(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175586
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】医用装置、テーブルの駆動方法、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 6/04 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A61B6/04 332P
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088113
(22)【出願日】2022-05-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】緒方 研太郎
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA16
4C093CA35
4C093ED06
4C093FA36
4C093FA44
4C093FF15
4C093FF20
4C093FF37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】撮影部位を所望の位置に位置決めする。
【解決手段】被検体が配置されるテーブルと少なくとも1つのプロセッサとを含むCT装置は、プロセッサが、被検体の検査が実行されるたびに、テーブルの高さの位置ずれを補正するためのオフセットに基づいて、被検体の撮影部位がテーブルのアイソセンターに位置決めされるようにテーブルコントローラにテーブルを駆動させること、被検体の撮影部位のスカウト画像に基づいて被検体の撮影部位のテーブルの高さ方向における重心を求めること、アイソセンターと重心との差をテーブルの高さの位置ずれ量dとして計算すること、位置ずれ量を記憶すること、を含む動作を実行し、更に、位置ずれ量の平均値daveを求めること、平均値が信頼できる統計量であるか否かを判定すること、および平均値が信頼できる統計量であると判定された場合、平均値に基づいてオフセットを更新すること、を含む動作を実行する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が配置されるテーブルと、少なくとも1つのプロセッサとを含む医用装置であって、
前記少なくとも1つのプロセッサが、被検体の検査が実行されるたびに、
前記テーブルの高さの位置ずれを補正するためのオフセットに基づいて、前記被検体の撮影部位が、前記テーブルの高さ方向における所定の位置に位置決めされるように、前記テーブルを制御するテーブルコントローラに前記テーブルを駆動させること、
前記被検体の撮影部位の医用画像に基づいて、前記被検体の撮影部位の、前記テーブルの高さ方向における重心を求めること、
前記所定の位置と前記重心との差を、前記テーブルの高さの位置ずれ量として計算すること、
前記位置ずれ量を記憶すること、
を含む動作を実行し、
前記少なくとも1つのプロセッサが、更に、
前記位置ずれ量の分布の特徴を表す代表値を求めること、
前記位置ずれ量の代表値が信頼できる統計量であるか否かを判定すること、および
前記代表値が信頼できる統計量であると判定された場合、前記代表値に基づいて前記オフセットを更新すること、
を含む動作を実行する、医用装置。
【請求項2】
前記判定することが、
前記位置ずれ量の代表値が信頼できる統計量であるか否かを判定するための閾値に基づいて、前記位置ずれ量の代表値が信頼できる統計量であるか否かを判定する、請求項1に記載の医用装置。
【請求項3】
前記閾値が、前記位置ずれ量のばらつきの度合いに基づいて計算される、請求項2に記載の医用装置。
【請求項4】
前記ばらつきの度合いが、標準偏差又は分散である、請求項3に記載の医用装置。
【請求項5】
前記閾値が3σ(σ:標準偏差)である、請求項4に記載の医用装置。
【請求項6】
前記代表値が、平均値、中央値、又は最頻値である、請求項5に記載の医用装置。
【請求項7】
前記位置ずれ量を記憶することが、
前記位置ずれ量を撮影部位に対応付けて記憶することを含む、請求項6に記載の医用装置。
【請求項8】
撮影部位ごとに前記オフセットが記憶された記憶装置を含み、
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記被検体の撮影部位に対応する前記オフセットに基づいて、前記テーブルコントローラに前記テーブルを駆動させる、請求項7に記載の医用装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
カメラ画像に基づいてテーブルの移動量を求めることを含む動作を実行する、請求項8に記載の医用装置。
【請求項10】
更新された前記オフセットに基づいて前記テーブルを駆動させるか、更新前の前記オフセットに基づいて前記テーブルを駆動させるかを、オペレータが選択できるようにするためのオペレータコンソールを備える、請求項9に記載の医用装置。
【請求項11】
前記テーブルが、前記被検体が横たわることができるクレードルを含み、
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記被検体の撮影部位の光学画像に基づいて、前記テーブルの高さ方向における第1の移動量と、前記クレードルの体軸方向における第2の移動量を求めることを実行し、
前記テーブルを駆動させることが、前記オフセット、前記第1の移動量、および前記第2の移動量に基づいて、前記テーブルを駆動させることを含む、請求項10に記載の医用装置。
【請求項12】
前記1つ以上のプロセッサが、
前記代表値が信頼できる統計量でないと判定された場合、前記オフセットを更新しないと決定する、請求項1に記載の医用装置。
【請求項13】
前記所定の位置がアイソセンターである、請求項1に記載の医用装置。
【請求項14】
前記医用画像が、スカウトスキャンにより取得されたスカウト画像、又は診断スキャンにより取得されたCT画像である、請求項1に記載の医用装置。
【請求項15】
被検体が配置されるテーブルの駆動方法であって、
被検体の検査が実行されるたびに、
前記テーブルの高さの位置ずれを補正するためのオフセットに基づいて、前記被検体の撮影部位が、前記テーブルの高さ方向における所定の位置に位置決めされるように、前記テーブルを駆動すること、
前記被検体の撮影部位の医用画像に基づいて、前記被検体の撮影部位の、前記テーブルの高さ方向における重心を求めること、
前記所定の位置と前記重心との差を、前記テーブルの高さの位置ずれ量として計算すること、および
前記位置ずれ量を記憶すること、
を含み、
前記テーブルの駆動方法が、更に、
前記位置ずれ量の分布の特徴を表す代表値を求めること、
前記位置ずれ量の代表値が信頼できる統計量であるか否かを判定すること、および
前記代表値が信頼できる統計量であると判定された場合、前記代表値に基づいて前記オフセットを更新すること、
を含む、テーブルの駆動方法。
【請求項16】
少なくとも1つのプロセッサによる実行が可能な1つ以上のインストラクションが格納された、非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
