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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175583
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/30 20060101AFI20231205BHJP
   B60R 21/264 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B60R21/30
B60R21/264
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088108
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】椋木 大剛
(72)【発明者】
【氏名】深渡瀬 修
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054DD15
3D054DD31
3D054FF13
(57)【要約】
【課題】従来よりも簡易な構成で、比較的大きな容量のエアバッグを展開可能なエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】エアバッグ装置100は、エアバッグと、エアバッグの内部に位置する内部側開口部104bと、エアバッグの外部に位置する外部側開口部とを有し、エアバッグの内部と外部とを連通する管状の外気導入部104と、内部側開口部104bに隣接して設けられたガスの流入口103bを一端部に有した流入管103と、流入管103の他端部側に設けられ、作動時に、流入管103の他端部側から流入口103bを介してエアバッグ内にガスを供給するガス発生器101と、を備えている。流入口103bは、内部側開口部104bの周囲において、内部側開口部104bとの間に空間を有した状態の環状口である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグと、
前記エアバッグの内部に位置する内部側開口部と、前記エアバッグの外部に位置する外部側開口部とを有し、前記エアバッグの内部と外部とを連通する管状の外気導入部と、
前記内部側開口部に隣接して設けられたガスの流入口を一端部に有した流入管と、
前記流入管の他端部側に設けられ、作動時に、前記流入管の他端部側から前記流入口を介して前記エアバッグ内に前記ガスを供給するガス発生器と、
を備えているエアバッグ装置。
【請求項2】
前記流入口は、前記内部側開口部の周囲において、前記内部側開口部との間に空間を有した状態の環状口であることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記流入口と前記内部側開口部との間に、前記流入口と前記内部側開口部とを接続して支持する支持部材が少なくとも1つ架設されていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記流入管は前記エアバッグ内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的大きな容量のエアバッグを展開するエアバッグ装置において、車室内の所定箇所にインフレータからのガスで膨張するエアバッグを配設し、該エアバッグをインフレータと共にケース等に固定したエアバッグ装置において、上記エアバッグをケースに固定するエアバッグリテーナにチューブを挿通し、該チューブはエアバッグ内部と車室内大気を連通させる吸排気管を形成し、かつ前記チューブの車室内大気側に前記エアバッグの固定手段を設けたことを特徴とするものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-291085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に代表されるエアバッグ装置については、作動直後にエアバッグ内に外気導入することが可能であるものの、ガス発生器の出力をエアバッグの大きさに合わせて大きくしない限り、比較的大きなエアバッグを展開することは難しいと考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、ガス発生器の出力をエアバッグの大きさに合わせて大きくしなくとも、ガス発生器の作動ガスを積極的に利用して外気をエアバッグ内に導入し、比較的大きな容量のエアバッグを展開可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明のエアバッグ装置は、エアバッグと、前記エアバッグの内部に位置する内部側開口部と、前記エアバッグの外部に位置する外部側開口部とを有し、前記エアバッグの内部と外部とを連通する管状の外気導入部と、前記内部側開口部に隣接して設けられたガスの流入口を一端部に有した流入管と、前記流入管の他端部側に設けられ、作動時に、前記流入管の他端部側から前記流入口を介して前記エアバッグ内に前記ガスを供給するガス発生器と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
