(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175526
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】可撓性容器に密封された容器詰飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A23L2/00 A
A23L2/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088007
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】泉 達宏
(72)【発明者】
【氏名】益子 祥
(72)【発明者】
【氏名】安井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】青木 美和
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LE04
4B117LE10
4B117LG01
4B117LG02
4B117LG03
4B117LG17
4B117LK06
4B117LK07
4B117LK08
4B117LK12
4B117LP14
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、消費者が食感や香味を十分に楽しめるような容器詰飲料を提供することである。
【解決手段】本発明に係る容器詰飲料は、固形片と液体が可撓性容器に密封されており、固形片の最長辺の長さが18~80mm、固形片の硬さが50~1000g/cm2であり、固形片/液体の重量比が50/50以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形片と液体が可撓性容器に密封されている容器詰飲料であって、固形片の最長辺の長さが18~80mm、固形片の硬さが50~1000g/cm2であり、固形片/液体の重量比が50/50以下である、上記飲料。
【請求項2】
固形片/液体の重量比が5/95~40/60である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
固形片が果肉である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
液体が、エタノール、グリセリン及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1つを含み、エタノール、グリセリン及びプロピレングリコールの合計量が0.005~1.0v/v%である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項5】
液体の明度(L値)が50以上である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項6】
可撓性容器の少なくとも一部が透明である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項7】
可撓性容器の開口部の口径が5~20cmである、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項8】
請求項1または2のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、固形片と液体を可撓性容器に充填する工程を含む、上記方法。
【請求項9】
加熱殺菌する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性容器に密封された容器詰飲料に関しており、本発明に係る容器詰飲料は、咀嚼可能な大きさを有する固形片を含有する。
【背景技術】
【0002】
果汁飲料や清涼飲料に加え、果肉片やタピオカ、ナタデココ等のゲル状食品が配合された、食感を楽しむことができる固形片入り飲料が数多く開発されている。具体的には、例えば、10~20%の薄板状(長さ10~30mm、幅10~30mm、厚み0.1~3mm)の果肉片を飲料中に配合した缶詰め又は瓶詰めの果肉片入り飲料(特許文献1)、10~20%のパイナップル果粒とパイナップル果汁とを含有するパイナップル果肉片入り飲料(特許文献2)、25~60%のダイス状(2~8mm角)の果肉片と水、糖類、酸味料、香料、増粘安定剤等を含むシロップとを配合した果肉片入り缶詰め飲料(特許文献3)、5~50重量%のゼリー状固形片(長さ5~35mm、幅5~35mm、厚さ0.5~7mmの薄板状、或いは直径又は一辺が1~10mm、高さ5~50mmの筒又は柱状)と、天然及び/又は人口液汁とからなることを特徴とするゼリー状固形片入り容器詰め飲料(特許文献4)等がある。
【0003】
こういった固形片を含有する容器詰飲料は、固形片の食感が重要視される。しかし、容器に密封されることによって固形片が軟化して食感が損なわれることがあり、このような技術課題に関して、カルシウムを用いて固形片の食感を維持する方法が提案されている(例えば特許文献5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53-009344号公報
