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特開2023-175670自動車用電動機のための冷却システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175670
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】自動車用電動機のための冷却システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/02 20060101AFI20231205BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20231205BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B60K11/02
H02K9/19 A
H02K7/116
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023088130
(22)【出願日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】10 2022 113 569.1
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン キューブラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン エクスレン
【テーマコード(参考)】
3D038
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC23
5H607AA02
5H607BB01
5H607CC05
5H607CC07
5H607DD03
5H607EE34
5H607EE36
5H609BB03
5H609BB16
5H609PP02
5H609PP17
5H609QQ05
5H609QQ07
5H609RR27
5H609RR50
5H609RR53
5H609RR54
5H609SS03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自動車用電動機のための冷却システムの冷却液の効率的な通気を実現する。
【解決手段】循環されるべき第1の冷却液5を導くためのループ状導管システム4と、ループ状導管システム4内の第1の冷却液5を第1の循環方向7に搬送するための循環ポンプ6と、ループ状導管システム4内で循環されるべき第1の冷却液5で少なくとも部分的に満たされ、かつガス9で少なくとも部分的に満たされた膨張タンク8と、ループ状導管システム4を入力側で、温度制御されるべき電動機2に流体接続するためのモータ入力端子10と、ループ状導管システム4を出力側で、温度制御されるべき電動機に流体接続するためのモータ出力端子11と、ループ状導管システム4内を循環されるべき第1の冷却液5からの熱を放散し、かつ/又それに熱を供給するための第1の熱交換器12と、を備え、膨張タンク8は、周囲環境14に対して開いた開口部13を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(3)用電動機(2)のための冷却システム(1)であって、少なくとも以下の構成部品:
循環されるべき第1の冷却液(5)を導くためのループ状導管システム(4)と、
前記ループ状導管システム(4)内の前記第1の冷却液(5)を第1の循環方向(7)に搬送するための循環ポンプ(6)と、
前記ループ状導管システム(4)内で循環されるべき前記第1の冷却液(5)で少なくとも部分的に満たされ、かつガス(9)で少なくとも部分的に満たされた膨張タンク(8)と、
前記ループ状導管システム(4)を入力側で、温度制御されるべき電動機(2)に流体接続するためのモータ入力端子(10)と、
前記ループ状導管システム(4)を出力側で、温度制御されるべき前記電動機に流体接続するためのモータ出力端子(11)と、
前記ループ状導管システム(4)内で循環されるべき前記第1の冷却液(5)から熱を放散させ、かつ/又はそれに熱を供給するための第1の熱交換器(12)と、を備え、
前記膨張タンク(8)は、周囲環境(14)に対して開いた開口部(13)を有して構成されていることを特徴とする、冷却システム(1)。
【請求項2】
通過する空気を濾過するために、吸着フィルタ(15)が前記膨張タンク(8)の前記開口部(13)から前記周囲環境(14)まで設けられ、
前記吸着フィルタ(15)は、乾燥剤(16)及び/又は活性炭(17)を含む、請求項1に記載の冷却システム(1)。
【請求項3】
前記膨張タンク(8)の前記開口部(13)は、沈静部(18)を介して前記周囲環境(14)に連通可能に接続され、
前記沈静部(18)によって、液体が、前記沈静部(18)を通過するガス流(20)から沈静迷路状通路(19)を介して分離可能であり、かつ/又は
前記沈静部(18)によって、前記膨張タンク(8)の前記開口部(13)内の圧力と比較して、前記沈静部(18)を通過するガス流(20)中の圧力増加を生成することができる、請求項1に記載の冷却システム(1)。
【請求項4】
少なくとも1つのバルブ(21、22)によって、前記膨張タンク(8)の前記開口部(13)を前記周囲環境(14)に対して閉じることができ、
前記少なくとも1つのバルブ(21、22)は常閉であり、圧力制御によって開くことができ、かつ/又は
前記少なくとも1つのバルブ(21、22)を、圧力閾値及び/若しくは温度閾値に応答して、切り替え可能に閉じることができる、請求項1に記載の冷却システム(1)。
【請求項5】
前記膨張タンク(8)の前記開口部(13)は、入力(23)及び出力(24)を介して前記周囲環境(14)に連通可能に接続され、
半透膜を介して空気のみを濾過するために、前記出力(24)は、前記周囲環境(14)と関係しており、汚れをはじくかつ/又は液体をはじく方式にある、請求項1に記載の冷却システム(1)。
【請求項6】
膨張タンク(8)を備える冷却システム(1)であって、前記膨張タンク(8)は、少なくとも以下の構成部品:
第1の冷却液(5)のための少なくとも1つの入口(25、26)と、
前記第1の冷却液(5)のための第1の出口(27)と、
ガス(9)のための第2の出口(28)と、
前記少なくとも1つの入口(25、26)と前記出口(27、28)との間の接続チャネル(29)と、を有し、
前記接続チャネル(29)は、前記第1の冷却液(5)のための前記少なくとも1つの入口(25、26)から前記第1の出口(27)に向かって広がって進むように構成され、
前記第1の冷却液(5)のための前記入口(25)及びガス(9)のための前記第2の出口(28)のうちの一方は、各動作状態における設置状況に対して、水平オフセット(30)によって、前記第1の冷却液(5)のための前記第1の出口(27)の上方に配置されている、冷却システム(1)。
【請求項7】
前記膨張タンク(8)の壁(31)は、
前記第1の冷却液(5)のための前記入口(25、26)を備える第1のタンク部(32)と、
