(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175664
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】RT-PCRを用いてin situ標的増幅と空間固有分子識別子(SUMI)同定とを組み合わせた方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20231205BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20231205BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023087766
(22)【出願日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】22176171
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ピナード
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ボズィオ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロートマン
(72)【発明者】
【氏名】細野 正裕
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】RNAまたは一本鎖DNA内の標的配列の空間位置および配列情報を獲得する方法の提供。
【解決手段】逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって増幅した第1のオリゴヌクレオチドを鋳型としてRT-PCRにより第2のオリゴヌクレオチドを増幅して第1及び第2のPCRハンドルとしての配列および標的配列を有する第3のオリゴヌクレオチドを得、第2のPCRハンドルに相補的な配列と、空間固有分子識別子(SUMI)としての配列を含む第4のオリゴヌクレオチドが提供され、第4のオリゴヌクレオチドのSUMIの配列を決定し、第4のオリゴヌクレオチドに相補的なヌクレオチドを鋳型として使用して、ポリメラーゼで前記第3のオリゴヌクレオチドを伸長させ、伸長させられた前記第3のオリゴヌクレオチド内へSUMIを組み込み、配列を決定し、伸長させられた前記第3のオリゴヌクレオチド内へSUMIを組み込むステップを含む方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのRNAまたは一本鎖DNA内の標的配列の空間位置および配列情報を獲得する方法であって、
a.前記少なくとも1つのRNAまたは一本鎖DNAの相補的区画に第1のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、前記第1のオリゴヌクレオチドに第1のPCRハンドルとしての配列が提供される、第1のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップ、
b.逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、前記少なくとも1つのRNAまたは一本鎖DNAを鋳型として使用して前記第1のオリゴヌクレオチドを増幅するステップ、
c.増幅された前記第1のオリゴヌクレオチドから前記少なくとも1つのRNAまたは一本鎖DNAを除去するステップ、
d.増幅された前記第1のオリゴヌクレオチドの相補的区画に第2のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、前記第2のオリゴヌクレオチドに第2のPCRハンドルとしての配列が提供される、第2のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップ、
e.逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、増幅された前記第1のオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して前記第2のオリゴヌクレオチドを増幅し、それにより、第1および第2のPCRハンドルとしての配列および前記標的配列を有する第3のオリゴヌクレオチドを得るステップ、
f.増幅された前記第2のオリゴヌクレオチドから前記第3のオリゴヌクレオチドを除去するステップ、
g.サンプル上での専用の空間位置で第4のオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、前記第4のオリゴヌクレオチドは、前記第2のPCRハンドルに相補的な配列と、少なくとも2つの核酸を有する空間固有分子識別子(SUMI)としての少なくとも1つの配列とをそれぞれ含む複数のコンカテマーを有する、第4のオリゴヌクレオチドを提供するステップ、
h.前記第4のオリゴヌクレオチドの空間位置を決定するために、第1のシーケンシングステップにより前記第4のオリゴヌクレオチドの前記SUMIの配列を決定し、それにより、前記空間位置をSUMI配列とリンクするステップ、
i.前記第3のオリゴヌクレオチドを前記第2のPCRハンドルで前記第4のオリゴヌクレオチドの相補的配列に対してハイブリダイズさせるステップ、
