(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175644
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】浴槽システム及び入出槽判定方法
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20231205BHJP
G01F 23/18 20060101ALI20231205BHJP
F24H 15/30 20220101ALI20231205BHJP
F24H 15/246 20220101ALI20231205BHJP
F24H 15/269 20220101ALI20231205BHJP
F24H 15/10 20220101ALI20231205BHJP
【FI】
F24H15/196 301Z
G01F23/18
F24H15/30
F24H15/246
F24H15/269
F24H15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082390
(22)【出願日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2022087503
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】北村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】星島 弘明
【テーマコード(参考)】
2F014
3L024
【Fターム(参考)】
2F014AC01
2F014BA03
3L024CC08
3L024CC17
3L024EE12
3L024GG12
3L024HH02
(57)【要約】
【課題】入出槽の誤判定を抑制できる浴槽システムを提供する。
【解決手段】浴槽システム100は、浴槽10と、浴槽に設けられ、浴槽の水位Lを測定可能な水位センサ20と、制御装置30と、を含む。制御装置は、水位が、あらかじめ設定された安定時間T1thを超えて安定している場合に、水位を基準水位Lrとして記憶し、水位Lと基準水位Lrとの水位差が、あらかじめ設定された水位差閾値Lthを超えた場合であって、かつ、水位Lの加速度Laの絶対値が、あらかじめ設定された加速度閾値Gthを超えた場合に、入槽と判定し、入槽と判定した後に、水位差がほぼ無くなった場合であって、かつ、水位Lの加速度の絶対値が、加速度閾値を超えた場合に、出槽と判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、前記浴槽に設けられ、前記浴槽の水位を測定可能な水位センサと、制御装置と、を含む浴槽システムであって、
前記制御装置は、
前記水位が、あらかじめ設定された安定時間を超えて安定している場合に、前記水位を基準水位として記憶し、
前記水位と前記基準水位との水位差が、あらかじめ設定された水位差閾値を超えた場合であって、かつ、前記水位の加速度の絶対値が、あらかじめ設定された加速度閾値を超えた場合に、入槽と判定し、
前記入槽と判定した後に、前記水位差がほぼ無くなった場合であって、かつ、前記水位の加速度の絶対値が、前記加速度閾値を超えた場合に、出槽と判定する
浴槽システム。
【請求項2】
前記水位が前記安定時間を超えて安定している場合とは、前記水位が前記安定時間を超えて鉛直方向に所定の範囲内にある場合である
請求項1に記載の浴槽システム。
【請求項3】
前記水位差がほぼ無くなった場合とは、時間に対する前記水位差が±7mmとなった場合である
請求項1又は請求項2に記載の浴槽システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記水位差が、前記水位差閾値を超えた後であって、前記水位が前記基準水位以下になった場合に、前記出槽と判定する
請求項1に記載の浴槽システム。
【請求項5】
前記入槽による前記水位の変化量及び前記出槽による前記水位の変化量のうち大きくない方を、安定水位変化量と規定したときに、
前記制御装置は、あらかじめ設定された基準観測時間内において、
前記水位の加速度がほぼ無く、前記水位の変化量が前記安定水位変化量より小さく、かつ、前記水位が上昇又は降下し続けている場合に、前記基準観測時間終了時における前記水位差を、前記基準水位に加えた値を、前記基準水位として記憶する
請求項1又は請求項2に記載の浴槽システム。
【請求項6】
浴槽の水位が、あらかじめ設定された安定時間を超えて安定している場合に、前記水位を基準水位として記憶する記憶工程と、
前記水位と前記基準水位との水位差が、あらかじめ設定された水位差閾値を超えた場合であって、かつ、前記水位の加速度の絶対値が、あらかじめ設定された加速度閾値を超えた場合に、入槽と判定する第1判定工程と、
