(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017563
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】会話スクリプト生成装置および会話スクリプト生成方法
(51)【国際特許分類】
G06F 16/90 20190101AFI20230131BHJP
【FI】
G06F16/90 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121907
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】517232017
【氏名又は名称】ギリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA01
5B175EA01
(57)【要約】
【課題】会話スクリプトの生成に関する専門の知識や経験を有しないユーザでも簡単に会話スクリプトを生成できるようにする。
【解決手段】人間の発話内容を認識する発話認識部2と、特定用途の会話スクリプトを生成する際に使用する生成用会話スクリプトに従って、発話認識部2により認識された発話内容に応じた動作を実行するスクリプト実行部4とを備え、スクリプト実行部4が人間の発話内容に応じて、人間との会話を行う第1の動作と、特定用途の会話スクリプトの記述を編集する第2の動作との何れかを選択的に実行することにより、第1の動作によって人間とスクリプト実行部4とが会話をしながら、第2の動作によって人間の発話内容に基づいて特定用途の会話スクリプトの記述を編集し、当該特定用途の会話スクリプトを会話を通じて簡単に生成することができるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間との間で特定用途の会話を行う会話エンジンの動作を制御するための会話スクリプトを生成する装置であって、
特定用途の会話スクリプトを生成する際に使用する生成用会話スクリプトを記憶する生成用会話スクリプト記憶部と、
人間の発話内容を認識する発話認識部と、
上記生成用会話スクリプトに従って、上記発話認識部により認識された発話内容に応じた動作を実行するスクリプト実行部とを備え、
上記スクリプト実行部は、上記発話認識部により認識された発話内容に応じて、人間との会話を行う第1の動作と、上記特定用途の会話スクリプトの記述を編集する第2の動作との何れかを選択的に実行することを特徴とする会話スクリプト生成装置。
【請求項2】
上記発話認識部により認識された発話内容を、上記スクリプト実行部に対する入力に適した内容に置換する発話内容置換部を更に備え、
上記スクリプト実行部は、上記生成用会話スクリプトに従って、上記発話内容置換部により置換された発話内容に応じた動作を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の会話スクリプト生成装置。
【請求項3】
上記発話内容置換部は、
上記発話認識部により認識された発話内容から類似文章を推定し、推定した類似文章をもとに、上記生成用会話スクリプトが上記発話内容を解釈するのに適した形式表現の文章に置換するようになされ、
文章が入力された際にその入力文章に類似する文章を出力するように機械学習された推定モデルによって、上記発話内容から上記類似文章の推定を行うようになされている
ことを特徴とする請求項2に記載の会話スクリプト生成装置。
【請求項4】
上記特定用途の会話スクリプトが、上記特定用途の会話を行う際に使用される会話用スクリプトと、当該会話用スクリプトを編集する際に使用される上記生成用会話スクリプトとを含み、
上記スクリプト実行部は、上記発話認識部により認識された発話内容に応じて、上記会話用スクリプトに従って動作を実行する会話モードと、上記生成用会話スクリプトに従って動作を実行する編集モードとの何れかを選択的に切り替えて動作を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の会話スクリプト生成装置。
【請求項5】
人間との間で特定用途の会話を行う会話エンジンの動作を制御するための会話スクリプトを生成する方法であって、
コンピュータの発話認識部が、入力された人間の発話内容を認識する第1のステップと、
上記コンピュータのスクリプト実行部が、特定用途の会話スクリプトを生成する際に使用する生成用会話スクリプトに従って、上記発話認識部により認識された発話内容に応じて、人間との会話を行う第1の動作と、上記特定用途の会話スクリプトの記述を編集する第2の動作との何れかを選択的に実行する第2のステップとを有する