j.前記第4のオリゴヌクレオチドに相補的なヌクレオチドを鋳型として使用して、ポリメラーゼで前記第3のオリゴヌクレオチドを伸長させ、それにより、伸長させられた前記第3のオリゴヌクレオチド内へ前記SUMIを組み込むステップ、
k.伸長させられた前記第3のオリゴヌクレオチドを脱ハイブリダイズし、第2のシーケンシングステップによって、伸長させられた前記第3のオリゴヌクレオチドの配列を決定するステップ、
l.伸長させられた前記第3のオリゴヌクレオチドの配列情報を、前記第1のシーケンシングステップで得られた空間位置の情報とリンクするステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記第4のオリゴヌクレオチドは、伸長させられた前記第3のオリゴヌクレオチドを制限酵素によってまたは化学的にセグメント化することを可能にする配列をさらに有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第4のオリゴヌクレオチドは、前記第2のPCRハンドルに相補的な配列および空間固有分子識別子(SUMI)としての少なくとも1つの配列を有する環状オリゴヌクレオチドのローリングサイクル増幅(RCA)により提供されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ローリングサークル増幅(RCA)は、光および/または熱により活性化されることと特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第1のシーケンシングステップは、伸長された前記第3のオリゴヌクレオチド内へ、前記SUMI配列を組み込んだ後に実施されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第3のオリゴヌクレオチドは、タンパク質を結合することが可能である抗原認識部分を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第3のオリゴヌクレオチドは、抗原認識部分がリンクされているバーコードタグ配列を有することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルの細胞をさらに単一細胞シーケンシングに供することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
in situシーケンシングの後に細胞を単一細胞シーケンシングに供することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、in vitroシーケンシングによる高密度空間分析のための組織片からハイブリダイゼーションおよび/または増幅により、RNAまたはDNAのターゲットキャプチャと組み合わせた空間固有分子識別(SUMI)を含むロロニーのシーケンシングおよびin situローカライゼーションのための方法に関する。シーケンシング法の変更は、タンパク質および代謝産物分子のローカライゼーションを可能にする。
【0002】
背景技術
パドロックオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズした核酸の短い部分を重合化する際に極めて好結果となることが証明されている。大抵のパドロックアプローチは、標的をcDNAへ逆転写することから始まる。
【0003】
パドロック法は、例えば、「Highly multiplexed subcellular RNA sequencing in situ」、Lee et al., Science. 2014 March 21; 343(6177): 1360-1363. doi:10.1126/science.1250212または「Efficient In Situ Detection of mRNAs using the Chlorella virus DNA ligase for Padlock Probe Ligation」Nils SchneiderおよびMatthias Meier; February 5, 2020 -Cold Spring Harbor Laboratory Pressに開示されている。
【0004】
ヒトDNA配列の標的多重増幅のための汎用アッセイは、Sujatha Krishnakumar et alにより公開され;PNASは2008年2月19日にレビューのために送付された。
【0005】
さらに、国際公開第2017143155号は、プールされた核酸ライブラリーを用いる細胞の多重改変およびその分析を開示し、国際公開第2018045181号は、蛍光in situシーケンシングによる検出のための核酸配列のライブラリーを生成する方法を開示している。
【0006】
公開されたパドロック法は、DNAまたはRNAのシーケンシングを可能にするが、シーケンシングされたDNAまたはRNAの起源の細胞内および組織内位置の空間情報が全く得られない。
【0007】
複数のmRNAについて単一細胞レベルで解像することを可能にする顕微鏡撮像は、転写物量およびローカライゼーションに関する貴重な情報を提供し、この情報は、組織不均一性、分子発生および疾患の治療を理解するために重要な要素である。
