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  • 特開-車両用ハイブリッド変速機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175676
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】車両用ハイブリッド変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/031 20120101AFI20231205BHJP
   F16D 13/46 20060101ALI20231205BHJP
   F16H 3/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F16H57/031
F16D13/46 C
F16H3/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123240
(22)【出願日】2023-07-28
(62)【分割の表示】P 2023532586の分割
【原出願日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】102020007296.8
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】デングラー,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ブランデンブルク,マークス
(72)【発明者】
【氏名】エアテル,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヘアター,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ムーラー,エルマー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイゴールド,ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ビルジェ,プリタム
【テーマコード(参考)】
3J056
3J063
3J528
【Fターム(参考)】
3J056AA57
3J056AA65
3J056GA02
3J063AA01
3J063AB02
3J063AC03
3J063BA01
3J063BB27
3J063BB41
3J063CA01
3J063CC16
3J063CC23
3J063CD13
3J063CD41
3J063XA08
3J528EA25
3J528EB62
3J528EB63
3J528FB12
3J528FC32
3J528FC65
3J528FC66
3J528GA01
3J528HA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】変速機の構造をできるだけ効率的でコンパクトなものにする。
【解決手段】本発明は、横方向(y)に通る変速機入力軸(5)と、変速機入力軸(5)と平行に配置されている少なくとも1つの副軸(6)と、変速機入力軸(5)と同軸上に配置された、少なくとも1つのクラッチを有するクラッチ装置(7)と、差動入力歯車(4)を有し、差動入力歯車の回転軸(19)が変速機入力軸(5)に対して平行に配置されている差動装置と、回転子および固定子を有し、回転子回転軸(9)が変速機入力軸(5)に対して平行に配置されている電気機械(3)と、変速機制御装置(11)と、を備え、横方向(y)に対して垂直な縦方向(x)に見て、差動入力歯車(4)、変速機入力軸(5)、変速機制御装置(11)を含む変速機制御器の順に連続して配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-横方向(y)に通る変速機入力軸(5)と、
-前記変速機入力軸(5)に対して平行に配置されている少なくとも1つの副軸(6)と、
-前記変速機入力軸(5)と同軸上に配置されている、少なくとも1つのクラッチを有するクラッチ装置(7)と、
-差動入力歯車(4)を有し、
前記差動入力歯車の回転軸(19)が前記変速機入力軸(5)に対して平行に配置されている差動装置と、
-回転子および固定子を有し、回転子回転軸(9)が変速機入力軸(5)に対して平行に配置されている電気機械(3)と、
-変速機制御装置(11)と、
を備え、
-横方向(y)に対して垂直に配置されている縦方向(x)に見て、
