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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175794
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20231205BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20231205BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20231205BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/32
G02B5/18
B60K35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148370
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2020558224の分割
【原出願日】2019-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2018225179
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 隆延
(57)【要約】      (修正有)
【課題】3Dの虚像オブジェクトを生成可能なコンパクトなヘッドアップディスプレイを提供する。
【解決手段】HUD42は、所定の画像を生成するための光を出射する画像生成部424と、画像生成部424から出射された光を全反射させながら伝播させる導光体426と、画像生成部424から出射された光が導光体426内で全反射するように光の向きを変更する入射用HOE425と、導光体426内で全反射しながら伝播する光が導光体426から出射するように光の向きを変更する出射用HOE427と、入射した光を所定の方向に屈折させて出射するマイクロレンズアレイ428と、を備える。マイクロレンズアレイ428は、光の光路における出射用HOE427の後に設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、所定の画像を前記車両の乗員に向けて表示するように構成されたヘッドアップディスプレイであって、
前記所定の画像を生成するための光を出射する画像生成部と、
前記画像生成部から出射された光を全反射させながら伝播させる導光体と、
前記画像生成部から出射された光が前記導光体内で全反射するように前記光の向きを変更する第一変更部と、
前記導光体内で全反射しながら伝播する光が前記導光体から出射するように前記光を透過させて回析するまたは反射させて回析する第二変更部と、
入射した光を立体画像としての虚像が生成されるように屈折させて出射する光学素子と、を備え、
前記光学素子は、前記光の光路における前記第二変更部の後に設けられている、ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記第二変更部は、前記所定の画像により形成される虚像オブジェクトを生成する倍率または前記虚像オブジェクトの虚像位置を変更可能であるレンズ効果を有する構造を備えている、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記光学素子は、ホログラフィック光学素子である、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
将来の自動運転社会では、車両と人間との間の視覚的コミュニケーションが益々重要になっていくことが予想される。例えば、車両と当該車両の乗員との間の視覚的コミュニケーションが益々重要になっていくことが予想される。この点において、ヘッドアップディスプレイ(HUD)を用いて車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを実現することができる。ヘッドアップディスプレイは、ウインドシールドやコンバイナに画像や映像を投影させ、その画像をウインドシールドやコンバイナを通して現実空間と重畳させて乗員に視認させることで、いわゆるAR(Augmented Reality)を実現することができる。
【0003】
ヘッドアップディスプレイの一例として、特許文献1には、透明な表示媒体を用いて立体的な虚像を表示するための光学系を備える表示装置が開示されている。当該表示装置は、ウインドシールドまたはコンバイナ上で、運転者の視界内に光を投射する。投射された光の一部はウインドシールドまたはコンバイナを透過するが、他の一部はウインドシールドまたはコンバイナに反射される。この反射光は運転者の目に向かう。運転者は、目に入ったその反射光を、ウインドシールドやコンバイナ越しに見える実在の物体を背景に、ウインドシールドやコンバイナを挟んで反対側(自動車の外側)にある物体の像のように見える虚像として知覚する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2018-45103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、3Dの虚像オブジェクトを生成可能なコンパクトなヘッドアップディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るヘッドアップディスプレイは、車両に設けられ、所定の画像を前記車両の乗員に向けて表示するように構成されたヘッドアップディスプレイであって、
