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特開2023-1757461,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを含む溶剤組成物、エアゾール組成物、洗浄剤、水切り剤、発泡剤、熱伝達媒体、該熱伝達媒体を用いた有機ランキンサイクルシステム、高温ヒートポンプサイクルシステム、冷凍サイクルシステム、消火剤組成物、物品の洗浄方法、潤滑剤溶液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175746
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを含む溶剤組成物、エアゾール組成物、洗浄剤、水切り剤、発泡剤、熱伝達媒体、該熱伝達媒体を用いた有機ランキンサイクルシステム、高温ヒートポンプサイクルシステム、冷凍サイクルシステム、消火剤組成物、物品の洗浄方法、潤滑剤溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/50 20060101AFI20231205BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20231205BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20231205BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20231205BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C11D7/50
C07C21/18
C11D3/43
C11D17/08
C09K5/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144834
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2020500421の分割
【原出願日】2019-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2018026033
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正宗
(72)【発明者】
【氏名】松永 佳
(72)【発明者】
【氏名】井村 英明
(72)【発明者】
【氏名】河野 翔太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】各種有機物の溶解性に優れ、地球環境に優しい組成物、該組成物を用いた物品の洗浄方法、該組成物を用いた潤滑剤溶液の製造方法、および潤滑剤塗膜付物品の製造方法を提供する。
【解決手段】1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを含む溶剤組成物であって、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンは、シス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン、トランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン、またはシス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン及びトランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンの両方を含む、溶剤組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを含む溶剤組成物であって、
前記1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンは、シス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン、トランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン、またはシス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン及びトランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンの両方を含む、溶剤組成物。
【請求項2】
1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンをさらに含む請求項1に記載の溶剤組成物。
【請求項3】
炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、クロロカーボン類、HFC類およびHFE類からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物をさらに含む、請求項1または2に記載の溶剤組成物。
【請求項4】
安定剤、界面活性剤、難燃剤、金属不動態化剤および腐食防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一に記載の溶剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一に記載の溶剤組成物と、噴射ガスとを含有する、エアゾール組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一に記載の溶剤組成物または請求項5に記載のエアゾール組成物と物品とを接触させる工程を含む、物品の洗浄方法。
【請求項7】
潤滑剤を請求項1~4のいずれか一に記載の溶剤組成物または請求項5に記載のエアゾール組成物で希釈することを含む、潤滑剤溶液の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の潤滑剤溶液を、物品の表面に塗布し、次いで物品から溶剤組成物ないしエアゾール組成物を揮発させることにより、前記物品の表面に前記潤滑剤を含む塗膜を形成する、潤滑剤付物品の製造方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一に記載の溶剤組成物または請求項5に記載のエアゾール組成物を含む、洗浄剤。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一に記載の溶剤組成物または請求項5に記載のエアゾール組成物を含む、水切り剤。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一に記載の溶剤組成物または請求項5に記載のエアゾール組成物を含む、発泡剤。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一に記載の溶剤組成物を含む、熱伝達媒体。
【請求項13】
請求項12に記載の熱伝達媒体を用いた有機ランキンサイクルシステム。
【請求項14】
請求項12に記載の熱伝達媒体を用いた高温ヒートポンプサイクルシステム。
【請求項15】
請求項12に記載の熱伝達媒体を用いた冷凍サイクルシステム。
【請求項16】
請求項1~4のいずれか一に記載の溶剤組成物と、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン以外の不燃性ガスを少なくとも含む、消火剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン(以下、1232xdともいう)の製造方法、1232xdと1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペン(以下、1231xdともいう)の併産方法に関する。また、本発明は、1232xdを含む溶剤組成物、当該溶剤組成物を用いた物品の洗浄方法、潤滑剤溶液の製造方法および潤滑剤塗膜付物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロフルオロオレフィン(以下、HFO化合物ともいう)は、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,2-ペンタフルオロプロパン(225ca)などのハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC化合物)よりも地球温暖化係数(GWP)が小さく、地球環境に優しい化合物なので、各種用途での代替が進んでいる。1232xdや1231xdも、HFO化合物の一種である。
【0003】
1232xdを製造する方法や1231xdを製造する方法は、ほとんど知られておらず、非特許文献1において、1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(以下、1230xdともいう)と1当量の三フッ化アンチモンを100℃で反応させることで1232xdが得られることが開示されている程度である。
【0004】
非特許文献1に記載の反応は、同当量のフッ素化アンチモンを必要とするため、環境負荷が大きく、大量生産を行うにあたっては改良の余地がある。
【0005】
このように、1232xdを製造する方法が十分に開発されているとは言えず、より効率的に1232xdを製造する方法が、求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A.M.WHLEY AND H.W.DAVIS J.Am.Chem.Soc.,1948,p.1026-1027
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記観点からなされたものであり、効率的な1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン(1232xd)の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、各種有機物の溶解性に優れ、地球環境に優しい1232xdを含む溶剤組成物、該溶剤組成物を用いた物品の洗浄方法、該溶剤組成物を用いた潤滑剤溶液の製造方法、潤滑剤塗膜付物品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の各発明を含む。
【0009】
[発明1]
1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペンをフッ化水素でフッ素化する工程を含む、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンの製造方法。
【0010】
[発明2]
フッ化水素を、1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン1モルに対して2モル以上40モル以下用いる、発明1に記載の方法。
【0011】
[発明3]
前記フッ素化を液相で行う、発明1に記載の方法。
【0012】
[発明4]
前記フッ素化を100℃以上200℃以下で行う、発明3に記載の方法。
【0013】
[発明5]
前記フッ素化を気相で行う、発明1に記載の方法。
【0014】
[発明6]
前記フッ素化を100℃以上500℃以下で行う、発明5に記載の方法。
【0015】
[発明7]
前記フッ素化により、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンとともに1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンが生成する、発明1~6のいずれか一に記載の方法。
【0016】
[発明8]
生成した1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンを前記フッ素化に供する、発明7に記載の方法。
【0017】
[発明9]
1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペンと1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンとを含む組成物をフッ化水素でフッ素化して1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを製造する方法。
【0018】
[発明10]
1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペンをフッ化水素でフッ素化する工程を含むことを特徴とする、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンと1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンを併産する方法。
【0019】
[発明11]
フッ化水素を、1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン1モルに対して2モル以上40モル以下用いる、発明10に記載の方法。
【0020】
[発明12]
前記フッ素化を液相で行う、発明10に記載の方法。
【0021】
[発明13]
前記フッ素化を100℃以上200℃以下で行う、発明12に記載の方法。
【0022】
[発明14]
前記フッ素化を気相で行う、発明10に記載の方法。
【0023】
[発明15]
前記フッ素化を100℃以上500℃以下で行う、発明14に記載の方法。
【0024】
[発明16]
液相で、1,1,2,3,3-ペンタクロロプロパンと無機塩基の水溶液とを接触させて、1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペンを得る工程を含む、発明1~15のいずれか一に記載の方法。
【0025】
[発明17]
1,2-ジクロロエチレンとクロロホルムとをルイス酸触媒存在下で反応させて、1,1,2,3,3-ペンタクロロプロパンを得る工程を含む、発明16に記載の方法。
【0026】
[発明18]
1,2-ジクロロエチレン1モルに対してクロロホルムを1モル超用いる、発明17に記載の方法。
【0027】
[発明19]
シス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを含む溶剤組成物。
【0028】
[発明20]
シス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンとトランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンとを含む溶剤組成物。
【0029】
[発明21]
トランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを含む溶剤組成物。
【0030】
[発明22]
さらに1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンを含む発明19~21のいずれか一に記載の溶剤組成物。
【0031】
[発明23]
さらに炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、クロロカーボン類、HFC類およびHFE類からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含む、発明19~22のいずれか一に記載の溶剤組成物。
【0032】
[発明24]
さらに安定剤、界面活性剤、難燃剤、金属不動態化剤および腐食防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を含む、発明19~23のいずれか一に記載の溶剤組成物。
【0033】
[発明25]
発明19~24のいずれか一に記載の溶剤組成物と、噴射ガスとを含有する、エアゾール組成物。
【0034】
[発明26]
発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物と物品とを接触させる工程を含む、物品の洗浄方法。
【0035】
[発明27]
潤滑剤を発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物で希釈することにより潤滑剤溶液を得る、潤滑剤溶液の製造方法。
【0036】
[発明28]
潤滑剤と発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物を含む潤滑剤溶液を、物品の表面に塗布し、次いで物品から溶剤組成物又はエアゾール組成物を揮発させることにより、前記物品の表面に前記潤滑剤を含む塗膜を形成する、潤滑剤付物品の製造方法。
【0037】
[発明29]
発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物を含む、洗浄剤。
【0038】
[発明30]
発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物を含む、水切り剤。
【0039】
[発明31]
発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物を含む、発泡剤。
【0040】
[発明32]
発明19~24のいずれか一に記載の溶剤組成物を含む、熱伝達媒体。
【0041】
[発明33]
発明32に記載の熱伝達媒体を用いた有機ランキンサイクルシステム。
【0042】
[発明34]
発明32に記載の熱伝達媒体を用いた高温ヒートポンプサイクルシステム。
【0043】
[発明35]
発明32に記載の熱伝達媒体を用いた冷凍サイクルシステム。
【0044】
[発明36]
1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンと、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン以外の不燃性ガスを少なくとも含む、消火剤組成物。
【発明の効果】
【0045】
本発明によると、効率的な1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン(1232xd)の製造方法を提供することができる。また、本発明によると、各種有機物の溶解性に優れ、地球環境に優しい1232xdを含む溶剤組成物、該溶剤組成物を用いた物品の洗浄方法、該溶剤組成物を用いた潤滑剤溶液の製造方法、潤滑剤塗膜付物品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(用語の説明)
本明細書において、別段の定めがない限り、1230xdとは、1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペンのシス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物を意味する。また、別段の定めがない限り、1231xdとは、1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンのシス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物を意味する。また、別段の定めがない限り、1232xdとは、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンのシス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物を意味する。また、別段の定めがない限り、1,2-ジクロロエチレンとは、シス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物を意味する。
【0047】
本明細書において、「1232xdと1231xdの併産」とは、本発明に係る反応により1232xdと1231xdとが少なくとも製造されることを意味し、好ましくは1232xd1モル当たり、1231xdが0.0001モル以上製造され、特に好ましくは0.001モル以上製造されることを意味する。
【0048】
以下、本発明について説明する。本発明は以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施態様に対して適宜変更、改良が加えられたものも本発明に含まれるものとして扱う。
【0049】
<1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(1230xd)のフッ素化>
本発明の一態様において、フッ素化剤としてフッ化水素を用いて、1230xdをフッ素化させる。これにより、1232xdを製造することができる。
【0050】
また、一態様において、1230xdのフッ素化により、1231xdを製造することができる。
【0051】
また、一態様において、1230xdのフッ素化により、1232xdと1231xdを併産することができる。
【0052】
(1230xd)
1230xdは公知の化合物である。その製造方法の好適な一例を後述するが、これによって他の製造方法を採用することが妨げられるものではない。
【0053】
本発明の一態様において、1232xdを製造するための1230xdのフッ素化において、1230xdとともに1231xdをフッ素化に供してもよい。
【0054】
(フッ化水素)
1230xdのフッ素化において、フッ化水素の使用量は、1230xdのフッ素化により目的物が得られれば、特に制限はされない。通常、1230xd1モルに対して化学量論量以上用いる。上限は特に制限されないが、経済的な生産の観点から40モル以下が好ましい。このフッ化水素の使用量は、反応形式がバッチ式、又は半バッチ式の場合には、1230xdの仕込量に対して表され、連続式の場合は、反応器に存在する1230xdの定常量に対して表される。
【0055】
一態様において、1232xdを優位に製造するために、1230xd1モルに対してフッ化水素を3モル以上40モル以下、好ましくは4モル以上30モル以下、より好ましくは8モル以上20モル以下用いる。
【0056】
また、一態様において、1231xdを優位に製造するために、1230xd1モルに対してフッ化水素を1モル以上20モル以下、好ましくは2モル以上15モル以下、より好ましくは4モル以上10モル以下用いる。
【0057】
また、一態様において、1231xdと1232xdとを優位に併産するために、1230xd1モルに対してフッ化水素を2モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは4モル以上20モル以下、さらに好ましくは8モル以上20モル以下用いる。
【0058】
<液相における1230xdのフッ素化>
一態様において、フッ化水素による1230xdのフッ素化は、液相中で行うことができる。
【0059】
また、液相中での1230xdのフッ素化は、バッチ式、半連続流通式、及び連続流通式のいずれの方式で行ってもよい。
【0060】
(温度)
液相中での1230xdのフッ素化において、温度は、目的物が生成できれば特に限定されない。1230xdのフッ素化は通常0℃以上200℃以下で行われ、好ましくは100℃以上200℃以下で行われる。
【0061】
一態様において、1232xdを優位に製造できることから、1230xdのフッ素化は100℃以上200℃以下で行われ、好ましくは110℃以上200℃以下、特に好ましくは130℃以上200℃以下、さらに好ましくは150℃以上200℃以下で行われる。
【0062】
また、一態様において、1231xdを優位に製造することが所望される場合、1230xdのフッ素化は0℃以上180℃以下で行われ、好ましくは20℃以上150℃以下、特に好ましくは40℃以上130℃以下、さらに好ましくは60℃以上130℃以下で行われる。
【0063】
また、一態様において、1232xdと1231xdとを併産する場合には、1230xdのフッ素化は0℃以上200℃以下で行われ、好ましくは40℃以上180℃以下、特に好ましくは80℃以上180℃以下、さらに好ましくは100℃以上150℃以下で行われる。
【0064】
(圧力)
液相中での1230xdのフッ素化において、圧力は、目的物が生成できれば特に限定されない。通常、液相中での1230xdのフッ素化は、常圧下(大気圧下)、加圧下のいずれかで行われ、好ましくは加圧下で行われる。本発明の一態様において、1230xdのフッ素化は、0.1MPaG以上10MPaG以下(ゲージ圧をいう。本明細書において同じ。)で行われ、好ましくは1MPaG以上6MPaG以下で、より好ましくは3MPaG以上6MPaG以下で行われる。0.1MPaG以上であれば、未反応のフッ化水素の還流によって好適な反応温度に上げることが容易となり、実用的である。また、10MPaG以下であれば、汎用な反応器で1230xdのフッ素化を行うことができるため、経済的である。ただし、これらのことは、1230xdのフッ素化を0.1MPaG未満、又は10MPaG超で実施されることを妨げるものではない。
【0065】
(溶媒)
液相中での1230xdのフッ素化において、溶媒の使用は必須ではなく、通常は、生産性、経済性の観点から溶媒を使用しないことが好ましい。一方で、反応の均一性、反応後の操作性の観点から溶媒の使用が好ましいこともある。溶媒を使用する場合、その種類としては、1230xd原料を溶解できれば特に限定されないが、目的物よりも高い沸点を有する有機溶媒であって、フッ化水素によってフッ素化されないものが好ましい。このような溶媒の例としては、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、パーフルオロアルカン類、パーフルオロアルケン類、ヒドロフルオロカーボン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、溶媒の使用量は、1230xd原料を溶解できれば特に限定されない。例えば、1230xd原料(原料に1231xdを含む場合には、1230xdと1231xdの総量)に対して80質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましいが、所望に応じて、これらよりも多く使用してもよい。
【0066】
(触媒)
液相中での1230xdのフッ素化において、触媒を使用してもよい。ただし、触媒の使用は必須ではない。触媒を使用する場合、その種類としては、例えば、スズ、チタン等の金属を含むルイス酸触媒(より具体的には、塩化スズ(SnCl)、塩化チタン(TiCl)等)が挙げられる。触媒の使用量としては、例えば、1230xd原料に対して0.01モル%以上20モル%以下である。
【0067】
(反応器)
液相中での1230xdのフッ素化において、用いる反応器の材質としては、原料、溶媒、反応生成物を含む反応液成分等に不活性で、耐酸性を有するものが好ましい。そのような材質としては、例えば、ステンレス鋼(SUS304やSUS316など)、ハステロイ(TM)、インコネル(TM)、モネル(TM)などが挙げられる。このような反応器は、当該技術において周知である。
【0068】
(操作手順例)
液相中での1230xdのフッ素化の操作手順の一例を以下に示すが、これに限定されない。バッチ式操作、半連続流通式操作においては、例えば、反応器に所定の原料を所定量導入し、所望により溶媒を所定量導入し、所定の条件で反応を行う。触媒を用いる場合には、触媒をあらかじめ、あるいは、原料や溶媒とともに反応器内に導入することが好ましい。また、反応器への原料の導入手順は特に限定されない。例えば、反応器に1230xdを導入し、その後、フッ化水素が反応器に導入されてもよい。このとき、所望により溶媒を導入する場合には、フッ化水素を反応器に導入する前に当該溶媒の一部または全部が反応器に導入されてもよいし、フッ化水素の導入と同時に、あるいはフッ化水素と当該溶媒が混合されて反応器に導入されてもよい。
【0069】
連続流通式操作において、例えば、反応器に、1230xdと、フッ化水素とを、別々に所定量導入し、所定の条件で反応を行う。所望により用いられる溶媒は、1230xdとフッ化水素とは別々に、あるいは1230xd溶液および/またはフッ化水素溶液として、反応器に導入されてもよい。
【0070】
(精製)
1230xdのフッ素化により得られた反応生成物から目的物を精製する方法は、特に限定されず、公知の精製方法を採用することができる。必要に応じて、反応生成物の水洗浄やアルカリ洗浄などの方法により、反応生成物中に含まれ得る塩素成分や酸成分の除去処理を行ってもよい。また、脱水処理などを施して反応生成物中の水分を除去してもよく、塩素成分や酸成分の除去処理と組み合わせてこれを行ってもよい。また、蒸留などの操作を行ってもよい。
【0071】
以下に、1230xdのフッ素化により得られた反応生成物から1232xdや1231xdを精製する方法の一例を示すが、これに限定されない。例えば、反応生成物を、冷却したコンデンサーに流通させて凝縮させ、水または/およびアルカリ性溶液で洗浄して塩素成分、酸成分などを除去し、ゼオライト、活性炭等の乾燥剤で乾燥後、通常の蒸留操作によって、高純度の1232xdや1231xdをそれぞれ得ることができる。
【0072】
本発明の一態様において、未反応原料の1230xdやフッ化水素を回収して、1230xdのフッ素化に供してもよい。また、一態様において、1230xdのフッ素化により生成した1231xdを回収して、1230xdのフッ素化に供してもよい。
【0073】
なお、1232xdや1231xdは、常温、常圧で液体として存在する。
【0074】
以上では、液相中で行う1230xdのフッ素化を説明したが、一態様において、フッ化水素による1230xdのフッ素化は、気相中で行ってもよい。
【0075】
<気相における1230xdのフッ素化>
