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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175559
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20231205BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231205BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20231205BHJP
   G09G 5/38 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G09G5/00 510A
G09G5/00 550C
G09G5/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088061
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山岡 亮
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA14
2H199DA15
2H199DA30
2H199DA33
2H199DA43
2H199DA44
2H199DA46
3D344AA21
3D344AA30
3D344AC25
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA04
5C182AB14
5C182AB15
5C182AB25
5C182AB31
5C182AC35
5C182BA14
5C182BC26
5C182CB42
5C182CB44
5C182CC24
5C182DA44
5C182DA64
(57)【要約】
【課題】虚像表示の視認性を向上させるヘッドアップディスプレイ(HUD)を提供する。
【解決手段】HUD10は、車両1に搭載されるように構成され、画像の表示光を車両1に設けられたFWS3に反射させることで、車両1の乗員から視認可能であり、車両1の外界における景色と重畳する虚像VRIを表示する。HUD10は、表示光を発する表示器20と、表示光をFWS3へ導光する光学系30と、虚像VRIの表示位置を移動させるように、表示光による光路OPTを変更する光路変更機構40と、虚像表示に関する制御を行う制御ユニット50,250と、を備える。制御ユニット50,250は、車両1が走行する道路の勾配情報を取得する勾配情報取得部60と、勾配情報に応じて虚像VRIの表示位置が移動するように、光路変更機構40を駆動させる機構駆動制御部61,261と、を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載されるように構成され、画像の表示光を前記車両に設けられた透光部材(3)に反射させることで、前記車両の乗員から視認可能であり、前記車両の外界における景色と重畳する虚像(VRI)を表示するヘッドアップディスプレイであって、
前記表示光を発する表示器(20)と、
前記表示光を前記透光部材へ導光する光学系(30)と、
前記虚像の表示位置を移動させるように、前記表示光による光路を変更する光路変更機構(40)と、
虚像表示に関する制御を行う制御ユニット(50,250)と、を備え、
前記制御ユニットは、
前記車両が走行する道路の勾配情報を取得する勾配情報取得部(60)と、
前記勾配情報に応じて前記虚像の表示位置が移動するように、前記光路変更機構を駆動させる機構駆動制御部(61,261)と、を有する、ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記制御ユニットは、
前記勾配情報に応じて前記虚像の表示位置が移動するように、前記表示器上での前記画像の描画位置をオフセット処理する描画制御部(263)と、
前記光路の変更及び前記オフセット処理のうち、前記表示位置の移動に用いる方法を判断する移動方法判断部(264)と、をさらに備える、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記勾配情報に基づく前記表示位置の目標移動量が閾値以下の場合に、前記オフセット処理により前記表示位置が移動する、請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記勾配情報に基づく前記表示位置の目標移動量が閾値を超える場合に、前記光路の変更により前記表示位置が移動する、請求項2又は3に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記光学系は、
前記表示光を反射する第1ミラー(31)と、
前記光路上において前記第1ミラーと前記透光部材との間に配置され、前記表示光を反射する第2ミラー(32)と、を備え、
前記光路変更機構は、前記第1ミラー及び前記第2ミラーのうち前記第2ミラーの姿勢を変更することにより、前記光路を変更する、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、車両において虚像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるように構成され、表示光をフロントウインドシールドに反射させることで、車両の乗員から視認可能な虚像を表示するヘッドアップディスプレイが知られている。特許文献1に開示のヘッドアップディスプレイは、勾配情報を取得し、勾配情報に応じて表示器の画面上において画像を表示する画素をオフセットする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-179745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、表示器の画面の大きさによって移動量が制約を受けるため、虚像の表示位置を大きく移動させるべき場合に、十分に表示位置を移動できない。このため、虚像の視認性を低下することが懸念される。
