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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175785
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】炎症性状態の処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20231205BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231205BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20231205BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231205BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P29/00 ZNA
A61P43/00 121
A61P37/08
A61P17/00
A61P11/00
A61P17/06
A61P25/04
A61P25/00
A61P17/04
A61P9/14
A61P11/02
A61P1/04
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P43/00 105
A61P11/06
A61K31/573
A61K31/137
A61K31/522
A61K31/436
A61K31/352
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 U
C07K16/24
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148026
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2022132878の分割
【原出願日】2017-11-30
(31)【優先権主張番号】62/428,634
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/473,738
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/567,318
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー・エム・オレンゴ
(72)【発明者】
【氏名】ジーン・アリン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ディー・ヤンコーポラス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】炎症性状態を処置するための方法を提供する。
【解決手段】炎症性疾患、またはIL-33およびIL-4のレベルの上昇に関連するもしくはそれらに一部起因する状態、特に炎症性肺疾患を処置するための方法を提供する。本発明の方法は、上記処置を必要とする対象に1つ以上の治療有効用量のIL-33アンタゴニストを単独で、または1つ以上の治療有効用量のIL-4Rアンタゴニストと組み合わせて投与することを含む。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、増強されたIL-33媒介シグナル伝達およびIL-4媒介シグナル伝達によって一部媒介される任意の炎症性疾患または状態を処置するためのアンタゴニストの使用を含む。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性疾患もしくは障害または前記炎症性疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のインターロイキン-33(IL-33)アンタゴニストの1回以上の用量を治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストの1回以上の用量と組み合わせて投与することを含み、前記組み合わせの前記投与が、前記IL-33アンタゴニスト単独または前記IL-4Rアンタゴニスト単独の投与で観察される治療有効性と比較して治療有効性の増強をもたらす、方法。
【請求項2】
前記炎症性疾患もしくは障害が緩和され、または重症度、持続期間、もしくは発生頻度が軽減され、あるいは前記炎症性疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状が緩和され、または重症度、持続期間、もしくは発生頻度が軽減される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症性疾患または障害が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息およびCOPDオーバーラップ症候群(ACOS)、アトピー性皮膚炎、アレルギー反応、慢性気管支炎、気腫、鼻ポリープを伴うまたは伴わない慢性鼻副鼻腔炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性肺炎、多発性硬化症、関節炎(変形性関節症、リウマチ性関節炎、および乾癬性関節炎)、アレルギー性鼻炎、線維症、好酸球性食道炎、血管炎、蕁麻疹、チャーグ・ストラウス症候群、炎症性疼痛、および乾癬からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記慢性閉塞性肺疾患が、喘息、ウイルス性疾患、細菌感染、アレルゲンへの曝露、化学物質もしくは化学煙霧への曝露、または環境刺激物もしくは大気汚染への曝露のうちの1つ以上によって増悪する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記喘息が、ウイルス性疾患、細菌感染、アレルゲンへの曝露、化学物質もしくは化学煙霧への曝露、または環境刺激物もしくは大気汚染への曝露のうちの1つ以上によって増悪する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記喘息が、好酸球性喘息、非好酸球性喘息、ステロイド抵抗性喘息、またはステロイド感受性喘息である、請求項3または5に記載の方法。
【請求項7】
前記慢性閉塞性肺疾患が、タバコの煙に起因し、またはタバコの煙により一部増悪する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項8】
前記炎症性疾患もしくは障害または前記炎症性疾患もしくは障害の少なくとも1つの症状を緩和するのに有用な有効量の1つ以上の追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の追加の治療剤が、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、エピネフリン、鬱血除去薬、胸腺間質性リンパ球性新生因子(TSLP)アンタゴニスト、IL-1アンタゴニスト、IL-8アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、異なるIL-4アンタゴニスト、IL-4/IL-13デュアルアンタゴニスト、IL-33/IL-13デュアルアンタゴニスト、IL-5アンタゴニスト、IL-6アンタゴニスト、IL-12/23アンタゴニスト、IL-22アンタゴニスト、IL-25アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、IL-31アンタゴニスト、TNF阻害剤、IgE阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、経口PDE4阻害剤、メチルキサンチン、ネドクロミルナトリウム、クロモリンナトリウム、長時間
作用型ベータ2アゴニスト(LABA)、長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)、吸入コルチコステロイド(ICS)、および別のIL-33アンタゴニストからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
別のIL-33アンタゴニストが、IL-33に対する異なる抗体、異なるIL-33受容体ベースのトラップ、ST2抗体、可溶性ST2受容体、ST2以外のIL-33受容体に対するアンタゴニスト、IL-1RAcPアンタゴニスト、およびIL-33/ST2複合体と相互作用する抗体からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
線維性疾患もしくは障害または前記線維性疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のインターロイキン-33(IL-33)アンタゴニストの1回以上の用量を治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストの1回以上の用量と組み合わせて投与することを含み、前記組み合わせの前記投与が、前記IL-33アンタゴニスト単独または前記IL-4Rアンタゴニスト単独の投与で観察される治療有効性と比較して治療有効性の増強をもたらす、方法。
【請求項12】
前記線維性疾患もしくは障害が緩和され、または重症度、持続期間、もしくは発生頻度が軽減され、あるいは前記線維性疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状が緩和され、または重症度、持続期間、もしくは発生頻度が軽減される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記線維性疾患または障害が肺線維性疾患または障害である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記肺線維性疾患または障害が、特発性肺線維症、急性肺損傷または急性呼吸窮迫に関連する線維症、珪肺症、放射線誘導性線維症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、アスベスト誘導性肺線維症、および閉塞性細気管支炎症候群からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アレルギー反応の予防またはその重症度の軽減を必要とする対象においてそれを予防または軽減するための方法であって、治療有効量のIL-33アンタゴニストの1回以上の用量を治療有効量のIL-4Rアンタゴニストの1回以上の用量と組み合わせて投与することを含み、前記組み合わせの前記投与が、前記IL-33アンタゴニスト単独または前記IL-4Rアンタゴニスト単独の投与で観察される治療有効性と比較して、アレルギー反応を予防またはその重症度を軽減するための治療有効性の増強をもたらす、方法。
【請求項16】
前記治療有効性の増強が、以下のパラメータのうちの任意の1つ以上によって測定される、請求項1、11、または15のいずれか一項に記載の方法:
a)組織試料中の好酸球、活性化B細胞、活性化CD8T細胞、またはCD4/CD8T細胞比のうちの1つ以上の頻度の減少、
b)組織試料中のインターロイキン-1ベータ(IL-1β)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-13(IL-13)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、または腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)レベルのうちの1つ以上の低下、あるいは
c)組織試料中のIl4、ll5、Il6、Il9、Il13、Il1rl1、Il13ra2、tnf、Tgfb1、Ccl2、Ccl11、Ccl24、Col15a1、および/またはCol24a1のうちの1つ以上の遺伝子発現レベルの低下。
【請求項17】
前記治療有効性の増強が、以下のパラメータのうちの任意の1つ以上によってさらに測
定される、請求項16に記載の方法:
d)血清IgEレベルの低下、
e)肺における杯細胞化生の減少、
f)肺硬化の改善、または
g)肺における上皮下線維症の減少。
【請求項18】
前記組織試料が肺、肝臓、腎臓、心臓、または全血から得られる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記IL-4Rアンタゴニストと組み合わせた前記IL-33アンタゴニストの投与が、前記疾患によりまたは前記疾患もしくはアレルギーの原因物質により誘発される1型免疫応答の増加および/または2型免疫応答の低下をもたらす、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記IL-4Rアンタゴニストが、IL-4Rαに結合し、IL-4および/またはIL-13と1型または2型IL-4α受容体との相互作用を妨げる抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
IL-4Rαに結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、IL-4および/またはIL-13と1型および2型IL-4α受容体の両方との相互作用を妨げる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号335または337のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)、および配列番号336または338のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントが、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)ならびに3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含み、前記HCDR1が配列番号339のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号340のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号341のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号342のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号343のアミノ酸配列を含み、前記LCDR3が配列番号344のアミノ酸配列を含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号335または配列番号337のアミノ酸配列を含むHCVR、および配列番号336または配列番号338のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号335/336または配列番号337/338のいずれかのHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記IL-4Rαアンタゴニストが、デュピルマブまたはその生物学的等価物である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記IL-33アンタゴニストが、IL-33に特異的に結合し、IL-33とST2との相互作用を阻止する抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
IL-33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、および308からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)アミノ酸配列内に含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、および316からなる群から選択される軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列内に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む、請求項1~19または27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
IL-33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、および308からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項1~19または27~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
IL-33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、および316からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1~19または27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
IL-33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(a)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、292、および310からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメインと、
(b)配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、および312からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメインと、
(c)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、および314からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメインと、
(d)配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、および318からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメインと、
(e)配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、および320からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメインと、
(f)配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、288、および322からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインと、を含む、請求項1~19または27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
IL-33に特異的に結合する前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、および308/316からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項1~19または27~31のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項33】
前記IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントが、水素/重水素交換によって決定されるように、配列番号349の約1位~約12位の範囲のアミノ酸配列、および/または配列番号349の約50位~約94位の範囲のアミノ酸配列と相互作用する、請求項1~19または27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントが、水素/重水素交換によって決定されるように、配列番号348の約112位~約123位の範囲のアミノ酸配列、および/または配列番号348の約161位~約205位の範囲のアミノ酸配列と相互作用する、請求項1~19または27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントが、水素/重水素交換によって決定されるように、配列番号350のアミノ酸配列、もしくは配列番号351アミノ酸配列のいずれか、または配列番号350および351の両方と相互作用する、請求項1~19または27~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記IL-33抗体または抗原結合フラグメントが、配列番号274/282の重鎖可変領域/軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対の重鎖相補性決定領域(HCDR)および軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、請求項1~19または27~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記IL-33抗体または抗原結合フラグメントが、それぞれ配列番号276-278-280-284-286-288のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む、請求項1~19または27~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ヒトインターロイキン-33(IL-33)に特異的に結合する前記抗体または抗原結合フラグメントが、(a)配列番号274のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)、および(b)配列番号282のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1~19または27~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号274/282のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体とIL-33への結合について競合する、請求項1~19または27~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号274/282のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じIL-33上のエピトープに結合する、請求項1~19または27~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記IL-33アンタゴニストが、多量体化ドメイン(M)に結合された第1のIL-33結合ドメイン(D1)を含むIL-33トラップであり、D1がST2タンパク質のIL-33結合部分を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記IL-33アンタゴニストが、D1および/またはMに結合された第2のIL-33結合ドメイン(D2)をさらに含むIL-33トラップであり、D2がIL-1RAcPタンパク質の細胞外部分を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
D1がMのN末端に結合されている、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
D1がMのC末端に結合されている、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
D2がMのN末端に結合されている、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
D2がMのC末端に結合されている、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
D1がD2のN末端に結合され、D2がMのN末端に結合されている、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
D1が、配列番号328もしくは329のアミノ酸配列、またはそれらと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
D2が、配列番号330もしくは331のアミノ酸配列、またはそれらと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
前記IL-33アンタゴニストが、第1の多量体化ドメイン(M1)に結合された第1のIL-33結合ドメイン(D1)および第2の多量体化ドメイン(M2)に結合された第2のIL-33結合ドメイン(D2)を含むIL-33トラップであり、前記D1および/またはD2ドメインが、ST2およびIL-1RAcPからなる群から選択される受容体のIL-33結合部分を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記IL-33アンタゴニストが、D1またはM1のいずれかに結合された第3のIL-33結合ドメイン(D3)を含み、D3が、ST2およびIL-1RAcPからなる群から選択される受容体のIL-33結合部分を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記IL-33アンタゴニストが、D2またはM2のいずれかに結合された第4のIL-33結合ドメイン(D4)を含み、D4が、ST2およびIL-1RAcPからなる群から選択される受容体のIL-33結合部分を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
D1がM1のN末端に結合され、D2がM2のN末端に結合されている、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
D3がD1のN末端に結合されている、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
D3がM1のC末端に結合されている、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
D4がD2のN末端に結合されている、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
D4がM2のC末端に結合されている、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
D3がD1のN末端に結合され、D1がM1のN末端に結合され、D4がD2のN末端に結合され、D2がM2のN末端に結合されている、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
D3がD4と同一または実質的に同一であり、D1がD2と同一または実質的に同一である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
D3およびD4がそれぞれ、ST2タンパク質のIL-33結合部分を含み、D1およびD2がそれぞれ、IL-1RAcPタンパク質の細胞外部分を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記IL-33アンタゴニストが、配列番号323、324、325、326、および327からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むIL-33トラップである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記IL-33アンタゴニストが、配列番号327のアミノ酸配列を含むIL-33トラップである、請求項1~19または61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記IL-33アンタゴニストおよび前記IL-4Rアンタゴニストが、それらを必要とする患者に別々の製剤で投与される、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記IL-33アンタゴニストおよび前記IL-4Rアンタゴニストが、それらを必要とする患者に投与する前に共製剤化される、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記IL-33アンタゴニストおよび前記IL-4Rアンタゴニストが、前記対象に皮下、静脈内、筋肉内、または鼻腔内投与される、請求項1~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記IL-33アンタゴニストが、配列番号274の重鎖可変領域配列内に含有される3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)、および配列番号282の軽鎖可変領域(LCVR)配列内に含有される3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含むモノクローナル抗体であり、前記IL-4Rアンタゴニストが、配列番号337の重鎖可変領域配列内に含有される3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)、および配列番号338の軽鎖可変領域(LCVR)配列内に含有される3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含むモノクローナル抗体である、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記IL-33アンタゴニストが、配列番号274/282のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含むモノクローナル抗体であり、前記IL-4Rアンタゴニストが、配列番号337/338のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含むモノクローナル抗体である、請求項1~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記IL-33アンタゴニストが、それぞれ配列番号276-278-280のアミノ酸配列を有する3つのHCDR(HCDR1-HCDR2-HCDR3)、およびそれぞれ配列番号284-286-288のアミノ酸配列を有する3つのLCDR(LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含むモノクローナル抗体であり、前記IL-4Rアンタゴニストが、それぞれ配列番号339-340-341のアミノ酸を有する3つのHCDR(HCDR1-HCDR2-HCDR3)、およびそれぞれ配列番号342-343-344のアミノ酸配列を有する3つのLCDR(LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含むモノクローナル抗体である、請求項1~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記IL-33アンタゴニストがREGN3500であり、前記IL-4Rアンタゴニストがデュピルマブである、請求項1~68のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性状態を処置するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のインターロイキン-33(IL-33)アンタゴニストを単独で、またはインターロイキン-4(IL-4)アンタゴニストと組み合わせて投与することを含む方法に関する。より具体的には、本発明は、治療有効量のインターロイキン-33(IL-33)抗体を単独で、またはインターロイキン-4R(IL-4R)抗体と組み合わせて投与することにより、炎症性もしくは閉塞性肺疾患または障害を処置することに関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、宿主による防御反応として開始されるが、しばしば全身性の病変をもたらし得る。先進国では、喘息、アレルギー、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの炎症性肺疾患が増加しており、医療費に大きな影響をもたらしている。いくつかの炎症細胞およびそれらのメディエーターは、これらの疾患の発症および進行に関与している。ある特定の場合において、これらの疾患は、好酸球、好塩基球、肥満細胞、CD4+Tヘルパー2(Th2)細胞、グループ2自然リンパ球(ILC2)、インターロイキン4(IL-4)および/またはIL-13誘導性マクロファージを伴った組織の浸潤、ならびに血清IgE中の上昇およびサイトカインIL-4、IL-5、IL-9、およびIL-13の増加を特徴とする、2型免疫の結果を反映する。
【0003】
炎症性肺疾患で役割を果たすと考えられる1つのサイトカインは、アレルゲン、ウイルス、または煙などの傷害に応答して損傷した上皮組織によって放出される炎症誘導性サイトカインであるインターロイキン-33(IL-33)である。IL-33は、Tヘルパー-2(Th2)関連サイトカイン(例えば、IL-4)の産生を強力に引き起こすインターロイキン-1(IL-1)ファミリーのメンバーである。IL-33は、線維芽細胞、肥満細胞、樹状細胞、マクロファージ、骨芽細胞、内皮細胞、および上皮細胞などの非常に様々な種類の細胞によって発現される。インターロイキン-33(IL-33)は、Toll様/インターロイキン-1受容体スーパーファミリーメンバーであるST2(「腫瘍形成抑制因子2(suppression of tumorigenicity2)」と称されることもある)のリガンドであり、該ST2は、アクセサリータンパク質IL-1RAcP(「インターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質」、総説については、例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3、特許文献1、特許文献2を参照のこと)と結合する。IL-33によってST2/IL-1RAcPが活性化されたとき、MyD88(骨髄分化因子88)およびTRAF6(TNF受容体関連因子6)などの下流の分子を介してシグナル伝達カスケードが引き起こされ、特に、NFκB(核因子-κB)の活性化をもたらす。IL-33シグナル伝達は、本明細書に開示されている炎症性肺疾患を含む様々な疾患および障害における要因として関与している。(非特許文献3)。IL-33シグナル伝達の阻害剤は、例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、および特許文献19に記載されている。
【0004】
インターロイキン-4(IL-4、B細胞刺激因子またはBSF-1としても知られる)はまた、アレルギー性およびTヘルパー細胞2型(Th2)極性化(polarized)炎症プロセスを駆動する重要なサイトカインとして関与している。IL-4は、T細胞、肥満細胞、顆粒球、巨核球、および赤血球の増殖刺激を含む広範囲の生物学的活性を有することが示されている。IL-4は、休止B細胞におけるクラスII主要組織適合遺伝子複合体分子の発現を誘導し、刺激されたB細胞によってIgEおよびIgG1アイソ
タイプの分泌を促進する。IL-4の生物学的活性は、IL-4に対する特異的細胞表面受容体によって媒介される。ヒトIL-4受容体アルファ(hIL-4R)(配列番号347)は、例えば、特許文献20、特許文献21、および特許文献22に記載されている。hIL-4Rに対する抗体は、特許文献23、特許文献24、および特許文献25に記載されている。hIL-4Rに対する抗体の使用方法は、特許文献26、特許文献27、特許文献28、および特許文献29に記載されている。
【0005】
肺の炎症性疾患を処置するための現在の療法は、例えば喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患っている患者における安全性および有効性の改善、特に増悪の軽減について大きな余地を残している。抗炎症薬および気管支拡張薬の多くの吸入用の組み合わせが利用可能であるにもかかわらず、多くの患者は増悪を経験し続けている。増悪は全身性コルチコステロイドの使用を必要とする場合があり、該コルチコステロイドはその免疫中和能力が広範であるゆえに有効であるが、骨量減少および感染症を含む望ましくない副作用を有する。いくつかの生物学的療法は、そのほとんどが単一の免疫メディエーターを標的としており、喘息およびCOPDについては開発の後期段階にある。しかしながら、炎症環境の複雑さゆえに、これらの薬剤はおそらくその使用が制限されるであろう。
【0006】
したがって、炎症性肺疾患、例えば本明細書に記載されているものを処置および/または予防するための療法の新規な組み合わせについてのまだ満たされていない必要性が当該技術分野には存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2010/0260770
【特許文献2】US2009/0041718
【特許文献3】US9,453,072
【特許文献4】US8187596
【特許文献5】US2013/17373761
【特許文献6】US2014/0212412
【特許文献7】US2014/0271658
【特許文献8】US2014/0271642
【特許文献9】US2014/0004107
【特許文献10】WO2015/099175
【特許文献11】WO2015/106080
【特許文献12】WO2011/031600
【特許文献13】WO2014/164959
【特許文献14】WO2014/152195
【特許文献15】WO2013/165894
【特許文献16】WO2013/173761
【特許文献17】EP1725261
【特許文献18】EP10815921A1
【特許文献19】EP2850103A2
【特許文献20】米国特許第5,599,905号
【特許文献21】米国特許第5,767,065号
【特許文献22】米国特許第5,840,869号
【特許文献23】米国特許第5,717,072号
【特許文献24】米国特許第7,186,809号
【特許文献25】米国特許第7,605,237号
【特許文献26】米国特許第5,714,146号
【特許文献27】米国特許第5,985,280号
【特許文献28】米国特許第6,716,587号
【特許文献29】米国特許第9,290,574号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kakkar and Lee,Nature Reviews-Drug Discovery7(10):827-840(2008)
【非特許文献2】Schmitz et al.,Immunity23:479-490(2005)
【非特許文献3】Liew et al.,Nature Reviews-Immunology10:103-110(2010)
【発明の概要】
【0009】
本発明のある特定の態様によれば、炎症性疾患もしくは障害または炎症性疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状を処置するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のインターロイキン-33(IL-33)アンタゴニストの1回以上の用量を単独で、もしくは治療有効量のインターロイキン-4(IL-4)アンタゴニストの1回以上の用量と組み合わせて投与すること、またはそれを必要とする患者にIL-33アンタゴニストおよびIL-4αアンタゴニストを含む医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。一実施形態において、IL-4アンタゴニストと組み合わせたIL-33アンタゴニストの投与は、IL-33アンタゴニスト単独またはIL-4アンタゴニスト単独の投与で観察される治療有効性と比較して治療有効性の増強をもたらす。
【0010】
ある特定の実施形態において、IL-33アンタゴニストは、IL-33シグナル伝達および/またはIL-33と細胞受容体(例えばST2)もしくは共受容体(co-receptor)(例えば、IL-1RAcP)もしくはそれらの複合体との間の相互作用を阻止、減弱、または妨害することができる任意の薬剤である。上記のいずれも、IL-33の少なくとも1つの生物学的活性を阻止または阻害し得る。
【0011】
ある特定の実施形態において、IL-33アンタゴニストは、IL-33に結合しもしくはそれと相互作用し、IL-33とその受容体ST2との相互作用を阻止し、ST2と共受容体IL1-RAcPとの相互作用を妨げもしくは阻害し、またはシグナル伝達複合体の形成を妨げる抗体である。一実施形態において、IL-33アンタゴニストは、ヒトIL-33に結合するまたはそれと特異的に相互作用するモノクローナル抗体である。一実施形態において、IL-33アンタゴニストは、ヒトIL-33に結合するまたはそれと特異的に相互作用する受容体ベースのトラップ(receptor-based trap)である。
【0012】
一実施形態において、IL-4アンタゴニストは、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストである。
【0013】
一実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4RαまたはIL-4Rリガンドに結合しまたはそれらと相互作用し、1型および/または2型IL-4受容体の正常な生物学的シグナル伝達機能を阻害または減弱する任意の薬剤である。一実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、ヒトIL-4Rαに特異的に結合するモノクローナル抗体である。一実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rαに結合し、I型またはII型受容体のいずれかを介したIL-4およびIL-13媒介シグナル伝達の両方を阻止するモノクローナル抗体である。一実施形態において、ヒトIL-4Rαに特異的に結合し、IL-4およびIL-13媒介シグナル伝達の両方を阻止するモノクローナル抗体は、デュピルマブ(dupilumab)またはその生物学的等価物である。一実施形態において、炎症性障害または状態を処置する方法は、配列番号274/2
82の重鎖可変領域/軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対を有するREGN3500、および配列番号337/338のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を有するデュピルマブの組み合わせを使用することによって達成される。
【0014】
一実施形態において、本発明の方法によって処置可能な炎症性疾患または障害は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息およびCOPDオーバーラップ症候群(ACOS)、アトピー性皮膚炎、鼻ポリープ、アレルギー反応、慢性気管支炎、気腫、鼻ポリープを伴うまたは伴わない慢性鼻副鼻腔炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性肺炎、多発性硬化症、関節炎(変形性関節症、リウマチ性関節炎、および乾癬性関節炎)、アレルギー性鼻炎、線維症、好酸球性食道炎、血管炎、蕁麻疹、チャーグ・ストラウス症候群、炎症性疼痛、および乾癬からなる群から選択される。
【0015】
一実施形態において、喘息は好酸球性喘息である。
【0016】
一実施形態において、喘息は非好酸球性喘息である。
【0017】
一実施形態において、喘息はアレルギー性喘息である。
【0018】
一実施形態において、喘息は非アレルギー性喘息である。
【0019】
一実施形態において、喘息は重症難治性喘息である。
【0020】
一実施形態において、喘息はステロイド抵抗性喘息である。
【0021】
一実施形態において、喘息はステロイド感受性喘息である。
【0022】
一実施形態において、喘息はステロイド難治性喘息である。
【0023】
一実施形態において、喘息は喘息増悪である。
【0024】
一実施形態において、炎症性疾患または障害が緩和され、またはその重症度、持続期間、もしくは発生頻度について軽減され、あるいは炎症性疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状が緩和され、またはその重症度、持続期間、もしくは発生頻度について軽減される。
【0025】
