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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175539
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】冷却油循環システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/02 20060101AFI20231205BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20231205BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20231205BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20231205BHJP
【FI】
B60K11/02 ZHV
H02K9/19 A
B60L15/20 J
F16H57/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088028
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野沢 智
【テーマコード(参考)】
3D038
3J063
5H125
5H609
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC23
3J063AA01
3J063AA04
3J063BA15
3J063CA01
3J063XD03
3J063XH03
3J063XH23
3J063XH32
3J063XJ03
5H125AA01
5H125FF22
5H125FF27
5H609BB01
5H609BB16
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP17
5H609QQ05
5H609QQ11
5H609RR50
5H609RR52
5H609RR54
5H609SS20
5H609SS21
5H609SS23
(57)【要約】
【課題】暖機時間の短縮化を図ることが可能な冷却油循環システムを提供すること。
【解決手段】冷却油循環システム10は、冷却油を貯蔵するオイルパン31と、冷却油を貯蔵するオイルタンク32と、オイルパン31から冷却油を吸引して電動駆動機構2に送出するオイルポンプと、電動駆動機構2から排出された冷却油をオイルパン31に流す第1流路A1と、第1流路A1から分岐し、冷却油をオイルタンク32を介してオイルパン31に流す第2流路A2と、第2流路A2の冷却油の流れを遮断する第1状態と第2流路A2の冷却油の流れを連通する第2状態とを切換えるバルブ11と、バルブを第1状態又は第2状態に切換える制御を実行する制御部40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された駆動装置に冷却油を供給して冷却を行う冷却油循環システムにおいて、
冷却油を貯蔵する第1油貯蔵部と、
冷却油を貯蔵する第2油貯蔵部と、
前記第1油貯蔵部から冷却油を吸引して前記駆動装置に送出するオイルポンプと、
前記駆動装置から排出された冷却油を前記第1油貯蔵部に流す第1流路と、
前記第1流路から分岐し、冷却油を前記第2油貯蔵部を介して前記第1油貯蔵部に流す第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路に介在し、前記第2流路の冷却油の流れを遮断する第1状態と、前記第2流路の冷却油の流れを連通する第2状態と、を切換える切換え部と、
前記切換え部を前記第1状態又は前記第2状態に切換える制御を実行する制御部と、を備える、
冷却油循環システム。
【請求項2】
車両に搭載された駆動装置に冷却油を供給して冷却を行う冷却油循環システムにおいて、
冷却油を貯蔵する第1油貯蔵部と、
冷却油を貯蔵する第2油貯蔵部と、
前記第1油貯蔵部から冷却油を吸引して前記駆動装置に送出するオイルポンプと、
前記駆動装置から排出された冷却油を前記第1油貯蔵部に流す第1流路と、
