(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175596
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】2種以上の半固形製剤の混合方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20231205BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231205BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231205BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20231205BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231205BHJP
A61K 8/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61J3/00 310C
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/16
A61K9/14
A61K8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022104065
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】522257931
【氏名又は名称】堀沢 栄次郎
(72)【発明者】
【氏名】堀沢 栄次郎
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C047LL03
4C047LL20
4C076AA06
4C076AA11
4C076AA29
4C076AA30
4C076AA31
4C076BB31
4C076GG31
4C076GG41
4C083DD16
4C083DD17
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD31
4C083FF05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の目的は、異なる2剤以上の半固形製剤の、混合性および均一性に優れた簡便な混合方法を提供する。
【解決手段】2種以上の半固形製剤の混合方法であって、一方に閉鎖可能な開口端および他方に閉口端を有する柔軟性のある中空管に、2種以上の半固形製剤を注入する工程、中空管の内部の空気を除去した後、開口端を密封する工程、中空管の長手方向軸に沿って、および/または長手方向軸と交差して、中空管内の半固形製剤を反復加圧する工程を、この順で含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の半固形製剤の混合方法であって、
(工程1)一方に閉鎖可能な開口端および他方に閉口端を有する柔軟性のある中空管に、2種以上の半固形製剤を注入する工程;
(工程2)前記中空管の内部の空気を除去した後、前記開口端を密封する工程;
(工程3)前記中空管の長手方向軸に沿って、および/または前記長手方向軸と交差して、前記中空管内の半固形製剤を反復加圧する工程;
を、この順で含む、前記方法。
【請求項2】
前記柔軟性のある中空管の材質が、樹脂、ゴム、皮革、繊維、紙、カーボン、金属薄膜またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記柔軟性のある中空管の材質が、樹脂と金属薄膜との積層体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポチエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアリレート、液晶ポリマー、熱可塑性エラストマー、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチックおよびフッ素樹脂からなる群より選ばれる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属薄膜の材質が、アルミニウム、鉄、ステンレス、銅合金、硬質炭化クロム、硬質クロム、窒化チタン、ニッケル、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、複合金属薄膜である請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記中空管の横断面形状が円柱状または楕円柱状である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記中空管が、内壁にバッフルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記中空管の閉鎖可能な開口端から、半固形製剤の必要量を前記中空管内に注入後、前記開口端を密封する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記中空管の閉口端は、着脱可能なネジ式またはヒンジ式のキャップにより閉口した端部である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記半固形製剤が、粘性のある軟膏剤、クリーム剤、ローション剤および外用液剤、粘性のない液剤、顆粒剤、粉末剤ならびに散剤からなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程2において、前記中空管の内部の空気の除去が、ヒトの指、遠心機、ローラー治具、差圧押出し機および/またはすきま治具を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程2において、前記中空管の密封が、物理的な