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  • -非焼成鉛筆芯 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175518
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】非焼成鉛筆芯
(51)【国際特許分類】
   C09D 13/00 20060101AFI20231205BHJP
   B43K 19/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C09D13/00
B43K19/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087997
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 広幸
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039BA30
4J039BA32
4J039BB01
4J039EA21
4J039EA48
4J039GA30
(57)【要約】
【課題】いかなる方向から見ても描線の光沢が目立たず、塗った色と見える色相に差のない描線の得られる非焼成鉛筆芯を提供する。
【解決手段】常温で固体のワックスと、色材と、体質材と、水溶性樹脂と、セルロースファイバーとを含み、鱗片状物質が前記体質材に占める割合が20質量%以下であるとともに、塊状粒子が前記体質材に占める割合が80質量%以上である、非焼成鉛筆芯。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固体のワックスと、色材と、体質材と、水溶性樹脂と、セルロースファイバーとを含み、
鱗片状物質が前記体質材に占める割合が20質量%以下であるとともに、塊状粒子が前記体質材に占める割合が80質量%以上である、非焼成鉛筆芯。
【請求項2】
前記塊状粒子は、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム及び炭酸マグネシウムから成る群のうちの少なくとも一つである、請求項1に記載の非焼成鉛筆芯。
【請求項3】
前記体質材は、融解させたスマックワックスと該体質材とを質量比1:1で混合してガラス面と接触させて固化してできた平滑面に、45°の角度から照射した入射光強度に対し、90°の反射光強度の割合で定義される視感反射率が0.1未満である、請求項1又は請求項2に記載の非焼成鉛筆芯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非焼成鉛筆芯に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで色鉛筆芯のような非焼成鉛筆芯の開発は、描線の発色、書き味等の改良、及び芯の先端強度等の強化といった事項に重点が置かれていた。そして通常は、色鉛筆芯の主材としてワックス類を使用することによって描線に光沢が加えられている。たとえば、特許文献1に記載の、化粧料にも使用可能なカラー・ペンシルの場合、色移り等にも配慮された処方及び製造方法となっている。
【0003】
一方、特許文献2には、硬化剤として炭酸カルシウムが添加されたクレヨンが開示されている。また、特許文献3には、体質材として炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウムが添加された固形描画材が開示されている。さらに、特許文献4には、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、マイカ、チタン酸カリウムウィスカーを体質材として含有する非焼成鉛筆芯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005-514463号公報
【特許文献2】特開昭52-41028号公報
【特許文献3】特開昭57-153060号公報
【特許文献4】特開2008-45043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、カラー・ペンシルに加える蝋の種類によって描線の艶を調節できることが書かれている。しかしながら全く艶を出さない処方については全く記載されていない。艶のある描線は、光沢の出る角度において、実際の色相と異なる色相に見えてしまうといった問題があり、展示会等で作品を見る時に意識されることも多い。近年、鉛筆や色鉛筆で描いた自作の絵画をスマートフォン等のカメラで撮影し、SNS等で公表することが一般化している。その撮影の際に、光とカメラとの角度を上手く設定しないと描線が光ってしまい、画像にうまく色相が現れないことも起こるようになっている。
【0006】
ここで、鉛筆芯に含有されている黒鉛粒子は、描線の光沢の一因となっている。また、従来の色鉛筆では、ワックス類の他に配合されている体質材、特にタルクが薄い鱗片状を呈しているため、光源との角度によっては光を反射し、光沢の原因となっている。
【0007】
本願の実施態様は、いかなる方向から見ても描線の光沢が目立たず、塗った色と見える色相に差のない描線の得られる非焼成鉛筆芯を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の実施態様の非焼成鉛筆芯は、常温で固体のワックスと、色材と、体質材と、水溶性樹脂と、セルロースファイバーとを含み、鱗片状物質が前記体質材に占める割合が20質量%以下であるとともに、塊状粒子が前記体質材に占める割合が80質量%以上であることを特徴とする。