前記第1流路から分岐し、冷却油を前記第2油貯蔵部を介して前記第1油貯蔵部に流す第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路に介在し、油温に応じて、前記第2流路の冷却油の流れを遮断する第1状態と、前記第2流路の冷却油の流れを連通する第2状態と、に切換える切換え部と、を備える、
冷却油循環システム。
【請求項3】
前記第1流路に介在し、冷却油を冷却する第1オイルクーラと、
前記第2流路に介在し、冷却油を冷却する第2オイルクーラと、を備える、
請求項1又は2に記載の冷却油循環システム。
【請求項4】
前記切換え部は、前記第2流路において、前記第2油貯蔵部よりも下流側に配置された、
請求項3に記載の冷却油循環システム。
【請求項5】
前記切換え部は、第1切換え部であり、
冷却油を冷却する第1オイルクーラと、
前記第2流路に介在し、冷却油を冷却する第2オイルクーラと、
前記第1流路から分岐し、冷却油を前記第1オイルクーラを介して前記第1切換え部に流す第3流路と、
前記第1流路及び第3流路に介在し、前記第3流路の冷却油の流れを遮断する第3状態と、前記第3流路の冷却油の流れを連通する第4状態と、に切換え可能な第2切換え部と、を備える、
請求項1又は2に記載の冷却油循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に冷却油を供給して冷却を行う冷却油循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車やハイブリッド車両等には、駆動源としてのモータ・ジェネレータ(以下、単に「モータ」という)が搭載されており、このようなモータを冷却するため、モータに冷却油を供給して循環させるものがある(特許文献1参照)。この特許文献1においては、モータの予測発熱量を算出し、その予測発熱量に応じてオイルポンプや絞り弁によりモータに供給する冷却油の流量を増減させることで、必要なエネルギーでモータの冷却を適切に行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-207957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば特許文献1のようなハイブリッド駆動装置や電動駆動装置等の駆動装置では、冷却油の温度が低いと油の粘性に起因する伝動効率の低下を招いたり、正常な動作の妨げを招いたりする虞もあるため、暖気を行う必要があり、かつなるべく暖機時間を短縮化することが望まれる。しかしながら、上記特許文献1のものはモータの温度を調整することは可能であるものの、暖機時間を短縮化することについては何ら考えられていない。
【0005】
そこで本発明は、暖機時間の短縮化を図ることが可能な冷却油循環システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車両に搭載された駆動装置に冷却油を供給して冷却を行う冷却油循環システムにおいて、
冷却油を貯蔵する第1油貯蔵部と、
冷却油を貯蔵する第2油貯蔵部と、
前記第1油貯蔵部から冷却油を吸引して前記駆動装置に送出するオイルポンプと、
前記駆動装置から排出された冷却油を前記第1油貯蔵部に流す第1流路と、
前記第1流路から分岐し、冷却油を前記第2油貯蔵部を介して前記第1油貯蔵部に流す第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路に介在し、前記第2流路の冷却油の流れを遮断する第1状態と、前記第2流路の冷却油の流れを連通する第2状態と、を切換える切換え部と、
前記切換え部を前記第1状態又は前記第2状態に切換える制御を実行する制御部と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様は、
車両に搭載された駆動装置に冷却油を供給して冷却を行う冷却油循環システムにおいて、
冷却油を貯蔵する第1油貯蔵部と、
冷却油を貯蔵する第2油貯蔵部と、
前記第1油貯蔵部から冷却油を吸引して前記駆動装置に送出するオイルポンプと、
前記駆動装置から排出された冷却油を前記第1油貯蔵部に流す第1流路と、
前記第1流路から分岐し、冷却油を前記第2油貯蔵部を介して前記第1油貯蔵部に流す第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路に介在し、油温に応じて、前記第2流路の冷却油の流れを遮断する第1状態と、前記第2流路の冷却油の流れを連通する第2状態と、に切換える切換え部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、暖機時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る冷却油循環システムを示す模式図。