折り曲げ加締め、ステープラーもしくは接着剤による接着、熱圧着、超音波圧着または電磁波圧着による、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程3において、前記中空管の長手方向軸と前記反復加圧する方向の方向軸とが、1~179度の角度で交差する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程3において、前記反復加圧が、ヒトの指、ローラー治具、差圧押出し機および/またはすきま治具を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程3において、前記反復加圧が、前記中空管の長手方向軸に沿って反復移動しながら行われる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半固形製剤の混合方法に関する。具体的には、2種以上の皮膚に使用するための半固形製剤(軟膏剤、クリーム剤、外用液剤などの外用剤)の簡便な混合方法に関する。より具体的には、本発明は、一方に閉鎖可能な開口端および他方に閉口端を有する柔軟性のある中空管を用いて、2種以上の半固形製剤を簡便かつ均一に混合する、中空管内混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚疾患の治療を目的とした半固形製剤、すなわち、医薬品または化粧品に使用される外用剤として、粘性のある軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、外用液剤および粘性のない液剤が使用されている。軟膏剤はべたつきがあり、またチキソトロピーを有するため、季節変動に伴う物性の変動がある。一方、クリーム剤は、比較的べたつきが少なく、広範囲な塗布が容易で、使用感の良好な剤形である。このような外用剤の各剤形の特徴に基づき、外用剤が適用される皮膚の症状や部位に応じて、皮膚科医による適切な外用剤使い分けが行われている。
【0003】
一般には、外用剤の塗布は、患者のアドヒアランスを確保することが難しいと考えられており(非特許文献1)、患者が2剤以上の外用剤を皮膚科医から処方される場合、それらを毎日正しく塗布するのは容易ではないとの懸念がある。そこで、患者のアドヒアランスを改善するため、例えば、ステロイド外用剤と保湿剤など、治療目的の異なる2剤以上の外用剤の混合を指示した処方が日常的に行われているとの報告もある(非特許文献2)。
【0004】
製薬企業における医療用外用剤の開発では、上市後の製品において、他の外用剤との混合を前提とした製剤設計は行われない。このため、市販後の外用剤を混合する場合には、混合による製剤の品質および性能の変化に関し、臨床研究における充分な研究データの蓄積が必要であり、その科学的根拠の基で、外用剤の混合および/または希釈の適正化を図るべきとの報告もある(非特許文献3)。なお、仮に医療現場から外用配合剤の開発要望があっても、製薬企業の現状においては、承認申請するために必要となる臨床試験上および開発薬事上の課題により、配合剤の研究開発は積極的には行われないのが現状である。このため、皮膚科医からの外用剤混合処方に基づいて、薬局での複数外用剤の混合調剤が行われる場合があるが、製剤の品質および性能の変化の可能性を考慮すれば、混合調剤は原則としては回避すべきである。しかしながら、文献情報等から、混合調剤による製剤の品質および性能の変化が生じないと想定される場合には、医療上の必要性より、薬剤師による混合調製が行われているのが現状である(非特許文献4)。
【0005】
従来から、異なる2剤以上の半固形製剤(外用剤)の混合は、a)乳鉢を用いる混合、b)軟膏ベラと軟膏板とを用いる混合、およびc)混合機を用いる混合の3つの方法により行われてきた。ここで、aおよびbの混合方法は、今日では薬局および調剤室でもっとも普及している方法である。しかしながら、aおよびbの方法では、使用する機器の清浄を保つために、混合製剤の調製ごとに器具の消毒および洗浄が必要であり、作業中の薬剤汚染対策に注意が必要である。また、混合手技が薬剤師の熟練度に依存すること(非特許文献5)、かつ作業時間が長く、さらには各製剤のロスが大きいことなどが課題であった。これに対し、cの混合方法では、それらの課題が著しく改善された(非特許文献4)。しかし、cの混合方法では、現実的には、混合機を設置するための費用が必要であること、混合機を使用しない場合でも、混合機が調剤台を長時間占有することによる調剤実務の障害になること、および混合機で用いられるジャー容器(軟膏ツボ)は、その構造上、ジャー容器内部に保存される混合製剤と空気との接触面積が大きく、そのため混合製剤の酸化を生じやすくなり、混合製剤をチューブ(容器)で保存する場合と比べて保存安定性が低下するなど、課題が生じることが示された。以上のように、外用剤混合による混合調剤は、いずれの混合方法を用いる場合でも、薬局および薬剤師の通常業務における負担および負荷の原因であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Serup J,Lindblad ÅK,Maroti M,Kjellgren KI,Niklasson E,Ring L,Ahlner J,To follow or not follow dermatological treatment-A review of the literature,Acta Derm Venereol,86,193-197,2006.
【非特許文献2】江藤隆史,ステロイド外用剤の使い方-混合の是非,臨床皮膚科,55,96-101,2001.
【非特許文献3】江藤隆史,皮膚外用剤の混合による製剤学的および臨床への影響,日本皮膚科学会誌,114(13),2080-2087,2004.
【非特許文献4】高藤由紀子ら,ステロイド軟膏と白色ワセリンの等量混合における自転・公転式ミキサーの適正な混合時間の検討,医療薬学,44(2),68-73,2018.
