(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175777
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】マイクロニードル粒子、組成物、治療方法、及び目的の物質の送達方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20231205BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231205BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231205BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231205BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231205BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20231205BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/02
A61K9/08
A61K45/00
A61P43/00 111
A61K38/00
A61K31/7088
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023147458
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2022025588の分割
【原出願日】2017-03-01
(31)【優先権主張番号】62/301,780
(32)【優先日】2016-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505477235
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】タドロス,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】プラウスニッツ,マーク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイクロニードル粒子、マイクロニードル粒子を含む組成物、皮膚の治療方法、及び目的物質の送達方法を提供する。
【解決手段】コア構造110と、前記コア構造から延びる1つ以上のマイクロニードル120であって、生体組織を貫通する構造になっている1つ以上のマイクロニードルと、を備える、マイクロニードル粒子100であって、(i)前記コア構造、(ii)前記1つ以上のマイクロニードル、及び(iii)2つ以上の前記マイクロニードル間の空間的関係、のうちの少なくとも1つが、前記マイクロニードル粒子全体が生体組織を貫通することを防止するように構成されており、前記マイクロニードル粒子は、1~25個のマイクロニードルを有する、マイクロニードル粒子である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア構造と、
前記コア構造から延びる1つ以上のマイクロニードルであって、生体組織を貫通する構造になっている1つ以上のマイクロニードルと、を備えるマイクロニードル粒子であって、
(i)前記コア構造、(ii)前記1つ以上のマイクロニードル、及び(iii)2つ以上の前記マイクロニードル間の空間的関係、のうちの少なくとも1つが、前記マイクロニードル粒子全体が生体組織を貫通することを防止するように構成されている、マイクロニードル粒子。
【請求項2】
前記コア構造から延びる3つのマイクロニードル、4つのマイクロニードル、5つのマイクロニードル、6つのマイクロニードル、7つのマイクロニードル、8つのマイクロニードル、又は10個のマイクロニードルを備える、請求項1に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項3】
前記1つ以上のマイクロニードルは平面的マイクロニードルである、請求項1又は2に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項4】
前記マイクロニードル粒子は3つ以上のマイクロニードルを備え、前記3つ以上のマイクロニードルのうちの少なくとも1つは非平面的マイクロニードルである、請求項1又は2に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項5】
前記1つ以上のマイクロニードルの各々は、独立に、約10μmから約2,000μmの長さを有する、請求項1に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項6】
前記1つ以上のマイクロニードルの各々は、独立に、約100μmから約1,000μmの長さを有する、請求項1に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項7】
前記1つ以上のマイクロニードルの各々は、独立に、約100μmから約500μmの長さを有する、請求項1に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項8】
前記1つ以上のマイクロニードルのうちの少なくとも1つは、鉤状になっている、請求項1に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項9】
生体組織を少なくとも1回貫通した時点で、前記1つ以上のマイクロニードルのうちの少なくとも1つは、機械的に作用しなくなるように構成されており、それにより、前記1つ以上のマイクロニードルのうちの少なくとも1つが生体組織を再貫通することが防止される、請求項1に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項10】
生体組織を少なくとも1回貫通した時点で、前記1つ以上のマイクロニードルのうちの少なくとも1つは、化学的に作用しなくなるように構成されており、それにより、前記1つ以上のマイクロニードルのうちの少なくとも1つが生体組織を再貫通することが防止される、請求項1に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項11】
前記マイクロニードル粒子は、金属、ポリマー、糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項12】
前記マイクロニードル粒子はマトリックス構造を有しており、目的物質は前記マトリックス構造に分散されている、請求項1又は2に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項13】
マトリックス構造は、水溶性又は生体内分解性の物質を含む、請求項12に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項14】
前記マイクロニードル粒子は、目的物質を含むコーティング組成物によって少なくとも部分的にコーティングされている、請求項1又は2に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項15】
前記マイクロニードル粒子は目的物質で形成されている、請求項1又は2に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項16】
前記目的物質は生物活性剤である、請求項15に記載のマイクロニードル粒子。
【請求項17】
複数の請求項1又は2のマイクロニードル粒子と、
前記複数のマイクロニードル粒子が分散されている液体媒体と、を含む組成物であって、生体組織表面への適用のために適合されている、組成物。
【請求項18】
前記液体媒体は目的物質を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記目的物質は生物活性剤を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記生体組織表面は哺乳類の皮膚である、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記複数のマイクロニードル粒子は、前記液体媒体1cm3当たり約10から約10,000個のマイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分な量のマイクロニードル粒子を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記複数のマイクロニードル粒子は、前記液体媒体1cm3当たり約10から約1,000個のマイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分な量のマイクロニードル粒子を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
目的物質を送達する方法であって、
生体組織表面に複数のマイクロチャネルを形成するのに効果的な様式で生体組織表面を複数の請求項1又は2に記載のマイクロニードル粒子に接触させて、前処理された生体組織領域を提供することと、
前記前処理された生体組織領域に目的物質を適用することと、を含む方法。
【請求項24】
前記生体組織表面を複数のマイクロニードル粒子に接触させることと前記目的物質を適用することとが同時に、又は重複する時間に、実行される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数のマイクロニードル粒子及び前記目的物質が液体媒体に一緒に分散される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記複数のマイクロニードル粒子は、前記液体媒体1cm3当たり約10から約10,000個のマイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分な量のマイクロニードル粒子を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記複数のマイクロニードル粒子は、前記液体媒体1cm3当たり約10から約1,000個のマイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分な量のマイクロニードル粒子を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記生体組織表面は哺乳類の皮膚を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
被験者の皮膚を治療する方法であって、
複数のマイクロニードル粒子を皮膚領域に接触させることを含み、
前記複数のマイクロニードル粒子は、コア構造と前記コア構造から延びる1つ以上のマイクロニードルとを有するマイクロニードル粒子を含み、前記1つ以上のマイクロニードルは、少なくとも部分的に皮膚を貫通できる構造を有する、方法。
【請求項30】
前記接触させることは、前記皮膚領域の角質層に複数のマイクロチャネルを形成するのに効果的であり、
(i)前記コア構造、(ii)前記1つ以上のマイクロニードル、及び(iii)前記マイクロニードル粒子の各々における2つ以上の前記マイクロニードル間の空間的関係、のうちの少なくとも1つが、マイクロニードル粒子全体が生体組織を貫通することを防止するように構成されている、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記複数のマイクロニードル粒子は液体媒体に分散される、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記液体媒体及び前記複数のマイクロニードル粒子は、アプリケーターから皮膚上に分散される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
被験者における治療効果又は前記皮膚領域における美容効果を生じさせるために目的物質を前記皮膚領域に接触させることをさらに含む、請求項29~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記皮膚領域に接触させることは、前記皮膚領域のコラーゲン生成を促進するのに有効である、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照として全体が本明細書に援用される、2016年3月1日出願の米国仮特許出願第62/301,780号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、マイクロニードル粒子、組成物、治療方法、及び目的の物質の送達方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生物活性化合物の送達は、多くの生体組織、例えば皮膚、消化器官、血管、細胞膜などの強力なバリア機能の故に、困難な場合が生じる。
