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特開2023-175743難溶性の塩基性薬剤を含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175743
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】難溶性の塩基性薬剤を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20231205BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231205BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P25/00
A61P25/28
A61P35/00
A61P35/04
A61K9/20
A61K47/20
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/18
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144737
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2020527688の分割
【原出願日】2019-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2018124830
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】北山 明
(72)【発明者】
【氏名】佐宗 毅
(57)【要約】      (修正有)
【課題】難溶性の塩基性薬剤の高用量製剤を製造する方法を提供する。
【解決手段】式(I)で示される化合物又はその塩、界面活性剤及び塩基性物質を含有する医薬組成物を含む固形製剤の製造方法であって、式(I)で示される化合物を、前記界面活性剤、塩基性物質、及び添加剤と共に混合後、圧縮成形することを含み、前記塩基性物質が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される1以上の物質である、製造方法とする。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
で示される化合物又はその塩、界面活性剤及び塩基性物質を含有する医薬組成物を含む固形製剤の製造方法であって、前記式(I)で示される化合物を、前記界面活性剤、塩基性物質、及び添加剤と共に混合後、圧縮成形することを含み、前記塩基性物質が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される1以上の物質である、製造方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が陰イオン界面活性剤である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記陰イオン界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
更に崩壊剤を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
式(I)で示される化合物又はその塩と界面活性剤との重量比が100:3~100:50である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記崩壊剤を5重量%以上含有する請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記崩壊剤が、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される1以上の物質である、請求項4または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記塩基性物質が、無機の塩基性物質及び有機の塩基性物質からなる群から選択される1以上の物質である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記塩基性物質を5重量%以上含有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
式(I):
【化2】
で示される化合物又はその塩、界面活性剤及び塩基性物質を含有する医薬組成物を含む固形製剤であって、前記固形製剤の単位製剤あたり、式(I)で示される化合物又はその塩を、フリー体換算量で150mg~800mg含有する圧縮成形された固体製剤であって、前記塩基性物質が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される1以上の物質を含む、固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶性の塩基性薬剤、特に式(I)で示される化合物の高用量製剤に適した医薬組成物、その高用量錠剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
Anaplastic Lymphoma Kinase(ALK)はインスリン受容体ファミリ-に属する受容体型チロシンキナーゼの一つであり(非特許文献1、非特許文献2)、ALKの遺伝子異常は他の遺伝子と融合した異常キナーゼの生成を引き起こすことが報告されている。
ALKの異常を伴う疾患として、例えばがん及びがん転移(非特許文献1、特許文献1)、うつ、認知機能障害(非特許文献2)等が知られており、ALK阻害剤の提供はそれらの疾患の有効な治療及び予防薬を提供する。
ALK阻害作用を有する化合物として、式(I)で示される化合物(化合物名:9-エチル-6,6-ジメチル-8-(4-モルホリン-4-イル-ピペリジン-1-イル)-11-オキソ-6,11-ジヒドロ-5H-ベンゾ[b]カルバゾール-3-カルボニトリル)
【化1】
等が知られている(特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
式(I)で示される化合物は難溶性の塩基性薬剤であり、その製剤化において、溶解補助剤を共存させた組成物とすること(特許文献3)や、式(I)で示される化合物又はその塩を含む顆粒を形成し、該顆粒を崩壊剤と共存させることにより、溶出性の良好なカプセル剤とすること(特許文献5)が報告されている。
式(I)で示される化合物のような難溶性の塩基性薬剤を有効成分とする医薬製剤は、経口投与した場合、一般にバイオアベイラビリティが低いため、有効成分のバイオアベイラビリティを向上させ、経口吸収性を改善するために、通常、高用量製剤が用いられる。一方、水難溶性又は不溶性の薬物の場合、高用量で圧縮成形(錠剤化)するとその特性として水難溶性又は不溶性がより強くなる傾向があるため、溶出性や経口吸収性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JP2009-100783(A)
【特許文献2】特許4588121号
【特許文献3】特許4918630号
【特許文献4】特許5006987号
【特許文献5】特許5859712号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nature、第448巻、第561-566頁、2007年
【非特許文献2】Neuropsychopharmacology、第33巻、第685-700頁、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
難溶性の塩基性薬剤、特に式(I)で示される化合物又はその塩を含む医薬組成物の改善された吸収性を実現するために、優れた崩壊性及び溶出性を有する高用量製剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる状況の下、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、塩基性物質を難溶性の塩基性薬剤、特に式(I)で示される化合物又はその塩に添加した医薬組成物とすることで、当該組成物を錠剤化した際の崩壊時の不浸透性被膜の形成を防ぎ、溶出性の良好な高用量錠剤が得られることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)式(I)で示される化合物又はその塩、界面活性剤及び塩基性物質を含有する医薬組成物。
【化2】
(2)前記界面活性剤が陰イオン界面活性剤である、(1)に記載の組成物。
(3)前記陰イオン界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムである、(2)に記載の組成物。
(4)更に崩壊剤を含む(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5-1)式(I)で示される化合物又はその塩と界面活性剤との重量比が100:3~100:50である、(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(5-2)式(I)で示される化合物又はその塩と界面活性剤との重量比が100:12.5~100:25である、(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(5-3)式(I)で示される化合物又はその塩と界面活性剤との重量比が100:25である、(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(6-1)前記崩壊剤を5重量%以上含有する(4)又は(5)に記載の組成物。
(6-2)前記崩壊剤を7.5重量%以上含有する(4)又は(5)に記載の組成物。
(6-3)前記崩壊剤を8.5重量%以上含有する(4)又は(5)に記載の組成物。
(6-4)前記崩壊剤を10重量%以上含有する(4)又は(5)に記載の組成物。(7-1)前記崩壊剤が、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン、塩化ナトリウム、トウモロコシデンプン、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、無水ケイ酸及びカルメロースからなる群から選択される1以上の物質である、(4)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(7-2)前記崩壊剤が、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される1以上の物質である、(4)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(7-3)前記崩壊剤が、カルメロースカルシウムである、(4)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)前記塩基性物質が、無機の塩基性物質及び有機の塩基性物質からなる群から選択される1以上の物質である、(1)~(7)のいずれかに記載の組成物。