【非特許文献5】山本佳久ら,ステロイド軟膏製剤のレオロジー特性に関する評価-後発品および保湿剤との混合穀剤における展延性-,薬局薬学,4,54-61,2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、2種以上の半固形製剤を、簡便かつ均一に混合する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、一方に閉鎖可能な開口端および他方に閉口端を有する柔軟性のある中空管の内部で、2種以上の半固形製剤(外用剤)を外部からの反復加圧により混合することにより、簡便かつ均一に混合することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の態様を包含する。
〔項1〕
2種以上の半固形製剤の混合方法であって、
(工程1)一方に閉鎖可能な開口端および他方に閉口端を有する柔軟性のある中空管に、2種以上の半固形製剤を注入する工程;
(工程2)前記中空管の内部の空気を除去した後、前記開口端を密封する工程;
(工程3)前記中空管の長手方向軸に沿って、および/または前記長手方向軸と交差して、前記中空管内の半固形製剤を反復加圧する工程;
を、この順で含む、前記方法。
〔項2〕
前記柔軟性のある中空管の材質が、樹脂、ゴム、皮革、繊維、紙、カーボン、金属薄膜またはこれらの組み合わせである、項1に記載の方法。
〔項3〕
前記柔軟性のある中空管の材質が、樹脂と金属薄膜との積層体である、項1に記載の方法。
〔項4〕
前記樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポチエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアリレート、液晶ポリマー、熱可塑性エラストマー、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチックおよびフッ素樹脂からなる群より選ばれる、項2または3に記載の方法。
〔項5〕
前記金属薄膜の材質が、アルミニウム、鉄、ステンレス、銅合金、硬質炭化クロム、硬質クロム、窒化チタン、ニッケル、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、複合金属薄膜である項2または3に記載の方法。
〔項6〕
前記中空管の横断面形状が円柱状または楕円柱状である、項1に記載の方法。
〔項7〕
前記中空管が、内壁にバッフルを有する、項1に記載の方法。
〔項8〕
前記中空管の閉鎖可能な開口端から、半固形製剤の必要量を前記中空管内に注入後、前記開口端を密封する、項1に記載の方法。
〔項9〕
前記中空管の閉口端は、着脱可能なネジ式またはヒンジ式のキャップにより閉口した端部である、項1に記載の方法。
〔項10〕
前記半固形製剤が、粘性のある軟膏剤、クリーム剤、ローション剤および外用液剤、粘性のない液剤、顆粒剤、粉末剤ならびに散剤からなる群より選ばれる、項1に記載の方法。
〔項11〕
工程2において、前記中空管の内部の空気の除去が、ヒトの指、遠心機、ローラー治具、差圧押出し機および/またはすきま治具を用いる、項1に記載の方法。
〔項12〕
工程2において、前記中空管の密封が、物理的な折り曲げ加締め、ステープラーもしくは接着剤による接着、熱圧着、超音波圧着または電磁波圧着による、項1に記載の方法。
〔項13〕
工程3において、前記中空管の長手方向軸と前記反復加圧する方向の方向軸とが、1~179度の角度で交差する、項1に記載の方法。
〔項14〕
工程3において、前記反復加圧が、ヒトの指、ローラー治具、差圧押出し機および/またはすきま治具を用いる、項1に記載の方法。
〔項15〕
工程3において、前記反復加圧が、前記中空管の長手方向軸に沿って反復移動しながら行われる、項1に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、成分の異なる2種以上の半固形製剤を、短時間で簡便に、衛生的に、かつ均一に混合する方法を提供することができる。本発明の混合方法によれば、混合する2種以上の各半固形製剤の混合時のロスを最小にすることができる。また、本発明において使用される柔軟性のある中空管は、そのまま最終製剤の容器として使用することができるため、調剤過誤を低減することができ、異物混入(交差汚染)の可能性を抑えることができる。また、本発明の方法により調製された混合製剤は、ジャー容器(軟膏ツボ)を使用して調製された混合製剤に比べてより品質(安定性)が確保される。このため、本発明の混合方法によれば、薬剤師が外用剤の混合処方に基づき混合製剤を調製する場合、前記薬剤師の技能および熟練度に影響されることなく、品質(安定性)が確保された混合外用剤を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】外用剤の各製品および外用剤混合チューブ製品の滑動曲線(Friction force curve)を示す図である。