(触媒)
気相中での1230xdのフッ素化反応は、触媒存在下、非存在下のいずれでも行うことができる。
【0076】
気相中で、触媒存在下で1230xdのフッ素化を行う場合、金属触媒を用いることができる。金属触媒は、具体的には、アルミニウム、バナジウム、クロム、チタン、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、アンチモン、亜鉛、ランタン、タンタルおよびタングステンから 選ばれる少なくとも1種の金属を含む。金属触媒としては上記金属の化合物が好ましく、上記金属の酸化物、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物がより好ましい。ハロゲン化物のハロゲンは、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素のいずれでも良い。金属触媒は、上記金属の部分ハロゲン化物または全ハロゲン化物がさらに好ましく、上記金属の部分フッ素化物または全フッ素化物が特に好ましい。
【0077】
金属触媒は、担持触媒であってもよいし、非担持触媒であってもよい。担持触媒の場合の担体は特に限定されないが、炭素や前述の金属の酸化物、オキシハロゲン化物(好ましくはオキシフッ化物)、ハロゲン化物(好ましくはフッ化物)などを採用することが好ましい。このような担体の中でも特に好ましくは、活性炭、またはアルミニウム、クロム、ジルコニウムおよびチタニウムから選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物、オキシハロゲン化物(特に好ましくはオキシフッ化物)、ハロゲン化物(特に好ましくは、フッ化物)である。担持触媒の場合、担体に担持される担持物は前述の金属の化合物であり、例えば、前述の金属のハロゲン化物(例えば、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物)、オキシハロゲン化物(例えば、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物)、硝酸化物などとして担体に担持される。このような金属の化合物を単独で担持させてもよいし、2種以上を併せて担持させてもよい。担持物の中でも特に好ましくは、アルミニウム、クロム、ジルコニウムおよびチタニウムから選ばれる少なくとも一種の金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物である。具体的な担持物として、硝酸クロム、三塩化クロム、重クロム酸カリウム、三塩化チタン、硝酸マンガン、塩化マンガン、塩化第二鉄、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸コバルト、塩化コバルト、五塩化アンチモン、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化銅(II)、塩化亜鉛(II)、硝酸ランタン、四塩化スズなどを用いることができる。尚、担体と担持物とが金属化合物の場合、担体と担持物とは互いに異なる金属化合物である。
【0078】
金属触媒は、フッ素化処理を施した後に1230xdのフッ素化反応に用いることが好ましい。金属触媒のフッ素化処理の方法は特に限定されないが、一般的には、フッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤と金属触媒とを接触させることにより行う。フッ素化処理温度は特に限定されないが、例えば200℃以上で行う。フッ素化処理温度の上限は特にないが、実用的には600℃以下で行うのが好ましい。本反応では、例えば、フッ素化処理した、Al、Cr、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/C、Ti、Zr、Zr/Ti、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlF、FeCl/C、SnCl/C、TaCl/C、SbCl/C、AlCl/C、AlF/Cを使用することができる。
【0079】
一態様において、1231xdを優位に製造することが所望される場合、1230xdのフッ素化は、触媒の非存在下で行われることが好ましい。
【0080】
(充填材)
気相中での1230xdのフッ素化反応は、充填材の存在下または非存在下で行ってもよい。充填材としては、活性炭などの炭素や耐熱プラスチック、セラミックス、ステンレス鋼などの0価金属が挙げられる。中でも活性炭が特に好ましい。例えば本反応は、炭素、耐熱プラスチックおよびセラミックスから選ばれる少なくとも充填材の存在下で行うことができる。
【0081】
(温度)
気相中での1230xdのフッ素化反応において、反応温度は、目的物が生成できれば特に限定されない。本反応は100℃以上で行うことができ、170℃以上が好ましく、220℃以上がさらに好ましい。また、本反応は500℃以下で行うことができ、480℃以下が好ましく、430℃以下がさらに好ましい。例えば本反応は100℃以上500℃以下で行うことができ、170℃以上480℃以下が好ましく、220℃以上430℃以下がさらに好ましい。
【0082】
(圧力)
気相中での1230xdのフッ素化反応において、反応圧力は特に限定されない。本反応は、減圧下、常圧下(大気圧下)、加圧下のいずれで行ってもよい。本反応は、0.01MPaG以上10MPaG以下(ゲージ圧をいう。以下同じ。)で行うことができ、0.01MPaG以上1MPaG以下が好ましく、原料及び生成物の液化を防ぐため大気圧がより好ましい。10MPaGを超えると反応器の耐圧設計にかかる費用が増大するため、経済的に好ましくない。
【0083】
(接触時間)
気相流通方式の反応の場合、反応ゾーンの容積A(mL)を原料供給速度B(mL/秒)で除した値(秒)で生産性を議論することが多く、これを接触時間と呼ぶ。反応ゾーンに触媒を備える場合には、触媒の見掛け容積(mL)を上記Aとみなす。なお、Bの値は「一秒あたりに反応器に導入される原料気体の容積」を示すが、この場合、原料気体を理想気体とみなして、原料気体のモル数、圧力および温度からBの値を算出する。反応器中では、原料や目的物以外の他の化合物の副生や、モル数の変化も起こり得るが、「接触時間」の計算に際しては考慮しないものとする。
【0084】
接触時間の決定に関しては、反応に用いる原料、反応温度、触媒の種類などに依存する。そのため、原料、反応装置の設定温度、触媒の種類ごとに原料の供給速度を適宜調整し、接触時間を最適化することが望ましい。
【0085】
1230xdのフッ素化反応において、接触時間は0.1秒以上300秒以下とすることができ、好ましくは5秒以上150秒以下、より好ましくは10秒以上100秒以下である。この接触時間は反応圧力に応じて適宜変更されてもよい。
【0086】
(反応器)
気相中での1230xdのフッ素化反応において、反応器は特に限定されないが、気相反応に適した反応器を用いることが好ましい。反応器は、耐熱性、耐酸性を有する材質で形成されたものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、ハステロイ(TM)、モネル(TM)、白金、ニッケル、炭素、フッ素樹脂またはこれらをライニングした材料で形成されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本反応において、副反応の抑制や金属触媒の活性の維持、向上の観点から、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスや、塩素、酸素、空気などの酸化性ガスを反応器に供給してもよい。このようなガスは単独で反応器に供給してもよいし、反応原料とともに反応系に供給してもよい。また、このようなガスは単独であってもよく混合ガスであってもよい。反応器への供給量は特に限定されないが、反応原料に対して0.0001モル%以上200モル%以下が好ましく、0.001モル%以上100モル%以下がより好ましく、0.1モル%以上10モル%以下が特に好ましい。
【0088】
(操作手順例)
気相中での1230xdのフッ素化反応の手順の一例を示す。反応器に反応原料を導入し、上述した条件で気相反応を行う。原料は、反応器に導入される際にはガス状であることが好ましく、必要に応じて原料を気化器でガス状にし、反応器に導入する。触媒を用いる場合にはあらかじめ反応器に備えておくことが好ましい。
【0089】
本反応により得られた反応生成物から目的物を精製する方法は特に限定されない。必要に応じて、反応生成物中に含まれ得る塩素成分や酸成分などの除去処理を行ってもよい。また、脱水処理などを施して水分を除去してもよく、塩素成分や酸成分の除去処理と組み合わせて脱水処理を行ってもよい。例えば、反応生成物を冷却したコンデンサーに流通させて凝縮させ、水または/およびアルカリ性溶液で洗浄して塩素成分、酸成分などを除去し、ゼオライト、活性炭などの乾燥剤で乾燥後、蒸留操作によって、高純度の目的物を得ることができる。
【0090】
以上に説明したように、1230xdのフッ素化反応は、液相中だけではなく気相中でも行うことができる。
【0091】
<1231xdのフッ素化>
本発明の一態様において、フッ素化剤としてフッ化水素を用いて、1231xdをフッ素化させる。1231xdのフッ素化は、前述の1230xdのフッ素化の条件に準じて行うことができる。これにより、1232xdを製造することができる。
【0092】
一態様において、1230xdのフッ素化を行って1231xdを製造し、次いで該1231xdのフッ素化を行って1232xdを製造してもよい。
【0093】
<1230xdの製造方法>
[240daの脱塩酸化工程]
前述の通り、1230xdは公知の化合物であり、種々の方法により製造することができるが、以下の1230xdの製造方法を採用することにより、1,1,2,3,3-ペンタクロロプロパン(以下、240daともいう)を出発原料として効率的に1232xdを製造することができる。
【0094】
1230xdは、液相において、無機塩基の水溶液の存在下、240daを脱塩化水素化する方法により、製造することができる(以下、この方法を「240daの脱塩酸化工程」と呼ぶことがある。)。
【0095】
(240da)
240daは公知の化合物であり、種々の方法により製造することができるが、後述の「アルキル化工程」により、効率的に製造することができる。なお、このことは別の方法により240daを製造することを妨げるものではない。
【0096】
(無機塩基の水溶液)
240daの脱塩酸化工程において、無機塩基は、240daを脱塩化水素化できるものであれば特に制限はない。具体的には、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられ、中でも、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0097】
使用する無機塩基の量は特に制限されない。通常、240daに対して1当量以上とする。上限は特に制限されないが、通常、10当量以下、好ましくは5当量以下、より好ましくは3当量以下、特に好ましくは2当量である。
【0098】
無機塩基の水溶液における無機塩基濃度は特に制限されない。通常、5質量%以上、好ましくは10質量%とする。上限は時に制限されないが、通常40質量%以下、好ましくは30質量%とする。
【0099】
一態様において、無機塩基の水溶液における無機塩基の濃度は、例えば、5質量%以上40質量%以下、5質量%以上30質量%以下、10質量%以上40質量%以下または10質量%以上30質量%以下である。
【0100】
また、一態様において、無機塩基の水溶液における無機塩基の濃度は、5質量%以上40質量%以下、好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0101】
また、後述の相間移動触媒を使用する場合において、無機塩基の水溶液と相間移動触媒とは、別々の流れで反応系に供してもよいが、あらかじめ混合しておくことが好ましい。
【0102】
(相間移動触媒)
240daの脱塩酸化工程は、相間移動触媒の存在下で行うことが好ましい。このような相間移動触媒としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド化合物等の水溶性有機物やアミン塩を用いることができる。これらの相間移動触媒は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0103】
相間移動触媒として用いられるアルコール類としては、例えば、炭素数1~4のアルコール等が挙げられる。
【0104】
また、相間移動触媒として用いられるエーテル類としては、例えば、18-クラウン-6-エーテル等が挙げられる。
【0105】
また、相間移動触媒として用いられるケトン類としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン等が挙げられる。
【0106】
また、相間移動触媒として用いられるアミド化合物としては、例えば、DMF、DMAc等が挙げられる。
【0107】
また、相間移動触媒として用いられるアミン塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0108】
中でも、炭素数1~4のアルコール、18-クラウン-6-エーテル、アセトン、エチルメチルケトンが相間移動触媒として好ましい。
【0109】
相間移動触媒の使用量は、相間移動触媒としての効果が得られれば特に制限されない。通常、240daに対する相間移動触媒の使用量は、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上である。上限は特に制限されないが、通常、40質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0110】
一態様において、相間移動触媒の使用量は、例えば、240daに対して、0.01質量%以上40質量%以下、0.01質量%以上20質量%以下、0.01質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上0.1質量%以下、0.1質量%以上40質量%以下、0.1質量%以上20質量%以下、または0.1質量%~10質量%以下であってもよい。
【0111】
また、一態様において、相間移動触媒の使用量は、240daに対して0.01質量%以上40質量%以下、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。
【0112】
(温度)
240daの脱塩酸化工程において、温度は、液相条件で目的物が生成できれば特に限定されない。通常、0℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上で行う。上限は特に限定されないが、通常150℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下で行う。
【0113】
一態様において、240daの脱塩酸化工程は、例えば、0℃以上150℃以下、0℃以上100℃以下、0℃以上60℃以下、5℃以上150℃以下、5℃以上100℃以下、5℃以上60℃以下10℃以上150℃以下、10℃以上100℃以下、10℃以上60℃以下、60℃以上150℃以下、または60℃以上100℃以下で行う。
【0114】
また、一態様において、240daの脱塩酸化工程は、0℃以上150℃以下、好ましくは5℃以上100℃以下、より好ましくは10℃以上60℃以下で行う。
【0115】
(圧力)
240daの脱塩酸化工程において、圧力は、液相条件で目的物が生成できれば特に限定されない。通常、240daの脱塩酸化工程における圧力は、大気圧以上10MPaG以下が好ましく、大気圧以上1MPaG以下がより好ましい。反応器のコストを抑えるため、240daの脱塩酸化工程における圧力は大気圧が最も好ましい。
【0116】
(溶媒)
脱塩酸化工程において、溶媒の使用は必須ではない。なお、このことは、脱塩酸化工程を溶媒存在下で行うことを妨げるものではないが、溶媒を用いる場合には、反応に悪影響を与えないものを使用することが好ましい。
【0117】
(反応方式)
脱塩酸化工程は、バッチ式、半連続流通式、連続流通式のいずれの方式で行ってもよい。
【0118】
(反応器)
脱塩酸化工程において、反応器の材質は特に制限はない。耐塩基性を有する材質のものが好ましい。具体的には、ガラス製やステンレススチール製の反応器が好ましい。また、ガラスや樹脂でライニングされた反応器も好ましい。さらに、反応器は攪拌設備、還流塔などの各種設備を備えるものが好ましい。
【0119】
脱塩化水素化工程と後述のアルキル化工程を同一反応器で行う場合には、液体を流入可能な導入管を備えるものが好ましい。
【0120】
(操作手順例)
脱塩化水素化工程の操作手順の一例を以下に示すが、これに限定されない。冷媒(例えば、水)を流通させた還流塔を備えた反応器に相間移動触媒と240daを仕込む。これに液体流入管より無機塩基の水溶液を流入させて、所定の条件で反応を行う。サンプリングした反応物のガスクロマトグラフ分析等によって、240daがほぼ消費されたところで反応を終了する。
【0121】
(精製)
得られた1230xdは、一般的な精製操作により精製することができる。例えば、蒸留、好ましくは減圧蒸留などの操作によって、1230xdから原料などを容易に分離することができる。
【0122】
[アルキル化工程]
240daは、ルイス酸触媒存在下、1,2-ジクロロエチレンとクロロホルムとを反応させる方法により、効率的に製造することができる(以下、この方法を「アルキル化工程」と呼ぶことがある。)。
【0123】
(原料)
アルキル化工程において、1,2-ジクロロエチレンとクロロホルムの使用量は、240daが生成できれば特に限定されない。通常、1,2-ジクロロエチレン1モルに対してクロロホルム1モル以上、あるいは、クロロホルム1モルに対して、1,2-ジクロロエチレンを1モル以上用いる。
【0124】
一態様において、1,2-ジクロロエチレンに対して化学量論量超のクロロホルムを使用する。これにより、ヘプタクロロペンタンなどの副生を抑制することができる。具体的には、1,2-ジクロロエチレン1モルに対し、クロロホルムを1モル超、好ましくは2モル以上、より好ましくは3モル以上用いる。上限は特に制限はないが、経済的な生産の観点から、1,2-ジクロロエチレン1モルに対し、クロロホルムは20モル以下、好ましくは10モル以下用いる。
【0125】
アルキル化工程において、ヘプタクロロペンタンは240daのアルキル化物の一種であり、生成する240daが反応系に占める存在割合が上がるに連れて副生する。そのため、反応系において、原料のクロロホルムが1,2-ジクロロエチレンよりも多く存在すれば、ヘプタクロロペンタンの副生を抑制することができる。
【0126】
(ルイス酸触媒)
アルキル化工程において、ルイス酸触媒としては、金属ハロゲン化物を用いることができる。ここで、金属ハロゲン化物とは、金属原子とハロゲン原子との結合を有するものを指す。金属原子-ハロゲン原子の結合は、赤外分光法(IR法)、X線回折法(XRD法)、X線光電子分光法(XPS法)等によって確認することができる。このような金属ハロゲン化物としては、具体的には、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、アンチモン、タンタルおよびタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のハロゲン化物が好ましい。また、金属ハロゲン化物は、上記金属のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物であってもよく、これらの中でも上記金属の塩化物が好ましい。いくつかの態様において、ルイス酸触媒としては、アルミニウム、鉄、スズおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の塩化物が特に好ましい。中でも、塩化アルミニウムおよび塩化鉄が一層好ましく、塩化鉄については塩化第二鉄が好ましい。
【0127】
ルイス酸触媒としては、無水のものの使用が、触媒活性が高いことから好ましい。市販の無水物をそのまま使用しても良いし、水和物を塩化チオニルなどの脱水剤で処理して無水物を得ることもできる。
【0128】
ルイス酸触媒として上記金属の塩化物を使用する場合、上記金属の硝酸塩、炭酸塩等や0価金属粉末を、予め塩化水素処理することによって、上記金属の塩化物に誘導することができる。したがって、上記金属の硝酸塩、炭酸塩等や0価金属粉末を塩化水素処理したものも、ルイス酸触媒として用いることが可能である。
【0129】
また、アルキル化工程におけるクロロホルム原料は、0価金属を活性化及び/または塩素化する効果があるので、ルイス酸触媒は、0価金属粉末であってもよい。
【0130】
アルキル化工程において、ルイス酸触媒の使用量は、触媒としての有効量であれば特に限定されない。触媒の種類や反応温度等の操業条件によってその最適値は変化するが、通常、ルイス酸触媒の使用量は、1,2-ジクロロエチレン原料に対して0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上用いる。上限は特に制限されないが、通常、40質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
【0131】
一態様において、ルイス酸触媒の使用量は、1,2-ジクロロエチレンに対して、0.01質量%以上40質量%以下、0.01質量%以上20質量%以下、0.1質量%以上40質量%以下、または0.1質量%以上20質量%以下であってもよい。
【0132】
また、一態様において、ルイス酸触媒の使用量は、1,2-ジクロロエチレンに対して0.01質量%以上40質量%以下、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。この範囲であれば、良好な反応速度で反応が進行し、予期せぬ副反応も起こりにくい。
【0133】
(温度)
アルキル化工程において、温度は、液相条件で目的物が生成できれば特に限定されない。通常、0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上で行う。上限は特に限定されないが、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下で行う。
【0134】
一態様において、アルキル化工程は、0℃以上100℃以下、0℃以上80℃以下、0℃以上70℃以下、20℃以上100℃以下、20℃以上80℃以下、20℃以上70℃以下、40度以上100℃以下、40℃以上80℃以下、または40℃以上70℃以下の温度で行う。
【0135】
また、一くつかの態様において、アルキル化工程は、0℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは20℃以上70℃以下で行う。
【0136】
(圧力)
アルキル化工程において、圧力は、液相条件で目的物が生成できれば特に限定されない。通常、アルキル化工程は、0MPaG以上1MPaG以下で行い、0MPaG以上0.5MPaG以下が好ましく、大気圧下が特に好ましい。
【0137】
(溶媒)
アルキル化工程において、溶媒の使用は必須ではない。なお、このことは、脱塩酸化工程を溶媒存在下で行うことを妨げるものではないが、溶媒を用いる場合には、反応に悪影響を与えないものの採用が好ましい。
【0138】
(反応方式)
アルキル化工程は、バッチ式、半連続流通式、連続流通式のいずれの方式で行ってもよい。また、アルキル化工程においては、ルイス酸触媒を使用するため、水分は可能な限り少ない条件とすることが好ましい。一態様において、水の含有量は、反応資材の全質量に対して1質量%以下に保つことが好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0139】
(反応器)
アルキル化工程において、反応器の材質は特に制限はない。微量ではあるが、塩素ガスや塩化水素ガスが副生することがあるため、ガラス製やステンレススチール製の反応器が好ましい。また、ガラスや樹脂でライニングされた反応器も好ましい。また、反応器は、液体導入管、攪拌設備、還流塔などの各種設備を備えるものが好ましい。
【0140】
(操作手順例)
アルキル化工程の操作手順の一例を以下に示すが、これに限定されない。冷媒(例えば、水)を流通させた還流塔を備えた反応器にルイス酸触媒とクロロホルムを仕込む。必要に応じて不活性ガスでシールする。液体流入管より1,2-ジクロロエチレンを流入させて、所定の条件で反応を行う。サンプリングした反応物のガスクロマトグラフ分析等によって、1,2-ジクロロエチレンがほぼ消費されたところで反応を終了する。
【0141】
反応終了後、反応生成物に、酸性水溶液を加える。このような酸性水溶液としては、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、ギ酸、酢酸、モノフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロジフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、硫酸および硝酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸の水溶液を用いる。
【0142】
(精製)
得られた240daは、一般的な精製操作により精製することができる。例えば、蒸留、好ましくは減圧蒸留などの操作によって、240daから原料や副生成物を容易に分離することができる。分離した原料はアルキル化工程の原料として再利用してもよい。
【0143】
また、得られた240daを、ルイス酸触媒の分離や蒸留精製といった後処理を行うことなく、前述の脱塩酸化工程の原料として用いてもよい。なお、このことは、後処理を行うことを妨げるものではない。
【0144】
<溶剤組成物>
[1232xd]
本発明の溶剤組成物は、1232xdを少なくとも含む。1232xdの含有量は特に制限されないが、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは、一態様においては20質量%以上含まれる。また、別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは30質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは40質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは50質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは60質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは70質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは80質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは90質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは95質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは97質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは98質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは99質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物は1232xdのみからなる。
【0145】
本発明の溶剤組成物において、1232xdの含有量は、本発明の溶剤組成物全量に対して、20質量%以上99質量%以下、20質量%以上98質量%以下、20質量%以上97質量%以下、20質量%以上95質量%以下、20質量%以上90質量%以下、20質量%以上80質量%以下、20質量%以上70質量%以下、20質量%以上60質量%以下、20質量%以上50質量%以下、20質量%以上40質量%以下、20質量%以上30質量%以下、30質量%以上99質量%以下、30質量%以上98質量%以下、30質量%以上97質量%以下、30質量%以上95質量%以下、30質量%以上90質量%以下、30質量%以上80質量%以下、30質量%以上70質量%以下、30質量%以上60質量%以下、30質量%以上50質量%以下、30質量%以上40質量%以下、40質量%以上99質量%以下、40質量%以上98質量%以下、40質量%以上97質量%以下、40質量%以上95質量%以下、40質量%以上90質量%以下、40質量%以上80質量%以下、40質量%以上70質量%以下、40質量%以上60質量%以下、40質量%以上50質量%以下、50質量%以上99質量%以下、50質量%以上98質量%以下、50質量%以上97質量%以下、50質量%以上95質量%以下、50質量%以上90質量%以下、50質量%以上80質量%以下、50質量%以上70質量%以下、50質量%以上60質量%以下、60質量%以上99質量%以下、60質量%以上98質量%以下、60質量%以上97質量%以下、60質量%以上95質量%以下、60質量%以上90質量%以下、60質量%以上80質量%以下、60質量%以上70質量%以下、70質量%以上99質量%以下、70質量%以上98質量%以下、70質量%以上97質量%以下、70質量%以上95質量%以下、70質量%以上90質量%以下、70質量%以上80質量%以下、80質量%以上99質量%以下、80質量%以上98質量%以下、80質量%以上97質量%以下、80質量%以上95質量%以下、80質量%以上90質量%以下、90質量%以上99質量%以下、90質量%以上98質量%以下、90質量%以上97質量%以下、90質量%以上95質量%以下、95質量%以上99質量%以下、95質量%以上98質量%以下、95質量%以上97質量%以下、97質量%以上99質量%以下、97質量%以上98質量%以下、98質量%以上99質量%以下、または100質量%であってもよい。