(9-1)前記塩基性物質が、L-トリプトファン、L-リシン、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される1以上の物質である、(1)~(8)のいずれかに記載の組成物。
(9-2)前記塩基性物質が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される1以上の物質である、(1)~(8)のいずれかに記載の組成物。
(9-3)前記塩基性物質が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される1以上の物質である、(1)~(8)のいずれかに記載の組成物。
(9-4)前記塩基性物質が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムである、(1)~(8)のいずれかに記載の組成物。
(9-5)前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、Neusilin(登録商標)US2、S2、UFL2、FH2、NS2N(富士化学工業株式会社)及びPTU-F(富田製薬株式会社)からなる群から選択される1以上の物質である、(1)~(8)のいずれかに記載の組成物。
(9-6)前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、Neusilin(登録商標)US2又はS2(富士化学工業株式会社)である、(1)~(8)のいずれかに記載の組成物。
(10-1)前記塩基性物質を5重量%以上含有する(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
(10-2)前記塩基性物質を5重量%以上30重量%以下含有する(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
(10-3)前記塩基性物質を7.5重量%以上含有する(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
(10-4)前記塩基性物質を7.5重量%以上30重量%以下含有する(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
(10-5)式(I)で示される化合物又はその塩と前記塩基性物質との重量比が、フリー体換算で、100:5~100:60である(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
(10-6)式(I)で示される化合物又はその塩と前記塩基性物質との重量比が、フリー体換算で、100:10~100:50である(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
(10-7)式(I)で示される化合物又はその塩と前記塩基性物質との重量比が、フリー体換算で、100:20~100:40である(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
(10-8)式(I)で示される化合物又はその塩が、組成物全体に対し、フリー体に換算して20~70重量%含有する、(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
(10-9)式(I)で示される化合物又はその塩が、組成物全体に対し、フリー体に換算して35~60重量%含有する、(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
(10-10)式(I)で示される化合物又はその塩が、組成物全体に対し、フリー体に換算して45~50重量%含有する、(1)~(9)のいずれかに記載の組成物。
【0007】
(11)(1)~(10)のいずれかに記載の組成物を含有する錠剤。
(12-1)単位製剤あたり、式(I)で示される化合物又はその塩を、フリー体換算量で150mg~800mg含有する(1)~(11)のいずれかに記載の錠剤。
(12-2)単位製剤あたり、式(I)で示される化合物又はその塩を、フリー体換算量で150mg~400mg含有する(1)~(11)のいずれかに記載の錠剤。
(12-3)単位製剤あたり、式(I)で示される化合物又はその塩を、フリー体換算量で200mg~300mg含有する(1)~(11)のいずれかに記載の錠剤。
(13-1)ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で45%以上である、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-2)ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で60%以上である、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-3)ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で75%以上である、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-4)ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、75分間で70%以上である、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-5)ギ酸を33mL及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2%を含む精製水900mLを用いて、日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で45%以上である、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-6)ギ酸を33mL及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2%を含む精製水900mLを用いて、日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で60%以上である、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-7)ギ酸を33mL及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2%を含む精製水900mLを用いて、日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で75%以上である、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-8)ギ酸を33mL及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2%を含む精製水900mLを用いて、日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、75分間で70%以上である、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-9)試験液として水を用いた日本薬局方崩壊試験において、30分時点で試料の残留物を認めるが軟質の物質若しくは泥上の物質がわずかである、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-10)試験液として水を用いた日本薬局方崩壊試験において、30分時点で試料の残留物を認めない、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-11)試験液として日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方崩壊試験において、30分時点で試料の残留物を認めるが軟質の物質若しくは泥上の物質がわずかである、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(13-12)試験液として日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方崩壊試験において、30分時点で試料の残留物を認めない、(11)又は(12)に記載の錠剤。
(14)式(I)で示される化合物又はその塩、L-トリプトファン、L-リシン、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される1以上の塩基性物質、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを含有する医薬組成物。
(14-1)式(I)で示される化合物又はその塩、L-トリプトファン、L-リシン、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される1以上の塩基性物質、カルメロースカルシウム、D―マンニトール、及びラウリル硫酸ナトリウムを含有する医薬組成物。
(14-2)式(I)で示される化合物又はその塩、L-トリプトファン、L-リシン、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される1以上の塩基性物質、クロスポピドン、乳糖水和物、及びラウリル硫酸ナトリウムを含有する医薬組成物。
(14-3)式(I)で示される化合物又はその塩、L-トリプトファン、L-リシン、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される1以上の塩基性物質、カルメロースカルシウム、D―マンニトール、ラウリル硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース及びステアリン酸マグネシウムを含有する医薬組成物。
(14-4)式(I)で示される化合物又はその塩、L-トリプトファン、L-リシン、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される1以上の塩基性物質、クロスポピドン、乳糖水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース及びステアリン酸マグネシウムを含有する医薬組成物。
