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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175529
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/08 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
F16D41/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088012
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土肥 永生
(72)【発明者】
【氏名】田中 一宇
(57)【要約】
【課題】係合子の押圧面と、被押圧部材の被押圧面との接触状態を適正に維持することができる構造を実現する。
【解決手段】入力部材3は、入力側基部8と、該入力側基部8の軸方向片側面から軸方向片側に向けて突出する入力側係合部9と、該入力側基部8の軸方向片側面のうち、入力側係合部9から円周方向に外れた部分から軸方向片側に向けて突出する補強軸部10とを有する。補強プレート4は、入力側係合部9の軸方向片側の端部と補強軸部10の軸方向片側の端部とにかけ渡されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に被押圧面を有する被押圧部材と、
入力側基部と、前記被押圧面の径方向内側に配置され、かつ、前記入力側基部の軸方向片側面から軸方向片側に向けて突出する入力側係合部と、前記入力側基部の軸方向片側面のうち、前記入力側係合部から円周方向に外れた部分から軸方向片側に向けて突出する補強軸部とを有し、前記被押圧面と同軸に配置された入力部材と、
前記入力側係合部の軸方向片側の端部と前記補強軸部の軸方向片側の端部とにかけ渡された補強プレートと、
前記被押圧面の径方向内側において前記入力側係合部よりも径方向内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置された出力部材と、
前記被押圧面に対向する押圧面と、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部とを有し、軸方向に関して前記入力側基部と前記補強プレートとの間部分に、前記被押圧面に対する遠近方向である第1方向の移動を可能に配置された係合子と、
を備え、
前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合することに基づいて、前記第1方向に関して前記被押圧面から離れる方向に変位し、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させることで、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力側被係合部に前記出力側係合部が係合することに基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付けて、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させるものである、
逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記係合子を複数備え、
前記入力部材が、前記入力側係合部を、前記係合子と同数有し、かつ、前記補強軸部を、前記係合子と同数、または、前記係合子の個数の整数倍有する、
請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記係合子を1対備える、
請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
前記補強プレートが、すべての前記入力側係合部とすべての前記補強軸部とにかけ渡されている、
請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項5】
前記係合子は、前記補強軸部を挿通する通孔を有する、
請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項6】
前記入力部材は、前記補強軸部を、軸方向と前記第1方向とに直交する第2方向に関して前記入力側係合部を挟んだ2箇所位置に有する、
請求項5に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項7】
前記係合子は、
前記押圧面と、前記出力側係合部と、揺動支持部とを有する係合子本体と、
前記入力側被係合部と、前記揺動支持部に揺動可能に支持された揺動被支持部とを有するリンク部材とを備える、
請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項8】
前記係合子は、前記リンク部材を1対有しており、
1対の前記リンク部材は、前記係合子本体の軸方向両側に配置されている、
請求項7に記載の逆入力遮断クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材に入力される回転トルクを出力部材に伝達するのに対し、出力部材に逆入力される回転トルクを完全に遮断して入力部材に伝達しないか、またはその一部のみを入力部材に伝達して残部を遮断する、逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
逆入力遮断クラッチは、駆動源などの入力側機構に接続される入力部材と、減速機構などの出力側機構に接続される出力部材とを備えており、入力部材に入力される回転トルクを出力部材に伝達するのに対し、出力部材に逆入力される回転トルクを完全に遮断して入力部材に伝達しないかまたはその一部のみを入力部材に伝達して残部を遮断する機能を有する。
【0003】
逆入力遮断クラッチは、出力部材に逆入力される回転トルクを遮断する機構の相違により、ロック式とフリー式に大別される。ロック式の逆入力遮断クラッチは、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、出力部材の回転を防止する機構を備える。一方、フリー式の逆入力遮断クラッチは、出力部材に回転トルクが入力された際に、出力部材を空転させる機構を備える。ロック式の逆入力遮断クラッチとフリー式の逆入力遮断クラッチとのいずれを使用するかについては、逆入力遮断クラッチを組み込む装置の用途などによって適宜決定される。
【0004】
国際公開第2019/026794号パンフレットには、ロック式の逆入力遮断クラッチが記載されている。国際公開第2019/026794号パンフレットに記載の逆入力遮断クラッチは、入力側係合部を有する入力部材と、出力側係合部を有する出力部材と、被押圧面を有する被押圧部材と、入力側被係合部、出力側被係合部および押圧面を有する係合子とを備える。前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合することに基づいて、前記被押圧面から離れる方向に変位し、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させて、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達する。これに対し、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記係合子は、前記出力側係合部が前記出力側被係合部に係合することに基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付け、前記押圧面と前記被押圧面とを摩擦係合させる。これにより、前記出力部材に逆入力された回転トルクを完全に遮断して前記入力部材に伝達しないか、または、その一部のみを前記入力部材に伝達して残部を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/026794号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