【00122】
【
図2】外用剤の各製品および外用剤混合チューブ製品の人工皮膚(サプラーレ)上における滑動曲線(Friction force curve)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔半固形製剤〕
本発明において使用される半固形製剤は、医薬品外用剤および医薬部外品、化粧品、健康食品、衛生材料、機能性外用剤、雑品に用いられる粘性のある軟膏剤、クリーム剤、ローション剤および外用液剤、粘性のない液剤、顆粒剤、粉末剤ならびに散剤からなる群より選ばれる製剤が挙げられる。本発明の一実施態様において、半固形製剤は、薬学的または香粧品科学的な効能を有する成分(有効成分)を含む。このような成分の種類については、特に制限されず、分子量が500Da未満の低分子物質または分子量が500Da以上の高分子物質のいずれであってもよい。
【0014】
有効成分としては、例えば、L-アスコルビン酸類、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステル、L-アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸類、コウジ酸モノパルミテ一卜、コウジ酸モノステアレート、コウジ酸ジパルミテー卜、コウジ酸ジステアレートおよび卜ラネキサム酸等の美白剤、クレアチニン、尿素および尿素類、グリチルリチン酸類、アラン卜イン、サリチル酸類、サリチル酸グリコール、インドメタシン、フェルビナクおよびジク口フェナクナトリウム等の非ステロイド(NSAIDs)抗炎症薬、プレドニゾロン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメサゾンプロピオン酸エステル、クロベタゾールプロピオン酸エステルおよびベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル等のステロイド(SAIDs)抗炎症薬、塩酸ジフェンヒドラミンおよびマレイン酸ク口ルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、リドカイン、ジブカイン、テ卜ラカインおよびブピバカイン等の局所麻酔剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジンおよびジンクピリチオン等の殺菌/抗菌剤、ニコチン酸ベンジルエステルおよびセファランチン等の血行促進剤、テ卜ラサイクリン塩酸塩等の抗生物質、オキシトシン、コルチコトロピン、バソフレッシン、セクレチン、ガストリンおよびカルシトニン等のホルモン剤、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビオチン、葉酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミドおよびビタミンB12等のビタミンB類またはその誘導体、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、グルコースおよびフルクトース等の単糖類、マルトース、スクロース、ラクトースおよびトレハロース等の二糖類、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、アガ口オリゴ糖およびキシ口オリゴ糖等のオリゴ糖、ならびにアミノ酸等が挙げられる。これらの低分子化合物は、単独で使用される場合と、2種以上を組み合わせて使用される場合がある。
【0015】
高分子物質としては、例えば、エラスチン、コラーゲン、サイトカイン、抗体、ワクチン抗原、アルブミンおよび酵素(塩化リゾチーム、卜リプシン、キモ卜リプシン、アルカリプロテアーゼ、セラペプターゼ、リバーゼおよびヒアルロニダーゼ等)等のタンパク質、ヘパリン類似物質、ヒアルロン酸、コンドロイチン流酸エステル、キトサン、キチン、グリコーゲン、カラギーナン、フコイダン、ポルフイラン、キサンタンガム、チューベロース多糖体、クインスシードエキス、ジェランガム、アルギン酸、ペクチンおよびセルロース類またはこれらの塩(ナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩等)等の多糖類が挙げられる。これらの高分子化合物は、単独で使用される場合と2種以上を組み合わせて使用される場合とがある。
【0016】
〔中空管〕
