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特開2023-175734ヒト及び動物の食品用サプリメント成分としてのリグニン画分の使用
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  • 特開-ヒト及び動物の食品用サプリメント成分としてのリグニン画分の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175734
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ヒト及び動物の食品用サプリメント成分としてのリグニン画分の使用
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20231205BHJP
   A23L 33/115 20160101ALI20231205BHJP
   A61K 36/49 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 36/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20231205BHJP
   A23K 10/37 20160101ALI20231205BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20231205BHJP
   A23K 50/10 20160101ALI20231205BHJP
   C07G 1/00 20110101ALN20231205BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/115
A61K36/49
A61K36/00
A61P31/04
A61P31/10
A23K10/37
A23K20/158
A23K50/10
C07G1/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143199
(22)【出願日】2023-09-04
(62)【分割の表示】P 2020532978の分割
【原出願日】2018-12-11
(31)【優先権主張番号】102017000148931
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】518451116
【氏名又は名称】グリーン イノベーション ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】518451105
【氏名又は名称】ユーピーエム-キンメネ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】レオナルディ,ジュリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ピエタリン,スービ
(72)【発明者】
【氏名】ウブシュ,クリスチャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒト及び動物の食品用サプリメント成分としてのリグニン画分を含む抗病原性物質を提供する。
【解決手段】食品病原体に起因する感染症の予防及び治療における、ヒト及び動物の食品用サプリメント中の抗病原性物質であって、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された重量平均分子量が最大2,500のフラグメントを含むリグニン画分を含み、前記フラグメントが重量平均で最大13個のフェニルプロパン単位を含み、前記食品病原体は、大腸菌、カンジダ・アルビカンス、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ・エンテリティディス、カンピロバクター・ジェジュニ、リステリア・モノサイトゲネスを含み、プロバイオティクス微生物に悪影響を及ぼさない、抗病原性物質を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品病原体に起因する感染症の予防及び治療における、ヒト及び動物の食品用サプリメント中の抗病原性物質であって、
サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された重量平均分子量が最大2,500のフラグメントを含むリグニン画分を含み、
前記フラグメントが重量平均で最大13個のフェニルプロパン単位を含み、
前記食品病原体は、大腸菌、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enterditis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)を含み、
プロバイオティクス微生物に悪影響を及ぼさない、抗病原性物質。
【請求項2】
前記リグニン画分は、塩基触媒解重合によって得られる、請求項1に記載の抗病原性物質。
【請求項3】
150~2,500の重量平均分子量を有するフラグメントを含み、
前記フラグメントが、重量平均で最大12個のフェニルプロパン単位を含む、請求項1又は2に記載の抗病原性物質。
【請求項4】
サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された数平均分子量が最大2,000のフラグメントを含み、
該フラグメントが、数平均で最大11個のフェニルプロパン単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗病原性物質。
【請求項5】
150~1,000の数平均分子量を有するフラグメントを含む、請求項4に記載の抗病原性物質。
【請求項6】
動物飼料1トン当たり最大10kg、より好ましくは動物飼料1トン当たり1~5kgの量で使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗病原性物質。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗病原性物質、及び好適な食品担体を含む食品用サプリメント。
【請求項8】
さらに、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された重量平均分子量が、3,500~5,500であるフラグメントを含むリグニン画分を含み、
前記フラグメントが、重量平均で最大40個のフェニルプロパン単位を含む、請求項7に記載の食品用サプリメント。
【請求項9】
さらに、少なくとも1つの樹脂酸を含み、
前記樹脂酸が、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パルストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダロピマル酸、又はそれらのエステル、又はそれらのエーテル、又はそれらのアルカリもしくはアルカリ土類塩、又はそれらの混合物である、請求項7又は8に記載の食品用サプリメント。
【請求項10】
さらに、C12~C24脂肪酸の少なくとも1つのアルカリもしくはアルカリ土類塩、
少なくとも1つの脂肪油、又はそれらの混合物を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の食品用サプリメント。
【請求項11】
家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントであって、
家畜から得られる食肉の品質及び品質保持期間の改善に有効な量で投与される、請求項7~10のいずれか一項に記載の食品用サプリメント。
【請求項12】
雌家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントであって、
雌家畜から得られる乳生産量及び品質の改善に有効な量で投与される、請求項7~10のいずれか一項に記載の食品用サプリメント。
【請求項13】
家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントであって、
家畜の繁殖力の向上に有効な量で投与される、請求項7~10のいずれか一項に記載の食品用サプリメント。
【請求項14】
家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントであって、
消化効率又は反芻を損なうことなく、メタン排出量の低減に有効な量で投与される、請求項7~10のいずれか一項に記載の食品用サプリメント。
【請求項15】