国際公開第2019/026794号パンフレットに記載の逆入力遮断クラッチは、ロック状態または半ロック状態と、ロック解除状態または半ロック解除状態との切り換え動作を安定させる面からは、さらなる改良の余地がある。
【0007】
すなわち、入力部材に回転トルクが入力されると、入力側係合部が、捩れ方向(円周方向)に弾性変形し、該入力側係合部に入力側被係合部を係合させた係合子が傾く可能性がある。前記係合子が傾くと、該係合子の押圧面と、被押圧部材の被押圧面との接触状態が不適正になり、予期しないアキシアル荷重が発生するなどの問題を生じる可能性がある。
【0008】
本発明は、上述のような事情に鑑みて、係合子の押圧面と、被押圧部材の被押圧面との接触状態を適正に維持することができる、逆入力遮断クラッチの構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチは、被押圧部材と、入力部材と、補強プレートと、出力部材と、係合子とを備える。
【0010】
前記被押圧部材は、内周面に被押圧面を有する。
【0011】
前記入力部材は、入力側基部と、前記被押圧面の径方向内側に配置され、かつ、前記入力側基部の軸方向片側面から軸方向片側に向けて突出する入力側係合部と、前記入力側基部の軸方向片側面のうち、前記入力側係合部から円周方向に外れた部分から軸方向片側に向けて突出する補強軸部とを有する。前記入力部材は、前記被押圧面と同軸に配置されている。
【0012】
前記補強プレートは、前記入力側係合部の軸方向片側の端部と前記補強軸部の軸方向片側の端部とにかけ渡されている。
【0013】
前記出力部材は、前記被押圧面の径方向内側において前記入力側係合部よりも径方向内側に配置された出力側係合部を有する。前記出力部材は、前記被押圧面と同軸に配置されている。
【0014】
前記係合子は、前記被押圧面に対向する押圧面と、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部とを有する。前記係合子は、軸方向に関して前記入力側基部と前記補強プレートとの間部分に、前記被押圧面に対する遠近方向である第1方向の移動を可能に配置されている。
【0015】
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチでは、前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合することに基づいて、前記第1方向に関して前記被押圧面から離れる方向に変位し、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させることで、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力側被係合部に前記出力側係合部が係合することに基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付けて、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させる。
【0016】
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチは、前記係合子を複数備えることができ、および、前記入力部材は、前記入力側係合部を、前記係合子と同数有し、かつ、前記補強軸部を、前記係合子と同数、または、前記係合子の個数の整数倍有することができる。
【0017】
この場合、前記係合子を1対備えることができる。
また、前記補強プレートを、すべての前記入力側係合部とすべての前記補強軸部とにかけ渡すことができる。
【0018】
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチでは、前記係合子は、前記補強軸部を挿通する通孔を有することができる。
【0019】
この場合、前記入力部材は、前記補強軸部を、軸方向と前記第1方向とに直交する第2方向に関して前記入力側係合部を挟んだ2箇所位置に有することができる。
【0020】
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチでは、前記係合子は、前記押圧面と、前記出力側係合部と、揺動支持部とを有する係合子本体と、前記入力側被係合部と、前記揺動支持部に揺動可能に支持された揺動被支持部とを有するリンク部材とを備えることができる。
【0021】
この場合、前記係合子は、前記リンク部材を1対有することができる。1対の前記リンク部材は、前記係合子本体の軸方向両側に配置される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチによれば、係合子の押圧面と、被押圧部材の被押圧面との接触状態を適正に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチを示す斜視図である。
図2図2は、第1例の逆入力遮断クラッチを、軸方向に関して出力部材側から見た端面図である。
図3図3は、図2のA-A断面図である。
図4図4は、図3のB-B断面図である。
図5図5は、入力部材に回転トルクが入力された状態で示す、図4に相当する図である。
図6図6は、出力部材に回転トルクが逆入力された状態で示す、図4に相当する図である。
図7図7は、第1例の逆入力遮断クラッチを示す分解斜視図である。
図8図8は、本発明の実施の形態の第2例の逆入力遮断クラッチを示す斜視図である。
図9図9は、第2例の逆入力遮断クラッチを、軸方向に関して出力部材側から見た端面図である。
図10図10は、図9のC-C断面図である。
図11図11は、図10のD-D断面図である。
図12図12は、入力部材に回転トルクが入力された状態で示す、図11に相当する図である。
図13図13は、出力部材に回転トルクが逆入力された状態で示す、図11に相当する図である。
図14図14は、第2例の逆入力遮断クラッチを示す分解斜視図である。
図15図15は、本発明の実施の形態の第3例の逆入力遮断クラッチを示す斜視図である。
図16図16は、第2例の逆入力遮断クラッチを、軸方向に関して出力部材側から見た端面図である。
図17図17は、図16のE-E断面図である。
図18図18は、図17のF-F断面図である。
図19図19は、第3例の逆入力遮断クラッチを、被押圧部材を省略して示す斜視図である。
図20図20は、第3例の逆入力遮断クラッチを示す分解斜視図である。
図21図21は、本発明の実施の形態の第4例についての図18に相当する図である。
図22図22は、第4例についての図19に相当する図である。
図23図23は、第4例の逆入力遮断クラッチを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1例]
図1図7は、本発明の実施の形態の第1例を示している。なお、軸方向、径方向および円周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向および円周方向をいう。本例において、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向および円周方向は、入力部材3の軸方向、径方向および円周方向と一致し、かつ、出力部材5の軸方向、径方向および円周方向と一致する。また、軸方向片側とは、出力部材5側(図3の右側)をいい、軸方向他側とは、入力部材3側(図3の左側)をいう。
【0025】
<逆入力遮断クラッチの構造の説明>
本例の逆入力遮断クラッチ1は、被押圧部材2と、入力部材3と、補強プレート4と、出力部材5と、係合子6とを備える。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3に入力される回転トルクを出力部材5に伝達するのに対し、出力部材5に逆入力される回転トルクは完全に遮断して入力部材3に伝達しないか、またはその一部のみを入力部材3に伝達して残部を遮断する逆入力遮断機能を有する。なお、本例の逆入力遮断クラッチ1は、係合子6を1対備える。
【0026】
被押圧部材2は、固定の部分に支持固定されて、逆入力遮断クラッチ1の使用時にも回転しない。被押圧部材2は、内周面に被押圧面7を有する。本例では、被押圧部材2は、円環状に構成されている。
【0027】
入力部材3は、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材3は、入力側基部8と、入力側係合部9と、補強軸部10とを有する。
