(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175665
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】キレート組成物及び形成方法
(51)【国際特許分類】
C07C 229/24 20060101AFI20231205BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C07C229/24
C09K3/00 108C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023087814
(22)【出願日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】63/365,491
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/365,492
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/365,493
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】バング,エドウィン ルドルフ アントニー
(72)【発明者】
【氏名】ホイス,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ブーンストラ,テヤーク オー.
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB82
4H006BS10
4H006BU32
4H006NB17
(57)【要約】
【課題】キレート組成物及びその形成方法を提供する。
【解決手段】本開示は、少なくとも約9のpHを有するキレート組成物であって、水と、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して少なくとも約50重量パーセントの量で存在するグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とを含み、スピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計をそれぞれ使用して約5℃で測定して約1350mPa.s未満の粘度、又は約20℃で測定して約350mPa.s未満の粘度を有する、キレート組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1重量%溶液として測定して少なくとも約9のpHを有するキレート組成物であって、
水と、
Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、前記キレート組成物の総重量に対して少なくとも約50重量パーセントの量で存在するグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とを含み、
スピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計をそれぞれ使用して約5℃で測定して約1350mPa.s未満の粘度、又は約20℃で測定して約350mPa.s未満の粘度を有する、キレート組成物。
【請求項2】
前記グルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩が、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、前記キレート組成物の総重量に対して約52~約60重量パーセントの量で前記キレート組成物中に存在する、請求項1に記載のキレート組成物。
【請求項3】
前記粘度が、スピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計を使用して約5℃で測定して約1200mPa.s未満であり、前記組成物が、国際連合危険物輸送勧告、試験方法及び判定基準のマニュアル;ST/SG/AC.10/11/Rev.4によって決定した場合に非腐食性であると分類される、請求項1に記載のキレート組成物。
【請求項4】
前記キレート組成物のpHが、約1重量%溶液として測定して約9~約10.5である、請求項1に記載のキレート組成物。
【請求項5】
キレート組成物の形成方法であって、
水とグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とを含み、約1重量%溶液として測定して約10.5超のpHを有する第1の混合物を準備する工程と、
水とグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とを含み、約7未満のpHを有する第2の混合物を準備する工程と、
前記第1の混合物と前記第2の混合物とを組み合わせて、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、前記キレート組成物の総重量に対して少なくとも約45重量パーセントの量のグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩を含む前記キレート組成物を形成する工程とを含み、
前記キレート組成物が、約1重量%溶液として測定して少なくとも約9のpH、並びにスピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計をそれぞれ使用して約5℃で測定して約1350mPa.s未満の粘度、又は約20℃で測定して約350mPa.s未満の粘度を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年5月30日に出願された米国仮出願第63/365,491号、2022年5月30日に出願された米国仮出願第63/365,492号、及び2022年5月30日に出願された米国仮出願第63/365,493号の利益を主張し、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、グルタミン酸N,N-二酢酸(GLDA)の四ナトリウム塩を含むキレート組成物、及び該組成物の形成方法に関する。より具体的には、本開示は、驚くほど高い重量パーセントのGLDAを含みながら、低い粘度を有するキレート組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
