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特開2023-175708ヒト患者における自己抗原に対するワクチン接種法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175708
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ヒト患者における自己抗原に対するワクチン接種法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20231205BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 25/16 20060101ALN20231205BHJP
   C07K 7/00 20060101ALN20231205BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P37/04 ZNA
A61K39/39
A61K39/395 Y
A61P25/16
C07K7/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023136194
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2018541534の分割
【原出願日】2016-11-02
(31)【優先権主張番号】15192794.4
(32)【優先日】2015-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519353651
【氏名又は名称】エイシー イミューン ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ゲルガナ・ガラボワ
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ・シュミットフーバー
(72)【発明者】
【氏名】アヒム・シュネーベルガー
(72)【発明者】
【氏名】アルネ・フォン・ボニン
(72)【発明者】
【氏名】ドリアン・ヴィンター
(72)【発明者】
【氏名】ヤーナ・ツィマーマン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒト患者における自己抗原に対するワクチン接種方法を提供する。
【解決手段】有効量の自己抗原を含む投与量を患者に投与して一次免疫応答を誘導し、該患者が前述の自己抗原のブースト投与を受けることを特徴とし、ここで、該ブースト投与のための投与量中の該自己抗原の量は、一次免疫応答のための投与において使用される投与量中の自己抗原の量よりも高い方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の自己抗原を含む投与量を患者に投与して一次免疫応答を誘導する、ヒト患者における自己抗原に対するワクチン接種方法であって、該患者が該自己抗原のブースト投与を受けることを特徴とし、ここで、該ブースト投与における投与量中の該自己抗原の量は、一次免疫応答のための投与において使用される投与量中の該自己抗原の量よりも高い、方法。
【請求項2】
該自己抗原が、アミロイドβ、前駆蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PSCK9)、IgE型の膜結合型免疫グロブリン、ハンチンチンタンパク質、CD26およびアルファ-シヌクレイン抗原、好ましくはアルファ-シヌクレイン抗原、とりわけDMPVDPDNエピトープおよび/またはKNEEGAPエピトープを含有しているアルファ-シヌクレイン抗原からなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該自己抗原が、ミモトープ、好ましくはアルファ-シヌクレインミモトープ、アンジオテンシンIIミモトープまたはPCSK9ミモトープ、より好ましくは、DQPVLPD、DMPVLPD、DSPVLPD、DSPVWAE、DTPVLAE、DQPVLPDN、DMPVLPDN、DSPVLPDN、DQPVTAEN、DSPVWAEN、DTPVLAEN、HDRPVTPD、DRPVTPD、DVPVLPD、DTPVYPD、DTPVIPD、HDRPVTPDN、DRPVTPDN、DNPVHPEN、DVPVLPDN、DTPVYPDN、DTPVIPDN、DQPVLPDG、DMPVLPDG、DSPVLPDG、DSPVWAEG、DRPVAPEG、DHPVHPDS、DMPVSPDR、DSPVPPDD、DQPVYPDI、DRPVYPDI、DHPVTPDR、EYPVYPES、DTPVLPDS、DMPVTPDT、DAPVTPDT、DSPVVPDN、DLPVTPDR、DSPVHPDT、DAPVRPDS、DMPVWPDG、DAPVYPDG、DRPVQPDR、YDRPVQPDR、DMPVDPEN、DMPVDADN、EMPVDPDN、DNPVHPE、KNDEGAP、ANEEGAP、KAEEGAP、KNAEGAP、RNEEGAP、HNEEGAP、KNEDGAP、KQEEGAP、KSEEGAP、KNDDGAP、RNDEGAP、RNEDGAP、RQEEGAP、RSEEGAP、ANDEGAP、ANEDGAP、HSEEGAP、ASEEGAP、HNEDGAP、HNDEGAP、RNAEGAP、HNAEGAP、KSAEGAP、KSDEGAP、KSEDGAP、RQDEGAP、RQEDGAP、HSAEGAP、RSAEGAP、RSDEGAP、RSEDGAP、HSDEGAP、HSEDGAP、およびRQDDGAPからなるグループから選択されるアルファ-シヌクレインミモトープ、とりわけ、DQPVLPD、DSPVLPD、DVPVLPD、DSPVLPDG、YDRPVQPDR、DHPVHPDS、DAPVRPDS、KNDEGAP、KQEEGAPまたはKSEEGAP、DPVYIHPF、DAVYIHPF、DRHYIHPF、DAAYIHPF、DRAYAHPF、DPGYIHPF、DRAYDHPF、AAYIHPF、RAYAHPFおよびPGYIHPFからなるグループから選択されるアンジオテンシンIIミモトープ、とりわけ、DRAYAHPF、RAYAHPF、DPGYIHPFまたはPGYIHPF、または、SIPWSLERIT、SIPWSLERITPPR、SIPWSLERTTPPR、VIPWNLERILPPR、SVPWNLERIQPPR、SIPWSLERTT、SIPWSLERLT、SIPWSLERLTPPR、SIPWSLERIQ、SIPWSLERIQPPR、VIPWNLERILおよびSVPWNLERIQからなるグループから選択されるPCSK9ミモトープ、とりわけ、SIPWSLERIT、VIPWNLERILまたはSVPWNLERIQである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該ブースト投与のための投与量中の自己抗原の量が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、とりわけ少なくとも200%、一次免疫応答のための投与のための投与量において使用される量よりも高い、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該ブースト投与のための投与量中の自己抗原の量が、少なくとも20μg、好ましくは少なくとも50μgである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該ブースト投与が、一次免疫応答を誘導するための自己抗原の1回目の投与の少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月後に投与される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該自己抗原の投与が、皮下、皮内または筋内投与である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該自己抗原が、アジュバント、好ましくは水酸化アルミニウムと一緒に投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該自己抗原、とりわけ該自己抗原のミモトープが、7~30、好ましくは7~20、より好ましくは7~16、最も好ましくは8個のアミノ酸残基を含むポリペプチドであって、医薬上許容される担体、好ましくはタンパク質担体、とりわけKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、Crm-197、破傷風トキソイド(TT)またはジフテリア毒素(DT)に結合されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該ブースト投与が繰り返される、好ましくは1回目のブースト投与から少なくとも3年後に、該1回目のブースト投与におけるのと同じ量を用いて繰り返される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ヒト患者における自己抗原に対するワクチン接種における使用のためのキットであって、
