(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175541
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】保冷装置及び保冷方法
(51)【国際特許分類】
A61G 17/04 20060101AFI20231205BHJP
A61G 17/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61G17/04 C
A61G17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088033
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】322005356
【氏名又は名称】株式会社セレモ山梨
(74)【代理人】
【識別番号】100142136
【弁理士】
【氏名又は名称】深澤 潔
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 信男
(57)【要約】
【課題】ご遺体と外気との熱交換を遮断してご遺体を保冷するとともに冷却剤や保冷剤の個数及びCO2の排出量の削減可能な保冷装置及び保冷方法を提供すること。
【解決手段】保冷ブランケット10は、載置された長手方向に伸びるご遺体P及びドライアイスIを覆ってご遺体Pの温度変化を抑制する保冷装置であって、シリカエアロゲル16を有する複数の形状維持部11と、形状維持部11間に配されて形状維持部11より柔軟かつ狭窄な変形部12と、を備え、形状維持部11の少なくとも一部が平面状に維持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置された長手方向に伸びる被保冷物及び冷却剤又は保冷剤を覆って前記被保冷物の温度変化を抑制する保冷装置であって、
断熱素材を有する複数の形状維持部と、該形状維持部間に配されて前記形状維持部より柔軟かつ狭窄な変形部と、を備え、
前記形状維持部の少なくとも一部が平面状に維持される保冷装置。
【請求項2】
各前記形状維持部の平面部分が幅方向及び長さ方向を有する矩形状に形成され、前記幅方向同士及び前記長さ方向同士で並んだ状態にて複数配されている請求項1に記載の保冷装置。
【請求項3】
前記形状維持部の大きさが配置場所によって異なる請求項1に記載の保冷装置。
【請求項4】
前記形状維持部が、前記断熱素材を封止する密封部を備える請求項1に記載の保冷装置。
【請求項5】
載置された長手方向に伸びる被保冷物に接して又は該被保冷物の近傍に冷却剤又は保冷剤を設置する載置ステップと、
請求項1から4の何れか一つに記載の保冷装置を前記冷却剤又は保冷剤とともに前記被保冷物に被せる被覆ステップと、
前記保冷装置と前記被保冷物及び前記載置面との間に密閉空間を形成する成形ステップと、
を備える保冷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷装置及び保冷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間は主に水分と脂肪・リン酸カルシウムで形成されており、死後に活動が停止しても体内には胃酸などがあって揮発性ガスが発生する。また、血液以外の水分や汗などからは菌により腐敗臭が発生し臭気が発生する。一方、体内にあっては、細菌により胃や腸内に残存している糞尿から様々な揮発性ガスを発生する。このような腐敗を少しでも遅らせるためには、遺体を5℃以下に維持して細菌の活性化を低下・又は停止させる必要がある。
【0003】
遺体を冷却する手段として、電子機器を用いた冷却板やドライアイスやPCM(Phase Changed Material:相転移素材)等の冷却剤を用いて時系列的に冷却する。しかし、冷やされた遺体は外気との熱移動により均一化されるため、冷却された遺体と外気とが熱交換されないように保冷する必要がある。このような保冷方法として様々なものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の二重棺では、保冷剤を利用することによりドライアイスの使用量を削減することを目的としているものの、葬儀場へ向かうまでは棺を使用できず、また、二重の棺を取り扱わなければならず大変である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、冷却剤や保冷剤の使用量を削減可能な保冷装置及び保冷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る保冷装置は、載置された長手方向に伸びる被保冷物及び冷却剤又は保冷剤を覆って前記被保冷物の温度変化を抑制する保冷装置であって、断熱素材を有する複数の形状維持部と、該形状維持部間に配されて前記形状維持部より柔軟かつ狭窄な変形部と、を備え、前記形状維持部の少なくとも一部が平面状に維持される。