【0005】
この明細書の開示による目的のひとつは、虚像表示の視認性を向上させるヘッドアップディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された態様のひとつは、車両(1)に搭載されるように構成され、画像の表示光を車両に設けられた透光部材(3)に反射させることで、車両の乗員から視認可能であり、車両の外界における景色と重畳する虚像(VRI)を表示するヘッドアップディスプレイであって、
表示光を発する表示器(20)と、
表示光を透光部材へ導光する光学系(30)と、
虚像の表示位置を移動させるように、表示光による光路を変更する光路変更機構(40)と、
虚像表示に関する制御を行う制御ユニット(50,250)と、を備え、
制御ユニットは、
車両が走行する道路の勾配情報を取得する勾配情報取得部(60)と、
勾配情報に応じて虚像の表示位置が移動するように、光路変更機構を駆動させる機構駆動制御部(61,261)と、を有する。
【0007】
このような態様によると、道路の勾配に応じて車両と道路との相対的な位置関係は変わる。それに伴って虚像の表示位置を移動させるので、虚像と、これに重畳する道路を含む景色とを、視認性が良好でない位置関係とすることは回避できる。ここで、虚像の表示位置の移動は、光学系により形成された光路を、光路変更機構を駆動させることで変更して実現される。表示器の制約にとらわれずに虚像の表示位置をより適切な位置に移動可能となるので、虚像表示の視認性を向上させることができる。
【0008】
なお、括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】HUDの車両への搭載状態を示す図。
図2】制御ユニットを中心としたHUDの構成図。
図3】光学系及び虚像の表示位置を説明する図。
図4】第2ミラー及び光路変更機構の斜視図。
図5】制御ユニットの機能ブロックを示す構成図。
図6】勾配と虚像の表示位置との関係を説明する図。
図7】虚像の表示位置と道路との関係を説明する図。
図8】表示処理の一例を示すフローチャート。
図9】制御ユニットの機能ブロックを示す構成図。
図10】コンテンツ画像のオフセット処理を説明する図。
図11】表示処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、本開示の第1実施形態によるヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、以下HUD)10は、車両1に搭載されるように構成される。ここで車両1とは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、移動しないゲーム用筐体等の各種乗り物を含むように広義に解される。特に本実施形態の車両1は、四輪の自動車となっている。なお、以下の説明では、前、後、上、下、左及び右の各方向は、水平面上の四輪自動車である車両を基準として、表記される。
【0012】
HUD10は、車両1のインストルメントパネル2に設置されている。HUD10は、車両1のフロントウインドシールド(以下、FWS)3へ向けて表示光を投影する。これによりHUD10は、画像を、車両1の乗員(例えばドライバ)により視認可能な虚像VRIとして表示する。すなわち、FWS3にて反射された表示光が車両1の室内に設定された視認領域EBに到達することにより、視認領域EBにアイポイントEPを位置させた乗員は、各種情報を視認することができる。
【0013】
車両1のFWS3は、例えばガラス又は合成樹脂により透光性の板状に形成され、インストルメントパネル2よりも上方に配置されている。FWS3は、前方から後方へ向かう程、インストルメントパネル2に対して離れるように傾斜して配置されている。FWS3は、HUD10から画像の表示光が投影される反射面を、滑らかな凹面状又は平面状に形成している。乗員は、FWS3を通じて外界の景色を視認することができる。なお、表示光は、FWS3に投影されなくてもよい。例えばFWS3とは別に透光性の板状に形成されたコンバイナが車両1の室内に設置されて、表示光が当該コンバイナに投影される構成であってもよい。
【0014】
視認領域EBは、HUD10により表示される虚像VRIが所定の規格を満たす(例えば虚像VRI全体が所定の輝度以上となる等)ことで、車両1の乗員により視認可能となる空間領域であって、アイボックスとも称される。視認領域EBは、典型的には、車両1に設定されたアイリプスと重なるように設定される。アイリプスは、車両1の室内における乗員のアイポイントEPの空間分布を統計的に表したアイレンジに基づいて、仮想の楕円体状に設定されている。
【0015】
HUD10は、ハウジング11、表示器20、光学系30、光路変更機構40及び制御ユニット50を含む構成である。
【0016】
図1に示すハウジング11は、インストルメントパネル2内に設置されている。ハウジング11は、HUD10の他の要素を収容する中空の箱状を呈している。ハウジング11は、FWS3と対向する上方に、窓部11aを有している。窓部11aは、物理的に開口していてもよいし、表示光を透過可能な防塵シートで覆われていてもよい。