(15)(14)に記載の組成物を含有する錠剤。
(16-1)単位製剤あたり、式(I)で示される化合物又はその塩を、フリー体換算量で150mg~800mg含有する(15)に記載の錠剤。
(16-2)単位製剤あたり、式(I)で示される化合物又はその塩を、フリー体換算量で150mg~600mg含有する(15)に記載の錠剤。
(16-3)単位製剤あたり、式(I)で示される化合物又はその塩を、フリー体換算量で200mg~300mg含有する(15)に記載の錠剤。
(17-1)ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で45%以上である、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-2)ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で60%以上である、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-3)ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で75%以上である、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-4)ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、75分間で70%以上である、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-5)ギ酸を33mL及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2%を含む精製水900mLを用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で45%以上である、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-6)ギ酸を33mL及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2%を含む精製水900mLを用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で60%以上である、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-7)ギ酸を33mL及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2%を含む精製水900mLを用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、30分間で75%以上である、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-8)ギ酸を33mL及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2%を含む精製水900mLを用いた日本薬局方溶出試験パドル法における溶出性が、75分間で70%以上である、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-9)試験液として水を用いた日本薬局方崩壊試験において、30分時点で試料の残留物を認めるが軟質の物質若しくは泥上の物質がわずかである、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-10)試験液として水を用いた日本薬局方崩壊試験において、30分時点で試料の残留物を認めない、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-11)試験液として日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方崩壊試験において、30分時点で試料の残留物を認めるが軟質の物質若しくは泥上の物質がわずかである、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(17-12)試験液として日本薬局方溶出試験液第1液を用いた日本薬局方崩壊試験において、30分時点で試料の残留物を認めない、(15)又は(16)に記載の錠剤。
(18)塩化ナトリウム2.0gを塩酸7.0ml及び水に溶かして1000mLとしたpH約1.2の溶液で調製したポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む試験液を用いた、毎分100rpm回転のパドル法による溶出試験において、30分後に45%以上、及び/又は70分後に75%以上の溶出性を示す、(15)又は(16)に記載の錠剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、錠剤化による崩壊時の不浸透性膜形成を防ぎ、難溶性の塩基性薬剤、特に式(I)で示される化合物又はその塩を有効成分として含有する、溶出性や崩壊性の良好な高用量製剤を提供することができる。また、溶出プロフィールの良好な高用量製剤の製剤化を可能とすることにより、製剤の服用数を減らすことができ、服薬性の向上に資する。
また、本発明の医薬組成物は、錠剤化の際に、顆粒の形成の有無に関わらず、溶出性の良好な高用量錠剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】参考例1の錠剤の溶出プロフィールを示す図である。
図2】参考例1の錠剤のa)試験前の外観、b)試験後の外観、c)試験後の中央切断面の写真を示す。
図3】実施例8~10の溶出プロフィールを示す図である。
図4】実施例11~14の溶出プロフィールを示す図である。
図5】実施例15~18の溶出プロフィールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について、以下に詳細に説明する。
本発明において「医薬組成物」とは、疾患の治療・予防などに用いられる、2以上の物質の混合物を意味する。本発明の一つの態様として、当該医薬組成物は、医薬製剤の製造に用いられる。「医薬製剤」とは、疾患の治療・予防などのための製剤を意味し、本発明においては経口投与製剤が好ましい。「経口投与製剤」とは、経口的に投与することができる製剤であり、活性成分は主に腸管から吸収される。
経口投与製剤としては、固形製剤ならびに液状製剤が含まれるが、本発明においては、固形製剤が好ましく、具体的には、錠剤、カプセル剤、液剤、散剤、トローチ剤、咀嚼剤、顆粒剤、ゲル剤、フィルム剤などの固形製剤が挙げられるが、なかでも錠剤が好ましい。
本発明において錠剤を製する際は顆粒を用いても良いし、用いなくともよい。顆粒を用いて錠剤を製造する場合は、顆粒の平均粒子径は、通常の製剤化に用いられる平均粒子径であればよい。
【0011】
「式(I)で示される化合物」は、式(I)
【化3】
で示される化合物、化合物名では9-エチル-6,6-ジメチル-8-(4-モルホリン-4-イル-ピペリジン-1-イル)-11-オキソ-6,11-ジヒドロ-5H-ベンゾ[b]カルバゾール-3-カルボニトリルを意味する。
式(I)で示される化合物の「塩」は、薬学的に許容される塩が好ましく、「薬学的に許容される塩」としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、サリチル酸塩などのカルボン酸塩、又は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩などが含まれる。
好ましくは塩酸塩であり、最も好ましくは一塩酸塩である。
式(I)で示される化合物又はその塩は、公知の方法(例えば、特許文献2に記載の方法)により製造することができる。
式(I)で示される化合物の一塩酸塩は、非晶質であっても結晶であってもよく、結晶の場合は、粉末X線回折パターンにおいて8.4°、14.0°、16.7°、18.8°、23.3°付近の回折角(2θ)にピークを有する結晶が好ましい。式(I)で示される化合物の一塩酸塩の非晶質体は、WO2016/021707に記載の方法により、当該ピークを有する結晶は、WO2015/163447に記載の方法により製造することができる。
式(I)で示される化合物又はその塩は、組成物全体に対し、フリー体に換算して20~70重量%、好ましくは35~60重量%、さらに好ましくは45~50重量%含有する。
本発明の組成物により得られる製剤は、式(I)で示される化合物又はその塩を、単位製剤あたり、フリー体に換算して150mg~800mg、好ましくは150mg~400mg、特に好ましくは、200mg~300mg含有する。
【0012】
「界面活性剤」とは、分子内に親水性基と疎水性基を併せ持つ物質を意味し、界面活性剤には、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が含まれる。
イオン性界面活性剤とは、水に溶解したとき、電離してイオン(電荷をもつ原子又は原子団)となるイオン性界面活性剤を意味する。イオン性界面活性剤は、生成するイオンの電荷により、更に陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤に分類される。
【0013】
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル(C12~18)、POEソルビタン脂肪酸エステル(C12~18)、ショ糖脂肪酸エステルなどの糖エステル型界面活性剤;POE脂肪酸エステル(C12~18)、POE樹脂酸エステル、POE脂肪酸ジエステル(C12~18)などの脂肪酸エステル型;POEアルキルエーテル(C12~18)などのアルコール型;POEアルキル(C8~12)フェニルエーテル、POEジアルキル(C8~12)フェニルエーテル、POEアルキル(C8~12)フェニルエーテルホルマリン縮合物などのアルキルフェノール型界面活性剤;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキル(C12~18)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテルなどのポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型界面活性剤;POEアルキルアミン(C12~18)、POE脂肪酸アミド(C12~18)などのアルキルアミン型;POE脂肪酸ビスフェニルエーテルなどのビスフェノール型界面活性剤;POAベンジルフェニル(又はフェニルフェニル)エーテル、POAスチリルフェニル(又はフェニルフェニル)エーテルなどの多芳香環型界面活性剤;POEエーテル及びエステル型シリコン及びフッ素系界面活性剤;POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油などの植物油型界面活性剤などが挙げられる。好ましくは、ステアリン酸ポリオキシル40、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン (105) ポリオキシプロピレン (5) グリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシル35ヒマシ油、ラウロマクロゴールなどが挙げられる。