前記第1判定工程の後で、前記水位差がほぼ無くなった場合であって、かつ、前記水位の加速度の絶対値が前記加速度閾値を超えた場合に、出槽と判定する第2判定工程と、を含む
入出槽判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽システム及び入出槽判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅内での事故で亡くなる人のうち、溺死の割合が多い。介護現場では、施設内、住宅内によらず、入浴中の被介護者は、人により監視される場合が多い。人による監視は時間的にも労力的にも限界にきている。そこで、センサ等を用いて入浴中の被介護者を監視するシステムが鋭意検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、浴槽内の圧力変化から水位を検出する水位センサと、浴室内の人感センサにより、人の存否の有無を検知する風呂給油装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、荷重計を浴槽下に設置することで、人が浴槽に入槽したか否かを判別する手法が提案されている。
【0005】
また、特許文献3では、浴槽内の水位と入浴者のバイタル情報に基づいて入浴体積を算出して、変化量に基づいて入浴又は退浴を判断するセンサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-002643号公報
【特許文献2】特開2019-158289号公報
【特許文献3】特開2019-203621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のシステムでは、人が浴槽に入槽していないのに入槽と判定したり、人が浴槽から出槽していないのに出槽と判定したりする、入出槽の誤判定のリスクがあった。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、入出槽の誤判定を抑制できる浴槽システム及び入出槽判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
(1)本発明の一態様に係る浴槽システムは、浴槽と、浴槽に設けられ、前記浴槽の水位を測定可能な水位センサと、制御装置と、を含む浴槽システムであって、前記制御装置は、前記水位が、あらかじめ設定された安定時間を超えて安定している場合に、前記水位を基準水位として記憶し、前記水位と前記基準水位との水位差が、あらかじめ設定された水位差閾値を超えた場合であって、かつ、前記水位の加速度の絶対値が、あらかじめ設定された加速度閾値を超えた場合に、入槽と判定し、入槽と判定した後に、前記水位差がほぼ無くなった場合であって、かつ、前記水位の加速度の絶対値が、前記加速度閾値を超えた場合に、出槽と判定する。
【0010】
ここで言う入槽とは、人が浴槽の外側から内側に移動することを意味する。出槽とは、人が浴槽の内側から外側に移動することを意味する。
【0011】
(2)上記(1)において、前記水位が前記安定時間を超えて安定している場合とは、前記水位が前記安定時間を超えて鉛直方向に所定の範囲内にある場合であってもよい。
(3)上記(1)又は(2)において、前記水位差がほぼ無くなった場合とは、時間に対する前記水位差が±7mmとなった場合であってもよい。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれか一において、前記制御装置は、前記水位差が、前記水位差閾値を超えた後であって、前記水位が前記基準水位以下になった場合に、前記出槽と判定してよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれか一において、前記入槽による前記水位の変化量及び前記出槽による前記水位の変化量のうち大きくない方を、安定水位変化量と規定したときに、前記制御装置は、あらかじめ設定された基準観測時間内において、前記水位の加速度がほぼ無く、かつ、前記水位の変化量が前記安定水位変化量より小さく、かつ、前記水位が上昇又は降下し続けている場合に、前記基準観測時間における前記水位差を、前記基準水位に加えた値を、前記基準水位として記憶してよい。
【0013】