【0004】
生体組織、例えば皮膚の角質層の一部を除去したり、体組織のバリア層に孔を開けたりする技術が考案されている。斯かる技術は、研磨粒子(例えばサンドペーパー)でコーティングした固体表面、又は研磨粒子を含む液体/ゼラチン状の調製物などを研磨する方法を含んでいる。しかし、斯かる技術は、通常、生体組織に個別の穿刺を作る代わりに、長い及び/又は細い擦り傷又は引っかき傷を形成する。長い及び/又は細い擦り傷又は引っかき傷は、通常、(1)生物活性化合物の送達及び/又は体組織の治療を効果的に助けるものではなく、あるいは(2)擦り傷又は引っかき傷の数が生物活性化合物の送達及び/又は体組織の治療を助けるのに十分な場合は、望ましくない組織損傷を引き起こしたりする。研磨によって組織表面に平行に組織が除去され、その結果、組織内に十分深く貫通する過程で、組織の大きい領域が除去されてしまうことによって、組織損傷が生じる場合がある。
【0005】
試みられている他の技術には、針構造体、例えば化粧に使用される固体のマイクロニードル(例えば、ダーマローラー)やワクチン(例えば、BCGワクチン)使用前の皮膚の前処理として生体組織に孔を開けたりすることも含まれる。しかし、斯かる技術は、基質上に集められた複数の針構造体の使用を含んでおり、その場合、針構造体は実質的に垂直に突出している。基質は、通常、肉眼的大きさ(例えば1mm以上)であり、及び/又は通常、平面(すなわち二次元的)又は円柱状(すなわち円柱座標において二次元的)である。その結果、斯かる方法によって治療可能な組織の表面領域及び/又は場所には限界が生じる。更に、斯かる方法の提供には専門知識を必要とする。
【0006】
生体組織を準備するための他の技術には、化学エンハンサー、電場、超音波、及び組織や構造にナノメーター規模の変化を導入することにより皮膚などの組織を浸透しやすいものにする他の非侵襲的方法が含まれる。弾道方法も使用されており、それには通常、粒子や他の物体を生体組織に向けて発射し、該生体組織に孔を開ける工程も含まれる。しかし、斯かる粒子又は物体は、一般的に、穿刺後直ぐには組織から除去されることはなく、生体組織内に(又は生体組織の広い範囲に)完全に埋め込まれる。
【0007】
マイクロニードルパッチも使用されるが、パッチによって覆われる表面積は比較的小さく(通常10cm2未満)、一般的に使用が限定されている。斯かる限定は、種々の医学的適応におけるマイクロニードルパッチの使用を妨げている。基質側ではなくマイクロニードル側を確実に皮膚に接触させるのが、不可能ではないにしても少なくとも困難なので、マイクロニードルを添加物として使用できないと言う事実によっても、マイクロニードルパッチの使用は限定されている。生体組織はアクセスが困難であると言う事実も、マイクロニードルを使用するにあたり難しさの原因となっている。
【0008】
治療表面領域、治療箇所、及び/又は組織貫通のより優れたコントロール用の装置、組成物、及び方法の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
上述の必要性の1つ以上に対処するため、改善された装置、組成物、治療方法、及び目的物質の送達方法が開発された。
【0010】
1つの態様において、少なくとも部分的に生体組織を貫通するマイクロニードル粒子が提供される。実施形態において、マイクロニードル粒子は、コア構造と、該コア構造から延びる1つ以上のマイクロニードルとを有しており、当該1つ以上のマイクロニードルは生体組織を貫通する構造になっており、その場合、(i)コア構造、(ii)1つ以上のマイクロニードル、及び(iii)2つ以上のマイクロニードル間の空間的関係のうち少なくとも1つが、マイクロニードル粒子全体が生体組織を貫通できないように構成されている。
【0011】
別の態様において、マイクロニードルを有する組成物が提供される。実施形態において、組成物は、複数のマイクロニードル粒子と、当該複数のマイクロニードル粒子を分散させるための液体媒体とを有している。組成物は、生体組織(哺乳類の皮膚など)に適用されるように適合されていてもよい。液体媒体、マイクロニードル粒子、又はそれらの組み合わせは、生物活性剤及び/又は他の目的物質を含んでいてもよい。
【0012】
別の態様において、目的物質の送達方法が提供される。実施形態において、当該方法は、複数のマイクロチャネルを形成するのに効果的なやり方で、生体組織表面を複数のマイクロニードル粒子に接触させて、前処理された生体組織領域を提供することと、当該前処理された生体組織領域に目的物質を供給することとを有する。
【0013】
更に別の態様において、皮膚の治療方法が提供される。実施形態において、当該方法は、皮膚領域に複数のマイクロニードル粒子を接触させる工程を含んでいるが、当該複数のマイクロニードル粒子は、コア構造と該コア構造から延びた1つ以上のマイクロニードルとを含むマイクロニードル粒子を有しており、その場合、当該1つ以上のマイクロニードルは、少なくとも部分的に皮膚を貫通できる構造を有している。
【0014】
更なる態様は、一部が以下の記載で説明されるであろうし、一部が以下の記載から明白であろうし、あるいは以下に記載の態様を実践することにより理解されるであろう。以下に記載の態様の特長は、添付の請求項に特定された要素及び組み合わせにより理解及び実現されるであろう。前述の一般的な記載及び以下の詳細な記載は例示的及び説明的なものに過ぎず、決して限定的ではないことも理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、3つの平面的マイクロニードルを有するマイクロニードル粒子の1実施例を示す。
【
図2A】
図2Aは、6つの平面的マイクロニードルを有するマイクロニードル粒子の1実施例を示す。
【
図3A】
図3Aは、4つの平面的/テーパー状マイクロニードルを有するマイクロニードル粒子の1実施例を示す。
【
図4A】
図4Aは、4つの平面的/テーパー状マイクロニードルを有するマイクロニードル粒子の1実施例を示す。
【
図5A】
図5Aは、4つの平面的マイクロニードルと1つの非平面的マイクロニードルを有するマイクロニードル粒子の1実施例を示す。
【
図6A】
図6Aは、4つの平面的マイクロニードルと1つの非平面的マイクロニードルを有するマイクロニードル粒子の1実施例を示す。
【
図7A】
図7Aは、6つの平面的マイクロニードルと2つの非平面的マイクロニードルを有するマイクロニードル粒子の1実施例を示す。
【
図8】
図8は、鉤状のマイクロニードルを有するマイクロニードル粒子の1実施形態の図である。
【
図9】
図9は、マイクロニードルパッチ及びマイクロニードル粒子の2実施形態で前処理した後、ゲンチアナバイオレット染料によって染色した豚の皮膚のサンプルの面積(cm
2)を示す。
【
図10】
図10は、マイクロニードルパッチ及びマイクロニードル粒子の2実施形態による前処理後の、豚の皮膚のサンプルの電気抵抗を示す。
【
図11】
図11は、スルホローダミンB適用の1時間後、6時間後、及び24時間後にマイクロニードルパッチ及びマイクロニードル粒子の2実施形態のうちの1つによって前処理された皮膚サンプルの組織学的断面図を含む。
【
図12】
図12は、4つの異なる濃度(スケールバー=5mm)においてマイクロニードル粒子の3実施形態によって達成された貫通部位を示しており、更に、4つの異なるマイクロニードル濃度におけるゲル配合物中のマイクロニードル粒子も示してある。
【
図13A】
図13Aは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態を皮膚に適用した場合の時間、マイクロニードル粒子の濃度、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、ゲンチアナバイオレット染色面積がどのように影響されたかを図示したものである。
【
図13B】
図13Bは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態のサイズ、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、ゲンチアナバイオレット染色面積がどのように影響されたかを図示したものである。
【
図13C】
図13Cは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態の厚さ、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、ゲンチアナバイオレット染色面積がどのように影響されたかを図示したものである。
【
図14A】
図14Aは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態を皮膚に適用した場合の時間、マイクロニードル粒子の濃度、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、皮膚の電気抵抗がどのように影響されたかを図示したものである。
【
図14B】
図14Bは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態のサイズ、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、皮膚の電気抵抗がどのように影響されたかを図示したものである。
【
図14C】
図14Cは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態の厚さ、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、皮膚の電気抵抗がどのように影響されたかを図示したものである。
【
図15A】
図15Aは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態を皮膚に適用した場合の時間、マイクロニードル粒子の濃度、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、24時間後におけるスルホローダミンBの皮膚への累積浸透量がどのように影響されたかを図示したものである。
【
図15B】
図15Bは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態のサイズ、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、24時間後におけるスルホローダミンBの皮膚への累積浸透量がどのように影響されたかを図示したものである。
【
図15C】
図15Cは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態の厚さ、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、24時間後におけるスルホローダミンBの皮膚への累積浸透量がどのように影響されたかを図示したものである。
【
図16A】
図16Aは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態を皮膚に適用した場合の時間、マイクロニードル粒子の濃度、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、スルホローダミンBの皮膚への経皮フラックスがどのように影響されたかを図示したものである。
【
図16B】
図16Bは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態のサイズ、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、スルホローダミンBの皮膚への経皮フラックスがどのように影響されたかを図示したものである。
【
図16C】
図16Cは、マイクロニードル粒子のいくつかの実施形態の厚さ、及びマイクロニードル粒子当たりのマイクロニードルの数を変化させることにより、スルホローダミンBの皮膚への経皮フラックスがどのように影響されたかを図示したものである。
【
図17】
図17は、アロエベラゲル、マイクロニードルパッチ、及びマイクロニードル粒子の1実施形態によりインビボで処理された無毛ラットの皮膚にスルホローダミンBを送達した場合の蛍光強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
生体組織のバリア機能に関連する1つ以上の困難に対処するため、改善された装置及び方法が開発された。実施形態において、当該装置は、生体組織を少なくとも部分的に貫通できるマイクロニードル粒子を含み、(1)フレキシブルな幾何学的形状及び/又は組成物の材料を提供し、(2)大きい表面面積を有する生体組織を標的にする能力を有し、(3)従来技術では容易にアクセスできない生体組織を標的にする能力を有し、(4)(i)組織の除去を最小限に留める、又は排除するやり方、(ii)組織表面に対して少なくとも実質的に垂直な経路を作成することにより、十分な深さまでの貫通を最大化するやり方、又は(iii)それらを組み合わせたやり方で、組織に孔を開ける能力を有しており、あるいは(5)上記を組み合わせた能力を有していてもよい。本明細書に規定されるマイクロニードル粒子は、比較的大きい生体組織面積に適用されてもよいし、及び/又は外来分子(生物活性剤及び/又は他の目的物質を含む)の送達を促進してもよい。本明細書に規定されるマイクロニードル粒子は、マイクロニードル粒子全体が生体組織を貫通できないように構成されてもよい。