【特許文献2】特開昭58-078573号公報
【特許文献3】特開昭51-148053号公報
【特許文献4】特開昭54-23169号公報
【特許文献5】特開2005-348652号公報
【特許文献6】特開平11-137192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
嗜好の多様化に伴い、個人の嗜好に合わせて簡単にカスタマイズ可能な飲料が求められている。本発明の目的は、消費者が嗜好に合わせて味や食感を簡便にカスタマイズ可能な容器詰飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、消費者が固形片を潰したり咀嚼したりしながら飲むことで、固形片の大きさや食感、液体のテクスチャー(とろみ)や風味など、簡便に好みの味や食感に調整できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
これに限定されるものではないが、本発明は以下に関する。
[1] 固形片と液体が可撓性容器に密封されている容器詰飲料であって、固形片の最長辺の長さが18~80mm、固形片の硬さが50~1000g/cm2であり、固形片/液体の重量比が50/50以下である、上記飲料。
[2] 固形片/液体の重量比が5/95~40/60である、[1]に記載の飲料。
[3] 固形片が果肉である、[1]または[2]に記載の飲料。
[4] 液体が、エタノール、グリセリン及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1つを含み、エタノール、グリセリン及びプロピレングリコールの合計量が0.005~1.0v/v%である、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5] 液体の明度(L値)が50以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6] 可撓性容器の少なくとも一部が透明である、[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
[7] 可撓性容器の開口部の口径が5~20cmである、[1]~[6]のいずれかに記載の飲料。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、固形片と液体を可撓性容器に充填する工程を含む、上記方法。
[9] 加熱殺菌する工程をさらに含む、[8]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る容器詰飲料は、消費者が自らの嗜好に合わせて簡便にカスタマイズすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】種々の果肉片について、その大きさを示す概略図である(L:最長辺の長さ、s:最短辺の長さ)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
固形片
本発明の飲料は、果実やゲル状食品などの食用可能な固形片を含有する容器詰飲料である。本発明の飲料に含まれる固形片は、可食性であれば特に制限はないが、後述するように一定の大きさを有する。固形片として用いる果実としては、特に制限はないが、モモ、サクランボ等の核果果実、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ミカン等の柑橘類果実、ナシ、リンゴ等の仁果果実、キウイフルーツ、マンゴー、パパイヤ、バナナ等の熱帯産果実、イチゴ、パイナップル、メロン、スイカ等の果実的野菜、これら以外のブドウ、ブルーベリー等の果実を挙げることができる。また、本明細書中においては、便宜上、アロエ葉肉も果実として扱う。果実は、生果であってもよいし、凍結及び/又は糖浸漬などの処理がされた加工果実であってもよいが、好適には加工果実、特に糖浸漬処理果実が用いられる。
【0011】
本発明に係る容器詰飲料は一定の大きさを有する固形片を含有するが、固形片の硬さは略均質であることが好ましく、可食性の固形片として果実片を用いる場合、果皮が付いていてもよいし、果皮が付いていなくてもよいが、不可食部(果皮、種子など)を含まない果肉であることが好ましい。すなわち、固形片全体に対する可食部の割合が90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましく、98重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが特に好ましい。
【0012】
ゲル状食品としては、特に制限はないが、ナタデココ、寒天、ゼラチン、コンニャクゲル、その他ゲル化剤で調製されたゼリー状食品などを挙げることができる。本発明の飲料には、これらの果実又はゲル状食品を、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0013】