(6)本発明の一態様に係る入出槽判定方法は、浴槽の水位が、あらかじめ設定された安定時間を超えて安定している場合に、前記水位を基準水位として記憶する記憶工程と、前記水位と前記基準水位との水位差が、あらかじめ設定された水位差閾値を超えた場合であって、かつ、前記水位の加速度の絶対値が、あらかじめ設定された加速度閾値を超えた場合に、入槽と判定する第1判定工程と、前記第1判定工程の後で、前記水位差がほぼ無くなった場合であって、かつ、前記水位の加速度の絶対値が前記加速度閾値を超えた場合に、出槽と判定する第2判定工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、入出槽の誤判定を抑制できる浴槽システム及び入出槽判定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】水位及び水位の加速度の時間変化を示すグラフである。
【
図3】人が入槽していない状態における水位を示す説明図である。
【
図4】人が入槽して半身浴している状態における水位を示す説明図である。
【
図5】人が半身浴している状態から全身浴している状態に姿勢を変えた場合における水位を示す説明図である。
【
図6】人が全身浴している状態から半身浴している状態に姿勢を変えた場合における水位を示す説明図である。
【
図7】人が出槽した状態における水位を示す説明図である。
【
図8】人が入槽していない状態における水位及び水位の加速度を示すグラフである。
【
図9】人が入浴中に、差し湯をしている状態における水位及び基準水位の時間変化を示すグラフである。
【
図10】基準水位の更新について説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る浴槽システム100について、図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る浴槽システム100の説明図である。
図2は、水位L及び水位Lの加速度Laの時間変化を示すグラフである。
【0017】
(浴槽システム)
一実施形態に係る浴槽システム100は、
図1に示すように、框面10aを有する浴槽10と、浴槽10に設けられ、水位Lを測定可能な水位センサ20と、制御装置30と、を含んでいる。
【0018】
(浴槽)
浴槽10は、水を溜めることができるように下方に向かって窪んだ空間を形成する内槽を有している。内槽は、底面と、底面の周縁から上方に延びる内側面と、を有している。
浴槽10は、浴槽10に水を満たした状態における水面と同等の高さに位置する框面10aを有している。浴槽10は、上方に向かって開口する有底筒状に形成されている。
なお、以下、特に説明のない限り、水位Lは、鉛直方向における浴槽10(内槽)の底面から水面までの距離で表される。例えば、浴槽10に水が全くない場合、水位Lはゼロであり、水面が框面10aの高さにある場合における水位L(浴槽10の深さ)は450mmである。
【0019】
(水位センサ)
水位センサ20は、浴槽10の水位Lを測定可能なセンサである。水位センサ20は、例えば、水圧の変化に応じて変化する電圧を検出する圧力式水位センサであってよい。水位センサ20は、浴槽10の内槽に設置できる。なお、水位Lの変化から、水位Lの速度又は水位Lの加速度Laを、水位センサ20で演算してもよく、制御装置30で演算してもよい。後述する平均の水位Lについても、同様である。
【0020】
(制御装置)
制御装置30は、制御部を含んでいる。制御部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部は、プロセッサがプログラムを実行することによって機能する。制御部の機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてよい。
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されてよい。コンピュータが読み取り可能な記録媒体とは、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えば、SSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク、半導体記憶装置等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。プログラムは、浴槽システム100を用いた入出槽判定方法をコンピュータに実行させるプログラムを含んでよい。
【0021】
詳細には、制御装置30は、記憶部31と判定部32と報知部33とを備えている。
【0022】
記憶部31は、制御に要する、あらかじめ設定される値(加速度閾値Gth、安定時間T1th、水位差閾値Lth、基準観測時間T2th)を記憶する。
【0023】
加速度閾値Gthは、人が入槽又は出槽したと判断するための条件となる水位Lの加速度Laの基準となる距離である。加速度閾値Gthは、正の値をとる。例えば、加速度閾値Gthは、6mV/2s2(2mm/s2。すなわち、例えば、1mmが1.5mVに該当)である。