【0014】
陰イオン性界面活性剤としては、アルキルサルフェート(C12~18,Na,NH4,アルカノールアミン)、POEアルキルエーテルサルフェート(C12~18,Na,NH4,アルカノールアミン)、POEアルキルフェニルエーテルサルフェート(C12~18,NH4,アルカノールアミン,Ca)、POEベンジル(又はスチリル)フエニル(又はフェニルフェニル)エーテルサルフェート(Na,NH4,アルカノールアミン)、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート(Na,NH4,アルカノールアミン)などのサルフェート型界面活性剤;パラフィン(アルカン)スルホネート(C12~22,Na,Ca,アルカノールアミン)、AOS(C14~16,Na,アルカノールアミン)、ジアルキルスルホサクシネート(C8~12,Na,Ca,Mg)、アルキルベンゼンスルホネート(C12,Na,Ca,Mg,NH4,アルキルアミン,アルカノール,アミン,シクロヘキシルアミン)、モノ又はジアルキル(C3~6)ナフタレンスルホネート(Na,NH4,アルカノールアミン,Ca,Mg)、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物(Na,NH4)、アルキル(C8~12)ジフェニルエーテルジスルホネート(Na,NH4)、リグニンスルホネート(Na,Ca)、POEアルキル(C8~12)フエニルエーテルスルホネート(Na)、POEアルキル(C12~18)エーテルスルホコハク酸ハーフエステル(Na)などのスルホネート型界面活性剤;脂肪酸塩(C12~18,Na,K,NH4,アルカノールアミン)、N-メチル-脂肪酸サルコシネート(C12~18,Na)、樹脂酸塩(Na,K)などのカルボン酸型界面活性剤;POEアルキル(C12~18)エーテルホスフェート(Na,アルカノールアミン)、POEモノ又はジアルキル(C8~12)フェニルエーテルホスフェート(Na,アルカノールアミン)、POEベンジル(又はスチリル)化フェニル(又はフェニルフェニル)エーテルホスフェート(Na,アルカノールアミン)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー(Na,アルカノールアミン)、ホスファチジルコリン・ホスファチジルエタノールイミン(レシチン)、アルキル(C8~12)ホスフェートなどのホスフェート型界面活性剤などが挙げられる。好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウムなどのモノアルキル硫酸塩、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ラウロイルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明において、界面活性剤は、2種以上を適宜の割合で組み合わせて用いてもよい。
本発明において、界面活性剤は、好ましくは陰イオン性界面活性剤である。
【0015】
好ましい界面活性剤は、モノアルキル硫酸塩、ステアリン酸ポリオキシル40、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシル35ヒマシ油、ラウロマクロゴール、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ラウロイルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。
より好ましい界面活性剤は、モノアルキル硫酸塩、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシル35ヒマシ油、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ラウロイルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。
さらに好ましい界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。
特に好ましい界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム及びポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコールの混合物である。
最も好ましい界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
本発明において、イオン性界面活性剤は、より好ましくはラウリル硫酸ナトリウムである。
本発明においてラウリル硫酸ナトリウムを使用する場合、その結晶はスプレードライにより得られたもの、又は晶析により得られたものを用いることができる。なお、ラウリル硫酸ナトリウムの結晶多形として、1水和物、1/2水和物、1/8水和物、及び非溶媒和物が知られている(文献名:Journal of Crystal Growth 263 (2004) 480-490)が、いずれの結晶も本発明の組成物又は製剤に使用され得る。
界面活性剤は、組成物全体に対し、5重量%以上、好ましくは5重量%以上30重量%以下、より好ましくは7.5重量%以上、最も好ましくは7.5重量%以上30重量%以下含有する。
本発明の組成物又は製剤に含まれる界面活性剤は、式(I)示される化合物又はその塩と界面活性剤との重量比が100:3~100:50であることが好ましく、より好ましくは100:12.5~100:25、最も好ましくは100:25である。
【0016】
「塩基性物質」とは、好ましくはルイスの定義により塩基として定義される物質、より好ましくはブレンステッド・ローリーの定義により塩基として定義される物質であり、薬理学的に許容し得る成分であれば、特に制限されず、公知の塩基性物質を用いることができる。塩基性物質は、無機の塩基性物質でもよく、有機の塩基性物質でもよい。塩基性物質としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
無機の塩基性物質としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸三マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム等の金属リン酸塩、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム等の金属リン酸水素塩、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸マグネシウムナトリウム、タルク等の金属ケイ酸塩、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の複合ケイ酸-アルミニウム化合物、合成ヒドロタルサイト等の複合アルミニウム-マグネシウム化合物、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム等の無機アンモニウム塩などが挙げられる。
【0018】
有機の塩基性物質としては、有機酸の金属塩、有機アミン、塩基性アミノ酸等が挙げられる。
有機酸の金属塩としては、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸等の有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
有機アミンとしては、メグルミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
塩基性アミノ酸としては、リジン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、プロリン、オキシプロリン、オルニチン、ヒドロキシリジン、これらの誘導体等が挙げられる。
【0019】
好ましくは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸三マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム等の金属リン酸塩、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム等の金属リン酸水素塩、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸マグネシウムナトリウム、タルク等の金属ケイ酸塩、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の複合ケイ酸-アルミニウム化合物、合成ヒドロタルサイト等の複合アルミニウム-マグネシウム化合物、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム等の無機アンモニウム塩などが挙げられる。
又は、グリシン、L-セリン、L-シスチン、L-トリプトファン、L-プロリン、L-アスパラギン酸、L-リシン、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-リシン塩酸塩、メグルミン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸水素カルシウムなどが挙げられ、好ましくは、L-トリプトファン、L-リシン、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムであり、より好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウムであり、更に好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムであり、最も好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとしては、好ましくは、Neusilin(登録商標)US2、S2、UFL2、FH2、NS2N(富士化学工業株式会社)、PTU-F(富田製薬株式会社)である。より好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムがNeusilin(登録商標)US2、S2(富士化学工業株式会社)である。