前記出口(27、28)を備える第2のタンク部(33)と、
第3のタンク部(34)であって、そこから前記第1のタンク部(32)と前記第2のタンク部(33)との間に仕切り(35)が形成される、第3のタンク部(34)と、から形成され、
前記入口(25、26)及び前記第2の出口(28)は、前記膨張タンク(8)の最長延在域を介してのみ互いに連通可能に接続されている、請求項6に記載の冷却システム(1)。
【請求項8】
前記第1の冷却液(5)のための前記第1の出口(27)とガス(9)のための前記第2の出口(28)との間の前記接続チャネル(29)には、液体を保持するための迷路状通路(36)が形成されている、請求項6又は7に記載の冷却システム(1)。
【請求項9】
自動車(3)のパワートレイン(38)のための熱管理モジュール(37)であって、少なくとも以下の構成部品:
トランスミッション(39)のための、第2の循環方向(41)を有し、かつ第2の熱交換器(42)を有するオイル回路(40)と、
少なくとも1つの車両構成部品のための、第3の循環方向(44)を有し、かつ第3の熱交換器(45)を有する水回路(43)と、
電動機(2)のための、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷却システム(1)と、を有し、
前記電動機(2)のためのパルスインバータ(46)が前記水回路(43)内に配置されている、熱管理モジュール(37)。
【請求項10】
電動機(2)のための前記冷却システム(1)の前記第1の熱交換器(12)を有する前記水回路(43)は、前記冷却システム(1)の唯一の液体結合熱伝達として、熱伝達のために前記周囲環境(14)に接続されており、
前記水回路(43)の前記第3の循環方向(44)において、電動機(2)のためのパルスインバータ(46)が、前記第1の熱交換器(12)の上流に配置されている、請求項9に記載の熱管理モジュール(37)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用電動機のための冷却システム、自動車のパワートレインのための、そのような冷却システムを有する熱管理モジュール、自動車のための、そのような熱管理モジュールを有するパワートレイン、及びそのようなパワートレインを有する自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、電力需要の場合に結果として生じる廃熱を放散するために、電動機のための冷却システムが知られている。冷却能力を増大させるために、電動機の少なくとも固定子に冷却剤を直接流すという考えがあり、冷却剤は、誘電体冷却液として構成される。この誘電体冷却システムでは、できるだけ少ない構成部品を冷却することが賢明である。トランスミッション及びパルスインバータなどの、そのような電動機が統合されているパワートレインの他の構成部品は、少なくとも1つの別個の冷却回路内で冷却されるのが好ましい。例えば、トランスミッションがオイル回路によって冷却され、したがって、冷却剤(オイル)は、同時、にトランスミッション構成部品を潤滑するように構成される。例えば、パルスインバータが水回路内に配置され、水回路を用いて、好ましくは、更なる車両構成部品が冷却可能である。
【0003】
冷却液の不可避な温度変動の故に、冷却液の体積が変化し、その結果として圧力変動が発生し、場合によって、許容できないほど高い又は低い動作圧力につながることがある。この目的のために膨張タンクが設けられ、その中で、冷却液は、(容易に圧縮可能な)ガスと比較して、小さい圧力変化で体積変化を行うことができる。この目的のために、地球の重力場内で、(より軽い)ガスは、常に(より重い)冷却液の上に配置されることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこから出発し、本発明によって扱われる問題は、従来技術から周知の欠点を少なくとも部分的に克服することである。本発明による特徴は、独立請求項から生じ、それらの有利な構成は、従属請求項に開示される。特許請求の範囲の特徴は、任意の技術的に意味のある方式で組み合わせることができ、以下の記述からの説明、並びに、発明の補足的な構成を含む図面からの特徴もまた、この目的のために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、自動車用電動機のための冷却システムであって、少なくとも以下の構成部品:
循環されるべき第1の冷却液を導くためのループ状導管システムと、
ループ状導管システム内の第1の冷却液を第1の循環方向に搬送するための循環ポンプと、
ループ状導管システム内で循環されるべき第1の冷却液で少なくとも部分的に満たされ、かつガスで少なくとも部分的に満たされた膨張タンクと、
ループ状導管システムを入力側で、温度制御されるべき電動機に流体接続するためのモータ入力端子と、
ループ状導管システムを出力側で、温度制御されるべき電動機に流体接続するためのモータ出力端子と、
ループ状導管システム内で循環されるべき第1の冷却液から熱を放散し、かつ/又はそれに熱を供給するための第1の熱交換器と、を備える、冷却システムに関する。
【0006】
冷却システムは、特に、膨張タンクは周囲環境への開口部を有して配置されていることを特徴とする。
【0007】
上記及び下記の説明で使用される序数は、明示的に別段の指示がない限り、明確な区別のためにのみ使用され、指定された構成部品の順序又は順位を反映するものではない。1よりも大きい序数は、更なるそのような構成部品が必ず存在しなければならないことを必要としない。
【0008】
温度変動の結果として、冷却システム又はループ状導管システム内に容認できないほど高い圧力又は低すぎる圧力が発生する可能性があるという問題が存在する。したがって、膨張タンクによる上述したような均等化が有利である。ここでは、特に高い体積変動のために周囲環境に対して開いているようにシステムを設計することが提案される。
【0009】
予め、ここで提案される冷却システムでは、主に廃熱を放散することを目的としているが、例えば、冬期温度において、冷却システムによって温度制御される構成部品の温度を上昇させることも可能であることに事前に留意すべきである。構成部品が迅速に動作温度まで上昇する。しかしながら、ほとんどの用途で、廃熱はまた、自動車の電動機は冬期温度でも動作する。自動車からの廃熱を放散すること、すなわち、冷却が目標である。
【0010】
後述される構成部品及び特性の観点から明確にするために、同じ名称を有する冷却システムの構成部品及び特性は、それぞれ「第1の」構成部品又は特性として指定されるが、これは、明らかな文脈で常に行われるとは限らないことに更に留意されたい。
【0011】