リグニン画分を最大100g、好ましくはリグニン画分を20~80g含む1日投与量で反芻動物に投与される、請求項11~14のいずれか一項に記載の食品用サプリメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト及び動物の食品用サプリメント成分としてのリグニン画分の使用、並びにそれを含む食品用サプリメントに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの産業では、例えば食品業界では、業界で処理する製品、例えば食品の衛生状態を維持するために、細菌の増殖を避けることが必要である。農場では、そして食肉処理場では、細菌の増殖は、一方では非常に一般的であり、他方ではその増殖を制限し、回避することが非常に重要である。
【0003】
既知の製品は多くの微生物に対して効果がないことが多く、そのため多くの異なる製品を使用しなければならない。また、既知の製品は多くの場合、環境とそれらが使用される製品の両方を汚染する。
【0004】
このような場合、通常使用される製品は抗生物質である。しかし、これらの薬剤の乱用及び誤用と、経済的インセンティブの低下及び厳しい規制要件に起因する製薬業界による新薬開発の不足は、抗生物質耐性の危機の根底にあると考えられている。
【0005】
抗微生物薬耐性(AMR)とは、以前の治療に使用した薬剤の効果に抵抗する微生物の能力である。この用語には、より具体的な「抗生物質耐性」も含まれる。これは抗生物質に対して耐性を持つようになった細菌にのみ適用される。耐性微生物は治療がより難しく、代替薬又は高投与量が必要となり、両者ともに、より高価であるか、より毒性が強い場合がある。
【0006】
世界保健機関(WHO)は、畜産における抗生物質の不適切な使用は、抗生物質耐性菌の出現と蔓延の根本的な原因であり、動物飼料における成長促進剤としての抗生物質の使用は制限されるべきであると断言した。世界動物衛生機関は、陸生動物衛生規約に、各国の抗微生物薬耐性監視とモニタリングプログラムの作成と調和、畜産における抗生物質使用量のモニタリング、抗生物質の適正かつ慎重な使用を確保するための推奨事項について、加盟国に推奨する一連のガイドラインを追加した。別のガイドラインは、関連する危険因子を確立し、抗生物質耐性のリスクを評価するのに役立つ方法論を実行するためのものである。
【0007】
このように、抗生物質の使用を回避しながら、これらの悪い微生物を効果的に撃退し、
同時にヒトや動物の健康を維持する必要性が感じられている。
【発明の概要】
【0008】
上記目的は、請求項1に記載の通り、リグニン画分を抗病原性物質としてヒト及び動物の食品用サプリメントに使用することにより達成された。
【0009】
この点において、また本発明は、前記リグニン画分と好適な食品担体を含む食品用サプリメントに関する。
【0010】
別の態様において、本発明は、家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントに関し、前記食品用サプリメントは、家畜から得られる食肉の品質及び品質保持期間の改善に有効な量で投与される。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、雌家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントに関し、前記食品用サプリメントは、雌家畜から得られる乳生産量及び品質の改善に有効な量で投与される。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントに関し、前記食品用サプリメントは、家畜の繁殖力の向上に有効な量で投与される。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントに関し、前記食品用サプリメントは、消化効率又は反芻を損なうことなく、メタン排出量の低減に有効な量で投与される。
【0014】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、例示目的で提供される実施例、及び添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例6による対照群及び実験群の14日間の熟成中の食肉の赤色度プロファイルを示す。
図2図2は、実施例6による対照群及び実験群の14日間の熟成中の食肉の黄色度プロファイルを示す。
図3図3は、実施例6による第一胃液のin vitro消化の24時間の間の総ガス生成量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
従って、本発明の対象は、食品病原体に起因する感染症の予防及び治療におけるヒト及び動物の食品用サプリメント中の抗病原性物質としてのリグニン画分の使用であり、前記リグニン画分は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された重量平均分子量が最大2,500ダルトンのフラグメントを含み、前記フラグメントは重量平均で最大13個のフェニルプロパン単位を含む。
【0017】
リグニンは、いくつかの藻類、維管束植物(その樹皮を含む)及び草本植物、例えば、
樹(すなわち、針葉樹と広葉樹)、すべての穀物の藁、サトウキビバガス、草、麻、黄麻、大麻又は綿の支持組織の重要な構造材料を形成する複雑な有機ポリマー類である。またリグニンは、泥炭、レオナルダイト、石炭等の鉱物源を有する場合もある。化学的には、
リグニンは、重量平均分子量が20,000ダルトン以上のフェニルプロパン単位が多くの異なる結合によって結びついた、非常に不規則な、ランダムに架橋したポリマーである。最も重要な結合パターンを含む代表的で例示的なリグニンフラグメント(I)を以下に示す:
【0018】
【化1】
【0019】
前記ポリマーは、3つのフェニルプロパノイドモノマー前駆体の酵素が介在する脱水素重合の結果である:
【0020】
【化2】
【0021】
それぞれ以下の部分が得られる:
【0022】
【化3】
【0023】
コニフェリルアルコールはすべての種に存在し、球果植物(針葉樹)では主要なモノマーである。落葉樹(広葉樹)の種は最大40%のシナピルアルコール単位を含む一方で、
また草や農作物は、クマリールアルコール単位を含む場合がある。
【0024】
リグニンは、その原料となるバイオマス源によって針葉樹リグニンと広葉樹リグニンに分類される。適切なリグニン画分を得るための適切な出発原料となり得る原料のバイオマス源は、実質的に純粋なリグニン、クラフトリグニン、バイオマス由来リグニン、アルカリパルプ化プロセスからのリグニン、ソーダプロセスからのリグニン、オルガノソルブパルプ化からのリグニン及びそれらの任意の組み合わせを含む任意のリグニンである。
【0025】
「実質的に純粋なリグニン」なる表現は、乾燥原料のバイオマスを基準に少なくとも90%の純粋なリグニン、好ましくは少なくとも95%の純粋なリグニンと理解されるべきである。残部は、抽出物、ヘミセルロース等の炭水化物及び無機物である。
【0026】
「クラフトリグニン」なる表現は、クラフト黒液に由来するリグニンと理解される。黒液は、リグニン残渣、ヘミセルロース、及びクラフトパルプ化プロセスで使用される無機化学物質のアルカリ性水溶液である。パルプ化プロセスからの黒液は、様々な割合で様々な針葉樹種と広葉樹種に由来する成分を含む。リグニンは、沈殿や濾過等を含む様々な方法で黒液から分離することができる。リグニンは通常、11~12未満のpH値で沈殿を開始する。様々な特性を有するリグニン画分を沈殿させるために、様々なpH値を使用することができる。これらのリグニン画分は、分子量分布(例えば、M及びM)、多分散性、ヘミセルロース及び抽出物の含有量、無機物の含有量によって互いに相違していてもよい。沈殿したリグニンは、酸洗浄工程を用いて、無機不純物、ヘミセルロース及び木材抽出物から精製することができる。さらなる精製は、濾過によって達成することができる。
【0027】
あるいは、リグニンは純粋なバイオマスから分離される。分離プロセスは、バイオマスを強アルカリで液化することから始めることができ、次いで中和プロセスを行う。アルカリ処理の後、リグニンは、上記で提示した方法と同様の方法で沈殿させることができる。
【0028】
あるいは、バイオマスからのリグニンの分離は、酵素処理工程を含む。酵素処理は、バイオマスから抽出されるリグニンを変化させる。純粋なバイオマスから分離されたリグニンは、実質的に硫黄を含まず(硫黄含有量は3%未満)、したがって、さらなる処理に役立つ。
【0029】
好ましくは、そうして分離されたリグニンはまた、フラグメントの重量平均分子量をさらに減少させるために、解重合工程に供される。
【0030】
好ましくは、そうして分離されたリグニンはまた、フラグメントの重量及び数平均分子量をさらに減少させるために、解重合工程に供される。
【0031】