自己抗原に対する一次免疫応答を誘導するための、有効量の自己抗原を含有している第1のワクチン処方、および
自己抗原に対するブースト免疫応答を誘導するための、有効量の自己抗原を含有している第2のワクチン処方
を含み、ここで、第2のワクチン処方における自己抗原の量は、第1のワクチン処方におけるよりも高い、キット。
【請求項12】
該ワクチン処方が、請求項1から10のいずれか一項に従って定義される、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
ヒト患者における自己抗原に対する免疫応答を誘導するためのワクチンの製造のための、請求項11または12に記載のキットの使用。
【請求項14】
自己抗原に対するヒト患者のワクチン接種における使用のためのワクチンであって、有効量の自己抗原の投与量を該患者に投与して一次免疫応答を誘導し、ここで、該患者は、該自己抗原のブースト投与を受け、該ブースト投与のための投与量中の該自己抗原の量は、一次免疫応答のための投与のために使用される投与量中の自己抗原の量よりも高い、ワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト患者における自己抗原に対するワクチン接種法およびかかるワクチン接種に適したワクチン処方のセットに関する。
【背景技術】
【0002】
自己タンパク質抗原を用いた能動免疫化は、T細胞およびB細胞の両方が関与する免疫応答を生み出すことからなり、これは、抗原特異的B細胞が増殖し、抗体分泌性プラズマ細胞および記憶B細胞へと分化する、特異的構造(胚中心、GC)による非常に効率的なB細胞分化経路の誘導をもたらす。自己免疫は、自己タンパク質に対するワクチンの主要な副作用である(例えば、非特許文献1)という事実から考えると、成功の可能性を秘めたワクチンは、一連の基準を満たさなければならない。
【0003】
第一に、その抗原性の構成要素は、T細胞を活性化してはならないが、B細胞抗原として働かなければならない。故に、Agは、抗原提示細胞によってそのMHC分子上で提示されなければならない。それらに結合することは、該ペプチドAgが、(i)ある特定の長さ(MHCクラスIの場合、8-9aa(アミノ酸残基))を有すること、および(ii)いわゆるアンカーポジションの所定のアミノ酸残基を提示することを必要とする(非特許文献2)。一般的に、抗原エピトープは、T細胞の活性化を防ぐ程度に短い必要があるが、抗体エピトープとして働く程度に長い必要がある。しかし、IgG型のAb応答の発生は、ヘルパーT(TH)細胞にも依存する。故に、該ワクチンは、ヘルパーT(TH)細胞を活性化することができるエピトープを含有する必要がある。細胞性自己免疫をもたらす可能性があるので、これらは、目的のAgに関連してはならない。理想的には、それらは、強力なTHエピトープでなければならず、ヒトにおいて見られる分子/構造と交差応答するAbを活性化できないことが知られている必要がある。この点において、種々のタンパク質担体が、臨床的にだけでなく臨床前にもT細胞ヘルプの強力なアクチベーターであるということが示されてきた。キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)は、よく記載される「ヒトの免疫系に無関係である」タンパク質であり、特異的抗原性エピトープ、例えば抗原ペプチド配列と物理的に結合すると強力なAb応答を生み出す。
【0004】
自己タンパク質を標的としているワクチンのAb応答を調整することは、真の課題である。関連する構造を攻撃することなく所望の構造を捕捉する必要がある。これは、同時に2つの基準を満たす必要がある。1つ目は、上昇したAbが所定の標的に結合する必要があり、これはワクチンの意図された活性に不可欠である。しかしながら、2つ目は、それらが、関連または相同の構造に結合してはならず、これは不可欠な安全機能である。
【0005】
パーキンソン病(PD)は、2番目に多い神経変性疾患である。それは、複雑な全身性の疾患であり、広範囲の消耗性の運動性および非運動性症状を引き起こす。典型的に、PDの主兆候は確定しておらず、非運動性症状は、神経精神病学的疾患(鬱病、レム睡眠障害など)、胃腸障害(便秘など)、および自立神経障害を包含している。PDの基本的な運動性症状は、休止時振戦、動作緩慢、固縮、および姿勢不安定を包含し、その非運動性症状の発症の10年後までに発症し得る。PDは、目下、世界中で約500万人の人々に影響を与え、その罹患率は世界的な人口の高齢化に伴い増加している。
【0006】
かなりの出資にも関わらず、目下、疾患修飾特性を有する入手可能な薬剤は無い。PDの処置は、主にドーパミン作動性の戦略(レボドパまたはドーパミンアゴニスト、COMT阻害剤およびMAO-B阻害剤)、抗コリン薬、または脳深部刺激療法の使用によって運動性症状に対処するが、それらは対症的な効果があるのみで、かつ、副作用が多い。可能性のある疾患修飾剤を用いた20を超える臨床試験が実施された、または目下進行中である。しかし、臨床的エンドポイントに到達したものはない(非特許文献3)。結果として、新規な疾患改変処置法の開発に対する緊急の要望がある。
【0007】
PDにおいて神経変性を引き起こす過程において、アルファ-シヌクレイン(aSyn)オリゴマーの因果的役割を示す証拠が増加している。レビー小体またはレビー神経突起は、PDの病理組織学的な特徴的なマーカーである。それらは、主にニューロンで見られ、主にミスフォールドした繊維状のaSynで構成される。生理的条件下で、aSynは、核およびシナプス前終末において豊富な、細胞質性の細胞内のフォールディングしていないタンパク質として存在し、aSynは、生理学的にシナプス可塑性と関連するかもしれないことが示唆されてきた。PDにおいて、おそらくaSynのオリゴマーを含んでいるであろう病理学的凝集型のaSynは、細胞から細胞へプリオン様に伝播することによって、該疾患だけでなく、レビー小体病変をも増殖させるようである。さらに、動物モデルにおけるいくつかの一連の証拠は、オリゴマーaSynの蓄積量を減らすことが疾患修飾性効果をもたらし得るという理論を支持する(非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、および非特許文献7)。故に、aSyn凝集体を減らす処置は、疾患の進行を妨げる可能性を有すると認識されている(非特許文献8、非特許文献9)。この10年間において、aSyn凝集体を除去するための免疫療法的アプローチの開発に向けて、著しく前進した。aSynに対する免疫付与戦略は、動物モデルにおいて、aSyn凝集体の分解を促進すること(非特許文献10)、細胞間伝播を防ぐこと(非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)、および運動障害を減らすこと(非特許文献14)がすでに示されてきた。まとめると、これらの研究は、aSynに対する免疫付与がヒトにおいて疾患改変特性を有する可能性があるという証拠を提供する。
【0008】