なお、水位センサ20で検出した電圧値は水位Lにほぼ比例するので、以下、例えば、1.5mVを1mmと読み替えてもよい。例えば、水位センサ20の検出値が100mV増えることは、水位Lが67mm高くなることを意味する。
【0024】
加速度閾値Gthは、
図2に示すように、人が入槽する際に想定される水位Lの加速度Laのプラスの第1ピークa1の絶対値より小さい。
加速度閾値Gthは、人が入槽する際に想定される水位Lの加速度Laのマイナスの第2ピークa2の絶対値より小さい。
加速度閾値Gthは、人が出槽する際に想定される水位Lの加速度Laのマイナスの第7ピークa7の絶対値より小さい。
加速度閾値Gthは、人が出槽する際に想定される水位Lの加速度Laのプラスの第8ピークa8の絶対値より小さい。
【0025】
安定時間T1thは、水位Lが、例えば、±13mmの範囲、さらに好ましくは±7mmの範囲、より好ましくは±3mmの範囲で、大きく上下せずに安定している状態にあると判断するための基準となる最短の時間である。
安定時間T1thは、例えば、10秒に設定される。
【0026】
水位差閾値Lthは、人が入槽又は出槽したと判断するための条件となる水位Lの変化量の基準となる距離である。人が入槽又は出槽する際に想定される水位Lの変化量より小さめに設定される。人が入槽又は出槽する際に想定される水位Lの変化量は、例えば、標準と比べて小さい体格の人が全身浴をしている状態においてその人が押し退けた浴槽10内の水の容積に対応するその浴槽10内の水位Lの変化量であってよい。
水位差閾値Lthは、正の値をとる。水位差閾値Lthは、例えば、50mV(33mm)である。
【0027】
基準観測時間T2thは、水位Lが、安定した速度で上昇又は降下している状態にあると判断するための基準となる最短の時間である。基準観測時間T2thは、例えば、10秒である。
【0028】
例えば、判定部32は、0.2秒毎に水位センサ20の測定結果を検出する。そして、判定部32は、10回の検出結果を平均して、浴槽10の水位Lを測定する。すなわち、この例では、判定部32は、(0.2秒×10)である2秒毎に、浴槽10の水位L(平均の水位L)を算出する。
以下で言う水位Lには、0.2秒毎に検出される水位Lではなく、平均の水位Lを用いることが好ましい。以下で言う水位Lの速度及び水位Lの加速度Laを演算する際には、0.2秒毎に検出される水位Lではなく、平均の水位Lを用いることが好ましい。特許請求の範囲における水位として、平均の水位Lを用いることが好ましい。
【0029】
判定部32は、
図2に示すように、水位Lが安定時間T1thを超えて安定している場合に、水位Lを基準水位Lrとして記憶する。ここで言う水位Lが安定しているとは、水位Lが鉛直方向に所定の範囲内にあることを意味する。例えば、所定の範囲とは、±13mmの範囲(鉛直方向に27mmの範囲)、好ましくは±7mmの範囲、より好ましくは±3mmの範囲を意味する。
水位Lが安定時間T1thを超えて安定していることを、例えば10秒である安定時間T1thの開始時と終了時との、時間に対する水位Lの傾きにより判断してもよい。
【0030】
例えば、判定部32(水位センサ20)は、連続して算出された2つの平均の水位Lから水位Lの速度を演算する。ここで言う水位Lの速度とは、単位時間当たりの平均の水位Lの変位の変化率であって、平均の水位Lの変位を時間で1階微分した値である。
例えば、判定部32は、連続して演算された2つの水位Lの速度から水位Lの加速度Laを演算する。ここで言う水位Lの加速度Laとは、単位時間当たりの水位Lの速度の変化率であって、平均の水位Lの変位を時間で2階微分した値である。
【0031】
ここで、水位Lと基準水位Lrとの差を、水位差ΔLと規定する。より詳しくは、水位差ΔLは、水位Lから基準水位Lrを引いた値(L-Lr)である。水位差ΔLは、正の値、0、負の値のいずれもとり得る。水位差ΔLは、基準水位Lrから水位Lを引いた値(Lr-L)であってもよい。
判定部32は、水位差ΔLが水位差閾値Lthを超えた場合であって、かつ、水位Lの加速度Laの絶対値が加速度閾値Gthを超えた場合に、入槽とを判定する。なお、水位Lの加速度Laがほぼ0以上であると分かっている場合等には、水位Lの加速度Laの絶対値は、水位Lの加速度Laでもよい。
【0032】
例えば、浴槽10が満水の状態(水面が框面10aに一致している状態)の状態で入槽しても、水位Lは水の表面張力による分しか増えない。このため、入槽を判定し難い。
体格の小さい人が入槽した場合に、水位Lの加速度Laの上限がうまく測定できない対策として、水位Lの加速度Laの絶対値を用いることが好ましい。浴槽10が満水の状態から入槽等して水がオーバーフロー(浴槽10から水が溢れ出ること)した後は、水位Lが低くなりがちである。このため、水位Lが高くなった瞬間に、水位Lの加速度Laが、必ず加速度閾値Gthを超えた値として演算されるようにしている。
