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特開2023-175753化学発光アンドロステンジオンコンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175753
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】化学発光アンドロステンジオンコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C07J 43/00 20060101AFI20231205BHJP
   C07J 1/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20231205BHJP
   G01N 33/533 20060101ALI20231205BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C07J43/00 CSP
C07J1/00
A61K49/00
G01N33/533
G01N33/543 501A
G01N33/543 575
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023145790
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2021165849の分割
【原出願日】2018-02-23
(31)【優先権主張番号】62/462,904
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】イー・ファン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ローレン・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ドリスコル
(72)【発明者】
【氏名】ジジェン・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ドノヴァン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】試料中のアンドロステンジオン濃度の正確かつ高精度の測定を提供するイムノアッセイにおいて用いることができる、アンドロステンジオンとコンジュゲートした化学発光化合物を提供する。
【解決手段】化学発光アクリジニウム部分にコンジュゲートしたアンドロステンジオン化合物を含む、アンドロステンジオンの検出可能なコンジュゲートであって、式(I):

[式中、Aはアンドロステンジオンまたはその誘導体であり;Lはリンカーであり;Ψは化学発光アクリジニウム標識である]の構造を有する、前記検出可能なコンジュゲートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学発光アクリジニウム部分にコンジュゲートしたアンドロステンジオン化合物を含む、アンドロステンジオンの検出可能なコンジュゲートであって、式(I):
【化1】
[式中、
Aはアンドロステンジオンまたはその誘導体であり;
Lはリンカーであり;
Ψは化学発光アクリジニウム標識である]
の構造を有する、前記検出可能なコンジュゲート。
【請求項2】
Lは構造
-L-(Z
[式中
「z」は0または1であり;
は、場合により1~20個のヘテロ原子で置換されている、二価C1~35アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアリールアルキル基であり;
は構造:
【化2】
を有する両性イオンリンカー基であり;
「m」は0(すなわち結合である)または1であり;
「n」および「p」は、出現毎に独立に、0(すなわち結合である)~10の整数であり;
はアニオン性基であり;
は、場合により1~10個のヘテロ原子で置換されている、C1~20二価炭化水素基(例えばアルキル、アルケニル、アリール、アルキニル、アリールアルキル等)であり;
R’は水素またはC1~10アルキルである]
を有する、請求項1に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項3】
Ψは式(IIa)
【化3】
[式中、
ΩはCH、O、またはNであり;
Yは-Rもしくは-R-Zから選択され、またはΩがOである場合、Yは存在せず;
Y’は存在しない(すなわち結合である)、または-L-、-R-、-R-L-、-L-L-、-L-R-、-L-R-L、もしくは-R-L-R-から選択されるかのいずれかであり;かつY’はLまたはZへの1つまたはそれ以上の連結部を含み;
は水素、-R、-X、-R-X、-L-R、-L-X、-Z、-R-Z、-L-Z、または-R-L-R-Zであり;
およびRは独立に、水素、-R、電子供与性基、または-Zから選択され;
Zは構造:
【化4】
を有する両性イオン基であり;
「q」および「l」は独立に0または1であり;
「r」は独立に0~10の整数であり;
は出現毎に独立に、-O-、-S-、-NH-、-N(R)-、-(CH1~10-、-S(=O)1~2-、-C=C-、-C=C-(CH1~3-、-C(O)-、-O-C(O)-、-C(O)-(CH1~4-、-(CH1~4-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(R)-、-C(O)-NH-、-N(R)-C(O)-、-NH-C(O)-、-C(O)-N(R)-(CH1~3-、-(CH1~3-C(O)-N(R)-、-NH-S(O)1~2-、-N(R)-S(O)1~2-、-S(O)1~2-N(R)-、-S(O)1~2-NH-、-(CH1~3-NH-S(O)1~2-、-(CH1~3-N(R)-S(O)1~2-、-(CH1~3-S(O)1~2-N(R)-、-(CH1~3-S(O)1~2-NH-、-O-(CH1~4-、-(CH1~4-O-、-S-(CH1~4-、-(CH1~4-S-、-NH-(CH1~4-、-N(R)-(CH1~4-、-(CH1~4-N(R)-、-(OCH1~10-、-(CHO)1~10-、-(OCHCH1~10-、また
は-(CHCHO)1~10-であり;
は出現毎に独立に、場合により1~10個のヘテロ原子で置換されている、C1~20二価炭化水素基(例えばアルキル、アルケニル、アリール、フェニル、モノアルキル置換フェニル、ジアルキル置換フェニル、アルキニル、アリールアルキル等)であり;
Rは出現毎に独立に、水素、または場合により1~20個のヘテロ原子で置換されている、C1~35炭化水素(例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはアラルキル)基であり;
R’およびR”は、出現毎に独立に、水素またはC1~10アルキルであり;
は出現毎に独立に、アニオン性基であり;
は出現毎に独立に、水素またはC1~5アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル等)から選択される]
の構造を有する、請求項1または2に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項4】
Ψは式(IIb):
【化5】
[式中、R~Rは独立に水素、またはC1~35アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、もしくはアミノであり;LはLに(例えばLまたはZに)共有結合している]
の構造を有する、請求項1または2に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項5】
式(IIa)のLは-C(O)-NH-である、請求項4に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項6】
およびRはそれぞれメチルであり、RおよびRはそれぞれ水素である、請求項4または5に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項7】
Ψは式(IIc):
【化6】
[式中、Y”は存在しない、または-L-、-R-、もしくは-R-L-であり、ここでY”はLに(例えばLまたはZに)共有結合的に付加している]
の構造を有する、請求項1または2に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項8】
アンドロステンジオン化合物(A)は、該アンドロステンジオンの環系の炭素4~16の任意の1つを介してLに共有結合している、請求項1~7のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項9】
アンドロステンジオン化合物(A)は、該アンドロステンジオンの環系の炭素3、6、7、17、または19の任意の1つを介してL基に共有結合している、請求項1~7のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項10】
アンドロステンジオン化合物(A)は、該アンドロステンジオンの環系の炭素6または7を介してLに共有結合している、請求項1~7のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項11】
は構造:
-(X0~1-(R0~5-(X0~1-(R0~5-(X0~1-(R0~5-(X0~1-(R0~5
[式中、
は=N-、-O-、-S-、または-NR-から選択され;
~Xは独立に、-O-、-S-、-NR-、-C(O)-、-NR-C(O)-、-C(O)-NR-、-O-C(O)-、もしくは-C(O)-O-、-S-C(O)-、または-C(O)-S-から選択され;
は出現毎に独立に、-CH-、-(CHCHO)-、または-(OCHCH)-から選択され;
ただしLは、AとΨとの間(またはAとZとの間)の鎖に少なくとも1つの原子(または少なくとも2つの原子)を含む]
を有する、請求項2~10のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項12】
は-C(O)-NH-、または-NH-C(O)-を含む、請求項2~10のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項13】
は構造:
【化7】
を有する、請求項2~10のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項14】
構造:
【化8】
を有する、請求項13に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項15】
およびXは出現毎に独立に、カルボキシレート(-C(O)O)、スルホネート(-SO )、スルフェート(-OSO )、ホスフェート(-OP(O)(OR)O)、またはオキシド(-O)であり、Rは水素、または場合により最大10個のヘテロ原子で置換されているC1~12炭化水素である、請求項2~14のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項16】
は-R-SO を含む、請求項3~15のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項17】
はスルホプロピルを含む、請求項3~15のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項18】
は-S(O)-NH-Z、または-(CH1~3-S(O)-NH-Zである、請求項3~15のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項19】
およびRは出現毎に独立に、水素、アルキル、またはアルコキシ(例えばイソプロポキシ)である、請求項3~18のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項20】
およびRはそれぞれ水素である、請求項3~18のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項21】
またはRの一方は水素であり、RまたはRの他方はアルコキシ(例えばイソプロポキシ)である、請求項3~18のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項22】
におけるXはスルホネート(-SO )であり、mは1であり、Rはプロピルであり、nおよびpはそれぞれ3であり、その結果Zは構造:
【化9】
を有する、請求項2~21のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項23】
式(III)の構造を有する、請求項1~22のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【化10】
【請求項24】
式(IIIa)の構造:
【化11】
を有する、請求項1~23のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項25】
式(IIIb)の構造:
【化12】
を有する、請求項1~23のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲート。
【請求項26】
分析対象物の検出のための試薬組成物であって、pH緩衝媒体中に請求項1~25のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲートを含む、前記試薬組成物。
【請求項27】
試料中の分析対象物の検出または定量のためのアッセイ方法であって、
(a)請求項1~25のいずれか1項に記載の検出可能なコンジュゲートを準備する工程;
(b)該分析対象物との結合複合体を形成することができ、かつ該検出可能なコンジュゲートとの結合複合体を形成することができる分子を固定した、固体担体を準備する工程;
(c)該化合物、該固体担体、および該試料を混合する工程;
(d)該固体担体を該混合物から分離する工程;
(e)該固相と複合体形成した任意のアクリジニウム標識の化学発光を誘発する工程;
(f)ルミノメーターで発光の量を測定する工程;ならびに
(g)放出された光の量と、放出された光の量を分析対象物の既知濃度に関連付ける基準用量反応曲線とを比較することによって、該分析対象物の存在を検出する、またはその濃度を算出する工程
を含む、前記アッセイ方法。
【請求項28】
化合物であって、構造
【化13】