前記一つ以上のインストラクションは、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときに、被検体の検査が実行されるたびに、
テーブルの高さの位置ずれを補正するためのオフセットに基づいて、前記被検体の撮影部位が、前記テーブルの高さ方向における所定の位置に位置決めされるように、前記テーブルを制御するテーブルコントローラに前記テーブルを駆動させること、
前記被検体の撮影部位の医用画像に基づいて、前記被検体の撮影部位の、前記テーブルの高さ方向における重心を求めること、
前記所定の位置と前記重心との差を、前記テーブルの高さの位置ずれ量として計算すること、
前記位置ずれ量を記憶すること、
を含む動作を前記少なくとも1つのプロセッサに実行させ、
前記一つ以上のインストラクションは、更に、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときに、
前記位置ずれ量の分布の特徴を表す代表値を求めること、
前記位置ずれ量の代表値が信頼できる統計量であるか否かを判定すること、および
前記代表値が信頼できる統計量であると判定された場合、前記代表値に基づいて前記オフセットを更新すること、
を含む動作を前記少なくとも1つのプロセッサに実行させる、記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブルを含む医用装置、テーブルの駆動方法、および当該医用装置を制御するための命令が記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の体内の画像を非侵襲的に撮影する医用装置として、X線CT装置が知られている。X線CT装置は、撮影部位を短時間で撮影することができるので、病院等の医療施設に普及している。
【0003】
近年、X線CT装置などの撮影装置は、自動化が進んでいる。例えば、被検体を撮影に適した所定の位置まで移動させるように、テーブルを自動的に駆動する技術などが研究、開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テーブルの自動制御により、被検体を各撮影プロトコルに対応した位置に自動的に移動させることができる。したがって、病院などの医療機関が、定期検診などで、1日に多数の被検体の検査を行う場合であっても、撮影部位が所定の位置に位置決めされるように各被検体を移動させることができる。このため、どの被検体を検査する場合であっても、撮影部位を所定の位置に位置決めすることができるので、被検体は質の高い検査を受けることができる。
【0006】
一方で、自動位置決めを行っても、テーブルの高さが理想的な位置からずれてしまうことがある。この位置ずれ量は、自動位置決め技術が使用されている環境に依存することがわかっており、例えば、或る病院Aではテーブルの高さがdx(mm)ずれるが、別の病院Bではテーブルの高さがdy(mm)(dy≠dx)ずれるという現象が発生している。したがって、位置決め技術を使用してテーブルを自動的に移動させると、テーブルの高さに病院固有の位置ずれが生じる。
【0007】
また、撮影部位によってもテーブルの高さに固有の位置ずれが生じることがある。例えば、撮影部位が腹部の場合には、テーブルの高さの位置ずれは許容範囲であるが、撮影部位が頭部の場合には、テーブルの高さの位置ずれが大きくなることがある。
【0008】
このようなテーブルの高さの位置ずれの原因としては、例えば、病院で使用されているクレードルパッドの厚さ、アクセサリ(例えば、エクステンダー)の形状、カメラの取付位置、カメラの較正精度が考えられる。
【0009】
このテーブルの高さの位置ずれに対処するために、現行のCTシステムの中には、オペレータがテーブルの高さの位置ずれを補正するためのオフセットを手作業で入力することにより、テーブルの高さの位置ずれを微調整する機能を備えているものがある。しかし、オペレータが入力するオフセットの値は、例えば、オペレータ自身の経験値である。したがって、このオペレータの経験値が適切でない場合は、テーブルの高さを正しく調整することができないという問題がある。
【0010】
したがって、テーブルの高さを所望の位置に位置決めすることができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、被検体が配置されるテーブルと、少なくとも1つのプロセッサとを含む医用装置であって、
前記少なくとも1つのプロセッサが、被検体の検査が実行されるたびに、
前記テーブルの高さの位置ずれを補正するためのオフセットに基づいて、前記被検体の撮影部位が、前記テーブルの高さ方向における所定の位置に位置決めされるように、前記テーブルを制御するテーブルコントローラに前記テーブルを駆動させること、
前記被検体の撮影部位の医用画像に基づいて、前記被検体の撮影部位の、前記テーブルの高さ方向における重心を求めること、
前記所定の位置と前記重心との差を、前記テーブルの高さの位置ずれ量として計算すること、
前記位置ずれ量を記憶すること、
を含む動作を実行し、
前記少なくとも1つのプロセッサが、更に、
前記位置ずれ量の分布の特徴を表す代表値を求めること、
前記位置ずれ量の代表値が信頼できる統計量であるか否かを判定すること、および
前記代表値が信頼できる統計量であると判定された場合、前記代表値に基づいて前記オフセットを更新すること、
を含む動作を実行する、医用装置である。
【0012】
また、本発明の第2の観点は、被検体が配置されるテーブルの駆動方法であって、
被検体の検査が実行されるたびに、
前記テーブルの高さの位置ずれを補正するためのオフセットに基づいて、前記被検体の撮影部位が、前記テーブルの高さ方向における所定の位置に位置決めされるように、前記テーブルを駆動すること、
前記被検体の撮影部位の医用画像に基づいて、前記被検体の撮影部位の、前記テーブルの高さ方向における重心を求めること、
前記所定の位置と前記重心との差を、前記テーブルの高さの位置ずれ量として計算すること、および
前記位置ずれ量を記憶すること、
を含み、
前記テーブルの駆動方法が、更に、
前記位置ずれ量の分布の特徴を表す代表値を求めること、
前記位置ずれ量の代表値が信頼できる統計量であるか否かを判定すること、および
前記代表値が信頼できる統計量であると判定された場合、前記代表値に基づいて前記オフセットを更新すること、
を含む、テーブルの駆動方法である。
【0013】
また、本発明の第3の観点は、少なくとも1つのプロセッサによる実行が可能な1つ以上のインストラクションが格納された、非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
前記一つ以上のインストラクションは、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときに、被検体の検査が実行されるたびに、
テーブルの高さの位置ずれを補正するためのオフセットに基づいて、前記被検体の撮影部位が、前記テーブルの高さ方向における所定の位置に位置決めされるように、前記テーブルを制御するテーブルコントローラに前記テーブルを駆動させること、
前記被検体の撮影部位の医用画像に基づいて、前記被検体の撮影部位の、前記テーブルの高さ方向における重心を求めること、
