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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175669
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20231205BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H02K9/19 A
B60K11/02
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023088129
(22)【出願日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】10 2022 113 565.9
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン エクスレン
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン キューブラー
【テーマコード(参考)】
3D038
5H609
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC23
5H609BB01
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609QQ08
5H609QQ12
5H609RR26
5H609RR46
5H609RR50
5H609RR51
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新しい駆動ユニット及び新しい電気自動車を提供する。
【解決手段】駆動ユニット20が、電動機30及び冷却システム50を備え、電動機のステータハウジングが、ステータハウジング入口41及びステータハウジング出口42を備え、冷却システムが、ステータハウジング入口及びステータハウジング出口に接続されている第1の冷却回路51を備え、かつ第1の冷却回路が、膨張タンクアセンブリ60を備え、膨張タンクアセンブリが、膨張タンク62、少なくとも1つの膨張タンク入口65、1つの膨張タンク出口66、及び圧力均等化アセンブリ64を備え、膨張タンクが、第1の冷却回路に接続されており、圧力均等化アセンブリ64が、膨張タンクと周囲環境61との間の圧力均等化を少なくとも部分的にもたらすために、膨張タンクと駆動ユニットの周囲環境との間の流体接続を少なくとも一時的に可能にするように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車(10)用の駆動ユニット(20)であって、駆動のための電動機(30)及び冷却システム(50)を備え、前記電動機(30)が、ステータアセンブリ(32)及びロータアセンブリ(34)を備え、前記ステータアセンブリ(32)が、ステータハウジング(40)、溝(37)を有するステータコア(36)、及び巻線アセンブリ(38)を備え、前記巻線アセンブリ(38)が、前記溝(37)を通って延在し、前記ステータハウジング(40)が、ステータハウジング入口(41)及びステータハウジング出口(42)を備え、前記溝(37)が、前記ステータハウジング入口(41)及び前記ステータハウジング出口(42)に流体接続されており、前記冷却システム(50)が、前記巻線アセンブリ(38)の直接冷却を可能にするように前記ステータハウジング入口(41)及び前記ステータハウジング出口(42)に接続されている第1の冷却回路(51)を備え、かつ前記第1の冷却回路(51)が、膨張タンクアセンブリ(60)を備え、前記膨張タンクアセンブリ(60)が、膨張タンク(62)、少なくとも1つの膨張タンク入口(65)、1つの膨張タンク出口(66)、及び圧力均等化アセンブリ(64)を備え、前記膨張タンク(62)が、前記少なくとも1つの膨張タンク入口(65)及び前記膨張タンク出口(66)を介して前記第1の冷却回路(51)に接続されており、前記圧力均等化アセンブリ(64)が、前記膨張タンク(62)と前記周囲環境(61)との間の圧力均等化を少なくとも部分的にもたらすために、前記膨張タンク(62)と前記駆動ユニット(20)の周囲環境(61)との間の流体接続を少なくとも一時的に可能にするように構成されている、駆動ユニット(20)。
【請求項2】
