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特開2023-175496スチレン系樹脂組成物及びその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175496
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
C08L25/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087963
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】岩本 大和
(72)【発明者】
【氏名】中川 優
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE052
4J002BC041
4J002BC071
4J002CD162
4J002CH023
4J002EC039
4J002ED039
4J002EF057
4J002EG027
4J002EG037
4J002EG047
4J002EH046
4J002EJ008
4J002EJ018
4J002EJ028
4J002EJ038
4J002EJ048
4J002EJ068
4J002EW068
4J002EW118
4J002FD022
4J002FD026
4J002FD078
4J002FD203
4J002FD207
4J002FD209
4J002GC00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本開示は、バイオマス原料を用いることにより環境負荷を低減し、かつ成形時に高い耐熱性及び透明性を有し、成形性及び成形時のシート外観に優れるスチレン系樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】スチレン系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体を有するスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)85~99.9質量%と、反応性官能基により変性されてもよいバイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上のバイオマス可塑剤(B)0.1~15質量%と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂組成物を含む2mm厚プレートの全光線透過率が70%以上であり、前記反応性官能基による変性率がバイオマス可塑剤(B)1分子あたり0~3個であることを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体を有するスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)85~99.9質量%と、反応性官能基により変性されてもよいバイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上のバイオマス可塑剤(B)0.1~15質量%と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂組成物を含む2mm厚プレートの全光線透過率が70%以上であり、前記反応性官能基による変性率がバイオマス可塑剤(B)1分子あたり0~3個であることを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体のSP値が、8.0~12.0(cal/cm1/2である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記バイオマス可塑剤(B)のSP値が、7.5~10.5(cal/cm1/2である、請求項1又は2のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)中の不飽和カルボン酸系単量体単位の含有率は、前記スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)の総量に対して1~30質量%である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分が3質量%以下である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
脂肪酸系化合物、脂肪酸金属塩化合物、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アルコール化合物、4-メトキシフェノール及びヒドロキノンからなる群から選択される一種又は二種の物質を含む、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物を射出成形して得られる成形品。
【請求項8】
請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物からなるシート成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂組成物及び該スチレン系樹脂を含有する成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は透明で剛性も優れていることから、雑貨用品、カトラリー、食品包装容器など多用途で使用されている。スチレン系樹脂を用いた食品包装容器では、特に耐熱性が求められる用途で、スチレン系単量体とメタクリル酸単量体を共重合させたスチレン-メタクリル酸共重合体を使用されることがある。また、場合によってスチレン系単量体とメタクリル酸単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とからなるスチレン-メタクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用されることがある。例えば、特許文献1には、耐熱性及び透明性に優れたスチレン-メタクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体について開示されている。
【0003】
一方、近年の環境負荷低減の潮流から天然由来のバイオマス材料が注目されており、スチレン系樹脂材料とバイオマス材料との複合材料が検討されている。例えば、特許文献2には、スチレンメタクリル酸共重合体とポリ乳酸とエポキシ化大豆油又はエポキシ化アマニ油とを含むスチレン系樹脂組成物が開示されている。また、特許文献3には、スチレンメタクリル酸共重合体と、エポキシ化大豆油及び/又はエポキシ化アマニ油とを溶融混錬した架橋型スチレン系樹脂組成物が開示されている。さらに特許文献4には、植物由来ポリエチレンと相溶化剤とを含有したスチレン系樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-214487
【特許文献2】特開2015-67665
【特許文献3】特開2005-239914
【特許文献4】特開2020-193274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、耐熱性、透明性に優れたスチレン-メタクリル酸-(メタ)アクリル酸エステルについて検討されているが、樹脂の流動性が低いため製造プラントでの生産性が低下する傾向がある。また、この樹脂を用いて射出成形により成形体を得る場合、樹脂が充填されにくく、成形品がショートしやすくなる懸念がある。
【0006】
上記特許文献2の技術は、スチレンメタクリル酸共重合体と、当該共重合体以外のスチレン系樹脂と、ポリ乳酸と、エポキシ化植物油とを含んだスチレン系樹脂組成物及び製造方法を検討している。この特許文献2には、スチレン系樹脂に対するポリ乳酸の分散性が向上し、強度、耐熱性、耐油性に優れるスチレン系樹脂組成物が得られることが記載されている。しかし、この技術では、スチレンメタクリル酸共重合体又はポリ乳酸とエポキシ化植物油とを反応させなければならないため、溶融混錬の時間が長くなり、生産性を高めることは困難である。また、高い透明性を維持させる技術については検討されていない。
【0007】
上記特許文献3に技術は、架橋構造を備えた成分としてエポキシ化大豆油を、スチレンメタクリル酸共重合体に対して反応させた架橋型スチレンメタクリル酸共重合樹脂を検討している。また、特許文献3に技術は、使用するスチレン系樹脂の種類と架橋剤の種類とによって相溶性が大きく変わるため、伸縮性と機械的強度とを兼ね備えた成形体を製造することは難しいものの、架橋剤を導入して溶融状態の流動性又は粘弾性を制御することにより独立気泡型のスチレン系樹脂発泡体の製造する手法は、一般的な発泡体形成方法である。また、特許文献2、3に記載の技術のように、スチレンメタクリル酸共重合樹脂及びエポキシ化大豆油などの変性植物油が共存する系では、当該変性基とメタクリル酸とが反応してゲル化するため、架橋密度などを制御しにくく、成形性が低下する。さらには、ゲル化により成形品外観を損なう懸念もある。
【0008】
上記特許文献4の技術は、植物由来ポリエチレンと相溶化剤とを含有するポリスチレン系樹脂組成物を検討しているが、ポリスチレンとポリエチレンとは相溶性が低いため、組成物全体として、機械的強度が低く、相溶化剤を使用しても高い透明性を維持することは困難である。また、スチレンメタクリル酸共重合体を使用していないため、高い耐熱性を維持することは困難である。
以上のことから、上記特許文献1~4では、高い耐熱性、透明性を維持し、優れた成形性を有するバイオマス原料を用いたスチレン系樹脂組成物については検討されていない。
そこで、本開示は、バイオマス原料を用いることにより環境負荷を低減し、かつ成形時に高い耐熱性及び透明性を有し、成形性及び成形時のシート外観に優れるスチレン系樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記問題点を鑑み、鋭意研究し、実験を重ねた結果、スチレン系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体を有するスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)85~99.9質量部と、バイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上であり、かつ反応性官能基によって変性されてもよいバイオマス可塑剤(B)0.1~15質量部と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、前記スチレン系樹脂組成物を含む2mm厚プレートの全光線透過率が70%以上であり、前記反応性官能基による変性率がバイオマス可塑剤(B)1分子あたり0~3個であることを特徴とするスチレン系樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は以下の通りである。
(1)本開示は、スチレン系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体を有するスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)85~99.9質量部と、バイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上であり、かつ反応性官能基によって変性されてもよいバイオマス可塑剤(B)0.1~15質量部と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、前記スチレン系樹脂組成物を含む2mm厚プレートの全光線透過率が70%以上であり、前記反応性官能基による変性率がバイオマス可塑剤(B)1分子あたり0~3個であることを特徴とするスチレン系樹脂組成物である。
【0011】
(2)本実施形態において、前記スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)のSP値は8.0~12.0(cal/cm1/2であることが好ましい。
【0012】
(3)本実施形態において、前記バイオマス可塑剤(B)のSP値が、7.5~10.5(cal/cm1/2であることが好ましい。
【0013】
(4)本実施形態において、前記スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)中の不飽和カルボン酸系単量体単位の含有率は1~30質量部であることが好ましい。
【0014】
(5)本実施形態において、前記スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分が3質量%以下であることが好ましい。
