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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175580
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】水素貯蔵モジュール
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
C01B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088098
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 彰利
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 太郎
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140AA17
4G140AA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、水素吸蔵合金部の脱落を抑制することができる水素貯蔵モジュールを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一態様である水素貯蔵モジュールは、筒状の本体、及びこの本体の軸方向に間隔を空けて配置される環状のフィンを有するフィン付き管と、フィンの間に充填されている水素吸蔵合金部とを備える水素貯蔵モジュールであって、前記軸方向で隣接する一対の前記フィンの外周縁同士を結んだ仮想面の内側に、前記水素吸蔵合金部の外周面の少なくとも一部が配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体、及びこの本体の軸方向に間隔を空けて配置される環状のフィンを有するフィン付き管と、フィンの間に充填されている水素吸蔵合金部とを備える水素貯蔵モジュールであって、
前記軸方向で隣接する一対の前記フィンの外周縁同士を結んだ仮想面の内側に、前記水素吸蔵合金部の外周面の少なくとも一部が配置されていることを特徴とする水素貯蔵モジュール。
【請求項2】
前記一対のフィンの前記水素吸蔵合金部と対向する面の面積が、前記本体の軸方向に直交する接断面における前記水素吸蔵合金部の最大断面積に対して1.05倍以上1.30倍以下である請求項1に記載の水素貯蔵モジュール。
【請求項3】
前記本体の軸方向で両端側に位置するフィンのそれぞれに、補強部を備える請求項1又は請求項2に記載の水素貯蔵モジュール。
【請求項4】
前記補強部が環状部材で形成されている請求項3に記載の水素貯蔵モジュール。
【請求項5】
前記補強部が棒状部材又は板状部材で形成されている請求項3に記載の水素貯蔵モジュール。
【請求項6】
前記両端側に位置するフィンのそれぞれが、前記補強部に係合する凹部分を有する請求項5に記載の水素貯蔵モジュール。
【請求項7】
前記水素吸蔵合金部がシートで被覆されている請求項1又は請求項2に記載の水素貯蔵モジュール。
【請求項8】
前記シートがメッシュ状に形成されている請求項7に記載の水素貯蔵モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池自動車、又は燃料電池フォークリフトに水素を供給するための水素ガス供給設備が開発されている。この水素ガス供給設備における水素ガスの貯蔵方法として、水素吸蔵合金部を含む水素貯蔵モジュールを備えた装置による水素ガスの貯蔵方法が知られている。
【0003】
水素貯蔵モジュールでは、水素吸蔵合金部が筒状の管部材に取り付けられているものがある。前記水素吸蔵合金部が前記管部材から剥離、脱落すると、水素ガスの十分な貯蔵ができなくなることがある。水素吸蔵合金部の耐久性を向上して剥離などを低減することができる水素吸蔵合金部の成形体の製造方法が提案されている(特開2005-105329号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-105329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記公報所載の水素吸蔵合金部は、所定の接合材を添加した後に活性化しつつ昇温及び降温して成形することで、成型後の水素吸蔵合金部中の粒子がさらに微粒子化することを抑制し、水素吸蔵合金部の成形体の耐久性を向上できるとされている。水素吸蔵合金部は、水素ガスの吸蔵をすることで体積が膨張し、放出をすることで膨張した体積が収縮する。