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特開2023-175799がんの免疫療法のためのNKG2D-IG融合タンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175799
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】がんの免疫療法のためのNKG2D-IG融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20231205BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231205BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20231205BHJP
   A61K 39/00 20060101ALN20231205BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
A61K38/17
A61P35/00
A61P37/04
C12N15/09 Z
A61K39/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148458
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2022033214の分割
【原出願日】2016-11-11
(31)【優先権主張番号】62/255,016
(32)【優先日】2015-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(72)【発明者】
【氏名】グレン・ドラノフ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・サリヴァン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ヴァネマン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がんの免疫療法のための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】本方法は、二量体NKG2D部分及びFc部分を含み、1つ又は複数のNKG2Dリガンドと結合するキメラ分子(例えば、融合タンパク質)の使用に関わる。いくつかの実施形態において、分子は、薬物部分(例えば、IL15/Ra部分)を更に含む。本明細書に開示する方法は、1つ又は複数のNKG2Dリガンドの異常な発現と関連するがんの処置のために有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NKG2D1-NKG2D2-Fcを含む二量体NKG2D-Fcキメラであって、
NKG2D1及びNKG2D2は、それぞれ、NKG2D又はその断片を含み、NKG2Dリガンドと結合するこ
とができ;及び、
Fcは、免疫グロブリンの断片結晶性領域(Fc)を含む、
二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項2】
薬物部分を更に含む、請求項1に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項3】
薬物部分が、キメラのアミノ末端又はカルボキシ末端に付加されている、請求項2に記
載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項4】
薬物部分が、キメラのカルボキシ末端に付加されている、請求項2に記載の二量体NKG2D
-Fcキメラ。
【請求項5】
少なくとも1つの連結分子を更に含み、少なくとも1つの連結分子が、NKG2D1、NKG2D2
Fc又は薬物部分の隣接部分ではなく、
(a)NKG2D1のアミノ酸をNKG2D2のアミノ酸と、
(b)NKG2D2のアミノ酸をFcのアミノ酸と、又は、
(c)Fcのアミノ酸を薬物部分と
共有結合的に連結する、請求項1から4のいずれか一項に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項6】
キメラが、3つの連結分子X1、X2及びX3を含み、
X1が、NKG2D1のアミノ酸をNKGD2のアミノ酸と共有結合的に連結し;
X2が、NKG2D2のアミノ酸をFcのアミノ酸と共有結合的に連結し;及び、
X3が、Fcのアミノ酸を薬物部分と共有結合的に連結する、
請求項5に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項7】
少なくとも1つの連結分子が、ペプチドリンカーである、請求項5に記載の二量体NKG2D-
Fcキメラ。
【請求項8】
ペプチドリンカーが、約2~約25アミノ酸の長さの範囲である、請求項7に記載の二量体
NKG2D-Fcキメラ。
【請求項9】
