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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175553
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】両軸受リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/0155 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A01K89/0155
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088051
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸平
(72)【発明者】
【氏名】浅賀 俊作
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108HE08
2B108HE10
2B108HF05
(57)【要約】
【課題】スプールの回転を効率的に制動することができる両軸受リールが、提供される。
【解決手段】両軸受リール1は、スプール11と、スプール軸9と、リール本体3と、レベルワインド機構13と、第1制動部17と、回転伝達機構15と、を備える。スプール軸9は、スプール11の第1フランジ46側の中央部9cと、スプール11の第2フランジ47側の第2端部9bと、を有する。リール本体3は、中央部9cを回転支持する第1本体部25と、第2端部9bを回転支持する第2本体部27と、を有する。第1制動部17は、スプール11の回転を制動する。第1制動部17は、スプール11の第1フランジ46に対向するように第1本体部25に配置される。回転伝達機構15は、スプール11の回転をレベルワインド機構13に伝達する。回転伝達機構15は、第2本体部27に配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸が巻かれる糸巻き胴部と、前記糸巻き胴部の両端部に配置され前記糸巻き胴部の径方向に前記糸巻き胴部から延びる第1および第2フランジと、を有するスプールと、
前記第1フランジ側の第1被支持部と、前記第2フランジ側の第2被支持部と、を有し、前記スプールと一体的に回転するスプール軸と、
前記第1被支持部を回転支持する第1本体部と、前記第2被支持部を回転支持する第2本体部と、を有するリール本体と、
前記スプールの回転に連動して釣糸案内具を前記スプール軸の軸方向に沿って往復移動させるレベルワインド機構と、
前記第1フランジに対向するように前記第1本体部に配置され、前記スプールの回転を制動する第1制動部と、
前記第2本体部に配置され、前記スプールの回転を前記レベルワインド機構に伝達する回転伝達機構と、
を備える両軸受リール。
【請求項2】
前記第1本体部に配置され、前記第1制動部が前記スプールの回転を制動する第1制動力を、調整する第1調整部、
をさらに備える請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項3】
前記第1フランジの少なくとも一部は、磁性部によって構成され、
前記第1制動部は、前記磁性部と対向して配置される磁石部、を有する、
請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項4】
前記磁性部は、前記磁石部と対向する平坦面を有する、
請求項3に記載の両軸受リール。
【請求項5】
前記第1フランジの少なくとも一部は、磁性部によって構成され、
前記第1制動部は、前記磁性部と対向して配置される磁石部、を有し、
前記第1調整部は、前記磁性部と前記磁石部との間の対向距離を変更することによって、前記第1制動力を調整する、
請求項2に記載の両軸受リール。
【請求項6】
前記第1本体部に配置されハンドルの回転を前記スプールに伝達する駆動機構、
をさらに備える請求項1又は2に記載の両軸受リール。
【請求項7】
前記第2本体部に配置され、前記スプールの回転を制動する第2制動部
をさらに備える請求項1又は2に記載の両軸受リール。
【請求項8】
前記第2制動部は、前記スプールの回転に応じて前記第2本体部と接触し、摩擦力によって前記スプールを制動する、
請求項7に記載の両軸受リール。
【請求項9】
前記第2本体部に配置され、前記第2制動部が前記スプールの回転を制動する第2制動力を、調整する第2調整部、