【0017】
図2,3に示す表示器20は、例えば透過型の液晶式表示器である。表示器20は、液晶パネル及びバックライトをケーシングに収容して形成されている。表示器20は、バックライトにより液晶パネルの画面21を透過照明することで、表示に寄与する表示光を投射するようになっている。画面21は、複数の画素が2次元配列された矩形状を呈している。
【0018】
図2,3に示す光学系30は、表示器20から発光された表示光をFWS3へ導光する。光学系30により、表示器20からFWS3を経て視認領域EBへ至る表示光の光路OPTが構成される。光学系30は、例えば第1ミラー31及び第2ミラー32を含む構成である。第1ミラー31は、光路OPT上において表示器20と第2ミラー32との間に配置されている。第2ミラー32は、光路OPT上において第1ミラー31とFWS3との間に配置されている。表示光の到達範囲は、表示器20からFWS3へ向かうに従って光路OPTに対する垂直方向へ拡がり得る。このため、第2ミラー32の体格は、第1ミラー31よりも大きく形成されている。
【0019】
第1ミラー31は、例えば合成樹脂又はガラス等により矩形板状に形成されている。第1ミラー31は、その表面にアルミニウムからなる反射膜を蒸着させること等によって形成された反射面31aを有している。反射面31aは、滑らかな平面状、滑らかな凸面状等に形成される。表示器20から第1ミラー31に入射した表示光は、反射面31aにより第2ミラー32へ向けて反射される。
【0020】
第2ミラー32は、図4に詳細を示すように反射体33及びホルダ34を含む構成である。反射体33は、例えば合成樹脂又はガラス等により、矩形板状に形成されている。反射体33は、その表面にアルミニウムからなる反射膜を蒸着させること等によって形成された反射面33aを有している。反射面33aは、例えば滑らかな凹面状に形成される。
【0021】
第1ミラー31から第2ミラー32に入射した表示光は、反射面33aによりFWS3へ向けて反射される。中央部が凹む凹面状の反射面33aでの反射によって、虚像VRIを拡大することが可能である。さらには、反射面33aが自由曲面状に形成されることによって、拡大された虚像VRIの歪みを低減することが可能である。
【0022】
第2ミラー32は、FWS3と上下方向に対向した配置となっている。第2ミラー32の反射面33aにより反射された表示光は、窓部11aを透過してHUD10の外部へ射出される。そして、第2ミラー32の姿勢に応じた投射方向にてFWS3へと入射する。その結果、FWS3により反射された表示光が乗員のアイポイントEPに到達することで、当該乗員は虚像VRIを視認可能となる。
【0023】
FWS3が透光性を有することを利用して、虚像VRIを、車両1の外界における景色と重畳した表示とすることが可能である。景色との重畳とは、外界における特定の物標との重畳を含んでいてよい。特定の物標とは、例えば前方カメラ等の自律センサ92によって検出された車両、歩行者、障害物等の物標であってよい。
【0024】
ホルダ34は、反射体33を保持及び保護している。ホルダ34は、合成樹脂又は金属等により形成されている。ホルダ34は、反射体33を保持する保持枠34a、回転軸34b、及び駆動伝達軸34cを有している。回転軸34bは、反射体33の両端から外側へ突出するように形成されている。回転軸34bは、支持ユニット39に支持されている。支持ユニット39は、ハウジング11に対して固定されている。こうして第2ミラー32は、回転軸34bに沿った回転中心線A1まわりに回転可能に支持されている。すなわち、第2ミラー32は、回転中心線A1まわりの回転によって反射面33aの向きを変化させ、その姿勢を変更可能に構成されている。
【0025】
具体的に、図3にて破線で示すように、反射面33aがより上向きになる(すなわち、第2ミラー32が寝る)と、表示器20上の画像の中心とアイポイントEPを結ぶ光線において、FWS3を通る位置がより前方及び下方へ移動する。これにより、乗員のアイポイントEPから視認される虚像VRIの表示位置は下方へ移動する。
【0026】
一方で図3にて実線で示すように、反射面33aがより下向きになる(すなわち、第2ミラー32が起立する)と、表示器20上の画像の中心とアイポイントEPを結ぶ光線において、FWS3を通る位置がより上方及び後方へ移動する。これにより、乗員のアイポイントEPから視認される虚像VRIの表示位置は上方へ移動する。
【0027】
この関係は、光学系30の構成又は表示器20及び光学系30の配置によって、逆になることもあり得る。例えば、反射面33aがより上向きになる(第2ミラー32が寝る)と、虚像VRIの表示位置が上方へ移動し、反射面33aがより下向きになる(第2ミラー32が起立する)と、虚像VRIの表示位置が下方へ移動する関係も採用され得る。すなわち、表示器20上の画像の中心とアイポイントEPを結ぶ光線において、第2ミラー32を通る位置のずれ量によっても関係は変わり得る。
【0028】
ここで、HUD10において表示器20及び光学系30は、第2ミラー32に予め設定される機械的又は制御的な可動範囲に対して、視認領域EBが乗員のアイポイントEPの想定位置を外れないように設計される。すなわち、第2ミラー32の姿勢が変更されても、固定された状態のアイポイントEPから視認領域EBが外れないように、HUD10は構成される。
【0029】