【0017】
例えば、特定の有利な実施形態において、マイクロニードル粒子は、皮膚の選択された領域に適用されるように構成されており、その皮膚領域に擦り込まれる及び/又はこすり付けられることによりマイクロチャネルが形成され、その後、皮膚から洗い落とされる、又は拭い取られる。生物活性剤及び/又は他の目的物質が、例えばマイクロニードル粒子を用い、マイクロチャネルへの経路を通して、当該選択領域に適用されてもよい。1つの例において、斯かる工程は、生物活性剤及び/又は他の目的物質、並びに粘性のある液体又はゲル内に提供されるマイクロニードル粒子を用いて実施される。更なる例として、マイクロニードル粒子は、マイクロチャネルを通して送達される生物活性剤及び/又は他の目的物質を有していてもよい。
【0018】
(マイクロニードル粒子)
マイクロニードル粒子は、生体組織(例えば、人の皮膚の角質層)を少なくとも部分的に貫通する構造になっている。すなわち、粒子のマイクロニードル部分(又は少なくともその先端部分)は、生体組織に押し込まれ、それを貫通し、その中にマイクロスケールの孔又はチャネルを形成することができる寸法及び機械的剛性を有しており、マイクロニードル粒子の各々が、粒子全体が生体組織を貫通するのを妨げる全体的な幾何学的形状又は他の設計上の特徴を有している。生体組織の単なる弾性変形は貫通ではない。貫通は弾性変形も含むが、組織内への更なる通過が含まれる。
【0019】
いくつかの実施形態において、望ましいマイクロチャネルが形成された後、生体組織の表面からマイクロニードル粒子が除去されるのをこれは有利に促進するかもしれない。例えば、マイクロニードル粒子は、少なくとも部分的に生体組織を貫通した後、生体組織から洗い流したり拭い去ったりしてもよく、その場合、マイクロニードル粒子は、生体組織に完全に、及び/又は除去不可能に埋め込まれることがないように構成される。
【0020】
しかし、いくつかの他の実施形態において、マイクロニードル粒子は、該マイクロニードル粒子の全体構造が生体組織を貫通することがないように構成されている。マイクロニードル粒子は、それが生体組織から抜け出るのを妨げる、及び/又はマイクロニードル粒子が生体組織から抜け出すのを更に困難にする、1つ以上の構造上の特徴を有している。
【0021】
実施形態において、マイクロニードル粒子は、コア構造と、該コア構造から延びる1つ以上のマイクロニードルとを含む。1つ以上のマイクロニードルは、生体組織を少なくとも部分的に貫通する構造になっている。例えば、1つ以上のマイクロニードルは、生体組織を少なくとも部分的に貫通するように構成されることにより、生体組織にマイクロチャネルを形成する。1つ以上のマイクロニードルは、コア構造から任意の方向に独立に延伸してもよい。1つの実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、(1)第一タイプの生体組織を少なくとも部分的に貫通し、(2)1つ以上のマイクロニードルが第二のタイプの生体組織を貫通できないようにする、又はその可能性を小さくするような構造になっている。第二のタイプの生体組織には例えば指の皮膚が含まれ、第一タイプの生体組織には治療対象の組織、例えば比較的薄い角質層を有する皮膚部分又は粘膜組織が含まれる。従って、例えば、1つ以上のマイクロニードルは、第一生体組織の治療部位にマイクロニードル粒子を適用する/擦り込むのに使用される指の皮膚には貫通しない、あるいは貫通する可能性が小さい。
【0022】
いくつかの実施形態において、マイクロニードル粒子は、コア構造から延びる1つのマイクロニードル、2つのマイクロニードル、3つのマイクロニードル、4つのマイクロニードル、5つのマイクロニードル、6つのマイクロニードル、7つのマイクロニードル、8つのマイクロニードル、9つのマイクロニードル、又は10のマイクロニードルを有する。好ましい実施形態において、マイクロニードル粒子は、各々、3~10のマイクロニードルを有する。特定の実施形態において、マイクロニードル粒子は奇数のマイクロニードル、例えば、1つのマイクロニードル、3つのマイクロニードル、5つのマイクロニードル、7つのマイクロニードル、又は9つのマイクロニードルを有する。更なる実施形態において、マイクロニードル粒子は偶数のマイクロニードル、例えば、2つのマイクロニードル、4つのマイクロニードル、6つのマイクロニードル、8つのマイクロニードル、又は10のマイクロニードルを有する。別の実施形態において、マイクロニードル粒子は3~100のマイクロニードル、3~75のマイクロニードル、3~50のマイクロニードル、3~25のマイクロニードル、3~20のマイクロニードル、又は10~20のマイクロニードルを有する。
【0023】
コア構造は、通常、マイクロニードルを接続する部分にあり、3つ以上のマイクロニードルが存在する場合は特にそうである。マイクロニードル粒子にマイクロニードルが2つしかない場合には、コア構造は、2つのマイクロニードルを接続する部分又は2つのマイクロニードル間のインターフェースから成る。マイクロニードル粒子にマイクロニードルが1つしかない場合には、コア構造は、該マイクロニードル粒子の非貫通部分を含んでもよい。斯かる非貫通部分はマイクロニードルの基部(先端から遠位部分)に提供され、貫通停止点として効果的に機能する側部(マイクロニードルの長軸に対して側部)に延伸する部分を含むことになろう。
【0024】
コア構造は固形構造であってもよいし、1つ以上の内部空洞を有する中空構造であってもよい。コア構造が中空構造を有する場合、該コア構造は生体組織へ送達される物質で充填されていてもよい。固体又は液体である該物質は生物活性剤及び/又は他の目的物質であってもよいし、あるいはそれらを含んでいてもよい。コア構造は、マイクロニードル粒子が内部生体組織(例えば消化器官)に送達/適用されるために拡張/膨潤するように構成されてもよい。拡張/膨潤の開始前には、1つ以上のマイクロニードルは生体組織を貫通しなくてもよい、又は貫通する可能性が小さくてもよい。コア構造は、望ましい場所に達した時点又はその後に、拡張/膨潤するように構成されてもよい。そうすれば、1つ以上のマイクルニードルだけが、該望ましい場所又はその近くで生体組織を貫通する、又は貫通する可能性が高くなる。
【0025】
マイクロニードル粒子に関する設計上の特徴を、マイクロニードル粒子の全体が生体組織を貫通しないようにする機能を粒子に与えるように種々選択してもよい。斯かる特徴には、コア構造自体、1つ以上のマイクロニードル自体、又はマイクロニードル間又は斯かるマイクロニードルのサブセット間の空間関係が含まれてもよい。勿論、斯かる特徴を組み合わせることにより、マイクロニードル粒子の全体が生体組織を貫通しないように設計してもよい。
【0026】
例えば、1つ以上のマイクロニードルがコア構造から延びて生体組織を貫通するが、コア構造の全部又は実質的に全部が生体組織内に貫通するのを妨げるようなサイズ、形状、及び/又は鋭利な末端の欠如を当該コア構造は有していてもよい。更なる例として、1つ以上のマイクロニードルは、当該1つ以上のマイクロニードルの一部だけが生体組織を貫通するような構造的特徴(テーパー構造など)を有してもよい。例えば、マイクロニードルは肩部分又はプラトー部分を有し、斯かる肩部分又はプラトー部分の下に位置するマイクロニードル部分だけが生体組織を貫通するようになっていてもよい。斯かる構成により、コア構造と生体組織の接触が防止できる。更に別の例として、マイクロニードルの1つが生体組織を貫通しても、粒子がそれ以上貫通しないような抵抗を与える位置に他のマイクロニードル(複数も可)が固定されるように、2つ以上のマイクロニードルが空間的に相互に配置されることにより、マイクロニードル粒子の全体が生体組織に貫通するのを妨げるようにしてもよい。例えば、1つのマイクロニードルが生体組織の方向に位置しており、当該粒子の1つ以上の他のマイクロニードルが側部方向に延びていれば、当該他のマイクロニードルの少なくとも1つの平らな側壁が当該生体組織に面するようになる。当該他のマイクロニードル(複数も可)の任意の部分が生体組織に接触する際に、抵抗が提供される。少なくとも部分的には、マイクロニードル粒子全体が組織表面を貫通しないように該マイクロニードル粒子が構成されていると言う理由の故に、少なくとも目的物質の一部が(1)組織表面に入る、及び/又は組織表面の下に放出される、(2)組織表面には入らない、及び/又は組織表面又はその上に放出される、あるいは(3)それらの組み合わせが生じるのを保証する、又はそういう可能性を増大させるやり方及び/又は位置でよって、マイクロニードル粒子によって送達される目的物質が当該マイクロニードル粒子と関連付けられてもよい。
【0027】
1つ以上のマイクロニードルは、マイクロニードル粒子に対称構造を与えるやり方でコア構造から延びていてもよい。あるいは、1つ以上のマイクロニードルは、マイクロニードル粒子に非対称構造を与えるやり方でコア構造から延びていてもよい。粒子は、偶数のマイクロニードルを有してもよいし、奇数のマイクロニードルを有してもよい。
【0028】
一般的に、マイクロニードル粒子の1つ以上のマイクロニードルは同じ寸法であってもよいし、異なる寸法であってもよい。1つの実施形態において、マイクロニードル粒子の1つ以上のマイクロニードルは実質的に同じ寸法である。別の実施形態においては、マイクロニードル粒子の1つ以上のマイクロニードルは異なる寸法である。例えば、マイクロニードル粒子は4つのマイクロニードルを有してもよく、(1)4つのマイクロニードルの全てが同じ寸法を有してもよく、(2)4つのマイクロニードルの全てが異なる寸法を有してもよく、(3)4つのマイクロニードルの最初のペアが同じ寸法を有し、その寸法が4つのマイクロニードルの第二のペアの寸法とは異なっていてもよく、4つのマイクロニードルの第二のペアが同じ又は異なる寸法を有する2つのマイクロニードルを含んでもよく、(4)4つのマイクロニードルのうち3つが同じ寸法を有し、その寸法が第4のマイクロニードルの寸法とは異なっていてもよい。
【0029】
1つ以上のマイクロニードルは、生体組織を少なくとも部分的に貫通できる任意の形状を有していてもよい。実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、少なくとも幅の二倍の長さを有する高アスペクト比を有する。マイクロニードルの長さはコア構造からマイクロニードルの先端までの距離である。1つの実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、各々独立に、約1μmから約2,000μmの長さを有する。1つの特定の実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、各々独立に、約10μmから約2,000μmの長さを有する。いくつかの実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、各々独立に、約50μmから約2,000μmの長さを有する。別の実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、各々独立に、約100μmから約1,000μmの長さを有する。更なる実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、各々独立に、約250μmから約750μmの長さを有する。更に別の実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、各々独立に、約100μmから約500μmの長さを有する。更なる実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、各々、約500μmの長さを有する。特定の実施形態において、マイクロニードル粒子は、1つのマイクロニードル、2つのマイクロニードル、3つのマイクロニードル、4つのマイクロニードル、5つのマイクロニードル、6つのマイクロニードル、7つのマイクロニードル、8つのマイクロニードル、9つのマイクロニードル、又は10のマイクロニードルを有し、マイクロニードルは、各々独立に、約1μmから約2,000μmの長さ、約10μmから約2,000μmの長さ、約50μmから約2,000μmの長さ、約100μmから約1,000μmの長さ、又は約250μmから約750μmの長さを有する。
【0030】
実施形態において、1つ以上のマイクロニードルの少なくとも1つの寸法は、テーパー状であってもよい。例えば、1つ以上のマイクロニードルの1つ以上の寸法(例えば、1つ以上のマイクロニードルの幅及び/又は長さ)は、特定の位置(例えば、コア構造に隣接する位置)で最大であってもよい。