冷却システムは、冷却システムの構成部品間に複数の導管及び/又は導管部分を備えるループ状導管システムを備える。ループ状導管システム内には、第1の冷却液が周囲環境に対して封入され、したがって、(例えば、漏えいの結果として)気体含有量の損失がそこで、大抵の場合に無視し得る量で発生する。(第1の)循環ポンプが、第1の冷却液を循環させるために設けられる。循環ポンプによって圧力勾配が生成され、ループ状導管システム内の(第1の)循環方向をもたらす。1つの実施形態では、循環ポンプは、可逆的に動作可能であるが、少なくとも統合型電動機からの廃熱を放散するときは、第1の循環方向が主動作方向である。ただし、好ましくは対応方向バルブを介して、例えば、ポンプホイールの回転方向を逆転させることによって、方向の逆転が調整可能である。
【0012】
ループ状導管システム内の第1の冷却液の温度変化及び結果として生じる体積変化の関数としての所定の圧力閾値を超えることを回避するために、膨張タンクは、第1の冷却液を有するループ状導管システムと、(容易に圧縮可能な)ガス、例えば、周囲環境からの空気との間で体積を均等化するように構成される。1つの実施形態では、膨張タンクは閉鎖式に構成され、膨張タンク内のガスは圧縮され、ループ状導管システム内の設計に従う動作状態内で結果として生じる圧力増加は、所定の圧力閾値を超えない。代替的に、膨張タンクは開放に構成され、(直近の)周囲環境からのガス(好ましくは空気)が、体積増加の間には膨張タンクから排出され、体積減少の間には吸引される。1つの実施形態では、半開放膨張タンクが設けられ、ガスは、開放型膨張タンクに従って排出及び供給されるが、これは、開いた周囲環境から生じるのではなく、むしろ、好ましくは可変容積を有する、接続された膨張タンクから、例えば、ベローズなどを使用して生じる。
【0013】
任意選択的に、膨張タンクの更なるタスクは、第1の冷却液中のガストラップが、ガスに対して存在する圧力勾配の結果として分離可能であり、周囲環境に排出されるか、又は封入ガスに供給される。
【0014】
モータ入力端子を介して第1の冷却流体を供給し、導入された第1の冷却流体を電動機からモータ出力端子を介して再び放散することによって、電動機が温度制御のための冷却システムに統合される。(第1の)循環方向が逆転されると、モータ入力端子から出力が形成され、モータ出力端子から入力が形成される。しかしながら、好ましくは、その時でさえ、電動機を介した流れの方向は同じままであり、すなわち、モータ入力端子は、第1の冷却液のための入力を有し、モータ出力端子は出力を有し、これは、例えば、対応する伝導及び/又は少なくとも1つの切り替え可能方向バルブによって達成される。
【0015】
(第1の)熱交換器は、2つの流体、すなわち、第1の冷却液と更なる流体(例えば、水又は周囲空気)との間で熱を伝達するように構成される。空冷のための1つの実施形態では、例えば、ファンが含まれる。
【0016】
有利な実施形態では、ループ状導管システム内の膨張タンクと熱交換器との間の伝導間隔は、膨張タンクに到達するまで熱入力が低くなるようにできるだけ短い。代替的又は追加的に、ループ状導管システム内の膨張タンクと熱交換器との間の伝導部は、他の熱源から、特に温度制御されるべき電動機から熱的に隔離され、かつ/又はできるだけ遠くに離間される。
【0017】
冷却システムの有利な実施形態では、通過する空気を濾過するために、吸着フィルタが膨張タンクの開口部から周囲環境まで設けられ、吸着フィルタは、乾燥剤及び/又は活性炭を含むこと、が更に提案される。
【0018】
ここでは、それ故に炭化水素化合物を保持するために、出力からなる吸着フィルタを設けることが提案され、例えば、活性炭フィルタがこの目的に好適である。有利な実施形態では、周囲環境への水分の漏えいを排除するために、乾燥剤、例えば、顆粒も提供される。有利な実施形態では、それ故に望ましくない成分が膨張タンクの膨張タンク空間内に進入するのを防ぐために、同じ吸着フィルタが膨張タンクの入力からも構成される。
【0019】
冷却システムの有利な実施形態では、膨張タンクの開口部は、沈静部を介して周囲環境に連通可能に接続され、
好ましくは、沈静部によって、液体が、沈静部を通過するガス流から沈静迷路状通路を介して分離可能であり、かつ/又は
好ましくは、沈静部によって、膨張タンクの開口部内の圧力と比較して、沈静部を通過するガス流の圧力増加を生み出すことができること、が更に提案される。
【0020】
ここで、周囲環境に面する膨張タンクの開口部は、好ましくは、沈静部によってのみ周囲環境と連通可能に接続されることが提案される。沈静部は、流れの減速の故に、液体成分が定着し続けることができ、これは、好ましくは、再度収集されて循環されるか、又は、例えば、滴下することによって、(外部から浸透する液体、例えば、凝縮水に関係する限り)外部へ別々に排出されるという利点を有する。
【0021】
有利な実施形態では、沈静部は、液体、特に好ましくは湿度を、入ってくる空気から凝縮によって分離することができる沈静迷路状通路を含む。同じ又は代替の実施形態では、(恐らくは、やはり流動ガス中に溶解又は担持された液滴の形態で)内部から逸出する冷却液を、沈静部によって沈静迷路状通路によって分離することができる。
【0022】
有利な実施形態では、膨張タンクの開口部内の圧力と比較して、沈静部内の圧力が増加する。したがって、例えば、液体又は水分に対するガスの溶解度は、膨張タンクの開口部の領域内のガスと比較して増加し、したがって、開口部の領域内の水分の浸透が減少する。しかしながら、とりわけ、開口部と比較して、沈静部内のより高い圧力によって、膨張タンク内、したがってループ状導管システム内の圧力増加のための追加バッファが、必ずしも周囲環境と交換する必要がなく、達成され得る。これは、外部からの汚れ及び液体の進入、又は内部からの炭化水素化合物の浸透をいくつかの状態まで低減し、所与のケースでは、既存の吸着フィルタは、使用される頻度が低くなり、したがって、より良い経済性のためのより長い耐用年数及び/又はより小さな設計のために、保護される。
【0023】
冷却システムの有利な実施形態では、周囲環境への膨張タンクの開口部は、少なくとも1つのバルブによって閉じることができ、
好ましくは、少なくとも1つのバルブは、常閉であり、特に好ましくは圧力制御され、かつ/又は
好ましくは、バルブのうちの少なくとも1つは、特に好ましくは圧力閾値及び/若しくは温度閾値に応答して、切り替え可能に閉鎖可能であること、が更に提案される。
【0024】
ここでは、膨張タンクを周囲環境に対して閉じることができる少なくとも1つのバルブを設けることが提案され、したがって、周囲環境に対する入接続又は出接続を完全に又は選択的に閉じることができる。バルブが所定の限界圧力でのみ開かれるという点で、周囲環境への流入及び流出が防止されるとき、吸着フィルタは、寿命にわたってより少ないストレスを受け、したがって、全体的により小さい寸法を有することができる。水分の進入及び炭化水素化合物の逸出もそれぞれ減少する。好ましくは、この目的のために、バルブ本体が周囲環境と吸着フィルタとの間に設けられる。代替的に、バルブを閉じた状態での吸着フィルタの流れもまた無視できる量で発生するので、吸着フィルタはバルブの周囲環境側に配置される。そのような変形態様には、好ましくは、汚れ、及び該当する場合には噴霧水に対する追加の保護が装備され、したがって、吸着フィルタは、汚れから保護され、同時に、バルブは、液体がほとんど又はまったく存在しない吸着フィルタによって保護された領域内に存在する。逆の実施形態では、バルブ自体が堅牢にされるか、又は、上述のように、追加の保護によって、汚れ、及び該当する場合には噴霧水からやはり保護される。
