(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175570
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231205BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20231205BHJP
E04F 13/07 20060101ALN20231205BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/20 Z
E04F13/07 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088082
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】奥村 修平
(72)【発明者】
【氏名】荒井 航介
(72)【発明者】
【氏名】宇▲高▼ 賢司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 則之
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20D
4F100AA20H
4F100AA21A
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4F100AB10A
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(57)【要約】
【課題】化粧シートと壁部との間に、空気やホコリ等の異物が噛み込むことに起因した、凸部が化粧シートの壁部側の表面に形成されたとしても、この凸部に基づく意匠性の低下が的確に抑制または防止された化粧シートを提供すること。
【解決手段】本発明の化粧シート100は、隠蔽層12と、印刷層14と、透明フィルム16と、樹脂コート層20とを備え、これらが、この順で積層された積層体で構成されるものであり、樹脂コート層20は、樹脂材料と、艶消しフィラー18とを含み、その表面が艶消しフィラー18の形状に追随した凸部20aを備える凹凸面で構成され、樹脂コート層20における、艶消しフィラー18の含有量が45体積%以上80体積%未満であることを満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隠蔽層と、
印刷層と、
透明フィルムと、
樹脂コート層とを備え、これらが、この順で積層された積層体で構成される化粧シートであって、
前記樹脂コート層は、樹脂材料と、艶消しフィラーとを含み、その表面が前記艶消しフィラーの形状に追随した凸部を備える凹凸面で構成され、前記樹脂コート層における、前記艶消しフィラーの含有量が45体積%以上80体積%未満であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
当該化粧シートは、前記樹脂コート層側の表面における60°光沢値が5%以下である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記艶消しフィラーは、メジアン径(D50)が7.0μm以上50.0μm以下である請求項1または2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記樹脂コート層は、前記平均厚さが5.0μm以上30.0μm以下である請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記樹脂コート層は、前記樹脂材料として、熱可塑性樹脂またはメラミン系樹脂を含有する請求項1に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記艶消しフィラーは、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン系樹脂およびシリカのうちの少なくとも1種を含有する請求項5に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンションのような住宅や、ビル、ホテル等のロビー、室内、オフィスおよび会議室の内壁や外装の施工においては、壁部の意匠性を高めるために、例えば、木目調、石目調や、ストライプ調等の模様を有する化粧シートを、壁部に貼付することが行われている。
【0003】
このような化粧シートでは、表面の艶を抑えて意匠性を付与したり、指紋等の汚染を抑制することを目的に、その表面にエンボス加工を施すことで、凸部を有する凹凸面で表面を構成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる構成をなしている化粧シートは、一般的に、ロールに巻回された長尺物であり、壁部への施工時には、ロールから送り出されつつ、壁部に貼り合わされることにより、壁部に対して貼付される。
【0005】