【0031】
1つ以上のマイクロニードルは、約0.1μmから約30μmの幅の先端を有していてもよい。実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、約0.1μmから約30μm、約0.1μmから約25μm、約0.1μmから約20μm、約0.1μmから約15μm、約0.1μmから約10μm、約0.1μmから約5μm、約1μmから約10μm、約1μmから約7μm、約1μmから約5μm、約1μmから約4μm、又は約1μmから約3μmの幅の先端を有する。1つの実施形態において、各マイクロニードルは、約0.1μmから約5μmの幅の先端を有する。「先端」とは、通常、1つ以上のマイクロニードルにおいて、生体組織を最初に貫通する部分である。
【0032】
マイクロニードル粒子のサイズは任意であってよく、それには、マイクロニードル粒子が生体組織に完全に又は除去不可能に埋め込まれるのを防止する、又はその可能性を小さくするサイズも含まれる。1つの実施形態において、マイクロニードル粒子の最大寸法は、約10μmから約10,000μm、約10μmから約5,000μm、約100μmから約10,000μm、約250μmから約5,000μm、約500μmから約2,000μm、又は約1,000μmである。「マイクロニードル粒子の最大寸法」とは、以下の距離、すなわち(1)(マイクロニードル粒子が2つ以上のマイクロニードルを含む場合)2つのマイクロニードルの最も離れた先端間の距離、又は(2)マイクロニードルの先端と、測定されるマイクロニードルが延びるコア構造側の反対側との間の可能な限り最も離れた距離のうちの最大を意味する。複数のマイクロニードル粒子は、1つ以上のサイズのマイクロニードル粒子を含んでもよい。
【0033】
実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは平面的マイクロニードルである。本明細書で使用される場合、「平面的マイクロニードル」と言う用語は、2つ以上のマイクロニードルがあり、その各々が、(1)実質的に同じ平面においてコア構造から延びる中心軸を有するか、(2)実質的に同じ平面にある先端を有することを意味する。平面的マイクロニードルは、コア構造から同じ方向、異なる方向、又はその組み合わせの方向に延びるマイクロニードルを含んでもよい。平面的マイクロニードルは、各マイクロニードルの中心軸が少なくとも実質的に単線に対応するようなやり方でコア構造の反対側から延びる、共線平面マイクロニードルを含んでもよい。
【0034】
1つの実施形態において、マイクロニードル粒子は、2つの平面的マイクロニードル、3つの平面的マイクロニードル、4つの平面的マイクロニードル、5つの平面的マイクロニードル、6つの平面的マイクロニードル、7つの平面的マイクロニードル、8つの平面的マイクロニードル、9つの平面的マイクロニードル、又は10の平面的マイクロニードルを有する。
【0035】
1つ以上のマイクロニードルが平面的マイクロニードルである場合、マイクロニードル粒子は実質的に平面すなわち平らな構造を有していてもよい。実質的に平面すなわち平らなマイクロニードル粒子は、約1μmから約1,000μm、約5μmから約500μm、約10μmから約250μm、50μmから約250μm、約50μmから約200μm、約75μmから約200μm、約75μmから約150μm、約75μmから約125μm、又は約80μmから約120μmの厚さを有していてもよい。驚いたことに、実質的に平面すなわち平らな構造を有するマイクロニードル粒子は本明細書記載の方法において効果的であること、並びに本明細書記載の方法の実施形態は非平面構造を有するマイクロニードル粒子の使用を必要としないことが、発見された。特定の理論には拘束されないが、少なくとも部分的には弾性的に変形可能な組織表面の性質の故に、つまりマイクロニードルが組織表面を横切るとき孔を開けることができる「尖端」と「谷」が表面に生じる故に、本明細書記載のマイクロニードルは、組織表面を貫通せず滑動すると言う予想に反し、組織表面を少なくとも部分的には貫通できるようになるのだと考えられる。組織表面が変形することにより、マイクロニードル粒子によって1つ以上の力が組織に加わり、その結果、貫通が促進される。
【0036】
図1A及び
図1B(斜視図)は、3つの平面的マイクロニードル120が延伸するコア構造110を有する平面的マイクロニードル粒子100の1実施形態を示す。
図2A及び
図2B(斜視図)は、6つの平面的マイクロニードル220が延伸するコア構造210を有する平面的マイクロニードル粒子200の1実施形態を示す。
【0037】
実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは平面的マイクロニードルであるが、マイクロニードル粒子は非平面構造すなわち平らでない構造を有する。マイクロニードル粒子の非平面的構造はコア構造の構成、少なくとも1つの平面的マイクロニードルの構成、又はそれらの組み合わせによって与えられてもよい。例えば、1つ以上の平面的マイクロニードルは、該マイクロニードル粒子に平らでない構造を与えるテーパー形状を有していてもよい。
【0038】
図3A(平面図)、
図3B(斜視図)、及び
図3C(側面図)は、4つの平面的/テーパー状のマイクロニードル320が延伸するコア構造310を有するマイクロニードル粒子300の1実施形態を示す。
図3Cは、実質的に同じ平面にある先端330を示す。
【0039】
図4A(平面図)、
図4B(側面図)は、4つの平面的/テーパー状のマイクロニードル420が延伸するコア構造410を有するマイクロニードル粒子400の1実施形態を示す。4つの平面的/テーパー状のマイクロニードル420は、実質的に同じ平面においてコア構造410から延びる中心軸を有する。
【0040】
1つ以上のマイクロニードルは、断面図を見ると、多角形、非多角形、二等分された非多角形、又はそれらの組み合わせであってよい。例えば、マイクロニードル粒子は、断面図を見た場合に、非多角形を有する少なくとも1つのマイクロニードル、及び断面図を見た場合に、多角形を有する少なくとも1つのマイクロニードルを含んでいてもよい。更なる例として、マイクロニードル粒子の少なくとも1つのマイクロニードルは、異なる位置における断面図を見た場合に、少なくとも1つの多角形及び少なくとも1つの非多角形を含んでもよい。非多角形には、限定されないが、円形、実質的に円形、楕円形、及び実質的に楕円形が含まれる。断面図を見た場合にマイクロニードルが非多角形を有している場合、該マイクロニードルは、少なくとも実質的に円錐形、あるいはマイクロニードルの構造の少なくとも一部は、少なくとも実質的に円錐形である。「二等分された非多角形」と言う用語は、二等分された平らな平面を含む多角形を意味する。二等分された非多角形は、限定されないが、半円形、実質的に半円形、半楕円形、実質的に半楕円形を含む。多角形は、限定されないが、三角形、四角形、長方形、台形、菱形、五角形、六角形、七角形、及び八角形を含む。マイクロニードルが多角形(例えば、三角形又は四角形)を有する場合、マイクロニードルはピラミッド形のマイクロニードルであってもよい。
【0041】
実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは非平面的マイクロニードルを含む。本明細書で使用される場合、「非平面的マイクロニードル」と言う用語は、コア構造から異なる平面に延びた中心軸を有するマイクロニードルを意味する。1つの実施形態において、マイクロニードル粒子の1つ以上のマイクロニードルは非平面的マイクロニードルである。別の実施形態において、1つ以上のマイクロニードルは、少なくとも2つの平面的マイクロニードルと、当該平面的マイクロニードルの対に対して非平面的である少なくとも1つのマイクロニードルとを含む。例えば、マイクロニードル粒子は、2つの平面的マイクロニードルが提供する実質的に四面体の配列と、該2つの平面的マイクロニードルに対して2つの非平面的マイクロニードルとを有してもよい。更なる例として、マイクロニードル粒子は、4つの平面的マイクロニードルが提供する1つ以上のマイクロニードルの実質的に八面体の配列と、該4つの平面的マイクロニードルに対して2つの非平面的マイクロニードルとを有してもよい。更なる例として、マイクロニードル粒子は、平面的マイクロニードルのグループ(例えば、3つ、4つ、5つ、又は6つの平面的マイクロニードル)と、当該平面的マイクロニードルのグループに対して1つの非平面的マイクロニードルとを有してもよい。
【0042】
図5A(平面図)、
図5B(側面図)、及び
図5C(斜視図)は、4つの平面的マイクロニードル520及び1つの非平面的マイクロニードル530が延伸するコア構造510を有するマイクロニードル粒子500の1実施形態を示す。マイクロニードル(520、530)は、断面図を見た場合に四角形である。4つの平面的マイクロニードル520は、各々、同じ平面に存在する先端525を有する。
【0043】
図6A(平面図)、
図6B(側面図)、及び
図6C(斜視図)は、4つの平面的マイクロニードル620及び1つの非平面的マイクロニードル630が延伸するコア構造610を有するマイクロニードル粒子600の1実施形態を示す。4つの平面的マイクロニードル620は断面図を見た場合に長方形であり、非平面的マイクロニードル630は断面図を見た場合に円形である。
【0044】
図7A(平面図)及び
図7B(斜視図)は、6つの平面的マイクロニードル720及び2つの非平面的マイクロニードル730が延伸するコア構造710を有するマイクロニードル粒子700の1実施形態を示す。6つの平面的マイクロニードル720は断面図を見た場合に長方形であり、当該2つの非平面的マイクロニードル730は断面図を見た場合に円形である。
【0045】
実施形態において、1つ以上のマイクロニードルのうち少なくとも1つは鉤状になっている。言い換えると、粒子のマイクロニードルは1つ以上の有刺を含んでいる。例えば、マイクロニードル粒子は4つのマイクロニードルを含み、該4つのマイクロニードルのうち1つ、2つ、3つ、又は4つが鉤状マイクロニードルであってもよい。鉤状マイクロニードルは、一般的に、該鉤状マイクロニードルが生体組織に少なくとも部分的に貫通した後、破砕及び/又は腐食がない限り、該鉤状マイクロニードルを生体組織から除去するのが不可能ではないにしても難しくする構造的特徴を有するマイクロニードルである。鉤状マイクロニードルは、生体組織に少なくとも部分的に貫通したマイクロニードルの先端からある角度で曲がった突起を1つ以上含んでいてもよい。例えば、鉤状マイクロニードルは、1つの突起がマイクロニードルの先端からある角度で曲がった「釣り針」構成を有していてもよいし、あるいは鉤状マイクロニードルは、2つ以上の突起がマイクロニードルの先端からある角度で曲がった「矢じり」構成を有していてもよい。突起は、直線状の末端又は湾曲した末端を有していてもよいし、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。
【0046】
図8は、4つの平面的な鉤状マイクロニードル(820、830、840)が延びるコア構造810を有するマイクロニードル粒子800の1実施形態を示す。2つのマイクロニードル820はマイクロニードルの先端からある角度で曲がった1つの直線状末端の突起825含んでおり、1つのマイクロニードル830はマイクロニードルの先端からある角度で曲がった2つの直線状末端の突起835有しており、1つのマイクロニードル840はマイクロニードルの先端からある角度で曲がった1つの湾曲状末端の突起845を有している。
【0047】
実施形態において、少なくとも部分的に生体組織を貫通する鉤状マイクロニードルは、生体組織からマイクロニードル粒子を除去する際に破砕する構成になっていてもよい。破砕の時点で、鉤状マイクロニードルの少なくとも一部が生体組織内及び/又は生体組織上に残っていてもよい。生体組織内及び/又は生体組織上に残る鉤状マイクロニードの一部は、生物活性剤(医薬品、センサ、又はそれらの組み合わせであってよい)などの目的物質を含んでいてもよい。例えば、生体組織内及び/又は生体組織上に残る鉤状マイクロニードの一部は、望ましい投与期間に亘って医薬品を放出する徐放製剤を含んでいてもよい。1つの実施形態において、鉤状マイクロニードの破砕は、コア構造又はその近くで生じる。別の実施形態において、鉤状マイクロニードの破砕は、該鉤状マイクロニードが生体組織から除去されるのを抵抗する際に最大の力に晒されるマイクロニードル部分又はその近くで生じる。鉤状マイクロニードの破砕は、望ましい箇所で破砕が確実に生じるように、あるいはその可能性を少なくとも高めるように、所定の破損部位を含んでいてもよい。所定の破損部には、実質的に狭い部分、穿孔部分、切れ目部分、刻み目部分、異なる物質のインターフェース、又はそれらの組み合わせが含まれてもよい。
【0048】