水素吸蔵合金部は、膨張と収縮を繰り返すことで脆くなり、水素貯蔵モジュールから剥離、脱落することがある。水素吸蔵合金部の膨張及び収縮による剥離、脱落を効果的に抑制することが求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、水素吸蔵合金部の膨張及び収縮による剥離、脱落を効果的に抑制することができる水素貯蔵モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた本発明の一態様である水素貯蔵モジュールは、筒状の本体、及びこの本体の軸方向に間隔を空けて配置される環状のフィンを有するフィン付き管と、フィンの間に充填されている水素吸蔵合金部とを備える水素貯蔵モジュールであって、前記軸方向で隣接する一対の前記フィンの外周縁同士を結んだ仮想面の内側に、前記水素吸蔵合金部の外周面の少なくとも一部が配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様である水素貯蔵モジュールは、水素吸蔵合金部の膨張及び収縮による剥離、脱落を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一態様である水素貯蔵モジュールを備える水素貯蔵装置を示す模式的断面図である。
図2図2は、図1の水素貯蔵モジュールを示す模式的断面図である。
図3図3は、図2の水素貯蔵モジュールの模式的左側面図である。
図4図4は、図2の水素貯蔵モジュールにおけるA-A断面図である。
図5図5は、図2の水素貯蔵モジュールをシートで被覆した状態を示す模式的斜視図である。
図6図6は、水素貯蔵モジュールの補強部の一例を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施態様の説明]
以下、本発明の実施態様について説明する。
本発明の一態様である水素貯蔵モジュールは、筒状の本体、及びこの本体の軸方向に間隔を空けて配置される環状のフィンを有するフィン付き管と、フィンの間に充填されている水素吸蔵合金部とを備える水素貯蔵モジュールであって、前記軸方向で隣接する一対の前記フィンの外周縁同士を結んだ仮想面の内側に、前記水素吸蔵合金部の外周面の少なくとも一部が配置されている。
【0011】
当該水素貯蔵モジュールは、フィン付き管の本体に配置されるフィンの間に水素吸蔵合金部が充填されているため、前記本体及び前記フィンに対する前記水素吸蔵合金部の接触面積が大きい。このため、前記水素吸蔵合金部の剥離、脱落を抑制できる。前記水素吸蔵合金部の外周面の少なくとも一部は、前記軸方向に隣接する前記フィンの外周縁同士を結んだ仮想面の内側にある。このため、前記水素吸蔵合金部は、水素の吸蔵によって膨張しても、その外周面が前記フィンの外周縁を超え難くなるため、前記フィン付き管から剥離、脱落することをより抑制できる。
【0012】
当該水素貯蔵モジュールは、前記一対のフィンの前記水素吸蔵合金部と対向する面の面積が、前記本体の軸方向に直交する接断面における前記水素吸蔵合金部の最大断面積に対して1.05倍以上1.30倍以下であることが好ましい。このようにすることで、前記水素吸蔵合金部による水素の充填効率を十分なものとしつつ、前記水素吸蔵合金部が膨張し、その外周面が前記フィンの外周縁を超えることをさらに抑制できる。
【0013】
当該水素貯蔵モジュールは、前記本体の軸方向で両端側に位置するフィンのそれぞれに、補強部を備えることが好ましい。前記水素吸蔵合金部は、前記本体の径方向及び軸方向それぞれに膨張する。前記水素吸蔵合金部が前記軸方向へ膨張することで、両端側に位置するフィンが前記軸方向の外側に傾斜、倒壊などすることで水素吸蔵合金部を保持することが困難になり、その結果、両端側に位置する水素吸蔵合金部が剥離、脱落し易くなることがある。両端側に位置するフィンのそれぞれに補強部を備えることで、これらのフィンが傾斜、倒壊することを抑制できる。
【0014】
前記補強部が環状部材で形成されていることが好ましい。このようにすることで、補強部を容易に形成することができる。
【0015】
前記補強部が棒状部材又は板状部材で形成されていることが好ましい。このようにすることでも補強部を容易に形成することができる。
【0016】
前記両端側に位置するフィンのそれぞれが、前記棒状部材又は前記板状部材で形成された前記補強部に係合する凹部分を有することが好ましい。このようにすることで、補強部を容易に配設することができる。
【0017】
前記水素吸蔵合金部がシートで被覆されていることが好ましい。このようにすることで、前記水素吸蔵合金部の剥離、脱落をよりさらに抑制できる。
【0018】