をさらに備える請求項7に記載の両軸受リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受リールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の両軸受リールは、スプールと、スプール軸と、リール本体と、レベルワインド機構と、回転伝達機構と、制動部と、を備えている。スプールは、スプール軸と一体的に回転する。リール本体は、スプール軸を回転支持する。レベルワインド機構は、スプールの回転に連動して釣糸案内具をスプール軸の軸方向に沿って往復移動させる。回転伝達機構は、スプール、および、レベルワインド機構の間に配置され、スプールの回転をレベルワインド機構に伝達する。制動部は、回転伝達機構を制動する。すなわち、制動部は、回転伝達機構を介してスプールの回転を間接的に制動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-103064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の両軸受リールでは、回転伝達機構が、スプール、および、レベルワインド機構の間に配置されているので、制動部は、スプールの回転を直接的に制動することが難しい。このため、従来の両軸受リールでは、制動部は、回転伝達機構を制動することによって、スプールの回転を制動している。このタイプの両軸受けリールでは、制動部は、回転伝達機構を介してスプールを間接的に制動しているので、スプールの回転を効率的に制動することが難しい。
【0005】
本発明の目的は、スプールの回転を効率的に制動することができる両軸受リールを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面に関して、両軸受リールは、スプールと、スプール軸と、リール本体と、レベルワインド機構と、第1制動部と、回転伝達機構と、を備える。スプールは、糸巻き胴部と、第1および第2フランジと、を有する。糸巻き胴部には、釣糸が巻かれる。第1および第2フランジは、糸巻き胴部の両端部に配置される。第1および第2フランジは、糸巻き胴部の径方向に糸巻き胴部から延びる。
【0007】
スプール軸は、第1フランジ側の第1被支持部と、第2フランジ側の第2被支持部と、を有する。スプール軸は、スプールと一体的に回転する。リール本体は、第1被支持部を回転支持する第1本体部と、第2被支持部を回転支持する第2本体部と、を有する。レベルワインド機構は、スプールの回転に連動して釣糸案内具をスプール軸の軸方向に沿って往復移動させる。
【0008】
第1制動部は、スプールの回転を制動する。第1制動部は、第1フランジに対向するように第1本体部に配置される。回転伝達機構は、スプールの回転をレベルワインド機構に伝達する。回転伝達機構は、第2本体部に配置される。
【0009】
本発明の第1の側面に係る両軸受リールでは、第1制動部が第1本体部に配置され、回転伝達機構が第2本体部に配置される。この状態において、第1制動部は、スプールの第1フランジに対向するように配置され、スプールの回転を制動する。この構成によって、第1制動部は、第1フランジを介して、スプールの回転を直接的に制動することができる。すなわち、本両軸受リールでは、スプールの回転を効率的に制動することができる。
【0010】
本発明の第2の側面に関して、第1の側面に係る両軸受リールは、第1調整部をさらに備える。第1調整部は、第1本体部に配置される。第1調整部は、第1制動部がスプールの回転を制動する第1制動力を、調整する。
【0011】
本発明の第2の側面に係る両軸受リールでは、第1制動部の第1制動力が第1調整部によって調整されるので、釣り人が所望する第1制動力を容易に調整することができる。
【0012】
本発明の第3の側面に関して、第1又は第2の側面に係る両軸受リールでは、第1フランジの少なくとも一部は、磁性部によって構成される。第1制動部は、第1フランジの磁性部と対向して配置される磁石部、を有する。
【0013】
本発明の第3の側面に係る両軸受リールでは、第1制動部の磁石部を第1フランジの磁性部と対向して配置することによって、スプールの回転が制動される。この構成では、第1制動部をスプールの第1フランジに接触させることなく、スプールの回転を効率的に制動することができる。
【0014】
本発明の第4の側面に関して、第3の側面に係る両軸受リールでは、磁性部は、磁石部と対向する平坦面を有する。
【0015】
本発明の第4の側面に係る両軸受リールでは、第1制動部の磁石部を第1フランジの磁性部の平坦面に対向して配置することによって、スプールの回転をより効率的に制動することができる。
【0016】
本発明の第5の側面に関して、第2から第4の側面のいずれか1つに係る両軸受リールでは、第1フランジの少なくとも一部は、磁性部によって構成される。第1制動部は、磁性部と対向して配置される磁石部、を有する。第1調整部は、磁性部と磁石部との間の対向距離を変更することによって、第1制動力を調整する。