を有する、前記化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によって全体が本明細書に組み入れられている、2017年2月23日に出願した米国仮特許出願第62/462,904号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、化学発光アンドロステンジオンコンジュゲートに関する。これらの化学発光アンドロステンジオンコンジュゲートは、試料中の特定の分析対象物の定量および同定のためのイムノアッセイにおいて、化学発光トレーサーとして用いられる。
【背景技術】
【0003】
循環血清中の各種アンドロゲンの濃度は、様々な生理学的系および行動系に直接関係する。特に、アンドロゲン、アンドロステンジオンの血清中濃度は、卵巣および副腎由来のアンドロゲン分泌腫瘍を検出するため、性ステロイド代謝の先天的異常、または思春期の疾患を評価するためにしばしば測定される。アンドロステンジオンレベルの上昇は、男性化副腎過形成、および多嚢胞性卵巣症候群などの疾患と関連する。さらに、試料中のアンドロステンジオンの測定は、17-ヒドロキシプロゲステロンのような他のアンドロゲンより、疾患の検出正確度の上昇をもたらす。また、アンドロステンジオンは、世界アンチ・ドーピング機関によって、およびオリンピック大会では禁止されている。したがって、血清アンドロゲンの測定は、成人患者、高齢患者、小児内分泌疾患患者、および腫瘍患者を含む様々な患者において重要である。
【0004】
内因性4-アンドロステンジオン(「A4」)ホルモンの構造を、19個の炭素それぞれにラベルを付けて下に表す。
【化1】
【0005】
他のアンドロステンジオンとしてはプロホルモンである5-アンドロステンジオン、および1-アンドロステンジオンが挙げられ、これらは世界アンチ・ドーピング機関の禁止物質のリストにも含まれている。アンドロステンジオンへの言及には、A4、5-アンドロステンジオン、および1-アンドロステンジオンを含めたアンドロステンジオンが含まれることを理解されたい。
【0006】
試料中のアンドロステンジオン濃度を検出するため、各種技法が開発されてきた。分析法は、ガスクロマトグラフィー(GC)または液体クロマトグラフィー(LC)とあわせて、質量分析(MS)を用いてよい。例えば、アンドロステンジオンおよび他のステロイドについての液体クロマトグラフィータンデム質量分析(「LC-MS/MS」)アッセイが、参照によって全体が本明細書に組み入れられている非特許文献1に記載される。しかし、これらの方法に要する高価な装置と実行時間の長さのため、複数の試料の測定についての実用性は限定的である。アンドロステンジオン濃度はイムノアッセイによっても測定されているが、これはMSベースの分析に対する、コスト効率的で、単純かつ迅速な代
替法を提供する。IMMULITE 2000アンドロステンジオンアッセイ、または他の酵素結合免疫吸着法(「ELISA」)のようなこれらのアッセイは、競合的結合フォーマットで機能し、測定する試料中のアンドロステンジオンは、限られた数の抗体への結合について、酵素とコンジュゲートしたアンドロステンジオンと競合する。典型的には、アンドロステンジオンは、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートする。アンドロステンジオンまたは酵素連結アンドロステンジオンのいずれかとコンジュゲート可能な、限られた数のサイトを含む固相との結合複合体を形成した後、結合複合体は分離され、測定可能な変化(例えば色)を呈する。固相を取り出して測定可能な変化を観測すると、試料中のアンドロステンジオンの濃度を推測することができる。しかし、参照によって全体が本明細書に組み入れられている非特許文献2に示されるように、ELISAアッセイに対するLC-MS/MSアッセイの比較は、ELISA法によって測定したアンドロステンジオン濃度は、LC-MS/MSと比較して、測定されたアンドロステンジオン濃度における2.5倍近い増加をもたらすことを指示している。このような過大な推計は、イムノアッセイに用いられる酵素連結アンドロステンジオンコンジュゲートの較正不備(miscalibration)および交差反応性に起因しており、ELISAアッセイについての感受性および正確度の低さをもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kushnir, M.ら、Clin. Chem.、56、1138(2010)
【非特許文献2】Fanelli, F.ら、Steroids、76、244(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アンドロステンジオンイムノアッセイの改良が、当技術分野において必要とされ続けている。そのため、試料中のアンドロステンジオン濃度の正確かつ高精度の測定を提供するイムノアッセイにおいて用いることができる、アンドロステンジオンとコンジュゲートした化学発光化合物を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
化学発光アクリジニウム化合物は、アンドロステンジオンとコンジュゲートすることができ、ELISA測定より正確な、イムノアッセイにおける結果を提供することが見出されている。検出可能なコンジュゲート、およびアンドロステンジオンの検出可能なコンジュゲートを用いた方法を、本明細書において提供する。
【0010】
本発明の一態様では、構造:
【化2】
[式中、
Aはアンドロステンジオン(例えばA4、5-アンドロステンジオン、1-アンドロステンジオン等)であり;
Lはリンカーであり;
Ψはアクリジニウムを含む化学発光部分である]
を有する化学発光部分とコンジュゲートしたアンドロステンジオン部分を含む、アンドロステンジオンの検出可能なコンジュゲートが提供される。いくつかの実施形態では、Ψはアクリジニウムエステル、またはアクリジニウムスルホンアミドであってよい。いくつか
の実施形態では、Aは一価アンドロステンジオン基である。好ましい実施形態では、Aは4-アンドロステンジオン(「A4」)基であってよい。大多数の実施形態では、A、L、およびΨは、互いに共有結合している。大多数の実施形態では、Lは構造
-L-(Z
[式中、
「z」は0または1であり;
は、場合により1~20個のヘテロ原子で置換されている、二価C1~35アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアリールアルキル基であり;
【0011】
は構造:
【化3】
を有する両性イオンリンカー基であり;
「m」は0(すなわち結合である)または1であり;
「n」および「p」は、出現毎に独立に、0(すなわち結合である)~10の整数であり;
はアニオン性基であり;
は、場合により1~10個のヘテロ原子(例えばN、O、S、Cl、F、Br等)で置換されている、C1~20二価炭化水素基(例えばアルキル、アルケニル、アリール、アルキニル、アリールアルキル等)であり;
R’は水素またはC1~10アルキルである]
を有する。
【0012】
典型的には、Ψは式(II):
【化4】
[式中、
ΩはCH、O、またはNであり;
Yは-Rもしくは-R-Zから選択され、またはΩがOである場合、Yは存在せず;
Y’は存在しない(すなわち結合である)、または-L-、-R-、-R-L-、-L-L-、-L-R-、-L-R-L、もしくは-R-L-R-から選択されるかのいずれかであり;かつY’はLまたはZへの1つまたはそれ以上の連結部を含み;
は水素、-R、-X、-R-X、-L-R、-L-X、-Z、-R-Z、-L-Z、または-R-L-R-Zであり、
およびRは独立に、水素、-R、電子供与性基、または-Zから選択され;
【0013】
Zは構造:
【化5】
を有する両性イオン基であり;
「q」および「l」は独立に0または1であり;
「r」は独立に0~10の整数であり;
は出現毎に独立に、-O-、-S-、-NH-、-N(R)-、-(CH1~10-、-S(=O)1~2-、-C=C-、-C=C-(CH1~3-、-C(O)-、-O-C(O)-、-C(O)-(CH1~4-、-(CH1~4-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(R)-、-C(O)-NH-、-N(R)-C(O)-、-NH-C(O)-、-C(O)-N(R)-(CH1~3-、-(CH1~3-C(O)-N(R)-、-NH-S(O)1~2-、-N(R)-S(O)1~2-、-S(O)1~2-N(R)-、-S(O)1~2-NH-、-(CH1~3-NH-S(O)1~2-、-(CH1~3-N(R)-S(O)1~2-、-(CH1~3-S(O)1~2-N(R)-、-(CH1~3-S(O)1~2-NH-、-O-(CH1~4-、-(CH1~4-O-、-S-(CH1~4-、-(CH1~4-S-、-NH-(CH1~4-、-N(R)-(CH1~4-、-(CH1~4-N(R)-、-(OCH1~10-、-(CHO)1~10-、-(OCHCH1~10-、または-(CHCHO)1~10-であり;
は出現毎に独立に、場合により1~10個のヘテロ原子で置換されている、C1~20二価炭化水素基(例えばアルキル、アルケニル、アリール、フェニル、モノアルキル置換フェニル、ジアルキル置換フェニル、アルキニル、アリールアルキル等)であり;
Rは出現毎に独立に、水素、または場合により1~20個のヘテロ原子で置換されている、C1~35炭化水素(例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはアラルキル)基であり;
R’およびR”は、出現毎に独立に、水素またはC1~10アルキルであり;
は出現毎に独立に、アニオン性基であり;
は出現毎に独立に、水素またはC1~5アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル等)から選択される]
の構造を有する。
【0014】
本発明の別の態様では、化学発光アクリジニウムに結合したアンドロステンジオンの検出可能なコンジュゲートを含む分析対象物の、検出のための試薬を提供する。検出可能なコンジュゲートは、1つまたはそれ以上(例えば1つ、2つ等)の両性イオン官能基を含んでよい。試薬は、濃度10~30ng/mLの検出可能なコンジュゲートを含んでよい。
【0015】
本発明のさらなる態様では、試料中の分析対象物の検出または定量のためのアッセイであって、
(a)式(I)の構造を有する検出可能なコンジュゲートを準備する工程;
(b)該分析対象物との結合複合体を形成することができ、かつ該検出可能なコンジュゲートとの結合複合体を形成することができる分子を固定した、固体担体を準備する工程;
(c)該化合物、該固体担体、および該試料を混合する工程;
(d)該固体担体を該混合物から分離する工程;
(e)該固相と複合体形成した任意のアクリジニウム標識の化学発光を誘発する工程;
(f)ルミノメーターで発光の量を測定する工程;ならびに
(g)放出された光の量と、放出された光の量を分析対象物の既知濃度に関連付ける基準用量反応曲線とを比較することによって、該分析対象物の存在を検出する、またはその濃度を算出する工程
を含むアッセイを提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、緩衝剤をさらに含む試薬中に、化合物を供給する。典型的には、検出または定量される分析対象物は、アンドロステンジオン(例えば4-アンドロステンジオン等)である。いくつかの実施形態では、試料は血清である。
【0017】
本発明のこれらのおよび他の態様は、添付の特許請求の範囲を含む、以下の詳細な説明を参照することによって、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】化学発光アンドロステンジオンコンジュゲートを用いた、競合的アンドロステンジオンイムノアッセイの一例を表す図である。未知のアンドロステンジオン濃度の試料(「1」)を、化学発光アンドロステンジオンコンジュゲート(「3」、ここではアンドロステンジオン-両性イオンアクリジニウムエステル(「A4-ZAE」)コンジュゲート)を含む試薬と混合し、固相(「2」、「SP」)と相互作用させる。固相は、固相上にコーティングされた、結合複合体を形成することができる抗体を有する。各抗体は、試料からのアンドロステンジオンか、A4-ZAEコンジュゲートのいずれかと、結合複合体を形成することができる。結合複合体が形成された後、固相を試料から取り出し、洗浄する。化学発光誘発剤(triggering agent)(ここでは酸/塩基)の使用を通じて、A4およびA4コンジュゲートの両方と複合体形成した固相からの化学発光の光出力を測定する。光出力の強度は、化学発光部分(丸印)の数と相関がある。したがって、試料中のアンドロステンジオンの量を、光出力の量によって推測することができる。
図2-1】図2A~2Dは、それぞれ、各種A4コンジュゲートを用いた、4-アンドロステンジオンと結合複合体を形成する3C3、3H10、および4G8抗体についての、イムノアッセイの光出力を表すグラフである。
図2-2】図2-1の続き。
図2-3】図2Eは、初期、および緩衝液中に保存して28日後の、A4(6β)-ヘミスクシナートコンジュゲートの光出力を示すグラフである。
図3A】各種濃度のアンドロステンジオンを含有する試料についての、イムノアッセイの光出力を示すグラフであり、イムノアッセイは、A4部分の7位にコンジュゲートしたA4コンジュゲートを含む。図3Aのために測定したイムノアッセイにおいて、各コンジュゲートのアクリジニウムエステル部分は同じ(-Z-NSPDMAE)である。図3Bのために測定したイムノアッセイにおいては、リンカーおよびアクリジニウムエステル部分を変更する。
図3B】各種濃度のアンドロステンジオンを含有する試料についての、イムノアッセイの光出力を示すグラフであり、イムノアッセイは、A4部分の7位にコンジュゲートしたA4コンジュゲートを含む。図3Aのために測定したイムノアッセイにおいて、各コンジュゲートのアクリジニウムエステル部分は同じ(-Z-NSPDMAE)である。図3Bのために測定したイムノアッセイにおいては、リンカーおよびアクリジニウムエステル部分を変更する。
図4】化学発光アンドロステンジオンコンジュゲートを用いた競合的アッセイに対する、アンドロステンジオン試料のLC-MS/MSアッセイの比較を示すグラフである。各アッセイについての結果を、アンドロステンジオンの測定濃度の観点で提示する。点線は、各アッセイ方法を比較するデータについての、Passing-Bablok回帰分析を表す(傾き=1.02、切片=-0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
便宜のため、実施例および添付の特許請求の範囲を含む、本明細書において使用されるある種の用語をここにまとめる。別途定義されない限り、本明細書で用いるすべての科学技術用語は、この開示が属する分野における当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0020】