本発明において使用される中空管は、医薬品外用剤および医薬部外品、香粧品、化粧品、健康食品、衛生材料、機能性外用剤ならびに雑品の製造工程で用いられる、一方に閉鎖可能な開口端を有し、他方に、閉口端を有する柔軟性のある中空管であり、一般的にはチューブと称される。閉口端とは、中空管であるチューブの先端であり、通常は、樹脂製の着脱可能なキャップが装着されている。前記先端は、キャップがない状態で開口している場合とキャップがない状態でも閉口している場合とがある。前記先端が開口している場合は、キャップを装着することにより閉口端となる。前記先端が、キャップがない状態でも閉口している場合には、使用時に前記先端を穿孔することによりチューブ内容物を押し出すことができる。
【0017】
本発明の一実施態様において、前記中空管として、半固形製剤が充填可能で、充填可能な内容量が1~5gの小型のチューブまたは10~50gの中型のチューブが主に用いられる。病院や介護施設に向けて製品化され、介護者や看護師などによって利用される、内容量が50g以上の大型チューブを用いてもよい。
【0018】
本発明の一実施態様において、前記中空管は柔軟性があり、前記中空管の長手方向軸に対し垂直な平面である横断面形状は、円柱状または楕円柱状である。また前記中空管は、内容物が充填されていない状態では、中空の管状態または内壁にバッフルを有する中空の管状態である。
【0019】
本発明の一実施態様において、前記中空管の閉口端は、予め閉塞されたままの閉口端部である場合と、予め開口した端部をキャップにより閉口した場合とがあり、前者である場合は、使用時に、キャップに形成した突起等を用いて閉口端部を穿孔することにより開口することができる。いずれの場合も、着脱可能なネジ式またはヒンジ式のキャップが装着された端部である。通常は、キャップが装着された閉口端から、開口後、前記中空管内に充填された半固形製剤(粘性のある軟膏剤、クリーム剤、ローション剤など)を容易に押出すことができる。
【0020】
本発明の一実施態様において、前記柔軟性のある中空管の材質は、樹脂、ゴム、皮革、繊維、紙、カーボン、金属薄膜またはこれらの組み合わせである。他の実施態様において、前記柔軟性のある中空管の材質は、樹脂と金属薄膜との積層体である。樹脂の材質を詳しく示せば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS(A:アクリロニトリル、B:ブタジエン、S:スチレンの3種類の成分の組み合わせ)、メタクリル、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポチエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアリレート、液晶ポリマー、熱可塑性エラストマー、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチックおよびフッ素からなる群より選ばれる。金属薄膜の材質は、アルミニウム、鉄、ステンレス、銅合金、硬質炭化クロム、硬質クロム、窒化チタン、ニッケル、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる複合金属薄膜である。
【0021】
本発明の一実施態様において、前記中空管の長手方向軸に対し垂直な平面である横断面形状は、円柱状または楕円柱状である。また、前記中空管の内壁(内部壁)にバッフルを有してもよい。バッフルとは邪魔板のことであり、内容物の流動に不連続な流れ(乱流)を生み出す効果がある。ただし、バッフルのない中空管を用いる場合でも、本発明の混合方法を適用することができる。これは、前記中空管の充填物が、前記中空管内部において連続的に流れる場合、すなわち層流を形成する場合であっても、または不連続な流れ(乱流)を形成する場合であっても、本発明の混合方法を適用することができることを意味する。
【0022】
〔混合方法〕
本発明における2種以上の半固形製剤の混合方法は、柔軟性のある中空管の閉鎖可能な開口端より、異なる2種以上の半固形製剤を注入する工程(工程1)を含む。この工程1では、天秤を用いて質量を風袋消去した中空管に、異なる2種以上の半固形製剤の必要所定量を秤量して開口端より注入する。半固形製剤の注入後に、中空管の内部の空気をできるだけ除去する。この際、ヒトの指により、中空管を2~3回または約10回タッピングすることによって、空気を除去することができる。中空管内部の空気の除去は、遠心機を用いる操作によっても可能である。内部の空気は、できるだけ除去しておくことが望ましい。中空管の閉口端側(キャップ装着側)に、注入した半固形製剤が緻密に充填されるようにする。その他に、ローラー治具、差圧押出し機および/またはすきま治具を用いることによっても、中空管内部の空気の除去が可能であり、これらの操作を組合わせて空気の除去を行うこともできる。
【0023】
本発明の混合方法は、前記中空管の内部の空気を除去した後、前記中空管の開口端を密封する工程(工程2)を含む。工程2における中空管の密封は、物理的な折り曲げ、加締め、ステープラーもしくは接着剤による接着、熱圧着(ヒ―トシール)、超音波圧着または電磁波圧着による方法により行うことができる。