一般的に、マイクロニードル粒子の1つ以上のマイクロニードルは、(1)生体組織の少なくとも部分的な貫通、(2)生体組織の治療、(3)1つ以上のマイクロニードルが生体組織から除去される可能性の低減又はその防止、(4)特定の生体組織へのマイクロニードル粒子の送達、(5)マイクロニードル粒子の破砕、(6)目的物質の送達、なたは(7)それらの組み合わせを援助する任意の構造的特徴を含んでいてもよい。例えば、マイクロニードル粒子の1つ以上のマイクロニードルは、各々独立に、鉤状、湾曲状、穿孔状、中空状、ポケット状、膨潤可能/拡張可能、又はそれらの組み合わせであってよい。
【0049】
1つ以上のマイクロニードルは、使用後、少なくとも部分的に生体組織に貫通するマイクロニードルの能力を減少させる、又は排除するように構成されてもよい。1つの実施形態において、生体組織に少なくとも1度貫通した時点で、1つ以上のマイクロニードルのうち少なくとも1つは機械的に機能しなくなり、その結果、該1つ以上のマイクロニードルのうち少なくとも1つは生体組織に再貫入できなくなるように構成される。別の実施形態において、生体組織に少なくとも1度貫通した時点で、1つ以上のマイクロニードルのうち少なくとも1つは化学的に機能しなくなり、その結果、該1つ以上のマイクロニードルのうち少なくとも1つは生体組織に再貫入できなくなるように構成される。更に別の実施形態において、生体組織に少なくとも1度貫通した時点で、1つ以上のマイクロニードルのうち少なくとも1つは機械的及び化学的に機能しなくなり、その結果、該1つ以上のマイクロニードルのうち少なくとも1つは生体組織に再貫入できなくなるように構成される。機械的及び化学的に機能しなくなるのは、1つ以上のマイクロニードルが生体組織に1度、2度、3度、又はそれ以上貫通した後に生じてもよい。機械的に機能しなくなるのは、限定されないが、マイクロニードルが損傷を受け、その形状が変化する、及び/又はその先端が鈍くなる場合も含まれる。化学的に機能しなくなるのは、限定されないが、マイクロニードルの一部が少なくとも部分的に溶解し、その結果、マイクロニードルの形状及び/又は機械的特性が鈍くなる、及び/又はそれらに変化が生じる場合も含まれる。
【0050】
マイクロニードル粒子は、1つ以上の生体適合性物質、例えば、金属、ポリマー、セラミック、生物活性剤、糖、糖アルコール、又はそれらの組み合わせでできていてもよい。一般的に、生物活性剤は、1つ以上の医薬品、1つ以上のセンサ、1つ以上の機能性化粧品、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよい。従って、マイクロニードル粒子は、生体活性成分(医薬品、センサ、機能性化粧品、又はそれらの組み合わせ)と不活性成分(金属、ポリマー、セラミック、糖など)との組み合わせでできていてもよい。マイクロニードル粒子の一部が該マイクロニードル粒子を除去した後に生体組織内及び/又は生体組織上に残っている場合、該生体組織内及び/又は生体組織上に残っているマイクロニードル粒子部分は、少なくとも1つの生体活性成分、少なくとも1つの不活性成分、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0051】
1つの実施形態において、マイクロニードル粒子は、生物活性剤などの目的物質で形成される。すなわち、粒子は完全に又は実質的に生体活性物質で構成される。本明細書で使用される場合、「実質的に構成される」と言う用語は、生体活性物質の少なくとも60重量%を意味する。
【0052】
1つの実施形態において、マイクロニードル粒子は水溶性物質でできている。別の実施形態において、マイクロニードル粒子は少なくとも1つの水溶性物質及び/又は生体内分解性物質でできている、又はそれらを含む。マイクロニードル粒子が水溶性及び/又は生体内分解性物質(複数も可)でできている場合、生体内に残されたマイクロニードル粒子又はその一部、あるいは処理後のマイクロニードル粒子又はその一部は、安全に分解されるものであってよい。1つの例において、マイクロニードル粒子は、マトリックス構造と、該マトリックス構造に分散された生物活性剤などの目的物質とを有していてもよい。マトリックス構造は、水溶性又は生体内分解性物質から成っていてもよいし、それを含んでいてもよい。従って、マイクロニードル粒子の1つ以上のマイクロニードルは溶解可能であり、皮膚に残った場合には間質液内で溶解し、生物活性剤及び/又は他の目的物質を皮膚内に放出するように構成されてもよい。本明細書で使用される場合、「生体内分解性」と言う用語は、構造/物質が、溶解、酵素加水分解、腐食、再吸収、又はそれらの組み合わせによりインビボで分解することを意味する。好ましい実施形態において、目的物質及び該目的物質を分散させるマトリックス材料は、マイクロニードル粒子の構造体を形成する。好ましい実施形態において、生体内分解性のマイクロニードル粒子のマトリックス材料は水溶性であり、従って、該マイクロニードル粒子全体がインビボで溶解する。別の実施形態において、生体内分解性のマイクロニードル粒子のマトリックス材料は生体分解性であり、従って、マイクロニードル粒子は生体に挿入された最初の形態では溶解性ではないが、体内で化学変化(例えば、ポリマーの化学的結合の分解)を生じ、水溶性の、又は体内から排泄可能な他の化学変化産物(例えば、ポリマーのモノマー又はオリゴマー)をもたらす。
【0053】
1つの実施形態において、マイクロニードル粒子は金属製のマイクロニードル粒子である。金属製のマイクロニードル粒子と言うのは、マイクロニードル粒子の全体構造が金属でできているものを意味する。別の実施形態において、マイクロニードル粒子はポリマーのマイクロニードル粒子である。ポリマーのマイクロニードル粒子と言うのは、マイクロニードル粒子の全体構造が1つ以上のポリマー材料でできているものを意味する。更に別の実施形態では、少なくとも1つの金属と少なくとも1つのポリマー材料とで形成された構造を有する。マイクロニードル粒子がポリマー材料を含む場合、該マイクロニードル粒子は、ポリマーマトリックスと該ポリマーマトリックス内に分散された目的物質とを含む構造を有していてもよい。生物活性剤などの目的物質は、ポリマーマトリックス内に少なくとも実質的に均一に分散していてもよいし、不均一に分散していてもよい。ポリマーマトリックス内に分散された生物活性剤は、1つ以上の医薬品、1つ以上のセンサ、1つ以上の機能性化粧品、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよい。目的物質は、コア構造を形成する又はその一部であるポリマーマトリックスの少なくとも一部、1つ以上のマイクロニードルの少なくとも1つ、1つ以上のマイクロニードルの少なくとも1つの先端、1つ以上のマイクロニードルの少なくとも1つの有刺、1つ以上のマイクロニードルの少なくとも1つの非有刺部分、又はそれらの組み合わせに分散されていてもよい。マイクロニードルの非有刺部分は、有刺が溶解された場合でも、又は有刺がマイクロニードル粒子から分離された場合でも、コア構造に結合したままのマイクロニードル部分であってもよい。目的物質は、当業界で既知の任意の技術(例えば、参照として本明細書に援用される、米国特許第7,918,814号、米国特許第8,257,324号など)によりカプセル化されてもよい、すなわちマイクロニードル粒子内の間隙及び/又は空所に置かれてもよい。
【0054】
目的物質の少なくとも1部は、(1)マイクロニードル粒子が生体組織に少なくとも部分的に貫通する前、その間、及び/又はその後に、(2)マイクロニードル粒子が生体組織に積極的に適用されている間、及び/又はその後に、(3)マイクロニードル粒子が生体組織に接触している間に、(4)マイクロニードル粒子の一部が生体組織内及び/又は生体組織上に残っている場合に、該生体組織からマイクロニードル粒子を除去した時点及び/又はその後に、又は(5)それらの組み合わせで、該マイクロニードル粒子から放出されてもよい。
【0055】
目的物質の少なくとも1部は、限定されないが、(1)マイクロニードル粒子の一部を通した拡散、(2)生体組織への溶解、(3)マイクロニードル粒子からの機械的分離(例えば、剥離、分裂、破砕)、(4)共有結合及び/又は非共有結合の分裂、(5)物理化学的力の開裂(例えば、加水分解又は酵素的な開裂)、(6)マイクロニードル粒子の少なくとも一部を形成する物質(例えばゲル)の膨潤/脱膨潤、(7)マイクロニードル粒子の少なくとも一部を形成する物質の位相変化(例えば、温度変化による融解)、又は(8)それらの組み合わせを含む1つ以上の機構によって、該マイクロニードル粒子から放出されてもよい。
【0056】
本明細書記載のマイクロニードル粒子は、マイクロニードル粒子の望ましい幾何学的形状を形成できる任意の適切な方法によって作製してよい。斯かる方法には、限定されないが、鋳型法、機械的又は化学的エッチング、レーザー切断、3D印刷、又は当業界で既知の他の微細加工技術が含まれる。例えば、マイクロニードル粒子は、一枚の材料をレーザーエッチングすることにより形成してもよい。更なる例として、マイクロニードル粒子は、結果として生じるマイクロニードル粒子の望ましい幾何学的形状に対応する窪みを有する鋳型に構築材料を配置することを含む、鋳型法を用いて作製してもよい。構築材料は、ポリマー又はその前駆物質であってもよく、粉末又は液体形状(例えば、融解ポリマー及び/又は液体媒体に溶解又は分散したポリマー)で鋳型に配置し、その後鋳型内でモノリシックな固体に固めてもよい。別の例では、個別粒子のアレイが、エッチング、穴開け、切断(例えばレーザー切断)のうち少なくとも1つを含むプロセスによって、一枚の固体材料から形成される。マイクロニードル粒子は焼結してもよい。特定の理論に拘束されるものではないが、焼結により、マイクロニードル粒子の末端及び/又は先端が鋭利化されるものと考えられる。
【0057】
実施形態において、マイクロニードル粒子は、生物活性剤及び/又は他の目的物質を含むコーティング組成物によって少なくとも部分的にコーティングされている。1つの実施形態において、コーティング組成物は、マイクロニードル粒子の全表面に適用される。別の実施形態において、コーティング組成物は、1つ以上のマイクロニードルの少なくとも一部、コア構造、又はそれらの組み合わせに適用される。例えば、コーティング組成物は、コア構造、1つ以上のマイクロニードルの少なくとも1つ、1つ以上のマイクロニードルのうち少なくとも1つマイクロニードルの先端、1つ以上のマイクロニードルのうち少なくとも1つのマイクロニードルの有刺、又は1つ以上のマイクロニードルのうち少なくとも1つのマイクロニードルの非有刺部分に適用してもよい。コーティング組成物は、マイクロニードル粒子を除去した時点で、生体組織内及び/又は生体組織上に残ってもよい。コーティング組成物の生物活性剤には、1つ以上の医薬品、1つ以上のセンサ、1つ以上の機能性化粧品、又はそれらの組み合わせが含まれてもよい。コーティング組成物は、参照として本明細書に援用される米国特許出願2008/0213461号を含む、当業界で既知の任意の技術を用いて、マイクロニードル粒子に適用されてもよい。
【0058】
本明細書で使用される場合、「目的物質」と言う用語には、活性な医薬品成分、ワクチン、アレルゲン、ビタミン、化粧品剤、機能性化粧品、診断剤、センサ、マーカー(例えば、着色染料、放射線用染料又はマーカー)、他の生物活性剤、及び生体組織内及び/又は生体組織上に適用するのが望ましい他の材料が含まれる。
【0059】
1つの実施形態において、目的物質は、医学又は獣医学のアプリケーションで有用な予防剤、治療薬、又は診断剤である。1つの実施形態において、目的物質は予防用又は治療用物質であり、本明細書では、活性な医薬品成分(すなわちAPI)と呼ばれてもよい。特定の実施形態では、APIは、適切な蛋白質、ペプチド及びそれらの断片、DNA、RNA、及び他の天然及び非天然の核酸系分子及びその断片(天然産物、合成産物、又は遺伝子組み換え産物でもよい)。送達用のAPIの代表的な例には、抗生物質、抗ウイルス剤、鎮痛剤、麻酔薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症剤、抗凝固剤、アレルゲン、抗腫瘍薬が含まれる。特定の実施形態において、APIは、皮膚に関連した適応症の予防、治療、又は診断に使用される外皮用剤である。
【0060】
1つの実施形態において、目的物質はワクチンを含む。ワクチンには、例えば、感染症用のワクチン、癌、神経障害、アレルギー、禁煙、及び他の中毒症のための治療用ワクチンが含まれる。現在及び今後のワクチンのいくつかの例には、炭疽病、子宮頸癌(ヒトパピローマウイルス)、デング熱、ジフテリア、エボラ、肝炎A、肝炎B、肝炎C、ヘモフィルスインフルエンザb型(Hib)、HIV/AIDS、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザ(季節性、流行性)、日本脳炎(JE)、ライム病、マラリア、はしか、髄膜炎、モンキーポックス、耳下腺炎、百日咳、肺炎球菌病、小児麻痺、狂犬病、ロータウイルス、風疹、帯状疱疹、天然痘、破傷風、チフス、結核(TB)、水痘、ウェストナイル熱、及び黄熱の予防用ワクチンが含まれる。
【0061】