例えば、第2ミラー32の可動に伴う視認領域EBの上下方向の移動量を所定量以下にするように、第2ミラー32が配置されてよい。また例えば、第2ミラー32の可動に伴って視認領域EBが上下方向に移動しても、乗員のアイポイントEPの想定位置をカバーできるような、所定の大きさ以上の視認領域EBの上下方向寸法をもつように、表示器20及び光学系30が構成されてよい。
【0030】
回転軸34bには、弾性部材36が配置されている。弾性部材36は、例えば回転軸34bに挿通された金属製のねじりコイルばねである。弾性部材36の一端部は、支持ユニット39を通じてハウジング11に保持されている。弾性部材36の他端部は、ホルダ34に連繋している。こうした保持及び連繋下において、弾性部材36は、第2ミラー32に対して復元力を作用させることで、第2ミラー32を回転軸34bの回転方向へと弾性的に押さえ付けている。
【0031】
駆動伝達軸34cは、光路変更機構40からの駆動力(例えば引張力等)を、回転軸34bに対する回転方向の力に変換して、第2ミラー32へと伝達する。駆動伝達軸34cは、第2ミラー32のうち回転軸34bとは離間した位置において、反射面33aの軸方向外側となる右側ないし左側へ、正円柱状に張り出した形状を有する。駆動伝達軸34cの円柱中心線は、回転中心線A1に対して実質並行に偏心した偏心線A2として、設定されている。駆動伝達軸34cには、延伸溝が設けられている。延伸溝は、駆動伝達軸34cの円柱面から、偏心線A2を基準とした径方向内側へ向かって、凹んでいる。延伸溝は、偏心線A2まわりに湾曲延伸したV字溝状に、形成されている。
【0032】
光路変更機構40は、第2ミラー32の姿勢を変更することで、表示器20から視認領域EBへ至る表示光の光路OPTを変更する機構である。この光路OPTの変更は、例えば光学系30の構成要素31,32の経由順序自体は維持され、構成要素31,32への入射角及び反射角が変更されるような、小幅な範囲での変更であってよい。光路変更機構40は、電動モータ41、運動変換部42及び連結アーム43を含む構成である。電動モータ41は、例えばステッピングモータである。電動モータ41は、制御ユニット50から入力された電気信号に応じた回転量分、モータ軸を回転駆動する。運動変換部42は、モータ軸の回転運動を往復直線運動へ変換する。
【0033】
連結アーム43は、例えば合成樹脂により形成され、運動変換部42と第2ミラー32の駆動伝達軸34cとを連結する棒状を呈している。連結アーム43において駆動伝達軸34c側には、二股に分岐した接触部がそれぞれ部分球状に形成されている。これらの接触部は、駆動伝達軸34cを挟むように延伸溝に嵌合している。こうした嵌合により、光路変更機構40は、連結アーム43を駆動伝達軸34cと連繋させている。
【0034】
運動変換部42が電動モータ41によるモータ軸の回転量を変換することで、当該変換による直線移動量の分、連結アーム43は引っ張られる。それに連動して一対の接触部は、駆動伝達軸34cを挟み込んだ状態で、延伸溝上を偏心線A2のまわりに摺動しながら、駆動伝達軸34c全体を引っ張る。弾性部材36による付勢力に反して、駆動伝達軸34cが連結アーム43側へと引き寄せられることで、第2ミラー32が回転中心線A1のまわりに駆動される。
【0035】
この結果、第2ミラー32の姿勢が変更される。例えば光路変更機構40が駆動伝達軸34cへの引張力上昇によりストロークを増大させると、第2ミラー32の反射面33aはより上向きになる。逆に、光路変更機構40が駆動伝達軸34cへの引張力低下によりストロークを減少させると、反射面33aはより下向きになる。こうして光路変更機構40は、表示光の光路OPTを変更する。光路OPTの変更に伴って、虚像VRIの表示位置は、上下方向に移動する。本実施形態のHUD10は、虚像VRIの表示位置を高頻度で上下移動させるために上述の構成が採用され、第2ミラー32が高頻度の姿勢変更に対する高い耐久性を備える。
【0036】
制御ユニット50は、HUD10の虚像表示に関する制御を行うユニットである。制御ユニット50は、ハウジング11の内部に格納されていてもよい。制御ユニット50は、ハウジング11の外部に配置されていてもよい。
【0037】
図2に示すように、制御ユニット50は、専用コンピュータ51により実現されてよい。制御ユニット50を構成する専用コンピュータ51は、メモリ51a及びプロセッサ51bを少なくとも1つずつ有していてよい。メモリ51aは、プロセッサ51bにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を日一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体及び光学媒体等のうち、少なくとも1種類の非繊維的実体的記憶媒体であってよい。さらにメモリ51aとして、例えばRAM(Random Access Memory)等の書き換え可能な揮発性の記憶媒体が設けられていてもよい。プロセッサ51bは、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics processing Unit)、及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも1種類をコアとして含む。
【0038】
