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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175582
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20231205BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20231205BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20231205BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01F27/29 P
H01F17/00 D
H01F17/04 A
H01F27/28 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088102
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】秋山 真也
(72)【発明者】
【氏名】真渕 徳之
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AA08
5E043BA01
5E043EA05
5E070AA01
5E070AB03
5E070BA12
5E070CB03
5E070CB13
5E070CB17
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】 引出部の改良により特性が改善されたコイル部品を提供すること。
【解決手段】
一実施形態に係るコイル部品は、磁性材料から構成されており実装面を有する基体と、前記実装面に設けられた第1外部電極と、前記実装面に前記第1外部電極から離間して設けられた第2外部電極と、前記基体内においてコイル軸の周りの周方向に延びる周回部と、前記周回部の一端と前記第1外部電極とを接続する第1引出部と、前記周回部の他端と前記第2外部電極とを接続する第2引出部と、を有するコイル導体と、を備える。一実施形態において、前記第1引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第1上側軸部と、前記第1上側軸部よりも前記コイル軸の近くに配置されており前記第1外部電極から前記コイル軸に沿って延びる第1下側軸部と、前記第1上側軸部と前記第1下側軸部を接続する第1接続部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料から構成されており、実装面を有する基体と、
前記実装面に設けられた第1外部電極と、
前記実装面に前記第1外部電極から離間して設けられた第2外部電極と、
前記基体内においてコイル軸の周りの周方向に延びる周回部と、前記周回部の一端と前記第1外部電極とを接続する第1引出部と、前記周回部の他端と前記第2外部電極とを接続する第2引出部と、を有するコイル導体と、
を備え、
前記第1引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第1上側軸部と、前記第1上側軸部よりも前記コイル軸の近くに配置されており前記第1外部電極から前記コイル軸に沿って延びる第1下側軸部と、前記第1上側軸部と前記第1下側軸部を接続する第1接続部と、を有する、
コイル部品。
【請求項2】
前記コイル軸の方向から見て、前記周回部の一部は、閉ループ軌道に沿って前記コイル軸の周りの周方向において1ターン以上延伸しており、
前記コイル軸の方向から見て、前記第1上側軸部は、前記閉ループ軌道と重複しないように配置され、前記第1下側軸部は、前記閉ループ軌道と重複するように配置されている、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1下側軸部の前記コイル軸に沿う方向の寸法は、前記第1上側軸部V11の前記コイル軸に沿う方向の寸法よりも大きい、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記基体は、前記コイル軸に沿って延びる第1端面と、前記第1端面と前記実装面とを接続する湾曲面と、を有し、
前記周回部と前記第1端面との間の距離は、前記実装面と前記湾曲面との境界を通り前記コイル軸に平行に延びる仮想第1平面と前記第1端面との間の距離より小さい、
請求項1又は請求項2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記周回部の一部が前記第1端面から前記基体の外に露出している、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記周回部のうち前記第1端面から露出している部位は、絶縁膜により覆われている、
請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記基体は、前記コイル軸に沿って延びる第1端面と、前記第1端面と前記実装面とを接続する湾曲面と、を有し、
前記周回部と前記第1端面との間の距離は、前記実装面と前記湾曲面との境界を通り前記コイル軸に平行に延びる仮想第1平面と前記第1端面との間の距離以上である、
請求項1又は請求項2に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第2引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第2上側軸部と、前記コイル軸の方向から見て前記第1上側軸部よりも前記コイル軸の近くに配置されており前記第2外部電極から前記コイル軸に沿って延びる第2下側軸部と、前記第2上側軸部と前記第2下側軸部を接続する第2接続部と、を有する、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記コイル導体とは異なる他のコイル導体と、
前記実装面に前記第1外部電極及び前記第2外部電極から離間して設けられた第3外部電極と、
前記実装面に前記第1外部電極、前記第2外部電極、及び前記第3外部電極から離間して設けられた第4外部電極と、
をさらに備え、
前記他のコイル導体は、前記基体内においてコイル軸の周りの周方向に延びる他の周回部と、前記他の周回部の一端と前記第3外部電極とを接続する第3引出部と、前記他の周回部の他端と前記第4外部電極とを接続する第4引出部と、を有し、
前記第3引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第3上側軸部と、前記コイル軸の方向から見て前記第3上側軸部よりも前記コイル軸の近くに配置されており前記第3外部電極から前記コイル軸に沿って延びる第3下側軸部と、前記第3上側軸部と前記第3下側軸部を接続する第3接続部と、を有する、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記基体の体積は、1.5mm3よりも小さい、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項11】
磁性材料から構成されており、実装面、前記実装面に接続されている第1端面、及び前記実装面及び前記第1端面に接続されている第1側面を有する基体と、
前記実装面に設けられた第1外部電極と、
前記実装面に前記第1外部電極から離間して設けられた第2外部電極と、
前記基体内においてコイル軸の周りの周方向に延びる周回部と、前記周回部の一端と前記第1外部電極とを接続する第1引出部と、前記周回部の他端と前記第2外部電極とを接続する第2引出部と、を有するコイル導体と、
を備え、
前記第1引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第1上側軸部と、前記コイル軸に沿って延びる第1下側軸部と、前記第1上側軸部と前記第1下側軸部を接続する第1接続部と、を有し、
前記第1下側軸部は、前記第1下側軸部と前記第1端面との距離が前記第1上側軸部と前記第1端面との距離よりも大きく、且つ、前記第1下側軸部と前記第1側面との距離が前記第1上側軸部と前記第1側面との距離以上となるように配置されている、
コイル部品。
【請求項12】
磁性材料から構成されており、実装面、前記実装面に接続されている第1端面、及び前記実装面及び前記第1端面に接続されている第1側面を有する基体と、
前記実装面に設けられた第1外部電極と、
前記実装面に前記第1外部電極から離間して設けられた第2外部電極と、
前記基体内においてコイル軸の周りの周方向に延びる周回部と、前記周回部の一端と前記第1外部電極とを接続する第1引出部と、前記周回部の他端と前記第2外部電極とを接続する第2引出部と、を有するコイル導体と、
を備え、
前記第1引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第1上側軸部と、前記コイル軸に沿って延びる第1下側軸部と、前記第1上側軸部と前記第1下側軸部を接続する第1接続部と、を有し、
前記第1下側軸部は、前記第1下側軸部と前記第1端面との距離が前記第1上側軸部と前記第1端面との距離以上であり、且つ、前記第1下側軸部と前記第1側面との距離が前記第1上側軸部と前記第1側面との距離よりも大きくなるように配置されている、
コイル部品。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のコイル部品を含む、回路基板。
【請求項14】
請求項13に記載の回路基板を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、主にコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品は、電子機器において用いられる受動素子である。コイル部品は、例えば、電源ラインや信号ラインにおいてノイズを除去するために用いられる。コイル部品は、磁性材料から構成される基体と、基体に設けられるコイル導体と、当該コイル導体の一端及び他端に接続される一組の外部電極と、を備える。コイル導体は、コイル軸周りの周方向に沿って延びる周回部と、周回部の両端の各々を対応する外部電極に接続する引出部と、を有する。
【0003】
従来のコイル部品の例が特開2011-009391号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1に記載されているコイル部品においては、周回部と基体の底面に設置された外部電極とが、コイル軸と平行に延びる引出部により接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-009391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、コイル部品は、大きなインダクタンスを獲得するために、周回部の径が大きくなるように設計される。外部電極が基体の底面に配置されている場合、周回部の径が大きくなるほど、引出部と基体の側面又は端面との間隔は狭くなる。このため、従来のコイル部品においては、引出部の周囲における磁気抵抗が大きく、この引出部の周囲における大きな磁気抵抗がコイル部品の磁気特性を劣化させる原因となっている。また、引出部と基体の側面又は端面との間隔が狭い領域では磁気飽和が生じやすい。このため、引出部と基体の側面又は端面との間隔が狭いことは、コイル部品の直流重畳特性を劣化させる原因にもなる。
【0006】
高周波回路に用いられるコイル部品は、少ないターン数(例えば、1.5ターン~2.5ターン)を有する周回部を備える。周回部のターン数が少なくなると、コイル導体の全長に占める引出部の長さが相対的に長くなる。このため、少ないターン数の周回部を有するコイル部品においては、引出部の形状や配置がコイル部品の磁気特性及び直流重畳特性により大きな影響を与える。
【0007】
本明細書において開示される発明の目的の一つは、引出部の改良により特性が改善されたコイル部品を提供することである。
【0008】