少なくとも1つの連結分子が、グリシン-セリンリンカーである、請求項5に記載の二量
体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項10】
グリシン-セリンリンカーが、式(GS)n(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、1
1又は12である)によって表される、請求項9に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項11】
グリシン-セリンリンカーが、式(GGGGS)n(配列番号2)(式中、nは、1、2、3、4又は5で
ある)によって表される、請求項9に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項12】
X1が、(GS)3であり、X2、X3及びX4が、それぞれ、(GGGGS)4(配列番号3)である、請求項
6に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項13】
NKG2D断片が、NKG2Dの細胞外断片を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の二量
体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項14】
NKG2D細胞外断片が、配列番号1によって表される、請求項13に記載の二量体NKG2D-Fcキ
メラ。
【請求項15】
Fcが、ヒト免疫グロブリン(IgG)の断片結晶性領域(Fc)を含む、請求項1から14のいずれ
か一項に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項16】
ヒト免疫グロブリンが、IgG1である、請求項15に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項17】
薬物部分が、サイトカイン、ケモカイン、小分子、毒素、放射性核種及び酵素からなる
群から選択される、請求項2から16のいずれか一項に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項18】
薬物部分が、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21及びIFN-αからなる群から選択される
サイトカインである、請求項17に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項19】
薬物部分が、IL-15のヘテロ複合体及び可溶性IL-15受容体アルファ鎖を含む、請求項17
に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項20】
IL-15が、GSリンカーを介して、可溶性IL-15受容体アルファ鎖と連結されている、請求
項19に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の二量体NKG2D-Fcキメラ、及び薬学的に許容され
る担体を含む組成物。
【請求項22】
NKG2Dリガンドを発現するがんを有する対象に、がんを処置するための有効量で、請求
項1から20のいずれか一項に記載の二量体NKG2D-Fcキメラを投与することを含む、
がんを処置するための方法。
【請求項23】
NKG2Dリガンドを発現するがんが、メラノーマ、肺がん、形質細胞がん、白血病、リン
パ腫、卵巣がん、結腸がん、膵臓がん又は前立腺がんである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象を、追加の抗がん治療で処置することを更に含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
追加の抗がん治療が、外科手術、放射線治療、化学療法、遺伝子治療、DNA治療、ウイ
ルス性治療、RNA治療、補助療法及び免疫療法からなる群から選択される、請求項24に記
載の方法。
【請求項26】
追加のがん治療が、DNAに損傷を与える化学療法である、請求項22から24のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項27】
二量体NKG2D-Fcキメラが、単量体NKG2D-Fcキメラと比較して、NKG2Dリガンドに、増大
したアビディティーで結合する、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
NKG2Dリガンドが、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5又はULBP6である
、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アビディティーが、2倍、5倍、10倍、100倍又は1000倍増大している、請求項27又は28