制御ユニット50は、さらにHUD10内部の他の構成要素(具体的に、表示器20及び光路変更機構40)と電気信号を通信するためのインターフェース、及びHUD10外部の車載ECU(Electronic Control Unit)91と電気信号を通信するためのインターフェースを有している。この通信は、車内ネットワークによって実現されてよい。車内ネットワークは、Ethernet、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)、FlexRay、MOST(Media Oriented Systems Transport)等により実現される。Ethernet、CAN、CXPI、FlexRay、MOSTは登録商標である。
【0039】
図5に示すように、制御ユニット50は、勾配情報取得部60、機構駆動制御部61、コンテンツ情報取得部62及び描画制御部63を、プログラムを実行するプロセッサ51bにより実現される機能ブロックとして含む構成である。
【0040】
勾配情報取得部60は、HUD10外部の車載ECU91等から車両1が走行する道路の勾配情報を取得する。勾配情報は、車両1の周辺のうち特に虚像VRIが表示される前方の勾配に関する情報を含む。
【0041】
例えば勾配情報は、車両1に搭載された前方カメラ等の自律センサ92の検出データ又は検出データに基づいて車載ECU91が前方道路を認識した認識結果そのものであってよい。この場合、勾配情報取得部60は、検出データ又は認識結果から、車両1が走行する道路の勾配を抽出する。あるいは、勾配情報は、検出データ又は認識結果に基づいて、車載ECU91により勾配に関する情報が抽出されることで、生成されたものであってよい。
【0042】
また例えば、勾配情報は、車両1が取得した地図情報そのものであってよい。この場合、勾配情報取得部60は、地図情報から、車両1が走行する道路の勾配を抽出する。あるいは、勾配情報は、地図情報に基づいて、車載ECU91により勾配に関する情報が抽出されることで、生成されたものであってよい。地図情報は、例えば地図DB93に記憶されている。地図情報は、カーナビゲーションシステムの経路案内に用いられる地図情報であってもよい。地図情報は、自動運転に用いられる高精度地図であってもよい。地図情報は、工事情報、道路の損傷状態等、V2X等の通信を用いて車両1が取得する、動的な地図情報を含んでいてもよい。
【0043】
また、勾配情報取得部60は、自律センサ92からの情報及び地図情報が併用されて生成された勾配情報を取得してもよい。さらにまた、勾配情報取得部60は、他の車両やインフラストラクチャーからV2X通信によって勾配情報を取得してもよい。
【0044】
機構駆動制御部61は、勾配情報取得部60が取得した勾配情報に基づき、光路変更機構40を制御する。機構駆動制御部61は、車両1が走行する道路が水平面HPに沿った平坦な道路である場合(通常時)、座席に着座する乗員からみて俯角3~4度となる基準位置STP(図6,7参照)に、虚像VRIが表示されるように、光路変更機構40を制御する。
【0045】
一方で、車両1前方の道路が車両1の現在位置における勾配に対して上り勾配である場合には、FWS3を通じて迫り上がるように視認される前方の道路に対して、虚像VRIの表示位置は基準位置STPよりも上方に変更されるべきである。したがって、機構駆動制御部61は、基準位置STPよりも上方の、座席に着座する乗員からみて実質的に水平となるような上方位置UPPに、虚像VRIが表示されるように、光路変更機構40を駆動させる。なお、ここでいう基準位置STP、上方位置UPP等の虚像VRIの表示位置は、道路を基準とした表示位置ではなく、車両1を基準とした表示位置である。
【0046】
車両1前方の道路が車両1の現在位置における勾配に対して上り勾配である場合とは、図6のP1に示されるような、車両1の現在位置が実質的に水平で、かつ、前方の上り勾配の坂に差し掛かるような場合を含んでよい。また、車両1前方の道路が車両1の現在位置における勾配に対して上り勾配である場合とは、図6のP3に示されるような、車両1の現在位置が下り勾配の坂で、かつ、前方の実質的に水平な道路に差し掛かる場合を含んでよい。
【0047】
また、車両1前方の道路が車両1の現在位置における勾配に対して上り勾配である場合とは、車両1の現在位置が上り勾配で、かつ、前方がさらに勾配が大きな上り勾配の坂となっている場合を含んでよい。車両1前方の道路が車両1の現在位置における勾配に対して上り勾配である場合とは、車両1の現在位置が下り勾配で、かつ、前方には下り勾配が続くが、勾配が小さくなる場合を含んでよい。車両1前方の道路が車両1の現在位置における勾配に対して上り勾配である場合とは、車両1の現在位置が下り勾配で、かつ、前方の上り勾配の坂に差し掛かるような場合を含んでよい。
【0048】
すなわち、機構駆動制御部61は、車両1の現在位置における勾配と、車両1に対する前方位置における勾配に基づいて、光路変更機構40を制御する。ここでの前方位置における勾配とは、車両1に対して前方に結像する虚像VRIの結像距離に対応する道路位置の勾配であってよい。換言すると、ここでの前方位置は、虚像VRIの結像位置を車両1の鉛直面に沿って道路側に投影した位置であってよい。
【0049】
機構駆動制御部61は、現在位置における勾配と前方位置における勾配との勾配差に基づいて、虚像VRIの表示位置を基準位置STPからより上方に変更するか否かを決定してよい。勾配差が予め設定された閾値を超える場合、虚像VRIの表示位置が基準位置STPから上方位置UPPに変更されてよい。勾配差が当該閾値以下である場合、虚像VRIの表示位置は基準位置STPのままであってよい。
【0050】
閾値は、例えば虚像VRIが道路に埋もれて視認されるか否かによって決定されていてよい。すなわち、基準位置STPに虚像VRIを表示した場合に、虚像VRIが道路に埋もれて視認されることが想定される場合に、虚像VRIの表示位置が上方位置UPPに変更されるようにすればよい。基準位置STPから上方位置UPPへの移動量についても、勾配差が大きい程、増大するように、動的に設定されてもよい。