別途明確に定義されない限り、以下の用語および表現は、本開示全体にわたって、以下の意味を有することを意図する。
【0021】
別途指示がない限り、本明細書において与えるすべての百分率は、キャリアを含む組成物全体に対する、特定成分の重量百分率を指す。組成物中の個々の成分の全重量%の合計は、100%を超えないことが理解されよう。
【0022】
本明細書において用いる用語「a」または「an」は、1つまたはそれ以上を意味する。本明細書を読むことにより理解されるように、本明細書で用いる場合、用語「から本質的になる」は、本発明を特定の材料または工程、および特許請求に係る発明の基本的および新規な特徴に実質的な影響を及ぼさないものに限定することを意図する。
【0023】
別段の記載がない限り、以下の各種基または置換基の定義を用いる。基、置換基、および範囲について、下に列記する特定のおよび一般的な意味は単に説明のためであり、これらは基および置換基についての、他の定義された意味、または定義された範囲内の他の意味を除外しない。別途指示がない限り、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ等は、直鎖状、分岐鎖状、および環状基、ならびにそれらの任意の組合せを意味する。
【0024】
用語「炭化水素」は、炭素および水素原子を含有する基(radicalまたはgroup)をいう。炭化水素基の例としては、限定するものではなく、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、およびそれらの任意の組合せ(例えばアルキルアリールアルキル等)が挙げられる。本明細書で用いる場合、別途指示がない限り、炭化水素は、一価または多価(例えば二価、三価等)の炭化水素基であってよい。メチレン基、すなわち-CH-を含む、-(CH-の形の基は、炭素原子の間に不飽和結合を有しない場合、アルキル基と解釈される。別途特定しない限り、すべての炭化水素基(置換されている、および未置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール等を含む)は、1~35個の炭素原子を有してよい。他の実施形態では、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を有する実施形態を含めて、炭化水素は、1~20個、または1~12個、または1~8個、または1~6個、または1~3個の炭素原子を有するであろう。炭化水素は、約2~約70個の原子、または4~約40個の原子、または4~約20個の原子を有してよい。
【0025】
「置換されている」炭化水素は置換基として、1つもしくはそれ以上の炭化水素基、置換されている炭化水素基を有してよく、または1つもしくはそれ以上のヘテロ原子を含んでよい。本明細書で開示する任意の炭化水素置換基は、場合により1~20個(例えば1~10個、1~5個等)のヘテロ原子を含んでよい。置換されている炭化水素基の例としては、限定するものではなく、ヘテロ環、例えばヘテロアリールが挙げられる。別途特定しない限り、1つまたはそれ以上のヘテロ原子で置換されている炭化水素は、1~20個のヘテロ原子を含むであろう。他の実施形態では、1つまたはそれ以上のヘテロ原子で置換されている炭化水素は、1~12個、または1~8個、または1~6個、または1~4個、または1~3個、または1~2個のヘテロ原子を含むであろう。ヘテロ原子の例としては、酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン(F、Cl、Br、I等)、ホウ素、ケイ素等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄、リン、およびハロゲン(F、Cl、Br、I等)からなる群から選択されるであろう。好ましい実施形態では、ヘテロ原子は、O、N、またはSから選択してよい。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子または基は、炭素を置換してよい。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子または基は、水素を置換してよい。いくつかの実施形態では、置換されている炭化水素は、分子の骨格または鎖に、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含んでよい(例えば「オキサ」のように、2つの炭素原子の間に入る)。いくつかの実施形態では、置換されている炭化水素は、分子の骨格または鎖からの、1つまたはそれ以上のヘテロ原子側鎖を含んでよい(例えば「オキソ」のように、鎖または骨格の炭素原子に共有結合する)。
【0026】
また、本明細書で用いる場合、表現「1つの(a[n])~で置換されている」は、任意の指定した置換基またはそのすべての1つまたはそれ以上で、特定の基を置換してよいことを意味する。例えば、アルキル、またはヘテロアリール基などの基が、「未置換C~C20アルキル、または未置換2~20員ヘテロアルキルで置換されている」場合、その基は、1つもしくはそれ以上の未置換C~C20アルキル、および/または1つもしくはそれ以上の未置換2~20員ヘテロアルキルを含有してよい。さらに、ある部分がR置換基で置換されている場合、その基は「R置換されている」と呼ばれる。ある部分がR置換されている場合、その部分は少なくとも1つのR置換基で置換され、各R置換基は場合により異なる。
【0027】
別途特定しない限り、本明細書で開示する、1つまたはそれ以上のキラル中心を有する任意の化合物は、各キラル中心についてラセミ混合物の形態であってよく、または各キラル中心について純粋な、もしくは実質的に純粋な(例えば約98%eeより大きい)RもしくはSエナンチオマーとして存在してよく、または各キラル中心についてRおよびSエナンチオマーの混合物として存在してよく、混合物は一方または他方の配置のエナンチオマー余剰、例えば60%超の(RもしくはSの)エナンチオマー余剰、または70%超、または80%超、または90%超、または95%超、または98%超、または99%超のエナンチオマー余剰を含む。いくつかの実施形態では、任意のキラル中心が「S」または「R」配置であってよい。好ましい実施形態では、アンドロステンジオンがコンジュゲートするキラル中心は、単一の配置であってよい。好ましい実施形態では、指示された炭素位置(例えば、炭素3、6、7、17、19等)は、α(例えば、A(3α)、A(6α)、A(7α)、A(17α)、A(19α)等)またはβ(例えば、A(3β)、A(6β)、A(7β)、A(17β)、A(19β)等)方向のみを介してコンジュゲートする。
【0028】
本明細書での化合物の記載は、当業者には公知の化学結合の原理によって限定されることが理解されよう。したがって、基が複数の置換基の1つまたはそれ以上によって置換される場合、このような置換基は、原子価等についての化学結合の原理に従うように選択され、本質的に不安定ではない化合物をもたらす。例えば、任意の炭素原子は、2つ、3つ
、または炭素の4つの価電子と一致する4つの他の原子と結合するであろう。
【0029】
一般に、別途指示がない限り、置換基(基)の接頭辞名は、(i)親ヒドリドの「アン(ane)」を接尾辞「イル」、「ジイル」、「トリイル」、「テトライル」等で置き換える;または(ii)親ヒドリドの「e」を接尾辞「イル」、「ジイル」、「トリイル」、「テトライル」等で置き換える、のいずれかによって、親ヒドリドから誘導される(ここで、自由原子価を有する原子は、特定する場合、親ヒドリドに定めた任意のナンバリングと一致する最も小さい数字を与えられる)。本明細書全体で、許容される略称、例えばアダマンチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フリル、ピリジル、イソキノリル、キノリル、およびピペリジル、ならびに慣用名、例えばビニル、アリル、フェニル、およびチエニルも用いられる。ステロイドの基も、「イル」、「ジイル」、「トリイル」、「テトライル」等の接尾辞で呼んでよい。ステロイドの許容される略称としては、アンドロステンジオニル、4-アンドロステンジオニル、アンドロステンジオン-7-イル等が挙げられる。従来のナンバリング/レタリング体系も、置換基のナンバリングおよび縮合環、スピロ環、二環、三環、多環の命名について順守される。
【0030】
用語「アルキル」は、直鎖状または分岐鎖状であってよく、指示された数の炭素原子を含有する、飽和炭化水素鎖をいう。例えば、C~Cアルキルは、その基の中に1~6個(1と6を含む)の炭素原子を有してよいことを指す。任意の原子を、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基によって置換することができる。アルキル基の例としては、限定するものではなく、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびtert-ブチルが挙げられる。本明細書で言及する任意のアルキル基(例えばR、R’、R”、R、R、R、R、R等)は、1~35個の炭素原子を有してよい。他の実施形態では、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を有する実施形態を含めて、アルキル基は、1~20個、または1~12個、または1~8個、または1~6個、または1~3個の炭素原子を有するであろう。
【0031】
用語「ハロアルキル」は、少なくとも1つの水素原子がハロで置き換えられたアルキル基をいう。いくつかの実施形態では、1つより多くの水素原子(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個等)がハロによって置き換えられる。これらの実施形態では、水素原子をそれぞれ同じハロゲン(例えばフルオロ)によって置き換えることができ、または水素原子を異なるハロゲン(例えばフルオロとクロロ)の組合せによって置き換えることができる。「ハロアルキル」も、すべての水素がハロによって置き換えられているアルキル部分を含む(本明細書ではペルハロアルキル、例えばペルフルオロアルキル、例えばトリフルオロメチルということがある)。任意の原子を、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基によって置換することができる。
【0032】
本明細書で言及する場合、用語「アルコキシ」は式-O(アルキル)の基をいう。アルコキシは、例えば、メトキシ(-OCH)、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペントキシ、2-ペントキシ、3-ペントキシ、またはヘキシルオキシであってよい。同様に、用語「チオアルコキシ」は、式-S(アルキル)の基をいう。最後に、用語「ハロアルコキシ」および「ハロチオアルコキシ」は、それぞれ-O(ハロアルキル)および-S(ハロアルキル)をいう。用語「スルフヒドリル」は-SHをいう。本明細書で用いる場合、単独で、または他の用語との組合せで使用する、用語「ヒドロキシル」は、式-OHの基をいう。本明細書で言及する任意のアルコキシ、チオアルコキシ、またはハロアルコキシ基(例えばR、R’、R”、R、R、R、R、R等)は、1~35個の炭素原子を有してよい。他の実施形態では、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を有する実施形態を含めて、アルコキシ、チオアルコキシ、またはハロアルコキシ基は、1~20個、または1~12個、または1~8個、または1~6個、または1~3個の炭素原子を有す
るであろう。
【0033】
用語「アラルキル」は、アルキル水素原子がアリール基で置き換えられたアルキル部分をいう。アルキル部分の炭素の1つは、アラルキル基が別の部分に付加する場所としての役割を果たす。任意の環または鎖の原子を、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基によって置換することができる。「アラルキル」の非限定的な例としては、ベンジル、2-フェニルエチル、および3-フェニルプロピル基が挙げられる。
【0034】
用語「アルケニル」は、指示された数の炭素原子を含有し、1つまたはそれ以上の炭素-炭素二重結合を有する、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素鎖をいう。任意の原子を、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基によって置換することができる。アルケニル基としては、例えばビニル、アリル、1-ブテニル、および2-ヘキセニルを挙げることができる。二重結合炭素の1つは、場合により、アルケニル置換基が付加する場所となることができる。本明細書で言及する任意のアルケニル基(例えばR、R’、R”、R、R、R、R、R等)は、1~35個の炭素原子を有してよい。他の実施形態では、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を有する実施形態を含めて、アルケニル基は、1~20個、または1~12個、または1~8個、または1~6個、または1~3個の炭素原子を有するであろう。
【0035】
用語「アルキニル」は、指示された数の炭素原子を含有し、1つまたはそれ以上の炭素-炭素三重結合を有する、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素鎖をいう。アルキニル基は、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基によって置換することができる。アルキニル基としては、例えばエチニル、プロパルギル、および3-ヘキシニルを挙げることができる。三重結合炭素の1つは、場合により、アルキニル置換基が付加する場所となることができる。
【0036】