【0009】
ここで、塊状粒子としては、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム及び炭酸マグネシウムから成る群のうちの少なくとも一つが用いられることが望ましい。
【0010】
なお、前記体質材は、融解させたスマックワックスと該体質材とを質量比1:1で混合してガラス面と接触させて固化してできた平滑面に、45°の角度から照射した入射光強度に対し、90°の反射光強度の割合で定義される視感反射率が0.1未満であることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本願の実施態様は、上記のように構成されているので、いかなる方向から見ても描線の光沢が目立たず、塗った色と見える色相に差のない描線の得られる非焼成鉛筆芯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の非焼成鉛筆芯の外観を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願の実施形態の非焼成鉛筆芯は、常温で固体のワックスと、色材と、体質材と、水溶性樹脂と、セルロースファイバーとを含み、鱗片状物質が前記体質材に占める割合が20質量%以下であるとともに、塊状粒子が前記体質材に占める割合が80質量%以上である。
【0014】
ここで、鱗片状物質とは、アスペクト比が2以上である薄片状の鉱物質であり、タルク、カオリン、マイカ又は窒化ホウ素が例として挙げられる。鱗片状物質の厚さは、たとえば、5μm未満とすることができる。すなわち、体質材としての鱗片状物質は、光を反射しやすいため、描線の光沢の原因となる。本願の実施態様の非焼成鉛筆芯では、この鱗片状物質が体質材に占める割合が20質量%以下であり、また、光を反射しにくい塊状粒子が体質材に示す割合が80質量%以上であるため、描線の光沢が抑制される。
【0015】
ここで、鱗片状物質は体質材としては全く含有されないことが望ましいが、体質材に占める割合が20質量%以下であれば、描線の光沢は十分に抑制される。なお、鱗片状物質が体質材として含有されない場合、すなわち0質量%である場合は、塊状粒子は体質材の全量、すなわち100質量%を占めることが望ましい。
【0016】
また、体質材としての前記塊状粒子は、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム及び炭酸マグネシウムから成る群のうちの少なくとも一つであることが望ましい。さらに、前記体質材は、融解させたスマックワックスと該体質材とを質量比1:1で混合してガラス面と接触させて固化してできた平滑面に、45°の角度から照射した入射光強度に対し、90°の反射光強度の割合で定義される視感反射率が0.1未満である。
【0017】
常温で固体のワックスとは、たとえば、融点が45℃以上のワックスをいう。たとえば、融点61℃のステアリン酸グリセリド、融点57℃のパラフィンワックス135F、融点84℃のマイクロクリスタリンワックス、及び軟化点76℃のロジンエステルが本願実施形態のワックスとして使用可能である。その他、グリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルとして分類されているワックスで、融点45℃以上であれば、本願実施形態のワックスとして使用可能である。
【0018】
色材としては、一般に色鉛筆の着色に用いられる顔料又は染料を使用することができる。顔料としては、たとえば、黒鉛、酸化チタン、鉄黒、カーボンブラック、紺青、群青、青色1号、弁柄、黄酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス及び雲母チタン並びにジスアゾイエローAAA及びピラゾロンオレンジ等のアゾ系有機顔料、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン等のシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド等の高級有機顔料、ファナルカラー等の染付け顔料並びに蛍光顔料等が挙げられる。また、顔料の他、青色2号、青色404号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、DPPレッド、黄色4号、黄色5号及び緑色3号等の染料等も使用可能であり、これらは単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0019】
水溶性樹脂は、結合剤として用いられるものであり、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシセルロースアンモニウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性有機高分子を用いることができる。
【0020】
セルロースファイバーは、天然木材セルロースを微細化したものであり、平均粒子径が100μm以下のものを用いるのが好ましい。セルロースファイバーは、機械的強度を高めるために本実施形態の非焼成鉛筆芯に含有される。
【0021】
本実施形態の非焼成鉛筆芯は、たとえば、下記の製造方法により製造することができる。すなわち、ワックスと、色材と、体質材と、水溶性樹脂と、セルロースファイバーとを混合したものに同質量の水を加え、ニーダーで混合、分散させた後、二本ロールで混練しながら水分を調製する。調製により得られた混合物をペレット化して単軸スクリュー型押出機で所望の太さの鉛筆芯の形状に押出成形する。そして、成形された芯を乾燥して水分を除去することで、図1に示すような、略円筒形状の芯体11を有する非焼成鉛筆芯10が得られる。