【0017】
本発明の第5の側面に係る両軸受リールでは、磁性部と磁石部との間の対向距離を変更するだけで、釣り人が所望する第1制動力を容易に調整することができる。
【0018】
本発明の第6の側面に関して、第1から第5の側面のいずれか1つに係る両軸受リールは、駆動機構をさらに備える。駆動機構は、ハンドルの回転をスプールに伝達する。駆動機構は、第1本体部に配置される。
【0019】
本発明の第6の側面に係る両軸受リールでは、第1制動部、および、駆動機構は、第1本体部に配置される。回転伝達機構は、第2本体部に配置される。このように構成しても、第1制動部は、スプールの第1フランジを直接的に制動することができる。すなわち、本両軸受リールでは、スプールの回転を効率的に制動することができる。
【0020】
本発明の第7の側面に関して、第1から第6の側面のいずれか1つに係る両軸受リールは、第2制動部をさらに備える。第2制動部は、スプールの回転を制動する。第2制動部は、第2本体部に配置される。
【0021】
本発明の第7の側面に係る両軸受リールでは、第1制動部は、第1本体部に配置され、スプールの回転を制動する。第2制動部は、第2本体部に配置され、スプールの回転を制動する。この構成では、第1制動部、および、第2制動部の両方によって、スプールの回転を制動することができる。
【0022】
本発明の第8の側面に関して、第7の側面に係る両軸受リールでは、第2制動部は、スプールの回転に応じて第2本体部と接触し、摩擦力によってスプールを制動する。
【0023】
本発明の第8の側面に係る両軸受リールでは、第2制動部がスプールの回転に応じて第2本体部と接触し、スプールに対して摩擦力を発生させる。これにより、スプールの回転を直接的に制動することができる。すなわち、本両軸受リールでは、スプールの回転を効率的に制動することができる。
【0024】
本発明の第9の側面に関して、第7又は第8の側面に係る両軸受リールは、第2調整部をさらに備える。第2調整部は、第2本体部に配置される。第2調整部は、第2制動部がスプールの回転を制動する第2制動力を、調整する。
【0025】
本発明の第9の側面に係る両軸受リールでは、第2制動部の第2制動力が第2調整部によって調整されるので、釣り人が所望する第2制動力を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、両軸受リールにおいて、スプールの回転を効率的に制動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】両軸受リールの斜視図。
図2】両軸受リールの断面図。
図3】スプール軸の中央部近傍の部分拡大断面図。
図4】スプール、第1制動部、第1調整部、第2制動部、および、第2調整部を径方向外側から見た図。
図5】回転伝達機構、第2制動部、第2調整部、および、スプールを軸方向外側から見た図。
図6】第1制動部、第1調整部、第2制動部、および、第2調整部の部分拡大断面図。
図7】変形例における、スプール軸の中央部近傍の部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態による両軸受リール1は、図1、および、図2に示すように、リール本体3と、ハンドル5と、駆動機構7と、スプール軸9と、スプール11と、レベルワインド機構13と、回転伝達機構15と、を備える。図2に示すように、両軸受リール1は、第1制動部17と、第1調整部19と、第2制動部21と、第2調整部23と、をさらに備える。
【0029】
なお、以下では、図2に示すように、スプール軸9の軸心X1が延びる方向、または、スプール軸9の軸心X1に沿う方向が、"軸方向"と記される。スプール軸9の軸心X1は、スプール11の回転中心X2と同心である。すなわち、"軸方向"は、スプール11の回転中心X2が延びる方向、および/または、スプール11の回転中心X2に沿う方向と解釈してもよい。
【0030】
スプール軸9の軸心X1から離れる方向、および/または、スプール11の回転中心X2から離れる方向が、"径方向"と記される。スプール軸9の軸心X1まわりの方向、および/または、スプール11の回転中心X2まわりの方向が、"周方向"と記される。
【0031】
(リール本体)
図1、および、図2に示すように、リール本体3は、第1本体部25と、第2本体部27と、連結部31と、を有する。第1本体部25は、第1フレーム33と、第1側カバー35と、を有する。第1フレーム33は、スプール軸9を回転可能に支持する。
【0032】