【0024】
本発明の混合方法は、前記工程2において密封された中空管を、中空管の長手方向軸に沿って、および/または前記長手方向軸と交差して、中空管内の半固形製剤を反復加圧する工程(工程3)を含む。反復加圧することにより、中空管内の半固形製剤が混合される。本発明の一実施態様において、長手方向軸に沿って行われる反復加圧は、前記中空管を、長手方向軸に対して概ね垂直方向から加圧し、前記中空管内容物を押しつぶし、そのまま中空管内容物を長手方向軸に沿って押し出す操作を反転させながら繰り返して行う操作である。この操作は、前記長手方向軸に沿って反転反復して行われる。反復して行うとは、繰り返し往復させることを意味しており、加圧方向を反転させる際には、加圧を解除し、次いで再度加圧し中空管内容物を押し出す。
【0025】
本発明の一実施態様において、工程3における反復加圧は、前記中空管の長手方向軸と前記反復加圧する方向の方向軸とが、1~179度の範囲の角度で交差するように行われる。前記中空管の長手方向軸と前記反復加圧を行う方向の方向軸とが交差する角度は一定である必要はなく、変化させながら反復加圧してもよい。
【0026】
本発明の一実施態様において、前記反復加圧は、ヒトの指、ローラー治具、差圧押出し機および/またはすきま治具を用いて行う。これらの手段による反復加圧は、長手方向軸を反復移動しながら、通常は5回以上、交互に繰り返し往復させる。加圧と加圧解除を繰り返す(反復加圧する)ことにより、中空管内部の半固形製剤の均一化を図ることができる。より均一化を図るために、10回以上交互に反復加圧を繰り返してもよい。さらに均一化を図るには、20回以上反復加圧することが望ましい。工程1、工程2および工程3を、この順で含む本発明の混合方法によって、異なる2種以上の半固形製剤を、短時間で、少ない製剤ロスで、かつ汚染を最小化して、均一に混合することができる。
【0027】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によってなんら制限されるものではない。
【実施例0028】
〔ステロイド外用剤および保湿剤(それぞれ油性軟膏剤および親油性クリーム剤)の混合製剤の調製〕
半固形製剤として、市販のステロイド外用剤であるアンテベート軟膏[主薬:ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(軟膏1g中に0.5mg;0.05%)、添加剤:スクワラン、ゲル化炭化水素、パラフィンおよび白色ワセリン]、および保湿剤であるヒルドイドソフト軟膏[主薬:ヘパリン類似物質(軟膏1g中に3.0mg;0.3%)、添加剤:グリセリン、スクワラン、軽質流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、白色ワセリン、サラシミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム水和物、パラオキシ安息香酸メチルおよびパラオキシ安息香酸プロピル]の異なる2剤を用いた。アンテベート軟膏とヒルドイドソフト軟膏との混合比率が[5:1]、[1:1]および[1:5]となるようにそれぞれを計量し、全量が20gとなるように秤取したものを、柔軟性のあるポリエチレン製の円柱状のチューブに充填した。すなわち、約30g容量の空チューブ(閉口端として、開口した先端部分にポリプロピレン製の樹脂キャップを装着したチューブ)の閉鎖可能な開口端より、前記2剤を充填した。充填後、この開口端をステイプラーで5か所封緘して密封した。この後、前記2剤を充填済みのチューブの長手方向軸に沿って、ヒトの指で10回、反転反復加圧を行い、半固形製剤の混合によるステロイドおよび保湿剤の外用剤混合チューブ製品を作製した。前記加圧は、加圧部位の相対するチューブ壁が接触するように行った。
【0029】
上記のようにして混合したチューブ製品から、装着したキャップを外して内容物を押し出し、チューブ上部、中部および下部の3カ所のチューブ内容物を、混合製剤としてサンプリングした。混合製剤の各サンプル中に含まれるパラオキシ安息香酸メチル(ヒルドイドソフト軟膏に含まれる添加剤)を、混合の均一性指標として定量した。パラオキシ安息香酸メチルは、各サンプルの所定量を秤量した後、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルを用いて前処理を行い、遠心操作を行った後、高速液体クロマトグラフ法により測定した。
【0030】