前記シートがメッシュ状に形成されていることが好ましい。このようにすることで、水素ガスを吸蔵及び放出する効率性を損なうことなく前記水素吸蔵合金部の剥離、脱落を抑制することができる。
【0019】
[本発明の実施形態の説明の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、本明細書に記載の数値については、記載された上限値と下限値とを任意に組み合わせることが可能である。本明細書では、組み合わせ可能な上限値から下限値までの数値範囲が好適な範囲として全て記載されているものとする。また、図は、各構成を模式的に示した参照図であり、各構成(各部材)の形状、縮尺等は、実際のものと異なることがある。
【0020】
本発明の一実施形態である水素貯蔵モジュールは、筒状の本体と、この本体の外表面から径方向に突出している複数のフィンと、この複数のフィンの間に充填されている水素吸蔵合金部とを備える。この水素貯蔵モジュールは、例えば、図1で示すような水素貯蔵装置1に用いられる。
【0021】
[水素貯蔵装置]
水素貯蔵装置1は、例えば燃料電池に水素ガスを供給するための水素供給設備に用いられる。この燃料電池を搭載するものとしては、例えば、燃料電池自動車、又は燃料電池フォークリフトが挙げられる。水素貯蔵装置1は、複数の水素貯蔵モジュール2と、複数の水素貯蔵モジュール2を収容するケーシング3とを備える。水素貯蔵モジュール2は、水素ガスの吸蔵及び放出を行う水素吸蔵合金部6を有する。水素ガスは、ケーシング3の水素ガス供給口3aから供給され、水素ガス排出口3bから排出される。
【0022】
<水素貯蔵モジュール>
水素貯蔵モジュール2は、図2図3及び図4で示すように、熱媒体(不図示)の流路を形成する媒体用管4と、本体5b及び本体5bの外表面から径方向に突出している複数のフィン5aを有するフィン付き管5と、フィン5a間に充填されている水素吸蔵合金部6とを主に備える。媒体用管4は、フィン付き管5の内周側に挿入される。媒体用管4とフィン付き管5との間には、伝熱シート7が配設される。前記熱媒体としては、水素吸蔵合金部6と熱交換可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水、油、ロングライフクーラント、空気、又は蒸気を用いることができる。
【0023】
〔伝熱シート〕
伝熱シート7は、例えばアルミニウムを主成分とするシート状部材である。伝熱シート7は、媒体用管4の外周面とフィン付き管5の内周面との間に介在して接合している。伝熱シート7によって、前記熱媒体と水素吸蔵合金部6との熱交換を容易かつ確実に行うことができる。また、伝熱シート7は、フィン付き管5の挿抜時等に、本体5bが媒体用管4と擦れることを抑制する緩衝材としても機能する。つまり、水素貯蔵装置1では、伝熱シート7が備えられることで、媒体用管4と本体5bとの擦れに起因する損傷を抑制し、水素貯蔵モジュール2の伝熱機能を十分に高めることができる。伝熱シート7は、一枚からなる単層体であってもよいし、複数の伝熱シート7を積層した積層体であってもよい。
【0024】
〔媒体用管〕
媒体用管4は、筒状の内管41と有底筒状の外管42とを含み、外管42の内部に内管41を挿入させた二重管の構造である。媒体用管4では、前記熱媒体が内管41に供給され、供給された前記熱媒体は外管42へと流れて外管42と内管41との隙間を通じて排出される。すなわち、内管41及び外管42は、前記熱媒体の流路を画定する。前記熱媒体は、具体的には、外管42の開口している側の内管41の開口である熱媒体流入口4aから供給される。そして、前記熱媒体は、外管42の底に面する側の内管41の開口から外管42の内部に流れ、外管42と内管41との隙間を通じて外管42の開口である熱媒体流出口4bから排出される。前記熱媒体は、媒体用管4に供給されて排出されるまでの間にフィン付き管5を介して水素吸蔵合金部6と熱交換をする。水素貯蔵モジュール2は、前記流路に冷却用熱媒体を流通させることで、水素吸蔵合金部6による水素ガスの吸蔵を促進する。また、水素貯蔵モジュール2は、前記流路に加熱用熱媒体を流通させることで、水素吸蔵合金部6による水素ガスの放出を促進する。内管41及び外管42の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、又はステンレス鋼を用いることができる。
【0025】
ケーシング3内には、内管41の熱媒体流入口4a側を保持する第一保持部材31と、外管42の熱媒体流出口4b側を保持する第二保持部材32と、媒体用管4の前記他方の端部側を保持する第三保持部材33とが備えられる。複数の水素貯蔵モジュール2は、径方向に並列されている。