本発明の飲料は、飲用する際に好みの食感にしたり、液体のとろみを調整したりすることができる。本発明に用いる固形片は、人が咀嚼可能なサイズを有しており、食感が知覚できる程度の大きさであることが重要である。本発明に用いる可食性固形片は、具体的には18mm以上の大きさを有しており、好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上、さらに好ましくは30mm以上の大きさを有する。本発明でいう固形片の大きさとは、固形片の最も長い部分の長さ(最長辺の長さ)であり、球状の果実を輪切りにした固形片であればその直径方向の長さを意味し、具体的には、
図1に示す長さ「L」をいう。固形片の大きさの上限に特に制限はなく適宜設定すればよいが、通常80mm以下であり、好ましくは70mm以下、より好ましくは60mm以下である。なお、食感の観点から、固形片の最も短い部分の長さ(最短辺の長さ、
図1において「s」で表す)は、3mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましい。最短辺の長さの上限は特にないが、固形片の最短辺は、例えば、40mm以下や30mm以下とすることができる。
【0014】
本発明の飲料は、飲用時に固形片を潰すことにより、消費者が飲料をカスタマイズすることができる。本発明の飲料に使用する可食性固形片は、咀嚼しやすく、指で潰せる程度の硬さであることも重要である。具体的には、固形片の硬さは1000g/cm2以下であり、好ましくは900g/cm2以下、より好ましくは800g/cm2以下である。固形片が柔らかい方が潰しやすいが、製造時及び/又は保存時の固形片の形状の崩れを抑制する観点から固形片の硬さは、例えば、50g/cm2以上であり、好ましくは60g/cm2以上であり、より好ましくは70g/cm2以上であり、さらに好ましくは80g/cm2以上である。ここで、本明細書中でいう硬さとは、固形片を押圧した際の破断点の荷重を意味し、具体的には、レオメーター(サン科学製:CR-3000EX-S)を用い、直径10mmの球型プランジャー、進入速度300mm/分の測定条件(圧縮試験)で押圧した際の破断点の荷重(荷重-歪率曲線の最大値の荷重)を測定すればよい。
【0015】
本発明に係る容器詰飲料においては、固形片を咀嚼した際の噛みごたえや飲みやすさ、飲料内に存在する固形片の潰し易さなどから、飲料に対する固形片の割合は50重量%以下にすべきである。すなわち、固形片/液体の重量比は50/50以下であり、5/95~45/55が好ましく、10/90~40/60がより好ましく、15/85~35/65がさらに好ましい。
【0016】
一つの態様において、本発明に係る容器詰飲料に含まれる可食性の固形片は、その体積が4.0cm3以上であり、好ましくは6.0cm3以上、より好ましくは8.0cm3以上であり、10.0cm3以上や12.0cm3以上であってもよい。固形物の体積は、例えば、100cm3以下であり、好ましくは80cm3以下、より好ましくは60cm3以下であり、50cm3以下や40cm3以下であってもよい。また、本発明に係る容器詰飲料は、固形片を複数含有することが好ましく、固形片の個数は、例えば、3~20個であり、4~15個や5~12個としてもよい。
【0017】
液体(内容液)
本発明の飲料は、上述の固形片が液体(内容液)とともに容器に充填されており、食感だけでなく見た目も贅沢な飲料である。本発明の飲料に用いられる液体は、飲用可能な液体であれば特に制限されない。例えば、水、ニアウォーター、果汁入り飲料、乳入り飲料、乳性飲料、茶飲料、その他清涼飲料などを挙げることができる。好ましい態様において、液体として茶飲料を用いることができるが、茶飲料としては、茶樹(Camellia sinensis)の葉や茎を用いて製造された茶葉を原料とする茶(緑茶などの不発酵茶、烏龍茶などの半発酵茶、紅茶などの発酵茶を含む)はもちろん、ハーブティーなど植物を原料とする抽出液を用いることができる。本発明に係る飲料はアルコール飲料であっても、ソフトドリンクなどの非アルコール飲料であてもよい。
【0018】
好ましい態様において、固形片として果肉を用いる場合、液体が果汁を含むことが好ましく、例えば、固形片が黄桃の果肉片、液体がモモの果汁飲料というように、固形片の主成分が液体にも主成分として含まれる場合、果肉そのままの食感と風味の相乗的作用で、より一層、その風味を長い時間(持続的)味わうことができる。固形片が黄桃の果肉片、液体が茶飲料のような場合、果肉が爽やかに香る茶飲料(フルーツティ)となる。フルーツの酸味や甘味が種類や季節によって変動するため、家庭でフルーツティを調製するのは難しいが、本発明によると、容器を開けるという簡単なオペレーションで食感も楽しめるフルーツティが得られる。
【0019】
本発明の固形片入り飲料に用いる液体は、好ましい態様において、アルコール又は多価アルコールを含有する。ここでアルコールと多価アルコールとは、食用可能なものを意味し、具体的には、エタノール、グリセリン及びプロピレングリコールから選択される1種以上をいう。これら成分を含有させることにより、液体のクラスター構造と物性が変化する。具体的には、疎水性相互作用などにより水中でクラスターを形成し、そのクラスターの周りで水分子は水素結合ネットワークによる籠状構造を形成するため、粘度が増加する。この粘度増加は増粘剤による粘度増加とは異なり、自然な優しい粘度であり、飲料を構成する液体の口当たりを滑らかにする。