キレート化合物であるグルタミン酸N,N-二酢酸(GLDA)のいくつかのナトリウム塩が、当分野で公知である。例えば、特許文献1(米国特許第8455682号)は、HCN及びホルムアルデヒドと、グルタミン酸又はグルタミン酸一ナトリウムとを使用したGLDA四ナトリウム塩の合成を記載している。この方法は、周囲温度又は高温(10~100℃、特に20~80℃)と、10分~10時間であるが、特に30分~3時間の投入時間とを利用する。記載される方法は、事前に投入されたグルタメートに最初に1当量のホルムアルデヒドを投入し、第2の工程においてHCN及びもう1当量のホルムアルデヒドを投入する2段階法である。
【0004】
別のHCNベースのGLDA法が特許文献2(国際公開第2009/024518号)に記載されており、その実施例では、GLDAの混合ナトリウム/カリウム塩、すなわちGLDA-NaxKy(x+y=4)が生じる。この参考文献では、周囲温度又はやや高温での2段階法が使用される。第1の工程は、シッフ塩基の合成を記載し、その後、残存量のホルムアルデヒド/HCNを添加する第2の投入工程が適用される。
【0005】
典型的には、当分野において、HCN/ホルムアルデヒド技術を使用するGLDA-Na4法におけるグルタメートに関する収率は、約89~約94%である。しかしながら、当分野では、収率が制限される理由は記載されていない。典型的に記載される唯一の副生成物はNTA-Na3(ニトリロ三酢酸ナトリウム塩)であり、これは約0.1重量%未満の濃度で存在する。これは、グルタメート/グルタミン酸の変換に基づく収率が約90%である理由の説明にはなっていない。
【0006】
高濃度のGLDA四ナトリウム塩溶液を取り扱うことは、商業規模で使用する場合、いくつかの大きな欠点を有することが当分野で公知である。重要な問題は、GLDA四ナトリウム塩の濃縮溶液の粘度が高く、そのため、このような溶液の取り扱いが困難であることである。高い粘度により、実用的な濃度は約47重量%の最大値に制限される。今日、約55超~約60重量%の濃度では、GLDA四ナトリウム塩はペーストになる傾向があり、生成物が注ぎ出せるようになる前に容器を加熱する必要がある。GLDA-Na4溶液は、典型的には、濃縮しても結晶化しない。より高い濃度の使用を妨げるのは、単に粘度の上昇である。
【0007】
さらに、GLDA-Na4水溶液は、主にGLDA溶液中の遊離苛性副生成物のためにアルミニウムに対して腐食性である傾向がある。したがって、これにより、腐食防止設備への適用が制限される。これらの問題は、アルミニウム部品を有する大規模な製造物、例えば噴霧乾燥機においてGLDA-Na4溶液を使用する場合、特に約1,000KG以上の大型容器を使用する場合、特に重要である。したがって、改善の余地がある。
【0008】
発明の概要
本開示は、少なくとも約9のpHを有するキレート組成物であって、水と、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して少なくとも約50重量パーセントの量で存在するグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とを含み、スピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計をそれぞれ使用して約5℃で測定して約1350mPa.s未満の粘度、又は約20℃で測定して約350mPa.s未満の粘度を有する、キレート組成物を提供する。
【0009】
本開示はまた、キレート組成物の形成方法であって、水とグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とを含み、約10.5超のpHを有する第1の混合物を準備する工程と、水とグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とを含み、約7未満のpHを有する第2の混合物を準備する工程と、第1の混合物と第2の混合物とを組み合わせて、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して少なくとも約50重量パーセントの量のグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩を含むキレート組成物を形成する工程とを含み、キレート組成物が、約1重量%溶液として測定して少なくとも約9のpH、並びにスピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計をそれぞれ使用して約5℃で測定して約1350mPa.s未満の粘度、又は約20℃で測定して約350mPa.s未満の粘度を有する、方法を提供する。
【0010】
様々な実施形態において、本開示は、当業者には理解されるであろうように、持続可能性を高め、粘度が高くなりすぎることなく室温での取り扱いが依然として可能な溶液を使用してキレート剤水溶液を輸送し包装する能力を高める。
【図面の簡単な説明】
【0011】
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴うこの特許又は特許出願公開の写しは、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。
【0012】
以下、本開示を、以下の図面と併せて説明する。
【0013】
【
図1】グルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩及び様々な副生成物の形成を示す合成スキームである。
【0014】
【
図2】様々なpH(1%)値及びFeTSV=55%での温度の関数としての、キレート化合物GLDA(グルタミン酸N,N-二酢酸)のナトリウム塩の水溶液の粘度を示す線グラフである。
【0015】
【
図3】FeTSV=55%での様々な温度でのpH(1%)の関数としての、キレート化合物GLDA(グルタミン酸N,N-二酢酸)のナトリウム塩の水溶液の粘度を示す線グラフである。
【0016】
発明を実施するための形態
以下の詳細な説明は、本質的に単なる例示であり、本キレート組成物及び/又は形成方法を限定することを意図しない。さらに、前述の背景技術又は以下の詳細な説明に提示される理論に拘束される意図はない。
【0017】
本開示の実施形態は、一般に、キレート組成物及びその形成方法に関する。簡潔にするために、本明細書では、キレート組成物に関する従来の技術を詳細に説明しない場合がある。さらに、本明細書に記載の様々な作業及び方法工程は、本明細書に詳細に記載されていない追加の工程又は機能を有する、より包括的な手順又は方法に組み込まれ得る。特に、キレート組成物の製造における様々な工程は周知であるため、簡潔にするために、多くの従来の工程は、本明細書では簡単にのみ言及されるか、又は周知の方法の詳細を記載することなく完全に割愛される。本開示では、用語「約」は、様々な実施形態において、値±0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%を表し得る。さらに、様々な非限定的な実施形態において、本明細書に記載のすべての値は、代替的に近似値又は「約」と表され得ることが意図される。本明細書に記載される各化合物についてのすべての異性体及びキラルの選択肢は、本明細書中での使用が明示的に意図されるものと意図される。