に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年11月13日に出願された米国仮出願番号第62/255,016号に対する米国特
許法第119条(e)の優先権を主張し、その内容は、参照により、その全体が、本明細書に組
み込まれる。
【背景技術】
【0002】
NKG2Dは、細胞外レクチン様ドメインを有するII型膜貫通糖タンパク質である。このド
メインは、真性のC型レクチンにおいて見出される認識可能なカルシウム結合部位を欠き
、糖質リガンドよりむしろタンパク質と結合する。NKG2Dは、様々な免疫細胞において発
現する活性化受容体である。ヒトNKG2Dは、CD8+αβT細胞、γδT細胞、NK細胞及びNKT細
胞において発現する。マウスの系において、NKG2Dは、マクロファージにおいても生じる
。NKG2Dのためのヒトリガンドとしては、MHCクラスI鎖関連分子(MICA及びMICB)、UL16結
合タンパク質(ULBP1、ULBP2、ULBP3及びULBP4)及びRAET-1Gが挙げられ;NKG2Dのためのマ
ウスリガンドとしては、マイナー組織適合抗原60(H60)及びレチノイン酸初期誘導性転写
物(RAE-1)が挙げられる。NKG2Dリガンドの発現はまた、ストレス又は感染症の条件下、腸
上皮細胞、腫瘍細胞において生じる。
【0003】
NKG2Dは、リガンドの結合の際に、活性化シグナルを伝達するジスルフィド連結ホモ二
量体として存在する。シグナル伝達には、アダプタータンパク質との会合が必要である。
NKG2DのmRNAの選択的スプライシングは、真の活性化シグナルを伝達するDAP12、又は共刺
激シグナルをもたらすDAP10のいずれかと会合し得る、異なる細胞質ドメインを有するア
イソフォームをもたらす。NKG2Dは、ウイルス感染に対する免疫監視及び免疫応答に関わ
っている。加えて、NKG2Dリガンドのレベルの上昇は、増殖性細胞及び多くの種類のがん
において検出されている。
【0004】
ある特定のNKG2D-Fcキメラ及びそれらの使用は、例えば、公開されたPCT出願国際公開
第WO/2010/080124号パンフレットに、以前に開示されており、その全内容は、参照により
、本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO2010/080124号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,992,174B2号
【特許文献3】国際公開第WO2006/107124号パンフレット
【特許文献4】米国特許公開第2003/0028071号
【特許文献5】米国特許公開第2003/0032995号
【特許文献6】米国特許第4,675,187号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lengyelら、2007年、J.Biol.Chem.、282巻:30658~666頁
【非特許文献2】Strong及びMcFarland、2004年、Advances in Protein Chemistry、68巻:281~213頁
【非特許文献3】Liuら、2008年;Immunological Reviews、222巻:9~27頁
【非特許文献4】Nimmerjahn F.及びRavetch JV.、2006年、Immunity、24巻:19~28頁
【非特許文献5】Cartron G.ら、2002年、Blood、99巻:754~758頁
【非特許文献6】Nimmerjahn及びRavetch、2007年、Curr.Opin.Immunol.、19巻(2号):239~45頁
【非特許文献7】Chenら、Adv.Drug Deliv.Rev.(2013年)、65巻(10号):1357~69頁
【非特許文献8】Rowleyら、Eur J Immunol.2009年2月;39巻(2号):491~506頁
【非特許文献9】Zhangら、2004年、J.Gene Med.、7巻:354~65頁
【非特許文献10】Caineら、Protein Expr.Purif.、1996年、8巻:159~66頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示において、がん治療のための新規な組成物及び方法を提供する。本発明は、少な
くとも部分的に、2つのNKG2D断片及びFc断片を含むキメラ分子(例えば、二量体NKG2D-Fc
キメラ)が、1つ又は複数のNKG2Dリガンドと結合する能力を有し、単一のNKG2D断片及びFc
断片を含むキメラ分子(例えば、単量体NKG2D-Fcキメラ)と比較して、改善された有効性で
、腫瘍細胞死を誘導するという、驚くべき発見に基づく。いくつかの実施形態において、
本文書によって記載される二量体NKG2D-Fcキメラは、単量体NKG2D-Fcキメラと比較して、
NKG2Dリガンドに、増大したアビディティーで結合する。いくつかの実施形態において、
アビディティーは、2倍、5倍、10倍、100倍又は1000倍増大する。