好適な解重合プロセスとしては、塩基触媒解重合、酸触媒解重合、金属触媒解重合、イオン液体支援解重合(ionic liquids-assisted depolymerization)及び超臨界流体支援リグニン解重合等(supercritical fluids-assisted lignin depolymerization)が挙げられる。
【0032】
好ましい実施形態では、前記リグニン画分は、塩基触媒解重合によって得られる。
【0033】
好ましくは、前記リグニン画分は、分離されたリグニンを、300℃未満の温度、30MPa未満の圧力で、塩基触媒解重合に供することにより得られる。
【0034】
pHは、NaOH、KOH、Ca(OH)、LiOH、KCO、又はそれらの混合物等の塩基を添加することにより、11~14の間に設定される。
【0035】
本発明の目的のために、リグニン画分中のフラグメントの重量平均分子量(M)は、
サイズ排除クロマトグラフィー(又は「SEC」)によって測定される。SECは、ビーズの細孔内に存在する滞留液体を固定相として用い、流動性のある液体を移動相として用いる。そのため、移動相はビーズ間を流れ、またビーズの細孔に出入りすることができる。分離メカニズムは、溶液中のポリマー分子の大きさに基づいている。より大きな分子は最初に溶出する。ビーズ内の多くの細孔に入ることができる小さな分子は、カラムを通過するのに時間がかかるため、ゆっくりとカラムから出る。ポリマーサンプルの成分の分子量を測定するために、既知の重量の標準ポリマーを用いた校正を行う必要がある。その後、未知のサンプルからの値を校正グラフと比較する。保持時間は、使用されるカラム材料、溶離液、及び使用される標準がサンプルと比較してどの程度類似するかに依存する。本発明において、溶離液は、好ましくは0.1M NaOHである。
【0036】
本発明のリグニン画分は、以下に提供する実施例に示す通り、プロバイオティクス微生物に悪影響を及ぼすことなく、同時に、食品病原体に対して非常に選択的で効果的であることが、予想外かつ驚くべきことに証明された。
【0037】
食品病原体とは、大腸菌、カンジダ・アルビカンス、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ・エンテリティディス、カンピロバクター・ジェジュニ、リステリア・モノサイトゲネス等のグラム陽性及びグラム陰性の細菌及び真菌である。
【0038】
プロバイオティクス微生物の例としては、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosu)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccaromyces boulardii)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム
(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等が挙げられる。
【0039】
これは、本発明のリグニン画分が、有利には抗生物質治療の代替を可能にすることを意味する。抗生物質耐性は抗生物質に対する細菌耐性の因子の出現(及び伝播)と定義され、抗生物質の過剰及び/又は不適切な使用によって微生物集団に及ぼされる選択圧によって引き起こされる。本明細書に記載のリグニン画分は、抗生物質耐性感染症の予防及び治療のための抗生物質の有効な代替手段であることが証明されている。
【0040】
以下に示す実施例から分かるように、本発明のリグニン画分は、有利かつ驚くべきことに、ヒト及び動物、特に家畜の全体的な健康及びウェルネスを向上させることができ、一方で、後者の経済的パフォーマンス、そこから得られる乳及び食肉の品質を向上させることができる。
【0041】
好ましくは、前記リグニン画分は、最大2,000ダルトンの重量平均分子量を有するフラグメントを含む。
【0042】
好ましい実施形態では、前記リグニン画分は、最大1,500ダルトンの重量平均分子量を有するフラグメントを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記リグニン画分は、最小150ダルトン(down to 150 Daltons)の重量平均分子量を有するフラグメントを含む。
【0044】
好ましい実施形態では、前記リグニン画分は、150ダルトン~2,500ダルトンの重量平均分子量を有するフラグメント、好ましくは250ダルトン~2,000ダルトンの重量平均分子量を有するフラグメント、より好ましくは500ダルトン~1,800ダルトンの重量平均分子量を有するフラグメントを含む。
【0045】
好ましくは、これらの実施形態において、前記フラグメントは、重量平均で最大12個のフェニルプロパン単位を含み、より好ましくは、重量平均で最大11個のフェニルプロパン単位を含む。
【0046】
3つのフェニルプロパノイドモノマー前駆体の分子量は、クマリルアルコールの150Da、コニフェリルアルコールの180Da、及びシナピルアルコールの210Daの間で変化する。したがって、平均重量は180Daであり、この値は「フェニルプロパン単位」として使用した。M値を180Daで除算し、その結果、重量平均でのフェニルプロパン単位数を得た。
【0047】
特に好ましい実施形態は、前記リグニン画分が、重量平均分子量が250ダルトン~2,000ダルトンであり、重量平均で2~11個のフェニルプロパン単位を有するフラグメントを含む。
【0048】
別の実施形態では、リグニン画分は、最大2,000ダルトンの数平均分子量(M)を有するフラグメントを含む。
【0049】
本発明の目的のために、リグニン画分中のフラグメントの数平均分子量(M)は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定される。好ましくは、リグニン画分は、最大1,500ダルトンの数平均分子量(M)を有するフラグメントを含む。
【0050】
好ましい実施形態では、前記リグニン画分は、150ダルトン~1,000ダルトンの数平均分子量を有するフラグメントを含む。
【0051】
いかなる理論にも縛られることを望まず、数平均分子量が低いほど活性分子が多いと考えられる。これは、分子量が低いほどフラグメントが小さいことを意味し、フラグメントが小さいほど架橋/短鎖フラグメントが少ないことを意味し、そして、架橋/短鎖フラグメントが少ないほどその上にある遊離官能基の数が多いことを意味し、より反応性の高いフラグメントが多いことを考慮して提唱される。
【0052】
さらに、より小さな分子は病原体の細胞膜を通過しやすく、そこに拡散しやすいため、
リグニン画分の全体的な効果を顕著に向上できると考えらる。
【0053】
好ましくは、これらの実施形態において、前記フラグメントは、数平均で最大11個のフェニルプロパン単位を含み、より好ましくは、数平均で最大8個のフェニルプロパン単位を含む。
【0054】
3つのフェニルプロパノイドモノマー前駆体の分子量は、クマリルアルコールの150Da、コニフェリルアルコールの180Da、及びシナピルアルコールの210Daの間で変化する。したがって、平均重量は180Daであり、この値は「フェニルプロパン単位」として使用した。M値を180Daで除算し、その結果、数平均でのフェニルプロパン単位数を得た。
【0055】
好ましい実施形態では、前記リグニン画分は、150ダルトン~2,500ダルトンの重量平均分子量(M)を有するフラグメントと、最大2,000ダルトンの数平均分子量(M)を有するフラグメントを含む。
【0056】
より好ましくは、前記リグニン画分は、重量平均分子量(M)が150ダルトン~2,500ダルトン、重量平均で2~13個のフェニルプロパン単位を有するフラグメントと、数平均分子量(M)が最大2,000ダルトン、数平均で最大11個のフェニルプロパン単位を有するフラグメントを含む。
【0057】
さらなる実施形態では、リグニン画分は、1.25~6の多分散指数(PDI)を有する。
【0058】
多分散指数(PDI)もしくは不均一指数、又は単に分散性は、特定のポリマーサンプル中の分子量の分布の程度である。PDIは、重量平均分子量(M)を数平均分子量(M)で割った値である。これは、ポリマーのバッチ内の個々の分子量の分布を示す。
【0059】
特に好ましい実施形態では、前記リグニン画分が、150ダルトン~2,500ダルトンの重量平均分子量(M)と、重量平均で2~13個のフェニルプロパン単位を有するフラグメントを含み、前記リグニン画分は、1.25~6の多分散指数を有する。
【0060】
また特に好ましい実施形態では、前記リグニン画分が、最大2,000ダルトンの数平均分子量(M)と、数平均で最大11個のフェニルプロパン単位を有するフラグメントを含み、前記リグニン画分は、1.25~6の多分散指数を有する。