【0051】
さて、図6のP2に示されるような、車両1が坂の頂上に差し掛かり前方の道路が見え難い又は見えない場合、機構駆動制御部61は、虚像VRIの表示位置が基準位置STPとなるように、光路変更機構40を制御してもよい。またこの場合、機構駆動制御部61は、虚像VRIの表示位置が基準位置STPよりも下方の下方位置となるように、光路変更機構40を制御してもよい。
【0052】
コンテンツ情報取得部62は、HUD10外部の車載ECU91等から、虚像VRIとして表示するコンテンツに関する情報を取得する。コンテンツに関する情報とは、虚像VRIとして表示すべきコンテンツ画像データそのものであってもよいし、画像を生成するための情報であってもよい。画像を生成するための情報は、例えば自車速の値等の車両状態であってよい。画像を生成するための情報は、車両1の異常状態情報、車両1に接近する物体の情報等の乗員に警告を実施するための情報であってよい。
【0053】
描画制御部63は、コンテンツ情報取得部62が取得した情報に基づき、表示器20の画面21に、虚像VRIとして表示するコンテンツ画像を描画する。通常、HUD10の表示においてコンテンツを表示しない空白部分は、前方の景色の視認を妨げないように、虚像VRIを結像させない。このため、描画制御部63は、空白部分に対応する画素から表示光が実質的に発光されないように、すなわち表示光の発光が規制されるように、表示器20を制御する。
【0054】
次に、虚像VRIの表示位置変更機能を実現するための表示方法の例を、図8のフローチャートを用いて説明する。ステップS1~S4に示される一連の処理は、所定時間毎、又は所定のトリガーに基づき、実行される。
【0055】
S1では、勾配情報取得部60は、車両1が走行する道路の勾配情報を取得する。S1の処理後、S2へ進む。
【0056】
S2では、機構駆動制御部61は、S1で取得した勾配情報に応じて、虚像VRIの表示位置を決定する。S2の処理後、S3へ進む。
【0057】
S3では、機構駆動制御部61は、S2で決定した虚像VRIの表示位置から、当該表示位置を実現する光路変更機構40の駆動量を算出し、当該光路変更機構40へ電気信号(電動モータ41を駆動する信号)を送信する。当該信号に従って光路変更機構40が駆動することにより、光学系30の光路OPTが変更される。S3の処理後、S4へ進む。
【0058】
S4では、描画制御部63がコンテンツ画像を描画し、これに基づく電気信号(映像信号)を表示器20に送信する。表示器20が当該コンテンツ画像を画面21に表示することにより、乗員から視認可能な虚像VRIは、S2にて決定された表示位置に表示される。S4を以って一連の処理を終了する。
【0059】
以上説明した第1実施形態を以下にまとめる。第1実施形態によると、道路の勾配に応じて車両1と道路との相対的な位置関係は変わる。それに伴って虚像VRIの表示位置を移動させるので、虚像VRIと、これに重畳する道路を含む景色とを、視認性が良好でない位置関係とすることは回避できる。ここで、虚像VRIの表示位置の移動は、光学系30により形成された光路OPTを、光路変更機構40を駆動させることで変更して実現される。表示器20の制約にとらわれずに虚像VRIの表示位置をより適切な位置に移動可能となるので、虚像表示の視認性を向上させることができる。
【0060】
また、第1実施形態によると、光路変更機構40は、第1ミラー31及び第2ミラー32のうち第2ミラー32の姿勢を変更する。この構成では、光路OPTの変更要素が光路OPTのうちHUD10内部において視認領域EBに極力近い位置に配置されている。すなわち、光路OPTを変更した場合に、光学系30内で大きな光路OPTの変更が発生することが抑制されている。故に、光路OPTの変更に対応するための光学系30自体の体格増大が抑制される。
【0061】
なお、第1実施形態のFWS3ないしこれを代替可能なコンバイナは、表示光を反射させる「透光部材」に相当する。
【0062】
(第2実施形態)
図9,10に示すように、第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0063】
第2実施形態のHUD10は、光学系30における表示光の光路OPTを変更して虚像VRIの表示位置を移動させる方法と、表示器20の画面21上のコンテンツ画像をオフセットして虚像VRIの表示位置を移動させる方法とを、併用している。
【0064】
図9に示す制御ユニット250は、勾配情報取得部60、コンテンツ情報取得部62、移動方法判断部264、機構駆動制御部261及び描画制御部263を、プログラムを実行するプロセッサ51bにより実現される機能ブロックとして含む構成である。勾配情報取得部60及びコンテンツ情報取得部62は、第1実施形態と同様の構成である。
【0065】
移動方法判断部264は、勾配情報取得部60が取得した勾配情報に応じて、虚像VRIの表示位置を移動させる方法を判断する。判断には、コンテンツ情報取得部62が取得したコンテンツ情報がさらに用いられてもよい。
【0066】
具体的に、移動方法判断部264は、光学系30における表示光の光路OPTを変更して虚像VRIの表示位置を移動させる方法、及び表示器20の画面21上のコンテンツ画像をオフセットして虚像VRIの表示位置を移動させる方法のうち、どの方法で虚像VRIの表示位置を移動させるかを判断する。
【0067】