前記差動入力歯車(4)、前記変速機入力軸(5)、および前記変速機制御装置(11)を含む変速機制御器の順に連続して配置されており、
前記横方向(y)に対して垂直に、かつ前記縦方向(x)に対して垂直に配置されている高さ方向(z)に、前記電気機械(3)用パワーエレクトロニクス(12)の少なくとも一部が、前記変速機制御装置(11)に隣接して配置されており、
前記電気機械(3)は、前記高さ方向(z)において、油圧式変速機制御器(10)の上部に隣接して配置され、前記縦方向(x)において、前記油圧式変速機制御器(10)に重なって配置されている車両用ハイブリッド変速機(1)において、
前記パワーエレクトロニクス(12)の直流接続(16)は、前記高さ方向(z)には前記回転子回転軸(9)の上部に、前記縦方向(x)には前記差動入力歯車(4)の前記回転軸(19)と前記回転子回転軸(9)の間に配置されていることを特徴とするハイブリッド変速機(1)。
【請求項2】
前記変速機制御装置(11)に隣接して配置されている前記パワーエレクトロニクス(12)の前記少なくとも一部は、意図されたとおりに使用される場合、前記変速機制御装置(11)の上部に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッド変速機(1)。
【請求項3】
前記パワーエレクトロニクス(12)のその他の部分は前記縦方向(x)に延伸し、前記高さ方向(z)に前記電気機械(3)の上部に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のハイブリッド変速機(1)。
【請求項4】
前記パワーエレクトロニクス(12)は、前記縦方向(x)および/または前記横方向(y)に少なくとも部分的に前記変速機制御装置(11)に重なって配置されていることを特徴とする、請求項1、2または3に記載のハイブリッド変速機(1)。
【請求項5】
前記パワーエレクトロニクス(12)のインバーターの回路基板(13)は、前記変速機制御装置(11)の回路基板(20)に対し前記高さ方向(z)に隣接し、かつ前記縦方向(x)に平行に配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド変速機(1)。
【請求項6】
前記パワーエレクトロニクス(12)の前記インバーターの前記回路基板(13)は、前記変速機制御装置(11)の前記回路基板(20)に対して20mmより小さな間隔をあけて、前記高さ方向(z)に面一に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載のハイブリッド変速機(1)。
【請求項7】
前記電気機械の回転子回転軸(9)は、縦方向(x)に前記変速機入力軸(5)と前記パワーエレクトロニクス(12)の少なくとも一部との間に配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のハイブリッド変速機(1)。
【請求項8】
前記電気機械(3)は、前記縦方向(x)に前記パワーエレクトロニクス(12)の少なくとも一部に隣接して配置されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のハイブリッド変速機(1)。
【請求項9】
前記電気機械(3)と前記パワーエレクトロニクス(12)を接続している交流接続(14)は、前記高さ方向(z)に前記回転子回転軸(9)の下部に配置されていることを特徴とする、請求項7に記載のハイブリッド変速機(1)。
【請求項10】
少なくとも、前記差動入力歯車(4)、前記変速機入力軸(5)、前記少なくとも1つの副軸(6)、前記電気機械(3)、前記変速機制御装置(11)、前記油圧式変速機制御器(10)、前記パワーエレクトロニクス(12)を収納する変速機ハウジング(2)は、前記縦方向(x)に前記変速機入力軸(5)とは反対の前記変速機制御装置(11)および前記パワーエレクトロニクス(12)の少なくとも一部の側に配置されているカバー(18)を有していることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のハイブリッド変速機(1)。
【請求項11】
前記横方向(y)、前記縦方向(x)、前記高さ方向(z)は、車両に取り付けられているハイブリッド変速機(1)の場合、記載した順番に、車両横方向、車両縦方向、車両高さ方向に該当することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のハイブリッド変速機(1)。