【0008】
したがって、いくつかの態様において、本開示は、NKG2D1-NKG2D2-Fcを含む二量体NKG2
D-Fcキメラであって、NKG2D1及びNKG2D2は、それぞれ、NKG2D又はその断片を含み、NKG2D
リガンドと結合することができ;及び、Fcは、免疫グロブリンの断片結晶性領域(Fc)を含
む、二量体NKG2D-Fcキメラを提供する。いくつかの態様において、本開示は、本明細書に
記載の二量体NKG2D-Fcキメラ、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、薬物部分を更に含む。いくつ
かの実施形態において、薬物部分は、キメラのアミノ末端又はカルボキシ末端に付加され
ている。いくつかの実施形態において、薬物部分は、キメラのカルボキシ末端に付加され
ている。
【0010】
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、少なくとも1つの連結分子を
更に含み、少なくとも1つの連結分子が、NKG2D1、NKG2D2、Fc又は薬物部分の隣接部分で
はなく、NKG2D1のアミノ酸とNKG2D2のアミノ酸、NKG2D2のアミノ酸とFcのアミノ酸、又は
Fcのアミノ酸と薬物部分を、共有結合的に連結する。
【0011】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの連結分子は、ペプチドリンカーである
。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、約2~約25アミノ酸の長さの範囲
である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの連結分子は、グリシン-セリンリ
ンカーである。いくつかの実施形態において、グリシン-セリンリンカーは、式(GS)n(式
中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である)によって表される。いくつ
かの実施形態において、グリシン-セリンリンカーは、式(GGGGS)n(配列番号2)(式中、nは
、1、2、3、4又は5である)によって表される。
【0012】
いくつかの実施形態において、キメラは、3つの連結分子X1、X2及びX3を含み、X1は、N
KG2D1のアミノ酸をNKGD2のアミノ酸と共有結合的に連結し;X2は、NKG2D2のアミノ酸をFc
のアミノ酸と共有結合的に連結し;及び、X3は、Fcのアミノ酸を薬物部分と共有結合的に
連結する。いくつかの実施形態において、X1は、(GS)3(配列番号4)であり、X2、X3及びX4
は、それぞれ、(GGGGS)4(配列番号3)である。
【0013】
いくつかの実施形態において、NKG2D断片は、NKG2Dの細胞外断片を含む。いくつかの実
施形態において、NKG2D細胞外断片は、配列番号1によって表される。
【0014】
いくつかの実施形態において、Fcは、ヒト免疫グロブリン(IgG)の断片結晶性領域(Fc)
を含む。いくつかの実施形態において、ヒト免疫グロブリンは、IgG1である。
【0015】
いくつかの態様において、本開示は、NKG2Dリガンドを発現するがんを有する対象に、
がんを処置するための有効量で、本文書によって記載される二量体NKG2D-Fcキメラを投与
することを含む、がんを処置するための方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、NKG2Dリガンドを発現するがんは、メラノーマ、肺がん
、形質細胞がん、白血病、リンパ腫、卵巣がん、結腸がん、膵臓がん又は前立腺がんであ
る。状況次第で、1つ又は複数のこれらのがんは、対象中に存在していてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象を、追加の抗がん治療で処置することを
更に含む。いくつかの実施形態において、追加の抗がん治療は、外科手術、放射線治療、
化学療法、遺伝子治療、DNA治療、ウイルス性治療、RNA治療、補助療法及び免疫療法から
なる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、追加のがん治療は、DNAに損傷を与える化学療法である
【0019】
いくつかの実施形態において、NKG2Dリガンドは、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、
ULBP4、ULBP5又はULBP6である。
【0020】
本発明のそれぞれの限定は、本発明の様々な実施形態を包含し得る。したがって、任意
の1つの要素又は要素の組み合わせを含む本発明のそれぞれの限定は、本発明のそれぞれ
の態様に含まれ得ると予測される。本発明は、その適用において、以下の説明に明記され
るか、又は図面に示される、構成要素の構成及び配置の詳細に、限定されない。本発明は
、他の実施形態が可能であり、及び様々な方法で、実行されるか、又は実施されることが