【0008】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)に基づく方法は、転写産物について組織切片中で直接標識し、空間情報をキャプチャすることを可能にする。しかしながら、使用することができるプローブの数は限られ、蛍光信号のオーバーラップがしばしば問題となる。さらに、共焦点顕微鏡の光学分解能の限界にしばしば到達し、したがって、同時に検出することができるプローブの数は減少する。SeqFISH+は、シーケンシャル蛍光in situハイブリダイゼーションアプローチであり、既に蛍光体で標識されたプローブを使用するのではなく、蛍光標識された二次プローブのための標的部位として機能するバーコード配列を含む転写産物特異的プローブを使用する。多様な標的特異的プローブは、プロービングのシーケンシャルラウンドの間にこれらのバーコードサイトに結合する二次プローブを使用して同定される。二次プローブにより検出されるプローブの量の制限により、制限された量が蛍光し、それにより信号を識別することができる。複数の分離された画像を集め、コンピューターにより集計して、高解像度機器顕微鏡を必要とせずに複合高解像度画像を作成する。
【0009】
しかしながら、このアプローチは、多数の遺伝子を同時に評価することを可能にするが、転写産物の配列情報をキャプチャしない。単一細胞RNAシーケンシング(scRNA-seq)に基づく他の方法は、全体のトランスクリプトームをプロファイルし、配列情報をキャプチャすることができる。しかしながら、組織または単一細胞レベルでのオリジナルの位置もしばしば失われる。単一細胞に近い分解能で配列情報および空間情報の両方をキャプチャする方法は、依然として困難な課題のままである。いくつかのアプローチは、FISSEQおよびBaristaSeq(約15の塩基の制限された読み取り長さでタスクを達成するための他のギャップ充填パドロックベースのアプローチ)を使用する。
【0010】
最近では、in situゲノムシーケンシング(IGS)が、サンプル内のゲノムを同時にシーケンシングかつ撮像する方法として記載されている。この方法は、A. C. Payne et al. Science 10.1126/science. aay3446 (2020)、(2020年12月31日に最初のオンラインリリース)により公開されたショートリードin situシーケンシング、次にアンプリコンの解離、PCRおよびペアエンドシーケンシングによるUMIを有する遺伝子配列と関連するアンプリコンのex situシーケンシングにより固有分子識別子(UMI)をローカライゼーションするワークフローを説明している。
【0011】
ごく最近では、「空間固有分子識別子(SUMI)を含むパドロックオリゴヌクレオチドを用いる標的RNAまたはc-DNA のin vitroシーケンシングとin situシーケンシングとを組み合わせた方法」が説明された(欧州特許第22154712.8号明細書)。この方法は、in situシーケンシング(SUMI)およびin vitroシーケンシング(SUMIおよび標的配列)の組合せによりパドロック中に組み込まれた標的配列の空間同定を説明する。標的配列およびSUMI配列は同じパドロックおよび結果として得られるロロニーの部分であるため、標的情報の密度は、細胞の領域内でin situでシーケンシングすることができるロロニーの数により制限される。以下の発明は、この制限を克服する。
【0012】
発明の概要
本発明の対象は、
少なくとも1つのRNAまたは一本鎖DNA内の標的配列の空間位置および配列情報を獲得する方法であって、
a.少なくとも1つのRNAまたは一本鎖DNAの相補的区画に第1のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、第1のオリゴヌクレオチドに第1のPCRハンドルとしての配列が提供される、第1のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップ、
b.逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、少なくとも1つのRNAまたは一本鎖DNAを鋳型として使用して第1のオリゴヌクレオチドを増幅するステップ、
c.増幅された第1のオリゴヌクレオチドから少なくとも1つのRNAまたは一本鎖DNAを除去するステップ、
d.増幅された第1のオリゴヌクレオチドの相補的区画に第2のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、第2のオリゴヌクレオチドに第2のPCRハンドルとしての配列が提供される、第2のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップ、
e.逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、増幅された第1のオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して第2のオリゴヌクレオチドを増幅し、それにより、第1および第2のPCRハンドルとしての配列および標的配列を有する第3のオリゴヌクレオチドを得るステップ、