【0146】
1232xdは、炭素原子-炭素原子間に二重結合を有するオレフィンであるため、大気中での寿命が短く、地球温暖化係数(GWP)が小さい。また、1232xdは、引火点を有さないため、使用環境における引火の危険性および火災等のリスクが低い。
【0147】
本発明の一態様において、1232xdはシス異性体(1232xd(Z))のみからなる。
【0148】
また、本発明の別の一態様において、1232xdはシス異性体(1232xd(Z))とトランス異性体(1232xd(E))の混合物からなる。1232xd(Z)と1232xd(E)の混合物において、その組成は特に制限されないが、以下のモル比であってもよい。
1232xd(Z):1232xd(E)=0.01~99.99:99.99~0.01
1232xd(Z):1232xd(E)=50.00~99.99:50.00:0.01
1232xd(Z):1232xd(E)=60.00~99.99:40.00~0.01
1232xd(Z):1232xd(E)=70.00~99.99:30.00~0.01
1232xd(Z):1232xd(E)=80.00~99.99:20.00~0.01
1232xd(Z):1232xd(E)=90.00~99.99:10.00~0.01
【0149】
また、本発明のさらに別の一態様において、1232xdはトランス異性体(1232xd(E))のみからなる。
【0150】
[1231xd]
本発明の溶剤組成物は、1232xdとともに1231xdを含んでもよい。一態様において、1232xdと1231xdを含む溶剤組成物は、洗浄性能に優れる。本発明の溶剤組成物が1231xdを含む場合、その含有量の下限は、本発明の溶剤組成物全量に対して、一態様においては0.001質量%以上、別の一態様においては0.01質量%以上、別の一態様においては0.1質量%以上、また別の一態様においては1質量%以上、また別の一態様においては3質量%以上、また別の一態様においては5質量%以上、また別の一態様においては10質量%以上である。また、1231xdの含有量の上限は、本発明の溶剤組成物全量に対して、一態様においては40質量%以下、別の一態様においては25質量%以下、また別の一態様においては15質量%以下である。
【0151】
本発明の溶剤組成物において、1231xdの含有量は、本発明の溶剤組成物全量に対して、0.001質量%以上40質量%以下、0.001質量%以上25質量%以下、0.001質量%以上15質量%以下、0.001質量%以上10質量%以下、0.001質量%以上5質量%以下、0.001質量%以上3質量%以下、0.001質量%以上1質量%以下、0.001質量%以上0.1質量%以下、0.001質量%以上0.01質量%以下、0.01質量%以上40質量%以下、0.01質量%以上25質量%以下、0.01質量%以上15質量%以下、0.01質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上5質量%以下、0.01質量%以上3質量%以下、0.01質量%以上1質量%以下、0.01質量%以上0.1質量%以下、0.1質量%以上40質量%以下、0.1質量%以上25質量%以下、0.1質量%以上15質量%以下、0.1質量%以上10質量%以下、0.1質量%以上5質量%以下、0.1質量%以上3質量%以下、0.1質量%以上1質量%以下、1質量%以上40質量%以下、1質量%以上25質量%以下、1質量%以上15質量%以下、1質量%以上10質量%以下、1質量%以上5質量%以下、1質量%以上3質量%以下、3質量%以上40質量%以下、3質量%以上25質量%以下、3質量%以上15質量%以下、3質量%以上10質量%以下、3質量%以上5質量%以下、5質量%以上40質量%以下、5質量%以上25質量%以下、5質量%以上15質量%以下、5質量%以上10質量%以下、10質量%以上40質量%以下、10質量%以上25質量%以下、10質量%以上15質量%以下、15質量%以上40質量%以下、15質量%以上25質量%以下、または25質量%以上40質量%以下であってもよい。
【0152】
1231xdは、炭素原子-炭素原子間に二重結合を有するオレフィンであるため、大気中での寿命が短く、地球温暖化係数(GWP)が小さい。また、1231xdは、引火点を有さないため、使用環境における引火の危険性および火災等のリスクが低い。
【0153】
[有機化合物(A)]
本発明の溶剤組成物は、1232xdとともに、あるいは、1232xdと1231xdとともに、その他の有機化合物(A)を含んでもよい。
【0154】
本発明の溶剤組成物が有機化合物(A)を含む場合、その含有量の下限は、本発明の溶剤組成物全量に対して、一態様においては0.01質量%以上、別の一態様においては0.1質量%以上、また別の一態様においては1質量%以上、また別の一態様においては3質量%以上、また別の一態様においては5質量%以上、また別の一態様においては10質量%以上である。また、有機化合物(A)の含有量の上限は、本発明の溶剤組成物全量に対して、一態様においては80質量%以下、別の一態様においては70質量%以下、また別の一態様においては60質量%以下、別の一態様においては50質量%以下、また別の一態様においては40質量%以下、別の一態様においては30質量%以下、また別の一態様においては20質量%以下である。
【0155】
本発明の溶剤組成物において、有機化合物(A)の含有量は、本発明の溶剤組成物全量に対して、0.01質量%以上80質量%以下、0.01質量%以上70質量%以下、0.01質量%以上60質量%以下、0.01質量%以上50質量%以下、0.01質量%以上40質量%以下、0.01質量%以上30質量%以下、0.01質量%以上20質量%以下、0.01質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上5質量%以下、0.01質量%以上3質量%以下、0.01質量%以上1質量%以下、0.01質量%以上0.1質量%以下、0.1質量%以上80質量%以下、0.1質量%以上70質量%以下、0.1質量%以上60質量%以下、0.1質量%以上50質量%以下、0.1質量%以上40質量%以下、0.1質量%以上30質量%以下、0.1質量%以上20質量%以下、0.1質量%以上10質量%以下、0.1質量%以上5質量%以下、0.1質量%以上3質量%以下、0.1質量%以上1質量%以下、1質量%以上80質量%以下、1質量%以上70質量%以下、1質量%以上60質量%以下、1質量%以上50質量%以下、1質量%以上40質量%以下、1質量%以上30質量%以下、1質量%以上20質量%以下、1質量%以上10質量%以下、1質量%以上5質量%以下、1質量%以上3質量%以下、3質量%以上80質量%以下、3質量%以上70質量%以下、3質量%以上60質量%以下、3質量%以上50質量%以下、3質量%以上40質量%以下、3質量%以上30質量%以下、3質量%以上20質量%以下、3質量%以上10質量%以下、3質量%以上5質量%以下、5質量%以上80質量%以下、5質量%以上70質量%以下、5質量%以上60質量%以下、5質量%以上50質量%以下、5質量%以上40質量%以下、5質量%以上30質量%以下、5質量%以上20質量%以下、5質量%以上10質量%以下、10質量%以上80質量%以下、10質量%以上70質量%以下、10質量%以上60質量%以下、10質量%以上50質量%以下10質量%以上40質量%以下、10質量%以上30質量%以下、10質量%以上20質量%以下、20質量%以上80質量%以下、20質量%以上70質量%以下、20質量%以上60質量%以下、20質量%以上50質量%以下、20質量%以上40質量%以下、20質量%以上30質量%以下、30質量%以上80質量%以下、30質量%以上70質量%以下、30質量%以上60質量%以下、30質量%以上50質量%以下、30質量%以上40質量%以下、40質量%以上80質量%以下、40質量%以上70質量%以下、40質量%以上60質量%以下、40質量%以上50質量%以下、50質量%以上80質量%以下、50質量%以上70質量%以下、50質量%以上60質量%以下、60質量%以上80質量%以下、60質量%以上70質量%以下、又は70質量%以上80質量%以下であってもよい。
【0156】
有機化合物(A)としては、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、クロロカーボン類、HFC類、HFE類等が挙げられ、これらは1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0157】
有機化合物(A)として用いられる炭化水素類としては、炭素数が5以上の炭化水素類が好ましい。炭化水素類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和炭化水素類であってもよく、不飽和炭化水素類であってもよい。炭化水素類としては、具体的には、n-ペンタン、2-メチルブタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,4-ジメチルペンタン、n-オクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,3-ジメチルヘキサン、2-メチル-3-エチルペンタン、3-メチル-3-エチルペンタン、2,3,3-トリメチルペンタン、2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2-メチルヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-ノナン、2,2,5-トリメチルヘキサン、n-デカン、n-ドデカン、2-メチル-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキセン、α-ピネン、ジペンテン、デカリン、テトラリン、アミルナフタレン等が挙げられる。中でも、n-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンが好ましい。
【0158】
有機化合物(A)として用いられるアルコール類としては、炭素数1~16のアルコール類が好ましい。アルコール類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和アルコール類であってもよく、不飽和アルコール類であってもよい。アルコール類としては、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-ノナノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール、α-テルピネオール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、ノニルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0159】
有機化合物(A)として用いられるケトン類としては、炭素数3~9のケトン類が好ましい。ケトン類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和ケトン類であってもよく、不飽和ケトン類であってもよい。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、メシチルオキシド、ホロン、2-オクタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、2,4-ペンタンジオン、2,5-ヘキサンジオン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等が挙げられる。中でも、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。
【0160】
有機化合物(A)として用いられるエーテル類としては、炭素数2~8のエーテル類が好ましい。エーテル類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エーテル類であってもよく、不飽和エーテル類であってもよい。エーテル類としては、具体的には、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、メチルアニソール、フラン、メチルフラン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。中でも、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランが好ましい。
【0161】
有機化合物(A)として用いられるエステル類としては、炭素数2~19のエステル類が好ましい。エステル類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エステル類であってもよく、不飽和エステル類であってもよい。エステル類としては、具体的には、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸メトキシブチル、酢酸sec-ヘキシル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、γ-ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等が挙げられる。中でも、酢酸メチル、酢酸エチルが好ましい。
【0162】
有機化合物(A)として用いられるクロロカーボン類としては、炭素数1~3のクロロカーボン類が好ましい。クロロカーボン類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和クロロカーボン類であってもよく、不飽和クロロカーボン類であってもよい。クロロカーボン類としては、具体的には、塩化メチレン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,1,2-テトラクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2-ジクロロプロパン等が挙げられる。中でも、塩化メチレン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレンがより好ましい。
【0163】
有機化合物(A)として用いられるHFC類としては、炭素数4~8の鎖状または環状のHFC類が好ましく、1分子中のフッ素原子数が水素原子数以上であるHFC類がより好ましい。HFC類としては、具体的には、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン等が挙げられる。中でも、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサンが好ましい。
【0164】
有機化合物(A)として用いられるHFE類としては、COCH、COCH、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ-1-(2,2,2-トリフルオロ)エタン(HFE-347pc-f)等が好ましい。
【0165】
一態様において、有機化合物(A)は、引火点を持たない化合物であることがさらに好ましい。引火点を持たない化合物としては、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン等のHFC類や、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ-1-(2,2,2-トリフルオロ)エタン等のHFE類等が挙げられる。有機化合物(A)として引火点を有する化合物を用いる場合には、本発明の溶剤組成物として引火点を持たない範囲で用いることが好ましい。
【0166】
[添加剤(B)]
本発明の溶剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤(B)を含んでもよい。一態様において、本発明の溶剤組成物全量に対して、添加剤(B)は、0.0001質量%以上含まれ、別の一態様においては0.001質量%以上含まれ、また別の一態様においては0.01質量%以上含まれ、また別の一態様においては0.1質量%以上含まれ、また別の一態様においては1質量%以上含まれ、また別の一態様においては3質量%以上含まれる。また、一態様において、本発明の溶剤組成物全量に対して、添加剤(B)は、10質量%以下含まれ、別の一態様においては5質量%以下含まれ、また別の一態様においては3質量%以下含まれ、別の一態様においては1質量%以下含まれ、また別の一態様においては0.1質量%以下含まれ、別の一態様においては0.01質量%以下含まれ、また別の一態様においては0.001質量%以下含まれる。
【0167】
本発明の溶剤組成物において、添加剤(B)の含有量は、本発明の溶剤組成物全量に対して、0.0001質量%以上10質量%以下、0.0001質量%以上5質量%以下、0.0001質量%以上3質量%以下、0.0001質量%以上1質量%以下、0.0001質量%以上0.1質量%以下、0.0001質量%以上0.01質量%以下、0.0001質量%以上0.001質量%以下、0.001質量%以上10質量%以下、0.001質量%以上5質量%以下、0.001質量%以上3質量%以下、0.001質量%以上1質量%以下、0.001質量%以上0.1質量%以下、0.001質量%以上0.01質量%以下、0.01質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上5質量%以下、0.01質量%以上3質量%以下、0.01質量%以上1質量%以下、0.01質量%以上0.1質量%以下、0.1質量%以上10質量%以下、0.1質量%以上5質量%以下、0.1質量%以上3質量%以下、0.1質量%以上1質量%以下、1質量%以上10質量%以下、1質量%以上5質量%以下、1質量%以上3質量%以下、3質量%以上10質量%以下、3質量%以上5質量%以下、または5質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0168】
添加剤(B)としては、安定剤、界面活性剤、難燃剤、金属不動態化剤、腐食防止剤等が挙げられる。これらの添加剤(B)は、本発明の溶剤組成物の各種用途に応じて適宜選択されることが好ましい。
【0169】
(安定剤)
一態様において、本発明の溶剤組成物が安定剤を含むことにより、加熱条件等の過酷な条件下であっても組成物の分解を抑制することができる。このような安定剤としては、ニトロ化合物、エポキシ化合物、フェノール類、イミダゾール類、アミン類、リン化合物類、硫黄化合物類、含窒素アルコール化合物、ジエン系化合物類、芳香族不飽和炭化水素類、イソプレン類、プロパジエン類、テルペン類等が挙げられ、これらは1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0170】
安定剤として用いられるニトロ化合物としては、具体的には、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン等の脂肪族系ニトロ化合物や、ニトロベンゼン、o-、m-又はp-ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、o-、m-又はp-ニトロトルエン、o-、m-又はp-エチルニトロベンゼン、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-又は3,5-ジメチルニトロベンゼン、o-、m-又はp-ニトロアセトフェノン、o-、m-又はp-ニトロフェノール、o-、m-又はp-ニトロアニソール等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0171】
安定剤として用いられるエポキシ化合物としては、具体的には、エチレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリシジルメタアクリレート、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等のモノエポキシ系化合物、ジエポキシブタン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のポリエポキシ系化合物等が挙げられる。
【0172】
安定剤として用いられるフェノール類としては、水酸基以外にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。フェノール類としては、具体的には、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、チモール、p-t-ブチルフェノール、o-メトキシフェノール、m-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、ブチルヒドロキシアニソール、フェノール、キシレノール等の1価のフェノールや、t-ブチルカテコール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-アミルハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)等の2価のフェノール等が挙げられる。
【0173】
安定剤として用いられるイミダゾール類としては、炭素数1~18の炭化水素基をN位の置換基として有するイミダゾール類が好ましい。この炭化水素基は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。イミダゾール類としては、具体的には、1-メチルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-(β-オキシエチル)イミダゾール、1-メチル-2-プロピルイミダゾール、1-メチル-2-イソブチルイミダゾール、1-n-ブチル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,4-ジメチルイミダゾール、1,5-ジメチルイミダゾール、1,2,5-トリメチルイミダゾール、1,4,5-トリメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0174】
安定剤として用いられるアミン類としては、具体的には、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジアリルアミン、トリエチルアミン、N-メチルアニリン、ピリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、トリアリルアミン、アリルアミン、α-メチルベンジルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、2-エチルヘキシルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ジフェニルアミン、4-アミノジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、フェノチアジン等が挙げられる。
【0175】
安定剤として用いられるリン化合物類としては、具体的には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0176】
安定剤として用いられる硫黄化合物類としては、具体的には、3,3’-チオジプロピオン酸ジドデシル、3,3’-チオジプロピオン酸ジテトラデシル、3-(ドデシルチオ)プロピオン酸、3,3’-チオジプロピオン酸ジオクタデシル等が挙げられる。
【0177】
安定剤として用いられる含窒素アルコール化合物としては、具体的には、N-ステアリル-N,N’,N’-トリス(ポリオキシエチレン)-1,3-ジアミノプロパン、エチレンジアミン-N,N’-ジエタノール、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-テトラ-2-プロパノール、トリエチレンテトラミン-N-2-プロパノール、キシレンジアミン-N-2-プロパノール、アルキロールアマイド、オレイン酸トリエタノールアミンエステル、ラウリルアミン-N,N-ジエタノール、ステアリルアミン-N,N-ジエタノール、オレイルアミン-N,N-ジエタノール、ビス(2-ヒドロキシエチル)大豆アミン、オレイン酸ジアルコールアミド、ステアリルアミノプロピルアミノエタノール、1,3-プロピレンジアミン-N-C12-18-アルキル-N’-エタノール等が挙げられる。
【0178】
安定剤として用いられる芳香族不飽和炭化水素類としては、具体的には、α-メチルスチレンやp-イソプロペニルトルエン等が挙げられる。
【0179】
(界面活性剤)
一態様において、本発明の溶剤組成物は界面活性剤を含むことにより、洗浄力、界面作用等をより一層改善することができる。このような界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤が挙げられ、これらは1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0180】
好ましいカチオン性界面活性剤の例としては、ドデシルジメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。好ましいノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン酸と脂肪酸のエステル等の界面活性剤が挙げられる。好ましいアニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩などのアルキル硫酸エステル塩、脂肪酸塩(せっけん)などのカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩等のスルホン酸塩が挙げられる。好ましい両性界面活性剤の例としては、アルキルベタイン等のベタイン化合物が挙げられる。
【0181】
(難燃剤)
一態様において、本発明の溶剤組成物は難燃剤を含むことにより、燃焼性を改善することができる。このような難燃剤としては、ホスフェート類、ハロゲン化芳香族化合物、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン等が挙げられる。
【0182】
[その他の成分]
本発明の溶剤組成物は本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分は、上述の成分、すなわち、1232xd、1231xd、有機化合物(A)、添加剤(B)以外であれば、特に限定されない。例えば、上述の成分由来の不純物であってもよい。そのような不純物としては、例えば、上述の成分の製造過程で使用される原料資材などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
<洗浄剤>
本発明の溶剤組成物は、適度な流動性や溶解性を有するので、物品から異物を洗い流したり溶解したりして除去するのに好適である。
【0184】
この物品の材質としては、金属、樹脂、ゴム、繊維、ガラス、セラミックスおよびこれらの複合材料が挙げられる。複合材料としては、金属と樹脂の積層体等が挙げられる。物品の具体例としては、精密機械部品、電子材料(プリント基板、液晶表示器、磁気記録部品、半導体材料等)、樹脂加工部品、光学レンズ、繊維製品、医療器具等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
異物としては、グリース、加工油、シリコーン油、油脂、フラックス、ワックス、インキ、鉱物油、シリコーン油を含む離型剤などの油脂類、塵埃、液滴、水滴等の汚れが挙げられるが、この限りではない。
【0186】
自動車、二輪自動車、自転車、建機、農機、航空機、鉄道車両、船舶などの各種車両、乗物、輸送機関の洗浄(特にこれらのブレーキクリーナー)においては、汚れを湿潤させて洗い流す工程を要するところ、本発明の組成物は、適度な沸点を有しており、汚れを湿潤させて洗い流すことができるため、このような洗浄に好適である。
【0187】
物品の洗浄方法は特に限定されないが、本発明の溶剤組成物または後述のエアゾール組成物と、物品とを接触させる。例えば、洗浄対象の物品を本発明の溶剤組成物に浸漬して汚れを洗い流す、ウェスでふき取る、スプレー洗浄を行う、などの方法が挙げられ、これらを組み合わせて使用しても良い。超音波洗浄機内に当該溶剤組成物を入れ、その液中に洗浄対象の物品を浸漬させ、超音波洗浄処理することは、特に好ましい態様の1つである。また、スプレー洗浄、例えば、本発明の溶剤組成物を噴射ガスと混合してエアゾール化させて各種洗浄対象の物品に吹き付ける方法も好ましい態様の1つである。
【0188】
<エアゾール組成物>
本発明の溶剤組成物は、噴射ガスと混合してエアゾール組成物としてもよい。
【0189】
この噴射ガスとしては、液化ガスや圧縮ガスを使用することができる。例えば、LPG(液化石油ガス)、DME(ジメチルエーテル)、炭酸ガス、フロン系ガス、窒素ガス、圧縮空気などのガスやLPGとDMEとの混合物、LPGと炭酸ガスとの混合物などといった上記のガスを二種以上組み合わせたものが挙げられるが、この限りではない。