【0061】
最も好ましい実施形態では、前記リグニン画分が、150ダルトン~2,500ダルトンの重量平均分子量(M)及び重量平均で2~13個のフェニルプロパン単位、最大2,000ダルトンの数平均分子量(M)及び数平均で最大11個のフェニルプロパン単位を有するフラグメントを含み、前記リグニン画分が1.25~6の多分散指数を有する。
【0062】
本発明の特に好ましい実施形態において、前記リグニン画分は、800ダルトン~1,500ダルトンの重量平均分子量(M)、重量平均で4~8個のフェニルプロパン単位、300ダルトン~700ダルトンの数平均分子量(M)、数平均で2~4個のフェニルプロパン単位を有するフラグメントを含む。これらの特に好ましい実施形態では、前記リグニン画分において、最も豊富なフェニルプロパン単位はコニフェリルアルコール由来のものであり、一方、より少ないフェニルプロパン単位はシナピルアルコール由来のものである。
【0063】
前記リグニン画分は、固体形態又は液体形態であってもよい。
【0064】
リグニン画分が固体形態である場合、前記固体形態は、錠剤、ミニ錠剤、マイクロ錠剤、顆粒剤、微粒剤、ペレット、多粒子剤、微粒化粒子又は粉末とすることができる。
【0065】
リグニン画分が液体形態である場合、前記液体形態は溶媒溶液である。
【0066】
適切な溶媒は、水、グリコール、アルコール、多価アルコール、有機酸、及びそれらの組み合わせである。
【0067】
好ましい溶媒は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、アリルアルコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-エチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール、乳酸、ポリ乳酸、及びそれらの混合物である。
【0068】
より好ましい溶媒は、水、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-エチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの混合物である。
【0069】
最も好ましい実施形態では、溶媒は水である。
【0070】
好ましくは、前記リグニン画分が液体形態である場合、前記液体形態は、pHが8~11であり、より好ましくは9.5~10.5である。
【0071】
好ましい実施形態では、リグニン画分は、動物飼料1トン当たり最大10kg、より好ましくは動物飼料1トン当たり1~5kgの量で使用される。
【0072】
さらなる態様において、また本発明は、上述の通り使用するためのリグニン画分を含む食品用サプリメント、及び好適な食品担体に関する。
前記食品用サプリメントは、固体形態又は液体形態であってもよい。
【0073】
食品用サプリメントが固体形態である場合、前記固体形態は、錠剤、ミニ錠剤、マイクロ錠剤、顆粒剤、微粒剤、ペレット、多粒子剤、微粒化粒子又は粉末とすることができる。
【0074】
食品用サプリメントが固体形態である場合、前記固体形態は、最大99wt%のリグニン画分を含み、好ましくは、5~90wt%のリグニン画分を含む。
【0075】
食品用サプリメントが液体形態である場合、前記液体形態は、溶液、乳剤、分散液、懸濁液、ゲル、滴下液又はスプレーとすることができる。
【0076】
食品用サプリメントが液体形態である場合、前記液体形態は、最大50wt%のリグニン画分を含み、好ましくは0.1~25wt%のリグニン画分を含む。これは、組成物は、使用前に必要に応じて水で適切に希釈するか、又は動物飼料と直接混合できる濃縮物であることを意味する。
【0077】
好適な担体としては、酸性化剤、酸性中和剤、凝集防止剤、酸化防止剤、充填剤、抵抗剤、ゲル化剤、コーティング剤、変性澱粉、封鎖剤、増粘剤、甘味料、シンナー、溶剤、
解離剤、滑剤、染料、結合剤、潤滑剤、安定化剤、吸着剤、防腐剤、湿潤剤、香料、被膜形成物質、乳化剤、湿潤剤、離型剤及びそれらの混合物が挙げられる。
【0078】
好ましい実施形態では、さらに食品用サプリメントは、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された重量平均分子量が、3,500~5,500ダルトンであるフラグメントを含むリグニン画分を含み、前記フラグメントは重量平均で最大40個のフェニルプロパン単位を含む。好ましくは、さらに食品用サプリメントは、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された重量平均分子量が4,000~5,000ダルトンであるフラグメントを含むリグニン画分を含み、前記フラグメントは重量平均で最大35個のフェニルプロパン単位を含む。
【0079】
別の好ましい実施形態では、さらに食品用サプリメントは、少なくとも1つの樹脂酸を含む。好ましくは、前記樹脂酸は、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パルストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダロピマル酸、又はそれらのエステル、又はそれらのエーテル、又はそれらのアルカリもしくはアルカリ土類塩、又はそれらの混合物である。
【0080】
好ましくは、食品用サプリメントは、前記少なくとも1つの樹脂酸を、食品用サプリメントの重量に対して最大10重量%、より好ましくは最大7重量%含有する。
【0081】
樹脂酸は針葉樹に存在し、樹脂酸製品には3つの主な種類がある。すなわち、トール油ロジン(Tall Oil Rosin)(TOR)、ウッドロジン(Wood Rosin)、ガムロジン(GUM Rosin)である。TORは、パルプの製造によって生成される粗トール油(CTO)から真空蒸留によって分離された樹脂酸画分である。CTOは、粗トール油石鹸(Crude Tall Oil Soap)又は粗硫酸石鹸(Crude Sulphate Soap)(TOS)の酸性化によって得られる。TOSは、パルプ製造プロセスで、ブラックリキュールと呼ばれることが多いパルプミル中の調理液(cooking liquid)から分離される。ウッドロジンは枯れ木、木の切り株、枝等から水蒸気蒸留又は他の手段で分離された画分であり、ガムロジンは、タップと呼ばれることが多い生きた木からの採取による樹脂から、水蒸気蒸留された、又は他の手段で分離された樹脂画分である。
【0082】
樹脂酸を含有し、粗トール油から真空蒸留により得られる物質としては、蒸留トール油
(DTO)、トール油脂肪酸(TOFA)、トール油ピッチ(TOP)が挙げられる。DTOは、樹脂酸を10~40%含有する。CTOは通常15~70%の樹脂酸を含み、樹脂酸の含有量が最も少ないものは、一般に混合木材パルプの調理(cooking)によって提供される。
【0083】
用語「トール油ロジン」又は「TOR」は、粗トール油の蒸留及び蒸留したトール油のさらなる精製によって得られる組成物を指すと理解されるべきである。TORは通常、60~99%(w/w)の樹脂酸を含む。
【0084】
用語「ウッドロジン」は、枯れ木、木の切り株、枝等から蒸留又は他の手段で得られる組成物を指すと理解されるべきである。ウッドロジンは通常、50~99%(w/w)の樹脂酸を含む。
【0085】
用語「ガムロジン」は、生きた木から採取された樹脂から、蒸留又は他の手段による分離で得られる組成物を指すと理解されるべきである。ガムロジンは通常、50~99%(w/w)の樹脂酸を含む。
【0086】
用語「蒸留トール油」又は「DTO」は、粗トール油の蒸留及び蒸留されたトール油のさらなる精製によって得られる組成物を指すと理解されるべきである。DTOは通常、10~60%(w/w)の樹脂酸を含む。
【0087】
また樹脂酸ベースの組成物TOR、ウッドロジン、ガムロジン、CTO、TOS及びDTOは、1つ以上の樹脂酸組成物と1つ以上の脂肪酸組成物を油又は脂肪の形態で混合することによって製造することができる。製造される樹脂酸誘導体は、例えば、エステル、
エーテル又はアルカリ金属塩である。
【0088】
樹脂酸は、抗菌性、抗炎症性、抗酸化性、抗菌バイオフィルム性等の多くの特性を示すことが知られている。しかし、樹脂酸は、酸化、自然発火及びパッキングに曝されるため、特に固体形態では、経時安定性に劣る。
【0089】
驚くべきことに、前記少なくとも1つの樹脂酸を本発明のリグニン画分と混合すると、
固体又は液体のいずれかで得られた混合物は、経時的に非常に安定であり、酸化されないため、樹脂酸の特性の利益を十分に得ることが可能であることが判明した。これは、本発明のリグニン画分を含む得られた食品用サプリメントにおいて、樹脂酸が分解から保護されるだけでなく、リグニン画分と樹脂酸の間の相乗的な抗炎症効果が認められることを意味する。