f.増幅された第2のオリゴヌクレオチドから第3のオリゴヌクレオチドを除去するステップ、
g.サンプル上での専用の空間位置で第4のオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、第4のオリゴヌクレオチドは、第2のPCRハンドルに相補的な配列と、少なくとも2つの核酸を有する空間固有分子識別子(SUMI)としての少なくとも1つの配列とをそれぞれ含む複数のコンカテマーを有する、第4のオリゴヌクレオチドを提供するステップ、
h.第4のオリゴヌクレオチドの空間位置を決定するために、第1のシーケンシングステップにより第4のオリゴヌクレオチドのSUMIの配列を決定し、それにより、空間位置をSUMI配列とリンクするステップ、
i.第3のオリゴヌクレオチドを第2のPCRハンドルで第4のオリゴヌクレオチドの相補的配列に対してハイブリダイズさせるステップ、
j.第4のオリゴヌクレオチドに相補的なヌクレオチドを鋳型として使用して、ポリメラーゼで第3のオリゴヌクレオチドを伸長させ、それにより、伸長させられた第3のオリゴヌクレオチド内へSUMIを組み込むステップ、
k.伸長させられた第3のオリゴヌクレオチドを脱ハイブリダイズし、第2のシーケンシングステップによって、伸長させられた第3のオリゴヌクレオチドの配列を決定するステップ、
l.伸長させられた第3のオリゴヌクレオチドの配列情報を、第1のシーケンシングステップで得られた空間位置の情報とリンクするステップ
を含む、方法である。
【0013】
本発明の方法はさらに、サンプル内のタンパク質または代謝産物の空間位置を得るために使用することができる。タンパク質のローカライゼーションのために、第3のオリゴヌクレオチドは、第1および第2のPCRハンドルに接してバーコードタグを含む。バーコードタグは、タンパク質をコードする。第3のオリゴヌクレオチドは、タンパク質に結合する抗体にリンクされている。
【0014】
詳細な説明
少なくとも1つのRNAまたは一本鎖DNA鎖を有するサンプル中の標的配列の空間位置および配列情報を獲得する方法の全ての実施形態および変形態様は、空間的な単一細胞タンパク質発現のための方法においても適用することができる。
【0015】
好ましくは、空間固有分子識別子(SUMI)は、2~500bpを有する。
【0016】
標的配列は、少なくとも、一本鎖DNAおよびRNA標的について本発明の目的のaおよびbのステップで定義されたような第1のオリゴヌクレオチドのハイブリダイズした3’末端および第2のオリゴヌクレオチドのハイブリダイズした5’末端の核酸を含むが、RNAまたは一本鎖DNAとのハイブリダイゼーション後にギャップを充填するオリゴヌクレオチドの領域の配列を含んでいてもよい。
【0017】
この方法の別の実施形態では、第4のオリゴヌクレオチドは、環状オリゴヌクレオチドのローリングサークル増幅により生成されてよい。第4のオリゴヌクレオチドは、伸長させられた第3のオリゴヌクレオチドを制限酵素によって化学的にセグメント化することを可能にする配列を有していてもよい。
【0018】
本発明では、伸長させられた標的SUMI配列は、ステップf)での伸長させられた標的SUMI配列または伸長させられたバーコードタグSUMI配列の収集の前かつSUMIのin situシーケンシングまたはシーケンシャル蛍光in situハイブリダイゼーションによるロロニーの空間位置の決定の前もしくは後に、汎用のPCR反応により増幅されてよい。
【0019】
汎用PCR増幅に対する代替の実施形態として、伸長させられた標的SUMI配列または伸長させられたバーコードタグSUMI配列が、パドロックプローブ自体の部分であってよい。ここで、伸長させられた標的SUMI配列または伸長させられたバーコードタグSUMI配列の5’末端および3’末端は、SUMIロロニーのSUMI配列に相補的な領域5’および3’に結合して、それによりパドロックを生成する。SUMI配列のパドロックギャップ充填およびライゲーションの後に、標的配列は、SUMI配列にリンクされて、環を形成する。ギャップが充填されかつライゲーションされて環状鋳型を形成するパドロックプローブ(パドロックは、充填されることもできるが、このプロセスでさらにライゲーションされるのみであることもできる)は、パドロックのギャップ充填部分内のSUMIをコード化するために使用される。最終的に、環化されたパドロックプローブは、ローリングサークル増幅(RCA)のための鋳型として使用して、定義されたシーケンシングのために使用されるDNA鎖を生成してよい。
【0020】
本発明では、ワークフローは、生体分子の他のクラスについてSUMIシーケンシングにより空間ローカライゼーションを可能にするために変更することができる。ここでは、オリゴヌクレオチドが、生体分子バインダにリンクされる。オリゴヌクレオチドは、生体分子のバインダ(例えば、特定のタンパク質へのバインダとして特異的な抗体)をコードする配列(バーコードタグ)を含む。SUMI配列をSUMIロロニーのバーコードタグ配列とリンクさせた後、バインダにリンクされた生体分子についてのin situかつin vitroシーケンシングの空間マルチオミクス結果が得られる。
【0021】
本発明では、第4のオリゴヌクレオチドとしてのロロニーの形成前に、潜在的なデジタル病理イメージングプロセスにリンクすることができる外力(例えば光または熱)により開始することができる。