用語「ヘテロシクリル」は、完全に飽和した、部分的に飽和した、または芳香族の、O、N(窒素の原子価を満たすため、および/もしくは塩を形成するため、1つもしくは2つの追加の基(例えばR)が存在してよいことが理解されよう)、またはSから独立に選択された1つまたはそれ以上のヘテロ原子環を構成する原子を有する、単環、二環、三環、または他の多環式の環系をいう。ヘテロ原子または環炭素は、ヘテロシクリル置換基が別の部分に付加する場所となることができる。任意の原子を、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基(例えばヘテロ原子またはX基)によって置換することができる。ヘテロシクリル基としては、例えばテトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ピペリジル(ピペリジノ)、ピペラジニル、モルホリニル(モルホリノ)、ピロリニル、およびピロリジニルを挙げることができる。例として、表現「5~6個の環原子を含有するヘテロ環式環(環原子の1~2個は独立に、N、NH、N(C~Cアルキル)、NC(O)(C~Cアルキル)、O、およびSから選択され;該ヘテロ環式環は場合により、1~3個の独立に選択されたRで置換されている)」としては、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ピペリジル(ピペリジノ)、ピペラジニル、モルホリニル(モルホリノ)、ピロリニル、およびピロリジニルが挙げられる(が、これらに限定されない)。
【0037】
用語「ヘテロシクロアルケニル」は、O、N(窒素の原子価を満たすため、および/もしくは塩を形成するため、1つもしくは2つの追加の基が存在してよいことが理解されよう)、またはSから独立に選択された1つまたはそれ以上(例えば1~4個)のヘテロ原子環原子を有する、部分的に不飽和の単環、二環、三環、または他の多環式炭化水素基をいう。環炭素(例えば、飽和もしくは不飽和)またはヘテロ原子は、ヘテロシクロアルケニル置換基が付加する場所となることができる。任意の原子を、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基によって置換することができる。ヘテロシクロアルケニル基とし
ては、例えばジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、ジヒドロピラニル、4,5-ジヒドロオキサゾリル、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル、1,2,5,6-テトラヒドロピリミジニル、および5,6-ジヒドロ-2H-[1,3]オキサジニルを挙げることができる。
【0038】
用語「シクロアルキル」は、完全に飽和した、単環、二環、三環、または他の多環式炭化水素基をいう。任意の原子を、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基によって置換することができる。環炭素は、シクロアルキル基が別の部分に付加する場所としての役割を果たす。シクロアルキル部分としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、およびノルボルニル(ビシクロ[2.2.1]ヘプチル)を挙げることができる。
【0039】
用語「シクロアルケニル」は、部分的に不飽和の、単環、二環、三環、または他の多環式炭化水素基をいう。環炭素(例えば、飽和または不飽和)は、シクロアルケニル置換基が付加する場所である。任意の原子を、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基によって置換することができる。シクロアルケニル部分としては、例えばシクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、またはノルボルネニルを挙げることができる。
【0040】
本明細書で用いる場合、用語「シクロアルキレン」は、指示された数の環原子を有する、二価単環シクロアルキル基をいう。
【0041】
本明細書で用いる場合、用語「ヘテロシクロアルキレン」は、指示された数の環原子を有する、二価単環ヘテロシクリル基をいう。
【0042】
用語「アリール」は、芳香族単環、二環(2つの縮合環)、または三環(3つの縮合環)、または多環式(3つより多い縮合環)炭化水素環系をいう。1つまたはそれ以上の環原子を、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基によって置換することができる。アリール部分としては、例えばフェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0043】
用語「ヘテロアリール」は、O、N(窒素の原子価を満たすため、および/もしくは塩を形成するため、1つもしくは2つの追加の基が存在してよいことが理解されよう)、またはSから独立に選択された1つまたはそれ以上のヘテロ原子環原子を環中に有する、芳香族単環、二環(2つの縮合環)、三環(3つの縮合環)、または多環式(3つより多い縮合環)炭化水素基をいう。1つまたはそれ以上の環原子を、場合により、例えば1つまたはそれ以上の置換基によって置換することができる。ヘテロアリール基の例としては、2H-ピロリル、3H-インドリル、4H-キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β-カルボリニル、カルバゾリル、クマリニル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル、インダゾリル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル(phenarsazinyl)、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、およびキサンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
一般に、特定の可変部(variable)についての定義が水素および非水素(ハロ、アルキル、アリール等)の両方の可能性を含むとき、用語「水素以外の置換基」は、その特定の可変部についての非水素の可能性を総称していう。
【0045】
一般に、本明細書で挙げられる任意の範囲の限界(端点)は、本発明の範囲内であり、開示された実施形態であると理解されるべきである。さらに、その範囲内の任意の半整数値も検討される。例えば、約0~4の範囲は、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、およびその範囲内の任意の部分集合(例えば約1~2.5)を明示的に開示する。
【0046】
用語「置換基」は、例えば、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルケニル、シクロアルケニル、アリール、またはヘテロアリール基上に、その基の任意の原子でその中の1つまたはそれ以上の水素原子に置き換わり、「置換されている」基をいう。一態様では、ある基への置換基は、独立に、任意の単一の、その置換基について線引きされる、許容される原子もしくは原子の群、またはその2つ以上の任意の組合せである。別の態様では、置換基はそれ自体、上記置換基の任意の1つで置換されてよい。さらに、本明細書で用いる場合、表現「場合により置換されている」は、置換されていない(例えば、Hで置換されている)、または置換されている、を意味する。所定の原子の置換は、原子価によって限定されることが理解されよう。通常の置換基としては、ハロ(例えばF)、C1~12直鎖状または分岐鎖状アルキル、C2~12アルケニル、C2~12アルキニル、C3~12シクロアルキル、C6~12アリール、C3~12ヘテロアリール、C3~12ヘテロシクリル、C1~12アルキルスルホニル、ニトロ、シアノ、-COOR、-C(O)NRR’、-OR、-SR、-NRR’、およびオキソが挙げられ、例えばトリフルオロメトキシ、塩素、臭素、フッ素、メチル、メトキシ、ピリジル、フリル、トリアジル、ピペラジニル、ピラゾイル、イミダゾイル等の部分での、例えば一置換、二置換、または三置換が挙げられ、場合によりそれぞれ1つまたはそれ以上のヘテロ原子、例えばハロ、N、O、S、およびPを含有する。RおよびR’は独立に、水素、C1~12アルキル、C1~12ハロアルキル、C2~12アルケニル、C2~12アルキニル、C3~12シクロアルキル、C4~24シクロアルキルアルキル、C6~12アリール、C7~24アラルキル、C3~12ヘテロシクリル、C3~24ヘテロシクリルアルキル、C3~12ヘテロアリール、またはC4~24ヘテロアリールアルキルである。別途注記しない限り、本明細書に記載するすべての基は、場合により、原子価によって許容される範囲で、1つまたはそれ以上の通常の置換基を含有する。さらに、本明細書で用いる場合、表現「場合により置換されている」は、置換されていない(例えば、Hで置換されている)、または置換されている、を意味する。本明細書で用いる場合、用語「置換されている」は、水素および/または炭素原子が、置換基(例えば通常の置換基)によって除去される、および置き換えられることを意味する。修飾語「場合により置換されている」または「置換されている」を付けずに、アルキルなどの置換基(基)の接頭辞名を使用することは、その特定の置換基が未置換であることを意味すると理解されよう。しかし、修飾語「場合により置換されている」または「置換されている」を付けずに、「ハロアルキル」を使用することはさらに、少なくとも1つの水素原子がハロによって置き換えられたアルキル基を意味すると理解されよう。
【0047】
特定の炭素に関する「を介してコンジュゲートする」は、リンカー基Lの原子が特定の炭素に共有結合している、特定の炭素への連結部が形成されていることを指す。いくつかの実施形態では、アンドロステンジオンの炭素17または炭素3と、リンカーとの間の結合は、いずれかの幾何学的配置でオキシムまたはイミンなどの二重結合を含むであろう。
【0048】
化学発光化合物の「安定性」は、化合物またはコンジュゲートを、典型的には生理的pHの範囲内である6~9のpH範囲の水溶液中に保存する場合に、相対発光量(「RLU」)の減少によって測定される化学発光活性が最小の減少量であることを意味する。別の化合物と比較した、化学発光化合物の「不安定性」の上昇は、化学発光活性のより大きな減少をもたらすであろう。
【0049】
この発明の主な目的は、アンドロステンジオンの検出可能な標識を開示することである。これらの化合物を、分析対象物の同定または定量のためのイムノアッセイにおいて用いてよい。本発明の化合物は、式(I)
【化6】
[式中、Aはアンドロステンジオン部分、「L」は連結部分であり、Ψは化学発光部分である]
の構造を有してよい。いくつかの実施形態では、アンドロステンジオン化合物(A)は、リンカーLへの共有結合的付加を除いて誘導化されていない形態のアンドロステンジオンである。この付加によって、試料中の対応するアンドロステンジオン分析対象物の検出を、改良することができると期待される。典型的には、分析対象物は4-アンドロステンジオンである。
【0050】
いくつかの実施形態では、Ψは構造:
【化7】
[式中、
ΩはCH、O、またはNであり;
Yは-Rもしくは-R-Zから選択され、またはΩがOである場合、Yは存在せず;
Y’は存在しない(すなわち結合である)、または-L-、-R-、-R-L-、-L-L-、-L-R-、-L-R-L、もしくは-R-L-R-から選択されるかのいずれかであり;かつY’はLまたはZへの1つまたはそれ以上の連結部を含み;
は水素、-R、-X、-R-X、-L-R、-L-X、-Z、-R-Z、-L-Z、または-R-L-R-Zであり、
およびRは独立に、水素、-R、電子供与性基、または-Zから選択され;
【0051】
Zは構造:
【化8】
を有する両性イオン基であり;
「q」および「l」は独立に0または1であり;
「r」は独立に0~10の整数であり;
は出現毎に独立に、-O-、-S-、-NH-、-N(R)-、-(CH1~10-、-S(=O)1~2-、-C=C-、-C=C-(CH1~3-、-C(O)-、-O-C(O)-、-C(O)-(CH1~4-、-(CH1~4-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-N(R)-、-C(O)-NH-、-N(R)-C(O)-、-NH-C(O)-、-C(O)-N(R)-(CH1~3-、-(CH1~3-C(O)-N(R)-、-NH-S(O)1~2-、-N(R)-S(O)1~2-、-S(O)1~2-N(R)-、-S(O)1~2-NH-、-(CH1~3-NH-S(O)1~2-、-(CH1~3-N(R)-S(O)1~2-、-(CH1~3-S(O)1~2-N(R)-、-(CH1~3-S(O)1~2-NH-、-O-(CH1~4-、-(CH1~4-O-、-S-(CH1~4-、-(CH1~4-S-、-NH-(CH1~4-、-N(R)-(CH1~4-、-(CH1~4-N(R)-、-(OCH1~10-、-(CHO)1~10-、-(OCHCH1~10-、または-(CHCHO)1~10-であり;
は出現毎に独立に、場合により1~10個のヘテロ原子で置換されている、C1~20二価炭化水素基(例えばアルキル、アルケニル、アリール、フェニル、モノアルキル置換フェニル、ジアルキル置換フェニル、アルキニル、アリールアルキル等)であり;
Rは出現毎に独立に、水素、または場合により1~20個のヘテロ原子で置換されている、C1~35炭化水素(例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはアラルキル)基であり;
R’およびR”は、出現毎に独立に、水素またはC1~10アルキルであり;
は出現毎に独立に、アニオン性基であり;
は出現毎に独立に、水素またはC1~5アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル等)から選択される]
を有する化学発光アクリジニウムである。典型的には、Lは構造
-L-(Z
[式中、
「z」は0または1であり;
は、場合により1~20個のヘテロ原子で置換されている、二価C1~35アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアリールアルキル基であり;
【0052】
は構造:
【化9】
を有する両性イオンリンカー基であり;
「m」は0(すなわち結合である)または1であり;
「n」および「p」は、出現毎に独立に、0(すなわち結合である)~10の整数であり;
はアニオン性基であり;
は、場合により1~10個のヘテロ原子で置換されている、C1~20二価炭化水素基(例えばアルキル、アルケニル、アリール、アルキニル、アリールアルキル等)であり;
R’は水素またはC1~10アルキルである]
を有する。
【0053】
好ましい実施形態では、Ψは式(IIa)
【化10】
の構造を有する。
【0054】
一般に、アニオン性基(Xおよび/またはX)は、直接的または間接的に共有結合的に付加した任意のカチオン性電荷の釣り合いをとり、両性イオンを形成するためのアニオン性電荷を供給する場合がある。いくつかの実施形態では、XおよびXは出現毎に独立に、カルボキシレート(-C(O)O)、スルホネート(-SO )、スルフェート(-OSO )、ホスフェート(-OP(O)(OR)O)、またはオキシド(-O)であり、Rは水素、または場合により最大10個のヘテロ原子で置換されているC1~12炭化水素である。