前記塩基性物質は、好ましくは、L-トリプトファン、L-リシン、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群から選択され、最も好ましくは、、L-トリプトファン、L-リシン、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、メグルミン、及び酸化マグネシウムからなる群から選択される。
塩基性物質は、組成物全体に対し、5重量%以上、5重量%以上30重量%以下、7.5重量%以上、7.5重量%以上30重量%以下含有する。
式(I)で示される化合物又はその塩と塩基性物質との重量比が、フリー体換算で、100:5~100:60であることが好ましく、より好ましくは100:10~100:50、最も好ましくは100:20~100:40である。
【0020】
本発明の製剤は、賦形剤、滑沢剤,コーティング剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤などの添加剤を用いて周知の方法で製造される。
「賦形剤」としては、例えばトウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファ-化デンプン、有孔デンプン等のデンプン類;乳糖水和物、果糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等の糖又は糖アルコール類:無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。好ましい賦形剤としては、デンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、乳糖水和物、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。
本発明における「崩壊剤」とは、固形製剤を内服後、固体の製剤の速やかな崩壊を促すための成分である。
崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン、塩化ナトリウム、トウモロコシデンプン、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、無水ケイ酸、カルメロースなどが挙げられる。
崩壊剤の使用量は、本発明の組成物全体又は製剤全体に対し、例えば、5重量%以上、好ましくは7.5重量%以上、さらに好ましくは8.5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。使用量の上限は、特に限定されないが、例えば30重量%である。なお、本発明の製剤がコーティング錠等といった皮膜を有する製剤である場合、前記使用量は、該皮膜により被覆される成分全体(カプセルに充てんされる成分全体、コーティングに被覆される成分全体)に対する量である。
【0021】
「結合剤」としては、例えばポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。結合剤の具体例としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース,ポビドン(ポリビニルピロリドン)、アラビアゴム末などが挙げられる。該結合剤の使用量は、製剤100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部、さらに好ましくは0.5~40重量部である。
【0022】
「滑沢剤」の好適な例としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、蔗糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。
界面活性剤又は乳化剤としては、例えば、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、ラウロマクロゴール等を挙げることができる。
着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものであれば、いかなるものでもよく、例えば食用黄色5号(サンセットイエロー、米国の食用黄色6号)、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄などが挙げられる。
【0023】
安定剤としては、例えばメチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及びソルビン酸を挙げることができる。
「矯味矯臭剤」としては、例えば通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。
「流動化剤」としては、流動化剤は混合末や顆粒の流動性を改善する目的で使用され,代表例としてタルクや二酸化ケイ素である軽質無水ケイ酸や含水二酸化ケイ素があげられる。ここで、軽質無水ケイ酸は、含水二酸化ケイ素(SiO2・nH2O)(nは整数を示す)を主成分とするものであればよく、その具体例として、例えばサイリシア320(商品名、富士シリシア化学(株))、アエロジル200(商品名、日本アエロジル(株))等が挙げられる。
「防腐剤」の好適な例としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが用いられる。
抗酸化剤の好適な例としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸などが用いられる。
上記した添加剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
液剤を製造するための溶媒としては、エタノール、フェノール、クロロクレゾール、精製水、蒸留水等を使用することができる。
【0024】
本発明の固形製剤は、式(I)で示される化合物を、塩基性物質、及び上記添加剤と共に混合後、汎用的な製法により固形製剤を製造することができる。好ましくは以下の製造法にしたがって製造される。

1)式(I)で示される化合物を、塩基性物質、賦形剤、崩壊剤,滑沢剤などの添加剤と共に混合後、圧縮成形することによって、本発明の固形製剤を製造する。
2)式(I)で示される化合物を、塩基性物質、賦形剤、結合剤などの添加剤と共に混合した後、溶媒(例えば精製水やエタノール、又はその混合液など)を添加あるいは噴霧しながら造粒する。得られる造粒物に、適量の滑沢剤、必要に応じて崩壊剤などを加えて混合後、圧縮成形することによって、本発明の固形製剤を製造する。
3)式(I)で示される化合物を、塩基性物質,賦形剤などの添加剤と共に混合した後、結合剤と必要に応じて他の添加剤を溶媒(例えば精製水やエタノール、又はその混合液など)に分散又は溶解して得られる液を添加あるいは噴霧しながら造粒する。得られる造粒物に、適量の滑沢剤,必要に応じて崩壊剤など加えて混合後、圧縮成形することによって、本発明の固形製剤を製造する。
【0025】
本発明の医薬組成物は、(i)式(I)で示される化合物又はその塩と、(ii)塩基性物質とを含有する医薬組成物にも関する。
本発明の医薬組成物の一態様としては、(i)式(I)で示される化合物又はその塩と、(ii)塩基性物質とを含有する非顆粒状の医薬組成物にも関する。
また、本発明の医薬組成物の一態様としては、(i)式(I)で示される化合物又はその塩を含有する顆粒と、(ii)塩基性物質とを含有する後末を含む医薬組成物にも関する。
本発明の医薬組成物のさらなる態様として、(i)式(I)で示される化合物又はその塩及び界面活性剤を含有する顆粒と、(ii)塩基性化合物と崩壊剤とを含有する後末を含む医薬組成物である。
本発明の医薬組成物のさらなる態様として、(i)式(I)で示される化合物又はその塩、界面活性剤、及び崩壊剤を含有する顆粒と、(ii)塩基性化合物と崩壊剤とを含有する後末を含む医薬組成物である。
【0026】
本発明において、「顆粒」とは、ほぼ均一な形状と大きさを持つ粒を意味し、粉状、塊状、溶液あるいは溶融液状などの原料を、湿式造粒法、乾式造粒法あるいは加熱造粒法等により造粒することによって得られる。「非顆粒状」とは、顆粒を形成しない状態を意味する。
本発明において、顆粒は、上記の界面活性剤や崩壊剤の他に、種々の添加剤を含んでいてもよい。
例えば、顆粒は、式(I)で示される化合物又はその塩、崩壊剤、界面活性剤、賦形剤及び結合剤を含有してもよい。当該顆粒は、さらに、滑沢剤、コーティング剤、安定化剤、矯味矯臭剤及び希釈剤から選択される1以上の添加剤を含んでいてもよく、式(I)で表される化合物又はその塩、及び、任意に崩壊剤、界面活性剤、賦形剤、滑沢剤、コーティング剤、結合剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤などの添加剤を含む組成物を、通常の造粒工程を用いて造粒することにより製造できる。
顆粒の平均粒子径は、通常の製剤化で用いられる平均粒子径であればよい。
なお、平均粒子径は、孔径の異なる複数の篩(例えば、孔径:850,500,355,250,180,106,75,53,0μm)を重ねた上から、サンプリングした造粒物6gを加え、3分間振盪後、各篩の上に残った造粒物の重量を測定し、各篩の孔径と篩下累積率から、対数正規分布近似を用いて累積率50%に相当する粒子径を算出することにより、得られる値である。
本発明において「後末」及び「後末成分」とは、造粒された顆粒の外側に加える成分を意味する。該後末成分としては、崩壊剤のほか、さらに滑沢剤、流動化剤等の添加剤を加えることもできる。
【0027】
崩壊剤は、顆粒内又は後末成分中に含まれていてもよく、好ましくは、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン、塩化ナトリウム、トウモロコシデンプン、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、無水ケイ酸及びカルメロースから選択され、より好ましくは、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムから選択され、最も好ましくはカルメロースカルシウム及びクロスポピドンである。
【0028】