【0190】
本発明のエアゾール組成物は、本発明の溶剤組成物と上記の噴射ガスを混合して製造することができ、また、耐圧缶に充填して提供することができる。
【0191】
<ドライクリーニング用途>
本発明の溶剤組成物は、繊維製品の洗浄剤、すなわち、ドライクリーニング剤として適している。繊維製品としては、シャツ、セーター、ジャケット、スカート、ズボン、ジャンパー、手袋、マフラー、ストール等の衣類が挙げられる。本発明の溶剤組成物は、特にアクリル繊維を含む繊維製品のドライクリーニングに適している。
【0192】
本発明の溶剤組成物を用いて繊維製品をドライクリーニングする方法は、当該組成物を繊維製品表面に接触させることにより繊維製品表面に付着する汚れを除去する。このとき、本発明の組成物には、前述の界面活性剤を添加剤として用いることが好ましい。
【0193】
<希釈溶液>
本発明の溶剤組成物またはエアゾール組成物は、各種化学物質を希釈するための希釈溶剤として好適である。希釈溶液の一態様として、本発明の溶剤組成物は、潤滑剤と混合して、潤滑剤溶液を形成することができる。
【0194】
<希釈溶液の製造方法>
本発明の溶剤組成物またはエアゾール組成物が希釈できる各種化学物質としては、特に限定されないが、例えば、潤滑剤や防錆剤等が挙げられる。
【0195】
希釈溶液の製造方法の一態様として、潤滑剤溶液の製造方法を以下に説明する。潤滑剤を本発明の溶剤組成物で希釈することにより潤滑剤溶液を製造することができる。潤滑剤溶液を、物品の表面に塗布し、次いで物品から本発明の溶剤組成物を揮発させることにより、物品の表面に潤滑剤を含む塗膜を形成した塗膜付物品を製造することができる。本発明の潤滑剤溶液は、樹脂材料を含む物品への影響なく塗布することができる。
【0196】
潤滑剤溶液の塗布方法としては、たとえば、刷毛による塗布、スプレーによる塗布、物品を潤滑剤溶液に浸漬することによる塗布、潤滑剤溶液を吸い上げることによりチューブや注射針の内壁に潤滑剤溶液を接触させる塗布方法等が挙げられる。
【0197】
潤滑剤は、2つの部材が互いの面を接触させた状態で運動するときに、接触面における摩擦を軽減し、熱の発生や摩耗損傷を防ぐために用いるものである。潤滑剤は、液体(オイル)、半固体(グリース)、固体のいずれの形態であってもよい。潤滑剤としては、本発明の組成物への溶解性が優れる点から、鉱物油系潤滑剤、合成油系潤滑剤、フッ素系潤滑剤またはシリコーン系潤滑剤が好ましい。なお、フッ素系潤滑剤とは、分子内にフッ素原子を有する潤滑剤を意味する。また、シリコーン系潤滑剤とは、シリコーンを含む潤滑剤を意味する。潤滑剤溶液に含まれる潤滑剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。フッ素系潤滑剤とシリコーン系潤滑剤は、それぞれを単独で使用してもよく、併用してもよい。
【0198】
フッ素系潤滑剤としては、フッ素オイル、フッ素グリース、ポリテトラフルオロエチレンの樹脂粉末等のフッ素系固体潤滑剤が挙げられる。フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい。例えば、製品名「クライトックス(登録商標)GPL102」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイル#1」、「ダイフロイル#3」、「ダイフロイル#10」、「ダイフロイル#20」、「ダイフロイル#50」、「ダイフロイル#100」、「デムナムS-65」(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。フッ素グリースとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物等のフッ素オイルを基油として、ポリテトラフルオロエチレンの粉末やその他の増ちょう剤を配合したものが好ましい。例えば、製品名「クライトックス(登録商標)グリース240AC」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイルグリースDG-203」、「デムナムL65」、「デムナムL100」、「デムナムL200」(以上、ダイキン株式会社製)、「スミテックF936」(住鉱潤滑剤株式会社製)、「モリコート(登録商標)HP-300」、「モリコート(登録商標)HP-500」、「モリコート(登録商標)HP-870」、「モリコート(登録商標)6169」等が挙げられる。
【0199】
シリコーン系潤滑剤としては、シリコーンオイルやシリコーングリースが挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、側鎖や末端に有機基を導入した変性シリコーンオイルが好ましい。例えば、製品名「信越シリコーンKF-96」、「信越シリコーンKF-965」、「信越シリコーンKF-968」、「信越シリコーンKF-868」、「信越シリコーンKF-99」、「信越シリコーンKF-50」、「信越シリコーンKF-54」、「信越シリコーンHIVACF-4」、「信越シリコーンHIVACF-5」、「信越シリコーンKF-56A」、「信越シリコーンKF-995」(以上、信越化学工業株式会社製)、「SH200」、「MDX4-4159」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。シリコーングリースとしては、上記に挙げた種々のシリコーンオイルを基油として、金属石けん等の増ちょう剤、各種添加剤を配合した製品が好ましい。例えば、製品名「信越シリコーンG-30シリーズ」、「信越シリコーンG-40シリーズ」、「信越シリコーンFG-720シリーズ」、「信越シリコーンG-411」、「信越シリコーンG-501」、「信越シリコーンG-6500」、「信越シリコーンG-330」、「信越シリコーンG-340」、「信越シリコーンG-350」、「信越シリコーンG-630」(以上、信越化学工業株式会社製)、「モリコート(登録商標)SH33L」、「モリコート(登録商標)41」、「モリコート(登録商標)44」、「モリコート(登録商標)822M」、「モリコート(登録商標)111」、「モリコート(登録商標)高真空用グリース」、「モリコート(登録商標)熱拡散コンパウンド」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0200】
本発明の潤滑剤溶液中の潤滑剤の含有量は、潤滑剤溶液全量に対して、0.01質量%以上50質量%以下が好ましく、0.05質量%以上30質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。潤滑剤の含有量が前記範囲内であれば、潤滑剤溶液を塗布したときの塗布膜の膜厚、および乾燥後の潤滑剤塗膜の厚さを適正範囲に調整しやすい。
【0201】
<水切り剤用途>
一態様において、本発明の溶剤組成物またはエアゾール組成物は水切り剤として用いることができる。
【0202】
<発泡剤用途>
本発明の溶剤組成物またはエアゾール組成物は、硬質ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームの製造に用いる発泡剤として用いることができる。すなわち、本発明の共沸組成物からなる発泡剤、1種以上のポリオール、触媒、整泡剤などを混合した混合物(プレミックス)をイソシアネートと反応させることによって、硬質ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームを製造することができる。
【0203】
イソシアネートは、芳香族、環状脂肪族、鎖状脂肪族系等のものが包含され、一般には2官能のものが使用される。このようなイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンイソシアネート等のポリイソシアネートおよびこれらのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、尿素変性体が挙げられる。これらは単独または混合物で用いられる。
【0204】
プレミックスに含まれるポリオールには、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、多価アルコール、水酸基含有ジエチレン系ポリマー等が挙げられるが、ポリエーテル系ポリオールが一般的に使用される。また、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールを主成分としてもよく、その他のポリオールを使用してもよい。
【0205】
ポリエステル系ポリオールには、無水フタル酸、廃ポリエステル、ひまし油に由来する化合物の他に縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0206】
発泡剤等との相溶性ならびに、発泡性、フォーム物性等の観点から、ポリエステルポリオールの水酸基価(OH価)は100mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であり、かつ粘度が200mPa・s/25℃以上4000mPa・s/25℃以下であることが好ましい。
【0207】
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びそれら変性体の他、糖、多価アルコール、アルカノールアミン等の活性水素を含む化合物をイニシエータにして、これに、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、エピクロルヒドリン、ブチレンオキシド等の環状エーテルを付加したものが好ましく使用される。
【0208】
ポリエーテルポリオールは、通常、水酸基価が400mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下のものが使用される。
【0209】
プレミックスに含まれる触媒には、有機金属系触媒及び有機アミン系触媒が包含される。有機金属触媒としては、有機スズ化合物が好ましく使用され、スタナスオクトエート、スタナスラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート等が挙げられる。有機アミン系触媒としては、第三級アミン、例えば、トリエチレンジアミン、N-エチルモルホリン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N’,N’-トリエチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0210】
プレミックスに含まれる整泡剤としては、通常有機ケイ素化合物系の界面活性剤が用いられ、東レシリコーン(株)製SH-193、SH-195、SH-200またはSRX-253等、信越シリコーン(株)製F-230、F-305、F-341、F-348等、日本ユニカー(株)製L-544、L-5310、L-5320、L-5420、L-5720または東芝シリコーン(株)製TFA-4200、TFA-4202等が挙げられる。
【0211】
プレミックスに含まれる難燃剤としては、硬質ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームに使用されるリン酸エステルであり、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリスメチルホスフェート、トリスエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0212】
一態様において、プレミックスには、紫外線防止剤、スコーチ防止剤、プレミックス貯蔵安定剤などを存在させてもよい。これにより、硬質ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームの諸物性を向上させることができる。
【0213】
<熱伝達媒体用途>
一態様において、本発明の溶剤組成物は、冷凍サイクルシステム、高温ヒートポンプシステム、及び有機ランキンサイクルシステムなどの熱伝達媒体として好適である。また、いくつかの態様において、本発明の溶剤組成物は、これらのサイクルシステムを洗浄するための洗浄剤として好適である。
【0214】
本明細書において、「冷凍サイクルシステム」とは、少なくとも蒸発器、圧縮機、凝縮器、膨張弁の要素機器を含む蒸気圧縮式の冷凍サイクルシステムであり、主に冷却することを目的とするシステムを指す。膨張弁は、熱伝達媒体が絞り膨張するための装置であり、キャピラリーチューブであってもよい。冷凍サイクルシステムは前記要素機器の他に、内部熱交換器、乾燥器(ドライヤ)、液分離器、油回収器、不凝縮ガス分離器を備えていてもよい。冷凍サイクルシステムは、冷蔵庫、空調システム、冷却装置として用いられてもよい。
【0215】
本明細書において、「高温ヒートポンプサイクルシステム」とは、少なくとも蒸発器、圧縮機、凝縮器、膨張弁の要素機器を含む蒸気圧縮式のヒートポンプサイクルシステムであり、主に加熱することを目的とするシステムを指す。膨張弁は、熱伝達媒体を絞り膨張させるための装置であり、キャピラリーチューブであってもよい。高温ヒートポンプサイクルシステムは、前記要素機器の他に、内部熱交換器、乾燥器(ドライヤ)、液分離器、油回収器、不凝縮ガス分離器を備えていてもよい。前記高温ヒートポンプサイクルシステムは、給湯システム、蒸気生成システム、加熱装置として用いられてもよい。また、高温ヒートポンプサイクルシステムは、熱源として、太陽熱エネルギー、工場廃熱などを利用してもよい。
【0216】
本明細書において、「有機ランキンサイクルシステム」とは、少なくとも蒸発器、膨張機、凝縮器、昇圧ポンプの要素機器を含むランキンサイクルシステムであり、主に熱エネルギーを電気エネルギーへと変換することを目的とするシステムを指す。有機ランキンサイクルシステムは、前記要素機器の他に、内部熱交換器、乾燥器(ドライヤ)、液分離器、油回収器、不凝縮ガス分離器を備えていてもよい。有機ランキンサイクルシステムは、中低温熱を回収する発電装置として用いられてもよい。また、有機ランキンサイクルシステムは、熱源として、太陽熱エネルギー、工場廃熱などを利用してもよい。
【0217】
<消火剤用組成物>
本発明の消火剤用組成物は、1232xdと、1232xd以外の不燃性ガスを少なくとも含む。1232xdは、1232xd(Z)、1232xd(E)、あるいは、1232xd(Z)と1232xd(E)の混合物であってもよい。
【0218】
消火剤用組成物に含まれる不燃性ガスは、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、トリフルオロメタン、ヨウ化トリフルオロメタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、1-クロロ-1,2,2,2-トリフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン、(E)1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、(E)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、(Z)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、(Z)1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、(E)1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン、テトラデカフルオロ-2,4-ジメチルペンタン-3-オンおよびテトラデカフルオロ-2-メチルヘキサン-3-オンから選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0219】
不燃性ガスは、1232xdよりも沸点の低い不燃性ガスであることが好ましい。
【0220】
消火剤用組成物における1232xdと不燃性ガスとの合計量に対する1232xdの割合は、例えば10モル%以上99モル%以下とすることができる。
【0221】
本発明の消火剤用組成物の一態様において、不燃性ガスが二酸化炭素を含み、1232xdと不燃性ガスとの合計量に対する1232xdの割合は20モル%以上99モル%以下であってもよい。
【0222】
また、本発明の消火剤用組成物の一態様において、不燃性ガスが窒素を含み、1232xdと不燃性ガスとの合計量に対する1232xdの割合は20モル%以上99モル%以下であってもよい。
【実施例0223】
本発明を以下の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例により、限定されるものではない。
【0224】
以下の記載において、FID%とは、検出器がFIDのガスクロマトグラフで分析した時の面積%を指す。
【0225】
<1230xdのフッ素化>
1.1230xdの液相フッ素化
[実施例1-A1]
20℃の冷却液を循環させた凝縮器と圧力計とを備えた200mLのステンレス鋼製オートクレーブに、純度97FID%1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(1230xd)30g(0.16モル)と、フッ化水素40.0g(2.00モル、1230xd/フッ化水素モル比=約1/12)を導入した後、オートクレーブを120℃に加熱した。圧力が約4MPaGを超えたところで、4.0MPaG以上4.5MPaG以下を維持するように凝縮器出口のニードルバルブから反応生成ガスを抜き出した。抜き出したガスは、氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に通して酸を吸収し、ドライアイスアセトン浴のガラストラップで反応生成有機物を回収した。昇温開始から3時間後、圧力の上昇が観察されなくなったことを確認した後、反応器をパージし、抜き出したガスは氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶及びドライアイスアセトン浴のガラストラップに回収した。反応器を冷却後、オートクレーブ内の反応液とドライアイスアセトン浴のガラストラップ回収物を氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶にすべて混合し、併せた混合溶液をフッ素樹脂製分液ロートにて有機物を水相から分離し回収した。この回収した有機物の量は22.1gであり、有機物中の1232xd幾何異性体比は、シス体:トランス体=93:7であった。
【0226】
[実施例1-A2]
反応温度を140℃とした以外は実施例1-A1と同様に反応を実施した。回収した有機物の量は21.8gであった。
【0227】
[実施例1-A3]
反応温度を160℃、フッ化水素80.0g(4.00モル、1230xd/フッ化水素モル比=約1/24)以外は実施例1-A1と同様に反応を実施した。回収した有機物の量は19.6gであった。
【0228】
[実施例1-A4]
塩化スズ(SnCl)3gを加えたこと以外は実施例1-A2と同様に反応を実施した。回収した有機物の量は21.8gであった。
【0229】
[実施例1-A5]
20℃の冷却液を循環させた凝縮器と圧力計とを備えた2Lのステンレス鋼製オートクレーブに、純度97FID%1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(1230xd)454g(2.53モル)と、フッ化水素1000.0g(55.0モル、1230xd/フッ化水素モル比=約1/22)を導入した後、オートクレーブを160℃に加熱したこと以外は実施例1-A1と同様に反応を実施した。回収した有機物の量は350gであった。
【0230】
実施例1-A1~実施例1-A5についてガスクロマトグラフィー分析結果を表1に示す。
【表1】
【0231】
表1中、「換算収率」とは、下記式に従って算出される1232xdの単純純度換算収率を示す。
1232xdの単純純度換算収率 = 100×(回収有機物量×1232xdFID%/1232xd分子量)/(1230xd仕込み量×1230xd純度/1230xd分子量)
【0232】
表1中、「―」は、検出されなかったことを示す。
【0233】
2.1230xdの気相フッ素化
[調製例1]フッ素化した活性アルミナの調製
活性アルミナ(住友化学製KHS-46:粒径4~6mm、比表面積155m2/g)300gを測り取り、水で表面に付着した粉を洗浄した。洗浄後のアルミナに10重量%フッ酸1150gをゆっくり加え、攪拌後、約4時間静置した。水洗後、濾過を行い、常温で終夜乾燥し、次に電気炉において200℃で2時間乾燥を行った。この乾燥後の活性アルミナ150mLを、内径1インチ長さ40cmのステンレス鋼製(SUS316)反応管に入れ、窒素を150cc/分の流速で流しながら電気炉で200℃まで昇温し、更に窒素とともにフッ化水素を0.1g/分の流速で流した。このフッ化水素処理を行うにつれて温度が上昇するが、内温が400℃を超えないように、窒素とフッ化水素の流速を調整した。発熱が収まった時点で、窒素の流速を30cc/分に落とし、電気炉の設定温度を30分間ごとに50℃ずつ昇温し、最終的に400℃まで上げ、その状態を2時間保持した。このようにしてフッ素化処理した活性アルミナ(以下、触媒1ともいう)を調製した。
【0234】
[調製例2]フッ素化したクロム担持アルミナ触媒の調製
三角フラスコに20質量%塩化クロム水溶液を加え、そこに調製例1で調製したフッ素化処理した活性アルミナ100mLを浸漬させ、3時間保持した。このアルミナを濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下、70℃で乾燥させた。このクロム担持アルミナ100mLを、電気炉を備えた1インチ長さ40cmの円筒形ステンレス鋼製(SUS316)反応管に充填し、窒素ガスを流しながら200℃まで昇温し、水の流出が見られなくなった時点で窒素ガスを150cc/分、フッ化水素を0.1g/分の流速で同時に供給し、内温が400℃を超えないように窒素とフッ化水素の流速を調整した。充填したクロム担持アルミナのフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで窒素の流速を30cc/分に落とし、電気炉の設定温度を30分間ごとに50℃ずつ昇温し、最終的に400℃まで上げ、その状態を2時間保持した。このようにして、フッ素化処理したクロム担持アルミナ(以下、触媒2ともいう)を調製した。
【0235】
[調製例3]フッ素化したクロム担持活性炭の調製
三角フラスコに20質量%塩化クロム水溶液を加え、活性炭100mLを浸漬させ、3時間保持した。この活性炭を濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下、70℃で乾燥させた。このようにして得たクロム担持活性炭100mLを、電気炉を備えた1インチ長さ40cmの円筒形ステンレス鋼製(SUS316)反応管に充填し、窒素ガスを流しながら200℃まで昇温し、水の流出が見られなくなった時点で、窒素ガスを150cc/分、フッ化水素を0.1g/分の流速で同時に供給し、内温が400℃を超えないように、窒素とフッ化水素の流速を調整した。充填したクロム担持活性炭のフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで窒素の流速を30cc/分に落とし、電気炉の設定温度を30分間ごとに50℃ずつ昇温し、最終的に400℃まで上げ、その状態を2時間保持した。このようにして、フッ素化処理したクロム担持活性炭(以下、触媒3ともいう)を調製した。
【0236】
[実施例1-B1]
調製例2で調製した触媒50mlを、電気炉を備えた1インチ×長さ40cmステンレス鋼製(SUS316)反応管に充填し、約30cc/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管内を250℃に昇温した。窒素フィードを止め、気化させた原料1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(1230xd)0.20g/分、フッ化水素0.20g/分の流速で導入した。圧力を大気圧とし、触媒との接触時間は12秒とした。流速が安定したところで、反応管出口に氷水で冷却した100ml氷水トラップを設置し、約30分間有機物の回収および副生した酸分を吸収させ、重量回収率を算出した。酸除去を行った有機成分をガスクロマトグラフィーで分析を行った。回収成分の組成および原料の転化率を算出した結果を表1に示す。重量回収率及び原料転化率の計算方法は、以下の通りである。
重量回収率:100×(氷水トラップ増加量g)/(原料g+フッ化水素g)
原料転化率:100×(1-回収有機物中原料組成FID%/原料組成FID%)
【0237】
[実施例1-B2]
反応管内温度を200℃にしたこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0238】
[実施例1-B3]
反応管内温度を300℃にしたこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0239】
[実施例1-B4]
反応管内温度を350℃にしたこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0240】
実施例1-B1~実施例1-B4の結果を表2に示す。
【表2】
【0241】
表2を参照すると、200℃以上350℃以下の範囲において、1230xdをフッ素化して1232xdを合成できることが分かる。
【0242】
[実施例1-B5]
触媒2の代わりに触媒3を充填したこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0243】
[実施例1-B6]
触媒2の代わりに触媒1を充填したこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0244】
[実施例1-B7]
触媒2の代わりに、充填材として活性炭(白鷺G2X4/6-1)50mlを充填したこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0245】
実施例1-B1、実施例1-B5~実施例1-B7の結果を表3に示す。
【表3】
【0246】
<240daの合成>
【0247】
[実施例2-1]
温度計、液体を流入させるための流入管、ジムロート冷却管を設置した2L-三口フラスコに、粉末状の塩化アルミニウム35g(10モル%)、クロロホルム1275g(10.7モル)を仕込み、窒素シールを行った。その後、当該フラスコをオイルバスにより内温約60℃に加熱し、流入管より1,2-ジクロロエチレン256g(2.64モル)を2時間かけて導入後、60℃で30分間攪拌を行い、反応終了とした。反応液を室温まで冷却後、5重量%塩化水素水500mlで洗浄し、有機相をモレキュラーシーブスで乾燥後、余剰クロロホルムをエバポレーターで分離した。これにより、純度98FID%の240da粗体505g(1,2-ジクロロエチレン基準による純度換算収率86.5%)を回収した。
【0248】
[実施例2-2]
塩化アルミニウム7.3g(20モル%)、クロロホルム31g(0.26モル)、1,2-ジクロロエチレン100g(1.0モル)にしたこと以外、実施例2-1と同様の操作を行った。これにより、純度92FID%の240da粗体50g(クロロホルム基準による純度換算収率80.1%)を回収した。240da粗体中、240da以外のそのほかの成分はヘプタクロロペンタンだった。
【0249】
[実施例2-3]
塩化アルミニウム7.3g(20モル%)、クロロホルム31g(0.26モル)、1,2-ジクロロエチレン25g(0.26モル)にしたこと以外、実施例2-1と同様の操作を行った。これにより、純度96FID%の240da粗体44g(1,2-ジクロロエチレン基準による純度換算収率75.2%)を回収した。240da粗体中、240da以外のそのほかの成分はヘプタクロロペンタンだった。
【0250】
<1230xdの合成>
【0251】
[実施例3]
温度計、滴下ロート、水を流せるジムロート冷却管を設置した2L-三口フラスコに、実施例2-1で合成した240da粗体500g(2.26モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド3.0gを仕込み、氷水浴で約10℃に冷却した。滴下ロート経由で25重量%水酸化ナトリウム水溶液550g(3.4モル、1.5当量)を2時間かけて滴下を行い、室温約20℃で18時間攪拌を行った。反応液に10重量%塩化水素水500mlを加え洗浄を行い、さらに、水洗浄、飽和炭酸水素水による洗浄を行い、モレキュラーシーブスで乾燥した。これにより、純度97FID%の1230xd粗体410gを得た。
【0252】
<溶解性試験>
【0253】
[実施例4]
SUS-316L(2.8mm×10mm×30mm)のテストピースを表4に示すオイルに浸漬させて当該オイルを付着させた。これを、表4に示す溶剤10mLに30秒間浸漬させた後、常温(23℃)で2分間自然乾燥を行った。乾燥後のテストピースを目視で観察し、以下の基準に沿って洗浄性を評価した。
◎:非常に良好。油が完全に除去されている。
〇:良好。油のスケールが一部に観測されるものの、概ね除去されている。
×:不良。油がかなり残っている。
【0254】
それぞれの結果を表4に示す。
【表4】
【0255】
表4中、オイルの種類は、以下のものを示す。
プレス工作油A:日本互作油株式会社製 PG-3246
プレス工作油B:日本互作油株式会社製 PG-3740
工作油A:日本互作油株式会社製 CF-879