図2に示すように、第1フレーム33は、第1側板33aを含む。第1側板33aは、軸方向において、スプール11、および、ハンドル5の間に配置される。例えば、第1側板33aは、軸方向において、スプール11、および、第1側カバー35の間に配置される。第1側カバー35は、ハンドル5と第1フレーム33との間に配置される。
【0033】
第1側カバー35は、第1側板33aを覆うように、第1フレーム33に装着される。第1側カバー35、および、第1側板33aの間には、内部空間Sが形成される。第1側カバー35は、スプール軸9を回転可能に支持する。
【0034】
図1、および、図2に示すように、第2本体部27は、軸方向において、第1本体部25と対向して配置される。第2本体部27は、第2フレーム37と、第2側カバー39と、を有する。図2に示すように、第2フレーム37は、スプール軸9を回転可能に支持する。例えば、第2フレーム37は、スプール軸9の第2端部9b(後述する)を回転可能に支持する。
【0035】
詳細には、第2フレーム37は、第2側板37aと、スプール軸支持部37bと、を含む。第2側板37aは、軸方向において、第1側板33aと対向して配置される。スプール軸支持部37bは、第2側板37aに装着される。スプール軸支持部37bは、スプール軸9を回転可能に支持する。スプール軸支持部37bには、被接触リング37cが固定される。被接触リング37cには、後述する第2制動部21の接触部63が接触する。
【0036】
第2側カバー39は、第2フレーム37を覆うように、第2フレーム37に装着される。例えば、第2側カバー39は、スプール軸支持部37bを覆うように、第2側板37aに装着される。
【0037】
連結部31は、第1本体部25、および、第2本体部27を連結する。例えば、連結部31は、第1フレーム33、および、第2フレーム37を連結する。連結部31は、第1フレーム33、および、第2フレーム37と一体に形成される。
【0038】
(ハンドル)
図1に示すように、ハンドル5は、リール本体3に回転可能に支持される。例えば、図2に示すように、ハンドル5は駆動機構7に接続される。ハンドル5は、駆動機構7を介して、リール本体3に回転可能に支持される。
【0039】
(駆動機構)
図2に示すように、駆動機構7は、ハンドル5の回転をスプール11に伝達する。駆動機構7は、第1本体部25に配置される。例えば、駆動機構7は、第1側カバー35、および、第1側板33aの間の内部空間Sに、配置される。駆動機構7は、ハンドル軸7aと、駆動ギア7bと、ピニオンギア7cと、を有する。
【0040】
ハンドル軸7aは、第1本体部25によって回転可能に支持される。例えば、ハンドル軸7aは、第1側カバー35、および、第1フレーム33によって、回転可能に支持される。ハンドル軸7aには、ハンドル5が装着される。
【0041】
ハンドル5は、ハンドル軸7aと一体的に回転する。駆動ギア7bは、ハンドル軸7aに装着される。駆動ギア7bは、ハンドル軸7aと一体的に回転する。駆動ギア7bは、ピニオンギア7cと噛み合う。
【0042】
ピニオンギア7cは、筒状に形成される。スプール軸9の径方向外側に配置される。ピニオンギア7cは、軸受41aを介して、第1側カバー35に回転可能に支持される。ピニオンギア7cは、軸受41dを介して、第1側板33aに回転可能に支持される。ピニオンギア7cの回転は、クラッチ機構を介して、スプール軸9に伝達される。クラッチ機構の構成は、従来の構成と同じであるので、ここではクラッチ機構の詳細な説明は省略される。
【0043】
駆動機構7では、ハンドル5の回転は、ハンドル軸7a、および、駆動ギア7bを介して、ピニオンギア7cに伝達される。クラッチ機構がオンである場合、ピニオンギア7cの回転はスプール軸9に伝達される。一方で、クラッチ機構がオフである場合、ピニオンギア7cの回転はスプール軸9に伝達されない。
【0044】
(スプール軸)
図2に示すように、スプール軸9は、第1端部9aと、第2端部9b(第2被支持部の一例)と、中央部9c(第1被支持部の一例)と、を有する。スプール軸9は、環状溝10をさらに有する。
【0045】
第1端部9aは、第1側カバー35側の端部である。第1端部9aは、軸受41aを介して、第1側カバー35に回転可能に支持される。
【0046】
第2端部9bは、後述するスプール11の第2フランジ47側に設けられる。例えば、第2端部9bは、第2本体部27側に設けられる。詳細には、第2端部9bは、スプール軸支持部37b側に設けられる。第2端部9bは、軸受41bを介して、スプール軸支持部37bに回転可能に支持される。
【0047】
中央部9cは、第1端部9a、および、第2端部9bの間に設けられる。中央部9cは、後述するスプール11の第1フランジ46側に設けられる。例えば、中央部9cは、第1本体部25側に設けられる。詳細には、中央部9cは、第1側板33a側に設けられる。中央部9cは、軸受41cを介して、第1側板33aに回転可能に支持される。