【0028】
入力側基部8は、円形板状に構成されている。本例では、入力側基部8は、径方向反対側2箇所に、略弓形の開口形状を有する入力側支持孔11を有する。
【0029】
入力側係合部9は、入力側基部8の軸方向片側面のうち、入力部材3の中心軸Oから径方向に外れた部分から軸方向片側に向けて突出している。
【0030】
本例では、入力部材3は、入力側係合部9を1対有する。1対の入力側係合部9は、入力側基部8の軸方向片側面のうち、径方向反対側2箇所位置から軸方向片側に向けて突出している。それぞれの入力側係合部9は、軸方向から見て略弓形の端面形状を有する。本例では、それぞれの入力側係合部9は、後述する係合部材16の軸方向中間部および軸方向片側の端部により構成されている。
【0031】
補強軸部10は、入力側基部8の軸方向片側面のうち、入力側係合部9から円周方向に外れた部分から軸方向片側に向けて突出している。
【0032】
本例では、入力部材3は、補強軸部10を1対有する。1対の補強軸部10は、入力側基部8の軸方向片側面のうち、1対の入力側係合部9から円周方向に90度位相がずれた径方向反対側2箇所位置の径方向外側の端部から軸方向片側に向けて突出している。それぞれの補強軸部10は、軸方向から見て部分円弧の端面形状を有する。すなわち、それぞれの補強軸部10は、部分円筒状に構成されている。
【0033】
本例では、入力部材3は、入力側基部8の軸方向他側面の中央部から軸方向他側に向けて突出した円柱状の入力軸部12を備える。入力軸部12の軸方向他側部分に、入力側機構がトルクの伝達を可能に接続される。
【0034】
補強プレート4は、入力側係合部9の軸方向片側の端部と補強軸部10の軸方向片側の端部とにかけ渡されている。換言すれば、補強プレート4は、入力側係合部9の軸方向片側の端部と補強軸部10の軸方向片側の端部とのそれぞれに連結されている。本例では、補強プレート4は、1対の入力側係合部9の軸方向片側の端部と、1対の補強軸部10の軸方向片側の端部とのすべてにかけ渡されている。本例では、補強プレート4は、中央部に、軸方向に貫通する円孔13を備える。すなわち、補強プレート4は、中空円形板状に構成されている。さらに、補強プレート4は、該円孔13を挟んだ径方向反対側2箇所位置に、軸方向に貫通し、かつ、軸方向から見て略弓形の開口形状を有するプレート側支持孔14を備える。
【0035】
本例では、入力部材3と補強プレート4とは、本体部材15と1対の係合部材16とを組み合わせることにより構成されている。本体部材15は、入力側基部8と、補強軸部10と、入力軸部12と、補強プレート4とを一体に備える。それぞれの係合部材16は、軸方向から見て略弓形の端面形状を有する。すなわち、それぞれの係合部材16は、一部が欠けた直円柱形状を有する。入力部材3と補強プレート4とは、それぞれの係合部材16の軸方向他側の端部を入力側支持孔11に内嵌固定し、かつ、軸方向片側の端部をプレート側支持孔14に内嵌固定することで、本体部材15と1対の係合部材16とを結合固定してなる。すなわち、本例では、1対の係合部材16のうち、入力側基部8の軸方向片側面から軸方向片側に突出した部分により、1対の入力側係合部9が構成されている。
【0036】
出力部材5は、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材5は、被押圧面7の径方向内側において入力側係合部9よりも径方向内側に配置された出力側係合部17を有し、入力部材3と同軸に配置されている。本例では、出力部材5は、長円形の断面形状を有する。すなわち、出力部材5の外周面は、互いに平行な1対の平坦面18と、1対の凸曲面19とにより構成されている。また、出力側係合部17は、出力部材5の軸方向他側の端部により構成されている。
【0037】
係合子6は、被押圧面7に対向する押圧面20と、入力側係合部9と係合可能な入力側被係合部21と、出力側係合部17と係合可能な出力側被係合部22とを有する。係合子6は、軸方向に関して入力側基部8と補強プレート4との間部分に、被押圧面7に対する遠近方向である第1方向(図4に矢印αで示す方向)の移動を可能に配置されている。
【0038】
なお、係合子6に関して径方向とは、図4に矢印αで示した出力側被係合部22の底面25に対して直角な方向をいい、係合子6に関して幅方向とは、図4に矢印βで示した出力側被係合部22の底面25に対して平行な方向をいう。本例では、係合子6に関する径方向が、被押圧面7に対する押圧面20の遠近方向であって、第1方向に相当し、かつ、係合子6に関する幅方向が、軸方向と第1方向とに直交する第2方向に相当する。
【0039】
本例の逆入力遮断クラッチ1は、係合子6を1対備える。それぞれの係合子6は、軸方向から見て略扇形または略弓形の端面形状を有する。
【0040】
押圧面20は、係合子6のうち、被押圧面7に対向する径方向外側面に備えられている。本例では、係合子6の径方向外側面は、被押圧面7の曲率半径よりもわずかに小さい曲率半径を有する単一の部分円筒状の凸面により構成されている。すなわち、本例では、係合子6は、径方向外側面の全体に(円周方向全長にわたって)、押圧面20を有する。ただし、本発明を実施する場合、後述する本発明の実施の形態の第3例および第4例のように、係合子は、径方向外側面のうち、円周方向に離隔した2箇所位置に、押圧面を有することもできる。
【0041】
入力側被係合部21は、係合子6の径方向中間部に備えられている。本例では、入力側被係合部21は、係合子6の径方向中間部を軸方向に貫通し、かつ、略弓形の開口形状を有する通孔により構成されている。入力側被係合部21は、入力側係合部9を緩く挿入可能となっている。
【0042】
入力側係合部9と入力側被係合部21の内面との間には、係合子6の幅方向および径方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力側係合部9は、係合子6に対し、入力部材3の回転方向に関する変位が可能であり、係合子6は、入力側係合部9に対し、係合子6の径方向の変位が可能である。本例では、入力側被係合部21は、径方向内側面(径方向外側を向いた面)に、第1方向に直交する平坦面23を有する。
【0043】
なお、入力側被係合部は、係合子の径方向外側面に開口する切り欠きにより構成することもできる。
【0044】
出力側被係合部22は、係合子6のうち、弦に相当する径方向内側面に備えられている。本例では、係合子6は、径方向内側の端部のうち、幅方向中央部に、両側部分よりも径方向内側に向けて突出した凸部24を有し、かつ、該凸部24の先端面に、径方向外側に向けて凹んだ出力側被係合部22を有する。
【0045】
出力側被係合部22は、出力側係合部17の短軸方向先半部の外周面形状に合致する内面形状を有する。具体的には、出力側被係合部22の内面は、第1方向に直交する底面25と、第1方向に関して底面25から離れるほど互いの間隔が拡がる方向に傾斜した1対の凹曲面26とから構成されている。
【0046】
本例の逆入力遮断クラッチ1を組み立てる際には、まず、係合子6を、入力側基部8と補強プレート4との間部分に配置する。次に、係合部材16を、入力側支持孔11と入力側被係合部21とプレート側支持孔14に軸方向に挿入する。これにより、係合部材16のうち、軸方向他側の端部を入力側支持孔11に内嵌固定し、かつ、軸方向片側の端部をプレート側支持孔14に内嵌固定する。
【0047】
次いで、出力部材5の軸方向他側の端部に備えられた出力側係合部17を、補強プレート4の円孔13を通じて軸方向片側から挿入し、1対の係合子6の出力側被係合部22同士の間に配置する。最後に、係合子6の周囲に被押圧部材2を配置する。このような逆入力遮断クラッチ1の組立手順は、矛盾を生じない限り、順番を入れ替えたり、同時に実施したりすることができる。
【0048】
<逆入力遮断クラッチの動作説明>
本例の逆入力遮断クラッチ1の動作について、図5および図6を用いて説明する。なお、図5および図6は、入力部材3および出力部材5と、1対の係合子6との間の径方向に関する隙間を誇張して示している。
【0049】
まず、入力部材3に入力側機構から回転トルクが入力された場合を説明する。
【0050】