前記第1の冷却回路(51)が、第1の冷却剤(99)を備える、請求項1に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項3】
前記第1の冷却剤(99)が、誘電性冷却剤である、請求項2に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項4】
前記圧力均等化アセンブリ(64)が、第1のフィルタ装置(654)を備え、前記第1のフィルタ装置(654)が、前記冷却剤(99)の前記周囲環境(61)への放出を低減又は防止するように構成されており、前記第1のフィルタ装置(654)が、好ましくは、活性炭フィルタを備える、請求項2に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項5】
前記圧力均等化アセンブリ(64)が、第1の弁(652)を備え、前記第1の弁(652)が、前記膨張タンク(62)内が正圧の場合に、前記圧力均等化を少なくとも部分的にもたらすために、前記膨張タンク(62)内の圧力(P1)が前記周囲環境(61)の圧力(P2)よりも少なくとも所定の第1の量だけ大きいときに、非導電状態から導電状態に移行するように構成されており、前記第1の量がゼロと等しくない、請求項1に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項6】
前記第1の弁(652)が、第1のばね(656)を備え、かつ前記第1の量が、前記第1のばね(656)のばね力によって影響を受ける、請求項5に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項7】
前記圧力均等化アセンブリ(64)が、第2の弁(642)を備え、前記第2の弁(642)が、前記膨張タンク(62)内が負圧の場合に、圧力均等化を少なくとも部分的にもたらすために、前記周囲環境(61)の前記圧力(P2)が前記膨張タンク(62)内の前記圧力(P1)よりも少なくとも所定の第2の量だけ大きいときに、非導電状態から導電状態に移行するように構成されており、前記第2の量がゼロと等しくない、請求項1に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項8】
前記第2の弁(642)が、第2のばね(646)を備え、かつ前記第2の量が、前記第2のばね(646)のばね力によって影響を受ける、請求項7に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項9】
前記圧力均等化アセンブリ(64)が、除湿装置(644)を備え、前記除湿装置(644)が、前記周囲環境から前記膨張タンク(62)に入る空気の除湿を実行するように構成されている、請求項1に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項10】
前記圧力均等化アセンブリ(64)が、第2のフィルタ装置(647)を備え、前記第2のフィルタ装置(647)が、前記周囲環境(61)から前記膨張タンク(62)に入る空気による埃の侵入を低減又は防止するように構成されている、請求項1に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項11】
第2の冷却回路(52)及びポンピング装置(90)を備え、前記ポンピング装置(90)が、第1のポンプ(91)及び第2のポンプ(92)を備え、前記第1のポンプ(91)が、前記第1の冷却回路(51)内に第1の冷却剤(99)を搬送するように構成されており、かつ前記第2のポンプ(92)が、前記第2の冷却回路(52)内に第2の冷却剤(98)を搬送するように構成されており、前記第1の冷却剤(99)と前記第2の冷却剤(98)が異なる、請求項1に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項12】
前記ポンピング装置(90)が、共通ポンプ駆動装置(93)によって前記第1のポンプ(91)及び前記第2のポンプ(92)を駆動するように構成されている、請求項11に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項13】