【0033】
判定部32は、入槽と判定した後に、水位差ΔLが、ほぼ無くなった場合であって、かつ、水位Lの加速度Laの絶対値が、加速度閾値Gthを超えた場合に、出槽と判定する。
ここで言う水位差ΔLがほぼ無くなった場合とは、例えば、時間に対する水位差ΔLが±7mm(水位センサ20が検出する電圧値で±20mV)となった場合を意味する。
【0034】
報知部33は、水位Lの加速度Laの絶対値が加速度閾値Gthを超えた場合に、報知を行う報知部33を備えてよい。これにより、人が入槽又は出槽したことを本人又は外部に知らせることができる。よって、被介護者等、浴槽10を利用する人は、直接的に監視されなくてよいので、プライベートを確保しつつ、見守られながら、安全に入浴できる。
なお、報知の方法は、例えば、音、表示等であってよい。報知の手段は、例えば、浴槽システム100に接続された通信手段を介した、スピーカ又はディスプレイ等であってよい。なお、報知部33は、判定部32での入槽判定から所定の時間出槽判定がない場合に、外部に報知してもよい。
【0035】
(入出槽判定方法)
次に、浴槽システム100を用いた入出槽判定方法を説明する。
一実施形態に係る入出槽判定方法は、記憶工程と、第1判定工程と、第2判定工程と、を含む。
記憶工程では、浴槽10の水位Lが安定時間T1thを超えて安定している場合に、水位Lを基準水位Lrとして記憶する。
第1判定工程では、記憶工程の後で、水位差ΔLが水位差閾値Lthを超えた場合であって、かつ、水位Lの加速度Laの絶対値が加速度閾値Gthを超えた場合に、入槽と判定する。
第2判定工程では、第1判定工程の後で、水位差ΔLがほぼ無くなった場合であって、かつ、水位Lの加速度Laの絶対値が加速度閾値Gthを超えた場合に、出槽と判定する。
【0036】
次に、入出槽判定方法について、浴槽10への人の入槽から出槽までの流れに沿って、水位L及び水位Lの加速度Laの変化と浴槽システム100の作用に着目して、一例を挙げて説明する。
図3は、人が入槽していない状態における水位Lを示す説明図である。
図4は、人が入槽して半身浴している状態における水位Lを示す説明図である。
図5は、人が半身浴している状態から全身浴している状態に姿勢を変えた場合における水位Lを示す説明図である。
図6は、人が全身浴している状態から半身浴している状態に姿勢を変えた場合における水位Lを示す説明図である。
図7は、人が出槽した状態における水位Lを示す説明図である。なお、
図3から
図7において、水位センサ20及び制御装置30の図示は省略されている。
【0037】
あらかじめ、浴槽システム100の記憶部31に、水位差閾値Lthとして、例えば、40mVを記憶しておく。加速度閾値Gthとして、例えば、8mV/2s2を記憶しておく。
【0038】
(1)まず、
図3に示すように、浴槽10に湯はりする(水を溜める)。
浴槽システム100は、水位センサ20で測定した水位Lを、随時、例えば、2秒毎に取得している。
この際、
図2において矢印Aで示すように、水位Lは、1250mV近傍で安定している。加速度Laは、ゼロ近傍で安定している。基準水位Lrは、水位Lが安定時間T1thを超えて安定している場合、水位Lと同じ1250mVとなる。
【0039】
(2)次に、
図4に示すように、人が浴槽10内に入槽する。なお、ここでは、人は、半身浴している状態である。
すると、
図2において矢印Bで示すように、水位Lは、1330mV程度まで、人が入槽したことで押し退けられた水の容積分上昇する。加速度Laは、水位Lの上昇に伴って第1ピークa1まで上昇し、その後、第2ピークa2まで降下した後、上昇及び降下を繰り返しながらゼロ近傍に漸近していき、ゼロ近傍で安定する。基準水位Lrは、1250mVを維持する。
【0040】
ここで、浴槽システム100(制御装置30の判定部32)は、水位差ΔL(80mV(53mm))が、あらかじめ設定された水位差閾値Lth(40mV)を超えており、かつ、水位Lの加速度Laの絶対値(14mV/2s2)が、あらかじめ設定された加速度閾値Gth(8mV/2s2)を超えているので、入槽又は出槽と判定する。ここでは、水位差ΔLがプラスであるので、入槽と判定する。(入槽判定)
浴槽システム100(制御装置30の報知部33)は、判定部32で入槽と判定されると、入槽したことを示す情報を、外部に報知してもよい。
【0041】
(3)次に、
図5に示すように、人が半身浴している状態から全身浴している状態に姿勢を変える。
すると、
図2において矢印Cで示すように、水位Lは、1330mV程度から1350mV程度まで、人が姿勢を変えたことで押し退けられた水の容積分上昇する。