(2) 上記(1)のエアバッグ装置において、前記流入口は、前記内部側開口部の周囲において、前記内部側開口部との間に空間を有した状態の環状口であることが好ましい。
【0008】
(3) 上記(1)のエアバッグ装置において、前記流入口と前記内部側開口部との間に、前記流入口と前記内部側開口部とを接続して支持する支持部材が少なくとも1つ架設されていることが好ましい。
【0009】
(4) 上記(1)のエアバッグ装置において、前記流入管は前記エアバッグ内に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガス発生器の出力をエアバッグの大きさに合わせて大きくしなくとも、ガス発生器の作動ガスを積極的に利用して外気をエアバッグ内に導入し、比較的大きな容量のエアバッグを展開可能なエアバッグ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る展開後のエアバッグ装置の斜視概略図である。
図2図1のエアバッグ装置の一部を分解した状態で示した斜視概略図である。
図3図1のエアバッグ装置の外気導入部付近の拡大図である。
図4図1のエアバッグ装置に用いられるガス発生器の一例を示す断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るエアバッグ装置の概略平面図である。
図6図5のエアバッグ装置の一部断面図である。
図7図5のエアバッグ装置に係る流入管および外気導入部の一例を示す斜視図である。
図8図5のエアバッグ装置に係る流入管および外気導入部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、図1図4を参照して、本発明の第1実施形態に係るエアバッグ装置100について説明する。
【0013】
エアバッグ装置100は、図1に示したように、ガス発生器101と、基台102と、流入管103と、外気導入部104と、エアバッグ105と、を備えている。なお、図1においては、エアバッグ105が展開された状態を示しているが、初期状態において、エアバッグ105はガス発生器101側に収縮した状態で折り畳まれている。
【0014】
外気導入部104は、図1図3に示したように、エアバッグ105の外部に位置する外部側開口部104aと、エアバッグ105の内部に位置する内部側開口部104bとを有し、エアバッグ105の内部と外部とを連通する管状部材である。また、図3に示したように、外気導入部104は、内部側開口部104bの周囲において、後述する流入口103bと内部側開口部104bとを接続して支持する支持部材104cが少なくとも1つ(本実施形態では4つ)架設されている。外気導入部104の途中部分は、後述する穴部103dに嵌合した状態で固定されている。
【0015】
流入管103は、図1図3に示したように、エアバッグ105内に設けられた略L字状に湾曲した管状部材であって、内部側開口部104bに隣接して設けられたガスの流入口103bを一端部に有しているとともに、ガス発生器101の一端部が貫入固定される開口部103aを他端部に有している。また、流入管103には、図1図2に示したように、外気導入部104を内部側開口部104b側から挿入して固定可能な穴部103dが、内部側開口部104bと対向するように形成されている。なお、本実施形態における流入口103bは、内部側開口部104bの周囲において、内部側開口部104bとの間に空間を有した状態の環状口となっているが、これに限られない。たとえば、流入口103bは、ガス発生器101から供給されるガスを、内部側開口部104bの少なくとも一部に隣接した状態で噴出できる噴出口を有したものであれば、外気導入部104の径よりも小さい管状部材などを含めて、どのような構成であってもよい。
【0016】
ガス発生器101の一端部は、流入管103の開口部103aに嵌入固定され、作動時に、流入管103の開口部103a(他端部)側から流入口103bを介してエアバッグ105内にガスを供給可能に設けられている。また、ガス発生器101の他端部は、電源(図示せず)などと配線106を介して電気的に接続された雄型コネクタ(図示せず)を有した基台102に嵌入固定されている。また、図1に示したように、ガス発生器101の上部から下部の途中部分までが、エアバッグ105内に位置するように設けられている。以下、ガス発生器101の一例について説明するが、ガス発生器は下記に示したものに限られず、いわゆるサイドインフレータと呼ばれるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0017】
ガス発生器101は、図4に示したように、長尺略円柱状の外形を有しており、ハウジング10と、ハウジング10の一方の開口端に取付けられているホルダ20と、ハウジング10の他方の開口端を閉塞するようにハウジング10の他端部に取付けられている閉塞部材12と、を含んでいる。
【0018】