【0020】
液体のクラスター構造を変化させるのに必要なエタノール、グリセリン及びプロピレングリコールの合計量は、0.005g/100ml以上であり、好ましくは0.01g/100ml以上、より好ましくは0.015g/100ml以上である。上限値は1.0g/100ml、好ましくは0.5g/100ml以下である。
【0021】
また、アルコール又は多価アルコールは、液体の表面張力を小さくする作用も有する。アルコール又は多価アルコールを含まない場合と比べて、液体の表面張力が小さくなっているので、固形片を潰した場合にも、固形片の断面にまで液体が絡み易くなる。そのため、固形片と液体の香味が融和して一体となり、固形片の口当たりが優しくなる。
【0022】
液体が酸味料を含有する場合、さらに表面張力を小さくさせることができる。したがって、液体が酸味料を含有する態様は、本発明の飲料の好適な態様の一例である。酸味料としては、例えば、無水クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。
【0023】
表面張力を小さくするのに必要な酸味料の濃度は、酸味料の種類により若干異なるが、クエン酸換算の酸度(クエン酸酸度)を指標とすることができる。すなわち、一つの態様において、本発明に係る飲料のクエン酸酸度は、0.02g/100ml以上であり、0.05g/100ml以上であることが好ましい。また、クエン酸酸度の上限は0.35g/100ml以下であり、0.30g/100ml以下であることが好ましい。ここで、クエン酸酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表される数値であり、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0024】
本発明の飲料の液体には、0.001~0.1g/100mlのカルシウムが含まれることが好ましい。上記範囲のカルシウムが含まれることにより、製造時や保存中の固形片の軟化や形状の崩れを抑制することができる。液体中のより好ましいカルシウム含有量は0.005~0.09g/100mlであり、さらに好ましくは0.01~0.08g/100ml程度である。液体に含有されるカルシウムは、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム等、食品に許容される添加物であれば特に限定されない。果汁や乳性分に含まれるカルシウム分でも良いが、カルシウム含有量の制御のしやすさからカルシウム塩が好適に用いられる。
【0025】
本発明の容器詰飲料は、一定以上の大きさを有する固形片を含んでなり、外観(見た目)にインパクトがあるため、飲料に用いる液体が透明性を有することが好ましい。すなわち、飲料の液体に透明性があると、飲料中の固形片の視認性が高くなり、外観上の美しさが際立つことはもちろん、可撓性容器の外側から指などで固形片を潰すことが容易になる。好ましい態様において液体の明度(L値)は50以上であり、より好ましくは60以上であり、さらに好ましくは70以上である。ここで、液体の明度(L値)は、25℃に調整したサンプル(液体)を色差計で測定すればよく、色差計としては、分光色差計(日本電色工業社製、SE6000)を用いることができる。
【0026】
また、液体の透明性によらず、固体片と液体の色のコントラストがあれば、固形片の視認性を高めることができる。具体的には、固形片と液体の明度差が10以上あることが好ましく、15以上あることがより好ましく、20以上あることがさらに好ましく、25以上あることが特に好ましい。明度差がこの範囲であれば、固形片が目立ちやすく消費者の注意を引く外観となる。ここで、明度差ΔLは、液体の明度(L1)から固形片の明度(L2)を減じた値である(ΔL=L1-L2)。
【0027】
本発明の飲料を構成する液体には、上記成分以外に、必要に応じて、飲料調製に用いることができる各種成分が含まれていてもよい(例えば、『最新・ソフトドリンクス』,全国清涼飲料工業会他監修,光琳,2003年を参照)。例えば砂糖、果糖などの糖類、甘味料、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、ビタミンC等の酸化防止剤、香料、色素成分、保存料、調味料、ビタミン、カルシウム、アミノ酸等を含有してもよい。
【0028】
容器詰飲料
本発明の容器詰飲料は、上述の固形片と液体が、可撓性容器に充填され密封されている。ここで可撓性容器とは、可撓変形可能な容器で、袋状の軟包装体であるパウチ容器を例示できる。
【0029】
容器内に収容された固形片を、可撓性容器の外から指などで潰して好みの大きさにするなどの操作が容易なことから、可撓性容器の厚さは0.2mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
【0030】