本発明の前記以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。本明細書に開示される発明は、「発明を解決しようとする課題」の欄の記載以外から把握される課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るコイル部品は、磁性材料から構成されており実装面を有する基体と、前記実装面に設けられた第1外部電極と、前記実装面に前記第1外部電極から離間して設けられた第2外部電極と、前記基体内においてコイル軸の周りの周方向に延びる周回部と、前記周回部の一端と前記第1外部電極とを接続する第1引出部と、前記周回部の他端と前記第2外部電極とを接続する第2引出部と、を有するコイル導体と、を備える。一実施形態において、前記第1引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第1上側軸部と、前記第1上側軸部よりも前記コイル軸の近くに配置されており前記第1外部電極から前記コイル軸に沿って延びる第1下側軸部と、前記第1上側軸部と前記第1下側軸部を接続する第1接続部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書に開示されている発明の一実施形態によれば、引出部の改良によりコイル部品の特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態によるコイル部品を模式的に示す斜視図である。
図2図1のコイル部品の分解斜視図である。
図3a図2の磁性膜11に設けられる導体パターンを示す平面図である。
図3b図2の磁性膜12に設けられる導体パターンを示す平面図である。
図3c図2の磁性膜13に設けられる導体パターンを示す平面図である。
図3d図2の磁性膜14に設けられる導体パターンを示す平面図である。
図4図1のコイル部品をW軸の方向から見た透過図である。
図5図1のコイル部品の一部を拡大して示す拡大図である。
図6】別の実施形態によるコイル部品の一部を拡大して示す拡大図である。
図7】別の実施形態によるコイル部品の一部を拡大して示す拡大図である。
図8】別の実施形態によるコイル部品の磁性膜13及び第1接続部C21及び第2接続部C22を示す平面図である。
図9】別の実施形態によるコイル部品を模式的に示す斜視図である。
図10図9のコイル部品の分解斜視図である。
図11a図10の磁性膜111に設けられる導体パターンを示す平面図である。
図11b図10の磁性膜112に設けられる導体パターンを示す平面図である。
図11c図10の磁性膜113に設けられる導体パターンを示す平面図である。
図11d図10の磁性膜114に設けられる導体パターンを示す平面図である。
図11e図10の磁性膜115に設けられる導体パターンを示す平面図である。
図11f図10の磁性膜116に設けられる導体パターンを示す平面図である。
図11g図10の磁性膜117に設けられる導体パターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。以下で説明される本発明の実施形態は、必ずしも特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。以下の実施形態で説明されている諸要素が発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
従来は、主に周回部の形状や配置を改良することにより、コイル部品の磁気特性や直流重畳特性の改善が試みられていた。これに対して、本出願の発明者は、少ないターン数の周回部を有するコイル導体を備えるコイル部品においては、引出部がコイル部品の特性に大きな影響を与えることに着目し、この引出部の改良を通じてコイル部品の磁気特性及び直流重畳特性を改善できることを見いだした。以下では、まず図1及び図2を参照してコイル部品1の概略を説明した後、図3a~図3d、図4、及び図5をさらに参照して、引出部における改良について詳しく説明する。
【0014】
図1は、コイル部品1を模式的に示す斜視図であり、図2は、コイル部品1の分解斜視図である。図1及び図2には、コイル部品1の例として、積層インダクタが示されている。図示されている積層インダクタは本発明が適用可能なコイル部品1の一例であり、本発明は積層インダクタ以外の様々な種類のコイル部品に適用され得る。例えば、コイル部品1は、巻線型のコイル部品であってもよい。
【0015】
図示されているように、コイル部品1は、基体10と、基体10の内部に設けられたコイル導体25と、基体10の表面に設けられた第1外部電極21と、基体10の表面において第1外部電極21から離間した位置に設けられた第2外部電極22と、を備える。第1外部電極21は、コイル導体25の一端と電気的に接続されており、第2外部電極22は、コイル導体25の他端と電気的に接続されている。
【0016】
コイル導体25は、周回部25aと、第1引出部25b1と、第2引出部25b2と、を有する。第1引出部25b1は、周回部25aの一端と第1外部電極21とを接続する。第2引出部25b2は、周回部25aの他端と第2外部電極22とを接続する。
【0017】
コイル導体25の表面は、絶縁性に優れた絶縁材料から構成される絶縁被膜(不図示)により覆われていてもよい。絶縁被膜は、コイル部品1の製造工程における加熱処理においてコイル導体25の表面に形成される酸化膜であってもよい。絶縁被膜は、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエステル-イミド等の絶縁性に優れた樹脂から構成されたコーティング膜であってもよい。
【0018】
コイル部品1は、実装基板2aに実装され得る。実装基板2aには、ランド部3a、3bが設けられている。コイル部品1は、第1外部電極21とランド部3aとを接合し、また、第2外部電極22とランド部3bとを接続することで実装基板2aに実装される。本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品、サーバ及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。
【0019】
コイル部品1は、インダクタ、トランス、フィルタ、リアクトル、インダクタアレイ、及びこれら以外の様々なコイル部品であってもよい。コイル部品1は、カップルドインダクタ、チョークコイル及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品であってもよい。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0020】
一実施形態において、基体10は、磁性材料から直方体形状に構成される。例えば、コイル部品1のL軸方向における寸法(長さ寸法)は、0.5mm~6.0mmの範囲にあり、W軸方向における寸法(幅寸法)は0.3mm~4.5mmの範囲にあり、T軸方向における寸法(高さ寸法)は0.3mm~4.5mmの範囲にある。一実施形態において、コイル部品1の長さ寸法は、幅寸法よりも大きくてもよい。本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。後述するように、基体10の角及び/又は辺は、湾曲していてもよい。基体10の寸法及び形状は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0021】
コイル部品1においては、コイル導体25の第1引出部25b1及び/又は第2引出部25b2の改良により磁気特性及び直流重畳特性が改善されるから、周回部25aの径を大きくしなくても、改善された磁気特性及び直流重畳特性を実現することができる。したがって、所定のインダクタンスを得るために必要なコイル部品1の外形寸法を、従来のコイル部品よりも小さくすることが可能である。一実施形態においては、コイル部品1の長さ寸法、幅寸法、及び高さ寸法のうち最も大きな寸法が2.0mm以下であってもよい。図示の実施形態において、コイル部品1の長さ寸法及び幅寸法は、基体10の長さ寸法及び幅寸法にそれぞれ一致する。コイル部品1の長さ寸法、幅寸法、及び高さ寸法のうち最も大きな寸法は、1.5mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよい。コイル部品1の体積は、2.0mm3以下であってもよく、1.5mm3以下であってもよく、1.0mm3以下であってもよい。
【0022】
基体10は、第1主面10a、第2主面10b、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fを有する。第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fはいずれも第2主面10bに接続されている。また、第1端面10cは、第1側面10eと第2側面10fとを接続している。第2端面10dも、第1側面10eと第2側面10fとを接続している。基体10の角及び/又は辺は、湾曲していてもよい。基体10の辺が湾曲している場合、第1主面10a、第2主面10b、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fのうち隣接する面同士は、湾曲面を介して接続される。このように、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fは、直接に、又は、湾曲面を介して間接的に第2主面10bに接続されている。基体10の辺が湾曲している場合には、基体10は、第1主面10a、第2主面10b、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10f並びにこれらの面のうち隣接するもの同士を接続する湾曲面によってその外表面が画定される。
【0023】
第1主面10a及び第2主面10bはそれぞれ基体10の高さ方向両端の面を成し、第1端面10c及び第2端面10dはそれぞれ基体10の長さ方向両端の面を成し、第1側面10e及び第2側面10fはそれぞれ基体10の幅方向両端の面を成している。図1に示されているように、第1主面10aは基体10の上側にあるため、第1主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2主面10bを「下面」又は「底面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2主面10bが実装基板2aと対向するように配置されるので、第2主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。上面10aと下面10bとの間は基体10の高さ寸法だけ離間しており、第1端面10cと第2端面10dとの間は基体10の長さ寸法だけ離間しており、第1側面10eと第2側面10fとの間は基体10の幅寸法だけ離間している。
【0024】
基体10は、磁性材料から作製される。基体10用の磁性材料として、軟磁性合金材料、樹脂に磁性粒子を分散させた複合磁性材料、フェライト材料、又はこれら以外の任意の公知の磁性材料を用いることができる。
【0025】
基体10用の磁性材料に含まれる軟磁性金属粒子は、Fe、Ni、及びCoのうちの少なくとも一つの元素を主成分として含有し、Si、Cr、Al、B、及びPのうちの少なくとも一つの元素を添加物として含有することができる。基体10用の磁性材料に含まれる軟磁性金属粒子は、例えば、Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al合金、Fe-Ni合金等の結晶合金粒子であってもよいし、Fe-Si-Cr-B-C合金、Fe-Si-Cr-B合金等の非晶質合金粒子であってもよいし、これらが混合された混合粒子であってもよい。基体10に含まれる軟磁性金属粒子の組成は、前記のものに限られない。例えば、基体10に含まれる軟磁性金属粒子は、Co-Nb-Zr合金、Fe-Zr-Cu-B合金、Fe-Si-B合金、Fe-Co-Zr-Cu-B合金、Ni-Si-B合金、又はFe-AL-Cr合金であってもよい。
【0026】