一実施形態において、以下のパラメータのうちの任意の1つ以上によって測定した場合に、治療有効量のIL-33アンタゴニストの1回以上の用量を単独で、または治療有効量のIL-4Rアンタゴニストの1回以上の用量と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することにより、治療有効性の増強がもたらされる:
a)組織試料中の好酸球、活性化B細胞、活性化CD8T細胞、もしくはCD4/CD8T細胞比のうちの1つ以上の頻度の減少、
b)組織試料中のインターロイキン-1ベータ(IL-1β)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-13(IL-13)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、もしくは腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)レベルのうちの1つ以上の低下、または
c)組織試料中のIl4、ll5、Il6、Il9、Il13、Il1rl1、Il13ra2、tnf、Tgfb1、Ccl2、Ccl11、Ccl24、Col15a1、もしくはCol24a1のうちの1つ以上の遺伝子発現レベルの低下。
【0026】
一実施形態において、さらに以下のうちの1つ以上によって測定した場合に、治療有効
量のIL-33アンタゴニストの1回以上の用量を単独で、または治療有効量のIL-4Rアンタゴニストの1回以上の用量と組み合わせて、それ必要とする対象に投与することにより、治療有効性の増強がもたらされる:
d)血清IgEレベルの低下、
e)肺における杯細胞化生の減少、
f)肺硬化の改善、または
g)肺における上皮下繊維化の減少。
【0027】
一実施形態において、組織試料は肺から得られる。
【0028】
一実施形態において、組織試料は、肝臓、腎臓、心臓、または全血からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、血球、血清、または血漿は、上記のパラメータのうちの1つ以上の測定に使用され得る。
【0029】
一実施形態において、本発明の方法によって処置可能な慢性閉塞性肺疾患は、以下のうちの1つ以上:喘息、ウイルス性疾患、細菌感染、アレルゲンへの曝露、化学物質もしくは化学煙霧への曝露、または環境刺激物もしくは大気汚染への曝露によって増悪する。
【0030】
関連する実施形態において、本発明の方法によって処置可能な喘息は、以下のうちの1つ以上:ウイルス性疾患、細菌感染、アレルゲンへの曝露、化学物質もしくは化学煙霧への曝露、または環境刺激物もしくは大気汚染への曝露によって増悪する。
【0031】
ある特定の実施形態において、本発明の方法によって処置可能な喘息は、好酸球性喘息、非好酸球性喘息、ステロイド抵抗性喘息、およびステロイド感受性喘息からなる群から選択される。
【0032】
一実施形態において、本発明の方法によって処置可能な慢性閉塞性肺疾患は、タバコの煙に起因し、またはタバコの煙によって一部増悪する。
【0033】
一実施形態において、本発明の方法によって処置可能な慢性閉塞性肺疾患を患っている患者は、好酸球数の増加を示してもよいし、または示さなくてもよい。
【0034】
一実施形態において、本発明の方法によって処置可能な喘息およびCOPDオーバーラップ症候群(ACOS)を患っている患者は、好酸球数の増加を示してもよいし、または示さなくてもよい。
【0035】
本発明の第2の態様は、炎症性疾患もしくは障害または炎症性疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状を緩和するのに有用な有効量の1つ以上の追加の治療剤を、治療有効量のインターロイキン-33(IL-33)アンタゴニスト、例えばIL-33抗体またはIL-33トラップ、および治療有効量のインターロイキン-4(IL-4)アンタゴニスト、例えばデュピルマブなどのIL-4R抗体、またはそれらの治療等価物と組み合わせて投与することによって、炎症性疾患もしくは障害または炎症性疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状を処置することを提供する。
【0036】
一実施形態において、1つ以上の追加の治療剤は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、コルチコステロイド(例えば吸入コルチコステロイドまたはICS)、長時間作用型β2アドレナリンアゴニスト(LABA)、長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、エピネフリン、鬱血除去薬、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)アンタゴニスト、IL-1アンタゴニスト、IL-8アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、IL-4/IL-13デ
ュアル(dual)アンタゴニスト、IL-33/IL-13デュアルアンタゴニスト、IL-5アンタゴニスト、IL-6アンタゴニスト、IL-12/23アンタゴニスト、IL-22アンタゴニスト、IL-25アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、IL-31アンタゴニスト、TNF阻害剤、IgE阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、経口PDE4阻害薬、メチルキサンチン、ネドクロミルナトリウム、クロモリンナトリウム、長時間作用型ベータ2アゴニスト、および別のIL-33アンタゴニスト(例えば、IL-33に対する異なる抗体、異なるIL-33受容体ベースのトラップ、ST2アンタゴニスト(ST2に対する抗体を含む)、可溶性ST2受容体、もしくはST2以外の別のIL-33受容体に対するアンタゴニスト、もしくはIL-1RAcPアンタゴニスト(IL-1RAcPに対する抗体を含む)、またはIL-33/ST2複合体と相互作用する抗体)からなる群から選択される。
【0037】
いくつかの実施形態において、本発明は、中等度から重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置するための方法であって、例えば、吸入コルチコステロイド(ICS)および/もしくは長時間作用型β2アドレナリンアゴニスト(LABA)ならびに/または長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)を含むバックグラウンド療法(background therapy)に加えて、IL-4Rアンタゴニスト(例えばデュピルマブ)およびIL-33アンタゴニスト(例えばREGN3500)を共投与すること含む方法を提供する。
【0038】
ある特定の実施形態において、本発明は、「喘息コントロールの喪失(loss of
asthma control)」(LOAC)事象の発生を低下する方法であって、喘息を患っている患者をIL-33アンタゴニスト(例えばREGN3500)と組み合わせたIL-4Rアンタゴニスト(例えばデュピルマブ)で処置することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態において、IL-33アンタゴニストと組み合わせたIL-4Rアンタゴニストの使用は、IL-4Rアンタゴニスト単独またはIL-33アンタゴニスト単独のいずれかで投与するより有効な結果をもたらす。
【0039】
関連する実施形態において、IL-4Rアンタゴニストと組み合わせたIL-33アンタゴニストの投与は、疾患によりまたは疾患もしくはアレルギーの原因物質により誘発される1型免疫応答の増加および/または2型免疫応答の低下をもたらす。
【0040】
本発明の第3の態様は、線維性疾患もしくは障害または線維性疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状を処置するための方法であって、IL-33に特異的に結合するIL-33アンタゴニスト(IL-33抗体またはIL-33トラップ)およびIL-4Rαまたはその抗原結合フラグメントに特異的に結合する抗体の組み合わせ、またはIL-33アンタゴニストおよびIL-4αアンタゴニストを含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、線維性疾患または障害が緩和され、またはその重症度もしくは持続期間について軽減され、あるいは線維性疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状が緩和され、またはその重症度、持続期間、もしくは発生頻度について軽減される、方法を提供する。一実施形態において、IL-4Rアンタゴニストと組み合わせたIL-33アンタゴニストでの線維性疾患の処置は、線維性組織をその正常な状態に回復させることをもたらし得る。
【0041】
一実施形態において、本明細書に記載されるIL-4Rα抗体と組み合わせたIL-33抗体またはIL-33トラップなどの本発明の抗IL-33およびIL-4Rアンタゴニストを投与することによって処置可能な線維性疾患または障害としては、肺線維症(例えば、特発性肺線維症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、アスベスト誘導性肺線維症、および細気管支炎性閉塞症)、慢性喘息、急性肺損傷および急性呼吸窮迫に関連する線維症(例えば、細菌性肺炎誘導性線維症、外傷誘導性線維症、ウイルス性肺炎誘導性線維症、
人工呼吸器誘導性線維症、非肺性敗血症誘導性線維症(non-pulmonary sepsis induced fibrosis)、および誤嚥誘導性線維症(aspiration induced fibrosis)、珪肺症、放射線誘導性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD、これは一次喫煙または二次喫煙への曝露に関連し、該曝露によって一部引き起こされ、もしくは該曝露に起因し得る、またはそうではないこともあり得る)、強皮症、眼線維症、皮膚線維症(例えば、強皮症)、肝線維症(例えば、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変、感染症またはウイルス誘導性肝線維症、自己免疫性肝炎、腎臓(腎)線維症、心臓線維症、アテローム性動脈硬化症、ステント再狭窄、および骨髄線維症が挙げられる。
【0042】
本発明の第4の態様は、アレルギー反応を予防またはその重症度を軽減するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のIL-33アンタゴニストの1回以上の用量を治療有効量のIL-4Rアンタゴニストの1回以上の用量と組み合わせて投与することを含み、この組み合わせの投与は、IL-33アンタゴニスト単独またはIL-4Rアンタゴニスト単独の投与で観察される治療有効性と比較して、アレルギー反応を予防またはその重症度を軽減するための治療有効性の増強をもたらす、方法を提供する。IL-4Rアンタゴニストと組み合わせてIL-33アンタゴニストで処置された対象は、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの組み合わせまたはこれらのアンタゴニストを含む組成物の投与後に、アレルゲンに対する感受性の低下もしくはアレルギー反応の軽減を示し得、またはアレルゲンに対する感受性もしくはアレルギー反応もしくはアナフィラキシー応答を経験し得ない。
【0043】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33アンタゴニストは、ヒトIL-33に結合するまたはそれと特異的に相互作用する、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、IL-33とST2との相互作用を阻止し得、またはIL-33のST2受容体への低親和性結合を可能にし得る。そうした際には、ST2はIL-1RAcPと相互作用することを妨げられ得る。したがって、本発明のIL-33抗体は、特に、IL-33媒介シグナル伝達を阻害すること、ならびにIL-33活性および/もしくはIL-33シグナル伝達によって引き起こされるまたはこれらに関連する疾患および障害を処置することに有用である。
【0044】
一実施形態において、IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、アレルゲン誘導性肺炎症を有する哺乳動物に投与されたときに、好酸球、CD4+T細胞、B細胞、T細胞集団中のST2+/CD4+細胞のうちの1つ以上の頻度を低減するか、または肺におけるCD4/CD8T細胞比を低減する。
【0045】
一実施形態において、IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、アレルゲン誘導性肺炎症を有する哺乳動物に投与されたとき、肺のIL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-13、Ccl2、Ccl11、Ccl24、またはMCP-1のうちの1つ以上の発現レベルを低下させる。
【0046】
一実施形態において、IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、アレルゲン誘導性肺炎症を有する哺乳動物に投与されたとき、肺の血清IgEレベル、杯細胞化生、または上皮コラーゲンの厚さを減少させる。
【0047】
ある特定の実施形態において、本発明の方法で使用され得るヒトIL-33に特異的に結合するIL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、
226、242、258、274、290、および308からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)アミノ酸配列内に含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、および316からなる群から選択される軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列内に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む。
【0048】
ある特定の実施形態において、本発明の方法で使用され得るヒトIL-33に特異的に結合するIL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、および308からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)、またはそれらと実質的に類似する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0049】
ある特定の実施形態によれば、本発明の方法で使用するための抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、および316からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)、またはそれらと実質的に類似する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0050】
ある特定の実施形態によれば、本発明の方法で使用するための抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、および308/316からなる群から選択されるHCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)配列対を含む。
【0051】
ある特定の実施形態によれば、本発明の方法で使用するための抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、および314からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、またはそれらと実質的に類似する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列と、配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、288、304、および322からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメイン、またはそれらと実質的に類似する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列と、を含む。
【0052】
ある特定の実施形態によれば、本発明の方法で使用するための抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号8/16、24/32、40/48、56/64、72/80、88/96、104/112、120/128、136/144、152/160、168/176、184/192、200/208、216/224、232/240、248/256、264/272、280/288、296/304、および314/322からなる群から選択されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。
【0053】
ある特定の実施形態によれば、本発明の方法で使用するための抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、292、および310からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン、またはそれらと実質的に類似する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列と、配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、および312からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン、またはそれらと実質的に類似する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列と、配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、300、および318からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン、またはそれらと実質的に類似する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列と、配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、および320からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン、またはそれらと実質的に類似する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列と、を含む。
【0054】
本発明の方法で使用され得るある特定の非限定的で例示的な抗IL-33抗体および抗原結合フラグメントは、配列番号4-6-8-12-14-16(例えば、H1M9559N)、20-22-24-28-30-32(例えば、H1M9566N)、36-38-40-44-46-48(例えば、H1M9568N)、52-54-56-60-62-64(例えば、H4H9629P)、68-70-72-76-78-80(例えば、H4H9633P)、84-86-88-92-94-96(例えば、H4H9640P)、100-102-104-108-110-112(例えば、H4H9659P)、116-118-120-124-126-128(例えば、H4H9660P)、132-134-136-140-142-144(例えば、H4H9662P)、148-150-152-156-158-160(例えば、H4H9663P)、164-166-168-172-174-176(例えば、H4H9664P)、180-182-184-188-190-192(例えば、H4H9665P)、196-198-200-204-206-208(例えば、H4H9666P)、212-214-216-220-222-224(例えば、H4H9667P)、228-230-232-236-238-240(例えば、H4H9670P)、244-246-248-252-254-256(例えば、H4H9671P)、260-262-264-268-270-272(例えば、H4H9672P)、276-278-280-284-286-288(例えば、H4H9675P)、292-294-296-300-302-304(例えば、H4H9676P)、および310-312-314-318-320-322(H1M9565N)からなる群から選択されるアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。
【0055】
ある特定の実施形態によれば、例えば炎症状態を処置するための本発明の方法で使用するための抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/2
02、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、および308/316からなる群から選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)配列内に含有される重鎖および軽鎖CDRドメインを含む。HCVRアミノ酸配列およびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技術は、当該技術分野において周知であり、それらを使用して、本明細書に開示される特定のHCVRアミノ酸配列および/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定することができる。CDRの境界を同定するために使用可能な例示的な規則には、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が含まれる。一般的には、Kabat定義は配列の可変性に基づいており、Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づいており、AbM定義はKabatのアプローチとChothiaのアプローチの間の折衷案である。例えば、Kabat,「Sequences of Proteins of Immunological Interest,」National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997)、およびMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:9268-9272(1989)を参照のこと。抗体内のCDR配列を同定するために、公開データベースも利用可能である。
【0056】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号274/282のHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖および軽鎖CDRを含む。
【0057】
関連する実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33抗体または抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号276-278-280-284-286-288のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。
【0058】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのヒトインターロイキン-33(IL-33)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、(a)配列番号274のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)、および(b)配列番号282のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0059】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号274/282のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0060】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、水素/重水素交換により決定されるように、配列番号349の約1位~約12位の範囲のアミノ酸配列、および/または配列番号349の約50位~約94位の範囲のアミノ酸配列と相互作用する。
【0061】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、水素/重水素交換により決定されるように、配列番号348の約112位~約123位の範囲のアミノ酸配列、および/または配列番号348の約161位~約205位の範囲のアミノ酸配列と相互作用する。
【0062】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、水素/重水素交換によって決定されるように、配列番号350のアミノ酸配列もしくは配列番号351のアミノ酸配列のいずれか、または配列番号350および351の両方と相互作用する。
【0063】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、IL-33への結合について、配列番号274/282のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と競合する。
【0064】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号274/282のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じIL-33上のエピトープに結合する。
【0065】
第5の態様において、本発明は、本発明の方法で使用される抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子を提供する。本発明の核酸を保有する組換え発現ベクター、およびそのようなベクターが導入された宿主細胞もまた、抗体の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することによって、および産生された抗体を回収することによって、抗体を産生する方法と同様に本発明に包含される。
【0066】
一実施形態において、本発明は、配列番号1、17、33、49、65、81、97、113、129、145、161、177、193、209、225、241、257、273、289、および307からなる群から選択される核酸配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列によってコードされるHCVRを含む、ヒトIL-33に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントを使用する方法を提供する。
【0067】
本発明はまた、配列番号9、25、41、57、73、89、105、121、137、153、169、185、201、217、233、249、265、281、297、および315からなる群から選択される核酸配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列によってコードされるLCVRを含む、ヒトIL-33に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントを使用する方法を提供する。
【0068】
本発明はまた、配列番号7、23、39、55、71、87、103、119、135、151、167、183、199、215、231、247、263、279、295、および313からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列によってコードされるHCDR3ドメインと、配列番号15、31、47、63、79、95、111、127、143、159、175、191、207、223、239、255、271、287、303、および321からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列によりコードされるLCDR3ドメインと、を含む、ヒトIL-33に特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合フラグメントを使用する方法を提供する。
【0069】
本発明はまた、配列番号3、19、35、51、67、83、99、115、131、147、163、179、195、211、227、243、259、275、291、および309からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列によってコードされるHCDR1ドメインと、配列番号5、21、37、53、69、85、101、117、133、149、165、181、197、213、229、245、261、277、293、および311からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列によりコードされるHCDR2ドメインと、配列番号11、27、43、59、75、91、107、
123、139、155、171、187、203、219、235、251、267、283、299、および317からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列によりコードされるLCDR1ドメインと、配列番号13、29、45、61、77、93、109、125、141、157、173、189、205、221、237、253、269、285、301、および319からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一の配列によりコードされるLCDR2ドメインと、をさらに含む、ヒトIL-33に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントを使用する方法を提供する。
【0070】
ある特定の実施形態によれば、本発明の方法は、配列番号1および9(例えば、H1M9559N)、配列番号17および25(例えば、H1M9566N)、配列番号33および41(例えば、H1M9568N)、配列番号49および57(例えば、H4H9629P)、配列番号65および73(例えば、H4H9633P)、配列番号81および89(例えば、H4H9640P)、配列番号97および105(例えば、H4H9659P)、配列番号113および121(例えば、H4H9660P)、配列番号129および137(例えば、H4H9662P)、配列番号145および153(例えば、H4H9663P)、配列番号161および169(例えば、H4H9664P)、配列番号177および185(例えば、H4H9665P)、配列番号193および201(例えば、H4H9666P)、配列番号209および217(例えば、H4H9667P)、配列番号225および233(例えば、H4H9670P)、配列番号241および249(例えば、H4H9671P)、配列番号257および265(例えば、H4H9672P)、配列番号273および281(例えば、H4H9675P)、配列番号289および297(例えば、H4H9676P)、または配列番号307および315(H1M9565N)の核酸配列によってコードされる重鎖および軽鎖のCDR配列を含む、ヒトIL-33に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントの使用を提供する。
【0071】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33アンタゴニストは、IL-33受容体ベースのトラップ、例えば本明細書に記載されるものである(図1を参照のこと)。
【0072】
一実施形態において、IL-33受容体ベースのトラップは、多量体化ドメイン(M)に結合された第1のIL-33結合ドメイン(D1)を含み、D1はST2タンパク質のIL-33結合部分を含む。
【0073】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33トラップは、D1および/またはMに結合された第2のIL-33結合ドメイン(D2)をさらに含み、D2はIL-1RAcPタンパク質の細胞外部分を含む。一実施形態において、D1はMのN末端に結合されている。一実施形態において、D1はMのC末端に結合されている。一実施形態において、D2はMのN末端に結合されている。一実施形態において、D2はMのC末端に結合されている。一実施形態において、D1はD2のN末端に結合され、D2はMのN末端に結合されている。
【0074】
一実施形態において、D1は、配列番号328もしくは329のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態において、D2は、配列番号330もしくは331のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0075】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33アンタゴニストは、第
1の多量体化ドメイン(M1)に結合された第1のIL-33結合ドメイン(D1)、および第2の多量体化ドメイン(M2)に結合された第2のIL-33結合ドメイン(D2)を含み、D1ドメインおよび/またはD2ドメインは、ST2およびIL-1RAcPからなる群から選択される受容体のIL-33結合部分を含む。
【0076】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33アンタゴニストは、D1またはM1のいずれかに結合された第3のIL-33結合ドメイン(D3)を含み、D3は、ST2およびIL-1RAcPからなる群から選択される受容体のIL-33結合部分を含む。
【0077】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33アンタゴニストは、D2またはM2のいずれかに結合された第4のIL-33結合ドメイン(D4)を含み、D4は、ST2およびIL-1RAcPからなる群から選択される受容体のIL-33結合部分を含む。
【0078】
一実施形態において、D1はM1のN末端に結合され、D2はM2のN末端に結合されている。
【0079】
一実施形態において、D3はD1のN末端に結合されている。
【0080】
一実施形態において、D3はM1のC末端に結合されている。
【0081】
一実施形態において、D4はD2のN末端に結合されている。
【0082】
一実施形態において、D4はM2のC末端に結合されている。
【0083】
一実施形態において、D3はD1のN末端に結合され、D1はM1のN末端に結合され、D4はD2のN末端に結合され、D2はM2のN末端に結合されている。
【0084】
一実施形態において、D3はD4と同一または実質的に同一であり、D1はD2と同一または実質的に同一である。
【0085】
一実施形態において、D3およびD4はそれぞれ、ST2タンパク質のIL-33結合部分を含み、D1およびD2はそれぞれ、IL-1RAcPタンパク質の細胞外部分を含む。
【0086】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-33トラップは、配列番号323、324、325、326、および327からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0087】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-4アンタゴニストは、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストである。
【0088】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rαに結合し、IL-4および/またはIL-13と1型または2型IL-4受容体との相互作用を妨げる抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0089】
関連する実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、IL-4および/またはIL-13と1型および2型IL-4受容体の両方との相互作用を妨げる。
【0090】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-4Rアンタゴニストは、ヒトIL-4Rαに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0091】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのヒトIL-4Rαに特異的に結合するモノクローナル抗体は、デュピルマブまたはその生物学的等価物である。
【0092】
ある特定の実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号335または配列番号337のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)、および配列番号336または配列番号338のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0093】
関連する実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)ならびに3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は配列番号339のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号340のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号341のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号342のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号343のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号344のアミノ酸配列を含む。
【0094】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号335または配列番号337のアミノ酸配列を含むHCVR、および配列番号336または配列番号338のアミノ酸を含むLCVRを含む。
【0095】
一実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号335/336または配列番号337/338のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0096】
関連する実施形態において、本発明の方法で使用するためのIL-4Rアンタゴニストは、デュピルマブ(配列番号337/338)またはその生物学的等価物である。
【0097】
ある特定の実施形態において、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストは別々の製剤で投与される。
【0098】
ある特定の実施形態において、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストは、それを必要とする患者に投与するために共製剤化される(co-formulated)。
【0099】
ある特定の実施形態において、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストは、対象に皮下、静脈内、筋肉内、または鼻腔内投与される。
【0100】
本発明のIL-33およびIL-4R抗体は、完全長(例えば、IgG1抗体もしくはIgG4抗体)であることができ、または抗原結合部分(例えばFabフラグメント、F(ab’)フラグメント、もしくはscFvフラグメント)のみを含んでいてもよく、かつ機能性に影響するように、例えば、残存するエフェクター機能を取り除くように修飾されていてもよい(Reddy et al.,2000,J.Immunol.164:1925-1933)。
【0101】
一実施形態において、ヒトインターロイキン-33またはヒトIL-4Rに特異的に結
合する抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体として単離される。
【0102】
第6の態様において、本発明は、IL-33に特異的に結合する組換えヒト抗体もしくはそのフラグメントまたはトラップ、あるいはIL-4Rに特異的に結合する抗体、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。関連する態様において、本発明は、抗IL-33抗体もしくはIL-33トラップまたはIL-4Rと特異的に結合する抗体、および1つ以上の追加の治療剤の組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態において、1つ以上の追加の治療剤は、IL-33アンタゴニストおよび/またはIL-4Rアンタゴニストのいずれかまたは両方と有利に組み合わされる任意の薬剤である。IL-33アンタゴニストおよび/またはIL-4Rアンタゴニストと有利に組み合わせることができる例示的な薬剤としては、IL-33活性および/もしくはIL-4活性を阻害する他の薬剤(他の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、ペプチド阻害剤、小分子アンタゴニストなど)、ならびに/またはIL-33もしくはIL-4もしくはIL-4Rと直接結合しないが、なおもIL-33もしくはIL-4媒介シグナル伝達を妨害、阻止、または減弱する薬剤が挙げられるが、限定するものではない。一実施形態において、1つ以上の追加の治療剤は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、コルチコステロイド(例えば吸入コルチコステロイド)、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、エピネフリン、鬱血除去薬、胸腺間質性リンパ球性新生因子(TSLP)アンタゴニスト、IL-1アンタゴニスト、IL-8アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、異なるIL-4アンタゴニスト、IL-4/IL-13デュアルアンタゴニスト、IL-33/IL-13デュアルアンタゴニスト、IL-5アンタゴニスト、IL-6アンタゴニスト、IL-12/23アンタゴニスト、IL-22アンタゴニスト、IL-25アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、IL-31アンタゴニスト、TNF阻害剤、IgE阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、経口PDE4阻害剤、メチルキサンチン、ネドクロミルナトリウム、クロモリンナトリウム、長時間作用型ベータ2アゴニスト(LABA)、長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)、吸入コルチコステロイド(ICS)、および別のIL-33アンタゴニストもしくはIL-4アンタゴニストまたはIL-33もしくはIL-4もしくはIL-4Rに対する異なる抗体、ならびに別のIL-33アンタゴニストからなる群から選択され得る。
【0103】
ある特定の実施形態において、サイトカインアンタゴニストは、サイトカイン自体もしくはそのサイトカインの受容体のいずれか、またはサイトカインおよびその受容体(複数可)の両方を含む複合体と相互作用する、小分子阻害剤(合成または天然由来)またはタンパク質(例えば抗体)であり得る。本発明の抗IL-33抗体および/またはIL-4R抗体を伴う追加の併用療法および共製剤は、本明細書の別の箇所に開示されている。
【0104】