【0022】
本発明では、細胞を採取し、単一細胞シーケンス分析にかけてよい。
【0023】
本発明は、in vitroシーケンシングによって同定される標的核酸(SUMIおよび標的)の空間局在のための鋳型としてSUMIロロニーを使用することにより、in situシーケンシングまたはシーケンシャルin situハイブリダイゼーションからの空間分解能の制限を克服する方法を記載する。
【0024】
本発明の方法およびその実施形態を、図面を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】核酸分析のための高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)シーケンシングワークフローについてのオリゴヌクレオチドデザインを示す図である。
【
図2】核酸分析用の高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)シーケンシングワークフローを示す図である。
【
図3】タンパク質および代謝産物分析のための高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)シーケンシングワークフローを示す図である。
【
図4】高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)ハイブリダイゼーションのためのオリゴヌクレオチド設計および核酸、タンパク質または代謝産物分析のためのシーケンシングワークフローを示す図である。
【
図5】増幅されたプローブを含むSUMIの等温増幅を示す図である。
【
図6】SUMI配列により伸長させられた標的増幅産物のための鋳型として機能することができる環状オリゴヌクレオチドから生成された、in situでシーケンシングされたロロニーの例を示す図である。
【0026】
図1は、核酸分析のための高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)シーケンシングワークフローについてのオリゴヌクレオチドデザインを示す。(A)環状の第1の配列(SUMI配列の汎用配列5’)。(B)空間固有分子識別子(SUMI)配列(各環状分子についての固有配列)。(C)環状の第2の配列(SUMI配列の汎用配列3’)。(D)汎用ローリングサークル増幅用に使用されるプライミング領域。(E)ローリングサークル増幅の開始後に、ポリメラーゼにより伸長させられた核酸。(F)ローリングサークル増幅の数ラウンド後に生成されるロロニー。
【0027】
図2は、核酸分析用の高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)シーケンシングワークフローを示す。(A)SUMI環状核酸鋳型を、固定されかつ透過処理された組織切片に添加する。SUMI配列の汎用配列5’(1st)とSUMI配列の汎用配列3’(2nd)と空間的固有分子識別子(SUMI)とが、全てSUMI環状核酸鋳型の部分である。(B)SUMI環状核酸鋳型から生成されたロロニー。SUMI環状核酸鋳型分子からの配列を、ローリングサークル増幅後に鋳型配列の複数のコンカテマーに変換する。ロロニー(細胞の表示内で円で囲まれている)は、空間的に記録されているSUMI配列情報(例として1、2および3)を導き出すためにin situでシーケンシングされる。注:単一細胞および3つのSUMIロロニーだけが、説明のために示されている。(C)in situターゲットキャプチャは、オリゴヌクレオチドの標的特異的ペアを、固定されかつ透過処理された組織の切片に直接使用して、メッセンジャーRNAの特異的部分を最初に逆転写し、次いで増幅する標的RT-PCR反応によって行われる。オリゴヌクレオチドは、標的核酸またはその相補的配列に直接結合する一次配列を含み、汎用PCRハンドル(1stおよび2nd)の配列のセットも含む。(D)得られた二本鎖産物は、汎用PCRハンドル(1stおよび2nd)と所望の標的とを含む。さらに、標的配列のin situ増幅(必要な場合に)は、第1(1st)のPCRハンドルおよび第2のPCRハンドル(2nd)を標識した汎用PCRハンドルにより達成される。(E)ロロニーは、汎用標的増幅産物のための鋳型として機能する。それにより、標的配列産物は、SUMI配列を含み、標的増幅産物にリンクするように伸長させられる。より詳細には、二本鎖の増幅された標的配列を、一本鎖オリゴヌクレオチドに変性させ、増幅された標的産物の鎖の一方の第2のPCRハンドル(2ndハンドル)は、SUMI配列(1stハンドル)の相補的なロロニー汎用配列5’とハイブリダイズする。ロロニーへのハイブリダイゼーションの後に、標的増幅産物の3’末端は、in situでSUMI配列を越えて伸長させられる。1つのロロニーは、高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)シーケンシングワークフローのための基礎を提供する多くの標的配列用の鋳型として機能する。(F)伸長させられた標的SUMI配列を、場合により、(1st)および(2nd)ハンドルに相補的なPCRプライマーにより増幅し、最終的に、in vitroでの更なるプロセシング用の組織切片から除去される(付加的なPCRは、in vitroで行われてもよい)。伸長させられた標的SUMI配列分子は、環化され、増幅されて、in vitroでロロニーを形成する。ロロニーは、フローセル内に装填され、in vitroシーケンシング用の鋳型として機能する。このフローセルを、機器内に装入し、ロロニーのin vitroシーケンシングを実施する。(G)SUMIおよび標的配列の配列情報を得る(多数の標的配列は、同じSUMI配列とリンクされてよい)。SUMI配列のin vivo位置およびリンクされた(SUMI配列-標的増幅産物)in vitro配列は、空間位置を得るために対にされる。