一方の方法のみを用いることが決定された場合、全体の目標移動量が、用いられる方法に割り当てられる。一方で、移動方法判断部264は、両方法を同時に使用することを判断してもよい。この場合、全体の目標移動量のうち一部が、光路OPTを変更して虚像VRIの表示位置を移動させる方法に割り当てられる。全体の目標移動量のうち他部が、コンテンツ画像をオフセットして虚像VRIの表示位置を移動させる方法に割り当てられる。
【0068】
機構駆動制御部261は、光路OPTを変更して虚像VRIの表示位置を移動させる方法を用いることを移動方法判断部264が決定した場合に、当該方法に割り当てられた移動量を実現するように、光路変更機構40を駆動させる。
【0069】
描画制御部263は、コンテンツ画像をオフセットして虚像VRIの表示位置を移動させる方法を用いることを移動方法判断部264が決定した場合に、当該方法に割り当てられた移動量を実現するように、コンテンツ画像をオフセット処理して描画する。一方で、描画制御部263は、コンテンツ画像をオフセットして虚像VRIの表示位置を移動させる方法を用いないことを移動方法判断部264が決定した場合に、コンテンツ画像をオフセット処理せずに描画する。
【0070】
ここで、オフセット処理について図10を用いて詳細説明する。描画制御部263は、オフセット処理が要求されない場合には、画面21上におけるデフォルトの位置CP0にコンテンツ画像CIを描画する。オフセット処理が要求された場合には、画面21上におけるデフォルトの位置CP0からオフセット方向OFFD及びオフセット画素数OFFA分ずれた位置(すなわちオフセット位置CP1)に、コンテンツ画像CIを描画する。
【0071】
オフセット方向OFFDは、表示器20の画面21の上下方向と虚像VRIの上下方向との光学的な関係に基づいて決まる。また、オフセット画素数OFFAは、画面21の寸法に対する虚像VRIの倍率に基づき、虚像VRIの移動量を画素数に換算することで決まる。
【0072】
そして、コンテンツ画像CIがオフセットされた場合に、画面21の端部とコンテンツ画像CIの端部との間に、画素余裕代PMが残存することが好ましい。画素余裕代PMがない場合は、オフセット処理しない場合に表示されるはずだったコンテンツ画像の全体のうち一部が画素不足により表示できない状態になっている可能性がある。
【0073】
次に、移動方法判断部264による判断条件の詳細について、以下にいくつかの例を示す。
【0074】
第1の例では、移動方法判断部264は、勾配情報に基づいて算出した現在位置における勾配と前方位置における勾配との勾配差から、虚像VRIが道路に埋もれることを回避するような、表示位置の基準位置STPからの移動量を算出する。
【0075】
基準位置STPからの移動量が閾値以下の場合、すなわち移動量が少ない場合には、移動方法判断部264は、画面21上のコンテンツ画像をオフセットさせることを決定する。基準位置STPからの移動量が閾値を超える場合、すなわち移動量が多い場合には、移動方法判断部264は、光路変更機構40を駆動させることを決定する。ここでの閾値は、予め固定の値に設定された、静的な閾値である。
【0076】
第2の例では、移動方法判断部264は、勾配情報に基づいて算出した現在位置における勾配と前方位置における勾配との勾配差から、虚像VRIが道路に埋もれることを回避するような、表示位置の基準位置STPからの移動量を算出する。次に、移動方法判断部264は、コンテンツ画像の全体を表示するために、表示器20の画面21にてオフセット可能なオフセット画素数OFFAの限界値を算出する。この限界値は、コンテンツ画像の上下方向寸法が大きくなる程、小さくなる。
【0077】
次に、移動方法判断部264は、表示位置の移動量をオフセット画素数OFFAに換算した画素換算の移動量を算出する、当該画素換算の移動値が限界値以下である場合には、移動方法判断部264は、画面21上のコンテンツ画像をオフセットさせることを決定する。画素換算の移動量が限界値を超える場合には、移動方法判断部264は、光路変更機構40を駆動させることを決定する。ここで判断に用いられる限界値は、コンテンツ画像の寸法に依存する、動的な閾値に相当する。
【0078】
すなわち、移動量が少なく表示器20の描画制御のみで表示位置の移動が可能である場合には、光路変更機構40が使用されず、表示器20のみが使用される。こうすることで、虚像VRIの表示位置を変更完了するまでの待機時間が短縮され、また、機構40を駆動するための消費電力を節約することができる。一方で、移動量が少なく表示器20の描画制御のみで表示位置の移動が不可能である場合には、光路変更機構40が使用される。こうすることで、大きな移動量にも対応することができる。また、画面21の寸法に対してコンテンツ画像の寸法が大きく、オフセットの余地が少ない場合でも、表示位置を移動させることが可能となる。
【0079】
次に、第2実施形態における、虚像VRIの表示位置変更機能を実現するための表示方法の例を、図11のフローチャートを用いて説明する。ステップS11~S16に示される一連の処理は、所定時間毎、又は所定のトリガーに基づき、実行される。
【0080】
S11では、勾配情報取得部60は、車両1が走行する道路の勾配情報を取得する。S11の処理後、S12へ進む。
【0081】
S12では、移動方法判断部264は、S11で取得した勾配情報に応じて、虚像VRIの表示位置を決定する。S12の処理後、S13へ進む。
【0082】
S13では、移動方法判断部264は、S12で決定された虚像VRIの表示位置を実現するための移動量が、上述の閾値以下であるか否かを判断する。S13にて肯定判定が下された場合、S14へ進む。S13にて否定判定が下された場合、S15へ進む。