基体10に含まれる軟磁性金属粒子の各々の表面には、絶縁膜が形成されてもよい。この絶縁膜は、磁性材料に含まれる軟磁性金属粒子に含まれる元素が酸化してできる酸化膜であってもよい。
【0027】
一又は複数の実施形態において、基体10に含まれる軟磁性金属粒子は、例えば、1~40μmの平均粒径を有する。基体10は、互いに平均粒径の異なる2種類以上の軟磁性金属粒子を含んでもよい。基体10に含まれる軟磁性金属粒子は、1~40μmの平均粒径を有する第1軟磁性金属粒子に加えて、第1軟磁性金属粒子よりも小さな平均粒径を有する第2軟磁性金属粒子を含んでもよい。第2軟磁性金属粒子の平均粒径は、例えば、0.1~0.5μmである。基体10に平均粒径が異なる2種類の軟磁性金属粒子を含有させることにより、基体10における金属磁性粒子の充填率を向上させることができる。基体10の全体積に占める金属磁性粒子の体積比率は、85vol%以上であってもよく、88vol%以上であってもよい。基体10に含まれる軟磁性金属粒子の充填率を向上させることにより、基体10の磁気特性を向上させることができる。また、基体10に含まれる軟磁性金属粒子の充填率を向上させることにより、基体10の機械的強度を向上させることができる。基体10に含まれる軟磁性金属粒子の平均粒径は、基体10をその厚さ方向(T軸方向)に沿って切断して断面を露出させ、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影したSEM像に基づいて求められる体積基準の粒度分布に基づいて定められる。例えば、SEM像に基づいて求められた体積基準の粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))を、基体10に含まれる軟磁性金属粒子の平均粒径とすることができる。第1軟磁性金属粒子の粒径は、1~60μmの範囲に分散していてもよい。第2軟磁性金属粒子の粒径は、0.01~1μmの範囲に分散していてもよい。
【0028】
基体10において、軟磁性金属粒子同士は、製造工程で軟磁性金属粒子に含有される元素が酸化して形成される酸化膜によって結合されてもよい。基体10は、軟磁性金属粒子に加えて結合材を含んでいてもよい。基体10が結合材を含む場合には、軟磁性金属粒子同士は結合材により互いに結合されてもよい。基体10に含まれる結合材は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂を硬化させることで形成されてもよい。結合材の材料として、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂が用いられ得る。基体10に含まれる結合材は、上記のものには限られない。例えば、基体10に含まれる結合材は、ガラスであってもよい。
【0029】
図2に示されているように、基体10は、磁性膜11~15を備える。基体10は、磁性膜11~15が積層された積層体である。ただし、磁性膜11~15の境界は、基体110の断面をSEMで観察しても視認できないことがある。これらの磁性膜のうち、磁性膜11~13の上面には、導体パターンが形成されている。具体的には、磁性膜11の上面には第1導体パターンC11が形成され、磁性膜12の上面には第2導体パターンC12が形成されている。第1導体パターンC11及び第2導体パターンC12はいずれも、T軸方向に沿って延びるコイル軸Axの周りの周方向に延伸している。コイル軸Axは、例えば、平面視で長方形形状を有する磁性膜11の2本の対角線の交点を通過する。コイル軸Axは、平面視における磁性膜11の幾何中心を通過してもよい。磁性膜13の上面には、ビア導体同士を接続する導体パターンである接続部C21、C22が形成されている。磁性膜11~磁性膜14の所定の位置には、T軸方向に各磁性膜を貫く貫通孔が形成されており、この貫通孔にビア導体が埋め込まれている。コイル部品1が有する導体パターン及びビア導体の各々は、磁性膜11~14の前駆体である磁性体シートに、導電性に優れた金属又は合金から成る導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、この磁性体シートに印刷された導電性ペーストを加熱することにより形成される。この導電性ペーストの材料としては、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金を用いることができる。コイル部品1が有する導体パターン及びビア導体は、前記以外の材料により形成されてもよい。コイル部品1が有する導体パターン及びビア導体は、例えば、スパッタ法、インクジェット法、又はこれら以外の公知の方法で形成されてもよい。
【0030】
磁性膜11は、単層のシート状の部材として図示されているが、磁性膜11は、複数のシート状の部材が積層された積層体であってもよい。同様に、磁性膜12~15もそれぞれ、複数のシート状の部材が積層された積層体であってもよい。磁性膜11~15を構成するシートの枚数を調整することにより、磁性膜11~15のそれぞれの厚さを調整することができる。
【0031】
次に、図3aないし図3dをさらに参照して、コイル部品1が有する導体パターン及びビア導体についてさらに説明する。
【0032】
図3aに示されているように、磁性膜11の上面には第1導体パターンC11が形成されている。第1導体パターンC11は、コイル軸Axに直交する平面(LW平面)内でコイル軸Axの周りの周方向に1ターン未満のターン数だけ延伸している。コイル軸Axの周りの周方向に延びている導体パターンのターン数は、周方向において当該導体パターンが形成されている領域の割合を示す。例えば、所定の導体パターンのターン数は、コイル軸Axの周りで当該導体パターンが延在する領域の中心角を用いて表すことができる。図示の実施形態において、第1導体パターンC11は、コイル軸Axの周りの周方向において中心角(360°-α1)の範囲に延在しているので、第1導体パターンC11のターン数は、(1-α1/360)ターンと表すことができる。例えば、α1が30°であれば、第1導体パターンC11のターン数は、約0.91ターンとなる。
【0033】
磁性膜11のうち第1導体パターンC11の一方の端部と重複する領域には当該磁性膜11をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V11aが埋め込まれている。また、磁性膜11のうち第1導体パターンC11の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜11をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V21が埋め込まれている。
【0034】
図3bに示されているように、磁性膜12の上面には第2導体パターンC12が形成されている。第2導体パターンC12は、コイル軸Axに直交する平面(LW平面)内でコイル軸Axの周りの周方向に1ターン未満のターン数だけ延伸している。図示の実施形態において、第2導体パターンC12は、コイル軸Axの周りの周方向において中心角(360°-α2)の範囲に延在している。よって、第2導体パターンC12のターン数は、(1-α2/360)ターンとされる。例えば、α1が120°であれば、第2導体パターンC12のターン数は、約0.67ターンとなる。第2導体パターンC12の一方の端部はビア導体V21と接続されている。磁性膜12のうち第2導体パターンC12の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜12をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V31が埋め込まれている。第2導体パターンC12の他方の端部は、ビア導体V31と接続される。
【0035】
磁性膜12のうち平面視においてビア導体V11aと重複する領域には、磁性膜12をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V11bが埋め込まれている。ビア導体V11bは、ビア導体V11aと接続される。
【0036】
図3cに示されているように、磁性膜13の上面には第1接続部C21及び第2接続部C22が形成されている。第1接続部C21の一方の端部はビア導体V11bと接続されている。磁性膜13のうち第1接続部C21の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜13をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V12aが埋め込まれている。よって、第1接続部C21の他方の端部は、ビア導体V12aと接続される。このように、磁性膜13の上面において、第1接続部C21は、ビア導体V11bに接続されている一方の端部から、ビア導体V12aに接続されている他方の端部まで延伸している。
【0037】
第2接続部C22の一方の端部はビア導体V31と接続されている。磁性膜13のうち第2接続部C22の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜13をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V32aが埋め込まれている。よって、第2接続部C22の他方の端部は、ビア導体V32aと接続される。このように、磁性膜13の上面において、第2接続部C22は、ビア導体V31に接続されている一方の端部から、ビア導体V32aに接続されている他方の端部まで延伸している。
【0038】
第1接続部C21は、LW平面に沿って直線状に延びるように構成されてもよい。第1接続部C21が直線状の形状を有することにより、第1接続部C21による直流抵抗Rdcの増加を抑制することができる。同様に、第2接続部C22も、LW平面に沿って直線状に延びるように構成されてもよい。第2接続部C22が直線状の形状を有することにより、第2接続部C22による直流抵抗Rdcの増加を抑制することができる。
【0039】
図3dに示されているように、磁性膜14のうち平面視においてビア導体V12aと重複する領域及びビア導体V32aと重複する領域には、磁性膜14をT軸方向に貫く貫通孔がそれぞれ設けられている。ビア導体V12aと重複する領域に形成された貫通孔にはビア導体V12bが埋め込まれており、ビア導体V32aと重複する領域に形成された貫通孔にはビア導体V32bが埋め込まれている。ビア導体V12bの上端は、ビア導体V12aの下端に接続され、ビア導体V12bの下端は、第1外部電極21に接続される。ビア導体V32bの上端は、ビア導体V32aの下端に接続され、ビア導体V32bの下端は、第2外部電極22に接続される。
【0040】
以上のように、第1導体パターンC11と第2導体パターンC12とはビア導体V21によって接続される。このようにして接続された第1導体パターンC11、ビア導体V21、及び第2導体パターンC12が、基体10内においてコイル軸Axの周りに約1.5ターン延伸するスパイラル状の周回部25aを構成する。コイル部品1を平面視したとき(T軸方向から見たとき)、周回部25aの一部は、楕円形の閉ループ軌道CLに沿って1ターン以上延伸している。閉ループ軌道CLは、楕円形の内周面CL1と、内周面CL1よりも大径の楕円形を有する外周面CL2との間の領域を指す。ビア導体V11aは、磁性膜13の左上のコーナー近傍に設けられているため、周回部25aの一部は、閉ループ軌道CLから離脱してビア導体V11aに向かって延伸している。閉ループ軌道CLの形状は、楕円形状には限られない。閉ループ軌道CLの形状は、平面視において、長円形、円形、矩形、多角形、又はこれら以外の形状であってもよい。
【0041】
基体10のうち、平面視において閉ループ軌道CLよりも内側の領域を内側領域R1と呼び、平面視において閉ループ軌道CLよりも外側の領域を外側領域R2と呼ぶ。
【0042】