前記所定の位置と前記重心との差を、前記テーブルの高さの位置ずれ量として計算すること、
前記位置ずれ量を記憶すること、
を含む動作を前記少なくとも1つのプロセッサに実行させ、
前記一つ以上のインストラクションは、更に、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときに、
前記位置ずれ量の分布の特徴を表す代表値を求めること、
前記位置ずれ量の代表値が信頼できる統計量であるか否かを判定すること、および
前記代表値が信頼できる統計量であると判定された場合、前記代表値に基づいて前記オフセットを更新すること、
を含む動作を前記少なくとも1つのプロセッサに実行させる、記録媒体である。
【発明の効果】
【0014】
テーブルの高さの位置ずれ量の代表値が十分に信頼できる統計量になったら、テーブルの高さのオフセットが、前記代表値に基づいて更新される。したがって、次の被検体の検査を実行する場合は、更新されたオフセットに基づいてテーブルの高さが位置決めされるようにテーブルを駆動することができるので、撮影部位を所望の位置又はその近傍に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態におけるX線CT装置100の斜視図である。
【
図2】本実施形態におけるX線CT装置100のブロック図である。
【
図3】検査番号#1~#a+b+cと、各検査番号で検査される撮影部位とを示す図である。
【
図6】記憶装置に記憶されているオフセットの説明図である。
【
図7】テーブルを駆動させた後の様子を示す図である。
【
図9】X線管104を角度0°に位置決めさせたときのスカウト画像16と、X線管104を角度90°に位置決めさせたときのスカウト画像17を概略的に示す図である。
【
図10】頭部のy方向における重心を示す図である。
【
図11】テーブルの高さの位置ずれ量の説明図である。
【
図12】撮影部位に対応付けて記憶された位置ずれ量d
1を示す図である。
【
図13】ステップST14のフローの一例を示す図である。
【
図15】検査番号#2の被検体の検査で計算された位置ずれ量d
2を示す図である。
【
図16】検査番号#1~#(a-1)の検査を実行することにより蓄積されたテーブルの高さの位置ずれ量dのデータを示す図である。
【
図17】頭部の撮影時のテーブルの高さのオフセットを、「F3」から「dave(=D1)」に更新した様子を示す図である。
【
図18】検査番号#aの被検体の検査フローを示す図である。
【
図19】検査番号#(a+1)~#(a+b)の検査を実行することにより蓄積されたテーブルの高さの位置ずれ量dのデータを示す図である。
【
図20】検査番号#(a+b+1)~#(a+b+c)の検査を実行することにより蓄積されたテーブルの高さの位置ずれ量dのデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0017】
図1は、本実施形態におけるX線CT装置100の斜視図、
図2は、本実施形態におけるX線CT装置100のブロック図である。
【0018】
X線CT装置100は、ガントリ102およびテーブル116を含んでいる。ガントリ102およびテーブル116はスキャンルーム122に設置されている。
【0019】
ガントリ102は開口部107を有しており、その開口部107に被検体112が搬送され、被検体112がスキャンされる。
【0020】
ガントリ102には、X線管104、フィルタ部103、前置コリメータ105、およびX線検出器108などが取り付けられている。
【0021】
X線管104は、陰極-陽極管に所定の電圧が印加されることにより、X線を発生させるものである。X線管104は、XY面内において、回転軸を中心とした経路上を回転することができるように構成されている。ここで、Z方向は体軸方向を表し、Y方向は鉛直方向(テーブル116の高さ方向)を表し、X方向は、Z方向およびY方向に対して垂直の方向を表している。尚、X線管104として、管電圧を切り替えることができるRapid kV switching方式に対応したX線管を備えてもよい。また、本実施形態では、X線CT装置100は1つのX線管104を備えているが、2つのX線管を備えてもよい。
【0022】
フィルタ部103は、例えば、平板フィルタおよび/又はボウタイフィルタを含んでいる。
【0023】
前置コリメータ105は、不要な領域にX線が照射されないようにX線の照射範囲を絞り込むための部材である。
【0024】
X線検出器108は複数の検出器素子202を含んでいる。複数の検出器素子202は、X線管104から照射され、患者などの被検体112を通過するX線106を検出する。したがって、X線検出器108は、ビューごとに投影データを取得することができる。
【0025】
X線検出器108により検出された投影データは、DAS214で収集される。DAS214は、収集した投影データに対して、サンプリング、デジタル変換などを含む所定の処理を実行する。処理された投影データは、コンピュータ216に送信される。DAS214からのデータは、コンピュータ216によって記憶装置218に記憶することができる。記憶装置218は、プログラムや、プロセッサで実行される命令などを記録する1つ以上の記録媒体を含むものである。記録媒体は、例えば、1つ以上の非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体とすることができる。記憶装置218は、例えば、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、コンパクトディスク読み出し/書き込み(CD-R/W)ドライブ、デジタル多用途ディスク(DVD)ドライブ、フラッシュドライブ、および/またはソリッドステート記憶ドライブを含むことができる。
【0026】
コンピュータ216は1つ又は複数のプロセッサを含んでいる。コンピュータ216は、1つ又は複数のプロセッサを使用して、DAS214、X線コントローラ210、および/又はガントリモータコントローラ212に、コマンドおよびパラメータを出力し、データ取得および/または処理などのシステム動作を制御する。また、コンピュータ216は、1つ又は複数のプロセッサを使用して、後述するフロー(
図4、
図13、および
図18参照)の各ステップにおいて、信号処理、データ処理、画像処理など、様々な処理を実行する。
【0027】
コンピュータ216には、オペレータコンソール220が結合されている。オペレータは、オペレータコンソール220を操作することにより、X線CT装置100の動作に関連する所定のオペレータ入力をコンピュータ216に入力することができる。コンピュータ216は、オペレータコンソール220を介して、コマンドおよび/またはスキャンパラメータを含むオペレータ入力を受信し、そのオペレータ入力に基づいてシステム動作を制御する。オペレータコンソール220は、オペレータがコマンドおよび/またはスキャンパラメータを指定するためのキーボード(図示せず)またはタッチスクリーンを含むことができる。
【0028】
X線コントローラ210は、コンピュータ216からの制御信号に基づいてX線管104を制御する。また、ガントリモータコントローラ212は、コンピュータ216からの制御信号に基づいて、X線管104およびX線検出器108などの構成要素が回転するように、ガントリモータを制御する。