【0022】
上記のように製造される非焼成鉛筆芯によって筆記された描線は、光沢の原因となる鱗片状物質の体質材中の含有量が少ないため、いかなるカメラアングルで撮影しても光沢が目立たずに、撮影された画像に本来の色相がうまく表現されることとなる。また、体質材中で塊状粒子が大部分を占めることによる機械的強度の低下は、セルロースファイバーが含有されることにより補強されることとなっている。
【実施例0023】
(1)体質材
体質材の原材料となる塊状粒子としての炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム又は炭酸マグネシウムと、鱗片状物質としてのタルクとの配合比によって、体質材の視感反射率がどのように変動するかを検証した。
【0024】
炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム及び炭酸マグネシウムは、平均粒子径がそれぞれ、3.2μm、1μm、1.4μm及び5μmのものを使用した。薄片としてのタルクの平均粒子径は10μmであった。
【0025】
体質材として、炭酸カルシウムとタルクとを下記表1の配合1-1~配合1-7に示す配合比で調合し、硫酸バリウムとタルクとを下記表2の配合2-1~配合2-7に示す配合比で調合し、水酸化アルミニウムとタルクとを下記表3の配合3-1~配合3-7に示す配合比で調合し、炭酸マグネシウムとタルクとを下記表4の配合4-1~配合4-7に示す配合比で調合した。
【0026】
各配合の体質材を粉体として、融解させたスマックワックスと質量比1:1で混合したのち、ガラスシャーレ内に融解した混合ワックスを流し、冷却固化させ、直径20mm、厚さ5mmのペレット状に成形して測定試料とした。この測定試料において、ガラス面と接触してできた平滑面を測定面とした。測定試料を測定面を上にして載置し、PD-7(コニカミノルタ)にて、測定面に対し45°の角度から照射した入射光強度に対する、90°の反射光強度の割合で定義される視感反射率を計測した。その結果も下記表1及び表2に併せて示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
上記表1及び表2に示すように、体質材として配合される塊状粒子が炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム又は炭酸マグネシウムのいずれであっても、タルクの配合比が20質量%以下であれば、視感反射率は0.1未満となることが分かった。これにより、描線の光沢を押さえる観点から、体質材に占める鱗片状物質としてのタルクの割合は20質量%以下が適当であると推察された。
【0032】
(2)原材料
各実施例及び各比較例の非焼成鉛筆芯は、以下の組成とした。なお、ワックスとして、融点61℃のステアリン酸グリセリド(ポエムV-200、理研ビタミン)及び軟化点76℃のロジンエステルを使用した。水溶性樹脂として、カルボキシメチルセルロースナトリウム(F10MC、日本製紙)を使用した。黒色の色材としてカーボンブラック(MA-100、三菱ケミカル)を、青色の色材としてフタロシアニンブルー(CHROMOFINE Blue HS-3、大日精化工業)を、赤色の色材としてパーマネントレッド(SEIKAFAST RED 4R―4016、大日精化工業)を、及び緑色の色材としてフタロシアニングリーン(CHROMOFINE GREEN 2GO、大日精化工業)を、並びに明度を高める目的の白色の色材として二酸化チタン(JR-701、テイカ)及びリトポン(B311、ANHUI UNION TITANIUM ENTERPRISE)を、それぞれ使用した。体質材としては、炭酸カルシウム(PC炭酸カルシウム、白石工業)、硫酸バリウム(P-30、竹原化学工業)、水酸化アルミニウム(RH-30、岩谷産業)、炭酸マグネシウム(MS-S、神島化学工業)及びタルク(ハイミクロン、竹原化学工業)のいずれか又は2以上を組み合わせて使用した。セルロースファイバーとして、KCフロックW-50(日本製紙)を使用した。補助添加剤として塩基性硫酸マグネシウム(モスハイジ、宇部マテリアルズ)を使用した。
【0033】
(2-1)実施例1
青色鉛筆芯としての実施例1の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてフタロシアニンブルー10質量%及び二酸化チタン10質量%、体質材として硫酸バリウム36質量%、並びにセルロースファイバー5質量%とした。
【0034】
(2-2)実施例2
赤色鉛筆芯としての実施例2の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてパーマネントレッド10質量%及び二酸化チタン10質量%、体質材として硫酸バリウム36質量%、並びにセルロースファイバー5質量%とした。
【0035】
(2-3)実施例3
緑色鉛筆芯としての実施例3の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてフタロシアニングリーン10質量%及び二酸化チタン10質量%、体質材として硫酸バリウム36質量%、並びにセルロースファイバー5質量%とした。
【0036】
(2-4)実施例4
黒色鉛筆芯としての実施例4の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてカーボンブラック15質量%、体質材として炭酸カルシウム41質量%、及びセルロースファイバー5質量%とした。