【0015】
(6)本実施形態において、脂肪酸系化合物、脂肪酸金属塩化合物、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アルコール化合物、4-メトキシフェノール及びヒドロキノンからなる群から選択される一種又は二種の物質を含むことが好ましい。
【0016】
(7)本実施形態は、前記スチレン系樹脂組成物を射出成形して得られる成形品である。
【0017】
(8)本実施形態は、前記スチレン系樹脂組成物からなるシート成形品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バイオマス原料を用いることにより、環境負荷を低減し、かつ成形時に高い耐熱性及び透明性を有し、かつ成形性及び成形時のシートの外観に優れるバイオマス原料を用いたスチレン系樹脂組成物及びその成形体を提供する。
【0019】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
[スチレン系樹脂組成物]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系単量体単位及び不飽和カルボン酸系単量体単位を有するスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)85~99.9質量部と、バイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上のバイオマス可塑剤(B)0.1~15質量部と、を含有する。そして、前記バイオマス可塑剤(B)は、反応性官能基に変性されてもよく、かつ前記反応性官能基による変性率が、前記バイオマス可塑剤(B)1分子あたり0~3個である。また、前記スチレン系樹脂組成物を含む2mm厚プレートの全光線透過率が70%以上である。
これにより、環境負荷を低減し、かつ成形時に高い耐熱性、透明性を維持し、優れた成形性及びシート外観を有するスチレン系樹脂組成物及びその成形体を提供できる。
使用用途に応じて、スチレン系樹脂組成物に対してさらに特性を付与してもよい。例えば、高い耐衝撃性を重視する場合、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、ゴム状重合体の粒子を含有してもよい。ゴム状重合体粒子を多く含有する場合、耐衝撃性は向上するが成形品の透明性は低下する懸念がある。そのため、スチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体粒子の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、3.0質量部未満、好ましくは2.0質量部未満、さらに好ましくは1.0質量部未満であることが好ましい。
【0021】
[スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)]
本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)の含有量は、当該樹脂(A)及びバイオマス可塑剤(B)の合計量100質量部に対して85~99.9質量部であり、87~99質量部であることが好ましく、88~98質量部であることがより好ましい。
本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)は、当該樹脂(A)を構成する単量体単位のうち、不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量は、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)100質量部に対して1~30質量部が好ましく、より好ましくは1.5~25質量部、さらに好ましくは2.0~23質量部、さらにより好ましくは2.5~20質量部、さらにより好ましくは3.0~17質量部である。
当該樹脂(A)構成する単量体単位のうち、スチレン単量体単位の含有量は、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)100質量部に対して70~99質量部が好ましく、より好ましくは75~98.5質量部、さらに好ましくは77~98質量部、さらにより好ましくは80~97.5質量部、さらにより好ましくは83~97質量部である。
スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)は、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を必須に含有する樹脂をいい、樹脂(A)全体に対してスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を90~100質量%含有することが好ましく、より好ましくは95~100質量%、さらにより好ましくは97~100質量%含有する。後述で説明する通り、樹脂(A)は、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体のみから構成されていても、あるいはスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体とポリスチレンとの混合物であってもよい。
なお、本明細書における不飽和カルボン酸系単量体単位は、不飽和カルボン酸単量体単位(例えば、(メタ)アクリル酸単量体単位)及び不飽和カルボン酸エステル単量体単位(例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位)を包含する。
本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体は、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸単量体単位とを含有することが好ましく、すなわち、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸単量体単位とを含む二元共重合体、又はスチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸単量体単位と不飽和カルボン酸エステル単量体単位とを含む三元共重合体、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体としてもよい。不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量は、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を構成する単量体単位のうち、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体100質量部に対して1~30質量部が好ましく、より好ましくは1.5~25質量部、さらに好ましくは2.0~23質量部、さらにより好ましくは2.5~20質量部、さらにより好ましくは3.0~17質量部である。
不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を構成する単量体単位のうち、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体100質量部に対して1~30質量部が好ましく、より好ましくは1.5~25質量部、さらに好ましくは2.0~23質量部、さらにより好ましくは2.5~20質量部、さらにより好ましくは3.0~17質量部である。
スチレン単量体単位の含有量は、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を構成する単量体単位のうち、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体100質量部に対して70~99質量部が好ましく、より好ましくは75~98.5質量部、さらに好ましくは77~98質量部、さらにより好ましくは80~97.5質量部、さらにより好ましくは83~97質量部である。
不飽和カルボン酸単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有率はそれぞれ、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から求めることができる。また、H-NMR測定で定量が困難である場合は、赤外分光法(FTIR)測定で定量を行う。
【0022】
本実施形態におけるスチレン系単量体としては、スチレンの他に、例えば、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種又は2種以上使用することができる。
【0023】
本明細書における不飽和カルボン酸系単量体は、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸エステル単量体を包含する。
本実施形態における不飽和カルボン酸単量体は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。これらの単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施形態における不飽和カルボン酸エステル単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の単量体が挙げられる。これらの単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、用語「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を含む。
【0024】
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は100,000~350,000であることが好ましく、より好ましくは120,000~320,000、さらに好ましくは140,000~300,000、さらにより好ましくは160,000~280,000である。重量平均分子量(Mw)が100,000~350,000である場合、機械的強度と流動性とのバランスにより優れる樹脂が得られ、またゲル物の混入も少ない。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、標準ポリスレン換算で得られる値である。
また、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)は100,000~350,000であることが好ましく、より好ましくは120,000~320,000、さらに好ましくは140,000~300,000、さらにより好ましくは160,000~280,000である。重量平均分子量(Mw)が100,000~350,000である場合、機械的強度と流動性とのバランスにより優れる樹脂が得られ、またゲル物の混入も少ない。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、標準ポリスレン換算で得られる値である。
【0025】
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)又は本実施形態のスチレン系樹脂組成物中にはアクロニトリル単量体単位、メタクリロニトリル単量体単位等のシアン化ビニル系単量体を実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)又はポリマーマトリックスの総量に対して、シアン化ビニル系単量体が10質量部以下含有することが好ましく、5質量部以下含有することがより好ましく、2質量部以下含有することがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)中には、ポリスチレンが含有されてもよい。本実施形態において、ポリスチレンとはスチレン系単量体を重合した単独重合体であり、一般的に入手できるものを適宜選択して用いることができる。ポリスチレンを構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種又は2種以上使用することができる。ポリスチレンは本発明の効果を損なわない範囲で、上記のスチレン系単量体単位以外の単量体単位をさらに含有することを排除しないが、典型的にはスチレン系単量体単位からなる。
スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)中にポリスチレンを添加する場合、樹脂(A)全体に対してポリスチレンを1~10質量部含有することが好ましく、さらに好ましくは1~5質量部、さらにより好ましくは1~3質量部である。