図2】第1の実施の形態に係る冷却切換え制御を示すフローチャート。
図3】第2の実施の形態に係る冷却油循環システムを示す模式図。
図4】第3の実施の形態に係る冷却油循環システムを示す模式図。
図5】第3の実施の形態に係る冷却切換え制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施の形態>
以下、第1の実施の形態に係る冷却油循環システムについて、図1及び図2を用いて説明する。図1は第1の実施の形態に係る冷却油循環システムを示す模式図、図2は第1の実施の形態に係る冷却切換え制御を示すフローチャートである。
【0011】
[車両及び冷却油循環システムの構成]
図1に示すように、例えば電気自動車である車両1には、図示を省略した車両1の走行駆動力を出力する回転電機(以下、「モータ」という)、そのモータの回転を変速して車輪に伝達する不図示のギヤ部等を有する駆動装置としての電動駆動機構(eAxle)2が備えられている。また、車両1には、この電動駆動機構2に冷却油を循環させる冷却油循環システム10が備えられている。なお、冷却油循環システム10は、ユニット化されて電動駆動機構2に一体的に取付けられている。
【0012】
冷却油循環システム10は、第1油貯蔵部としてのオイルパン31と、オイルポンプとしての電動オイルポンプ12と、切換え部としてのバルブ11と、第2油貯蔵部としてのオイルタンク32と、第1オイルクーラ21と、第2オイルクーラ22と、を備えている。
【0013】
また、冷却油循環システム10は、オイルパン31から電動オイルポンプ12まで冷却油を流すように連通する流路L1、電動オイルポンプ12から電動駆動機構2まで冷却油を流すように連通する流路L2、電動駆動機構2からバルブ11まで冷却油を流すように連通する流路L3、バルブ11から合流部X1まで冷却油を流すように連通する流路L4、合流部X1から第1オイルクーラ21まで冷却油を流すように連通する流路L5、第1オイルクーラ21からオイルパン31まで冷却油を流すように連通する流路L6、を備えている。なお、本第1の実施の形態においては、流路L3,L4,L5,L6が、電動駆動機構2から排出された冷却油をオイルパンに流す第1流路A1を構成している。
【0014】
さらに、冷却油循環システム10は、バルブ11から第2オイルクーラ22まで冷却油を流すように連通する流路L11、第2オイルクーラ22からオイルタンク32まで冷却油を流すように連通する流路L12、オイルタンク32から合流部X1まで冷却油を流すように連通する流路L13、を備えている。なお、本第1の実施の形態においては、流路L11,L12,L13が、上記第1流路A1(流路L3)から分岐し、冷却油をオイルタンク32を介してオイルパン31に流す第2流路A2を構成している。また、本第1の実施の形態においては、バルブ11が第1流路A1から第2流路A2として分岐する分岐部を構成し、合流部X1が、第1流路A1に第2流路A2が合流する合流部を構成している。
【0015】
詳細には、上記オイルパン31は、例えば電動駆動機構2の下方に配設されており、詳しくは後述するオイルタンク32から流れてくる冷却油を含め、冷却油循環システム10における全ての冷却油を貯蔵する容量を有している。このオイルパン31には、図示を省略したストレーナが設置され、そのストレーナを介して電動オイルポンプ12によって冷却油を吸引することが可能に構成されている。
【0016】
上記電動オイルポンプ12は、制御部40によって電動駆動機構2に供給する冷却油の必要流量が演算され、その必要流量となるように図示を省略した駆動モータの回転速度が制御される。このように回転された電動オイルポンプ12は、流路L1(及びストレーナ)を介して冷却油をオイルパン31から吸引し、流路L2を介して電動駆動機構2の上記モータやギヤ部等に送出する。
【0017】
上記電動駆動機構2に供給されて上記モータやギヤ部等を循環した冷却油は、流路L3からバルブ11に排出される。この流路L3には、冷却油の油温を検出する油温センサ41が配置されており、油温センサ41によって制御部40に検出した油温の信号が出力される。