この時、すなわち、壁部への化粧シートの施工時に、化粧シートと壁部との間に、空気やホコリ等の異物が噛み込むことに起因して、化粧シートの表面に意図的に形成した凸部とは異なる、凸部が壁部側の表面において形成され、その結果、化粧シートの意匠性の低下を招くと言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、化粧シートと壁部との間に、空気やホコリ等の異物が噛み込むことに起因した、凸部が化粧シートの壁部側の表面に形成されたとしても、この凸部に基づく意匠性の低下が的確に抑制または防止された化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(6)に記載の本発明により達成される。
(1) 隠蔽層と、
印刷層と、
透明フィルムと、
樹脂コート層とを備え、これらが、この順で積層された積層体で構成される化粧シートであって、
前記樹脂コート層は、樹脂材料と、艶消しフィラーとを含み、その表面が前記艶消しフィラーの形状に追随した凸部を備える凹凸面で構成され、前記樹脂コート層における、前記艶消しフィラーの含有量が45体積%以上80体積%未満であることを特徴とする化粧シート。
【0009】
(2) 当該化粧シートは、前記樹脂コート層側の表面における60°光沢値が5%以下である上記(1)に記載の化粧シート。
【0010】
(3) 前記艶消しフィラーは、メジアン径(D50)が7.0μm以上50.0μm以下である上記(1)または(2)に記載の化粧シート。
【0011】
(4) 前記樹脂コート層は、前記平均厚さが5.0μm以上30.0μm以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の化粧シート。
【0012】
(5) 前記樹脂コート層は、前記樹脂材料として、熱可塑性樹脂またはメラミン系樹脂を含有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の化粧シート。
【0013】
(6) 前記艶消しフィラーは、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン系樹脂およびシリカのうちの少なくとも1種を含有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の化粧シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、化粧シートと壁部との間に、空気やホコリ等の異物が噛み込むことに起因した、凸部が形成されたとしても、この凸部が、化粧シートの壁部と反対側の表面から視認されるのを、的確に抑制または防止し得るため、化粧シートの意匠性の低下を的確に抑制または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の化粧シートの実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の化粧シートを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
(化粧シート10)
本発明の化粧シート10は、隠蔽層12と、印刷層14と、透明フィルム16と、樹脂コート層20とを備え、これらが、この順で積層された積層体で構成されるものであり、樹脂コート層20は、樹脂材料と、艶消しフィラー18とを含み、その表面が艶消しフィラー18の形状に追随した凸部20aを備える凹凸面で構成され、樹脂コート層20における、艶消しフィラー18の含有量が45体積%以上80体積%未満であることを満足する。
【0018】
これにより、ロールに巻回された長尺物である化粧シート10を、マンションのような住宅や、ビル、ホテル等のロビー、室内、オフィスおよび会議室等が備える壁部に対して貼付する壁部への施工時において、ロールから送り出しつつ、壁部に貼り合わせた際に、化粧シート10と壁部との間に、空気やホコリ等の異物が噛み込むことに起因して、化粧シート10の壁部側の表面に凸部が形成されたとしても、ユーザーが樹脂コート層20側、すなわち化粧シート10の壁部と反対側の表面から見たときに、この凸部がユーザーにより視認されるのを、的確に抑制または防止することができる。したがって、この凸部に基づく、化粧シート10の意匠性の低下を的確に抑制または防止することができる。
【0019】
以下、本発明の化粧シート10について、このものを構成する各部(各層)について説明する。
【0020】
図1は、本発明の化粧シートの実施形態を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図3の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0021】
(隠蔽層12)
隠蔽層12は、化粧シート10を、壁部に貼付した際に、壁部側に位置する最内層、すなわち、ユーザーにより視認される化粧シート10の表面と反対側に位置する最内層を構成する。
【0022】
この隠蔽層12が壁部側に位置する最内層を構成することにより、壁部、換言すれば、化粧シート10を施工する施工面を、隠蔽層12の壁部と反対側に位置する印刷層14に対して隠蔽することができる。その結果、壁部(施工面)が、樹脂コート層20側、すなわち化粧シート10の表面側から視認されるのを、的確に抑制または防止することができる。