【0018】
さらに、様々な非限定的な実施形態において、本明細書に記載のすべての数値は、実際の実施例を除いて、「約」又は「ほぼ」列挙された値であると解釈されることを意図した、終点を有する近似値又は特定の値であることを理解されたい。
【0019】
本開示の全体にわたって、「活性物質」のパーセントという用語は当分野でよく認識されており、存在する活性物質又は実際の化合物又は分子の、例えば、溶媒と該化合物との希釈溶液の総重量と比較したパーセントでの量を意味する。ある種の化合物、例えば溶媒は、ほぼ100%活性物質であることが周知であるため、活性物質のパーセントに関して記載されていない。本明細書に記載される値のいずれか1つ又はそれ以上は、当業者によって理解されるように、活性物質のパーセントとして代替的に記載され得る。
【0020】
様々な実施形態において、「~を含まない(free of)」という用語は、当業者によって理解されるように、適切な重量基準を使用して、問題の化合物又は要素を約5、4、3、2、1、0.5、若しくは0.1重量パーセント(又は活性物質の重量パーセント)未満含む実施形態を表す。他の実施形態において、「~を含まない」という用語は、問題の化合物又は要素を0重量パーセント有する実施形態を表す。
【0021】
「~から本質的になる(consists essentially of)」という用語は、本明細書に記載の1つ若しくはそれ以上の場合により含まれる化合物を含まず、且つ/又は1つ若しくはそれ以上のポリマー、界面活性剤、添加剤、溶媒などを含まない様々な非限定的な実施形態を表し得る。
【0022】
ポリマーの添字は、典型的には平均値として記載されることを理解されたい。これは、ポリマーの合成が、典型的には様々な個々の分子の分布をもたらすためである。
【0023】
本明細書に開示されるポリマー及び組成物は、本明細書に記載される成分、要素、及び方法の描写を適切に含み得るか、それらからなり得るか、又はそれらから本質的になり得る。本明細書に例示的に開示された実施形態は、本明細書に具体的に開示されていないあらゆる要素の非存在下で、適切に実施され得る。
【0024】
様々な実施形態において、グルタミン酸(例えば、苛性物質を伴う)、グルタミン酸一ナトリウム、及び/若しくはグルタミン酸二ナトリウム、又はそれらの混合物は、GLDAナトリウム塩を製造するための出発材料であり得る。例えば、グルタミン酸は、一ナトリウム塩を形成するために苛性物質も必要とすることが当業者には公知である。例えば、グルタミン酸単独では、ナトリウム塩を形成することができないため、典型的には存在しない。しかしながら、グルタミン酸、MSG、及びグルタミン酸二ナトリウムの混合物は利用され得る。例えば、グルタメート又はグルタミン酸がGLDAに変換される2段階反応が利用され得る。第1の反応はニトリルの合成であり得、第2の反応は得られたニトリルの加水分解/ケン化であり得る。
【0025】
様々な実施形態において、本開示は、キレート化合物であるGLDA(グルタミン酸N,N-二酢酸)のナトリウム塩の高純度水溶液と、例えば、精製工程を必要とせずに廃棄物のない方法を使用して該溶液を調製する方法とを提供する。
【0026】
他の実施形態において、本開示は、市販のGLDAの四ナトリウム塩の水溶液の代替物を提供する。この代替物は、現在入手可能な市販品とほぼ同じ粘度を有するが、それらの同じ市販品よりもGLDAの濃度が高く、腐食特性を有しないか又は腐食特性が少ない。他の実施形態において、本開示は、周囲温度の容器内で取り扱うことができ、容器内での溶液の純度が高く、廃棄物のない又は廃棄物を最小限に抑えた方法を使用して調製することができる生成物を提供する。
【0027】
さらに他の実施形態において、本開示は、様々な濃度のGLDAのナトリウム塩の水溶液を提供する。いくつかの実施形態において、GLDAの混合ナトリウム/カリウム塩を使用する必要はない。KOHは容易に入手できず、より高価であるため、このことは有益である。また、これにより粘度を低下させることもできる。
【0028】
典型的には、本明細書にpHが記載されている場合、それは1重量%の活性物質溶液のpHである。
【0029】
キレート組成物
様々な実施形態において、本開示は、約1重量%溶液として測定して少なくとも約9又は9.5のpHを有するキレート組成物を提供する。様々な実施形態において、pHは、約1重量%溶液として測定して約8~約14、約8.5~約14、約9~約14、約9.5~約14、約9.5~約12.5、約9.5~約12、約9.5~約11.5、約9.5~約11、約9.5~約10.5、約9.5~約10、約10~約12、約10~約11.5、約10~約11、約11~約12、約11~約11.5、又は約11.5~約12である。典型的には、pHは重要である。これは、当業者であれば、高すぎるpH値がアルミニウムに対して腐食性であることを認識しているためである。さらに、高すぎるpHは、低濃度(重量%)ではあるが遊離苛性物質又はNaOHが存在することを示す。遊離苛性物質又はNaOHの分子量はグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩の高分子量と比較して小さいため、これらの存在は組成物の粘度を増加させる。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0030】
キレート組成物は、水とグルタミン酸N,N-二酢酸(GLDA)の四ナトリウム塩とであり得るか、それらを含み得るか、それらから本質的になり得るか、又はそれらからなり得る。一実施形態において、「~から本質的になる」という用語は、GLDAを形成するときに生成されることが公知である1つ又はそれ以上の副生成物、例えば以下に記載される副生成物を含まないか、又は組成物の総重量に対して5、4、3、2、1、0.5、若しくは0.1重量パーセント未満含む実施形態を表す。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0031】