可能である。また、本明細書において使用される表現及び専門用語は、説明を目的とする
ものであって、限定的であると見なされるべきではない。本明細書における「含む(inclu
ding)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」、「含有する(containing)」
、「含む(involving)」及びこれらの変形の使用は、これらの後に列挙された項目及びこ
れらの均等物、並びに追加の項目を包含することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】薬物部分を、有する(右)、及び有さない(左)、二量体NKG2D-Fcキメラの略図である。
図2】hNKG2Dx2-hIgG1-hIL15/Raが、単一の融合タンパク質として産生され、タンパク質Aによって精製されることを示す図である。
図3】hNKG2Dx2-hIgG1-IL15/Raが、IL-15と同様に、ヒトNK細胞の増殖を促進することを示す図である。
図4】hNKG2Dx2-hIgG1-IL15/Raが、複数の細胞株の強力な死滅を促進し、適度なリガンド発現を伴う細胞株において、hNKG2Dx2-hIgG1よりも優れていることを示す図である。パネルAは、いずれのコンストラクトも、NG2D-Lを発現しない、B16腫瘍細胞株の死滅を促進しないことを示す。パネルBは、両方のコンストラクトが、高レベルのNKG2Dリガンドを発現する、合成B16腫瘍細胞株の死滅を等しく促進することを示す。パネルCは、様々な腫瘍が、NKG2D融合タンパク質の結合によって測定される、異なるレベルのNKG2Dリガンドを、それらの細胞表面上で発現することを示す。パネルDは、hNKG2Dx2-hIgG1-IL15/Raが、hNKG2Dx2-hIgG1よりも効率的に、適度なNKG2Dリガンドを発現する細胞を死滅させることを示す。
図5】休止NK細胞が、融合タンパク質によって活性化されて、IFN-γを産生するが、最大産生には、NKG2D、hIgG1及びIL-15の3つの成分のすべてを必要とすることを示す図である。N297Qは、CD16(NK上で発現する)が、hIgG1と結合するのを妨げる、hIgG1における変異である。
図6】予備活性化されたNK細胞が、標的細胞を死滅させるためにCD16結合を必要とするが、IL-15は必要としないことを示す図である。
図7】休止NK細胞の最適な活性化及び休止NK細胞による死滅が、CD16結合及びIL-15活性化を必要とすることを示す図である。
図8】NKG2Dx2-hIgG1が、単量体NKG2D-FcキメラであるhNKG2Dx1-hIgG1と比較して、改善されたアビディティーで、MICA*008と結合することを実証するELISA分析を示す図である。
図9】hNKG2Dx2-hIgG1が、hNKG2Dx1-hIgG1と比較して、改善されたアビディティーで、NKG2Dリガンドを発現する細胞と結合することを実証する、フローサイトメトリー分析を示す図である。
図10】NKG2D-Fcが、リガンド陽性標的のNK細胞を死滅に至らせることを示す図である。二量体NKG2D-Fcキメラは、単量体NKG2D-Fcキメラよりも、死滅の媒介において、より効果的である。*は、p<0.5を表し、**は、p<0.01を表す。
図11】二量体NKG2D-Fcキメラ(例えば、hNKG2Dx2-hIgG1)が、単量体NKG2D-Fcキメラ(例えば、hNKG2Dx1-hIgG1)よりも効率的に、NKG2Dリガンドを発現する細胞を死滅させることを示す図である。**は、p<0.01を表す。
図12】可溶性MICAのNKG2Dx2-hIgG1中和が、NKG2Dx1-hIgG1よりも優れていることを示す図である。*は、p<0.05を表し、**は、p<0.01を表し、***は、p<0.005を表し、****は、p<0.001を表す。
図13】ヒトMICA(hMICA)との複合体中の二量体hNKG2D-hIgG1の構造モデルを示す図である。(G4S)4は、配列番号3であり;GGSGGGSGは、配列番号5である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
がんの免疫療法のための新規な組成物及び方法を、本明細書に開示する。本発明の組成
物及び方法は、少なくとも部分的に、2つのNKG2D断片及びFc断片を含むキメラ分子(例え
ば、二量体NKG2D-Fcキメラ)が、1つ又は複数のNKG2Dリガンドと結合する能力を有し、単
一のNKG2D断片及びFc断片を含むキメラ分子(例えば、単量体NKG2D-Fcキメラ)と比較して
、改善された有効性で、腫瘍細胞死を誘導するという、驚くべき発見に基づく。
【0023】
先行技術に記載された単量体NKG2D-Fcキメラ(例えば、公開されたPCT出願国際公開第WO
/2010/080124号パンフレットに記載されたコンストラクト)は、NKG2Dリガンドに対する低
い結合アビディティー(例えば、低い結合アビディティーインデックス)を示す。本明細書