工作油B:日本互作油株式会社製 C-4115
防錆油:日本互作油株式会社製 P-5960
鉱油:住鉱潤滑剤株式会社製 コンプレッサーオイル
シリコーン油:信越化学工業社製 KF-96-100CS
【0256】
<溶解性試験>
【0257】
[実施例5]
表5に示す溶剤10gおよび表5に示すオイル1gを50mL容量のガラス製試料瓶に加え振とう、混合した。これを室温(23℃)に管理された実験室で静置した。30分後に溶液の状態を目視で観察し、以下の基準に沿って溶解性を評価した。
A:非常に良好。油が完全に溶解し、均一である。
B:一部良好。油の一部が溶解しているが、二相分離がみられる。
C:不良。油の溶解がみられず、二相分離がみられる。
【0258】
それぞれの結果を表5に示す。
【表5】
【0259】
表5中、オイルの種類は、以下のものを示す。
プレス工作油A:日本互作油株式会社製 PG-3246
プレス工作油B:日本互作油株式会社製 PG-3740
工作油A:日本互作油株式会社製 CF-879
工作油B:日本互作油株式会社製 C-4115
防錆油:日本互作油株式会社製 P-5960
鉱油:住鉱潤滑剤株式会社製 コンプレッサーオイル
シリコーン油:信越化学工業社製 KF-96-100CS
【0260】
[実施例6]
実施例5で使用した溶剤とオイルの混合物をすべて合わせて回収した。回収した混合物から単蒸留により、純度99GC%の1232xdを得た。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを含む溶剤組成物であって、
前記1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンは、シス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン、トランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン、またはシス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン及びトランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンの両方を含む、溶剤組成物。
【請求項2】
1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンをさらに含み、
前記溶剤組成物中における1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンの含有量は、10質量%以上40質量%以下である、請求項1に記載の溶剤組成物。
【請求項3】
前記溶剤組成物は、前記シス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン及び前記トランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンの両方を含み、
前記シス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンと前記トランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンとの組成比は、50.00~99.99:50.00~0.01である、請求項1に記載の溶剤組成物。
【請求項4】
炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、クロロカーボン類、HFC類およびHFE類からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物をさらに含む、請求項1~3のいずれか一に記載の溶剤組成物。
【請求項5】
安定剤、界面活性剤、難燃剤、金属不動態化剤および腐食防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤をさらに含む、請求項1~のいずれか一に記載の溶剤組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一に記載の溶剤組成物と、噴射ガスとを含有する、エアゾール組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一に記載の溶剤組成物または請求項に記載のエアゾール組成物と物品とを接触させる工程を含む、物品の洗浄方法。
【請求項8】
潤滑剤を請求項1~のいずれか一に記載の溶剤組成物または請求項に記載のエアゾール組成物で希釈することを含む、潤滑剤溶液の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の潤滑剤溶液を、物品の表面に塗布し、次いで物品から溶剤組成物ないしエアゾール組成物を揮発させることにより、前記物品の表面に前記潤滑剤を含む塗膜を形成する、潤滑剤付物品の製造方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一に記載の溶剤組成物または請求項に記載のエアゾール組成物を含む、洗浄剤。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一に記載の溶剤組成物または請求項に記載のエアゾール組成物を含む、水切り剤。
【請求項12】
請求項1~のいずれか一に記載の溶剤組成物または請求項に記載のエアゾール組成物を含む、発泡剤。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一に記載の溶剤組成物を含む、熱伝達媒体。
【請求項14】
請求項13に記載の熱伝達媒体を用いた有機ランキンサイクルシステム。
【請求項15】
請求項13に記載の熱伝達媒体を用いた高温ヒートポンプサイクルシステム。
【請求項16】
請求項13に記載の熱伝達媒体を用いた冷凍サイクルシステム。
【請求項17】
請求項1~のいずれか一に記載の溶剤組成物と、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン以外の不燃性ガスを少なくとも含む、消火剤組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン(以下、1232xdともいう)の製造方法、1232xdと1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペン(以下、1231xdともいう)の併産方法に関する。また、本発明は、1232xdを含む溶剤組成物、当該溶剤組成物を用いた物品の洗浄方法、潤滑剤溶液の製造方法および潤滑剤塗膜付物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロフルオロオレフィン(以下、HFO化合物ともいう)は、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,2-ペンタフルオロプロパン(225ca)などのハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC化合物)よりも地球温暖化係数(GWP)が小さく、地球環境に優しい化合物なので、各種用途での代替が進んでいる。1232xdや1231xdも、HFO化合物の一種である。
【0003】
1232xdを製造する方法や1231xdを製造する方法は、ほとんど知られておらず、非特許文献1において、1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(以下、1230xdともいう)と1当量の三フッ化アンチモンを100℃で反応させることで1232xdが得られることが開示されている程度である。
【0004】
非特許文献1に記載の反応は、同当量のフッ素化アンチモンを必要とするため、環境負荷が大きく、大量生産を行うにあたっては改良の余地がある。
【0005】
このように、1232xdを製造する方法が十分に開発されているとは言えず、より効率的に1232xdを製造する方法が、求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A.M.WHLEY AND H.W.DAVIS J.Am.Chem.Soc.,1948,p.1026-1027
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記観点からなされたものであり、効率的な1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン(1232xd)の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、各種有機物の溶解性に優れ、地球環境に優しい1232xdを含む溶剤組成物、該溶剤組成物を用いた物品の洗浄方法、該溶剤組成物を用いた潤滑剤溶液の製造方法、潤滑剤塗膜付物品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の各発明を含む。
【0009】
[発明1]
1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペンをフッ化水素でフッ素化する工程を含む、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンの製造方法。
【0010】
[発明2]
フッ化水素を、1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン1モルに対して2モル以上40モル以下用いる、発明1に記載の方法。
【0011】
[発明3]
前記フッ素化を液相で行う、発明1に記載の方法。
【0012】
[発明4]
前記フッ素化を100℃以上200℃以下で行う、発明3に記載の方法。
【0013】
[発明5]
前記フッ素化を気相で行う、発明1に記載の方法。
【0014】
[発明6]
前記フッ素化を100℃以上500℃以下で行う、発明5に記載の方法。
【0015】
[発明7]
前記フッ素化により、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンとともに1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンが生成する、発明1~6のいずれか一に記載の方法。
【0016】
[発明8]
生成した1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンを前記フッ素化に供する、発明7に記載の方法。
【0017】
[発明9]
1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペンと1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンとを含む組成物をフッ化水素でフッ素化して1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを製造する方法。
【0018】
[発明10]
1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペンをフッ化水素でフッ素化する工程を含むことを特徴とする、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンと1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンを併産する方法。
【0019】
[発明11]
フッ化水素を、1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン1モルに対して2モル以上40モル以下用いる、発明10に記載の方法。
【0020】
[発明12]
前記フッ素化を液相で行う、発明10に記載の方法。
【0021】
[発明13]
前記フッ素化を100℃以上200℃以下で行う、発明12に記載の方法。
【0022】
[発明14]
前記フッ素化を気相で行う、発明10に記載の方法。
【0023】
[発明15]
前記フッ素化を100℃以上500℃以下で行う、発明14に記載の方法。
【0024】
[発明16]
液相で、1,1,2,3,3-ペンタクロロプロパンと無機塩基の水溶液とを接触させて、1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペンを得る工程を含む、発明1~15のいずれか一に記載の方法。
【0025】
[発明17]
1,2-ジクロロエチレンとクロロホルムとをルイス酸触媒存在下で反応させて、1,1,2,3,3-ペンタクロロプロパンを得る工程を含む、発明16に記載の方法。
【0026】
[発明18]
1,2-ジクロロエチレン1モルに対してクロロホルムを1モル超用いる、発明17に記載の方法。
【0027】
[発明19]
シス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを含む溶剤組成物。
【0028】
[発明20]
シス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンとトランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンとを含む溶剤組成物。
【0029】
[発明21]
トランス-1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンを含む溶剤組成物。
【0030】
[発明22]
さらに1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンを含む発明19~21のいずれか一に記載の溶剤組成物。
【0031】
[発明23]
さらに炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、クロロカーボン類、HFC類およびHFE類からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機化合物を含む、発明19~22のいずれか一に記載の溶剤組成物。
【0032】
[発明24]
さらに安定剤、界面活性剤、難燃剤、金属不動態化剤および腐食防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を含む、発明19~23のいずれか一に記載の溶剤組成物。
【0033】
[発明25]
発明19~24のいずれか一に記載の溶剤組成物と、噴射ガスとを含有する、エアゾール組成物。
【0034】
[発明26]
発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物と物品とを接触させる工程を含む、物品の洗浄方法。
【0035】
[発明27]
潤滑剤を発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物で希釈することにより潤滑剤溶液を得る、潤滑剤溶液の製造方法。
【0036】
[発明28]
潤滑剤と発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物を含む潤滑剤溶液を、物品の表面に塗布し、次いで物品から溶剤組成物又はエアゾール組成物を揮発させることにより、前記物品の表面に前記潤滑剤を含む塗膜を形成する、潤滑剤付物品の製造方法。
【0037】
[発明29]
発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物を含む、洗浄剤。
【0038】
[発明30]
発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物を含む、水切り剤。
【0039】
[発明31]
発明19~25のいずれか一に記載の溶剤組成物又はエアゾール組成物を含む、発泡剤。
【0040】
[発明32]
発明19~24のいずれか一に記載の溶剤組成物を含む、熱伝達媒体。
【0041】
[発明33]
発明32に記載の熱伝達媒体を用いた有機ランキンサイクルシステム。
【0042】
[発明34]
発明32に記載の熱伝達媒体を用いた高温ヒートポンプサイクルシステム。
【0043】
[発明35]
発明32に記載の熱伝達媒体を用いた冷凍サイクルシステム。
【0044】
[発明36]
1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンと、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン以外の不燃性ガスを少なくとも含む、消火剤組成物。
【発明の効果】
【0045】
本発明によると、効率的な1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペン(1232xd)の製造方法を提供することができる。また、本発明によると、各種有機物の溶解性に優れ、地球環境に優しい1232xdを含む溶剤組成物、該溶剤組成物を用いた物品の洗浄方法、該溶剤組成物を用いた潤滑剤溶液の製造方法、潤滑剤塗膜付物品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(用語の説明)
本明細書において、別段の定めがない限り、1230xdとは、1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペンのシス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物を意味する。また、別段の定めがない限り、1231xdとは、1,2,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-プロペンのシス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物を意味する。また、別段の定めがない限り、1232xdとは、1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロペンのシス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物を意味する。また、別段の定めがない限り、1,2-ジクロロエチレンとは、シス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物を意味する。
【0047】
本明細書において、「1232xdと1231xdの併産」とは、本発明に係る反応により1232xdと1231xdとが少なくとも製造されることを意味し、好ましくは1232xd1モル当たり、1231xdが0.0001モル以上製造され、特に好ましくは0.001モル以上製造されることを意味する。
【0048】
以下、本発明について説明する。本発明は以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施態様に対して適宜変更、改良が加えられたものも本発明に含まれるものとして扱う。
【0049】
<1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(1230xd)のフッ素化>
本発明の一態様において、フッ素化剤としてフッ化水素を用いて、1230xdをフッ素化させる。これにより、1232xdを製造することができる。
【0050】
また、一態様において、1230xdのフッ素化により、1231xdを製造することができる。
【0051】
また、一態様において、1230xdのフッ素化により、1232xdと1231xdを併産することができる。
【0052】
(1230xd)
1230xdは公知の化合物である。その製造方法の好適な一例を後述するが、これによって他の製造方法を採用することが妨げられるものではない。
【0053】
本発明の一態様において、1232xdを製造するための1230xdのフッ素化において、1230xdとともに1231xdをフッ素化に供してもよい。
【0054】
(フッ化水素)
1230xdのフッ素化において、フッ化水素の使用量は、1230xdのフッ素化により目的物が得られれば、特に制限はされない。通常、1230xd1モルに対して化学量論量以上用いる。上限は特に制限されないが、経済的な生産の観点から40モル以下が好ましい。このフッ化水素の使用量は、反応形式がバッチ式、又は半バッチ式の場合には、1230xdの仕込量に対して表され、連続式の場合は、反応器に存在する1230xdの定常量に対して表される。
【0055】
一態様において、1232xdを優位に製造するために、1230xd1モルに対してフッ化水素を3モル以上40モル以下、好ましくは4モル以上30モル以下、より好ましくは8モル以上20モル以下用いる。
【0056】
また、一態様において、1231xdを優位に製造するために、1230xd1モルに対してフッ化水素を1モル以上20モル以下、好ましくは2モル以上15モル以下、より好ましくは4モル以上10モル以下用いる。
【0057】
また、一態様において、1231xdと1232xdとを優位に併産するために、1230xd1モルに対してフッ化水素を2モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは4モル以上20モル以下、さらに好ましくは8モル以上20モル以下用いる。
【0058】
<液相における1230xdのフッ素化>
一態様において、フッ化水素による1230xdのフッ素化は、液相中で行うことができる。
【0059】
また、液相中での1230xdのフッ素化は、バッチ式、半連続流通式、及び連続流通式のいずれの方式で行ってもよい。
【0060】
(温度)
液相中での1230xdのフッ素化において、温度は、目的物が生成できれば特に限定されない。1230xdのフッ素化は通常0℃以上200℃以下で行われ、好ましくは100℃以上200℃以下で行われる。
【0061】
一態様において、1232xdを優位に製造できることから、1230xdのフッ素化は100℃以上200℃以下で行われ、好ましくは110℃以上200℃以下、特に好ましくは130℃以上200℃以下、さらに好ましくは150℃以上200℃以下で行われる。
【0062】
また、一態様において、1231xdを優位に製造することが所望される場合、1230xdのフッ素化は0℃以上180℃以下で行われ、好ましくは20℃以上150℃以下、特に好ましくは40℃以上130℃以下、さらに好ましくは60℃以上130℃以下で行われる。
【0063】
また、一態様において、1232xdと1231xdとを併産する場合には、1230xdのフッ素化は0℃以上200℃以下で行われ、好ましくは40℃以上180℃以下、特に好ましくは80℃以上180℃以下、さらに好ましくは100℃以上150℃以下で行われる。
【0064】
(圧力)
液相中での1230xdのフッ素化において、圧力は、目的物が生成できれば特に限定されない。通常、液相中での1230xdのフッ素化は、常圧下(大気圧下)、加圧下のいずれかで行われ、好ましくは加圧下で行われる。本発明の一態様において、1230xdのフッ素化は、0.1MPaG以上10MPaG以下(ゲージ圧をいう。本明細書において同じ。)で行われ、好ましくは1MPaG以上6MPaG以下で、より好ましくは3MPaG以上6MPaG以下で行われる。0.1MPaG以上であれば、未反応のフッ化水素の還流によって好適な反応温度に上げることが容易となり、実用的である。また、10MPaG以下であれば、汎用な反応器で1230xdのフッ素化を行うことができるため、経済的である。ただし、これらのことは、1230xdのフッ素化を0.1MPaG未満、又は10MPaG超で実施されることを妨げるものではない。
【0065】
(溶媒)
液相中での1230xdのフッ素化において、溶媒の使用は必須ではなく、通常は、生産性、経済性の観点から溶媒を使用しないことが好ましい。一方で、反応の均一性、反応後の操作性の観点から溶媒の使用が好ましいこともある。溶媒を使用する場合、その種類としては、1230xd原料を溶解できれば特に限定されないが、目的物よりも高い沸点を有する有機溶媒であって、フッ化水素によってフッ素化されないものが好ましい。このような溶媒の例としては、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、パーフルオロアルカン類、パーフルオロアルケン類、ヒドロフルオロカーボン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、溶媒の使用量は、1230xd原料を溶解できれば特に限定されない。例えば、1230xd原料(原料に1231xdを含む場合には、1230xdと1231xdの総量)に対して80質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましいが、所望に応じて、これらよりも多く使用してもよい。
【0066】
(触媒)
液相中での1230xdのフッ素化において、触媒を使用してもよい。ただし、触媒の使用は必須ではない。触媒を使用する場合、その種類としては、例えば、スズ、チタン等の金属を含むルイス酸触媒(より具体的には、塩化スズ(SnCl)、塩化チタン(TiCl)等)が挙げられる。触媒の使用量としては、例えば、1230xd原料に対して0.01モル%以上20モル%以下である。
【0067】
(反応器)
液相中での1230xdのフッ素化において、用いる反応器の材質としては、原料、溶媒、反応生成物を含む反応液成分等に不活性で、耐酸性を有するものが好ましい。そのような材質としては、例えば、ステンレス鋼(SUS304やSUS316など)、ハステロイ(TM)、インコネル(TM)、モネル(TM)などが挙げられる。このような反応器は、当該技術において周知である。
【0068】
(操作手順例)
液相中での1230xdのフッ素化の操作手順の一例を以下に示すが、これに限定されない。バッチ式操作、半連続流通式操作においては、例えば、反応器に所定の原料を所定量導入し、所望により溶媒を所定量導入し、所定の条件で反応を行う。触媒を用いる場合には、触媒をあらかじめ、あるいは、原料や溶媒とともに反応器内に導入することが好ましい。また、反応器への原料の導入手順は特に限定されない。例えば、反応器に1230xdを導入し、その後、フッ化水素が反応器に導入されてもよい。このとき、所望により溶媒を導入する場合には、フッ化水素を反応器に導入する前に当該溶媒の一部または全部が反応器に導入されてもよいし、フッ化水素の導入と同時に、あるいはフッ化水素と当該溶媒が混合されて反応器に導入されてもよい。
【0069】
連続流通式操作において、例えば、反応器に、1230xdと、フッ化水素とを、別々に所定量導入し、所定の条件で反応を行う。所望により用いられる溶媒は、1230xdとフッ化水素とは別々に、あるいは1230xd溶液および/またはフッ化水素溶液として、反応器に導入されてもよい。
【0070】
(精製)
1230xdのフッ素化により得られた反応生成物から目的物を精製する方法は、特に限定されず、公知の精製方法を採用することができる。必要に応じて、反応生成物の水洗浄やアルカリ洗浄などの方法により、反応生成物中に含まれ得る塩素成分や酸成分の除去処理を行ってもよい。また、脱水処理などを施して反応生成物中の水分を除去してもよく、塩素成分や酸成分の除去処理と組み合わせてこれを行ってもよい。また、蒸留などの操作を行ってもよい。
【0071】
以下に、1230xdのフッ素化により得られた反応生成物から1232xdや1231xdを精製する方法の一例を示すが、これに限定されない。例えば、反応生成物を、冷却したコンデンサーに流通させて凝縮させ、水または/およびアルカリ性溶液で洗浄して塩素成分、酸成分などを除去し、ゼオライト、活性炭等の乾燥剤で乾燥後、通常の蒸留操作によって、高純度の1232xdや1231xdをそれぞれ得ることができる。
【0072】
本発明の一態様において、未反応原料の1230xdやフッ化水素を回収して、1230xdのフッ素化に供してもよい。また、一態様において、1230xdのフッ素化により生成した1231xdを回収して、1230xdのフッ素化に供してもよい。
【0073】
なお、1232xdや1231xdは、常温、常圧で液体として存在する。
【0074】
以上では、液相中で行う1230xdのフッ素化を説明したが、一態様において、フッ化水素による1230xdのフッ素化は、気相中で行ってもよい。
【0075】
<気相における1230xdのフッ素化>
(触媒)
気相中での1230xdのフッ素化反応は、触媒存在下、非存在下のいずれでも行うことができる。
【0076】
気相中で、触媒存在下で1230xdのフッ素化を行う場合、金属触媒を用いることができる。金属触媒は、具体的には、アルミニウム、バナジウム、クロム、チタン、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、アンチモン、亜鉛、ランタン、タンタルおよびタングステンから 選ばれる少なくとも1種の金属を含む。金属触媒としては上記金属の化合物が好ましく、上記金属の酸化物、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物がより好ましい。ハロゲン化物のハロゲンは、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素のいずれでも良い。金属触媒は、上記金属の部分ハロゲン化物または全ハロゲン化物がさらに好ましく、上記金属の部分フッ素化物または全フッ素化物が特に好ましい。
【0077】