【0026】
第一保持部材31及び第二保持部材32は、ケーシング3内に前記熱媒体の流路を形成する隔壁でもある。具体的には、ケーシング3の内面の一部と第一保持部材31の一方の面とは、内管41の熱媒体流入口4aと連通する熱媒体流入路34を構成している。ケーシング3の内面の他の一部及び第一保持部材31の他方の面と、第二保持部材32の一方の面とは、外管42の熱媒体流出口4bと連通する熱媒体流出路35を構成している。ケーシング3は、熱媒体流入路34に前記熱媒体を供給するための熱媒体供給口3cと、熱媒体流出路35から前記熱媒体を排出するための熱媒体排出口3dとを有する。
【0027】
〔フィン付き管〕
フィン付き管5は、本体5bと、この本体5bの軸方向に間隔を空けて配置される環状のフィン5aとを有する。本体5bは、略円筒状で両端部が開口している。フィン5aは、本体5bの径方向外側に向けて突出している。フィン付き管5は、媒体用管4を挿抜可能なカートリッジである。本体5bの外周面には水素吸蔵合金部6の層が形成されている。フィン5aは、本体5bの縦断面において水素吸蔵合金部6の層を仕切るように形成されている。水素吸蔵合金部6の層は、本体5bの外周面及び複数のフィン5aの側面(本体5bの径方向に延びる面)に固定されるように形成されている。すなわち、フィン付き管5及び水素吸蔵合金部6は分離困難に一体的に構成されている。水素吸蔵合金部6は、フィン付き管5のフィン5a及び本体5bを介して前記熱媒体と熱交換をする。
【0028】
本体5bの材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、又はステンレス鋼が挙げられる。
【0029】
複数のフィン5aは、本体5bの外周面に立設している。フィン5aは、本体5bと一体で形成されてもよいし、本体5bと同様の材料を用いて別体で形成されて本体5bに接合されてもよい。複数のフィン5aは、本体5bの軸方向に略等間隔かつ平行に設けられている。フィン5aは、本体5bの軸方向から視て略円環状に形成されている。径方向(本体5bの軸方向に直交する方向)における複数のフィン5aの高さは、略同一である。なお、「フィン高さ」とは、本体5bの外周面を基準とする径方向への延出長さを意味する。
【0030】
当該水素貯蔵モジュール2は、本体5bの軸方向で隣接する一対のフィン5aの外周縁同士を結んだ仮想面の内側に、水素吸蔵合金部6の外周面の少なくとも一部が配置されている。本実施形態では複数のフィン5aの高さが略同一であるため、水素吸蔵合金部6の高さは、フィン5aの高さより小さい。具体的には、水素吸蔵合金部6の層は、フィン5aの高さより低い高さになるように成形されている。より具体的には、水素吸蔵合金部6が水素を吸蔵することで膨張しても、その高さがフィン5aの高さを超えないように形成されている。このようにすることで、水素吸蔵合金部6は、水素を吸蔵することで膨張しても、その外周面がフィン5aの外周縁を超えることがなく、剥離、脱落することが抑制される。なお、「水素吸蔵合金部の高さ」とは、本体5bの外周面から水素吸蔵合金部の外周面までの距離を意味する。
【0031】
水素吸蔵合金部6の一部の高さが、高さが略同一のフィン5aの高さより小さくなるようにしてもよいが、水素吸蔵合金部6の全部の高さが、この水素吸蔵合金部6の両側に位置するフィン5aの高さより小さくなるようにすることが好ましい。このようにすることで、膨張した水素吸蔵合金部6の外周面の全部が、剥離、脱落することを抑制できる。
【0032】
隣接するフィン5aの高さが異なる場合、その間に充填される水素吸蔵合金部6の高さは、高さの小さいフィン5aの高さより小さくすることが好ましい。
【0033】
また、本体5bの軸方向で隣接する一対のフィン5aの水素吸蔵合金部6と対向する面の面積それぞれが、この一対のフィン5aの間に充填されている水素吸蔵合金部6の本体5bの軸方向に直交する接断面における最大断面積に対して大きいことが好ましい。フィン5aの水素吸蔵合金部6に対向する面の面積(側面積)の下限としては、水素吸蔵合金部6の断面積の1.05倍であり、1.08倍が好ましく、1.10倍がさらに好ましい。フィン5aの側面積の上限としては、水素吸蔵合金部6の断面積の1.30倍であり、1.28倍が好ましく、1.25倍がさらに好ましい。フィン5aの側面積が前記下限値に満たないと、膨張した水素吸蔵合金部6の外周面がフィン5aの外周縁を超えて剥離、脱落するおそれが高くなる。フィン5aの側面積が前記上限値を超えると、水素吸蔵合金部6の体積が相対的に小さくなり、効率的な水素の吸蔵及び放出ができなくなるおそれがある。
【0034】