に記載の二量体NKG2D-Fcコンストラクトは、同じ分子上に複数のNKG2D受容体(又はその部
分)を提供することによって、先行技術の単量体コンストラクトと比較して、増大した結
合アビディティー(例えば、少なくとも、1.1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上
の改善されたアビディティーインデックス)を提供する。任意の特定の理論に縛られるこ
とを望まないが、単一の分子上の複数のNKG2D受容体の存在は、NKG2D-NKG2Dリガンドの結
合相互作用の数及び期間を増加させると考えられ、抗腫瘍活性の増大をもたらす。実際に
、実施例項に示すように、二量体NKG2D-Fcキメラは、先行技術の単量体NKG2D-Fcキメラと
比較して、100倍まで改善された結合アビディティーを示す。しかしながら、キメラコン
ストラクト中の受容体(又はその部分)の数の増加が、(例えば、立体障害を介して)結合相
互作用を阻害するか否か、又は分子の安定性によって妨げられるキメラの凝集を引き起こ
すか否かは公知ではなかったので、このアプローチの成功は予測可能ではなかった。
【0024】
NKG2Dリガンドが、がん細胞上で発現することは公知である。したがって、いくつかの
実施形態において、本開示は、対象(例えば、ヒト対象)におけるがん治療のための方法を
提供し、本方法は、NKG2Dリガンドを発現するがんを有する対象に、本明細書に記載の二
量体NKG2D-Fcキメラを投与することを含む。NKG2Dリガンド、例えば、MICAに対するモノ
クローナル抗体を使用する免疫療法とは異なって、本明細書に提供する方法は、NKG2Dが
複数のリガンドと結合することに基づいて、がんに対する幅広い効果を有すると考えられ
る。
【0025】
二量体NKG2D-Fcキメラは、ヒトの腫瘍細胞上で発現する、いずれか又はすべてのNKG2D
リガンドを標的とすることができ、したがって、補体の溶解及びADCCによる腫瘍細胞の破
壊を媒介する能力を有する。NKG2D-Fcキメラはまた、少なくとも1つのNKG2Dリガンドを発
現する任意の腫瘍細胞をオプソニン化する能力を有する。NKG2D-Fcキメラは、樹状細胞に
よる、効率的な交差提示(例えば、プライミング)を促進することができ、腫瘍に対する強
いT細胞応答の誘導をもたらす。更に、このキメラは、腫瘍細胞によって産生された、任
意の「脱落した」(例えば、可溶性又は放出された)NKG2Dリガンドと結合及び捕捉する能
力を有し、それによって、腫瘍に由来する可溶性リガンドに応答する形でのNKG2D発現の
下方制御に起因する免疫抑制を軽減する。
【0026】
NKG2D-Fc
いくつかの態様において、本開示は、NKG2D1-NKG2D2-Fcを含む二量体NKG2D-Fcキメラで
あって、NKG2D1及びNKG2D2が、それぞれ、NKG2D又はその断片を含み、NKG2Dリガンドと結
合することができ;及び、Fcが、免疫グロブリンの断片結晶性領域(Fc)を含む、二量体NKG
2D-Fcキメラを提供する。いくつかの実施形態において、NKG2D断片は、NKG2Dの細胞外断
片を含む。いくつかの実施形態において、NKG2D細胞外断片は、配列番号1によって表され
る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「二量体NKG2D-Fcキメラ」は、2つのNKG2Dリガンド結合部
位を含むキメラ分子であって、それぞれのリガンド結合部位は、NKG2D受容体の少なくと
も一部又はすべてを含み、NKG2Dリガンドと結合する能力を有する。リガンド結合部位は
、Fc断片と融合される。実施例項及び図面において、二量体NKG2D-Fcキメラの2つのNKG2D
リガンド結合部位は、まとめて「NKG2Dx2」とも称する。先行技術に記載された単量体NKG
2D-Fcキメラは、「NKG2Dx1」と称することができる。「キメラ」、「キメラ分子」等の用
語は、通常、複数の起源又は出所からの部分で構成される分子を指す。いくつかの実施形
態において、二量体NKG2D-Fcは、組換えキメラ融合タンパク質として産生される。
【0028】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の二量体NKG2D-Fcキメラは、単量体NKG2
D-Fcキメラと比較して、NKG2Dリガンドに、増大したアビディティーで結合する。本明細
書で使用される場合、「アビディティー」は、リガンド及び受容体の間の、個々の非共有
結合性の結合相互作用の複数の親和性におよぶ全体的な力を指す。結合アビディティーを
測定する方法は、当技術分野において公知であり、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴
分析、CD分析、蛍光消光、サイズ排除結合アッセイ及び等温滴定熱量測定が挙げられる。
これらのアッセイの簡潔な説明については、例えば、Lengyelら、2007年、J.Biol.Chem.