【0083】
S14では、描画制御部263が、移動量に対応するオフセット画素数分、コンテンツ画像をオフセット処理して描画する。S14の処理後、S16へ進む。
【0084】
S15では、機構駆動制御部261が、移動量に対応する光路変更機構40の駆動量を算出し、当該光路変更機構40へ電気信号(電動モータ41を駆動する信号)を送信する。当該信号に従って光路変更機構40が駆動することにより、光学系30の光路OPTが変更される。また、描画制御部263が、コンテンツ画像をオフセット処理せずに描画する。S15の処理後、S16に進む。
【0085】
S16では、S14又はS15での描画に基づく映像信号が表示器20に送信される。表示器20がコンテンツ画像を画面21に表示することにより、乗員から視認可能な虚像VRIは、S12にて決定された表示位置に表示される。S16を以って一連の処理を終了する。
【0086】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0087】
変形例1としては、光路変更機構40は、第1ミラー31及び第2ミラー32のうち第2ミラー32の姿勢を変更する構成であってもよい。第2ミラー32は、表示器20に近い配置であるので、第1ミラー31よりも体格及び体格に伴う重量を小さく設計することができるので、光路変更機構40を駆動する際の消費電力を低減することができる。
【0088】
変形例2としては、光学系30は、1つのミラーを含む構成であってよく、光路変更機構40は、当該ミラーの姿勢を変更する構成であってよい。
【0089】
変形例3としては、光路変更機構40は、ミラーの姿勢以外を変更する方法で、光路OPTを変更してもよい。例えば光学系30に表示光の方向を偏向するプリズムを設け、光路変更機構40がこのプリズムの配置を変更することで、光路OPTを変更する構成であってもよい。
【0090】
変形例4としては、第2実施形態における限界値を高くするために、オフセット処理に加えて、コンテンツ画像を縮小する縮小処理が用いられてもよい。
【0091】
変形例5としては、表示器20は、透過型の液晶式表示器以外の表示器であってもよい。表示器20は、反射型の液晶式、自発光するマイクロLEDを配列したマイクロLED式、レーザスキャナ方式、及びDMD(Digital Micromirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing;登録商標)方式等の表示器であってよい。
【0092】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0093】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0094】
<技術的思想1>
車両(1)に搭載されるように構成され、画像の表示光を前記車両に設けられた透光部材(3)に反射させることで、前記車両の乗員から視認可能であり、前記車両の外界における景色と重畳する虚像(VRI)を表示するヘッドアップディスプレイであって、
前記表示光を発する表示器(20)と、
前記表示光を前記透光部材へ導光する光学系(30)と、
前記虚像の表示位置を移動させるように、前記表示光による光路を変更する光路変更機構(40)と、
虚像表示に関する制御を行う制御ユニット(50,250)と、を備え、
前記制御ユニットは、
前記車両が走行する道路の勾配情報を取得する勾配情報取得部(60)と、
前記勾配情報に応じて前記虚像の表示位置が移動するように、前記光路変更機構を駆動させる機構駆動制御部(61,261)と、を有する、ヘッドアップディスプレイ。
【0095】
<技術的思想2>
前記制御ユニットは、
前記勾配情報に応じて前記虚像の表示位置が移動するように、前記表示器上での前記画像の描画位置をオフセット処理する描画制御部(263)と、
前記光路の変更及び前記オフセット処理のうち、前記表示位置の移動に用いる方法を判断する移動方法判断部(264)と、をさらに備える、技術的思想1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0096】
<技術的思想3>
前記勾配情報に基づく前記表示位置の目標移動量が閾値以下の場合に、前記オフセット処理により前記表示位置が移動する、技術的思想2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0097】
<技術的思想4>
前記勾配情報に基づく前記表示位置の目標移動量が閾値を超える場合に、前記光路の変更により前記表示位置が移動する、技術的思想2又は3に記載のヘッドアップディスプレイ。
【0098】
<技術的思想5>
前記光学系は、
前記表示光を反射する第1ミラー(31)と、
前記光路上において前記第1ミラーと前記透光部材との間に配置され、前記表示光を反射する第2ミラー(32)と、を備え、
前記光路変更機構は、前記第1ミラー及び前記第2ミラーのうち前記第2ミラーの姿勢を変更することにより、前記光路を変更する、技術的思想1から4のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【符号の説明】
【0099】
1:車両、10:HUD、3:FWS(透光部材)、20:表示器、30:光学系、40:光路変更機構、50:制御ユニット、60:勾配情報取得部、61,261:機構駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11