【0025】
例えば、常閉バルブを圧力制御によって開くことができる好ましい実施形態では、ばねが、受動的に開くため設けられ、印加された圧力の結果としてばね力を超えると、バルブ本体が開かれ、圧力がばね力以下に低下すると再び閉じる。
【0026】
1つの実施形態では、切り替え可能に閉じることができる、すなわち、電子制御によって開閉されるバルブが、追加的又は代替的に設けられる。この目的のために、対応する制御ループに従ってバルブを開かせる圧力センサ及び/又は温度センサが対応して設けられる。バルブによって、好適な設計では、ループ状導管システム内で圧力変動が発生することが達成されるが、しかしながら、周囲環境との交換は、所望の限界(すなわち、それぞれの圧力閾値及び/又は温度閾値)内でのみ、及び対応する閾値を超えた場合にのみ、発生し、したがって、吸着フィルタは、1つの動作では著しく少ないストレスを受け、したがって、システムの耐用年数が増加したり、又はより低いストレスの故に、そのようなシステムのコストが低減される。
【0027】
冷却システムの有利な実施形態では、膨張タンクの開口部は、入力及び出力を介して周囲環境に連通可能に接続され、
半透過性膜を介してのみ空気を濾過するために、出力は、周囲環境に関連しており、汚れをはじくかつ/又は液体をはじく方式にあること、が更に提案される。
【0028】
今、ここでは、膨張タンクが周囲環境に対して開かれ、半透膜が出力に設けられることが提案される。半透膜は、炭化水素化合物が漏出することが防止され、したがって、まったく逸出しないか又は無視できる量だけ逸出することを保証する。
【0029】
半透膜の透過性は、ここでは技術的観点から、すなわち十分な機能性に関して及び経済的側面の下で説明され、したがって、漏れは確かに発生する可能性があることに留意されたい。塩基性又は酸性の液体の場合に膜に損傷が生じ、それによってはじく機能を損なう可能性があることも考慮されない。例えば、膜のために更なる保護も設けられ、したがって、噴霧水が、特に冬期に氷に対して道路上に塩が使用されるとき、膜に影響を与えること、又は膜に過度に影響を与えることが防止される。例えば、動作状態のための流量はほとんどの場合に低いので、迷路状通路及び/又はチャネルの収縮が十分である。例えば、好適な膜は、(例えば、対応するコーティングによって)好ましくは疎水性表面を有する多孔質織物である。
【0030】
更なる態様によれば、冷却システムであって、少なくとも以下の構成部品:
第1の冷却液のための少なくとも1つの入口と、
第1の冷却液のための第1の出口と、
ガスのための第2の出口と、
少なくとも1つの入口と出口との間の接続チャネルと、を有する膨張タンクを備え、
接続チャネルは、少なくとも1つの入口から第1の冷却液のための第1の出口に向かって広がるように構成され、
第1の冷却液のための入口及びガスのための第2の出口のうちの一方は、各動作状態における設置状況に対して、水平及び/又は垂直オフセットによって、第1の冷却液のための第1の出口の上に配置される、冷却システムが提案される。
【0031】
この場合、各動作状態において、対応する設置状況の水平オフセットの故に、第1の冷却液のための入口が第1の冷却液のための第1の出口の上に常に配置されることが保証される、膨張タンクが提案される。自動車の用途では、そのような膨張タンクは、主に自動車の横断方向及び長手方向、すなわち地球の重力場を横切る方向に、強力な加速を受ける。
【0032】
膨張タンクは、例えば、冷却システム内で、循環後に、膨張タンクに入る第1の冷却液のための入口を含む。1つの用途では、電動機の入口は、すぐ下流に配置される。更に、それを介して第1の冷却液が冷却システム又はループ状導管システム内を更に循環される第1の出口が設けられる。例えば、第1の出口は、循環ポンプのすぐ上流に配置される。第1の出口を介して、第1の冷却液は、更なる搬送のために、ループ状導管システムに入り、ガス内包からできるだけ分離される。更に、冷却液から分離されるか、又は(例えば、温度に関連した)冷却液の体積増加の故に変位したガスがそれを介して逸出することができる第2の出口が設けられる。好ましい実施形態では、第2の出口は、第1の冷却液の体積が減少し、過度の真空の発生を回避するためにガスが外部から引き込まれることを条件に、ガスのための入口でもあることに留意されたい。しかしながら、出口は必ずしも自由周囲環境に面する必要はなく、1つの実施形態では、誘導方式で更なるチャンバに接続されており、この場合、ガスの良好な圧縮性及び対応する体積によって、第1の冷却液中又はループ状導管システム内の過度の圧力上昇又は圧力降下が防止されることにも留意されたい。
【0033】
入口と出口との間に接続チャネルが設けられる。接続チャネルは、第1の冷却液の一定の搬送速度を仮定して、第1の冷却液の搬送流量が、ここでは減少流量を調節し、したがって、冷却液中の捕捉ガスのトリガに有利であるような、広がり方式で構成される。代替的又は同時に、第1の出口に向かって接続チャネルが広がることに起因して、圧力低下が発生し、それはやはり、第1の冷却液中のガスのトリガを搬送する。(ガスのための)第1の出口と第2の出口との間の接続は、好ましくは、第2の出口に向かって先細の形状で形成され、したがって、再び、対応する動作状態におけるガスの加速及び/又は圧力増加が、ガスの排出、及び冷却液とガスとの間の界面での最小圧力を保証することに留意されたい。
【0034】
今、ここでは、設置状況において水平であるオフセットが設けられ、好ましくは、オフセットは、垂直距離とほぼ同じの、接続チャネルの水平延在域の極限までの水平距離を有する。これは、車両加速度による地球加速度のオーバーレイに起因して、幾何学から逸脱する全体的加速度が存在する場合でも、この入口からの第1の冷却液に対して、最高点が常に形成されることを保証する。したがって、膨張タンク内の脱気部が最大化され、したがって、膨張タンクは、第1の冷却液中のガス内包を回避するのに特に効率的である。
【0035】
有利な実施形態では、第1の冷却液のための第2の入口が提供され、これは、好ましくは、膨張タンクを冷却システム内で動作させるときに液面の下に位置する。例えば、第2の入口は、第1の冷却液のための第1の出口とほぼ同じ高さに配置される。好ましい実施形態では、そうすると、第1の冷却液は、(上述されたような)第1の入口及び第2の入口の両方を介して膨張タンクに供給され、したがって、第2の入口を介して膨張タンクに入る第1の冷却液のための脱気経路が著しく短縮されるが、作動状態において、循環ポンプがより多くの気体成分を引き付けることが安全に防止される(いわゆる空気吸引が回避される)。
【0036】