第3の冷却回路(53)を備え、前記第1の冷却回路(51)が、第1の熱交換器(101)を備え、かつ前記第2の冷却回路(52)が、第2の熱交換器(102)を備え、前記第3の冷却回路(53)が、前記第1の熱交換器(101)及び前記第2の熱交換器(102)を冷却するように構成されている、請求項11に記載の駆動ユニット(20)。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の駆動ユニット(20)を有する、電気自動車(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニット及び電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許発明第102013019687B3号明細書は、オイル回路及び水冷却回路を備えるハイブリッド車両用の冷却システムを開示している。
【0003】
欧州特許出願公開第3184336A1号明細書は、電動機、インバータ、及び変速機を有し、インバータ及び電動機が第1のオイル回路によって冷却される、電気自動車用の冷却システムを開示している。
【0004】
国際公開第2019/182622A1号は、グリコール-水冷却回路及びオイル回路を備える、電気自動車用の冷却システムを開示している。
【0005】
独国特許出願公開第102005032633A1号明細書は、変速機オイルによって冷却が行われる、電気機械部品及び変速機用の冷却システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許発明第102013019687B3号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3184336A1号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/182622A1号
【特許文献4】独国特許出願公開第102005032633A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明によって対処される課題は、新しい駆動ユニット及び新しい電気自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立請求項の主題によって解決される。
【0009】
電気自動車用の駆動ユニットが、駆動のための電動機及び冷却システムを備え、電動機が、ステータアセンブリ及びロータアセンブリを備え、ステータアセンブリが、ステータハウジング、溝を有するステータコア、及び巻線アセンブリを備え、巻線アセンブリが、溝を通って延在し、ステータハウジングが、ステータハウジング入口及びステータハウジング出口を備え、溝が、ステータハウジング入口及びステータハウジング出口に流体接続されており、冷却システムが、巻線アセンブリの直接冷却を可能にするようにステータハウジング入口及びステータハウジング出口に接続されている第1の冷却回路を備え、かつ第1の冷却回路が、膨張タンクアセンブリを備え、膨張タンクアセンブリが、膨張タンク、少なくとも1つの膨張タンク入口、少なくとも1つの膨張タンク出口、及び圧力均等化アセンブリを備え、膨張タンクが、少なくとも1つの膨張タンク入口及び膨張タンク出口を介して第1の冷却回路に接続されており、圧力均等化アセンブリが、膨張タンクと周囲環境との間の圧力均等化を少なくとも部分的にもたらすために、膨張タンクと駆動ユニットの周囲環境との間の流体接続を少なくとも一時的に可能にするように構成されている。
【0010】
圧力均等化アセンブリの提供により、第1の冷却回路内で発生する圧力の制限が可能になり冷却回路の要素は、より低い最大圧力用に設計することができ、更に、したがって、より容易で費用効果が高い。これは、開放又は部分的に開放された冷却回路と呼んでもよい。
【0011】
好ましい実施の形態によれば、ステータアセンブリは、外側ステータアセンブリとして構成されており、ロータアセンブリは、内側ロータアセンブリとして構成されている。直接冷却が特に有利である。
【0012】
好ましい実施の形態によれば、圧力均等化アセンブリは、膨張タンクと周囲環境との間の差圧に応じて圧力均等化をもたらすように構成されている。
【0013】
好ましい実施の形態によれば、第1の冷却回路は、第1の冷却剤を備える。冷却剤は、良好な冷却を可能にし、好ましくは流体、特に液体流体である。
【0014】
好ましい実施の形態によれば、第1の冷却剤は、誘電性冷却剤である。誘電性冷却剤は、特に巻線アセンブリを冷却するのによく適しており、誘電性冷却剤の温度依存性の体積膨張のために、膨張タンクアセンブリは特に有利である。
【0015】