【請求項12】
前記クラッチ装置(7)は、デュアルクラッチおよび/または分離クラッチを有していることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のハイブリッド変速機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に詳しく定義されている種類の車両用ハイブリッド変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ハイブリッド変速機は、基本的に従来技術から知られている。ここで常に重要になるのは、変速機の構造をできるだけ効率的でコンパクトなものにすることである。例えば特許文献1は、電気機械とそのパワーエレクトロニクスをハイブリッド変速機に統合することを説明している。ここでの構造は、電気機械がいわゆるインライン配置、すなわち変速機主軸と同軸上で使用されるというものである。
【0003】
特許文献2におけるさらなる従来技術から、車両のデュアルクラッチ変速機が周知である。ここでは、取付けスペースを節約するため、電子油圧式制御ユニットがオイルチャンバー内に配置されている。この電子油圧システムは、一方では電気回路、他方では油圧式変速機制御器からなり、この場合、一般に変速機の電気制御を意味する変速機制御装置も変速機の構造内、つまりここでは変速機ハウジング内に一緒に統合されている。
【0004】
さらに、特許文献3から、油圧式制御器ならびに電気機械がハイブリッド変速機のハウジング内またはハウジング上に配置されているハイブリッド変速機が周知である。
【0005】
最後に、特許文献4から、電気機械のパワーエレクトロニクスと変速機が統合ハウジング内に一緒に配置されているハイブリッド変速機が周知である。
【0006】
これらの文献にもかかわらず、ハイブリッド変速機のコンパクトな構造に関しては、これによって特に変速機主軸に沿った軸方向にできるだけコンパクトな構造と高い出力密度を達成するために、最適化の大きな可能性が依然として残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010002746号明細書
【特許文献2】独国特許発明第102018002167号明細書
【特許文献3】独国翻訳文公開第112014001112号明細書
【特許文献4】独国特許発明第112009000022号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、請求項1の前提部に記載の特徴を備える車両のハイブリッド変速機をよりコンパクト化できるように改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づき、このことは、請求項1の特徴、およびここでは特に請求項1の特徴部に記載の特徴を持つハイブリッド変速機によって達成される。本発明のハイブリッド変速機の有利な実施形態および発展形態は、これに従属している従属請求項から明らかである。
【0010】
この車両用ハイブリッド変速機では、まず従来技術から周知のように、この変速機が横方向に延びる変速機入力軸と、これに平行に配置されている少なくとも1つの副軸とを備えている。その他にはクラッチ装置があり、これは、好ましくはデュアルクラッチとして、分離クラッチとして、またはそれらの組み合わせとして形成されていてよい。特に、デュアルクラッチとして形成する場合は2本の副軸が構造に含まれ、純粋な分離クラッチとしての形態では1本の副軸が含まれる。さらに差動装置も設けられており、これは差動入力歯車を有しており、その回転軸は変速機入力軸に対して、すなわち本発明に基づく構造では横方向と呼ばれる方向に対して平行に配置されている。固定子および回転子を備える電気機械も同様に、回転子の回転軸が変速機入力軸に対して平行に延びるように配置されている。電子式変速機制御を実現する変速機制御装置が設けられている。このとき、すでに言及した横方向に直交する縦方向に見て、差動入力歯車、変速機入力軸、変速機制御装置の順に連続して配置されている。
【0011】
変速機制御装置とは電子制御装置を意味し、これを用いてハイブリッド変速機の歯車セットの切替えユニット用アクチュエーターが制御される。このアクチュエーターは、周知の方式で油圧式アクチュエーターまたは電子機械式アクチュエーターまたはその両方の混合形式であってよい。油圧式アクチュエーターの場合、変速機制御装置は、例えば電磁弁および油圧ポンプを制御する。電気機械式アクチュエーターの場合、変速機制御装置は、例えばサーボモーターを制御する。有利には、変速機制御装置は、さらに、周知の方式で歯車セットの潤滑システムおよび冷却システムを制御するために形成されている。有利には、変速機制御装置は、電気機械の冷却システムを制御するためにも形成されていてよい。