【0090】
また食品用サプリメントは、C12~C24脂肪酸の少なくとも1つのアルカリもしくはアルカリ土類塩、少なくとも1つの脂肪油、又はそれらの混合物をさらに含むことができる。これらの脂肪油又は塩は、液体形態の食品用サプリメントが好ましい場合には、樹脂酸のより良好な可溶化を可能にする。
【0091】
好ましくは、前記アルカリもしくはアルカリ土類の塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの塩又はそれらの混合物である。
【0092】
好ましくは、前記C12~C24脂肪酸は、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、α-リノレン酸(C18:3)、γ-リノレン酸(C18:3)、ノナデシル酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンエイコサン酸(C21)、ベヘン酸(C22)、トリコシル酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、ステアリドン酸(C18:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、アドレン酸(C22:4)、パルミトレイン酸(C(C16:1)、バクセン酸(C18:1)、パウリン酸(C20:1)、エライジン酸(Cトランス-18:1)、ゴンド酸(C20:1)、エルカ酸(C22:1)、ネルボン酸(C24:1)、ミード酸(20:3)、又はそれらの混合物である。
【0093】
好ましい実施形態では、前記C12~C24脂肪酸の少なくとも1つのアルカリもしくはアルカリ土類塩は、パルミチン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、パーム油のカルシウム石鹸、又はそれらの混合物である。
【0094】
好ましくは、前記少なくとも1つの脂肪油は、ヘンプ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、
オリーブ油、コーン油、パーム油、ヤシ油、パイン油、綿実油、小麦胚芽油、大豆油(soya oil)、サフラワー油、亜麻仁油、キリ油、ヒマシ油、大豆油(soybean oil)、落花生油、菜種油、ゴマ種子油、米胚芽油、魚油、鯨油、マリン油(marine oil)又はそれらの混合物である。
【0095】
好ましくは、食品用サプリメントは、前記C12~C24脂肪酸の前記少なくとも1つのアルカリもしくはアルカリ土類塩、少なくとも1つの脂肪油、又はその混合物を、前記食品用サプリメント1トン当たり1~100kgの濃度で含有する。
【0096】
別の態様において、本発明は、家畜から得られる食肉の品質及び品質保持期間を改善するための、家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントに関する。特に、本発明は、
家畜から得られる食肉の品質及び品質保持期間の改善に有効な量で前記食品用サプリメントが投与される、家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントに関する。
【0097】
本発明における「家畜」なる用語は、反芻動物及び非反芻動物の両方を含むことを意味する。反芻動物は4室の胃を持つ草食性哺乳動物であり、この複雑な胃の中で、そうしなければ消化されない植物性物質を発酵させて消化し、反芻する。(半消化された植物性物質のボールを咳をして戻し、それを再度噛み砕いて、再び飲み込む)。反芻動物には、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ、カモシカ、キリン及びラクダ、並びに、バイソン、ジャコウウシ、オカピ、ラマ等の近縁の動物が含まれる。偽反芻動物を含む非反芻動物としては、ブタ、ウマ、ニワトリ、ウサギ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、ヤマウズラ、及び、魚貝を挙げることができる。これは、有利には、本発明の食品用サプリメントは魚貝の給餌、すなわち水産養殖においても使用できることを意味する。
【0098】
驚くべきことに、本発明の食品用サプリメントを与えられた家畜は、時間の経過とともに赤味や黄色味を失うという食肉の自然な傾向が予想外に顕著に減少し、同時に食肉の品質保持期間と鮮度が劇的に向上する(すなわち、最長7日以上)ため、優れた品質の食肉を提供することが観察された。いかなる理論にも縛られることを望まず、上記の報告された抗病原性特性に加えて、本発明のリグニン画分の非常に効果的な抗酸化特性は、食肉の表面の酸化プロセスを阻害し、それによって色の変化を打ち消し、食肉の鮮度と可食性をより長い期間保存することを可能にしていると考えられる。
【0099】
色は、食肉業界や食肉科学研究の品質指標として一般的に使用されている重要な要素である。消費者は変色を鮮度と食料の保健上の健全性(wholesomeness)の欠如を示すものとして利用するため、色は食肉の品質特性の中で最も重要なものの一つであり、購買決定に大きく影響すると報告されている。消費者が知覚する品質は必ずしも客観的な品質と一致するとは限らないが、いずれにしても生鮮食肉市場に大きな経済的損失をもたらす可能性がある。また色は、褐色ではなく赤色である食肉を購入することを好む消費者に品質を示すものであり、業界は望ましくない色のために損失を出すため、経済的な観点からも重要である。以下の実施例で示される通り、本発明の食品用サプリメントは、
新鮮な食肉の赤味と黄色味の非常に満足度の高いレベルを長期間維持することを可能にする。
【0100】
さらなる態様において、本発明は、雌家畜から得られる乳の生産及び品質を改善するための、雌家畜の給餌における使用のための食品用サプリメントに関する。特に、本発明は、前記食品用サプリメントが雌家畜から得られる乳生産量及び品質を改善するために有効な量で投与される、雌家畜の給餌における使用のための食品用サプリメントに関する。
【0101】
驚くべきことに、本発明の食品用サプリメントを与えられた雌家畜は、以下の実施例に示す通り、より優れた品質の乳を、1日当たりより多くの量で提供することが観察された。実際、泌乳牛への食品用サプリメントの投与の効果は、生産された乳量と品質に関する以下の観察結果に基づいて、いくつかの事象と時系列で明らかである:
- 乳中の総ポリフェノール濃度の増加;
- 動物当たりの毎日の乳生産量の増加;
- 急性期における体細胞数の減少;
- フリーラジカル(TEAC)の吸収能力の増加。
【0102】
上記の結果は、総ポリフェノール濃度のピークが約250%、乳生産量全体の増加が+20.8%、体細胞数の減少が-31%、TEACの増加が+33%と非常に有意である。
【0103】
また、これらの成果は、処理の15~17日目近辺に最大値が集中し、特定の同調を示すことに留意すべきである。
【0104】
また、本発明に従った補給は、中止後少なくとも2週間、その有益性を引き伸ばす状態を作り出したことも分かった。有益な効果は、約20日後に薄れ始め、それは乳中の体細胞の再増加によって証明される。
【0105】
通常牛乳は微量のポリフェノールしか含まないので、本発明の食品用サプリメントを与えられた乳牛から得られた乳が、予想外に最大460mg/lのポリフェノールを含むことを非常に高く評価すべきである。ポリフェノールのヒトの必要量が820mg/dieであり、ヒトの牛乳の摂取量が平均で250ml/dieであることを考慮すると、本発明の乳によって与えられるポリフェノールの寄与は、言われているように通常これがゼロに近い場合、114mgである。
【0106】
さらなる態様において、本発明は、家畜の繁殖力を改善するための、家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントに関する。特に、本発明は、前記食品用サプリメントが、
家畜の繁殖力を改善するのに有効な量で投与される、家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントに関する。
【0107】
驚くべきことに、本発明の食品用サプリメントを与えられた家畜は、雄家畜及び雌家畜の両方について出産率の有意な上昇が認められた。
【0108】
特に、乳牛等の雌家畜では、受精後の受胎率(少なくとも+15%)と生殖寿命の点で繁殖力が向上するのに対し、雄牛や水牛等の雄家畜では、精液の質、生殖パラメータ、生殖寿命の点で繁殖力が向上する。
【0109】