前記所定の画像を生成するための光を出射する画像生成部と、
前記画像生成部から出射された光を全反射させながら伝播させる導光体と、
前記画像生成部から出射された光が前記導光体内で全反射するように前記光の向きを変更する第一変更部と、
前記導光体内で全反射しながら伝播する光が前記導光体から出射するように前記光を透過させて回析するまたは反射させて回析する第二変更部と、
入射した光を立体画像としての虚像が生成されるように屈折させて出射する光学素子と、を備え、
前記光学素子は、前記光の光路における前記第二変更部の後に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、3Dの虚像オブジェクトを生成可能なコンパクトなヘッドアップディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る車両システムのブロック図である。
図2図1の車両システムのHUDの構成を示す模式図である。
図3】画像生成部及びマイクロレンズアレイを有するHUD本体部の参考例を示す図である。
図4図2のHUD本体部を説明するための図である。
図5】変形例に係るHUDの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0010】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」について適宜言及する場合がある。これらの方向は、図2に示すHUD(Head-Up Display)42について設定された相対的な方向である。図2において、Uは上方、Dは下方、Fは前方、Bは後方である。ここで、「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。左右方向は、図2では示されていないが、上下方向及び前後方向に直交する方向である。
【0011】
最初に、図1を参照して、本実施形態に係る車両システム2について以下に説明する。図1は、車両システム2のブロック図である。当該車両システム2が搭載された車両1は、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
【0012】
図1に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、車両用表示システム4(以下、単に「表示システム4」という。)と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7とを備える。さらに、車両システム2は、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、記憶装置11と、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備える。
【0013】
車両制御部3は、車両の走行を制御するように構成されている。車両制御部3は、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC(System on a Chip)等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及びTPU(Tensor Processing Unit)のうちの少なくとも一つを含む。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)を含む。ROMには、車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、車両制御プログラムは、自動運転用の人工知能(AI)プログラムを含んでもよい。AIプログラムは、多層のニューラルネットワークを用いた教師有り又は教師なし機械学習(特に、ディープラーニング)によって構築されたプログラム(学習済みモデル)である。RAMには、車両制御プログラム、車両制御データ及び/又は車両の周辺環境を示す周辺環境情報が一時的に記憶されてもよい。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。また、コンピュータシステムは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。さらに、コンピュータシステムは、ノイマン型コンピュータと非ノイマン型コンピュータの組み合わせによって構成されてもよい。
【0014】
センサ5は、加速度センサ、速度センサ及びジャイロセンサのうち少なくとも一つを含む。センサ5は、車両の走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部3に出力するように構成されている。センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、外部天候状態を検出する外部天候センサ及び車内に人がいるかどうかを検出する人感センサ等をさらに備えてもよい。運転者は、車両1の乗員の一例である。
【0015】
カメラ6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6は、一以上の外部カメラ6Aと、内部カメラ6Bとを含む。外部カメラ6Aは、車両の周辺環境を示す画像データを取得した上で、当該画像データを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された画像データに基づいて、周辺環境情報を取得する。ここで、周辺環境情報は、車両の外部に存在する対象物(歩行者、他車両、標識等)に関する情報を含んでもよい。例えば、周辺環境情報は、車両の外部に存在する対象物の属性に関する情報と、車両に対する対象物の距離や位置に関する情報とを含んでもよい。外部カメラ6Aは、単眼カメラとしても構成されてもよいし、ステレオカメラとして構成されてもよい。