【0012】
さらに、周知の方式で、横方向に対しても縦方向に対しても垂直に配置されている高さ方向に、電気機械用パワーエレクトロニクスの少なくとも一部が、特に有利には変速機制御装置に隣接して配置されている。このとき、パワーエレクトロニクスのこの部分は、構造的にもっとも大きな部分であるが、いずれにしてもインバーターの回路基板を含んでいる。この配置により、極めて効率的かつコンパクトな構造が得られる。従って高度なシステム統合が可能となり、これによって本発明に基づくハイブリッド変速機の高い出力密度が可能になる。これ以外に、そのようにコンパクトに形成できる構造は、構成部品の組み立てに関しても、車両設計時の取付けスペース要件に最適に適合させることができる。
【0013】
本発明に基づき、電気機械は、高さ方向において、油圧式変速機制御器の上部に隣接して配置され、縦方向において、この油圧式変速機制御器に重なって配置されるように設けられている。従って、変速機入力軸および少なくとも1つの副軸を備えるハイブリッド変速機の歯車セットが、電気機械、制御装置および油圧式変速機制御器とともに配置されている取付けスペースを最適に利用することができ、好ましくはこの油圧式変速機制御器は、縦方向に制御装置に隣接して配置されている。
【0014】
このとき、油圧式変速機制御器は、少なくとも、歯車セットのギアアクチュエーターを切替えるために使用されている制御弁、例えば電磁弁を備えている。有利には、油圧式変速機制御器は、ハイブリッド変速機の潤滑システムおよび冷却システムを制御するために使用されている弁も備えている。この油圧式変速機制御器は、変速機制御装置と電気的に接続されている。
【0015】
パワーエレクトロニクスとは、電気機械に配置されている周知の電子回路ユニットを意味している。パワーエレクトロニクスは、電気機械の制御に用いられる。
【0016】
ハイブリッド変速機の歯車セットとは、さまざまな変速比、すなわちさまざまなギア比を形成するために用いられるハイブリッド変速機を意味している。歯車セットには、少なくとも、入力軸、副軸、ならびにそれぞれこれらの軸と同軸上に配置されている歯車および切替えユニットが含まれている。
【0017】
高い出力密度を備えるコンパクト構造のハイブリッド変速機により、ボディシェルについては、衝突要件に関する構造を最適化することが可能になり、これにより、特にトラクションバッテリーによって高い追加重量が生じるようなハイブリッド変速機搭載車では、さらなる決定的な利点を提供することができる。
【0018】
一方向と平行に回転可能に取り付けられている要素の配置とは、回転可能に取り付けられている要素の回転軸がその方向に対して平行に配置されていることを意味する。従って、回転可能に取り付けられている2つの要素の平行配置とは、2つの要素の回転軸が平行に配置されているものと理解することができる。回転可能に支持されている別の2つの要素の同軸配置とは、別の2つの要素が同一の回転軸を持っているものと理解することができる。クラッチ装置が変速機入力軸と同軸上に配置されているとは、回転可能に取り付けられているクラッチディスクまたはクラッチ板が変速機入力軸と同軸上に配置されているものと理解することができる。
【0019】
本発明に基づくハイブリッド変速機の極めて好都合な発展形態によれば、この場合、パワーエレクトロニクスの少なくとも一部は、意図された通りに使用される場合、高さ方向に変速機制御装置の上部に配置されている。この構造により、さらなる最適化が可能である。このとき、変速機制御装置は変速機油内に配置することができ、パワーエレクトロニクスは変速機制御装置の上部に、好ましくは縦方向に見て電気機械に隣接して配置されている。
【0020】
本発明に基づくハイブリッド変速機のさらなる非常に好都合な実施形態によれば、さらに、パワーエレクトロニクスの一部が縦方向に延伸し、高さ方向に電気機械の上部に配置されるように設けることができる。パワーエレクトロニクスは、この場合、すなわち構造を横方向に見たときに、実質的にL字型に形成されており、部分的に変速機制御装置に隣接し、好ましくはその上部にあり、部分的に電気機械の上部にあるため、パワーエレクトロニクスがこの電気機械を部分的に取り囲み、それによって既存の取付けスペースにより効率的に統合することができる。