【0027】
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)中には、スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体とのスチレン系共重合体を有してもよい。
スチレン系共重合体を構成する単量体単位のうち、スチレン系単量体単位の含有量は50~100質量%が好ましく、より好ましくは60~100質量%、さらに好ましくは70~100質量%、さらにより好ましくは80~100質量%、よりさらに好ましくは90~100質量%である。スチレン系単量体の含有量、すなわちスチレン系単量体単位の含有量は、それぞれ、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から求めることができる。また、H-NMR測定で定量が困難である場合は、赤外分光法(FTIR)測定で定量を行う。
スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)中にスチレン系共重合体を添加する場合、樹脂(A)全体に対してスチレン系共重合体を1~10質量部含有することが好ましく、さらに好ましくは1~5質量部、さらにより好ましくは1~3質量%含有することが好ましい。
【0028】
本実施形態において、上記スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、特に限定されないが例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸エステル単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体及びスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)の重合方法は、特に制限はないが例えば、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を好適に採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とを備える。
【0030】
以下、本実施形態に用いることができるスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体の重合方法の一例について説明する。
当該スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。
スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体の重合に用いられる重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサC)、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン(パーテトラA)、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。単量体の合計量に対して0.005~0.08質量部添加することが好ましい。
スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体の重合に用いられる連鎖移動剤としては、例えばα-メチルスチレンリニアダイマー、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、1-フェニルー2-フルオレン、ジベンテン、クロロホルムなどのメルカプタン類、テルペン類、ハロゲン化合物、テレピノーレン等のテレピン類等を挙げることができる。この連鎖移動剤の使用量は、特に制限はないが、一般的には単量体に対して、0.005~0.3重量部程度添加することが好ましい。
【0031】
スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体の重合方法としては、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類にさらに混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、25質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が25質量部を超えると、重合速度が著しく低下し、且つ得られる樹脂の機械的強度の低下が大きくなる傾向がある。重合前に、全単量体100質量部に対して5~20質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0032】
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、一般的なスチレン系樹脂の重合方法に従って適宜選択すればよい。例えば、塊状重合を採用する場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また脱揮工程についても特に制限はない。例えば、塊状重合を採用する場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。より詳細には、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、190~280℃程度であり、190~260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13~4.0kPa程度であり、好ましくは0.13~3.0kPaであり、より好ましくは0.13~2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0033】
[バイオマス可塑剤(B)]
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、バイオマス可塑剤(B)を含有する。そして、当該バイオマス可塑剤(B)は、バイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上であり、かつ反応性官能基に変性されてもよい。また、前記反応性官能基による変性率がバイオマス可塑剤(B)1分子あたり0~3個である。バイオマス炭素比率(pMC%)が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができるため、環境負荷を低減しうるスチレン系樹脂組成物を提供できる。なお、「変性率」とは、バイオマス可塑剤(B)を構成する成分のうちバイオマス炭素比率(pMC%)が90~100%であり、バイオマス可塑剤(B)を構成する成分の中で最も含有量の多い成分1分子あたりの変性基の数をいう。また、「成分」とは共通の化学構造を有する分子の集合体をいう。したがって、バイオマス可塑剤(B)1分子とは、バイオマス炭素比率(pMC%)が90~100%であり、かつ、バイオマス可塑剤(B)を構成する成分の中で最も含有量の多い成分の分子1つをいう。なお、バイオマス可塑剤(B)が植物油である場合、バイオマス可塑剤(B)1分子とは、植物油の主成分全体を表す一般式を有する分子1つをいう。
本実施形態において、バイオマス炭素比率(pMC%)の下限は、好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは50%以上、さらにより好ましくは75%以上である。
本実施形態において、樹脂(A)及びバイオマス可塑剤(B)の合計量に対して、バイオマス可塑剤(B)の含有量は、0.1~15質量部である。バイオマス可塑剤(B)の含有量の上限値は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは14質量部以下、さらにより好ましくは13質量部以下、さらにより好ましくは12質量部以下、さらにより好ましくは11質量部以下である。
バイオマス可塑剤(B)の含有量の下限値は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらにより好ましくは0.5質量部以上、さらにより好ましくは0.8質量部以上、さらにより好ましくは1.0質量部以上、さらにより好ましくは1.2質量部以上、さらにより好ましくは1.5質量部以上、さらにより好ましくは2.0質量部以上、さらにより好ましくは3.0質量部以上、さらにより好ましくは5.0質量部以上、さらにより好ましくは6.0質量部以上である。
バイオマス可塑剤(B)の含有量が多すぎると揮発成分が増え、金型汚れが増える。また、バイオマス可塑剤(B)の含有量が15質量部を超えるとブリードアウトする傾向を示す。一方、バイオマス可塑剤(B)の含有量が少なすぎると流動性が低下するため、射出成形時にショートショットになりやすくなり、射出成形性が低下する。
バイオマス可塑剤(B)はスチレン系樹脂組成物中に均一に分散していることが好ましい。より詳細には、例えば、スチレン系樹脂組成物の表面にバイオマス可塑剤(B)の単層を形成する、外部滑剤(例えば、重合体溶融物に不溶な滑剤)でないことが好ましい。バイオマス可塑剤(B)をスチレン系樹脂組成物中に均一に分散させる方法としては、例えば、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)とバイオマス可塑剤(B)とを押出機で混練する方法や、重合原料を重合させる際に、重合原料組成物中に、バイオマス可塑剤(B)を含有させる方法などが挙げられる。
【0034】
本明細書におけるバイオマス炭素比率(pMC%)とは、バイオマス由来成分の炭素濃度(質量比率)を示すものであり、より詳細には、ASTM-D6866に準拠した放射性炭素(14C)測定方法によって得られた14C含有量の値である。当該放射性炭素(14C)測定方法は、化石燃料には14Cを含まず、かつバイオマス(又は生物)由来炭素は成長した時期の大気中14Cを吸収していることを利用して、バイオマス材料(又は生物)に含まれる炭素中の14C比率からバイオマス炭素比率(pMC%)を推定する方法である。
したがって、本実施形態の可塑剤中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、後述の実施例の欄で記載する方法を用いて、以下の式(1)により、バイオマス炭素比率(pMC%)を算出する。
式(1):バイオマス炭素比率(pMC%)=(14C可塑剤/12C可塑剤)/(14C標準物質/12C標準物質)×100
また、標準物質はシュウ酸(SRM4990)を使用し、AMS法により(14C可塑剤/12C可塑剤)/(14C標準物質/12C標準物質)を算出した。
【0035】
本実施形態のバイオマス可塑剤(B)の重量平均分子量(Mw)は、200~7500であることが好ましく、より好ましくは300~5000、さらに好ましくは400~3000である。バイオマス可塑剤(B)の重量平均分子量(Mw)が200~7500である場合、機械的強度と流動性とのバランスにより優れるスチレン系樹脂組成物が得られ、またゲル物の混入も少ない。なお、重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例の欄に記載の通り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、標準ポリスチレン換算で得られる値である。
【0036】
本実施形態におけるバイオマス可塑剤(B)とは、バイオマス材料を原料の一部又は全部に使用する可塑剤をいい、バイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上の可塑剤をいう。本実施形態のバイオマス可塑剤(B)は、植物由来のバイオマス材料を少なくとも原料の一部に使用し、かつバイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上の可塑剤であり、植物油、植物油と鉱油との混合物、あるいはポリエステル系可塑剤であることが好ましい。
また、バイオマス可塑剤(B)は、反応性官能基に有してもよく、前記反応性官能基による変性率が1分子あたり0~3個である。
本実施形態における植物油は反応性官能基(エポキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基又はエステル結合の官能基)を有さない天然植物油であることが好ましい。変性基を有する変性植物油の場合、1分子あたり3個以下であることが好ましく、より好ましくは2.5個以下、さらにより好ましくは2.0個以下、さらにより好ましくは1.5個以下、さらにより好ましくは1.0個以下、さらにより好ましくは0.5個以下、さらにより好ましくは0個である。