【0018】
上記バルブ11は、制御部40の制御によって電気的に不図示のスプールを切換え可能に構成されており、第1流路A1及び第2流路A2に介在して、流路L3と流路L4とを連通すると共に流路L3から流路L11へ(つまり第2流路A2)の冷却油の流れを遮断する第1状態と、流路L3と流路L4とを遮断すると共に流路L3から流路L11へ(つまり第2流路A2)の冷却油の流れを連通する第2状態と、に切換え可能に構成されている。
【0019】
つまり、バルブ11が第1状態に切換えられると、第1流路A1としての流路L3,L4,L5,L6が連通されると共に、第2流路A2としての流路L11,L12,L13が第1流路A1に対して遮断され、第2流路A2の冷却油の流れを遮断する。これにより、電動駆動機構2から排出された冷却油が第1流路A1だけを通過して第1オイルクーラ21を介してオイルパン31にそのまま戻される。一方、バルブ11が第2状態に切換えられると、第1流路A1における流路L3と流路L4との間が遮断されると共に、第2流路A2としての流路L11,L12,L13が連通され、第2流路A2の冷却油の流れを連通する。これにより、電動駆動機構2から排出された冷却油が、流路L3から第2流路A2としての流路L11,L12,L13を通過して合流部X1において第1流路A1に戻され、つまり第2オイルクーラ22、オイルタンク32、第1オイルクーラ21を介してオイルパン31に戻される。
【0020】
上記第1オイルクーラ21は、図示を省略した冷却水が循環されることで内部の冷却油を冷却する水冷式のオイルクーラである。冷却水は、不図示のラジエータ等や不図示のウォータポンプを循環する循環システムにより供給される。また、第1オイルクーラ21で冷却水による冷却が不要な場合には、制御部40が、不図示のウォータポンプを停止したり、或いは第1オイルクーラ21を循環する水路を他の水路から遮断したりすることで、冷却水が循環しなくなるように構成されている。
【0021】
一方、上記第2オイルクーラ22は、外気によって内部の冷却油を冷却する空冷式のオイルクーラである。なお、第2オイルクーラ22は、車両1のフロントグリルの近傍等に配置され、外気が通過することで内部の冷却油が冷却されるが、グリルシャッタ等を設けて、冷却が不要な場合に外気の通過を遮断するように構成されていてもよい。
【0022】
そして、上記オイルタンク32は、所定量の冷却油を貯蔵する油槽である。オイルタンク32には、例えば流路L12が上方にかつ流路L13が下方に接続されており、バルブ11が第1状態となって第2流路A2が遮断されると、流路L12の冷却油が流れずに負圧となることで、オイルタンク32の内部の冷却油も流路L13から流出しないように構成されている。
【0023】
[冷却切換え制御]
ついで、上記冷却油循環システム10における冷却切換え制御について図2を用いて説明する。図2は第1の実施の形態に係る冷却切換え制御を示すフローチャートである。なお、図2において、第1油温T1は、暖機が終了した油温であり、例えば0度程度である。また、第2油温T2は、電動駆動機構2の高負荷状態にあって上昇した油温であり、例えば60~70度程度である。
【0024】
制御部40は、例えば車両1のスタートスイッチがONされている間、電動駆動機構2及び冷却油循環システム10の冷却や暖機を行うために本冷却切換え制御を、所定の演算間隔で繰り返し実行する。すると、まず、制御部40は電動オイルポンプ12を駆動し(S1)、つまり冷却油を電動駆動機構2に供給してオイルパン31に戻す、冷却油の循環を開始する。
【0025】
続いて、制御部40は、油温センサ41が検出した油温が、第1油温T1よりも高いか否かを判定する(S2)。検出した油温が第1油温T1よりも高くない(低い)場合は(S2のNo)、つまり電動駆動機構2及び冷却油循環システム10の暖機が必要な状態であるため、制御部40は、暖機運転状態と判断する。すると、上述したように、不図示のウォータポンプを停止したり、或いは第1オイルクーラ21を循環する水路を他の水路から遮断したりすることで、第1オイルクーラ21を循環する冷却水を停止する(S3)。また、ここでは油温が第2油温T2よりも高くない(低い)ので(S5のNo)、バルブ11を上記第1状態に切換え(S6)、つまり流路L3,L4,L5、第1オイルクーラ21、流路L6を介して冷却油を電動駆動機構2からオイルパン31に戻す。
【0026】