【0008】
また、本発明に係る保冷装置は、各前記形状維持部の平面部分が幅方向及び長さ方向を有する矩形状に形成され、前記幅方向同士及び前記長さ方向同士で並んだ状態にて複数配されている。
【0009】
さらに、本発明に係る保冷装置は、前記形状維持部の大きさが配置場所によって異なる。また、前記形状維持部が、前記断熱素材を封止する密封部を備える。
【0010】
そして、本発明に係る保冷方法は、載置された長手方向に伸びる被保冷物に接して又は該被保冷物の近傍に冷却剤又は保冷剤を設置する載置ステップと、本発明に係る保冷装置を前記冷却剤又は保冷剤とともに前記被保冷物に被せる被覆ステップと、前記保冷装置と前記被保冷物及び前記載置面との間に密閉空間を形成する成形ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷却剤や保冷剤の使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保冷ブランケットの使用状態を示す概要図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る保冷ブランケットを示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る保冷ブランケットの形状維持部を示す構成図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る保冷方法における載置ステップの状態を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る保冷方法における被覆ステップの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る一実施形態について、
図1から
図6を参照して説明する。
本実施形態に係る保冷ブランケット(保冷装置)10は、
図1又は
図2に示すように、ご遺体(被保冷物)Pを覆って保冷するものである。この保冷ブランケット10は、長手方向に伸びる中心軸線Cを有し、複数の形状維持部11と、形状維持部11間に配されて形状維持部11よりも柔軟かつ狭窄な変形部12と、を備える。
【0014】
形状維持部11は、保冷ブランケット10の中心軸線C上に配される中央形状維持部13と、中央形状維持部13に対して中心軸線Cから左右に離間して配される周辺形状維持部15と、を備える。中央形状維持部13及び周辺形状維持部15は、何れも
図3及び
図4に示すように、シリカエアロゲル(断熱素材)16と、シリカエアロゲル16を封止する密封部17と、不織布からなりシリカエアロゲル16が封止された密封部17を格納する収納部18と、を備える。形状維持部11は、ポリエチレン等の柔軟な繊維からなる表側生地20Aと裏側生地20Bとで挟まれてなる空間内に配される。シリカエアロゲル16は、略直方体状に形成されており、形状維持部11の少なくとも一部を平面状に維持している。
【0015】
シリカエアロゲル16の長手方向寸法は中央形状維持部13と周辺形状維持部15とで略同一である。一方、シリカエアロゲル16の中央形状維持部13における幅方向寸法及び厚さは、周辺形状維持部15における幅方向寸法及び厚さの略2倍となっている。なお、後述する密閉空間Sを好適に作成するために、周辺形状維持部15におけるシリカエアロゲル16の寸法は、幅12cm及び長さ38cm並びに厚さ10cmの寸法であることが好ましい。
【0016】
密封部17は、シリカエアロゲル16を真空状態で密封する。収納部18は袋状に形成されている。
【0017】
変形部12は、形状維持部11の幅方向及び長さ方向よりも狭窄な面積にて表側生地20Aと裏側生地20Bとが直接接触して形成されている。
【0018】
複数の形状維持部11は、互いの幅方向同士及び長さ方向同士が並んだ状態で間に変形部12を挟んで配されている。本実施形態では、中心軸線Cに沿って中央形状維持部13が4個、周辺形状維持部15が、一列4個で中央形状維持部13の左右に3列ずつ並んで配されている。
【0019】
次に、本発明に係る保冷ブランケット10によるご遺体Pの保冷方法について、保冷ブランケット10の作用とともに説明する。