ことを特徴とする会話スクリプト生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会話スクリプト生成装置および会話スクリプト生成方法に関し、特に、人間との間で特定用途の会話を行う会話エンジンの動作を制御するための会話スクリプトを生成する装置および方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、会話シナリオに基づいてコンピュータ(会話エンジン)と人間とが会話を行うシステムが提案されている。会話エンジンの動作は、エンジニアが作成したスクリプトによって制御される。このような会話シナリオのスクリプトを作成する方法として、プログラミング言語やスクリプト言語等でスクリプトを直接記述するハードコーディングや、GUI(Graphical User Interface)を用いてアイコンを配置することによってスクリプトを生成するコードレスコーディングといった手法が知られている。また、会話シナリオの作成を簡易に行えるように支援するためのシステムも知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のシナリオ作成支援システムでは、シナリオにおけるシーンの流れを表すフローを構成するためのフロー生成部と、シーンの内容を定義するシーン生成部と、定義されたシーンの内容をビジュアルプログラミングするためのプログラム編集部とを含むユーザインタフェース画面を端末装置に表示し、当該ユーザインタフェース画面への入力に応じて、サーバに蓄積された要素となるデータを用いてシナリオのデータを生成する。
【0004】
特許文献2に記載のシナリオシミュレーションシステムでは、GUIを使用して、シナリオと、当該シナリオの下で証書の評価を表すユーザインタフェース要素とを生成する。具体的には、シナリオを表すツリーデータ記憶構造を使用して、ノードの全ての可能な組合せにわたる経路のセットを判定し、各々の経路について、特定のポートフォリオへの対応する寄与を判定する。また、ツリーデータ記憶構造および複数のノードの視覚表現をレンダリングしたグラフィカルシナリオツリー(複数のノードの各々のノードと関連付けられた1つまたは複数のユーザインタフェース要素を含む)をインスタンス化し、これを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-32330号公報
【特許文献2】特開2021-44013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に記載のシステムは何れも、GUIを用いて会話スクリプトを生成するコードレスコーディングの一種である。これらのシステムを用いれば、ハードコーディングに比べて簡易に会話スクリプトを生成することが可能である。
【0007】
しかしながら、会話スクリプトを生成するのは基本的にエンジニアである。そのため、会話エンジンを使用してサービスを提供しようとするサービサーが、サービスの内容や会話エンジンにより実現したい会話の内容をエンジニアに伝え、それをもとにエンジニアが会話スクリプトを作成する必要がある。このため、サービスの内容を改変したり、新しいサービスを追加したりしたいとサービサーが考えた場合に、都度エンジニアに相談をして会話スクリプトを作成してもらう必要があるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、会話スクリプトの生成に関する専門の知識や経験を有しないユーザでも簡単に会話スクリプトを生成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明では、人間の発話内容を認識する発話認識部と、特定用途の会話スクリプトを生成する際に使用する生成用会話スクリプトに従って、発話認識部により認識された発話内容に応じた動作を実行するスクリプト実行部とを備え、認識された発話内容に応じて、人間との会話を行う第1の動作と、特定用途の会話スクリプトの記述を編集する第2の動作との何れかを選択的に実行するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明によれば、生成用会話スクリプトにより実行される第1の動作によって人間と会話スクリプト生成装置(スクリプト実行部)とが会話をしながら、生成用会話スクリプトにより実行される第2の動作によって人間の発話内容に基づいて特定用途の会話スクリプトの記述を編集し、当該特定用途の会話スクリプトを生成することができる。これにより、会話スクリプトの生成に関する専門の知識や経験を有しないユーザでも、スクリプト実行部により提供される会話を通じて簡単に会話スクリプトを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態による会話スクリプト生成装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態による発話内容置換部の処理内容の一例を説明するための模式図である。