GLDA(及びGLDAのニトリル前駆体であるGLDN)の合成は、100%選択的ではない。グルタミン酸若しくはグルタミン酸一ナトリウム又はそれらの混合物と、ホルムアルデヒド及びシアン化物との反応は、少量のグリコレート及びホルメートの形成をもたらすが、最近見出されたように、グルタミン酸一酢酸、及び1-ピロリジン酢酸、2-カルボキシ-5-オキソナトリウム塩(1-pyrrolidineacetic acid, 2-carboxy-5-oxo sodium salt)と呼ばれ、GLMA(環状)と表され得る副生成物ももたらす。GLMA(環状)は金属イオンを封鎖せず、粘度、コスト、収率低減、及び密度に寄与する。別の副生成物であるGLMA(直鎖)は、非常に弱いキレート剤であり、やはり粘度、密度、及び収率低減に寄与する。副生成物であるGLMA(直鎖)及びGLMA(環状)を同定した後で、グルタメートのGLDAへの変換に関する歴史的に報告された収率が、最大94%と報告されてきた(より一般的には90%の収率が報告されている)理由が明らかになった。追加のHCN及びホルムアルデヒドを利用することによって、MSGのGLDAへの高い変換、又はMSG-グルタミン酸の混合物のGLDAへの変換が可能である。しかしながら、可能性のある1つの結果は、ケン化工程においてホルムアルデヒド及びHCNが、ニトリル官能基の加水分解によって形成されるNH3と反応することに起因して、NTA濃度が高くなりすぎる(0.1重量%超)可能性があることである。本明細書で解決される難題は、NTAを約0.1重量%又はそれ以下に保ちながら、高い変換率/高い収率を達成することである。
【0032】
グルタミン酸一酢酸であるGLMAは、典型的には、GLDAの製造における主な副生成物である。2つのGLMA異性体が、対応するニトリル前駆体のケン化によって形成され得るが、これはGLMN(直鎖/開鎖)及びGLMN(環状)と表され得る。GLMN(直鎖)及びGLMN(環状)の構造を
図1に示す。
【0033】
GLDAのニトリル前駆体としてのGLDNを高収率で合成することは難題である。ニトリル一付加物であるGLMNは、開環しない環構造を形成し得るので、GLDNのニトリル合成中の条件は、GLMN濃度が低く、短時間しか存在しないように制御すべきである。典型的には、GLMN(直鎖)濃度が高く、反応の滞留時間が長いほど、より多くの環状GLMNが形成される。温度及びpHも典型的には重要である。より高い温度では、反応がより速く起こる。これは、GLDNの合成だけでなく、副生成物、例えば環状GLMNにも当てはまる。いくつかの実施形態において、反応条件はGLDNの形成をもたらすが、環状GLMNの形成を制限する。
【0034】
GLDAは、キレート剤の中でも独特である。これは、高純度キレート剤を合成するために使用されるそのニトリル前駆体が、環構造を形成し得るためである。このような構造は、通常、5個又は6個の原子を含む。モノニトリルが形成される場合、窒素原子に結合した水素原子は、水の分離から依然としてカルボン酸基と反応し、環状GLMN-Naと呼ばれる環構造をもたらし得る。モノニトリルの構造は、一度形成されると決してGLDAナトリウム塩にならない環構造の形成を可能にする。周知の生成物、例えばキレート剤でもあるMGDAは、この特定の難題に直面することはない。これは、MGDAのモノニトリル前駆体(メチルグリシンモノアセトニトリル)が環構造を形成することができないためである。
【0035】
様々な実施形態において、ニトリル合成における低い反応温度が環状GLMNの形成を減少させることが見出された。GLMN(直鎖)の短い滞留時間も、環状GLMNの形成の可能性を減少させるので重要である。克服すべき1つの問題は、ニトリル合成の強い発熱挙動である。HCNが投入されるとすぐに、グルタメートとホルムアルデヒドとを含有する反応混合物には、かなりの熱が発生し、それによって反応温度が上昇する。効率的な冷却が必要である。発生する熱は、HCNの量及びホルムアルデヒドの存在によって決まる。HCNの投入をゆっくり行うことは、冷却によって反応温度を制御するのに役立つが、GLDNの合成中に存在する高GLMN濃度の滞留時間を増加させる。その結果、より多くの環状GLMNが生成される。
【0036】
再び言及すると、様々な実施形態において、GLDAが約55重量%の濃度であり多かれ少なかれ若干の副生成物を有する場合、キレート組成物は、約35~約50、約35~約45、約35~約40、約40~約50、約40~約45、約41~約45、約41~約44、約41~約43、約41~約42、又は約41、42、43、44、若しくは45重量パーセントの量で存在する水を含む。当業者によって理解されるように、GLDAの重量パーセントが変化すれば、前述の値は変化し得る。これらの可能性のすべては、本明細書では様々な非限定的な実施形態において明示的に意図される。他の非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0037】
グルタミン酸N,N-二酢酸(GLDA)の四ナトリウム塩は、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して少なくとも約45重量パーセントの量で存在する。様々な実施形態において、この重量パーセントは、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、約45~約70、約50~約70、約55~約70、約60~約65、約50~約60、約50~約65、約50~約55、又は約55~約60である。他の実施形態において、この重量パーセントは、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、約52~約60、約53~約59、約54~約58、約55~約57、又は約55~約56である。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0038】
Fe全封鎖量値に基づいて重量パーセントを決定する方法は、例えばVersene(商標)キレート剤の使用に関してDow Chemicalによって記載され、付録Aに記載されているように、当分野で公知である。
【0039】
再び言及すると、キレート組成物は、スピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計を使用してそれぞれ測定して、約5℃で測定して約1350mPa.s未満の粘度、又は約20℃で測定して約350mPa.s未満の粘度を有する。様々な実施形態において、粘度は、スピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計を使用して、約5℃の温度で測定される。このような実施形態において、粘度は、約1350、1300、1250、1200、1150、1100、1050、1000mPa.s未満などであり得る。他の実施形態において、粘度は、スピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計を使用して、約20℃の温度で測定される。このような実施形態において、粘度は、約350、300、250、200、150、100mPa.s未満などであり得る。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0040】