ここで、前述の膨張タンクを冷却システムに使用することが提案される。半透過性膜及び/又は吸着フィルタが設けられている、ここで説明される出力は、ガスの第2のための出口と同義ではなく、むしろ、更なる隔室が下流に配置され得、その中に、そのような膜が恐らく配置され、それによって入力及び/又は出力が形成され、膨張タンクの第2の出口に接続され、上記の定義に従って、システム全体が、上述の膨張タンクとともに冷却システム内に形成され、それが、冷却システムに関連する膨張タンクと称されることに留意されたい。更なる実施形態では、前述のような入力及び出力は、第2の出口から構成されるか、又は膨張タンク内の出口の上流に配置される。
【0037】
冷却システムの有利な実施形態では、膨張タンクの壁は、
第1の冷却液のための入口を備える第1のタンク部と、
出口を備える第2のタンク部と、
第1のタンク部と第2のタンク部との間の仕切りがそれから形成される第3のタンク部と、によって形成され、
入口及び第2の出口は、膨張タンクの最長延在域を介してのみ互いに連通可能に接続される、ことが更に提案される。
【0038】
ここで提案された膨張タンクは、特に容易に取り付け可能であり、3つのタンク部を設けることによって安価に製造され、好ましくは、第1のタンク部及び第2のタンク部は外壁を形成し、第3のタンク部は、他の2つのタンク部の間の内部仕切りを形成するのみである。1つの実施形態では、少なくとも第1のタンク部及び第2のタンク部は、例えば、溶接又ははんだ付け又はろう付けによって、材料ロック方式で合わせて接合される。第3のタンク部(仕切り)は、1つの実施形態では、好ましくは、やはり例えば、材料ロックの液密方式で挿入されるのみで、好ましくは、他のタンク部のうちの少なくとも1つに気密に接続される。
【0039】
第1のタンク部及び第2のタンク部の入口及び出口の配置はそれぞれ、必ずしも接続チャネルが第1のタンク部内を入口から出口までのみ、又は第3のタンク部に沿って走ることを意味するものではなく、任意選択的に、開始点から少なくとも一方の側に向かって、接続チャネルの第2のタンク部から壁を形成することに留意されたい。好ましい実施形態では、第1のタンク部及び/又は第2のタンク部のみが取り付け可能性を作り出す。仕切りによって、膨張タンクの接触が作り出され、互いに平行である接続チャネルの2つのチャネル部分が作り出される。有利な実施形態では、更なる空間的配向において、互いに平行である接続チャネルの2つのチャネル部分は、仕切りからも作り出される。例えば、第3のタンク部は、L字形を有し、好ましくは、L字形の壁のうちの一方の一部分が更にねじられ、ひいてはL字形になり、したがって、互いに平行な小さな空間延在域内にチャネル部分を形成する合計3つの部分が、それによって形成される。
【0040】
膨張タンクの最長延在域は、膨張タンクの形状に関し、ここでは、接続チャネルの延在域を意味することに留意されたい。薄壁膨張タンク、例えば、(例えば、深絞りを介して)シートから形成された膨張タンクでは、接続チャネルの形状は膨張タンクの外側形状に対応し、したがって、膨張タンクの最長延在域は、おおよそ膨張タンクの外側形状又はおおよそ接続チャネルの最長延在域に対応する。第3のタンク部から形成される仕切りは、膨張タンクの最長延在域と比較して、接続チャネルの距離の増大を提供する。
【0041】
冷却システムの有利な実施形態では、液体を保持するための迷路状通路が、第1の冷却液のための第1の出口とガスのための第2の出口との間の接続チャネル内に形成されることが更に提案される。
【0042】
ここで提案された迷路状通路は、主に、迷路状通路内の複数の通路間及び/又はガスのための第2の出口に向かって、直線接続が形成されず、したがって、迷路状通路は、第2の出口に向かって(例えば、スロッシング移動によって)流れ得る第1の冷却液の大部分を保持し、好ましくはまた、ガスに同伴される冷却液は、迷路状通路の対応する壁に付着し、したがって、ガスのための第2の出口に向かって流れることが防止されることを特徴とする。特に好ましい実施形態では、迷路状通路はまた、出口を介して外側から入る液体、例えば、噴霧水又は周囲環境からの空気由来の増加湿度が迷路状通路の壁によって保持され、第1の冷却液中に混合されないように、又は無視し得る量のみであるように配置される。これは、周囲環境への第2の出口が開かれ、同時に第1の冷却液が誘電体冷却液であり、したがって、水の進入の場合に電気絶縁の効率が低下する場合に特に重要である。
【0043】
更なる態様によれば、自動車のパワートレインのための熱管理モジュールであって、少なくとも以下の構成部品:
トランスミッションのための、第2の循環方向を有し、かつ第2の熱交換器を有するオイル回路と、
少なくとも1つの車両構成部品のための、第3の循環方向を有し、かつ第3の熱交換器を有する水回路と、
電動機のための、上記説明による1つの実施形態による冷却システムと、備え、
好ましくは、電動機のためのパルスインバータが、水回路内に配置されている、熱管理モジュールが提案される。
【0044】
ここで、上述の冷却システムは、自動車のパワートレインのための熱管理モジュール内に統合され、この熱管理モジュール[TMM]は、その機能及びタスクでよく知られている。パワートレインの構成部品に加えて、他の車両構成部品、例えば、(好ましくはトラクション)バッテリは、好ましくは、やはり温度制御される。
【0045】
トランスミッション及びパルスインバータなどの、そのような電動機が統合されているパワートレインの他の構成部品は、冷却システムとは別個の少なくとも1つの冷却回路内で冷却されることが好ましい。例えば、(好ましくは切り替え可能な)ギアボックス及び/又は差動器を備えるトランスミッションは、オイルを有するオイル回路によって、好ましくは直接、冷却される。直接冷却は、例えば、潤滑油の代替として、トランスミッションの構成部品(例えば、ギア)に直接接触する流れである。例えば、オイル回路は従来型である。1つの有利な実施形態では、オイル回路内に第2の循環方向を生成するための第2の循環ポンプが、第1の冷却液のためにループ状導管システム内に第1の循環方向を生成するための第1の循環ポンプに、いわゆるタンデムポンプとして結合され、したがって、両方の循環ポンプに対して単一駆動で十分である。それによって、廃熱は、第2の熱交換器を介して放出される。
【0046】
オイル回路又は冷却システム内に配置されていない、温度制御されるべき車両構成部品は、好ましくは、水回路によって温度制御される。水は、多くの場合、水-グリコール混合物である。水回路の水は、第3の熱交換器を介して第3の循環方向に(第3の循環ポンプによって)搬送される。第3の熱交換器は、好ましくは、周囲環境又は周囲空気との熱伝達のために構成され、好ましくは、ファンが、第3の熱交換器の(強制)対流のために設けられる。
【0047】
それぞれの構成部品は、例えば、冬季温度では、オイル回路及び/又は水回路内で加熱可能であるが、ここでの主な状態は、廃熱の放散でもあることに留意されたい。それぞれの循環方向はまた、必要に応じて、可逆的でもある。
【0048】
1つの有利な実施形態では、第1の冷却液を用いて冷却システムによって温度制御されるべき電動機のためのパルスインバータが、温度制御のために水回路内に配置される、すなわち、第1の冷却液を用いて冷却システム内で温度制御される構成部品ではない。電動機のための冷却システム内の構成部品の数を低く保つことは有利である。パルスインバータには、誘電体の(第1の)冷却液の使用は必要ない。したがって、パルスインバータを冷却システムの外側に配置することが有利である。