【0023】
また、この隠蔽層12は、ユーザーが樹脂コート層20側から見る際に、後述する印刷層14との組み合わせに応じて、印刷層14が備える模様の視認性を向上させたり、色彩を変化させる機能をも有している。
【0024】
この隠蔽層12は、本実施形態では、樹脂フィルム12aと、金属蒸着層12bとからなり、樹脂フィルム12aが壁部側、金属蒸着層12bが印刷層14側に位置する積層体で構成される。
【0025】
樹脂フィルム12aは、樹脂材料を主材料として構成され、金属蒸着層12bを支持する基材として機能するものである。
【0026】
なお、本明細書中において、「主材料」とは、このものを含有する層(フィルム)を構成する構成材料のうち、50重量%以上含有する構成材料のことを言うこととする。
【0027】
この樹脂材料としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂および硬化性樹脂材料等が挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン(COP)、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)、ポリモノクロロパラキシリレン(poly-monochloro-para-xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly-dichloro-para-xylylene)、ポリモノフルオロパラキシリレン(poly-monofluoro-para-xylylene)、ポリモノエチルパラキシリレン(poly-monoethyl-para-xylylene)等のポリパラキシリレン樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、本実施形態においては、樹脂材料は、熱可塑性樹脂、特に、ポリ塩化ビニルフィルムであることが好ましい。
【0028】
金属蒸着層12bは、樹脂フィルム12aの印刷層14側に積層して設けられ、隠蔽層12の主層として機能する。
【0029】
この金属蒸着層12bは、特に限定されないが、例えば、金属酸化物および金属窒化物等を主材料として構成されるものが挙げられる。また、金属酸化物および金属窒化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
金属蒸着層12bと樹脂フィルム12aとの積層体で構成される隠蔽層12の平均厚さ(層厚)は、特に限定されないが、好ましくは10.0μm以上300μm以下程度、より好ましくは50.0μm以上250μm以下程度に設定される。これにより、隠蔽層12としての機能を確実に付与することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、金属蒸着層12bは、樹脂フィルム12aの印刷層14側に形成される場合について説明したが(
図1参照)、金属蒸着層12bが形成される位置は、これに限定されず、樹脂フィルム12aの印刷層14と反対側に形成されていてもよい。
【0032】
(印刷層14)
印刷層14は、木目調模様、石材調模様、ストライプ模様のような幾何学模様等の各種模様を備え、化粧シート10の外観、審美性に大きな影響を与える層であり、ユーザーが樹脂コート層20側、すなわちユーザーが化粧シート10の表面から見る場合において、当該模様が視認される。したがって、この印刷層14の模様が、化粧シート10が貼付された壁部に対して付与される。
【0033】
印刷層14は、樹脂材料を主材料として、着色剤を含有しており、着色剤が印刷層14に含まれることで、木目調、石材調、筋目加工、各種幾何学模様等の各種模様が印刷層14に付与される。
【0034】
印刷層14に含まれる樹脂材料としては、例えば、樹脂フィルム12aで例示したのと同様の樹脂材料を挙げることができる。また、着色剤としては、各種の顔料、染料等を用いることができる。
【0035】
印刷層14の平均厚さ(層厚)は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上15.0μm以下程度、より好ましくは1.0μm以上5.0μm以下程度に設定される。これにより、印刷層14としての機能を確実に付与することができる。
【0036】
(透明フィルム16)
透明フィルム16は、樹脂コート層20と、印刷層14との間に位置する中間層であり、化粧シート10が、この透明フィルム16を備えることにより、化粧シート10により優れた可撓性を付与することができる。さらに、印刷層14で反射した光を透過させることで、樹脂コート層20側、すなわち化粧シート10のユーザーにより視認される表面から、印刷層14の模様をユーザーに視認させることができる。
【0037】
透明フィルム16は、樹脂材料を主材料として構成される。この樹脂材料としては、例えば、樹脂フィルム12aで例示したのと同様の樹脂材料を挙げることができ、中でも、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。これにより、透明フィルム16としての機能を確実に付与することができる。