【0055】
アクリジニウム核の正電荷を帯びた窒素に付加したR基は、場合により最大20個のヘテロ原子(例えばN、O、S、P、Cl、Br、F等)で置換され、したがって正電荷を帯びたアクリジニウム窒素原子と組み合わせて両性イオン基を構成する場合がある。例
えば、アクリジニウム窒素に付加したスルホプロピルまたはスルホブチル基は、両性イオン対を形成する場合がある。R基は中性(例えばメチル)であるか、またはそれ自体両性イオン(例えばRは-Z、-R-Z、-L-Z、もしくは-R-L-R-Z)であってもよい。いくつかの実施形態では、Rは構造:
【化11】
を有する。化合物が電荷を帯びている(例えばRが正味で中性の電荷を有する、等)場合、化合物は場合により、アクリジニウム核の正電荷を帯びた窒素と釣り合うように対イオンを含んでよい。本質的には対イオンの選択に限定はないが、いくつかの実施形態では、対イオンはCHSO 、FSO 、CFSO 、CSO 、CHSO 、ハライド(例えばCl、F、Br等)、CFCOO、CHCOO、またはNO から選択される。いくつかの実施形態では、Rはメチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルである。他の実施形態では、Rは-R-Xを含み、-Xはスルホネート(-SO )である。いくつかの実施形態では、Rは-R-Xであり、-Xはスルホネート(-SO )である。いくつかの実施形態では、Rは-R-X、または-L-Zである。いくつかの実施形態では、Lは-S(O)-NH-、または-(CH1~3-S(O)-NH-である。Rはスルホプロピル基(-(CH-SO )を含んでよい。好ましい実施形態では、Rはスルホプロピルである。
【0056】
化学発光アクリジニウムの性質は特に制限されず、化学発光アクリジニウムエステルおよびスルホンアミドを含むが、限定するものではない。好ましい実施では、化学発光アクリジニウムΨはアクリジニウムエステルである。例えば、Ψは構造:
【化12】
を有してよい。好ましい実施形態では、Ψは式(IIb):
【化13】
[式中、R~Rは独立に水素、またはC1~35アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、もしくはアミノであり;LはLに(例えばLまたはZに)共有結合している]
の構造を有する。いくつかの実施形態では、式(IIa)のLは-C(O)-NH-である。いくつかの実施形態では、RおよびRはそれぞれメチルであり、RおよびRはそれぞれ水素である。
【0057】
化学発光アクリジニウムエステルの置換基を修飾し、発光の速度および収率を変化させ、非特異的結合を減少させて安定性を向上させ、または親水性を向上させてよいが、本発明に重要なことは、化学発光アクリジニウムエステルが、アンドロステンジオン化合物(A)と抗体との結合、特に対応するコンジュゲートしていないアンドロステンジオン化合物の結合を実質的に妨げないことであると、当業者は認識するであろう。置換基の可変性の例は、参照によって本明細書に組み入れられている、Natrajanらの米国特許第7,309,615号に開示されており、これはC2および/またはC7にアルコキシ基(OR*)を含有する高量子収率アクリジニウム化合物を記載し、ここでR*はスルホプロピル部分、もしくはエチレングリコール部分、またはそれらの組合せを含む基である。いくつかの実施形態では、Rおよび/またはRは、アルコキシ基(例えばORおよび/またはOR*)であってよい。Natrajanらはまた、参照によって全体が本明細書に組み入れられている国際公開WO2015/006174号において、C2および/またはC7位にある種の電子供与性官能基を保有する、親水性の高量子収率化学発光アクリジニウムエステルを同様に記載している。Rおよび/またはRのこれらの電子供与性基は、構造:
【化14】
[式中、R~R14は出現毎に独立に、メチル基または-(CHCHO)CH基から選択され、式中、aは1~5の整数である]
を有してよい。いくつかの実施形態では、RおよびRは出現毎に独立に、水素、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等)、またはアルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、もしくはイソプロポキシ等)である。いくつかの実施形態では、RおよびRはそれぞれ水素である。他の実施形態では、RまたはRは水素であり、RまたはRの他方は、アルコキシまたは電子供与性基である。
検出可能なコンジュゲートは、化学発光アクリジニウムスルホンアミドを含んでよい。例えば、Ψは式(IIc)の構造:
【化15】
[式中、Y”は存在しない、または-L-、-R-、もしくは-R-L-のいずれかであり、ここでY”はLに(例えばLまたはZに)共有結合的に付加している]を有してよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、Rは場合により置換されている、5員または6員の二価芳香族炭化水素である。例えば、任意のRは構造:
【化16】
[式中、R14は出現毎に独立に、水素、ハロゲン、またはRである]
を有してよい。いくつかの実施形態では、Rは構造:
【化17】
[式中、R~Rは独立に、C1~35アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、またはアミノである]
を有する。いくつかの実施形態では、RおよびRはそれぞれ水素であり、RおよびRはそれぞれメチルである。いくつかの実施形態では、参照によって全体が本明細書に組み入れられている、Lawら、Journal of Bioluminescence and Chemiluminescence 4:88~89頁(1989)に開示されるように、Ψはフェノールエステル上に2つの隣接するメチル基を含み、結合を安定化する。いくつかの実施形態では、Ψは構造:
【化18】
を有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、A、L、およびΨはそれぞれ共有結合的に連結している。AとΨとの間の共有結合連結部の部分は、ペプチド、タンパク質、または高分子と共有結合的連結部を形成するための反応性官能基から形成される場合があり、官能基は求電子性基、求核性基、または光反応性基を含む。反応性官能基は、アミン反応性基、チオール反応性基、カルボキシ反応性基、マレイミジル反応性基、または炭水化物反応性基であってよい。例えば、連結部は、
【化19】
から選択される反応性基から形成される場合がある。いくつかの実施形態では、化合物は、構造-NH-C(O)-、または-C(O)-NH-を有するリンカー基を含む。好ましい実施形態では、化合物(例えばL、Ψ等)は、少なくとも1つの-NH-C(O)-、または-C(O)-NH-リンカー基を含む。
【0060】
AとΨとの間の共有結合的連結部(例えばL)は、場合により最大20個のヘテロ原子(例えばN、O、S、P、Cl、F、Br等)で置換されている、二価C1~20アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアリールアルキル基を含んでよい。いく
つかの実施形態では、Lは両性イオンリンカーを含む。Lは構造-L-(Z-[式中、zは0または1である]を有してよい。Lは構造
-(X0~1-(R0~5-(X0~1-(R0~5-(X0~1-(R0~5-(X0~1-(R0~5
[式中、
は=N-、-O-、-S-、または-NR-から選択され;
~Xは独立に、-O-、-S-、-NR-、-C(O)-、-NR-C(O)-、-C(O)-NR-、-O-C(O)-、もしくは-C(O)-O-、-S-C(O)-、または-C(O)-S-から選択され;
は出現毎に独立に、-CH-、-(CHCHO)-、または-(OCHCH)-から選択され;
ただしLは、AとΨとの間(またはAとZとの間)の鎖に少なくとも1つの原子(または少なくとも2つの原子)を含む]
を有してよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、Lおよび/またはΨは、-C(O)-NH-を含む。いくつかの実施形態では、Lは構造:
【化20】
を有する。
【0062】
検出可能なコンジュゲートは、構造:
【化21】
を有してよい。
【0063】
検出可能な標識は、アンドロステンジオン化合物(A)の特性を改良するため、ジメチルアクリジニウムエステル(DMAE)部分と、両性イオンリンカーまたはポリエチレングリコール由来リンカーを含む、両性イオンリンカーとを含んでよい。Ψが両性イオンリンカー、もしくはポリエチレングリコール由来リンカー、またはジメチルフェニルエステルを含む場合、非特異的結合、親水性、または化合物安定性などの特性が改良される場合がある。いくつかの実施形態では、Zは構造:
【化22】
を有する。大多数の実施形態では、R’は水素、または低級アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル等)である。
【0064】
いくつかの実施形態では、検出可能なコンジュゲートは式(III)の構造:
【化23】
を有してよい。
【0065】
検出可能なコンジュゲートは、ジメチルアクリジニウムエステル(DMAE)部分、および式(IIIa)の構造:
【化24】
を有する両性イオンリンカーを含んでよい。いくつかの実施形態では、式(IIIa)における構造は、両性イオンリンカーを含まない(例えばLがL)。いくつかの実施形態では、LはLであり、Lは-(CHCHO)1~10-(例えば-(CHCHO)-等)、または-(OCHCH1~10-(例えば-(OCHCH-等)を含む。
【0066】
好ましい実施形態では、化合物は式(IIIb)
【化25】
の構造を有する。
【0067】
検出可能な標識のアンドロステンジオンは、典型的には、アンドロステンジオン(例えば4-アンドロステンジオニル)の一価基である。コンジュゲーションの場所が炭素3または17である場合、そこに付加した=Oは、=Nによって置き換えられ、オキシム基を形成する場合がある。オキシム基は、いずれか一方の幾何学的配置(すなわちEもしくはZ)、または2つの混合物であってよい。いくつかの実施形態では、アンドロステンジオンは、アンドロステンジオン部分の炭素3、6、7、19、または17の任意の1つを介して化合物とコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、アンドロステンジオンは、炭素4~16の任意の1つを介してコンジュゲートする。好ましい実施形態では、アンドロステンジオンは、アンドロステンジオンの炭素6または7を介してコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、A4は、特定の炭素のα位(例えば6α、7α等)を介してコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、A4は、特定の炭素のβ位(例えば6β、7β等)を介してコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、化合物はαおよびβ配置のラセミ混合物として提供される。
【0068】
例示的な化合物を表1に開示する。コンジュゲートを記載するために用いる場合、「Z」は両性イオンリンカーをいい、「CMO」はカルボキシメチルオキシムリンカーをいい、「CME」はカルボキシメチルエーテルリンカーをいい、「CETE」はカルボキシエチルチオエーテルをいい、「ZAE」は両性イオンアクリジニウムエステルをいい(典型的には、示した試料中のN-スルホプロピルジメチルアクリジニウムエステル(「NSP-DMAE」))、「ISODIZAE」は、イソプロポキシ官能基が付加し、完全な両性イオン基(NとXとの両方を含む)がアクリジニウム核の正のNに付加したアクリジニウム核をいう。
【0069】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0070】
化合物は、市販の出発原料、文献で公知の化合物、または容易に製造される中間体から、標準的な合成方法、および当業者に公知の手順を使用することによって製造することができる。有機分子の製造のための標準的な合成方法および手順、ならびに官能基の変換および操作は、関係する科学文献から、または当分野における標準的な教科書から、容易に得ることができる。典型的な、または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力等)が与えられる場合、別途述べていない限り、他のプロセス条件を用いることもできることが理解されよう。最適な反応条件は、特定の反応物または用いる溶媒によって変化する場合があるが、このような条件は当業者によって、所定の最適化手順によって決定することができる。有機合成の当業者は、本明細書に記載する化合物の形成を最適化するため、提示された合成段階の性質および順序を変化させてよいことを認識するであろう。
【0071】
本明細書に記載する化合物の合成において有用な合成化学変換(保護基的方法論を含む)は、当技術分野で公知であり、例えばR.C.Larock、Comprehensive Organic Transformations、2d.Ed.、Wiley-VCH Publishers(1999);P.G.M.Wuts and T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、4th Ed.、John Wiley and Sons(2007);L.Fieser and M.Fieser、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994);およびL.Paquette、ed.、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)、ならびにそれらの後続の版に記載されるものなどが挙げられる。
【0072】
本明細書に記載するプロセスは、当技術分野で公知である任意の好適な方法によってモニタリングすることができる。例えば、核磁気共鳴分光法(例えばHまたは13C)、赤外スペクトル分析(FT-IR)、分光光度法(例えばUV-可視光)、もしくは質量分析(MS)などの分光学的手段によって、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もしくは薄層クロマトグラフィー(TLC)などのクロマトグラフィーによって、生成物の形成をモニタリングすることができる。
【0073】