さらなる態様では、本発明は、消化効率又は反芻を損なうことなく、メタン排出量を低減するための、家畜の給餌における使用のための食品用サプリメントに関する。特に、本発明は、前記食品用サプリメントが、消化効率又は反芻を損なうことなく、メタン排出量の低減に有効な量で投与される、家畜の給餌に使用するための食品用サプリメントに関する。
【0110】
家畜からの温室効果ガスであるメタンの排出量は、これまで考えられていたよりも多く、地球温暖化を抑制するための戦いにおいて、さらなる課題をもたらしている。畜牛1頭当たりが生成するメタンの修正された計算値は、2011年の世界の家畜の排出量が国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のデータに基づく推定値よりも11%多いことを示す。泥炭地、湿地、シロアリ等の自然発生源に加えて、ヒトの活動によるメタン(全体の約3分の2を占めている)は、2つの方法で生成される:石炭、石油、特に天然ガスの生産と輸送中に無臭で無色のガスが漏れる;及び、ほぼ同じ程度で、畜牛やヒツジ等の反芻動物のげっぷや曖気、及び、特に埋め立て地の有機廃棄物の腐敗から生成される。IPCCによると、2015年の世界の温室効果ガス排出量の約16%をメタンが占めている。メタンは温室効果ガスとしてはCOよりもはるかに強力であり、太陽の放射力をより多く取り込むが、大気中での持続時間は短い。それを考慮に入れて、科学者は、ガスの「地球温暖化係数」が、100年の期間にわたって二酸化炭素の28倍大きいと計算する。家畜からのメタン排出量は、急速に発展しているアジア、ラテンアメリカ、アフリカの地域で最も急激に増加していることが指摘された。対照的に、米国とカナダでは増加が急激に鈍化している。
【0111】
したがって、反芻家畜からのメタンの全体的な生産量を減少させる可能性が非常に高く評価され、同時に、以下の実施例で示される通り、本発明のリグニン画分が、消化効率又は反芻を損なうことなくこの目的を達成できるという事実は、非常に予想外であった。
【0112】
好ましくは、食品用サプリメントは、本発明のリグニン画分を最大100g、より好ましくは本発明のリグニン画分を20~80g含む1日投与量で反芻動物に投与される。
【0113】
また、本発明のリグニン画分の使用と食品用サプリメントの使用の好ましい態様のすべての組み合わせ、及び上記で報告されたその使用は、本明細書中に開示されたものとみなされると理解されるべきである。
【0114】
本発明のリグニン画分の使用、食品用サプリメント、及び上記に開示されたそれぞれの使用の好ましい態様のすべての組み合わせは、本明細書に記載されていると理解されるべきである。
【0115】
以下は、例示の目的で提供される本発明の実施例である。
【実施例0116】
本実施例におけるM及びMは、以下の手順に従ってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。
【0117】
試薬及び材料
- 溶離液:0.1M NaOH;流量0.5ml/min
- RI検出器の校正:プルラン標準品;M:100,000~1,080(6標準)
(Mはピーク最大分子量)
- 紫外線検出器(280nm)の校正:PSS標準;ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩;M 65,400~891(6標準);標準物質は超純水に溶解し、濃度は約5mg/mlとする。注入量は20μl。
-品質管理サンプル:M分布が既知のリグニンを使用する。
【0118】
設備及び機器
- Dionex Ultimate 3000 オートサンプラー、カラムコンパートメント及びポンプ
- Dionex Ultimate 3000 ダイオードアレイ検出器
- 示差屈折率検出器:Shodex RI-101
- カラム:PSS MCXカラム:プレカラム及び2つの分析カラム:1000Å及び100000Å;カラム材質はスルホン化ジビニルベンゼン共重合体マトリックス。
- シリンジフィルター0.45μm及びSTDサンプル用のガラス製サンプルボトル。
サンプル濾過:Mini-Uniprepシリンジレスフィルター装置PTFE又はナイロン;0.45μm。必要に応じて、予備濾過用の5μmシリンジフィルター
- 測定ボトル
【0119】
手順
- 溶離液の調製
溶離液を調製するために使用する水は、できるだけ溶存二酸化炭素を含まない低抵抗の高品質の脱イオン水(18MΩ・cm以上)が理想的である。水は、生物学的汚染(細菌及びカビ等)や粒子状物質を含んでいてはならない。
- 10%MeOH/水を用いたニードル洗浄
【0120】
- 液体サンプル
強アルカリ溶液サンプルを1:100に希釈し、PTFEシリンジフィルター(0.45μm)で濾過してバイアルに入れる。固体リグニンサンプルを0.1M NaOHに希釈及び溶解し、PTFEシリンジフィルター0.45μmで濾過する。準備されたサンプルをオートサンプラーに投入する。注入量は20μlである。サンプルの後、カラムを洗浄するために1M NaOHをサンプルとして注入する。
【0121】
機器パラメーター
- 流量 0.5 ml/min
- 溶離液 0.1M NaOH
- カラムオーブン温度 30℃
- イソクラティック溶離
- 実行時間 48分
【0122】
- 固体サンプル
固体試料(リグニン)は、必要に応じて60℃のオーブンで一晩乾燥させる。約10mgを10mlの測定ボトルに秤量する。サンプルを0.1M NaOH溶液に溶解及び希釈し、マークに充填する。サンプルをPTFE、0.45μmフィルターで濾過する。サンプルが適切に溶解しない場合は、超音波水浴に入れるか、5μmシリンジフィルターで濾過することができる。
【0123】
- キャリブレーション用標準試料
各標準品約50mgを10mlの測定ボトルに秤量し、超純水を加えてマークに充填する。標準品はPTFE、0.45μmシリンジフィルターで濾過する。キャリブレーションサンプルの実行後、キャリブレーション結果は処理メソッドに統合されて処理され、保存される。キャリブレーションは線形1次キャリブレーションである。
【0124】
- 品質管理サンプル
リグニンサンプルは、品質管理サンプルとしてM分布が既知のリグニンを使用する。
リグニンは0.1M NaOHに溶解し、濃度は約1mg/mlとする。
【0125】
実施例1.
ブナ材(Fagus sylvatica)から得られたオルガノソルブリグニンを塩基触媒解重合(「BCD」)で処理した。BCDプロセスは、280℃、250バール、
pH12~14で8分間実行した。得られたリグニン生成物は、液体画分と固体画分で構成されていた。
その後、これらの画分を分離した。
【0126】
液体リグニン画分は油であり、以下の特性を有していた:
単一種:Fagus sylvatica
:100~300 Da (1~2フェニルプロパン単位)
フェノール:0%
グアヤコール:15~20%
シリンゴール:50~60%
カテコール及びメトキシカテコール:5~10%
オリゴマー/不明:15~30%
【0127】
固形リグニン画分は、以下の特性を有していた:
単一種:Fagus sylvatica
:800~1,500Da(4~8フェニルプロパン単位)
:300~700Da(2~4フェニルプロパン単位)
OH基の構造:
脂肪族 0.2~0.4mmol/g
カルボン酸 0.3~0.5mmol/g
縮合及びシリンギル 1.0~2.0mmol/g
グアヤシル 0.4mmol/g
カテコール及びp-OH-フェニル 1.0~1.8mmol/g
【0128】
実施例1a.
50gの上記油状のリグニン画分(5%w/w)を、950gの1,3-プロピレングリコールと混合し、40~50℃で加温した。
混合物を室温まで冷却し、粘性溶液(以下、「LMW12」と略記する)を得た。
【0129】
実施例1b.
100gの上記固体リグニン画分(10%w/w)を、800gの1,3-プロピレングリコール、及び100gのNHOH(30%溶液)とホットミックスした。
混合物を室温まで冷却し、次いで濾過して黒色の溶液(以下、「LMW11」と略記する)を得た。
【0130】
実施例1c.
100gの上記固体リグニン画分(10%w/w)を、835gの1,3-プロピレングリコール、及び65gのKOH(20%溶液)とホットミックスした。
混合物を室温まで冷却し、次いで濾過して黒色の溶液(以下、「LMW10」と略記する)を得た。
【0131】
実施例2.
クラフト黒液から下記リグニン画分が抽出された。前記リグニン画分は以下の特性を有する:
>全固形分の95%
単一種:サザンパイン
:4400~5000Da(24~28フェニルプロパン単位)
:1200~1300Da(6~7フェニルプロパン単位)
OH基の構造:
脂肪族 2.1mmol/g
カルボン酸 0.5mmol/g
縮合及びシリンギル 1.7mmol/g
グアヤシル 2.0mmol/g
カテコール及びp-OH-フェニル 4.0mmol/g
【0132】
実施例2a.