AFFITOPE(登録商標)PD01Aは、PDのようなシヌクレイノパチーの処置のために開発された(参照:非特許文献15)。PD01Aは、ペプチド-KLH複合体であり、該ペプチド部分がヒトaSynのカルボキシル末端領域を模倣する(特許文献1)。それは、β-シヌクレイン(bSyn)を包含する密接に関連したタンパク質ファミリーメンバーを回避しながら、aSynを標的とし、神経防護特性を有し得る(非特許文献16)。PDにおいて神経変性を引き起こす過程において、アルファ-シヌクレイン(aSyn)オリゴマーの因果的役割を示す証拠が増加している。レビー小体またはレビー神経突起は、PDの病理組織学的な特徴的なマーカーである。それらは、主にニューロンで見られ、主にミスフォールドした繊維状のaSynで構成される。さらに、動物モデルにおけるいくつかの一連の証拠は、オリゴマーaSynの蓄積量を減らすことが疾患修飾性効果を有し得るという理論を支持する。故に、aSyn凝集体を減らす処置は、疾患の進行を妨げる可能性を有し得る。
【0009】
近年、PD01Aを用いたワクチン接種が、PDおよびMSA(多系統萎縮症)をカバーしているシヌクレイノパチーの2匹のモデルマウスにおいて、aSynのオリゴマーの減少した蓄積をもたらし、記憶および運動障害を改善したことが示された(非特許文献17)。かなりの臨床投資にも関わらず、目下、ヒトにおいて、疾患修飾特性を有する治療効果のある入手可能な薬剤は無い。PDの処置は、主にドーパミン作動性の戦略、抗コリン薬、または脳深部刺激療法の使用によって運動性症状に対処するが、それらは対症的な効果があるのみで、かつ、副作用が多い。可能性のある疾患修飾剤を用いた20を超える臨床試験が実施された、または目下進行中である。しかし、臨床的エンドポイントに到達したものはない。結果として、新規な疾患改変処置法の開発に対する緊急の要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2009/103105A2
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Gilmanら,Neurology 64(2005),1553-1562
【非特許文献2】Rudolph,Ann.Rev.Immunol.24(2006),419-466
【非特許文献3】ALDakheelら,Neurotherapeutics 11,(2014)6-23
【非特許文献4】Gamesら,Am.J.Pathol.182(2013),940
【非特許文献5】Kimら,J.Neurochem.107(2008),303
【非特許文献6】Recasensら,Ann.Neurol.75(2014),351
【非特許文献7】Winnerら,J.Neurosci.32(2012),16906
【非特許文献8】Leeら,Neurosci.Res.70(2011),339
【非特許文献9】Valeraら,Pharmacol.Ther.138(2013),311
【非特許文献10】Masliahら,Neuron.46(2005),857
【非特許文献11】Baeら,J.Neurosci.32(2012),13454
【非特許文献12】Bannerら,PNAS 101(2004),9435
【非特許文献13】Gamesら,J.Neurosci.34(2014),9441
【非特許文献14】Masliahら,PLoS One.6(2011),e19338
【非特許文献15】PD01Aに関する初の臨床データを報告しているAFFiRiSのプレス・リリース;http://www.affiris.com/news/first-clinical-data-of-therapeutic-parkinsons-disease-vaccine-encourage-s-continued-development/
【非特許文献16】Vigneswaraら,PLos One8(2013),e61442
【非特許文献17】Mandlerら,Molecular Neurodegeneration10(2015),10
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、自己抗原を用いた免疫付与に基づいた、より効率的な疾患改変処置法を提供することにある。
【0013】
故に、本発明は、有効量の自己抗原の投与量を患者に投与して一次免疫応答を誘導する、ヒト患者における自己抗原に対するワクチン接種方法であって、該患者が該自己抗原のブースト投与を受けることを特徴とし、ここで、該ブースト投与のための投与量中の自己抗原の量が、一次免疫応答のための投与において用いられる投与量中の自己抗原の量よりも高い(すなわち、免疫応答のプライミング(priming)のために用いられる投与量における自己抗原の量よりも高い)方法を提供する。
【0014】
本発明のクール内で、自己抗原に対する患者のワクチン接種の過程において、ブースト投与が、効果的な免疫学的および治療的な効果を得るのに中心的な役割を果たすことを示す臨床データが、出願人によって得られた。通常のもの(非自己抗原、例えば病原体抗原)を用いて得られたデータは、自己抗原に対するワクチン接種戦略と比較できるものでも、合致するものでもないことも明らかになった。本出願により得られた結果は、一次免疫付与(すなわち、一次免疫応答を得ること)が比較的少量の抗原により誘導され、追加免疫付与(boost immunization)が一次免疫応答のための投与におけるよりも多量の自己抗原により誘導される場合、有利であるということを示す。
【0015】
AFF008試験クールにおける有望な初めの結果(上記の非特許文献15を参照)にも関わらず、本発明によるブースターワクチン接種スキームの特定の選択が、適用された種々の量の投薬計画の総合的なパフォーマンスの臨床転帰を有意に誘発していることは驚くべきことであった。とりわけ長期間に渡って、ブースト段階での該ワクチンの投与量は(プライミング段階と比較して)、特異的な抗体応答および該ワクチンの特異的応答性にとって最重要であった。これはとりわけ驚くべきことであった。なぜなら、有利な結果は、ブースト投与のための投与量における自己抗原の量が一次免疫応答のための投与において使用される投与量における自己抗原の量よりも高い場合に得られるからである。これは、かかる抗原に対するワクチン接種を提案している先行技術(例えば、WO2009/103105 A2、WO2011/009152 A1、WO2014/033158 A2など)からも、またはかかるワクチンを適用しているモデルマウスに関する科学報告書(Mandlerら,Mol.Neurodeg.10(2015):10、Mandlerら,Acta Neuropathol.127(2014):861-879)からも導き出すことはできなかった。これは、先行技術からはさらにいっそう予測不可能であった。なぜなら、以前報告されたようなプライミングおよびブースター投与の効果は、特定のワクチンおよび特定の投与量、または特定の個体に対してさえも特異的である(例えば、Sheteら,J.Aids&Clin.Res.5(2014),DOI:10.4172/2155-6113.1000293;Moreraら,Vaccine30(2012):368-377;Gonzalesら,Hum.Vaccines3(2007):8-13)が、本発明に従う自己抗原ワクチンのクラス、とりわけ本明細書において開示され、本発明の実施例の節にて示されるような自己抗原、いわゆるアミロイドβ、前駆蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PSCK9)、IgE型の膜結合型免疫グロブリン、ハンチンチンタンパク質、CD26またはアルファ-シヌクレイン(下記参照)に対して特異的ではないと見なされていたからである。このワクチン接種の一次段階で最も特異的なB細胞が選択できるように、一次免疫応答のための投与1回あたりの投与量が低い、すなわちブースト投与におけるよりも低いことは本発明にとって不可欠である。この戦略は、より特異的でないB細胞および抗原レセプターの誘導を妨げる。その一方で、該ブースト投与は、B細胞の現在の位置がどこであるかに関わらず(骨髄、リンパ節、脾臓など)、可能な限り多くのB細胞(一次免疫応答で産生される)を扱うために抗原の量に関して高投与量(すなわち、一次免疫応答におけるより高い)を用いて行うべきである。