一実施形態において、周回部25aのターン数は、3ターン以下とされる。周回部25aのターン数は、例えば、1.3ターンから2.5ターンの範囲にある。周回部25aのターン数が小さいほど、コイル導体25の全長に占める第1引出部25b1及び第2引出部25b2の長さが相対的に長くなる。特に周回部25aのターン数が3ターン以下の場合には、コイル導体25の全長に対して第1引出部25b1及び第2引出部25b2の長さが大きな割合を占めるため、第1引出部25b1及び第2引出部25b2の形状や配置がコイル部品1の特性に与える影響が大きくなる。コイル部品1における第1引出部25b1及び第2引出部25b2は、以下で説明するように、コイル部品1が優れた磁気特性及び直流重畳特性を呈するように、その形状及び配置が改良されている。
【0043】
周回部25aの一端は、ビア導体V11a、ビア導体V11b、第1接続部C21、ビア導体V12a、及びビア導体V12bを介して第1外部電極21に接続されている。よって、ビア導体V11a、ビア導体V11b、第1接続部C21、ビア導体V12a、及びビア導体V12bが、第1引出部25b1を構成する。ビア導体V11a、V11bは、T軸に平行に延びる同じ軸線上に配置されているので、両者をまとめて第1上側軸部V11と呼ぶ。第1上側軸部V11は、ビア導体V11a及びビア導体V11bから構成される。ビア導体V12a、V12bは、T軸に平行に延びる同じ軸線上に配置されており、第1上側軸部V11よりも下方に(実装面10bのより近くに)配置されているので、両者をまとめて第1下側軸部V12と呼ぶ。第1下側軸部V12は、ビア導体V12a及びビア導体V12bから構成される。以上のように、周回部25aの一端は、第1上側軸部V11、第1接続部C21、及び第1下側軸部V12から構成される第1引出部25b1により第1外部電極21に接続されている。本明細書においてコイル部品1又はその構成部材の配置の上下に言及する場合には、別段に解釈すべき場合を除き、実装基板2aにコイル部品1が実装されている姿勢において、実装基板2aに近い方向を「下側」とし、実装基板2aから遠い方向を「上側」とする。第1上側軸部V11は、第1下側軸部V12よりも実装基板2aから遠い位置に配置されているので、第1上側軸部V11は、第1下側軸部V12よりも「上側」に配置されている。図1に示されている座標軸を用いて上下方向を表せば、T軸におけるプラス方向が「上側」であり、T軸方向におけるマイナス側が「下側」となる。実装基板2aの向きによっては、上下方向が鉛直方向と一致しないことがある点に留意されたい。
【0044】
周回部25aの他端は、ビア導体V31、第2接続部C22、ビア導体V32a、及びビア導体V32bを介して第2外部電極22に接続されている。よって、ビア導体V31、第2接続部C22、ビア導体V32a、及びビア導体V32bが、第2引出部25b2を構成する。ビア導体V32a、V32bは、T軸に平行に延びる同じ軸線上に配置されているので、両者をまとめて第2下側軸部V32と呼ぶ。第2下側軸部V32は、ビア導体V32a及びビア導体V32bから構成される。また、ビア導体V31は、T軸方向に延びており、第2下側軸部V32よりも上方に(実装面10bからより遠くに)配置されているので、ビア導体V31を第2上側軸部V31と呼ぶこともある。以上のように、周回部25aの他端は、第2上側軸部V31、第2接続部C22、及び第2下側軸部V22から構成される第2引出部25b2により第2外部電極22に接続されている。
【0045】
次に、図4及び図5をさらに参照して、第1引出部25b1及び第2引出部25b2についてさらに説明する。図4に示されているように、一実施形態において、コイル部品1を正面視したとき(W軸方向から見たとき)、第1引出部25b1の第1下側軸部V12は、第1上側軸部V11よりもコイル軸Axの近くに配置されている。第1上側軸部V11及び第1下側軸部V12のうちいずれがコイル軸Axに近いかを判断する場合には、第1上側軸部V11のうち第1端面10cの最も近くにある部位(図4に示されている視点では、第1上側軸部V11の左端)とコイル軸Axとの間の距離と、第1下側軸部V12のうち第1端面10cの最も近くにある部位(図4に示されている視点では、第1下側軸部V12の左端)とコイル軸Axとの間の距離と、の大小が比較される。よって、第1下側軸部V12のうち第1端面10cの最も近くにある部位とコイル軸Axとの間の距離が第1上側軸部V11のうち第1端面10cの最も近くにある部位とコイル軸Axとの間の距離よりも小さい場合に、第1下側軸部V12が第1上側軸部V11よりもコイル軸Axの近くに配置されていると判断することができる。
【0046】
第1上側軸部V11及び第1下側軸部V12の配置は、コイル軸Axとの距離ではなく、第1上側軸部V11及び第1下側軸部V12と第1端面10c及び第1側面10eとの距離に関して定められてもよい。図3cに示されているように、第1上側軸部V11は、第1端面10cから距離L1だけ離れるとともに第1側面10eから距離W1だけ離れた位置に配置されている。つまり、第1上側軸部V11と第1端面10cとの距離はL1であり、第1上側軸部V11と第1側面10eとの距離はW1である。また、第1下側軸部V12は、第1端面10cから距離L2だけ離れるとともに第1側面10eから距離W2だけ離れた位置に配置されている。つまり、第1下側軸部V12と第1端面10cとの距離はL2であり、第1下側軸部V12と第1側面10eとの距離はW2である。一実施形態において、第1下側軸部V12は、(1)第1下側軸部V12と第1端面10cとの距離L2が第1上側軸部V11と第1端面10cとの距離L1よりも大きく、且つ、第1下側軸部V12と第1側面10eとの距離W2が第1上側軸部V11と第1側面10eとの距離W1以上となるように(つまり、L2>L1且つW2≧W1となるように)、又は、(2)第1下側軸部V12と第1端面10cとの距離L2が第1上側軸部V11と第1端面10cとの距離L1以上であり、且つ、第1下側軸部V12と第1側面10eとの距離W2が第1上側軸部V11と第1側面10eとの距離W1より大きくなるように(つまり、L2≧L1且つW2>W1となるように)、基体10内に配置される。図3cには、上記(1)の態様が例示されている。つまり、図3cにおいては、L2>L1且つW1=W2の関係が成り立っている。
【0047】
図3cから分かるように、平面視においては、第1上側軸部V11は、コイル軸Axを中心とする径方向において閉ループ軌道CLよりも外側にある外側領域R2に配置されているのに対し、第1下側軸部V12は、閉ループ軌道CLと重複する位置に配置されている。第1上側軸部V11及び第1下側軸部V12の配置は、上記の配置には限られない。
【0048】
また、図4に示されているように、第2引出部25b2の第2下側軸部V32は、コイル部品1を正面視したとき(W軸方向から見たとき)、第2上側軸部V31よりもコイル軸Axの近くに配置されている。図3cから分かるように、平面視においては、第2上側軸部V31は、閉ループ軌道CLと重複する位置に配置されているのに対し、第2下側軸部V32は、閉ループ軌道CLの内側にある内側領域R1に配置されている。第2上側軸部V31及び第2下側軸部V32の配置は、上記の配置には限られない。例えば、第2上側軸部V31は、閉ループ軌道CLと重複しない位置(例えば、平面視における外側領域R2)に配置されていてもよい。また、第2下側軸部V32は、閉ループ軌道CLと部分的に重複していてもよい。
【0049】
上述したとおり、正面視において、第1下側軸部V12は、第1上側軸部V11よりもコイル軸Axの近くに配置されているので、図5に示されているように、第1下側軸部V12と第1端面10cとの間の間隔L2は、第1上側軸部V11と第1端面10cとの間の間隔L1よりも大きい。特許文献1(特開2011-009391号公報)に記載されているように、従来のコイル部品におけるコイル導体の引出部は、周回部の端からコイル軸に沿って実装面まで直線状に延びているため、基体の外形寸法を大きくすることなく引出部と基体の表面との間の間隔を大きくすることができない。このため、従来のコイル部品においては、引出部を流れる電流の変化により発生する磁束は、引出部と基体の表面との間の狭い領域を通過することになる。これに対し、本発明の一実施形態によるコイル部品1においては、第1引出部25b1が第1上側軸部V11よりもコイル軸Axの近くに配置されている第1下側軸部V12を有しているため、基体10内において第1下側軸部V12と第1端面10cとの間に、従来のコイル部品における引出部と基体表面との間の領域と比べて大きな体積を有するマージン領域M1が存在する。第1引出部25b1を流れる電流の変化により発生する磁束は、このマージン領域M1を通過することができるので、コイル部品1は、磁束が引出部と基体の表面との間の狭い間隔を通過する従来のコイル部品と比べて、優れた磁気特性及び直流重畳特性を得ることができる。
【0050】
また、上述したように、一実施形態では、第1下側軸部V12と第1端面10cとの距離L2が第1上側軸部V11と第1端面10cとの距離L1よりも大きく、且つ、第1下側軸部V12と第1側面10eとの距離W2が第1上側軸部V11と第1側面10eとの距離W1以上となるように第1下側軸部V12の配置が定められてもよい。この場合、第1下側軸部V12と第1端面10cとの間だけでなく第1下側軸部V12と第1側面10eとの間にも、従来のコイル部品における引出部と基体表面との間の領域と比べて大きな体積を有するマージン領域を設けることができるので、さらに優れた磁気特性及び直流重畳特性を実現することができる。
【0051】
さらに、上述したように、一実施形態では、第1下側軸部V12と第1端面10cとの距離L2が第1上側軸部V11と第1端面10cとの距離L1以上であり、且つ、第1下側軸部V12と第1側面10eとの距離W2が第1上側軸部V11と第1側面10eとの距離W1より大きくなるように第1下側軸部V12の配置が定められてもよい。この場合も、第1下側軸部V12と第1端面10cとの間だけでなく第1下側軸部V12と第1側面10eとの間にも、従来のコイル部品における引出部と基体表面との間の領域と比べて大きな体積を有するマージン領域を設けることができるので、さらに優れた磁気特性及び直流重畳特性を実現することができる。
【0052】
このように、コイル部品1においては、第1下側軸部V12により磁気特性及び直流重畳特性の改善が実現されているので、第1上側軸部V11を第1端面10cの近くに設けることができる。言い換えると、第1上側軸部V11を第1端面10cの近くに設けても、コイル部品1において所期の磁気特性及び直流重畳特性の実現が容易である。基体10が軟磁性金属粒子を含む場合には、第1上側軸部V11と、周回部25aのうち第1上側軸部V11が直接接している導体パターン(図示の例では、第1導体パターンC11)以外の導体パターンとの間で絶縁破壊が起きる可能性がある。第1上側軸部V11を第1端面10cの近くに配置することにより、周回部25aを構成する導体パターンのうち第1上側軸部V11が直接接している導体パターン以外の導体パターン(図示の例では、第2導体パターンC12)と第1上側軸部V11との間隔を広くすることができるので、第1上側軸部V11と周回部25aを構成する導体パターンのうち第1上側軸部V11が直接接している導体パターン以外の導体パターンとの間における絶縁破壊を抑制することができる。基体10が軟磁性金属粒子を含む場合には、第1上側軸部V11を第1端面10cの近くに配置することによる絶縁破壊の抑制効果が大きい。第1上側軸部V11は、平面視において第1上側軸部V11と第1端面10cとの間の距離が第1上側軸部V11と周回部25aを構成する導体パターンのうち第1上側軸部V11に直接接している導体パターン以外の導体パターン(例えば、第2導体パターンC12)との距離よりも小さくなるように配置されてもよい。第1上側軸部V11と第1端面10cとの間の距離は、平面視において第1上側軸部V11の外周を画定する面と第1端面10cとの間の最短距離とすることができる。また、第1上側軸部V11と周回部25aを構成する導体パターンのうち第1上側軸部V11に直接接している導体パターン以外の導体パターンとの間の距離は、平面視において第1上側軸部V11の外周を画定する面と当該導体パターン(例えば、第2導体パターンC12)の外周面との間の最短距離とすることができる。