別の実施形態において、目的物質は治療薬を含む。治療薬は、小分子及び生物工学的に製造又は精製された大型分子から選択してよい。治療薬(その類似物及び拮抗薬を含む)の例としては、限定されないが、インスリン、インスリン様成長因子、インサルトロピン、副甲状腺ホルモン、プラムリンチド酢酸塩、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出因子、メカセルミン、第VIII因子、第IX因子、アンチトロンビンIII、蛋白質C、蛋白質S、ベータグルコセレブロシダーゼ、アルグロコシダーゼアルファ、ラロニダーゼ、イズルスルファーゼ、ガルスルファーゼ、アガルシダーゼベータ、アルファ1プロテイナーゼインヒビター、ラクターゼ、膵臓酵素、アデノシンデアミナーゼ、プールされた免疫グロブリン、ヒトアルブミン、エリスロポエチン、ダルベポエチンアルファ、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチム、オプレルベキン、ヒト卵胞刺激ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ルトロピンアルファ、インターフェロン(アルファ、ベータ、ガンマ)、アルデスロイキン、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクプテラーゼ、ウロキナーゼ、Vila因子、ドロトレコギンアルファ、サケカルシトニン、エキセナチド、オクトレオチド、ジボテルミンアルファ、遺伝子組み換えヒト骨形態形成蛋白質7、ヒストレリン酢酸塩、パリフェルミン、ベカプレルミン、トリプシン、ネシリチド、ボツリヌス毒素(A型及びB型)、コラゲナーゼ、ヒトデオキシリボヌクレアーゼI、ヒアルロニダーゼ、パパイン、1アスパラギナーゼ、ペグアスパラギナーゼ、ラスブリカーゼ、レピルジン、ビバリルジン、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、アレムツズマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、アバタセプト、アナキンラ、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、アレファセプト、エファリズマブ、ナタリズマブ、エクリズマブ、抗胸腺細胞グロブリン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ムロモナブCD3、オマリズマブ、パリビズマブ、エンフビルチド、アブシキシマブ、ペグビソマント、Crotalidene多価Fab(ヒツジ)、ジゴキシン免疫血清Fab(ヒツジ)、ラニビズマブ、デニロイキン・ジフチトクス、イブリツモマブ・チウキセタン、ゲムツブマブ・オソガマイシン、トシツモマブ、ヨウ素トシツモマブ、抗rh免疫グロブリンG、デスモプレシン、バソプレシン、デアミノ(Val4、D-Arg8)アルギニンバソプレシン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ブラジキニン、ブレオマイシン硫酸塩、キモパパイン、グルカゴン、エポプレステノール、コレシストキニン、オキシトシン、コルチコトロピン、プロスタグランジン、ペンチゲチド、サイモシンアルファ1、アルファ1アンチトリプシン、フェンタニル、リドカイン、エピネフリン、スマトリプタン、ベンズトロピンメシラート、リラグルチド、フォンダパリヌクス、ヘパリン、ヒドロモルフォン、オマセタキシンメペスクシナート、プラムリンチド酢酸塩、チロトロピンアルファ、グリコピロラート、ジヒドロエルゴタミンメシラート、ボルテゾミブ、トリプトレリンパモ酸塩、テデュグルチド、メチルナルトレキソン臭化物、パシレオチド、オンダンセトロン塩酸塩、ドロペリドール、トリアムシノロン(ヘキサ)アセトニド、アリピプラゾール、エストラジオール吉草酸塩、モルフィン硫酸塩、オランザピン、メタドン塩酸塩、及びメトトレキサートが含まれる。
【0062】
更に別の実施形態において、目的物質は、当業界で周知のビタミン、薬用植物、食品サプルメントである。それには、限定されないが、5HTP(5ヒドロキシトリプトファン)、アサイーベリー、アセチル-L-カルニチン、活性炭、アロエベラ、アルファリポ酸、リンゴ酢、アルギニン、明日葉、アシュワガンダ、アスタキサンチン、大麦、ビーポーレン、ベータアラニン、ベータカロテン、ベータグルカン、ビオチン、ゴーヤ、ブラックチェリー、ブラックコホッシュ、クロフサスグリ、紅茶、分岐鎖アミノ酸、ブロメライン(ブロメリン)、カルシウム、カンファ、カモミール、チェストベリー、キトサン、クロレラ、クロロフィル、コリン、コンドロイチン、クロム、シナモン、シチコリン、ココナッツ水、補酵素Q10、共役リノール酸、冬虫夏草、クランベリー、クレアチン、Dマンノース、ダミアナ、deer velvet、DHEA、DMSO、エキネシア、EDTA、エルダーベリー、エミュー油、マツヨイグサ油、フェヌグリーク、夏白菊、葉酸、フォルスコリン、GABA(ガンマアミノ酪酸)、ゼラチン、生姜、イチョウ、朝鮮人参、グリシン、グルコサミン、グルコサミン硫酸塩、グルタチオン、ゴツコラ、ブドウの種エキス、グリーンコーヒー、ガラナ、グッグル、ギムネマ、サンザシ、ハイビスカス、ホーリーバジル、イカリソウ、イヌリン、鉄、オキアミ油、Lカルニチン、Lシトルリン、Lトリプトファン、乳酸桿菌、マグネシウム、木蓮、ノゲシ、MSM(メチルスルフォニルメタン)、ナイアシン、オリーブ、オメガ3脂肪酸、ウーロン茶、オレガノ、トケイソウ、ペクチン、フェニルアラニン、ホスファチジルセリン、カリウム、プロバイオティックス、プロゲステロン、ケルセチン、リボース、赤麹、霊芝、レスベラトロール、ローズヒップ、サフロン、SAM-e、ノコギリパルメット、ゴミシ、シーバックソーン、セレン、センナ、赤楡、オトギリソウ、イラクサ、ティーツリーオイル、テアニン、マハビシ、ウコン(クルクミン)、チロシン、バレリアン、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ホエー蛋白質、アメリカマンサク、キサンタンガム、キシリトール、ヨヒンべ、及び亜鉛が含まれる。
【0063】
更に別の実施形態において、目的物質は、皮膚科学において使用される治療薬を含む。治療薬は、小分子及び生物工学的に製造又は精製された大型分子(例えば、ペプチド、蛋白質、DNA、RNA)から選択してよい。皮膚科学で使用される治療薬は、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、脱毛症、乾癬、皮膚炎、又は光損傷皮膚を含む任意の皮膚症状又は複数の皮膚症状を治療するのに使用される薬剤であってよい。抗真菌剤の例には、限定されないが、アモロルフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、ボリコナゾール、クロトリマゾール、ブトコナゾール、エコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン、アンフォテリシンB、AmB、ナイスタチン、ピマリシン、グリセオフルビン、シクロピロックスオラミン、ハロプロギン、トルナフテート、ウンデシレナート、又はそれらの組み合わせが含まれる。抗ウイルス剤の例には、限定されないが、アシクロビール、ペンシクロビール、ファムシクロビル、バラシクロビル、ベヘニルアルコール、トリフルリジン、イドクスウリジン、シドフォビル、ガンシクロビル、ポドフィロックス、ポドフィロトキシン、リバビリン、アバカビル、デラビルジン、ジダノシン、エファビレンツ、ラミブジン、ネビラピン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、アンプレナビル、インジナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、アマンタジン、インターフェロン、オセルタミビル、リバビリン、リマンタジン、ザナミビル、又はそれらの組み合わせが含まれる。抗菌剤の例には、限定されないが、エリスロマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ムピロシン、ポリミキシンB、シプロフラキシンなどのキノロン、又はそれらの組み合わせが含まれる。治療薬には、限定されないが、イミキモドなどの免疫調整剤も含んでよい。光損傷皮膚を治療するための治療薬には、限定されないが、人の皮膚の粘膜免疫を増大できる免疫調整剤又は免疫賦活剤が含まれる。斯かる医薬品の例には、限定されないが、イミキモド、レシキモド、又はそれらの組み合わせが含まれる。皮膚科的状態が脱毛症の場合、治療薬には、限定されないが、コルチコステロイド、例えば、ベタメタゾンジプロピオネート、ハロベタゾールプロピン酸エステル、ジフロラゾンジアセタート、トリアムシノロンアセトニド、デソキシメタゾン、フルオシノニド、ハルシノニド、モメタゾンフロエート、ベタメタゾン吉草酸エステル、フルオシノニド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、フルランドレノリド、デソニド、ヒドロコルチゾンブチレート、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、アルクロメタゾンジプロピオン酸エステル、フルメタゾンピボレート、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、ミノキシジル、スピロノラクトン、フィナステリド、アントラリン、ジニトロクロロベンゼンなどのトレチノイン局所免疫治療薬、スクアリン酸ジブチルエステル、ジフェニルシクロプロペノン、他の髪成長刺激剤、又はそれらの組み合わせが含まれる。皮膚科的状態が乾癬皮膚炎の場合、治療薬は、限定されないが、コルチコステロイド、免疫調整剤、ビタミンD3、レチノイン酸、又はそれらの組み合わせを含んでよい。斯かる医薬品の具体的な例には、限定されないが、ベタメタゾンジプロピオネート、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾンジアセタート、アムシノニド、デソキシメタゾン、フルオシノニド、ハルシノニド、モメタゾンフロエート、ベタメタゾン吉草酸エステル、フルオシノニド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド、デソニド、ヒドロコルチゾンブチレート、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、アルクロメタゾンジプロピオン酸エステル、フルメタゾンピボレート、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、タクロリムス、ピクロリムス、タザロテン、イソトレチノイン、シクロスポリン、アントラリン、ビタミンD3、コレカルシフェロール、カルシトリオール、カルシポトリオール、タカルシトール、カルシポトリエン、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0064】
別の実施形態において、目的物質は化粧料/機能性化粧料を含む。化粧料/機能性化粧料は、小分子及び生物工学的に製造又は精製された大型分子(例えば、ペプチド、蛋白質、DNA、RNA)から選択してよい。生物学的に活性及び生物学的に不活性な化粧料/機能性化粧料(その類似物及び拮抗薬を含む)の例としては、限定されないが、アンチエージング製品(スクラブ剤、角質溶解薬、抗セルライト薬、シワ改善薬など)、皮膚保護薬(サンスクリーン、バリアクリーム、オイル、シリコーン、昆虫忌避薬、痒み止め、防腐剤、抗菌薬、皮膚の締り/色調用のミルク及びローション、いぼ除去組成物など)、皮膚色製品(ホワイトナー、ライトナー、サンレスタンニング加速剤など)、色素沈着皮膚着色剤(顔/体のメーキャップ、ファンデーションクリーム、マスカラ、ルージュ、リップ製品など)、風呂/シャワー製品(ボディクレンザー、ボディウォッシュ、シャワージェル、液体石鹸、石鹸、コンディショニング液体バスオイル、バスパウダーなど)、角質溶解用コーン、カルス除去剤、フットソーク、フットパウダーなどのフットケア製品(抗真菌用の水虫パウダー、軟膏、スプレーなどの医薬品)、及び発汗抑制粉末が含まれる。
【0065】
(組成物)
マイクロニードル粒子を含む組成物も提供される。実施形態において、組成物は、(i)複数のマイクロニードル粒子と、(ii)該複数のマイクロニードル粒子を分散させるための液体媒体とを含む。複数のマイクロニードル粒子は、液体媒体に少なくとも実質的に均一に分散されていてもよいし、あるいは液体媒体に不均一に分散されていてもよい。組成物は、生体組織表面(例えば、哺乳類の皮膚)へのアプリケーション用に適合されていてもよい。
【0066】