100gの上記リグニン画分(10%w/w)を、840gの1,3-プロピレングリコール、及び60gのNHOH(30%溶液)とホットミックスした。
混合物を室温まで冷却し、次いで濾過して黒色の溶液(以下、「OX11」と略記する)を得た。
【0133】
実施例2b.
100gの上記リグニン画分(10%w/w)を、840gの1,3-プロピレングリコール、及び60gのNaOH(30%溶液)とホットミックスした。
混合物を室温まで冷却し、次いで濾過して黒色の溶液(以下、「OX10」と略記する)を得た。
【0134】
実施例3.
実施例1の生成物の抗菌活性を、微量液体希釈法(CLSIプロトコル-Clinical and Laboratory Standards Institute)を用いた抗微生物薬感受性のin vitro試験により評価した。4つの生成物(ブランク、LMW12、LMW11、LMW10)の最小阻害濃度(MIC)を、マルチウェルプレート中で測定した。ブランクは1,3-プロピレングリコールのみである。
下記の微生物(細菌及び真菌)について、生成物の抗菌活性を試験した:
【0135】
特定のスクリーニング・生物制御
細菌
- 大腸菌(Escherichia coli)
- 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
- 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
- サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enterditis)- カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)真菌- カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)
【0136】
結果
化合物はそのままで、pHを7及び8に調整した後に試験した。
すべての試験を3回繰り返して実施し、非常に類似した阻害結果が得られた。
結果を以下の表にまとめる。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
実施例4.最小阻害濃度の決定
5種類のプロバイオティクス微生物に対する実施例1bのリグニン画分の最小阻害濃度
(MIC)を、微量液体希釈法(CLSIプロトコル-Clinical and Laboratory Standards Institute)を用いた抗微生物薬感受性試験(in vitro試験)により評価した。
【0140】
使用した微生物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosu)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)及びサッカロマイセス・ブラウディ(Saccaromyces boulardii)であった。
【0141】
全ての試験において、セフトリアキソン(細菌用)又はフルコナゾール(酵母用)を用いた抗菌活性の陽性対照を調製した。結果を以下の表にまとめる。サンプルを希釈し、様々な希釈液での増殖(+)と増殖阻害(-)を評価した。灰色の四角は、増殖阻害が観察される最小濃度(MIC)を示す。
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
【表6】
【0146】
【表7】
【0147】
以上の通り、本発明のリグニン画分は、プロバイオティクス微生物に悪影響を及ぼさないことは明らかである。
【0148】
実施例5.プレバイオティクス活性の測定
また実施例1bのリグニン画分は、E.faeciumに対してプレバイオティクス活性を示した。
実施例1bのリグニン画分のプレバイオティクス活性は、プロバイオティクス細菌E.faeciumに対して得られた関連するMIC未満の濃度で試験した。
【0149】
【表8】
【0150】
プレバイオティクス活性は、実施例1bのリグニン画分の存在下で、プロバイオティクス細菌及び腸内細菌(E.coli,S.thyphimurium)の増殖を比較した定量式(プレバイオティクス指数)により評価した。
プレバイオティクス指数は、以下の通り算出した:
【0151】
【数1】
【0152】
式中、第1の項がプロバイオティクス細菌の増殖を表し、第2の項が腸内細菌の増殖を表す。
【0153】
プレバイオティクス化合物は、増殖を改善するために当該化合物を使用しない腸内細菌に対するのとは反対に、特定のプロバイオティクス細菌の増殖を選択的に増強することができる。結果として、プレバイオティクス指数>0は、プレバイオティクス活性を示している。
【0154】
【表9】
【0155】
実施例6.肉牛の給餌におけるリグニン画分の使用
実験計画、動物管理、食肉のサンプリングと分析
試験は40頭の肉牛を対象に、対照群と実験群の2群に無作為に分割して実施した。両群とも同じ飼料比率で、市販の飼料(生体重の2%を基準に計算)と不断給餌の混合乾草を与えた。試験開始前に、すべての動物の体重を測定し、その生体重に応じて、試験開始時に同じ平均生体重を得るために、2つの群に分割した。試験は動物の屠殺前の120日間、120日間継続した。対照群とは異なり、実験群は、最初の90日間は動物1頭当たり35g、次の30日間は動物1頭当たり70gの量の実施例1bのリグニン分画を毎日想定した。
【0156】
最終生体重、毎月の体重増加及び食物転換指数を評価するために、毎月すべての動物の体重を測定した。さらに、試験中に、血球数と生化学的プロファイルを評価するために、
血液サンプルも収集も採取した。
【0157】
動物は、輸送中の動物福祉に関する欧州共同体法(1/2005EC)及び商業動物の屠殺のための動物福祉に関する欧州共同体規則(1099/2009EC)に準拠して、
欧州共同体が承認した食肉処理場に輸送し、屠殺した。屠殺直後、屠体は4℃で24時間保存した。その後、分析のために第13胸椎と第18胸椎の間の胸腰最長筋(Longissimus thoracis et lumborum)(LTL)の筋肉のサンプル(各サンプル約4kg)を採取した。
【0158】
各動物の食肉を4℃で保存し、熟成中、3日目、6日目、9日目及び14日目に比色パラメータを測定した。表面肉色は、ミノルタCR-300比色計(光源D65;ミノルタカメラ株式会社、大阪、日本)を用いて、CIE L、a、b(CIE、1976)カラーシステムに従って測定した。反射率測定は、直径8mmの読取面を有するA-パルスキセノンアークランプを用いて、0°の視野角から収集した。食肉の各サンプルについて、異なる3ポイントで3回の測定を行った。前のものと比較して検出器システムを90°回転させることによって行われた各ポイントにおける3回の測定値が得られ、これにより1サンプル当たり合計9つの測定値が得られた。比色計は、白のタイトル(L=99.2、a=1.0、b=1.9)を使用して、Hunter-lab色空間システムで較正した。a及びb値を用いて、De Paloら(“Colour changes in meat of foals as affected by slaughtering age and post-thawing time”,2012,Asian-Australasian Journal of Animal Sciences,25,1775-1779)に従って、彩度=(a2+b2)1/2及び色相(°)=tan-1(b/a)を測定した。
【0159】
さらに、レオロジーパラメータを測定した。pHは、食肉を容易に貫通する形状のガラス電極を有する携帯用pHメーター(Carlo Erba pH 710;Carlo
Erba Reagenti,ミラノ、イタリア)を用いて記録した。各測定の前に、
pHメーターは、4及び7のpH値を有する溶液を使用して筋肉温度用に自動的に較正された(Crison,Lainate、イタリア)。保水能力(WHC)、調理損失及びWarner-Bratzlerせん断力(WBSF)は、De Paloら(“Effect of nutritive level on carcass traits