【0038】
また、透明フィルム16の平均厚さ(層厚)は、特に限定されないが、好ましくは10.0μm以上300μm以下程度、より好ましくは50.0μm以上200μm以下程度に設定される。これにより、透明フィルム16としての機能を確実に付与することができる。
【0039】
(樹脂コート層20)
樹脂コート層20は、化粧シート10を、壁部に貼付した際に、壁部とは反対側に位置する最外層であり、ユーザーが視認する側の最外層すなわち表面を構成する。
【0040】
この樹脂コート層20は、艶消しフィラー18と、この艶消しフィラー18を樹脂コート層20に保持するバインダー樹脂としての樹脂材料とを含み、その表面に艶消しフィラー18の形状に追随した凸部20aを備える、表面が凹凸面で構成されるものである。
【0041】
このように、樹脂コート層20の表面を、凸部20aを備える凹凸面で構成することで、化粧シート10を、艶が抑制され審美性に優れるとともに、汚染材料が付き難く防汚効果および耐指紋性にも優れるものとし得る。
【0042】
かかる構成をなす樹脂コート層20において、本発明では、艶消しフィラー18の含有量が45体積%以上80体積%未満であることを満足する。
【0043】
ここで、ロールに巻回された長尺物である化粧シート10を、壁部に対して貼付する壁部への施工時において、ロールから送り出しつつ、壁部に貼り合わせた際に、化粧シート10と壁部との間に、空気やホコリ等の異物が噛み込むことに起因して、化粧シート10の壁部側の表面に異物に由来する凸部が形成されることがある。
【0044】
そのため、ユーザーが樹脂コート層20側、すなわち化粧シート10の壁部と反対側の表面から見たときに、この異物に由来する凸部がユーザーにより視認されることに基づいて、化粧シートの意匠性の低下を招くことが懸念される。
【0045】
これに対して、本発明では、上記の通り、樹脂コート層20における艶消しフィラー18の含有量が45体積%以上80体積%未満の範囲内に設定され、これにより、
図1に示すように、樹脂コート層20の少なくとも一部おいて、艶消しフィラー18同士が、その厚さ方向で重なることとなるため、樹脂コート層20の表面を、その表面に艶消しフィラー18の形状に追随した凸部20aを備える凹凸面で構成することができ、さらに、この凸部20aを備える凹凸面の凹凸形状が制御される。その結果、ユーザーが樹脂コート層20側、すなわち化粧シート10の壁部と反対側の表面から見たときに、化粧シート10の壁部側の表面に形成された、異物に由来する凸部がユーザーにより視認されるのを、的確に抑制または防止することができる。したがって、この凸部に基づく、化粧シート10の意匠性の低下を的確に抑制または防止することができる。
【0046】
また、樹脂コート層20における艶消しフィラー18の含有量は、45体積%以上80体積%未満の範囲内であればよいが、45体積%以上75体積%未満の範囲内であるのが好ましく、45体積%以上65体積%未満の範囲内であるのがより好ましい。これにより、ユーザーが化粧シート10の壁部と反対側の表面から見たときに、異物に由来する凸部がユーザーにより視認されるのを、より的確に抑制または防止することができる。
【0047】
この場合、艶消しフィラー18は、メジアン径(D50)が好ましくは7.0μm以上50.0μm以下程度、より好ましくは8.0μm以上40.0μm以下程度、さらに好ましくは8.0μm以上18.0μm以下程度に設定される。
【0048】
また、樹脂コート層20は、その平均厚さ(層厚)が好ましくは5.0μm以上30.0μm以下程度、より好ましくは6.0μm以上25.0μm以下程度、さらに好ましくは8.0μm以上20.0μm以下程度に設定される。
【0049】
艶消しフィラー18のメジアン径(D50)および樹脂コート層20の平均厚さを、前記範囲内に設定することで、樹脂コート層20の少なくとも一部おいて、艶消しフィラー18同士が、その厚さ方向で重なりが生じた際に、重なりが生じた艶消しフィラー18の合計の厚さを、樹脂コート層20の厚さよりも、確実に大きく設定することができる。そのため、樹脂コート層20の表面に、凸部20aをより確実に形成することができる。さらに、この凸部20aを備える凹凸面の凹凸形状が、より好適に制御されるため、ユーザーが樹脂コート層20側の表面から見たときに、化粧シート10の壁部側の表面に形成された、異物に由来する凸部がユーザーにより視認されるのを、より的確に抑制または防止することができる。
【0050】
なお、本明細書中において、樹脂コート層20の「平均厚さ」は、その厚さ方向において、艶消しフィラー18に由来する凸部20aが形成されていない領域において測定された、樹脂コート層20の厚さの平均値のことを言うこととする。
【0051】
また、かかる構成をなす樹脂コート層20を備える化粧シート10は、樹脂コート層20側の表面における60°光沢値が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。これにより、凸部20aを備える凹凸面の凹凸形状が好適に制御されていると言うことができる。そのため、ユーザーが樹脂コート層20側、すなわち化粧シート10の壁部と反対側の表面から見たときに、化粧シート10の壁部側の表面に形成された、異物に由来する凸部がユーザーにより視認されるのを、より的確に抑制または防止することができる。