ハウジング10は、周壁10a、10b、10eを有し、軸方向の両端に開口を有する長尺の円筒状の部材からなる。閉塞部材12は、所定の厚みを有する円盤状の部材からなり、その周面に後述するかしめ(縮径加工方法の一例)固定のための環状溝部13を有している。このかしめ固定のための環状溝部13は、閉塞部材12の周面に周方向に向かって延びるように形成されている。また、ハウジング10の閉塞部材12が取付けられた側の端部近傍の周壁には、ガス噴出口11が設けられている。このガス噴出口11は、ガス発生器101の内部において発生したガスを外部に噴出するための孔であり、ハウジング10の周方向に沿って複数個設けられている。
【0019】
また、閉塞部材12は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製のものである。そして、図4に示したように、ハウジング10の一方の開口端に閉塞部材12の一部が内挿された状態で、閉塞部材12の周面の一部に対応する部分のハウジング10の周壁10aを径方向内側に縮径させて(かしめて)当該環状溝部13を形成することにより、ハウジング10に対する閉塞部材12のかしめ固定が行なわれている。
【0020】
ホルダ20は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製であって、点火器50が嵌合するテーパー形状の嵌合部23と、外周面に周方向に向かって延びるように形成されたかしめ固定のための環状溝部22と、点火器50の保持位置と反対側において、点火器50に通電するための雌型コネクタ(不図示)が嵌合可能な嵌合部21と、を有している。なお、ホルダ20の外周面に設けられた環状溝部22に対応する部分のハウジング10の周壁10eを径方向内側に縮径させて(かしめて)当該環状溝部22に係合させることにより、ハウジング10に対するホルダ20のかしめ固定が行なわれている。
【0021】
なお、上述した通り、ホルダ20の嵌合部21には、雌型コネクタが形成される。この雌型コネクタは、ガス発生器101とは別途設けられる衝突検知手段からの信号を伝達する基台102の雄型コネクタ(図示せず)が接続される部位である。雌型コネクタには、リテーナ60が取付けられる。このリテーナ60は、ガス発生器101の搬送時等において静電放電等によってシリンダ型のガス発生器101が誤動作することを防止するために取付けられるものであり、エアバッグ装置100への組付け段階においてハーネスの雄型コネクタが雌型コネクタに挿し込まれることによってその端子ピン52への接触が解除されるものである。
【0022】
図4に示すように、ハウジング10の軸方向の一端部(すなわち、ホルダ20寄りの部分)には、ガス発生剤31の点火手段としての点火器50が配置されている。なお、点火器50及び点火器50を固定するホルダ20は、後述する粒状のガス発生剤31を燃焼させるための火炎を発生させる点火手段としての機能を有している。
【0023】
図4に示すように、点火器50は、ホルダ20の嵌合部23に内挿された状態で、後述する略筒状部材53とともに保持されている。点火器50は、より具体的には、一対の端子ピン52を挿通かつ保持する基枠と、基枠上に取付けられたスクイブカップ51(カップ状部材)とを備えており、スクイブカップ51内に挿入された端子ピン52の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むように又はこの抵抗体に接するようにスクイブカップ51内に点火薬が充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、スクイブカップ51内には、点火薬だけでなくさらに伝火薬を充填してもよいが、点火薬と同時に配置され得る伝火薬としては、ホウ素/硝酸カリウム等に代表される金属/酸化剤からなる組成物、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、又は、ホウ素/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
【0024】
衝突を検知した際には、端子ピン52を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップ51を破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器50が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には2ミリ秒以下である。
【0025】
また、スクイブカップ51は、一般に金属製又は樹脂製である。なお、スクイブカップ51の周壁部のうち先端部付近以外を覆う略筒状部材53が、点火器50とともに、かしめ部24によってホルダ20にかしめ固定されている。ここで、略筒状部材53は、作動時に点火器50において発生する火炎の方向をカップ部材32(位置決め部材)側に向ける指向性部材である。
【0026】
図4に示すように、ハウジング10の内部空間には、ガス発生剤31などが密封された空間10Aと、フィルタ41とが、ハウジング10の軸方向に並列して設けられている。
【0027】