【0053】
コイル部品1の使用時にコイル導体25に電流が流れてコイル導体25の温度が上昇すると、基体10とコイル導体25との線膨張係数の違いにより、コイル導体25から基体10に対して応力が作用する。従来のコイル部品においては、コイル導体の引出部が周回部の一端から外部電極まで直線状に延びているため、引出部から基体に対して作用する応力が引出部の延伸方向に対して垂直な方向に偏ってしまう。この引出部から基体に対して一様な方向へ作用する応力は、引出部と基体との間にクラックを発生させる原因となる。これに対して、コイル部品1においては、第1引出部25b1のうちT軸方向に延びる部位が第1上側軸部V11と第1下側軸部V12とに分かれており、また、第1上側軸部V11と第1下側軸部V12とがT軸に対して垂直な方向に延びる第1接続部C21により接続されているため、コイル導体25の温度が上昇したときにコイル導体25から基体10に対して様々な方向に応力が作用するので、第1引出部25b1と基体10との間におけるクラックの発生が抑制される。
【0054】
コイル導体25は、磁性膜11~14の前駆体である磁性体シートとともに導電性ペーストを加熱することにより形成される。加熱された導電性ペーストは、磁性体シートと異なる線膨張係数を有するため、コイル導体25を形成するための加熱時にも、第1引出部25b1(又は、その前駆体である導電性ペースト)から基体10(又はその前駆体である磁性体シート)に線膨張係数の違いに起因する応力が作用する。コイル部品1においては、第1上側軸部V11と第1下側軸部V12とがT軸に対して垂直な方向に延びる第1接続部C21により接続されているため、製造プロセスにおける加熱工程において第1引出部25b1から基体10に対して作用する応力の向きを分散させることができるので、第1引出部25b1と基体10との間におけるクラックの発生が抑制される。
【0055】
コイル部品1を実装基板2aに実装する際には、実装基板2aが熱膨張及び熱収縮するため、実装基板2aから基体10及び第1引出部25b1に対して応力が作用する。第1引出部25b1がT軸に平行な方向に延びる第1上側軸部V11及び第1下側軸部V12とT軸に対して垂直な方向に延びる第1接続部C21とを有しているため、実装基板2aから基体10及び第1引出部25b1に応力が作用する場合にも、第1引出部25b1と基体10との間におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0056】
第1引出部25b1について説明したのと同様の理由で、第2引出部25b2と基体10との間におけるクラックの発生も抑制される。
【0057】
図5に示されているように、第1引出部25b1において、第1下側軸部V12のT軸方向における寸法T2は、第1上側軸部V11のT軸方向における寸法T1より大きくてもよい。寸法T2を寸法T1よりも大きくすることにより、マージン領域M1の体積をさらに大きくすることができるので、寸法T2が寸法T1より小さい場合と比べて、コイル部品1の磁気特性及び直流重畳特性をさらに改善することができる。第2引出部25b2においても同様に、第2下側軸部V32のT軸方向における寸法を、第2上側軸部V31のT軸方向における寸法よりも大きくすることができる。これにより、第2下側軸部V32による磁気特性及び直流重畳特性の改善効果をより大きくすることができる。
【0058】
従来のコイル部品においては、引出部と基体の表面との間隔を大きくすれば、引出部を流れる電流の変化により発生する磁束が通過する領域を基体内に大きく確保することができるが、引出部と基体の表面との間隔を一様に大きくすると、コイル部品が大型化してしまう。本発明の一実施形態によるコイル部品1においては、第1下側軸部V12を第1上側軸部V11よりもコイル軸Axの近くに配置することにより、コイル部品1を大型化することなく、その磁気特性及び直流重畳特性を改善することができる。一実施形態においては、第1下側軸部V12が、平面視において、周回部25aと重複するように配置されている。このように、第1下側軸部V12は、基体10内の周回部25aと実装面10bとの間にある領域に配置されるので、コイル導体25の他の部位と干渉することなく、第1下側軸部V12をコイル軸Axの近くに配置することができる。
【0059】
図5に示されているように、基体10は、実装面10bと第1端面10cとを接続する湾曲面10gを有してもよい。コイル部品1に落下時の衝撃やその他の衝撃が加えられる場合、その衝撃による応力は、コイル部品1の角や辺に集中することが多い。実装面10bに設けられている第1外部電極21及び第2外部電極22の重みのために、落下したコイル部品1は、実装面10bと第1端面10cとの境界にある辺又は実装面10bと第2端面10dとの境界にある辺において地面と衝突しやすい。基体10の実装面10bと第1端面10cとを湾曲面10gで接続することにより、落下時の衝撃やその他の衝撃による応力を分散し、コイル部品1の破損を抑制することができる。同様に、基体10の実装面10bと第2端面10dとの間も湾曲面で接続されてもよい。落下時の衝撃以外にも外部からの衝撃がコイル部品1に加えられ得ることを想定して、基体10の他の辺も湾曲面として構成されてもよい。
【0060】
コイル部品1においては、第1下側軸部V12が第1上側軸部V11よりも第1端面10cから遠位に配置されているため、引出部が基体の表面と一定の狭い間隔で延伸している従来のコイル部品と比べて、第1端面10cと実装面10bとを接続する辺の近傍における基体10の厚さを大きくすることができる。これにより、基体10において衝撃による応力が集中しやすい第1端面10cと実装面10bとを接続する辺の近傍の領域の機械的強度を向上させることができる。
【0061】
図5に示されているように、実装面10bと湾曲面10gとの境界を通り、コイル軸Axに平行に延びる第1仮想平面S1を想定する。第1仮想平面S1は、第1端面10cと平行に延びている。周回部25aのうち第1端面10cに最も近い部位と第1端面10cとの間の距離L3は、第1仮想平面S1と第1端面10cとの間の距離L4より大きくてもよい。これにより、周回部25aと基体10の第1端面10cとの間に距離L4よりも大きな間隔を確保することができるので、周回部25aとコイル部品1の外部に設けられる導電性の部材との間の絶縁を確保することができる。
【0062】
一実施形態において、第1外部電極21は、コイル部品1を正面視したときに第1外部電極21の左端(L軸の正方向の端)が第1仮想平面S1と一致するように配置されてもよい。これにより、第1外部電極21を実装面10bに強固に取り付けることができる。
【0063】
第1下側軸部V12は、第1仮想平面S1よりも内側の第1仮想平面S1と交わらない位置に配置される。これにより、第1下側軸部V12は、湾曲面10gではなく平坦な実装面10bから基体10の外部に露出する。これにより、第1下側軸部V12の端面と実装面10bに設けられている第1外部電極21との接触面積を大きくすることができるので、第1下側軸部V12と第1外部電極21とを電気的に確実に接続することができ、また、第1下側軸部V12と第1外部電極21とを強固に接合することができる。
【0064】
図5に示されているように、第1端面10cと湾曲面10gとの境界を通り、コイル軸Axと垂直に交わる第2仮想平面S2を想定する。第2仮想平面S2は、実装面10bと平行に配置される。第2仮想平面S2と実装面10bとの距離をT3とする。図示の実施形態において、第1下側軸部V12のT軸方向における寸法T2は、第2仮想平面S2と実装面10bとの距離T3より大きい。第1下側軸部V12のT軸方向における寸法T2を第2仮想平面S2と実装面10bとの距離T3より大きくすることにより、マージン領域M1の体積を大きくし、磁気特性及び直流重畳特性の改善効果をより大きくすることができる。
【0065】
図1から図5に示されているコイル導体25の形状及び配置は例示であり、本明細書に開示される発明に適用可能なコイル導体25は、図1から図5に記載された態様には限定されない。図6ないし図8を参照して、コイル導体25の変形例について説明する。
【0066】
図6には、コイル導体25の変形例の一つが示されている。図6に示されている実施形態において、コイル導体25は、周回部25aと第1端面10cとの間の距離L13が、第1仮想平面S1と第1端面10cとの間の距離L4よりも小さくなるように構成及び配置されている。図6の実施形態によれば、周回部25aと第1端面10cとの間の距離L13が第1仮想平面S1と第1端面10cとの間の距離L4より小さいので、周回部25aの径を大きくすることができる。周回部25aの径を大きくすることにより、コイル部品1における磁気特性をさらに改善することができる。図示は省略されているが、実装面10bと第2端面10dとが湾曲面により接続されている場合、コイル導体25は、周回部25aと第2端面10dとの間の距離が、実装面10bと第2端面10dとの間の湾曲面を通りコイル軸Axに平行に延びる仮想平面と第2端面10dとの間の距離よりも小さくなるように構成及び配置されてもよい。
【0067】
図7には、コイル導体25の別の変形例が示されている。図7に示されている実施形態において、コイル導体25は、周回部25aの一部が第1端面10cから基体10の外に露出するように構成及び配置されている。基体10の第1端面10cには、ガラス、樹脂等の絶縁性に優れた絶縁材料から成る絶縁膜30が設けられてもよい。絶縁膜30は、周回部25aのうち第1端面10cから露出する部位を覆うように第1端面10cに設けられる。図示は省略されているが、周回部25aの一部は、第1端面10cだけでなく第2端面10dからも基体10の外に露出してもよい。周回部25aが第2端面10dから露出する場合、絶縁膜30は、周回部25aのうち第2端面10dから露出する部位を覆うように第2端面10dにも設けられてもよい。一実施形態においては、第1接続部C21も第1端面10cから露出してもよい。第1接続部C21が第1端面10cから露出する場合には、絶縁膜30は、第1接続部C21のうち第1端面10cから露出する部位も覆うように第1端面10cに設けられる。一実施形態において、第2接続部C22は、第2端面10dから基体10の外に露出してもよい。第2接続部C22が第2端面10dから露出する場合には、絶縁膜30は、第2接続部C22のうち第2端面10dから露出する部位も覆うように第2端面10dに設けられる。
【0068】
図7に示されている実施形態によれば、周回部25aの一部が第1端面10c及び/又は第2端面10dから露出するので周回部25aの径をさらに大きくすることができる。周回部25aの径を大きくすることにより、コイル部品1における磁気特性をさらに改善することができる。また、周回部25aのうち第1端面10cから露出している部位が絶縁膜30により覆われているので、周回部25aと他の導電性の部材との短絡を防止することができる。
【0069】
図8には、第1接続部C21の変形例が示されている。図8に示されている実施形態において、ビア導体V12aは、ビア導体V11bと比べて、第1端面10cからより遠位に配置されているだけでなく、第1側面10eからもより遠位に配置されている。言い換えると、ビア導体V12aと第1端面10cとの間の距離は、ビア導体V11bと第1端面10cとの間の距離よりも大きく、ビア導体V12aと第1側面10eとの間の距離は、ビア導体V11bと第1側面10eとの間の距離よりも大きい。図示は省略されているが、ビア導体V12bは、磁性膜14のビア導体V12aと対応する位置に形成された貫通孔に埋め込まれ、ビア導体V12aと接続される。図8に示されている実施形態によれば、基体10内において第1下側軸部V12と第1端面10cとの間だけでなく第1下側軸部V12と第1側面10eとの間にも、従来のコイル部品における引出部と基体表面との間の領域と比べて大きな体積を有する領域が確保される。このため、コイル部品1においては、引出部が基体の表面と一定の狭い間隔で延伸している従来のコイル部品と比べて、優れた磁気特性及び直流重畳特性を得ることができる。
【0070】