上記反応性官能基を有する植物油の変性率は、後述の実施例に記載の通りH-NMR測定法により算出する。また、H-NMR測定で定量が困難である場合は、赤外分光法(FTIR)測定で定量を行う。
【0037】
本実施形態におけるバイオマス可塑剤(B)の反応性官能基の変性率は、バイオマス可塑剤(B)1分子あたりの変性基数を算出した後、その変性基数をバイオマス可塑剤の分子量(Mw)で割ることで1gあたりの変性基モル数(mоl/g)を算出することができる。
【0038】
本実施形態におけるバイオマス可塑剤(B)の反応性官能基がエポキシ基である場合、変性率の指標としてオキシラン酸素を使用してもよい。バイオマス可塑剤(B)のオキシラン酸素は6.0%以下であることが好ましく、より好ましくは5.5%以下、さらにより好ましくは5.0%以下、さらにより好ましくは4.0%以下、さらにより好ましくは3.0%以下、さらにより好ましくは2.0%以下、さらにより好ましくは1.0%以下、さらにより好ましくは0%である。本実施形態においてバイオマス可塑剤のオキシラン酸素は、Epoxy Fatty Acids in Natural Oils. (3)に記載のDurbetaki法によって定量した。
【0039】
本実施形態におけるバイオマス可塑剤(B)の反応性官能基がヒドロキシ基である場合、変性率の指標として水酸基価を使用してもよい。バイオマス可塑剤(B)の水酸基価は200mg/g以下が好ましく、より好ましくは180mg/g以下が好ましく、さらにより好ましくは160mg/g以下、さらにより好ましくは155mg/g以下、さらにより好ましくは150mg/g以下、さらにより好ましくは140mg/g以下、さらにより好ましくは130mg/g以下、さらにより好ましくは120mg/g以下、さらにより好ましくは100mg/g以下、さらにより好ましくは50mg/g以下、さらにより好ましくは0mg/gである。
【0040】
上記天然植物油の具体例としては、例えば、綿実油、キリ油、シアオイル、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、冬カボチャ油、雑穀油、オオムギ油、キノア油、ライ麦油、ククイ油、トケイソウ油、シアバター、アロエベラ油、甘扁桃油、桃核油、大豆油、カシュー油、ピーナッツ油、アボカド油、バオバブ油、ルリヂサ油、ブロッコリー油、キンセンカ油、椿油、キャノーラ油、ニンジン油、サフラワー油、亜麻油、アブラナ種子油、綿実油、ココナツ油、カボチャ種子油、小麦胚芽油、ホホバ油、ユリ油、マカデミア油、コーン油、メドフォーム油、モノイオイル、ヘイゼルナッツ油、杏仁油、クルミ油、オリーブ油、月見草油、パーム油、ブラックカラント種油、キーウィ種子油、グレープシード油、ピスタチオ油、ジャコウバラ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、スイカ油又はこれら油の混合物が挙げられる。
なお、本明細書における植物油は、天然植物油及び変性植物油を含む。
【0041】
本実施形態のバイオマス可塑剤(B)の具体例としては、例えば、パーム油、大豆油、オレイン酸エステル又はラウリン酸エステルが挙げられ、日清オイリオグループ株式会社製の「マルチエース20(S)」、「精製パーム油(S)」、「大豆白絞油」が挙げられる。
【0042】
本実施形態のバイオマス可塑剤(B)として使用可能な植物油(天然植物油及び変性植物油を含む。)の粘度は、50℃で1000mPa・s以下であることが好ましく、10~1000mPa.sであることがより好ましく、20~800mPa.sであることがさらにより好ましい。
【0043】
本実施形態におけるバイオマス可塑剤(B)の融点は、-30~80℃であることが好ましく、より好ましくは-25~77℃、さらに好ましくは-22℃~74℃、よりさらに好ましくは-19℃~70℃、さらにより好ましくは-16℃~67℃、さらにより好ましくは-13℃~64℃、さらにより好ましくは-10℃~61℃、さらにより好ましくは-8℃~58℃、さらにより好ましくは-5℃~55℃、特に好ましくは-3℃~53℃である。バイオマス可塑剤(B)の融点が80℃超であると、バイオマス可塑剤(B)がスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体に対して溶融しにくく、添加又は混合操作が困難になる。一方、バイオマス可塑剤(B)の融点が-30℃未満であると、使用可能なバイオマス可塑剤(B)の種類として不飽和結合を多く含有する化合物を使用する必要があるため、酸化劣化しやすく物性低下しやすい。なお、一般的には天然植物油の二重結合部は全てシス型であるため、二重結合が多いほど、分子間力低下し、融点が低下する傾向を示すと考えられる。
【0044】
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体のSP値とバイオマス可塑剤(B)のSP値((cal/cm1/2)との差は、好ましくは±2.5未満、より好ましくは2.4未満、より好ましくは2.3未満、より好ましくは2.2未満であることが好ましい。スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体のSP値とバイオマス可塑剤(B)のSP値との差が、±2.5以上であると両者が相容しにくくなる。その結果、スチレン系樹脂組成物中にバイオマス可塑剤(B)が均一に分散し難く、スチレン系樹脂組成物全体の機械的強度及び成形体の全光線透過率が低下する傾向を示す。
また、本実施形態におけるスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体のSP値は、8.0~12.0((cal/cm1/2)であることが好ましく、より好ましくは8.5~11.5((cal/cm1/2)、さらにより好ましくは8.7~11.3((cal/cm1/2)、さらにより好ましくは8.9~11.1((cal/cm1/2)、さらにより好ましくは9.0~11.0((cal/cm1/2)、さらにより好ましくは9.2~10.8((cal/cm1/2)である。
また、本実施形態におけるスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)のSP値は、8.0~12.0((cal/cm1/2)であることが好ましく、より好ましくは8.5~11.5((cal/cm1/2)、さらにより好ましくは8.7~11.3((cal/cm1/2)、さらにより好ましくは8.9~11.1((cal/cm1/2)、さらにより好ましくは9.0~11.0((cal/cm1/2)、さらにより好ましくは9.2~10.8((cal/cm1/2)である。
また、本実施形態におけるバイオマス可塑剤(B)のSP値の下限は7.4((cal/cm1/2)以上であることが好ましく、より好ましくは7.5((cal/cm1/2)以上、さらに好ましくは7.6((cal/cm1/2)、さらにより好ましくは7.7((cal/cm1/2)、さらにより好ましくは7.8((cal/cm1/2)以上である。当該SP値の上限は10.5以下であることが好ましく、より好ましくは10.4以下、さらに好ましくは10.3以下、さらにより好ましくは10.2以下、さらにより好ましくは10.1以下、さらにより好ましくは10.0以下、さらにより好ましくは9.8以下、さらにより好ましくは9.6以下、さらにより好ましくは9.4以下、さらにより好ましくは9.2以下、さらにより好ましくは9.0以下、さらにより好ましくは8.8以下である。
本実施形態において規定する溶解度パラメータ(SP値)は、下式に示す凝集エネルギー密度の関数を用いて算出している。
SP値((cal/cm1/2)=(△E/V)1/2 式(2)
(△Eは、分子間凝集エネルギー(蒸発熱)を示し、Vは、混合液の全体積を示し、△E/Vは、凝集エネルギー密度を示す。)
また、混合による熱量変化△Hmは、SP値を用いて次の式で示される。
△Hm=V(δ-δ)・Φ1・Φ2 ・・・式(3)
(δは、溶媒のSP値を示し、δは、溶質のSP値を示し、Φは、溶媒の体積分率を示し、Φは、溶質の体積分率を示す。)
上記の式(2)及び(3)より、δ及びδの値が近いほど、△Hmは小さくなり、ギムスの自由エネルギーが小さくなるため、SP値の差が小さいもの同士は親和性が高くなる。
本明細書におけるSP値を求める方法としては、SP値が既知の各種溶剤との樹脂の溶解性を比較することで、最も良く相溶する溶剤のSP値から未知の樹脂のSP値を算出しており、具体的には、実施例の欄に記載の濁度滴定法を用いて算出した。本実施形態では、主にモノマー組成から計算により求めた値を用いる。
本実施形態のバイオマス可塑剤(B)が高沸点であると成形時に発生するガスの量が少なくなるため、金型汚れ低減には有利に働く観点から、比較的高沸点であることが好ましい。バイオマス可塑剤(B)のSP値が上記範囲であると、分子間凝集エネルギー、つまり蒸発熱が所定範囲内に制御できるため、成形時に発生するガスの量を低減できる程度の高沸点になる傾向を示す。
【0045】
本実施形態において、鉱油としては、例えば、パラフィン系原油(流動パラフィンを含む。)、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱蝋、接触脱蝋、水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる鉱油;フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス)を異性化することで得られる鉱油等が挙げられる。これらの鉱油は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
本実施形態において、バイオマス可塑剤(B)として植物油と鉱油とを混合して使用する場合、バイオマス可塑剤(B)全体のバイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上であれば特に制限されることはないが、例えば、植物油100質量部に対して、10~100質量部混合することが好ましく、10~50質量部混合することがより好ましい。
本実施形態において、バイオマス可塑剤(B)として植物油と鉱油とを混合して使用する場合、バイオマス可塑剤(B)全体のバイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上であれば特に制限されることはない。
【0046】
スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分の含有量が、3質量部未満であることが好ましく、より好ましくは2質量部未満、さらにより好ましくは1質量部未満である。なお、トルエン不溶分含有率は、後述の実施例の欄に記載の方法により測定されるものである。
【0047】
(ゴム状重合体粒子)
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、必要によりゴム状重合体の粒子(本明細書ではゴム状重合体粒子と称する。)を含有してもよい。これにより、スチレン系樹脂組成物全体として、耐衝撃性等の機械的特性を向上することができる。
なお、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物中にゴム状重合体粒子を含有させる方法としては、ゴム状重合体粒子を単独で樹脂(A)及び/又はバイオマス可塑剤(B)に混合させても、あるいはポリスチレン又は所定のスチレン系重合体を含有するポリマーマトリックス相とゴム状重合体を含有するゴム状重合体粒子とを含むゴム変性ポリスチレン系樹脂(HIPS)として、バイオマス可塑剤(B)に混合させてもよい。後者の場合は、樹脂(A)が、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体とポリスチレン又はスチレン系重合体を含有する混合樹脂になりうる。
本実施形態のゴム状重合体粒子は、共役ジエン系単量体から形成されることが好ましい。本願明細書において共役ジエン系単量体(単位)とは、上記ゴム状重合体粒子を構成する単量体単位のうち、一対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。
本発明におけるゴム状重合体粒子は、ゴム状重合体を含有する粒子体であればよい。したがって、ゴム状重合体粒子の形態は、ゴム状重合体からなる中実粒子、ゴム状重合体からなる中空粒子、ゴム状重合体内にポリスチレン又はスチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸系単量体単位とを有するスチレン系重合体を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、並びに表面に前記ポリスチレン又は前記スチレン系重合体がグラフトされた表面グラフト化粒子を含む。また、これらの形態を複合的に備えてもよい。