【0052】
なお、樹脂コート層20側の表面における60°光沢値は、例えば、JIS K 5600.4.7(1999)に準拠して、ハンディ光沢計(堀場製作所製、「グロスチェッカー IG-320」)を用いて測定することができる。
【0053】
さらに、かかる構成をなす樹脂コート層20を備える化粧シート10は、壁部と化粧シート10との間に、直径0.5mmの球状をなすジルコニアからなるビーズを1個配置した状態で、壁部に対して化粧シート10を貼付し、これにより、化粧シート10の壁部側の表面に形成される異物に由来する凸部を、化粧シート10の壁部と反対側の表面側から、化粧シート10との離間距離が20cmの位置において見たとき、視認される前記凸部の直径の大きさが0.1mm以下であることが好ましい。これにより、ユーザーが樹脂コート層20側、すなわち化粧シート10の壁部と反対側の表面から見たときに、化粧シート10の壁部側の表面に形成された、異物に由来する凸部がユーザーにより視認されるのを、より的確に抑制または防止されていると言うことができる。したがって、この凸部に基づく、化粧シート10の意匠性の低下を、より的確に抑制または防止することができる。
【0054】
また、このときに、樹脂コート層20側からユーザーにより視認される、印刷層14に付与されている各種模様の鮮明度がほぼ低下していないことが好ましい。これにより、化粧シート10の意匠性の低下が、より的確に抑制または防止されているということができる。
【0055】
樹脂コート層20に含まれる樹脂材料としては、例えば、樹脂フィルム12aで例示したのと同様の樹脂材料を挙げることができるが、中でも、熱可塑性樹脂またはメラミン系樹脂であることが好ましく、また、熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂であることがより好ましい。これにより、樹脂材料にバインダー樹脂としての機能を確実に発揮させて、艶消しフィラー18を、樹脂コート層20に確実に保持させることができる。
【0056】
また、艶消しフィラー18は、樹脂材料または無機材料を主材料として構成されるが、この樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、無機材料としては、特に限定されないが、例えば、シリカが挙げられる。
【0057】
このような艶消しフィラー18としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、シリカ粒子が挙げられる他、これらの樹脂とシリカとの複合粒子等が挙げられるが、中でも、アクリル系樹脂粒子またはメラミン系樹脂粒子であることが好ましい。これにより、印刷層14の視認性の向上を図ることができる。
【0058】
また、この艶消しフィラー18としては、具体的には、例えば、メタブレン(アクリル系樹脂粒子、三菱ケミカル社製)、タフチック(アクリル系樹脂粒子、東洋紡社製)、テクポリマー(アクリル系樹脂粒子、積水化成品工業社製)、テクポリマー(ポリスチレン系樹脂粒子、積水化成品工業社製)、シリカ粒子(デンカ社製)、エポスター(メラミン系樹脂粒子、日本触媒社製)、オプトビーズ(メラミン系樹脂・シリカ複合粒子、日産化学社製)等を挙げることができる。
【0059】
また、艶消しフィラー18は、樹脂コート層20に含まれる樹脂材料との屈折率差が0.2以下の透明な材質からなるものを使用することが好ましい。ここで、艶消しフィラー18の屈折率が、艶消しフィラー18を保持する樹脂材料を主材料として構成される樹脂層(樹脂コート層20の艶消しフィラー18以外の部分)の屈折率と著しく相違していると、樹脂コート層20の透明度が低下することから、換言すれば、樹脂コート層20の鮮明度が低下することから、外観の意匠性が低下する。したがって、前記屈折率差を、0.2以下に設定することで、樹脂コート層20の外観の意匠性の改善を図ることができる。
【0060】
この場合、樹脂コート層20に含まれる樹脂材料の屈折率は、好ましくは1.4以上1.7以下程度であり、また、樹脂コート層20と艶消しフィラー18との双方に好ましく用いられるメラミン系樹脂は屈折率が1.6程度であるので、艶消しフィラー18の屈折率は、好ましくは1.3以上1.8以下程度に設定される。これにより、艶消しフィラー18と、樹脂コート層20に含まれる樹脂材料との屈折率差の大きさを、0.2以下に確実に設定することができる。
【0061】
さらに、樹脂コート層20に含まれる樹脂材料の線膨張係数と、艶消しフィラー18の線膨張係数との差は、好ましくは10×10-5/℃以下、より好ましくは8×10-5/℃以下、さらに好ましくは5×10-5/℃以下に設定されている。前記線膨張係数の差が前記範囲内であれば、温度変化に対する艶消しフィラー18と樹脂コート層20に含まれる樹脂材料との伸縮度合いの差が小さく、樹脂コート層20が備える複数の凸部20aを維持することができる。そのため、化粧シート10において、表面の艶の抑制効果、防汚効果が得られ、また、化粧シート10を、耐指紋性により優れたものとすることができる。さらに、ユーザーが化粧シート10の壁部と反対側の表面から見たときに、異物に由来する凸部がユーザーにより視認されるのを、より的確に抑制または防止することができる。