【0021】
本発明に基づくハイブリッド変速機の極めて好都合な発展形態によれば、パワーエレクトロニクスは、縦方向および/または横方向に少なくとも部分的に変速機制御装置に重なって配置される。これにより、一方では変速機制御装置の寸法に応じて、他方ではパワーエレクトロニクスの寸法に応じて、これらをいずれかの方向に重ねて配置できることで、取付けスペースをさらに節約することが可能である。
【0022】
さらに、もう1つの極めて好都合な実施形態では、パワーエレクトロニクスのインバーターの回路基板が、変速機制御装置の回路基板に対し高さ方向に隣接し、かつ縦方向に平行に配置されている。この考え方の極めて好都合な発展形態によれば、縦方向に20mmより小さな間隔をあけて、好ましくは高さ方向に面一に配置されている隣接する回路基板を持つこの配置は、これらの2つの回路基板が好ましくは直接相互に接続する形で、例えば好ましくはハイブリッド変速機の変速機ハウジング内部の空いている共通の制御用取付けスペース内に配置されていることで、縦方向に非常に効率的な取付けスペースの利用を提供する。
【0023】
このとき、電気機械は、すでに上述したように、回転子回転軸が変速機入力軸に対して平行に、すなわち構造の横方向に通るように形成されている。非常に有利な発展形態によれば、この回転子回転軸は縦方向に変速機入力軸とパワーエレクトロニクスとの間に配置されており、すでに上述したように、有利な実施形態によれば、電気機械は縦方向にパワーエレクトロニクスの少なくとも一部に隣接して配置されており、この部分は少なくとも回路基板を含み、その他の部分は縦方向に延びて配置されていてよい。このその他の部分には、この領域の配置に対して好ましい要素のみをいくつか挙げるとすれば、例えば直流電圧接続用の接続コネクターおよび中間回路コンデンサーが含まれる。
【0024】
このとき、電気機械とパワーエレクトロニクスを相互に接続している交流接続は、本発明に基づくハイブリッド変速機の非常に有利な発展形態によれば、高さ方向に回転子回転軸の下部に配置されている。この接続は、意図された使用において、一方ではインバーターの回路基板の下部に、他方では電気機械の下部に配置できるため、インバーターの残りの回路基板は高さ方向に上方へ延伸し、従って縦方向に電気機械の横に隣接する。
【0025】
パワーエレクトロニクスの直流接続は、高さ方向には回転子回転軸の上部に、縦方向には差動入力歯車の回転軸と回転子回転軸の間に配置されている。特に、ここで横方向として定義された方向が車両の横方向に相当し、縦方向が車両の縦方向に相当し、高さ方向が車両の高さ方向に相当する車両において、ハイブリッド変速機を車両に横置きする場合、直流接続が車両の正面部から後ろに移動するため、万一事故が生じた場合も比較的よく保護された領域に位置しており、このことは大きな利点となり得る。直流接続は、一般に、変速機の変速機ハウジングに配置されており、ここには少なくともパワーエレクトロニクス、変速機制御装置、油圧式変速機制御器および歯車セットが収納されている。これにより、これらは、万一の衝突事故に対して比較的安全な領域に配置されている。
【0026】
さらに、本発明の特に有利な発展形態では、変速機ハウジングがカバーを有しており、このカバーは、縦方向に変速機入力軸とは反対の変速機制御装置およびパワーエレクトロニクスの側に配置されている。すなわち、パワーエレクトロニクスまたはインバーターの回路基板を備える少なくとも主要部分および歯車セットの電気制御用変速機制御装置は、変速機ハウジングのカバーの下に位置しており、このハウジングには、その他に、差動入力歯車、変速機入力軸、少なくとも1つの副軸、電気機械、油圧式変速機制御器が一緒に含まれている。この配置により、パワーエレクトロニクスおよび変速機制御装置は比較的容易にアクセス可能である。ハイブリッド変速機を、すでに上述したように車両に横置きする場合、このカバーは、車両の進行方向、すなわち縦方向において前方に位置しているため、カバーは車両の正面からアクセスできるようになっている。
【0027】
本発明に基づくハイブリッド変速機のさらなる有利な実施形態は、以下に図を使って詳しく示されている実施例からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に基づくハイブリッド変速機の可能な実施形態を縦方向に対して横の視線方向から見た概略図である。