化合物の製造には、各種化学基の保護および脱保護が関与することができる。保護および脱保護の必要性、および適当な保護基の選択は、当業者が容易に決定することができる。保護基の化学的性質は、例えば参照によって全体が本明細書に組み入れられている、Greeneら、Protective Groups in Organic Synthesis、2d.Ed.、Wiley & Sons、1991に見出すことができる。
【0074】
本明細書に記載するプロセスの反応は、有機合成の分野における当業者ならば容易に選択することができる好適な溶媒中で実行することができる。好適な溶媒は、反応を実行する温度、すなわち溶媒の凝固温度から溶媒の沸騰温度の範囲であることができる温度において、出発原料(反応物)、中間体、または生成物に実質的に非反応性であることができる。与えられた反応は、1つの溶媒、または2つ以上の溶媒の混合物中で実行することができる。特定の反応段階次第で、特定の反応段階について好適な溶媒を選択することができる。
【0075】
化合物のラセミ混合物の分割は、当技術分野で公知の多数の方法の任意のものによって実行することができる。例えば、立体異性体の絶対配置は、COSY、NOESY、HMBC、およびHSQCなどの、1Dおよび2D NMR技法によって決定してよい。これらのNMR技法の具体的な実施は、それぞれ参照によって全体が本明細書に組み入れられている、Hauptmann,Hら、Bioconjugate Chem.11(2000):239~252頁、またはBowler,J、Steroids、54/1(1989):71~99頁に見出される。別の例示的方法としては、対応するアルコールまたはアミンの、それぞれモッシャーエステルまたはアミド誘導体の製造が挙げられる。このとき、エステルまたはアミドの絶対配置は、プロトンおよび/または19F NMR分光法によって決定される。例示的な方法としては、光学活性の塩形成有機酸である、「キラル分割酸」を用いた分別再結晶が挙げられる。分別再結晶法のための好適な分割剤は、例えばDおよびL体の酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸などの光学活性な酸、または各種光学活性のカンファースルホン酸である。ラセミ混合物の分割はまた、光学活性分割剤(例えばジニトロベンゾイルフェニルグリシン)が充填されたカラムで溶離することによって、実行することもできる。好適な溶離溶
液組成物は、当業者が決定することができる。
【0076】
例示的なアンドロステンジオン誘導体の出発原料は、Steraloids,Inc.(Newport、RI)から得てよい。合成に用いた4種のアンドロステンジオン誘導体を下に示す(波状の結合は、いずれか一方の配置異性体、または各異性体の組合せを指す)。
【0077】
【化26】
【0078】
本明細書では、検出可能なコンジュゲートを合成するために有用な、アンドロステンジオンコンジュゲートも提供される。これらのコンジュゲートは構造:
【化27】
を有してよい。
【0079】
それぞれ参照によって全体が本明細書に組み入れられている、Natrajanらへの米国特許第6,664,043号、Natrajanらへの第7,309,615号、Natrajanらへの第9,575,062号、またはNatrajanへの第9,487,480号に記載されるように、特にそれらに記載される両性イオンアクリジニウムエステルおよびその合成について、典型的には、共有結合的連結部を形成するための反応性官能基を含む両性イオンアクリジニウムエステル(「ZAE」)は、本発明の化合物を合成するために使用してよい。例えば、両性イオンアクリジニウムエステル出発原料は、両性イオン部分にN-スルホプロピル(「NSP」)基を含んでよく、ならびに/または電荷を帯びたアクリジニウム核に結合した電荷を帯びた窒素原子を含んでよく(「DIZAE」)、ならびに/または立体的に安定化されたジメチルアクリジニウムエステル(「DMAE」)を含んでよく、ならびに/またはイソプロポキシ官能化アクリジニウム核(「ISO」)を含んでよく、ならびに/またはアクリジニウムエステルと反応性官能基との間に、両性イオン性の(「Z」)および/もしくはヘキサ(エチレン)グリコールから誘導された(「HEG」)および/もしくはグルタレートから誘導された(例えば-C(O)-(CH-C(O)-)連結部分を含んでよい。反応性官能基は、NH、またはN-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(「NHS」)であってよい。出発原料として用いてよい例示的なアクリジニウムエステルを、下の表2に与える。
【0080】
【表6】
【表7】
【0081】
化学発光アンドロステンジオンコンジュゲートは、アクリジニウムスルホンアミド反応物の使用を通じて合成してもよい。例えば、参照によって全体が本明細書に組み入れられている、Mattinglyらへの米国特許第5,543,524号に開示されるアクリジニウムスルホンアミドは、本明細書に開示する化学発光アンドロステンジオンコンジュゲートの製造のための、有用な出発原料である。
【0082】
化学発光アンドロステンジオンコンジュゲートは、アンドロステンジオンの結合相手との結合について競合することができるある種の分析対象物の、判定または定量のためのアッセイにおける標識として有用である。最も典型的には、測定する分析対象物は4-アンドロステンジオンである。
【0083】
アッセイは例えば、典型的には、高分子分析対象物とも呼ばれる大型分子の検出が関与し、抗体などの結合分子を用いる、「競合的」イムノアッセイであってよい。抗体は、粒子、ビーズ、膜、マイクロタイタープレート、または任意の他の固体表面などの固相に固定され、または付加している。本明細書に記載する化合物を用いた、アンドロステンジオンについての競合的アッセイの概略図を図1に表す。
【0084】
競合的不均一系アッセイの例では、結合した分析対象物についての抗体(例えば、3C3、3H10、4G8ウシモノクローナル抗体)を有する担体を、分析対象物を含有する疑いがある試料と、本明細書に記載する化学発光アンドロステンジオンコンジュゲート(または「標識化類似体」)とを含有する媒体と接触させる。試料の分析対象物は、分析対象抗体への結合について、標識化類似体と競合する。担体と媒体とを分離した後、従来の技法によって担体または媒体の標識活性を判定するが、標識活性は試料中の分析対象物の量に関係する。上記競合的不均一系アッセイの変形では、担体が分析対象物類似体を含み、本明細書に記載する原理に従い、抗体試薬への結合について、試料の分析対象物と競合する。標識化分析対象物類似体は、標識またはトレーサーと呼ばれることが多い化学発光分子または蛍光分子と、共有結合的に付加してよい。
【0085】
固定された抗体を含む固相が、分析対象物と標識化分析対象物とを含有する試料と混合されると、分析対象物または標識化分析対象物との間に、結合複合体が形成される。この種類のアッセイは、固相が関与するため、不均一系アッセイと呼ばれることが多い。次いで、結合複合体に関連する化学発光シグナルを測定することができ、試料中の分析対象物の有無を推測することができる。通常、結合複合体はシグナル発生の前に、過剰な標識化分析対象物などの結合反応成分の残りから分離される。例えば、結合複合体が磁気ビーズと会合している場合、ビーズと会合している結合複合体をバルク溶液から分離するために、磁気を用いることができる。
【0086】
一連の「基準」、すなわち分析対象物の既知濃度を用いることによって、既知の標識化分析対象物についての「用量-反応」曲線を作成することができる。したがって、用量-反応曲線は、ある量の測定シグナルを分析対象物の特定濃度と相関させる。競合的アッセイでは、結合複合体からの化学発光を測定する場合、分析対象物の濃度が上昇するにつれて、シグナルの量が減少する。次いで、高分子分析対象物を含有する未知試料により発生するシグナルを、用量-反応曲線と比較することによって、未知試料中の分析対象物の濃度を算出することができる。
【0087】
抗体などの結合分子を固相に付加する方法論は、従来技術において周知である。例えば、グルタルアルデヒドなどの架橋分子を用いることによって、表面にアミンを含有する粒子に、抗体を共有結合的に付加することができる。付加は非共有結合的であってもよく、ポリスチレンビーズおよびマイクロタイタープレートなどの固相の表面への、結合分子の単純な吸着が関与してもよい。抗体および他の結合タンパク質などの結合分子の標識化も、従来技術において周知であり、通常、コンジュゲーション反応と呼ばれ、標識化抗体はコンジュゲートと呼ばれることが多い。典型的には、標識のアミン反応性部分は、抗体のアミンと反応し、アミド連結部を形成する。抗体と標識との間の他の連結部、例えばチオエーテル、エステル、カルバメート等も、従来技術において周知である。
【0088】
本発明の別の態様では、アンドロステンジオンに結合した化学発光アクリジニウム化合物を含む分析対象物の、検出のための試薬を提供する。試薬は、化学発光アクリジニウム化合物約0.1~約100ng/mL、または化学発光アクリジニウム化合物約1~約50ng/mL、または化学発光アクリジニウム化合物約5~約30ng/mLを含んでよい。いくつかの実施形態では、緩衝剤をさらに含む試薬中に、化合物を供給する。
【0089】
典型的には、試料中の分析対象物の検出または定量のためのアッセイは、
(a)検出可能なコンジュゲートを準備する工程;
(b)該分析対象物との結合複合体を形成することができ、かつ該検出可能なコンジュゲートとの結合複合体を形成することができる分子を固定した、固体担体を準備する工程;
(c)該化合物、該固体担体、および該試料を混合する工程;
(d)該固体担体を該混合物から分離する工程;
(e)該固相と複合体形成した任意のアクリジニウム標識の化学発光を誘発する工程;
(f)ルミノメーターで発光の量を測定する工程;ならびに
(g)放出された光の量と、放出された光の量を分析対象物の既知濃度に関連付ける基準用量反応曲線とを比較することによって、該分析対象物の存在を検出する、またはその濃度を算出する工程
を含む。
【0090】
典型的には、検出または定量される分析対象物は、アンドロステンジオン(例えば4-アンドロステンジオン等)である。いくつかの実施形態では、試料は哺乳動物(例えばヒト)に由来する。いくつかの実施形態では、試料は唾液、および/または血液、および/
または血清を含む。いくつかの実施形態では、試料は唾液、および/または血液、および/または血清である。
【0091】
いくつかのアッセイでは、内因性結合物質、例えば分析対象物に結合する血漿または血清タンパク質などから分析対象物を放出させるため、分析する試料を前処理に供する。内因性結合物質からの分析対象物の放出は、例えば温浸剤もしくは放出剤の添加、または連続して用いる温浸剤と放出剤との組合せによって実行してよい。温浸剤は、内因性結合物質を分解し、もはや分析対象物と結合できないようにするものである。
【0092】
本明細書に記載する原理に従って、試料の一部に関するアッセイを実施するための条件は、一般に最適なアッセイ感度をもたらす、中程度のpHの水性緩衝媒体中でアッセイを実行することを含んでよい。水性媒体は、水だけであってもよく、または共溶媒0.1~約40体積%を含んでもよい。媒体のpHは約4~約11、または約5~約10、または約6.5~約9.5の範囲内であってよい。通例、溶液のpH値は、任意の特異的結合ペアの結合メンバーの最適な結合と、アッセイの他の試薬、例えばシグナル生成系のメンバーについて最適なpHなどの間の妥協であろう。所望のpHを達成し、アッセイ中のpHを維持するために、各種緩衝剤を用いてよい。実例となる緩衝剤としては、例えばボレート、ホスフェート、カーボネート、TRIS、バルビタール、PIPES、HEPES、MES、ACES、MOPS、およびBICINEが挙げられる。
【0093】
アッセイ方法において、各種補助材料を使用してよい。例えば、媒体は緩衝剤に加えて、媒体用または使用される試薬用の安定剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、媒体は、タンパク質(例えばアルブミン)、有機溶媒(例えばホルムアミド)、第四級アンモニウム塩、ポリアニオン(例えばデキストラン硫酸)、結合強化剤(例えばポリアルキレングリコール)、多糖(例えばデキストラン、トレハロース等)、およびそれらの組合せを含んでよい。
【0094】
類似体の化学発光の誘発は、既知量の化学発光誘発試薬(triggering reagent)の添加によって行ってよい。化学発光誘発試薬は、酸性または塩基性であってよい。複数の化学発光誘発試薬を、連続して添加してもよい。例えば、最初に酸性溶液、続いて塩基性溶液を添加してよい。いくつかの実施形態では、化学発光誘発試薬は、過酸化水素、過酸化水素塩、硝酸、硝酸塩、水酸化ナトリウム、アンモニウム塩、またはそれらの組合せを含む。
【実施例0095】
以下の実施例は、代表的な数種の化合物の合成、不均一系競合的アッセイにおける、アンドロステンジオン試料の測定でのそれらの化合物の使用を表す。したがって、実施例は説明を意図し、本開示を限定することを意図しない。具体的に例示されない追加の化合物を、本明細書に記載する方法と組み合わせて、従来の方法を用いて合成してよい。
【実施例0096】
A4(7)-プロピオン酸中間体の合成
【化28】
【0097】
撹拌子、マグネシウム切削片(164mg、6.82mmol)、および無水THF(6mL)を投入した丸底フラスコ(RBF)に、40℃で撹拌しながら、(3-ブロモプロポキシ)-tert-ブチルジメチルシラン(1654mg、6.53mmol)を加えた。得られた混合物を、マグネシウム切削片の大部分が消失するまで、40℃で撹拌した。反応混合物を室温(RT)まで冷却した。沈殿物をすべて溶解させるため、追加のTHF(10mL)を加え、均一なグリニャール試薬溶液を形成した。このグリニャール試薬溶液(16mL)を、THF(10mL)中CuI(597mg、3.14mmol)の懸濁液に、-40℃~-30℃で15分かけて加えた。得られた混合物を10分間、-40℃~-30℃で撹拌し、有機クプラート溶液を形成した。次いで、4,6-アンドロスタジエン-3,17-ジオン(1mL THF溶液中150mg、0.53mmol)を、有機クプラート溶液に加えた。得られた混合物を、-40℃~-30℃で1時間撹拌した。反応物を-40℃~-30℃で撹拌しながら、氷酢酸(AcOH、2mL)を加えた。得られた混合物を30分撹拌した。飽和NHCl水溶液(30mL)を加え、さらに20分、RTで撹拌した。得られた混合物を、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)で3回抽出した。合わせたMTBE抽出溶液を飽和食塩水で洗浄し(2回)、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)によって精製し、αおよびβの混合物として、純粋な所望の生成物A4-7-PrOTBSを得た(181mg、74%)。MS(M+H、459.3)。