顆粒内又は後末成分中に崩壊剤を含有する場合、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン、塩化ナトリウム、トウモロコシデンプン、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、無水ケイ酸及びカルメロースから選択される、好ましくは、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムから選択され、最も好ましくはカルメロースカルシウム又はクロスポピドンである。
【0029】
また、(i)の顆粒は、顆粒内に塩基性物質を含有してもよく、その場合は(i)式(I)で示される化合物又はその塩、及び塩基性物質を含有する顆粒と、(ii)界面活性剤とを含有する、医薬組成物であってもよい。塩基性物質はより好ましくは後末成分として添加する。
(i)の顆粒内に含まれる塩基性物質は、前述の塩基性物質として例示した物質であり、好ましくは無機の塩基性物質、有機酸の金属塩、有機アミン、塩基性アミノ酸(群)から選択され、より好ましくは無機の塩基性物質(群)、最も好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。
【0030】
後末成分に塩基性物質が含まれる場合、(ii)の後末成分に含まれる塩基性物質は、前述の塩基性物質として例示した物質であり、好ましくは前述の無機の塩基性物質、有機酸の金属塩、有機アミン、塩基性アミノ酸(群)から選択され、より好ましくは前述の無機の塩基性物質(群)、最も好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。
(i)の顆粒内、及び(ii)の後末成分に含まれる塩基性物質は、製剤全体に対し、5重量%以上、5重量%以上30重量%以下、7.5重量%以上含有する、7.5重量%以上30重量%以下で含有するのが好ましい。
【0031】
本発明の医薬組成物は、界面活性剤の他に、後述の有機高分子などの溶解補助剤を添加してもよい。
「溶解補助剤」としては、有機高分子などが含まれ、本発明において用いられる「有機高分子」としては、具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCとも称する。)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カンテン末、グァーガム、ゼイン、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどの多糖類、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、又は酢酸ビニル樹脂、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムなどの合成樹脂、カゼイン、カゼインナトリウムなどのリンタンパク質などが挙げられる。
有機高分子のうち水に対する溶解度が1g/100g以上の高分子を水溶性高分子と言う。具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カゼインナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カンテン末、グァーガム、コポリビドン、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
有機高分子のうち胃液のpHである1.2~3.5の酸性条件下で溶けるものを胃溶性高分子、腸内のpH6~8で速やかに溶解するものは、腸溶性高分子と称する。胃溶性高分子としては、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、又はポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートなど、腸溶性高分子としては、メタクリル酸コポリマーLD(乳濁液)、メタクリル酸コポリマーS、精製セラック、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース(セラフェート)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カゼイン、ゼインなどが挙げられる。
好ましい溶解補助剤は、例えばカゼイン、カゼインナトリウム、脱脂粉乳、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ステアリン酸ポリオキシル40、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシル35ヒマシ油、ラウロマクロゴール、ラウロイルサルコシンナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、メチル硫酸ナトリウム、エチル硫酸ナトリウム、ブチル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記溶解補助剤は顆粒状のものでも、スプレードライにより得られたものでもよい。
【0032】
本発明において(i)の顆粒に含まれ得る賦形剤としては、例えばトウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファ-化デンプン、有孔デンプン等のデンプン類;乳糖水和物、果糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等の糖又は糖アルコール類:無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。好ましい賦形剤としては、デンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、乳糖水和物、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム等が挙げられ、マンニトール、乳糖水和物が更に好ましい。賦形剤の使用量は、組成物又は製剤100重量部に対して、好ましくは5~60重量部、さらに好ましくは10~30重量部である。
なお、本発明の製剤がコーティング錠等といった皮膜を有する製剤である場合、前記使用量は、該皮膜により被覆される成分全体(コーティングで被覆される成分全体)に対する使用量を意味する。
【0033】
本発明において(i)の顆粒に含まれ得る結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。結合剤の具体例としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、アラビアゴム末などが挙げられ、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。該結合剤の使用量は、組成物又は製剤100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部、さらに好ましくは0.5~40重量部、よりさらに好ましくは0.5~10重量部である。
なお、本発明の製剤がコーティング錠等といった皮膜を有する製剤である場合、前記使用量は、該皮膜により被覆される成分全体(コーティングで被覆される成分全体)に対する使用量を意味する。
また、顆粒内と後末成分に結合剤を含有してもよく、そのような結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0034】
本発明において(i)の顆粒に含まれ得る滑沢剤の好適な例としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、蔗糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。
【0035】
本発明において(i)の顆粒に含まれ得る安定剤としては、例えばメチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及びソルビン酸を挙げることができる。
本発明の顆粒に含まれ得る矯味矯臭剤としては、例えば通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。
【0036】
なお、本発明のさらに別の態様として、難溶性の塩基性薬剤、陰イオン界面活性剤及び塩基性物質を含む医薬組成物が挙げられ、塩基性物質を添加することで難溶性の塩基性薬剤の溶出性が改善され高用量製剤に適した組成物を得ることができる。
「難溶性」とは、溶媒、特に水、緩衝液、又は消化管内液に対する溶解度が1mg/ml以下、より好ましくは100μg/ml以下、さらに好ましくは10μg/ml以下、特に好ましくは1μg/ml以下、最も好ましくは0.1μg/ml以下の状態を意味する。pH7以下のいずれかの溶媒に難溶性であるのが好ましく、pH4~7のいずれかの溶媒に難溶性であるのがより好ましく、pH4及び/又はpH7の溶媒に難溶性であるのがさらに好ましい。但し、分子内に塩基性基を有する化合物の場合は、pH7以上のいずれかの溶媒に難溶性であるのが好ましく、pH7~9のいずれかの溶媒に難溶性であるのがより好ましく、pH7及び/又はpH9の溶媒に難溶性であるのがさらに好ましい。溶解度を測定するための溶媒は特に限定されないが、pH4の溶媒としては、例えば、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液などである。pH5の溶媒としては、例えば、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液などである。pH7の溶媒としては、例えば、水、リン酸緩衝液などである。pH9の溶媒としては、例えば、炭酸緩衝液などである。溶解度の測定温度は、いずれの場合も、好ましくは20~40℃であり、より好ましくは37℃である。
【0037】
「塩基性薬剤」は、少なくとも一種の塩基性基、例えば、第一級アミノ基(-NH2)、第二級アミノ基(イミノ基-NH-)、第三級アミノ基(>N-)、アミド基、塩基性窒素含有複素環基(ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、プリニル基、キノリル基、ピリジル基、ピペリジノ基、ピペリジル基、ピペラジニル基、トリアゾロ基など)などを有している。なお、アミノ基には、ヒドラジノ基(-NH-NH2)、ヒドラゾ基(-NH-NH-)なども含む。塩基性薬剤は少なくとも1つの塩基性基を有していればよく、同一又は異なる種類の複数の塩基性基を有していてもよい。また、薬物は塩(例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、酢酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、メシル酸などの有機スルホン酸などとの塩)を形成してもよい。なお、カチオン性又は塩基性薬物には、代謝物や生体内で活性を発現するプロドラッグ体がカチオン性又は塩基性である薬物も含まれる。