【
図3】本実施形態のスクリプト実行部により実行される処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による会話スクリプト生成装置の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態の会話スクリプト生成装置は、人間との間で特定用途の会話を行うコンピュータ(会話エンジン)の動作を制御するための会話スクリプトを生成する装置である。会話エンジンは、特定用途の会話用に生成された会話スクリプト(以下、特定用途会話スクリプトという)に従って人間との会話を実行するものである。特定用途の会話とは、例えば飲食店でお客からオーダーを取るための会話、オンラインショップで商品を販売するための会話、テクニカルサポートとして顧客からの問い合わせに答えるための会話など、ある特定の目的をもって行うサービスに伴う会話をいう。
【0013】
このような会話を行う会話エンジンの動作を制御するための特定用途会話スクリプトは、メッセージセット、会話用ルールセット、コマンドセットなどに関する記述を含む。メッセージセットは、会話を開始する際の発言、人間からの発言に対する回答、人間に対する質問、会話を終了する際の発言などの種々のメッセージを含む。会話用ルールセットは、人間からの発言内容に対して応答すべき会話の方向性を判定する条件判定と判定結果に応じた会話フローなどに関する種々のルールを含む。ここでいう人間とは、会話エンジンとの会話を通じて特定用途のサービスを受ける人のことである。コマンドセットは、会話の中で行うべき特定用途に応じた種々の動作(例えば、特定用途が飲食店でのオーダー確認の場合は、確認したオーダーの内容を記録する動作など)の実行命令を含む。
【0014】
本実施形態の会話スクリプト生成装置10は、このような特定用途会話スクリプトを、会話スクリプトの生成に関する専門の知識や経験を有するエンジニアではなく、専門の知識や経験を有しないサービサー自身が簡単に生成できるようにするものである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の会話スクリプト生成装置10は、機能構成として、音声入力部1、発話認識部2、発話内容置換部3、スクリプト実行部4および音声出力部5を備えている。スクリプト実行部4は、より具体的な機能構成として、第1の動作実行部4Aおよび第2の動作実行部4Bを備えている。また、本実施形態の会話スクリプト生成装置10は、記憶媒体として、生成用会話スクリプト記憶部11および特定用途会話スクリプト記憶部12を備えている。
【0016】
上記各機能ブロック1~5は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック1~5は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0017】
生成用会話スクリプト記憶部11は、特定用途会話スクリプトを生成する際に使用する生成用会話スクリプトを記憶する。生成用会話スクリプトは、メッセージセット、会話用ルールセット、編集用ルールセットなどに関する記述を含む。メッセージセットは、会話を開始する際の発言、人間からの発言に対する回答、人間に対する質問、会話を終了する際の発言などの種々のメッセージを含む。会話用ルールセットは、人間からの発言内容に対して応答すべき会話の方向性を判定する条件判定と判定結果に応じた会話フローなどに関する種々のルールを含む。ここでいう人間とは、特定用途会話スクリプトを生成する人、例えばサービサーのことである。もちろんエンジニアであってもよい。編集用ルールセットは、人間からの発言内容に応じて特定用途会話スクリプトを編集するルールや編集のための動作の実行命令などを含む。
【0018】