他の実施形態において、キレート組成物は、国際連合危険物輸送勧告、試験方法及び判定基準のマニュアル;ST/SG/AC.10/11/Rev.4によって決定した場合に非腐食性であると表され得る。当分野で公知であるように、アルミニウム7075-T6又はAZ5GU-T6が必要とされるため、この規格は、P3(ISO 2604(IV)-1975)又は同等のタイプの試験鋼タイプを要する。信頼性の高い測定には、0.50ml/mm2超の体積/表面積が必要である。この調査で使用される材料は、炭素鋼SAE 1020及びアルミニウム7075 T6である。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0041】
一実施形態において、粘度は、スピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計を使用して約5℃で測定して約1200mPa.s未満であり、組成物は、国際連合危険物輸送勧告、試験方法及び判定基準のマニュアル;ST/SG/AC.10/11/Rev.4によって決定した場合に非腐食性であると分類される。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0042】
他の実施形態において、キレート組成物は、約1300、1350、1400、1450、又はさらには1500kg/m3超の密度を有する。このような実施形態においては、輸送コストが低減され、CO2フットプリントが低減されるので、輸送量は非常に魅力的である。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0043】
別の実施形態において、キレート組成物のpHは、約1重量%溶液として測定して約10~約10.5である。別の実施形態において、キレート組成物のpHは、約1重量%溶液として測定して約8~約10.5である。別の実施形態において、キレート組成物のpHは、約1重量%溶液として測定して約8.5~約10.5である。別の実施形態において、キレート組成物のpHは、約1重量%溶液として測定して約9~約10.5である。別の実施形態において、キレート組成物のpHは、約1重量%溶液として測定して約9.5~約10.5である。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0044】
前述のキレート組成物は、当分野で公知のいずれかの方法によって形成することができ、限定されない。しかしながら、一実施形態において、キレート組成物は、水とグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とを含み、約10.5超のpHを有する第1の混合物と、水とグルタミン酸N,N-二酢酸のナトリウム塩とを含み、約7未満のpHを有する第2の混合物とを組み合わせることから形成される。他の実施形態において、このpHは、約8.5、7、7.5、7、6.5、6、5.5、又は5未満であり得る。当業者によって理解されるように、pHがわずかに高い溶液を与える弱イオン交換樹脂もまた使用することができ、この場合、より酸性度の低い生成物を使用することは、典型的には、pHを目標値まで低下させるためにより多くの体積/生成物を必要とし、典型的には、非酸性化GLDA:酸性化GLDAの比を変化させる。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0045】
第1の混合物は、水とグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とであり得るか、それらを含み得るか、それらから本質的になり得るか、又はそれらからなり得る。様々な実施形態において、「~から本質的になる」という用語は、GLDAを形成するときに生成されることが公知である1つ又はそれ以上の副生成物、例えば本明細書に記載される副生成物を含まないか、又は組成物の総重量に対して5、4、3、2、1、0.5、若しくは0.1重量パーセント未満含む実施形態を表す。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0046】
第1の混合物において、水の量は、典型的には、第1の混合物の総重量パーセントに対して約0.1~約80、約0.1~約75、約0.1~約70、約0.1~約65、約0.1~約60、約0.1~約55、約0.1~約50、約5~約45、約10~約40、約15~約35、約20~約30、約25~約30、約0.1~約5、約0.5~約5、又は約1、2、3、4、若しくは5重量パーセントである。また第1の混合物において、pHは、典型的には、約1重量%溶液として測定して約10.5、11、11.5、12超などである。様々な実施形態において、このpHは、約1重量%溶液として測定して約11~約12である。第1の混合物のpHは、典型的には、上記と同じ理由で重要である。さらに、ホルムアルデヒド/シアン化物をベースとしたケン化を伴う製造方法では、この種の方法は最後の工程において、少量の遊離苛性物質を有するGLDA溶液を与える。過剰の苛性物質は、すべてのニトリル基が確実に完全に加水分解されるために必要である。しかしながら、加水分解後、遊離苛性物質は制限されたままであるべきである。これは、そうでなければ酸性GLDAによる中和が、より多くの酸性化GLDA生成物を必要とするためである。さらに、遊離苛性物質の濃度が高いと、GLDA溶液はより高粘度になる。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0047】
また第1の混合物において、グルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩の量は、典型的には、第1の混合物の総重量パーセントに対して約30~約60、約35~約55、約40~約50、又は約45~約50重量パーセントである。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0048】