本発明に従って使用されるより高い量は、従って、自己抗原に対する効率的な免疫付与、および最終的に本発明のワクチン接種方法による該自己抗原の効率的な制御を(一次免疫応答と共にプライムされた最も特異的なB細胞に基づいて)確立することができるブーストを可能にする。これに関して、一次免疫応答の誘導は、ワクチン接種を受けるべき個体に対する1回以上の自己抗原の初期投与量の投与により達成され得ることに留意することも重要である。好ましくは、一次免疫応答は、2回、より好ましくは3回、とりわけ好ましくは4回の自己抗原の投与により誘導される。一次免疫応答のためのこれらの投与は、好ましくは少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも3週間、とりわけ好ましくは少なくとも4週間の間隔を空けて行われる。多くのワクチン接種スキームは、2週間に1度または1ヶ月に1度のワクチン接種間隔を適用し、故にそれらがとりわけ好ましい。ブースト投与に対しても同じことが言える。すでに述べられたように、本発明の目的を達成するため、すなわち自己抗原に関して全体的な効率的な免疫応答を引き起こすために不可欠な要素は、投与1回あたりの投与量であり、投与される全ての投与量の(合計の)量ではない。
【0016】
これは、PDの場合、病理学的なタンパク質凝集体である、aSyn凝集体の脳内レベルを調節するためにaSynミモトープを利用し、自己抗原としてのアルファ-シヌクレイン(「aSyn」)を標的としているPDに対するワクチン接種戦略に関する臨床試験において、本発明に対してとりわけ示されてきた。
【0017】
本発明の出願者は、最近、初期のPD患者に投与された治療ワクチンAFFITOPE(登録商標)PD01Aの2種類の投与量(15μgおよび75μg)の安全性および認容性(tolerability)を評価する第I相ファーストインヒューマン臨床試験を完了した。全ての有害事象は重篤度において軽度または中度であり、処置は認容性良好であると見なされた。抗原(PD01A)投与(1ヶ月に1度を4回適用された)が、(i)該ワクチンのペプチド構成要素であるPD01Aとも、(ii)標的であるaSynペプチド配列とも反応する(低い)IgG Abの出現をもたらす濾胞外応答(extrafollicular response)を誘導することが実証された(図1)。B細胞が胚中心で増殖し、プラズマ細胞へ分化するにつれ、IgG Ab力価はピーク値まで上昇し、3度目の免疫付与の4週間後にピーク値に達した(V8)。
【0018】
免疫付与による機能性Ab、例えばaSyn特異的Abの誘導、免疫付与のプライミング時点での投与量と、その結果生じるAb応答との間の関係、並びに自己抗原(例えば、aSyn)に対するプライミング免疫応答(PD01A誘導応答)がヒトにおいてどれほど「再活性化」され得るのかをより理解するために、該AFF08A研究のPD01A処置を受けた患者を第2の臨床実験において分析した。この目的で、PD01A免疫付与PD患者は、(平均で)115週後に1回の投与量15μgまたは75μgいずれかのPD01Aによりブーストされた。AFF08A試験において、抗原PD01Aへの「ブースター」暴露は、免疫記憶を再活性化し、PD01Aおよび標的であるaSynペプチド配列に対するAb力価の急速な上昇をもたらし(図1を参照)、これは真の二次免疫応答を実証している。一般に、短寿命のプラズマ細胞は、ピークのAbレベルを2、3週間維持する。その後、血清中のAb力価は、初めに、後に続く一次免疫と同様に急速な速度で減少する。骨髄で生存ニッチに到達した長寿命のプラズマ細胞は、抗原に特異的なAbを産生し続け、その後、より低い速度で減少する。
【0019】
多くの決定因子が、ワクチン誘導GCの、従って、ピークのAb応答の強度を調節する。主要な決定因子は、ワクチン抗原の性質およびその固有の免疫原性である。
【0020】
一次ワクチンAb応答のまた別の重要な因子は、ワクチン抗原の最適な投与量の使用であり、それは実験的に決定され得る。概して、一定の閾値までの、抗原のより高い投与量は、より高い一次Ab応答を誘導する。閾値を超える投与量では、釣り鐘型またはプラトー型の応答が見られ得る。これは、免疫能力が制限される時にとりわけ有用であり得る。
【0021】
制限された投与量のワクチンは、一次免疫応答を制限し得るが、B細胞の濾胞樹状細胞関連抗原をめぐる競争を増加させ、それ故、より高い親和性のGC-B細胞のよりストリンジェントな選択、およびより強力な二次「ブースト」応答を引き起こし得る。従って、ヒトにおいて、「プライミング」段階で、および「ブースティング(boosting)」段階で再び、抗原投与量の特定の組み合わせ、例えば至適抗原投与域(optimal antigenic dosing-window)だけが、病理学的なタンパク質凝集体、例えばPDの場合、aSyn凝集体、の発現を調節することができる十分なAb応答を提供するだろう。
【0022】
上記ですでに述べられたように、本発明に従うワクチンは、ワクチン接種される個体に対して「自己」であるが、投与された場合に副作用として自己免疫を引き起こしてはならない抗原に向けられた、自己抗原(「自己タンパク質」)を扱う適切なワクチンとしての関連する基準を満たす。従って、該自己抗原の抗原性構成要素は、T細胞を活性化してはならないが、B細胞抗原として働く。故に、該抗原は、抗原提示細胞によってそれらのMHC分子上で提示される必要がある。また、Rudolph,Ann.Rev.Immunol.24(2006),419-466によって報告された必要性が適用される。一般に、抗原性エピトープは、T細胞の活性化を防ぐ程度に短く、かつ、抗体エピトープとして働く程度に長い必要がある。さらに、IgG型抗体応答の発生は、ヘルパーT(TH)細胞にも依存的であり、故に、該ワクチンはヘルパーT(TH)細胞((細胞性自己免疫を防ぐために)目的の抗原に関連していない)を活性化できるエピトープを含有する必要がある。理想的には、本発明に従うワクチンは、強力なThエピトープであり、ヒトにおいて見られる他の分子/構造と交差作用する抗体を活性化することができないことが知られている。従って、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のような(タンパク質)担体は、臨床的にだけでなく臨床前にもT細胞ヘルプの強力なアクチベーターであることが示されてきた。例えば、KLHは、よく記載される「ヒトの免疫系に無関係である」タンパク質であり、特異的抗原性エピトープ、例えば抗原ペプチド配列と物理的に結合すると強力なAb応答を生み出す。本発明のワクチンの免疫応答は、関係する構造を攻撃することなく、所望の構造に向けられる必要がある。従って、ワクチン接種された個体において上昇した抗体は、所定の標的(自己抗原)に結合する必要があり、これは該ワクチンの意図された活性に不可欠である。さらに、これらのワクチン誘導抗体は、(不可欠な安全機能として、)関連または相同の構造に結合してはならない。
【0023】
好ましくは、本発明に従う自己抗原は、本分野において科学的に妥当なワクチン候補またはワクチン接種標的として報告または示唆されてきた抗原である。
【0024】
本発明に従う方法は、故に、原則として、あらゆる種類の自己抗原ワクチン接種戦略に対して適用できる。しかし、効率的な免疫応答を得るには問題があることが知られている自己抗原に対して本発明の方法を利用することは好ましい。従って、本発明に従う好ましい自己抗原は、アミロイドβ、前駆蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PSCK9)、IgE型の膜結合型免疫グロブリン、ハンチンチンタンパク質、CD26およびアルファ-シヌクレイン抗原、好ましくはアルファ-シヌクレイン抗原、とりわけDMPVDPDNエピトープおよび/またはKNEEGAPエピトープを含有しているアルファ-シヌクレイン抗原から構成されているグループから選択される。
【0025】