ガス発生剤31は、点火器50によって点火されることによって生じた火炎によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる組成物である。また、ガス発生剤31は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成型体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等又はこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば、塩基性硝酸銅や塩基性炭酸銅等の塩基性金属硝酸塩、過塩素酸アンモニウム又は過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、又は燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばヒドロキシプロピレンメチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0028】
巻きバネ35は、図4に示したように、外観全体として円錐台形状に相似するように、らせん状に巻き回して形成されている。また、巻きバネ35は、一端部がスクイブカップ51に当接しているとともに、渦巻状に形成されている他端部がガス発生剤31に当接して、ガス発生剤31に弾性力を付勢するように設けられている。この付勢により、ガス発生剤31は、ハウジング10内において、巻きバネ35と、カップ部材32とに挟まれるようにして固定される。また、巻きバネ35は、全体として点火器50側からガス発生剤31側にかけて拡径する円錐台形状となっていることで、点火器50から放出された火炎の方向をガス発生剤31側に向けやすくすることができる。
【0029】
カップ部材32(位置決め部材)は、フィルタ41の一端部側を覆う短尺の有底筒状部材であって、環状溝部32a1を有した筒状部32aと、筒状部32aの一端部側を閉塞する底面部32bと、を備えている。また、カップ部材32は、フィルタ41の配置位置が所定位置(たとえば、図4のように、ガス噴出口11に対向する位置)に位置決め可能となるように、ハウジング10の外側から行われる後述の縮径加工によってハウジング10の内壁に固定されている。筒状部32aは、ガス噴出口11を閉塞しない程度に短尺に構成されたものとなっている。底面部32bは、作動時に発生したガスによって溶融または破損するものである。なお、カップ部材32は、樹脂部材または樹脂を含む複合強化部材からなる。この樹脂部材または樹脂を含む複合強化部材の例としては、たとえば、ガラス繊維配合のPA6(ポリアミド6)、POM(ポリアセタール、ポリオキシメチレン)、などが挙げられる。なお、カップ部材32は、一変形例として、たとえば、ステンレス鋼、鉄鋼等の金属、アルミニウム合金、ステンレス合金等の合金からなるものであってもよい。
【0030】
なお、図4に示したように、カップ部材32にフィルタ41の一端部を嵌挿した状態でハウジング10内に設置した後、カップ部材32の筒状部32a周面の一部に対応する部分のハウジング10の周壁10bを径方向内側に縮径させて(かしめて)、環状溝部32a1および後述の環状溝部41bを形成することにより、ハウジング10およびフィルタ41に対するカップ部材32のかしめ固定が行なわれている。これにより、発生したガスがハウジング10の内壁とフィルタ41の外周部との間からバイパスして、ガス噴出口11に漏れ出ないようにすることができるとともに、シール性を確保している。すなわち、カップ部材32は、ハウジング10内の点火器50側で発生したガスを、底面部32bの溶融または破損によって開裂などした部分(中空部41aの一端部に対応する部分)を介してフィルタ41側へ流入させることができる。なお、上述のかしめ固定の位置は、カップ部材32の筒状部32a周面に対応した位置であれば、どの位置でもよい。
【0031】
フィルタ41は、中心に柱状(たとえば略円柱状、略角筒状など)の中空部41aを有した円筒状の部材からなるものであって、上述したとおり、ハウジング10内にカップ部材32とともに設置した後に前記縮径する加工によって環状溝部41bが形成されている。なお、円筒状の部材からなるフィルタ41を利用することで、作動時において流動する作動ガスの流動抵抗が低く抑えられ、効率的なガスの流動が可能である。フィルタ41は、たとえばステンレス鋼或いは鉄鋼等の金属からなる線材、又は、網材を巻き回したもの或いはプレス加工することによって押し固めたもの等が利用される。具体的には、メリヤス編みの金網、平織りの金網、又はクリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。フィルタ41は、ハウジング10内にて発生したガスがこのフィルタ41中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ等を除去する除去手段としても機能する。ここで、フィルタ41の一変形例として、金属からなる略円筒状又はすり鉢状の部品を組み合わせて形成した迷路状流路を有したフィルタを使用してもよい。これにより、作動ガスの進路を様々な方向に変更させることができるので、ガスの冷却及びスラグの除去を行うことが可能である。
【0032】