金属触媒は、担持触媒であってもよいし、非担持触媒であってもよい。担持触媒の場合の担体は特に限定されないが、炭素や前述の金属の酸化物、オキシハロゲン化物(好ましくはオキシフッ化物)、ハロゲン化物(好ましくはフッ化物)などを採用することが好ましい。このような担体の中でも特に好ましくは、活性炭、またはアルミニウム、クロム、ジルコニウムおよびチタニウムから選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物、オキシハロゲン化物(特に好ましくはオキシフッ化物)、ハロゲン化物(特に好ましくは、フッ化物)である。担持触媒の場合、担体に担持される担持物は前述の金属の化合物であり、例えば、前述の金属のハロゲン化物(例えば、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物)、オキシハロゲン化物(例えば、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物)、硝酸化物などとして担体に担持される。このような金属の化合物を単独で担持させてもよいし、2種以上を併せて担持させてもよい。担持物の中でも特に好ましくは、アルミニウム、クロム、ジルコニウムおよびチタニウムから選ばれる少なくとも一種の金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物である。具体的な担持物として、硝酸クロム、三塩化クロム、重クロム酸カリウム、三塩化チタン、硝酸マンガン、塩化マンガン、塩化第二鉄、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸コバルト、塩化コバルト、五塩化アンチモン、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化銅(II)、塩化亜鉛(II)、硝酸ランタン、四塩化スズなどを用いることができる。尚、担体と担持物とが金属化合物の場合、担体と担持物とは互いに異なる金属化合物である。
【0078】
金属触媒は、フッ素化処理を施した後に1230xdのフッ素化反応に用いることが好ましい。金属触媒のフッ素化処理の方法は特に限定されないが、一般的には、フッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤と金属触媒とを接触させることにより行う。フッ素化処理温度は特に限定されないが、例えば200℃以上で行う。フッ素化処理温度の上限は特にないが、実用的には600℃以下で行うのが好ましい。本反応では、例えば、フッ素化処理した、Al、Cr、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/C、Ti、Zr、Zr/Ti、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlF、FeCl/C、SnCl/C、TaCl/C、SbCl/C、AlCl/C、AlF/Cを使用することができる。
【0079】
一態様において、1231xdを優位に製造することが所望される場合、1230xdのフッ素化は、触媒の非存在下で行われることが好ましい。
【0080】
(充填材)
気相中での1230xdのフッ素化反応は、充填材の存在下または非存在下で行ってもよい。充填材としては、活性炭などの炭素や耐熱プラスチック、セラミックス、ステンレス鋼などの0価金属が挙げられる。中でも活性炭が特に好ましい。例えば本反応は、炭素、耐熱プラスチックおよびセラミックスから選ばれる少なくとも充填材の存在下で行うことができる。
【0081】
(温度)
気相中での1230xdのフッ素化反応において、反応温度は、目的物が生成できれば特に限定されない。本反応は100℃以上で行うことができ、170℃以上が好ましく、220℃以上がさらに好ましい。また、本反応は500℃以下で行うことができ、480℃以下が好ましく、430℃以下がさらに好ましい。例えば本反応は100℃以上500℃以下で行うことができ、170℃以上480℃以下が好ましく、220℃以上430℃以下がさらに好ましい。
【0082】
(圧力)
気相中での1230xdのフッ素化反応において、反応圧力は特に限定されない。本反応は、減圧下、常圧下(大気圧下)、加圧下のいずれで行ってもよい。本反応は、0.0MPaG以上10MPaG以下(ゲージ圧をいう。以下同じ。)で行うことができ、0.01MPaG以上1MPaG以下が好ましく、原料及び生成物の液化を防ぐため大気圧がより好ましい。10MPaGを超えると反応器の耐圧設計にかかる費用が増大するため、経済的に好ましくない。
【0083】
(接触時間)
気相流通方式の反応の場合、反応ゾーンの容積A(mL)を原料供給速度B(mL/秒)で除した値(秒)で生産性を議論することが多く、これを接触時間と呼ぶ。反応ゾーンに触媒を備える場合には、触媒の見掛け容積(mL)を上記Aとみなす。なお、Bの値は「一秒あたりに反応器に導入される原料気体の容積」を示すが、この場合、原料気体を理想気体とみなして、原料気体のモル数、圧力および温度からBの値を算出する。反応器中では、原料や目的物以外の他の化合物の副生や、モル数の変化も起こり得るが、「接触時間」の計算に際しては考慮しないものとする。
【0084】
接触時間の決定に関しては、反応に用いる原料、反応温度、触媒の種類などに依存する。そのため、原料、反応装置の設定温度、触媒の種類ごとに原料の供給速度を適宜調整し、接触時間を最適化することが望ましい。
【0085】
1230xdのフッ素化反応において、接触時間は0.1秒以上300秒以下とすることができ、好ましくは5秒以上150秒以下、より好ましくは10秒以上100秒以下である。この接触時間は反応圧力に応じて適宜変更されてもよい。
【0086】
(反応器)
気相中での1230xdのフッ素化反応において、反応器は特に限定されないが、気相反応に適した反応器を用いることが好ましい。反応器は、耐熱性、耐酸性を有する材質で形成されたものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、ハステロイ(TM)、モネル(TM)、白金、ニッケル、炭素、フッ素樹脂またはこれらをライニングした材料で形成されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本反応において、副反応の抑制や金属触媒の活性の維持、向上の観点から、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスや、塩素、酸素、空気などの酸化性ガスを反応器に供給してもよい。このようなガスは単独で反応器に供給してもよいし、反応原料とともに反応系に供給してもよい。また、このようなガスは単独であってもよく混合ガスであってもよい。反応器への供給量は特に限定されないが、反応原料に対して0.0001モル%以上200モル%以下が好ましく、0.001モル%以上100モル%以下がより好ましく、0.1モル%以上10モル%以下が特に好ましい。
【0088】
(操作手順例)
気相中での1230xdのフッ素化反応の手順の一例を示す。反応器に反応原料を導入し、上述した条件で気相反応を行う。原料は、反応器に導入される際にはガス状であることが好ましく、必要に応じて原料を気化器でガス状にし、反応器に導入する。触媒を用いる場合にはあらかじめ反応器に備えておくことが好ましい。
【0089】
本反応により得られた反応生成物から目的物を精製する方法は特に限定されない。必要に応じて、反応生成物中に含まれ得る塩素成分や酸成分などの除去処理を行ってもよい。また、脱水処理などを施して水分を除去してもよく、塩素成分や酸成分の除去処理と組み合わせて脱水処理を行ってもよい。例えば、反応生成物を冷却したコンデンサーに流通させて凝縮させ、水または/およびアルカリ性溶液で洗浄して塩素成分、酸成分などを除去し、ゼオライト、活性炭などの乾燥剤で乾燥後、蒸留操作によって、高純度の目的物を得ることができる。
【0090】
以上に説明したように、1230xdのフッ素化反応は、液相中だけではなく気相中でも行うことができる。
【0091】
<1231xdのフッ素化>
本発明の一態様において、フッ素化剤としてフッ化水素を用いて、1231xdをフッ素化させる。1231xdのフッ素化は、前述の1230xdのフッ素化の条件に準じて行うことができる。これにより、1232xdを製造することができる。
【0092】
一態様において、1230xdのフッ素化を行って1231xdを製造し、次いで該1231xdのフッ素化を行って1232xdを製造してもよい。
【0093】
<1230xdの製造方法>
[240daの脱塩酸化工程]
前述の通り、1230xdは公知の化合物であり、種々の方法により製造することができるが、以下の1230xdの製造方法を採用することにより、1,1,2,3,3-ペンタクロロプロパン(以下、240daともいう)を出発原料として効率的に1230xdを製造することができる。
【0094】
1230xdは、液相において、無機塩基の水溶液の存在下、240daを脱塩化水素化する方法により、製造することができる(以下、この方法を「240daの脱塩酸化工程」と呼ぶことがある。)。
【0095】
(240da)
240daは公知の化合物であり、種々の方法により製造することができるが、後述の「アルキル化工程」により、効率的に製造することができる。なお、このことは別の方法により240daを製造することを妨げるものではない。
【0096】
(無機塩基の水溶液)
240daの脱塩酸化工程において、無機塩基は、240daを脱塩化水素化できるものであれば特に制限はない。具体的には、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられ、中でも、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0097】
使用する無機塩基の量は特に制限されない。通常、240daに対して1当量以上とする。上限は特に制限されないが、通常、10当量以下、好ましくは5当量以下、より好ましくは3当量以下、特に好ましくは2当量である。
【0098】
無機塩基の水溶液における無機塩基濃度は特に制限されない。通常、5質量%以上、好ましくは10質量%とする。上限は時に制限されないが、通常40質量%以下、好ましくは30質量%とする。
【0099】
一態様において、無機塩基の水溶液における無機塩基の濃度は、例えば、5質量%以上40質量%以下、5質量%以上30質量%以下、10質量%以上40質量%以下または10質量%以上30質量%以下である。
【0100】
また、一態様において、無機塩基の水溶液における無機塩基の濃度は、5質量%以上40質量%以下、好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0101】
また、後述の相間移動触媒を使用する場合において、無機塩基の水溶液と相間移動触媒とは、別々の流れで反応系に供してもよいが、あらかじめ混合しておくことが好ましい。
【0102】
(相間移動触媒)
240daの脱塩酸化工程は、相間移動触媒の存在下で行うことが好ましい。このような相間移動触媒としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド化合物等の水溶性有機物やアミン塩を用いることができる。これらの相間移動触媒は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0103】
相間移動触媒として用いられるアルコール類としては、例えば、炭素数1~4のアルコール等が挙げられる。
【0104】
また、相間移動触媒として用いられるエーテル類としては、例えば、18-クラウン-6-エーテル等が挙げられる。
【0105】
また、相間移動触媒として用いられるケトン類としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン等が挙げられる。
【0106】
また、相間移動触媒として用いられるアミド化合物としては、例えば、DMF、DMAc等が挙げられる。
【0107】
また、相間移動触媒として用いられるアミン塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0108】
中でも、炭素数1~4のアルコール、18-クラウン-6-エーテル、アセトン、エチルメチルケトンが相間移動触媒として好ましい。
【0109】
相間移動触媒の使用量は、相間移動触媒としての効果が得られれば特に制限されない。通常、240daに対する相間移動触媒の使用量は、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上である。上限は特に制限されないが、通常、40質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0110】
一態様において、相間移動触媒の使用量は、例えば、240daに対して、0.01質量%以上40質量%以下、0.01質量%以上20質量%以下、0.01質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上0.1質量%以下、0.1質量%以上40質量%以下、0.1質量%以上20質量%以下、または0.1質量%~10質量%以下であってもよい。
【0111】
また、一態様において、相間移動触媒の使用量は、240daに対して0.01質量%以上40質量%以下、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。
【0112】
(温度)
240daの脱塩酸化工程において、温度は、液相条件で目的物が生成できれば特に限定されない。通常、0℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上で行う。上限は特に限定されないが、通常150℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下で行う。
【0113】
一態様において、240daの脱塩酸化工程は、例えば、0℃以上150℃以下、0℃以上100℃以下、0℃以上60℃以下、5℃以上150℃以下、5℃以上100℃以下、5℃以上60℃以下10℃以上150℃以下、10℃以上100℃以下、10℃以上60℃以下、60℃以上150℃以下、または60℃以上100℃以下で行う。
【0114】
また、一態様において、240daの脱塩酸化工程は、0℃以上150℃以下、好ましくは5℃以上100℃以下、より好ましくは10℃以上60℃以下で行う。
【0115】
(圧力)
240daの脱塩酸化工程において、圧力は、液相条件で目的物が生成できれば特に限定されない。通常、240daの脱塩酸化工程における圧力は、大気圧以上10MPaG以下が好ましく、大気圧以上1MPaG以下がより好ましい。反応器のコストを抑えるため、240daの脱塩酸化工程における圧力は大気圧が最も好ましい。
【0116】
(溶媒)
脱塩酸化工程において、溶媒の使用は必須ではない。なお、このことは、脱塩酸化工程を溶媒存在下で行うことを妨げるものではないが、溶媒を用いる場合には、反応に悪影響を与えないものを使用することが好ましい。
【0117】
(反応方式)
脱塩酸化工程は、バッチ式、半連続流通式、連続流通式のいずれの方式で行ってもよい。
【0118】
(反応器)
脱塩酸化工程において、反応器の材質は特に制限はない。耐塩基性を有する材質のものが好ましい。具体的には、ガラス製やステンレススチール製の反応器が好ましい。また、ガラスや樹脂でライニングされた反応器も好ましい。さらに、反応器は攪拌設備、還流塔などの各種設備を備えるものが好ましい。
【0119】
脱塩化水素化工程と後述のアルキル化工程を同一反応器で行う場合には、液体を流入可能な導入管を備えるものが好ましい。
【0120】
(操作手順例)
脱塩化水素化工程の操作手順の一例を以下に示すが、これに限定されない。冷媒(例えば、水)を流通させた還流塔を備えた反応器に相間移動触媒と240daを仕込む。これに液体流入管より無機塩基の水溶液を流入させて、所定の条件で反応を行う。サンプリングした反応物のガスクロマトグラフ分析等によって、240daがほぼ消費されたところで反応を終了する。
【0121】
(精製)
得られた1230xdは、一般的な精製操作により精製することができる。例えば、蒸留、好ましくは減圧蒸留などの操作によって、1230xdから原料などを容易に分離することができる。
【0122】
[アルキル化工程]
240daは、ルイス酸触媒存在下、1,2-ジクロロエチレンとクロロホルムとを反応させる方法により、効率的に製造することができる(以下、この方法を「アルキル化工程」と呼ぶことがある。)。
【0123】
(原料)
アルキル化工程において、1,2-ジクロロエチレンとクロロホルムの使用量は、240daが生成できれば特に限定されない。通常、1,2-ジクロロエチレン1モルに対してクロロホルム1モル以上、あるいは、クロロホルム1モルに対して、1,2-ジクロロエチレンを1モル以上用いる。
【0124】
一態様において、1,2-ジクロロエチレンに対して化学量論量超のクロロホルムを使用する。これにより、ヘプタクロロペンタンなどの副生を抑制することができる。具体的には、1,2-ジクロロエチレン1モルに対し、クロロホルムを1モル超、好ましくは2モル以上、より好ましくは3モル以上用いる。上限は特に制限はないが、経済的な生産の観点から、1,2-ジクロロエチレン1モルに対し、クロロホルムは20モル以下、好ましくは10モル以下用いる。
【0125】
アルキル化工程において、ヘプタクロロペンタンは240daのアルキル化物の一種であり、生成する240daが反応系に占める存在割合が上がるに連れて副生する。そのため、反応系において、原料のクロロホルムが1,2-ジクロロエチレンよりも多く存在すれば、ヘプタクロロペンタンの副生を抑制することができる。
【0126】
(ルイス酸触媒)
アルキル化工程において、ルイス酸触媒としては、金属ハロゲン化物を用いることができる。ここで、金属ハロゲン化物とは、金属原子とハロゲン原子との結合を有するものを指す。金属原子-ハロゲン原子の結合は、赤外分光法(IR法)、X線回折法(XRD法)、X線光電子分光法(XPS法)等によって確認することができる。このような金属ハロゲン化物としては、具体的には、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、アンチモン、タンタルおよびタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のハロゲン化物が好ましい。また、金属ハロゲン化物は、上記金属のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物であってもよく、これらの中でも上記金属の塩化物が好ましい。いくつかの態様において、ルイス酸触媒としては、アルミニウム、鉄、スズおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の塩化物が特に好ましい。中でも、塩化アルミニウムおよび塩化鉄が一層好ましく、塩化鉄については塩化第二鉄が好ましい。
【0127】
ルイス酸触媒としては、無水のものの使用が、触媒活性が高いことから好ましい。市販のルイス酸触媒の無水物をそのまま使用しても良いし、水和物を塩化チオニルなどの脱水剤で処理して無水物を得ることもできる。
【0128】
ルイス酸触媒として上記金属の塩化物を使用する場合、上記金属の硝酸塩、炭酸塩等や0価金属粉末を、予め塩化水素処理することによって、上記金属の塩化物に誘導することができる。したがって、上記金属の硝酸塩、炭酸塩等や0価金属粉末を塩化水素処理したものも、ルイス酸触媒として用いることが可能である。
【0129】
また、アルキル化工程におけるクロロホルム原料は、0価金属を活性化及び/または塩素化する効果があるので、ルイス酸触媒は、0価金属粉末であってもよい。
【0130】
アルキル化工程において、ルイス酸触媒の使用量は、触媒としての有効量であれば特に限定されない。触媒の種類や反応温度等の操業条件によってその最適は変化するが、通常、ルイス酸触媒の使用量は、1,2-ジクロロエチレン原料に対して0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上用いる。上限は特に制限されないが、通常、40質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
【0131】
一態様において、ルイス酸触媒の使用量は、1,2-ジクロロエチレンに対して、0.01質量%以上40質量%以下、0.01質量%以上20質量%以下、0.1質量%以上40質量%以下、または0.1質量%以上20質量%以下であってもよい。
【0132】
また、一態様において、ルイス酸触媒の使用量は、1,2-ジクロロエチレンに対して0.01質量%以上40質量%以下、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。この範囲であれば、良好な反応速度で反応が進行し、予期せぬ副反応も起こりにくい。
【0133】
(温度)
アルキル化工程において、温度は、液相条件で目的物が生成できれば特に限定されない。通常、0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上で行う。上限は特に限定されないが、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下で行う。
【0134】
一態様において、アルキル化工程は、0℃以上100℃以下、0℃以上80℃以下、0℃以上70℃以下、20℃以上100℃以下、20℃以上80℃以下、20℃以上70℃以下、40度以上100℃以下、40℃以上80℃以下、または40℃以上70℃以下の温度で行う。
【0135】
また、一くつかの態様において、アルキル化工程は、0℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは20℃以上70℃以下で行う。
【0136】
(圧力)
アルキル化工程において、圧力は、液相条件で目的物が生成できれば特に限定されない。通常、アルキル化工程は、0MPaG以上1MPaG以下で行い、0MPaG以上0.5MPaG以下が好ましく、大気圧下が特に好ましい。
【0137】
(溶媒)
アルキル化工程において、溶媒の使用は必須ではない。なお、このことは、アルキル化工程を溶媒存在下で行うことを妨げるものではないが、溶媒を用いる場合には、反応に悪影響を与えないものの採用が好ましい。
【0138】
(反応方式)
アルキル化工程は、バッチ式、半連続流通式、連続流通式のいずれの方式で行ってもよい。また、アルキル化工程においては、ルイス酸触媒を使用するため、水分は可能な限り少ない条件とすることが好ましい。一態様において、水の含有量は、反応資材の全質量に対して1質量%以下に保つことが好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0139】
(反応器)
アルキル化工程において、反応器の材質は特に制限はない。微量ではあるが、塩素ガスや塩化水素ガスが副生することがあるため、ガラス製やステンレススチール製の反応器が好ましい。また、ガラスや樹脂でライニングされた反応器も好ましい。また、反応器は、液体導入管、攪拌設備、還流塔などの各種設備を備えるものが好ましい。
【0140】
(操作手順例)
アルキル化工程の操作手順の一例を以下に示すが、これに限定されない。冷媒(例えば、水)を流通させた還流塔を備えた反応器にルイス酸触媒とクロロホルムを仕込む。必要に応じて不活性ガスでシールする。液体流入管より1,2-ジクロロエチレンを流入させて、所定の条件で反応を行う。サンプリングした反応物のガスクロマトグラフ分析等によって、1,2-ジクロロエチレンがほぼ消費されたところで反応を終了する。
【0141】
反応終了後、反応生成物に、酸性水溶液を加える。このような酸性水溶液としては、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、ギ酸、酢酸、モノフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロジフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、硫酸および硝酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸の水溶液を用いる。
【0142】
(精製)
得られた240daは、一般的な精製操作により精製することができる。例えば、蒸留、好ましくは減圧蒸留などの操作によって、240daから原料や副生成物を容易に分離することができる。分離した原料はアルキル化工程の原料として再利用してもよい。
【0143】
また、得られた240daを、ルイス酸触媒の分離や蒸留精製といった後処理を行うことなく、前述の脱塩酸化工程の原料として用いてもよい。なお、このことは、後処理を行うことを妨げるものではない。
【0144】
<溶剤組成物>
[1232xd]
本発明の溶剤組成物は、1232xdを少なくとも含む。1232xdの含有量は特に制限されないが、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは、一態様においては20質量%以上含まれる。また、別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは30質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは40質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは50質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは60質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは70質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは80質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは90質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは95質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは97質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは98質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物全量に対して、1232xdは99質量%以上含まれる。また別の態様においては、本発明の溶剤組成物は1232xdのみからなる。
【0145】
本発明の溶剤組成物において、1232xdの含有量は、本発明の溶剤組成物全量に対して、20質量%以上99質量%以下、20質量%以上98質量%以下、20質量%以上97質量%以下、20質量%以上95質量%以下、20質量%以上90質量%以下、20質量%以上80質量%以下、20質量%以上70質量%以下、20質量%以上60質量%以下、20質量%以上50質量%以下、20質量%以上40質量%以下、20質量%以上30質量%以下、30質量%以上99質量%以下、30質量%以上98質量%以下、30質量%以上97質量%以下、30質量%以上95質量%以下、30質量%以上90質量%以下、30質量%以上80質量%以下、30質量%以上70質量%以下、30質量%以上60質量%以下、30質量%以上50質量%以下、30質量%以上40質量%以下、40質量%以上99質量%以下、40質量%以上98質量%以下、40質量%以上97質量%以下、40質量%以上95質量%以下、40質量%以上90質量%以下、40質量%以上80質量%以下、40質量%以上70質量%以下、40質量%以上60質量%以下、40質量%以上50質量%以下、50質量%以上99質量%以下、50質量%以上98質量%以下、50質量%以上97質量%以下、50質量%以上95質量%以下、50質量%以上90質量%以下、50質量%以上80質量%以下、50質量%以上70質量%以下、50質量%以上60質量%以下、60質量%以上99質量%以下、60質量%以上98質量%以下、60質量%以上97質量%以下、60質量%以上95質量%以下、60質量%以上90質量%以下、60質量%以上80質量%以下、60質量%以上70質量%以下、70質量%以上99質量%以下、70質量%以上98質量%以下、70質量%以上97質量%以下、70質量%以上95質量%以下、70質量%以上90質量%以下、70質量%以上80質量%以下、80質量%以上99質量%以下、80質量%以上98質量%以下、80質量%以上97質量%以下、80質量%以上95質量%以下、80質量%以上90質量%以下、90質量%以上99質量%以下、90質量%以上98質量%以下、90質量%以上97質量%以下、90質量%以上95質量%以下、95質量%以上99質量%以下、95質量%以上98質量%以下、95質量%以上97質量%以下、97質量%以上99質量%以下、97質量%以上98質量%以下、98質量%以上99質量%以下、または100質量%であってもよい。
【0146】
1232xdは、炭素原子-炭素原子間に二重結合を有するオレフィンであるため、大気中での寿命が短く、地球温暖化係数(GWP)が小さい。また、1232xdは、引火点を有さないため、使用環境における引火の危険性および火災等のリスクが低い。
【0147】
本発明の一態様において、1232xdはシス異性体(1232xd(Z))のみからなる。
【0148】
また、本発明の別の一態様において、1232xdはシス異性体(1232xd(Z))とトランス異性体(1232xd(E))の混合物からなる。1232xd(Z)と1232xd(E)の混合物において、その組成は特に制限されないが、以下のモル比であってもよい。
1232xd(Z):1232xd(E)=0.01~99.99:99.99~0.01