本実施形態の複数のフィン5aの高さは略同一であるため、水素吸蔵合金部6の任意の箇所における上記断面積に対して、各フィン5aの側面積が大きいことが好ましい。
【0035】
ここで、水素吸蔵合金部6の断面積及びフィン5aの側面積とは、見かけ上の断面積及び表面積である。具体的には、水素吸蔵合金部6及びフィン5aに貫通孔、切り欠き等が設けられている場合、この貫通孔、切り欠き等の面積も含めた面積を意味する。
【0036】
隣接するフィン5aの高さが異なる場合は、その間に充填される水素吸蔵合金部6の最大断面積は、高さの小さいフィン5aの側面積より小さくすることが好ましい。
【0037】
当該水素貯蔵モジュール2は、本体5bの軸方向で両端側に位置するフィン5aのそれぞれに、補強部8を有する(図2及び図3参照)。この補強部8は、略円柱状の棒状部材である。補強部8の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば本体5bと同様の材料で形成されてもよい。補強部8の固定手段としては、特に限定されるものではなく、溶接、ボルト等、公知の手段を採用することができる。
【0038】
補強部8は、両端側に位置するフィン5aの外側面それぞれに略等間角度で四箇所に配設されている。補強部8は、本体5bに立設し、側面の一部が両端側に位置するフィン5aの外側面に当接している。両端側に位置するフィン5aは、補強部8が配設されることで、水素吸蔵合金部6の膨張による軸方向への傾斜、倒壊などが抑制される。
【0039】
両端側に位置するフィン5aのそれぞれには、四箇所の凹部5cが形成されている。凹部5cは、外側面の一部が内側面側に窪んだ部分である。この凹部5cに係合するように補強部8が配設される。両端側に位置するフィン5aの外側面側に凹部5cを形成することで、補強部8を容易に配設できる。また、フィン5aに凹部5cを形成することで、フィン5a自体の剛性を向上でき、水素吸蔵合金部6の膨張による倒れ、破損をより抑制することができる。
【0040】
本体5bの軸方向における複数のフィン5aの平均ピッチPの下限としては、5mmが好ましく、10mmがより好ましい。前記平均ピッチPの上限としては、25mmが好ましく、20mmがより好ましい。前記平均ピッチPが前記下限に満たないと、水素吸蔵合金部6の充填量を十分に大きくすることができないおそれがある。一方、前記平均ピッチPが前記上限を超えると、水素吸蔵合金部6の前記熱媒体による熱交換量が不十分となるおそれがあり、またフィン5aと水素吸蔵合金部6との接触面積率が不十分となることでフィン5aが水素吸蔵合金部6を保持し難くなるおそれがある。
【0041】
〔水素吸蔵合金部〕
水素吸蔵合金部6は、樹脂6aと水素吸蔵合金6bとを含む。樹脂6aとしては、水素吸蔵合金6bに吸蔵された水素の放出加熱温度よりも高い軟化点を有するものであれば特に限定されるものでなく、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、若しくはポリウレタン等の加熱によって硬化する熱硬化性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはセルロイド等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の光照射によって硬化する樹脂、又は、触媒型硬化剤、反応型硬化剤等の硬化促進剤の添加によって硬化する樹脂が挙げられる。中でも、加熱、光照射、又は効果促進剤の添加によって硬化する樹脂であることが好ましい。前記熱硬化樹脂としては、硬化温度が20℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0042】
樹脂6aは、粉体が固形化したものであってもよいし、液体が固体化したものであってもよい。水素吸蔵合金部6における樹脂6aの含有率としては、特に限定されるものではないが、例えば0.5質量%以上10質量%以下である。樹脂6aの含有率が前記下限に満たないと、水素吸蔵合金部6の形成が困難になるおそれがある。樹脂6aの含有率が前記上限を超えると、相対的に水素吸蔵合金6bの含有率が低下し、効果的な水素の吸蔵及び放出ができなくなるおそれがある。また、樹脂6aの含有率が前記上限を超えると、樹脂の種類によっては、水素吸蔵合金部6の粘性が低下し、本体5bへの付着が困難になるおそれがある。
【0043】
水素吸蔵合金6bとしては、公知のものを用いることができ、例えば2元系合金、3元系合金、4元系合金、又は5元系合金が挙げられる。水素吸蔵合金6bの粒径としては、例えば、10μm以上1000μm以下である。
【0044】
〔シート〕