さらに別の態様において、本発明は、抗IL-33アンタゴニスト(IL-33抗体もしくはIL-33トラップなど)およびIL-4R抗体または本発明の1つ以上の抗体の抗原結合部分を用いて、IL-33および/またはIL-4シグナル伝達活性を阻害するための治療方法であって、治療有効量のIL-33抗体またはIL-33トラップを含む医薬組成物を単独で、またはIL-4R抗体または本発明の1つ以上の抗体の抗原結合フラグメントと組み合わせてのいずれかで投与することを含む、治療方法を提供する。 処置される障害は、IL-33および/またはIL-4シグナル伝達によって改善、寛解(ameliorated)、阻害、または予防される任意の疾患または状態である。本発明の抗IL-33および/またはIL-4Rアンタゴニストは、一緒に使用される場合、IL-33とIL-33結合パートナーとの間の相互作用およびIL-4とIL-4結合パートナーとの間の相互作用を阻止するように機能し得、またはそうでなければ、IL-33およびIL-4の両方のシグナル伝達活性を阻害する。一実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rαに結合し、そうした際にはI型またはII型受容体のいずれかを介してIL-4およびIL-13シグナル伝達の両方を妨げる抗体である。
一実施形態において、IL-4Rαアンタゴニストは、デュピルマブまたはその生物学的等価物である。IL-4およびIL-13の両方に対するデュピルマブの二重の阻止活性を考慮すると、本発明のIL-33アンタゴニストと組み合わせて使用された場合、併用療法計画は、炎症中に起こり得るIL-4、IL-13、およびIL-33シグナル伝達経路を介するシグナル伝達に一部起因する望ましくない炎症活性の阻害の増強をもたらすと考えられる。
【0105】
一実施形態において、IL-33アンタゴニストは、IL-33に特異的に結合して、IL-33およびその受容体ST2(IL1RL1としても知られる)との相互作用を阻止する抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0106】
一実施形態において、IL-33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、および308からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)アミノ酸配列内に含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含み、配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、および316からなる群から選択される軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列内に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。
【0107】
一実施形態において、IL-33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、および308からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0108】
一実施形態において、IL-33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、および316からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0109】
一実施形態において、IL-33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、292、および310からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメインと、
(b)配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、および312からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメインと、
(c)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、および314からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメインと、
(d)配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、および318からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメインと、
(e)配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、および320からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメインと、
(f)配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160
、176、192、208、224、240、256、272、288、および322からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインと、を含む。
【0110】
一実施形態において、IL-33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、および308/316からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0111】
本発明はまた、患者におけるIL-33および/もしくはIL-4の活性もしくはシグナル伝達に関連するまたはそれらによって引き起こされる疾患または障害の処置のための医薬の製造における、IL-33アンタゴニストの単独の使用またはIL-4Rアンタゴニストと組み合わせた使用を含む。一実施形態において、患者におけるIL-33活性および/もしくはIL-4活性に関連するまたはこれらによって引き起こされる疾患または障害は、喘息(好酸球性または非好酸球性)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息およびCOPDオーバーラップ症候群(ACOS)、アトピー性皮膚炎、鼻ポリープ、アレルギー反応、慢性気管支炎、気腫、鼻ポリープを伴うまたは伴わない慢性鼻副鼻腔炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性肺炎、多発性硬化症、関節炎(変形性関節症、リウマチ性関節炎、および乾癬性関節炎)、アレルギー性鼻炎、線維症、好酸球性食道炎、血管炎、蕁麻疹、チャーグ・ストラウス症候群、炎症性疼痛、および乾癬からなる群から選択される炎症性疾患または障害である。本発明はまた、炎症性疾患もしくは障害または炎症性の疾患もしくは障害の少なくとも1つの症状の処置に使用するための、治療有効量のIL-4Rアンタゴニストと組み合わせた治療有効量のIL-33アンタゴニストを含み、IL-4Rアンタゴニストと組み合わせたIL-33アンタゴニストの投与は、IL-33アンタゴニスト単独またはIL-4Rアンタゴニスト単独の投与で観察されるものと比較して治療有効性の増強をもたらす。本明細書で論じている方法のいずれも、その方法に関して論じている疾患、障害、および/または症状を処置するための、またはそれらの処置のためのIL-33および/またはIL-4Rアンタゴニスト(例えば抗体)の使用も包含する。
【0112】
他の実施形態は、後述の詳細な説明の精査から明らかとなるでなろう。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】IL-33アンタゴニストの個々の成分の互いに対する4つの例示的配置を示す。パネルAは、第1のIL-33結合ドメイン(D1)が第1の多量体化ドメイン(M1)のN末端に結合され、第2のIL-33結合ドメイン(D2)が第2の多量体化ドメイン(M2)のN末端に結合されている配置を示している。D1およびD2が異なるIL-33結合タンパク質に由来することを示すために、D1は白囲いとして示され、D2は黒囲いとして示される。パネルBは、第1のIL-33結合ドメイン(D1)が第1の多量体化ドメイン(M1)のN末端に結合され、第2のIL-33結合ドメイン(D2)が第2多量体化ドメイン(M2)のC末端に結合されている配置を示している。D1およびD2が異なるIL-33結合タンパク質に由来することを示すために、D1は白囲いとして示され、D2は黒囲いとして示される。パネルCおよびDは、4つのIL-33結合ドメインであるD1、D2、D3、およびD4を含む配置を示している。これらの配置において、D3-D1-M1およびD4-D2-M2は直列に結合され、D3はD1のN末端に結合され、D1はM1のN末端に結合され、D4はD2のN末端に結合され、D2はM2のN末端に結合されている。パネルCにおいて、D3およびD4は互いに同一または実質的に同一であり、D1およびD2は互いに同一または実質的に同一である。パネルDにおいて、D1およびD4は互いに同一または実質的に同一であり、D3およびD2は互いに同一または実質的に同一である。
図2】HDM曝露により、IL-33、IL-4、およびIL-4Rα三重ヒト化マウスおよび野生型マウスの肺において活性化好酸球の同様の増加が誘導されることを示している。統計的有意性は、テューキーの多重比較検定を用いた二元配置分散分析によって決定された。統計的有意差を示すために以下の記号を使用した:「*」アスタリスクは、同じ遺伝子型の生理食塩水曝露マウスとHDM曝露マウスとの間の比較を表し、「&」アンパサンド記号は、それぞれの生理食塩水曝露マウスまたはHDM曝露野生型マウス群との比較を表す。記号の数値が増えると、有意性が増すことを示している:1x=p≦0.05;2x=p≦0.01;3x=p≦0.001;4x=p≦0.0001。略語:WT=野生型。全てのマウスは混合C57BL/6NTac/129S6SvEvTacバックグラウンドのものであった。
図3】REGN3500およびデュピルマブの組み合わせの投与が、HDM曝露誘導相対肺重量の増加を阻止することを示す。相対肺重量は、体重(g)に対する肺湿重量(mg)の比として表される。統計的有意性は、ダンの多重比較事後検定を用いたクラスカル・ウォリスの一元配置分散分析によって決定された。統計的有意差を示すために以下の記号を使用した:「*」アスタリスクは、全ての19週間HDM曝露群の間の比較を表し、「#」ハッシュタグは、生理食塩水に曝露された未処置動物と全ての他の群との比較を示す。記号の数値が増えると、有意性が増すことを示している:1x=p≦0.05;2x=p≦0.01;3x=p≦0.001。略語:wk=週、IgG4=アイソタイプ対照抗体REGN1945。
図4A】HDM曝露誘導性の肺好酸球性浸潤に対するREGN3500およびデュピルマブの単独または組み合わせでの効果を示す。統計的有意性は、ダンの多重比較事後検定を用いたクラスカル・ウォリスの一元配置分散分析によって決定された。統計的有意差を示すために以下の記号を使用した:「*」アスタリスクは、全ての19週間HDM曝露群の間の比較を表し、「#」ハッシュタグは、生理食塩水に曝露された未処置動物と全ての他の群との比較を示し、「+」プラス記号は、11週間のHDM曝露未処置動物と全て他の群との比較を示す。記号の数値が増えると、有意性が増すことを示している:1x=p≦0.05;2x=p≦0.01;3x=p≦0.001;4x=p≦0.0001。略語:wk=週、IgG4=アイソタイプ対照抗体REGN1945。
図4B】HDM曝露誘導性の肺好酸球性浸潤に対するREGN3500およびデュピルマブの単独または組み合わせでの効果を示す。統計的有意性は、ダンの多重比較事後検定を用いたクラスカル・ウォリスの一元配置分散分析によって決定された。統計的有意差を示すために以下の記号を使用した:「*」アスタリスクは、全ての19週間HDM曝露群の間の比較を表し、「#」ハッシュタグは、生理食塩水に曝露された未処置動物と全ての他の群との比較を示し、「+」プラス記号は、11週間のHDM曝露未処置動物と全て他の群との比較を示す。記号の数値が増えると、有意性が増すことを示している:1x=p≦0.05;2x=p≦0.01;3x=p≦0.001;4x=p≦0.0001。略語:wk=週、IgG4=アイソタイプ対照抗体REGN1945。
図5】REGN3500が単独でまたはデュピルマブとの組み合わせで、ST2CD4T細胞によるHDM曝露誘導性の肺浸潤を阻止することを示す。統計的有意性は、テューキーの多重比較事後検定を用いた一元配置分散分析によって決定された。統計的有意差を示すために以下の記号を使用した:「*」アスタリスクは、全ての19週間HDM曝露群の間の比較を表し、「#」ハッシュタグは、生理食塩水に曝露された未処置動物と全ての他の群との比較を示し、「+」プラス記号は、11週間のHDM曝露未処置動物と全て他の群との比較を示す。記号の数値が増えると、有意性が増すことを示している:1x=p≦0.05;2x=p≦0.01;3x=p≦0.001;4x=p≦0.0001。略語:wk=週、IgG4=アイソタイプ対照抗体REGN1945。
図6】REGN3500およびデュピルマブの組み合わせの投与が、好中球浸潤の指標であるMPO肺タンパク質レベルのHDM曝露誘導性の増加を阻止することを示す。統計的有意性は、ダンの多重比較事後検定を用いたクラスカル・ウォリスの一元配置分散分析によって決定された。統計的有意差を示すために以下の記号を使用した:「*」アスタリスクは、全ての19週間HDM曝露群の間の比較を表し、「#」ハッシュタグは、生理食塩水に曝露された未処置動物と全ての他の群との比較を示す。記号の数値が増えると、有意性が増すことを示している:1x=p≦0.05;2x=p≦0.01;3x=p≦0.001。略語:wk=週、IgG4=アイソタイプ対照抗体REGN1945。
図7A】肺IL-5およびIL-6タンパク質レベルのHDM曝露誘導性の増加についてのREGN3500およびデュピルマブの単独または組み合わせの効果を示す。肺(右肺の前葉および中葉)を採取し、IL-5(A)およびIL-6(B)タンパク質レベルをマルチプレックスイムノアッセイ(multiplexed immunoassay)によって測定した。肺組織のIL-5およびIL-6タンパク質レベルは、肺葉当たりのタンパク質量(pg)として表される。統計的有意性は、ダンの多重比較事後検定を用いたクラスカル・ウォリスの一元配置分散分析によって決定された。統計的有意差を示すために以下の記号を使用した:「*」アスタリスクは、全ての19週間HDM曝露群の間の比較を表し、「#」ハッシュタグは、生理食塩水に曝露された未処置動物と全ての他の群との比較を示す。記号の数値が増えると、有意性が増すことを示している:1x=p≦0.05;2x=p≦0.01;3x=p≦0.001。略語:wk=週、IgG4=アイソタイプ対照抗体REGN1945。
図7B】肺IL-5およびIL-6タンパク質レベルのHDM曝露誘導性の増加についてのREGN3500およびデュピルマブの単独または組み合わせの効果を示す。肺(右肺の前葉および中葉)を採取し、IL-5(A)およびIL-6(B)タンパク質レベルをマルチプレックスイムノアッセイ(multiplexed immunoassay)によって測定した。肺組織のIL-5およびIL-6タンパク質レベルは、肺葉当たりのタンパク質量(pg)として表される。統計的有意性は、ダンの多重比較事後検定を用いたクラスカル・ウォリスの一元配置分散分析によって決定された。統計的有意差を示すために以下の記号を使用した:「*」アスタリスクは、全ての19週間HDM曝露群の間の比較を表し、「#」ハッシュタグは、生理食塩水に曝露された未処置動物と全ての他の群との比較を示す。記号の数値が増えると、有意性が増すことを示している:1x=p≦0.05;2x=p≦0.01;3x=p≦0.001。略語:wk=週、IgG4=アイソタイプ対照抗体REGN1945。
図8】REGN3500が単独またはデュピルマブとの組み合わせが、循環(circulating)SAAタンパク質レベルのHDM曝露誘導性の増加を阻止することを示している。最後の抗体注射の4日後、全血を心臓穿刺により採取し、血清を単離した。循環SAAタンパク質レベルを市販のELISAキットを用いて測定した。循環SAAタンパク質レベルは、血清1mL当たりのSAAタンパク質量(μg)として表される。統計的有意性は、ダンの多重比較事後検定を用いたクラスカル・ウォリスの一元配置分散分析によって決定された。統計的有意差を示すために以下の記号を使用した:「*」アスタリスクは、全ての19週間HDM曝露群の間の比較を表し、「#」ハッシュタグは、生理食塩水に曝露された未処置動物と全ての他の群との比較を示す。記号の数値が増えると、有意性が増すことを示している:1x=p≦0.05;2x=p≦0.01;3x=p≦0.001。略語:wk=週、IgG4=アイソタイプ対照抗体REGN1945。
図9】HDM曝露に応じて、循環IgEタンパク質レベルが増加することを示す。全血を心臓穿刺により採取し、血清を単離した。循環IgEタンパク質レベルを市販のELISAキットを用いて測定した。循環IgEタンパク質レベルは、血清1mL当たりのIgEタンパク質量(μg)として表される。統計的有意性は、ダンの多重比較事後検定を用いたクラスカル・ウォリスの一元配置分散分析によって決定された。統計的有意差を示すために以下の記号を使用した:「*」アスタリスクは、全ての19週間HDM曝露群の間の比較を表し、「#」ハッシュタグは、生理食塩水に曝露された未処置動物と全ての他の群との比較を示す。記号の数値が増えると、有意性が増すことを示している:1x=p≦0.05;2x=p≦0.01;3x=p≦0.001。略語:wk=週、IgG4=アイソタイプ対照抗体REGN1945。
【発明を実施するための形態】
【0114】
本発明を説明する前に、本発明は、特定の方法および説明される実験条件が変わり得るので、このような方法および条件に制限されないことは理解されることになっている。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるので、本明細書で使用する用語はある特定の実施形態のみを説明するためのものであり、制限されることを企図するものではないことも理解すべきである。
【0115】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は全て、本発明の属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、「約」との用語は、特定の列挙された数値に関して使用されるとき、その値が列挙された値から1%以下だけ変動し得ることを意味する。例えば、本発明で使用する場合、「約100」との表現は、99および101、ならびにその間の全値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0116】
本明細書に説明されるものと類似のまたは等価の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をこれから説明する。本明細書で言及される特許、出願、および非特許刊行物は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
定義
本明細書で使用される「インターロイキン-33」、「IL-33」または同様の用語は、ヒトIL-33タンパク質を指し、270アミノ酸の、プロセシングされていない全長IL-33(例えば、配列番号348またはUniProtKB受託番号095760)、および細胞内プロセシングから生じる任意の形態のIL-33(例えば、全長タンパク質のアミノ酸残基112~270を含有する配列番号349を参照のこと)を包含する。IL-33の他のプロセシングされた形態は、Lefrancais, et.al.(Lefrancais,et al.,(2012),Proc.Natl.Acad.Sci.109(5):1693-1678)に記載されている。この用語はまた、IL-33の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント(例えば、Hong,et.al.,(2011),J.Biol.Chem.286(22):20078-20086またはを参照のこと)、またはIL-33の任意の他のアイソフォーム、例えば、WO2016/156440に記載されているものなどを包含する。本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、およびタンパク質フラグメントについての全ての言及は、非ヒト種由来であることが明確に特定されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、またはタンパク質フラグメントのヒト型を指すことを意図している。
【0118】
本明細書で使用される場合、「IL-33アンタゴニスト」との表現は、IL-33シグナル伝達および/または、IL-33と、細胞表面受容体(例えば、IL1RL1としても知られるST2)もしくは共受容体(例えば、IL1-RAcP)またはそれらの複合体と、の間の相互作用を阻止、減弱、または妨害することができる任意の薬剤を意味する。例えば、「IL-33阻害剤」または「IL-33ブロッカー」とも称する「IL-33アンタゴニスト」は、以下のいずれかを含む:(1)IL-33に結合するもしくはこれと相互作用する薬剤、または(2)IL-33受容体に結合するもしくはこれと相互作用する薬剤(「腫瘍形成抑制因子」または「ST2」と称される場合があり、「IL1RL1」としても知られる)、または(3)IL-33共受容体(インターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質もしくはIL1-RAcP)に結合するもしくはこれと相互作用する薬剤、または(4)IL-33/ST2の複合体に結合する薬剤、あるいは(5)ST2/IL-1RAcPに結合するもしくはこれと相互作用する薬剤。上記のいずれも、限定するものではないが、IL-33がその受容体/共受容体複合体に結合した際
に生じる生物学的シグナル伝達機能などのIL-33の少なくとも1つの生物学的活性を阻害または減弱をもたらし得る。
【0119】
一実施形態において、「IL-33アンタゴニスト」は、IL-33に特異的に結合しまたはこれと相互作用し、IL-33がST2に結合することを妨げ、そうした際にはST2と共受容体IL-1RAcPとの相互作用を妨げる抗体である。一実施形態において、「IL-33アンタゴニスト」は、ST2またはST2/IL-1RAcP複合体のいずれかに特異的に結合し、IL-33がST2またはST2/IL1-RAcP受容体複合体に結合することを妨げる抗体である。一実施形態において、「IL-33アンタゴニスト」は、IL-33/ST2複合体に結合し、次いでST2とIL-1RAcP共受容体との相互作用を妨げる抗体である。一実施形態において、「IL-33アンタゴニスト」は、IL-33に結合し、ST2への低親和性結合を可能にし得る抗体であるが、同時に、そのような低親和性結合は、ST2と受容体IL-1RAcPとのその後の相互作用を妨げ得る。
【0120】
「IL-33アンタゴニスト」はまた、可溶性ST2受容体またはIL-33受容体ベースのトラップなどの薬剤、例えば、本明細書に記載されUS2014/0271642に開示されているものであり得る。IL-33媒介シグナル伝達を阻止する任意の薬剤は「IL-33アンタゴニスト」とみなされる。「IL-33アンタゴニスト」は、有機小分子、抗体もしくはそのフラグメントなどのタンパク質、または可溶性IL-33受容体ベースのトラップ(本明細書中に記載される)、またはアンチセンス分子もしくはsiRNAなどの核酸であり得る。本明細書で使用される場合、「IL-33に結合する抗体」または「抗IL-33抗体」には、ヒトIL-33タンパク質またはその生物学的に活性なフラグメントに結合する抗体およびその抗原結合フラグメント(配列番号348、349、350、および351を参照のこと)が含まれる。
【0121】
本明細書で使用される「インターロイキン-4受容体」または「IL-4R」との表現は、配列番号347のアミノ酸配列を有するヒトIL-4Rα受容体を指す。
【0122】
本明細書で使用される場合、「IL-4Rアンタゴニスト」(本明細書では「IL-4R阻害剤」、「IL-4Rαアンタゴニスト」、「IL-4Rブロッカー」、「IL-4Rαブロッカー」などとも称する)は、IL-4RαまたはIL-4Rリガンドに結合しまたはこれらと相互作用し、1型および/または2型IL-4受容体の正常な生物学的シグナル伝達機能を阻害または減弱する任意の薬剤である。1型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびγc鎖を含む二量体受容体である。2型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびIL-13Rα1鎖を含む二量体受容体である。1型IL-4受容体は、IL-4と相互作用し、IL-4によって刺激される一方、2型IL-4受容体は、IL-4およびIL-13の両方と相互作用し、IL-4およびIL-13の両方によって刺激される。したがって、本発明の方法で使用することができるIL-4Rアンタゴニストは、IL-4媒介シグナル伝達、IL-13媒介シグナル伝達、またはIL-4およびIL-13媒介シグナル伝達の両方を阻止することによって機能し得る。したがって、本発明のIL-4Rアンタゴニストは、IL-4および/またはIL-13と1型または2型受容体との相互作用を妨げ得る。IL-4Rアンタゴニスト分類の非限定的な例には、小分子IL-4R阻害剤、抗IL-4Rアプタマー、ペプチドベースのIL-4R阻害剤(例えば、「ペプチボディ」分子)、「レセプターボディ(receptor-body)」(例えば、IL-4R成分のリガンド結合ドメインを含む工学操作された分子)、およびヒトIL-4Rαに特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合フラグメントが含まれる。本明細書で使用される場合、IL-4Rアンタゴニストはまた、IL-4および/またはIL-13に特異的に結合する抗原結合タンパク質が含まれる。
【0123】
本明細書で使用される場合、「抗体」との用語は、特定の抗原(例えばIL-33もしくはIL-4R)に特異的に結合するまたはこれと相互作用する、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子または分子複合体を意味する。「抗体」との用語は、ジスルフィド結合によって相互連結された4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2、およびC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(C1)を含む。V領域およびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称する、より保存された領域が点在する相補性決定領域(CDR)と称する超可変領域へとさらに細分することができる。各VおよびVは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。本発明の異なる実施形態において、抗IL-33抗体(もしくはその抗原結合部分)または抗IL-4R抗体のFRは、ヒト生殖細胞系列の配列と同一であってもよく、または天然でもしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。
【0124】
本明細書で使用される「抗体」との用語はまた、完全抗体分子の抗原結合フラグメントを含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」および同様の用語は、本明細書で使用される場合、天然の、酵素処理で入手可能な、合成の、または遺伝子操作された、抗原を特異的に結合して複合体を形成するポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗体結合フラグメントは、例えば、抗体可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現に関連するタンパク質消化技術または組換え遺伝子操作技術などの任意の適切な標準的技術を用いて、完全抗体分子から誘導され得る。このようなDNAは既知であり、および/または例えば市販の供給源、DNAライブラリー(例えばファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、例えば、1つ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを適切な立体配置に配置し、またはコドンを導入し、システイン残基を生成し、アミノ酸を修飾、付加もしくは欠失などするために、化学的にまたは分子生物学技術を用いて配列決定および操作され得る。
【0125】
抗体結合フラグメントの非限定例としては、(i)Fabフラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、(iii)Fdフラグメント、(iv)Fvフラグメント、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAbフラグメント、および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基、または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドからなる最小認識単位が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(small modular immunopharmaceuticals)(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の工学操作された分子もまた、本明細書で使用する「抗原結合フラグメント」の表現内に包含される。
【0126】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むことになっている。可変ドメインは、任意の大きさまたはアミノ酸組成物であり得、概して、1つ以上のフレームワーク配列に隣接しているかまたは1つ以上のフレームワーク配列とともにインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。Vドメインと結合したVドメインを有する抗体結合フラグメントにおいて、VドメインおよびVドメインは、任意の適切な配置で互いに対して配置され得る。例えば、可変領域は二量体であり、V
-V、V-VまたはV-V二量体を含んでもよい。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体のVドメインまたはVドメインを含有し得る。
【0127】
ある特定の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインへ共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内に見出すことができる可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的立体配置としては、(i)V-C1、(ii)V-C2、(iii)V-C3、(iv)V-C1-C2、(v)V-C1-C2-C3、(vi)V-C2-C3、(vii)V-C、(viii)V-C1、(ix)V-C2、(x)V-C3、(xi)V-C1-C2、(xii)V-C1-C2-C3、(xiii)V-C2-C3、および(xiv)V-Cが挙げられる。先に列挙した例示的な立体配置のいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの任意の立体配置において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結されていてもよく、または完全もしくは部分的ヒンジ領域もしくはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の可撓性または半可撓性の結合をもたらす少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれより多数の)アミノ酸からなり得る。そのうえ、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、互いとのおよび/または1つ以上の単量体VドメインもしくはVドメイン(例えば、ジスルフィド結合(複数可)により)との非共有結合において、先に列挙した可変ドメイン立体配置および定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0128】
完全抗体分子と同様に、抗体結合フラグメントは、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むことになっており、各可変ドメインは、別個の抗原へまたは同じ抗原上の異なるエピトープへ特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体フォーマットを含む任意の多重特異性抗体フォーマットは、当該技術分野で利用可能な通例の技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合フラグメントとの関連で使用に適合し得る。例えば、本発明は、二重特異性抗体の使用を含む方法を含み、該二重特異性抗体では、免疫グロブリンの一方の腕が、IL-4RαもしくはそのフラグメントまたはIL-33もしくはそのフラグメントに特異的な免疫グロブリンであり、免疫グロブリンの他方の腕が、第2の治療標的に特異的であるかまたは治療部分に結合されている。本発明との関連で使用することができる例示的な二重特異性フォーマットとしては、例えば、scFvベースのまたはダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クワドローマ(Quadroma)、ノブズ-イントゥ-ホールズ(knobs-into-holes)、共通軽鎖(例えば、ノブズ-イントゥ-ホールズを有する共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、およびMab二重特異性フォーマットが挙げられるが、限定するものではない(上述のフォーマットの総説については、例えばKlein et al.2012,mAbs4:6,1-11、およびこの中で引用されている参考文献を参照のこと)。二重特異性抗体は、ペプチド/核酸結合を用いて構築することもでき、例えば、直交化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチド複合体を生成し、これが次に、規定される組成物、原子価および幾何学的形状を有する多量体複合体へと自己集合する。(例えば、Kazane et al.,J.Am.Chem.Soc.[Epub:Dec.4,2012]を参照のこと)。
【0129】
本発明のある特定の実施形態において、本発明の抗IL-33抗体およびIL-4R抗
体はヒト抗体である。「ヒト抗体」との用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むよう企図される。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特にCDR3における、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発によってまたはインビボでの体細胞突然変異によって導入された変異)によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される「ヒト抗体」との用語は、別の哺乳類種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列へと移植された抗体を含むことを意図するものではない。この用語は、非ヒト哺乳類において、または非ヒト哺乳類の細胞において組換え産生された抗体を含む。この用語は、ヒト対象から単離された、またはヒト対象において生成された抗体を含むよう企図されるものではない。
【0130】
本発明の抗体は、いくつかの実施形態において、組換えヒト抗体であり得る。本明細書で使用される「組換えヒト抗体」との用語は、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体などの組換え手段によって調製、発現、作成、または単離された全てのヒト抗体(後述)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(後述)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作成、または単離された抗体を含むことを意図する。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。ある特定の実施形態において、しかしながら、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニック動物が使用される場合は、インビボ体細胞突然変異誘発)を受け、したがって、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来し関連してはいるが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。
【0131】
ヒト抗体は、ヒンジの不均一性に関連する2つの形態で存在することができる。一形態において、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持されている約150~160kDaの安定な四本鎖構築物を含む。第2の形態において、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、共有結合した軽鎖と重鎖からなる約75~80kDaの分子が形成される(半抗体)。これらの形態は、親和性精製後でさえも分離することが極めて困難であった。
【0132】
様々な無傷のIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造上の相違によるが、それに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における1個のアミノ酸置換により、ヒトIgG1ヒンジを用いて典型的に観察されるレベルにまで第2の形態の出現を有意に減少させることができる(Angal et al.(1993)Molecular Immunology30:105)。本発明は、ヒンジ、C2またはC3領域に1つ以上の変異を有する抗体を包含し、例えば産生において、所望の抗体形態の収率を改善するのに望ましい場合がある。
【0133】
本発明の抗体は単離された抗体であり得る。本明細書で使用される「単離された抗体」は、同定された抗体、およびその天然環境の少なくとも1つの成分から分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するかもしくは天然に産生される組織または細胞から分離または除去された抗体は、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組換え細胞内の原位置の抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程を受けている抗体である。ある特定の実施形態によると、単離された抗体は他の細胞性物
質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0134】
本発明は、抗IL-33抗体およびIL-4R抗体を中和および/または阻止することを含む。本明細書で使用される「中和」または「阻止」抗体は、標的分子、例えばIL-33またはIL-4Rのいずれかへの結合が、(i)標的分子とその受容体(IL-33抗体の場合)またはそのリガンド(IL-4R抗体の場合)のいずれかとの間の相互作用を妨げ、および/または(ii)標的分子の少なくとも1つの生物学的機能、例えばシグナル伝達の阻害をもたらす抗体を指す。IL-33またはIL-4R中和または阻止抗体によって引き起こされる阻害は、阻害が適切なアッセイを使用して検出可能である限り、完全である必要はない。
【0135】
本明細書に開示される抗体は、抗体が由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域および/またはCDR領域において1つ以上のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含み得る。このような変異は、本明細書中に開示するアミノ酸配列を、例えば公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合フラグメントを含み、ここで、1つ以上のフレームワーク領域および/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)に変異し、もしくは別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)に変異し、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に変異する(このような配列変化を本明細書では纏めて、「生殖系列変異」と称する)。当業者は、本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列変異またはそれらの組み合わせを含む多くの抗体および抗体結合フラグメントを容易に産生することができる。ある特定の実施形態において、Vおよび/またはVドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基は全て、抗体が由来した元の生殖系列配列において見出される残基へと再び変異する。他の実施形態において、ある特定の残基のみが元の生殖系列配列へと変異し戻され、例えば、変異した残基はFR1の最初の8個のアミノ酸内に、もしくは変異した残基はFR4の最後の8個のアミノ酸内に認められ、または変異した残基は、CDR1、CDR2もしくはCDR3内にのみ認められる。他の実施形態において、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)の1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が本来由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へ変異する。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含有してもよく、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へ変異するのに対し、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持され、または異なる生殖系列配列の対応する残基へ変異する。いったん得られれば、1つ以上の生殖系列変異を含有する抗体および抗体結合フラグメントは、結合特異性の改善、結合親和性の増加、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または増強(場合によって)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な方法で得られる抗体および抗体結合フラグメントは、本発明の範囲内に包含される。
【0136】
本発明はまた、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば10個以下、8個以下、6個以下、または4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗体を含む。
【0137】
「エピトープ」との用語は、パラトープとして既知の抗体分子の可変領域における特異
的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は2つ以上のエピトープを有してもよい。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域へ結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、立体配座または線状のいずれかであってもよい。立体配座エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。特定の状況において、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0138】