【0037】
(2-5)実施例5
黒色鉛筆芯としての実施例5の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてカーボンブラック15質量%、体質材として炭酸カルシウム36質量%、セルロースファイバー5質量%、及び塩基性硫酸マグネシウム5質量%とした。
【0038】
(2-6)実施例6
黒色鉛筆芯としての実施例6の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてカーボンブラック15質量%、体質材として硫酸バリウム33質量%、セルロースファイバー8質量%、及び塩基性硫酸マグネシウム5質量%とした。
【0039】
(2-7)実施例7
黒色鉛筆芯としての実施例7の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてカーボンブラック15質量%、体質材としてタルク5質量%及び炭酸カルシウム36質量%、並びにセルロースファイバー5質量%とした。
【0040】
(2-8)実施例8
青色鉛筆芯としての実施例8の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてフタロシアニンブルー10質量%及びリトポン10質量%、体質材として硫酸バリウム36質量%、並びにセルロースファイバー5質量%とした。
【0041】
(2-9)実施例9
黒色鉛筆芯としての実施例9の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてカーボンブラック15質量%、体質材として水酸化アルミニウム38質量%、及びセルロースファイバー8質量%とした。
【0042】
(2-10)実施例10
黒色鉛筆芯としての実施例10の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてカーボンブラック15質量%、体質材として炭酸マグネシウム38質量%、及びセルロースファイバー8質量%とした。
【0043】
(2-11)比較例1
黒色鉛筆芯としての比較例1の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてカーボンブラック15質量%、体質材としてタルク10質量%及び炭酸カルシウム31質量%、並びにセルロースファイバー5質量%とした。
【0044】
(2-12)比較例2
黒色鉛筆芯としての比較例2の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてカーボンブラック15質量%、体質材としてタルク20質量%及び炭酸カルシウム21質量%、並びにセルロースファイバー5質量%とした。
【0045】
(2-13)比較例3
黒色鉛筆芯としての比較例3の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてカーボンブラック15質量%、体質材としてタルク41質量%、及びセルロースファイバー5質量%とした。
【0046】
(2-14)比較例4
黒色鉛筆芯としての比較例4の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてカーボンブラック15質量%、及び体質材として炭酸カルシウム46質量%とした。
【0047】
(2-15)比較例5
青色鉛筆芯としての比較例5の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてフタロシアニンブルー10質量%及び二酸化チタン10質量%、並びに体質材としてタルク41質量%とした。
【0048】
(2-16)比較例6
赤色鉛筆芯としての比較例6の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてパーマネントレッド10質量%及び二酸化チタン10質量%、並びに体質材としてタルク41質量%とした。
【0049】
(2-17)比較例7
緑色鉛筆芯としての比較例7の組成は、ステアリン酸グリセリド33質量%、ロジンエステル2質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム4質量%、色材としてフタロシアニングリーン10質量%及び二酸化チタン10質量%、並びに体質材としてタルク41質量%とした。
【0050】
(3)非焼成鉛筆芯の製造
上記の実施例1~実施例10及び比較例1~比較例7の各々の原材料に、同質量の水を加えてニーダーで混合した後に、二本ロールで混練しながら水分調整した。この混合物をペレット化して単軸スクリュー型押出機によって細線状に成形した後、実施例1~実施例3及び実施例8並びに比較例5~比較例7は45℃で24時間乾燥して水分を除去し、一方、実施例4~実施例7、実施例9及び実施例10並びに比較例1~比較例4は50℃で24時間乾燥して水分を除去し、直径2.5mmの青色非焼成鉛筆芯(実施例1及び実施例8並びに比較例5)、赤色非焼成鉛筆芯(実施例2及び比較例6)、緑色非焼成鉛筆芯(実施例3及び比較例7)並びに黒色非焼成鉛筆芯(実施例4~実施例7、実施例9及び実施例10並びに比較例1~比較例4)を得た。
【0051】
(4)描線
手書き描線はJIS S 6006:2020の8.9a)に規定する見本作製方法により作製した。具体的には、平らなガラス板状に拡げた画線用紙(坪量78.3~205g/m、白色度75%以上)に、非焼成鉛筆芯で左右方向及び上下方向に紙面が均一に塗りつぶされるように反復して手塗りすることで測定見本を作成した。