【0098】
THF(2mL)中A4-7-PrOTBS(176mg、0.384mmol)の溶液に、0℃(氷浴)で撹拌しながら、1.0MのTHF溶液(1.5mL、1.5mmol)を加えた。得られた混合物を氷浴から取り出し、RTで1時間撹拌した。飽和食塩水(8mL)を反応物に加えた。得られた混合物を30分撹拌し、次いでEtOAcで3回抽出した。合わせたEtOAc抽出溶液を飽和食塩水で洗浄し(2回)、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)によって精製し、αおよびβの混合物として、純粋な所望の生成物A4-7-PrOHを得た(92.9mg、70%)。MS(M+
Na、367.2)。
【0099】
A4-7-PrOH(87.5mg、0.255mmol)を、MeCN(3mL)中に溶解させた。過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(「TPAP」、18.9mg、0.0538mmol)を、MeCN(2mL)中に溶解させた。TPAPのMeCN溶液を、N-メチルモルホリンN-オキシド(「NMO」)一水和物(366mg、2.71mmol)に撹拌しながら加え、すべての固体を溶解させた。次いで、NMO-TPAP溶液をA4-7-PrOH溶液に、撹拌しながら加えた。得られた混合物をRTで1時間撹拌した。1時間後、2-PrOH(1mL)を混合溶液に加えて1時間撹拌し、過剰なNMOをクエンチした。反応混合物溶液を直接、乾燥シリカゲルカートリッジに装填した。シリカゲルカートリッジを、EtOAc中5%HOAcで洗浄した。回収したEtOAc中5%HOAc溶液を濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物を、HPLC(水中00.05%TFA/MeCN中0.05%TFA)によって精製し、αおよびβの混合物として、純粋な所望の生成物A4-7-プロピオン酸を得た(51.6mg、57%)。MS(M+Na、367.2)。
【実施例0100】
A4(3)-CMO-Z1-ZAEコンジュゲートの合成
A4(3)-カルボキシメチルオキシム(「CMO」)-Z-ZAEコンジュゲートの合成を、下に記載する合成スキーマを用いて行った。
【0101】
【化29】
【0102】
(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(「BOP」)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(「(iPR)NEt」)、およびN,N-ジメチルホルムアミド(「DMF」)の存在下、4-アンドロステン-3,17-ジオン3-O-カルボキシメチルオキシムナトリウム塩を、NSP-DMAE-Z-NHと反応させることによって、A4(3)-CMO-Z-ZAEもまた合成した。HO100μLとDMF900μLを混合することによって、10%HO:90%DMF溶液(vol:vol)を製造した。4-アンドロステン-
3,17-ジオン3-O-カルボキシメチルオキシムナトリウム塩(1.1mg、2.9μmol)、NSP-DMAE-Z-NH(1.3mg、1.7μmol)、およびBOP(1.7mg、3.8μmol)の混合物を、HO:DMF溶液333μLに加えた。溶液を十分に混合し、(iPr)NEt(0.9μL、0.7mg、5.4μmol)を加えた。(iPr)NEt塩基を加えると、溶液は黄色から無色になった。反応混合物を室温で終夜、19.1時間撹拌した。
【0103】
終夜撹拌した後、反応混合物について、Phenomenex Bondclone C18、10μm、300×3.9mmカラム、および溶離液(A=トリフルオロ酢酸、TFA0.05%を含む水;B=TFA0.05%を含むアセトニトリル)の多段グラジエント(39分で0%→39%B;1分で39%→100%B;6分間100%Bを保持)を用いて、流速1.0mL/分、インジェクションループサイズ250μL、および検出波長260nmで、分析用高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を行った。分析用HPLCは、90%の生成物への変換を示した。混合物を-70℃で72時間保存した。反応混合物について、セミ分取HPLCを用いた精製を行った。反応混合物について、YMC-Pack ODS-A、No.3025000136(W)、C18、10μm、250×30mmカラム、および溶離液(A=トリフルオロ酢酸、TFA0.05%を含む水、B=TFA0.05%を含むアセトニトリル)の50分にわたる10%B→70%Bのグラジエントを用いて、流速20.0mL/分、インジェクションループサイズ5mL、および検出波長262nmで、分取HPLCを行った。生成物は、34.1~34.9分の保持時間において、2つの異性体ピークとして溶離した。ピーク画分を回収し、-70℃で冷凍して凍結乾燥させ、2つの別の黄色粉末を生成した(合計収率65%)。HPLC、およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化法TOF-MS(「MALDI TOF-MS」)を用いて、各画分を特性評価した。MALDI TOF-MS分析のため、各試料を0.05~2.00mg/mLの濃度で、1:1のアセトニトリル+0.05%トリフルオロ酢酸:水+0.05%トリフルオロ酢酸に溶解させた。この混合物を、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(「HCCA」)マトリックス溶液と、約1:1比で混合し、ターゲットプレート上にスポットした。ノイズに対して良好なシグナルを発生させるため、必要であれば濃度を調整した。MALDI TOF-MSを、ポジティブイオンのリニアまたは反射モードで実行した。保持時間34.15分の画分(93.54%純度)は、MALDI TOF-MSピーク1085.426(リニアポジティブモード)、および1084.990(リフレクターポジティブモード)を有していた。保持時間34.05分の画分(89.63%純度)は、MALDI TOF-MSピーク1084.782(リニアポジティブモード)、および1084.704(リフレクターポジティブモード)を有していた。
【実施例0104】
A4(17)-CMO-Z-ZAEコンジュゲートの合成
A4(17)-CMO-Z-ZAEコンジュゲートの合成を、下に記載する合成スキーマを用いて行った。
【0105】
【化30】
【0106】
(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(「BOP」)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(「(iPR)NEt」)、およびN,N-ジメチルホルムアミド(「DMF」)の存在下、4-アンドロステン-3,17-ジオン17-カルボキシメトキシルオキシムを、NSP-DMAE-Z-NHと反応させることによって、A4(17)-CMO-Z-ZAEコンジュゲートもまた合成した。HO100μLとDMF900μLを混合することによって、10%HO:90%DMF溶液(vol:vol)を製造した。4-アンドロステン-3,17-ジオン17-カルボキシメトキシルオキシム(1.1mg、3.1μmol)、NSP-DMAE-Z-NH(1.3mg、1.7μmol)、およびBOP(1.9mg、4.3μmol)の混合物を、HO:DMF溶液333μLに加えた。溶液を十分に混合し、(iPr)NEt(0.9μL、0.7mg、5.4μmol)を加えた。(iPr)NEt塩基を加えると、溶液は黄色から無色になった。反応混合物を室温で終夜、20.2時間撹拌した。
【0107】
終夜撹拌した後、反応混合物について、Phenomenex Bondclone C18、10μm、300×3.9mmカラム、および溶離液(A=トリフルオロ酢酸、TFA0.05%を含む水;B=TFA0.05%を含むアセトニトリル)の多段グラジエント(1分間0%B;60分で0%→60%B;3分で60%→100%B;6分間100%Bを保持)を用いて、流速1.0mL/分、インジェクションループサイズ250μL、および検出波長260nmで、分析用高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を行った。分析用HPLCは、65%の生成物への変換を示した。混合物を-70℃で72時間保存した。反応混合物について、セミ分取HPLCを用いた精製を行った。反応混合物について、YMC-Pack ODS-A、No.3025000136(W)、C18、10μm、250×30mmカラム、および溶離液(A=トリフルオロ酢酸、TFA0.05%を含む水、B=TFA0.05%を含むアセトニトリル)の50分にわたる10%B→70%Bのグラジエントを用いて、流速20.0mL/分、インジェクションループサイズ5mL、および検出波長262nmで、分取HPLCを行った。生成物は、32.7~34.0分の保持時間においてピークを溶離した。ピーク画分を回収し、-
70℃で冷凍して凍結乾燥させ、黄色粉末を生成した(1.2mg、合計収率65%)。HPLCおよびMALDI TOF-MSを用いて、画分を特性評価した。画分は、MALDI TOF-MSピーク1084.718(リニアポジティブモード)、および1084.722(リフレクターポジティブモード)を有していた。
【実施例0108】
A4(19)-CME-Z-ZAEコンジュゲートの合成
A4(19)-カルボキシメチルエーテル(「CME」)-Z-ZAEコンジュゲートの合成を、下に記載する合成スキーマを用いて行った。
【0109】
【化31】
【0110】
(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(「BOP」)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(「(iPR)NEt」)、およびN,N-ジメチルホルムアミド(「DMF」)の存在下、3,17-ジオキソ-4-アンドロステン-19-イルカルボキシメチルエーテルを、NSP-DMAE-Z-NHと反応させることによって、A4(17)-CMO-Z-ZAEコンジュゲートもまた合成した。参照によって全体が本明細書に組み入れられている、アンドロステンジオンコンジュゲート合成に関する、RA4、Pemmaraju Narashimaら、Journal of Steroid Biochemistry
17(5)、523~527頁(1982)に開示されるように、3,17-ジオキソ-4-アンドロステン-19-イルカルボキシメチルエーテルを合成した。HO100μLとDMF900μLを混合することによって、10%HO:90%DMF溶液(vol:vol)を製造した。3,17-ジオキソ-4-アンドロステン-19-イルカルボキシメチルエーテル(6.8mg、1.9μmol)、NSP-DMAE-Z-NH(13.8mg、18.6μmol)、およびBOP(13.3mg、30.1μmol)の混合物を、HO:DMF溶液952μLに加えた。溶液を十分に混合し、(iPr)NEt(9.6μL、7.1mg、5.5μmol)を加えた。(iPr)NEt塩基を加えると、溶液は黄色から無色になった。
【0111】
1.5時間後、分析用HPLCは、94%の生成物への変換を示した。反応混合物について、Phenomenex Bondclone C18、10μm、300×3.9mmカラム、および溶離液(A=トリフルオロ酢酸、TFA0.05%を含む水;B=TFA0.05%を含むアセトニトリル)の多段グラジエント(1分間0%B;30分で0
%→100%B;6分間100%Bを保持)を用いて、流速1.0mL/分、インジェクションループサイズ250μL、および検出波長260nmで、分析用HPLCを行った。分析用HPLCは、94%の生成物への変換を示した。混合物を-70℃で24時間保存した。反応混合物について、セミ分取HPLCを用いた精製を行った。反応混合物について、YMC-Pack ODS-A、No.3025000136(W)、C18、10μm、250×30mmカラム、および溶離液(A=トリフルオロ酢酸、TFA0.05%を含む水、B=TFA0.05%を含むアセトニトリル)の50分にわたる10%B→70%Bのグラジエントを用いて、流速20.0mL/分、インジェクションループサイズ5mL、および検出波長261nmで、2つのインジェクションの分取HPLCを行った。生成物は、21.9~23.8分の保持時間においてピークを溶離した。ピーク画分を回収し、-70℃で冷凍して凍結乾燥させ、黄色粉末を生成した(7.0mg、合計収率35%)。HPLCおよびMALDI TOF-MSを用いて、画分を特性評価した。画分は、MALDI TOF-MSピーク1085.400(リニアポジティブモード)、および1085.382(リフレクターポジティブモード)を有していた。
【実施例0112】
A4(6β)-ヘミスクシナート-Z-ZAEコンジュゲートの合成
A4(6β)-ヘミスクシナート-Z-ZAEコンジュゲートの合成を、下に記載する合成スキーマを用いて行った。
【0113】
【化32】
【実施例0114】
A4(6β)-カルバメート-Z1-ZAEコンジュゲートの合成
A4(6β)-カルバメート-Z-ZAEコンジュゲートの合成を、下に記載する合成スキーマを用いて行った。
【0115】
【化33】
【実施例0116】
A4(7α)-CETE-ZAEコンジュゲートの合成
A4(7α)-カルボキシエチルチオエーテル(「CETE」)-NH-Z-ZAEコンジュゲートの合成を、下に記載する合成スキーマを用いて行った。
【0117】
【化34】
【実施例0118】
A4(7)-プロピオンアミド-Z-ZAEコンジュゲートの合成
A4(7)-プロピオンアミド-Z-ZAEコンジュゲートの合成を、下に記載する合成スキーマを用いて行った。
【0119】
【化35】
【0120】
NSP-DMAE-Z-NH(5.0mg、6.73μモル)、A4 7-プロピオン酸(2.51mg、7.01μモル)、および(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(「BOP」、5.97mg、13.5μモル)を投入したバイアルに、DMF-水混合溶媒(9/1、0.6mL)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(「DIPEA」、4.7μL、26.9μモル)を、撹拌しながら加えた。得られた混合物をRTで4時間撹拌した。この反応混合物を、HPLC(水中00.05%TFA/MeCN中0.05%TFA)によって直接精製し、αおよびβの混合物として、純粋な所望の生成物A4-7-プロピオン酸を得た(4.36mg、60%)。MS(M+Na、1105.5)。