「実質的な同一性」または「実質的に同一である」との用語は、核酸またはそのフラグメントを指す場合、別の核酸(またはその相補鎖)との適切なヌクレオチド挿入または欠失と最適に整列した場合、以下に考察するように、FASTA、BLASTまたはGapなど、配列同一性の任意の周知のアルゴリズムによって測定される場合に、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、または99%のヌクレオチド配列同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、ある特定の場合において、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。
【0139】
ポリペプチドへ適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似の」との用語は、2つのペプチド配列が、既定のギャップ重みを用いてプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列した場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性を共有する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させないことになっている。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換だけ互いに異なる場合、配列同一性の割合または類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整してもよい。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるPearson(1994)Methods Mol. Biol.24:307-331を参照のこと。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)含硫側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、参照により本明細書に組み込まれるGonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されるPAM250対数尤度行列において正値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負以外の値を有する任意の変化である。
【0140】
ポリペプチドに対する配列類似性は、配列同一性とも呼ばれ、典型的には配列分析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の修飾へ割り当てられた類似の測定値を用いて類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチド間の、または野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメータとともに使用するこ
とができるGapおよびBestfitなどのプログラムを含有する。例えば、GCG第6.1版を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCG第6.1版におけるプログラムである、既定パラメータまたは推奨パラメータを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列の間の最良重複の領域の整列およびパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)上述)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを用いるコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれるAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410およびAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照のこと。
【0141】
本明細書で使用される「疾患または障害」は、本発明のIL-33およびIL-4アンタゴニストで処置可能な任意の状態である。本明細書で使用される「炎症性疾患または障害」は、病変が全体的にまたは一部、例えば免疫系細胞の数の変化、移動速度の変化、または活性化の変化に起因する疾患、障害、または病理学的状態を指す。免疫系細胞には、例えば、T細胞、B細胞、単球もしくはマクロファージ、自然リンパ球、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ミクログリア、NK細胞、好中球、好酸球、肥満細胞、または免疫学に特異的に関連する任意の他の細胞、例えばサイトカイン産生内皮細胞もしくは上皮細胞が含まれる。本明細書で使用される場合、一実施形態において、「炎症性疾患または障害」とは、喘息(ステロイド抵抗性喘息、ステロイド感受性喘息、好酸球性喘息、または非好酸球性喘息を含む)、アレルギー、アナフィラキシー、多発性硬化症、炎症性腸疾患(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)、慢性閉塞性肺疾患(COPD、これは一次喫煙または二次喫煙への曝露に関連し、該曝露によって一部引き起こされ、もしくは該曝露に起因し得る、またはそうではないこともあり得る)、喘息およびCOPDオーバーラップ症候群(ACOS)、好酸球性食道炎、慢性気管支炎、気腫、鼻ポリープを伴うまたは伴わない慢性鼻副鼻腔炎、狼瘡、アトピー性皮膚炎、乾癬、強皮症および他の線維性疾患、シェーグレン症候群、血管炎(ベーチェット病、巨細胞性動脈炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、およびチャーグ・ストラウス症候群)、炎症性疼痛、ならびに関節炎からなる群から選択される免疫障害または症状である。一実施形態において、関節炎は、リウマチ性関節炎、変形性関節症、および乾癬性関節炎からなる群から選択される。
【0142】
一実施形態において、「炎症性疾患または障害」は、1型応答および/または2型応答を含む免疫障害または状態である。
【0143】
「1型免疫応答」は、Tヘルパー1(T1)細胞およびT17細胞、細胞傷害性T細胞、グループ1およびグループ3の自然リンパ球(ILC)、および免疫グロブリンM(IgM)、IgAおよび特異的IgG抗体クラス、ならびに例えばTNF、IL-1β、およびIL-6を含むサイトカインによって定義される。このエフェクター応答は、細菌、ウイルス、真菌、および原生動物を含む多くの微生物に対する免疫を媒介する。1型免疫の構成要素はまた、腫瘍免疫監視を維持するのに役立つ。
【0144】
「2型免疫応答」は、CD4+Tヘルパー2(T2)細胞、グループ2の自然リンパ球(ILC)、好酸球、好塩基球、肥満細胞、IL-4および/またはIL-13活性化マクロファージ、IgE抗体サブクラス、ならびに例えば、IL-4、IL-5、IL-9、IL-13、胸腺ストロマリンホポエチン、IL-25、およびIL-33を含むサイトカインを特徴とする。2型免疫は、バリア防御(barrier defense)を強化することによって、大きな細胞外寄生体に対する保護を提供する。2型免疫応答の構成要素はまた、代謝恒常性を維持し、傷害後の組織リモデリングを促進するのを助ける
。この種の応答はまた、アレルゲンに応答して開始され得る。
【0145】
本明細書で使用される「IL-33媒介シグナル伝達を阻害または減弱する」との語句は、IL-33が本明細書に記載のIL-33抗体またはIL-33トラップなどのアンタゴニスの非存在下でST2およびIL-1RAcPを介してシグナル伝達を刺激する程度と比較して、本明細書に記載のIL-33抗体またはIL-33トラップなどのアンタゴニストの存在下で減弱される、IL-33がその受容体、ST2、および共受容体IL-1RAcPを介してシグナル伝達を刺激する程度を指す。本明細書で使用される「IL-4R媒介シグナル伝達を阻害または減弱する」との語句は、IL-4が本明細書に記載のIL-4またはIL-4R抗体などのアンタゴニストの非存在下で1型および/または2型IL-4受容体を介してシグナルを介してシグナル伝達を刺激する程度と比較して、本明細書に記載のIL-4またはIL-4R抗体などのアンタゴニストの存在下で減弱される、IL-4が1型および/または2型IL-4受容体を介してシグナル伝達を刺激する程度を指す。阻害の程度を調べるために、試料を潜在的な阻害剤/アンタゴニストで処理し、阻害剤/アンタゴニストで処理しない対照試料と比較する。対照試料、すなわちアンタゴニストで処理しないものには、相対活性値100%を割り当てる。対照と比較した活性値が約90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、または20%未満である場合、阻害が達成される。阻害の評価項目は、所定の量または割合の、例えば、サイトカインの放出などの炎症または細胞脱顆粒、分泌、もしくは活性化の指標を含み得る。ST2およびIL-1RAcPを介するIL-33シグナル伝達の阻害は、当業者に既知のものなどのインビトロアッセイでIL-33シグナル伝達についてアッセイすることによって決定することができる。さらに、インビボアッセイを使用して、分子がIL-33のアンタゴニストであるかどうかを決定することができる。例えば、インビボアッセイを使用して、ヒトIL-33の発現に関してホモ接合性である(homozygous)アレルゲン感作動物の肺炎症についてのIL-33に対する抗体の効果を評価することができる。動物をアレルゲンで感作した後、動物の一部を本発明の抗IL-33抗体または陰性アイソタイプ対照抗体のいずれかで処置する。その後、動物を犠牲死させ、細胞浸潤物の評価およびサイトカイン測定(IL-4およびIL-5)のために肺を採取する。アンタゴニストとして有効であるIL-33抗体は、肺の炎症細胞の減少傾向、ならびにIL-4およびIL-5などのサイトカインの減少傾向を示すはずである。インビトロまたはインビボでIL-4が1型および/または2型受容体に結合された後にシグナル伝達を阻止するIL-4Rアンタゴニストの能力を評価するために、同様のアッセイを行うことできる。さらに、IL-33アンタゴニスト単独、IL-4もしくはIL-4Rアンタゴニスト単独のいずれかを使用することの効果、またはIL-33アンタゴニストおよびIL-4もしくはIL-4Rアンタゴニストの両方の組み合わせを一緒に使用することの効果を比較するために、上記のアッセイのいずれかを改変してもよい。
【0146】
別の態様において、本発明は、喘息もしくはCOPDの発生率もしくは再発または喘息もしくはCOPDの増悪の減少を必要とする対象において、喘息もしくはCOPDの発生率もしくは再発または喘息もしくはCOPDの増悪を減少させるための方法であって、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む医薬組成物をIL-33アンタゴニストを含む医薬組成物と組み合わせて対象に投与することを含む方法を提供する。本明細書で使用される場合、「喘息またはCOPDの増悪」との表現は、喘息またはCOPDの1つ以上の症状または兆候の重症度および/もしくは頻度ならびに/または持続期間の増加を意味する。「喘息またはCOPDの増悪」はまた、喘息またはCOPDの治療的介入(例えば、ステロイド処置、吸入コルチコステロイド処置、入院など)を必要とするまたはそれによって処置可能である対象の呼吸器健康状態の任意の悪化を含む。
【0147】
喘息またはCOPDの増悪の「発生率または再発の減少」とは、本発明の医薬組成物を
受けた対象が、処置前よりも処置後において喘息またはCOPDの増悪が少ないこと(すなわち、少なくとも1つの増悪の減少)、または本発明の医薬組成物による処置の開始後少なくとも4週間(例えば、4、6、8、12、14週間、またはそれ以上)、喘息またはCOPDの増悪を経験しないことを意味する。あるいは、喘息またはCOPDの増悪の「発生率または再発の減少」とは、本発明の医薬組成物の投与後に、本発明の医薬組成物を受けていない対象と比較して、対象が喘息またはCOPDの増悪を経験する可能性が少なくとも10%(例え、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれ以上)減少することを意味する。
【0148】
本明細書で使用される「線維性疾患または障害」は、組織または臓器中の過剰な線維性結合組織を含む状態を指す。「線維症」とは、組織損傷に対する応答としての結合組織による瘢痕形成および細胞外マトリックスの過剰産生を含む病理過程を指す。本明細書で使用される場合、本発明の抗IL-33およびIL-4Rアンタゴニストを投与することによって処置可能な例示的な「線維性疾患または障害」としては、肺線維症(例えば、特発性肺線維症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、アスベスト誘導性肺線維症、および細気管支炎性閉塞症)、慢性喘息、急性肺損傷および急性呼吸窮迫に関連する線維症(例えば、細菌性肺炎誘導性線維症、外傷誘導性線維症、ウイルス性肺炎誘導性線維症、人工呼吸器誘導性線維症、非肺性敗血症誘導性線維症、および誤嚥誘導性線維症)、珪肺症、放射線誘導性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD、これは一次喫煙または二次喫煙への曝露に関連し、該曝露によって一部引き起こされ、もしくは該曝露に起因し得る、またはそうではないこともあり得る)、強皮症、眼線維症、皮膚線維症(例えば、強皮症)、肝線維症(例えば、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変、感染症またはウイルス誘導性肝線維症、自己免疫性肝炎、腎臓(腎)線維症、心臓線維症、アテローム性動脈硬化症、ステント再狭窄、および骨髄線維症が挙げられる。喘息およびCOPDは一般に炎症状態であると考えられているが、それぞれがまた線維性疾患の性質を示すことが知られている。
【0149】
処置または療法、例えばIL-33アンタゴニスト(例えばIL-33もしくはST2結合アンタゴニスト)またはIL-4アンタゴニストを含む処置に対する患者の「応答」または患者の「応答性」とは、処置からまたは処置の結果として、IL-33により媒介される障害(例えば、喘息、COPD、ACOS、鼻ポリープ、または肺線維症、例えば特発性肺線維症)のリスクがあるまたはその障害を有する患者にもたらされる臨床的または治療的利益を指す。そのような利益には、アンタゴニストによる処置からのまたはその処置の結果としての細胞性もしくは生物学的応答、完全奏効(complete response)、部分奏効、安定した疾患(進行もしくは再発なし)、または患者の晩期再発を伴う応答が含まれる。当業者は容易に、患者が応答性であるかどうかを決定するための立場にあるであろう。例えば、IL-33アンタゴニストおよび/またはIL-4アンタゴニストを含む処置に応答する喘息を患っている患者は、以下の例示的症状:反復性呼気性喘鳴、咳、呼吸困難、胸部圧迫感、夜間に発症もしくは悪化する症状、冷気によって引き起こされる症状、運動またはアレルゲンへの曝露のうちの1つ以上において観察可能および/または測定可能な減少または非存在を示し得る。
【0150】
さらに、「治療有効性の増強」は、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの組み合わせによる処置が、IL-33アンタゴニストまたはIL-4Rアンタゴニストを単独で使用した場合に達成される結果と比較した場合に、疾患もしくは障害の少なくとも1つの症状の有意な改善、または本明細書で測定されるような生物学的パラメータ(例えば、肺炎症、サイトカイン放出など)のうちの少なくとも1つの改善をもたらすかどうかを評価することによって決定され得る。本出願に記載される有効性の生物学的測定のいずれも、治療有効性またはその増強を決定するために使用することができる。
【0151】
IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニスト
本発明の方法は、炎症性疾患または障害を患っている患者に治療有効量のIL-33アンタゴニストを治療有効量のIL-4Rアンタゴニストと組み合わせて投与することを含む。
【0152】
IL-33アンタゴニスト
「ヒトインターロイキン-33」もしくは「ヒトIL-33」もしくは「hIL-33」または「IL-33」との用語は、270アミノ酸の完全長のプロセシングされていないIl-33(例えば、配列番号348もしくはUniProtKB受託番号O95760を参照のこと)またはその生物学的に活性なフラグメント、および細胞内プロセシングから生じる任意の形態のIL-33(例えば、全長タンパク質のアミノ酸残基112~270を含有する配列番号349を参照のこと)を指す。この用語はまた、IL-33の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント(例えば、Hong,et. al.,(2011),J.Biol.Chem.286(22):20078-20086を参照のこと)、対立遺伝子バリアント、またはIL-33の任意の他のアイソフォーム、例えば、WO2016/156440に記載されている酸化型または還元型のIL-33を包含する。本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは本発明のIL-33トラップによって中和、阻害、阻止、排除、減弱、低減、または妨害され得るIL-33の活性としては、IL-33受容体により媒介されるシグナル伝達の阻害またはIL-33により媒介される炎症の阻害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
本明細書で使用される場合、「IL-33アンタゴニスト」(本明細書中で「IL-33阻害剤」または「IL-33ブロッカー」などとも称する)は、IL-33とその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を阻害し、そうした際にはIL-33媒介シグナル伝達を阻害し得る任意の薬剤である。例えば、「IL-33アンタゴニスト」は、IL-33、もしくは「腫瘍形成抑制因子」(「ST2」)と称するIL-33受容体、もしくは「インターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質(「IL-1RAcP」)と称するIL-33受容体、またはIL-33/ST2もしくはST2/IL-1RAcPのいずれかの複合体と結合しまたはそれらと相互作用し得、そうした際にはIL-33媒介シグナル伝達を阻害し得る。
【0154】
IL-33アンタゴニスト分類の非限定的な例としては、小分子IL-33阻害剤、もしくは受容体アンタゴニスト、またはIL-33もしくはIL-33受容体もしくは共受容体のいずれかをコードする核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸(例えば、低分子干渉RNA(siRNA)またはクラスター化され規則的に間隔が空いた短鎖反復回文配列RNA(clustered regularly interspaced short palindromic repeat RNA)(CRISPR-RNAまたはcrRNA)、その全体が参照により本明細書に組み込まれるMaliら(Science.339:823-26,2013)に記載されるようなcrRNAおよびtracrRNA配列を有する一本鎖ガイドRNA(sgRNA)を含む)が挙げられる。他のIL-33アンタゴニストには、IL-33受容体(例えばST2)のリガンド結合部分、IL-33結合足場分子(例えばDARPins、HEATリピートタンパク質、ARMリピートタンパク質、テトラトリコペプチドリピートタンパク質、フィブロネクチンベースの足場構築物、および天然に存在する反復タンパク質ベースの他の足場など[例えば、Boersma and Pluckthun,2011,Curr.Opin.Biotechnol.22:849-857、およびこの中で引用されている参考文献を参照のこと])、ならびに抗IL-33アプタマーまたはその一部が含まれる。
【0155】
IL-33抗体
ある特定の実施形態によれば、本発明との関連で使用することができるIL-33アンタゴニストまたは阻害剤は、ヒトIL-33に特異的に結合する抗IL-33抗体または抗体の抗原結合フラグメントである。本明細書に記載の方法で使用するための例示的な抗IL-33抗体のアミノ酸配列識別子は表1に示され、これらのIL-33抗体をコードする核酸配列識別子は表2に示される。
【0156】
一実施形態においては、本発明の方法で使用するための本明細書に記載される抗IL-33抗体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS9,453,072に開示されている。
【0157】
ある特定の実施形態によれば、本発明の方法で使用される抗IL-33抗体はIL-33に特異的に結合する。「特異的に結合する」またはそれに類する用語は、抗体またはその抗原結合フラグメントが、生理学的条件下で比較的安定である抗原と複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定するための方法は当該技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。例えば、本発明との関連で使用されるIL-33を「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイで測定した場合に、約1000nM未満、約500nM、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のKでIL-33またはその生物学的活性部分に結合する抗体を含む。しかしながら、ヒトIL-33に特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種由来のIL-33分子などの他の抗原に対する交差反応性を有し得る。
【0158】
本発明のある特定の例示的な実施形態によれば、IL-33アンタゴニストは、米国特許第9,453,072号および本明細書に開示の表1に示される抗IL-33抗体のいずれかのアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある特定の実施形態において、IL-33アンタゴニストは、US9,453,072に記載される参照抗体の結合特性を有する抗IL-33抗体である。ある特定の例示的な実施形態において、本発明の方法との関連で使用することができる抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号274のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)、および配列番号282のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。ある特定の実施形態によれば、抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)ならびに3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含み、HCDR1は配列番号276のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号278のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号280のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号284のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号286のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号288のアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態において、抗IL-33抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号274を含むHCVRおよび配列番号282を含むLCVRを含む。
【0159】
一実施形態において、IL-33アンタゴニストは、REGN3500と称するIL-33抗体であり、これは配列番号274のアミノ酸配列を有するHCVRと、配列番号282のアミノ酸配列を有するLCVRと、配列番号276-278-280のアミノ酸配列をそれぞれ有する重鎖相補性決定領域(HCDR1-HCDR2-HCDR3)と、配列番号284-286-288のアミノ酸配列をそれぞれ有する軽鎖相補性決定領域(LCDR1-LCDR2-LCDR3)と、を含む。
【0160】
本明細書に記載される方法で使用することができる他の抗IL-33抗体およびその抗原結合フラグメントは、EP1725261、US8187596、WO2011/031600、WO2015/099175、WO2015/106080(ANB020)、US2016/0168242、WO2016/077381、WO2016/077366、またはWO2016/156440に開示され、これらはそれぞれ参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0161】
IL-33トラップ
ある特定の実施形態によれば、本発明との関連で使用することができるIL-33アンタゴニストまたは阻害剤は、受容体ベースのIL-33トラップ、例えば本明細書に記載されているものなどである。
【0162】
本明細書に記載のIL-33トラップは、ST2と命名されたIL-33受容体タンパク質のIL-33結合部分を含む、少なくとも1つのIL-33結合ドメインを含む。ある特定の実施形態において、IL-33トラップは、IL-1受容体アクセサリータンパク質またはIL-1RAcPと命名されたIL-33共受容体の細胞外部分をさらに含む。IL-33トラップはまた、トラップの様々な成分を互いに連結するように機能する少なくとも1つの多量体化成分を含有し得る。IL-33トラップのさまざまな成分を以下に記載し、図1に示す。
【0163】
一実施形態において、本発明の方法で使用するための本明細書に記載のIL-33トラップは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるUS2014/0271642およびWO2014/152195に開示されている。
【0164】
簡潔に述べると、IL-33トラップは、多量体化ドメイン(M)に結合された第1のIL-33結合ドメイン(D1)を含む。ある特定の実施形態において、本発明のIL-33アンタゴニストは、D1および/またはMに結合された第2のIL-33結合ドメイン(D2)を含む。ある特定の実施形態によれば、D1は、ST2タンパク質のIL-33結合部分を含む。ある特定の実施形態によれば、D2はIL-1RAcPタンパク質の細胞外部分を含む。
【0165】
IL-33トラップの個々の成分は、IL-33に結合することができる機能性アンタゴニスト分子をもたらす様々な方法で互いに対して配置されてもよい。例えば、D1および/またはD2はMのN末端に結合されていてもよい。他の実施形態において、D1および/またはD2はMのC末端に結合されている。さらに他の実施形態において、D1はD2のN末端に結合され、D2はMのN末端に結合され、その結果、NからC末端へと式D1-D2-Mで表されるアンタゴニスト分子の直列型融合がもたらされる。個々の成分の他の位置付けは、図1における本明細書の他の箇所に開示されている。
【0166】
本発明の方法で使用するためのIL-33トラップの非限定的な例は表3aおよび3bに示され、「hST2-hFc」、「hST2-mFc」、「hST2-hIL1RAcP-mFc」、「hST2-hIL1RAcP-hFc」、および「mST2-mIL1RAcP-mFc」と命名されたIL-33トラップを含む。これらは、それぞれ配列番号323、324、325、326、および327に対応する。本発明は、本明細書に示される例示的なIL-33受容体ベースのトラップ(例えば、配列番号323、324、325、326、および327)のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有するIL-33受容体ベースのトラップを含む。
【0167】
標準的な分子生物学的技術(例えば、組換えDNA技術)を使用して、本発明のIL-33トラップのいずれかまたはそのバリアントを構築することができる。
【0168】
本発明の方法で使用するためのIL-33トラップは、少なくとも1つのIL-33結合ドメイン(本明細書では、「D」または「D1」、「D2」などの命名で称することもある)を含む。ある特定の実施形態において、IL-33結合ドメインはST2タンパク質のIL-33結合部分を含む。ST2タンパク質のIL-33結合部分は、ST2タンパク質の細胞外ドメインの全部または一部を含むかまたはそれらからなることができる。ある特定の実施形態において、ST2タンパク質はヒトST2タンパク質である。本明細書で使用される「ヒトST2タンパク質」とは、配列番号352としても示される、受託番号NP_057316.3のアミノ酸1~556に示されるST2タンパク質を指す。ある特定の実施形態において、ST2タンパク質は、非ヒト種由来のST2タンパク質(例えば、マウスST2、サルST2など)である。ST2タンパク質の例示的なIL-33結合部分は、配列番号328のアミノ酸配列(ヒトST2の細胞外ドメインに対応、[NCBI受託番号NP_057316.3のK19-S328])として本明細書に示されている。ST2タンパク質のIL-33結合部分の他の例は、配列番号329のアミノ酸配列(マウスST2の細胞外ドメインに対応、[NCBI受託番号P14719のS27-R332])として本明細書に示されている。
【0169】
ある特定の実施形態において、IL-33結合ドメインはIL-1RAcPタンパク質の細胞外部分を含む。ある特定の実施形態において、IL-1RAcPタンパク質はヒトIL-1RAcPタンパク質である。本明細書で使用される「ヒトIL-1RAcPタンパク質」は、配列番号353のアミノ酸配列を有するIL-1RAcPタンパク質を指す。ある特定の実施形態において、IL-1RAcPタンパク質は、非ヒト種由来のIL-1RAcPタンパク質(例えば、マウスIL-1RAcP、サルIL-1RAcPなど)である。IL-1RAcPタンパク質の例示的な細胞外部分は、配列番号330のアミノ酸配列(ヒトIL-1RAcPの細胞外ドメインに対応、[NCBI受託番号Q9NPH3のS21-E359])として本明細書に示されている。IL-1RAcPタンパク質の細胞外部分の別の例は、配列番号331のアミノ酸配列(マウスIL-1RAcPの細胞外ドメインに対応、[NCBI受託番号Q61730のS21-E359])として本明細書に示されている。
【0170】
本発明は、本明細書に示される例示的なIL-33結合ドメイン成分のアミノ酸配列(例えば、配列番号328、329、330、および331)のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有するD1および/またはD2成分を含む、IL-33トラップを含む。
【0171】
本発明のIL-33アンタゴニストはまた、少なくとも1つの多量体化ドメイン(本明細書では略語「M」、「M1」、「M2」などと称することもある)を含む。一般に、本発明の多量体化ドメイン(複数可)は、IL-33アンタゴニストの様々な成分(例えば、IL-33結合ドメイン(複数可))を互いに連結するように機能する。本明細書で使用される場合、「多量体化ドメイン」は、同一もしくは類似の構造または構成の第2の多量体化ドメインと(共有的にまたは非共有的に)結合する能力を有する任意の高分子である。例えば、多量体化ドメインは、免疫グロブリンC3ドメインを含むポリペプチドであり得る。多量体化ドメインの非限定的な例は、免疫グロブリンのFc部分、例えばアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるIgGのFcドメイン、ならびに各アイソタイプ群内の任意のアロタイプである。
【0172】
本発明のIL-33アンタゴニストにおいて使用され得る非限定的な例示的多量体化ド
メインとしては、ヒトIgG1 Fc(配列番号332)またはマウスIgG2 Fc(配列番号333)が挙げられる。本発明は、本明細書に示される例示的なM成分のアミノ酸配列(例えば、配列番号332または333)のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有するM成分を含む、IL-33アンタゴニストを含む。
【0173】
ある特定の実施形態において、本発明のIL-33アンタゴニストは、2つの多量体化ドメインM1およびM2を含み、ここでM1およびM2は互いに同一である。例えば、M1は特定のアミノ酸配列を有するFcドメインであり得、M2はM1と同じアミノ酸配列を有するFcドメインである。
【0174】
本発明のIL-33アンタゴニストの個々の成分(例えば、D1、D2、Mなど)は、様々な方法で互いに対して配置し得る。上記の全ての配置構成の非限定的な例が図1に図示されている。
【0175】
2つの多量体化ドメイン(M1およびM2)および4つのIL-33結合ドメイン(D1、D2、D3、およびD4)を含む本発明の方法で使用するためのIL-33トラップの非限定的な実例も図1に示す(配置CおよびD)。
【0176】
本発明のIL-33トラップの個々の成分(例えば、D1、D2、M1、M2など)は互いに直接結合されてもよいし(例えば、D1および/またはD2はMなどに直接結合されてもよい)、あるいは、個々の成分はリンカー成分を介して互いに結合されてもよい(例えば、D1および/またはD2は個々の成分の間に位置付けられているリンカーを介してMに結合されてもよく、D1はリンカーを介してD2に結合されてもよいなど)。1つの成分が別の成分に「結合される」と記載されている本明細書に開示される配置のいずれにおいても、(たとえ特にそのように表されていなくても)結合はリンカーを介することができる。本明細書中で使用される場合、「リンカー」は2つのポリペプチド成分を一緒に繋げる任意の分子である。
【0177】
本発明の方法で使用するためのIL-33トラップの生物学的特徴は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるUS2014/0271642およびWO2014/152195に記載されている。
【0178】
他のIL-33アンタゴニスト
IL-33および/またはその受容体(ST2および/またはIL-1 RAcP)に結合して、リガンド-受容体相互作用を阻止するポリペプチドは、IL-33アンタゴニストとみなされ、参照によりその全体が組み込まれるWO2014/152195に記載されている。IL-33アンタゴニストとして作用し、本発明の方法で使用し得る他の薬剤としては、イムノアドヘシン、ペプチボディ、および可溶性ST2、もしくはそれらの誘導体、抗IL-33受容体抗体(例えば、抗ST2抗体、例えば、AMG-282(Amgen)もしくはSTLM15(Janssen))、またはそれらの全体がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるWO2012/113813、WO2013/173761、WO2013/165894、US8,444,987、またはUS7,452,980に記載されている抗ST2抗体のいずれかが挙げられる。本発明の方法で使用するための他のIL-33アンタゴニストには、それぞれ参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるWO2013/173761またはWO2013/165894に記載されているものなどのST2-Fcタンパク質が含まれる。
【0179】
IL-4Rアンタゴニスト
本明細書で使用される場合、「IL-4Rアンタゴニスト」(本明細書では「IL-4R阻害剤」、「IL-4Rαアンタゴニスト」、「IL-4Rブロッカー」、「IL-4Rαブロッカー」などとも称する)は、IL-4RαまたはIL-4Rリガンドに結合または相互作用し、1型および/または2型のIL-4受容体の正常な生物学的シグナル伝達機能を阻害または減弱する任意の薬剤である。本明細書で使用される「ヒトIL-4R」または「hIL-4R」との用語は、配列番号347のアミノ酸配列を有するIL-4Rまたはその生物学的に活性なフラグメントを指す。1型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびγc鎖を含む二量体受容体である。2型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびIL-13Rα1鎖を含む二量体受容体である。1型IL-4受容体はIL-4と相互作用し、IL-4によって刺激される一方、2型IL-4受容体はIL-4およびIL-13の両方と相互作用し、それらの両方によって刺激される。したがって、本発明の方法で使用することができるIL-4Rアンタゴニストは、IL-4媒介シグナル伝達、IL-13媒介シグナル伝達、またはIL-4およびIL-13媒介シグナル伝達の両方を阻止することによって機能し得る。したがって、本発明のIL-4Rアンタゴニストは、IL-4および/またはIL-13と1型または2型受容体との相互作用を妨げ得る。
【0180】
IL-4Rアンタゴニストの分類の非限定的な例には、小分子IL-4Rアンタゴニスト、IL-4Rの発現もしくは活性の核酸ベースの阻害剤(例えば、siRNAまたはアンチセンス)、IL-4Rと特異的に相互作用するペプチドベースの分子(例えば、ペプチボディ)、「レセプターボディ」(例えば、IL-4R成分のリガンド結合ドメインを含む工学操作された分子)、IL-4R結合足場分子(例えば、DARPin、HEATリピートタンパク質、ARMリピートタンパク質、テトラトリコペプチドリピートタンパク質、フィブロネクチンベースの足場構築物、および天然に存在するリピートタンパク質に基づく他の足場など[例えば、Boersma and Pluckthun,2011,Curr.Opin.Biotechnol.22:849-857、およびこの中で引用されている参考文献を参照のこと]、ならびに抗IL-4Rアプタマーまたはその一部が含まれる。ある特定の実施形態によれば、本発明との関連で使用することができるIL-4Rアンタゴニストは、ヒトIL-4Rに特異的に結合する抗IL-4R抗体または抗体の抗原結合フラグメントである。
【0181】
一実施形態において、本発明の方法で使用するために本明細書に開示される抗IL-4R抗体はデュピルマブである(米国特許第7,605,237号、同第7,608,693号、および同第9,290,574号も参照のこと)。
【0182】
抗IL-4R抗体
本発明のある特定の例示的実施形態によれば、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rαに特異的に結合する抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントである。「特異的に結合する」または同様の用語は、抗体またはその抗原結合フラグメントが、生理学的条件下で比較的安定である抗原と複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定するための方法は当該技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。例えば、本発明との関連で使用されるIL-4Rαを「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイで測定した場合に、約1000nM未満、約500nM、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のKでIL-4Rαまたはその生物学的活性部分に結合する抗体を含む。しかしながら、ヒトIL-4Rαに特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種由来のIL-4Rα分子などの他の抗原に対する交差反応性を有し得る。
【0183】
本発明のある特定の例示的な実施形態によれば、IL-4Rアンタゴニストは、米国特許第7,605,237号および同第7,608,693号に示される抗IL-4R抗体のアミノ酸配列のいずれかを含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある特定の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、本明細書でデュピルマブと称する参照抗体の結合特性を有する抗IL-4R抗体である(US7,605,237およびUS7,608,693を参照のこと)。ある特定の例示的な実施形態において、本発明の方法との関連で使用することができる抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号337のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)、および配列番号338のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。ある特定の実施形態によれば、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)ならびに3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含み、HCDR1は配列番号339のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号340のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号341のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号342のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号343のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号344のアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態において、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号337を含むHCVRおよび配列番号338を含むLCVRを含む。さらに他の実施形態において、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号335を含むHCVRおよび配列番号336を含むLCVRを含む。さらに他の実施形態において、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号345に示される重鎖(HC)アミノ酸配列および配列番号346に示される軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む。ある特定の例示的な実施形態によれば、本発明の方法は、デュピルマブと称され当該技術分野で既知の抗IL-4Rα抗体またはその生物学的等価物の使用を含む。デュピルマブは、配列番号337のアミノ酸配列を有するHCVRと、配列番号338のアミノ酸配列を有するLCVRと、配列番号339-340-341のアミノ酸配列をそれぞれ有する重鎖相補性決定領域(HCDR1-HCDR2-HCDR3)と、配列番号342-343-344のアミノ酸配列をそれぞれ有する軽鎖相補性決定領域(LCDR1-LCDR2-LCDR3)と、を含む。
【0184】
本発明の方法との関連で使用することができる他の抗IL-4Rα抗体としては、例えば、AMG317と称されて当該技術分野で既知の抗体(Corren et al.,2010,Am J Respir Crit Care Med.,181(8):788-796))、もしくはMEDI9314、または米国特許第7,186,809号、米国特許第7,605,237号、米国特許第7,638,606号、米国特許第8,092,804号、米国特許第8,679,487号、もしくは米国特許第8,877,189号に示される抗IL-4Rα抗体のいずれかが挙げられる。
【0185】
抗IL-4および/または抗IL-33抗体のpH依存特性
本発明の方法との関連で使用される抗IL-4RαおよびIL-33抗体は、pH依存性の結合特性を有し得る。例えば、本発明の方法で使用するための抗IL-4Rα抗体または抗IL-33抗体は、中性pHと比較して、酸性pHでそれぞれIL-4RαまたはIL-33への結合の低下を示し得る。あるいは、本発明の抗IL-4Rα抗体または本発明の抗IL-33抗体は、中性pHと比較して、酸性pHでその抗原への結合の増強を示し得る。「酸性pH」との表現は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満のpH値を含む。本明細書で使用される場合、「中性pH」との表現は、約7.0~約7.4のpHを意味する。「中性pH」との表現は、約7.0、7.