このように、例えば冬季等にあって、油温が第1油温T1よりも低い状態では、第1オイルクーラ21における冷却油の水冷が停止されると共に、第2オイルクーラ22に冷却油が流れることもないので、電動駆動機構2のモータ等で暖められる冷却油の油温の上昇を早めることができる。また、オイルタンク32に貯蔵されている冷却油がオイルパン31や電動駆動機構2に流れないため、オイルタンク32の冷却油の油温は上昇しないが、第1流路A1を循環している(第2流路A2を循環しない)冷却油の油量が少なくなり(全体量のうちの一部となり)、冷却油の油温上昇を早めることができるので、暖機時間の短縮化を図ることができる。
【0027】
その後、電動駆動機構2及び冷却油循環システム10の暖機が終了し、油温が第1油温T1よりも高くなった場合は(S2のYes)、制御部40は、通常運転状態と判断する。すると、上述したように、不図示のウォータポンプを駆動したり、或いは第1オイルクーラ21を循環する水路に他の水路からの冷却水を流入したりすることで、第1オイルクーラ21に冷却水を供給して循環させる(S4)。また、ここでは油温が第2油温T2よりも高くない(低い)ので(S5のNo)、バルブ11を上記第1状態に切換え(S6)、つまり電動駆動機構2から排出される冷却油が、流路L3,L4,L5、第1オイルクーラ21、流路L6を介してオイルパン31に戻される。
【0028】
このように油温が第1油温T1よりも高く、第2油温T2よりも低い状態では、第1オイルクーラ21における冷却油の水冷が行われるため、電動駆動機構2のモータ等で暖められる冷却油を冷却することができる。一方、第2オイルクーラ22に冷却油が流れることはないので、第2オイルクーラ22に貯蔵されている冷却油は、電動駆動機構2で暖められることなく、そのまま維持されている。
【0029】
そして、例えば運転者が要求する駆動力が大きく、車両1を大きな駆動力で駆動し続けるような、電動駆動機構2が高負荷状態となって油温が第2油温T2よりも高くなった場合は(S5のYes)、制御部40は、高負荷運転状態と判断する。すると、制御部40はバルブを第2状態に切換え(S7)、上述したように電動駆動機構2から排出される冷却油が、第2流路A2としての流路L11,L12,L13に流されるようになり、流路L3,L11、第2オイルクーラ22、流路L12、オイルタンク32、流路L13、流路L5、第1オイルクーラ21、流路L6を介してオイルパン31に戻される。
【0030】
このように油温が第2油温T2よりも高い状態(特に急に冷却油の油温が高くなった場合)では、第2オイルクーラ22で空冷により冷却された後にオイルタンク32に貯蔵されていた冷却油が、それまで第1流路A1で循環されていた冷却油に加えられる形で流される。また、循環する冷却油は、第1オイルクーラ21の冷却に加えて、第2オイルクーラ22によっても冷却される。これにより、循環する冷却油の油量を増大すると共に油温の低い冷却油が混ざることで油温を急速に下げることができ、電動駆動機構2に十分に冷却された冷却油を供給することができ、電動駆動機構2(モータやギヤ部等)の冷却効率を高めることができる。
【0031】
なお、以上説明した冷却切換え制御では、油温に応じて水冷水の供給を切換えたり、バルブ11の状態を切換えたりするものを説明したが、油温だけに限らず、他のパラメータを用いても構わない。例えば油温とアクセル開度とを加味して、電動駆動機構2の負荷状態を判断しつつ切換えるように制御してもよい。要するに、制御部40が、ステップS2では暖機が必要か否かを判断し、ステップS5では通常の冷却よりも強い冷却(高い冷却効率)が必要か否かを判断すればよい。
【0032】
また、以上説明した第1の実施の形態においては、制御部40がバルブ11の切換えを制御するものを説明したが、バルブ11の代わりに、例えば油温が第2油温T2よりも高いか否かに応じて機械的に(自動的に)切換えられるサーモスタットを用いて流路を切換えるように構成しても構わない。この場合、制御部40による制御は不要であり、本冷却油循環システム10を簡易に構成でき、コストダウンを図ることができる。また、図示を省略した第1オイルクーラ21に冷却水を供給する水路に、例えば油温が第1油温T1よりも高いか否かに応じて機械的に切換えられるサーモスタットを設けて、水冷の有無を切換えるようにしても構わない。