第2の混合物は、水とグルタミン酸N,N-二酢酸のナトリウム塩とであり得るか、それらを含み得るか、それらから本質的になり得るか、又はそれらからなり得る。様々な実施形態において、「~から本質的になる」という用語は、GLDAを形成するときに生成されることが公知である1つ又はそれ以上の副生成物、例えば以下に記載される副生成物を含まないか、又は組成物の総重量に対して5、4、3、2、1、0.5、若しくは0.1重量パーセント未満含む実施形態を表す。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0049】
第2の混合物において、水の量は、典型的には、第2の混合物の総重量パーセントに対して約35~約60、約40~約55、又は約45~約50重量パーセントである。また第2の混合物において、pHは、典型的には、約1重量%溶液として測定して約7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3未満などである。様々な実施形態において、このpHは、約1重量%溶液として測定して約3~約4である。第2の混合物のpHは、上述のように重要である。さらに、高すぎるpHでは、第2の混合物は、約9~10のpHを得るために高い比率の酸性GLDAを必要とし、それにより、より大量のGLDAの酸性化が必要になる。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0050】
様々な実施形態において、第2の混合物は、イオン交換及び/又はバイポーラ膜電気透析によって酸性化される。この方法は、少なくとも米国特許第8551312B2号に記載されているいずれか1つ若しくはそれ以上の工程であり得るか、又は該工程を含み得、該文献は、様々な非限定的な実施形態においてその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0051】
また第2の混合物において、グルタミン酸N,N-二酢酸のナトリウム塩(典型的には、四ナトリウム塩又は部分酸性化GLDAナトリウム塩として表される)の量は、典型的には、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して約15~約50、約20~約35、又は約25~約30重量パーセントである。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0052】
キレート組成物の形成方法
本開示はまた、キレート組成物の形成方法を提供する。この方法は、水とグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とを含み、約10.5超のpHを有する第1の混合物を準備する工程と、水とグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩とを含み、約7未満のpHを有する第2の混合物を準備する工程と、第1の混合物と第2の混合物とを組み合わせて、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して少なくとも約50重量パーセントの量のグルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩を含むキレート組成物を形成する工程とを含み、キレート組成物は、少なくとも約8、8.5、9、又は9.5のpHを有し、キレート組成物は、スピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計を使用して約5℃で測定して約1350mPa.s未満の粘度、又は約20℃で測定して約350mPa.s未満の粘度を有する。様々な実施形態において、最大pHは1重量%溶液として約10.4であり、ここで、より低いpH(約9.5未満)は、低粘度のGLDAを生じるが、より多くの酸性化GLDAを必要とし、そのためにより多くのイオン交換容量が必要とされる。さらに、pHがさらに低下すると、GLDA四ナトリウム塩は、GLDAの三ナトリウム塩になるため、ほとんど又は全く存在しない。このことは、当業者に公知であり、ここで、イオン種分布はGLDAの様々なpKa値に基づいて計算され得る。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0053】
準備する工程は特に限定されず、当分野において公知のものであればよい。例えば、第1の混合物は、一度に、又は1つ若しくはそれ以上の部分に分けて準備され得る。第1の混合物は、バッチ又は連続プロセスで準備され得ることが意図される。
【0054】
一実施形態において、グルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩は、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して少なくとも約45重量パーセントの量で存在する。例えば、この値は、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して少なくとも50、55、60、65、70、又は75重量パーセントであり得る。別の実施形態において、グルタミン酸N,N-二酢酸の四ナトリウム塩は、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して約47~約60重量パーセントの量で存在する。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0055】
別の実施形態において、第1の混合物は、約1重量%溶液として測定して約11~約12のpHを有する。別の実施形態において、第2の混合物は、約1重量%溶液として測定して約3~約7(例えば、約3~約6.5、約3~約6、約3~約5.5、約3~約5、約3~約4.5、又は約3~約4)のpHを有する。別の実施形態において、第2の混合物は、イオン交換及び/又はバイポーラ膜電気透析によって酸性化される。別の実施形態において、方法は、国際連合危険物輸送勧告、試験方法及び判定基準のマニュアル;ST/SG/AC.10/11/Rev.4によって決定した場合に非腐食性であると表される。別の実施形態において、四ナトリウム塩は、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して約60~約75重量パーセントの量で第1の混合物中に存在する。別の実施形態において、GLDAは、Fe全封鎖量値を使用して決定した場合に、キレート組成物の総重量に対して約15~約25重量パーセントの量で第2の混合物中に存在する。様々な実施形態において、第2の混合物は、一ナトリウム塩/二ナトリウム塩/三ナトリウム塩の混合物を含む酸性化GLDAであるか、又は酸性化GLDAを含む。