05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0186】
ある特定の場合において、「中性pHと比較した、酸性pHでのIL-4Rαへの結合の低下」または「中性pHと比較した、酸性pHでのIL-33への結合の低下」とは、中性pHでのそれぞれIL-4RαまたはIL-33に結合する抗体のK値に対する、酸性pHでのそれぞれIL-4RαまたはIL-33に結合する抗体のK値の比(またはその逆)に関して表される。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の目的のためには、抗体またはその抗原結合フラグメントが約3.0以上の酸性/中性K比を示す場合、「中性pHと比較した、酸性pHでのIL-4Rαへの結合の低下」または「中性pHと比較した、酸性pHでのIL-33への結合の低下」を示すとみなし得る。ある特定の例示的実施形態において、本発明の抗体または抗原結合の酸性/中性K比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0、またはそれ以上であり得る。
【0187】
pH依存性結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHで特定の抗原への結合の低下(または増強)について抗体の集団をスクリーニングすることによって得ることができる。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾は、pH依存的特徴を有する抗体を産生し得る。例えば、抗原結合ドメイン(例えばCDR内)の1つ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHに対して酸性pHで抗原結合が低下した抗体を得ることができる。本明細書で使用される場合、「酸性pH」との表現は6.0以下のpHを意味する。
【0188】
併用療法で使用されるIL-33およびIL-4Rアンタゴニストの生物学的効果
本発明は、炎症状態を処置するためのIL-4Rアンタゴニストと組み合わせたIL-33アンタゴニストの使用を含む。一実施形態において、線維症および肺炎症の動物モデルにおける抗IL4R抗体と組み合わせた抗IL-33抗体の使用は、それぞれの抗体を単独療法として単独で使用した場合に得られる結果と比較して効力の増強を示す。
【0189】
例えば、本明細書に記載の動物モデル(肺炎症および線維症のイエダニ(HDM)モデルと称する)では、肺におけるある特定のサイトカインのレベルが有意に上昇する。これには、IL-4、IL-5、IL-6、IL-1β、およびMCP-1の上昇が含まれる。イエダニアレルゲンの投与後に、マウスの肺中のIL-13およびTNFαレベルの増加傾向も見られた。しかしながら、このモデルで試験した場合、IL-33抗体およびIL-4R抗体の組み合わせの使用は、処置マウスの肺におけるサイトカインIL-4、IL-5、IL-6、IL-13、IL-1β、MCP-1、およびTNFαのレベルの低下をもたらした。実施例4に示されるように、抗IL-33抗体および抗IL-4R抗体との組み合わせで観察された肺サイトカインレベルに対する効果は、単独で使用した場合のいずれかの個々の抗体による処置よりも大きかった。
【0190】
さらに、イエダニアレルゲンを受けたマウスでは、Il4、Il13、Il6、Ccl2、Tgfb1、Il13ra2、およびCol24a1を含むサイトカイン遺伝子、ケモカイン遺伝子、およびコラーゲン遺伝子のレベルが上昇した。このモデルでは、Il5、Il9、Ccl11、Ccl24、Tnf、Il1rl1、およびCol15a1のレベルの増加傾向が見られた。抗IL-33抗体および抗IL-4R抗体の組み合わせで処置した場合、いずれかの抗体単独での処理によって観察されるレベルと比較して、Il6、Ccl2、Ccl11、およびCcl24の発現が有意に減少した。マウスを抗IL-
33抗体および抗IL-4R抗体で処置した場合、いずれかの抗体単独での処置と比較して、Il4、Il5、Il13、Il9、Tnf、Tgfb1、Il1rl1、Il13ra2、Col15a1、およびCol24a1の減少傾向も見られた。
【0191】
イエダニモデルの肺細胞浸潤物について分析を行ったとき、抗IL-33抗体および抗IL-4R抗体の組み合わせの使用に関連する別の生物学的効果が観察された。実施例4に示されるように、好酸球、活性化B細胞、活性化CD8細胞、ST2+CD4+T細胞、およびCD4/CD8T細胞比の頻度は、イエダニアレルゲンを受けたマウスにおいて有意により高かった。イエダニアレルゲンを与えたマウスの肺における活性化CD4+T細胞の頻度の増加傾向も見られた。抗IL-33抗体および抗IL-4R抗体の両方で処置したマウスでは、いずれかの抗体を単独で使用した場合に観察されるものと比較して、好酸球、活性化B細胞、活性化CD8細胞、ST2+CD4+T細胞、およびCD4/CD8T細胞比の頻度の減少傾向が見られた。
【0192】
さらに、イエダニアレルゲンを受けたマウスは、それらの肺における杯細胞化生の増加も示す。同様に、このマウスモデルでは、肺硬化(肺胞腔における固体または液体材料の蓄積)および上皮下線維症(肺上皮下の過剰な間質性コラーゲン沈着)も増加した。抗IL-4R抗体と組み合わせた抗IL-33抗体でのこれらのマウスの処置は、2つの抗体のいずれかを単独で使用した場合に観察される結果と比較して、杯細胞化生および上皮下コラーゲンの厚さの減少および肺硬化の有意な減少をもたらした。
【0193】
イエダニアレルゲンを受けたマウスは、IgEの循環レベルの増加、およびイエダニ(HDM)特異的IgG1の増加傾向も示した。抗IL-33抗体およびIL-4R抗体の両方の投与は、これらの抗体のいずれかを単独で使用した場合に観察されるIgEおよびHDM特異的IgG1のレベルと比較して、血清IgEレベルの有意な減少およびHDM特異的IgG1の減少傾向をもたらした。
【0194】
炎症性肺障害または状態を処置する併用療法として使用するための本明細書に記載の抗体などのIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストは、IL-33媒介シグナル伝達およびIL-4R媒介シグナル伝達を阻害または減弱することができ、本明細書に記載のモデルで観察される生物学的特性、例えば、(1)アレルゲンへの曝露の結果として哺乳動物において上昇するサイトカイン、例えばIL-4またはIL-5のレベルの低下、(2)アレルゲン(例えば、イエダニ(HDM))への急性または慢性の曝露に起因する肺炎症の阻害、(3)アレルゲン(例えば、イエダニ(HDM))への急性または慢性の曝露に起因する細胞肺浸潤の減少、(4)複合的な肺肉眼病変の改善のうちの1つ以上を示し得る。
【0195】
IL-33媒介シグナル伝達またはIL-4R媒介シグナル伝達の阻害は、細胞ベースのバイオアッセイで測定することができ、抗IL-33抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは抗IL-4R抗体もしくはその抗原結合フラグメントが、IL-33受容体またはIL-4受容体およびIL-33結合またはIL-4結合に応答して、検出可能なシグナルを産生するレポーター要素を発現する細胞中で生じるシグナルを阻害または低減することを意味する。例えば、本発明は、細胞ベースの阻止バイオアッセイで測定した場合に、ヒトST2を発現する細胞またはIL-4受容体を発現する細胞において、それぞれ約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約350pM未満、約300pM未満、約250pM未満、約200pM未満、約150pM未満、約100pM未満、約90pM未満、約80pM未満、約70pM未満、約60pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM、または約10pM未満のIC50でIL-33媒介シグナル伝達またはIL-4媒介シグナル伝達を阻止する抗体およびそ
の抗原結合フラグメントを含む。
【0196】
本発明の抗体は、上述の生物学的効果のうちの1つ以上またはそれらの任意の組み合わせを示し得る。本発明の抗体の他の生物学的効果は、本明細書の実施例を含む本開示の精査から当業者に明らかであろう。IL-4アンタゴニストと組み合わせた他のIL-33アンタゴニストの使用は同様の効果を示し得る。
【0197】
医薬組成物および投与
本発明は、本発明のIL-33アンタゴニストおよび/またはIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を提供する。IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストは、別々の組成物中で製剤化されてもよいし、または1つの組成物中で共製剤化されてもよい。本発明の医薬組成物は、好適な担体、賦形剤、および改善された移動、送達、耐性などを提供する他の薬剤とともに製剤化される。多くの適切な製剤は、製薬化学者全員に既知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて認めることができる。これらの製剤には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、ベシクル(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CAなど)を含有する脂質(カチオン性またはアニオン性)、DNA複合体、無水吸収ペースト、水中油エマルションおよび油中水エマルション、エマルションカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含有する半固体混合物が含まれる。Powell et al.「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311を参照のこと。
【0198】
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢および体格、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変わり得る。好ましい用量は、典型的には体重または体表面積に従って計算される。本発明の抗体が成人患者におけるIL-33活性もしくはIL-4に関連する状態または疾患を処置するために使用される場合、該抗体を通常は約0.01~約20mg/kg体重の単回投与で、より好ましくは約0.02~約7、約0.03~約5、または約0.05~約3mg/kg体重で投与することが有利であり得る。状態の重症度に応じて、処置の頻度および期間を調整することができる。抗IL-33抗体を投与するための有効投与量およびスケジュールは経験的に決定することができ、例えば、患者の経過を定期的な評価によってモニタリングし、それに応じて用量を調整することができる。さらに、投与量の種間スケーリングは、当該技術分野において周知の方法を用いて実施することができる(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0199】
種々の送達系が既知であり、本発明の医薬組成物を投与するために使用することができ、例えば、リポソーム封入、マイクロパーティクル、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシスである(例えば、Wu
et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照のこと)。導入方法には、皮内経路、経皮経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、例えば、注入もしくはボーラス注射、上皮または粘膜皮膚内層(linings)(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収による任意の好都合な経路によって投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与することができる。投与は全身または局所であり得る。
【0200】
本発明の医薬組成物は、標準的な針および注射器を用いて皮下にまたは静脈内に送達す
ることができる。加えて、皮下送達に関して、ペン送達装置は、本発明の医薬組成物を送達する上での適用を容易に有する。このようなペン送達装置は、再利用可能または使い捨て可能であり得る。再利用可能なペン送達装置は、概して、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを使用する。いったん、カートリッジ内の医薬組成物が全て投与され、カートリッジが空になると、この空のカートリッジは容易に廃棄することができ、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと容易に交換することができる。次に、ペン送達装置は再利用することができる。使い捨て可能ペン送達装置において、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨て可能ペン送達装置は、この装置内の貯蔵器の中に保持された医薬組成物が事前に充填されている。いったん、貯蔵器が医薬組成物に関して空になると、装置全体が廃棄される。
【0201】
数多くの再利用可能なペン送達装置および自動注射送達装置は、本発明の医薬組成物の皮下送達における応用を有する。例としては、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)pen(Disetronic Medical Systems,Bergdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)pen、HUMALOG(商標)pen、HUMALIN 70/30(商標)pen(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I,IIおよびIII(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)pen(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN
PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis,Frankfurt,Germany)が挙げられるが、これらに限定されず、ほんの数種類しか挙げていない。本発明の医薬組成物のおおよその送達での応用を有する使い捨て可能ペン型送達装置の例としては、いくつか例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注射器(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs,Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0202】
ある特定の状況において、医薬組成物は徐放系で送達することができる。一実施形態において、ポンプを使用することができる(Langer,supra;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照のこと)。別の実施形態において、ポリマー材料を使用することができる。Medical Applications of Controlled Release,Langer
and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態において、徐放系を組成物の標的の近傍に配置することができ、それによって全身用量のほんの一部のみが必要となる(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications
of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115-138を参照のこと)。他の徐放系は、Langer,1990,Science249:1527-1533による総説で論じられている。
【0203】
注射可能な調製物には、静脈内注射、皮下注射、皮内注射および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形が含まれ得る。これらの注射可能な調製物は、公的に既知の方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射用に従来通り使用される滅
菌水性媒体または油性媒体中に上述の抗体またはその塩を溶解、懸濁または乳化させることによって調製され得る。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース含有等張液、および他の補助剤などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用され、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。このように調製された注射は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0204】
有利なことに、先に説明した経口または非経口での使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適合するのに適した単位用量の剤形へと調製される。そのような単位用量の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐薬などが挙げられる。前述の含有されるアンタゴニストの量は一般に、単位用量の剤形当たり約5~約500mgであり、特に注射の形態では、前述のアンタゴニストは約5~約100mgで含有されることが好ましく、他の剤形では約10~約250mgで含有されることが好ましい。
【0205】
投与量
本発明の方法に従って対象に投与されるIL-33およびIL-4Rアンタゴニストの量は、一般には治療有効量である。本明細書で使用される場合、「治療有効量」との語句は、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストを組み合わせて使用する場合に、本明細書に記載されるような以下のうちの1つ以上に有意な変化をもたらすIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの量を意味する、(a)炎症の予防、(b)炎症の処置または重症度の軽減、(c)肺における好酸球、活性化B細胞、活性化CD8T細胞、またはCD4/CD8T細胞比のうちの1つ以上の頻度の減少、(d)インターロイキン-1ベータ(IL-1β)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン13(IL-13)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、または腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)のうちの1つ以上の減少、(e)肺におけるIl4、ll5、Il6、Il9、Il13、Il1rl1、Il13ra2、tnf、Tgfb1、Ccl2、Ccl11、Ccl24、Col15a1、またはCol24a1のうちの1つ以上の遺伝子発現レベルの低下、(f)血清IgEレベルの低下、(g)肺における杯細胞化生の減少、または(h)肺硬化の減少。IL-33アンタゴニスト単独またはIL-4Rアンタゴニストのいずれかの投与は、上記のパラメータのうちの1つ以上を用いて測定した場合に陽性の治療効果をもたらし得るが、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストを組み合わせて使用すると、IL-33アンタゴニスト単独またはIL-4Rアンタゴニスト単独のいずれかでの単独療法を用いて観察されるものと比較して、それらパラメータのうちのいずれか1つ以上において有意な改善(例えば相加または相乗効果)を示す。
【0206】
IL-33アンタゴニストまたはIL-4Rアンタゴニストの場合、治療有効量は、約0.05mg~約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約4
00mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgであり得る。ある特定の実施形態において、75mg、150mg、200mg、または300mgのIL-4Rアンタゴニストが、IL-33アンタゴニストと組み合わせて対象に投与される。ある特定の実施形態において、75mg、150mg、200mg、または300mgのIL-33アンタゴニストが、IL-4Rアンタゴニストと組み合わせて対象に投与される。
【0207】
個々の用量に含有されるIL-33アンタゴニストまたはIL-4Rアンタゴニストの量は、患者の体重キログラム当たりの抗体のミリグラム数(すなわち、mg/kg)で表すことができる。例えば、IL-33アンタゴニストまたはIL-4Rアンタゴニストは、約0.0001mg/kg~約25mg/kg患者体重の用量で患者に投与され得る。ある特定の実施形態において、IL-4RおよびIL-33アンタゴニストはそれぞれ、約0.1mg/kg、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg、または10mg/kgの用量で投与され得る。
【0208】
IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの組み合わせは、対象に皮下、静脈内、筋肉内、または鼻腔内投与され得る。それらは同時または逐次投与され得る。
【0209】
抗体の治療的使用
本発明者らが行ったマウスモデル系を用いた実験は、IL-33およびIL-4R拮抗作用の組み合わせによって処置、予防、および/または寛解することができる様々な疾患および状態の同定に資するものであった。例えば、肺炎症および線維症のイエダニモデルにおいて、IL-33抗体およびIL-4R抗体の組み合わせで処置することにより、それぞれの抗体を単独療法として単独で使用したときに得られる効果と比較して、肺におけるサイトカインレベルの減少、肺における肺細胞浸潤物(好酸球、活性化B細胞、活性化CD8陽性細胞、ST2+CD4+T細胞、およびCD4/CD8T細胞比)の減少、ならびに肺硬化および上皮下線維症の改善がもたらされた。
【0210】
本発明の抗体は、特に、IL-33発現およびIL-4発現、シグナル伝達、もしくは活性に関連するまたはそれらによって媒介される任意の疾患または障害、あるいはIL-33とIL-33受容体(例えばST2)との間の相互作用を阻止することにより、もしくはIL-4とIL-4受容体との間の相互作用を阻止することにより、またはIL-33およびIL-4の活性および/もしくはシグナル伝達を阻害することにより処置可能な任意の疾患または障害の処置、予防、および/または寛解に有用である。ある特定の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rαに結合しまたはこれと相互作用し、その際にはIL-4R1型および2型受容体を介してIL-4およびIL-13シグナル伝達経路の両方を阻止する抗体である。したがって、この二重のIL-4およびIL-13アンタゴニストをIL-33アンタゴニストと組み合わせて使用すると、3つ全てのシグナル伝達経路により一部媒介される炎症状態を有する患者に投与された場合、さらなる臨床的利益を提供し得る。例えば、本発明は、喘息(アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息、重症難治性喘息、喘息増悪、ステロイド抵抗性もしくはステロイド難治性喘息、ステロイド感受性喘息、好酸球性喘息または非好酸球性喘息など)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)およびCOPDの増悪、喘息およびCOPDオーバーラップ症候群(ACOS)、慢性気管支炎、気腫、過敏性肺炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、乾癬、アレルギー、アレルギー性鼻炎、鼻ポリープを伴うまたは伴わない慢性鼻副鼻腔炎、好酸球性食道炎、アナフィラキシー、心血管疾患、中枢神経系疾患、疼痛(炎症性疼痛を含む)、関節炎(例えば、リウマチ性関節炎、変形性関節症、乾癬性関節炎など)、巨細胞性動脈炎、
血管炎(ベーチェット病およびチャーグ・ストラウス症候群)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、多発性硬化症、炎症性腸障害(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)、狼瘡、シェーグレン症候群、ならびにIL-33および/またはIL-4シグナル伝達によって一部媒介される他の炎症性疾患または障害を処置するための方法を提供する。
【0211】
本発明の抗体はまた、1つ以上の線維性疾患または障害の処置、予防、および/または寛解に有用である。本発明の抗IL-33およびIL-4Rアンタゴニストを投与することによって処置可能な例示的な線維性疾患または障害としては、肺線維症(例えば、特発性肺線維症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、アスベスト誘導性肺線維症、および閉塞性細気管支炎症候群)、急性肺損傷および急性呼吸窮迫に関連する線維症(例えば、細菌性肺炎誘導性線維症、外傷誘導性繊維症、ウイルス性肺炎誘導性線維症、人工呼吸器誘導性線維症、非肺性敗血症誘導性線維症、および誤嚥誘導性線維症)、珪肺症、放射線誘導性線維症、強皮症、眼線維症、皮膚線維症(例えば、強皮症)、肝線維症(例えば、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変、感染症またはウイルス誘導性肝線維症、自己免疫性肝炎、腎臓(腎)線維症、心臓線維症、アテローム性動脈硬化症、ステント再狭窄、ならびに骨髄線維症が挙げられる。
【0212】
本明細書に記載される処置方法との関連において、抗IL-33抗体およびIL-4R抗体は、一緒に(すなわち、唯一の治療計画として)、または1つ以上の追加の治療剤(この例は本明細書の他の箇所に記載されている)と組み合わせて投与されてもよい。
【0213】
併用療法
本発明は、本明細書に記載される抗IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストのいずれかを1つ以上の追加の治療活性成分と組み合わせて含む組成物および治療用製剤の使用、ならびにそのような組み合わせを処置が必要な対象に投与することを含む処置方法を含む。本明細書で使用される場合、「組み合わせて」との表現は、追加の治療剤が、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の前、後、またはそれと同時に投与されることを意味する。「組み合わせて」との用語はまた、IL-4RアンタゴニストおよびIL-33アンタゴニスト、ならびに1つ以上の追加の治療剤の逐次または同時投与を含む。本発明は、本発明のIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストが追加の治療活性成分(複数可)のうちの1つ以上とともに共製剤化された医薬組成物を含む。
【0214】
例えば、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の「前」に投与される場合、追加の治療剤は、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の約72時間前、約60時間前、約48時間前、約36時間前、約24時間前、約12時間前、約10時間前、約8時間前、約6時間前、約4時間前、約2時間前、約1時間前、約30分前、約15分前、または約10分前に投与され得る。IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の「後」に投与される場合、追加の治療剤は、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の約10分後、約15分後、約30分後、約1時間後、約2時間後、約4時間後、約6時間後、約8時間後、約10時間後、約12時間後、約24時間後、約36時間後、約48時間、約60時間後、または約72時間後に投与され得る。IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物と「同時に」またはこれとともに投与することは、追加の治療剤が、対象に別々の剤形で、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の5分未満以内(前、後、または同時)に投与されるか、または追加の治療剤とIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストとの両方を含む単一の組み合わせ投与製剤として対象に投与されることを意味する。
【0215】
追加の治療剤は、例えば、別のIL-33アンタゴニスト、別のIL-4Rアンタゴニスト、IL-1アンタゴニスト(例えば、US6,927,044に示されるIL-1アンタゴニストを含む)、IL-6アンタゴニスト、IL-6Rアンタゴニスト(例えば、US7,582,298に示される抗IL-6R抗体を含む)、IL-13アンタゴニスト、TNFアンタゴニスト、IL-8アンタゴニスト、IL-9アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、IL-5アンタゴニスト(例えば、メポリズマブまたはNUCALA(登録商標))、IgEアンタゴニスト(例えば、オマリズマブまたはXOLAIR(登録商標))、CD48アンタゴニスト、IL-31アンタゴニスト(例えば、US7,531,637に示されるものを含む)、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)アンタゴニスト(例えば、US2011/027468に示されるものを含む)、インターフェロン-ガンマ(IFNγ)、抗生物質、コルチコステロイド(吸入コルチコステロイドまたはICSを含む)、長時間作用型β2アドレナリンアゴニスト(LABA)、長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)、タクロリムス、ピメクロリムス、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、クロモリンナトリウム、プロテイナーゼ阻害剤、抗ヒスタミン薬、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0216】
投与計画
本発明のある特定の実施形態によれば、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニスト(またはIL-33アンタゴニスト、IL-4Rアンタゴニスト、および本明細書に言及されている追加の治療活性剤のいずれかの組み合わせを含む医薬組成物)の複数回用量を規定の時間経過にわたって対象に投与し得る。本発明のこの態様による方法は、本発明のIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの複数回用量を対象に逐次投与することを含む。本明細書で使用される場合、「逐次投与する」とは、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの各用量が、所定の間隔(例えば、数時間、数日間、数週間または数ヶ月間)により隔てられた異なる時点、例えば、異なる日に対象に投与されることを意味する。本発明には、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの1回の1次用量、続いてIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの1回以上の2次用量、続いて任意選択によりIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの1回以上の3次用量を患者に逐次投与することを含む方法が含まれる。
【0217】
「1次用量」、「2次用量」、および「3次用量」との用語は、本発明のIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの投与の時系列を指す。したがって、「1次用量」とは、処置計画の開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも称する)であり、「2次用量」とは、1次用量後に投与される用量であり、「3次用量」とは、2次用量後に投与される用量である。1次用量、2次用量、および3次用量は全て、同じ量のIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストを含有し得るが、一般には投与頻度の点から互いに異なり得る。しかしながら、ある特定の実施形態において、1次用量、2次用量、および/または3次用量に含有されるIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの量は、処置経過の間、互いに変動する(例えば、適宜上下に調整される)。ある特定の実施形態において、2回以上(例えば、2回、3回、4回、または5回)の用量が処置計画の開始時において「負荷用量(loading dose)」として投与され、続いてより低い頻度に基づいて投与される後続用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
【0218】
本発明のある特定の例示的な実施形態において、各2次用量および/または3次用量は、直前の投与の1~26週間後(例えば、1、1・1/2、2、2・1/2、3、3・1/2、4、4・1/2、5、5・1/2、6、6・1/2、7、7・1/2、8、8・1/2、9、9・1/2、10、10・1/2、11、11・1/2、12、12・1/2
、13、13・1/2、14、14・1/2、15、15・1/2、16、16・1/2、17、17・1/2、18、18・1/2、19、19・1/2、20、20・1/2、21、21・1/2、22、22・1/2、23、23・1/2、24、24・1/2、25、25・1/2、26、26・1/2週間後、またはそれ以上後)に投与される。本明細書で使用する「直前の投与」との語句は、複数回投与の系列において、投薬の介入をせずに系列中の次の用量の投与前に患者に投与されるIL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの投薬を意味する。
【0219】
本発明のこの態様による方法は、IL-33アンタゴニストおよびIL-4Rアンタゴニストの任意の回数の2次用量および/または3次用量を患者に投与することを含み得る。例えば、ある特定の実施形態において、単回の2次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2回以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回またはそれ以上)の2次用量が患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態において、単回の3次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2回以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回またはそれ以上)の3次用量が患者に投与される。
【0220】
複数回の2次用量を含む実施形態において、各2次用量は他の2次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各2次用量は、直前の投与の1~2週間後または1~2ヶ月後に患者に投与されてもよい。同様に、複数回の3次用量を含む実施形態において、各3次用量は他の3次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各3次用量は、直前の投与の2~12週間後に患者に投与されてもよい。本発明のある特定の実施形態において、2次用量および/または3次用量が患者に投与される頻度は、処置計画の経過にわたって変わり得る。投与頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師によって処置過程の間に調整され得る。
【0221】
本発明は、2~6回の負荷用量が患者に第1の頻度(例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回など)で投与され、続いてより少ない頻度に基づく2回以上の維持用量が患者に投与される、投与計画を含む。例えば、本発明のこの態様によれば、負荷用量が月に1回の頻度で投与される場合、維持用量は6週間に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回などで患者に投与されてもよい。
【実施例0222】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作製および使用するかに関する完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが本発明とみなすことの範囲を制限するよう企図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力はしてきたが、いくつかの実験上の誤差および偏差が考慮されるべきである。別段の記載がない限り、部分は重量部分であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
【0223】
実施例1.ヒトIL-33に対するヒト抗体の生成
ヒト抗IL-33抗体を米国特許第9,453,072号に記載のように生成した。表1は、選択された抗IL-33抗体およびそれらの対応する抗体識別子の重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列対ならびにCDR配列を示す。表2は、選択された抗IL-33抗体およびそれらの対応する抗体識別子の重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列対ならびにCDR配列をコードする核酸配列を示す。
【表1】
【表2】
【0224】
抗体は、典型的には以下の命名法に従って本明細書中で言及される:Fc接頭語(例えば、「H1M」または「H4H」)、続いて数値識別子(例えば、表1に示す「9559」、「9566」、または「9629」)、続いて「P」または「N」接尾語)。したがって、この命名法によれば、抗体は、本明細書において、例えば「H1M9559N」、「H1M9566N」、「H4H9629P」などと言及され得る。本明細書に使用される抗体名のH1MおよびH4Hの接頭語は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H1M」抗体はマウスIgG1 Fcを有するのに対し、「H4H」抗体はヒトIgG4 Fcを有する。当業者によって理解されるように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体へ変換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体は、ヒトIgG4を有する抗体へ変換することができる、など)が、いずれの事象においても、表1に示す数値識別子によって示される可変ドメイン(CDRを含む)は同じままであることになっており、結合特性はFcドメインの性質にかかわらず、同一または実質的に類似であると期待される。
【0225】
実施例2:IL-33アンタゴニスト(IL-33トラップ)の構築
ヒト抗IL-33トラップを米国特許公開第2014/0271642号に記載のように生成した。表3aはIL-33トラップの種々の成分に対するアミノ酸配列識別子の概要を示し、表3bはトラップの全長アミノ酸配列を示す。
【0226】
標準的な分子生物学的技術を用いて、本発明の5つの異なる例示的なIL-33アンタゴニストを構築した。第1のIL-33アンタゴニスト(hST2-hFc、配列番号3