【0016】
内部カメラ6Bは、車両の内部に配置されると共に、乗員を示す画像データを取得するように構成されている。内部カメラ6Bは、乗員の視点Eをトラッキングするトラッキングカメラとして機能する。ここで、乗員の視点Eは、乗員の左目の視点又は右目の視点のいずれかであってもよい。または、視点Eは、左目の視点と右目の視点を結んだ線分の中点として規定されてもよい。
【0017】
レーダ7は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ及びレーザーレーダ(例えば、LiDARユニット)のうちの少なくとも一つを含む。例えば、LiDARユニットは、車両の周辺環境を検出するように構成されている。特に、LiDARユニットは、車両の周辺環境を示す3Dマッピングデータ(点群データ)を取得した上で、当該3Dマッピングデータを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された3Dマッピングデータに基づいて、周辺環境情報を特定する。
【0018】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイ(HUDを除く)である。GPS9は、車両の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0019】
無線通信部10は、車両の周囲にいる他車に関する情報(例えば、走行情報等)を他車から受信すると共に、車両に関する情報(例えば、走行情報等)を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。また、無線通信部10は、歩行者が携帯する携帯型電子機器(スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス等)から歩行者に関する情報を受信すると共に、車両の自車走行情報を携帯型電子機器に送信するように構成されている(歩車間通信)。車両は、他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器とアドホックモードにより直接通信してもよいし、アクセスポイントを介して通信してもよい。さらに、車両は、図示しない通信ネットワークを介して他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器と通信してもよい。通信ネットワークは、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)及び無線アクセスネットワーク(RAN)のうちの少なくとも一つを含む。無線通信規格は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、LPWA、DSRC(登録商標)又はLi-Fiである。また、車両1は、他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器と第5世代移動通信システム(5G)を用いて通信してもよい。
【0020】
記憶装置11は、ハードディスクドライブ(HDD)やSSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置である。記憶装置11には、2次元又は3次元の地図情報及び/又は車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、3次元の地図情報は、3Dマッピングデータ(点群データ)によって構成されてもよい。記憶装置11は、車両制御部3からの要求に応じて、地図情報や車両制御プログラムを車両制御部3に出力するように構成されている。地図情報や車両制御プログラムは、無線通信部10と通信ネットワークを介して更新されてもよい。
【0021】
車両が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、車両の走行を自動的に制御する。つまり、自動運転モードでは、車両の走行は車両システム2により自動制御される。
【0022】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両の走行は運転者により制御される。
【0023】
表示システム4は、ヘッドランプ20と、路面描画装置45と、HUD42と、表示制御部43とを備える。
【0024】
ヘッドランプ20は、車両の前面における左側と右側に配置されており、ロービームを車両の前方に照射するように構成されたロービームランプと、ハイビームを車両1の前方に照射するように構成されたハイビームランプとを備える。ロービームランプとハイビームランプの各々は、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の1以上の発光素子と、レンズ及びリフレクタ等の光学部材を有する。
【0025】