また、上述した本発明の実施の形態においては、フィルタとして、いわゆるメリヤス編みの金網で製作されたものを利用した場合を例示したが、これに代えてパンチングメタルを巻き回すことで製作されたものを利用することや、エキスパンドメタルを巻き回すことで製作されものを利用することも可能である。ここで、パンチングメタルとは、板状金属部材に開口部のみを設けた(すなわち開口部の周縁に突起部を設けない)金属板のことであり、エキスパンドメタルとは、板状金属部材にたとえば千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げることにより、当該板状金属部材に開口部を設けて網目状にした金属板のことである。このようなパンチングメタルやエキスパンドメタルを上述したメリヤス編みの金網に代えて使用した場合にも、上述した本発明の実施の形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、上述したパンチングメタルやエキスパンドメタルにおいては、単一の金属製の板状部材を巻き回すことで積層体からなるフィルタが構成されているが、フィルタの構成は、当該構成に限定されるものではない。すなわち、それぞれの層が別々の金属製の板状部材にて構成されてこれを組み合わせることで積層体からなるフィルタが構成されていてもよいし、複数の層の一部が単一の金属製の板状部材巻き回すことで形成されるとともに、残る層が別の単一の金属製の板状部材巻き回すことで形成され、これらが組み合わされることで積層体からなるフィルタが構成されていてもよい。
【0034】
次に、以上において説明したガス発生器101の作動時における動作について説明する。本実施の形態におけるガス発生器101が組み込まれたエアバッグ装置100が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器50が作動する。点火器50が作動すると、点火薬の燃焼によって点火器50内の圧力が上昇し、これによって点火器50のスクイブカップ51先端が破裂し、火炎が点火器50のスクイブカップ51先端からハウジング10内部のカップ部材32側へと流出する。
【0035】
このようにして流れ込んだ火炎により、ハウジング10内におけるガス発生剤31を着火して燃焼させ、多量のガスを発生させる。このガス発生剤31の燃焼により、ハウジング10における空間10A内の圧力が上昇し、発生したガスは、カップ部材32の底面部32bにおける中空部41aに対応する部分を溶融または破損させることによって開裂させ、中空部41aに流入する。その後、発生したガスは、フィルタ41を経由してガス噴出口11からガス発生器101の外部へと噴出されることになるが、フィルタ41を経由するので、発生したガスは所定の温度にまで冷却される。そして、ガス噴出口11から噴出されたガスは、流入管103を介して、流入管103内壁と外気導入部104の外壁との間の流入口103bからエアバッグ105内に流入する(流入口103bからのガスの噴流のイメージを示す図3の矢印A参照)。このとき、流入口103bからエアバッグ105内へのガスの噴流により、外気導入部104を介して外気がエアバッグ105内に引き込まれる(外気導入部104において導入される外気のイメージを示す図3の白抜き矢印B参照)。すなわち、ガス発生器101から供給されるガスに加えて、外気をエアバッグ105内に強制的に引き込み供給して、図1に示したように、エアバッグ105を膨張・展開させる。
【0036】
本実施形態によれば、ガス発生器101の出力をエアバッグ105の大きさに合わせて大きくしなくとも、ガス発生器101の作動ガスを積極的に利用して外気をエアバッグ105内に導入し、比較的大きな容量のエアバッグ105を展開可能なエアバッグ装置100を提供することができる。また、エアバッグ105が従来の容量のものであったとした場合、従来よりも小出力のガス発生器101で、従来と同様の性能のエアバッグ装置100とすることも可能である。
【0037】
また、流入口103bと内部側開口部104bとを接続して支持する支持部材104cが架設されているので、作動時において、流入口103bと内部側開口部104bとの間の空間のバランスが崩れることなく保持することができる。すなわち、流入口103bからのガスの噴流により、外気導入部104を介して外気をエアバッグ105内に引き込む際、各部品の位置を安定させた状態で、当該外気の引き込みを行うことができる。その結果として、エアバッグ装置100によれば、作動時に、精度良く、当該外気の引き込みを行うことができる。
【0038】
また、流入管103をエアバッグ105内に設けることで、流入管103をエアバッグ105外に設ける場合と比べて、エアバッグ装置100を小型化できる。また、ガス発生器101の上部から下部の途中部分までがエアバッグ105内に設けられているので、ガス発生器101をエアバッグ105外に設ける場合に比べて、エアバッグ装置100を小型化できる。
【0039】
<第2実施形態>
以下、図5図8を参照して、本発明の第2実施形態に係るエアバッグ装置200について説明する。なお、図5において、エアバッグの図示は省略している。また、図6において、エアバッグは一部のみ示している。また、特に説明しない限り、上記第1実施形態と機能が同様の部位には、下二桁が同じ符号を用いて、説明を省略することがある。
【0040】