【0029】
図2は、1つのオペレータコンソール220のみを示しているが、2つ以上のオペレータコンソールをコンピュータ216に結合してもよい。
【0030】
また、X線CT装置100は、例えば、有線ネットワークおよび/又は無線ネットワークを介して、遠隔に位置する複数のディスプレイ、プリンタ、ワークステーション、および/もしくは同様のデバイスが結合されるようにしてもよい。
【0031】
一実施形態では、例えば、X線CT装置100は、画像保管通信システム(PACS)224を含んでいてもよいし、PACS224に結合されていてもよい。例示的な実施態様では、PACS224は、放射線科情報システム、病院情報システム、および/または内部もしくは外部ネットワーク(図示せず)などの遠隔システムに結合されていてもよい。
【0032】
コンピュータ216は、テーブルコントローラ118に、テーブル116を制御するための命令を供給する。テーブルコントローラ118は、受け取った命令に基づいてテーブル116を制御することができる。例えば、テーブルコントローラ118は、被検体112が撮影に適した位置に位置決めされるように、テーブル116を駆動することができる。
【0033】
前述のように、DAS214は、検出器素子202によって取得された投影データをサンプリングしてデジタル変換する。その後、画像再構成器230が、サンプリングされデジタル変換されたデータを使用して画像を再構成する。画像再構成器230は1つ又は複数のプロセッサを含んでおり、このプロセッサが画像再構成の処理を実行することができる。
図2では、画像再構成器230は、コンピュータ216とは別個の構成要素として示されているが、画像再構成器230は、コンピュータ216の一部を形成するものであってもよい。また、コンピュータ216が、画像再構成器230の1つまたは複数の機能を実施してもよい。さらに、画像再構成器230は、X線CT装置100からから離れた位置に設けられ、有線ネットワークまたは無線ネットワークを使用してX線CT装置100に動作可能に接続されるようにしてもよい。コンピュータ216および画像再構成器230は画像生成装置として機能する。
【0034】
画像再構成器230は、再構成された画像を記憶装置218に記憶することができる。また、画像再構成器230は、再構成された画像をコンピュータ216に送信してもよい。コンピュータ216は、再構成された画像および/または患者情報を、コンピュータ216および/または画像再構成器230に通信可能に結合された表示装置232に送信することができる。
【0035】
本明細書で説明される様々な方法およびプロセスは、X線CT装置100内の非一時的な記録媒体に実行可能命令として記録することができる。この実行可能命令は、1つの記録媒体に記録されていてもよいし、複数の記録媒体に分散させて記録されるようにしてもよい。X線CT装置100に備えられる1つ以上のプロセッサは、記録媒体に記録された命令に従って、本明細書で説明される様々な方法、ステップ、およびプロセスを実行する。
【0036】
また、スキャンルーム122の天井124には、スキャンルーム内の光学画像を取得するための光学画像取得ユニットとしてカメラ235が備えられている。光学画像取得ユニットは、被検体などの被写体の表面を画像化することができるものであれば、任意の機器を光学画像取得ユニットとして使用することができる。例えば、可視光を用いて被写体を画像化するカメラ、赤外線を使用して被写体を画像化するカメラ、赤外線を使用して被写体の深度データを取得し、深度データに基づいて被写体の表面を画像化する深度センサを、光学画像取得ユニットとして使用することができる。また、光学画像取得ユニットにより取得される光学画像は3D画像でもよいし、2D画像でもよい。更に、光学画像取得ユニットは光学画像を静止画として取得してもよいし、動画として取得してもよい。
X線CT装置100は上記のように構成されている。
【0037】
近年、X線CT装置などの撮影装置は、自動化が進んでいる。例えば、被検体を撮影に適した所定の位置まで移動させるように、テーブルを自動的に駆動する技術などが研究、開発されている。
【0038】
テーブルの自動制御により、被検体を各撮影プロトコルに対応した位置に自動的に移動させることができる。したがって、病院などの医療機関が、定期検診などで、1日に多数の被検体の検査を行う場合であっても、撮影部位が所定の位置に位置決めされるように各被検体を移動させることができる。このため、どの被検体を検査する場合であっても、撮影部位を所定の位置に位置決めすることができるので、被検体は質の高い検査を受けることができる。
【0039】
一方で、自動位置決めを行っても、テーブルの高さ方向の位置が理想的な位置からずれてしまうことがある。この位置ずれ量は、自動位置決め技術が使用されている環境に依存することがわかっており、そのため、テーブルの高さに病院固有の位置ずれが生じている。
【0040】
このテーブルの高さの位置ずれに対処するために、現行のCTシステムの中には、オペレータがテーブルの高さの位置ずれを補正するためのオフセットを手作業で入力することにより、テーブルの高さの位置ずれを微調整する機能を備えているものがある。しかし、オペレータが入力するオフセットの値は、例えば、オペレータ自身の経験値である。したがって、このオペレータの経験値が適切でない場合は、テーブルの高さを正しく調整することができないという問題がある。
【0041】
そこで、本実施形態では、テーブルが実際に位置決めされる高さと、テーブルの理想的な高さとの差が大きくなってきたら、テーブルの高さのオフセットを自動的に更新する機能を備えている。
【0042】
以下に、本実施形態のX線CT装置を用いて被検体を検査するフローについて説明する。尚、本実施形態では、説明の便宜上、
図3に示すように、検査番号#1~#a+b+cの順に検査が実行される例について説明する。検査番号#1~#aは撮影部位が「頭部」であり、検査番号#a+1~#a+bは撮影部位が「腹部」であり、検査番号#a+b+1~#a+b+cは撮影部位が「胸部」であるとする。
【0043】
図4は、被検体の検査フローの一例を示す図である。尚、
図4に示すフローを実行する場合、或るステップを省略又は追加すること、或るステップを複数のステップに分割すること、或るステップを別の順序で実行すること、或るステップを繰り返し実行することが可能である。
【0044】
先ず、検査番号#1の被検体の検査を実行する例について説明する。検査番号#1の撮影部位は、
図3に示すように、頭部である。
【0045】
ステップST1では、オペレータが、被検体112をスキャンルーム122に呼び入れ、被検体112をテーブル116に寝かせる。
図5にテーブル116に寝た被検体を示す。
【0046】
テーブル116は、被検体112が配置されるクレードル116aを有している。クレードル116aは体軸方向(z方向)に移動することができるように構成されている。
【0047】