天然配列と比べて、少なくとも同じ(好ましくは改良された)免疫付与特性を有する、該自己抗原の天然配列のバリエーションが適用される場合、ワクチン接種による免疫付与はさらに改良され得ることが示されてきた。従って、本発明に関して、該天然自己抗原アミノ酸配列のかかるバリエーションは、ワクチン接種された個体において特異的な(天然の)自己抗原結合抗体を誘導することに関して、該免疫付与特性が(少なくとも)保存される(または、好ましくは改良される)限り、本発明に従う用語「自己抗原」の範囲内に包含されるべきであることは明らかである。かかるバリエーションは、AEEITOME(登録商標)技術によって提供され得る(例えば、Schneebergerら,Human Vacc.6(2010),1-5において開示された)。該AEEITOME(登録商標)技術によって提供されるこれらのバリエーションは、AFFITOPE(登録商標)と呼ばれ、とりわけ、アミロイドβに関してはWO2004/062556AおよびWO2006/005707Aに、aSynに関してはWO2009/103105AおよびWO2011/020133Aに、AngIIに関してはWO2011/009152Aに、C5aに関してはWO2013/174920Aに、PCSK9に関してはWO2014/033158AおよびWO2015/128287Aにおいて開示される。これらの文書において開示される該AFFITOPE(登録商標)は、本発明に従う好ましい自己抗原でもある。
【0026】
従って、本発明において、自己抗原として、自己抗原の天然配列のバリエーション、すなわちAFFITOPE(登録商標)(自己抗原の元の天然配列と比較して配列バリエーションを含有するペプチドである「ミモトープ」とも呼ばれ得るが、該ミモトープは、類似の(同じまたは改良された)免疫付与特性を示す、すなわち、天然配列を用いて得られる免疫応答と類似またはより高い免疫応答を誘導することができる;ミモトープは、故に、天然自己抗原と同じmAbsまたはpAbsによって認識されるが、より強力な免疫応答または神経炎症のような重篤な副作用とは関連の無い免疫応答を誘導する)を使用することが好ましい。故に、本発明に従うワクチン接種において、自己抗原として、aSynミモトープ、アンジオテンシンIIミモトープまたはPCSK9ミモトープ、より好ましくは、DQPVLPD、DMPVLPD、DSPVLPD、DSPVWAE、DTPVLAE、DQPVLPDN、DMPVLPDN、DSPVLPDN、DQPVTAEN、DSPVWAEN、DTPVLAEN、HDRPVTPD、DRPVTPD、DVPVLPD、DTPVYPD、DTPVIPD、HDRPVTPDN、DRPVTPDN、DNPVHPEN、DVPVLPDN、DTPVYPDN、DTPVIPDN、DQPVLPDG、DMPVLPDG、DSPVLPDG、DSPVWAEG、DRPVAPEG、DHPVHPDS、DMPVSPDR、DSPVPPDD、DQPVYPDI、DRPVYPDI、DHPVTPDR、EYPVYPES、DTPVLPDS、DMPVTPDT、DAPVTPDT、DSPVVPDN、DLPVTPDR、DSPVHPDT、DAPVRPDS、DMPVWPDG、DAPVYPDG、DRPVQPDR、YDRPVQPDR、DMPVDPEN、DMPVDADN、EMPVDPDN、DNPVHPE、KNDEGAP、ANEEGAP、KAEEGAP、KNAEGAP、RNEEGAP、HNEEGAP、KNEDGAP、KQEEGAP、KSEEGAP、KNDDGAP、RNDEGAP、RNEDGAP、RQEEGAP、RSEEGAP、ANDEGAP、ANEDGAP、HSEEGAP、ASEEGAP、HNEDGAP、HNDEGAP、RNAEGAP、HNAEGAP、KSAEGAP、KSDEGAP、KSEDGAP、RQDEGAP、RQEDGAP、HSAEGAP、RSAEGAP、RSDEGAP、RSEDGAP、HSDEGAP、HSEDGAP、およびRQDDGAPからなるグループから選択されるaSynミモトープ、とりわけ、DQPVLPD、DSPVLPD、DVPVLPD、DSPVLPDG、YDRPVQPDR、DHPVHPDS、DAPVRPDS、KNDEGAP、KQEEGAPまたはKSEEGAP、DPVYIHPF、DAVYIHPF、DRHYIHPF、DAAYIHPF、DRAYAHPF、DPGYIHPF、DRAYDHPF、AAYIHPF、RAYAHPF、およびPGYIHPFからなるグループから選択されるアンジオテンシンIIミモトープ、とりわけ、DRAYAHPF、RAYAHPF、DPGYIHPFまたはPGYIHPF、または、SIPWSLERIT、SIPWSLERITPPR、SIPWSLERTTPPR、VIPWNLERILPPR、SVPWNLERIQPPR、SIPWSLERTT、SIPWSLERLT、SIPWSLERLTPPR、SIPWSLERIQ、SIPWSLERIQPPR、VIPWNLERILおよびSVPWNLERIQからなるグループから選択されるPCSK9ミモトープ、とりわけ、SIPWSLERIT、VIPWNLERILまたはSVPWNLERIQ、を用いることが好ましい。
【0027】
一次免疫誘導のための投与量におけるよりも、ブースト投与のための投与量において有意に高い量の自己抗原を使用することが好ましい。従って、ブースト投与のための投与量における自己抗原の量は、一次免疫応答のための投与において使用される量よりも少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、とりわけ好ましくは少なくとも200%高い。
【0028】
絶対量において、ブースト投与のための投与量において、自己抗原の量を少なくとも20μg、より好ましくは50μgとすることが好ましい。これに関連して、本発明において言及される「μg自己抗原」とは、投与量中の抗原ペプチドの量を意味すること、および該ワクチン複合体の担体またはリンカー部分(存在する場合)は包含しないことに留意することが重要である。
【0029】
本発明に関して、一次免疫応答がすでに終わった時点、すなわち、この一次ワクチン接種で誘導された抗体力価(一次免疫応答誘導コースにおいて、1回、2回、3回、4回、またはそれ以上のワクチン投与によって誘導された)が有意水準を超えて(例えば、所与の閾値レベルを超えて、または多数のサンプルをテストするのに適した(好ましくはかなり感度の低い)アッセイの検出限界を超えてさえ)低下した時点、または該一次ワクチン接種のコースにおいて存在している最大抗体レベルの少なくとも30%、好ましくは20%、とりわけ10%以下に低下した時点でブーストワクチン接種を行うことが重要である。かかるレベルは、種々の自己抗原ワクチン間で異なり得るが、通常は、一次ワクチン接種の少なくとも6ヶ月後には存在する。従って、該ブースト投与は、好ましい一実施形態において、一次免疫応答を引き起こすための自己抗原の1回目の投与の、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月後に投与され得る。ブースト投与が、好ましくはより遅い時点で、例えば、一次免疫応答ワクチン接種後の18ヶ月、2年、3年または5年後に行われる戦略もある。
【0030】
本発明に従う投与経路は、通常、現行のワクチン接種経路と同じ経路である。故に、自己抗原の好ましい投与は、皮下、皮内、または筋内投与である。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態によると、自己抗原は、アジュバント、好ましくは水酸化アルミニウムと一緒に投与される。この最も好ましい実施形態によると、本発明は、欧州薬局方グレード(Aluminium-oxyhydroxide,monograph 1664)の使用、とりわけ欧州薬局方遵守を目的としてテストされたBtenntag Biosectorにより製造された製品(2%アルヒドロゲル(Alhydrogel))の使用に関連する。アルヒドロゲルは、アルヒドロゲル1.3%、アルヒドロゲル2%、およびアルヒドロゲル「85」の3種類が入手可能である。アルヒドロゲル2%は、水酸化アルミニウムゲルの国際標準品として選択された。本発明に従う医薬調製物は、適切なバッファー、好ましくは等張リン酸バッファー(1mM~100mM)中に、好ましくは1.0mg/mL以上のアルヒドロゲル濃度で(Alの換算値として与えられる。この測定基準(「Alの換算値」としてのAl)は、本発明に対して一般的に使用される。従って、本出願において言及される全ての投与量および量は、水酸化アルミニウムに関連している限り、Alの換算値(水酸化アルミニウム(アルヒドロゲル)の)を示す。)、さらにより好ましくは1.5mg/mL以上のアルヒドロゲル濃度で、最も好ましくは2.0mg/mL以上のアルヒドロゲル濃度(Alの換算値として与えられる)で、無菌で処方される。アルヒドロゲルのためのアルミニウム塩の量は、製造者により述べられるように、強度に合わせてAlの換算値として与えられる(すなわち、2%アルヒドロゲルは、2%Al、すなわち20mg/mLのAlと同等である)。該濃度は、それぞれの分子質量(20mg/mL Al(分子量101,96)は、10.6mg/mLアルミニウム(分子質量26,98)に相当)を用いることにより、アルミニウムの各濃度へ直接換算可能である。