また、可撓性容器の少なくとも一部は、透明であることが好ましい。可撓性容器が透明であると収容物を外部から確認できるので、グラスなどの容器に内容物を注いだりする際に収容物(特に固形片)の押出しが容易になり、また、容器外から固体片と液体を混ぜる、揉む、固体片を潰す、などの操作が容易になる。容器の透明である部分は、容器表面積全体に対して、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明の容器詰飲料は、そのままRTD飲料(RTD=Ready To Drink:蓋を開けてすぐ飲める容器詰飲料)としてもよいが、グラス等に注いで飲用に供してもよい。すなわち、本発明に係る容器詰飲料はRTS飲料(RTS=Ready To Serve)として用いることもでき、その場合、氷や炭酸水等で割って飲用することもできる。グラス等に注ぎやすくするために、容器の開口部を広く設計しておくことが好ましい。具体的には、開口部の口径が5~15cmである容器が好適に用いられる。なお、本発明に係る容器詰飲料は、比較的大きな可食性固形片を含有するため、食品表示上、果肉入飲食品などと表記される場合がある。
【0032】
本発明の容器詰飲料は、消費者自身が好みの味や食感に簡便に調整できるカスタマイズ飲料であることを特徴とする。カスタマイズ飲料であるという利点を最大限活かすために、1回使い切りの飲料であることが好ましい。具体的には、飲料の総量が100~500gであることが好ましく、110~450gであることがより好ましく、120~400gであることがさらに好ましい。ここで、飲料の総量とは、固形片と液体とを合わせた容器内中味の重量をいう。
【0033】
一つの態様において、本発明は容器詰飲料の製造方法である。本発明の容器詰飲料を製造する場合は、例えば、以下の工程を行うことができる。
・大きさが18~80mmである固形片を調製する工程
・液体(内容液)を調製する工程
・固形片/液体の重量比が50/50以下になるように、可撓性容器に固形片と液体を充填する工程
・加熱殺菌する工程
本発明に係る容器詰飲料は硬さが50~1000g/cm2である固形片を含有するが、加熱殺菌工程において、固形片の軟化、形状の崩れ、溶融、溶解その他の変化が発生する可能性がある。製造工程を踏まえて固形片の原料を選定すればよいが、固形片の硬さの制御の容易性から、固形片としては加工果実が好適に用いられる。ここで、加工果実としては、糖浸漬処理又は凍結処理がなされた果実をいう。加工果実は、硬さが制御しやすいだけでなく、糖浸漬処理や凍結処理により、果実の細胞壁が軟化し、細胞膜構造が変化するために、液体と混合した場合に、液体がより一層果実片の中心部に入り込み、固形片と液体の香味が融和して一体となるという飲料の香味上の利点もある。
【0034】
糖浸漬処理とは、果実を所定の大きさに切断して果実片とし、該果実片にシロップに浸漬させたものをいう。シロップは、糖液であってもよいし、果汁や香料などの香味成分を含んでいてもよい。凍結処理とは、果実片を凍結解凍したものをいう。凍結した果実片を糖浸漬処理してもよい。
【実施例0035】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0036】
実験1.パウチ入りリンゴ果肉含有飲料(1)
リンゴ(生果)を原料として、切断処理工程、ブランチング処理工程、脱気処理工程、糖液浸透処理工程を経て、シロップ漬けのリンゴ片(糖浸漬果実片)を製造した。皮及び芯を除去したリンゴを約10mmの厚さを有する薄肉円板状に横方向から切断した後、スライスしたリンゴ片を熱湯中に約1分間浸漬してブランチング処理し、スライスリンゴ片中の酵素を失活させた。次いで、スライスリンゴ片内に含まれる空気を除去(脱気)する処理を行った。脱気処理は、耐圧密閉容器にスライスリンゴ片と水を注入し、約1時間減圧することにより行った。脱気処理したスライスリンゴ片を、20℃に加温された糖濃度20°の糖液の水溶液に約24時間(一昼夜)浸漬して、シロップ漬けのリンゴ片を製造した(サンプル1-1)。このリンゴ片を、30℃に加温された糖液の水溶液に24時間浸漬してサンプル1-2を調製した。このように、順次、所定温度(20℃→30℃→40℃→50℃→60℃→70℃)に加温された糖液に浸漬して、加温温度の異なるシロップ漬けのリンゴ片を製造した(サンプル1-1~1-6)。このシロップ漬けのリンゴ片は、最長辺の長さ(直径)が約70mmであった。
【0037】
また、表1に示す処方に基づいて糖酸液(内容液)を調製した(酸度0.12%、pH3.65)。
【0038】
【0039】
次いで、シロップ漬けのリンゴ片60gと糖酸液(内容液)140gとを可撓性容器に充填して密封し、F値が4以上となる条件でレトルト殺菌して容器詰飲料を製造した。可撓性容器として透明なレトルトスタンド袋(11cm×20cm、開口部口径:11cm、材質:ラミネートフィルム、厚さ:70μm)を使用した。また、比較例として、スライスリンゴ片の生果60gと糖酸液140gをパウチに充填し、同様にして容器詰飲料を製造した(サンプル1-7)。
【0040】