【0042】
(4)次に、
図6に示すように、人が全身浴している状態から半身浴している状態に姿勢を変える。
すると、
図2において矢印Dで示すように、水位Lは、1350mV程度から1330mV程度まで、人が姿勢を変えたことで水面より上方に抜けた人体の容積に対応する水の容積分降下する。基準水位Lrは、1250mVを維持する。
ここで、水位差ΔL(100mV)は、あらかじめ設定された水位差閾値Lth(40mV)を超えている。しかし、水位Lは、基準水位Lr(1250mV)を下回っていない。よって、浴槽システム100(制御装置30の判定部32)は、入槽又は出槽と判定する条件を満たしていないため、出槽と判定しない。
【0043】
(5)次に、
図7に示すように、人が浴槽10外に出槽する。
すると、
図2において矢印Eで示すように、水位Lは、1330mV程度から基準水位Lrより僅かに低い1250mV程度まで、降下する。加速度Laは、水位Lの降下に伴って第7ピークa7まで降下し、その後、第8ピークa8まで上昇した後、降下及び上昇を繰り返しながらゼロ近傍に漸近していき、ゼロ近傍で安定する。基準水位Lrは、1250mVを維持する。
ここで、浴槽システム100(制御装置30の判定部32)は、水位差ΔL(80mV)が水位差閾値Lth(40mV)を超えており、かつ、水位Lの加速度Laの絶対値(14mV/2s
2)が加速度閾値Gth(8mV/2s
2)を超えており、かつ、基準水位Lr(1250mV)に5mVを加えた値を下回っているため、出槽と判定する。ここでは、水位差ΔLがマイナスであるので、出槽と判定する。(出槽判定)
浴槽システム100(制御装置30の報知部33)は、判定部32で出槽と判定されると、出槽したことを示す情報を、外部に報知してもよい。
【0044】
(出槽判定)
次に、浴槽システム100による出槽判定について説明する。
出槽判定には、より入出槽の誤判定を抑制するため、上述の出槽判定の判定アルゴリズムに加えて、次のようなアルゴリズムを条件に付加できる。
制御装置30は、水位差ΔLが水位差閾値Lthを超えた後であって、水位Lが基準水位Lrに以下になった場合に、出槽と判定してよい。
【0045】
(湯はり中の説明)
次に、
図8を用いて、人が入槽していない状態で湯はりする場合の水位L及び水位Lの加速度Laと時刻tとの関係を説明する。
図8は、人が入槽していない状態における水位L及び水位Lの加速度Laを示すグラフである。
図8に示すように、人が入槽していない状態において、浴槽10に湯はりされる水の水位Lは、通常、一定の安定した速度を保って上昇する。この際、加速度Laは、ゼロ近傍のまま、ほとんど変化しない。したがって、人が入槽していない状態において、湯はりをする際、水位Lと基準水位Lrとの水位差ΔLが水位差閾値Lthを超えても、加速度Laの絶対値が加速度閾値Gthを超えないので、入槽とは判定しない。
【0046】
(入槽中における差し湯の説明)
次に、
図9を用いて、人が入槽してから出槽する間(入浴中)に、差し湯(注水)をする場合の水位L及び基準水位Lrと時刻tとの関係を説明する。
図9は、人が入浴中に、差し湯をしている状態における水位L及び基準水位Lrの時間変化を示すグラフである。
図9において矢印Gで示すように、水位Lが安定している場合、制御装置30は、この水位Lを基準水位Lrとして設定する。
次に、浴槽10に、人が入槽すると、矢印Hで示すように、水位Lが上昇する。
ここで、人が入浴している状態で差し湯をすると、矢印Jで示すように、通常、水位Lが安定した速度で上昇する。
【0047】
ここで、入槽による水位Lの変化量及び出槽による水位Lの変化量のうち大きくない方を、安定水位変化量と規定する。例えば、安定水位変化量は、20mV(20mm)である。
この際、矢印Jで示すように、制御装置30は、基準観測時間T2th内において、水位Lの加速度Laがほぼ無く、水位Lの変化量が安定水位変化量より小さく、かつ、水位Lが上昇又は降下し続けている場合に、矢印Nで示すように、基準観測時間T2th終了時における水位差ΔLを、基準水位Lrに加えた値(基準水位Lr+水位差ΔL)を、基準水位Lrとして記憶し、基準水位Lrを更新してもよい。ここで言う水位Lの加速度Laがほぼ無いとは、水位Lの加速度Laが、例えば、±1mV/2s2(±0.33mm/s2)の範囲内に収まっていることを意味する。
【0048】
次に、浴槽10から、人が出槽すると、矢印Kで示すように、水位Lが降下する。