【0032】
本発明に従う好ましい自己抗原は、7~30、好ましくは7~20、より好ましくは7~16、最も好ましくは8個の、アミノ酸残基を含むポリペプチドである。これらのペプチド抗原を医薬上許容される担体、好ましくはタンパク質担体、とりわけキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、Crm-197、破傷風トキソイド(TT)またはジフテリア毒素(DT)に結合させることも好ましい(および、これは、免疫応答を得るためにしばしば不可欠である)。
【0033】
さらに好ましい一実施形態によると、該ブースト投与はいくらかの時間後、例えば、1年、2年、3年、5年または10年後に繰り返される。好ましくは、2回目の、またはそれ以降のブーストは、1回目のブースト投与と同じ、または類似の方法で、すなわち、一次ワクチン接種の投与量と比べ増加した量の自己抗原を用いて行われる。
【0034】
さらなる一態様によると、本発明は、ヒト患者における自己抗原に対するワクチン接種における使用のためのキットであって、
該自己抗原に対する一次免疫応答を誘導するための、有効量の自己抗原を含有している第1のワクチン処方、および
該自己抗原に対するブースト免疫応答を誘導するための、有効量の該自己抗原を含有している第2のワクチン処方
を含み、ここで、第2のワクチン処方における自己抗原の量が、第1のワクチン処方におけるよりも高い、キットにも関連する。
【0035】
該キットにおいて、本発明に従う(すなわち、本明細書で開示されるような)ワクチン処方が提供される。
【0036】
本発明は、ヒト患者における自己抗原に対する免疫応答を誘導するためのワクチンの製造のための、本発明に従うキットの使用にも関連する。
【0037】
本発明は、有効量の自己抗原、とりわけ自己抗原のミモトープを含む投与量を患者に投与して一次免疫応答を誘導する、自己抗原に対するヒト患者のワクチン接種における使用のためのワクチンであって、ここで、該患者は、該自己抗原のブースト投与を受け、該ブースト投与のための投与量における該自己抗原の量は、該一次免疫応答のための投与において使用される投与量中の自己抗原の量よりも高い、ワクチンも提供する。
【0038】
本発明は、これを制限するものではないが、以下の実施例および図においてさらに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1A-Dは、プライミングの20ヶ月後のaSynミモトープPD01Aの注射が、免疫学的ブースト効果を引き起こすことを示す図である。(C)最も顕著な免疫学的効果は、月に1度の15μgのPD01Aの注射を4回してプライミングを行い、75μgのPD01Aでブーストを行った時に見られる。(D)75μgを用いたブーストは、プライミングの間に到達されたレベル以上に、抗体応答をなお強めていた。図1E-Hは、ヒト血清中のaSyn特異的抗体を示す。図1I-Lは、ヒト血清中のKLH特異的抗体を示す。
図2図2A-Dは、AngIIに対する力価を示す図である(3×2週間に1度の5μgのワクチン接種、および22週目に5μgおよび33週目に50μgのブースト)。
図3】huPCSK9に対する力価を示す図である(長期(3×2週間に1度のワクチン接種(2種類の投与量)、および52週間追跡)。52週目における30μgを用いた再ワクチン接種)。
図4】AFF008A臨床試験のワクチン処方を示す図である。
図5】AFF008A臨床試験における患者の基本特性を示す図である。
図6】AFF008A臨床試験の免疫化スケジュールと経過観察を示す図である。
図7】AFF008A臨床試験の試験グループによる有害事象を示す図である。
図8】AFF008A臨床試験の試験グループによるSOC用語と有害事象を示す図である。
図9】AFF008A臨床試験におけるPD01特異的抗体力価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0040】
PDワクチン接種ブースト
AFFITOPE(登録商標)PD01Aは、PDのようなシヌクレイノパチーの処置のために開発された(WO2009/103105A2)。PD01Aは、ペプチド-KLH複合体であり、該ペプチド部分は、ヒトaSyn(天然エピトープDMPVDPDNを有する)のカルボキシル末端領域を模倣する。それは、β-シヌクレイン(bSyn)を包含する密接に関連したタンパク質ファミリーメンバーを回避しながら、aSynを標的とし、神経保護特性を有し得る(Vigneswaraら,PLoS One8(2013),e61442)。PD01Aを用いたワクチン接種が、PDの二匹のモデルマウスにおいて、aSynのオリゴマーの減少した蓄積をもたらし、記憶および運動障害を改善したことが最近示された(Mandlerら,Acta Neuripathol.127(2014),861;Mandlerら,Molecular Neurodegeneration10:10(2015))。
【0041】
参加者:
試験参加者は、オーストリアのウィーンおよび周辺地域から採用された。該臨床試験への参入のために、患者は、PDの確認された診断を有する必要があった。突発性パーキンソン病を有する個人は、その疾患が4年未満であることが知られており、ホーン・ヤールの重篤度分類ステージI/IIを示しており、UK Parkinson’s Disease Society Brain Bank Criteria(Hughesら,J.Neurol.Neurosurg.Psychiatry 55(1992),181)を満たしていた。
【0042】
患者の脳のドーパミントランスポーター-単光子放出コンピューター断層撮影(DAT-SPECT)検査の結果および磁気共鳴映像法(MRI)画像は、PDの診断と合致している必要があった。従来型のPDの治療を受けた全ての参加者になる可能性のある人々は、該研究期間の前に、少なくとも3ヶ月の安定した投与を受け、全試験期間の間、継続する意思を有していなければならなかった。
【0043】
全ての研究対象は、自由意思によるインフォームド・コンセントを提供した。試験手順書、患者情報、インフォームド・コンセントおよび他の全ての必要とされる試験文書は、独立した倫理委員会に提出された。
【0044】
材料および方法:
AFFITOPE(登録商標)PD01Aは、主として、該ワクチンの安全性および認容性を評価し、次いで、その免疫学的および臨床学的活性を評価(予備分析)するように設計された第I相臨床試験であるAFF008において、初期のPDに罹患している24名の個人に初めに適用された。この目的に向けて、1mgのアルヒドロゲル(Alの換算値として)に吸着させた2種類の投与量(15μgまたは75μgのAFFITOPE(登録商標)PD01A(すなわち、KLHの対応する量に結合した、15μgまたは75μgのペプチドCDMPVDPDN)が、4週間の間隔を空けて4度適用された。各投与は、12名の患者に適用された。加えて、8名までの患者が、未処理対照グループへの参加を依頼された。得られた結果は、(i)該ワクチンの安全性および認容性を確認し、(ii)ワクチン特異的IgG応答の誘導を立証し、(iii)意図された臨床活性を支持する証拠を提供した。全32名の患者は、経過観察研究(AFF008E)を依頼され、31名(ワクチン患者24名およびコントロール7名)が承諾し、30名が該研究を終えた。低投与量グループの1名の患者は、経過観察から離脱した。AFF008E参加者は、低投与量(15μg;臨床での混合により高投与量から得られる)、または高投与量(75μg)処方の1回の「ブースト注射」を依頼され、4つの異なる処理グループに分かれた。すなわち、低投与量(AFF008)-抵投与量(AFF008)、低投与量-高投与量、高投与量-低投与量、および高投与量-高投与量である。対照グループの患者は、処理を行わないままにした。全部で28名(22/6)が承諾し、全28名が該AFF008E研究を終えた。