入力部材3に回転トルクが入力されると、図5に示すように、入力側被係合部21の内側で、入力側係合部9が入力部材3の回転方向(図5の例では反時計方向)に回転する。すると、入力側係合部9の径方向内側面が入力側被係合部21の平坦面23を径方向内側に向けて押圧し、1対の係合子6を、被押圧面7から離れる方向にそれぞれ移動させる。つまり、1対の係合子6を、入力部材3との係合に基づき、互いに近づく方向である径方向内側に向けて(図5の上側に位置する係合子6を下側に向けて、図5の下側に位置する係合子6を上側に向けて)それぞれ移動させる。これにより、1対の係合子6の径方向内側面が互いに近づく方向に移動し、出力部材5の出力側係合部17が、1対の係合子6の出力側被係合部22により径方向両側から挟持される。すなわち、出力部材5を、平坦面18が、出力側被係合部22の底面25と平行になるように回転させつつ、出力側係合部17と出力側被係合部22とをがたつきなく係合させる。この結果、入力部材3に入力された回転トルクは、1対の係合子6を介して、出力部材5に伝達され、出力部材5から出力される。本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3に回転トルクが入力されると、入力部材3の回転方向に関係なく、1対の係合子6が、被押圧面7から離れる方向にそれぞれ移動する。そして、入力部材3に入力された回転トルクが、1対の係合子6を介して、出力部材5に伝達される。
【0051】
次に、出力部材5に出力側機構から回転トルクが逆入力された場合を説明する。
【0052】
出力部材5に回転トルクが逆入力されると、図6に示すように、出力側係合部17が、1対の係合子6の出力側被係合部22同士の内側で、出力部材5の回転方向(図6の例では時計方向)に回転する。すると、出力側係合部17の外周面のうちで平坦面18と凸曲面19との接続部(角部)が、出力側被係合部22の底面25を径方向外側に向けて押圧し、1対の係合子6を、被押圧面7に近づく方向にそれぞれ移動させる。つまり、1対の係合子6を、出力部材5との係合に基づき、互いに離れる方向である径方向外側に向けて(図6の上側に位置する係合子6を上側に向けて、図6の下側に位置する係合子6を下側に向けて)それぞれ移動させる。これにより、1対の係合子6のそれぞれの押圧面20を、被押圧面7に対して摩擦係合させる。
【0053】
この結果、出力部材5に逆入力された回転トルクが完全に遮断されて入力部材3に伝達されないか、または、出力部材5に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材3に伝達され残部が遮断される。出力部材5に逆入力された回転トルクを完全に遮断して入力部材3に伝達されないようにするには、押圧面20が被押圧面7に対して摺動(相対回転)しないように、1対の係合子6を、出力側係合部17と被押圧部材2との間で突っ張らせ(出力側係合部17と被押圧部材2との間で径方向に挟持して)、出力部材5をロックする。これに対し、出力部材5に逆入力された回転トルクのうちの一部のみが入力部材3に伝達され残部が遮断されるようにするには、1対の押圧面20が被押圧面7に対して摺動するように、1対の係合子6を、出力側係合部17と被押圧部材2との間で突っ張らせ、出力部材5を半ロックする。
【0054】
本例の逆入力遮断クラッチ1では、以上の動作が可能となるように、各構成部材間の隙間の大きさが調整されている。特に、1対の係合子6の押圧面20が被押圧面7に接触した位置関係において、入力側係合部9の径方向内側面と入力側被係合部21の平坦面23との間に、出力側係合部17の角部が出力側被係合部22の底面25を押圧することに基づいて押圧面20を被押圧面7に向けてさらに押し付けることを許容する隙間が存在するようにしている。これにより、出力部材5に回転トルクが逆入力されたときに、係合子6の径方向外側への移動が入力側係合部9によって阻止されることを防止し、かつ、押圧面20が被押圧面7に接触した後も、押圧面20と被押圧面7との接触部に作用する面圧が、出力部材5に逆入力された回転トルクの大きさに応じて変化するようにすることで、出力部材5のロックまたは半ロックが適正に行われるようにしている。
【0055】
本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、国際公開第2019/026794号パンフレットに記載の逆入力遮断クラッチと同様の理由により、軸方向寸法を短くでき、かつ、部品点数を抑えることができる。
【0056】
本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3および出力部材5のそれぞれの回転を、係合子6の径方向移動に変換する。入力部材3および出力部材5の回転を係合子6の径方向移動に変換することで、係合子6を、該係合子6の径方向内側に位置する出力部材5に係合させる、あるいは、係合子6を、該係合子6の径方向外側に位置する被押圧部材2に押し付けるようにしている。このように、本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3および出力部材5のそれぞれの回転によって制御される係合子6の径方向移動に基づき、入力部材3から出力部材5に回転トルクが伝達可能になる出力部材5のロック解除状態または半ロック解除状態と、出力部材5の回転が防止または抑制される出力部材5のロック状態または半ロック状態とを切り替えることができるため、逆入力遮断クラッチ1の装置全体の軸方向寸法を短くできる。
【0057】
しかも、係合子6に、入力部材3に入力された回転トルクを出力部材5に伝達する機能と、出力部材5をロックまたは半ロックする機能との両方の機能を持たせている。このため、逆入力遮断クラッチ1の部品点数を抑えることができ、かつ、回転トルクを伝達する機能とロックまたは半ロックする機能とをそれぞれ別の部材に持たせる場合に比べて、動作を安定させることができる。たとえば、回転トルクを伝達する機能とロックまたは半ロックする機能とを別の部材に持たせる場合、ロック解除または半ロック解除のタイミングと回転トルクの伝達開始のタイミングとがずれる可能性がある。この場合、ロック解除または半ロック解除から回転トルクの伝達開始までの間に出力部材に回転トルクが逆入力されると、出力部材が再びロックまたは半ロックされてしまう。本例では、係合子6に、回転トルクを出力部材5に伝達する機能と、出力部材5をロックまたは半ロックする機能との両方の機能を持たせているため、このような不都合が生じることを防止できる。
【0058】
また、入力部材3から係合子6に作用する力の向きと、出力部材5から係合子6に作用する力の向きとを逆向きにしているため、両方の力の大小関係を規制することで、係合子6の移動方向を制御できる。このため、出力部材5のロック状態または半ロック状態とロック解除状態または半ロック解除状態との切り換え動作を安定して確実に行うことができる。
【0059】
また、本例の逆入力遮断クラッチ1では、入力側係合部9の軸方向片側の端部と、補強軸部10の軸方向片側の端部との間に補強プレート4がかけ渡されている。このため、入力部材3に回転トルクが入力された場合に、入力側係合部9が捩れ方向に弾性変形するのを防止することができる。具体的には、入力部材3に回転トルクが入力された場合に、入力側係合部9が捩れて補強プレート4が入力側基部8に対して円周方向に相対変位するのを、補強軸部10により阻止することができる。これにより、係合子6が傾くことを防止でき、係合子6の押圧面20と、被押圧部材2の被押圧面7との接触状態を適正に維持することができる。
【0060】
さらに本例の逆入力遮断クラッチ1では、補強プレート4が、1対の入力側係合部9の軸方向片側の端部同士の間にもかけ渡されている。このため、入力部材3に回転トルクが入力された場合に、1対の入力側係合部9の軸方向片側の端部が互いに離れる方向に湾曲するように変形するのを防止することができる。このため、入力側係合部9と、入力側被係合部21との間に偏当たりが発生することを防止でき、摩耗の発生を抑えることができ、かつ、係合子6が傾くことを防止できて、ロック解除状態または半ロック解除状態への切り換えを円滑に行うことができる。
【0061】