特定用途会話スクリプト記憶部12は、会話スクリプト生成装置10により生成される特定用途会話スクリプトを記憶する。特定用途会話スクリプトは、サービサーと会話スクリプト生成装置10との会話を通じて、段々と作りこまれていく。その作成途中の特定用途会話スクリプトも特定用途会話スクリプト記憶部12に記憶され、特定用途会話スクリプト記憶部12に記憶された特定用途会話スクリプトに対して逐次編集が行われる。完成された特定用途会話スクリプトは、サービサーが使用する会話エンジンに組み込まれ、当該会話エンジンを通じてサービスが提供される。
【0019】
音声入力部1は、人間(サービサー)の発話音声に係る音声データを入力する。例えば、音声入力部1はマイクロホンを備え、当該マイクロホンから発話音声に係る音声データを入力する。あるいは、音声入力部1とは別に備えられたマイクロホンから入力された音声データを、音声入力部1が有線または無線の通信ネットワークを介して入力する構成としてもよい。
【0020】
発話認識部2は、音声入力部1により入力された音声データに基づいて、人間の発話内容を認識する。すなわち、発話認識部2は、音声入力部1により入力された音声データに対して音声認識処理を実行することにより、音声データを文字列(文章)のテキストデータに変換する。さらに、発話認識部2は、変換された文字列のテキストデータに対して自然言語処理を実行する。すなわち、発話認識部2は、文字列を形態素に分解し、構文解析、意味解析などの処理を行う。
【0021】
構文解析では、例えば、分解された各形態素の品詞をもとに形態素間の関連性を解析する処理を行う。この構文解析は、修飾/被修飾関係または係り受け関係といった形態素間の依存関係に基づいて文章内の構造を解析する依存構造解析や、隣接する形態素間の関係に基づいて、文章のどこからどこまでが部分構造を成すのかを推測する句構造解析などを含む。
【0022】
意味解析では、構文解析の結果をもとに、辞書に基づいた意味を利用して文章の意味を解析する処理を行う。例えば、事前に用意してあるリストから文章中の固有名詞を結びつけてその意味を認識する。あるいは、教師データに基づく機械学習によって生成した解析モデルに従って意味を認識するようにしてもよい。ここで用いる教師データは、単語がどの意味カテゴリに属するのかを示すために単語の属性にタグ付けをしたデータ、代名詞の指示対象や単語間の係り受け関係などを示すために文章の属性にタグ付けをしたデータなどを含む。
【0023】
発話内容置換部3は、発話認識部2により認識された発話内容を、スクリプト実行部4に対する入力に適した内容に置換する。例えば、発話内容置換部3は、発話認識部2により認識された発話内容から類似文章を推定し、推定した類似文章をもとに、生成用会話スクリプトが発話内容を解釈するのに適した形式表現の文章に置換する。類似文章の推定に関して、発話内容置換部3は、例えば、文章が入力された際にその入力文章に類似する文章を出力するように機械学習された推定モデルによって、発話内容から類似文章の推定を行う。
【0024】
人間が発する言葉には揺れがあり、同じ意味の文章でも表現の仕方が異なることが多い。発話内容置換部3は、このような人間の発する言葉の揺れを吸収し、生成用会話スクリプトに記述されている会話用ルールセットや編集用ルールセットに適用しやすい形式表現の文章に置換する。一例ではこの置換処理を、機械学習された推定モデルを利用して行う。推定モデルの形態としては、例えばニューラルネットワークモデルを利用することが可能であるが、これに限定されるものではなない。
【0025】
図2は、発話内容置換部3の処理内容の一例を説明するための模式図である。
図2では、発話内容置換部3は、発話認識部2により認識された発話内容として“ねーねーシミズリョウって誰なの?”という文章を入力している。この場合、発話内容置換部3は、この入力文章から“[固有名詞]って誰?”という類似文章を推定し、推定した類似文章をもとに、生成用会話スクリプトが発話内容を解釈するのに適した形式表現の“シミズリョウとは誰ですか?”という文章に置換する。
【0026】
スクリプト実行部4は、生成用会話スクリプト記憶部11に記憶されている生成用会話スクリプトに従って、発話認識部2により認識されて発話内容置換部3により置換された発話内容に応じた動作を実行する。ここで、スクリプト実行部4は、発話認識部2により認識された発話内容(発話内容置換部3により置換された発話内容)に応じて、第1の動作実行部4Aにより人間との会話を行う第1の動作と、第2の動作実行部4Bにより特定用途会話スクリプトの記述を編集する第2の動作との何れかを選択的に実行する。
【0027】