第1上側軸部V11及び第1下側軸部V12の配置は、上記の態様には限定されない。第1下側軸部V12は、第1上側軸部V11と第1端面10cとの間の距離及び第1上側軸部V11と第1側面10eとの距離のうちの小さい方の距離が、第1下側軸部V12と第1端面10cとの間の距離及び第1下側軸部V12と第1側面10eとの間の距離のうちの小さい方の距離よりも大きくなるように構成及び配置される。これにより、第1下側軸部V12と第1端面10c及び第1側面10eの少なくとも一方との間に、磁束の通過を容易にするためのマージン領域を確保することができるので、コイル部品1において、従来のコイル部品と比べて、優れた磁気特性及び直流重畳特性を得ることができる。
【0071】
続いて、図9図10、及び図11a~図11gを参照して、別の実施形態に係るコイル部品101を説明する。コイル部品101の構成要素のうちコイル部品1の構成要素と同じ又は類似するものについては適宜説明を省略する。図9は、コイル部品101を模式的に示す斜視図であり、図2は、コイル部品101の分解斜視図である。図11a~図11gは、磁性膜11~17の平面図をそれぞれ示す。
【0072】
コイル部品101は、2系統のコイル導体を備える磁気結合型コイル部品である。より具体的には、コイル部品101は、基体110と、基体110の内部に設けられた第1コイル導体125と、基体110の内部に第1コイル導体125から離間して配置される第2コイル導体135と、を備える。第1コイル導体125と第2コイル導体135とは、基体10内において、互いから電気的に絶縁されている。
【0073】
基体110は、基体10と同様に磁性材料から構成されている。基体110は、上面110a、実装面110b、第1端面110c、第2端面110d、第1側面110e、及び第2側面110fによりその外表面が画定される。基体110の角及び/又は辺は、湾曲していてもよい。
【0074】
基体110の実装面110bには、第1外部電極121と、第2外部電極122と、第3外部電極123と、第4外部電極124と、が設けられている。第1外部電極121と、第2外部電極122と、第3外部電極123と、及び第4外部電極124は、互いから離間するように配置されている。
【0075】
第1コイル導体125は、周回部125aと、第1引出部125b1と、第2引出部125b2と、を有する。第1引出部125b1は、周回部125aの一端と第1外部電極121とを接続する。第2引出部125b2は、周回部125aの他端と第2外部電極122とを接続する。第2コイル導体135は、周回部135aと、第3引出部135b3と、第4引出部125b4と、を有する。第3引出部125b3は、周回部135aの一端と第3外部電極123とを接続する。第4引出部125b4は、周回部135aの他端と第4外部電極124とを接続する。
【0076】
図10に示されているように、基体110は、磁性膜111~118を備える。コイル部品1の磁性膜11~15に関する説明は、可能な限り磁性膜111~118にも当てはまる。
【0077】
図示の実施形態において、基体110は、磁性膜111~118が積層された積層体である。ただし、磁性膜111~118の境界は、基体110の断面をSEMで観察しても視認できないことがある。これらの磁性膜のうち、磁性膜111、112、114、115、116の上面には、導体パターンが形成されている。具体的には、磁性膜111の上面には第1導体パターンC111が形成され、磁性膜112の上面には第2導体パターンC112が形成され、磁性膜114の上面には第3導体パターンC113が形成され、磁性膜115の上面には第4導体パターンC114が形成されている。第1導体パターンC111~第4導体パターンC114はいずれも、T軸方向に沿って延びるコイル軸Axの周りの周方向に延伸している。磁性膜116の上面には、ビア導体同士を接続する導体パターンである第1接続部C121、第2接続部C122、第3接続部C123、第4接続部C124が形成されている。磁性膜111~磁性膜117の所定の位置には、T軸方向に各磁性膜を貫く貫通孔が形成されており、この貫通孔にビア導体が埋め込まれている。コイル部品101が有する導体パターン及びビア導体の各々は、例えば、磁性膜11~14の前駆体である磁性体シートに、導電性に優れた金属又は合金から成る導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、この磁性体シートに印刷された導電性ペーストを加熱することにより形成される。
【0078】
図11aないし図11gをさらに参照して、コイル部品101が有する導体パターン及びビア導体についてさらに説明する。図11aに示されているように、磁性膜111の上面には第1導体パターンC111が形成されている。図示の実施形態において、第1導体パターンC111は、第1導体パターンC11と同じ形状を有する。第1導体パターンC11に関する説明は、可能な限り第1導体パターンC111にも当てはまる。磁性膜111のうち第1導体パターンC111の一方の端部と重複する領域には当該磁性膜111をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V111aが埋め込まれている。また、磁性膜111のうち第1導体パターンC111の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜111をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V121が埋め込まれている。
【0079】
図11bに示されているように、磁性膜112の上面には第2導体パターンC112が形成されている。第2導体パターンC112は、コイル軸Axに直交する平面(LW平面)内でコイル軸Axの周りの周方向に1ターン未満のターン数だけ延伸している。図示の実施形態において、第2導体パターンC112は、コイル軸Axの周りの周方向に約0.5ターンだけ延伸している。第2導体パターンC112の一方の端部はビア導体V121と接続されている。磁性膜112のうち第2導体パターンC112の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜112をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V131aが埋め込まれている。第2導体パターンC112の他方の端部は、ビア導体V131aと接続される。
【0080】
磁性膜112のうち平面視においてビア導体V111aと重複する領域には、磁性膜112をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V111bが埋め込まれている。ビア導体V111bは、ビア導体V111aと接続される。
【0081】
図11cに示されているように、磁性膜113のうち平面視においてビア導体V111bと重複する領域には、磁性膜113をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V111cが埋め込まれている。ビア導体V111cは、ビア導体V111bと接続される。磁性膜113のうち平面視においてビア導体V131aと重複する領域には、磁性膜113をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V131bが埋め込まれている。ビア導体V131bは、ビア導体V131aと接続される。
【0082】
図11dに示されているように、磁性膜114の上面には第3導体パターンC113が形成されている。図示の実施形態において、第3導体パターンC113は、コイル軸Axと交わりL軸に沿って延びる軸線を対称軸として第1導体パターンC111と線対称の形状を有する。磁性膜114のうち第3導体パターンC113の一方の端部と重複する領域には当該磁性膜114をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V141aが埋め込まれている。また、磁性膜114のうち第3導体パターンC113の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜114をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V151が埋め込まれている。
【0083】
磁性膜114のうち平面視においてビア導体V111cと重複する領域には、磁性膜114をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V111dが埋め込まれている。ビア導体V111dは、ビア導体V111cと接続される。磁性膜114のうち平面視においてビア導体V131bと重複する領域には、磁性膜114をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V131cが埋め込まれている。ビア導体V131cは、ビア導体V131bと接続される。
【0084】
図11eに示されているように、磁性膜115の上面には第4導体パターンC114が形成されている。図示の実施形態において、第4導体パターンC114は、コイル軸Axと交わりL軸に沿って延びる軸線を対称軸として第2導体パターンC112と線対称の形状を有する。第4導体パターンC114の一方の端部はビア導体V151と接続されている。磁性膜115のうち第4導体パターンC114の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜115をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V161が埋め込まれている。第2導体パターンC112の他方の端部は、ビア導体V161と接続される。
【0085】
磁性膜115のうち平面視においてビア導体V111dと重複する領域には、磁性膜115をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V111eが埋め込まれている。ビア導体V111eは、ビア導体V111dと接続される。磁性膜115のうち平面視においてビア導体V131cと重複する領域には、磁性膜115をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V131dが埋め込まれている。ビア導体V131dは、ビア導体V131cと接続される。磁性膜115のうち平面視においてビア導体V141aと重複する領域には、磁性膜115をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V141bが埋め込まれている。ビア導体V141bは、ビア導体V141aと接続される。
【0086】
図11fに示されているように、磁性膜116の上面には第1接続部C121、第2接続部C122、第3接続部C133、及び第4接続部C124が形成されている。第1接続部C121の一方の端部はビア導体V111eと接続されている。磁性膜116のうち第1接続部C21の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜116をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V112aが埋め込まれている。第1接続部C121の他方の端部は、ビア導体V112aと接続される。このように、第1接続部C121は、磁性膜116の上面において、ビア導体V111eに接続されている一方の端部から、ビア導体V112aに接続されている他方の端部まで延伸している。
【0087】
第2接続部C122の一方の端部はビア導体V131dと接続されている。磁性膜116のうち第2接続部C122の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜116をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V132aが埋め込まれている。よって、第2接続部C122の他方の端部は、ビア導体V132aと接続される。このように、第2接続部C122は、磁性膜116の上面において、ビア導体V131dに接続されている一方の端部から、ビア導体V132aに接続されている他方の端部まで延伸している。