【0028】
図3は、タンパク質および代謝産物分析のための高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)シーケンシングワークフローを示す。(A)抗体を同定するためのバーコードタグ領域を含むオリゴヌクレオチドに結合された抗体。(B)代謝産物を同定するためのバーコードタグ領域を含むオリゴヌクレオチドに結合したバインダ。(C)さらに、バーコードタグ配列のin situ増幅は、それぞれの汎用プライマー(1st&2nd)を使用する汎用PCRハンドルにより達成される。(D)バーコードタグ配列は、
図2に示すようにSUMI配列にリンクされる。
【0029】
図4は、高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)ハイブリダイゼーションのためのオリゴヌクレオチド設計および核酸、タンパク質または代謝産物分析のためのシーケンシングワークフローを示す。(A)SUMI配列の汎用配列5’(1st)。(B)空間固有分子識別子(SUMI)配列(ここに例として示された4つの検出バーコード領域を有する固有配列)。4つのバーコード領域は、それぞれ2~20のヌクレオチドを有する。バーコード領域は、コーディング能力を高めるために>4であってよく、全てのバーコードは、固有配列を有する(図示されていない)。(C)単量体化のための制限部位を含んでいてもよいSUMI配列の汎用配列3’(2nd)。(D)全体的なローリングサークル増幅用に使用されるプライミング領域。
【0030】
図5は、増幅されたプローブを含むSUMIの等温増幅を示す。(A)固定されかつ透過処理された組織切片を、SUMIロロニー上に置く。ロロニー(ガラスフローセル上の黒色点)は、in situでシーケンシングされる。(B)メッセンジャーRNAの標的部分を、近接ライゲーションプローブによってセクション上で直接増幅する。(C)ロロニーは、汎用ターゲットキャプチャ産物のための鋳型として機能しかつSUMI、SUMI配列の汎用配列3’(2nd)を含み、かつこの例では制限部位(任意)も含む。それにより、標的配列をSUMI配列により伸長させ、固有単量体に切断することができる。SUMI配列のロロニー汎用配列5’(1st)に相補的である標的産物の第2のPCRハンドル(2nd)は、3’OHブロッキングヌクレオチド(アジドまたはジスルフィド基)を含み、還元剤、例えばホスフィンを用いて脱保護した後にだけ、in situでSUMI配列を越えて伸長させられる。1つのロロニーは、高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)シーケンシングワークフローのための基礎を提供する多くの標的配列用の鋳型として機能する。伸長させられた標的SUMI配列を、図示されるように高プロセッシブ酵素、例えばPhi29酵素を用いるPCRプライマー(1st&2nd)により増幅し(指数関数的RCA)、場合により、フローセルから抽出する前もしくは後に制限酵素を用いて引き続き切断し、さらにPCRによってプロセシングかつ増幅することができる(
図2のワークフロー参照)。
【0031】
図6は、SUMI配列により伸長させられた標的増幅産物のための鋳型として機能することができる環状オリゴヌクレオチドから生成された、in situでシーケンシングされたロロニーの例を示す。ロロニーはフローセル上に置かれ、合成によるシーケンシング(SBS:sequencing by synthesis)に供される。調べられた塩基のそれぞれについての蛍光チャネルの全てを示す1つのサイクルおよびTの固有の組み込みが図示されている(サイクル6)。後に標的増幅産物をSUMI配列によりin situで伸長する。SUMI伸長させられた標的増幅産物を、組織切片から取り出し、直接in vitroシーケンシングに供する。
【0032】
図1および
図4に示されるように、オリゴヌクレオチドは、最低限でも少なくとも2つのヌクレオチドを有する1つのSUMIを有する。SUMIの5’および3’で環状オリゴヌクレオチドは、5~50のヌクレオチドを有する汎用配列(1st&2nd)を有する。本発明の方法では、一本鎖環状鋳型は、ローリングサークル増幅が可能なポリメラーゼにより、DNAナノボールまたはロロニーを形成する複数のDNAコンカテマーに複製される。この目的のために、本発明で使用されるオリゴヌクレオチドは、ローリングサークル増幅のための5~50のヌクレオチドを有する少なくとも1つのプライマー領域を有してよい。
【0033】
本発明の一実施形態では、汎用配列は、SUMI配列に直接続かなくてよく、SUMI配列から可変の距離で配置されていてよい。