1232xd(Z):1232xd(E)=50.00~99.99:50.000.01
1232xd(Z):1232xd(E)=60.00~99.99:40.00~0.01
1232xd(Z):1232xd(E)=70.00~99.99:30.00~0.01
1232xd(Z):1232xd(E)=80.00~99.99:20.00~0.01
1232xd(Z):1232xd(E)=90.00~99.99:10.00~0.01
【0149】
また、本発明のさらに別の一態様において、1232xdはトランス異性体(1232xd(E))のみからなる。
【0150】
[1231xd]
本発明の溶剤組成物は、1232xdとともに1231xdを含んでもよい。一態様において、1232xdと1231xdを含む溶剤組成物は、洗浄性能に優れる。本発明の溶剤組成物が1231xdを含む場合、その含有量の下限は、本発明の溶剤組成物全量に対して、一態様においては0.001質量%以上、別の一態様においては0.01質量%以上、別の一態様においては0.1質量%以上、また別の一態様においては1質量%以上、また別の一態様においては3質量%以上、また別の一態様においては5質量%以上、また別の一態様においては10質量%以上である。また、1231xdの含有量の上限は、本発明の溶剤組成物全量に対して、一態様においては40質量%以下、別の一態様においては25質量%以下、また別の一態様においては15質量%以下である。
【0151】
本発明の溶剤組成物において、1231xdの含有量は、本発明の溶剤組成物全量に対して、0.001質量%以上40質量%以下、0.001質量%以上25質量%以下、0.001質量%以上15質量%以下、0.001質量%以上10質量%以下、0.001質量%以上5質量%以下、0.001質量%以上3質量%以下、0.001質量%以上1質量%以下、0.001質量%以上0.1質量%以下、0.001質量%以上0.01質量%以下、0.01質量%以上40質量%以下、0.01質量%以上25質量%以下、0.01質量%以上15質量%以下、0.01質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上5質量%以下、0.01質量%以上3質量%以下、0.01質量%以上1質量%以下、0.01質量%以上0.1質量%以下、0.1質量%以上40質量%以下、0.1質量%以上25質量%以下、0.1質量%以上15質量%以下、0.1質量%以上10質量%以下、0.1質量%以上5質量%以下、0.1質量%以上3質量%以下、0.1質量%以上1質量%以下、1質量%以上40質量%以下、1質量%以上25質量%以下、1質量%以上15質量%以下、1質量%以上10質量%以下、1質量%以上5質量%以下、1質量%以上3質量%以下、3質量%以上40質量%以下、3質量%以上25質量%以下、3質量%以上15質量%以下、3質量%以上10質量%以下、3質量%以上5質量%以下、5質量%以上40質量%以下、5質量%以上25質量%以下、5質量%以上15質量%以下、5質量%以上10質量%以下、10質量%以上40質量%以下、10質量%以上25質量%以下、10質量%以上15質量%以下、15質量%以上40質量%以下、15質量%以上25質量%以下、または25質量%以上40質量%以下であってもよい。
【0152】
1231xdは、炭素原子-炭素原子間に二重結合を有するオレフィンであるため、大気中での寿命が短く、地球温暖化係数(GWP)が小さい。また、1231xdは、引火点を有さないため、使用環境における引火の危険性および火災等のリスクが低い。
【0153】
[有機化合物(A)]
本発明の溶剤組成物は、1232xdとともに、あるいは、1232xdと1231xdとともに、その他の有機化合物(A)を含んでもよい。
【0154】
本発明の溶剤組成物が有機化合物(A)を含む場合、その含有量の下限は、本発明の溶剤組成物全量に対して、一態様においては0.01質量%以上、別の一態様においては0.1質量%以上、また別の一態様においては1質量%以上、また別の一態様においては3質量%以上、また別の一態様においては5質量%以上、また別の一態様においては10質量%以上である。また、有機化合物(A)の含有量の上限は、本発明の溶剤組成物全量に対して、一態様においては80質量%以下、別の一態様においては70質量%以下、また別の一態様においては60質量%以下、別の一態様においては50質量%以下、また別の一態様においては40質量%以下、別の一態様においては30質量%以下、また別の一態様においては20質量%以下である。
【0155】
本発明の溶剤組成物において、有機化合物(A)の含有量は、本発明の溶剤組成物全量に対して、0.01質量%以上80質量%以下、0.01質量%以上70質量%以下、0.01質量%以上60質量%以下、0.01質量%以上50質量%以下、0.01質量%以上40質量%以下、0.01質量%以上30質量%以下、0.01質量%以上20質量%以下、0.01質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上5質量%以下、0.01質量%以上3質量%以下、0.01質量%以上1質量%以下、0.01質量%以上0.1質量%以下、0.1質量%以上80質量%以下、0.1質量%以上70質量%以下、0.1質量%以上60質量%以下、0.1質量%以上50質量%以下、0.1質量%以上40質量%以下、0.1質量%以上30質量%以下、0.1質量%以上20質量%以下、0.1質量%以上10質量%以下、0.1質量%以上5質量%以下、0.1質量%以上3質量%以下、0.1質量%以上1質量%以下、1質量%以上80質量%以下、1質量%以上70質量%以下、1質量%以上60質量%以下、1質量%以上50質量%以下、1質量%以上40質量%以下、1質量%以上30質量%以下、1質量%以上20質量%以下、1質量%以上10質量%以下、1質量%以上5質量%以下、1質量%以上3質量%以下、3質量%以上80質量%以下、3質量%以上70質量%以下、3質量%以上60質量%以下、3質量%以上50質量%以下、3質量%以上40質量%以下、3質量%以上30質量%以下、3質量%以上20質量%以下、3質量%以上10質量%以下、3質量%以上5質量%以下、5質量%以上80質量%以下、5質量%以上70質量%以下、5質量%以上60質量%以下、5質量%以上50質量%以下、5質量%以上40質量%以下、5質量%以上30質量%以下、5質量%以上20質量%以下、5質量%以上10質量%以下、10質量%以上80質量%以下、10質量%以上70質量%以下、10質量%以上60質量%以下、10質量%以上50質量%以下10質量%以上40質量%以下、10質量%以上30質量%以下、10質量%以上20質量%以下、20質量%以上80質量%以下、20質量%以上70質量%以下、20質量%以上60質量%以下、20質量%以上50質量%以下、20質量%以上40質量%以下、20質量%以上30質量%以下、30質量%以上80質量%以下、30質量%以上70質量%以下、30質量%以上60質量%以下、30質量%以上50質量%以下、30質量%以上40質量%以下、40質量%以上80質量%以下、40質量%以上70質量%以下、40質量%以上60質量%以下、40質量%以上50質量%以下、50質量%以上80質量%以下、50質量%以上70質量%以下、50質量%以上60質量%以下、60質量%以上80質量%以下、60質量%以上70質量%以下、又は70質量%以上80質量%以下であってもよい。
【0156】
有機化合物(A)としては、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、クロロカーボン類、HFC類、HFE類等が挙げられ、これらは1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0157】
有機化合物(A)として用いられる炭化水素類としては、炭素数が5以上の炭化水素類が好ましい。炭化水素類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和炭化水素類であってもよく、不飽和炭化水素類であってもよい。炭化水素類としては、具体的には、n-ペンタン、2-メチルブタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,4-ジメチルペンタン、n-オクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,3-ジメチルヘキサン、2-メチル-3-エチルペンタン、3-メチル-3-エチルペンタン、2,3,3-トリメチルペンタン、2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2-メチルヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-ノナン、2,2,5-トリメチルヘキサン、n-デカン、n-ドデカン、2-メチル-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキセン、α-ピネン、ジペンテン、デカリン、テトラリン、アミルナフタレン等が挙げられる。中でも、n-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンが好ましい。
【0158】
有機化合物(A)として用いられるアルコール類としては、炭素数1~16のアルコール類が好ましい。アルコール類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和アルコール類であってもよく、不飽和アルコール類であってもよい。アルコール類としては、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-ノナノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール、α-テルピネオール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、ノニルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0159】
有機化合物(A)として用いられるケトン類としては、炭素数3~9のケトン類が好ましい。ケトン類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和ケトン類であってもよく、不飽和ケトン類であってもよい。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、メシチルオキシド、ホロン、2-オクタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、2,4-ペンタンジオン、2,5-ヘキサンジオン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等が挙げられる。中でも、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。
【0160】
有機化合物(A)として用いられるエーテル類としては、炭素数2~8のエーテル類が好ましい。エーテル類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エーテル類であってもよく、不飽和エーテル類であってもよい。エーテル類としては、具体的には、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、メチルアニソール、フラン、メチルフラン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。中でも、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランが好ましい。
【0161】
有機化合物(A)として用いられるエステル類としては、炭素数2~19のエステル類が好ましい。エステル類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エステル類であってもよく、不飽和エステル類であってもよい。エステル類としては、具体的には、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸メトキシブチル、酢酸sec-ヘキシル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、γ-ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等が挙げられる。中でも、酢酸メチル、酢酸エチルが好ましい。
【0162】
有機化合物(A)として用いられるクロロカーボン類としては、炭素数1~3のクロロカーボン類が好ましい。クロロカーボン類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和クロロカーボン類であってもよく、不飽和クロロカーボン類であってもよい。クロロカーボン類としては、具体的には、塩化メチレン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,1,2-テトラクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2-ジクロロプロパン等が挙げられる。中でも、塩化メチレン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレンがより好ましい。
【0163】
有機化合物(A)として用いられるHFC類としては、炭素数4~8の鎖状または環状のHFC類が好ましく、1分子中のフッ素原子数が水素原子数以上であるHFC類がより好ましい。HFC類としては、具体的には、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン等が挙げられる。中でも、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサンが好ましい。
【0164】
有機化合物(A)として用いられるHFE類としては、COCH、COCH、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ-1-(2,2,2-トリフルオロ)エタン(HFE-347pc-f)等が好ましい。
【0165】
一態様において、有機化合物(A)は、引火点を持たない化合物であることがさらに好ましい。引火点を持たない化合物としては、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン等のHFC類や、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ-1-(2,2,2-トリフルオロ)エタン等のHFE類等が挙げられる。有機化合物(A)として引火点を有する化合物を用いる場合には、本発明の溶剤組成物として引火点を持たない範囲で用いることが好ましい。
【0166】
[添加剤(B)]
本発明の溶剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤(B)を含んでもよい。一態様において、本発明の溶剤組成物全量に対して、添加剤(B)は、0.0001質量%以上含まれ、別の一態様においては0.001質量%以上含まれ、また別の一態様においては0.01質量%以上含まれ、また別の一態様においては0.1質量%以上含まれ、また別の一態様においては1質量%以上含まれ、また別の一態様においては3質量%以上含まれる。また、一態様において、本発明の溶剤組成物全量に対して、添加剤(B)は、10質量%以下含まれ、別の一態様においては5質量%以下含まれ、また別の一態様においては3質量%以下含まれ、別の一態様においては1質量%以下含まれ、また別の一態様においては0.1質量%以下含まれ、別の一態様においては0.01質量%以下含まれ、また別の一態様においては0.001質量%以下含まれる。
【0167】
本発明の溶剤組成物において、添加剤(B)の含有量は、本発明の溶剤組成物全量に対して、0.0001質量%以上10質量%以下、0.0001質量%以上5質量%以下、0.0001質量%以上3質量%以下、0.0001質量%以上1質量%以下、0.0001質量%以上0.1質量%以下、0.0001質量%以上0.01質量%以下、0.0001質量%以上0.001質量%以下、0.001質量%以上10質量%以下、0.001質量%以上5質量%以下、0.001質量%以上3質量%以下、0.001質量%以上1質量%以下、0.001質量%以上0.1質量%以下、0.001質量%以上0.01質量%以下、0.01質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上5質量%以下、0.01質量%以上3質量%以下、0.01質量%以上1質量%以下、0.01質量%以上0.1質量%以下、0.1質量%以上10質量%以下、0.1質量%以上5質量%以下、0.1質量%以上3質量%以下、0.1質量%以上1質量%以下、1質量%以上10質量%以下、1質量%以上5質量%以下、1質量%以上3質量%以下、3質量%以上10質量%以下、3質量%以上5質量%以下、または5質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0168】
添加剤(B)としては、安定剤、界面活性剤、難燃剤、金属不動態化剤、腐食防止剤等が挙げられる。これらの添加剤(B)は、本発明の溶剤組成物の各種用途に応じて適宜選択されることが好ましい。
【0169】
(安定剤)
一態様において、本発明の溶剤組成物が安定剤を含むことにより、加熱条件等の過酷な条件下であっても組成物の分解を抑制することができる。このような安定剤としては、ニトロ化合物、エポキシ化合物、フェノール類、イミダゾール類、アミン類、リン化合物類、硫黄化合物類、含窒素アルコール化合物、ジエン系化合物類、芳香族不飽和炭化水素類、イソプレン類、プロパジエン類、テルペン類等が挙げられ、これらは1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0170】
安定剤として用いられるニトロ化合物としては、具体的には、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン等の脂肪族系ニトロ化合物や、ニトロベンゼン、o-、m-又はp-ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、o-、m-又はp-ニトロトルエン、o-、m-又はp-エチルニトロベンゼン、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-又は3,5-ジメチルニトロベンゼン、o-、m-又はp-ニトロアセトフェノン、o-、m-又はp-ニトロフェノール、o-、m-又はp-ニトロアニソール等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0171】
安定剤として用いられるエポキシ化合物としては、具体的には、エチレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリシジルメタアクリレート、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等のモノエポキシ系化合物、ジエポキシブタン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のポリエポキシ系化合物等が挙げられる。
【0172】
安定剤として用いられるフェノール類としては、水酸基以外にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。フェノール類としては、具体的には、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、チモール、p-t-ブチルフェノール、o-メトキシフェノール、m-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、ブチルヒドロキシアニソール、フェノール、キシレノール等の1価のフェノールや、t-ブチルカテコール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-アミルハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)等の2価のフェノール等が挙げられる。
【0173】
安定剤として用いられるイミダゾール類としては、炭素数1~18の炭化水素基をN位の置換基として有するイミダゾール類が好ましい。この炭化水素基は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。イミダゾール類としては、具体的には、1-メチルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-(β-オキシエチル)イミダゾール、1-メチル-2-プロピルイミダゾール、1-メチル-2-イソブチルイミダゾール、1-n-ブチル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,4-ジメチルイミダゾール、1,5-ジメチルイミダゾール、1,2,5-トリメチルイミダゾール、1,4,5-トリメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0174】
安定剤として用いられるアミン類としては、具体的には、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジアリルアミン、トリエチルアミン、N-メチルアニリン、ピリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、トリアリルアミン、アリルアミン、α-メチルベンジルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、2-エチルヘキシルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ジフェニルアミン、4-アミノジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、フェノチアジン等が挙げられる。
【0175】
安定剤として用いられるリン化合物類としては、具体的には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0176】
安定剤として用いられる硫黄化合物類としては、具体的には、3,3’-チオジプロピオン酸ジドデシル、3,3’-チオジプロピオン酸ジテトラデシル、3-(ドデシルチオ)プロピオン酸、3,3’-チオジプロピオン酸ジオクタデシル等が挙げられる。
【0177】
安定剤として用いられる含窒素アルコール化合物としては、具体的には、N-ステアリル-N,N’,N’-トリス(ポリオキシエチレン)-1,3-ジアミノプロパン、エチレンジアミン-N,N’-ジエタノール、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-テトラ-2-プロパノール、トリエチレンテトラミン-N-2-プロパノール、キシレンジアミン-N-2-プロパノール、アルキロールアマイド、オレイン酸トリエタノールアミンエステル、ラウリルアミン-N,N-ジエタノール、ステアリルアミン-N,N-ジエタノール、オレイルアミン-N,N-ジエタノール、ビス(2-ヒドロキシエチル)大豆アミン、オレイン酸ジアルコールアミド、ステアリルアミノプロピルアミノエタノール、1,3-プロピレンジアミン-N-C12-18-アルキル-N’-エタノール等が挙げられる。
【0178】
安定剤として用いられる芳香族不飽和炭化水素類としては、具体的には、α-メチルスチレンやp-イソプロペニルトルエン等が挙げられる。
【0179】
(界面活性剤)
一態様において、本発明の溶剤組成物は界面活性剤を含むことにより、洗浄力、界面作用等をより一層改善することができる。このような界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤が挙げられ、これらは1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0180】
好ましいカチオン性界面活性剤の例としては、ドデシルジメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。好ましいノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン酸と脂肪酸のエステル等の界面活性剤が挙げられる。好ましいアニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩などのアルキル硫酸エステル塩、脂肪酸塩(せっけん)などのカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩等のスルホン酸塩が挙げられる。好ましい両性界面活性剤の例としては、アルキルベタイン等のベタイン化合物が挙げられる。
【0181】
(難燃剤)
一態様において、本発明の溶剤組成物は難燃剤を含むことにより、燃焼性を改善することができる。このような難燃剤としては、ホスフェート類、ハロゲン化芳香族化合物、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン等が挙げられる。
【0182】
[その他の成分]
本発明の溶剤組成物は本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分は、上述の成分、すなわち、1232xd、1231xd、有機化合物(A)、添加剤(B)以外であれば、特に限定されない。例えば、上述の成分由来の不純物であってもよい。そのような不純物としては、例えば、上述の成分の製造過程で使用される原料資材などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
<洗浄剤>
本発明の溶剤組成物は、適度な流動性や溶解性を有するので、物品から異物を洗い流したり溶解したりして除去するのに好適である。
【0184】
この物品の材質としては、金属、樹脂、ゴム、繊維、ガラス、セラミックスおよびこれらの複合材料が挙げられる。複合材料としては、金属と樹脂の積層体等が挙げられる。物品の具体例としては、精密機械部品、電子材料(プリント基板、液晶表示器、磁気記録部品、半導体材料等)、樹脂加工部品、光学レンズ、繊維製品、医療器具等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
異物としては、グリース、加工油、シリコーン油、油脂、フラックス、ワックス、インキ、鉱物油、シリコーン油を含む離型剤などの油脂類、塵埃、液滴、水滴等の汚れが挙げられるが、この限りではない。
【0186】
自動車、二輪自動車、自転車、建機、農機、航空機、鉄道車両、船舶などの各種車両、乗物、輸送機関の洗浄(特にこれらのブレーキクリーナー)においては、汚れを湿潤させて洗い流す工程を要するところ、本発明の組成物は、適度な沸点を有しており、汚れを湿潤させて洗い流すことができるため、このような洗浄に好適である。
【0187】
物品の洗浄方法は特に限定されないが、本発明の溶剤組成物または後述のエアゾール組成物と、物品とを接触させる。例えば、洗浄対象の物品を本発明の溶剤組成物に浸漬して汚れを洗い流す、ウェスでふき取る、スプレー洗浄を行う、などの方法が挙げられ、これらを組み合わせて使用しても良い。超音波洗浄機内に当該溶剤組成物を入れ、その液中に洗浄対象の物品を浸漬させ、超音波洗浄処理することは、特に好ましい態様の1つである。また、スプレー洗浄、例えば、本発明の溶剤組成物を噴射ガスと混合してエアゾール化させて各種洗浄対象の物品に吹き付ける方法も好ましい態様の1つである。
【0188】
<エアゾール組成物>
本発明の溶剤組成物は、噴射ガスと混合してエアゾール組成物としてもよい。
【0189】
この噴射ガスとしては、液化ガスや圧縮ガスを使用することができる。例えば、LPG(液化石油ガス)、DME(ジメチルエーテル)、炭酸ガス、フロン系ガス、窒素ガス、圧縮空気などのガスやLPGとDMEとの混合物、LPGと炭酸ガスとの混合物などといった上記のガスを二種以上組み合わせたものが挙げられるが、この限りではない。
【0190】
本発明のエアゾール組成物は、本発明の溶剤組成物と上記の噴射ガスを混合して製造することができ、また、耐圧缶に充填して提供することができる。
【0191】
<ドライクリーニング用途>
本発明の溶剤組成物は、繊維製品の洗浄剤、すなわち、ドライクリーニング剤として適している。繊維製品としては、シャツ、セーター、ジャケット、スカート、ズボン、ジャンパー、手袋、マフラー、ストール等の衣類が挙げられる。本発明の溶剤組成物は、特にアクリル繊維を含む繊維製品のドライクリーニングに適している。
【0192】
本発明の溶剤組成物を用いて繊維製品をドライクリーニングする方法は、当該組成物を繊維製品表面に接触させることにより繊維製品表面に付着する汚れを除去する。このとき、本発明の組成物には、前述の界面活性剤を添加剤として用いることが好ましい。
【0193】
<希釈溶液>
本発明の溶剤組成物またはエアゾール組成物は、各種化学物質を希釈するための希釈溶剤として好適である。希釈溶液の一態様として、本発明の溶剤組成物は、潤滑剤と混合して、潤滑剤溶液を形成することができる。
【0194】
<希釈溶液の製造方法>
本発明の溶剤組成物またはエアゾール組成物が希釈できる各種化学物質としては、特に限定されないが、例えば、潤滑剤や防錆剤等が挙げられる。
【0195】