【0088】
第3接続部C123の一方の端部はビア導体V141bと接続されている。磁性膜116のうち第3接続部C123の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜116をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V142aが埋め込まれている。第3接続部C123の他方の端部は、ビア導体V142aと接続される。このように、第3接続部C123は、磁性膜116の上面において、ビア導体V141bに接続されている一方の端部から、ビア導体V142aに接続されている他方の端部まで延伸している。
【0089】
第4接続部C124の一方の端部はビア導体V161と接続されている。磁性膜116のうち第4接続部C124の他方の端部と重複する領域には当該磁性膜116をT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V162aが埋め込まれている。よって、第4接続部C124の他方の端部は、ビア導体V162aと接続される。このように、磁性膜116の上面において、第4接続部C124は、ビア導体V161に接続されている一方の端部から、ビア導体V162aに接続されている他方の端部まで延伸している。
【0090】
第1接続部C121ないし第4接続部C124の少なくとも一つは、LW平面に沿って直線状に延びるように構成されてもよい。第1接続部C121ないし第4接続部C124が直線状の形状を有することにより、その直線状の形状を有する第1接続部C121ないし第4接続部C124による直流抵抗Rdcの増加を抑制することができる。図示の実施形態では、第1接続部C121ないし第4接続部C124の各々は、L軸方向に沿って直線状に伸びている。第1接続部C121ないし第4接続部C124の各々は、図8に示されている第1接続部C21のように、L軸に対して傾斜する方向に延伸してもよい。
【0091】
図11gに示されているように、磁性膜117のうち平面視においてビア導体V112aと重複する領域、ビア導体V132aと重複する領域、ビア導体V142aと重複する領域、及びビア導体V162aと重複する領域には、磁性膜117をT軸方向に貫く貫通孔がそれぞれ設けられている。ビア導体V112aと重複する領域に形成された貫通孔にはビア導体V112bが埋め込まれており、ビア導体V132aと重複する領域に形成された貫通孔にはビア導体V132bが埋め込まれている。ビア導体V112bの上端は、ビア導体V112aの下端に接続され、ビア導体V112bの下端は、第1外部電極121に接続される。ビア導体V132bの上端は、ビア導体V132aの下端に接続され、ビア導体V132bの下端は、第2外部電極122に接続される。また、ビア導体V142aと重複する領域に形成された貫通孔にはビア導体V142bが埋め込まれており、ビア導体V162aと重複する領域に形成された貫通孔にはビア導体V162bが埋め込まれている。ビア導体V142bの上端は、ビア導体V142aの下端に接続され、ビア導体V142bの下端は、第3外部電極123に接続される。ビア導体V162bの上端は、ビア導体V162aの下端に接続され、ビア導体V162bの下端は、第4外部電極124に接続される。
【0092】
以上のように、第1導体パターンC111と第2導体パターンC112とはビア導体V121によって接続される。このようにして接続された第1導体パターンC111、ビア導体V121、及び第2導体パターンC112が、基体10内においてコイル軸Axの周りに約1.25ターン延伸するスパイラル状の周回部125aを構成する。また、第3導体パターンC113と第4導体パターンC114とはビア導体V151によって接続される。このようにして接続された第3導体パターンC113、ビア導体V151、及び第4導体パターンC114が、基体10内においてコイル軸Axの周りに約1.25ターン延伸するスパイラル状の周回部135aを構成する。
【0093】
周回部125aの一端(第1導体パターンC111の一端)は、ビア導体V111a~V111e、第1接続部C121、ビア導体V112a、及びビア導体V112bを介して第1外部電極121に接続されている。ビア導体V111a~V111eは、T軸に平行に延びる同一軸線上に配置されているので、これらをまとめて第1上側軸部V111と呼ぶ。第1上側軸部V111は、ビア導体V111aないしV111eから構成される。ビア導体V112a、V112bは、T軸に平行に延びる同一軸線上に配置されており、第1上側軸部V111よりも下方に(実装面110bのより近くに)配置されているので、これらをまとめて第1下側軸部V112と呼ぶ。第1下側軸部V112は、ビア導体V112a及びビア導体V112bから構成される。以上のように、周回部125aの一端は、第1上側軸部V111、第1接続部C121、及び第1下側軸部V112から構成される第1引出部125b1により第1外部電極121に接続されている。
【0094】
周回部125aの他端(第2導体パターンC112の一端)は、ビア導体V131a~131d、第2接続部C122、ビア導体V132a、及びビア導体V132bを介して第2外部電極122に接続されている。ビア導体V131a~131dは、T軸に平行に延びる同一軸線上に配置されているので、これらをまとめて第2上側軸部V131と呼ぶ。第2上側軸部V131は、ビア導体V131aないし131dから構成される。ビア導体V132a、V132bは、T軸に平行に延びる同じ軸線上に配置されており、第2上側軸部V131よりも下方に(実装面110bのより近くに)配置されているので、これらをまとめて第2下側軸部V132と呼ぶ。第2下側軸部V132は、ビア導体V132a及びビア導体V132bから構成される。以上のように、周回部125aの他端は、第2上側軸部V131、第2接続部C122、及び第2下側軸部V132から構成される第2引出部25b2により第2外部電極122に接続されている。
【0095】
周回部135aの一端(第3導体パターンC113の一端)は、ビア導体V141a、ビア導体V141b、第3接続部C123、ビア導体V142a、及びビア導体V142bを介して第3外部電極123に接続されている。ビア導体V141a及びビア導体V141bは、T軸に平行に延びる同一軸線上に配置されているので、これらをまとめて第3上側軸部V141と呼ぶ。第3上側軸部V141は、ビア導体V141a及びビア導体141bから構成される。ビア導体V142a及びビア導体V142bは、T軸に平行に延びる同一軸線上に配置されており、第3上側軸部V141よりも下方に(実装面110bのより近くに)配置されているので、これらをまとめて第3下側軸部V142と呼ぶ。第3下側軸部V142は、ビア導体V142a及びビア導体V142bから構成される。以上のように、周回部135aの一端は、第3上側軸部V141、第3接続部C123、及び第3下側軸部V142から構成される第3引出部135b3により第3外部電極123に接続されている。
【0096】
周回部135aの他端(第4導体パターンC114の一端)は、ビア導体V161、第4接続部C124、ビア導体V162a、及びビア導体V162bを介して第4外部電極124に接続されている。ビア導体V162a及びビア導体V162bは、T軸に平行に延びる同一軸線上に配置されており、ビア導体V161よりも下方に(実装面110bのより近くに)配置されているので、これらをまとめて第4下側軸部V162と呼ぶ。第4下側軸部V162は、ビア導体V162a及びビア導体V162bから構成される。ビア導体V161は、第4下側軸部V162よりも上方に設けられておりT軸と平行な方向に延びているので、本明細書では、ビア導体V161を第4上側軸部V161と呼ぶことがある。以上のように、周回部135aの他端は、第4上側軸部V161、第4接続部C124、及び第4下側軸部V162から構成される第4引出部125b4により第4外部電極124に接続されている。
【0097】
周回部125a、135aのターン数は、例えば、1.1ターンから2.5ターンの範囲にある。周回部125aのターン数が3ターン以下の場合には、第1コイル導体125の全長に対して第1引出部125b1及び第2引出部125b2の長さが大きな割合を占めるため、第1引出部125b1及び第2引出部125b2の形状や配置がコイル部品101の特性に与える影響が大きくなる。同様に、周回部135aのターン数が3ターン以下の場合には、第2コイル導体135の全長に対して第3引出部135b3及び第4引出部135b4の長さが大きな割合を占めるため、第3引出部135b3及び第4引出部135b4の形状や配置がコイル部品101の特性に与える影響が大きくなる。コイル部品1に関して説明したのと同様に、コイル部品101においては、第1引出部125b1が第1上側軸部V111よりもコイル軸Axの近くに配置されている第1下側軸部V112を有しており、また、第3引出部135b3が第3上側軸部V141よりもコイル軸Axの近くに配置されている第3下側軸部V142を有しているため、基体110内において第1下側軸部V112及び第3下側軸部V142の各々と第1端面110cとの間に、従来のコイル部品における引出部と基体表面との間の領域と比べて大きな体積を有するマージン領域が確保されている。このため、第1引出部125b1及び第3引出部135b3を流れる電流の変化により発生する磁束は、第1端面110cとの間にある大きなマージン領域を通過することができる。同様に、第2引出部125b2が第2上側軸部V131よりもコイル軸Axの近くに配置されている第2下側軸部V132を有しており、また、第4引出部135b4が第4上側軸部V161よりもコイル軸Axの近くに配置されている第4下側軸部V162を有しているため、基体110内において第2下側軸部V132及び第4下側軸部V162の各々と第2端面110dとの間に、従来のコイル部品における引出部と基体表面との間の領域と比べて大きな体積を有するマージン領域が確保されている。このため、第2引出部125b2及び第4引出部135b4を流れる電流の変化により発生する磁束は、第2端面110dとの間にある大きなマージン領域を通過することができる。よって、コイル部品101においてもコイル部品1と同様に、引出部が基体の表面と一定の狭い間隔で延伸している従来のコイル部品と比べて、優れた磁気特性及び直流重畳特性を得ることができる。
【0098】
次に、コイル部品1の製造方法の一例を説明する。コイル部品1は、例えば積層プロセスによって製造することができる。以下では、シート積層法によるコイル部品1の製造方法の一例を説明する。
【0099】
まず、基体10を構成する各磁性膜(磁性膜11~磁性膜15)の前駆体である磁性体シートを作製する。磁性体シートは、例えば、軟磁性金属粉を樹脂と混練してスラリーを調製し、このスラリーをドクターブレード法又はこれ以外の一般的な方法にてプラスチック製のベースフィルムの表面に塗布して乾燥させ、この乾燥後のスラリーを所定サイズに切断することで作製される。
【0100】
次に、磁性膜11~磁性膜14の前駆体である各磁性体シートの所定の位置に、各磁性体シートをT軸方向に貫く貫通孔を形成する。次に、磁性膜11~磁性膜14となる磁性体シートの各々の上面に、導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷することで、当該磁性体シートに未焼成の導体パターンを形成するとともに、各磁性体シートに形成された貫通孔に導電性ペーストを埋め込む。このようにして、磁性膜11の前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第1導体パターンC11となり、磁性膜12の前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第2導体パターンC12となる。また、磁性膜13の前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第1接続部C21となる。各導体パターンは、スクリーン印刷法以外にも公知の様々な方法で形成され得る。