この際、水位Lは、更新された基準水位Lrまで降下する。したがって、制御装置30は、水位Lが更新された基準水位Lrまで降下したことを条件として、出槽と判定できるので、更新前の基準水位Lrまで水位Lが降下せずに、出槽と判定しないことを抑制できる。このように、差し湯をした場合のように、入浴中の人の姿勢の変化に依る水位Lの変化とは別の要因で水位Lが変化しても、基準水位Lrを更新することで、入出槽の誤判定を抑制できる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の浴槽システム100及び出槽判定方法では、水位Lの加速度Laの変化により、入槽又は出槽があったことを判定する。水位Lの加速度Laは、浴槽10内に張られた水位Lの瞬間的な変化量を表しており、浴槽10に貯められた水に浸かっている人体の容積の時間当たりの変化に相関性がある。このため、水位Lの加速度Laは、人体が水に全く浸かっていない状態から水に浸かっている状態になったり、人体が水に浸かっている状態から完全に離脱する状態になったりする場合、すなわち、人が入槽したり出槽したりする際に、比較的大きく変化する。
【0050】
浴槽システム100及び出槽判定方法では、水位差ΔLが水位差閾値Lthを超え、水位Lの加速度Laの絶対値が加速度閾値Gthを超えた場合に、入槽と判定するため、人が浴槽10内にいない状態で浴槽10にお湯を足す差し湯をする際のように、浴槽10の水位Lが大きく変化したりする場合に、人が浴槽10に入槽していないのに入槽と判定しないようにできる。また、入槽と判定した後に、水位差ΔLがほぼ無くなった場合であって、かつ、水位Lの加速度Laの絶対値が加速度閾値Gthを超えた場合に、出槽と判定するため、人が浴槽10内にいる状態で浴槽10内に貯められた水を排水する際のように、人が浴槽10から出槽していないのに出槽と判定しないようにできる。よって、入出槽の誤判定を抑制できる。
【0051】
出槽判定において、制御装置30は、水位差ΔLが水位差閾値Lthを超えた後であって、水位Lが基準水位Lrに以下になった場合に、出槽と判定する場合がある。この場合には、人が浴槽10内にいる状態で姿勢を変えたり、人が浴槽10内にいる状態で排水したりする際に想定されるような、水位Lが基準水位Lr以下にならなかった場合に、出槽と判定しないようにできる。
【0052】
制御装置30は、基準観測時間T2th内において、水位Lの加速度Laがほぼ無く、水位Lの変化量が安定水位変化量より小さく、かつ、水位Lが上昇又は降下し続けている場合に、基準観測時間T2th終了時における水位差ΔLを、基準水位Lrに加えた値を、基準水位Lrとして記憶する場合がある。この場合には、差し湯又は浴槽10内の水の排水を検出することができる。
【0053】
(基準水位Lrの更新)
次に、基準水位Lrの更新について、
図10を用いて説明する。
図10は、基準水位Lrの更新について説明するグラフである。
図10で矢印Pで示すように、制御装置30は、水位Lが安定時間T1thを超えて安定している(水位Lの変化が所定の範囲になっている)ので、その水位L(水位Lの時間平均)を基準水位Lrとして記憶する。
次に、矢印Qで示すように、水位Lが急上昇する場合、基準観測時間T2thを超えて上昇していないので、基準水位Lrは更新されない。
【0054】
そして、矢印Rで示すように、制御装置30は、基準観測時間T2th内において、水位Lの加速度Laがほぼ無く、水位Lの変化量が安定水位変化量より小さく、かつ、水位Lが上昇又は降下し続けている場合に、基準観測時間T2th終了時における水位差ΔLを、基準水位Lrに加えた値を、基準水位Lrとして記憶する。ここで言う水位Lが上昇又は降下し続けている場合とは、水位センサ20から水位Lを2秒ごとに取得する場合には、取得した水位Lの連続する5点が直線状になる場合を意味する。
【0055】
具体的には、
図10に示すように、制御装置30は、水位Lが、安定した速度で、あらかじめ設定された基準観測時間T2thである10秒間を超えて上昇した場合、10秒間で上昇した水位差ΔL1を、初期の基準水位Lr0に加えて基準水位Lrを更新し、基準水位Lr1にする。そして、継続して、水位Lが、安定した速度で上昇する場合、上昇した水位差ΔL2を、基準水位Lr1に加えて基準水位Lr2にする。このようにして、制御装置30は、基準水位Lrを更新する。よって、差し湯したり、排水したりする場合であっても、基準水位Lrが更新されるので、入出槽の誤判定を抑制できる。
【0056】
なお、本発明の技術的範囲は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 浴槽
10a 框面
20 水位センサ
30 制御装置
31 記憶部
32 判定部
33 報知部
100 浴槽システム
Gth 加速度閾値
L 水位
La 加速度
Lr、Lr0、Lr1,Lr2 基準水位
Lth 水位差閾値
T1th 安定時間
T2th 基準観測時間
ΔL、ΔL1、ΔL2 水位差