【0056】
別の実施形態において、粘度は、スピンドルS18及び恒温槽を備えたブルックフィールドDV II plus粘度計を使用して約5℃で測定して約1200mPa.s未満であり、組成物は、国際連合危険物輸送勧告、試験方法及び判定基準のマニュアル;ST/SG/AC.10/11/Rev.4によって決定した場合に非腐食性であると分類される。別の実施形態において、キレート組成物のpHは、約1重量%溶液として測定して約10~約10.5である。様々な非限定的な実施形態において、前述の値を含めて前述の値の間のすべての値及び値の範囲(整数及び分数の両方)は、本明細書中での使用が明示的に意図される。
【0057】
様々な実施形態において、所望のpH及び所望の濃度のGLDA生成物/混合物を生成するために、当業者であれば、多くの異なる比の非酸性化GLDAと酸性化GLDAとを混合し得るが、この比は、主に酸性化溶液のpHによって決まる。所望のpHを有する場合、当業者であれば、水を蒸発させるか又は添加して所望の濃度を達成し得る。
【0058】
他の実施形態において、HCN/ホルムアルデヒドの他の投入形態も可能であり、例えば、米国特許第8,455,682号を参照されたい。この文献は、様々な非限定的な実施形態において、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。1つ又はそれ以上の非限定的な実施形態において、ニトリル反応混合物における低温、及びモノニトリルの短い滞留時間が重要な態様である。
【実施例0059】
GLMA(環状)(1-ピロリジン酢酸、2-カルボキシ-5-オキソナトリウム塩)の合成
GLMA(環状)と呼ばれる1-ピロリジン酢酸、2-カルボキシ-5-オキソナトリウム塩の合成を以下に示す。
【0060】
強撹拌棒、還流冷却器、及び窒素入口毛細管を備えた250mlの三口丸底フラスコに、29.72g(200ミリモル)のL-グルタミン酸及び16.24g(400mmol)の苛性物質の微小粒を連続して投入した。次いで、水浴を用いて冷却しながら、蒸留水60mlを添加した。すべての固体は、強い発熱下で急速に溶解した。このようにして、L-グルタミン酸二ナトリウム水溶液を製造した。反応混合物を周囲温度に冷却した後、19.70g(202ミリモル)のグリコニトリル水溶液(58.5重量%)を添加した。遅れた弱い発熱が顕著であった(約25℃)。
【0061】
1時間撹拌した後(GLMNの形成を完了した後)、さらに8.24g(203ミリモル)の苛性物質の微小粒を冷却下で少しずつ加えた。適度な発熱とわずかに黄色がかった色調への変色が認められた。室温で1時間撹拌を続けた。次いで、反応混合物を窒素ストリッピング(ニトリルの加水分解からのアンモニアの発生を補助する)下で約100℃に3時間加熱した。冷却後、わずかに黄色のL-GLMA三ナトリウム水溶液(pH≒11.5)が得られ、これはアンモニア臭をほとんど示さなかった。
【0062】
水浴で冷却しながら、濃塩酸60.43g(605mmol)を素早く添加した。添加が完了した後、この混合物を4時間還流した。冷却後、この混合物をガラスフィルターを通して(部分1)500mlの洋ナシ型丸底フラスコに注いだ。混合物をロータリーエバポレーターを用いて蒸発乾固した。得られた硬質塊を100mlの乾燥アセトンと共に撹拌した。塩化ナトリウムが凝固し始め、ゆっくりと結晶化し始めた。塩(35.75g、理論値:35.24g)をガラスフリットを用いて除去し(部分3)、アセトンで洗浄した。アセトン相をロータリーエバポレーターを用いて蒸発乾固した。極めて粘稠な黄色がかったc-GLMA-H2の油(41.92g)が得られた。
【0063】
この油を水50mlに溶解し、次いで水50mlに溶解したNaOH微小粒16.24(400mmol)を添加した。500mlの洋ナシ型フラスコにろ過した後、得られた溶液をロータリーエバポレーターを用いて蒸発乾固した。残渣を無水エタノール100mlで抽出した。ガラスフリットを用いて固体を濾別し(部分1)、無水エタノール50mlで1回洗浄し、40℃で一晩真空乾燥した。これにより、45.59gの無色固体粉末が生成された。プロトンNMR及びKarlFisherによる分析により、以下の結果が得られた:84.6重量%の環状GLMA-Na2、3.5重量%の水、残部:少量の様々な副生成物。
【0064】
生成物を、Feイオン及びCaイオンを使用した滴定によってその封鎖能力について試験した。これらの分析手順は、Fe全封鎖量値(Fe-TSV)及びカルシウムキレート価(CaCV)として公知である。GLMA(環状)は、封鎖量値を全く有さず、封鎖能力に関してGLDAのアッセイに何ももたらさない。せいぜい、この化合物は不活性副生成物と見なされ得る。
【0065】
GLMA(直鎖)の合成
グルタミン酸N,N-一酢酸ナトリウム塩(直鎖GLMA)の合成を以下に示す。
【0066】
強撹拌棒、還流冷却器、及び窒素入口毛細管を備えた250mlの三口丸底フラスコに、14.86g(100ミリモル)のL-グルタミン酸及び8.12g(200mmol)の苛性物質の微小粒を連続して投入した。水浴を用いて冷却しながら、蒸留水30mlを添加した。すべての固体は、強い発熱を伴って急速に溶解した。このようにして、L-グルタミン酸二ナトリウム水溶液を製造した。反応混合物を周囲温度に冷却した後、9.75g(100ミリモル)のグリコニトリル水溶液(58.5重量%)を添加した。遅れた弱い発熱が顕著であった(約25℃)。
【0067】
1時間撹拌した後(GLMNの形成を完了した後)、さらに4.06g(100ミリモル)の苛性物質の微小粒を冷却下で少しずつ加えた。適度な発熱とわずかに黄色がかった色調への変色が認められた。室温で1時間撹拌を続けた。次いで、反応混合物を窒素ストリッピング(ニトリルの加水分解からのアンモニアの発生を補助する)下で約100℃に3時間加熱した。冷却後、わずかに黄色のL-GLMA三ナトリウム水溶液(pH≒11.5)が得られ、これはアンモニア臭をほとんど示さなかった。
【0068】
この混合物をガラスフィルターを通して(部分1)500mlの洋ナシ型丸底フラスコに注ぎ、ロータリーエバポレーターを用いて蒸発乾固した。内在する水の大部分を除去するために、得られた硬質塊を100mlの無水エタノールと共に撹拌した。乾燥後、残渣を40℃でメタノール100mlでさらに抽出し、微量のグルタメートを除去するために温かい状態でろ過した。乾燥後、29.47g(理論値:27.24g)の無色固体物質を得た。
【0069】
プロトンNMR及びKarl Fisherによる分析により、以下の結果が得られた:81.94重量%の開鎖/直鎖GLMA-Na3、0.2重量%のGLDA-Na4、12重量%の水(Karl Fisher)、及び残部:少量の様々な副生成物。