【0048】
図3に示すように、環状溝10は、スプール軸9の外周面に設けられる。環状溝10は、軸方向において、軸受41cと、後述するスプール11の糸巻き胴部45との間に、配置される。環状溝10には、Oリング43が配置される。
【0049】
環状溝10の底面10aは、第1端部9a側の壁面から第2端部9b側の壁面に向けて、拡径されている。この構成によって、Oリング43が環状溝10の底面10aに配置された状態では、Oリング43は軸受41cの内輪を押圧する。Oリング43、および、上記の糸巻き胴部45の軸方向端の間には、隙間が設けられる。
【0050】
(スプール)
図2に示すように、スプール11は、スプール軸9に装着される。スプール11は、スプール軸9と一体的に回転する。スプール11は、糸巻き胴部45と、第1フランジ46と、第2フランジ47と、筒状部49と、を有する。糸巻き胴部45には、釣糸が巻かれる。糸巻き胴部45は、スプール軸9と一体的に回転するように、スプール軸9の外周面に装着される。
【0051】
図4に示すように、第1フランジ46、および、第2フランジ47は、糸巻き胴部45の両端部に配置される。第1フランジ46、および、第2フランジ47は、糸巻き胴部45から径方向外側に延びる。第1フランジ46、および、第2フランジ47は、互いに対向して配置される。第1フランジ46、および、第2フランジ47は、糸巻き胴部45と一体に形成される。
【0052】
図2に示すように、第1フランジ46は、第1側板33a側に配置される。図4に示すように、第1フランジ46の少なくとも一部は磁性部50によって構成される。磁性部50は、磁気を帯びることができる物質によって、形成される。本実施形態では、第1フランジ46の全体が磁性部50によって構成される。スプール11の全体が磁性部50によって構成されてもよい。磁性部50には、帯磁処理が施されてもよい。
【0053】
なお、本実施形態では、磁性部50が第1フランジ46の本体部と一体に形成される場合の例が、示される。第1フランジ46の本体部に対して別体の磁性部50を取り付けることによって、第1フランジ46が構成されてもよい。
【0054】
第1フランジ46、すなわち、磁性部50は、平坦面50aを有する。平坦面50aは、磁性部50の軸方向外側面を形成する。平坦面50aは、スプール11の回転中心X2に直交し、且つ、スプール11の回転中心X2まわりの周方向に環状に形成される。平坦面50aは、後述する第1制動部17のマグネット51と対向する。
【0055】
図2に示すように、第2フランジ47は、第2側板37a側に配置される。図4に示すように、第2フランジ47は、軸方向において、スプール軸支持部37bと対向して配置される。第2フランジ47において最も薄い部分の厚みは、第1フランジ46において最も薄い部分の厚みより、小さい。
【0056】
筒状部49は、糸巻き胴部45から軸方向に突出する。筒状部49は、糸巻き胴部45と一体に形成される。筒状部49は、第2制動部21を支持する。筒状部49は、第2制動部21と一体的に回転する。筒状部49は、後述する被接触リング37cの径方向内側に配置される。
【0057】
(レベルワインド機構)
図1、および、図2に示すように、レベルワインド機構13は、スプール11の回転に連動して釣糸案内具を軸方向に沿って往復移動させる。例えば、図2に示すように、スプール11の回転は、スプール軸9、および、回転伝達機構15を介して、レベルワインド機構13に、伝達される。これにより、レベルワインド機構13において釣糸案内具がスプール軸9の軸方向に沿って往復移動する。
【0058】
レベルワインド機構13は、軸方向において、第1本体部25、および、第2本体部27の間に、配置される。レベルワインド機構13の構成は従来の構成と同じであるので、ここではレベルワインド機構13の詳細な説明は省略される。
【0059】
(回転伝達機構)
図2に示すように、回転伝達機構15は、スプール11の回転をレベルワインド機構13に伝達する。回転伝達機構15は、第2本体部27に配置される。図5に示すように、回転伝達機構15は、第1ギア15aと、第2ギア15bと、第3ギア15cと、を有する。第1ギア15aは、スプール軸9に設けられる。第1ギア15aは、スプール軸9と一体的に回転する。
【0060】
第2ギア15bは、第2フレーム37、例えば、スプール軸支持部37bに対して、回転可能に支持される。第2ギア15bは、第1ギア15a、および、第3ギア15cとに、噛み合う。第3ギア15cは、第2フレーム37、例えば、第2側板37aに対して、回転可能に支持される。第3ギア15cは、第2ギア15b、および、レベルワインド機構13の受動ギア13aとに、噛み合う。