23)は、ヒトIgG1 Fc領域(配列番号332)のN末端に、C末端において融合されたヒトST2の可溶性細胞外領域(配列番号328)からなる。第2のIL-33アンタゴニスト(hST2-mFc、配列番号324)は、マウスIgG2a Fc領域(配列番号333)のN末端に、C末端において融合されたヒトST2の可溶性細胞外領域(配列番号328)からなる。第3のIL-33アンタゴニスト(hST2-hIL1RAcP-mFc、配列番号325)は、そのN末端においてヒトST2(配列番号328)、続いてヒトIL-1RAcPの細胞外領域(配列番号330)、続いてそのC末端においてマウスIgG2a Fc(配列番号333)を有する直列型融合からなる。第4のIL-33アンタゴニスト(mST2-mIL1RAcP-mFc、配列番号326)は、そのN末端においてマウスST2(配列番号329)、続いてマウスIL-1RAcPの細胞外領域(配列番号331)、続いてそのC末端においてマウスIgG2a Fc(配列番号333)を有する直列型融合からなる。第5のIL-33アンタゴニスト(hST2-hIL1RAcP-hFc、配列番号327)は、そのN末端において配列番号328のヒトST2、続いてヒトIL-1RAcPの細胞外領域(配列番号330)、続いてそのC末端においてヒトIgG1 Fc(配列番号332)を有する直列型融合からなる。表3aは、異なるIL-33アンタゴニストおよびそれらの成分部分の概要を示す。表3bは、IL-33アンタゴニストのアミノ酸配列およびそれらの成分部分を示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0227】
実施例3:IL-4Rアンタゴニスト抗体
ヒト抗IL-4R抗体を米国特許第7,608,693号に記載のように生成した。以下の実施例で使用した例示的なIL-4R抗体は、マウスIL-4Rに特異的なマウス抗体であり、以下のアミノ酸配列:配列番号335を含む重鎖可変領域(HCVR)および配列番号336を含む軽鎖可変ドメイン(LCVR)を有する。デュピルマブと称するヒト抗IL-4R抗体は、ヒトIL-4Rαに特異的に結合し、配列番号337を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号338を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、配列番号339を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、配列番号340を含むHCDR2
と、配列番号341を含むHCDR3と、配列番号342を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、配列番号343を含むLCDR2と、配列番号344を含むLCDR3と、を含む。デュピルマブの全長重鎖は配列番号345として示され、全長軽鎖は配列番号346として示される。
【0228】
実施例4:肺炎症におけるIL-33の役割を研究するための慢性イエダニ(HDM)誘導性線維症および重肺炎症モデルー抗IL-33抗体、IL-4R抗体、または両方の組み合わせの効果の比較
慢性炎症性気道疾患は、主にアレルゲンまたは他の病原体への反復した曝露による気道炎症の再発エピソードの結果である。ヒトでは、そのような慢性的な傷害により、免疫細胞による肺浸潤、サイトカイン産生の増加、粘液産生、およびコラーゲン沈着を含む多様な病変が誘導される(Hirota,(2013)Chest.Sep;144(3):1026-32.;Postma,(2015),N Engl J Med.,Sep24;373(13):1241-9)。炎症性サイトカインおよび免疫細胞浸潤のこの増加は、激しい気道リモデリングを伴い、気道狭窄、アレルゲンまたは病原体などの吸入誘発剤への過敏症、気道閉塞、および肺機能の喪失を引き起こす。
【0229】
関連するインビボモデルでの抗IL-33阻害の効果を決定するために、慢性イエダニ抽出物(HDM)誘導性線維症および重度肺炎症ならびにリモデリング研究を、マウスIL-33の代わりにヒトIL-33の発現に関してホモ接合性であるマウス(IL-33HumInマウス;米国特許公開第2015/0320021号および同第2015/0320022号を参照のこと)で行った。慢性的なHDM抽出物曝露は重度肺炎症を誘導し、有意な細胞浸潤、サイトカイン発現、およびリモデリングをもたらす。抗IL-33抗体、抗マウスIL-4Rα抗体、または両方の組み合わせの効果をこのモデルで比較した。この研究で使用される抗マウスIL-4Rα抗体はM1M1875Nと命名され、配列番号335/336のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。この研究で使用された抗IL-33抗体はH4H9675Pと命名され、配列番号274/282のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0230】
IL-33HumInマウスに、20μLの1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した50μgのイエダニ抽出物(HDM;Greer、#XPB70D3A2.5)または20μLの1×PBSを週当たり3日間、15週間のいずれかで鼻腔内投与した。IL-33HumInマウスの第2の対照群に、20μLの1×PBSで希釈した50μgのHDM抽出物を週当たり3日間、11週間投与し、抗体処置の開始時における疾患の重症度を評価した。4群のHDMチャレンジマウスに、25mg/kgの抗IL-33抗体H4H9675P、抗マウスIL-4Rα抗体M1M1875N、両方の抗体の組み合わせ、またはアイソタイプ対照抗体のいずれかを、HDMチャレンジの11週間後から開始してHDMチャレンジの終了まで(4週間の抗体処置)、週当たり2回皮下注射した。研究の108日目に全てのマウスを犠牲死させ、それらの肺を採取した。マウス群に対する実験的投与および処置プロトコルを表4に示す。
【表8】
【0231】
サイトカイン分析のための肺の採取:
重要なメディエーター、例えば、プロトタイプ(prototypic)2型サイトカインIL-4、IL-5、およびIL-13、ならびにIL-1βまたはTNFαなどの1型免疫応答の特性をより示すサイトカインの肺レベルの上昇が、ヒトの肺疾患の発症に関与している(Gandhi,(2016)Nat Rev Drug Discov Jan;15(1):35-50.;Barnes,(2008),Nat Rev Immunol,Mar;8(3):183-92)。これらの炎症性サイトカインの肺レベルを本研究で測定した。
【0232】
放血後、各マウスから右肺の前葉および中葉を取り出し、1×Haltプロテアーゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific,#87786)を補充した組織タンパク質抽出試薬(1×T-PER試薬、Pierce、#78510)の溶液を含有する菅に入れた。全てのさらなる工程を氷上で行った。T-PER試薬(プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する)の体積を、1:7(w/v)の組織対T-PER比に適合するように各試料について調整した。TissueLyserII(Qiagen#85300)を用いて、肺試料を機械的に破砕した。得られた溶解物を遠心分離して、細片をペレット化した。可溶性タンパク質抽出物を含有する上清を新しい管に移し、さらなる分析まで4℃で保存した。
【0233】
Bradfordアッセイを用いて、肺タンパク質抽出物中の総タンパク質含有量を測定した。このアッセイのために、10μLの希釈抽出物試料を96ウェルプレートに2つ組でプレーティングし、200μLの1×Dye Reagent(Biorad、#500-0006)と混合した。1×T-Per試薬中700μg/mLで開始するウシ血清アルブミン(BSA、Sigma、#A7979)の階段希釈物を、抽出物のタンパク
質濃度を決定するための標準として用いた。室温で5分間インキュベートした後、595nmの吸光度をMolecular Devices SpectraMax M5プレートリーダーで測定した。BSA標準に基づく総肺抽出物タンパク質含有量を決定するためのデータ分析は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用いて行った。
【0234】
肺タンパク質抽出物中のサイトカイン濃度は、Proinflammatory Panel1(マウス)マルチプレックスイムノアッセイキット(MesoScale Discovery、#K15048G-2)およびカスタムマウス6plex Multi-Spot(登録商標)イムノアッセイキット(MesoScale Discovery、#K152A41-4)を使用して製造業者の指示に従って測定した。簡潔に述べると、50μL/ウェルの較正物質(calibrator)および試料(希釈液41中で希釈)を、捕捉抗体でプレコーティングし、かつ700rpmで2時間振盪しながら室温でインキュベートしたプレートに加えた。次いで、プレートを0.05%(w/v)のTween-20を含有する1×PBSで3回洗浄し、続いて希釈液45中で希釈にした25μLの検出抗体溶液を加えた。振盪しながら室温で2時間インキュベーションした後、プレートを3回洗浄し、150μLの2×Read Bufferを各ウェルに加えた。電気化学発光をMSD Spector(登録商標)機器で直ちに読み取った。データ分析はGraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。
【0235】
各群の全てのマウス由来の肺総タンパク質抽出物中の各サイトカイン濃度を、Bradfordアッセイにより測定した抽出物の総タンパク質含有量に対して標準化し、表5に示されるように、総肺タンパク質1mg当たりのサイトカインの平均pg(pg/mg肺タンパク質、±SD)として各群について表した。
【0236】
肺サイトカイン分析:
表5に示されるように、HDMを15週間受け、アイソタイプ対照抗体で処置されたまたは処置されていないIL-33HumInマウスの肺で放出されたサイトカインおよびケモカインIL-4、IL-5、IL-6、IL-1β、およびMCP-1のレベルは、1×PBS単独でチャレンジしたIL-33HumInマウスよりも有意に高かった。同様に、15週間HDMを受けたIL-33 HumInマウスの肺でサイトカインIL-13およびTNFαの放出の増加傾向が見られた。対照的に、慢性的HDMチャレンジの最後の4週間中に抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで処置したIL-33 HumInマウスの肺におけるIL-6、IL-13、およびMCP-1のレベルは、この期間中にアイソタイプ対照抗体とともにHDMを投与したIL-33HumInマウスと比較して有意に減少した。慢性的HDMチャレンジの最後の4週間中に抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで処置したIL-33
HumInマウスでのIL-4、IL-5、IL-1β、およびTNFαの肺レベルは、この期間中にアイソタイプ対照抗体とともにHDMを投与されたIL-33HumInマウスと比較して低下傾向が見られた。抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで観察された肺サイトカインに対する効果は、いずれかの個々の抗体単独での処置よりも大きかった。
【表9】
【0237】
遺伝子発現分析のための肺の採取
放血後、各マウスから右肺の副葉を取り出し、400μLのRNA Later(Ambion、#AM7020)を含有する管に入れ、処理まで-20℃で保存した。組織を
TRIzol中でホモジナイズし、クロロホルムを相分離に用いた。全てのRNAを含有する水相を、MagMAX(商標)-96 for Microarrays Total RNA Isolation Kit(Ambion by Life Technologie、#AM1839)を用いて、製造業者の仕様書に従って精製した。MagMAX(商標)Turbo(商標)DNase BufferおよびTURBO DNaseを用いて、上記のMagMAXキットから、ゲノムDNAを取り出した。SuperScript(登録商標)VILO(商標)Master Mix(Invitrogen by Life Technologies、#11755500)を用いて、mRNA(2.5μg以下)をcDNAに逆転写した。 cDNAを2ng/μLに希釈し、10ngのcDNAを、TaqMan(登録商標)Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems by Life Technologies、#4369542)および関連するプローブ(Life Technologies;マウスB2m:Mm00437762_m1;マウスIl4:Mm00445259_m1;マウスIl5:Mm00439646_m1;マウスIl13:Mm00434204_m1;マウスIl9:Mm00434305_m1;マウスIl6:Mm00446190_m1;マウスCcl2:Mm00441242_m1;マウスCcl11:Mm00441238_m1 ;マウスCcl24:Mm00444701_m1;マウスTnf:Mm00443258_m1;マウスTgfb1:Mm01178820_m1;マウスIl1rl1:Mm00516117_m1;マウスIl13ra2:Mm00515166_m1;マウスCol15a1:Mm00456584_m1;マウスCol24a1:Mm01323744_m1;)を用いて、ABI 7900HT配列検出システム(Applied Biosystems)を使用して増幅した。cDNA投入量の差を標準化するために、B2mを内部対照遺伝子として使用した。全試料の標準化のために使用した参照群を群1の試料の平均とした(「1×PBSチャレンジ」)。表6に示されるように、各遺伝子の発現を同じ試料内のB2m発現に対して標準化し、参照群のその標準化された発現と比較して表した(平均±SD)。
【0238】
肺遺伝子発現分析
表6に示されるように、15週間HDMを受け、アイソタイプ対照抗体で処置されたまたは処置されていないIL-33HumInマウスの肺におけるサイトカイン、ケモカイン、およびコラーゲン遺伝子Il4、Il13、Il6、Ccl2、Tgfb1、Il13ra2、およびCol24a1の発現レベルは、1×PBS単独でチャレンジしたIL-33 HumInマウスと比較して有意に増加した。同様に、15週間HDMを摂取したIL-33 HumInマウスの肺では遺伝子Il5、Il9、Ccl11、Ccl24、Tnf、Il1rl1、およびCol15a1の発現の増加傾向が見られた。
【0239】
対照的に、慢性的HDMチャレンジの最後の4週間中に抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで処置したIL-33 HumInマウスでのIl6、Ccl2、Ccl11、およびCcl24のレベルは、この期間中にアイソタイプ対照抗体とともにHDMを投与したIL-33HumInマウスと比較して有意に減少した。対照的に、慢性的HDMチャレンジの最後の4週間中に抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで処置したマウスでのIl4、Il5、Il13、Il9、Tnf、Tgfb1、Il1rl1、Il13ra2、Col15a1、およびCol24a1の発現レベルは、この期間中にアイソタイプ対照抗体とともにHDMを投与したIL-33HumInマウスと比較して低下する傾向が見られた。抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで観察された遺伝子発現に対する効果は、いずれかの個々の抗体単独による処置よりも大きかった。
【表10】
【表11】
【0240】
肺細胞浸潤物分析のための肺の採取
免疫細胞による肺浸潤は、喘息およびCOPDを含む複数の気道炎症性疾患で観察される。好中球性肺炎症は、喘息患者における肺機能の低下および重度の組織リモデリングと
関連し(Wenzel et.al., (2012),Nat Med 18(5):716-725)、COPD患者における肺損傷の増加と関連している(Meijer,
et.al.,(2013),Expert Rev.Clin.Immunol.9(11):1055-1068)。好酸球性肺炎症は、アトピー性疾患において通常見られる2型炎症の顕著な特徴である(Jacobsen, et.al.,(2014),Clin.Exp.,Allergy,44(9):1119-1136)。ヒトでは、肉芽腫性肺疾患および他の慢性炎症状態を有する患者において高CD4/CD8比が観察される(Costabel, et.al.,(1997),Eur.Respir.J.10(12):2699-2700;Guo,et.al.,(2011),Ann.Clin.Biochem,48(Pt4):344-351)。本研究ではフローサイトメトリーを使用し、HDM曝露マウスの肺での細胞浸潤のレベルを決定した。
【0241】
放血後、各マウスから右肺の尾葉を取り出し、約2~3mmのサイズの立方体に切り刻み、次いでハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Gibco、#14025)中で希釈された20μg/mL DNAse(Roche、#10104159001)および0.7U/mL Liberase TH (Roche、#05401151001)の溶液を含有する管に入れ、これを37℃の水浴中で20分間インキュベートし、5分毎にボルテックスした。エチレンジアミン四酢酸(EDTA、Gibco、#15575)を10mMの最終濃度で加えることにより、反応を停止させた。各肺をgentleMACS破砕装置(登録商標)(Miltenyi Biotec、#130-095-937)を用いて破砕し、次いで70μmフィルターを通して濾過し、遠心分離した。得られた肺ペレットを1mLの1×赤血球溶解緩衝液(Sigma、#R7757)に再懸濁化して、赤血球を除去した。室温で3分間インキュベートした後、3mLの1×DMEMを加えて赤血球溶解緩衝液を不活化した。次いで細胞懸濁液を遠心分離し、得られた細胞ペレットを5mLのMACS緩衝液(autoMACS Running Buffer、Miltenyi Biotec、#130-091-221)に再懸濁化した。再懸濁化した試料を70μmフィルターを通して濾過し、1ウェル当たり1×10細胞を96ウェルのV底プレートでプレーティングした。次いで細胞を遠心分離し、ペレットを1×PBS中で洗浄した。2回目の遠心分離後、細胞ペレットを1×PBS中で1:500に希釈した100μLのLIVE/DEAD(登録商標)Fixable Blue Dead
Cell Stain(Life Technologies、#L23105)に再懸濁化して細胞生存度を決定し、遮光しながら室温で20分間インキュベートした。1×PBS中で1回洗浄した後、細胞を10μg/mLの精製ラット抗マウスCD16/CD32 Fc Block(クローン:2.4G2、BD Biosciences、#553142)を含有するMACS緩衝液中で4℃で10分間インキュベートした。次いで、遮光しながら、細胞をMACS緩衝液で希釈した適切な2×抗体混合物(表7に記載)中で4℃で30分間インキュベートした。抗体のインキュベーション後、細胞をMACS緩衝液中で2回洗浄し、BD CytoFix(BD Biosciences、#554655)中に再懸濁化し、次いで遮光しながら4℃で15分間インキュベートした。続いて細胞を洗浄し、MACS緩衝液に再懸濁化し、次いでフローサイトメトリーによる細胞浸潤物の分析のためにBD FACS菅(BD Biosciences、#352235)に移した。
【0242】
CD4およびCD8T細胞をそれぞれ、生きている細胞CD45、SSCLo、FSCLo、CD3、CD19、CD4、CD8、および生きている細胞CD45、SSCLo、FSCLo、CD3、CD19、CD4、CD8として定義した。活性化CD4T細胞を生きている細胞CD45、SSCLo、FSCLo、CD3、CD19、CD4、CD8、およびCD69として定義した。活性化CD8T細胞を生きている細胞CD45、SSCLo、FSCLo、CD3、CD19、CD4、CD8、およびCD69として定義した。活性化B細胞を生きている細胞C
D45、SSCLo、FSCLo、CD3、CD19、およびCD69として定義した。ST2+CD4+T細胞を生きている細胞CD45、SSCLo、FSCLo、CD3+、CD19-、ST2+およびCD4として定義した。好酸球を生きているCD45、GR1、CD11clo、SiglecFhiとして定義した。肺胞マクロファージを生きているCD45、GR1、CD11cHi、SiglecFhiとし定義した。活性化細胞のデータを親集団(CD4、±SD)内の活性化細胞(CD69)の頻度として表す。ST2+CD4+T細胞のデータをT細胞(生きている細胞CD45、SSCLo、FSCLo、CD3+およびCD19-として定義された)の頻度として表す。好酸球および肺胞マクロファージのデータを生きている細胞の頻度として表す。CD4/CD8T細胞比を生きている集団内のCD8T細胞の頻度に対するCD4Tの頻度の比として計算する。全データを表8に示す。
【表12】
【0243】
肺細胞浸潤分析:
表8に示されるように、HDMを15週間受け、アイソタイプ対照抗体で処置されたまたは処置されていないIL-33HumInマウスの肺での好酸球、活性化B細胞、活性化CD8細胞、ST2+Cd4+T細胞およびCD4/CD8T細胞比の頻度は、1×PBS単独でチャレンジしたIL-33 HumInマウスにおけるよりも有意に高かった。同様に、15週間HDMを受けたIL-33 HumInマウスの肺において活性化CD4 T細胞の頻度の増加傾向が見られた。アイソタイプ対照抗体処置の非存在下または存在下で15週間HDMを受けたIL-33 HumInマウスの肺では、フローサイトメトリーにより検出した肺胞マクロファージの頻度の減少傾向が見られた。肺胞マクロファージの頻度は、慢性的HDMチャレンジの最後の4週間中に抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで処置したIL-33 HumInマウスの肺で、この期間中にアイソタイプ対照抗体とともにHDMを投与したIL-33HumInマウスと比較して有意に増加した。同様に、慢性的HDMチャレンジの最後の4週間中に抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで処置されたマウスの肺では、好酸球、活性化CD4およびCD8T細胞、活性化B細胞、ST2+CD4+T細胞、ならびにCD4/CD8T細胞比の頻度の減少傾向が見られた。抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで観察される肺での好酸球、肺胞マクロファージ
、活性化CD8 T細胞、ST2+CD4+T細胞、およびCD4/CD8比の頻度に対する効果は、いずれかの個々の抗体単独での処置よりも大きい効果の傾向を示した。
【表13】
【0244】
病理組織診断(histopathology)の定量化のための肺の採取:
このモデルで観察される炎症パターンは、杯細胞化生の徴候、上皮下コラーゲン沈着の増加、および顕著な肺硬化を有する、HDMに曝露された肺における広範かつ重度の構造変化を伴う。これらの病変は、肺機能の低下および気道過敏性をもたらすヒト炎症性呼吸器疾患の既知の特徴である(James,(2007)Eur Respir J.,Jul;30(1):134-55;Jeong,(2007)Radiographics May-Jun;27(3):617-37)。
【0245】
放血後、左肺を取り出し、1×リン酸緩衝生理食塩水中の4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Boston Bioproducts、#BM-155)の3mL溶液を含有するプレートに入れ、室温で3日間保存した。次に肺試料をブロットドライし(blotted dry)、組織学的分析のために70%エタノールを含有する菅に移した。試料をパラフィン包埋、切片化、および過ヨウ素酸シッフ(PAS)またはヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色のためにHistoserv、Inc(Germantown、MD)に送った。
【0246】
杯細胞化生の定量化:
杯細胞化生および粘液過剰分泌は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、および嚢胞性線維症を含む多くの肺疾患の顕著な特徴である(Boucherat,(2013)Exp Lung Res.2013May-Jun;39(4-5):207-16)。過剰な粘液産生は気道閉塞を引き起こし、肺機能、健康関連の生活の質、増悪、入院、およびヒトの死亡率などのいくつかの重要な結果に影響を与える(Ramos,FL,et.al.,(2014),Int J Chron Obstruct Pulmon Dis,Jan. 24;9:139-150)。PAS陽性杯細胞および総上皮細胞を主気管支のミリメートル長で計数した。表9に示されるように、杯細胞化生を気管支上皮の1ミリメートル中のPAS陽性細胞の頻度として表す(%、±SD)。
【0247】
肺硬化の定量化:
「肺硬化」は、肺胞空間における固体または液体材料の蓄積として定義される。肺硬化は、細胞浸潤、過形成、および粘液産生の組み合わせを反映し得る複合的評価項目であり、ここでは肉眼病変の測定として使用する。ImageJソフトウェア(NIH、Bethesda、MD)を使用して、モバットペンタクローム染色されたパラフィン包埋肺切片上で、結晶体によって占められる肺面積の割合を定量化した。粒子分析機能を使用して、切片の総肺面積および切片の硬化面積を測定した。表9に示されるように、肺硬化面積の割合は両方の測定値の比によって与えられる。
【0248】
上皮下線維症の定量化
「上皮下線維症」は、肺上皮下の過剰な間質性コラーゲン沈着として定義される(Redington,et.al.,(1997),Thorax, April;52(4):310-312)。上皮下線維症の増加は、ヒトの喘息と特異的に関連することが報告されている(Boulet, et.al.,(1997)Chest, July;112(1):45-52;James,AL and Wenzel,S.,(2007),Eur Respir J,July, 30(1):134-155)。本モデルでは、HaLoソフトウェア(Indica Labs、NM)を使用して、マッソントリクローム色染色されたパラフィン包埋肺切片上で上皮下線維症を測定した。「層厚」ツールを使用して、気管支上皮下のコラーゲン層の厚さを、主気管支1ミリメートルにわたって約30μmの間隔で複数回記録した。表9に示されるように、上皮下線維症を上皮下のコラーゲン層の平均厚さ(μm、±SD)として表す。
【0249】
肺病理組織診断の分析
表9に示されるように、15週間HDMを受け、アイソタイプ対照抗体で処理したまた
は処置していないIL-33 HumInマウスの肺において、1×PBS単独でチャレンジしたIL-33 HumInと比較して、杯細胞化生の増加傾向が見られた。同様に、15週間HDMを受けたIL-33 HumInマウスでは、肺硬化および上皮下コラーゲン厚が有意に増加した。
【0250】
対照的に、慢性的HDMチャレンジの最後の4週間中に抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで処置したIL-33 HumInマウスの肺では、この期間中にアイソタイプ対照抗体とともにHDMを投与したIL-33HumInマウスと比較して、杯細胞化生および上皮下コラーゲン厚の減少傾向ならびに肺硬化の有意な減少傾向が見られた。抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで観察された杯細胞化生、肺硬化、および上皮下コラーゲン厚に対する効果は、いずれかの個々の抗体単独での処置よりも有効性が高くなる傾向を示した。
【表14】
【0251】
IgEおよびHDM特異的IgG1レベル測定のための血清の採取:
各マウスについて血清試料中の総IgE濃度を決定するために、サンドイッチELISA OPTEIAキット(BD Biosciences、#555248)を製造業者の指示に従って使用した。血清試料を希釈し、96ウェルプレート上にコーティングした抗IgE捕捉抗体とともにインキュベートした。ビオチン化抗マウスIgE二次抗体により、総IgEを検出した。精製西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識マウスIgEを標準として使用した。クロマゲン3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)(BDOPTEIA基質試薬セット、BD、#555214)を使用してHRP活性を検出した。次いで、1M硫酸の停止溶液を加え、450nmにおける吸光度をMolecular Devices SpectraMax M5プレートリーダーで測定した。Prism(商標)ソフトウェアを使用して、データ分析を行った。表10に示される
ように、各実験群の血清中の循環IgEレベルの平均量はng/mL(±SD)として表される。
【0252】
各マウス由来の血清試料中のHDM特異的IgG1レベルを決定するために、ELISAを利用した。HDM(Greer、#XPB70D3A2.5)をコーティングしたプレートを段階希釈したマウス血清試料とともにインキュベートし、続いてラット抗マウスIgG1-HRPに結合された抗体(BD Biosciences、#559626)とともにインキュベートした。全ての試料をTMB溶液で展開し、上記のように分析した。血清中の循環IgG1の相対レベルは力価単位として表される(力価単位は、測定されたODに、バックグラウンドの2倍を超えるOD450を達成するのに必要な希釈係数を掛けることによって計算した)。表10に示されるように、各実験群の血清中の平均循環HDM特異的IgG1レベルは力価×10(±SD)として表される。
【0253】
IgEおよびHDM特異的IgG1の循環レベルの分析
表10に示されるように、15週間HDMを受け、アイソタイプ対照抗体で処置されたまたは処置されていないIL-33HumInマウスの血清では、1×PBS単独でチャレンジしたIL-33HumInマウスと比較して、IgEの循環レベルが有意に増加した。同様に、15週間HDMを受けたIL-33 HumInマウスの血清では循環HDM特異的IgG1のレベルの増加傾向が見られた。対照的に、慢性的HDMチャレンジの最後の4週間中に抗IL-33抗体および抗マウスIL-4Rα抗体の組み合わせで処置したIL-33 HumInマウスの血清では、アイソタイプ対照抗体とともにHDMを投与されたIL-33HumInマウスと比較して、IgEの循環レベルの有意な減少およびHDM特異的IgG1の循環レベルの減少傾向が見られた。
【表15】
【0254】
重度の混合炎症との関連で開始されたH4H9675Pおよび抗mIL-4Rα処置の組み合わせは、測定された全ての炎症パラメータを改善し、ほとんどをベースラインレベルまで低下させる。さらに、複合的肺肉眼病変、杯細胞化生、肺細胞浸潤、およびサイトカインレベルを含む最も悪性の評価項目のいくつかで相加効果が観察される。したがって、両方の経路を同時に阻止することは、重度の混合炎症および組織病変との関連で複数の炎症メディエーターに影響を与え、複数のパラメータをベースラインへと標準化する可能性を有する。
【0255】
実施例5:水素重水素交換によるIL33へのH4H9675P結合エピトープマッピング
抗IL33抗体H4H9675Pによって認識されるヒトIL33のエピトープを決定するために、ヒトIL33と共複合体形成された抗体について水素-重水素(H/D)交換研究を行った。実験のために、C末端ヘキサヒスチジンタグを伴って発現される組換えヒトIL33(配列番号356)を使用した。H/D交換方法の一般的説明は、Ehring et al.(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259 and Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aに示されている。H/D交換実験は統合型Waters HDX/MSプラットフォーム上で行われ、これは重水素標識のためのLeaptec HDX PALシステム、試料消化および充填のためのWaters Acquity M-Class(Auxiliary solvent manager)、分析用カラム勾配のためのWaters Acquity M-Class(μBinary solvent manager)、および消化ペプチド質量測定のためのSynapt G2-Si質量分析計からなる。
【0256】
標識溶液をpD7.0(pH6.6に相当)のDO中10mM PBS緩衝液で調製した。重水素標識のために、3.8μLのhIL33-MMH(96pmol/μL)または1:1のモル比で抗体と予め混合したhIL33-MMHを、56.2μLのDO標識溶液とともに様々な時間(2分間、10分間、重水素化されていない対照=0秒間)インキュベートした。50μLの試料を100mMリン酸緩衝液(pH2.5)中の予め冷却した0.2M TCEP、6Mグアニジンクロリド(クエンチ緩衝液)50μLに移すことによって重水素化をクエンチし、混合試料を1.0℃で2時間インキュベートした。次に、クエンチした試料をオンライン(online)のペプシン/プロテアーゼXIII消化のためにWaters HDX Managerに注入した。消化されたペプチドは0℃でACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、2.1x5mm VanGuardプレカラム上に捕捉され、5%~40%B(移動相A:水中0.1%ギ酸、移動相B:アセトニトリル中0.1%ギ酸)の9分間の勾配分離を用いてACQUITY UPLC BEH C18 1.7-μm、1.0x50mmカラムに溶出した。質量分析計を37Vのコーン電圧、0.5秒のスキャン時間、および50~1700Thの質量/電荷範囲に設定した。
【0257】
hIL33-MMH由来のペプチドを同定するために、非重水素化試料由来のLC-MSデータを処理し、Waters ProteinLynx Global Server(PLGS)ソフトウェアにより、ヒトIL33、ペプシン、およびそれらのランダム化配列を含むデータベースに対して検索した。同定されたペプチドをDynamXソフトウェアにインポートし、2つの基準:1)1アミノ酸当たりの最小産物:0.3、および2)反復ファイル閾値(replication file threshold):3によりフィルタリングした。次いで、DynamXソフトウェアにより、複数時点にわたって各時点で3回反復しつつ、保持時間および高い質量精度(<10ppm)に基づいて、各ペプチドの重水素取り込みが自動的に決定された。
【0258】
MSデータ取得と組み合わせたオンラインのペプシン/プロテアーゼXIII列を使用して、hIL33-MMH由来の合計68個のペプチドがh4H9675Pの非存在下または存在下で同定され、これは95%の配列対象範囲を表す。H4H9675Pに結合した際、11個のペプチドが重水素の取り込みを有意に減少し(質量中心(centroid)デルタ値>0.4ダルトン、p値<0.05)、該ペプチドは表11に列挙されている。記録されたペプチド質量は、3回の反復から得られた質量中心MH質量の平均値に対応する。配列番号349のアミノ酸1~12および50~94に対応するこれらのペプチドは、H4H9675Pの結合によってより遅い重水素化速度を有した。これらの同定された残基はまた、Uniprot entryO95760(IL33_ヒト;配列番号348も参照のこと)によって定義される、ヒトIL-33の残基112~123および161~205に対応する。これらのデータは、抗体H4H9675PのIL-33中の結合領域を少なくとも部分的に定義する、配列番号348のアミノ酸残基112~123および161~205、または配列番号349のアミノ酸残基1~12および50~94の裏付けを提供する。
【表16】
【0259】
実施例6:IL-33-、IL-4-およびIL-4Rα-ヒト化マウスを用いたアレルゲン誘導性肺炎症の19週間モデルにおける、IL-33抗体(REGN3500)およびIL-4R抗体(デュピルマブ)の単独または組み合わせの効果
IL-33抗体単独、IL-4R抗体単独、または両方の抗体の組み合わせの効果を、マウスIL-33の代わりにヒトIL-33の発現に関してホモ接合性であるマウス(IL-33 HumInマウス;米国特許公開第2015/0320021号および同第2015/0320022号を参照のこと)を用いて、上記の実施例4で最初に試験した。完全ヒト抗IL-33抗体(REGN3500)、および抗マウスIL-4Rα抗体、またはその両方の組み合わせをこのモデルで比較し、結果を実施例4に記載した。
【0260】
ヒト抗IL-33抗体(REGN3500)もヒト抗IL-4R抗体(デュピルマブ)もそれらのそれぞれのマウス標的タンパク質に結合しないので、マウスIL-33、IL-4、およびIL-4Rαの外部ドメイン(ectodomain)を対応するヒト配列(Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/hu)で置換した遺伝子改変マ
ウスを生成した。Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウス系統を、4週間のHDM曝露誘導性肺炎症モデルを用いて、REGN3500およびデュピルマブ投与の効果を研究するためのツールとして検証した。このモデルで、好酸球性肺浸潤評価によって評価したところ、HDM曝露Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウスは野生型マウスと同様の免疫応答を示した。
【0261】
IL-33およびIL-4/IL-13経路の同時阻止が、いずれかの経路単独の阻止よりも肺炎症に対して大きな影響を及ぼし得るかどうかを決定するために、下記の試験を行った。この研究では、Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウスを19週間にわたりHDMまたは生理食塩水に鼻腔内(IN)曝露した。Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウスの対照群を11週間のHDM曝露後に犠牲死させ、抗体処置の開始時における疾患の重症度を評価した。19週間HDM曝露マウスは、抗体処置を受けなかったか、または12週~19週のHDM曝露中に皮下(SC)抗体注射を週2回、合計8週間および16用量受けたかのいずれかであった。以下の抗体を11mg/kgの最終タンパク質用量で投与した:(a)11mg/kgのアイソタイプ対照抗体、(b)1mg/kgのREGN3500+10mg/kgアイソタイプ対照抗体(c)10mg/kgのデュピルマブ+1mg/kgのアイソタイプ対照抗体、または(d)1mg/kgのREGN3500+10mg/kgのデュピルマブ。HDM曝露マウスに対するREGN3500およびデュピルマブ処置の単独または組み合わせの効果を、以下の気道炎症の病理学的マーカーについて評価した:
-肉眼病変(相対肺重量)
-1型炎症性細胞(好中球、好中球マーカーミエロペルオキシダーゼ[MPO]の肺タンパク質レベルによって定量化)および2型炎症性細胞(全ての活性化[CD11cHi]好酸球およびST2CD4T細胞による肺組織浸潤、フローサイトメトリーによって定量化)による肺組織浸潤
-炎症性サイトカイン肺タンパク質レベル(ヒトIL-4およびマウスIL-5、IL-6、IL-1β、TNFα、IFNγ、GROα、およびMCP-1、イムノアッセイにより定量化)
-炎症の全身性マーカーである血清アミロイドA[SAA]タンパク質の循環レベル(イムノアッセイにより定量化)
【0262】
材料および方法
試験システム
IL-33、IL-4、およびIL-4Rα外部ドメインヒト化マウス
REGN3500もデュピルマブも、それぞれマウスIL-33またはマウスIL-4Rαに結合しない。したがって、REGN3500およびデュピルマブを協同しておよび組み合わせて試験するために、マウスIL-33、IL-4、およびIL-4Rαの外部ドメインを対応するヒト配列(Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/hu)で置換した遺伝子改変マウスを生成した。この三重ヒト化マウス系統は、Regeneron PharmaceuticalsのVelociGene(登録商標)技術(Valenzuela, DM, et al.Nat Biotechnol.(2003),Jun;21(6):652-9,Poueymirou,WT,et al.