【0052】
機械描線はJIS S 6006:2020の8.7.2に規定するA法により作製した。具体的には、下記の筆記条件に従って、非焼成鉛筆芯を装着したレコード式画線機を用いて画線用紙にレコード溝様の渦巻筆記を行うことで測定見本を作製した。
画線用紙:坪量128±5g/mのケント紙
筆記荷重:3N
筆記速度:3.0m/分
画線のピッチ幅:0.5mm
画線距離:6±1m
筆記角度:75°
芯の先端形状:テーパー角度17±1°及び先端径0.6±0.1mmの円錐台形状
芯の自転:画線1回転につき1回
【0053】
(5)明度測定
明度は、以下のとおりに測定した。すなわち、各実施例及び各比較例のそれぞれについて、手書き描線及び機器描線を、カラーメーター(SC-P、スガ試験機株式会社)にて測定した。
【0054】
(6)光沢測定
光沢は、以下のとおりに測定した。すなわち、各実施例及び各比較例のそれぞれについて、手書き描線及び機器描線に対し、60°における光沢と、85°における光沢を、デジタル変角光沢計UGV-5(スガ試験機株式会社製)にて測定した。
【0055】
(7)曲げ強度測定
上記の各実施例及び各比較例のそれぞれの非焼成鉛筆芯10本について、JIS S 6006:2020の8.6に規定する曲げ強さの試験を行い、平均値を求めた。すなわち、テンシロン万能材料試験器(RTC-1150A、オリエンテック)を用いて、支点間60mmで支持した非焼成鉛筆芯の中央部に、10mm/分で荷重を加え、非焼成鉛筆芯が折損したときの荷重(F、単位:N)を測定し、曲げ強さ(σ、単位:MPa)を下記式(1)にて算出した。なお、荷重を加える先端及び両支点の先端は円弧形状を呈し、その半径(R)は、R=0.2±0.02(mm)であった。
【0056】
σ=8Fl/πd・・・式(1)
【0057】
なお、上記式(1)中の「l」は支点間の距離(mm)であり、ここでは60mmである。また、上記式中の「d」は非焼成鉛筆芯の直径(mm)であり、ここでは2.5mmである。曲げ強度の測定は、製造直後に行った。
【0058】
(8)測定結果
上記の各実施例及び各比較例について、明度測定、光沢測定及び曲げ強度測定の結果を下記表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
まず、同じ色相の実施例1及び実施例8と比較例5、実施例2と比較例6、及び実施例3と比較例7とを比較する。いずれの実施例も、体質材に占める塊状粒子である硫酸バリウムの割合が100質量%であったのに対し、いずれの比較例も、体質材に占める鱗片状物質であるタルクの割合が100質量%であった。そして、いずれの比較例も、手書き描線における85°の光沢の値が10を上回り、比較例5及び比較例7では機械描線でも85°の光沢の値が10を上回った。これに対し、いずれの実施例も、どの条件で測定した光沢の値も10を下回っていた。また、明度については実施例と比較例とで明確な差はなかった。以上より、色彩のある非焼成鉛筆芯においては、体質材における鱗片状物質を塊状粒子に置き換えることで、明度に影響を与えずに光沢が抑制されたことが分かった。
【0061】
なお、実施例1及び実施例8は、いずれも同じ青色の色彩ではあるが、白色顔料としてそれぞれ二酸化チタン及びリトポンと異なるものが使用された。しかし、いずれの測定結果にも大差はなかった。よって、リトポンは白色顔料として二酸化チタンの代替物として使用可能であると推察された。
【0062】
次に、黒色非焼成鉛筆芯である実施例4~実施例7、実施例9及び実施例10並びに比較例1~比較例3について検討する。いずれの実施例も、体質材に占める塊状粒子である炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム又は炭酸マグネシウムの割合が80質量%以上であったのに対し、いずれの比較例も、体質材に占める鱗片状物質であるタルクの割合が20質量%以上であった。すなわち、実施例4~実施例6、実施例9及び実施例10では体質材に占めるタルクの割合は0質量%であり、実施例7ではこの割合は12.2質量%(タルク5質量%、炭酸カルシウム36質量%)であった。これに対し、この割合は、比較例1では24.4質量%(タルク10質量%、炭酸カルシウム31質量%)、比較例2では48.8質量%(タルク20質量%、炭酸カルシウム21質量%)、比較例3では100質量%であった。
【0063】
そして、比較例1~比較例3はいずれも、機械描線における85°の光沢の値が10を上回り、比較例2及び比較例3では手書き描線でも85°の光沢の値が10を上回り、さらに比較例3では60°でも光沢の値が10を上回った。これに対し、実施例4~実施例7、実施例9及び実施例10ではいずれも、どの条件で測定した光沢の値も10を下回っていた。なお、明度については実施例と比較例とで明確な差はなかった。以上より、黒色鉛筆芯としての非焼成鉛筆芯においても、体質材における鱗片状物質を塊状粒子に置き換えることで、明度に影響を与えずに光沢が抑制されたことが分かった。
【0064】
なお、比較例4は、体質材に占める炭酸カルシウムの割合が100質量%であったが、セルロースファイバーを含有していないため、曲げ強度が著しく低下した。これより、体質材としてのタルクが担っていた非焼成鉛筆芯の機械的強度は、セルロースファイバーにより補われることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、非焼成の鉛筆芯として利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 非焼成鉛筆芯 11 芯体
図1