好ましい実施の形態によれば、圧力均等化アセンブリは、第1のフィルタ装置を備え、第1のフィルタ装置は、冷却剤の周囲環境への放出を低減するように構成されている。これにより、駆動ユニット全体の環境適合性が向上する。
【0016】
好ましい実施の形態によれば、第1のフィルタ装置は、活性炭フィルタを備える。活性炭フィルタは、冷却剤を保持し、空気のみが通過することを可能にするのに特によく適している。
【0017】
好ましい実施の形態によれば、圧力均等化アセンブリは、第1の弁を備え、第1の弁は、膨張タンク内が正圧の場合に、圧力均等化を少なくとも部分的にもたらすために、膨張タンク内の圧力が周囲環境の圧力よりも少なくとも所定の第1の量だけ大きいときに、非導電状態から導電状態に移行するように構成されている。したがって、第1の量との差圧がなければならなく、第1の量はゼロと等しくない。第1の弁は、差圧が量に関して更に所定値を超えたとき、再び閉鎖することが好ましい。換言すれば、第1の弁は、圧力均等化が行われたとき、又は差圧が圧力均等化のために所定の閾値を下回ったときに、導電性から非導電状態に移行する。非導電状態と導電状態との間の切り替えは、ヒステリシスを伴って発生してもよく、又は伴わないで発生してもよい。
【0018】
好ましい実施の形態によれば、第1の弁は、第1のばねを備え、所定の第1の量は、第1のばねのばね力によって影響を受ける。これにより、圧力リリーフ弁の単純な構成が可能となる。
【0019】
好ましい実施の形態によれば、圧力均等化アセンブリは、第2の弁を備え、第2の弁は、膨張タンク内が負圧の場合に、圧力均等化を少なくとも部分的に生じさせるために、周囲環境の圧力が膨張タンク内の圧力よりも少なくとも所定の第2の量だけ大きいときに、非導電状態から導電状態に移行するように構成されている。したがって、第2の量がゼロに等しくない、第2の量と対応する差圧によって圧力均等化が行われるが、圧力差がゼロにならないことが好ましい。第2の弁は、差圧が量に関して更に所定値を超えたとき、再び閉鎖することが好ましい。換言すれば、第2の弁は、圧力均等化が行われたとき、又は差圧が圧力均等化のために所定の閾値を下回ったときに、導電性から非導電状態に移行する。非導電状態と導電状態との間の切り替えは、ヒステリシスを伴って発生してもよく、又は伴わないで発生してもよい。
【0020】
第1の弁及び第2の弁は、別個の弁として、構成されてもよく、又は両方の機能を可能にする共通弁として構成されてもよい。
【0021】
好ましい実施の形態によれば、第2の弁は第2のばねを備え、所定の第2の量は第2のばねのばね力によって影響を受ける。
【0022】
好ましい実施の形態によれば、圧力均等化アセンブリは、除湿装置を備え、除湿装置は、周囲環境から膨張タンクに入る空気の除湿を実行するように構成されている。
【0023】
好ましい実施の形態によれば、圧力均等化アセンブリは、第2のフィルタ装置を備え、第2のフィルタ装置は、周囲環境から膨張タンクに入る空気を通じた埃(汚れ)の侵入を低減又は防止するように構成されている。
【0024】
好ましい実施の形態によれば、駆動ユニットは、第2の冷却回路及びポンピング装置を備え、ポンピング装置は、第1のポンプ及び第2のポンプを備え、第1のポンプは、第1の冷却回路内に第1の冷却剤を搬送するように構成されており、かつ第2のポンプは、第2の冷却回路内に第2の冷却剤を搬送するように構成されており、第1の冷却剤と第2の冷却剤は異なる。異なる冷却剤を提供することにより、異なる装置の最適化された冷却が可能となる。
【0025】
好ましい実施の形態によれば、ポンピング装置は、共通ポンプ駆動装置によって、例えば、この目的のために設けられている追加の電動機によって、第1のポンプ及び第2のポンプを駆動するように構成されている。
【0026】
好ましい実施の形態によれば、駆動ユニットは、第3の冷却回路を備え、第1の冷却回路は、第1の熱交換器を備え、第2の冷却回路は、第2の熱交換器を備え、第3の冷却回路は、第1の熱交換器及び第2の熱交換器を冷却するように構成されている。この多重使用により、改善された全体的な概念が提供され、全体的な重量の低減を可能にする。
【0027】
電気自動車は、このような駆動ユニットを備える。駆動ユニット全体の安全性は比較的高いため、駆動ユニットは特に車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の更なる詳細及び有利な更なる展開が、以下に説明され、図面に図示され、またいずれの様式においても本発明を限定するものとして解釈されるべきではない実施の形態例、及び従属請求項から発生するであろう。言うまでもなく、上で言及される特徴及び以下でこれから考察される特徴は、本発明の範囲を離れることなく、それぞれ所定の組み合わせだけでなく、他の組み合わせでも、又はそれ自体でも使用することができる。以下を示す。