【0061】
(第1制動部)
図4、および、図6に示すように、第1制動部17は、スプール11の回転を制動する。第1制動部17は、第1フランジ46に接近する軸方向、および、第1フランジ46から離れる軸方向に、移動する。図2に示すように、第1制動部17は、第1フランジ46に対向するように、第1本体部25に配置される。
【0062】
例えば、図4、および、図6に示すように、第1制動部17は、マグネットブレーキである。第1制動部17は、マグネット51(磁石部の一例)と、マグネットホルダ52と、従動カム53と、を有する。
【0063】
図4に示すように、マグネット51は、第1フランジ46と対向して配置される。例えば、マグネット51は、第1フランジ46の磁性部50と対向して配置される。詳細には、マグネット51は、軸方向において、第1フランジ46の平坦面50a、および、第1側板33a(図2を参照)の間に、配置される。マグネット51の磁力が第1フランジ46の平坦面50aに作用することによって、スプール11の回転が制動される。
【0064】
図4、および、図6に示すように、マグネットホルダ52は、マグネット51を保持する。図6に示すように、マグネットホルダ52は、第1本体部25、例えば、第1側板33aに対して、軸方向に移動可能に配置される。マグネットホルダ52は、第1側板33aのボス部33bの内部に配置される。
【0065】
ボス部33bは、第1側板33aから第1側カバー35に向けて突出する。ボス部33bは、スプール軸9の軸心X1に平行な中心軸X3を、有する。マグネットホルダ52は、中心軸X3まわりにボス部33bに対して回転不能、且つ、ボス部33bの中心軸X3に沿う軸方向にボス部33bに対して移動可能に、ボス部33bの内部に配置される。
【0066】
図4、および、図6に示すように、従動カム53は、マグネットホルダ52に装着される。例えば、図6に示すように、従動カム53は、座金56を介して、マグネットホルダ52に装着される。従動カム53は、固定ネジ54によって、マグネットホルダ52に固定される。
【0067】
従動カム53は、ボス部33bの中心軸X3まわりにマグネットホルダ52に対して回転不能、且つ、マグネットホルダ52とともにボス部33bの中心軸X3に沿う軸方向に移動可能に、マグネットホルダ52に装着される。
【0068】
図4、および、図6に示すように、従動カム53は、カム突起53aを有する。カム突起53aは、従動カム53の外面に設けられる。カム突起53aは、ボス部33bの中心軸X3から離れる径方向に向けて、従動カム53の外面から突出する。
【0069】
(第1調整部)
図4、および、図6に示すように、第1調整部19は、第1制動部17がスプール11の回転を制動する第1制動力を、調整する。例えば、第1調整部19は、第1制動部17のマグネット51を、第1フランジ46の磁性部50に接近する軸方向、および、第1フランジ46の磁性部50から離れる軸方向に、移動させる。
【0070】
詳細には、図4に示すように、第1調整部19は、第1制動部17のマグネット51を、第1フランジ46の平坦面50aに接近する軸方向、および、第1フランジ46の平坦面50aから離れる軸方向に、移動させる。この移動によって、第1制動部17のマグネット51と第1フランジ46との対向距離が変更され、第1制動力が調整される。
【0071】
図6に示すように、第1調整部19は、第1本体部25に配置される。図4、および、図6に示すように、第1調整部19は、操作つまみ55と、操作カム57と、を有する。操作つまみ55は、第1側カバー35側において、第1側板33aに装着される。操作つまみ55は、第1側板33aに対して回転可能なように、第1側板33aに装着される。
【0072】
図6に示すように、操作つまみ55は、第1側板33aのボス部33cに配置される。例えば、ボス部33cは、第1側板33aから第1側カバー35に向けて突出する。ボス部33cは、スプール軸9の軸心X1に平行な中心軸X4を有する。
【0073】
図4、および、図6に示すように、操作つまみ55は、つまみ部55aと、装着部55bと、を有する。図6に示すように、つまみ部55aは、ボス部33cの中心軸X4に沿う軸方向において、第1側板33aと間隔を隔てて配置される。
【0074】
装着部55bは、つまみ部55aと一体に形成される。装着部55bは、軸状に形成される。装着部55bは、第1側板33aのボス部33cに配置される。装着部55bは、位置決め部材、例えば、ネジ58によって、第1側板33aに位置決めされる。例えば、装着部55bは、第1フランジ46側からネジ58によって第1側板33aに位置決めされる。
【0075】