【0049】
熱管理モジュールの有利な実施形態では、水回路は、熱伝達のために、好ましくは周囲環境への冷却システムの唯一の液体結合熱伝達として、電動機のための冷却システムの第1の熱交換器に接続され、
好ましくは、水回路の第3の循環方向で、電動機のためのパルスインバータが、第1の熱交換器の上流に配置されることが更に提案される。
【0050】
ここでは、冷却システムは、第1の冷却液及び水回路に熱結合されること、すなわち、水回路は、第1の冷却液の温度制御のための(第1の)熱交換器によって構成されることが提案される。したがって、第1の熱交換器では、例えば、(技術的には液体交換なしで)電動機の冷却時に、熱は、第1の冷却液から水回路内の水に放出される。
【0051】
好ましい実施形態では、電動機(及び好ましくは冷却システム内の更なる構成部品)の温度制御のため、並びに第1の冷却液から熱を放散するために、更なる(強制)対流は提供されない。むしろ、そうすると、第1の熱交換器は、熱を伝達するための冷却システムの唯一のユニットであり、すなわち水回路と一体である。
【0052】
好ましい実施形態では、パルスインバータは、水回路の(第3の)循環方向で第1の熱交換器の上流に配置され、したがって、パルスインバータの上方の温度勾配はできるだけ大きくなり、一方、(電動機の大抵は非常に大きな熱出力に起因する)第1の熱交換器の上方の温度勾配は依然として十分である。
【0053】
1つの有利な実施形態では、(第1の)循環方向を逆転させるための逆転バルブが設けられる。1つの実施形態では、そうすると、第1の冷却液は別個の戻り通路を通過する。好ましくは、両方向に同じ導管が使用される。
【0054】
したがって、主方向では、構成部品の順序は(第1の循環ポンプから始まって)次のとおりである:
1.第1の循環ポンプ、
2.第1の熱交換器、
3.電動機、及び
4.膨張タンク。
【0055】
上記説明によるバイパス部は、好ましくは、ループ状導管システムの導管部を、第1の循環ポンプから、膨張タンクの上流の導管部に接続するように、主方向に配置される。また、副方向では、構成部品の順序は次のとおりである:
1’.第1の循環ポンプ、
2’.電動機、
3’.第1の熱交換器、及び
4’.膨張タンク。
【0056】
冷却システム内の考えられる更なる構成部品もまた逆に供給されるか、又はごく少数若しくは前述の3つの構成部品のみが逆の順序で供給されることに留意されたい。
【0057】
熱管理モジュールの有利な実施形態では、水回路はまた、熱伝達のために、好ましくは周囲環境への冷却システムの唯一の液体結合熱伝達として、オイル回路の第2の熱交換器に接続され、
好ましくは、水回路の第3の循環方向で、第1の熱交換器は、第2の熱交換器の上流に配置されること、が更に提案される。
【0058】
ここでは、オイル回路と水回路とは互いに熱結合されること、すなわち、水回路は、オイルの温度制御のための(第2の)熱交換器によって構成されること、が提案される。第2の熱交換器では、例えば、(技術的には液体交換なしで)トランスミッションが冷却するとき、オイル循環中のオイルからの熱は、水回路中の水に放出される。
【0059】
好ましい実施形態では、トランスミッションの温度制御のために(及び好ましくはオイル回路内の更なる構成部品のためにも)、並びに油から熱を放散するために、更なる(強制)対流は提供されない。むしろ、そうすると、第2の熱交換器は、熱伝達のためのオイル回路の唯一のユニットであり、すなわち水回路と一体である。
【0060】
好ましい実施形態では、第1の熱交換器は、水回路の(第3の)循環方向で第2の熱交換器の上流に配置され、したがって、第1の熱交換器の上方の温度勾配はできるだけ大きくなり、一方、(電動機と比較して、トランスミッション内の大抵はより高い許容温度レベルに起因して)第2の熱交換器の上方の温度勾配は依然として十分である。
【0061】
更なる態様によれば、自動車のためのパワートレインであって、少なくとも以下の構成部品:
-トルクを提供するための少なくとも1つの電動機と、
-電動機のトルクによって、関連する自動車を駆動するための少なくとも1つの駆動ホイールと、
-電動機と駆動ホイールのうちの少なくとも1つとの間でトルクを伝導するための少なくとも1つのトランスミッションと、
-電動機のうちの少なくとも1つのための上記説明に従う1つの実施形態による冷却システム、並びに/又は、電動機のうちの少なくとも1つ、トランスミッションのうちの少なくとも1つ、及び車両構成部品のうちの少なくとも1つ、好ましくは電動機のうちの少なくとも1つのためのパルスインバータのための、上記説明に従う1つの実施形態による熱管理モジュールと、を備える、パワートレインが提案される。
【0062】
今、ここでは、それによってトルクが生成される少なくとも1つの電動機を備えるパワートレインが提案される。それぞれの電動機のトルクは、少なくとも1つの駆動ホイールへのトランスミッションを介して伝達可能である。少なくとも1つの駆動ホイールは、自動車を前進駆動するように構成されている。パワートレインの構成部品の温度制御は、上記説明に従う1つの実施形態による冷却システム又は冷却システムを備える熱管理モジュールによって実行される。第3の熱交換器については、好ましくは、周囲環境の空気が、すなわち駆動風によって受動的に及び/又はファンによって能動的に、使用される。
【0063】
更なる態様では、自動車を前進駆動するために、輸送セルと、上記説明に従う一実施形態によるパワートレインとを有するシャーシを備える自動車が提案される。
【0064】
自動車は、少なくとも1人の乗客及び/又は物品を輸送するために提供され、乗客隔室及び/又は貨物セルを備える。自動車は、電動機のうちの少なくとも1つのトルクによって、少なくとも1つの駆動ホイールを介して駆動される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
関連する技術的背景に照らし、好ましい構成を示す添付の図面を参照して、上述の発明を以下に詳細に説明する。発明は、純粋に概略的な図面によっていかようにも限定されず、図面は、寸法に忠実ではないし、割合を定義するのに好適でもないことに留意されたい。図は次のとおりである。
図1】熱管理モジュールの概略図を示す。
図2】膨張タンクの分解図を示す。
図3図2による膨張タンクの切欠図を示す。
図4図2及び図3による膨張タンクの断面図を示す。
図5】沈静部の分解図を示す。
図6】熱管理モジュールを有する自動車の概略上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1には、電動機2のための冷却システム1を備える熱管理モジュール37が、概略図で示されている。冷却システム1の第1の熱交換器12は、ここでは、(ここでは断面のみで示された)水回路43との熱伝達ために配置されており、したがって、冷却システム1のループ状導管4の第1の冷却液5と水回路43の水(混合物)とは互いに熱交換状態にある。トランスミッション39のためのオイル回路40の第2の熱交換器42が、やはりここでも、(ここでは断面でのみ示された)水回路43との熱伝達のために構成され、したがって、オイル回路40のオイルと水回路43の水(混合物)とは互いに熱交換状態にある。