図1】電動機の概略縦断面図である。
図2図1の電動機のステータアセンブリの概略横断面図である。
図3図1の電動機を有し、かつ膨張タンクアセンブリを有する、冷却システムを示す概略図である。
図4図3の膨張タンクアセンブリを示す図である。
図5】差圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
同じ又は同じ効果を持つ部品は、以下では同じ参照番号を有し、通常は1回のみ説明される。全ての図の説明は、不必要な繰り返しを避けるために互いに流用される。
【0030】
図1は、電気自動車10の駆動のための電動機30を示している。このような電動機30はまた、駆動モータとも呼ばれ、好ましくは、発電機としても追加的に動作することができる。
【0031】
電動機30は、ステータアセンブリ32及びロータアセンブリ34を有する。ステータアセンブリ32は、ステータハウジング40、コリメータ39、ステータコア36、及び巻線アセンブリ38を有する。
【0032】
ステータコア36は、典型的にはシート状物の積層体として構成されている。
【0033】
図において、巻線アセンブリ38のうち、ステータコア36の2つの軸方向側面上の巻線ヘッドのみが図示される。
【0034】
ステータハウジング40は、ステータハウジング入口41及びステータハウジング出口42を有し、それを介して電動機30が冷却回路に接続され得る。概略的に、冷却剤99が引き込まれている。
【0035】
図2は、図1の線II-IIに沿った横断面における図1の電動機30を示している。
【0036】
ステータコア36は、溝37で概略的に示されているように、それを通って巻線アセンブリ38が延在する溝37を有する。好ましくは、コリメータ39は、内側ロータ34(図1参照)に対するシールを提供するために、ステータコア36の半径方向内側に設けられている。溝37は、ステータハウジング入口41及びステータハウジング出口42の両方に流体接続されている。これにより、図1の冷却剤99が溝37を通って流れ、巻線アセンブリ38を良好に冷却することができる。これはまた、巻線アセンブリ38の直接冷却とも呼ばれる。冷却剤99は、巻線アセンブリ38のワイヤに沿って直接溝内に流れ、それらを広範囲に冷却する。
【0037】
図3は、概略図において、駆動ユニット20を有する電気自動車10を示している。電気自動車10は、純粋な電気自動車であってもよく、又はハイブリッド電気自動車であってもよい。
【0038】
駆動ユニット20は、電動機30及び冷却システム50を有する。
【0039】
冷却システム50は、第1の冷却回路51、第2の冷却回路52、及び第3の冷却回路53を有する。ポンピング装置90は、第1のポンプ91及び第2のポンプ92を備える。
【0040】
実施の形態例では、第1の冷却回路51は、導管201を介して熱交換器101に接続された第1のポンプ91を備え、熱交換器101は、一方で導管202を介してフィルタ204に接続されており、他方で導管203を用いて電動機30に接続されている。
【0041】
フィルタ204は、導管205を介して電動機30に接続されている。電動機30は、導管206を介して膨張タンクアセンブリ60に接続されており、膨張タンクアセンブリ60は、導管207を介して第1のポンプ91に接続されている。
【0042】
実施の形態例では、導管205は、電動機30のステータハウジング入口41に送り込まれており、電動機30を冷却する役割を果たす。
【0043】
膨張タンクアセンブリ60は、膨張タンク62及び圧力均等化アセンブリ64を有する。導管206は、膨張タンク入口65に接続されており、膨張タンク出口66は、導管207に接続されている。膨張タンク62は、冷却剤99で部分的に充填されており、表面(液面)63が概略的に示されている。
【0044】
圧力均等化アセンブリ64は、膨張タンク62と駆動ユニット20の周囲環境61との間に少なくとも時折の流体接続を提供するように構成されている。これにより、少なくとも一部分において、膨張タンク62と周囲環境61との間の圧力均等化を生じさせることができる。電気自動車10の場合の周囲環境61は、大気、すなわち、通常の大気圧、典型的には水分、並びにダスト及びオイルなどの埃粒子(汚れ粒子)を伴う空気である。