路面描画装置45は、ヘッドランプ20の灯室内に配置されている。路面描画装置45は、車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成されている。路面描画装置45は、例えば、光源部と、駆動ミラーと、レンズやミラー等の光学系と、光源駆動回路と、ミラー駆動回路とを有する。光源部は、レーザ光源又はLED光源である。例えば、レーザ光源は、赤色レーザ光と、緑色レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。駆動ミラーは、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、DMD(Digital Mirror Device)、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等である。光源駆動回路は、光源部を駆動制御するように構成されている。光源駆動回路は、表示制御部43から送信された所定の光パターンに関連する信号に基づいて、光源部の動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を光源部に送信するように構成されている。ミラー駆動回路は、駆動ミラーを駆動制御するように構成されている。ミラー駆動回路は、表示制御部43から送信された所定の光パターンに関連する信号に基づいて、駆動ミラーの動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を駆動ミラーに送信するように構成されている。光源部がRGBレーザ光源である場合、路面描画装置45は、レーザ光を走査することで様々の色の光パターンを路面上に描画することが可能となる。例えば、光パターンは、車両の進行方向を示す矢印形状の光パターンであってもよい。
【0026】
また、路面描画装置45の描画方式は、ラスタースキャン方式、DLP(Digital Light Processing)方式又はLCOS(Liquid Crystal on Silicon)方式であってもよい。DLP方式又はLCOS方式が採用される場合、光源部はLED光源であってもよい。また、路面描画装置の描画方式として、プロジェクション方式が採用されてもよい。プロジェクション方式が採用される場合、光源部は、マトリクス状に並んだ複数のLED光源であってもよい。路面描画装置45は、左右のヘッドランプの灯室内にそれぞれ配置されてもよいし、車体ルーフ上、バンパーまたはグリル部に配置されてもよい。
【0027】
表示制御部43は、路面描画装置45、ヘッドランプ20及びHUD42の動作を制御するように構成されている。表示制御部43は、電子制御ユニット(ECU)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、CPU、MPU、GPU及びTPUのうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROMと、RAMを含む。また、コンピュータシステムは、ASICやFPGA等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。表示制御部43は、内部カメラ6Bによって取得された画像データに基づいて、乗員の視点Eの位置を特定してもよい。乗員の視点Eの位置は、画像データに基づいて、所定の周期で更新されてもよいし、車両の起動時に一回だけ決定されてもよい。
【0028】
本実施形態では、車両制御部3と表示制御部43は、別個の構成として設けられているが、車両制御部3と表示制御部43は一体的に構成されてもよい。この点において、表示制御部43と車両制御部3は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。また、表示制御部43は、ヘッドランプ20と路面描画装置45の動作を制御するように構成された電子制御ユニットと、HUD42の動作を制御するように構成された電子制御ユニットの2つの電子制御ユニットによって構成されてもよい。
【0029】
HUD42は、少なくとも一部が車両の内部に位置する。具体的には、HUD42は、車両の室内の所定箇所に設置されている。例えば、HUD42は、車両のダッシュボード内に配置されてもよい。HUD42は、車両と乗員との間の視覚的インターフェースとして機能する。HUD42は、所定の情報(以下、HUD情報という。)が車両の外部の現実空間(特に、車両の前方の周辺環境)と重畳されるように当該HUD情報を乗員に向けて表示するように構成されている。このように、HUD42は、AR(Augmented Reality)ディスプレイとして機能する。HUD42によって表示されるHUD情報は、例えば、車両の走行に関連した車両走行情報及び/又は車両の周辺環境に関連した周辺環境情報(特に、車両の外部に存在する対象物に関連した情報)である。
【0030】
図2に示すように、HUD42は、HUD本体部420を備えている。HUD本体部420は、ハウジング422と出射窓423を有する。出射窓423は可視光を透過させる透明板である。HUD本体部420は、ハウジング422の内側に、画像生成部(PGU:Picture Generation Unit)424と、入射用ホログラフィック光学素子425と、導光体426と、出射用ホログラフィック光学素子427と、マイクロレンズアレイ428とを有する。入射用ホログラフィック光学素子425及び出射用ホログラフィック光学素子427は、以下、入射用HOE425及び出射用HOE427という。入射用HOE425は、第一変更部の一例である。出射用HOE427は、第二変更部の一例である。
【0031】