【0033】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について図3を用いて説明する。図3は第2の実施の形態に係る冷却油循環システムを示す模式図である。
【0034】
本第2の実施の形態に係る冷却油循環システム110は、上記第1の実施の形態に係る冷却油循環システム10に比して、バルブ11の位置を変更したものである。詳細には、冷却油循環システム110において、図3に示すように、バルブ111が第1流路A1における流路L4と流路L5と第2流路A2における流路L13との間に介在するように配置されており、つまり、バルブ111は、第2流路A2において、オイルタンク32よりも冷却油の流れる方向において下流側に配置されている。また、流路L3と流路L4との間には、第1流路A1から第2流路A2(流路L11)に分岐する分岐部X2が形成されている。
【0035】
このように構成された冷却油循環システム110においては、バルブ111が上記第1状態に切換えられ、第1流路A1を連通する状態となると、流路L13が遮断されることで第2流路A2に圧力が溜まり、或いは冷却油が詰まり、分岐部X2から第2流路A2に冷却油が流れなくなる。また、バルブ111が上記第2状態に切換えられ、第2流路A2を連通する状態となると、流路L4が遮断されることで流路L4に圧力が溜まり、或いは冷却油が詰まり、分岐部X2から第1流路A1に冷却油が流れなくなる。
【0036】
本第2の実施の形態に係る冷却油循環システム110は、このように構成されることで、第1の実施の形態に係る冷却油循環システム10に比して、バルブ111の第1状態においてオイルタンク32から第1流路A1に冷却油が漏れ出すことを確実に防ぐことができる。
【0037】
なお、本第2の実施の形態におけるこれ以外の構成、作用、及び効果は、上記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
<第3の実施の形態>
ついで、上記第2の実施の形態を一部変更した第3の実施の形態について図4及び図5を用いて説明する。図4は第3の実施の形態に係る冷却油循環システムを示す模式図、図5は第3の実施の形態に係る冷却切換え制御を示すフローチャートである。
【0039】
本第3の実施の形態に係る冷却油循環システム210は、上記第2の実施の形態に係る冷却油循環システム110に比して、新たに第1バルブ211を設けて第1オイルクーラ21の冷却油の循環を切換え可能にすると共に、バルブ111(図3参照)を第2バルブ212としたものである。
【0040】
詳細には、冷却油循環システム210において、図4に示すように、電動駆動機構2からオイルパン31まで冷却油を流す第1流路A1として、流路L21,L22、L23,L24,L25を備えており、第2切換え部としての第1バルブ211が第1流路A1における流路L21と流路L22との間に介在するように配置されている。また、第1オイルクーラ21は、上記第1及び第2の実施の形態と同様に、水冷により冷却されるオイルクーラであり、第3流路A3としての流路L31と流路L32との間に介在するように配置されている。第3流路A3としての流路L32は、第1流路A1における流路L22と流路L23との間にある合流部X3において合流するように構成されている。
【0041】
第1バルブ211は、制御部40の制御によって電気的に不図示のスプールを切換え可能に構成されており、第1流路A1及び第3流路A3に介在して、第1流路A1(流路L21と流路L22と)を連通すると共に第3流路A3を第1流路A1から遮断する第3状態と、第1流路A1(流路L21と流路L22と)を遮断すると共に第3流路A3を第1流路A1(流路L21)に連通する第4状態と、に切換え可能に構成されている。つまり第1バルブ211は、第3状態に切換えられると、電動駆動機構2から排出された冷却油を第1オイルクーラ21を迂回して循環させずにオイルパン31に流し、また、第4状態に切換えられると、電動駆動機構2から排出された冷却油を第1オイルクーラ21を通過させて循環させつつオイルパン31に流す。
【0042】
なお、第2流路A2は、第2の実施の形態と同様に、第1流路A1における流路L23と流路L24との間の分岐部X4から分岐する流路L11,L12.L13により構成されている。流路L11と流路L12との間には、空冷により冷却される第2オイルクーラ22が介在されるように配置され、流路L12と流路L13との間には、オイルタンク32が介在されるように配置されている。そして、切換え部或いは第1切換え部としての第2バルブ212が第1流路A1における流路L24と流路L25と第2流路A2における流路L13との間に介在するように配置されている。