【0034】
本発明の別の実施形態では、ローリングサークル増幅を開始するプライマー領域は、同一であってよい。
【0035】
他の実施形態では、SUMIを含むオリゴヌクレオチドは、組織切片上に提供される場合、環状でなくてもよいが、環化は、組織上で直接行われてよい。
【0036】
本発明の一実施形態では、ターゲットキャプチャは、標的としてのDNAから開始されてよい。線状オリゴヌクレオチドのそれぞれの設計調整を考慮する必要がある。
【0037】
図3に示すように、線状オリゴは、タンパク質または代謝産物をコードするために使用されてよい。ここでもまた、線状オリゴヌクレオチドの3’末端は、バーコードタグとSUMI配列を1つの核酸分子内へ組み合わせるために、環状オリゴヌクレオチドから生成されるロロニーの配列に相補的である。
【0038】
本発明の第1の実施形態では、
図1に示すように、空間固有分子識別子(SUMI)を含む環状オリゴヌクレオチドは、組織切片上でロロニーを生成するために使用される。ロロニーは、空間固有分子識別子(SUMI)を同定するin situシーケンシング用のシーケンシング鋳型として機能する。全てのロロニーについての細胞内空間情報が記録され、SUMI配列とリンクされる。in situシーケンシングは、in situターゲットキャプチャの前または後に行ってよい。
【0039】
本発明の一般的なステップを
図2に示す。ここでは、メッセンジャーRNAの標的部分は、固定されかつ透過処理された組織の切片上で直接増幅される。mRNA上の目的の配列は、メッセンジャーRNAを直接標的とする2つの特異的オリゴヌクレオチドを使用するRT-PCR反応を用いて増幅され、オリゴヌクレオチドは、増幅のために標的領域に隣接する一次配列と、PCRハンドルとしての汎用配列のセットとを含む。ロロニーは、環状オリゴヌクレオチドから生成され、in situシーケンシングのためのシーケンシング鋳型として、またSUMI配列により伸長させられる標的増幅産物のための鋳型として機能する。標的増幅産物がin situでSUMI配列により伸長させられ、SUMI配列がin situシーケンシングにより決定された後に、SUMI伸長標的増幅産物を組織切片から除去し、in vitroシーケンシングに直接供される。環化、ロロニー化およびin vitroシーケンシングの前に、SUMI伸長標的増幅産物を増幅することが望ましいことがある。
【0040】
同定された変異を含む標的配列の細胞内位置は、in vitroで得られた標的配列/SUMIを、in situシーケンシングからのSUMI配列にリンクさせることにより明らかにされる。数百の固有SUMIロロニーを1つのセル内で空間的に分解することができ、各ロロニーは鋳型として数千のコンカテマー化されたSUMI配列を提供するため、1つのセル内で数十万の標的増幅mRNA配列を、細胞分解能で理論的に空間的に同定することができ、それにより、高密度(HD)法が提供される。
【0041】
本発明の第2の実施形態では、タンパク質および代謝産物の細胞内位置が、シーケンシングワークフローにより明らかにされる。
図3に示す線形オリゴヌクレオチド設計は、細胞内タンパク質位置を決定するために、タンパク質についての結合原理として「抗原認識部分」を使用する。
【0042】
「抗原認識部分」の用語は、細胞サンプルの細胞上に発現されたマーカーに対する、任意の種類の抗体または断片化された抗体または断片化された抗体誘導体を指す。この用語は、完全にインタクトの抗体、断片化された抗体または断片化された抗体誘導体、例えばFab、Fab¢、F(ab¢)2、sdAb、scFv、di-scFv、ナノボディに関する。このような断片化された抗体誘導体は、これらの種類の分子を含む共有結合または非共有結合を含む組換え手順により合成されてよい。抗原認識部分の更なる例は、TCR分子を標的とするペプチド/MHC複合体、細胞接着受容体分子、共刺激分子に対する受容体、人工的に操作された結合分子、例えば、例えば細胞表面分子を標的とするペプチドまたはアプタマーである。抗体に対するこのような抗原認識部分は、生物試料(標的細胞)によりまたは細胞内に発現される抗原、例えばIL2、FoxP3、CD154、または細胞外に発現される抗原、例えばCD3、CD14、CD4、CD8、CD25、CD34、CD56、およびCD133に対してもよい。
【0043】
第1の実施形態の変形形態として、ロロニーの空間的ローカライゼーションのためのハイブリダイゼーションに基づくSUMI解読原理のための環状オリゴヌクレオチドが、
図4に示されている。SUMIのin situシーケンシングが得られない場合、ハイブリダイゼーションに基づく方法が有利であってよい。この場合では、多色解読方式が、ロロニーを解読するために用いられてよい。本発明の方法において使用される検出プローブは、バーコード領域の少なくとも一部に結合することが可能である2~20のヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを有していてよい。生成されたロロニーは、前述のように、ターゲットキャプチャ伸長のための鋳型として機能し続ける(