Nat Biotechnol.(2007)Jan;25(1):91-9)を用いて、上記で特徴付けしたIL-4/IL-4Rα外部ドメイン-ヒト化マウス系統Il4rahu/huIl4hu/huと上記で特徴付けしたIL-33-ヒト化株Il33hu/huとを交配することにより生成した。
【0263】
肺炎症マウスモデル
マウス肺炎症モデルは、イエダニアレルゲンの供給源として作用するHDM抽出物(Johnson, et al.;American Journal of Respi
ratory and Critical Care Medicine;(2004)Feb1;169(3):378-85),a significant cause of indoor allergy in humans (Calderon, et al.,(2015),Respiratory allergy caused by house dust mites:What do we really know?J Allergy Clin Immunol.2015Jul;136(1):38-48))への反復鼻腔内(IN)曝露を用いた。HDMへの慢性的な曝露は、重度の肺細胞浸潤、サイトカイン発現、およびリモデリングをもたらす重度の肺炎症を誘導すると報告されている。特に、HDMに慢性的に曝露されたマウスは、1型および2型炎症細胞(それぞれ好中球および好酸球)による組織浸潤などの混合1型/2型表現型の肺炎症、血清IgEの増加、血清HDM特異的IgG1の増加、ならびにIL-5およびIL-13などの2型炎症性サイトカインの誘導を示す(Johnson, et al.(2004),American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine;Feb1;169(3):378-85;Johnson, et al.(2011).PloS ONE.Jan20;6(1):e16175;Llop-Guevara, et al.,(2008),PloS ONE,Jun11;3(6):e2426)。
【0264】
実験計画
4週間のHDM曝露誘導性肺炎症モデル
表12に示される遺伝子型の雌マウスを、遺伝子型当たりそれぞれ2つの群に無作為に分けた。20μLの生理食塩水溶液で希釈した生理食塩水(20μL)または50μgのHDMを、週当たり3回、4週間IN投与した。全てのマウス系統は混合C57BL/6NTac/129S6SvEvTacバックグラウンドであった。最後の曝露から4日後にマウスを犠牲死させ、肺を採取し、好酸球性肺浸潤を決定した。
【表17】
【0265】
19週間のHDM曝露誘導肺炎症モデル
この研究で使用したIl4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウスは混合バックグランドC57BL/6NTac(72%)/129S6SvEvTac(28%)であり、雌マウスを7つの別々の群に無作為に分けた。各群のマウスのHDM曝露および処置または対照投与プロトコルは表13に示される。20μLの生理食塩水溶液で希釈した生理食塩水(20μL)または50μgのHDMを、週当たり3回、19週間
IN投与した。Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウスの対照群を11週間のHDM曝露後に犠牲死させ、抗体処置の開始時の疾患重症度を評価した。表13に示されるように、19週間HDM曝露マウスは、抗体処置を受けなかったか、または12週~19週の間にHDM曝露の皮下(SC)注射を週2回、合計16回の抗体用量を受けたかのいずれかであった。簡潔に述べると、以下の抗体を11mg/kgの最終タンパク質用量で投与した:11mg/kgのアイソタイプ対照抗体(群D)、1mg/kgのREGN3500+10mg/kgのアイソタイプ対照抗体(群E)、10mg/kgのデュピルマブ+1mg/kgのアイソタイプ対照抗体(群F)、または1mg/kgのREGN3500+10mg/kgのデュピルマブ(群G)。この文書の目的のためには、二重の抗体処置群(D~G)は治療用抗体(REGN3500および/またはデュピルマブ)によってのみ同定される。最後のIN曝露および抗体注射の4日後である研究の134日目に、全てのマウスを犠牲死させ、心臓穿刺により血液を採取し、分析のために肺を採取した。
【表18】
【0266】
マウスの管理
各実験の全期間について、動物を標準条件下でRegeneron動物施設に収容したままとし、研究に供する前に少なくとも7日間馴化させた。全ての動物実験は、Regeneronの施設内動物管理使用委員会のガイドラインに従って実施した。
【0267】
特定手順
相対肺重量測定
犠牲死の前に終末体重測定値を記録した。放血後、各マウスの左肺を取り出し、4%パラホルムアルデヒド溶液を含有する管に入れた。各マウスの左肺の湿重量をMettler Toledo New Classic MSスケールで記録した。相対肺重量を決定するために、肺湿重量を体重で割ることにより体重(g)に対する肺湿重量(mg)の比を計算した。
【0268】
細胞肺浸潤物の分析
放血後、各マウスから右肺の尾葉を取り出し、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中で希釈した20μg/mLのDNaseIおよび0.7U/mLのLiberaseTHの溶液を含有する菅に入れ、約2~3mmのサイズの小片に切った。次いで、小さく角切りにした肺葉を含有する菅を37℃の水浴中で20分間インキュベートした。エチレンジア
ミン四酢酸(EDTA)を最終濃度10mMで加えることによって反応を停止させた。次いで、試料をgentleMACS C菅に移した。次いで、2mLのautoMACS緩衝液を加え、続いてgentleMACS(商標)破砕装置(Miltenyi Biotec)を使用して試料を破砕し、単一細胞懸濁液を形成した。次いで、菅を遠心分離し、得られたペレットを4mLの1×赤血球溶解緩衝液中で再懸濁化して、赤血球を溶解した。室温で3分間インキュベートした後、2.5倍体積の1×DPBSを加えて赤血球溶解緩衝液を不活化した。次いで、細胞懸濁液を遠心分離し、得られた細胞ペレットを1mLのDPBSに再懸濁化した。再懸濁化した試料をそれぞれ50μmカップ型フィルコンを通して濾過し、2mLのディープウェルプレートに移した。プレートを400×gで4分間遠心分離し、各試料を1mLのDPBS中で再懸濁化した。1ウェル当たり約1.5×10細胞を96ウェルU底プレートでプレーティングした。次いで細胞を遠心分離し、細胞ペレットを1×DPBS中1:500に希釈した100μLのLIVE/DEAD Fixable Dead Cell Stainに再懸濁化して、細胞生存率を決定した。遮光しながら、細胞を生存性色素(viability dye)とともに室温で15分間インキュベートした。1×DPBS中で1回洗浄した後、細胞を50μLのautoMACS緩衝液中で1:50に希釈した精製ラット抗マウスCD16/CD32Fc Blockとともに4℃で15分間インキュベートした。次いで、細胞を、遮光しながら、Brilliant Stain緩衝液(表14に記載)で希釈した適切な2×抗体混合物中で4℃で30分間インキュベートした。抗体のインキュベーション後、細胞をautoMACS緩衝液中で2回洗浄し、1×DPBS中1:4に希釈したBD CytoFix中に再懸濁化し、次いで遮光しながら4℃で15分間インキュベートした。続いて細胞を洗浄し、autoMACS緩衝液に再懸濁化した。次いで細胞懸濁液を、AcroPrep Advance 96フィルタープレート30~40μmを通して新しいU底プレートに濾過した。試料データは、HTSアタッチメント(BD Biosciences)を用いてLSR Fortessa X-20細胞分析器で取得した。FlowJo Xソフトウェア(Tree Star、OR)を用いてデータ分析を行い、GraphPad Prism(商標)(GraphPadソフトウェア、CA)を用いて統計分析を行った。
【0269】
好酸球のゲーティング(Gating)戦略(総活性化)
好酸球を無傷の、単一の、生きている細胞(低LIVE/DEAD生存性色素シグナル)CD45、F4/80、Ly6G、SiglecFとして定義した。好酸球についてのデータを生きている細胞の頻度として表した。好酸球集団内において、活性化好酸球を無傷の、単一の、生きているCD45、F4/80、Ly6G、SiglecF、CD11cHiとして定義し、全好酸球の頻度として表した。
【0270】
ST2CD4T細胞に対するゲーティング戦略
ST2CD4T細胞を無傷の、単一の、生きているCD45、CD3、CD19、CD4、CD8、ST2として定義した。ST2CD4T細胞についてのデータをCD4T細胞(無傷の、単一の、生きているCD45、CD3、CD19、CD4、CD8)の頻度として表した。
【表19】
【0271】
肺タンパク質濃度の測定
放血後、各マウスから右肺の前葉および中葉を取り出し、秤量し、プロテアーゼ阻害剤カクテルを補充した組織タンパク質抽出試薬(T-PER)の溶液を含有する管に入れた。最終の1:8(w/v)肺組織重量対T-PER体積比を達成するために、組織1mg当たり8μLのT-PER溶液(プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する)を加えた。肺試料をTissueLyser IIを用いて機械的にホモジナイズした。得られた溶解物を遠心分離して細片をペレット化した。可溶性タンパク質抽出物を含有する上清を新しい管に移し、さらなる分析まで4℃で保存した。サイトカインおよびMPO濃度を調べた葉当たりのタンパク質の総量(それぞれng/肺葉およびμg/肺葉)として表した。
【0272】
サイトカインマルチプレックスイムノアッセイ
肺タンパク質抽出物中のマウスサイトカイン(IL-5、IL-13、IL-6、IL-1β、IL-12p70、TNFα、IFNγ、GROα、およびMCP-1)濃度を、マルチプレックスイムノアッセイキット(カスタムマウス10-プレックス、MSD)を使用して製造業者の指示に従って測定した。簡潔に述べると、肺ホモジネート試料を希釈し、捕捉抗体でプレコーティングしたプレート上でインキュベートした。製造業者によって提供されたタンパク質較正物質を標準として使用した。ホモジネート中のサイトカインを、Read Bufferとともにインキュベートしたタグを有する検出抗体によって検出した。電気化学発光を直ちにMSD Spector(登録商標)機器で読み取った。GraphPad Prismソフトウェアを用いて、データ分析を行った。各アッセイの線形範囲内の標準の最低濃度は、それぞれのサイトカインについてのアッセイの定量化下限(LLOQ)として定義した。試験した個々のサイトカインのLLOQ値は以下の通りであった:IIFNγ=0.2pg/mL、IL-1β=1.6pg/mL、IL-5=0.2pg/mL、IL-6=1.4pg/mL、IL-12p70=125.8pg/mL、IL-13=24.4pg/mL、GROα:0.5pg/mL、MCP-
1=9.8pg/mL、TNFα=2.4pg/mL。
【0273】
ヒトIL-4ELISA
肺タンパク質抽出物中のヒトIL-4濃度を、サンドイッチELISAキットを使用して製造業者の指示に従って測定した(Human IL-4 Quantikine ELISA、R&D Systems)。簡潔に述べると、肺ホモジネートを希釈し、抗ヒトIL-4捕捉抗体でプレコーティングした96ウェルプレート上でインキュベートした。精製ヒトIL-4を標準として使用した。捕捉されたヒトIl-4は、HRPコンジュゲート抗ヒトIL-4検出抗体を用いて検出された。HRP活性をクロマゲン3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を使用して検出した。次いで停止溶液を加え、450nmでの光学密度(OD450)をMolecular Devices SpectraMax M5プレートリーダーで測定した。GraphPad Prismソフトウェアを用いて、データ分析を行った。アッセイの線形範囲内の標準の最低濃度は、アッセイのLLOQ=31.25pg/mLとして定義した。
【0274】
MPO ELISA
肺タンパク質抽出物中のMPO濃度は、サンドイッチELISAキットを使用して製造者の指示に従って測定した(マウスMPO ELISA キット、Hycult Biotech)。簡潔に述べると、肺ホモジネートを希釈し、抗MPO捕捉抗体でプレコーティングした96ウェルプレート上でインキュベートした。精製マウスMPOを標準として使用した。捕捉されたMPOをビオチン化抗マウスMPO検出抗体を用いて検出した。精製HRP結合ストレプトアビジンを用いて、ビオチン化抗マウスMPOを検出した。HRP活性をクロマゲン3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて検出した。次いで停止溶液を加え、450nmでの光学密度(OD450)をMolecular Devices SpectraMax M5プレートリーダーで測定した。GraphPad Prismソフトウェアを用いて、データ分析を行った。アッセイの線形範囲内の標準の最低濃度は、アッセイのLLOQ=156.3ng/mLとして定義した。
【0275】
血清採取
試験終了時に心臓穿刺により、全血をMicrotainer菅に採取した。室温で少なくとも30分間静置することにより、血液を凝固させた。凝固した血液および細胞を、4℃で10分間、18,000xgで遠心分離することによりペレット化した。血清と呼ばれる得られた上清を清潔なポリプロピレンプレートに移し、下記のように循環抗体レベルを決定するために使用した。
【0276】
ELISAによる血清中のSAAレベルの決定
各マウスの血清試料中の総SAA濃度は、市販のイムノアッセイ(Quantikine ELISA、R&D Systems)を使用して製造業者の指示書に従って決定した。簡潔に述べると、血清試料を希釈し、モノクローナル抗マウスSAA捕捉抗体で事前にコーティングした96ウェルプレート上でインキュベートした。組換えマウスSAAを標準として使用した。捕捉されたSAAは、HRP結合ポリクローナル抗マウスSAA検出抗体を用いて検出された。比色HRP基質TMBを用いて、HRP活性を検出した。次いで希塩酸の停止溶液を添加え、OD450をMolecular Devices SpectraMax M5プレートリーダーで測定した。各試料について血清中の循環SAAの濃度をng/mLとして決定し、μg/mLとしてグラフ化した。GraphPad Prismソフトウェアを用いて、データ分析を行った。アッセイの線形範囲内の標準の最低濃度は、アッセイのLLOQ=31.2ng/mLとして定義した。
【0277】
ELISAによる血清IgE濃度の決定
各マウスの血清試料中の総IgE濃度は、比色サンドイッチELISA OPTEIAキットを使用して製造業者の指示に従って決定した。簡潔に述べると、血清試料を希釈し、抗IgE捕捉抗体で事前にコーティングした96ウェルプレート上でインキュベートした。精製マウスIgEを標準として使用した。捕捉されたIgEをビオチン化抗マウスIgE検出抗体を用いて検出した。精製HRP結合ストレプトアビジンを用いてビオチン化抗マウスIgEを検出した。TMBを用いてHRP活性を検出した。次いで2N硫酸の停止溶液を加え、OD450をMolecular Devices SpectraMax M5プレートリーダーで測定した。各試料の血清中の循環IgEの濃度はμg/mLとして表した。データ分析をGraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。アッセイの線形範囲内の標準の最低濃度は、アッセイのLLOQ=78.15ng/mLとして定義した。
【0278】
ELISAによる血清HDM特異的IgG1レベルの測定
血清試料中のHDM特異的IgG1のレベルを決定するために、比色ELISAアッセイを開発した。プレートを、4℃で一晩、4μg/mL濃度のリン酸緩衝食塩水(PBS)中のHDMでコーティングし、洗浄し、室温で1時間PBS中0.5%BSAの溶液で阻止し、段階希釈したマウス血清試料とともにインキュベートした。室温で1時間後、プレートを洗浄し、プレート上で捕捉されたIgG1抗体を、ラット抗マウスIgG1 HRP結合抗体とともに室温で1時間インキュベートすることによって検出した。TMBを用いてHRP活性を検出した。次いで、2N硫酸の停止溶液を加え、OD450をMolecular Devices SpectraMaxM5プレートリーダーで測定した。血清中のIgG1の相対レベルを力価単位として表した。力価単位は、測定されたOD450に、バックグラウンドOD450の2倍を超えるOD450の読み取りを達成するのに必要な希釈係数を掛けることによって計算した。データ分析をGraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。アッセイに使用された最低希釈係数は、アッセイのLLOQ=100として定義した。
【0279】
ELISAによるヒト標的特異的IgG4抗体レベルの決定
各マウスの血清試料中のヒト抗体(REGN 3500、デュピルマブ、またはIgG4アイソタイプ対照)の濃度を、ヒトIgG4抗体を検出するために開発された比色サンドイッチELISAを用いて決定した。マイクロタイターウェルを、測定されるヒト抗体に特異的な抗原、すなわちREGN3500を捕捉するためのヒトIL-33(REGN3931)、REGN668を捕捉するためのヒトIL-4Rα(REGN560)、REGN1945を捕捉するためのNatural Fel d1により、2μg/mLの濃度で4℃で一晩PBS中でコーティングした。ウェルをDPBS中0.05%Tween20で4回洗浄し、DPBS中5%BSAの溶液で室温で3時間阻止し、段階希釈したマウス血清試料または段階希釈した較正用標準物とともにインキュベートした。精製抗体(REGN3500、REGN668、およびIgG4対照抗体)を、血清中のそれぞれの抗体濃度の較正および定量化のための標準として使用した。室温で1時間後、プレートを7回洗浄し、プレート上に捕捉されたヒトIgG4をビオチン化マウス抗ヒトIgG4特異的モノクローナル抗体を用いて検出し、続いてポリHRPストレプトアビジン複合体とともにインキュベートした。TMB基質を使用して製造業者の指示書に従って、HRP活性を検出した。10分後、Molecular Devices SpectraMaxマルチモードプレートリーダーを用いて吸光度を450nmで測定した。較正に使用される最低濃度(0.002μg/mL)の標準(REGN3500、REGN668、またはIgG4対照抗体)は、このアッセイのLLOQとして定義した。GraphPad Prism(商標)(GraphPad Software、CA)を用いてデータ分析を行った。各試料の血清中のヒト抗体の濃度をμg/mLとして表した。
【0280】
統計分析
GraphPad Prismバージョン7.0(GraphPad Software、CA)を用いて統計分析を行った。
【0281】
4週間のHDM曝露モデルにおけるIL-33、IL-4、およびIL-4Rαヒト化マウスの特性評価からのデータの統計分析
二元配置分散分析(ANOVA)に続いて多重比較のためのテューキーの事後検定によって、結果を解釈した。p≦0.05の場合、差異は統計的に有意であるとみなした。
【0282】
19週間のHDM曝露誘導肺炎症モデルにおけるREGN3500/デュピルマブ処置からのデータの統計分析
データの正規性をシャピロ・ウィルク検定を使用して評価した。データが正規性検定に合格し、異なる群の標準偏差がブラウン・フォーサイス検定により評価したときに互いに統計的に異ならなかった場合において、一元配置分散分析により、続いて多重比較のテューキーの事後検定により、結果を解釈した。データが正規性検定に合格しなかった場合または標準偏差が有意に異なっていた場合には、クラスカル・ウォリス検定、続いてダンの多重比較検定を使用して、結果を解釈した。p≦0.05の場合、差異は統計的に有意であるとみなした。
【0283】
結果
IL-33、IL-4、およびIL-4Rα外部ドメインヒト化マウスの特性評価
野生型マウス、Il33hu/hu-およびIl4rahu/hu単一ヒト化マウス、Il4rahu/huIl4hu/hu二重ヒト化マウス、およびIl4rahu/huIl4hu/huIl33hu/hu三重ヒト化マウスを、生理食塩水またはHDMに週当たり3回、4週間IN曝露した。最後の曝露から4日後にマウスを犠牲死させ、肺を採取して、高CD11c発現によって同定された活性化好酸球による肺浸潤を評価した。個々のマウスデータおよび統計的分析は図2に提供される。三重ヒト化Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウスは、4週間のHDM曝露後の肺組織における活性化好酸球の頻度の有意な増加によって示されるように、野生型マウスと同様、HDMに強い反応を示した。Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウスおよび野生型マウスはまた、HDM曝露非存在下(生理食塩水曝露対照マウス)での肺組織における活性化好酸球と同様の頻度を示した。Il4rahu/hu単一ヒト化マウスを除いて、HDM曝露野生型マウスと、試験されたヒト化マウス系統のいずれかに由来するHDM曝露マウスと、を比較して、統計学的な有意差は観察されなかった。Il4rahu/huマウスの活性化好酸球性肺浸潤の割合において統計的に有意なHDM曝露誘導性の増加がないということは、マウスIL-4がヒトIL-4Rα受容体を介してシグナル伝達しないという事実に起因すると思われる。一方、ヒトIL-33は、マウス受容体複合体(REGN3500-MX-16069)を介してシグナル伝達することが示されている。さらに、生理食塩水曝露野生型マウスと、試験されたヒト化マウス系統のいずれかに由来する生理食塩水曝露マウスと、を比較しても、統計的有意差は観察されなかった。これらの知見は、Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウス系統をHDM曝露誘導性肺炎症のマウスモデルとして使用することの有効性を確認するものである。
【0284】
19週間のHDM曝露マウスにおけるREGN3500およびデュピルマブ処置の効果
Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウスを、週当たり3回、11週間または19週間にわたり生理食塩水またはHDMにIN曝露した。19週間のHDM曝露マウスの4つの群について、12週~19週の間に週2回のSC注射を行い、他の全ての群は処置を受けなかった(なし、淡灰色囲い)。以下のように、抗体を単独でまたは組み合わせて11mg/kgの最終タンパク質用量で投与した:11mg/kgのアイソタイプ対照抗体、1mg/kgのREGN3500+10mg/kgのアイソタイプ
対照抗体、10mg/kgのデュピルマブ+1mg/kgのアイソタイプ対照抗体、または1mg/kgのREGN3500+10mg/kgのデュピルマブ。11週間の曝露後に1コホートのマウスを犠牲死させ(11週間曝露群)、抗体処置の開始時の炎症プロファイルを決定した。最後の曝露および抗体注射の4日後である134日目(19週間曝露群)に、他の4つのコホートを犠牲死させた。血清単離のために全血を心臓穿刺によって採取し、肺をさらなる分析のために採取した。特に注記しない限り、全ての群は同じ系統のマウス(Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/hu)を含むものであった。
【0285】
肉眼肺病変の分析
相対肺重量は、生理食塩水曝露対照マウスと比較して、19週間のHDM曝露マウスにおいて有意に増加した(図3)。これはおそらく、細胞浸潤、コラーゲン沈着、筋肥大、および粘液産生の増加によると思われる。HDM曝露マウスにおいて、REGN3500およびデュピルマブの組み合わせ投与は、アイソタイプ対照抗体を投与したマウスと比較して、HDM曝露誘導性の相対肺重量増加を有意に阻止した(図3)。相対肺重量の減少傾向は、REGN3500単独で投与したHDM曝露マウスでも観察された。
【0286】
肺細胞浸潤物の分析
最後の抗体注射の4日後にマウスの肺を採取し、好酸球のフローサイトメトリー分析のために、右肺の尾葉を破砕して単一細胞懸濁液とした。好酸球を無傷の、単一の、生きているCD45、F4/80、Ly6G、SiglecFと定義し、活性化好酸球をCD11cHiとさらに定義した。活性化好酸球による肺浸潤は、(A)における総肺好酸球の頻度(%)として報告され、総肺好酸球浸潤は、生(無傷、単一、生きている)細胞における総肺好酸球の頻度(%)として報告された。
総活性化肺好酸球(図4Aおよび4B)および肺ST2CD4T細胞(ST2CD4T細胞は無傷、単一、生きているCD45、CD3、CD19、CD4、CD8、ST2として定義され、CD4T細胞の頻度として報告した)(図5)を検出するためのフローサイトメトリーによって測定した際に、または好中球のマーカーとしての肺MPOタンパク質レベルを検出するためのイムノアッセイによって評価した(MPOタンパク質レベルは酵素結合免疫吸着検定法により測定した)際に、生理食塩水曝露対照マウスと比較して、19週間のHDM曝露により、細胞肺浸潤は有意に増加した。肺MPOタンパク質レベルは、肺葉当たりのMPOタンパク質量(μg)として表される(図6)。
【0287】
いずれかの抗体単独の投与でなく、19週間のHDM曝露マウスにおけるREGN3500およびデュピルマブの組み合わせ投与は、アイソタイプ対照抗体の投与と比較して、活性化好酸球による肺浸潤のレベルを有意に低下させた。特に、REGN3500およびデュピルマブを組み合わせて投与したマウスにおける活性化好酸球による肺浸潤のレベルはまた、11週間のHDM曝露誘導レベルと比較して有意に減少し、このレベルは処置の開始に対応する(図4A)。いずれかの抗体単独の投与は有意な効果をもたらさなかったが、活性化好酸球による肺浸潤の減少傾向がデュピルマブ投与マウスで観察された。REGN3500およびデュピルマブを組み合わせて投与したHDM曝露マウスもまた、総好酸球によるHDM誘導性肺浸潤の減少傾向を示した(図4B)。
【0288】
REGN3500を単独でまたはデュピルマブと組み合わせて投与された19週間のHDM曝露マウスでは、ST2CD4T細胞による肺浸潤のレベルが、アイソタイプ対照投与マウスのレベルと比較して、および処置開始時における11週間のHDM曝露誘導性のレベルと比較して、有意に低下した(図5)。同様の浸潤阻止(1.02倍以内の平均頻度)がREGN3500単独およびデュピルマブとの組み合わせで観察され、この病変は主にIL-33によって引き起こされることを示している。
【0289】
好酸球浸潤と同様に、REGN3500およびデュピルマブの組み合わせ投与は、いずれかの抗体単独よりも好中球肺浸潤の阻止について強い効果を示した。好中球浸潤のマーカーであるミエロペルオキシダーゼ(MPO)の肺タンパク質レベルのHDM曝露誘導性の増加は、アイソタイプ対照と比較して、REGN3500とデュピルマブの組み合わせ投与によって有意に阻止された(図6)。いずれかの抗体を単独で投与しても有意な効果はもたらさなかったが、REGN3500投与マウスでは肺MPOタンパク質レベルの低下傾向が観察された。
【0290】
肺組織サイトカインレベル分析
肺タンパク質レベル(葉当たりの総タンパク質)に対するHDM曝露および抗体処置の効果を、マウスサイトカインIL-5、IL-13、IL-6、IL-1β、IL-12p70、TNFα、IFNγ、GROα、およびMCP-1、ならびにヒトサイトカインhIL-4について評価した。