【0043】
[冷却切換え制御]
ついで、第3の実施の形態に係る冷却油循環システム210における冷却切換え制御について図5を用いて説明する。
【0044】
制御部40は、例えば車両1のスタートスイッチがONされている間、電動駆動機構2及び冷却油循環システム210の冷却や暖機を行うために本冷却切換え制御を、所定の演算間隔で繰り返し実行する。すると、まず、制御部40は電動オイルポンプ12を駆動し(S11)、つまり冷却油を電動駆動機構2に供給してオイルパン31に戻す、冷却油の循環を開始する。
【0045】
続いて、制御部40は、油温センサ41が検出した油温が、第1油温T1よりも高いか否かを判定する(S12)。検出した油温が第1油温T1よりも高くない(低い)場合は(S12のNo)、つまり電動駆動機構2及び冷却油循環システム210の暖機が必要な状態であるため、制御部40は、暖機運転状態と判断する。すると、制御部40は、第1バルブ211を第3状態に切換える(S13)。また、ここでは油温が第2油温T2よりも高くない(低い)ので(S15のNo)、第2バルブ212を上記第1状態に切換え(S16)、つまり電動駆動機構2から排出された冷却油が第1オイルクーラ21及び第2オイルクーラ22を循環しないように切換え、流路L21,L22,L23,L24,L25を介して冷却油を電動駆動機構2からオイルパン31に戻す。
【0046】
このように、例えば冬季等にあって、油温が第1油温T1よりも低い状態では、第1オイルクーラ21における冷却油の水冷が停止されると共に、第2オイルクーラ22に冷却油が流れることもないので、電動駆動機構2のモータ等で暖められる冷却油の油温の上昇を早めることができる。また、オイルタンク32に貯蔵されている冷却油がオイルパン31や電動駆動機構2に流れないため、オイルタンク32の冷却油の油温は上昇しないが、第1流路A1を循環している(第2流路A2を循環しない)冷却油の油量が少なくなり(全体量のうちの一部となり)、冷却油の油温上昇を早めることができるので、暖機時間の短縮化を図ることができる。
【0047】
その後、電動駆動機構2及び冷却油循環システム210の暖機が終了し、油温が第1油温T1よりも高くなった場合は(S12のYes)、制御部40は、通常運転状態と判断する。すると、制御部40は、第1バルブ211を第4状態に切換え(S14)、つまり電動駆動機構2から排出される冷却油が、流路L21,L31、第1オイルクーラ21、流路L32、L23,L24,L25を介してオイルパン31に戻される。
【0048】
このように油温が第1油温T1よりも高く、第2油温T2よりも低い状態では、第1オイルクーラ21における冷却油の水冷が行われるため、電動駆動機構2のモータ等で暖められる冷却油を冷却することができる。一方、第2オイルクーラ22に冷却油が流れることはないので、第2オイルクーラ22に貯蔵されている冷却油は、電動駆動機構2で暖められることなく、そのまま維持されている。
【0049】
そして、例えば運転者が要求する駆動力が大きく、車両1を大きな駆動力で駆動し続けるような、電動駆動機構2が高負荷状態となって油温が第2油温T2よりも高くなった場合は(S15のYes)、制御部40は、高負荷運転状態と判断する。すると、制御部40は第2バルブ212を第2状態に切換え(S17)、上述したように電動駆動機構2から排出される冷却油が、第2流路A2としての流路L11,L12,L13に流されるようになり、流路L21,L31、第1オイルクーラ21、流路L32、L23,L11、第2オイルクーラ22、流路L12、オイルタンク32、流路L13、流路L25、を介してオイルパン31に戻される。
【0050】
このように油温が第2油温T2よりも高い状態(特に急に冷却油の油温が高くなった場合)では、第2オイルクーラ22で空冷により冷却された後にオイルタンク32に貯蔵されていた冷却油が、それまで流路L22以外の第1流路A1及び第3流路A3で循環されていた冷却油に加えられる形で流される。また、循環する冷却油は、第1オイルクーラ21の冷却に加えて、第2オイルクーラ22によっても冷却される。これにより、循環する冷却油の油量を増大すると共に油温の低い冷却油が混ざることで油温を急速に下げることができ、電動駆動機構2に十分に冷却された冷却油を供給することができ、電動駆動機構2(モータやギヤ部等)の冷却効率を高めることができる。