尚、上記ゴム状重合体を含有するゴム状重合体粒子とは、ゴム状重合体粒子全体の5質量%以上をゴム状重合体が占めていることをいう。
【0048】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、ゴム状重合体粒子の含有量(スチレン系重合体を含むポリマー相の内包分を含む。)は、スチレン系樹脂組成物の総量100質量%に対して、0質量%以上5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0質量%以上3質量%以下、さらにより好ましくは0質量%以上2質量%以下、さらにより好ましくは0質量%以上1質量%以下である。
【0049】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、ゴム状重合体粒子を構成するゴム状重合体の含有量(スチレン系重合体を含むポリマー相の内包分を含まない。)、すなわち共役ジエン系単量体単位の含有量(ゴム状重合体の含有量又ゴム含有量とも称する)が0~3質量%であることが好ましく、0~1質量%であることがより好ましい。
尚、本明細書において、ゴム状重合体粒子を構成する共役ジエン系単量体単位の含有量(ゴム含有量)の算出方法は、以下の測定方法を用いている。
スチレン系樹脂組成物中の共役ジエン系単量体単位の含有量(質量%)を以下のように測定した。
メスフラスコにスチレン系樹脂組成物0.4gを精秤し(この質量をWとする)、クロロホルム75mLを加えてよく分散させた後、一塩化ヨウ素18gを1000mLの四塩化炭素に溶かした溶液20mLを加え、冷暗所に保存し、8時間後にクロロホルムを加え、標線に合わせた。これを25mL採取し、ヨウ化カリウム10gを水800mL、エタノール200mLの混合液に溶かした溶液60mLを加え、チオ硫酸ナトリウム10gを1000mLの水に溶かした溶液(この溶液のモル濃度をxとする)で滴定した。本試験AmL、空試験BmLとし、共役ジエン系単量体単位の含有量(質量%)は以下の式により求めた。
共役ジエン系単量体単位の含有量の含有量=10.8×x×(B-A)/W
本明細書において、以上により算出した共役ジエン系単量体単位の含有量は、スチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体の含有量であり、ゴム状重合体粒子に内包されうるポリマー相(スチレン系重合体及び/又はポリスチレン)を含んでいない。すなわち、ゴム含有量は、共役ジエン系単量体単位の含有量(例えば、実質的にブタジエン量)を表す。
【0050】
本実施形態のゴム状重合体粒子(或いはゴム状重合体)に用いる材料としては、共役ジエン構造(共役ジエン系単量体単位)を有していればよい。そのため、本実施形態におけるゴム状重合体は、共役ジエン系重合体であることが好ましく、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等を使用できる。なかでも、ポリブタジエン又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、ポリブタジエンは、ポリブタジエンの一部又は全部にスチレン-ブタジエン共重合体及び/又はアクリロニトリル-ブタジエン共重合体を有してもよい。スチレン-ブタジエン共重合体及びアクリロニトリル-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体粒子は1種若しくは2種以上使用することができる。
本実施形態において、ゴム状重合体粒子(或いはゴム状重合体)に用いる材料としてアクリロニトリル単量体単位などの(メタ)アクリロニトリルを含む共役ジエン系重合体を使用する場合、(メタ)アクリロニトリル単量体単位の含有量は、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.7質量%以下であることが特に好ましい。
また、上記ブタジエン系ゴム、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体)を水素添加した飽和ゴムをゴム状重合体粒子として使用してもよい。また、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体は1種もしくは2種以上使用することができる。ゴム状重合体としてスチレン-ブタジエン共重合体を用いる場合には、当該スチレン-ブタジエン共重合体におけるスチレン単量体単位の含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0051】
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物中に含まれるゴム状重合体粒子の平均粒子径は、0.3μm以上5.0μm以下であることが好ましい。
【0052】
[任意の添加成分]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、上記樹脂(A)、バイオマス可塑剤(B)及びゴム状重合体粒子の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤、加工助剤等の添加成分を添加することができる。これら任意の添加成分としては、離型剤、難燃剤、分散剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、充填剤、ブロッキング防止剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面処理剤、抗菌剤、目ヤニ防止剤(特開2009-120717号公報に記載のシリコーンオイル、アルコール化合物、高級脂肪族カルボン酸のモノアミド化合物、及び高級脂肪族カルボン酸と1価~3価のアルコール化合物とを反応させてなるモノエステル化合物等の目やに防止剤)等を添加してもよい。
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物は公知の難燃剤(リン系難燃剤、ブロム系などのハロゲン系難燃剤)を含有してもよい。しかし、スチレン系樹脂組成物中に含有されるバイオマス可塑剤(B)との反応により臭化水素などのガスの生成が危惧される観点から、ハロゲン系難燃剤の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、3質量部未満であることが好ましく、1質量部未満であることがより好ましい。
【0053】
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、不可避的不純物を除き、金属を含有しないほうが好ましく、より具体的には、金属の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、3質量部未満であることが好ましく、1質量部未満であることがより好ましい。
本実施形態において、分散剤としては、脂肪酸エステル系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、テルペン系化合物、ロジン系化合物、脂肪酸アミド、脂肪酸系化合物、又は脂肪酸金属塩系等を用いることができる。
上記離型剤としては、脂肪酸系化合物、又は脂肪酸金属塩化合物等を用いることができる。
上記酸化防止剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
上記添加成分の合計含有量は、スチレン系樹脂組成物全体に対して、0.05~5質量部としてよい。
【0054】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、脂肪酸系化合物、脂肪酸金属塩化合物、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アルコール化合物、4-メトキシフェノール及びヒドロキノンからなる群から選択される一種又は二種の物質を含有することが好ましい。
上記物質の合計含有量は、スチレン系樹脂組成物全体に対して、0.05~5質量部としてよい。
【0055】
上記脂肪酸系化合物のうち飽和脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸(ドデカン酸)、イソデカン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、イソステアリン酸、ツベルクロステアリン酸(ノナデカン酸)、2-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)、モンタン酸(オクタドコサン酸)、メリシン酸等が挙げられ、特に、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12-ヒドロキシステアリン酸及びモンタン酸等が挙げられる。これらは単独で使用しても、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】
上記脂肪酸系化合物のうち不飽和脂肪酸としては、具体的には、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデセン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、エライジン酸(trans-9-オクタデセン酸)、リシノール酸(オクタデカジエン酸)、バクセン酸(cis-11-オクタデセン酸)、リノール酸(オクタデカジエン酸)、リノレン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、エレステアリン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、ガドレイン酸(イコサン酸)、エルカ酸(ドコサン酸)、ネルボン酸(テトラドコサン酸)等が挙げられる。これらは単独で使用しても、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
【0057】
上記脂肪酸金属塩化合物としては、上記脂肪酸系化合物の脂肪酸のリチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、及びアルミニウム塩等が挙げられる。これらは単独で使用しても、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
【0058】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ-tertブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6―ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-sec-ブチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、ステアリル〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、テトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0059】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2’-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
上記アルコール化合物は、炭素原子数10以上の1価アルコールであることが好ましい。本実施形態における炭素原子数10以上の1価アルコール(以下単にアルコールともいう。)は任意成分であり、成形時のスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体のゲル化を抑制し、良好な外観のスチレン系樹脂組成物及びスチレン系樹脂組成物からなる成形体の外観向上に寄与する。炭素原子数10以上の1価アルコールの含有量は、前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0.01~1.0質量%であり、好ましくは0.03~0.8質量%、より好ましくは0.05~0.6質量%、より更に好ましくは0.07~0.5質量%である。炭素原子数10以上の1価アルコールの含有量を0.01質量%以上にすることで、成形加工時におけるスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体のゲル化を抑制することができ、1.0質量%以下にすることで耐熱性低下と臭気の発生を抑えることができる。炭素原子数10以上の1価アルコールの含有量を0.07~0.5質量%にすることで特に耐熱性を低下させることなく、十分なゲル抑制効果を得られる。