画像生成部424は、光源(図示なし)と、光学部品(図示なし)と、表示デバイス429と、制御基板430と、を有する。光源は、例えば、レーザ光源又はLED光源である。レーザ光源は、例えば、赤色レーザ光と、緑色レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。光学部品は、プリズム、レンズ、拡散板、拡大鏡等を適宜有する。表示デバイス429は、発光アレイ(複数の光源体をアレイ状に配置したもの)等である。なお、表示デバイスは、発光アレイに限定されない。例えば、表示デバイスは、液晶ディスプレイ、DMD(Digital Mirror Device)、マイクロLEDディスプレイなど2D表示するデバイスであってもよい。画像生成部424の描画方式は、ラスタースキャン方式、DLP方式又はLCOS方式であってもよい。DLP方式又はLCOS方式が採用される場合、画像生成部424の光源はLED光源であってもよい。なお、液晶ディスプレイ方式が採用される場合、画像生成部424の光源は白色LED光源であってもよい。
【0032】
制御基板430は、表示デバイス429の動作を制御するように構成されている。制御基板430は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリが搭載され、メモリから読みだしたコンピュータプログラムをプロセッサが実行して、表示デバイス429の動作を制御する。制御基板430は、表示制御部43から送信された画像データに基づいて、表示デバイス429の動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を表示デバイス429に送信するように構成されている。なお、制御基板430は、表示制御部43の一部として構成されていてもよい。
【0033】
入射用HOE425は、導光体426の内部において、画像生成部424から出射された光の光路上に配置されている。入射用HOE425は、画像生成部424から出射されて導光体426に入射した光を所定の方向に回折するように構成されている。入射用HOE425は、入射した光を透過させて回折する透過型HOEである。例えば、入射用HOE425は、表面にフォトポリマーフィルムが貼付された透明ガラス基板を、樹脂やガラスでできた二つの基材で挟みこむことにより構成される。なお、入射用HOE425は、導光体426の外側に配置されてもよい。この場合、入射用HOE425は、画像生成部424から出射された光が導光体426に所定の角度で入射するように、画像生成部424から出射された光を回折するように構成されている。
【0034】
導光体426は、アクリルやポリカーボネート等の透明樹脂により形成されている。導光体426は、入射用HOE425で回折された光を全反射させながら伝播させる。
【0035】
出射用HOE427は、導光体426の内部において、導光体426内で伝播された光の光路上に配置されている。出射用HOE427は、導光体426内で伝播された光が導光体426からマイクロレンズアレイ428に向けて出射するように、導光体426内で伝播された光を所定の方向に回折するように構成されている。出射用HOE427は、入射した光を透過させて回折する透過型HOEである。例えば、出射用HOE427は、表面にフォトポリマーフィルムが貼付された透明ガラス基板を、樹脂やガラスでできた二つの基材で挟みこむことにより構成される。なお、出射用HOE427は、入射した光を反射させて所定の方向に回折する反射型HOEであってもよい。
【0036】
マイクロレンズアレイ428は、導光体426から出射された光の光路上に配置されている。マイクロレンズアレイ428は、複数の微小な凸レンズが二次元状に配列されて構成されている。マイクロレンズアレイ428は、導光体426から出射されてマイクロレンズアレイ428に入射した光を所定の方向に屈折させてウインドシールド18に向けて出射する。マイクロレンズアレイ428から出射された光は、ライトフィールド方式により、表示デバイス429の2D画像(平面画像)を3D画像(立体画像)として生成する光として出射される。
【0037】
HUD本体部420から出射された光は、ウインドシールド18(例えば、車両1のフロントウィンドウ)に照射される。次に、HUD本体部420からウインドシールド18に照射された光の一部は、乗員の視点Eに向けて反射される。この結果、乗員は、HUD本体部420から出射された光(所定の3D画像)をウインドシールド18の前方の所定の距離において形成された3Dの虚像として認識する。このように、HUD42によって表示される画像がウインドシールド18を通して車両1の前方の現実空間に重畳される結果、乗員は、所定の画像により形成される3Dの虚像オブジェクトIが車両外部に位置する道路上に浮いているように視認することができる。
【0038】
次に、図3及び図4を参照して本実施形態に係るHUD本体部420について以下に説明する。図3は、画像生成部424A及びマイクロレンズアレイ428Aを有するHUD本体部420Aの参考例を示す図である。図4は、図2のHUD本体部420を説明するための図である。尚、上記の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0039】
図3のHUD本体部420Aは、ハウジング422Aと出射窓423Aを有する。HUD本体部420Aは、ハウジング422Aの内側に、画像生成部424Aと、マイクロレンズアレイ428Aとを有する。画像生成部424Aは、光源(図示なし)と、光学部品(図示なし)と、表示デバイス429Aと、制御基板430Aと、を有する。制御基板430Aは、表示制御部43から送信された画像データに基づいて、表示デバイス429Aの動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を表示デバイス429Aに送信する。
【0040】