【0045】
注射は、治験責任者によって皮下組織へと適用された。全ての投与は、治験実施施設で行われた。処理グループの患者は、無作為に15μgまたは75μgのAFFITOPE(登録商標)PD01Aの投与を受けた。両方の処方は、0.5mg当量のアルミニウムを含有する。
【0046】
該試験は、Good Clinical Practice(医薬品の臨床試験の実施基準)(GCP)、改正ヘルシンキ宣言(2013)および、現地の法令上および規制上の要件(オーストリア薬事法)および適用可能な国際規制を遵守して実施された。該試験は、認可された臨床試験リポジトリ(www.clinicaltrials.gov,identifiers:NCT01568099,NCT02216188)に登録されている。
【0047】
結果を図1A-Lに示す。1A-Dは、プライミングの20ヶ月後のaSynミモトープPD01Aの注射が、免疫学的ブースト効果を誘導することを示す。(C)最も顕著な免疫学的効果は、月に1度の15μgのPD01Aの注射を4回してプライミングを行い、75μgのPD01Aでブーストを行った時に見られる。(D)75μgを用いたブーストは、プライミングの間に到達されたレベル以上に、抗体応答をなお強めていた。
【0048】
図1E-Hは、aSynエピトープ応答を示す。図I-Lは、KLH応答を示す。全ての図1A-Lは、ヒト血清由来の抗体力価を示す。
【0049】
図1E-Hおよび図1I-Lは、図1A-Dと似たように体系化されている。赤い点線は、グループ平均値を表す。該図の見出しは、ワクチンの投与量を表す。プライミング投与量(AFF008)/ブースト投与量(AFF008A)である。グループの大きさ:n=4(15μg/15μg)、その他の全てのグループはn=6。該図全ての時間周期:3.5年。初期のPD患者(ホーン・ヤールの重篤度分類ステージI/IIにより定義される)は、28日の間隔を空けて、15または75μgの投与量で4回のプライミング免疫付与を受けた。該免疫化ペプチド(PD01)に対する、標的であるaSynエピトープ(aa110-130;BSA複合体として処方される)に対する、およびKLHに対する抗体が、ELISA法によって定量された。プライミング投与量は、主に抗体応答の持続時間に関して有益であった。該低投与量は、該高投与量よりも長く続く抗体応答を引き起こし、両方の応答の強度は同等であった。同様に、該ブーストの結果は、該投与量によって決定された。該低投与量は、プライミング応答のレベルまで、該抗体応答の再活性化を達成した。対照的に、該高投与量は、プライミング段階の間に得られた応答と比較して10倍まで該抗体応答を強めた。本発明の基礎を形成する最も良い応答は、プライミングおよびブーストのための低および高投与量の組み合わせで見られた。
【実施例0050】
AngIIワクチン接種ブースト
ワクチン
ペプチドDRAYAHPF、RAYAHPF、DPGYIHPFおよびPGYIHPFは、ヘテロ二機能性リンカーGMBS(4-マレイミド酪酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)を介して、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはCRM197(Cross Reactive Material197)に結合された。該結合ペプチドの示される量(1,5,30,150μg)は、水酸化アルミニウム(水酸化アルミニウムの終濃度は0.2%であった)を用いて懸濁された。バッファーとしては、PBSまたはマンニトール/リン酸塩のいずれかが使用された。
【0051】
動物実験
雌BALB/cマウスが、12時間明/暗サイクルの下に置かれ、食料と水を自由に摂取させた。実験開始時のマウスの週齢は、およそ8~10週齢であった。
【0052】
グループごとに、10匹のBalb/cマウスが皮下に免疫化された。マウスは、初めに2週間の間隔を空けて3度、合わせて1mL量注射された(左右の肩領域へ2×500μL)。血液は、3回目の注射の後、一定の間隔を空けて数回採取した。ここに示されるデータは、3回目の注射のおよそ8ヶ月後に採取された血漿由来である(P3iとして表記)。3回目の注射のおよそ8.5ヶ月後に、各グループにおいて残っているマウスの半分は、初めの3回の免疫付与におけるのと同じ量の抗原を用いてブーストされた、または、より高い/より低い量を用いて免疫付与された(下記スキーム参照)。最後の血漿(P4bとして表記)は、4回目のワクチン接種の6週間後に採取された。
【0053】
【表1】

【0054】








【表2】

【0055】
ペプチドELISA法
該ワクチンの免疫原性を決定するために、96ウェルNunc-Maxisorbプレートは、pH9.2-9.4の0.1M NAHCO中のウシ血清アルブミン(BSA)に結合した、1μMの、それぞれ注射されたペプチドを用いてコーティングされた。非特異的な結合は、ブロッキングバッファー(PBS中5%BSA)でのインキュベーションでブロックした。適当な血清希釈液が、該ウェルに加えられ、段階的に1:2倍に希釈され、およそ1時間37℃でインキュベートされた。結合した抗体は、ビオチン化ヤギ抗マウスIgGを用いて、続いてストレプトアビジン(Streptavidin)に結合した西洋ワサビペルオキシダーゼを用いてインキュベートすることで検出された。基質ABTSが加えられ、405nmにおける光学的濃度(OD)がマイクロウェルプレートリーダーで測定された。力価は、該アッセイにおいてODmaxの50%に到達するときの該血清の希釈倍数として定義された。
【0056】
再ブースト後の抗体の誘導倍数(fold induction)を算出するために、4回目の免疫付与後に決定された個々のマウスの抗注射ペプチド力価を、3回目の免疫付与後、8ヶ月までの間に決定された力価で割った。各グループに対して得られた平均因子をグラフに示す。
【0057】
結果を図2A-Dに示す。BALB/cマウスのグループ(n=10)は、KLHに結合したアンジオテンシンII疑似ペプチド5μg(AおよびB)、CRMに結合したアンジオテンシンII疑似ペプチド5μg(CおよびD)を注射することによって、0、2および4週にプライミング免疫付与を受けた。いずれかのワクチンを用いた免疫付与も、AngII特異的IgG Ab応答の誘導をもたらした。全てのワクチンは、応答速度の点で類似の応答を示したが、強度に関してある程度異なっていた。22週目に適用された、低投与量、すなわち5μgの各ワクチンを用いたブーストは、ワクチンのタイプ/処方に関わらず、AngII特異的Ab応答を有意に増強しなかった。対照的に、33週目における、高い処方量、すなわち50μgでの各ワクチンの適用は、プライミング段階の間到達されたレベルを明らかに超えて、AngII特異的Ab応答をブーストした。
【実施例0058】
PCSK9免疫付与ブースト
材料および方法
ワクチン:
ペプチドSIPWSLERIT、VIPWNLERILおよびSVPWNLERIQは、ヘテロ二機能性リンカーGMBS(4-マレイミド酪酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)を介して、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に結合された。
【0059】
動物実験:
