Hにおいて、第一射出速度は同一であって、第二射出速度は表2に示した条件E~Hの順で速くしている。なお条件E~Hにおいて、上述した第一合成樹脂の先行射出量は、何れも40%である。
【0033】
そして条件E~Hの製造方法で得られた容器11に関し、周壁部13に設けられる濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分を図4において写真で示した。なお、図4に示した条件E~Hの製造方法で得られた各容器11は、図2(a)において矢印Cに沿う向きからの周壁部13の写真であり、また図4においてE~Hと記載された側に底部12が位置している。また表2に示した周壁部13の評価における「○」と「△」の意味は、表1と同一である。
【0034】
【表2】
【0035】
表2、及び図4に示したように、条件E、F、G、Hの設定で容器11を成形した場合は、淡色部分が周壁部13の周方向長さの半分より大であったり、グラデーション部分が周壁部13の高さの半分よりも小さかったりして、濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分のバランスが崩れていた。一方、条件Bの設定で容器11を成形した場合は、周壁部13に濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分がバランスよく現出されていた。
【0036】
[確認試験3]
確認試験3では、第一射出速度と第二射出速度を、下記の表3に示した条件I~L(確認試験3の条件Bは、確認試験1の条件Bと同一)の通りに設定して容器11を成形した。すなわち条件I~Lにおいて、第二射出速度は同一であって、第一射出速度は表3に示した条件I~Lの順で速くしている。なお条件I~Lにおいて、上述した第一合成樹脂の先行射出量は、何れも40%である。
【0037】
そして条件I~Lの製造方法で得られた容器11に関し、周壁部13に設けられる濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分を図5において写真で示した。なお、図5に示した条件I~Lの製造方法で得られた各容器11は、図2(a)において矢印Cに沿う向きからの周壁部13の写真であり、また図5においてI~Lと記載された側に底部12が位置している。また表3に示した周壁部13の評価における「○」と「△」の意味は、表1と同一である。
【0038】
【表3】
【0039】
表3、及び図5に示したように、条件I、J、K、Lの設定で容器11を成形した場合は、グラデーション部分が周壁部13の高さの半分よりも小さく、濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分のバランスが崩れていた。一方、条件Bの設定で容器11を成形した場合は、周壁部13に濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分がバランスよく現出されていた。
【0040】
このように試験結果2、3を踏まえると、第一射出速度と第二射出速度をともに等しくしておくことが好ましいといえる。
【0041】
[確認試験4]
確認試験4では、第一射出速度と第二射出速度を、下記の表4に示した条件M~S(確認試験4の条件Bは、確認試験1の条件Bと同一)の通りに設定して容器11を成形した。すなわち条件M~Sにおいて、第一射出速度と第二射出速度は同一である。なお条件M~Sにおいて、上述した第一合成樹脂の先行射出量は、何れも40%である。
【0042】
そして条件M~Sの製造方法で得られた容器11に関し、周壁部13に設けられる濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分を図6において写真で示した。なお、図6に示した条件M~Sの製造方法で得られた各容器11は、図2(a)において矢印Bに沿う向きからの周壁部13の写真であり、また図5においてM~Sと記載された側に底部12が位置している。また表4に示した周壁部13の評価における「○」と「△」の意味は、表1と同一である。
【0043】
【表4】
【0044】
表4、及び図6に示したように、条件Mの設定で容器11を成形した場合は、淡色部分が周壁部13の周方向長さの半分より大になっていて、図6に示されているように周壁部13の表面側だけでなく、背面側にも現出されていた。また条件R、Sの設定で容器11を成形した場合は、図6のR、Sに示したように、現出されるグラデーション部分の高さが低くなっていた。一方、条件B、N、O、P、Qの設定で容器11を成形した場合は、周壁部13に濃色部分、淡色部分、及びグラデーション部分がバランスよく現出されていた。よってこれらの結果を踏まえると、第一射出速度と第二射出速度は、ともに同じ速度であって、20~60mm/sの範囲が好ましいといえる。
【0045】
ここで、周壁部13に現出されるグラデーション部分の構成について説明する。図7は、上記の製造方法で成型した容器11をグラデーション部分が位置するところで横方向に切断した断面の写真である。なお、図2(a)に示した第一ゲート4は、図7に示した写真の上側に位置していて、第二ゲート5は、図7に示した写真の下側に位置している。また図7における断面の上部では周壁部13に濃色部分が現出されていて、断面の下部では周壁部13に淡色部分が現出されていて、断面の上下方向中間部では周壁部13にグラデーション部分が現出されている。
【0046】
図7から明らかなようにグラデーション部分では、濃色の内層部分と濃色の外層部分が周方向に延在していて、内層部分と外層部分の間には、淡色の中間層部分が周方向に延在している。すなわち、第一ゲート4から先行して射出される濃色の第一合成樹脂は、キャビティ6内を流動する際、その径方向内側部分と径方向外側部分は金型1に接しているために固化が進行している一方、厚み方向中間部分は、径方向内側部分と径方向外側部分よりも固化の進行が遅れているため、第二ゲート5よりあとから射出される淡色の第二合成樹脂は、第一合成樹脂の厚み方向中間部分に入り込むようにして周方向に流動していく結果、上記のようなグラデーション部分が形成されるといえる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0048】
例えば上記の容器11は、円板状の底部12に円筒状の周壁部13を一体的にしたものであったが、本発明に係る容器はこの形状に限られるものではなく、例えば横断面形状が多角形状になる容器(周壁部が角筒状になる容器等)でもよい。
【符号の説明】
【0049】
1:金型
2:キャビティ金型
3:コア金型
4:第一ゲート
5:第二ゲート
6:キャビティ
11:容器
12:底部
13:周壁部
14:開口部
O:底部の中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7