測定結果を、以下の表1~4に示した。表1は、比較のために、ヒルドイドソフト軟膏(HS)のみをチューブに充填した場合の、チューブの上部、中部および下部のヒルドイドソフト軟膏(HS)中のパラオキシ安息香酸メチルの含量の測定結果を示す。表2、表3および表4は、アンテベート軟膏(AN)とヒルドイドソフト軟膏との混合比率がそれぞれ[5:1]の混合製剤(AN:HS=5:1)、[1:1]の混合製剤(AN:HS=1:1)および[1:5]の混合製剤(AN:HS=1:5)についての、チューブの上部、中部および下部の内容物について、ヒルドイドソフト軟膏(HS)中に含まれるパラオキシ安息香酸メチルの含量を測定した結果を示す。これらの結果には、チューブの内容物の均一性の評価として、標準偏差値(SD)および変動係数(CV:%)が含まれる。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
表1より、チューブに充填されたヒルドイドソフト軟膏中に含まれるパラオキシ安息香酸メチルは、チューブの上部、中部および下部のそれぞれにおいて、表示量に対する含量は104.0%、103.0%および102.9%(平均値±SD:103.3±0.62%)であり、CVは0.60%となり、極めて良好な均一性であることが分かった。一方、表2~4に示されるアンテベート軟膏およびヒルドイドソフト軟膏の混合製剤においては、各チューブ内におけるパラオキシ安息香酸メチルの含量測定値は、最大値と最小値の範囲で見るとき、93.4~106.6%であった。このことより、混合製剤のパラオキシ安息香酸メチルの表示量に対する含量は100±7%の範囲内にあることが示された。また、CV値は5.63~7.13%の範囲にあった。これより、アンテベート軟膏とヒルドイドソフト軟膏との混合比率による相違はほとんど認められなかった。以上の結果は、自転・公転式ミキサー(製品名:なんこう練太郎;THINKY MIXER、いずれも登録商標)を用いて、アンテベート軟膏およびヒルドイドソフト軟膏を等量混合した混合製剤[AN:HS=1:1]におけるステロイドの均一性を研究した論文(非特許文献4)において、CV=15.2%以下を混合均一性の指標としている報告と比較しても、遜色のない結果であることが確認された。すなわち、本発明の混合方法を用いると、市販の混合機を用いて混合した場合と比べて、同等またはそれ以上の含量均一性(混合性)が得られることが示され、良好な均一性が確保できることが分かった。
〔ステロイド外用剤および保湿剤(それぞれ油性軟膏剤および親油性クリーム剤)の混合製剤ならびに比較目的のステロイド外用剤およびワセリン軟膏(共に油性軟膏剤)の混合製剤の調製〕
半固形製剤として、市販のステロイド外用剤であるアンテベート軟膏[主薬:ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(軟膏1g中に0.5mg;0.05%)、添加剤:スクワラン、ゲル化炭化水素、パラフィンおよび白色ワセリン]、および保湿剤であるヒルドイドソフト軟膏0.3%[主薬:ヘパリン類似物質(1g中)3.0mg、添加剤:グリセリン、スクワラン、軽質流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、白色ワセリン、サラシミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム水和物、パラオキシ安息香酸メチルおよびパラオキシ安息香酸プロピル]を用いた。アンテベート軟膏と保湿剤との混合比率が[5:1]、[1:1]、[1:2]および[1:5]となるように計量し、それぞれ全量が20gとなるように秤取したものを、ポリエチレン製のチューブの開口端より充填した。この後、開口端を、ヒートシール機を用い、シール圧力2kg/cm2、温度200℃、時間1.5秒の条件で密封した。前記チューブを、前記チューブの外側よりヒトの指で挟み、かつ、挟む位置を変えながら10回、長手方向軸と交差させて、反復加圧を行うことにより混合して、外用剤混合チューブ製品を作製した。なお、比較のために、ワセリン軟膏[添加剤:日局白色ワセリン]およびアンテベート軟膏を、上記と同様にチューブに充填し、ヒトの指で10回、長手方向軸と交差する反復加圧により混合して、外用剤混合チューブ製品を作製した。前記加圧は、加圧部位の相対するチューブ壁が接触するように行った。
上記のようにして作製されたチューブ製品の内容物を押出し、混合製剤としてサンプリングした。混合製剤の各サンプルを用い、クリープメーター((株)山電製:クリープメーターII(CREEPMETER RE2-3305CX),治具:XZ-5)により、物理学的性質として、垂直方向の抗力(抵抗荷重)および垂直荷重(0.1N)の負荷下での水平方向の摩擦荷重を測定した。これらの荷重測定は、a)サンプルを下部のアクリル板台座(凹状隙間を設けた)に均一に装填し、これに治具を上方向から直接挿入して接触させる条件と、b)サンプルをあらかじめ治具に塗布し、下部のアクリル板台座には人工皮膚(サプラーレ)を貼付し、前記サンプルを塗布した治具を上方向から、この人工皮膚に直接接触させる条件の両方について実施した。