本質的に、生体適合性の任意の液体媒体が使用できる。いくつかの実施形態において、液体媒体は、粘性の液体、ゲル、又は乳濁液であってよい。液体は、少なくとも1,000cPの粘性を有してもよい。実施形態において、液体は、約1,000cPから約200,000cP、約1,000cPから約150,000cP、約1,000cPから約100,000cP、約1,000cPから約75,000cP、又は約1,000cPから約50,000cPの粘性を有する。他のいくつかの実施形態において、液体媒体は非粘性の液体であり、それは1,000cP未満の粘性、例えば、約5cPから約500cP、約5cPから約250cP、又は約5cPから約100cPの粘性を有する液体である。液体媒体は、水性媒体及び/又は非水性媒体であってよい。1つの実施形態において、液体媒体は生物活性剤及び/又は他の目的物質を含んでいる。組成物に含み得る生物活性剤の例は、限定されないが、医薬品、センサ、機能性化粧品、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0067】
組成物の液体媒体は、安定剤、pH調整剤、増粘剤、又は製薬学的に受け入れられる他の賦形剤、例えば、局所治療アプリケーション用として当業界で知られている賦形剤(米国食品医薬品局が一般に安全と認められるものとして挙げている物質も含む)を更に含んでもよい。
【0068】
(目的の物質を送達し皮膚を治療する方法)
目的物質を送達するための方法、及び/又は本明細書記載のマイクロニードル粒子を用いて皮膚を治療する方法が提供される。斯かる方法を実施するための組成物及びキットも提供される。
【0069】
実施形態において、皮膚の治療方法は、皮膚領域に複数のマイクロニードル粒子を接触させることも含み、その場合、該複数のマイクロニードル粒子は、コア構造と該コア構造から延びる1つ以上のマイクロニードルとを有するマイクロニードル粒子を含み、該1つ以上のマイクロニードルは少なくとも部分的に皮膚を貫通できる構造を有している。
【0070】
特定の理論に拘束されるものではないが、複数のマイクロニードル粒子のうち少なくとも一部が皮膚領域に少なくとも部分的に貫通すれば、該皮膚領域の電気抵抗が減少するものと考えられる。
【0071】
1つの実施形態において、皮膚領域にマイクロニードル粒子を接触させる工程は、該皮膚領域におけるコラーゲン生成を促進する効果がある。すなわち、マイクロニードル粒子が接触した皮膚領域におけるマイクロチャネルの形成により、生物活性剤を追加することなく、あるいは生物活性剤との組み合わせにより、検出可能なコラーゲン生成の増大又は開始が誘導される。
【0072】
実施形態において、目的物質の送達方法は、複数のマイクロチャネルを生体組織表面に形成するのに効果的なやり方で、皮膚領域又は別の生体組織表面を本明細書記載の複数のマイクロニードル粒子に接触させることにより、前処理された生体組織領域を提供することと、当該前処理された生体組織領域に目的物質を供給することとを含む。特定の理論に拘束されるものではないが、目的物質を送達するための当該方法により、生物活性剤などの目的物質が、組織に生物学的効果を与えるようなやり方で生体組織への送達が可能になるものと考えられる。組織が皮膚の場合、目的物質は、皮膚科的適応症への治療、皮膚の美容面での改善、皮膚の外見の変化、又はそれらの組み合わせを提供できる。
【0073】
本明細書で使用される場合、「生体組織を少なくとも部分的に貫通する」と言う用語、あるいは「貫通する」又は「貫通」と言う用語は、マイクロニードル粒子中のマイクロニードルの少なくとも25%(マイクロニードルの少なくとも先端を含む)を生体組織内に挿入することを意味する。好ましい実施形態において、「貫通」には、患者の皮膚の角質層に穴が開き、マイクロニードルの少なくとも先端部分が生存表皮内に存在するようになること、又は生存表皮を通過することも含まれる。
【0074】
実施形態において、生体組織表面又は皮膚領域に複数のマイクロニードル粒子を接触させることには、1つ以上の力を当該マイクロニードル粒子に与え、1つ以上のマイクロニードルの少なくとも一部が、目的とするアプリケーション部位で、皮膚又は他の生体組織を少なくとも部分的に確実に貫通することも含まれる。1つ以上の力には、横方向の力(例えば、組織表面に垂直の力)、剪断力(例えば、組織平面に平行な力)、又はそれらの組み合わせが含まれる。例えば、優しく擦る動きをマイクロニードル粒子に与えてもよい。更なる例として、生体組織又は皮膚領域に複数のマイクロニードル粒子を含むガス流を接触させてもよく、その場合、該ガス流は、マイクロニードルの少なくとも一部が生体組織又は皮膚領域を少なくとも部分的に貫通するのに十分なエネルギを該マイクロニードルに与える。
【0075】
少なくとも複数のマイクロニードル粒子の一部は、該複数のマイクロニードル粒子が生体組織又は皮膚領域に接触する前、接触中、又は接触後、1つ以上の他の物質と組み合わされてもよい。いくつかの実施形態では、上述の詳細な説明のように、複数のマイクロニードル粒子は液体媒体に分散される、あるいは複数のマイクロニードル粒子と目的物質が一緒に液体媒体に分散される。液体媒体には、粘性の液体、ゲル、又は乳濁液が含まれてよい。液体は、少なくとも500cp、少なくとも600cp、少なくとも700cp、少なくとも800cp、少なくとも900cp、又は少なくとも1,000cpの粘性を有してもよい。液体媒体は、水性媒体及び/又は非水性媒体であってよい。
【0076】
生体組織表面に複数のマイクロニードル粒子を接触させることと、目的物質を適用することとは、同時に生じてもよいし、あるいは別々に生じてもよい。実施形態において、生体組織表面に複数のマイクロニードル粒子を接触させることと、目的物質を適用することとは同時に生じる。いくつかの実施形態において、複数のマイクロニードル粒子と目的物質とが液体媒体に一緒に分散され、生体組織表面に複数のマイクロニードル粒子を接触させることと、目的物質を適用することとが同時に生じる。例えば、複数のマイクロニードル粒子と目的物質は液体媒体に一緒に分散されてもよく、その場合、生体組織に複数のマイクロニードル粒子を接触することは、液体媒体を生体組織表面に適用すること、及び/又は擦り込むことを含んでもよい。
【0077】
生体組織は、一般的に、マイクロニードル粒子の1つ以上のマイクロニードルによって少なくとも部分的に貫通された任意の組織を含んでもよい。複数のマイクロニードルと接触する表面を有する生体組織の例には、限定されないが、皮膚、目(例えば、角膜、結膜)、消化器官(例えば、口、食道、胃、小腸、大腸、直腸、及び肛門)、鼻の内部、膣、耳の内側(例えば、鼓膜)、筋肉、血管、細胞膜、又はそれらの組み合わせが含まれる。生体組織は、哺乳類の生体組織(例えば、哺乳類の皮膚)であってよい。
【0078】
生体組織に適用されるマイクロニードル粒子の量又は濃度は任意であってよく、それには、少なくとも望ましい量の目的物質(例えば、生物活性剤)が生体組織に入る、又は生体組織を通過するのに十分な量又は濃度が含まれる。実施形態において、複数のマイクロニードル粒子は、生体組織表面積1cm2当たり約5~約3,000マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、生体組織表面積1cm2当たり約10~約2,500マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、生体組織表面積1cm2当たり約10~約2,000マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、生体組織表面積1cm2当たり約20~約2,000マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、生体組織表面積1cm2当たり約50~約2,000マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、生体組織表面積1cm2当たり約50~約1,500マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、生体組織表面積1cm2当たり約50~約1,000マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、生体組織表面積1cm2当たり約100~約1,000マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、生体組織表面積1cm2当たり約100マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、生体組織表面積1cm2当たり約250マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、生体組織表面積1cm2当たり約500マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量、又は生体組織表面積1cm2当たり約1,000マイクロニードル粒子の濃度を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量を含む。別の実施形態では、本明細書記載の組成物において、複数のマイクロニードル粒子は、液体媒体中のマイクロニードル粒子の濃度が、液体媒体1cm3当たり約10~約10,000、液体媒体1cm3当たり約10~約5,000、液体媒体1cm3当たり約10~約4,000、液体媒体1cm3当たり約10~約3,000、液体媒体1cm3当たり約10~約2,000、液体媒体1cm3当たり約10~約1,500、液体媒体1cm3当たり約20~約1,500、液体媒体1cm3当たり約50~約1,000、又は液体媒体1cm3当たり約100~約1,000を達成するのに十分なマイクロニードル粒子の量を含む。
【0079】
実施形態において、本明細書記載の方法は、生体組織表面に複数のマイクロチャネル(すなわち、生体組織の外表面に始まり、外表面の下の生体組織内に深く貫通するマイクロチャネル)を形成することを含む。マイクロチャネルは、一般的に、1つ以上のマイクロニードルが生体組織を少なくとも部分的に貫通する場合に形成される。マイクロチャネルは、生体組織表面からマイクロニードル粒子を除去する前及び/又は後に、生体組織への目的物質の通過を可能にする。マイクロニードル粒子の生体組織からの除去は、リンス、拭き取り、接着剤の適用/除去、又はそれらの任意の組み合わせ含む任意の手段により達成できる。マイクロチャネルは、断面が少なくとも実質的に対称であってよい。
【0080】
実施形態において、マイクロニードル粒子はアプリケーターを用いて適用してもよい。「アプリケーター」とは、貯蔵及び/又は生体組織にマイクロニードル粒子を接触させる際に援助を行う任意の装置である。1つの実施形態において、アプリケーターは、マイクロニードル粒子を収容する貯蔵器と、生体組織とマイクロニードル粒子との接触を可能にするローラー又は他の装置とを含む。別の実施形態において、アプリケーターは、生体組織に接触する少なくとも1つの側面で開かれ、生体組織に接触しない少なくとも1つの側面で閉じられる、剛体又は変形可能な容器である。更に別の実施形態において、アプリケーターは、マイクロニードル粒子を生体組織に送達可能なガス流を生成する装置を有する。更なる実施形態において、アプリケーターは、複数のマイクロニードル粒子を含む固体、ゲル、粘性の液体、又は他の製剤を有する。固体の製剤は、生体組織に接触することにより、マイクロニードル粒子を生体組織に投与してもよい。斯かる実施形態及び他の実施形態の一部として、アプリケーターは、マイクロニードル粒子を生体組織に適用するため、該アプリケーターを指及び/又は手で握る、把持する、移動する、又は操作するためのハンドル又は他の特徴を有していてもよい。アプリケーターは手動で操作してもよいし、あるいは例えば電気的に(例えばバッテリによって)動力を与える1つ以上の移動可能な構成要素を含んでいてもよい。移動可能な構成要素は、生体組織の表面方向に、又はそれから離れる方向に、又はそれに沿って、及び/又は該表面内にマイクロニードル粒子が移動するのを容易にしてもよい。アプリケーターは、マイクロニードル粒子製剤を貯蔵するパッケージ又は筺体の一部であってもよいし、その全体であってもよい。1つの実施形態において、マイクロニードル粒子製剤はそのパッケージから生体組織表面へ投与され(例えば、押し出され)、次に該パッケージの全体又は一部がアプリケーターとして使用される。
【0081】
1つの実施形態において、アプリケーターはワイプ(拭き取り)形態である。ワイプは、ベース層と、マイクロニードル粒子を含む放出層とを含んでいてもよい。放出層はマイクロニードル粒子を分散させるゲル、ペースト、又は他の半固体のキャリア媒体を含んでいてもよい。ベース層は、放出層が生体組織表面(例えば、湿った、又は乾燥した皮膚表面)で拭い取り可能となるまで、該放出層を一時的に保持するのに適したポリマー膜、織布、又は不織布を含んでいてもよい。
【0082】
本明細書及び添付の請求項で使用される場合、単数形の「a」、「an」、又は「the」は、内容が明らかに別の意味を示さない限り、複数形も含む。従って、例えば、「バリア材料」と言う用語は2つ以上の構成要素の組み合わせを含み、「所定の破砕領域」と言う用語は2つの異なる所定の破砕領域を含み得る。本明細書で使用される場合、特定の量の値を示す「約」と言う用語は、当該値の10%以内、又は任意に当該値の5%以内、又はいくつかの実施形態においては、当該値の1%以内の範囲の量を含み得る。