水素吸蔵合金部6は、図5で示すように、シート9で被覆されていることが好ましい。シート9は、全てのフィン5a、及び両端側に位置するフィン5aに配設された補強部8も含めて被覆することがより好ましい。水素吸蔵合金部6をシート9で被覆することで、水素吸蔵合金部6が脱落することの抑制効果を向上できる。シート9は、伸縮可能な係止部材10で水素吸蔵合金部6に固定されている。係止部材10の数は、図では二つを配設しているが、特に限定されるものではなく、三つ以上であってもよい。係止部材10としては、特に限定されるものではないが、例えば公知のO-リングである。シート9を、例えば伸縮不可能なスチールワイヤ等で水素吸蔵合金部6に固定すると、水素吸蔵合金部6が膨張した際に破断するおそれがある。
【0045】
シート9は、水素吸蔵合金部6が効率的に水素の吸蔵及び放出ができるように、メッシュ状に形成されている。シート9のメッシュ数としては、特に限定されるものではないが、下限としては、16メッシュが好ましく、20メッシュがより好ましい。メッシュ数の上限としては、300メッシュが好ましく、100メッシュがより好ましく、60メッシュがさらに好ましい。シート9のメッシュ数が前記下限に満たないと、水素吸蔵合金部6の脱落を効果的に抑制できないおそれがある。シート9のメッシュ数が前記上限を超えると、水素吸蔵合金部6が効率的に水素を吸蔵及び放出できなくなるおそれがある。
【0046】
シート9の材質としては、特に限定されるものではなく、樹脂、ステンレス、アルミニウム、鉄などを挙げることができ、中でも軽量で柔軟性を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
<利点>
本発明の一実施形態である水素貯蔵モジュール2は、フィン付き管5における水素吸蔵合金部6の高さが、フィン5aの高さより小さいため、水素吸蔵合金部6が膨張することでその外周面がフィン5aの高さを超えて剥離、脱落することを抑制できる。
【0048】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0049】
前記実施形態では、フィン付き管の複数のフィンが略等間隔かつ平行に形成されているもので説明したが、不等間隔、非平行に形成されていてもよく、それぞれの高さが不均一であってもよい。また、一又は複数のフィンが本体の軸方向に螺旋状に形成されていてもよい。
【0050】
また、フィン付き管の本体は、略円筒形状のものに限られず、矩形筒状、多角形筒状、楕円形筒状などであってもよい。同様に、フィンの外周縁及び水素吸蔵合金部の外周面の形状は、略円形ではなく、矩形、多角形、楕円形などであってもよい。
【0051】
補強部は、板状部材で形成されてもよい。例えば、両端側に位置するフィンの外側面と本体の外周面との間にリブを立設してもよい。また、補強部は、環状部材で形成してもよい。例えば、図6で示すようなスリーブ11で補強部を形成し、このスリーブ11をフィン付き管の本体に嵌合して両端側に位置するフィンの外側面に当接させ、溶接、ボルト等の公知の方法により固定してもよい。
【0052】
棒状部材又は板状部材で形成された補強部の数は四つに限定されるものではなく、一、二若しくは三、又は五以上としてもよい。
【0053】
両端側に位置するフィンに形成される凹部は、棒状部材又は板状部材で形成された補強部と係合する箇所のみならず、補強部と係合しない箇所にも形成されてよい。
【0054】
水素貯蔵装置は、必ずしも複数の水素貯蔵モジュールを備える必要はなく、1つの水素貯蔵モジュールのみを備えていてもよい。また、水素貯蔵装置における水素貯蔵モジュールの配置は、上述の実施形態の構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明の一態様である水素吸蔵モジュールは、水素吸蔵合金部の脱落を抑制することができるため、水素供給設備の水素貯蔵装置に好適である。
【符号の説明】
【0056】
1 水素貯蔵装置
2 水素貯蔵モジュール
3 ケーシング
31 第一保持部材
32 第二保持部材
33 第三保持部材
34 熱媒体流入路
35 熱媒体流出路
3a 水素ガス供給口
3b 水素ガス排出口
3c 熱媒体供給口
3d 熱媒体排出口
4 媒体用管
41 内管
42 外管
4a 熱媒体流入口
4b 熱媒体流出口
5 フィン付き管
5a フィン
5b 本体
5c 凹部
6 水素吸蔵合金部
6a 樹脂
6b 水素吸蔵合金
7 伝熱シート
8 補強部
9 シート
10 係止部材
11 スリーブ(補強部)
P フィン間のピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6