図2】本発明に基づくハイブリッド変速機を備える駆動系を横方向に対して垂直に見た概略図である。
図3】本発明に基づくハイブリッド変速機の代替の実施形態を図1と同様に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示されているのは、ここには図示されていない車両用のハイブリッド変速機であり、その全体を符号1で示している。このとき、図1には3つの方向が模式的に示されている。ここでは、縦方向xおよび高さ方向zにより、図1に描かれている図の平面が構成されている。横方向yはこれらに直交し、図面平面に投影される。図2では、その他のコンポーネントと共に、回転した形でこの構造が再度示されており、そこでは縦方向xが図面から外に出ており、図に描かれている平面は横方向yと高さ方向zによって構成されている。
【0030】
ハイブリッド変速機1は、部分的に、符号2で示されている変速機ハウジング内にある。ハイブリッド変速機1には、電気機械3ならびに差動装置が含まれ、ここでは差動装置の差動入力歯車4が図示されている。この差動入力歯車は、変速機入力軸5、ならびにここに図示されている実施形態では2本の副軸6を備える変速機と噛み合う。太線で記入されている符号7のクラッチ装置は、図2に描かれている横方向においてその前にある。このクラッチ装置7は、図1に示されているケースでは、補足的に分離クラッチを備えることのできるデュアルクラッチとして実施されている。後でさらに説明するように、分離クラッチを単独で用いる構造も考えられるであろう。
【0031】
ここで図示されているデュアルクラッチ変速機は、図2で分かるように、クラッチ装置7を介して内燃機関8に接続されている。このとき、本発明の文脈において「接続されている」とは、一般に、回転振動を抑制し減衰させるための装置(ここでは図示されていない)、例えばダブルマスフライホイールなどを介して間接的に接続が実施されていることを意味している。クラッチ装置7と内燃機関8の接続により、一方では内燃機関8によって、他方では回転子回転軸9を備える電気機械3によって、差動装置および車両の駆動を、差動入力歯車4を介して行うことができる。このとき、電気機械3は、ハイブリッド変速機1の歯車セットに対し、いわゆる隣接配置で配置されている。
【0032】
電気機械3の隣接配置とは、回転子回転軸9が変速機入力軸5に対して軸方向に平行かつずれた状態で配置され、また副軸6に対しても軸方向に平行かつずれた状態で配置されていることを意味している。電気機械3は、例えばここでは図示されていない平歯車ペアを介して、またはチェーン駆動を介して、ハイブリッド変速機1の歯車または噛み合い部に連結されている。この噛み合い部は、例えばクラッチ装置のプレートキャリア上の外部噛み合い部か、あるいはまた変速機の歯車セット内の歯車であってもよく、それによって電気機械4は、その動力を例えば変速機入力軸や、特に副軸6のいずれか一方に送り出すことができる。
【0033】
ハイブリッド変速機が車両縦方向または車両の進行方向に対して横向きに取り付けられるように、好ましくは車両縦方向でもある縦方向xにおいて、変速機入力軸5に隣接して油圧式変速機制御器10があり、さらに隣接してハイブリッド変速機1の歯車セットの電気制御を担う変速機制御装置11がある。電気機械3を制御するため、パワーエレクトロニクス12が高さ方向zにおいて変速機制御装置11の上部に隣接して配置されている。このパワーエレクトロニクスには、符号13で示されているインバーターの少なくとも1つの回路基板が含まれ、この回路基板は三相交流接続14を介して電気機械3に接続されている。さらに、パワーエレクトロニクス12には中間回路コンデンサー15も図示されている。変速機ハウジング2から符号17で示されている領域に導出される直流接続16を介して、パワーエレクトロニクス12および最終的に電気機械3が、ハイブリッド変速機1を搭載した車両のトラクションバッテリー(ここには図示されていない)に接続される。
【0034】
変速機ハウジング2は、図1では縦方向xの右側に、好ましくは進行方向の前方に配置されているハウジングカバー18を有している。これにより、パワーエレクトロニクス12および変速機制御装置11の構造に容易にアクセスすることができ、また、変速機ハウジング2から符号17で示されている領域に導出される直流接続16が対応する方法で後方へ移動していることにより、ハイブリッド変速機1を搭載した車両が衝突した場合に、最大限の高い安全性が提供される。
【0035】