得られたパウチ入りの果実片含有飲料について、容器内のリンゴ片を取り出し、その硬さ、すなわち圧縮試験における破断点の荷重(荷重-歪率曲線の最大値の荷重)を測定した。硬さの測定は、レオメーター(サン科学製:CR-3000EX-S)を用い、直径10mmの球型プランジャー、進入速度300mm/分の測定条件で行った。また、製造した容器詰飲料について、可撓性容器の外側から固形片の潰しやすさを以下の4段階で評価した。
◎:潰しやすい
〇:やや潰しやすい
△:やや潰しにくい
×:潰しにくい
結果を表2に示す。1000g/cm2以下の硬さを有する固形片は、パウチの外側から潰しやすいことが確認された。
【0041】
【0042】
実験2.パウチ入りリンゴ果肉含有飲料(2)
スライスリンゴ片と糖酸液の重量比を変える以外は、実験1のサンプル1-6と同様にしてパウチ入りのリンゴ果肉含有飲料を調製した。得られた飲料について、実験1と同様に固形片の潰しやすさを確認するとともに、パウチを開封してグラスに注ぎ、5人のパネルによって飲用評価した。
【0043】
結果を表3に示す。下表の結果から明らかなように、固形片/液体の割合(重量比)が50/50以下であると、可撓性容器の外側から固形片を潰しやすかった。一般に液体中の固形片は掴まえにくい傾向にあるが、固形片の量が多いと、固形片を掴まえる際や、掴まえた固形片を潰す際に、掴まえた固形片以外の固形片が物理的な障害となった。また、飲用評価の結果、固形片よりも液体が多いサンプルが飲料としての適性があり、固形片の飲料に対する割合は、50重量%以下(固形片/液体の割合は50/50以下)であることが好ましいとパネル全員が判断した。特に、固形片/液体の割合が15/85~35/65の飲料(サンプル2-2~2-4)は、飲料とスイーツの良いところを兼ね備えており、デザートのようにも感じられる「デザート飲料」であるとして高く評価された。
【0044】
【0045】
実験3.パウチ入りリンゴ果肉含有飲料(3)
糖酸液を市販の透明リンゴジュース(原材料:りんご、酸味料、香料)に代える以外は、実験1のサンプル1-6と同様にして容器詰飲料を製造した(サンプル3-1、固形片/液体の重量比:30/70)。また、表4に示す量のエタノール、グリセリン又はプロピレングリコールを添加したリンゴジュースを用いて、同様に容器詰飲料を製造した(サンプル3-2~3-8)。
【0046】
実験2と同様にして飲用評価を行った結果、サンプル3-1と比べて、エタノール、グリセリン及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1つを含む飲料(サンプル3-2~3-8)は、リンゴ片を潰した場合にも、固形片の断面にまで液体が絡み易くなり、リンゴ片と液体の香味が融和して一体となり、リンゴ片の口当たりが優しくなり、より一層飲料としての嗜好性が上がると評価された。
【0047】
【0048】
実験4.パウチ入りリンゴ果肉含有飲料(4)
液体部を市販の混濁リンゴジュース(原材料:りんご、酸味料、香料)に代える以外は、実験3のサンプル3-3と同様にして、パウチ入りのリンゴ果肉含有飲料を調製した(サンプル4-1)。
【0049】
透明ジュースを用いたサンプル3-3と、混濁ジュースを用いた4-1について、それぞれ実験1と同様に潰しやすさを評価した。また、飲料のリンゴ片及び液体部の明度(L値)を分光色差計(日本電色工業社製、SE6000)で測定した。なお、液体部は透過式測定、リンゴ片は反射式測定で行った。
【0050】
結果を表5に示す。液部の明度(L値)が高いサンプル3-3はリンゴ片の視認性が高く潰しやすかったが、液部の明度が低いく果実片との明度差が小さいサンプル4-1は視認性が低く、潰しやすさがやや劣った。
【0051】
【0052】
実験5.パウチ入り果肉含有飲料
果実片には、
図1に示す形状の缶詰果実又は生果実を用いた。具体的には、内皮が除去され糖度20°の糖液で浸漬処理された缶詰みかん(最長辺L:約30mm、最短辺s:約10mm)、糖度20°の糖液で浸漬処理されたくし形切りの缶詰桃(L:約40mm、s:約15mm)、糖度21°の糖液で浸漬処理された略扇形切りの缶詰パインアップル(L:約40mm、s:約10mm)、生果実をくし形切りしたマンゴー(L:約40mm、s:約15mm)を用いた。
【0053】
また、表6に示す処方に基づいて紅茶液(内容液)を調製した(エタノール含有量:0.02%、酸度:0.16%、pH:3.5)。
【0054】
【0055】
次いで、果実片と紅茶液を表7に示す量で透明な樹脂製パウチ容器(厚さ:0.7~0.1mm、開口部の口径:約8~15cm)に入れた後、F値が4以上となる条件でレトルト殺菌し、果肉片入り容器詰飲料を調製した。
【0056】
得られた容器詰飲料を実験4と同様にして評価した結果を表7に示す。いずれの飲料も果実片の視認性が高く、パウチの外側から果実片が潰しやすい性状であった。飲用時に固形片を潰すことにより、好みの食感にしたり、液体のとろみを調整したりすることが容易にできた。糖浸漬処理果実を用いた場合には、生果のマンゴーよりも硬さがあるにも関わらず、紅茶液が果実片に浸透し、より液体部と果実片の香味が融和して一体となった飲料であると評価された。
【0057】