塩基性薬剤の種類は特に制限されず、例えば、中枢神経系、自律神経性、呼吸器系、循環器系、消化器系、代謝系などに作用する薬物であってもよく、血液及び造血作用薬、眼科領域や耳鼻科領域の薬物、生体内活性物質(オータコイド)などであってもよい。具体的な種類としては、解熱剤、鎮痛剤、抗炎症薬、催眠・鎮静薬、リウマチ治療薬、抗うつ剤、抗てんかん剤、抗めまい剤、抗アレルギー剤、強心薬、β遮断剤、カルシウム拮抗剤、抗不整脈剤、利尿薬、狭心症治療薬、心不全治療薬、心筋梗塞治療薬、降圧剤(高血圧治療薬)、末梢循環障害治療薬、昇圧剤(低血圧治療薬)、気管支拡張薬、喘息治療薬、抗結核薬、糖尿病治療薬、糖尿病性合併症治療薬、高脂血症治療薬、高尿酸血症治療薬、鎮咳去痰薬、消化性潰瘍治療剤、甲状腺疾患治療薬、前立腺肥大症治療薬、抗癌剤、骨粗鬆症治療薬、アルツハイマー病治療薬、抗生物質、ビタミン類、抗プラスミン剤などであってもよい。
【0038】
塩基性薬剤の具体例としては、解熱・鎮痛・抗炎症薬(メシル酸ジメトチアジンなどの解熱鎮痛薬、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、塩酸ロメリジン、コハク酸スマトリブタンなどの頭痛薬、フェナム酸、メフェナム酸、フロクタフェニン、マレイン酸プログルメタシン、エピリゾール、塩酸チアラミドなどの抗炎症薬など)、抗リウマチ薬(ペニシラミン、メトトレキサートなど)、高尿酸血症治療薬(アロプリノールなど)、催眠・鎮静薬(塩酸リルマザホン、酒石酸ゾルピデムなど)、抗うつ剤(塩酸ノルトリプチリン、塩酸イミプラミン、塩酸アミトリプチリン、塩酸クロミプラミン、マレイン酸フルボキサミン、塩酸ミルナシプランなど)、抗めまい剤(塩酸イソプレナリン、メシル酸ベタヒスチンなど)、抗アレルギー剤(塩酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、フマル酸クレマスチン、マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸アリメマジン、塩酸プロメタジンなどの抗ヒスタミン剤;フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン、塩酸エピナスチンなどのヒスタミンH1拮抗剤(又は塩基性抗アレルギー剤)など)、強心薬(デノパミン、塩酸イソプレナリンなど)、抗狭心症薬(ニコナンジル、塩酸エタフェノン、ジピリダモール、トラピジル、塩酸トリメタジジンなど)、β遮断剤(塩酸プロプラノロール、塩酸ジフェニドール、塩酸ブフェトロール、塩酸ブプラノロール、マロン酸ボピンドロール、塩酸オクスプレノロール、塩酸アルプレノロール、塩酸インデノロール、塩酸アセブトロール、塩酸セリプロロールなど)、カルシウム拮抗剤(塩酸マニジピン、塩酸ベニジピン、ベシル酸アムロジピン、塩酸ベラパミル、塩酸ジルチアゼムなど)、抗不整脈剤(塩酸アプリンジン、塩酸ピルジカイニド、塩酸プロパフェノン、塩酸アミオダロン、塩酸ニフェカラント、塩酸ソタロール、塩酸ベプリジルなど)、利尿薬(ヒドロクロロチアジド、ペンフルチジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ブメタニド、アゾセミド、トリアムテレンなど)、降圧剤(塩酸クロニジン、メチルドパ、酢酸グアナベンズ、塩酸グアンファシン、レセルピン、塩酸プラゾシン、塩酸ブナゾシン、塩酸テラゾシン、メシル酸ドキサゾシンなどの交感神経抑制剤、塩酸ヒドララジン、ブドララジン、塩酸トドララジン、カドララジンなどの血管拡張剤、マレイン酸エナラプリル、塩酸デラプリル、リシノプリル、塩酸ベナゼプリルなどのACE阻害剤、カンデサルタン シレキセチル、バルサルタンなどのアンジオテンシンII受容体拮抗剤など)、末梢循環障害治療薬(イノシトールヘキサニコチネート、ヘプロニカート、塩酸トリゾリン、塩酸イソクスプリンなど)、昇圧剤(酒石酸水素メタラミノール、塩酸メトキサミン、塩酸ミドドリン、メチル硫酸アメジニウム、塩酸エチレフリン、塩酸フェニレフリンなど)、気管支拡張薬及び喘息治療薬(塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸サルブモール、塩酸テルブタリン、フマル酸ホルモテロール、塩酸ツロブテロール、臭化水素酸フェノテロール、塩酸プロカテロール、塩酸クレンブテロールなどのβ2-アドレナリン受容体刺激剤、テオフィリン、アミノフィリン、コリンテオフィリン、プロキシフィリンなどのキサンチン誘導体など)、鎮咳剤(リン酸ジメモルファン、ヒヘンズ酸チペピジン、クエン酸オキセラジン、臭化水素酸デキストロメトルファン、クエン酸ペントキシベリン、クロペラスチン、リン酸ベンプロペリンなど)、糖尿病治療薬(トルブタミド、アセトヘキサミド、グリベンクラミド、グリメピリド、塩酸ブホルミン、エンサンメトホルミン、塩酸ピオグリタゾン、ボグリボースなど)、去痰薬(塩酸L-メチルシスティン、塩酸アンブロキソール、塩酸ブロムヘキシンなど)、消化性潰瘍治療剤(シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジンなどのH2受容体拮抗剤、ランソプラゾール、オメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害剤、塩酸ピレンゼピンなどのムスカリン受容体拮抗剤など)、抗生物質(クラリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、ミデカマイシン、ロキスタマイシン、アジスロマイシンなど)、麻薬類(アンフェタミン、メペリジンなど)、ビタミン類[塩酸チアミン、硝酸チアミン、塩酸ジセチアミン、シコチアミン、ベンフォチアミン、ビスイブチアミン、フルスルチアミン、プロスルチアミン、オクトチアミン、ビスベンチアミン、チアミンジスルフィドなどのビタミンB1類;リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムなどのビタミンB2類;塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサールなどのビタミンB6類;ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどのニコチン酸類;メコバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン(塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミンなど))、メチルコバラミンなどのビタミンB12類;葉酸、パントテン酸類、ビオチン、ビタミンP(ヘスペリジンなど)など]、抗プラスミン剤(イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸など)などが挙げられる。
これらの塩基性薬剤は、予防又は治療目的などに応じて、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
また、本発明には、難溶性の塩基性薬剤、陰イオン界面活性剤及び塩基性物質からなる組成物であって、良好な薬剤の溶出性を有する組成物;
難溶性の塩基性薬剤、陰イオン界面活性剤及び塩基性物質からなる組成物であって、良好な薬剤の崩壊性を有する組成物;
前記組成物が経口投与製剤である上記組成物;及び
前記組成物が錠剤である上記組成物;
も含まれる。
さらに、本発明には、塩基性薬剤と陰イオン界面活性剤を含有する製剤に、塩基性物質を添加することで、薬剤の溶出性を改善する方法;
塩基性薬剤と陰イオン界面活性剤を含有する製剤に、塩基性物質を添加することで、製剤の崩壊性を改善する方法;及び
塩基性薬剤と陰イオン界面活性剤を含有する製剤に、塩基性物質を添加する工程を含む、良好な薬剤の溶出性を有する製剤を製造する方法;も含まれる。
【0040】
本発明において、塩基性原薬と陰イオン界面活性剤を含有することで、塩基性物質と陰イオン界面活性剤との間のイオン相互作用により不浸透性被膜を形成し、それにより崩壊不良が生じることを見出し、塩基性物質が不浸透性被膜の形成を抑制できることを見出した。
【0041】
式(I)で示される化合物などの難溶性塩基性薬剤と界面活性剤を含有する製剤に、塩基性物質を添加することで、製剤の良好な溶出性が得られる。ここで、「良好な溶出性」とは、製剤の溶出率が、通常、試験液としてギ酸を33mL及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2%を含む精製水900mLを用いて、日本薬局方溶出試験パドル法にて毎分100回転で溶出試験(溶出試験1)を行った場合に、30分後に45%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは75%以上の溶出性が得られることを意味する。あるいは、試験液としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液900mL、好ましくは、溶出試験液第1液75mLにポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル約3gを混合した試験液を用いる毎分100rpm回転のパドル法による溶出試験(溶出試験2)を行なった場合に、30分後に45%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは75%以上の溶出性が得られることを意味する。好ましくは、溶出試験1及び溶出試験2のどちらかで、上記溶出性を得られることを意味し、さらに好ましくは、溶出試験2を行った場合に、30分後に45%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは75%以上の溶出性が得られる。特に好ましくは、溶出試験2を行った場合に、75分間に70%以上溶出することを意味する。
なお、日本薬局方溶出試験液第1液は、塩化ナトリウム2.0gを塩酸7.0ml及び水に溶かして1000mLとしたものであり、無色澄明で、pHは約1.2の溶液である。
「溶出性の改善」とは、上記溶出性の範囲を下回る薬剤の溶出性を、上記溶出性の範囲にすることを意味し、溶出性の改善により、該医薬有効成分が効率的に吸収され、薬効を速やかに発揮することができる。なお、米国、欧州、イスラエル等日本以外の諸外国においては、溶出試験2が、該医薬有効成分の既承認カプセル製剤の溶出規格試験法として設定されている。溶出試験2による溶出性が、米国およびイスラエルでは30分後に45%以上、70分後に75%以上、EU圏では30分後に45%以上から75%以内、70分後に75%以上であることが望ましい。