【0045】
第2のポンプ92は、導管211を介して熱交換器102に接続されており、熱交換器102は、導管212を介して、例えば変速機又はパワーステアリングを含む、冷却される装置213、214、及び215に接続されている。冷却される装置213、214、215は、導管216を介して、オイルパンとも呼ばれ得るオイルサンプ217に接続されている。第2の冷却回路52用の冷却剤98が、オイルサンプ217に提供されており、その表面が概略的に218と示されている。オイルサンプ217は、導管219を介してフィルタ220に接続されており、フィルタ220は、導管221を介して第2のポンプ92に接続されている。
【0046】
実施の形態例では、第3の冷却回路53は、導管232を介して熱交換器233に接続されたポンプ231を備える。熱交換器233は、導管234を介して、例えばパルスインバータなどの電力電子機器など、冷却される装置235に接続されており、装置235は、第3の冷却回路53の概略的に示されている冷却剤97を供給するために、導管236を介して熱交換器101に接続されている。熱交換器101は、導管237を介して熱交換器102に接続されており、熱交換器102は導管238を介してポンプ231に接続されている。第3の冷却回路53は、熱交換器101及び102を冷却する役割を果たし、冷却剤99及び98からの熱は、冷却剤97に伝達され得る。
【0047】
冷却剤97は、水及びグリコールを含む混合物であることが好ましい。
【0048】
冷却剤98は、例えば、変速機オイル又はエンジンオイルであり、好ましくは、潤滑のために更に使用することができる。
【0049】
冷却剤99は、電動機30の直接冷却に使用されるため、非導電性又は導電性が低いのが好ましい。冷却剤99は、誘電性冷却剤であることが好ましい。誘電性冷却剤は、非導電性又は少なくとも導電性が低いため有利であり、したがって、巻線アセンブリ38を冷却するために電動機30でも使用することができる。例えば、R-7100と呼ばれる冷却剤として販売されている、モノエチレングリコールに基づくか若しくはメチルノナフルオロ-n-ブチルエーテルとメチルノナフルオロ-イソ-ブチルエーテルとの混合物に基づく冷却剤、又はHFE-7100と呼ばれる冷却剤として販売されている、ハイドロフルオロエーテルに基づく冷却剤が適している。
【0050】
図4は、図3の膨張タンクアセンブリ60を示している。
【0051】
膨張タンク62は、冷却剤99で部分的に充填されており、表面63が概略的に示されている。表面63の上方には、空気又は気化した冷却剤との冷却剤-空気混合物がある。膨張タンク62内には、特に冷却回路51内の冷却剤99の温度に依存する圧力P1が存在する。実施の形態例では、圧力均等化アセンブリ64は、膨張タンク62に接続された導管641と、膨張タンク62に接続された更なる導管651と、を含む。
【0052】
導管641は、弁642を介して導管643に接続されており、導管643は、除湿装置644及びフィルタリング装置647を介して周囲環境61に開放された導管645に接続されている。
【0053】
導管651は、弁652を介して導管653に接続されている。導管653は、フィルタ装置654を介して周囲環境61に開放された導管655に接続されている。
【0054】
弁652は、膨張タンク62内の圧力P1が、外部環境61の圧力P2よりも少なくとも所定の第1の量B1だけ大きいときに、非導電状態から導電状態に移行するように構成されている。これにより、対応する正圧の場合において、膨張タンク62内の圧力均等化を少なくとも部分的にもたらすことができる。第1の量は0(ゼロ)と等しくなく、よって、実施の形態例では、第1の量B1が圧力均等化をもたらすためにゼロよりも大きい、差圧P1-P2>B1が量に関して必要とされる。
【0055】
実施の形態例では、弁652は、概略的に提案されたばね656を有し、ばね力が弁652の開口部に影響を与える。例えば、弁652は、ばね656によって開口部に対して強制されるボールを有する圧力リリーフ弁として構成されてもよく、又は所定の圧力差で制御可能な弁652を作動させる、差圧メータが提供されてもよい。
【0056】
弁642は、周囲環境61の圧力P2が、膨張タンク62内の圧力P1よりも少なくとも所定の第2の量B2だけ大きいときに、非導電状態から導電状態に移行するように構成されている。これにより、負圧の場合において、膨張タンク62内の圧力均等化を少なくとも部分的にもたらす。第2の量は0(ゼロ)と等しくなく、よって、実施の形態例では、第2の量B2が圧力均等化をもたらすためにゼロよりも大きい、差圧P2-P1>B2が量に関して必要とされる。