5匹のBALB/cマウスが、皮下に免疫化された。マウスには、食料および水を自由に摂取させ、12時間明/暗サイクルの下に置かれた。21個の実験開始時のマウスの週齢は、8~10週齢であった。マウスは、KLHに結合させ、かつ、アジュバントとしてアルヒドロゲルに吸着させたペプチドを正味で5μgまたは25μgのいずれか、全体で1mL容量で用いて、2週間の間隔を空けて3度、注射された。血液は、各注射のおよそ2週間後に、および最後の3度目の免疫付与後1ヶ月の間隔を空けて(最大1年間)、採取された。プライム免疫付与の52週間後に、マウスは、KLHに結合させ、アジュバントとしてアルヒドロゲルに吸着させた正味25μgのペプチドを全体で1mL容量で用いて再ワクチン接種(4度目の免疫付与)を受けた。血液は、4度目の免疫付与の2および4週間後に採取された(それぞれ、血漿4aおよび4b)。
【0060】
タンパク質ELISA法:
該ワクチンの免疫原性を決定するために、故に、該免疫化された動物における血漿中のPCSK9特異的抗体の量を同定するために、ELISAイムノアッセイが行われた。ELISAイムノアッセイは、容易に定量することができるシグナルを生み出し、ワクチン誘導PCSK9特異的抗体の量の定量的尺度を表す。従って、ELISA法によって測定されるような力価は、処置された動物の血漿試料中の標的特異的抗体の量(μg/mL)と直接相関する。全ての血漿試料は、最後の免疫付与の2週間後に採取され、等しく処理された。直接的な比較を行うために、該ワクチン誘導PCSK9特異的抗体のPCSK9タンパク質ELISAイムノアッセイによる定量的な評価、およびそれらに関連するコントロール(元の配列およびネガティブコントロール)との比較が、全ての試料に対して同時に行われた。この目的のために、ELISAプレートは、組換え型発現ヒトPCSK9タンパク質でコーティングされた。非特異的な結合は、ブロッキングバッファー(PBS中に1%BSA)でのインキュベーションによりブロックした。適切な血清希釈液(1:100の開始希釈でのプール)がウェルに加えられ、段階的に1:2倍に希釈され(12回の希釈段階)、およそ1時間インキュベートされた。結合した抗体は、抗マウスIgG抗体とのインキュベーションによって検出され、ABTSが基質として加えられ、405nmのODが測定された。ネガティブコントロールとして、関連のないペプチドが注射された対照グループからの血清が分析された。該力価は、該アッセイにおいてODmaxの50%に到達する時の血清の希釈倍数として定義された。
【0061】
結果を図3に示す。マウスのグループは、0、2または4週目に、PCSK9を標的としているAFFITOPEワクチン5μgまたは25μgのいずれかを注射することによって、プライミング免疫付与を受けた。ネガティブコントロールマウスは、KLHに結合し、Alum(水酸化アルミニウム)でアジュバント化された関連のないペプチドを投与された。ヒトPCSK9に対するAbは、両方の処置グループについて、プライミングの48および52週後になお検出可能であった。しかし、応答は、低投与量の投与を受けた動物のグループにおいてより顕著であった。一方で、ネガティブコントロール動物は、ヒトPCSK9に対するAb応答を示さなかった。52週目における25μgのAFFITOPEワクチンを用いた1度のブーストの適用は、より顕著なhuPCSK9Abの増加をもたらし、該低投与量(5μg)/高投与量(25μg)グループにおいて到達されたレベルは、該高投与量(25)/高投与量(25)グループにおいて到達されたレベルのおよそ2倍の高さであった。25μgのAFFITOPEワクチンの1回の注射は、コントロールマウス(それ以前にAFFITOPEワクチンに暴露されたことがない)においてAb応答を引き起こさなかった。
【実施例0062】
AFF008A:アルファ-シヌクレイン(「aSyn」)に対する既存免疫応答の成功したブースティング
臨床試験(「AFF008A」)のクールにおいて、aSyn標的配列(ペプチドDQPVLPD;「PD01A」)を用いたAFFITOPE(登録商標)に基づいたワクチンアプローチの安全性および免疫学的分析は、初期段階のパーキンソン病(PD)患者において分析された。
【0063】
PDは、多い進行性の神経変性疾患であり、その罹患率は、年齢と相関関係があり、85歳を超える人々の4%にまでも及ぶ。該疾患の初めの臨床兆候は、運動障害である。しかし、嗅覚欠損、便秘、鬱および起立性低血圧症のような非運動性症状もまた、疾患発症の特徴であり、疾患進行の間に認識機能障害ないし認知症が起こる場合もある。該疾患の発病機序の理解における集中的な科学的取り組みにも関わらず、目下利用可能な処置は、対症的なものに限られるが、疾患改変特性に乏しい。アルファ-シヌクレイン(aSyn)、とりわけそのオリゴマー構造は、疾患発病機序の主要な病理学的特徴であると考えられており、従って、PDに対する治療法の開発における魅力的な標的である。
【0064】
本研究の目的は、PDの長期的な処置または予防のためにaSynを標的としているAFFITOPE(登録商標)に基づいたワクチン(PD01Aと呼ばれる;図4)を開発することにあった。
【0065】
研究計画および方法
ペプチドに基づいたAFFITOPE(登録商標)PD01Aを用いた免疫付与の評価を行うための第I相試験AFF008A(NCT02216188-追加して行うブースト)は、患者は盲検化され、単一施設で実施され、無作為であり、制御された、同時並行して2つの「ブースト」投与量(15μgおよび75μg)を評価するグループであった。該研究は、初期段階のPD患者において行われた(図5)。一次エンドポイントは、1度の皮下ブースト注射の認容性および安全性であった(図6)。各投与量は、15μgまたは75μgのいずれかのAFFITOPE(登録商標)PD01Aを用いた4度のプライミング免疫付与を以前に受けた患者において試験された(NCT01568099,「AFF008」;実施例1を参照)。二次エンドポイントは、該2つのAFFITOPE(登録商標)PD01A投与計画によって誘導されたブースティング後の免疫応答であった。さらに、該免疫付与ペプチド、KLH(担体タンパク質)およびaSyn標的配列に特異的なIgG Abの抗体力価が、ELISA法によってモニターされた。加えて、aSynリコンビナントタンパク質に対する応答性もまたELISA法によってモニターされた。
【0066】
結果
2つの異なる投与量のPD01A AFFITOPE(登録商標)に基づくワクチンを使用している該ブーストは、よく認容された(図7、8)。調査有効性変数は、本研究の未処理対照グループ(untreated control-arm)に比べて、処理グループにおいて臨床症状の悪化を示さなかった。PD01Aを用いた該ブーストワクチン接種は、プライミング免疫付与の約2年後に、投与量依存的に特異的な免疫応答の再活性化をもたらす。すなわち、低投与量(AFF008)で4度免疫化され、高投与量(AFF008A)でブーストされたPD患者は、明確な免疫学的ブーストを示した。該免疫応答は、24週間の観察期間全体を通して維持された(図9)。
【0067】
AFFITOPE(登録商標)PD01Aに対する免疫応答は、ワクチン接種されたPD患者22名中19名(86%)において見られた。これらの19名のPD患者のうち14名(73%)は、aSynの元のエピトープに対して特異的な抗体を産生した。
【0068】
結論
初期PD患者における該AFFITOPE(登録商標)PD01Aワクチンアプローチはよく認容され、長期の免疫応答を引き起こし、ブースト可能である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2023175708000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の自己抗原を含む投与量を患者に投与して一次免疫応答を誘導する、ヒト患者における自己抗原に対するワクチン接種方法であって、該患者が該自己抗原のブースト投与を受けることを特徴とし、ここで、該ブースト投与における投与量中の該自己抗原の量は、一次免疫応答のための投与において使用される投与量中の該自己抗原の量よりも高い、方法。
【外国語明細書】