本発明の逆入力遮断クラッチを実施する場合、係合子を、押圧面を被押圧面に近づける方向に弾性的に付勢する付勢部材を備えることもできる。付勢部材は、ねじりコイルばねや板ばねなどにより構成することができる。たとえば、係合子を1対備える場合、付勢部材を、1対の係合子の径方向内側面同士の間に弾性的に挟持することができる。具体的には、付勢部材であるねじりコイルばねの両側の端部に、それぞれの係合子6の径方向内側面のうち、幅方向両側部分に備えられた保持凸部27を挿入することで、1対の係合子6の径方向内側面同士の間からねじりコイルばねが脱落するのを防止することができる。
【0062】
本例では、入力側基部8と、補強軸部10と、入力軸部12と、補強プレート4とを一体に備える本体部材15と、1対の係合部材16とを組み合わせることにより、入力部材3と補強プレート4とが構成されている。ただし、補強プレートを、補強軸部とは別体に構成し、該補強軸部の軸方向片側の端部に、圧入やねじ止め、溶接などにより結合固定することもできる。および/または、補強軸部を、入力側基部と別体に構成し、該入力側基部の軸方向片側面に、圧入やねじ止め、溶接などにより支持固定することもできる。
【0063】
なお、本発明の逆入力遮断クラッチを実施する場合、係合子の数を、1個または3個以上とすることもできる。
【0064】
また、入力部材、出力部材、被押圧部材、係合子、および、補強プレートの材質は、特に限定されない。たとえば、これらの材質としては、鉄合金、銅合金、アルミニウム合金などの金属のほか、必要に応じて強化繊維を混入した合成樹脂などでも良い。また、入力部材、出力部材、被押圧部材、係合子、および、補強プレートのそれぞれで、同じ材質にしても良いし、異なる材質にしても良い。
【0065】
[第2例]
図8図14は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の逆入力遮断クラッチ1aは、被押圧部材2と、入力部材3aと、補強プレート4aと、出力部材5と、1対の係合子6aとを備える。
【0066】
入力部材3aは、入力側基部8aと、1対の入力側係合部9aと、1対の補強軸部10と、入力軸部12とを有する。入力側基部8aは、径方向反対側2箇所に、円孔である入力側支持孔11aを有する。それぞれの入力側係合部9aは、円柱形状を有する。
【0067】
補強プレート4aは、1対の入力側係合部9aの軸方向片側の端部と、1対の補強軸部10の軸方向片側の端部とにかけ渡されている。補強プレート4aは、中央部に、軸方向に貫通する円孔13を備え、かつ、該円孔13を挟んだ径方向反対側2箇所位置に、軸方向に貫通する円孔であるプレート側支持孔14aを有する。プレート側支持孔14aは、軸方向片側の大径部59と軸方向他側の小径部60とを、軸方向片側を向いた段部61により接続してなる段付孔により構成されている。
【0068】
入力部材3aと補強プレート4aとは、入力側基部8a、1対の補強軸部10、入力軸部12、および補強プレート4aを一体に備える本体部材15aと、それぞれが段付円柱状の1対の係合部材16aとを組み合わせることにより構成されている。それぞれの係合部材16aは、頭部62と、該頭部62の軸方向他側面の中央部から軸方向他側に向けて突出する軸部63とを有する。本体部材15aと1対の係合部材16aとは、それぞれの係合部材16aの軸部63の先端部(軸方向他側の端部)を入力側支持孔11aに内嵌し、かつ、頭部62をプレート側支持孔14aの大径部59に内嵌した状態で、軸部63の先端部に止め輪を装着したりかしめたりして、軸方向片側への変位を阻止することで結合固定されている。1対の入力側係合部9aは、1対の係合部材16aのうち、入力側基部8の軸方向片側面から軸方向片側に突出した部分により構成されている。
【0069】
それぞれの係合子6aは、係合子本体28と、1対のリンク部材29と、揺動支持軸30とを備える。
【0070】
係合子本体28は、軸方向から見て略弓形または略扇形の端面形状を有する。係合子本体28は、被押圧面7に対向する押圧面20と、出力側被係合部22と、揺動支持部31と、挿通孔32とを備える。すなわち、係合子本体28は、入力側被係合部21を有さない点、並びに、揺動支持部31および挿通孔32を有する点以外は、第1例の係合子6と基本的に同じ構成を備える。
【0071】
揺動支持部31は、係合子本体28の幅方向中央部の径方向外側部に備えられている。揺動支持部31は、揺動支持軸30を介して1対のリンク部材29を揺動可能に支持するための部分である。本例では、揺動支持部31は、係合子本体28の幅方向中央部の径方向外側部を軸方向に貫通する円孔により構成されている。
【0072】
挿通孔32は、係合子本体28の幅方向中央部の径方向内側部を軸方向に貫通し、かつ、円周方向に伸長する円弧形の長孔により構成されている。挿通孔32は、入力側係合部9aを緩く挿入できる大きさを有する。具体的には、挿通孔32の内側に入力側係合部9aを挿入した際に、入力側係合部9aと挿通孔32の内面との間に、円周方向に関する隙間および第1方向に関する隙間が存在する。このため、入力側係合部9aは、前記円周方向に関する隙間の存在に基づいて、係合子本体28に対し、入力部材3aの回転方向に関する変位が可能であり、係合子本体28は、前記第1方向に関する隙間の存在に基づいて、入力側係合部9aに対し、第1方向の変位が可能である。換言すれば、逆入力遮断クラッチ1aの動作時に、挿通孔32の内周縁と入力側係合部9aとが干渉して該動作が阻害されることがないように、挿通孔32の大きさが設定されている。
【0073】
1対のリンク部材29は、係合子本体28の軸方向両側に配置されている。リンク部材29のそれぞれは、鋼板などの金属板にプレス加工による打ち抜き加工を施して造られたプレス成形品であって、略矩形板形状または略長円板形状を有する。リンク部材29のそれぞれは、その長手方向に関する一方側部分(係合子本体28の径方向に関する内側部分)に入力側被係合部21aを有し、かつ、その長手方向に関する他方側部分(係合子本体28の径方向に関する外側部分)に揺動被支持部33を有する。入力側被係合部21aは、リンク部材29を軸方向に貫通する円孔により構成され、かつ、揺動被支持部33は、リンク部材29を軸方向に貫通する円孔により構成されている。
【0074】
入力側被係合部21aには、入力側係合部9aが挿通されている。これにより、リンク部材29の長手方向に関する一方側部分が、入力側係合部9aに対し揺動可能に接続されている。
【0075】
揺動支持軸30は、円柱形状を有し、係合子本体28の揺動支持部31と、1対のリンク部材29のそれぞれの揺動被支持部33とに挿通されている。これにより、リンク部材29のそれぞれの長手方向に関する他方側部分が、揺動支持軸30を介して、係合子本体28の揺動支持部31に揺動可能に支持されている。本例では、揺動支持軸30は、軸方向中間部を、係合子本体28の揺動支持部31に圧入し、かつ、軸方向両側部を、リンク部材29のそれぞれの揺動被支持部33に、相対回転可能に内嵌している。
【0076】
本例の逆入力遮断クラッチ1aを組み立てる際には、まず、係合子本体28の軸方向両側に1対のリンク部材29を配置し、揺動支持部31と揺動被支持部33とに揺動支持軸30を挿通することで、1対の係合子6aを組み立てる。次いで、それぞれの係合子6aを、本体部材15aの入力側基部8aと補強プレート4aとの間部分に配置する。次に、1対の係合部材16aを、軸方向片側から、プレート側支持孔14a、軸方向片側のリンク部材29の入力側被係合部21a、挿通孔32、軸方向他側のリンク部材29の入力側被係合部21a、および入力側支持孔11aの順およびに挿入する。これにより、それぞれの係合部材16aのうち、軸部63の先端部を入力側支持孔11aに内嵌し、かつ、頭部62をプレート側支持孔14aの大径部59に内嵌する。この状態では、それぞれの係合部材16aの頭部62の軸方向他側面と、プレート側支持孔14aの段部61との係合により、それぞれの係合部材16aの軸方向他側への変位が阻止される。そして、軸部63の先端部のうち、入力側基部8aの軸方向他側面から突出した部分に止め輪を装着するか、あるいは、当該部分をかしめるなどして、それぞれの係合部材16aの軸方向片側への変位を阻止する。これにより、本体部材15aおよび1対の係合部材16aと、1対の係合子6aとが、不用意に分離しないように組み合わされる。
【0077】
次いで、出力部材5の軸方向他側の端部に備えられた出力側係合部17を、補強プレート4aの円孔13を通じて軸方向片側から挿入し、1対の係合子6aの出力側被係合部22同士の間に配置する。最後に、係合子6aの周囲に被押圧部材2を配置する。なお、逆入力遮断クラッチ1aの組立手順は、矛盾を生じない限り、順番を入れ替えたり、同時に実施したりすることができる。