【0101】
磁性膜11の前駆体となる磁性体シートは、1枚の磁性体シートであってもよいし、複数毎の磁性体シートを積層した積層シートであってもよい。同様に、磁性膜12~15の各々の前駆体となる磁性体シートは、1枚の磁性体シートであってもよいし、複数毎の磁性体シートを積層した積層シートであってもよい。磁性膜11~15を構成する磁性体シートの枚数を調整することにより、磁性膜11~15のそれぞれの厚さを調整することができる。第1下側軸部V12のT軸方向における寸法を大きくすることでマージン領域M1の体積を大きくする場合には、磁性膜14を構成する磁性体シートの数を、磁性膜11や磁性膜12を構成する磁性体シートの数よりも多くすることができる。磁性膜15は、コイル導体25の上面を覆うカバー層となるため、このカバー層に必要な厚さを確保するために、複数枚の磁性体シートから構成されてもよい。
【0102】
次に、磁性膜11~磁性膜15の前駆体である各磁性体シートを積層して積層体を得る。積層体を得るために、積層された各磁性体シートをプレス機により熱圧着してもよい。次に、ダイシング機やレーザ加工機等の切断機を用いて上記本体積層体を所望のサイズに個片化することで、チップ積層体が得られる。チップ積層体の端部に対しては、必要に応じて、バレル研磨等の研磨処理を行ってもよい。
【0103】
次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を加熱処理することで基体10が得られる。この加熱処理により、磁性体シートに含まれている軟磁性金属粉の各々の表面に酸化物層が形成され、隣り合う軟磁性金属粉同士が酸化物層を介して結合する。チップ積層体の加熱処理は、600℃~800℃の加熱温度で、20分間~120分間の加熱時間だけ行われる。
【0104】
次に、基体10の実装面10bに導体ペーストを塗布することにより、第1外部電極21及び第2外部電極22が形成される。めっき層を含んでもよい。このめっき層は2層以上であってもよい。2層のめっき層は、Niめっき層と、当該Niめっき層の外側に設けられるSnめっき層と、を含んでもよい。以上により、コイル部品1が得られる。
【0105】
コイル部品1は、圧縮成型法、薄膜プロセス法、スラリービルド法、又はこれら以外の公知の方法で作製されてもよい。
【0106】
コイル部品101も、コイル部品1の製造方法に準じて製造される。
【0107】
上記の製造方法に含まれる工程の一部は、適宜省略可能である。コイル部品1の製造方法においては、本明細書において明示的に説明されていない工程が必要に応じて実行され得る。上記のコイル部品1の製造方法に含まれる各工程の一部は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。上記のコイル部品1の製造方法に含まれる各工程の一部は、可能であれば、同時に又は並行して実行され得る。
【0108】
前述の様々な実施形態で説明された各構成要素の寸法、材料及び配置は、それぞれ、各実施形態で明示的に説明されたものに限定されず、当該各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料及び配置を有するように変形することができる。例えば、図1から図5に示されている実施形態では、第1下側軸部V12が第1上側軸部V11よりもコイル軸Axの近くに配置されるとともに第2下側軸部V32が第2上側軸部V31よりもコイル軸Axの近くに配置されているが、第1下側軸部V12又は第2下側軸部V32の一方のみが、対応する第1上側軸部V11又は第2上側軸部V31よりもコイル軸Axの近くに配置されていてもよい。この場合でも、第1引出部25b1又は第2引出部25b2の少なくとも一方の周囲に磁束を通過させるための大きな領域を確保することができるので、コイル部品1の磁気特性及び直流重畳特性を向上させることができる。
【0109】
本明細書において明示的に説明していない構成要素を、上述の各実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0110】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0111】
本明細書において開示される実施形態には、以下の事項も含まれる。
【0112】
[付記1]
磁性材料から構成されており、実装面を有する基体と、
前記実装面に設けられた第1外部電極と、
前記実装面に前記第1外部電極から離間して設けられた第2外部電極と、
前記基体内においてコイル軸の周りの周方向に延びる周回部と、前記周回部の一端と前記第1外部電極とを接続する第1引出部と、前記周回部の他端と前記第2外部電極とを接続する第2引出部と、を有するコイル導体と、
を備え、
前記第1引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第1上側軸部と、前記第1上側軸部よりも前記コイル軸の近くに配置されており前記第1外部電極から前記コイル軸に沿って延びる第1下側軸部と、前記第1上側軸部と前記第1下側軸部を接続する第1接続部と、を有する、
コイル部品。
【0113】
[付記2]
前記コイル軸の方向から見て、前記周回部の一部は、閉ループ軌道に沿って前記コイル軸の周りの周方向において1ターン以上延伸しており、
前記コイル軸の方向から見て、前記第1上側軸部は、前記閉ループ軌道と重複しないように配置され、前記第1下側軸部は、前記閉ループ軌道と重複するように配置されている、
[付記1]に記載のコイル部品。
【0114】
[付記3]
前記第1下側軸部V12の前記コイル軸に沿う方向の寸法は、前記第1上側軸部V11の前記コイル軸に沿う方向の寸法よりも大きい、
[付記1]又は[付記2]に記載のコイル部品。
【0115】
[付記4]
前記基体は、前記コイル軸に沿って延びる第1端面と、前記第1端面と前記実装面とを接続する湾曲面と、を有し、
前記周回部と前記第1端面との間の距離は、前記実装面と前記湾曲面との境界を通り前記コイル軸に平行に延びる仮想第1平面と前記第1端面との間の距離より小さい、
[付記1]から[付記3]のいずれか一つに記載のコイル部品。
【0116】
[付記5]
前記周回部の一部が前記第1端面から前記基体の外に露出している、
[付記1]から[付記4]のいずれか一つに記載のコイル部品。
【0117】
[付記6]
前記周回部のうち前記第1端面から露出している部位は、絶縁膜により覆われている、
[付記5]に記載のコイル部品。
【0118】
[付記7]
前記基体は、前記コイル軸に沿って延びる第1端面と、前記第1端面と前記実装面とを接続する湾曲面と、を有し、
前記周回部と前記第1端面との間の距離は、前記実装面と前記湾曲面との境界を通り前記コイル軸に平行に延びる仮想第1平面と前記第1端面との間の距離以上である、
[付記1]から[付記6]のいずれか一つに記載のコイル部品。
【0119】
[付記8]
前記第2引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第2上側軸部と、前記コイル軸の方向から見て前記第1上側軸部よりも前記コイル軸の近くに配置されており前記第2外部電極から前記コイル軸に沿って延びる第2下側軸部と、前記第2上側軸部と前記第2下側軸部を接続する第2接続部と、を有する、
[付記1]から[付記7]のいずれか一つに記載のコイル部品。
【0120】
[付記9]
前記コイル導体とは異なる他のコイル導体と、
前記実装面に前記第1外部電極及び前記第2外部電極から離間して設けられた第3外部電極と、
前記実装面に前記第1外部電極、前記第2外部電極、及び前記第3外部電極から離間して設けられた第4外部電極と、
をさらに備え、
前記他のコイル導体は、前記基体内においてコイル軸の周りの周方向に延びる他の周回部と、前記他の周回部の一端と前記第3外部電極とを接続する第3引出部と、前記他の周回部の他端と前記第4外部電極とを接続する第4引出部と、を有し、
前記第3引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第3上側軸部と、前記コイル軸の方向から見て前記第3上側軸部よりも前記コイル軸の近くに配置されており前記第3外部電極から前記コイル軸に沿って延びる第3下側軸部と、前記第3上側軸部と前記第3下側軸部を接続する第3接続部と、を有する、
[付記1]から[付記8]のいずれか一つに記載のコイル部品。
【0121】
[付記10]
前記基体の体積は、1.5mm3よりも小さい、
[付記1]から[付記9]に記載のコイル部品。
【0122】
[付記11]
磁性材料から構成されており、実装面、前記実装面に接続されている第1端面、及び前記実装面及び前記第1端面に接続されている第1側面を有する基体と、
前記実装面に設けられた第1外部電極と、
前記実装面に前記第1外部電極から離間して設けられた第2外部電極と、
前記基体内においてコイル軸の周りの周方向に延びる周回部と、前記周回部の一端と前記第1外部電極とを接続する第1引出部と、前記周回部の他端と前記第2外部電極とを接続する第2引出部と、を有するコイル導体と、
を備え、
前記第1引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第1上側軸部と、前記コイル軸に沿って延びる第1下側軸部と、前記第1上側軸部と前記第1下側軸部を接続する第1接続部と、を有し、
前記第1下側軸部は、前記第1下側軸部と前記第1端面との距離が前記第1上側軸部と前記第1端面との距離よりも大きく、且つ、前記第1下側軸部と前記第1側面との距離が前記第1上側軸部と前記第1側面との距離以上となるように配置されている、
コイル部品。
【0123】
[付記12]
磁性材料から構成されており、実装面、前記実装面に接続されている第1端面、及び前記実装面及び前記第1端面に接続されている第1側面を有する基体と、
前記実装面に設けられた第1外部電極と、
前記実装面に前記第1外部電極から離間して設けられた第2外部電極と、
前記基体内においてコイル軸の周りの周方向に延びる周回部と、前記周回部の一端と前記第1外部電極とを接続する第1引出部と、前記周回部の他端と前記第2外部電極とを接続する第2引出部と、を有するコイル導体と、
を備え、
前記第1引出部は、前記周回部の一端から前記コイル軸に沿って延びる第1上側軸部と、前記コイル軸に沿って延びる第1下側軸部と、前記第1上側軸部と前記第1下側軸部を接続する第1接続部と、を有し、
前記第1下側軸部は、前記第1下側軸部と前記第1端面との距離が前記第1上側軸部と前記第1端面との距離以上であり、且つ、前記第1下側軸部と前記第1側面との距離が前記第1上側軸部と前記第1側面との距離よりも大きくなるように配置されている、
コイル部品。
【0124】
[付記13]
[付記1]から[付記12]のいずれか一つに記載のコイル部品を含む、回路基板。
【0125】
[付記14]
[付記13]に記載の回路基板を含む、電子部品。
【符号の説明】
【0126】
1、101 コイル部品
10、110 基体
21 第1外部電極
22 第2外部電極
25 コイル導体
25a 周回部
25b1 第1引出部
25b2 第2引出部
121 第1外部電極
122 第2外部電極
123 第3外部電極
124 第4外部電極
125 第1コイル導体
125a 周回部
125b1 第1引出部
125b2 第2引出部
135 第2コイル導体
135a 周回部
135b3 第3引出部
135b4 第4引出部
Ax コイル軸
C21 第1接続部
C22 第2接続部
C121 第1接続部
C122 第2接続部
C123 第3接続部
C124 第4接続部
V11 第1上側軸部
V12 第1下側軸部
V31第2上側軸部
V32 第2下側軸部
V111 第1上側軸部
V112 第1下側軸部
V131第2上側軸部
V132 第2下側軸部
V141 第3上側軸部
V142 第3下側軸部
V161 第4上側軸部
V162 第4下側軸部
M1 マージン領域
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図11f
図11g