【0061】
炭素原子数10以上の1価アルコールとしては、水酸基を1つ含む炭素原子数10以上のアルコール類であり、アルコールを構成する炭素鎖中に酸素又は窒素などのヘテロ原子を含んでもよく、当該炭素鎖中に2重結合、3重結合、エステル結合、アミド結合など、単結合以外の結合を含んでもよい。炭素原子数としては16以上が好ましく、より好ましくは17以上、より更に好ましくは18以上50以下である。上記炭素原子数10以上の1価アルコールは、スチレン系樹脂組成物又はスチレン系樹脂組成物からなる成形体に含有されていればよい。したがって、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を重合する際に使用する重合溶液中に炭素原子数10以上の1価アルコールを存在(又は添加)させることにより、最終生成物である樹脂組成物中に1価アルコールを残留させてもよく、あるいはスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を混錬する際に添加し押出機中で混合させることで含有させてもよい。
【0062】
上記炭素原子数10以上の1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、1-ヘキサデカノール、イソヘキサデカノール、1-オクタデカノール、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール、イソオクタデカノール、1-イソイソエイコサノール、8-メチル-2-(4-メチルヘキシル)-1-デカノール、2-ヘプチル-1-ウンデカノール、2-ヘプチル-4-メチル-1-デカノール、2-(1,5-ジメチルヘキシル)-(5,9-ジメチル)-1-デカノール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0063】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル類は以下の一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】
(上記一般式(2)中、Rは炭素原子数12~20のアルキル基であり、Xはエチレンオキサイドの平均付加数を表し、1~15の整数である。)
好ましいアルコールの具体的な製品名としては日産化学社製「ファインオキソコール180」や花王社製「エマルゲン109P」等が挙げられる。
【0064】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、実質的に(A)成分、(B)成分及び添加成分のみからなっていてもよい。また、(A)成分及び(B)成分のみ、又は(A)成分及び(B)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。
「実質的に(A)成分、(B)成分及び添加成分のみからなる」とは、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、95~100質量%(好ましくは98~100質量%)が(A)成分及び(B)成分であるか、又は(A)成分、(B)成分及び添加成分であることを意味する。
前記添加成分とは、上記の通り、離型剤、難燃剤、分散剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、充填剤、ブロッキング防止剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面処理剤、抗菌剤及び目ヤニ防止剤からなる群から選択される1種又は2種以上をいう。
なお、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で(A)成分、(B)成分及び添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
【0065】
[スチレン系樹脂組成物の物性]
<全光線透過率(%)>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物からなる2mm厚プレートの全光線透過率(%)は、70%以上であり、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上%である。スチレン系樹脂組成物の全光線透過率(%)が70%以上であると、例えば、スチレン系樹脂組成物中に含まれるゴム状重合体の粒子の含有量をスチレン系樹脂組成物全体に対して3質量部以下にする、あるいは透明性が必要とされる透明食品容器、包装材料又はOA機器用途に使用可能な範囲である。
スチレン系樹脂組成物の全光線透過率(%)の測定に使用する試験片の具体的な作製方法は、K7361-1に準拠しており、前記試験片には傷、泡、ぶつなどの欠陥、ごみやグリースの付着、さらには、保護材料からの接着剤などの付着がないことを確認している。また、前記試験片の表面には、肉眼で見ることができる空隙や粒子が存在しないこととする。そして、前記試験片を射出成形で作製する際、使用する金型表面の状態に応じて必要であれば、適宜、研磨紙、スティック砥石、遊離砥粒等を使用して鏡面磨きを行ってもよい。本開示における全光線透過率(%)の測定方法及び全光線透過率(%)の測定方法に使用する試験片の作製方法は、後述の実施例の欄に記載の通りである。
本開示における全光線透過率(%)の測定は、例えば、本実施形態のスチレン系樹脂組成物から厚さ2mmの平板を作製して、試験片のシート体を用いて、JIS K7361-1に準拠して全光線透過率(%)を測定した。
【0066】
<メルトマスフローレート(MFR)>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレート(200℃、49N荷重の条件で測定)は、1.3~50(g/10分)であり、好ましくは1.5~45(g/10分)であり、より好ましくは、1.8~40(g/10分)であり、さらに好ましく、2.0~35(g/10分)である。スチレン系樹脂組成物のMFRが1.3より低いと流動性が落ち、射出成形時にショートショットになりやすく、射出成形性が低下する。スチレン系樹脂組成物のMFRを50より高くするには可塑剤量が多く必要になるので、射出成形時の揮発成分が増え、金型汚れが悪化する危惧がある。
なお本開示で、メルトマスフローレートはISO 1133に準拠して測定した。本実施形態のスチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレートが、上記範囲であると、組成物全体の流動性を高い水準で維持することにより、成形時の金型汚れを低減することができる。
【0067】
<ビカット軟化温度>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、70℃~130℃であることが好ましく、より好ましくは73℃~125℃、さらに好ましくは75℃~121℃、さらに好ましくは78℃~120℃、さらにより好ましくは80℃~118℃である。スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が高いと流動性が落ち、射出成形時にショートショットになりやすく、射出成形性が低下する。また、スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が低くなると、可塑剤量が多くなるので、金型汚れが悪化する危惧がある。
なお、本開示で、ビカット軟化温度(℃)はISO 306に準拠して荷重49Nで測定した。
【0068】
[射出成形品]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物を原料として用いた射出成形品の製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。成形機の温度は好ましくは150℃~300℃、より好ましくは160℃~280℃、さらに好ましくは180℃~260℃である。
成形機の温度が300℃より高いとスチレン系樹脂組成物が熱分解を起こすため好ましくない。一方、150℃より低いと高粘度のため成形することができないので好ましくない。
【0069】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物を含む成形品、特に射出成形品(射出圧縮を含む)は、雑貨、玩具、複写機、ファックス、パソコン、プリンター、情報端末機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ等のOA機器、家庭電化製品、電気・電子機器のハウジングや各種部品、自動車の内装や外装部材、建設材料、発泡断熱材、絶縁フィルム等に好適に用いられる。]
【0070】
[二軸延伸シート]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物を原料として用いた二軸延伸シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。成形温度は好ましくは180℃~280℃、より好ましくは200℃~260℃、さらにより好ましくは210℃~250℃である。二軸延伸シートは、例えば真空成形法や圧縮成形法の熱成形方法によって、二次成形を行うことができる。
本発明の二軸延伸シートの成形品の用途としては、各種の容器があり、主に食品包装容器等に用いられる。
【実施例0071】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0072】
<測定及び評価方法>
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物及び射出成形体の物性測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
【0073】
(1)実施例及び比較例で使用したスチレン系重合体(A)及びバイオマス可塑剤(B)の重量平均分子量の測定
スチレン系重合体(A)及びバイオマス可塑剤(B)の重量平均分子量を、下記の条件や手順で測定した。
・試料調製:測定試料5mgを10mLのテトラヒドロフランに溶解し、0.45μmのフィルターでろ過を行った。
・測定条件
機器:TOSOH HLC-8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :SHODEX GPC KF-606Mを直列に2本接続
ガードカラム :SHODEX GPC KF-G 4A
温度 :40℃
キャリア :THF 0.50mL/min
検出器 :RI、UV:254nm
検量線 :検量線の作成には東ソー社製のTSK標準ポリスチレン11種類(F-850、F-450、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000)を用いた。3次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
【0074】
(2)メルトマスフローレート(MFR)
実施例及び比較例で使用したスチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレート(g/10分)は、ISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
【0075】
(3)ビカット軟化温度(℃)の測定
本実施例及び比較例で使用したスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度(℃)を、ISO 306に準拠して、荷重49Nで測定した。
【0076】
(4)スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分の含有量(%)の測定
スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分を以下のように測定した。沈澱管にスチレン系樹脂組成物1.00gを精秤し(この質量をW1とする)、トルエン20ミリリットルを加え23℃で1時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所社製、SS-2050A ローター:6B-N6L)にて温度4℃、回転数20000rpm、遠心加速度45100×Gで60分間遠心分離した。沈澱管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。トルエンを含んだ不溶分の質量を精秤し、引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤した(この質量をW2とする)。