カメラ235は、被検体112がスキャンルーム122に入室する前から、テーブル116およびその周辺の領域の撮影を開始している。カメラ235で取得された信号は、コンピュータ216に送られる。コンピュータ216は、カメラ235から受け取った信号に基づいてカメラ画像(光学画像)を生成する。カメラ画像は記憶装置218に記憶される。
【0048】
ステップST2では、コンピュータ216が、カメラ画像に基づいて、被検体の各部位(頭部、胸部、腹部、上肢、下肢など)および各部位の位置を認識し、テーブル116上における被検体の姿勢および被検体の向きを推定する。ここで、被検体の姿勢は、例えば、仰臥位、側臥位、腹臥位であり、被検体の向きは、例えば、被検体が頭部からガントリ102の開口部107に移動するように被検体の向きが調整されたHF(Head First)、および被検体が下肢からガントリのボアに移動するように被検体の向きが調整されたFF(Feet First)である。この推定には、例えば、深層学習の手法を使用することができる。
【0049】
ステップST3では、コンピュータ216が、カメラ画像に基づいて、被検体の撮影部位をスカウトスキャンの開始位置に位置決めするために必要なテーブル116の移動量を計算する。具体的には、コンピュータ216が、カメラ画像に基づいて、被検体の撮影部位がスカウトスキャンの開始位置に位置決めするために必要となるテーブル116のy方向(テーブルの高さ方向)における移動量とクレードルのz方向(体軸方向)における移動量を計算する。移動量を計算した後、ステップST4に進む。
【0050】
ステップST4では、コンピュータ216が、撮影部位がスカウトスキャンの開始位置に位置決めされるように、テーブルコントローラ118にテーブル116を駆動させる。尚、テーブルコントローラ118は、以下の(1)および(2)の両方を考慮してテーブル116を駆動する。
【0051】
(1)ステップST3で計算されたテーブル116の高さ方向の移動量、およびクレードル116aの移動量
(2)テーブル116の高さの位置ずれを補正するためのオフセット
【0052】
(2)は、医療施設(例えば、病院)ごとに生じるテーブル116の高さの固有の位置ずれを補正するためのオフセットである。このオフセットは、撮影部位毎に記憶装置(例えば、記憶装置218)に記憶されている。
図6は、記憶装置に記憶されているオフセットの説明図である。記憶装置には、撮影部位の種類と、撮影部位ごとに設定されたオフセットが示されている。
図6では、撮影部位として、「腹部」、「胸部」、および「頭部」が示されている。また、「腹部」、「胸部」、および「頭部」を検査する場合のテーブル116の高さのオフセットは、それぞれ、「F1」、「F2」、および「F3」であるとする。オフセットF1、F2、およびF3は、例えば、0mm~数十mmの範囲内の値に設定することができる。オフセットF1、F2、およびF3は、例えば、オペレータの経験値である。
【0053】
コンピュータ216は、オフセットF1、F2、およびF3のうち、撮影部位に対応するオフセットを選択する。ここでは、撮影部位は頭部であるので、コンピュータ216は、テーブル116の高さの固有の位置ずれを補正するためのオフセットとして、「F3」を選択する。したがって、コンピュータ216は、ステップST3で計算されたテーブル116の高さ方向の移動量、およびクレードル116aの移動量と、選択したオフセットF3に基づいて、撮影部位がアイソセンター31(y座標:y0)に位置決めされるように、テーブルコントローラ118(
図2参照)にテーブル116を駆動させる。
図7に、上記の(1)および(2)に基づいてテーブル116を駆動させた後の様子を示す。テーブル116を駆動させた後、ステップST5に進む。
【0054】
ステップST5では、被検体のスカウトスキャンを実行する。
図8は、スカウトスキャンの説明図である。
図8には、ガントリ102の正面図が示されている。
【0055】
ガントリ102はX線管104を含んでいる。X線管104は、XY面内において、回転軸205を中心とした経路40上を回転することができるように構成されている。尚、回転軸205はアイソセンター31に一致するように設定してもよいし、アイソセンター31からずれた位置を回転軸205として設定してもよい。
【0056】
尚、
図8には、XY面内におけるガントリ102の開口部107に対する被検体112の頭部112aが示されている。ここでは、撮影部位が頭部112aであるとする。
【0057】
本実施形態では、スカウトスキャンを実行する場合、ガントリモータコントローラ212(
図2参照)は、
図8に示すように、X線管104が、経路40上において回転軸205の真上の位置P0(角度0°)に位置するように、ガントリモータを制御する。そして、テーブルコントローラ118がクレードル116aをz方向に移動させながら、X線コントローラ210が、X線が照射されるようにX線管104を制御する。
【0058】
X線検出器108(
図2参照)は、X線管104から照射され被検体を通過したX線を検出する。X線検出器108により検出された投影データは、DAS214で収集される。DAS214は、収集した投影データに対して、サンプリング、デジタル変換などを含む所定の処理を実行し、コンピュータ216又は画像再構成器230に送信する。コンピュータ216又は画像再構成器230では、プロセッサが、スキャンにより得られたデータに基づいて画像を再構成する。
【0059】
次に、X線管104を角度0°から90°回転させる。したがって、X線管104は、位置P90(角度90°)に位置決めされる。X線管104が位置P90に位置決めされた後、X線管104からX線が照射される。
【0060】
X線検出器108は、X線管104から照射され被検体112を通過したX線を検出する。X線検出器108により検出された投影データは、DAS214で収集される。DAS214は、収集した投影データに対して、サンプリング、デジタル変換などを含む所定の処理を実行し、コンピュータ216又は画像再構成器230に送信する。コンピュータ216又は画像再構成器230では、プロセッサが、スキャンにより得られたデータに基づいて画像を再構成する。
【0061】
したがって、スカウトスキャンを実行することにより、X線管104を角度0°に位置決めさせたときのスカウト画像と、X線管104を角度90°に位置決めさせたときのスカウト画像を再構成することができる。
図9に、X線管104を角度0°に位置決めさせたときのスカウト画像16と、X線管104を角度90°に位置決めさせたときのスカウト画像17を概略的に示す。
スカウトスキャンを実行した後、ステップST6に進む。
【0062】
ステップST6では、オペレータは、診断スキャンのスキャン計画を立てる。スキャン計画では、オペレータは、スカウト画像16および17を参考にしてスキャン範囲を設定する。スキャン計画を立てた後、ステップST7に進む。
【0063】
ステップST7では、撮影部位(頭部)の診断スキャンが実行される。X線検出器108は、X線管104から照射され被検体112を通過したX線を検出する。X線検出器108により検出された投影データは、DAS214で収集される。DAS214は、収集した投影データに対して、サンプリング、デジタル変換などを含む所定の処理を実行し、コンピュータ216又は画像再構成器230に送信する。コンピュータ216又は画像再構成器230では、プロセッサが、診断スキャンにより得られたデータに基づいて、被検体112の頭部の診断に必要なCT画像を再構成する。再構成されたCT画像は表示装置232に表示することができる。