【0062】
以上のことを考慮すると、樹脂コート層20に含まれる樹脂材料がメラミン系樹脂であり、艶消しフィラー18に含まれる樹脂がアクリル系樹脂である組み合わせ、または、樹脂コート層20に含まれる樹脂材料が熱可塑性樹脂であり、艶消しフィラー18に含まれる樹脂がメラミン系樹脂である組み合わせであることが好ましい。
【0063】
なお、以上のような各層が積層された積層体で構成される化粧シート10は、かかる構成をなすものに限らず、例えば、隠蔽層12の印刷層14と対向する面とは反対側の面に、すなわち、隠蔽層12の樹脂フィルム12a側の表面に、接着層(図示せず)を備えるものであってもよい。これにより、接着剤等を化粧シート10に塗布する必要なく、化粧シート10を、壁部すなわち施工面に対して、直接、貼り付けることが可能な構成をなすものとすることができる。
【0064】
(化粧シートの製造方法)
前述したような構成をなす化粧シート10は、例えば、隠蔽層12と、印刷層14と、透明フィルム16と、艶消しフィラー18を含む樹脂コート層20と、をこの順で積層することにより製造することができる。
【0065】
以下では、この順で各層を積層することで、化粧シート10を製造する、化粧シート10の製造方法について説明する。
【0066】
具体的には、本実施形態においては、化粧シート10の製造方法は、透明フィルム16の一方の面に印刷層14を印刷することで形成する工程aと、透明フィルム16の他方の面に樹脂コート層20を形成する工程bと、印刷層14を隠蔽層12の一方の面に積層する工程cと、を有し、さらに、隠蔽層12の他方の面に剥離層を形成する工程dを有している。
【0067】
<a> まず、工程aにおいては、透明フィルム16を用意し、その後、この透明フィルム16の一方の面に、各種印刷法により印刷層14を印刷することで形成することができる。
【0068】
この印刷法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、タコ印刷法等を挙げることができる。インクは、固形分として、通常、着色剤を含む。着色剤としては、例えば、各種顔料や各種染料等を用いることができる。また、インクは、溶剤等を含んでいてもよい。
【0069】
<b> 次いで、工程bにおいては、透明フィルム16の印刷層14が形成された面とは反対側の面に樹脂コート層20を形成する。
【0070】
この樹脂コート層20は、例えば、浸漬法(ディッピング)、スプレー法、キスコーター、コンマコーター、ロールコーター、ナイフコーター、ブレードコーター等の各種コーターを用いたコート法、各種印刷法等の各種方法により、樹脂コート層形成用組成物からなる層を透明フィルム16の面上に形成する。その後、硬化反応を行うことにより樹脂コート層20を形成することができる。
【0071】
樹脂コート層20の形成に用いる樹脂コート層形成用組成物は、樹脂コート層20に含まれる樹脂材料およびその前駆体のうちの少なくとも1種と、艶消しフィラー18とを含有する。
【0072】
樹脂コート層形成用組成物は、例えば、樹脂材料およびその前駆体のうちの少なくとも1種と、艶消しフィラー18と、必要に応じて溶剤等とを、公知の方法により混合して得ることができる。溶剤を用いることにより、当該組成物が艶消しフィラー18の形状に容易に追随し、凸部20aを効率的に形成することができる。さらに樹脂材料やその前駆体が溶解または分散するため、樹脂コート層形成用組成物の取り扱いが容易となる。また、透明フィルム16と樹脂コート層20との密着性を向上させることもできる。
【0073】
樹脂コート層形成用組成物中に含まれる溶剤としては、特に限定されないが、極性溶媒を好適に用いることができる。
【0074】
この極性溶媒としては、具体的には、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール性溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド系溶媒等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
また、樹脂コート層形成用組成物は、必要に応じて、触媒、離型剤、重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、分散剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、消泡剤、増感剤(増感色素)等を含有していてもよい。
【0076】
<c> 次いで、工程cにおいては、印刷層14を隠蔽層12の金属蒸着層12b上に積層する。印刷層14と金属蒸着層12bとは、接着層を介して積層することもできる。
【0077】