【0291】
肺(右肺の前葉および中葉)を採取し、示されたマウスサイトカインのタンパク質レベルをマルチプレックスイムノアッセイにより測定した。市販のELISAキットを用いて、ヒトIL-4タンパク質レベル(hIL-4)を検出した。IL-5(図7A)およびIL-6(図7B)タンパク質レベルをマルチプレックスイムノアッセイにより測定した。肺組織サイトカインタンパク質レベルを肺葉当たりのタンパク量(pg)として計算した。淡黄色から濃青色までの範囲の相対サイトカインを示すために、偽色ヒートマップ(ここでは示していない)を生成した。相対肺サイトカインレベルの尺度は、各別のサイトカインについての平均肺タンパク質レベルの最低記録および最高記録をそれぞれ、0%(淡黄色)および100%(濃青色)と定義することによって作成した。相対的肺サイトカインタンパク質レベル(%)をヒートマップにおいて数値および色で示した。統計的有意性は、ダンの多重比較事後検定を用いたクラスカル・ウォリスの一元配置分散分析によって決定された。
【0292】
IL-12p70の結果は、全てのグループで定量化下限を下回っており、したがってここでは報告しない。
【0293】
8つのサイトカイン(hIL-4、IL-5、IL-6、IL-13、IL-1β、TNFα、GROα、およびMCP-1)は、生理食塩水曝露対照マウスと比較して、19週間のHDM曝露に応答した肺タンパク質レベルの有意な増加を示した。IFNγのみが、生理食塩水曝露対照マウスと比較して、19週間のHDM曝露に応答した肺タンパク質レベルの有意な増加を示さず、IFNγレベルも、アイソタイプ対照抗体を投与した19週間のHDM曝露マウスと比較して、治療用抗体の投与により影響を受けなかった。5つのサイトカイン(hll-4、IL-6、TNFα、GROα、およびMCP-1)の肺タンパク質レベルのHDM曝露誘導による増加は、アイソタイプ対照抗体投与マウスと比較して、REGN3500およびデュピルマブの組み合わせ投与によって有意に阻止されたが、いずれかの抗体単独の投与では阻止されなかった。
【0294】
別の2つのHDM曝露応答性サイトカイン(IL-5およびIL-1β)は、アイソタイプ対照抗体投与マウスと比較して、REGN3500およびデュピルマブの組み合わせ処置による阻止の傾向を示し、それぞれ83%および78%の肺タンパク質レベルの低下があった(図7Aおよび7B)。個々の抗体の投与は、IL-5およびIL-1βレベルの減少があまり顕著ではない傾向をもたらした。
【0295】
炎症の全身性マーカーSAAの分析
最後の曝露および抗体注射の4日後に、全血を心臓穿刺によって採取し、血清を単離し
た。循環SAAタンパク質レベルを市販のELISAキットを用いて測定した。循環SAAタンパク質レベルは、血清1mL当たりのSAAタンパク質量(μg)として表される。全身性炎症SAAマーカーの循環タンパク質レベルは、生理食塩水曝露対照マウスと比較して、19週間のHDM曝露マウスでは有意に増加した(図8)。
【0296】
循環SAAレベルのHDM曝露誘導による増加は、REGN3500を単独でまたはデュピルマブと組み合わせて投与したマウスでは有意に低下したが(図8)、デュピルマブ単独投与マウスでは循環SAAレベルの減少傾向が観察された。
【0297】
HDM曝露後の体液性アレルギー反応の定量化
最後の曝露および抗体注射の4日後に、全血を心臓穿刺によって採取し、血清を単離した。循環IgEタンパク質レベルを市販のELISAキットを用いて測定した。循環IgEタンパク質レベルは、血清1mL当たりのIgEタンパク質量(μg)として表される。
【0298】
研究終了時(134日目)における循環IgE(図9)およびHDM特異的IgG1(表15)のレベルによって評価されるように、体液性アレルギー反応はHDM曝露によって誘発された。
【0299】
IgEの循環タンパク質レベルは、生理食塩水曝露対照マウスと比較して、19週間のHDM曝露マウスでは有意に増加した(図9)。循環HDM特異的IgG1の平均力価は、生理食塩水曝露対照マウスにおける1.14E+02から19週間のHDM曝露マウスにおける1.37E+06~2.43E+06の範囲のレベルまで増加した(表15)。REGN3500、デュピルマブ、または組み合わせ処置の統計的に有意な効果はこれらの評価項目のいずれでも観察されなかったが、REGN3500およびデュピルマブの組み合わせ投与されたマウスでは血清IgEレベルの低下傾向が観察された。
【表20】
【0300】
ヒト抗体の血清中濃度の定量化
ヒトIgG4抗体(IgG4アイソタイプ対照、REGN3500、およびデュピルマブ)の血清中濃度を、最後の抗体投与の4日後である研究終了時(134日目)において標的特異的抗ヒトIgG4ELISAによって決定した。ヒトIgG4抗体の平均濃度を表16に概説する。
【表21】
【0301】
概要
生理食塩水のみに曝露された対照マウスと比較して、19週間HDMに曝露されたマウスは、未処置のままのときまたはIgG4アイソタイプ対照抗体の投与後において、14の測定された炎症病理学的マーカーのうちの1つ(肺IFNγレベル)を除く全てで増加を示した。
【0302】
REGN3500およびデュピルマブの組み合わせ投与は、アイソタイプ対照抗体と比較して、13の試験されたHDM曝露応答性評価項目うちの10(相対肺重量、活性化好酸球、好中球[MPOレベル]、およびST2CD4T細胞による肺浸潤、サイトカインhIL-4、IL-6、TNFα、GROα、およびMCP-1のタンパク質レベル、ならびにSAAの血清レベル)を有意に阻止した。さらに、活性化好酸球およびST2CD4T細胞による肺浸潤のレベルは、抗体処置の開始に相当する、11週間のHDM曝露マウスで観察されたレベルを下回るレベルまで有意に減少した。デュピルマブ単独の投与は、このモデルにおける13の試験されたHDM曝露応答性評価項目のいずれも有意に阻止しなかったが、REGN3500単独の投与は2つの試験評価項目:ST2CD4T細胞肺浸潤および循環SAAレベルを有意に阻止した。これら2つの評価項目について、REGN3500単独によって媒介される阻止はデュピルマブと組み合わせたREGN3500により媒介される阻止と同様であり、これらの病理学的マーカーが主にIL-33によって引き起こされることを示唆している。
【0303】
REGN3500およびデュピルマブの組み合わせ投与は、統計学的有意性に達することなく、別の3つのHDM曝露応答性評価項目(好酸球による肺浸潤[合計]、サイトカインIL-5およびIL-1βの肺タンパク質濃度、ならびにIgEの血清タンパク質レベル)を阻止する傾向を示した。これらのマーカーについて、REGN3500またはデュピルマブによる個々の抗体処置は概して、組み合わせ処置よりも弱い減少をもたらした。
【0304】
全ての抗体処置群は、試験終了時における標的特異的ヒトIgG4抗体の検出可能な血清レベルと関連していた。治療用抗体を単独または組み合わせのいずれかで、週2回、8
週間投与したマウスでは、試験終了時において、REGN3500の平均血清濃度がそれぞれ11.4±10.1および12.7±8.8μg/mLであり、デュピルマブの平均血清濃度が8.0±13.5および48.9±27.9μg/mLであった。
【0305】
結論として、Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウスを用いた19週間のHDM曝露誘導肺炎症モデルにおけるREGN3500およびデュピルマブとの組み合わせ処置は、いずれかの抗体単独での処置と比較して、試験された肺病変および炎症マーカーのほぼ全てについてより顕著な改善をもたらした。
【0306】
結論
Il4rahu/huIl4hu/huIl33hu/huマウスを用いた19週間のHDM曝露誘導肺炎症モデルにおけるREGN3500およびデュピルマブとの組み合わせ処置は、いずれかの抗体単独での処置と比較して、試験された肺病変および炎症マーカーのほぼ全てについてより顕著な改善をもたらした。
【0307】
実施例7:中等度から重度のCOPD患者において単独で使用される場合および併用療法として使用される場合のSAR440340/REGN3500またはデュピルマブの評価
研究設計
この研究は、中等度から重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者における、それぞれを単独で使用したときまたは組み合わせて使用したときのIL-33モノクローナル抗体(SAR440340/REGN3500)、IL-4Rモノクローナル抗体(デュピルマブ、DUPIXENT(登録商標)とも知られる)の有効性、安全性、および許容性を評価するための無作為化二重盲検プラセボ対照並行群の24週間の概念実証研究である。
【0308】
合計832人の対象がこの研究に参加する。この研究は4つの処置群からなり、第1処置群は抗IL-33モノクローナル抗体(SAR440340/REGN3500)単独を皮下投与(SC)した患者であり、第2処置群は抗IL-4Rモノクローナル抗体(デュピルマブ)単独を皮下投与した患者であり、第3処置群はSAR440340/REGN3500およびデュピルマブの両方を皮下に共投与した患者であり、第4処置群はプラセボである。
【0309】
処置群1の患者は、2週間毎に24週間にわたりSAR440340/REGN3500の2回SC注射を受け、2週間毎に24週間にわたり1回のSC注射としてデュピルマブプラセボが共投与される。処置群2の患者は、2週間毎に24週間にわたりデュピルマブの1回SC注射を受け、2週間毎に24週間にわたり2回のSC注射としてSAR440340/REGN3500プラセボが共投与される。処置群3の患者は、2週間毎に24週間にわたりSAR440340/REGN3500の2回SC注射を受け、2週間毎に24週間にわたり1回のSC注射としてデュピルマブが共投与される。処置群4の患者は、2週間毎に24週間にわたり、それぞれ2回および1回のSC注射として投与される、SAR440340/REGN3500およびデュピルマブに対する釣り合う用量のプラセボを受ける。
【0310】
研究目的
この研究の主目的は、吸入コルチコステロイド(ICS)、および/または長時間作用型β2アドレナリンアゴニスト(LABA)、および/または長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)のバックグラウンド療法(二重または三重療法)で処置された中等度から重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者における、呼吸機能の改善に対するインターロイキン33抗体(SAR440340/REGN3500)、インタ
ーロイキン4受容体モノクローナル抗体(デュピルマブ)、およびその両方の共投与の効果をプラセボと比較して決定し比較することであり、気管支拡張薬投与後の1秒量(FEV1)によって24週間にわたって評価される。
【0311】
副次的目的は、24週間の処置にわたる、中等度から重度のCOPD急性増悪(AECOPD)の発生率につい、SAR440340/REGN3500、デュピルマブ、およびその両方の共投与の効果をそれぞれプラセボと比較して評価することである。
【0312】
別の副次的目的は、SAR440340/REGN3500、デュピルマブ、およびその両方の共投与の効果を、それぞれプラセボと比較して、24週間にわたる気管支拡張薬前の1秒量;24週間にわたるベースラインから最初の中等度または重度AECOPD事象までの期間;COPDの臨床症状の評価;安全性および許容性について評価することである。
【0313】
組み入れ基準
研究のための組み入れ基準は以下の通りである:(1)中等度から重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者であること(気管支拡張薬投与後の1秒量(FEV1)努力肺活量(FVC)が70%未満、および気管支拡張薬投与後の予測1秒率(FEV1%)が80%超、しかし30%以下である)、(2)スクリーニング来院時1および来院時2/無作為化におけるCOPD評価試験(CAT)スコア10以上の患者であること、(3)慢性気管支炎の徴候および症状(慢性咳の他の原因(例えば、胃食道逆流症、慢性鼻副鼻腔炎、気管支拡張症)を除外した患者におけるスクリーニングまでの年間で3ヶ月間の慢性湿性咳)の既往歴のある患者であること、(4)スクリーニング前の1年以内に中等度増悪2回以上または重度増悪1回以上の既往歴書面のある患者であること、(5)来院2/無作為選択前の3ヶ月間に標準治療バックグランド療法があり、スクリーニング来院1前の少なくとも1ヶ月間安定投薬されている(二重療法:長時間作用型βアゴニスト(LABA)+長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)、もしくは吸入コルチコステロイド(ICS)+LABA、もしくはICS+LAMA、または三重療法:ICS+LABA+LAMAを含む)のいずれかを含む患者であること、(6)インフォームドコンセントについての書面に署名していること、ならびに(7)喫煙歴10箱/年以上の現在または以前の喫煙者であること。
【0314】
除外基準
この研究の除外基準は以下の通りである。(1)年齢が40歳以下または75歳超であること、(2)肥満度指数(BMI)が16未満の患者であること、(3)無作為選択前の6ヶ月以内にCOPDと診断された患者であること、(4)喘息の国際指針(GINA)のガイドラインに従って、現在、喘息と診断されていること、(5)COPD以外の重大な肺疾患(例えば、肺線維症、サルコイドーシス、間質性肺疾患、肺高血圧症、気管支拡張症、多発性血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症、二相性陽圧呼吸(Bilevel Positive Airway Pressure)に対する顕著な睡眠時無呼吸など)または末梢好酸球数の増加に関連する別の診断された肺疾患または全身性疾患があること、(6)α-1抗トリプシン欠乏症の診断があること、(7)長期(15時間超/日)酸素補給を必要とする進行性COPDがあること、(8)スクリーニング前4週間以内に中等度または重度COPD事象の急性増悪を有する患者であること、(9)スクリーニング/来院1前の4週間以内またはスクリーニング期間中に上気道または下気道感染症を経験した患者であること、(10)肺切除術または肺容量減少手術の既往歴または計画があること、(11)生物学的薬剤に対する全身性過敏反応の既往歴のある患者であること。
【0315】
実施例8.中等度から重度の喘息患者において単独で使用したときおよび併用療法として使用したときのSAR440340/REGN3500またはデュピルマブの評価
研究設計
この研究は、吸入ステロイド(ICS)および長時間作用型β2アドレナリンアゴニスト(LABA)療法ではよくコントロールされない中等度から重度の喘息患者における、SAR440340/REGN3500、デュピルマブ(DUPIXENT(登録商標)としても知られる)、ならびにSAR440340およびデュピルマブの共投与の有効性、安全性、および許容性を評価するための無作為化二重盲検プラセボ対照並行群の12週間の概念実証研究である。
【0316】
合計800人の対象がこの研究に参加する。この試験は4つの処置群からなり、第1処置群は抗IL-33モノクローナル抗体(SAR440340/REGN3500)単独を皮下投与(SC)した患者であり、第2処置群は抗IL-4Rモノクローナル抗体(デュピルマブ)単独を皮下投与した患者であり、第3処置群はSAR440340/REGN3500およびデュピルマブの両方を皮下に共投与した患者であり、第4処置群はプラセボである。
【0317】
処置群1の患者は、2週間毎に12週間にわたり2回の皮下(SC)注射として投与されるSAR440340/REGN3500、および2週間毎に12週間にわたり1回のSC注射としてのデュピルマブプラセボの共投与を受ける。処置群2の患者は、2週間毎に12週間にわたり1回のSC注射として投与されるデュピルマブ、および2週間毎に12週間にわたり2回のSC注射としてのSAR440340/REGN3500プラセボの共投与を受ける。処置群3の患者は、2週間毎に12週間にわたり2回のSC注射として投与されるSAR440340/REGN3500、および2週間毎に12週間にわたり1回のSC注射として投与されるデュピルマブの共投与を受ける。処置群4の患者は、2週間毎に12週間、それぞれ2回および1回のSC注射として投与される、SAR440340/REGN3500およびデュピルマブに対する釣り合う用量のプラセボを受ける。
【0318】
研究目的
主な研究目的は、「喘息コントロールの喪失」(LOAC)事象の発生率の減少に対するデュピルマブを併用したまたは併用しないSAR440340/REGN3500の効果をプラセボと比較して評価することである。
【0319】
副次的な研究目的は、1秒量(FEV1)に対するSAR440340/REGN3500およびSAR440340/REGN3500とデュピルマブとの共投与の効果をプラセボと比較して評価することと、FEV1に対するSAR440340/REGN3500とデュピルマブとの共投与の効果を、SAR440340/REGN3500と比較しておよびデュピルマブと比較して評価することと、LOACの減少に対するSAR440340/REGN3500とデュピルマブとの共投与の効果をSAR440340/REGN3500単独およびデュピルマブ単独と比較して評価することと、単独およびデュピルマブとの共投与におけるSAR440340/REGN3500の安全性および耐容性を評価すること、である。
【0320】
組み入れ基準
この研究のために以下の組み入れ基準を用いた:(1)喘息の世界死指針(GINA)2016ガイドラインに基づいて、少なくとも12ヶ月間喘息であるとの医師の診断を受けた成人患者(18歳以上)であって、その患者の喘息が、以下の基準を有するICS/LABA併用療法で一部コントロールされるまたはコントロールされないこと:中用量から高用量までのコルチコステロイド(ICS)吸入(1日2回(BID)の250mcg/日以上のプロピオン酸フルチカゾン、もしくは最大2000mcg/日のプロピオン酸フルチカゾンの等効力(equipotent)ICS1日投与量、または臨床的に匹敵
するもの)と、第2のコントローラーとしての長時間作用型βアゴニスト(LABA)と、を組み合わせて、少なくとも3か月間、来院1前の1か月以上安定的に投薬する既存の処置、(2)気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)が50%以上であるが、来院2/ベースライン時における予測正常値が85%以下であること、(3)スクリーニング中に2~4パフ(200~400mcg)のアルブテロール/サルブタモールまたはレバルブテロール/レボサルブタモールを投与した後に、FEV1において少なくとも12%および200mLの可逆性があること(患者が許容した場合、同じ来院中に3回以下の機会が、最大12パフの緩和薬(reliever medication)を用いて許容される)、来院1/スクリーニング前の6か月以内に2つの許容される肺活量測定評価を比較したときに、気管支拡張薬投与前のFEV1に20%の変動性がある既往歴書面がある、または来院1/スクリーニング前の12か月以内にメタコリンに対する陽性気道過敏性がこの組み入れ基準を満たすのに許容できると考えられること、(4)来院1前の1年以内に、以下の事象のいずれかを少なくとも1回は経験していなければならないこと:喘息を悪化させる全身用ステロイドによる処置(経口または非経口)、または喘息を悪化させる入院または緊急医療、(5)インフォームドコンセント書面に署名していること。
【0321】
除外基準
この研究の除外基準は以下の通りである:(1)18歳未満または70歳超の(すなわち、スクリーニング来院時に71歳に達している)患者であること、(2)肥満度指数(BMI)が16未満の患者であること、(3)肺機能を害し得る慢性肺疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、または特発性肺線維症[IPF])があること、(4)生命を脅かす喘息(すなわち挿管(intubation)を必要とする重度の増悪)の既往歴があること、(5)IMPの評価を妨げる可能性がある併存疾患があること、(6)スクリーニング来院1前の4週間以内に以下の事象のいずれかを有する患者であること:喘息を悪化させる1回以上の全身用(経口または非経口)ステロイドバーストによる処置、または喘息を悪化させる入院または緊急医療があること、(7)喘息コントロール質問票5項目版(Asthma Control Questionnaire 5-question version)(ACQ-5)スコアが来院2/無作為化時に1.25未満または3.0超であること。スクリーニング期間中、4以下のACQ-5が許容されること、(8)来院1前の130日以内に抗免疫グロブリンE(IgE)療法(例えば、オマリズマブ[Xolair(登録商標)]を受けたか、あるいは、炎症性疾患または自己免疫疾患(例えば、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、原発性胆汁性肝硬変、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症など)およびその他の疾患を処置するために、来院1前の2か月以内または5半減期(5half-lives)以内に(どちらか長期の方)、他の生物学的療法(抗IL5mAbを含む)または全身性免疫抑制薬(例えば、メトトレキサート)を受けたこと、(9)生物学的薬剤に対する全身性過敏反応の既往歴のある患者であること、(10)来院1前の2年以内に気管支サーモプラスティを受けたもしくは開始した患者、またはスクリーニング期間もしくは無作為化処置期間中に療法を開始することを計画している患者であること、(11)現喫煙者または来院1前の6か月以内に禁煙したこと、(12)10箱/年を超える喫煙歴の元喫煙者であること。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
【配列表】
2023175785000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)対象の気道または肺の炎症性疾患または障害を治療するか:
(ii)対象の肺線維性疾患または障害を治療するか:または
(iii)対象の気道または肺におけるアレルギー反応を予防またはその重症度を軽減する
方法で使用するための、インターロイキン-33(IL-33)アンタゴニストを含む医薬組成物であって、
前記方法は、それを必要とする対象に、治療有効量のIL-33アンタゴニストの1回以上の用量を治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストの1回以上の用量と組み合わせて投与することを含み、
前記IL-33アンタゴニストが、それぞれ配列番号276、278および280のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域(HCVR)と、それぞれ配列番号284、286および288のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含むモノクローナル抗体であり、
前記IL-4Rアンタゴニストが、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントである、医薬組成物。
【請求項2】
気道または肺の炎症性疾患または障害が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息およびCOPDオーバーラップ症候群(ACOS)、慢性気管支炎、気腫、鼻ポリープを伴うまたは伴わない慢性鼻副鼻腔炎、過敏性肺炎、およびアレルギー性鼻炎からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
炎症性疾患または障害が喘息である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記喘息が、ウイルス性疾患、細菌感染、アレルゲンへの曝露、化学物質もしくは化学煙霧への曝露、または環境刺激物もしくは大気汚染への曝露のうちの1つ以上によって増悪する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記喘息が、好酸球性喘息、非好酸球性喘息、ステロイド抵抗性喘息、またはステロイド感受性喘息である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記方法が、IL-33アンタゴニストを少なくとも12週間にわたり2週間毎に2回皮下投与することを含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記方法が、IL-4Rアンタゴニストを少なくとも12週間にわたり2週間毎に1回皮下投与することを含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
対象の気道または肺の炎症性疾患または障害が、慢性閉塞性肺疾患である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記慢性閉塞性肺疾患が、喘息、ウイルス性疾患、細菌感染、アレルゲンへの曝露、化学物質もしくは化学煙霧への曝露、または環境刺激物もしくは大気汚染への曝露のうちの1つ以上によって増悪する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記慢性閉塞性肺疾患が、タバコの煙に起因し、またはタバコの煙により一部増悪する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記方法が、IL-33アンタゴニストを少なくとも24週間にわたり2週間毎に2回皮下投与することを含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記方法が、IL-4Rアンタゴニストを少なくとも24週間にわたり2週間毎に1回皮下投与することを含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記IL-4Rアンタゴニストが、それぞれ配列番号339、340および341のアミノ酸を含む3つのHCDR、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVRと、それぞれ配列番号342、343および344のアミノ酸配列を含む3つのLCDR、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRとを含むモノクローナル抗体である、請求項7または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記IL-33アンタゴニストおよび前記IL-4Rアンタゴニストが、それらを必要とする対象に投与するために別々の製剤に存在する、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記IL-33アンタゴニストおよび前記IL-4Rアンタゴニストが、それらを必要とする対象に投与するために共製剤化される、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。