すなわち、スクリプト実行部4は、発話内容置換部3により置換された発話内容が、生成用会話スクリプトに記述されている会話用ルールに該当するか、編集用ルールに該当するかを判定する。ここで行う判定は、発話内容が質問文/回答文/説明文/命令文/確認文などの何れであるか、どのような種類の質問/回答/説明/命令/確認であるか、発話内容に含まれる各単語の品詞がどのような接続関係となっているかなどのパターンマッチングの他、発話内容の中に所定のキーワードが含まれているかなどのキーワードマッチングの処理を含む。一連の会話の文脈が特定のパターンに合致しているか否かの文脈マッチングを更に行うようにしてもよい。
【0028】
ここで、発話内容置換部3により置換された発話内容が会話用ルールに該当すると判定された場合、第1の動作実行部4Aは、該当する会話用ルールに従って、メッセージセットの中から何れかのメッセージを選択して音声出力部5に供給する。音声出力部5は、メッセージのテキストデータを音声データに変換し、図示しないスピーカからメッセージの音声を出力する。
【0029】
一方、編集用ルールに該当すると判定された場合、第2の動作実行部4Bは、該当する編集用ルールに従って、特定用途会話スクリプト記憶部12に記憶されている特定用途会話スクリプトを編集し、編集後の特定用途会話スクリプトを特定用途会話スクリプト記憶部12に記憶させる。特定用途会話スクリプトの編集は、何れかのメッセージを追加、修正または削除する処理、メッセージの中に挿入する単語を追加、修正または削除する処理、会話用ルールを追加、修正または削除する処理などを含み、何れの処理を実行するかは、発話内容置換部3により置換された発話内容が該当する編集用ルールの内容による。
【0030】
図3は、スクリプト実行部4により実行される処理の一例を示す図である。ここでは、生成する特定用途会話スクリプトが飲食店でお客からオーダーを取るための会話スクリプトであり、当該特定用途会話スクリプトに新メニューを登録する際の処理例を示している。スクリプト実行部4は、最初にサービサーが発話した“新メニューを登録したいです”という文章に含まれる「新メニュー」および「登録」というキーワードをもとに、新メニュー登録モードに入る。新メニュー登録モードでは、メニューの名前、値段および内容を確認するために必要な会話を進めるような会話用ルールと、確認したメニューの名前、値段および内容を新メニューとして特定用途会話スクリプトに追加登録するための編集用ルールとに従って、スクリプト実行部4の処理が順次実行される。
【0031】
例えば、新メニュー登録モードに入った後、第1の動作実行部4Aは、“新メニューの登録ですね。そのメニューの名前はなんですか?”という質問をしている。これは、新メニュー登録モードにおいてスクリプト実行部4が生成用会話スクリプトの会話用ルールに従って発する定型質問文である。これに対してサービサーが“欲張りハンバーグステーキ定食です”と発話している。スクリプト実行部4は、この発話内容について特定のパターンマッチングを行い、パターンマッチングによって抽出した固有名詞などの品詞から、その後の対応を変化させる。例えば、上記の質問に対して“[形容詞][固有名詞][です]”のような構造の文章がサービサーの発話内容として入力された場合、スクリプト実行部4は[形容詞][固有名詞]の部分を新メニューの名称として解釈し、特定用途会話スクリプトに登録する。
【0032】
なお、
図3の例では、上記の質問に対して“[形容詞][固有名詞][です]”のような構造の文章がサービサーの発話内容として入力された場合、“[形容詞][固有名詞]”の部分を引用して、“頑張りハンバーグステーキ定食ですか?”という確認文のメッセージを返信している。これは、音声認識のミスで、“[形容詞][固有名詞]”の部分を誤認識している可能性があるからである。ここで、サービサーが“頑張りではなくて、欲張り、です。”と発話すると、スクリプト実行部4はその内容を解釈し、新メニューの名称が「頑張りハンバーグステーキ定食」ではなく「欲張りハンバーグステーキ定食」であることを正しく認識し、これを特定用途会話スクリプトに登録する。
【0033】
新メニューの名称の登録が終わると、次に値段を確認して登録するための会話に進む。さらに、値段の登録が終わると、次に新メニューの内容を確認して登録するための会話に進む。これらについても新メニューの名称の登録と同様に、質問と回答、確認などの会話を通じて新メニューの値段および内容を解釈し、特定用途会話スクリプトに順次登録していく。新メニューの名前、値段および内容が全て特定用途会話スクリプトに追加登録されると、新メニュー登録モードが終了する。
【0034】