【0078】
本例の逆入力遮断クラッチ1aでは、入力部材3aに回転トルクが入力されると、図12に示すように、入力側係合部9aが入力部材3aの回転方向(図12の例では反時計方向)に回転する。すると、1対のリンク部材29がそれぞれ、揺動支持軸30を中心に揺動しつつ、入力側係合部9aによって、リンク部材29を介して揺動支持軸30が引っ張られることにより、係合子本体28が、被押圧面7から遠ざかる方向(径方向内側)にそれぞれ移動する。これにより、1対の係合子本体28のそれぞれの押圧面20が被押圧面7から離れ、かつ、1対の出力側被係合部22が出力部材5の出力側係合部17を径方向両側から挟持し、出力側係合部17と1対の出力側被係合部22とが、がたつきなく係合する。この結果、入力部材3aに入力された回転トルクが、1対の係合子6aを介して、出力部材5に伝達され、出力部材5から出力される。
【0079】
一方、出力部材5に回転トルクが逆入力されると、図13に示すように、出力側係合部17が、1対の出力側被係合部22同士の内側で、出力部材5の回転方向(図13の例では時計方向)に回転する。すると、出力側係合部17の角部が、出力側被係合部22の底面を径方向外側に向けて押圧し、1対の係合子本体28を、被押圧面7に近づく方向(径方向外側)にそれぞれ移動させる。これにより、1対の係合子本体28のそれぞれの押圧面20が、被押圧面7に対して押し付けられ、それぞれの押圧面20が被押圧面7に摩擦係合する。この結果、出力部材5に逆入力された回転トルクが、他の部材に固定されて回転しない被押圧部材2に伝わることで完全に遮断されて入力部材3aに伝達されないか、または、出力部材5に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材3aに伝達され残部が遮断される。
【0080】
本例の逆入力遮断クラッチ1aによれば、入力部材3aへの回転トルクの入力時に、入力部材3aから係合子本体28に作用する荷重の方向を、ロック状態または半ロック状態からロック解除状態または半ロック解除状態への切り換え時に、押圧面20を有する係合子本体28が移動すべき方向である第1方向とほぼ平行にすることができる。このため、入力部材3aへの回転トルクの入力時に、ロック状態または半ロック状態からロック解除状態または半ロック解除状態への切り換えを円滑に行うことができる。
【0081】
さらに、本例では、入力側係合部9aの軸方向片側の端部と、補強軸部10の軸方向片側の端部との間に補強プレート4aをかけ渡しているため、入力部材3aに回転トルクが入力された場合に、入力側係合部9aが捩れ方向に弾性変形するのを防止することができる。これにより、係合子6aが傾くことを防止でき、係合子6aの押圧面20と、被押圧部材2の被押圧面7との接触状態を適正に維持することができる。その他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0082】
[第3例]
図15図20は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の逆入力遮断クラッチ1bは、被押圧部材2aと、入力部材3bと、1対の補強プレート4bと、出力部材5aと、1対の係合子6bとを備える。
【0083】
被押圧部材2aは、軸方向他側に配置された第1素子34と、軸方向片側に配置された第2素子35とを、図示しない複数本の結合ボルトにより結合することで、全体として中空円盤状に構成されている。
【0084】
第1素子34は、円筒状の第1大径筒部37と、円筒状の第1小径筒部38と、中空円形平板状の第1側板部39と、フランジ部40とを備える。
【0085】
第1大径筒部37は、内周面に被押圧面7を有する。被押圧面7は、第1素子34の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。
【0086】
第1大径筒部37は、フランジ部40よりも軸方向片側に位置する部分である軸方向片側の端部の外周面に、内径側嵌合面41を有する。内径側嵌合面41は、第1素子34の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。
【0087】
第1小径筒部38は、第1大径筒部37の軸方向他側に、第1大径筒部37と同軸に配置されている。第1小径筒部38は、内周面の軸方向片側の端部から中間部にかけての部分に、第1軸受嵌合面42を有する。第1軸受嵌合面42は、第1素子34の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。すなわち、被押圧面7と内径側嵌合面41と第1軸受嵌合面42とは、互いに同軸に配置されている。
【0088】
第1側板部39は、軸方向から見て中空円形の端面形状を有し、第1大径筒部37の軸方向他側の端部と第1小径筒部38の軸方向片側の端部とを接続する。すなわち、第1側板部39の径方向外側の端部が第1大径筒部37の軸方向他側の端部に接続され、かつ、第1側板部39の径方向内側の端部が第1小径筒部38の軸方向片側の端部に接続されている。
【0089】
フランジ部40は、第1大径筒部37の軸方向中間部から径方向外側に向けて突出している。フランジ部40は、円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する通孔36を有する。本例では、フランジ部40は、円周方向8箇所に、軸方向に貫通する通孔36を有する。
【0090】
第2素子35は、円筒状の第2大径筒部43と、円筒状の第2小径筒部44と、中空円形平板状の第2側板部45と、複数個の取付部46とを備える。
【0091】
第2大径筒部43は、軸方向他側部分の内周面に、外径側嵌合面47を有する。外径側嵌合面47は、第2素子35の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。外径側嵌合面47は、第1素子34の内径側嵌合面41に対して、がたつきなく嵌合することが可能な内径寸法を有する。
【0092】
また、第2大径筒部43は、第1素子34の通孔36と整合する円周方向複数箇所に、軸方向に貫通するねじ孔を有する。本例では、第2大径筒部43は、第1素子34に備えられた8個の通孔36と整合する円周方向8箇所に、ねじ孔を有する。
【0093】
第2小径筒部44は、第2大径筒部43の軸方向片側に、第2大径筒部43と同軸に配置されている。第2小径筒部44は、内周面の軸方向他側の端部から中間部にかけての部分に、第2軸受嵌合面48を有する。第2軸受嵌合面48は、第2素子35の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。すなわち、外径側嵌合面47と第2軸受嵌合面48とは、互いに同軸に配置されている。
【0094】
第2側板部45は、軸方向から見て中空円形の端面形状を有し、第2大径筒部43の軸方向片側の端部と第2小径筒部44の軸方向他側の端部とを接続する。すなわち、第2側板部45の径方向外側の端部が第2大径筒部43の軸方向片側の端部に接続され、かつ、第2側板部45の径方向内側の端部が第2小径筒部44の軸方向他側の端部に接続されている。
【0095】
それぞれの取付部46は、円周方向複数箇所に備えられている。本例では、4個の取付部46が、円周方向等間隔に備えられている。取付部46は、第2大径筒部43の外周面から径方向外側に向けて突出する突出部49と、該突出部49を軸方向に貫通する取付孔50とを有する。
【0096】
被押圧部材2aは、第1素子34の内径側嵌合面41を、第2素子35の外径側嵌合面47にがたつきなく嵌合させ、かつ、第1素子34のフランジ部40の軸方向片側の側面を、第2素子35の第2大径筒部43の軸方向他側の端面に当接させた状態で、第1素子34に備えられた通孔36に挿通した結合ボルトを、第2素子35に備えられたねじ孔に螺合し、さらに締め付けることにより、第1素子34と第2素子35とを結合固定することによって構成されている。
【0097】
本例では、第1素子34の内径側嵌合面41と第1軸受嵌合面42とが互いに同軸に配置され、かつ、第2素子35の外径側嵌合面47と第2軸受嵌合面48とが互いに同軸に配置されている。このため、内径側嵌合面41と外径側嵌合面47とをがたつきなく嵌合させた、被押圧部材2aの組立状態で、第1軸受嵌合面42と第2軸受嵌合面48とは、互いに同軸に配置される。