【0057】
弁642は、好ましくは、概略的に提案されたばね646を有し、所定の第1の量は、第2のばね646のばね力によって影響を受けることが好ましい。弁642は、弁652のように構築することができ、アセンブリの方向は逆転している。
【0058】
除湿装置644は、外部環境から膨張タンク62に入る空気を除湿するように構成されている。これは、冷却剤99を水と混合すると導電率が増加するため、有利である。このような除湿装置644はまた、吸着体と呼ばれる。
【0059】
フィルタ装置647は、周囲環境61から入る空気を通して、膨張タンク62内にダスト又はオイルなどの埃(汚れ)の侵入を低減又は防止するように構成されている。
【0060】
フィルタ装置654は、冷却剤99の周囲環境61への放出を低減又は防止するように構成されている。冷却剤99が、例えば炭化水素を含む限りにおいて、それらは周囲環境61に入るべきではない。
【0061】
フィルタ装置654は、好ましくは、活性炭フィルタを含む。
【0062】
実施の形態例では、入口弁642及び出口弁652は、別個の導管641、651を介して膨張タンク62に接続されている。あるいは、弁642、652は、図示されていない共通弁によって構成することができ、この共通弁は、膨張タンク62内の正圧及び負圧の両方の場合における、開放又は導電性スイッチングを可能にする。対応する装置644、647、及び654は、両方向に利用することができる。図示されていないが、更なる実施の形態では、装置644、647、及び654は、関連する弁642、652と膨張タンク62との間に設けられる。
【0063】
図5は、縦座標が差圧P2-P1を示す図を示している。線301は、膨張タンク62内の圧力P1が周囲環境61の圧力P2よりも小さいときに、弁642が導電性に切り替わる閾値を示している。
【0064】
同様に、線302は、膨張タンク62内の圧力P1が周囲環境61の圧力よりも大きいときに、どの差圧P2-P1から弁652が導電性に切り替わるかを示している。
【0065】
線301と302との間の領域300では、弁642及び652は導電性に切り替えられないため、圧力均等化は行われない。結果として、膨張タンク62内の相対圧力は、領域300内に位置し、弁642、652は、外側限界301、302を超えるときのみ導電性となる。
【0066】
温度変動がより小さいと、圧力P1とP2との間に起こる圧力差が非常に低いことにより、冷却回路51が損傷する危険性がないため、領域300の提供は有利である。仮に圧力均等化が領域300内の圧力差で継続的に行われた場合、これは、クリーニング装置644、647、654のより速い充填をもたらし得、交換が必要になりかつ/又は冷却剤99の汚染をもたらすこととなる。当業者は、通気システムとしての圧力変動により、圧力均等化が継続的に発生するシステムに言及する。領域300内では、通気が防止される。
【0067】
一方で、冷却回路51の導管は、線301及び302に対応する最大差圧用に設計され得、これは、これらの限界の実質的な過剰が圧力均等化アセンブリ64によって防止されるためである。
【0068】
圧力均等化アセンブリ64を設けず、代わりに大きな圧力膨張タンクを設けることが可能である。しかしながら、このような圧力膨張タンクは、大きなスペースを必要とし、更なる重量をもたらす。したがって、現在の圧力均等化アセンブリ64は非常に有利であることが実証されている。
【0069】
当然ながら、多様な変形及び修正が、本発明の範囲内で可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 電気自動車
20 駆動ユニット
30 電動機
32 ステータアセンブリ
34 ロータアセンブリ
36 ステータコア
38 巻線アセンブリ
39 コリメータ
40 ステータハウジング
50 冷却システム
51 第1の冷却回路
52 第2の冷却回路
53 第3の冷却回路
60 膨張タンクアセンブリ
61 周囲環境
62 膨張タンク
64 圧力均等化アセンブリ
65 膨張タンク入口
66 膨張タンク出口
90 ポンピング装置
91 第1のポンプ
92 第2のポンプ
93 共通ポンプ駆動装置
97 冷却剤
98 冷却剤
99 冷却剤
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】