下記式により、スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分の含有量(%)を求めた。
スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分の含有量(%)=W2/W1×100
【0077】
(5)バイオマス炭素比率(pMC%)の測定方法
バイオマス可塑剤(B)及びスチレン系樹脂組成物のバイオマス炭素比率(pMC%)は、ASTM-D6866に準拠した放射性炭素(14C)測定方法によって以下の式(1)を用いてAMS法により(14C可塑剤/12C可塑剤)/(14C標準物質/12C標準物質)を算出した。
式(1):
バイオマス炭素比率(pMC%)=(14C可塑剤/12C可塑剤)/(14C標準物質/12C標準物質)×100
また、標準物質はシュウ酸(SRM4990)を使用した。
スチレン系樹脂組成物中のバイオマス炭素比率も上記と同様に算出した。
【0078】
(6)バイオマス可塑剤(B)の含有量の定量
実施例及び比較例で使用したスチレン系樹脂組成物中のバイオマス可塑剤(B)量の定量は、以下の方法で測定した。
(6-1)検量線作成
2-ジメトキシエタンを内部標準物質として含んだ重水素化クロロホルム(1%TMS入り)に、植物油(グリセリン脂肪酸エステル)を溶解し、H-NMR測定を行った。TMSのピークを0ppmの基準とすると、δ4.0~4.4ppmに植物油のエステル基に隣接した炭素に結合するプロトン由来のピークと3.4~3.6ppmに1,2ージメトキシエタン由来のピークが検出される。1,2ージメトキシエタン由来のピーク面積を1とした際の植物油由来のピーク面積を算出している。この操作を植物油の濃度を変化させて行うことで、植物油濃度の検量線を作成した。
(6-2)定量
実施例又は比較例で得られたペレット状のスチレン系樹脂組成物を重水素化クロロホルム(1%TMS入り)に溶解し、H-NMR測定を行い、上記の検量線を用いることで、スチレン系樹脂組成物中のバイオマス可塑剤(B)(例えば、植物油)の含有量を定量した。上記の方法では、他のピークが内部標準物質のピークと被り、定量するのが困難である場合、適宜、内部標準物質は適当な物質を使用してもよい。
また、植物油は5.0~5.5ppmに検出されるトリグリセリド由来のピークでも定量することが可能である。
【0079】
(7)バイオマス可塑剤(B)の変性率の算出
バイオマス可塑剤(B)として(変性)植物油を含有したスチレン系樹脂組成物では、以下の手順を用いてH-NMRによりバイオマス可塑剤(B)、すなわち(変性)植物油の変性率を算出することが可能である。
実施例又は比較例で得られたペレット状のスチレン系樹脂組成物を重水素化クロロホルム(1%TMS入り)に溶解し、H-NMR測定を行った。TMSを0ppmの基準とすると、δ2.8~3.2ppmにエポキシ基由来のピーク、δ4.0~4.4ppmに植物油のエステル基に隣接した炭素に結合するプロトン由来のピークが確認される。これにより上記二つのピーク面積比からバイオマス可塑剤(B)の変性率(例えばエポキシ基の変性率)を算出した。
また、バイオマス可塑剤(植物油)由来のピークとスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体又はスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含む樹脂(A)等由来のピークが被り、定量するのが困難な場合、下記に示す通りバイオマス可塑剤(B)とスチレン-不飽和カルボン酸系共重合体とを分離し、バイオマス可塑剤(B)の変性率を定量できる。
実施例又は比較例で得られたペレット状のスチレン系樹脂組成物1gを20mL容量のスクリュー瓶に取り、メチルエチルケトンを10mL加えた。そして、振とう機でペレットを完全に溶解させた後、メタノールを5mL加えるとスチレン系樹脂組成物が溶液中に不溶分として析出させた。次いで、不溶部を取り除き、溶液部をナスフラスコに取り、エバポレーターで3時間真空引きして、メチルエチルケトン及びメタノールを完全に揮発させた。その後、ナスフラスコ内に残った液体(植物油)を重水素化クロロホルム(1%TMS入り)に加え、H-NMR測定を行った。
TMSを0ppmの基準とすると、δ2.8~3.2ppmにエポキシ基由来のピーク、δ4.0~4.4ppmに植物油のエステル基に隣接した炭素に結合するプロトン由来のピークが確認される。これにより上記二つのピーク面積比からバイオマス可塑剤(B)の変性率(例えばエポキシ基の変性率)を算出した。
例えば、比較例2のエポキシ化大豆油では、δ2.8~3.2ppmのピーク面積が8.2であり、δ4.0~4.4ppmのピーク面積が4.0であった。エポキシ化大豆油1分子あたりエステル基由来のプロトンが4個、エポキシ基1個あたりに由来するプロトンが2個である。この結果から算出すると、エポキシ化大豆油の変性率は1分子あたり、(8.2/2)/(4.0/4)=4.1個となる。
また、変性率は5.0~5.5ppmに検出されるトリグリセリド由来のピークと、δ2.8~3.2ppmに検出されるエポキシ基由来のプロトンピークからでも定量することが可能である。
また、表2において、バイオマス可塑剤(B)の変性率が1分子あたり0~3個の範囲内の組成物を〇とし、変性率が1分子あたり3個超の組成物を×とした。
【0080】
(8)シャルピー衝撃試験
スチレン系樹脂組成物を220℃でJIS K 7152に従って射出成形片を作成し、JIS K 7111-1に従ってシャルピー衝撃強さを測定した。
【0081】
(9)シートの外観評価
創研社製の25mmφ単軸シート押出機で、厚さ0.3mmのシートを作製し、シート5m内に(長径+短径)/2の平均径が1mm以上のゲルの個数を数えた。
【0082】
(10)射出成形性
実施例及び比較例の射出成形性の評価では、射出成形機東芝機械株式会社製、EC60Nを用いてシリンダー温度220℃、金型温度45℃、射出圧力45Mpaで、2mmのプレートを成形した際、以下の基準をもって評価した。
〇:問題なく成形可能
ショート:ショートショットとなる
【0083】
(11)射出成形時の金型汚れ
スチレン系樹脂組成物を220℃でJIS K 7152に従って射出成形片を作製した際、連続成形後に金型に付着物が確認されるまでのショット数を指標として金型汚れの評価を行った。金型付着物が確認されるまでのショット数が100未満であると金型の清掃頻度が上がり、生産性が落ちるため100以上を合格とした。
【0084】
(12)SP値の算出
実施例・比較例において使用した各材料のSP値は、文献値又は「J.Appl.Polym.Sci.,12,2359(1968)」を参照して濁度滴定法により算出した。
【0085】
(13)全光線透過率の測定
(I)試験片の作製条件
平板成形品用金型を用いて以下の条件で得られたスチレン系樹脂組成物を射出成形して、厚さ2mmの平板を作製して、シート体を作製した。
成形機:東芝機械株式会社製EC60N
シリンダー温度:220℃
射出圧力:60MPa、射出時間:10秒
冷却時間:15秒、金型温度:45℃
(II)全光線透過率の測定条件
上記作製した、試験片のシート体を用いて、JIS K7361-1に準拠して全光線透過率(%)を測定した。
【0086】
実施例及び比較例で用いた各材料は下記の通りである。
[バイオマス可塑剤(B)]
(天然植物油)
パーム油(製品名「マルチエース20(S)」(日清オイリオグループ株式会社)、重量平均分子量(Mw=1000)、バイオマス炭素比率(pMC%)100%、融点:22℃、SP値(Hansen法による計算値であり、分散力項(δD)、極性項(δP)及び水素結合項(δH)の3成分座標における原点からの距離):8.2((cal/cm1/2))
大豆油(製品名「大豆白絞油」(日清オイリオグループ株式会社)、重量平均分子量(Mw=1000)、バイオマス炭素比率(pMC%)100%、融点:-8℃、SP値(Hansen法による計算値であり、分散力項(δD)、極性項(δP)及び水素結合項(δH)の3成分座標における原点からの距離):8.2((cal/cm1/2))
(変性基を有する植物油)
エポキシ化大豆油(製品名「ニューサイザー510R」(日油株式会社製)、重量平均分子量(Mw=1000)、バイオマス炭素比率(pMC%)100%、融点:5℃、SP値:9.0((cal/cm1/2)、エポキシ基変性率:1分子あたり4.1個、0.0041mоl/g、オキシラン酸素:6.7%
エポキシ化アマニ油(製品名「アデカサイザー O-180A」(株式会社ADEKA製)、重量平均分子量(Mw=1000)、バイオマス炭素比率(pMC%)100%、融点:-2℃)SP値(Hansen法による計算値であり、分散力項(δD)、極性項(δP)及び水素結合項(δH)の3成分座標における原点からの距離):9.3((cal/cm1/2))、エポキシ基変性率:1分子あたり5.0個、0.0050mоl/g、オキシラン酸素8.5%
ヒマシ硬化油(製品名「ヒマシ硬化油」(伊藤製油株式会社)、重量平均分子量(Mw=1000)、バイオマス炭素比率(pMC%)100%、融点85℃、SP値(Hansen法による計算値であり、分散力項(δD)、極性項(δP)及び水素結合項(δH)の3成分座標における原点からの距離を表す。):10.1((cal/cm1/2))、ヒドロキシ基変性率:1分子あたり2.6個、0.0026mоl/g、水酸基価:160mg/g
【0087】
[その他]
(流動パラフィン)
流動パラフィン、製品名「PS350S」(三光化学工業株式会社製)、重量平均分子量(Mw=250)、バイオマス炭素比率(pMC%)0%、流動点:-12.5℃
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸、製品名「LX175」(Total Corbinion PLA製)、バイオマス炭素比率(pMC%)100%、融点:155℃、SP値:10.3(cal/cm1/2
【0088】
[スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体を含有する樹脂(A)の製造方法]
(スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-1)の製造方法)
スチレン81.6質量部、メタクリル酸2.4質量部、エチルベンゼン13質量部、2エチルヘキシルアルコール2.0質量部、イソステアリルアルコール1質量部、及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が3.6リットルの完全混合型反応器に供給し、次に未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置へと連続的に供給した。完全混合反応器の重合温度は133℃とした。単軸押出機の温度を230℃、圧力を0.8kPaに設定して、未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を脱揮した。スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-1)を樹脂ペレットとして回収した。スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-1)の重合条件は表1に示した。
【0089】
(スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)の製造方法)
スチレン77.0質量部、メタクリル酸5.8質量部、2エチルヘキシルアルコール3.0質量部、イソステアリルアルコール1質量部、エチルベンゼン13.2質量部、及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が3.6リットルの完全混合型反応器に供給し、次に未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置へと連続的に供給した。完全混合反応器の重合温度は133℃とした。単軸押出機の温度を230℃、圧力を0.8kPaに設定して、未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を脱揮した。スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)を樹脂ペレットとして回収した。スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)の重合条件は表1に示した。
【0090】
(スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-3)の製造方法)