操作カム57は、ボス部33cの中心軸X4に沿う軸方向において、第1側板33a、および、操作つまみ55のつまみ部55aの間に、配置される。操作カム57は、操作つまみ55と一体的に回転するように、操作つまみ55に係合する。
【0076】
図6に示すように、操作カム57は、係止突起57aと、カム溝57b(図4を参照)と、を有する。係止突起57aは、操作つまみ55に係合する。例えば、係止突起57aは、つまみ部55aの孔部55a1に係合する。これにより、操作カム57は、操作つまみ55と一体的に回転する。
【0077】
図4に示すように、カム溝57bは、操作つまみ55の外周面に設けられる。例えば、カム溝57bは、操作つまみ55の外周面上で螺旋状に延びる。カム溝57bには、従動カム53のカム突起53aが係合する。
【0078】
操作つまみ55がボス部33cの中心軸X4まわりに回転すると、操作カム57が操作つまみ55とともにボス部33cの中心軸X3まわりに回転する。この際には、従動カム53のカム突起53aが、操作カム57のカム溝57bの壁部によって、ボス部33bの中心軸X3に沿う軸方向に押圧される。これにより、従動カム53、マグネットホルダ52、および、マグネット51が、ボス部33bの中心軸X3に沿う軸方向に移動する。
【0079】
例えば、図6の状態において、操作つまみ55、および、操作カム57が、第1回転方向に回転すると、マグネット51は第1フランジ46の平坦面50aに接近する。この状態において、操作つまみ55、および、操作カム57が、第1回転方向とは反対の第2回転方向に、回転すると、マグネット51は第1フランジ46の平坦面50aから離れる。
【0080】
このように、操作つまみ55、および、操作カム57を動作させることによって、第1制動部17のマグネット51と第1フランジ46との対向距離が変更される。この対向距離の変更によって、第1制動力が調整される。
【0081】
(第2制動部)
図2に示すように、第2制動部21は、第2本体部27に配置される。図5に示すように、第2制動部21は、スプール11の回転を制動する。第2制動部21は、スプール11の回転に応じて第2本体部27と接触し、摩擦力によってスプール11の回転を制動する。
【0082】
例えば、図5に示すように、第2制動部21は、遠心ブレーキである。第2制動部21は、支持部61と、複数の支持軸62と、複数の接触部63と、を有する。
【0083】
支持部61は、スプール11と一体的に回転する。例えば、支持部61は、スプール11の筒状部49の外周面に固定される。支持部61は、環状に形成される。支持部61は、複数の収納凹部61aを有する。複数の収納凹部61aは、周方向に所定の間隔を隔てて、支持部61の外周面に設けられる。
【0084】
複数の支持軸62は、周方向に所定の間隔を隔てて、支持部61に固定される。例えば、複数の支持軸62は、複数の収納凹部61aの底部に各別に固定される。複数の支持軸62のそれぞれは、径方向に延びる。
【0085】
複数の接触部63は、被接触リング37cに接触する。複数の接触部63は、径方向において、複数の収納凹部61aの底部、および、被接触リング37cの間に配置される。各接触部63は、各支持軸62に沿って径方向に移動可能なように、各支持軸62に支持される。例えば、各接触部63は、ハット形状に形成される。
【0086】
第2制動部21では、スプール11の回転によって複数の接触部63に対して遠心力が作用する。複数の接触部63は、この遠心力によって複数の支持軸62に沿って径方向に移動し、被接触リング37cに接触する。複数の接触部63が被接触リング37cに接触した状態では、複数の接触部63、および、被接触リング37cには摩擦力が発生する。この摩擦力によって、スプール11が制動される。
【0087】
(第2調整部)
図2に示すように、第2調整部23は、第2本体部27に配置される。図5に示すように、第2調整部23は、第2制動部21がスプール11の回転を制動する第2制動力を、調整する。
【0088】
第2調整部23は、複数の接触部63の少なくとも1つ、および、被接触リング37cの接触を規制可能に構成される。例えば、第2調整部23は、複数対の爪部23aを有する。各対の爪部23aは、複数の収納凹部61aのそれぞれに設けられる。詳細には、各対の爪部23aは、各接触部63の鍔部63aに係合可能なように、各収納凹部61aにおいて互いに対向する壁部から突出する。
【0089】
第2調整部23では、複数の接触部63の少なくとも1つの鍔部63aが、径方向において、1対の爪部23a、および、収納凹部61aの底部の間に配置された場合、複数の接触部63の少なくとも1つの径方向移動が、規制される。ここで規制された複数の接触部63の少なくとも1つは、被接触リング37cに接触しない。