【実施例0083】
本発明は以下の例によって更に説明されるが、斯かる例は、本発明の範囲を制限するようには決して解釈されるべきではない。本明細書記載の内容を一読後、本発明の精神又は添付の請求項の範囲から逸脱することなく、他の種々の態様、実施形態、変形、及び等価物を当業者が想到し得ることは十分理解されるべきである。従って、本発明の他の態様が、本明細書を考慮し本明細書記載の発明を実践することにより、当業者には明らかとなるであろう。
【0084】
(実施例1-マイクロニードル粒子の製造)
約12μmの厚さを有する1枚のステンレス鋼から、4つの平面的マイクロニードルを有する複数のマイクロニードル粒子を製造した。両面接着テープを当該1枚のステンレス鋼に適用し、赤外線レーザー切除(QスイッチNd:YLF、1047nm)を使用することにより、該1枚のステンレス鋼から4つの平面的マイクロニードルを切断した。
【0085】
ステンレス鋼シートから接着剤を剥がすことにより、該ステンレス鋼シートからマイクロニードル粒子を除去した。次に、マイクロニードル粒子を溶媒内に置き、接着剤を溶解した。
【0086】
上記方法を用いて、マイクロニードル粒子の2つのバッチを製造した。最初のバッチのマイクロニードル粒子の最大寸法は800μmで、第二のバッチのマイクロニードル粒子の最大寸法は350μmであった。
【0087】
(実施例2-マイクロチャネルのゲンチアナバイオレット染色)
豚の耳の皮膚のインビトロサンプルをアロエベラゲル(負の対照)、マイクロニードルパッチ(正の対照)、耳の皮膚1cm2当たり1,000粒子の濃度の実施例1のマイクロニードル粒子(4-1000)、及び耳の皮膚1cm2当たり500粒子の濃度の実施例1のマイクロニードル粒子(4-500)を用いてエクスビボで前処理した後、ゲンチアナバイオレット染料で染色した。実施例1のマイクロニードル粒子は、両方の例において、マイクロニードル粒子をアロエベラゲルに置き、該アロエベラゲルを当該耳の皮膚に優しく擦り込むことにより適用された。マイクロニードルパッチ(正の対照)は、10x10マイクロニードルアレイ(長さ約700μm)であった。
【0088】
次に、ゲンチアナバイオレット染色に基づき、代表的な処理画像(ImageJ)を用いて、貫通部位の全面積及び数を決定した。マイクロニードルパッチ及び2つのマイクロニードル粒子による前処理で観察された染色面積の増大が、
図9に示してある。
【0089】
ゲンチアナバイオレット染料を適用後、耳の皮膚の各サンプルをリン酸緩衝液(PBS)内で一晩培養した。次に、耳の皮膚の各サンプルの電気抵抗を測定した(
図10)。マイクロニードルパッチ及び2つのマイクロニードル粒子による前処理の後で、皮膚の電気抵抗が減少した。
【0090】
特定の理論に拘束されるものではないが、ゲンチアナバイオレット染色面積及び皮膚の電気抵抗の測定は、マイクロニードル粒子の実施形態による前処理の結果、皮膚のバリア特性が減少したことを示していると考えられた。
【0091】
(実施例3-スルホローダミンBによるブタの耳の皮膚の治療)
実施例1の場合と同様、豚の耳の皮膚のインビトロサンプルをアロエベラゲル(負の対照)、マイクロニードルパッチ(正の対照)、耳の皮膚1cm2当たり1,000粒子の濃度の実施例1のマイクロニードル粒子(4-1000)、及び耳の皮膚1cm2当たり500粒子の濃度の実施例1のマイクロニードル粒子(4-500)を用いてエクスビボで前処理した。前処理後、耳の皮膚のサンプルに、各々、垂直型のフランツ拡散セル中で10μMのスルホローダミンBを適用した。
【0092】
スルホローダミンBを適用した1時間後、6時間後、及び24時間後、
図11に示されるように、耳の皮膚の各サンプルの組織学的断面の蛍光像を分析した。
【0093】
(実施例4-マイクロニードル粒子の濃度の影響)
以下の例において、局所的に適用された化合物の皮膚組織への浸透性の増大効果について、マイクロニードル粒子の特性を調べた。
【0094】
マイクロニードル粒子の濃度の影響を、1cm2当たり100マイクロニードル粒子の濃度、1cm2当たり500マイクロニードル粒子の濃度、1cm2当たり1,000マイクロニードル粒子の濃度、及び1cm2当たり2,000マイクロニードル粒子の濃度で、 豚の耳の皮膚にマイクロニードル粒子を適用することにより試験した。この例では、各々異なる幾何学的形状を有する3つのタイプのマイクロニードル粒子を試験した。第一、第二、及び第三のマイクロニードル粒子は、それぞれ2つのマイクロニードル、4つのマイクロニードル、及び6つのマイクロニードルを有していた。
【0095】
マイクロニードル粒子を豚の耳の皮膚に約10秒間適用することにより、上述の例のマイクロニードル粒子を用いて豚の耳の皮膚のサンプルを前処理した。この例の皮膚のサンプルを前処理する前に、マイクロニードル粒子をアロエベラゲラと組み合わせた。その後、耳の皮膚をゲンチアナバイオレットで染色した。貫通部位を
図12に示す。
図12は、一般的に、マイクロニードル粒子の濃度増加が貫通部位の数の増加を招来することを示している。
図12において、右端の欄は、皮膚サンプルに適用されたアロエベラゲル中のマイクロニードル粒子の濃度を可視的に示したものである。
【0096】
(実施例5-マイクロニードル粒子の幾何学的形状の影響)
異なる幾何学的形状を有する3つのタイプのマイクロニードル粒子を同じ濃度で豚の耳の皮膚のサンプルに適用することにより、マイクロニードル粒子の幾何学的形状の影響を試験した。マイクロニードル粒子の最初のタイプは2つのマイクロニードルを有し、マイクロニードル粒子の第二のタイプは4つのマイクロニードルを有し、マイクロニードル粒子の第三のタイプは6つのマイクロニードルを有しており、各タイプのマイクロニードル粒子は3種類のサイズ、すなわち500μm、1,000μm、及び2,000μm(斯かる寸法は、「マイクロニードル粒子の最大寸法」を意味する)を有していた。この実施例のマイクロニードル粒子は相対的に以下のように呼ばれる。
【0097】
【0098】
アロエベラゲル中のマイクロニードル粒子を豚の耳の皮膚に約10秒適用することにより、該耳の皮膚のサンプルを当該実施例のマイクロニードルで前処理した。当該耳の皮膚はその後ゲンチアナバイオレットで染色したが、貫通部位の分析は、少なくともこの実施例においては、マイクロニードル粒子のサイズ低下が通過部位の数の低下を招来することを示していた。
【0099】
図13A、
図13B、及び
図13Cは、マイクロニードル粒子を耳の皮膚に適用する持続時間、マイクロニードル粒子の濃度、及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図13A)、マイクロニードル粒子のサイズ及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図13B)、及び粒子の厚さ及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図13C)を変化させることにより、ゲンチアナバイオレット染色部位がどのような影響を受けるかを示している。
図14A、
図14B、及び
図14Cは、マイクロニードル粒子を耳の皮膚に適用する持続時間、マイクロニードル粒子の濃度、及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図14A)、マイクロニードル粒子のサイズ及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図14B)、及び粒子の厚さ及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図14C)を変化させることにより、実施例2の手順に従って測定された皮膚の電気抵抗がどのような影響を受けるかを示している。
図15A、
図15B、及び
図15Cは、マイクロニードル粒子を耳の皮膚に適用する持続時間、マイクロニードル粒子の濃度、及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図15A)、マイクロニードル粒子のサイズ及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図15B)、及び粒子の厚さ及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図15C)を変化させることにより、皮膚に適用された24時間後のスルホローダミンBの累積浸透量(nmol/cm2)がどのような影響を受けるかを示している。
図16A、
図16B、及び
図16Cは、マイクロニードル粒子を耳の皮膚に適用する持続時間、マイクロニードル粒子の濃度、及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図16A)、マイクロニードル粒子のサイズ及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図16B)、及び粒子の厚さ及びマイクロニードル粒子1個当たりのマイクロニードル数(
図16C)を変化させることにより、スルホローダミンBの経皮フラックスJ
X(nmol/cm
2/hr)がどのような影響を受けるかを示している。
【0100】
皮膚サンプルの累積浸透量に及ぼす粒子サイズ、幾何学的形状、及び濃度の影響を決定する試験も行った。2-1000、4-1000、及び6-1000マイクロニードル粒子のサンプルは、各々、耳の皮膚のサンプルに10秒間及び2分間擦り込むことにより適用したが、その場合、マイクロニードル粒子は、各持続時間につき1cm2当たり100、500、及び1000粒子の濃度で試験した。当該試験は、4-1000及び6-1000で処理した皮膚サンプルよりも2-1000で処理したサンプルの方が、適用時間により影響を受けることを示していた。特に、2-1000で2分間処理した皮膚サンプルの48時間後における累積浸透量(nmol/cm2)は、2-1000で10秒間処理した皮膚サンプルの48時間後における累積浸透量よりも有意に高かった。対照的に、4-1000及び6-1000で処理した皮膚サンプルの48時間後における累積浸透量については、適用時間の影響は相対的に少なかった。4-1000及び6-1000で処理された皮膚サンプルに関しては、適用時間の増大よりも粒子濃度の増大の方が、皮膚サンプルの48時間後における累積浸透量を増大させた。
【0101】
(実施例6-インビボにおけるスルホローダミンBの送達)
アロエベラゲル、マイクロニードルパッチ、及び実施例1のマイクロニードル粒子を用いて、無毛ラットの皮膚のサンプルをインビボで前処理した。スルホローダミンB液は、アロエベラゲル又はマイクロニードルパッチで前処理した皮膚に3時間適用し、当該実施例のマイクロニードル粒子で前処理した皮膚に関しては3時間又は15分間適用した。無毛ラットの皮膚に送達されたスルホローダミンBの平均蛍光強度を測定し、
図17に示してある。
【0102】
(実施例7-マイクロニードル粒子の製造)
微細構造をアルミナグリーンテープにレーザーエッチングすることにより、4つの平面的マイクロニードルを有するセラミック製のマイクロニードル粒子を作製した。次に、マイクロニードル粒子の第一部分を用いて皮膚サンプルを処理し、マイクロニードル粒子の第二部分は約1,500℃で焼結した。
【0103】
焼結により、本実施例のマイクロニードル粒子は30%収縮した。本実施例の焼結したマイクロニードル粒子は、本実施例の焼結前のマイクロニードル粒子よりも僅かに鋭利な末端及び先端を有していた。
【0104】
(実施例8-マイクロニードル粒子の製造)
本実施例において、4つの平面的マイクロニードルを有するマイクロニードル粒子をポリ乳酸(PLA)から作製した。PLA微粒子を作製し、可視化のために該微粒子内にナイルレッド色素をカプセル化した。従って、ナイルレッド色素のカプセル化は任意である。次に、PLA微粒子をマイクロニードル粒子形状の空洞を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)鋳型に入れた。PLA微粒子をPDMS鋳型内で溶融した。PLAマイクロニードル粒子を冷却し、固化し、鋳型から取り出した。
前記マイクロニードル粒子は、前記コア構造から延びる、3つのマイクロニードル、4つのマイクロニードル、5つのマイクロニードル、6つのマイクロニードル、7つのマイクロニードル、8つのマイクロニードル、9つのマイクロニードル、又は10個のマイクロニードルを有する、
請求項1に記載のマイクロニードル粒子。
生体組織を少なくとも1回貫通した時点で、前記1つ以上のマイクロニードルのうちの少なくとも1つは、機械的に又は化学的に又は機械的及び化学的に作用しなくなるように構成されており、それにより、前記1つ以上のマイクロニードルのうちの少なくとも1つが生体組織を再貫通することが防止される、
請求項1又は2に記載のマイクロニードル粒子。