【0070】
この副生成物は、構造に基づくと、ある程度の封鎖力を有すると予想される。封鎖を担う構造フラグメントは、窒素に結合した2つのカルボン酸基、すなわち-NH(CH2-COONa)2である。強いキレート化は、3つのカルボン酸基、例えばNTA-Na3、すなわちニトリロ三酢酸ナトリウム塩[N-(CH2-COONa)3](周知のキレート剤)を必要とする。2つのカルボン酸を有する分子は、封鎖力/封鎖能力に寄与するが、それはあまり効率的ではない形態である。例えば、Cuイオンの封鎖は可能であるがFe3+は封鎖できない。そのため、GLDA溶液中に低濃度のGLMA(直鎖)が存在することが好ましい。
【0071】
GLMA(直鎖)は、ある程度の封鎖力を有するが、GLDA自体と比較してあまり効率的でないことが示されている。また、この副生成物は粘度/密度を増加させるため、可能な限り低減すべきである。
【0072】
GLDA-Na4(55重量%)の合成
1リットルのガラス製反応容器に、278グラムのMSG.H2O(1.49モル)を充填した。MSGを220グラムの水と混合して、50.5重量%のMSGスラリーを得た。2当量のホルムアルデヒド(208.9グラムの44.6%ホルムアルデヒド(3.11モル))を5分間で投入した。その後、混合物をほぼ6℃まで冷却した。次いで、2当量のHCN、すなわち82.5グラム(3.05モル)を45分間で投入した。反応温度を最高8℃で維持した。HCNの投入完了後、反応後時間を25℃で30分間適用した。
【0073】
すべてのホルムアルデヒド及びシアン化物の投入が完了すると、グルタメートは、グルタミン酸ジアセトニトリル(GLDNと呼ばれる)の一ナトリウム塩、並びに少量のGLMN(直鎖)及びGLMN(環状)に変換された。HCNを投入した後、混合物を周囲温度で少なくとも30分間保存して、収率/GLDNへの変換率を改善した。
【0074】
GLDNを、次の工程の反応器で、96℃の事前に投入された苛性物質/水に投入し、ニトリル基をカルボキシレートに変換した。GLDNの投入が完了すると、反応混合物の温度を沸点まで上昇させた。この反応中、NH3が放出された。沸点での加水分解又はケン化は、アンモニアの放出が停止するまで続いた。
【0075】
GLDAナトリウム塩溶液を、Fe全封鎖量値に基づいて55.0重量%の所望の濃度に達するまで、水の蒸発によって濃縮する。必要であれば、活性炭カラムの使用又は空気/オゾン/過酸化水素による漂白などの技術を適用することによって、GLDA溶液の色を低減することができる。プロトンNMRを使用したGLDA溶液の分析により、0.45重量%のGLMA(直鎖)及び0.37%のGLMA(環状)の存在が明らかになった。遊離苛性物質濃度は0.5重量%であり、NTAは0.1重量%未満であった。pHは11.3である。グルタメートに関するGLDAの収率は、Fe-TSVに基づいて96.5%である。55.0重量%溶液の密度は20℃で1435kgである。
【0076】
イオン交換又はバイポーラ膜電気透析を用いた酸性化は、残留量の遊離苛性物質を除去し得る。ケン化工程に必要な遊離苛性物質は、粘度に寄与することが公知である。入手可能な場合、当業者であれば、酸性化GLDAを添加することもできる。遊離苛性物質の除去が粘度に対してもたらす効果は、遊離苛性物質を用いた場合と用いない場合の粘度プロファイル/曲線を比較することによって可視化される。
【0077】
比較例
Fe-TSV値(鉄全封鎖量値)として表して、55.0重量%のNa4-GLDA濃度を有するNa4-GLDA溶液を、約25℃未満の温度で、事前に投入したグルタミン酸ナトリウムに1当量のホルムアルデヒドを投入することによって調製した。投入が完了したら、反応混合物を約30℃未満の温度に維持しながら、第1の当量のHCNを45分間で添加した。
【0078】
次の工程では、反応温度を最高約30℃に維持しながら、第2の当量のホルムアルデヒド及び第2の当量のHCNを同時に投入した。すべてのHCN及びホルムアルデヒドが完了したら、得られたGLDN溶液を約25~約30℃でさらに30分間撹拌した。
【0079】
GLDN溶液を、次の工程の反応器で、96℃の事前に投入された苛性物質/水に投入し、ニトリル基をカルボキシレートに変換する。GLDNの投入が完了すると、反応混合物の温度を沸点まで上昇させる。この反応中、NH3が放出される。沸点での加水分解又はケン化は、アンモニアの放出が停止するまで続き、それによってGLDAナトリウム塩溶液が形成される。
【0080】
GLDAナトリウム塩溶液を、Fe全封鎖量値に基づいて55重量%の所望の濃度になるまで、水の蒸発によって濃縮する。プロトンNMRを使用した分析により、1.8重量%のGLMA(直鎖)及び2.9重量%のGLMA(環状)の存在が明らかになった。遊離苛性物質濃度は0.7重量%であり、NTAは0.1重量%未満であった。pHは11.3である。グルタメートに関するGLDAの収率は、Fe-TSVに基づいて89%である。遊離苛性物質濃度が0になるように酸性化GLDAの添加によって遊離苛性物質を除去すると、粘度が低下すると考えられる。
【0081】
追加の実施例
キレート化合物GLDA(グルタミン酸N,N-二酢酸)のナトリウム塩の水溶液の追加の試料も評価して、温度の関数としての粘度及びpHの関数としての粘度を決定する。
【0082】
例えば、様々なpH(1%)値を有する、FeTSV=55%でのキレート化合物GLDA(グルタミン酸N,N-二酢酸)のナトリウム塩の一連の水溶液を評価して、温度の関数としての粘度を決定する。これらの評価結果を
図2に示す。
【0083】
さらに、FeTSV=55%での様々な温度でのキレート化合物GLDA(グルタミン酸N,N-二酢酸)のナトリウム塩の一連の水溶液を評価して、pH(1%)の関数としての粘度を決定する。これらの評価結果を
図3に示す。
【0084】
少なくとも1つの例示的な実施形態が前述の詳細な説明に提示されたが、膨大な数の変形形態が存在することを理解されたい。1つ又はそれ以上の例示的な実施形態は単なる例であり、範囲、適用性、又は構成を決して限定することを意図するものではないことも理解されたい。そうではなく、前述の詳細な説明は、例示的な実施形態を実施するために好都合な手引きを当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に記載された範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に記載された要素の機能及び形態に様々な変更を加えることができることが理解される。