本実施形態のエアバッグ装置200は、(1)ガス発生器201がいわゆるディスク型ガス発生器と呼ばれる円盤型のものである点、(2)機能は同じであるが、流入管203および外気導入部204の形状の点、(3)流入管203および外気導入部204のセットが2つ設けられている点で、主に第1実施形態と異なっている。
【0041】
ガス発生器201は、エアバッグ205内および流入管203の開口部203aに、作動時にガスを噴出する複数のガス噴出孔211を側部に有したハウジング210を備えている公知のディスク型のガス発生器であり、エアバッグ205とともにフレーム207に固定されている。なお、フレーム207は、車両などの対象物に固定可能となっている。また、図6において、ガス発生器201のガス噴出孔211側がエアバッグ205の内側となっている。
【0042】
外気導入部204は、エアバッグ205の外部に位置する外部側開口部204aと、エアバッグ205の内部に位置する内部側開口部204bとを有し、エアバッグ205の内部と外部とを連通する管状部材である。また、外気導入部204は、内部側開口部204bの周囲において、後述する流入口203bと内部側開口部204bとを接続して支持する支持部材204cが少なくとも1つ(本実施形態では2つ)架設されている。また、図7に示したように、支持部材204cには少なくとも1つ(本実施形態では3つ)の穴部204dが設けられている。
【0043】
流入管203は、内部側開口部204bに隣接して設けられたガスの流入口203bを一端部に有しているとともに、ガス発生器201のガス噴出孔211の1つ以上と対向する開口部203aを側面部に有している。開口部203aは、開口部203側の流入口203bと連通している。開口部203側の流入口203bは、支持部材204cに設けられた穴部204d(図7参照)を介して、開口部203と反対側の流入口203bと連通している。なお、本実施形態における流入口203bは、内部側開口部204bの周囲において、内部側開口部204bとの間に空間を有した状態の環状口となっているが、これに限られない。たとえば、流入口203bは、ガス発生器201から供給されるガスを、内部側開口部204bの少なくとも一部に隣接した状態で噴出できる噴出口を有したものであれば、外気導入部204の径よりも小さい管状部材などを含めて、どのような構成であってもよい。
【0044】
次に、以上において説明したエアバッグ装置200の作動時における動作について説明する。本実施の形態におけるガス発生器201が組み込まれたエアバッグ装置200が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、ガス発生器201が作動ガスを発生させる。発生したガスは、ガス噴出口211からガス発生器201の外部へと噴出されることになるが、流入管203の開口部203aを介して、流入管203内壁と外気導入部204の外壁との間の流入口203bからエアバッグ205内に流入する(流入口203bからのガスの噴流のイメージを示す図8の矢印A1(穴部204dを通過しないガスの流れ)およびA2(穴部204dを通過しているガスの流れ)参照)。このとき、流入口203bからエアバッグ205内へのガスの噴流により、外気導入部204を介して外気がエアバッグ205内に引き込まれる(外気導入部204において導入される外気のイメージを示す図8の白抜き矢印B1参照)。すなわち、ガス発生器201から供給されるガスに加えて、外気をエアバッグ205内に強制的に引き込み供給して、エアバッグ205を膨張・展開させる。
【0045】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
たとえば、上記第1実施形態において、ハウジングの縮径加工方法については、かしめ加工を例に説明したが、ハウジングを縮径できる加工方法ならどのようなものであってもよい。
【0048】
また、上記各実施形態における外気導入部には、必要に応じて逆止弁などの開閉弁が設けられていてもよい。
【0049】
また、第2実施形態において、流入管203および外気導入部204のセットが2つ設けられているものであったが、これに限られない。流入管203および外気導入部204のセットは1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10、210 ハウジング
10A 空間
10a、10b、10e 周壁
11 ガス噴出口
12 閉塞部材
13、22、32a1、41b 環状溝部
20 ホルダ
21、23 嵌合部
24 かしめ部
31 ガス発生剤
32 カップ部材
32a 筒状部
32b 底面部
35 巻きバネ
41 フィルタ
41a 中空部
50 点火器
51 スクイブカップ
52 端子ピン
53 筒状部材
60 リテーナ
100、200 エアバッグ装置
101、201 ガス発生器
102 基台
103、203 流入管
103a、203a 開口部
103b、203b 流入口
103d、204d 穴部
104、204 外気導入部
104a、204a 外部側開口部
104b、204b 内部側開口部
104c、204c 支持部材
105、205 エアバッグ
106、206 配線
207 フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8