【0064】
ステップST6およびST7が実行されている一方、ステップST11~ST14では、オフセットを更新する必要があるか否かを判定し、必要に応じてオフセットを更新する処理を実行する。以下に、ステップST11~ST14について説明する。
【0065】
ステップST11では、コンピュータ216が、スカウト画像17(
図9参照)に基づいて、被検体の撮影部位のy方向(テーブルの高さ方向)における重心を求める。本実施形態では、撮影部位は頭部であるので、被検体の頭部のy方向における重心を求める。
図10に、頭部のy方向における重心32を示す。
図10では、頭部のy方向における重心32は、y座標(y1)で示されている。重心32は、次のステップST12において、テーブル116の高さ方向の位置ずれ量の基準となるベースラインとして使用されるものである。
【0066】
ステップST12では、コンピュータ216が、
図11に示すように、アイソセンター31(y座標:y0)と、ステップST11で求めた頭部のy方向における重心32(y座標:y1)との差dを計算する。コンピュータ216は、この差dを、テーブル116の高さの位置ずれ量と定義する。ここでは、位置ずれ量dはd=d
1であるとする。
【0067】
ステップST13では、コンピュータ216が、
図12に示すように、位置ずれ量dを、検査番号と撮影部位に対応付けて記憶装置に記憶する。ここでは、位置ずれ量d=d
1が検査番号#1と撮影部位(頭部)に対応付けて記憶される。位置ずれ量dを記憶した後、ステップST14に進む。
【0068】
ステップST14では、コンピュータ216が、テーブル116の高さの位置ずれを補正するためのオフセットF3(
図4および
図6参照)を更新する必要があるか否かを判定する。以下に、この判定方法について説明する。
【0069】
図13は、ステップST14のフローの一例を示す図であり、
図14は、ステップST14の説明図である。
【0070】
尚、
図14の左側には、記憶装置に記憶されたテーブル116の高さの位置ずれ量dが示されており、
図14の右側には、テーブル116の高さの位置ずれ量dのヒストグラムが示されている。
【0071】
ステップST141では、コンピュータ216が、テーブル116の高さの位置ずれ量dの分布の特徴を表す代表値(central tendency)を計算する。代表値としては、例えば、平均値dave、中央値dmed、最頻値dmodなどがあるが、ここでは、代表値として平均値daveを計算する場合について考える。
図14を参照すると、頭部について、テーブル116の高さの位置ずれ量dのデータは、1つのデータd
1しか存在していない。したがって、平均値はdave=d
1である。平均値daveを求めた後、ステップST142に進む。
【0072】
ステップST142では、コンピュータ216が、平均値dave=d1が信頼できる統計量であるか否かを判定する。ここでは、平均値dave=d1は、1個のデータ(すなわち、d1)のみから計算した値であるので、平均値dave=d1は信頼できる統計量ではないと判定する。この場合、ステップST143に進み、コンピュータ216は、オフセットF3を更新しないと決定し、フローを終了する。
【0073】
検査番号#1の被検体の検査が終了したら、次の検査番号#2の被検体の検査を行う。検査番号#2の被検体の撮影部位は、検査番号#1の被検体の撮影部位と同様に頭部である。以下に、検査番号#2の被検体の検査について、
図4のフローを参照しながら説明する。
【0074】
検査番号#2の被検体の検査においても、検査番号#1の被検体と同様に、ステップST1~ST5が実行される。撮影部位は頭部であるので、ステップST4ではオフセットF3に従ってテーブル116を駆動する。テーブル116を駆動した後、スカウトスキャン(ステップST5)を実行し、スキャン計画(ステップST6)を立てて、診断スキャン(ステップST7)を実行する。一方、ステップST5でスカウトスキャンを実行した後、撮影部位(頭部)のy方向における重心を求め(ステップST11)、位置ずれ量dを求め(ステップST12)、位置ずれ量dを記憶する(ステップST13)。
図15に示すように、検査番号#2の被検体の検査で計算された位置ずれ量dはd=d
2で示されている。位置ずれ量d
2を記憶した後、ステップST14に進む。
【0075】
ステップST14では、コンピュータ216が、テーブル116の高さの位置ずれを補正するためのオフセットF3(
図4および
図6参照)を更新する必要があるか否かを判定する。以下に、この判定方法について、
図13のフローを参照しながら説明する。
【0076】
ステップST141では、コンピュータ216が、テーブル116の高さの位置ずれ量dの平均値daveを計算する。
図15に示すように、記憶装置には、検査番号#1の被検体の検査時のテーブル116の位置ずれ量d
1と、検査番号#2の被検体のテーブル116の検査時の位置ずれ量d
2が、位置ずれ量のデータとして蓄積されている。したがって、コンピュータ216は、位置ずれ量d
1とd
2の平均値daveを計算する。平均値daveは、以下の式で計算することができる。
dave=(d
1+d
2)/2 ・・・(1)
【0077】
平均値daveを求めた後、ステップST142に進む。
ステップST142では、コンピュータ216は、平均値dave(式(1)参照)が信頼できる統計量であるか否かを判定する。本実施形態では、コンピュータ216が、平均値daveの信頼できる統計量であるか否かを判定するための閾値THを計算し、平均値daveが閾値THに対して以下の式(2)を満たすか否かを判定することにより、平均値daveが信頼できる統計量であるか否かを判定する。
dave≧TH ・・・(2)
【0078】
上記の式(2)を満たす場合、コンピュータ216は、平均値daveは信頼できる統計量であると判断する。
尚、閾値THは、位置ずれ量dのばらつきの度合いを表す標準偏差σを用いて、以下の式で計算される値である。
TH=3σ ・・・(3)
【0079】
したがって、本実施形態では、コンピュータ216は、平均値daveが以下の式(4)を満たすか否かを判定することにより、平均値daveが信頼できる統計量であるか否かを判定する。
dave≧3σ ・・・(4)
【0080】
上記の式(4)を満たす場合、コンピュータ216は、平均値daveは信頼できる統計量であると判断する。ここでは、平均値daveは、
図15のヒストグラムに示すように、dave<3σであるので、上記の式(4)を満たしていない。したがって、ステップST143に進み、コンピュータ216は、オフセットF3を更新しないと決定し、
図13に示すフローを終了する。
【0081】
以下同様に、
図4(および
図13)に示すフローに従って被検体の検査を行うたびに、ステップST13において、テーブル116の高さの位置ずれ量dが撮影部位に対応付けて記憶される。したがって、被検体の検査を実行するたびに、撮影部位ごとにテーブル116の高さの位置ずれ量dのデータが蓄積されていく。
【0082】