【0051】
以上説明した第3の実施の形態では、油温が第1油温T1より低く、制御部40が暖機運転状態と判断する場合に、第1オイルクーラ21による冷却油の冷却(水冷)も停止することができるので、暖機時間をさらに短縮化することができる。
【0052】
なお、以上説明した第3の実施の形態における冷却切換え制御でも、油温に応じて水冷水の供給を切換えたり、バルブ11の状態を切換えたりするものを説明したが、油温だけに限らず、他のパラメータを用いても構わない。例えば油温とアクセル開度とを加味して、電動駆動機構2の負荷状態を判断しつつ切換えるように制御してもよい。要するに、制御部40が、ステップS12では暖機が必要か否かを判断し、ステップS15では通常の冷却よりも強い冷却(高い冷却効率)が必要か否かを判断すればよい。
【0053】
また、以上説明した第3の実施の形態においては、制御部40が第1バルブ211と第2バルブ212との切換えを制御するものを説明したが、第1バルブ211の代わりに、例えば油温が第1油温T1よりも高いか否かに応じて機械的に(自動的に)切換えられるサーモスタットを用いたり、第2バルブ212の代わりに、例えば油温が第2油温T2よりも高いか否かに応じて機械的に(自動的に)切換えられるサーモスタットを用いたりして、それぞれで流路を切換えるように構成しても構わない。この場合、制御部40による制御は不要であり、本冷却油循環システム210を簡易に構成でき、コストダウンを図ることができる。また、第1バルブ211や第2バルブ212をサーモスタットに変更する場合は、どちらか一方だけ変更しても構わない。
【0054】
<他の実施の形態の可能性>
なお、以上説明した第1乃至第3の実施の形態においては、冷却油を冷却する第1オイルクーラ21と第2オイルクーラ22とを備えたものを説明したが、これに限らず、どちらか一方のオイルクーラだけを備えるものや、他の冷却機能を有する冷却部を備えたものであっても構わない。また、暖機時間を短縮するために冷却油を加熱するヒータを備えても構わない。この場合、ヒータは、暖機時以外にOFFすることを可能に構成したり、第1流路A1とは異なる流路に配置して連通又は遮断を可能にしたりすることが考えられる。
【0055】
また、第1乃至第3の実施の形態においては、電気自動車としての車両1に搭載される電動駆動機構2に冷却油を供給するシステムとして冷却油循環システムを説明したが、これに限らず、ハイブリッド車両におけるハイブリッド駆動装置や自動変速機等の駆動装置に冷却油を供給するものであっても構わない。また、冷却油循環システムは、駆動装置としての電動駆動機構2とは別体に構成されたシステム(ユニット)として説明したが、これに限らず、駆動装置に組み込まれたシステム(ユニット)であっても構わない。
【0056】
また、第1乃至第3の実施の形態においては、第1オイルクーラ21が水冷により冷却油を冷却し、第2オイルクーラ22が空冷により冷却油を冷却するものを説明したが、これに限らず、第1オイルクーラ21が空冷により冷却油を冷却し、第2オイルクーラ22が水冷により冷却油を冷却するものでも構わず、さらには、両方とも水冷或いは空冷で冷却油を冷却するもの構わない。
【0057】
また、第1乃至第3の実施の形態においては、第1油貯蔵部としてオイルパン31、第2油貯蔵部としてオイルタンク32を備えたものを説明したが、これらに限らず、例えば2つともオイルパン、或いは2つともオイルタンクであってもよく、さらには、冷却油を貯蔵できるものであれば、油貯蔵部がどのような構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0058】
1…車両/2…電動駆動機構(駆動装置)/10…冷却油循環システム/11…バルブ(切換え部)/12…電動オイルポンプ(オイルポンプ)/21…第1オイルクーラ/22…第2オイルクーラ/31…オイルパン(第1油貯蔵部)/32…オイルタンク(第2油貯蔵部)/40…制御部/110…冷却油循環システム/111…バルブ(切換え部)/210…冷却油循環システム/211…第1バルブ(第2切換え部)/212…第2バルブ(切換え部、第1切換え部)/A1…第1流路/A2…第2流路/A3…第3流路
図1
図2
図3
図4
図5