【0067】
水回路43では、冷却システム1内で温度制御されるべき電動機2のためのパルスインバータ46が、ここでは、すなわち水回路43の(第3の)循環方向44で、第1の冷却液5を有する冷却システム1の第1の熱交換器12の上流に配置されている。加えて、第2の熱交換器42は、第3の循環方向44で第1の熱交換器12の後ろに配置されている。
【0068】
オイル回路40では、(第2の)循環方向41において、トランスミッション39及びトランスミッション構成部品52が第2の熱交換器42の後ろに配置され、ここでは並列に接続されている。続いて、オイル溜め53、次いで(第2の)粗目フィルタ51、(図に示された)最後に、第2の循環ポンプ54がオイル回路40に配置されている。第2の循環ポンプ54は、ここでは(純粋に任意選択的に)、第1の冷却液5を用いる冷却システム1の第1の循環ポンプ6とともにタンデムポンプとして設計されている。
【0069】
冷却システム1は、(第1の)循環方向7で以下の構成部品が配置されているループ状導管システム4を備える:
1.第1の循環ポンプ6、
2.第1の熱交換器12、
3.モータ入力端子10及びモータ出力端子11を介して灌流される電動機2、並びに
4.膨張タンク8。
【0070】
任意選択的な構成部品として、モータ入力端子10の前方の(第1の)粗目フィルタ50がここでは示されている。
【0071】
膨張タンク8は、第1の冷却液5で部分的に、かつガス9で部分的に満たされ、したがって、圧縮可能ガス9を介した温度関連の体積増加から生じる圧力増加を調整するか、又は少なくとも緩和することができる。膨張タンク8内には、吸着フィルタ15もまた配置されている。図によれば、バルブ21、22が、膨張タンク外側の周囲環境14と(吸着フィルタ15を有する)入力23との間、並びに出力24と膨張タンク8との間に、すなわち、(吸着フィルタ15を有する)入力23、並びに出力24に、配置されている。バルブ21、22は、(ここでは破線矢印として示された)周囲環境14とは反対側の、膨張タンク8の周囲環境14への開口部13を閉じるように構成されている。流出側バルブ21が、例えば、圧力制御されることによって、ガス9の排出を防止することができる。流入側バルブ22が、例えば、圧力制御されることによって、ガス9の流入を防止することができる。吸着フィルタ15を濾過することにより、例えば、膨張タンク8からの炭化水素化合物の逸出及び周囲環境14からの膨張タンク8内への水分の進入が防止されるか、又はその量が無視し得ることが保証される。吸着フィルタ15は、1つの有利な実施形態では、活性炭17及び乾燥剤16(図5を参照)を含む。周囲環境14とのガス交換が実行される状態の数及び/又は継続時間の減少により、バルブ21、22の閉鎖によって、吸着フィルタ15の耐用年数の増加を達成することができる。この目的のために、バルブ21、22は、好ましくは、常閉であるように設計される。バルブ21、22は、好ましい実施形態例では、圧力制御及び/又は温度制御される。したがって、バルブ21、22は、圧力閾値及び/又は温度閾値でのみ開く。
【0072】
示された熱管理モジュール37の実施形態では、周囲環境14への熱伝達のために冷却システム1及びオイル回路40から熱交換器が設けられていないことに留意されたい。むしろ、第1の熱交換器12及び第2の熱交換器42は、水回路43に結合されている。
【0073】
図2には、膨張タンク8の分解図が示されており、膨張タンク8は、第1のタンク部32、第2のタンク部33、及び第3のタンク部34を備える。第1のタンク部32は、ループ状導管システム4から第1の冷却液5を導入するように構成された第1の入口25(図1と比較)と、(純粋に任意選択的に)第2の入口26(ここでは閉塞されている、図3及び図4と比較)と、を備える。第2のタンク部33は、迷路状通路36を形成し、第1の出口27及び第2の出口28を備え、第2の出口28は、ガス9の排出のために構成され、開口部13として具現化されている。第3のタンク部34は、他の2つのタンク部32、33の間の仕切り35を形成し、仕切り35は、第1の冷却液5が第1の入口25から、第2のタンク部33の迷路状通路36を有する容積内に入り、第2の出口28へ直接進むことを防止する。むしろ、膨張タンク8内で第1の冷却液5が灌流するべき接続チャネル29の延在域(図3と比較)が、仕切り35によって作り出される。3つのタンク部32、33、34は、好ましくは、例えば、溶接又ははんだ付け又はろう付けによって、材料ロック方式で合わせて接合される。3つのタンク部32、33、34は一緒になって、それらの外側表面とともに膨張タンク8の壁31を形成する。例えば、タンク部32、33、34は、すべて若しくは部分的にシート変形によって、例えば、深絞りによって、又はすべて若しくは部分的に射出成形によって、形成される。この実施形態では、壁厚は、薄くて、例えば、技術的に実現可能な製造の文脈では、ほぼ一定であるので、膨張タンク8の内部形状はその外部から見える形状によって識別される。
【0074】
ここで 第2のタンク部33によって形成される迷路状通路36は、とりわけ、迷路状通路36内の複数の相互にオフセットされた通路が(ガス9用の)第2の出口28への直線的な接続を形成しないという事実によって特徴付けられる。したがって、(例えば、スロッシング移動によって)第2の出口28に向かって流れる第1の冷却液5は、迷路状通路36によって大部分が保持され、また、ガス9によって同伴された冷却液5は、迷路状通路の対応する壁31に付着し、したがって、ガス9のための第2の出口28に向かって流れることが防止される。
【0075】
図3には、図2による膨張タンク8の切欠図が示されており、3つのタンク部32、33、34は、この図では合わせて密封され、壁31は、外見上、閉じている。図に示されたように、右上端において、第1の入口25は、第1の冷却液5を導入するように構成された第1のタンク部32に配置されている。この実施形態例では、第2の入口26が、図に示されたように、タンク8の右下端に追加的に配置され、第1の冷却液5中に導入されるように構成されている。第3のタンク部34の仕切り35の故に、第1の冷却液5は、図によれば左に流れることを防止され、したがって、部分的に接続チャネル29を通って流れる。ここでは、接続チャネル29は、図平面内に延在し、第1の出口27に向かって広がっている。第1の冷却液5の流れは、(隠れていないところでは実線の、及び隠れたところでは破線の)矢印によって示されている。第1の出口27を介して、できるだけガス内包のない第1の冷却液5は、更なる搬送のために、ループ状導管システム4の更なる部分に入って戻る(図1と比較)。更に、ガス9がそれを介して逸出することができる第2の出口28が設けられ、ガス9(又は少なくとも気泡状ガス9)は、第1の冷却液5の減速及び沈静の結果として接続チャネル29に沿って大幅に分離され、鎖線で図に示されているように、より高い第2の出口28まで流れる。ガス9は、第2のタンク部33内の迷路状通路36(ここでは隠れている、図4と比較)を通過し、第2の出口28から出る。