【0020】
保冷ブランケット10による保冷方法は、載置ステップ(S01)と、被覆ステップ(S02)と、成形ステップ(S03)と、を備える。
【0021】
載置ステップ(S01)では、
図5に示すように、敷布団Fに仰向けに載置されたご遺体Pの腹上に背骨方向に及びご遺体Pの周囲にドライアイス(冷却剤又は保冷剤)Iを設置する。なお、ドライアイスIの設置場所及び個数は図に記載のものに限らず状況に合わせて適宜選択される。また、ドライアイスIを不図示の梱包材に梱包した状態で設置してもよい。
【0022】
次に、被覆ステップ(S02)では、
図6に示すように、保冷ブランケット10をご遺体PとドライアイスIとの上から被せる。このとき、ご遺体Pの背骨方向に並べたドライアイスIが中央形状維持部13と接するように保冷ブランケット10を被せる。
【0023】
成形ステップ(S03)では、
図7に示すように、各変形部12が重力によって漸次折り曲げられ、又は各変形部12を漸次折り曲げることによりご遺体P及び敷布団Fとの間に密閉空間Sを形成する。
【0024】
ここで、ドライアイスIの0℃時における冷却能力は152kcal/kgであり、ドライアイスIはご遺体Pを冷却しつつ昇華を続けて小さくなりやがて消滅する。通常の掛け布団で保冷する場合、ドライアイスIの昇華後はご遺体Pの温度が再び上昇するので、自宅で安置されている期間が3~4日とすると、4~6個/日のドライアイスIが必要になる。
【0025】
しかし、この保冷ブランケット10及び保冷方法によれば、保冷ブランケット10のシリカエアロゲル16自体による断熱だけでなく、密閉空間S内の空気断熱と合わせて保冷ブランケット10内外の熱伝導を抑制することができる。そのため、ドライアイスIの昇華後も冷却されたご遺体Pの保冷状態を長時間維持することができる。これによってドライアイスIの使用量を削減することができ、ドライアイスIの使用にともなうCO2の排出量を削減することができる。
【0026】
この際、形状維持部11の少なくとも一部の平面形状が維持されつつ変形部12で変形するので、ご遺体Pを挟んで敷布団Fと保冷ブランケット10との間に密閉空間Sを形成しやすくすることができる。また、変形部12で折り曲げることにより保冷ブランケット10を折りたたんで小さくすることができる。
【0027】
さらに、中央形状維持部13と周辺形状維持部15とでシリカエアロゲル16の幅方向寸法及び厚さが略2倍になっている。そのため、ドライアイスIをご遺体Pの背骨方向に沿って載置した場合、ドライアイスIと中央形状維持部13とをより好適に接触させることができる。そのため、変形部12とドライアイスIとが接触して熱貫流値が上昇し結露が生じてしまうのを抑えて、ドライアイスIをシリカエアロゲル16で確実に断熱して熱貫流値を低下させることができる。この際、シリカエアロゲル16が密封部17に真空状態で封止されているので、シリカエアロゲル16自体の熱伝導率だけでなく密封部17全体における熱伝導率を小さくすることができる。
【0028】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態ではシリカエアロゲル16が略直方体状としているが、少なくとも一部が平面形状であれば直方体状に限らず他の形状や一部に曲線や曲面を有する形状であっても構わない。また、シリカエアロゲル16の寸法や形状維持部11の個数は前述の個数に限らず、冷却されるご遺体Pに合わせて適切な数値として構わない。さらに、シリカエアロゲル16は真空状態で密封部17に封止されているとしているが、シリカエアロゲル16が外部に飛散しないような状態で格納されていても構わない。
【0029】
また、ドライアイスIの代わりにPCM等の保冷剤を使用しても構わない。さらに、断熱素材としてシリカエアロゲル16としているが、これに限らず軽量かつ熱伝導率の小さいシリカ系断熱材等でも構わない。また、表側生地20A及び裏側生地20Bがポリエチレン等の柔軟な繊維からなるとしているが、これに限らず、少なくとも形状維持部では断熱素材が生地に含まれるようにしてもよい。この場合、少なくとも収納部18は不要となる。さらに、シリカエアロゲル16だけでなくPCMが一緒に収納部18に格納されていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 保冷ブランケット(保冷装置)
11 形状維持部
12 変形部
16 シリカエアロゲル(断熱素材)
17 密封部
I ドライアイス(冷却剤又は保冷剤)
P ご遺体(被保冷物)
S 密閉空間