マイクロレンズアレイ428Aは、画像生成部424Aから出射された光の光路上に配置されるように、画像生成部424Aに対向して配置される。マイクロレンズアレイ428Aは、画像生成部424Aから出射されマイクロレンズアレイ428Aに入射した光を所定の方向に屈折してウインドシールド18に向けて出射する。ライトフィールド方式により、マイクロレンズアレイ428Aから出射された光は、表示デバイス429Aの2D画像(平面画像)を3D画像(立体画像)として生成する光として出射される。
【0041】
表示デバイス429Aは、乗員が、HUD本体部420Aから出射された光(所定の画像)をウインドシールド18の前方の所定の距離において形成された虚像として認識することができるように、配置される。すなわち、表示デバイス429Aは、マイクロレンズアレイ428Aに対して、ウインドシールド18の前方の前記所定の距離に対応した距離だけ離して配置される。このため、HUD本体部420A(ハウジング422A)全体のサイズが大きくなってしまう。
【0042】
図4の本実施形態のHUD本体部420は、入射用HOE425、導光体426及び出射用HOE427を用いて、図3の表示デバイス429Aを虚像化する。このため、HUD本体部420(ハウジング422)全体のサイズを大きくしなくても、乗員がHUD本体部420から出射された光(所定の画像)をウインドシールド18の前方の所定の距離において形成された虚像を認識できるようにすることができる。
【0043】
図4において、表示デバイス429により形成された画像の光は、導光体426に入射され、入射用HOE425を介して導光体426内で全反射を繰り返して伝播され、出射用HOE427を介して導光体426から出射される。マイクロレンズアレイ428は、導光体426から出射されてマイクロレンズアレイ428に入射した光を所定の方向に屈折してウインドシールド18に向けて出射する。ライトフィールド方式により、マイクロレンズアレイ428から出射された光は、表示デバイス429の2D画像(平面画像)を3D画像(立体画像)として生成する光として出射される。
【0044】
本実施形態のHUD本体部420は、入射用HOE425、導光体426及び出射用HOE427を用いることにより、導光体426から出射された光が、表示デバイスの虚像429’から出射された光(二点鎖線)と同じ光路でマイクロレンズアレイ428に入射される。このため、表示デバイス429をマイクロレンズアレイ428に対向する位置に設ける必要がなく、HUD本体部420の大型化を防ぐことができる。また、導光体426内に入射された光は反射を繰り返すため、導光体426を長く形成することなく、長い光路長を得ることができる。これにより、虚像オブジェクトIが視認される距離を長く(虚像オブジェクトIを遠い位置に生成)することができる。なお、出射用HOE427は、レンズ効果を有する構造とすることにより、虚像オブジェクトIを生成する倍率や虚像オブジェクトIの虚像位置を変更可能としてもよい。
【0045】
このように、本実施形態では、導光体426は、画像生成部424から出射された光を全反射させながら伝播させて、マイクロレンズアレイ428に向けて出射する。入射用HOE425は、画像生成部424から出射された光が導光体426内で全反射するように光の向きを変更する。出射用HOE427は、導光体426内で全反射しながら伝播する光が導光体426から出射するように光の向きを変更する。これにより、HUDの大型化を防ぎつつ、光路長を長くすることができる。また、マイクロレンズアレイ428は、導光体426から出射されてマイクロレンズアレイ428に入射した光を所定の方向に屈折させて出射する。これにより、3Dの虚像オブジェクトIを生成することができる。また、マイクロレンズアレイ428を用いて3Dの虚像オブジェクトIを生成することにより、凹面鏡を用いて虚像オブジェクトを生成する場合と比較して、コンパクトな構造を実現できる。結果として、コンパクトな構造で、3Dの虚像オブジェクトを生成可能なヘッドアップディスプレイを提供することができる。
【0046】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0047】
図5は、変形例に係るHUD142の構成を示す模式図である。
図5に示すように、変形例に係るHUD142は、HUD本体部420と、コンバイナ143とによって構成されている。コンバイナ143は、ウインドシールド18とは別体の構造物として、ウインドシールド18の内側に設けられている。コンバイナ143は、例えば、透明なプラスチックディスクであって、ウインドシールド18の代わりにマイクロレンズアレイ428により出射された光が照射される。これにより、ウインドシールド18に光を照射した場合と同様に、HUD本体部420からコンバイナ143に照射された光の一部は、乗員の視点Eに向けて反射される。この結果、乗員は、HUD本体部420からの出射光(所定の画像)をコンバイナ143(およびウインドシールド18)の前方の所定の距離において形成された虚像として認識することができる。
【0048】
また、本実施形態では、ホログラフィック光学素子を用いて光の向きを変更していたが、これに限定されない。例えば、回折光学素子(DOE:Diffractive Optiocal Element)などを用いてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、マイクロレンズアレイ428を用いて3Dの虚像オブジェクトを生成していたが、これに限定されない。マイクロレンズアレイと同様の効果のある光学素子、例えば、HOEを用いてもよい。
【0050】
本出願は、2018年11月30日出願の日本特許出願2018-225179号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5