図16は、検査番号#1~#(a-1)の検査を実行することにより蓄積されたテーブルの高さの位置ずれ量dのデータを示す図である。
【0083】
検査番号#1~#(a-1)の撮影部位は頭部である。したがって、検査番号#1~#(a-1)の検査を実行することにより、記憶装置には、頭部についてのテーブル116の高さの位置ずれ量dのデータ(d1~da-1)が蓄積される。コンピュータ216は、ステップST13において、検査番号#(a-1)におけるテーブル116の高さの位置ずれ量d(=da-1)を記憶した後、ステップST14に進む。
【0084】
ステップST14では、コンピュータ216が、テーブル116の高さの位置ずれを補正するためのオフセットF3(
図4および
図6参照)を更新する必要があるか否かを判定する。以下に、この判定方法について、
図13のフローを参照しながら説明する。
【0085】
ステップST141では、コンピュータ216が、テーブル116の高さの位置ずれ量dの平均値daveを計算する。
図16に示すように、記憶装置には、検査番号#1~#(a-1)のテーブル116の高さの位置ずれ量d
1~d
a-1が蓄積されている。したがって、コンピュータ216は、位置ずれ量d
1~d
a-1の平均値daveを計算する。平均値daveは、以下の式で計算することができる。
dave=(d
1+d
2+・・・+d
a-1)/(a-1)
ここで、(d
1+d
2+・・・+d
a-1)/(a-1)=D1と置くと、
dave=D1 ・・・・(5)
【0086】
平均値dave(=D1)を求めた後、ステップST142に進む。
ステップST142では、コンピュータ216は、式(4)に基づいて、平均値dave(=D1)が信頼できる統計量であるか否かを判定する。ここでは、平均値dave(=D1)は、
図16に示すように、dave≧3σを満たしている。したがって、コンピュータ216は、オフセットF3を更新することを決定し、ステップST144において、オフセットF3を更新する。
図17に、頭部の撮影時のテーブル116の高さのオフセットを、「F3」から「dave(=D1)」に更新した様子を示す。オフセットを更新したら、
図13に示すフローを終了する。
【0087】
検査番号#(a-1)の被検体の検査が終了したら、次の検査番号#aの被検体の検査を行う。
【0088】
図18は、検査番号#aの被検体の検査フローを示す図である。
図18に示す検査フローは、
図4に示す検査フローと比較すると、撮影部位が頭部の場合に使用されるオフセットが、「F3」から「dave(=D1)」に更新されている点が異なるが、その他の点は、
図4に示す検査フローと同じである。
【0089】
検査番号#aの被検体の撮影部位は頭部である(
図16参照)。したがって、検査番号#aの被検体の検査を実行する場合、
図18に示すように、ステップST4では、テーブル116の高さのオフセットとして「dave(=D1)」が使用され、頭部の検査が実行される。
【0090】
先に説明したように、検査番号#1~#a-1の頭部の検査では、位置ずれ量dの平均値daveは信頼性の高い統計値には達していなかったので、テーブル116の高さがF3(mm)だけオフセットされる
図4のフローに従って検査が実行される。しかし、検査番号#1~#a-1の検査により蓄積された位置ずれ量d
1~d
a-1の平均値dave(=D1)は、
図16に示すように、信頼できる統計量(dave≧3σ)であると判定されるので、コンピュータ216は、オフセットを、F3からdave(=D1)に更新する(
図17参照)。したがって、次の検査番号#aの被検体の頭部の検査では、テーブル116の高さがdave(=D1)だけオフセットされる
図18のフローに従って検査が実行される。このため、検査番号#aの被検体の頭部の検査において、頭部を所望の位置又はその近傍に位置決めしてスカウトスキャンをすることができるので、検査の質を向上させることができる。
【0091】
次に、検査番号#(a+1)~#(a+b)の被検体の検査について説明する。
検査番号#(a+1)~#(a+b)の検査は、
図18に示すフローに従って行われる。尚、検査番号#(a+1)~#(a+b)の撮影部位は腹部であるので、ステップST4では、テーブル116の高さのオフセットとして「F1」が使用されるが、その他の点は、
図4に示す検査フローと同じである。したがって、
図18に示すフローの説明に当たっては、主に、
図4のフローとの相違点を説明することにする。
【0092】
ステップST4において、オフセット「F1」に基づいてテーブル116を駆動した後、スカウトスキャン(ステップST5)を実行し、スキャン計画(ステップST6)を立てて、診断スキャン(ステップST7)を実行する。一方、ステップST5でスカウトスキャンを実行した後、撮影部位(腹部)のy方向における重心を求め(ステップST11)、位置ずれ量dを求め(ステップST12)、位置ずれ量dを記憶する(ステップST13)。したがって、被検体の検査を実行するたびに、テーブル116の高さの位置ずれ量dのデータが蓄積されていく(
図19参照)。
【0093】
図19は、検査番号#(a+1)~#(a+b)の検査を実行することにより蓄積されたテーブルの高さの位置ずれ量dのデータを示す図である。
【0094】
本実施形態では、検査番号#(a+1)~#(a+b)の撮影部位は腹部であるとする。したがって、検査番号#(a+1)~#(a+b)の検査を実行することにより、記憶装置には、腹部についてのテーブル116の高さの位置ずれ量dのb個のデータ(da+1~da+b)が蓄積される。コンピュータ216は、ステップST13において、検査番号#(a+b)におけるテーブル116の高さの位置ずれ量d(=da+b)を記憶した後、ステップST14に進む。
【0095】
ステップST14では、コンピュータ216が、テーブル116の高さの位置ずれを補正するためのオフセットF1(
図18参照)を更新する必要があるか否かを判定する。以下に、この判定方法について、
図13のフローを参照しながら説明する。
【0096】
ステップST141では、コンピュータ216が、テーブル116の高さの位置ずれ量dの平均値daveを計算する。
図19に示すように、記憶装置には、検査番号#(a+1)~#(a+b)のテーブル116の高さの位置ずれ量d
a+1~d
a+bが蓄積されている。したがって、コンピュータ216は、位置ずれ量d
a+1~d
a+bの平均値daveを計算する。平均値daveは、以下の式で計算することができる。
dave=(d
a+1+d
a+2+・・・+d
a+b-1+d
a+b)/b
ここで、(d
a+1+d
a+2+・・・+d
a+b-1+d
a+b)/b=D2と置くと、
dave=D2 ・・・・(6)
【0097】
平均値daveを求めた後、ステップST142に進む。
ステップST142では、コンピュータ216は、式(4)に基づいて、平均値dave(=D2)が信頼できる統計量であるか否かを判定する。ここでは、平均値dave(=D2)は、
図19に示すように、dave<3σであるので、dave≧3σを満たしていない。したがって、コンピュータ216は、オフセットF1を更新する必要はないと判定して、
図18に示すフローを終了する。
【0098】
最後に、検査番号#(a+b+1)~#(a+b+c)の被検体の検査について説明する。