<d> 次いで、工程dにおいては、隠蔽層12の樹脂フィルム12a上に接着層および剥離層を積層することもできる。化粧シート10を、かかる工程dを経たものとすることで、化粧シート10を、壁部のような施工面に施行する際に、化粧シート10から剥離層を剥がした後に、接着層を介して施工面に、直接、貼り付けることが可能なものとすることができる。
【0078】
以上、本発明の化粧シートについて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、化粧シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0079】
例えば、前記実施形態では、隠蔽層12を、樹脂フィルム12aと金属蒸着層12bとから構成した例によって示したが、隠蔽層12は、かかる構成をなすものに限定されず、例えば、樹脂フィルム12aと、別途準備された金属層とを積層した積層体から構成することができ、または着色された樹脂フィルム12aのみからなる単独層で構成することができ、さらに内部空隙により白色化した樹脂フィルム12aからなる単独層で構成することもできる。
【実施例0080】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0081】
1.原材料の準備
まず、各実施例および各比較例の化粧シート10の製造に用いた原材料を以下に示す。
【0082】
・樹脂コート層20を構成するメラミン系樹脂
メラミン系樹脂は、次の方法で合成した。まず、反応釜に原料メラミンとホルマリンとを所定配合比率で仕込み、触媒を添加後、沸点まで昇温して還流反応させた。メラミン溶解が完了したことを確認した上で、反応終点に達した後、脱水処理にて樹脂固形分を調製し冷却した。かかる方法によりメラミン系樹脂が合成された(屈折率:1.68、線膨張係数(10-5/℃):4.5)。
【0083】
・樹脂コート層20を構成する艶消しフィラー18
メラミン系樹脂粒子(日本触媒社製、「エポスター」、メジアン径(D50):9.0μm、屈折率:1.68、線膨張係数(10-5/℃):4)
【0084】
・樹脂コート層20を構成する艶消しフィラー18
アクリル系樹脂粒子(三菱ケミカル社製、「メタブレン」、メジアン径(D50):18.0μm、屈折率:1.50、線膨張係数(10-5/℃):8.3)
【0085】
2.化粧シート10の製造
(実施例1)
まず、透明フィルム16として、インク受容層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。この透明フィルムは、厚さが38μmであった。
【0086】
次に、この透明フィルム16のインク受容層が設けられた面側に、インクジェット法により、所定のパターン(第1の木目調のパターン)で印刷層14を形成した。
【0087】
第1の木目調のパターンの印刷層14の形成に際しては、着色剤と、紫外線硬化型樹脂としてのアクリル系樹脂とを含むインクを用いることにより、外観が第1の木目調のパターンになるよう調整を行った。また、インクジェット法によるインクの吐出後、透明フィルム16に着弾したインクに対して、紫外線を照射して硬化させた。これにより、厚さが3μmの印刷層14が形成された。
【0088】
次に、透明フィルム16の印刷層14が設けられた面とは反対の面側に、メラミン系樹脂(反応モル比:1.4、樹脂固形分:50重量%)100重量部に対して、艶消しフィラー18(メラミン系樹脂粒子、日本触媒社製、「エポスター」)50重量部を含む樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した。その後、120℃の熱風乾燥機にて90秒間、塗膜を乾燥し、Bステージ層(Bステージの硬化性樹脂(メラミン系樹脂)および艶消しフィラー18(アクリル系樹脂粒子)を含む材料で構成された樹脂コート層20)を得た。
【0089】
以上により、印刷層14と、透明フィルム16と、Bステージ層(艶消しフィラー18を含む樹脂コート層20)とが積層された積層体を得た。
【0090】
一方、酸化チタンを含む材料で構成された白色のポリ塩化ビニルフィルム(80μm、樹脂フィルム12a)の表面に、アルミニウムを抵抗加熱蒸着法で蒸着し金属蒸着層12b(厚み0.1μm)を形成し、隠蔽層12を得た。
【0091】
次に、得られた積層体の印刷層14を隠蔽層12の金属蒸着層12b上に積層し、140℃、2MPaの条件で40分間、得られた積層体を加熱加圧成形した。これにより、硬質樹脂材料で構成された樹脂コート層20(平均厚さ:10.0μm)、透明フィルム16(厚さ:38μm)、印刷層14(厚さ:3μm)、および隠蔽層12(厚さ:80.1μm)がこの順で積層されてなる化粧シート10(メラミン化粧シート)を得た(
図1参照)。
【0092】
なお、樹脂コート層20は、その表面に前記艶消しフィラー形状に追随した凸部20aを備えていた。
【0093】
(実施例2)
印刷層14の形成を、以下のように変更することで、所定のパターン(第2の木目調のパターン)を有する印刷層14を得たこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2の化粧シート10を製造した。
【0094】