【0098】
入力部材3bは、入力側基部8bと、1対の入力側係合部9aと、1対の補強軸部10aと、入力軸部12aとを有する。
【0099】
入力側基部8bは、円形板状に構成されている。本例では、入力側基部8aは、径方向反対側2箇所に、円孔である入力側支持孔11aを有し、かつ、それぞれの入力側支持孔11aから円周方向片側(図19の反時計方向前側)に外れた部分に、入力側嵌合孔51を有する。
【0100】
それぞれの入力側係合部9aは、円柱形状を有する。それぞれの入力側係合部9aは、後述する係合部材16aの軸方向中間部および軸方向片側の端部により構成されている。
【0101】
それぞれの補強軸部10aは、入力側基部8bの軸方向片側面のうち、入力側係合部9aから円周方向片側に外れた1箇所から軸方向片側に向けて突出している。本例では、軸方向中間部に大径部52aを有し、かつ、軸方向両側の端部に小径部52bを有する段付円柱部材52の軸方向他側の端部(小径部52b)を、入力側基部8bの入力側嵌合孔51に圧入固定し、段付円柱部材52のうち、入力側基部8bの軸方向片側面から軸方向片側に突出した部分(大径部52aおよび軸方向片側の小径部52b)により、補強軸部10aが構成されている。
【0102】
入力軸部12aは、入力側基部8bの軸方向他側面の中央部から軸方向他側に向けて突出している。入力軸部12aは、軸方向他側部分に、入力側機構の出力部にトルク伝達可能に接続するためのシャンク部53aを有する。本例では、シャンク部53aは、外周面に互いに平行な1対の平坦面を含む二面幅形状を有する。ただし、シャンク部は、前記入力側機構の出力部にトルク伝達可能に接続することができれば、任意の形状とすることができる。
【0103】
本例では、入力部材3bは、入力側基部8bおよび入力軸部12aを一体に備える本体部材15bと、それぞれが円柱状の1対の係合部材16aと、1対の段付円柱部材52とを組み合わせることにより構成されている。すなわち、それぞれの係合部材16aの軸方向他側の端部を入力側支持孔11aに圧入固定し、かつ、それぞれの段付円柱部材52の軸方向他側の端部を、入力側嵌合孔51に圧入固定して、本体部材15aと1対の係合部材16aと1対の段付円柱部材52とを結合固定することにより、入力部材3bを構成している。
【0104】
入力部材3bは、被押圧部材2aの第1素子34の径方向内側に回転自在に支持されている。具体的には、入力軸部12aの軸方向片側部分の外周面と、第1素子34の第1軸受嵌合面42との間に第1軸受54を配置することで、入力部材3bが被押圧部材2aに対し回転自在に支持されている。入力部材3bが被押圧部材2aに対し回転自在に支持された状態で、入力側係合部9aは、被押圧面7の径方向内側に配置されている。
【0105】
それぞれの補強プレート4bは、1個の入力側係合部9aの軸方向片側の端部と、補強軸部10aの軸方向片側の端部とにかけ渡されている。すなわち、それぞれの補強プレート4bは、軸方向から見て略弓形の端面形状を有し、1個の入力側係合部9aの軸方向片側の端部と、該1個の入力側係合部9aから円周方向片側に外れた部分に位置する1個の補強軸部10aの軸方向片側の端部とにかけ渡されている。このために、補強プレート4bは、第2方向に関する中央部に、入力側係合部9aの軸方向片側の端部を圧入するためのプレート側支持孔を有し、かつ、該プレート側支持孔から円周方向片側に外れた部分に、補強軸部10aの軸方向片側の端部を圧入するためのプレート側嵌合孔を有する。
【0106】
出力部材5aは、出力側軸部55と、出力側係合部17aとを有する。
【0107】
出力側軸部55は、軸方向他側の端部に、径方向外側に向けて突出するフランジ部58を有し、かつ、軸方向片側部分に、前記出力側機構の入力部にトルク伝達可能に接続するためのシャンク部53bを有する。本例では、シャンク部53bは、外周面に互いに平行な1対の平坦面を含む二面幅形状を有する。ただし、シャンク部は、出力側機構の入力部にトルク伝達可能に接続することができれば、任意の形状とすることができる。
【0108】
出力側係合部17aは、カム機能を有する。すなわち、出力部材5の回転中心Oから出力側係合部17aの外周面までの距離は、円周方向に関して一定でない。本例では、出力側係合部17aは、軸方向から見て略矩形または略長円形の端面形状を有し、出力側軸部55の軸方向他側の端面の中央部から軸方向他側に向けて突出している。
【0109】
出力部材5aは、被押圧部材2aの第2素子35の径方向内側に回転自在に支持されている。具体的には、出力側軸部55の軸方向他側部分の外周面と、第2素子35の第2軸受嵌合面48との間に第2軸受56を配置することで、出力部材5aが被押圧部材2aに対し回転自在に支持されている。出力部材5aが被押圧部材2aに対し回転自在に支持された状態で、出力側係合部17aは、被押圧面7の径方向内側に配置されている。
【0110】
それぞれの係合子6bは、係合子本体28aと、1対のリンク部材29と、揺動支持軸30とを備える。
【0111】
係合子本体28aは、被押圧面7に対向する1対の押圧面20aと、出力側被係合部22と、揺動支持部31と、挿通孔32と、通孔57とを備える。すなわち、係合子本体28aは、押圧面20aを1対有する点、並びに、通孔57を有する点以外は、第2例の係合子本体28と基本的に構成を備える。
【0112】
1対の押圧面20aは、係合子本体28aの径方向外側面のうち、円周方向に離隔した2箇所位置に備えられている。
【0113】
通孔57は、係合子本体28aのうち、揺動支持部31から円周方向片側に外れた部分に、軸方向に貫通するように備えられている。本例では、通孔57は、大径部52aの外径よりも大きい内径を有する円孔により構成されている。具体的には、逆入力遮断クラッチ1bの動作時に、通孔57の内周縁と大径部52aとが干渉して該動作が阻害されることがないように、通孔57の大きさが設定されている。
【0114】
本例の逆入力遮断クラッチ1bを組み立てる際には、まず、係合子本体28aの軸方向両側に1対のリンク部材29を配置し、揺動支持部31と揺動被支持部33とに揺動支持軸30を挿通することで、1対の係合子6bを組み立てる。また、それぞれの係合子本体28bの通孔57に、段付円柱部材52の大径部52aを挿通する。
【0115】
次いで、それぞれの係合子6bの軸方向両側に、本体部材15aの入力側基部8bと補強プレート4bとを配置する。そして、段付円柱部材52の軸方向他側の小径部52bを入力側基部8bの入力側嵌合孔51に内嵌固定し、かつ、軸方向片側の小径部52bをプレート側嵌合孔に内嵌固定する。
【0116】
また、1対の係合部材16aを、入力側支持孔11a、軸方向他側のリンク部材29の入力側被係合部21a、挿通孔32、軸方向片側のリンク部材29の入力側被係合部21a、およびプレート側支持孔14aに挿入する。これにより、係合部材16aのうち、軸方向他側の端部を入力側支持孔11aに内嵌固定し、かつ、軸方向片側の端部をプレート側支持孔14aに内嵌固定する。
【0117】
次いで、入力部材3bを第1素子34に対して、第1軸受54を介して回転自在に支持する。
【0118】
また、出力部材5aを第2素子35に対して、第2軸受56を介して回転自在に支持する。
【0119】
次に、第1素子34と第2素子35とを軸方向に互いに近づける。これにより、出力部材5aの軸方向他側の端部に備えられた出力側係合部17aを、1対の補強プレート4a同士の間を通じて軸方向片側から挿入し、1対の係合子6bの出力側被係合部22同士の間に配置する。また、第1素子34の内径側嵌合面41と第2素子35の外径側嵌合面47とをインロー嵌合させる。そして、第1素子34と第2素子35とを結合ボルトにより結合固定することで、被押圧部材2aを構成する。なお、逆入力遮断クラッチ1bの組立手順は、矛盾を生じない限り、順番を入れ替えたり、同時に実施したりすることができる。
【0120】
本例の逆入力遮断クラッチ1bにおいても、入力側係合部9aの軸方向片側の端部と、補強軸部10aの軸方向片側の端部との間に補強プレート4aがかけ渡されている。このため、入力部材3bに回転トルクが入力された場合に、入力側係合部9aが捩れ方向に弾性変形するのを防止することができる。これにより、係合子6bが傾くことを防止でき、係合子6bの1対の押圧面20aと、被押圧部材2aの被押圧面7との接触状態を適正に維持することができる。その他の部分の構成および作用効果は、第1例および第2例と同様である。