ハウジング2上の直流接続を実現するためのこの領域17は、縦方向xにおいて電気機械3の回転子軸9と差動入力歯車4の回転軸19の間にあり、従って縦方向xにおいて、カバー18を備える変速機ハウジング2の正面からも、反対側からも大きく離れているので、衝突の際に高い安全性が保証されている。
【0036】
このとき、パワーエレクトロニクス12は、主として、縦方向xにおいてカバー18と電気機械3の間に配置されているインバーターの回路基板13を持つ一次区画を備えているため、交流接続を電気機械3の回転子回転軸9の下部に配置することにより、電気機械3の横にある取付けスペースを最適に利用できるようになる。パワーエレクトロニクス12の、例えば直流接続16および中間回路コンデンサー15を持つその他の部分は、縦方向xに延伸し、高さ方向zの方向において電気機械に隣接して配置されているため、この電気機械はパワーエレクトロニクス12から部分的に取り囲まれる。このとき、変速機制御装置11と、入力軸5および副軸6を備える歯車セットとの間には、電気機械3に重なるように油圧式変速機制御器10が配置されているため、これが変速機内部において、対応する構成部品と直接相互作用することができるので、同様に構造がコンパクトになり、必要なケーブル長さに関しても非常に効率的になる。
【0037】
このとき、変速機制御装置11の回路基板20は、インバーターの回路基板13に対し、高さ方向Zにおいて隣接しており、縦方向xにおいて平行に配置されている。これらの基板は、縦方向xに好ましくは20mmよりも小さな間隔を有している必要がある。最適には、高さ方向zに沿って互いに面一に配置されている。
【0038】
変速機ハウジング2のカバー18に向かって見た図2には、変速機ハウジングの内部に、差動入力歯車4、ここには図示されていない副軸6、および変速機入力軸5が配置されており、同様に電気機械3および油圧式変速機制御器10、ならびに下部の変速機制御装置11とこれに重なる上部のパワーエレクトロニクス12との組み合わせが配置されている。内燃機関8のクランクシャフトは、この状況において、ここではデュアルクラッチとして形成されてよいクラッチ装置7に間接的に動力を伝達する。全体として、特に横方向Y、すなわち変速機の主軸、例えば変速機入力軸5に沿って極めてコンパクトな構造を実現することが可能になる。従って、この構造は、図2の概略図に示されている駆動系21を搭載した車両の前方へ向かう視線方向に対応するように、進行方向に対して横向きに車両に取り付けることができる。
【0039】
このとき、この変速機ハウジング2の外部輪郭を、車両に必要なさらなる構成部品および構造物に適合させるため、変速機ハウジング2には取付けスペースがまだ十分に残るようになっている。例えば図1において、高さ方向zにおける変速機ハウジング2の下部には、符号22で示された任意選択の凹部が確認でき、変速機ハウジング2の外部にあるこの領域に、特に好ましくは車両のステアリングのコンポーネントを配置することができる。任意選択の凹部22は、有利には縦方向xに見て差動入力歯車の回転軸19と変速機制御装置11との間に配置されている。
【0040】
図3には、変速機ハウジング2が再度図示されている。ここでは任意選択の凹部22がなく、変速機ハウジング2のカバー18は、図1とは異なり明確に示されていない。それ以外では、図1に示されている構造が、引き続き図3に示されている構造に対応するようになっている。ここでも、回転軸19を備える差動入力歯車4、同様に回転子軸9を備える電気機械3が確認できる。油圧式変速機制御器10が図示されており、縦方向xにおいてこれに隣接する形で変速機制御装置11が配置されており、回路基板20の明確な表示は省略されている。さらに、パワーエレクトロニクス12があり、ここでもインバーターの回路基板、電気接続および詳細が図の中では省略されている。
【0041】
主な違いは、ここではクラッチ装置7が純粋な分離クラッチとして形成されていることである。すなわち、図1の構造とは異なり、2本の副軸6を備えるデュアルクラッチ変速機が制御されるのではなく、入力軸5と唯一の副軸6を備える変更された歯車セットによる簡単なハイブリッド変速機が制御され、これを介して差動入力歯車4が適宜駆動される。この構造は、例えば電気機械3と好適にハイブリッド化されている単純な自動変速機の形で実現できるであろう。この電気機械は、ハイブリッド変速機1の変更された歯車セットに対し、すでに上述した隣接配置で配置されている。パワーエレクトロニクス12と変速機制御装置11を統合した制御の重要な構造は、前に説明した実施例と同じである。
図1
図2
図3