【0099】
検査番号#(a+b+1)~#(a+b+c)の検査は、
図18に示すフローに従って行われる。尚、検査番号#(a+b+)~#(a+b+c)の撮影部位は胸部であるので、ステップST4では、テーブル116の高さのオフセットとして「F2」が使用されるが、その他の点は、
図4に示す検査フローと同じである。したがって、
図18に示すフローの説明に当たっては、主に、
図4のフローとの相違点を説明することにする。
【0100】
ステップST4において、オフセットF2に基づいてテーブル116を駆動した後、スカウトスキャン(ステップST5)を実行し、スキャン計画(ステップST6)を立てて、診断スキャン(ステップST7)を実行する。一方、ステップST5でスカウトスキャンを実行した後、撮影部位(胸部)のy方向における重心を求め(ステップST11)、位置ずれ量dを求め(ステップST12)、位置ずれ量dを記憶する(ステップST13)。したがって、被検体の検査を実行するたびに、テーブル116の高さの位置ずれ量dのデータが蓄積されていく(
図20参照)。
【0101】
図20は、検査番号#(a+b+1)~#(a+b+c)の検査を実行することにより蓄積されたテーブルの高さの位置ずれ量dのデータを示す図である。
【0102】
本実施形態では、検査番号#(a+b+1)~#(a+b+c)の撮影部位は胸部であるとする。したがって、検査番号#(a+b+1)~#(a+b+c)の検査を実行することにより、記憶装置には,胸部についてのテーブル116の高さの位置ずれ量dのc個のデータ(da+b+1~da+b+c)が蓄積される。コンピュータ216は、ステップST13において、検査番号#(a+b+c)におけるテーブル116の高さの位置ずれ量d(=da+b+c)を記憶した後、ステップST14に進む。
【0103】
ステップST14では、コンピュータ216が、テーブル116の高さの位置ずれを補正するためのオフセットF2(
図18参照)を更新する必要があるか否かを判定する。以下に、この判定方法について、
図13のフローを参照しながら説明する。
【0104】
ステップST141では、コンピュータ216が、テーブル116の高さの位置ずれ量dの平均値daveを計算する。
図20に示すように、記憶装置には、検査番号#(a+b+1)~#(a+b+c)のテーブル116の高さの位置ずれ量d
a+b+1~d
a+b+cが蓄積されている。したがって、コンピュータ216は、位置ずれ量d
a+b+1~d
a+b+cの平均値daveを計算する。平均値daveは、以下の式で計算することができる。
dave=(d
a+b+1+d
a+b+2+・・・+d
a+b+c-1+d
a+b+c)/c
ここで、(d
a+b+1+d
a+b+2+・・・+d
a+b+c-1+d
a+b+c)/c=D3と置くと、
dave=D3 ・・・・(7)
【0105】
平均値dave(=D3)を求めた後、ステップST142に進む。
ステップST142では、コンピュータ216は、式(4)に基づいて、平均値dave(=D3)が信頼できる統計量であるか否かを判定する。ここでは、平均値dave(=D3)は、
図20に示すように、dave<3σであるので、dave≧3σを満たしていない。したがって、コンピュータ216は、オフセットF2を更新する必要はないと判定して、
図18に示すフローを終了する。
このようにして、検査番号#1~#a+b+cの検査が実行される。
【0106】
本実施形態では、撮影部位ごとに、テーブル116の高さの位置ずれ量dのデータを蓄積し、位置ずれ量dの平均値daveが、dave≧3σ(式(4)参照)を満たす場合、オフセットを自動的に更新することができる。したがって、X線CT装置のオペレータが手作業でオフセットを変更する必要がなくなるので、オペレータの作業負担を軽減することができる。また、本実施形態では、パッド等のアクセサリを交換しても、X線CT装置で被検体の検査を繰り返し実行していくことにより、アクセサリ固有のテーブルの高さの位置ずれを自動的に調整することもできる。
【0107】
また、本実施形態では、位置ずれ量の平均値daveは撮影部位ごとに計算されるので、テーブル116の高さの位置ずれを撮影部位ごとに調整することができる。
【0108】
本実施形態では、dave≧3σ(式(4)参照)に基づいてオフセットを自動的に更新している。しかし、dave≧3σとは別の条件式に基づいてオフセットを自動的に更新してもよい。例えば、dave≧3σの代わりに、dave≧2σを満たす場合にオフセットを自動的に更新するようにしてもよい。
【0109】
本実施形態では、位置ずれ量の平均値daveを用いて、オフセットを更新するか否かを判定している。しかし、平均値daveの代わりに、中央値dmed又は最頻値dmodなどの他の代表値を用いて、オフセットを更新するか否かを判定してもよい。
【0110】
本実施形態では、標準偏差σを用いて閾値THを計算している(式(3)参照)。しかし、標準偏差σの代わりに、例えば、分散などの他の指標を用いて閾値THを計算してもよい。
【0111】
本実施形態では、アイソセンター31を基準にして位置ずれ量dを定義している。しかし、アイソセンター31とは別の位置を基準にして位置ずれ量dを定義してもよい。
【0112】
本実施形態では、スカウト画像に基づいてテーブルの位置ずれ量dを計算しているが、診断スキャンで取得されるCT画像に基づいてテーブルの位置ずれ量dを計算してもよい。
【0113】
尚、本実施形態では、オフセットを更新した後は、更新されたオフセットに基づいてテーブル116を駆動している。しかし、オペレータがオペレータコンソール220(
図2参照)を操作して、コンピュータ216にオペレータ入力を入力することにより、更新されたオフセットに基づいてテーブル116を駆動させるか、更新前のオフセットに基づいてテーブル116を駆動させるかを、オペレータが選択できるようにしてもよい。更に、更新されたオフセットに基づいてテーブル116を駆動させるか、更新前のオフセットに基づいてテーブル116を駆動させるかを、オペレータが撮影部位ごとに選択できるようにしてもよい。
【0114】
尚、本実施形態では、医用装置としてX線CT装置を取り上げて、オフセットを補正する例について説明されている。しかし、本発明の医用装置は、X線CT装置に限定されることはなく、オフセットを使用してテーブルの高さを調整する医用装置(例えば、MRI装置、PET-CT装置、PET-MR装置)に適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
16、17 スカウト画像
31 アイソセンター
32 重心
40 経路
100 X線CT装置
102 ガントリ
103 フィルタ部
104 X線管
105 前置コリメータ
106 X線
108 X線検出器
107 開口部
112 被検体
112a 頭部
116 テーブル
116a クレードル
118 テーブルコントローラ
122 スキャンルーム
124 天井
202 検出器素子
205 回転軸
210 X線コントローラ
212 ガントリモータコントローラ
214 DAS
216 コンピュータ
218 記憶装置
220 オペレータコンソール
224 PACS
230 画像再構成器
232 表示装置
235 カメラ