すなわち、第2の木目調のパターンの印刷層14の形成に際しては、着色剤と、紫外線硬化型樹脂としてのアクリル系樹脂とを含むインクを用いることにより、外観が第2の木目調のパターンになるよう調整を行った。また、インクジェット法によるインクの吐出後、透明フィルム16に着弾したインクに対して、紫外線を照射して硬化させた。これにより、厚さが3μmの印刷層14が形成された。
【0095】
(実施例3)
印刷層14の形成を、以下のように変更することで、所定のパターン(ストライプのパターン)を有する印刷層14を得たこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例3の化粧シート10を製造した。
【0096】
すなわち、ストライプのパターンの印刷層14の形成に際しては、着色剤と、紫外線硬化型樹脂としてのアクリル系樹脂とを含むインクを用いることにより、外観がストライプのパターンになるよう調整を行った。また、インクジェット法によるインクの吐出後、透明フィルム16に着弾したインクに対して、紫外線を照射して硬化させた。これにより、厚さが3μmの印刷層14が形成された。
【0097】
(実施例4、5、比較例1~3)
樹脂コート層20の形成に用いる艶消しフィラー18の種類と、樹脂コート層20に含まれる艶消しフィラー18の含有量(体積%)とのうちの少なくとも一方を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4、5、比較例1~3の化粧シート10を製造した。
【0098】
3.評価
各実施例および各比較例の化粧シート10を、以下の方法で評価した。
【0099】
<物性測定方法>
各実施例および各比較例の化粧シート10の物性値について、それぞれ、以下のようにして測定した。
【0100】
・樹脂コート層20の平均厚さ(μm)
電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM-7401F」)にて断面観察を行い、計測した。
【0101】
・化粧シート10の樹脂コート層20側の表面における60°光沢値
JIS K 5600.4.7(1999)に準拠して、ハンディ光沢計(堀場製作所製、「グロスチェッカー IG-320」)を用いて、化粧シート10の樹脂コート層20側の表面における60°光沢値を測定した。
【0102】
<審美性評価(艶消し)>
隠蔽層12が載置板に接触するように、各実施例および各比較例の化粧シート10を石膏ボード(吉野石膏社製)上に載置した。
【0103】
すなわち、隠蔽層12が設けられた面とは反対の面(外表面)が上方を向くように、各実施例および各比較例の化粧シート10を、石膏ボード(吉野石膏社製)上に載置した。この状態で、各実施例および各比較例の化粧シート10を外表面側から観察し、その審美性を以下の基準に従い評価した。
【0104】
A:化粧シートは非常に優れた外観を有している。
B:化粧シートは優れた外観を有している。
C:化粧シートは良好な外観を有している。
D:化粧シートの審美性がやや劣っている。
E:化粧シートの審美性が非常に劣っている。
【0105】
<異物噛み込み時における化粧シート10の外観>
各実施例および比較例の化粧シート10について、それぞれ、石膏ボード(吉野石膏社製)と化粧シート10との間に、直径0.5mmの球状をなすジルコニアからなるビーズを1個配置した状態で、石膏ボードに対して化粧シート10を貼付した。そして、化粧シート10の石膏ボード側の表面に形成される異物に由来する凸部を、化粧シート10の壁部と反対側の表面側から、化粧シート10との離間距離が20cmの位置から見たときの、視認される前記凸部の直径の大きさを測定し、以下の基準に従い評価した。
【0106】
A:前記凸部の直径の大きさが0.1mm以下であり、
模様の鮮明度も低下していない。
B:前記凸部の直径の大きさが0.1mm以下であるが、
模様の鮮明度がやや低下している。
C:前記凸部の直径の大きさが0.1mm超である。
D:前記凸部の直径の大きさが0.1mm以下であるが、
模様の鮮明度が極端に低下している。
【0107】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の化粧シート10における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0108】
【0109】
各実施例では、表1に示したように、樹脂コート層20における、艶消しフィラー18の含有量が45体積%以上80体積%未満であることを満足しており、その結果、化粧シート10と石膏ボード(壁部)との間に異物が噛み込むことに起因した、凸部が化粧シート10の壁部側の表面に形成されたとしても、この凸部に基づく化粧シート10の意匠性の低下が的確に防止された結果を示した。
【0110】
これに対して、各比較例では、樹脂コート層20における、艶消しフィラー18の含有量が45体積%以上80体積%未満であることを満足しておらず、そのため、化粧シート10と石膏ボード(壁部)との間に異物が噛み込むことに起因して、化粧シート10の壁部側の表面に形成された凸部が、化粧シート10のユーザー側の表面から明らかに視認され、この凸部に基づく化粧シート10の意匠性の低下が明らかに認められる結果を示した。