図2参照)。核酸分析のための高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)ハイブリダイゼーションおよびシーケンシングワークフローについて、SUMI配列を解読するためのin vitroシーケンシングのために、比較的長いシーケンシングリード長さが必要である。
【0044】
第2の実施形態では、この方法は、目的の組織領域に限定されるべきである。目的の組織領域は、顕微鏡のような従来の撮像技術により同定される。in situシーケンシングの方法を目的の領域にフォーカスするために、ロロニー形成は、外力(例えば光または熱)により制御されるべきである。ロロニーは、シーケンシング鋳型として機能するため、ロロニーなしでは、シーケンシングは行われない。重合およびロロニー形成の開始は、ポリメラーゼをブロックすることによるかまたはプライマーをブロックすることにより阻害されてよい。このブロッキング原理は、外力、例えば光または熱により除去されてよく、これは、概念的には撮像技術により方向付けることができる。
【0045】
第3の実施形態では、SUMI解読(例えば、in situシーケンシング)の後に、組織切片を消化し、個々の細胞を単離してよい。ロロニー含有細胞を選別し、最終的に単一細胞シーケンシングに供する。ロロニー含有細胞の選別は、ローリングサークル増幅の結果として増加した核酸含有量により、またはロロニー配列に向かうハイブリダイゼーションプローブから導き出された蛍光強度により達成されてよい。in situシーケンシングからのSUMI配列は、単一細胞シーケンシングにより同定されてもよいため、単一細胞シーケンシングからの情報内容を、in situシーケンシングから導き出されたSUMIを介する空間的位置にリンクしてよい。
【0046】
この第3の変形態様では、特異的ロロニーは、標的遺伝子(
図2)または標的抗体もしくは標的分子結合部のバーコードタグ(
図3)に対応する特異的プライマーを用いることにより環状オリゴヌクレオチドから生成することができ、例えばアンプリコンのサブセットの選択的増幅を可能にするRCAのために用いられるPhi29酵素により認識される。最後に、シーケンシングされたデータは、目的のmRNAまたはcDNA転写物または抗体または分子結合部がもともと環状オリゴヌクレオチドと相互作用する組織上の領域にリンクバックされる。
【0047】
第4の実施形態では、
図5に視覚化されているように、標的SUMI配列を確立して、また、高プロセッシブポリメラーゼ、例えばPhi29を用いる指数関数的RCAにより増幅する。ここでも、ロロニーは、汎用ターゲットキャプチャ産物のための鋳型として機能し、SUMIを含む。1つのロロニーが、高密度(HD)空間固有分子識別子(SUMI)シーケンシングワークフローについての基礎を提供する多くの標的配列のための鋳型として機能してよい。
【0048】
開示された方法を用いて分析されたサンプルは、無脊椎動物(例えば、エレガンス線虫(Caenorhabditis elegans)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))、脊椎動物(例えば、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis))および哺乳動物(例えば、ハツカネズミ(Mus musculus)、ホモサピエンス(Homo sapiens))の動物全体、器官、組織切片、細胞凝集体、または単一細胞のような任意の試料に由来してよい。生物学的サンプルは、組織切片、細胞凝集体、懸濁細胞、または接着細胞の形態を有していてよい。細胞は、生きていても死んでいてもよい。
【0049】
ロロニーの空間情報、すなわちサンプル上のロロニーの位置は、例えば撮像ステップにより決定される。本発明による方法のさらに別の変形態様では、サンプルを単離された細胞に変換し、次いで、これをマイクロキャビティ内に捕捉するかまたは接着することにより固定化する。
【0050】
撮像は、例えば、例えば欧州特許第0810428号明細書、欧州特許第1181525号明細書、欧州特許第1136822号明細書または欧州特許第1224472号明細書に記載された「マルチエピトープリガンドカルトグラフィー(Multi Epitope Ligand Cartography)」、「チップベースのサイトメトリー(Chip-based Cytometry)」または「マルチオミクス(Multiomics)」として公知の技術を用いて実施されてよい。この技術では、細胞を固定化し、蛍光部分と結合した抗体と接触させる。抗体は、生物学的試料上の(例えば細胞表面上の)それぞれの抗原により認識され、非結合マーカーを除去し、蛍光部分を励起させた後に、抗原の位置を、蛍光部分の蛍光発光により検出する。所定の変形態様では、蛍光部分に結合した抗体の代わりに、MALDIイメージングまたはCyTOFにおいて検出可能な部分に結合した抗体を使用することができる。当業者は、蛍光部分に基づく手法をどのように変更して、これらの検出部分と連携させるかを承知している。標的部分の位置は、蛍光放射の波長に対して十分な分解能および感度を有するデジタル撮像装置によって達成される。デジタル撮像装置、例えば蛍光顕微鏡を用いて、光学的拡大の有無にかかわらず使用されてよい。得られる画像は、例えばRAW、TIF、JPEG、またはHDF5フォーマットで、ハードドライブのような適切な記憶装置に記憶される。
【外国語明細書】