希釈溶液の製造方法の一態様として、潤滑剤溶液の製造方法を以下に説明する。潤滑剤を本発明の溶剤組成物で希釈することにより潤滑剤溶液を製造することができる。潤滑剤溶液を、物品の表面に塗布し、次いで物品から本発明の溶剤組成物を揮発させることにより、物品の表面に潤滑剤を含む塗膜を形成した塗膜付物品を製造することができる。本発明の潤滑剤溶液は、樹脂材料を含む物品への影響なく塗布することができる。
【0196】
潤滑剤溶液の塗布方法としては、たとえば、刷毛による塗布、スプレーによる塗布、物品を潤滑剤溶液に浸漬することによる塗布、潤滑剤溶液を吸い上げることによりチューブや注射針の内壁に潤滑剤溶液を接触させる塗布方法等が挙げられる。
【0197】
潤滑剤は、2つの部材が互いの面を接触させた状態で運動するときに、接触面における摩擦を軽減し、熱の発生や摩耗損傷を防ぐために用いるものである。潤滑剤は、液体(オイル)、半固体(グリース)、固体のいずれの形態であってもよい。潤滑剤としては、本発明の組成物への溶解性が優れる点から、鉱物油系潤滑剤、合成油系潤滑剤、フッ素系潤滑剤またはシリコーン系潤滑剤が好ましい。なお、フッ素系潤滑剤とは、分子内にフッ素原子を有する潤滑剤を意味する。また、シリコーン系潤滑剤とは、シリコーンを含む潤滑剤を意味する。潤滑剤溶液に含まれる潤滑剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。フッ素系潤滑剤とシリコーン系潤滑剤は、それぞれを単独で使用してもよく、併用してもよい。
【0198】
フッ素系潤滑剤としては、フッ素オイル、フッ素グリース、ポリテトラフルオロエチレンの樹脂粉末等のフッ素系固体潤滑剤が挙げられる。フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい。例えば、製品名「クライトックス(登録商標)GPL102」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイル#1」、「ダイフロイル#3」、「ダイフロイル#10」、「ダイフロイル#20」、「ダイフロイル#50」、「ダイフロイル#100」、「デムナムS-65」(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。フッ素グリースとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物等のフッ素オイルを基油として、ポリテトラフルオロエチレンの粉末やその他の増ちょう剤を配合したものが好ましい。例えば、製品名「クライトックス(登録商標)グリース240AC」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイルグリースDG-203」、「デムナムL65」、「デムナムL100」、「デムナムL200」(以上、ダイキン株式会社製)、「スミテックF936」(住鉱潤滑剤株式会社製)、「モリコート(登録商標)HP-300」、「モリコート(登録商標)HP-500」、「モリコート(登録商標)HP-870」、「モリコート(登録商標)6169」等が挙げられる。
【0199】
シリコーン系潤滑剤としては、シリコーンオイルやシリコーングリースが挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、側鎖や末端に有機基を導入した変性シリコーンオイルが好ましい。例えば、製品名「信越シリコーンKF-96」、「信越シリコーンKF-965」、「信越シリコーンKF-968」、「信越シリコーンKF-868」、「信越シリコーンKF-99」、「信越シリコーンKF-50」、「信越シリコーンKF-54」、「信越シリコーンHIVACF-4」、「信越シリコーンHIVACF-5」、「信越シリコーンKF-56A」、「信越シリコーンKF-995」(以上、信越化学工業株式会社製)、「SH200」、「MDX4-4159」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。シリコーングリースとしては、上記に挙げた種々のシリコーンオイルを基油として、金属石けん等の増ちょう剤、各種添加剤を配合した製品が好ましい。例えば、製品名「信越シリコーンG-30シリーズ」、「信越シリコーンG-40シリーズ」、「信越シリコーンFG-720シリーズ」、「信越シリコーンG-411」、「信越シリコーンG-501」、「信越シリコーンG-6500」、「信越シリコーンG-330」、「信越シリコーンG-340」、「信越シリコーンG-350」、「信越シリコーンG-630」(以上、信越化学工業株式会社製)、「モリコート(登録商標)SH33L」、「モリコート(登録商標)41」、「モリコート(登録商標)44」、「モリコート(登録商標)822M」、「モリコート(登録商標)111」、「モリコート(登録商標)高真空用グリース」、「モリコート(登録商標)熱拡散コンパウンド」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0200】
本発明の潤滑剤溶液中の潤滑剤の含有量は、潤滑剤溶液全量に対して、0.01質量%以上50質量%以下が好ましく、0.05質量%以上30質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。潤滑剤の含有量が前記範囲内であれば、潤滑剤溶液を塗布したときの塗布膜の膜厚、および乾燥後の潤滑剤塗膜の厚さを適正範
囲に調整しやすい。
【0201】
<水切り剤用途>
一態様において、本発明の溶剤組成物またはエアゾール組成物は水切り剤として用いることができる。
【0202】
<発泡剤用途>
本発明の溶剤組成物またはエアゾール組成物は、硬質ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームの製造に用いる発泡剤として用いることができる。すなわち、本発明の溶剤組成物またはエアゾール組成物からなる発泡剤、1種以上のポリオール、触媒、整泡剤などを混合した混合物(プレミックス)をイソシアネートと反応させることによって、硬質ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームを製造することができる。
【0203】
イソシアネートは、芳香族、環状脂肪族、鎖状脂肪族系等のものが包含され、一般には2官能のものが使用される。このようなイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンイソシアネート等のポリイソシアネートおよびこれらのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、尿素変性体が挙げられる。これらは単独または混合物で用いられる。
【0204】
プレミックスに含まれるポリオールには、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、多価アルコール、水酸基含有ジエチレン系ポリマー等が挙げられるが、ポリエーテル系ポリオールが一般的に使用される。また、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールを主成分としてもよく、その他のポリオールを使用してもよい。
【0205】
ポリエステル系ポリオールには、無水フタル酸、廃ポリエステル、ひまし油に由来する化合物の他に縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0206】
発泡剤等との相溶性ならびに、発泡性、フォーム物性等の観点から、ポリエステルポリオールの水酸基価(OH価)は100mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であり、かつ粘度が200mPa・s/25℃以上4000mPa・s/25℃以下であることが好ましい。
【0207】
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びそれら変性体の他、糖、多価アルコール、アルカノールアミン等の活性水素を含む化合物をイニシエータにして、これに、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、エピクロルヒドリン、ブチレンオキシド等の環状エーテルを付加したものが好ましく使用される。
【0208】
ポリエーテルポリオールは、通常、水酸基価が400mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下のものが使用される。
【0209】
プレミックスに含まれる触媒には、有機金属系触媒及び有機アミン系触媒が包含される。有機金属触媒としては、有機スズ化合物が好ましく使用され、スタナスオクトエート、スタナスラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート等が挙げられる。有機アミン系触媒としては、第三級アミン、例えば、トリエチレンジアミン、N-エチルモルホリン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N’,N’-トリエチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0210】
プレミックスに含まれる整泡剤としては、通常有機ケイ素化合物系の界面活性剤が用いられ、東レシリコーン(株)製SH-193、SH-195、SH-200またはSRX-253等、信越シリコーン(株)製F-230、F-305、F-341、F-348等、日本ユニカー(株)製L-544、L-5310、L-5320、L-5420、L-5720、及び東芝シリコーン(株)製TFA-4200、TFA-4202等が挙げられる。
【0211】
プレミックスに含まれる難燃剤としては、硬質ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームに使用されるリン酸エステルであり、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリスメチルホスフェート、トリスエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0212】
一態様において、プレミックスには、紫外線防止剤、スコーチ防止剤、プレミックス貯蔵安定剤などを存在させてもよい。これにより、硬質ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームの諸物性を向上させることができる。
【0213】
<熱伝達媒体用途>
一態様において、本発明の溶剤組成物は、冷凍サイクルシステム、高温ヒートポンプシステム、及び有機ランキンサイクルシステムなどの熱伝達媒体として好適である。また、いくつかの態様において、本発明の溶剤組成物は、これらのサイクルシステムを洗浄するための洗浄剤として好適である。
【0214】
本明細書において、「冷凍サイクルシステム」とは、少なくとも蒸発器、圧縮機、凝縮器、膨張弁の要素機器を含む蒸気圧縮式の冷凍サイクルシステムであり、主に冷却することを目的とするシステムを指す。膨張弁は、熱伝達媒体が絞り膨張するための装置であり、キャピラリーチューブであってもよい。冷凍サイクルシステムは前記要素機器の他に、内部熱交換器、乾燥器(ドライヤ)、液分離器、油回収器、不凝縮ガス分離器を備えていてもよい。冷凍サイクルシステムは、冷蔵庫、空調システム、冷却装置として用いられてもよい。
【0215】
本明細書において、「高温ヒートポンプサイクルシステム」とは、少なくとも蒸発器、圧縮機、凝縮器、膨張弁の要素機器を含む蒸気圧縮式のヒートポンプサイクルシステムであり、主に加熱することを目的とするシステムを指す。膨張弁は、熱伝達媒体を絞り膨張させるための装置であり、キャピラリーチューブであってもよい。高温ヒートポンプサイクルシステムは、前記要素機器の他に、内部熱交換器、乾燥器(ドライヤ)、液分離器、油回収器、不凝縮ガス分離器を備えていてもよい。前記高温ヒートポンプサイクルシステムは、給湯システム、蒸気生成システム、加熱装置として用いられてもよい。また、高温ヒートポンプサイクルシステムは、熱源として、太陽熱エネルギー、工場廃熱などを利用してもよい。
【0216】
本明細書において、「有機ランキンサイクルシステム」とは、少なくとも蒸発器、膨張機、凝縮器、昇圧ポンプの要素機器を含むランキンサイクルシステムであり、主に熱エネルギーを電気エネルギーへと変換することを目的とするシステムを指す。有機ランキンサイクルシステムは、前記要素機器の他に、内部熱交換器、乾燥器(ドライヤ)、液分離器、油回収器、不凝縮ガス分離器を備えていてもよい。有機ランキンサイクルシステムは、中低温熱を回収する発電装置として用いられてもよい。また、有機ランキンサイクルシステムは、熱源として、太陽熱エネルギー、工場廃熱などを利用してもよい。
【0217】
<消火剤用組成物>
本発明の消火剤用組成物は、1232xdと、1232xd以外の不燃性ガスを少なくとも含む。1232xdは、1232xd(Z)、1232xd(E)、あるいは、1232xd(Z)と1232xd(E)の混合物であってもよい。
【0218】
消火剤用組成物に含まれる不燃性ガスは、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、トリフルオロメタン、ヨウ化トリフルオロメタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、1-クロロ-1,2,2,2-トリフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン、(E)1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、(E)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、(Z)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、(Z)1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、(E)1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン、テトラデカフルオロ-2,4-ジメチルペンタン-3-オンおよびテトラデカフルオロ-2-メチルヘキサン-3-オンから選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0219】
不燃性ガスは、1232xdよりも沸点の低い不燃性ガスであることが好ましい。
【0220】
消火剤用組成物における1232xdと不燃性ガスとの合計量に対する1232xdの割合は、例えば10モル%以上99モル%以下とすることができる。
【0221】
本発明の消火剤用組成物の一態様において、不燃性ガスが二酸化炭素を含み、1232xdと不燃性ガスとの合計量に対する1232xdの割合は20モル%以上99モル%以下であってもよい。
【0222】
また、本発明の消火剤用組成物の一態様において、不燃性ガスが窒素を含み、1232xdと不燃性ガスとの合計量に対する1232xdの割合は20モル%以上99モル%以下であってもよい。
【実施例0223】
本発明を以下の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例により、限定されるものではない。
【0224】
以下の記載において、FID%とは、検出器がFIDのガスクロマトグラフで分析した時の面積%を指す。
【0225】
<1230xdのフッ素化>
1.1230xdの液相フッ素化
[実施例1-A1]
20℃の冷却液を循環させた凝縮器と圧力計とを備えた200mLのステンレス鋼製オートクレーブに、純度97FID%1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(1230xd)30g(0.16モル)と、フッ化水素40.0g(2.00モル、1230xd/フッ化水素モル比=約1/12)を導入した後、オートクレーブを120℃に加熱した。圧力が約4MPaGを超えたところで、4.0MPaG以上4.5MPaG以下を維持するように凝縮器出口のニードルバルブから反応生成ガスを抜き出した。抜き出したガスは、氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に通して酸を吸収し、ドライアイスアセトン浴のガラストラップで反応生成有機物を回収した。昇温開始から3時間後、圧力の上昇が観察されなくなったことを確認した後、反応器をパージし、抜き出したガスは氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶及びドライアイスアセトン浴のガラストラップに回収した。反応器を冷却後、オートクレーブ内の反応液とドライアイスアセトン浴のガラストラップ回収物を氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶にすべて混合し、併せた混合溶液をフッ素樹脂製分液ロートにて有機物を水相から分離し回収した。この回収した有機物の量は22.1gであり、有機物中の1232xd幾何異性体比は、シス体:トランス体=93:7であった。
【0226】
[実施例1-A2]
反応温度を140℃とした以外は実施例1-A1と同様に反応を実施した。回収した有機物の量は21.8gであった。
【0227】
[実施例1-A3]
反応温度を160℃、フッ化水素80.0g(4.00モル、1230xd/フッ化水素モル比=約1/24)が導入されること以外は実施例1-A1と同様に反応を実施した。回収した有機物の量は19.6gであった。
【0228】
[実施例1-A4]
塩化スズ(SnCl)3gを加えたこと以外は実施例1-A2と同様に反応を実施した。回収した有機物の量は21.8gであった。
【0229】
[実施例1-A5]
20℃の冷却液を循環させた凝縮器と圧力計とを備えた2Lのステンレス鋼製オートクレーブに、純度97FID%1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(1230xd)454g(2.53モル)と、フッ化水素1000.0g(55.0モル、1230xd/フッ化水素モル比=約1/22)を導入した後、オートクレーブを160℃に加熱したこと以外は実施例1-A1と同様に反応を実施した。回収した有機物の量は350gであった。
【0230】
実施例1-A1~実施例1-A5についてガスクロマトグラフィー分析結果を表1に示す。
【表1】
【0231】
表1中、「換算収率」とは、下記式に従って算出される1232xdの単純純度換算収率を示す。
1232xdの単純純度換算収率 = 100×(回収有機物量×1232xdFID%/1232xd分子量)/(1230xd仕込み量×1230xd純度/1230xd分子量)
【0232】
表1中、「―」は、検出されなかったことを示す。
【0233】
2.1230xdの気相フッ素化
[調製例1]フッ素化した活性アルミナの調製
活性アルミナ(住友化学製KHS-46:粒径4~6mm、比表面積155m2/g)300gを測り取り、水で表面に付着した粉を洗浄した。洗浄後のアルミナに10重量%フッ酸1150gをゆっくり加え、攪拌後、約4時間静置した。水洗後、濾過を行い、常温で終夜乾燥し、次に電気炉において200℃で2時間乾燥を行った。この乾燥後の活性アルミナ150mLを、内径1インチ長さ40cmのステンレス鋼製(SUS316)反応管に入れ、窒素を150cc/分の流速で流しながら電気炉で200℃まで昇温し、更に窒素とともにフッ化水素を0.1g/分の流速で流した。このフッ化水素処理を行うにつれて温度が上昇するが、内温が400℃を超えないように、窒素とフッ化水素の流速を調整した。発熱が収まった時点で、窒素の流速を30cc/分に落とし、電気炉の設定温度を30分間ごとに50℃ずつ昇温し、最終的に400℃まで上げ、その状態を2時間保持した。このようにしてフッ素化処理した活性アルミナ(以下、触媒1ともいう)を調製した。
【0234】
[調製例2]フッ素化したクロム担持アルミナ触媒の調製
三角フラスコに20質量%塩化クロム水溶液を加え、そこに調製例1で調製したフッ素化処理した活性アルミナ100mLを浸漬させ、3時間保持した。このアルミナを濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下、70℃で乾燥させた。このクロム担持アルミナ100mLを、電気炉を備えた内径1インチ長さ40cmの円筒形ステンレス鋼製(SUS316)反応管に充填し、窒素ガスを流しながら200℃まで昇温し、水の流出が見られなくなった時点で窒素ガスを150cc/分、フッ化水素を0.1g/分の流速で同時に供給し、内温が400℃を超えないように窒素とフッ化水素の流速を調整した。充填したクロム担持アルミナのフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで窒素の流速を30cc/分に落とし、電気炉の設定温度を30分間ごとに50℃ずつ昇温し、最終的に400℃まで上げ、その状態を2時間保持した。このようにして、フッ素化処理したクロム担持アルミナ(以下、触媒2ともいう)を調製した。
【0235】
[調製例3]フッ素化したクロム担持活性炭の調製
三角フラスコに20質量%塩化クロム水溶液を加え、活性炭100mLを浸漬させ、3時間保持した。この活性炭を濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下、70℃で乾燥させた。このようにして得たクロム担持活性炭100mLを、電気炉を備えた内径1インチ長さ40cmの円筒形ステンレス鋼製(SUS316)反応管に充填し、窒素ガスを流しながら200℃まで昇温し、水の流出が見られなくなった時点で、窒素ガスを150cc/分、フッ化水素を0.1g/分の流速で同時に供給し、内温が400℃を超えないように、窒素とフッ化水素の流速を調整した。充填したクロム担持活性炭のフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで窒素の流速を30cc/分に落とし、電気炉の設定温度を30分間ごとに50℃ずつ昇温し、最終的に400℃まで上げ、その状態を2時間保持した。このようにして、フッ素化処理したクロム担持活性炭(以下、触媒3ともいう)を調製した。
【0236】
[実施例1-B1]
調製例2で調製した触媒50mlを、電気炉を備えた1インチ×長さ40cmステンレス鋼製(SUS316)反応管に充填し、約30cc/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管内を250℃に昇温した。窒素フィードを止め、気化させた原料1,2,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(1230xd)0.20g/分、フッ化水素0.20g/分の流速で導入した。圧力を大気圧とし、触媒との接触時間は12秒とした。流速が安定したところで、反応管出口に氷水で冷却した100ml氷水トラップを設置し、約30分間有機物の回収および副生した酸分を吸収させ、重量回収率を算出した。酸除去を行った有機成分をガスクロマトグラフィーで分析を行った。回収成分の組成および原料の転化率を算出した結果を表に示す。重量回収率及び原料転化率の計算方法は、以下の通りである。
重量回収率:100×(氷水トラップ増加量[g])/(原料[g]+フッ化水素[g]
原料転化率:100×(1-回収有機物中原料組成FID%/原料組成FID%)
【0237】
[実施例1-B2]
反応管内温度を200℃にしたこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0238】
[実施例1-B3]
反応管内温度を300℃にしたこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0239】
[実施例1-B4]
反応管内温度を350℃にしたこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0240】
実施例1-B1~実施例1-B4の結果を表2に示す。
【表2】
【0241】
表2を参照すると、200℃以上350℃以下の範囲において、1230xdをフッ素化して1232xdを合成できることが分かる。
【0242】
[実施例1-B5]
触媒2の代わりに触媒3を充填したこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0243】
[実施例1-B6]
触媒2の代わりに触媒1を充填したこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0244】
[実施例1-B7]
触媒2の代わりに、充填材として活性炭(白鷺G2X4/6-1)50mlを充填したこと以外は、実施例1-B1と同様の操作を行った。
【0245】
実施例1-B1、実施例1-B5~実施例1-B7の結果を表3に示す。
【表3】
【0246】
<240daの合成>
【0247】
[実施例2-1]
温度計、液体を流入させるための流入管、ジムロート冷却管を設置した2L-三口フラスコに、粉末状の塩化アルミニウム35g(10モル%)、クロロホルム1275g(10.7モル)を仕込み、窒素シールを行った。その後、当該フラスコをオイルバスにより内温約60℃に加熱し、流入管より1,2-ジクロロエチレン256g(2.64モル)を2時間かけて導入後、60℃で30分間攪拌を行い、反応終了とした。反応液を室温まで冷却後、5重量%塩化水素水500mlで洗浄し、有機相をモレキュラーシーブスで乾燥後、余剰クロロホルムをエバポレーターで分離した。これにより、純度98FID%の240da粗体505g(1,2-ジクロロエチレン基準による純度換算収率86.5%)を回収した。
【0248】
[実施例2-2]
塩化アルミニウム7.3g(20モル%)、クロロホルム31g(0.26モル)、1,2-ジクロロエチレン100g(1.0モル)にしたこと以外、実施例2-1と同様の操作を行った。これにより、純度92FID%の240da粗体50g(クロロホルム基準による純度換算収率80.1%)を回収した。240da粗体中、240da以外のそのほかの成分はヘプタクロロペンタンだった。
【0249】
[実施例2-3]
塩化アルミニウム7.3g(20モル%)、クロロホルム31g(0.26モル)、1,2-ジクロロエチレン25g(0.26モル)にしたこと以外、実施例2-1と同様の操作を行った。これにより、純度96FID%の240da粗体44g(1,2-ジクロロエチレン基準による純度換算収率75.2%)を回収した。240da粗体中、240da以外のそのほかの成分はヘプタクロロペンタンだった。
【0250】
<1230xdの合成>
【0251】
[実施例3]
温度計、滴下ロート、水を流せるジムロート冷却管を設置した2L-三口フラスコに、実施例2-1で合成した240da粗体500g(2.26モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド3.0gを仕込み、氷水浴で約10℃に冷却した。滴下ロート経由で25重量%水酸化ナトリウム水溶液550g(3.4モル、1.5当量)を2時間かけて滴下を行い、室温約20℃で18時間攪拌を行った。反応液に10重量%塩化水素水500mlを加え洗浄を行い、さらに、水洗浄、飽和炭酸水素水による洗浄を行い、モレキュラーシーブスで乾燥した。これにより、純度97FID%の1230xd粗体410gを得た。
【0252】
洗浄性試験>
【0253】
[実施例4]
SUS-316L(2.8mm×10mm×30mm)のテストピースを表4に示すオイルに浸漬させて当該オイルを付着させた。これを、表4に示す溶剤10mLに30秒間浸漬させた後、常温(23℃)で2分間自然乾燥を行った。乾燥後のテストピースを目視で観察し、以下の基準に沿って洗浄性を評価した。
◎:非常に良好。油が完全に除去されている。
〇:良好。油のスケールが一部に観測されるものの、概ね除去されている。
×:不良。油がかなり残っている。
【0254】
それぞれの結果を表4に示す。
【表4】
【0255】
表4中、オイルの種類は、以下のものを示す。
プレス工作油A:日本作油株式会社製 PG-3246
プレス工作油B:日本作油株式会社製 PG-3740
工作油A:日本作油株式会社製 CF-879
工作油B:日本作油株式会社製 C-4115
防錆油:日本作油株式会社製 P-5960
鉱油:住鉱潤滑剤株式会社製 コンプレッサーオイル
シリコーン油:信越化学工業社製 KF-96-100CS
【0256】
<溶解性試験>
【0257】
[実施例5]
表5に示す溶剤10gおよび表5に示すオイル1gを50mL容量のガラス製試料瓶に加え振とう、混合した。これを室温(23℃)に管理された実験室で静置した。30分後に溶液の状態を目視で観察し、以下の基準に沿って溶解性を評価した。
A:非常に良好。油が完全に溶解し、均一である。
B:一部良好。油の一部が溶解しているが、二相分離がみられる。
C:不良。油の溶解がみられず、二相分離がみられる。
【0258】
それぞれの結果を表5に示す。
【表5】
【0259】
表5中、オイルの種類は、以下のものを示す。
プレス工作油A:日本作油株式会社製 PG-3246
プレス工作油B:日本作油株式会社製 PG-3740
工作油A:日本作油株式会社製 CF-879
工作油B:日本作油株式会社製 C-4115
防錆油:日本作油株式会社製 P-5960
鉱油:住鉱潤滑剤株式会社製 コンプレッサーオイル
シリコーン油:信越化学工業社製 KF-96-100CS
【0260】
[実施例6]
実施例5で使用した溶剤とオイルの混合物をすべて合わせて回収した。回収した混合物から単蒸留により、純度99GC%の1232xdを得た。