【実施例0121】
A4(7)-プロピオンアミド-HEG-ZAEコンジュゲートの合成
A4(7)-プロピオンアミド-HEG-Z-ZAEコンジュゲートの合成を、下に記載する合成スキーマを用いて行った。
【0122】
【化36】
【実施例0123】
A4(7)-プロピオンアミド-et-NH-グルタレート-NH-Z-ISODIZAEコンジュゲートの合成
NSP-DMAE-HEG-NH(1.5mg、1.98μモル)、A4 7-プロピオン酸(5.4mg、14μモル)、および(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(「PyA4P」、23.1mg、44.3μモル)を投入したバイアルに、DMSO(1.0mL)およびTEA(30μL)を、撹拌しながら加えた。得られた混合物をRTで4時間撹拌した。この反応混合物を、HPLC(水中00.05%TFA/MeCN中0.05%TFA)によって直接精製し、αおよびβの混合物として、純粋な所望の生成物A4-7-プロピオン酸を得た(1.55mg、40%)。MS(M+Na、1118.6)。
【0124】
A4(7)-プロピオンアミド-et-NH-グルタレート-NH-Z-ISODIZAEコンジュゲートの合成を、下に記載する合成スキーマを用いて行った。
【0125】
【化37】
【実施例0126】
A4(7)-et-NH-グルタレート-NH-Z-ISODIZAEコンジュゲートの合成
A4(7)-et-NH-グルタレート-NH-Z-ISODIZAEコンジュゲートの合成を、下に記載する合成スキーマを用いて行った。
【0127】
【化38】
【実施例0128】
A4-AEコンジュゲートの評価
固相試薬およびライト試薬を利用する競合的アッセイフォーマットを用い、イムノアッセイ分析装置のADVIA Centaur family(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、Tarrytown、NYから入手可能)を用いて、A4-AEコンジュゲートの評価を行った。ライト試薬は、A4-AEトレーサー化合物20ng/mLを含む。固体試薬はビオチン化モノクローナル抗A4抗体で標識化した、超常磁性ビーズ(ThermoFisher Scientificから入手可能なDynabeads(登録商標)M-270 Streptavidin)を含む。抗体に付加した固相粒子を生成するため、ビオチン化ヒツジモノクローナルアンドロステンジオン抗体3C3、3H10、または4G8(Bioventix、UKから入手可能)を、ストレプトアビジンコーティング超常磁性ビーズに導入する。A4の非存在下、A4-AEと混合した固相粒子は、A4-AE化合物との固相結合複合体を生じる。ライト試薬がアンドロステンジオンを含む場合、A4とA4-AEコンジュゲートとの間で、各抗体での結合複合体の形成について競合が生じる。図1に見ることができるように、より多くのアンドロステンジオン結合複合体を有する固相粒子(「SP」)は、より
少ない化学発光アクリジニウム部分を含むであろう(図1の丸印)。したがって、測定試料中のアンドロステンジオン濃度の増加は、分離し洗浄した固相粒子結合複合体の化学発光の減少に相関する。分離した固相粒子結合複合体の化学発光を、酸性溶液(0.5%過酸化物/0.45%硝酸(vol/vol))、それに続く塩基性溶液(0.25N NA4H/0.45%ARQUAD(登録商標)16~50(w/v))の添加によって誘起し、測定する。試薬の体積、濃度、およびアッセイパラメータは、測定するA4-AEトレーサーコンジュゲートの変化以外、各実験で同一であった。ライト試薬において用いたアンドロステンジオンの試料は、ヒト血清アルブミンベースのマトリックス(Bioresource Technology,Inc.から入手可能)を用い、図2A~2Dに示すアンドロステンジオン試料濃度(ng/mL)で製造した。
【0129】
様々なA4-AEコンジュゲートについて、化学発光をモニタリングした。下の表3および対応する図2A~2Dに、指示された実施例番号に記載する通りに合成される複数のA4-AEコンジュゲートに関する、化学発光実験の結果をまとめる。表3において、「+」は特定のA4-AEコンジュゲートの、特定の抗体への評価可能な結合を指し、「-」は評価可能な結合が観測されなかったことを指す。
【0130】
【表8】
【0131】
見て取れるように、カルバメート(-OC(O)NH-)連結部分を有する、アンドロステンジオン部分の6位または17位でのコンジュゲーション(それぞれ「A4-6-AE」または「A4-17-AE」)は、評価可能な結合を示さなかった。カルボキシメチルオキシム連結部分(「CME」、=NO-CH-C(O)-NH-)を有するA4-3-AEコンジュゲートは、3C3および3H10抗体と結合したが、各抗体とは低い親和性であった(シグナル分離によって判定し、図2Aに示す)。図2Bに示すように、19位にコンジュゲーションを有するトレーサーは、3H10および4G8抗体と強く結合したが、3C3抗体とは評価可能な結合がまったくなかった。ヘミスクシナート(-OC(O)CHCHC(O)NH-)またはカルボキシエチルチオエーテル(「CETE」、-SCHCHC(O)NH-)連結部分を有する、6βまたは7α位でのコンジュゲーションは、3つすべての抗体について強い結合親和性を示した。さらに、これらの位置におけるこれらの連結部分は、各抗体/A4-AE複合体について、異なる親和性の順序を有する。見て取れるように、A4-AEトレーサーのコンジュゲート位置および連結部分は、そのトレーサーの特定の抗体への結合親和性に関係する。例えば、カルバメート連結部分を含むA4-6-AEコンジュゲートは評価可能な結合を示さない一方、ヘミスクシナート連結部分を含むA4-6-AEコンジュゲートは、測定した3つの抗体の2つについて親和性を示す。
【0132】
保存後の化学発光の変化を測定することによって、化合物の安定性を判定するため、トレーサーの水溶液をpH6.5の水性緩衝剤中、4℃で28日間保存し、イムノアッセイを再実行した。これらの条件は、イムノアッセイ分析装置のADVIA Centaur
familyなど、商用自動機器には典型的なものである。図2Eに示すように、6β位でのコンジュゲーションを含み、ヘミスクシナートリンカーを有するA4-AEトレーサーでのアッセイは、最初のアッセイの28日後にアッセイを再び実行した場合、測定される光出力の減少を示した。見て取れるように、6β位でのコンジュゲーションを含むA4-AEトレーサーは、緩衝系中で28日後、相当な化学発光の減少を示す。7位でコンジュゲートしたアンドロステンジオン(A4-7-AE)に関して行った測定は、同様の不安定性を示さなかった。
【実施例0133】
A4-7-AEコンジュゲートの曲線の形状
複数のA4-7-AEコンジュゲートについての化学発光曲線の形状を、3C3抗体を用いてさらに評価した。光出力の曲線形状への各種連結部分の効果を、アンドロステンジオン(ng/mL)の関数として測定した。曲線形状は、7位にアンドロステンジオンコンジュゲーションを有し、-SCHCHC(O)NH-、または-CHCHC(O)NH-連結部分を有するA4-AEトレーサーを用いたアッセイから作成した。図3Aは、3つの異なるA4-AEコンジュゲートを測定に用いたアッセイにより作成して得られたシグナルを表し、アンドロステンジオンを含まないライト試薬から発生したシグナルの百分率として正規化している。これらの実験において、0%光出力として[A4]=10ng/mLを選択した。見て取れるように、7αおよび7β位にコンジュゲーションを有しかつ連結部分のそれぞれが測定されるこれらのA4-7-AEコンジュゲートは、同等の曲線形状を示した。
【0134】
アッセイにおける性能への影響を判定するため、各種化学的特性および光出力を有するAEならびに/または連結部分も測定した。連結部分はアンドロステンジオンと7位でコンジュゲートした。測定したZAEコンジュゲート部分は、表3に示す構造を有していた。また、両性イオンリンカーがHEGリンカーによって置き換えられたAE部分も比較した(HEG-ZAE)。図3Bは、表3に記載するA4-AEコンジュゲートを含むA4-7-AEコンジュゲートを用いたアッセイから発生し、得られたシグナルを示す。
【実施例0135】
A4-7-AEコンジュゲートの非特異的結合
A4-7-AEコンジュゲートの非特異的結合におけるビオチンの干渉を測定した。アンドロステンジオン約2.2ng/mL、および複数のA4-7-AEコンジュゲートを含む天然血清に関して、3C3抗体を含む固相によるADVIA Centaurアッセイを行った。ビオチンは、ストレプトアビジンコーティングビーズの表面を変化させることによって、コンジュゲートのANDRO固相への結合を妨害する場合がある。したがって、測定中のビオチンの存在によって、どのコンジュゲートがより影響を受けるか判定するため、各コンジュゲートについて、それ以外は同一のアッセイを測定し、ここで血清試料は100ng/mLのビオチン濃度を有し、結果を比較した。表4は、ビオチンを含まない試料、およびビオチンを加えた試料を用いたアッセイで測定した、アンドロステンジオンの濃度を示す。ビオチンを含まない試料とビオチンを含む試料との間のアンドロステンジオン濃度の変化は、非特異的結合性A4-7-AEコンジュゲートにおけるビオチンの干渉を指示している。見て取れるように、CETEリンカー(-SCHCHC(O)NH-)を含むコンジュゲートは、硫黄結合性部分を含まない(「炭素」;-CHCHC(O)NH-)コンジュゲートより、大きなビオチン誘起非特異的結合性を有する。この傾向は、7αおよび7βの両方のコンジュゲーション配置に見られる。
【0136】
【表9】
【実施例0137】
A4-7-AEコンジュゲートの精密測定
様々なアンドロステンジオン濃度および試験期間にわたるA4-7-AEコンジュゲートの精度を判定するため、3C3抗体を含むADVIA Centaurアッセイで、各種アンドロステンジオン濃度(および他の分析対象物)を含む9つの血清試料をアッセイした。試料には、Liquichek(登録商標)Immunoassay Plus Quality Control(Bio-Rad、Hercules、CAから入手可能な「QC2」および「QC3」)として入手可能な、2つのレベルの市販の品質管理物質が含まれた。他の7つの添加済みネイティブまたは血清の患者試料は、BioreclamationIVTによって提供されたものであった。各試料5回の反復測定を1日のうちに行った。5回反復測定はまた、異なる5日間にわたって繰り返した。A4-炭素-AEによる(各試料に関する全25回の測定の)総平均A4濃度を、表5に示す。また、1日当たりの各5回反復測定値を範囲とする、および5日間にわたる平均測定値を範囲とする、ANOVAパラメータの標準偏差(「SD」)およびパーセント共分散(「%CV」)を示す。見て取れるように、A4-炭素-AEコンジュゲートは、繰り返し測定にわたって、高精度の結果を提供する。A4-7-ISO-DIZAEおよびA4-7-HEG-ZAEコンジュゲートについても、同様の結果を得た。
【0138】
【表10】
【実施例0139】
A4-7-AEコンジュゲートを用いたアッセイにおける直線性性能
A4-7-AEコンジュゲートについて、観測アンドロステンジオン濃度と予測アンドロステンジオン濃度との間の偏差を決定するため、加重線形適合で分析する、既知A4濃度の7つの異なる試料を製造した。A4-炭素-AEコンジュゲートを用いた場合の、予測A4濃度、A4濃度、および各予測アンドロステンジオン濃度に適合する線形モデルに
対する%バイアスを、表6に示す。見て取れるように、測定したアンドロステンジオン濃度の範囲にわたって、7位でのコンジュゲーションは、線形モデルからのバイアスが小さいアッセイをもたらした。典型的には、血清由来の試料のアンドロステンジオン濃度は、これらの範囲内となるであろう。
【0140】
【表11】
【実施例0141】
患者試料を用いたA4-7-AEコンジュゲートアッセイのバイアス
各試料の液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(LC-MS/MS)測定(ARUP Laboratories、Salt Lake City、Utah)と比較したアッセイ測定のバイアスを決定するため、A4-炭素-AEコンジュゲートを含むADVIA Centaurイムノアッセイを用いて、BioreclamationIVTから得た一連の患者試料も、アンドロステンジオン濃度について測定した。患者試料はネイティブであるか、または追加のアンドロステンジオンを入れたものであった。パーセントバイアスは、LC-MS/MS測定に対する、アッセイおよびLC-MS/MS測定の差として報告する。表7は測定の結果を示す。測定したアンドロステンジオン濃度の範囲全体にわたってバイアスが小さいイムノアッセイを用いて、患者試料中のアンドロステンジオンの濃度を決定するために、A4-AEコンジュゲートを用いることができる。
【0142】
【表12】
【0143】
図4は、LC-MS/MSアッセイから得た濃度に対する、A4-AEコンジュゲートを用いたイムノアッセイから得た濃度の比較を表す。見て取れるように、A4-AEコンジュゲートは、A4の濃度をより正確に測定することができる。
【0144】
個々の刊行物または特許もしくは特許出願をそれぞれ、あらゆる目的のために参照によって全体を組み入れることが、特定的におよび個別に指示される場合と同じ程度に、本明細書に引用した特許出願および刊行物を含むすべての参照文献は、あらゆる目的のために
参照によって本明細書に組み入れられている。当業者には明らかであろうが、本発明の多数の修正および変形を、その趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載する具体的な実施形態は、例としてのみ提供され、本発明は添付の特許請求の条項のみによって、そのような特許請求の範囲の権利が与えられる等価物の全範囲とともに、限定されるべきである。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3A
図3B
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学発光アクリジニウム部分にコンジュゲートしたアンドロステンジオン化合物を含む、アンドロステンジオンの検出可能なコンジュゲートであって、式(I):
【化1】
[式中、
Aはアンドロステンジオンまたはその誘導体であり;
Lはリンカーであり;
Ψは化学発光アクリジニウム標識である]
の構造を有する、前記検出可能なコンジュゲート。
【外国語明細書】