【0121】
[第4例]
図21図23は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の逆入力遮断クラッチ1cでは、入力部材3cは、入力側基部8cと、1対の入力側係合部9aと、4個の補強軸部10aと、入力軸部12aとを有する。
【0122】
入力側基部8cは、円形板状に構成されている。本例では、入力側基部8cは、径方向反対側2箇所に、円孔である入力側支持孔11aを有し、かつ、それぞれの入力側支持孔11aの円周方向両側部分に、入力側嵌合孔51aを1対ずつ有する。
【0123】
それぞれの補強軸部10aは、入力側基部8cの軸方向片側面のうち、それぞれの入力側係合部9aの円周方向両側部分、すなわち第2方向に関して、それぞれの入力側係合部9aを挟んだ2箇所位置から軸方向片側に向けて突出している。本例では、軸方向中間部に大径部52aと有し、かつ、軸方向両側の端部に小径部52bを有する段付円柱部材52の軸方向他側の端部(小径部52b)を、入力側基部8cの入力側嵌合孔51aに圧入固定し、段付円柱部材52のうち、入力側基部8cの軸方向片側面から軸方向片側に突出した部分(大径部52aおよび軸方向片側の小径部52b)により、補強軸部10aが構成されている。
【0124】
本例の逆入力遮断クラッチ1cは、補強プレート4cを1対備える。それぞれの補強プレート4cは、1個の入力側係合部9aの軸方向片側の端部と、該1個の入力側係合部9aの円周方向両側に配置された1対の補強軸部10aの軸方向片側の端部とにかけ渡されている。このために、補強プレート4cは、第2方向に関する中央部に、入力側係合部9aの軸方向片側の端部を圧入するためのプレート側支持孔を有し、かつ、該プレート側支持孔の円周方向両側部分に、1対の補強軸部10aの軸方向片側の端部を圧入するための1対のプレート側嵌合孔を有する。
【0125】
また、本例では、1対の係合子6cの係合子本体28bは、段付円柱部材52の大径部52aを挿通するための通孔57を、揺動支持部31の円周方向両側部分に有する。
【0126】
本例の逆入力遮断クラッチ1cでは、補強プレート4bを、1個の入力側係合部9aの軸方向片側の端部と、該1個の入力側係合部9aの円周方向両側に配置された1対の補強軸部10aの軸方向片側の端部とにかけ渡している。このため、入力部材3cに回転トルクが入力された場合に、入力側係合部9aが捩れ方向に弾性変形することに対する合成を、第3例の逆入力遮断クラッチ1bと比較して高くすることができる。その他の部分の構成および作用効果については、第1例~第3例と同様である。
【0127】
上述した実施の形態の第1例~第4例は、矛盾を生じない限り、適宜組み合わせて実施することができる。
【0128】
なお、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
本発明の第1態様にかかる逆入力遮断クラッチは、
内周面に被押圧面を有する被押圧部材と、
入力側基部と、前記被押圧面の径方向内側に配置され、かつ、前記入力側基部の軸方向片側面から軸方向片側に向けて突出する入力側係合部と、前記入力側基部の軸方向片側面のうち、前記入力側係合部から円周方向に外れた部分から軸方向片側に向けて突出する補強軸部とを有し、前記被押圧面と同軸に配置された入力部材と、
前記入力側係合部の軸方向片側の端部と前記補強軸部の軸方向片側の端部とにかけ渡された補強プレートと、
前記被押圧面の径方向内側において前記入力側係合部よりも径方向内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置された出力部材と、
前記被押圧面に対向する押圧面と、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部とを有し、軸方向に関して前記入力側基部と前記補強プレートとの間部分に、前記被押圧面に対する遠近方向である第1方向の移動を可能に配置された係合子と、
を備え、
前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合することに基づいて、前記第1方向に関して前記被押圧面から離れる方向に変位し、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させることで、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力側被係合部に前記出力側係合部が係合することに基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付けて、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させるものである。
【0129】
本発明の第2態様にかかる逆入力遮断クラッチは、前記第1態様において、
前記係合子を複数備え、
前記入力部材が、前記入力側係合部を、前記係合子と同数有し、かつ、前記補強軸部を、前記係合子と同数、または、前記係合子の個数の整数倍有することができる。
【0130】
本発明の第3態様にかかる逆入力遮断クラッチは、前記第2態様において、
前記係合子を1対備えることができる。
【0131】
本発明の第4態様にかかる逆入力遮断クラッチは、前記第2態様または前記第3態様において
前記補強プレートを、すべての前記入力側係合部とすべての前記補強軸部とにかけ渡すことができる。
【0132】
本発明の第5態様にかかる逆入力遮断クラッチは、前記第1態様~前記第4態様のうちのいずれかの態様において、
前記係合子が、前記補強軸部を挿通する通孔を有することができる。
【0133】
本発明の第6態様にかかる逆入力遮断クラッチは、前記第5態様において、
前記入力部材が、前記補強軸部を、軸方向と前記第1方向とに直交する第2方向に関して前記入力側係合部を挟んだ2箇所位置に有することができる。
【0134】
本発明の第7態様にかかる逆入力遮断クラッチは、前記第1態様~前記第6態様のうちのいずれかの態様において、
前記係合子が、
前記押圧面と、前記出力側係合部と、揺動支持部とを有する係合子本体と、
前記入力側被係合部と、前記揺動支持部に揺動可能に支持された揺動被支持部とを有するリンク部材とを備えることができる。
【0135】
本発明の第8態様にかかる逆入力遮断クラッチは、前記第7態様において、
前記係合子が、前記リンク部材を1対有し、
1対の前記リンク部材を、前記係合子本体の軸方向両側に配置することができる。
【符号の説明】
【0136】
1、1a、1b、1c 逆入力遮断クラッチ
2、2a 被押圧部材
3、3a、3b、3c 入力部材
4、4a、4b、4c 補強プレート
5、5a 出力部材
6、6a、6b、6c 係合子
7 被押圧面
8、8a、8b、8c 入力側基部
9、9a 入力側係合部
10、10a 補強軸部
11、11a 入力側支持孔
12、12a 入力軸部
13 円孔
14、14a プレート側支持孔
15、15a 本体部材
16、16a 係合部材
17 出力側係合部
18 平坦面
19 凸曲面
20、20a 押圧面
21、21a 入力側被係合部
22 出力側被係合部
23 平坦面
24 凸部
25 底面
26 凹曲面
27 保持凸部
28、28a、28b 係合子本体
29 リンク部材
30 揺動支持軸
31 揺動支持部
32 挿通孔
33 揺動被支持部
34 第1素子
35 第2素子
37 第1大径筒部
38 第1小径筒部
39 第1側板部
40 フランジ部
41 内径側嵌合面
42 第1軸受嵌合面
43 第2大径筒部
44 第2小径筒部
45 第2側板部
46 取付部
47 外径側嵌合面
48 第2軸受嵌合面
49 突出部
50 取付孔
51、51a 入力側嵌合孔
52 段付円柱部材
52a 大径部
52b 小径部
53a、53b シャンク部
54 第1軸受
55 出力側軸部
56 第2軸受
57 通孔
58 フランジ部
59 大径部
60 小径部
61 段部
62 頭部
63 軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23