スチレン74.4質量部、メタクリル酸9.0質量部、メタクリル酸メチル4.1質量部、2エチルヘキシルアルコール3.0質量部、イソステアリルアルコール1質量部、エチルベンゼン12.5質量部、及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が3.6リットルの完全混合型反応器に供給し、次に未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置へと連続的に供給した。完全混合反応器の重合温度は132℃とした。単軸押出機の温度を230℃、圧力を0.8kPaに設定して、未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を脱揮した。スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-3)を樹脂ペレットとして回収した。スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-3)の重合条件は表1に示した。
【0091】
[スチレン系樹脂組成物の製造方法]
[実施例1~2]
(スチレン系樹脂組成物(PS-1)~(PS-2)の製造方法)
スチレン系樹脂組成物全体に対してパーム油(製品名「マルチエース20(S)」日清オイリオグループ株式会社)が3質量部となるように、前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A-1)とパーム油とを配合し、二軸混錬押出機(東芝機械株式会社製 TEM-26SS-12)を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-1)を製造した。表2に示すスチレン系樹脂組成物の物性を上記の「測定及び評価方法」の欄に記載の方法で測定した。
スチレン系樹脂組成物(PS-2)はスチレン系樹脂組成物全体に対してパーム油が10質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-1)とパーム油とを配合し、二軸混錬押出機を用いて樹脂温度240℃の条件で押出すことで製造した。そして、得られた実施例2のスチレン系樹脂組成物について、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0092】
[実施例3~8]
(スチレン系樹脂組成物(PS-3)~(PS-8)の製造方法)
スチレン系樹脂組成物全体に対してパーム油(製品名「マルチエース20(S)」日清オイリオグループ株式会社)が0.5質量部となるように、前記スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)とパーム油とを配合し、二軸混錬押出機(東芝機械株式会社製 TEM-26SS-12)を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-3)を製造した。
パーム油の添加量以外はスチレン系樹脂組成物(PS-3)と同様にして、表2に示した組成比になるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)とパーム油とを配合し、二軸混錬押出機で混錬してスチレン系樹脂組成物(PS-4)~(PS-8)を製造した。そして、得られた実施例3~8のスチレン系樹脂組成物について、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0093】
[実施例9~11]
(スチレン系樹脂組成物(PS-9)~(PS-11)の製造方法)
次に、スチレン系樹脂組成物全体に対してパーム油(製品名「マルチエース20(S)」日清オイリオグループ株式会社)が1.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-3)とパーム油とを配合し、二軸混錬押出機(東芝機械株式会社製 TEM-26SS-12)を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-9)を製造した。
パーム油の添加量以外はスチレン系樹脂組成物(PS-9)と同様にして、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-3)とパーム油とを配合し、二軸混錬押出機で混錬してスチレン系樹脂組成物(PS-10)~(PS-11)を製造した。そして、得られた実施例9~11のスチレン系樹脂組成物について、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0094】
[実施例12]
(スチレン系樹脂組成物(PS-12)の製造方法)
スチレン76.1質量部、メタクリル酸5.5質量部、パーム油2.4質量部、2エチルヘキシルアルコール3.0質量部、イソステアリルアルコール1%、エチルベンゼン12.0質量部、及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が3.6リットルの完全混合型反応器に供給し、次に未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置へと連続的に供給した。完全混合反応器の重合温度は133℃とした。単軸押出機の温度を230℃、圧力を0.8kPaに設定して、未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を脱揮し、スチレン系樹脂組成物(PS-12)を製造した。そして、得られた実施例12のスチレン系樹脂組成物について、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0095】
[実施例13]
スチレン系樹脂組成物全体に対して大豆油(製品名「大豆白絞油」(日清オイリオグループ株式会社)が3.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)と大豆油とを配合し、二軸混錬押出機を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-13)を製造した。
【0096】
[実施例14~15]
(スチレン系樹脂組成物(PS-14)~(PS-15)の製造方法)
スチレン系樹脂組成物全体に対してヒマシ硬化油(製品名「ヒマシ硬化油」(伊藤製油株式会社)が1.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)とヒマシ硬化油とを配合し、二軸混錬押出機を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-14)を製造した。
スチレン系樹脂組成物全体に対してヒマシ硬化油(製品名「ヒマシ硬化油」(伊藤製油株式会社)が6.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)とヒマシ硬化油とを配合し、二軸混錬押出機を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-15)を製造した。
そして、得られた実施例14~15のスチレン系樹脂組成物について、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0097】
[比較例1]
スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-3)を比較例1として、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0098】
[比較例2~3]
(スチレン系樹脂組成物(PS-16)~(PS-17)の製造方法)
スチレン系樹脂組成物全体に対してエポキシ化大豆油(製品名「ニューサイザー510R」日油株式会社製)が1.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)とエポキシ化大豆油とを配合し、二軸混錬押出機(東芝機械株式会社製 TEM-26SS-12)を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-16)を製造した。
スチレン系樹脂組成物全体に対してエポキシ化大豆油(製品名「ニューサイザー510R」日油株式会社製)が6.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)とエポキシ化大豆油とを配合し、二軸混錬押出機を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-17)を製造した。
そして、得られた比較例2~3のスチレン系樹脂組成物について、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0099】
[比較例4]
(スチレン系樹脂組成物(PS-18)の製造方法)
スチレン系樹脂組成物全体に対してエポキシ化大豆油(製品名「ニューサイザー510R」日油株式会社製)が1.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-3)とエポキシ化大豆油とを配合し、二軸混錬押出機を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-18)を製造した。
そして、得られた比較例4のスチレン系樹脂組成物について、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0100】
[比較例5~6]
(スチレン系樹脂組成物(PS-19)~(PS-20)の製造方法)
スチレン系樹脂組成物全体に対してエポキシ化大豆油(製品名「ニューサイザー510R」日油株式会社製)が1.0質量部、ポリ乳酸、製品名「LX175」(Total Corbinion PLA製)が5.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)とエポキシ化大豆油とポリ乳酸を配合し、二軸混錬押出機を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-19)を製造した。
スチレン系樹脂組成物全体に対してエポキシ化大豆油(製品名「ニューサイザー510R」日油株式会社製)が3.0質量部、ポリ乳酸、製品名「LX175」(Total Corbinion PLA製)が5.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)とエポキシ化大豆油とポリ乳酸を配合し、二軸混錬押出機を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-20)を製造した。
そして、得られた比較例7~8のスチレン系樹脂組成物について、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0101】
[比較例7]
(スチレン系樹脂組成物(PS-21)の製造方法)
スチレン系樹脂組成物全体に対して流動パラフィン(製品名「PS350S」三光化学工業株式会社製)が6.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)と流動パラフィンとを配合し、二軸混錬押出機を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-21)を製造した。
そして、得られた比較例9のスチレン系樹脂組成物について、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0102】
[比較例8]
(スチレン系樹脂組成物(PS-22)の製造方法)
スチレン系樹脂組成物全体に対してエポキシ化アマニ油(製品名「アデカサイザー O-180A」株式会社ADEKA製)が1.0質量部となるように、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(A-2)と流動パラフィンとを配合し、二軸混錬押出機を用いて樹脂温度240℃の条件で押出し、スチレン系樹脂組成物(PS-22)を製造した。
そして、得られた比較例8のスチレン系樹脂組成物について、上記した各種評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2-1】
【0105】
【表2-2】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、環境負荷の低減及び透明性、耐熱性、成形性に優れたスチレン系樹脂組成物及び該スチレン系樹脂組成物からなる射出成形体を提供することである。当該スチレン系樹脂組成物から得られた成形体は、雑貨・玩具、家電製品部品、産業資材等に好適に使用することができる。