【0042】
また、本発明により、式(I)で示される化合物などの難溶性塩基性薬剤と界面活性剤を含有する製剤に、塩基性物質を添加することで、良好な崩壊性が得られる。ここで、「良好な崩壊性」とは、製剤の崩壊時間が、通常、試験液に日本薬局方溶出試験液第1液を用いて、日本薬局方崩壊試験にて崩壊試験(崩壊試験1)を行った場合に、30分以内に崩壊すること、好ましくは15分以内に崩壊することを意味する。あるいは、試験液として水を用いて日本薬局方崩壊試験にて崩壊試験(崩壊試験2)を行った場合に、10分後に崩壊すること、好ましくは5分以内に崩壊することを意味する。好ましくは、崩壊試験1及び崩壊試験2のどちらかで、上記崩壊性を得られることを意味し、より好ましくは、崩壊試験2を行った場合に、3分以内に崩壊することを意味する。「崩壊性の改善」とは、上記崩壊性の範囲を下回る製剤の崩壊性を、上記崩壊性の範囲にすることを意味する。ここで、「崩壊する」とは「30分時点で試料の残留物を認めるが軟質の物質若しくは泥上の物質がわずかである」又は「30分時点で試料の残留物を認めない」状態を意味し、好ましくは30分時点で試料の残留物を認めない状態である。
【実施例0043】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、実施例1-20において、ラウリル硫酸ナトリウムはNIKKOL SLS(日光ケミカルズ)を使用した。
【0044】
参考例1:不浸透性被膜の形成
(製剤の製造)
表1に記載の各成分量に従い、錠剤を調製した。それぞれ式(I)の化合物の塩酸塩(以下、化合物A)とラウリル硫酸ナトリウムとステアリン酸マグネシウムをポリエチレン容器を用いて手混合した。配合末を静圧打錠機(P-16、理研精機株式会社)にて打圧(500 kgf)で打錠し、フリー体に換算して化合物Aを150mg含有する錠剤(φ=9.0 mm)を製造した。
【表1】
(製剤評価及び結果)
参考例1について、試験液にポリオオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液900mLを用いて、日本薬局方溶出試験パドル法にて毎分100回転で溶出試験(溶出試験2)を行った。参考例1の溶出プロファイルを図1に示す。また、製剤の試験前、試験後の外観、及び試験後の中央切断面の写真を図2に示す。
図1に示す通り、湿式造粒により製した化合物A及びラウリル硫酸ナトリウムを含む処方による錠剤の溶出プロファイルは直線的であり、また最大溶出率は40%以下であった。また、図2に示す通り、試験後の製剤を錠剤中央にて切断した観察結果から試験液は錠剤表面のみにしか浸透しておらず、内部は乾燥していた。これは不浸透性被膜が錠剤表面に生じるためと考えられ、試験液の錠剤内部への浸透が阻害されるために崩壊が進行せず良好な溶出プロファイルが得られない理由であると考えられる。なお、不浸透性被膜とは試験液中での塩基性薬剤と陰イオン界面活性剤による錠剤表面に生じる被膜のことをいう。
【0045】
実施例1-7:塩基性物質の崩壊性に対する検討
(製剤の製造)
表2に記載の錠剤処方の各成分量に従い、錠剤を調製した。処方中の後末成分に含まれるXは、表3に示す各物質を用いた。顆粒処方成分を混合し、この予混合末をステンレスビーカー内に投入し、金属製のスパーテルで撹拌しながら精製水を添加して湿式造粒した後、真空乾燥機(VOS-301SD、東京理化器械株式会社)で常温にて乾燥した。続いてサイズ径850μmの篩により整粒して顆粒とし、後末成分とさらに混合することで配合末を得た。各配合末を静圧打錠機(P-16、理研精機株式会社)にて打圧(1000kgf)で打錠し、フリー体に換算して化合物Aを300mg含有する錠剤(15.9×8.4 mm)を製造した。なお、比較例1は特許文献5のカプセル剤処方を用いて製した錠剤であり、比較例1と実施例1-7との比較により、Xの種類と錠剤の崩壊時間の関係を検討した。
【表2】
【表3】
【0046】
比較例1及び実施例1-7について、試験液に水及び日本薬局方溶出試験液第1液を用いて、日本薬局方崩壊試験にて崩壊試験を各比較例/実施例について3回行った。実施例1-7の崩壊挙動を表4に示す。なお、本試験は、水(崩壊試験2)及び水に比べてより崩壊が進みにくい酸性条件下(崩壊試験1)での崩壊試験である。なお、本明細書中、表中に用いられる下記記号は以下の意味を示す。
-:30分時点で試料の残留物を認める。
+ :30分時点で試料の残留物を認めるが軟質の物質若しくは泥上の物質がわずかである。
++:30分時点で試料の残留物を認めない。
【表4】
【0047】
(製剤評価及び結果)
表4に示す通り、実施例1-7において、Xとして塩基性物質を用いて製した錠剤は、比較例1よりも優れた崩壊性を示した。
【0048】
実施例8-10:溶出性に対する製法の検討
(製剤の製造)
表5に記載の錠剤処方の各成分量に従い、製法を変えて錠剤を調製した。実施例8は処方成分を混合、配合末とした。実施例9は顆粒処方成分を混合し、静圧打錠機(P-16、理研精機株式会社)にてΦ16mmの杵を用いて打圧(400 kgf)にて打錠し、得られた成形物をサイズ径850μmの篩により整粒して顆粒とし、後末成分とさらに混合することで配合末を得た。実施例10は表5に記載の処方成分を混合、この予混合末をステンレスビーカー内に投入し、金属製のスパーテルで撹拌しながら精製水を添加して湿式造粒した後、真空乾燥機(VOS-301SD、東京理化器械株式会社)で常温にて乾燥した。続いてサイズ径850μmの篩により整粒して顆粒とし、後末成分とさらに混合することで配合末を得た。実施例8-10の各配合末を静圧打錠機(P-16、理研精機株式会社)にて打圧(500kgf)で打錠し、フリー体に換算して化合物Aを150mg含有する錠剤を製造した。塩基性物質を処方成分に加えた場合の製法による錠剤の溶出性を検討した。
(製剤評価及び結果)
図3に示す通り、実施例8-10において、製法によらず、すなわち顆粒形成の有無に関わらず、処方成分中に塩基性物質を用いて製した錠剤は、比較例1よりも優れた溶出性を示した。本結果は既承認カプセル製剤の各国溶出試験規格に適合するものである。

【表5】
【0049】
実施例11-14:溶出性に対する賦形剤や塩基性物質の比率の検討
(製剤の製造)
表6に記載の各成分量に従い、顆粒処方成分を混合し、この予混合へ精製水を添加し実施例1-7と同様に湿式造粒した。湿式造粒で得られた造粒末を乾燥し、サイズ径850μmの篩により整粒して顆粒とし、後末成分とさらに混合することで配合末を得た。それぞれの配合末を静圧打錠機(P-16、理研精機株式会社)にて打圧(1000 kgf)で打錠し、フリー体に換算して化合物Aを300mg含有する錠剤(15.9×8.3 mm)を製造した。顆粒処方成分に対する賦形剤の比率や、後末成分における崩壊剤と塩基性物質の比率による錠剤の溶出性を検討した。
【表6】
【0050】
(製剤評価及び結果)
実施例11-14について、試験液にギ酸33mL及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2%を含む精製水900mLを用いて、日本薬局方溶出試験パドル法にて毎分100回転で溶出試験(溶出試験1)を行った。実施例11-14の溶出プロファイルを図4に示す。
図4に示す通り、塩基性物質(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)を加えることで、顆粒処方成分の賦形剤の種類・崩壊剤の比率によらず、良好な溶出プロファイルが得られた。
【0051】
実施例15-18:溶出性に対する賦形剤と後末成分の組み合わせの検討
(製剤の製造)
表7に記載の各成分量に従い、顆粒処方成分を秤量し、造粒機(VG-05、株式会社パウレック)を用いて混合、精製水を添加し造粒し、乾燥減量が2%以下になるまで流動層乾燥機(FL-LABO、給気温度60℃)で乾燥した。得られた乾燥末をサイズ径1.4 mmのスクリーンを用いた整粒機により顆粒とし、後末成分とさらに混合することで配合末を得た。それぞれの配合末を実施例8-10と同様の条件により静圧打錠機にてフリー体に換算して化合物Aを150mg含有する錠剤を製造し溶出性を検討した。
【表7】
(製剤評価及び結果)
実施例15-18について、試験液に日本薬局方溶出試験液第1液を用いて、日本薬局方崩壊試験にて崩壊試験(崩壊試験1)を行った。実施例15-18は、全ての錠剤について、30分時点で試料の残留物を認めなかった。なお、本試験は、水に比べてより崩壊が進みにくい酸性条件下での崩壊試験(崩壊試験1)である。
実施例15-18について、試験液としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル4%を含む日本薬局方溶出試験液第1液900mLを用いて、日本薬局方溶出試験パドル法にて毎分100回転で溶出試験(溶出試験2)を行った。実施例15-18の溶出プロファイルを図5に示す。
図5に示す通り、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの添加により、錠剤からの化合物Aの溶出プロファイルは、賦形剤及び崩壊剤の組み合わせによらず良好な溶出性を示した。本結果は既承認カプセル製剤の各国溶出試験規格に適合するものである。
【0052】
実施例19、20:錠剤重量の検討
(製剤の製造)
表8に記載の各成分量に従い、それぞれ顆粒処方成分を秤量し、流動層造粒乾燥機(FG-602、フロイント産業株式会社)を用いて混合し、精製水をスプレーにより添加、造粒し、乾燥減量が2%以下になるまで同機を用いて給気温度60℃で乾燥した。得られた乾燥末をサイズ径1.4 mmのスクリーンを用いた整粒機により整粒し、得られた顆粒と後末成分をさらに混合することで配合末を得た。配合末をロータリー打錠機(AQUARIUS-C、菊水製作所)にて打圧(10 kN)で打錠し、フリー体に換算して化合物Aを300mg含有する錠剤(17.3×8.0 mm)を製造した。実施例15-18と比較することで錠剤重量と崩壊性の関係を検討した。
【表8】
実施例19、20について、試験液に日本薬局方溶出試験液第1液を用いて、日本薬局方崩壊試験にて崩壊試験を行った。実施例19及び20の錠剤は、30分時点で試料の残留物を認めなかった。なお、本試験は、水に比べてより崩壊が進みにくい酸性条件下での崩壊試験(崩壊試験1)である。
(製剤評価及び結果)
塩基性物質であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを加えることで錠剤重量が増加しても実施例15-18と同様に良好な崩壊性を示した。
図1
図2
図3
図4
図5