【0076】
この実施形態例では、(切り欠きによって可視化される)第2の出口28は、水平方向に2つに分割され、純粋に任意選択的な分離要素55が、(外部への開口部13を形成する)第2の出口28をガス9のための出力24及び入力23に分離する。ガス9の進入は、そうでなければ、体積の減少により、ループ状導管システム4内の圧力が過度に減少する場合に必要である。好ましい実施形態では、外部への開口13を備える出口は、導管又は沈静部18(図5と比較)に接続されることに留意されたい。
【0077】
図4には、図2及び図3による膨張タンク8が断面図で示されている。ここでは、上記説明では見えなかった、又は不十分にしか見えなかった構成部品のみを説明する。ここでは、第2のタンク部33によって形成される迷路状通路36が見えるように、断面図が選択されている。この実施形態例では、迷路状通路36は、(ここには示されていない)ガス9のために第2の出口28を介して外部から入る液体(例えば、噴霧水又は空気由来の増加湿度)が、迷路状通路36の壁31によって周囲環境14から保持され、第1の冷却液5中にそれぞれ混合されないように、又は無視し得る量のみが混合されるように配置される。第1の冷却液5から分離されたガス9(ここでは、鎖線で示された、考えられるガス流20)は、第2の出口28に向かって流れるとき、迷路状通路36によって、邪魔されないか、又は非常にわずかにだけ邪魔される。
【0078】
水平及び/又は垂直オフセット30は、第1の入口25から、第1の冷却液25が図4の面外への流れに移行する下部まで延びており、示された実施形態でのオフセットは、接続チャネル29の水平延在域の極限までの水平距離が垂直距離とほぼ同じである。これは、車両加速度と重力加速度との重畳により、幾何学的に規定される配向から逸脱する全体的加速度が存在する場合でも、第1の冷却液5のための第1の入口25は、常に最高点を形成することを保証する。したがって、膨張タンク8内で、脱ガス距離が最大化され、したがって、膨張タンク8は、第1の冷却液5中のガス内包物を回避するのに特に効率的である。したがって、第1の冷却液5のための第1の出口27は、図に示されたように、水平及び/又は垂直オフセット30の下端に配置される。
【0079】
図5には、沈静部18が分解図で示されており、沈静部18は、純粋に任意選択的に、蓋56、セパレータ57、及び沈静迷路状通路19を備える。沈静迷路状通路19は、開口部13によって膨張タンク8に流体接続され、したがって、ガス流20が膨張タンク8内に出入りして沈静部18内に流入することができる。周囲環境14から入ってくるガス9(又は空気)は、それが沈静部18内に流入することができる前に、まず吸着フィルタ15を介して流れなければならない。ここでは、吸着フィルタ15は、(純粋に任意選択的に周囲環境側に配置された)乾燥剤16及び(純粋に任意選択的にタンク側に配置された)活性炭17を含む。最も外側の構成部品は、ここでは吸着フィルタ15からのガス流20中に形成される。好ましくは、開口13は、バルブ、好ましくは、入力23及び出力24のための別個のバルブ21、22(図1と比較)によって、周囲環境14に対して閉じられる。
【0080】
この実施形態例では、沈静迷路状通路19は、液体が、特に好ましくは、周囲環境14から入ってくる空気から湿気を分離することができるように構成されている。同じ又は代替の実施形態例では、沈静部18によって、(恐らくはやはり流動ガス9中に溶解又は担持された液滴の形態の)内部から逸出する冷却液5を、沈静迷路状通路19によって分離することができる。
【0081】
図6には、熱管理モジュール37を有する自動車3が、パワートレイン38とともに、概略上面図で示されている。自動車3は、そのシャーシ48のほぼ中央にある輸送セル49、例えば乗客隔室と、そのシャーシ48の側面にある自動車3を走行させるための4つの駆動ホイール(車輪)47とを備える。前部には、(任意選択的にここでは純粋に同軸の)電動機2が存在し、後部には、(この場合、純粋に任意選択的に軸方向に配置された)更なる電動機2が存在し、かつ後部には、トランスミッション39及び差動器58が存在し、好ましくは、差動器58は(ここには示されていない)オイル回路40に統合されている。前後の電動機2の各々に、パルスインバータ46が設けられている。パルスインバータ46並びに第1の熱交換器12及び第2の熱交換器42の温度制御のために、水回路43が構成され、水回路43の熱を、(ここではファンとともに示されている)第3の熱交換器45を介して周囲環境14に放散することができる。ここでは、引き出し導管は実線で、戻り線はそれぞれ点線として示されており、したがって、水回路43の(第3の)循環方向44は図では反時計回りとなる。同様に、これは、電動機2の冷却システム1及びオイル回路40において示されている。例えば、冷却システム1、オイル回路40、及び水回路43は、図2(少なくともその抜粋)に示されるように具現化される。更に、ここでは、必要な制御並びに/又は示された(及び恐らくは更なる)構成部品の制御をそれによって実施することができるプロセッサ59が示されている。プロセッサ59は、例えば、CPUとして構成され、かつ/又は自動車3の搭載コンピュータの一部である。
【0082】
ここで提案された膨張タンク及び冷却システムを用いて、冷却液の効率的な通気を実現することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 冷却システム
2 電動機
3 自動車
4 ループ状導管システム
5 第1の冷却液
6 第1の循環ポンプ
7 第1の循環方向
8 膨張タンク
9 ガス
10 モータ入力端子
11 モータ出力端子
12 第1の熱交換器
13 開口部
14 周囲環境
15 吸着フィルタ
16 乾燥剤
17 活性炭
18 沈静部
19 沈静迷路状通路
20 ガス流
21 流出側バルブ
22 流入側バルブ
23 入力
24 出力
25 第1の入口
26 第2の入口
27 第1の出口
28 第2の出口
29 接続チャネル
30 オフセット
31 壁
32 第1のタンク部
33 第2のタンク部
34 第3のタンク部
35 仕切り
36 迷路状通路
37 熱管理モジュール
38 パワートレイン
39 トランスミッション
40 オイル回路
41 第2の循環方向
42 第2の熱交換器
43 水回路
44 第3の循環方向
45 第3の熱交換器
46 パルスインバータ
47 駆動ホイール
48 シャーシ
49 輸送セル
50 第1の粗目フィルタ
51 第2の粗目フィルタ
52 トランスミッション構成部品
53 オイル溜め
54 第2の循環ポンプ
55 分離要素
56 蓋
57 セパレータ
58 差動器
59 プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】