【0090】
複数の接触部63の少なくとも1つの鍔部63aが、径方向において、1対の爪部23a、および、被接触リング37cの間に配置された場合、複数の接触部63の少なくとも1つは、径方向に移動可能である。ここで移動可能に配置された複数の接触部63の少なくとも1つは、被接触リング37cに接触する。このように、第2調整部23では、接触部63を被接触リング37cに選択的に接触させることによって、第2制動力が調整される。
【0091】
上記の両軸受リール1は、以下のような特徴を有する。両軸受リール1では、第1制動部17が第1本体部25に配置され、回転伝達機構15が第2本体部27に配置される。この状態において、第1制動部17は、スプール11の第1フランジ46に対向するように配置され、スプール11の回転を制動する。この構成によって、第1制動部17は、第1フランジ46を介して、スプール11の回転を直接的に制動することができる。すなわち、本両軸受リール1では、スプール11の回転を効率的に制動することができる。
【0092】
両軸受リール1では、第1制動部17の第1制動力が第1調整部19によって調整されるので、釣り人が所望する第1制動力を容易に調整することができる。
【0093】
両軸受リール1では、第1制動部17のマグネット51を第1フランジ46の磁性部50と対向して配置することによって、スプール11の回転が制動される。この構成では、第1制動部17をスプール11の第1フランジ46に接触させることなく、スプール11の回転を効率的に制動することができる。
【0094】
両軸受リール1では、第1制動部17のマグネット51を第1フランジ46の磁性部50の平坦面50aに対向して配置することによって、スプール11の回転をより効率的に制動することができる。
【0095】
両軸受リール1では、磁性部50とマグネット51との間の対向距離を変更するだけで、釣り人が所望する第1制動力を容易に調整することができる。
【0096】
両軸受リール1では、第1制動部17、および、駆動機構7は、第1本体部25に配置される。回転伝達機構15は、第2本体部27に配置される。このように構成しても、第1制動部17は、スプール11の第1フランジ46を直接的に制動することができる。すなわち、本両軸受リール1では、スプール11の回転を効率的に制動することができる。
【0097】
両軸受リール1では、第1制動部17は、第1本体部25に配置され、スプール11の回転を制動する。第2制動部21は、第2本体部27に配置され、スプール11の回転を制動する。この構成では、第1制動部17、および、第2制動部21の両方によって、スプール11の回転を制動することができる。
【0098】
両軸受リール1では、第2制動部21がスプール11の回転に応じて第2本体部27と接触し、スプール11に対して摩擦力を発生させる。これにより、スプール11の回転を直接的に制動することができる。すなわち、本両軸受リール1では、スプール11の回転を効率的に制動することができる。
【0099】
両軸受リール1では、第2制動部21の第2制動力が第2調整部23によって調整されるので、釣り人が所望する第2制動力を容易に調整することができる。
【0100】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0101】
前記実施形態では、Oリング43が環状溝10に配置され、Oリング43が軸受41cの内輪を押圧する場合の例が、示された。軸受41cの内輪を押圧する構成は、図7に示すように構成されてもよい。
【0102】
この場合、筒状部材65がOリング43の径方向外側に配置される。筒状部材65の一端部65aは、スプール軸9の外周面に配置される。筒状部材65の一端部65aは、軸受41cの内輪に接触する。
【0103】
筒状部材65の内周面65bは、筒状部材65の一端部65aから筒状部材65の他端部に向けて、拡径されている。この構成では、Oリング43が、環状溝10の底面10aに配置された状態において、筒状部材65の内周面を押圧する。筒状部材65は、Oリング43の押圧力によって、軸受41cの内輪を押圧する。筒状部材65、および、上記の糸巻き胴部45の軸方向端の間には、隙間が設けられる。
【符号の説明】
【0104】
1 両軸受リール
3 リール本体
5 ハンドル
7 駆動機構
9 スプール軸
9b 第2端部
9c 中央部
11 スプール
13 レベルワインド機構
15 回転伝達機構
17 第1制動部
19 第1調整部
21 第2制動部
25 第1本体部
27 第2本体部
45 糸巻き胴部
46 第1フランジ
47 第2フランジ
50 磁性部
50a 平坦面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7