and meat quality of IHDH foals”,2014 Animal Science Journal,85,780-786)に記載の通り測定した。
【0160】
さらに、24時間にわたる総ガス生産量を評価するために、in vitro消化を行った。
【0161】
結果
ここでは、食肉の品質、特に比色プロファイル、及びin vitro消化ガス生成に関するより興味深い結果が報告されている。
【0162】
特に、図1に報告される通り、赤味(赤色度)は2群間で異なることが示された。リグニン分画を与えた肉牛から得られた肉は、14日目までの全ての熟成期間中、より高い赤味を示した。最近の研究では、食餌が筋肉の色に及ぼす影響は、グリコーゲンの貯蔵、冷蔵率又は抗酸化物質の蓄積の変化のいずれかが原因であと考えられている。これら全ては、最終的には筋肉の基本的な固有の色の特徴に関係する可能性がある。通常、加齢の間、
赤味は減少する傾向にあり、下降傾向を示す。これは、実験群の食肉サンプルには当てはまらない。食肉表面の赤味の減少は、ミオグロビン色素の空気への暴露に伴って発生する生化学的現象に起因する。ミオグロビンの酸化は食肉の黒ずみを引き起こす。実験群の場合、動物の飼料による抗酸化物質を仮定することにより、食肉の赤味が高くなり、消費者からの評価も高くなった。
【0163】
図2は黄色味(黄色度)の傾向を報告する。対照群の動物はこの指標の低下傾向を示したが、抗酸化剤を想定した動物は加齢中にその値に変化がなく、安定した黄色味を示した。黄色味は筋肉内脂肪の量と質と密接に関連している。想定した飼料が同じで、屠殺時の体重増加と生体重が似ていることを考慮し、食肉の化学組成が似ていることを考慮すると、筋肉内脂肪量の差は2つの群の間では観察されなかった。そうではなく、これらの違いは、異なる脂肪酸プロファイルを持つ異なる筋肉内脂肪の質に起因する可能性がある。実際、黄色味の安定性の違いは、おそらく細胞間隙の脂質分解酵素の放出に続く脂質酸化プロセスの進行と、繊維内の酸化還元活性に起因している可能性がある。
【0164】
図3は、第一胃液のin vitro消化の24時間の総ガス生成量(ml)を報告する。実験群の動物はすべての時間でガス生成量が低く、対照群の3545mlに比べて2864mlの生成量を示した。すなわち、約20%の驚くべきガスの減少を示した。別の研究では、乳牛の飼料に使用される一部の酸化防止剤が、微生物の複製を減少させ、消化活動を低下させることが示されている。このことから、第一胃内での消化活動が低下し、
乳と食肉の両方の生産量が低下することになる。実験群の場合、屠殺時の生体重、毎月の体重増加及びドレッシング率(dressing percentage)は群間で変化していないことを考慮すると、ガス生成量の低下は意外にも食肉の生産量の低下にはつながらなかった。この理由から、揮発性脂肪酸が減少することで、食肉及び生体重の転換率が低下するはずであることを考慮すると、生成が低下したガスはメタンガスの可能性があると考えられる。
【0165】
実施例7.家畜の繁殖力の評価及び本発明のリグニン画分を与えられた乳牛から得られる乳の品質の評価
本試験の目的は、実施例1bのリグニン画分を用いて、乳牛群の健康を向上させ、経済的パフォーマンスを向上させ、乳質を向上させることであった。
試験期間:28日間;乳牛1頭につき1日30グラムを投与
【0166】
試験サンプルの説明:
ホルスタイン牛(Friesian)群は、平均85頭の搾乳中の乳牛、20頭の乾乳牛及び関連する企業復帰によって構成された。
【0167】
乳牛は、内側と外側が天蓋構造で覆われた藁の寝台で作られた快適な構造の中で、安定した状態にあった。
【0168】
乾乳牛は、休息及び分娩エリアの藁敷、歩行用の中央パドック及び飼料ゾーン用の屋根付きシェルターに隣接した常設施設で飼育された。
【0169】
すべてのエリアには、休息と飼い葉桶へのアクセスのための十分なスペースが用意されている。
適切な選択につながる遺伝学に配慮をしている会社は、衣類の寿命と牛乳の品質の向上を目的とする。
【0170】
単一群のユニフィード(unifeed):
- トウモロコシサイレージ;
- ルーサン乾草(購入);
- コーンフラワー;
- 永久牧草地の干し草;
- 大豆、コア;
- サプリメントとタンポン。
【0171】
2014年の生産量:1頭あたり114トンの牛乳(AIAデータソース)。
【0172】
試験開始時のウシ群の健康状態:
ウシ群は、非常に長い暖かい期間、雨が降らない約50~60日、非常に高温、そして特に湿度が高いことを特徴とする非常に厳しい夏由来である。すべての可能な環境調整システムを実装しているが、結果として、乳牛は様々な嚥下低下を訴えた:
- 乳の総生産量の減少;
- 乳中のカゼイン及び脂肪の減少;
- 跛行の存在感の増大;
- 細胞数の漸進的な増加、ピーク時には577,000個に達した;
- 乳牛の繁殖力:発情の顕示が難しく、受胎率が低いというマイナスの影響。
【0173】
備考:
試行:授乳期に平均77頭のウシ群を全肉牛群と統合した。
授乳期間全体の平均日数は、180日から185日の間で変動した。
試験開始時、ウシ群の健康状態は最適ではなかった:
- 一部の畜牛はインフルエンザにかかったばかりで、下痢と食欲減退を特徴とした;
- 7頭の乳牛は、中程度の重症度の跛行を有する。
【0174】
混合ユニフィード中へのリグニン画分の段階的な導入には問題はなく、1週目以降、摂取量は徐々に増加し、安定した。
【0175】
結果:足病医が認定した通り、インフルエンザによる倦怠感を訴え、跛行であったそれらの動物は迅速に回復した。
【0176】
摂取量が増加すると、すぐに乳生産量が増加し、動物の体調も向上した。
【0177】
体細胞数(SCC)は、酪農家が品質データを課したいずれかの農家によって、常に会社でモニターした。最初の240,000/255,000細胞は、第2週目に120,000に低下し、試験が終了するまで、安定して約140,000/150,000細胞に達した。
【0178】
迅速:乳中の脂肪とカゼインの再調整により、会社にとってより適切な値に戻った。
ウシ群の一般的な健康状態の向上。
全般的な繁殖力の向上。
【0179】
乳生産量の成績:
- 乳生産量は、0日目の27.83 l/頭から始まり、35日目には最大値の33.41 l/頭に達した。
- リグニン分画の投与開始から35日目に記録された一日の一頭当たり生産量の増加率は、最初の一頭当たり生産量と比較して+20.08%であった。
- 全体として、生産量の増加率は、1日当たり+138g/頭であった。
1日の絶対値での最大増加は、16~17日目に記録された(+2.43 l/頭)。
【0180】
乳品質の成績:
- 乳中の総ポリフェノール濃度の上昇;
- 1日の1頭当たりの乳生産量の増加;
- 急性期における体細胞数の減少;
- フリーラジカル(TEAC)の吸収能力の増加。
【0181】
上記の結果は、総ポリフェノール濃度のピークが約250%、乳生産量全体の増加が+20.8%、体細胞数の減少が-31%、及びTEACの増加が+33%と非常に有意である。
【0182】
また、これらの成績は、処理の15~17日目近辺に最大値が集中し、特定の同調を示すことに留意すべきである。
【0183】
また、本発明に従った補給は、中止後少なくとも2週間、その有益性を引き伸ばす状態を作り出したことも分かった。有益な効果は、約20日後に薄れ始め、それは乳中の体細胞の再増加によって証明される。
【0184】
通常牛乳は微量のポリフェノールしか含まないので、本発明の食品用サプリメントを与えられた乳牛から得られた乳が、予想外に最大457mg/lのポリフェノールを含むことを非常に高く評価すべきである。ポリフェノールのヒトの必要量が820mg/dieであり、ヒトの牛乳の摂取量が平均で250ml/dieであることを考慮すると、本発明の乳によって与えられるポリフェノールの寄与は、言われているように通常これがゼロに近い場合、114mgである。
図1
図2
図3