ここでは、飲食店でお客からオーダーを取るための特定用途会話スクリプトに関して、特に新メニューを特定用途会話スクリプトに登録する際の処理例を説明したが、特定用途会話スクリプトについて編集可能な内容はこれに限定されない。すなわち、会話エンジンがお客と会話をする際に使用するメッセージの内容、お客からの発言内容に対して会話エンジンが応答すべき会話の方向性を判定する条件判定を含む会話フローの内容、会話の中で行うべき特定用途に応じた種々の動作の実行命令の内容などを編集することも可能である。生成用会話スクリプトには、これらの編集を行う際に用いるメッセージセット、会話用ルールセットおよび編集用ルールセットも記述されている。
【0035】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、人間の発話内容を認識する発話認識部2と、特定用途会話スクリプトを生成する際に使用する生成用会話スクリプトに従って、発話認識部2により認識された発話内容に応じた動作を実行するスクリプト実行部4とを備え、認識された発話内容に応じて、人間との会話を行う第1の動作と、特定用途会話スクリプトの記述を編集する第2の動作との何れかを選択的に実行するようにしている。
【0036】
このように構成した本実施形態によれば、生成用会話スクリプトにより実行される第1の動作によって人間と会話スクリプト生成装置10(スクリプト実行部4)とが会話をしながら、生成用会話スクリプトにより実行される第2の動作によって人間の発話内容に基づいて特定用途会話スクリプトの記述を編集し、当該特定用途会話スクリプトを生成することができる。これにより、会話スクリプトの生成に関する専門の知識や経験を有しないサービサーでも、スクリプト実行部4により提供される会話を通じて簡単に特定用途会話スクリプトを生成することができる。
【0037】
また、本実施形態では、発話認識部2により認識された発話内容を、スクリプト実行部4に対する入力に適した内容に置換する発話内容置換部3を備え、発話内容置換部3により置換された発話内容に応じて生成用会話スクリプトの動作を実行するようにしている。これにより、サービサーが発する言葉の揺れを吸収して会話スクリプト生成装置10との会話がより成立しやすい状態とすることができる。
【0038】
なお、上記実施形態において、スクリプト実行部4は、メッセージセット、会話用ルールセットおよびコマンドセットを含めて特定用途会話スクリプトの全てを最初から生成することが可能である。あるいは、会話用ルール、コマンド、基本的なメッセージなどの骨格となる基本部分の特定用途会話スクリプトを特定用途会話スクリプト記憶部12にあらかじめ記憶しておいて、スクリプト実行部4がサービサーとの会話を通じて、基本部分の特定用途会話スクリプトを編集することによって最終系の特定用途会話スクリプトを完成させるようにしてもよい。
【0039】
上記実施形態では、生成用会話スクリプトと特定用途会話スクリプトとが別の会話スクリプトになっていて、それぞれが生成用会話スクリプト記憶部11および特定用途会話スクリプト記憶部12に記憶されている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、特定用途会話スクリプトが、特定用途の会話を行う際に使用される会話用スクリプトと、当該会話用スクリプトを編集する際に使用される生成用会話スクリプトとを含むようにしてもよい。この場合、スクリプト実行部4は、発話認識部2により認識された発話内容(発話内容置換部3により置換された発話内容)に応じて、会話用スクリプトに従って動作を実行する会話モードと、生成用会話スクリプトに従って動作を実行する編集モードとの何れかを選択的に切り替えて動作を実行するようにしてもよい。このようにすれば、特定用途会話スクリプトを会話モードで活用してサービスを提供している現場において、必要に応じて編集モードに切り替えて会話用スクリプトの部分の編集を行うことができる。
【0040】
また、上記実施形態では、特定用途会話スクリプトが会話エンジンの動作を制御して提供する特定用途の会話として、ある特定の目的をもって行うサービスに伴う会話を例示したが、本発明はこれに限定されず、あらゆる会話を対象とすることが可能である。不在の相手に伝言を残す際に人間が会話エンジンとの間で行う会話や、人間がアイデアを醸成する際に行う自問自答を会話エンジンを相手として行うような会話などにも適用することが可能である。
【0041】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 音声入力部
2 発話認識部
3 発話内容置換部
4 スクリプト実行部
5 音声出力部
10 会話スクリプト生成装置
11 生成用会話スクリプト記憶部
12 特定用途会話スクリプト記憶部