、282巻:30658~666頁を参照のこと。いくつかの実施形態において、結合アビディティー
は、アビディティーインデックスを測定することによって決定される。いくつかの実施形
態において、NKG2Dリガンドに対する二量体NKG2D-Fcキメラの結合アビディティーは、単
量体NKG2D-Fcキメラと比較して、約2倍及び約2000倍の間で増大する。いくつかの実施形
態において、結合アビディティーは、約2倍及び1000倍の間で増大する。いくつかの実施
形態において、結合アビディティーは、約2倍及び100倍の間で増大する。いくつかの実施
形態において、結合アビディティーは、約5倍及び1000倍の間で増大する。いくつかの実
施形態において、結合アビディティーは、約5倍及び200倍の間で増大する。いくつかの実
施形態において、結合アビディティーは、約2倍及び約20倍の間で増大する。いくつかの
実施形態において、結合アビディティーは、2倍、5倍、10倍、100倍又は1000倍増大する
。いくつかの実施形態において、結合アビディティーは、少なくとも2倍、少なくとも5倍
、少なくとも10倍、少なくとも100倍、又は少なくとも1000倍増大する。いくつかの実施
形態において、二量体NKG2D-Fcコンストラクトは、単量体NKG2D-Fcキメラと比較して、増
大した結合アビディティーインデックス、例えば、少なくとも、1.1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10又はそれ以上の改善されたアビディティーインデックスを有する。
【0029】
NKG2D
いくつかの態様において、本開示は、2つのNKG2D又はその断片を含む、二量体NKG2D-Fc
キメラを提供する。NKG2D(KLRK1;キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーK、メンバ
ー1;CD314;KLR;NKG2-D;FLJ17759;FLJ75772又はD12S2489Eとも称する)は、NK細胞の主要な
トリガー受容体の1つであり、当技術分野において周知である。例えば、Garrityら(2005
年)を参照のこと。二量体NKG2D-Fcのために使用されるNKG2D受容体の部分は、少なくとも
1つのリガンドと結合する、NKG2Dの公知配列(例えば、Accession:NP_031386)又はその誘
導体に基づく。本発明の組成物及び方法において使用することができるNKG2Dの誘導体と
しては、限定されないが、1つ又は複数の変異、例えば、点変異、置換、欠失変異及び/又
は挿入変異を含有するNKG2D配列が挙げられる。当業者であれば、本開示の教示及び当技
術分野において利用可能な知識に従って、適切なNKG2Dの誘導体を容易に決定することが
できる。cDNAのレベルで、このような変異は、サイレント変異であってもよい。或いは、
変異は、対応するアミノ酸残基の変更をもたらしてもよい。後者の場合では、変更は、ア
ミノ酸残基が、類似の特徴の別のアミノ酸残基で置き換えられるような、保存的変更を構
成してもよい。しかしながら、場合によっては、変異は、非保存的である置換をもたらし
てもよい。そのような変異は、二量体NKG2D-Fcキメラが、NKG2Dリガンドと結合する能力
を有する程度で許容される。
【0030】
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-FcキメラのそれぞれのNKG2D部分は、全長
のNKG2Dポリペプチドである。NKG2Dの全長配列は、文献に記載されている。例えば、RefS
eq Accession:NP_031386を参照のこと。加えて、NKG2Dの選択的スプライシング変異体が
記載されている。本発明の目的のために、二量体NKG2D-Fcキメラとして構築された場合、
得られるポリペプチドが、そのリガンドと結合する能力を有するならば、そのような選択
的スプライシング変異体のいずれか1つを使用してもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラとして構築された場合、得られる
ポリペプチドが、そのリガンドと結合する能力を維持するならば、二量体NKG2D-Fcキメラ
のそれぞれのNKG2D部分は、NKG2D受容体ポリペプチドの部分配列(すなわち、断片)である
。例えば、二量体NKG2D-FcコンストラクトのそれぞれのNKG2D部分は、1つ又は複数のアミ
ノ酸残基によって、NKG2D配列のいずれかの末端に短縮されていてもよい。より具体的に
は、NKG2D配列のN末端は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、1
7、18、19、20、約30、約40、約50、約60、約70、約80又はそれ以上の残基が欠失してい
てもよい。同様に、NKG2D配列のC末端は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13
、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上の残基が欠失していてもよい。いくつかの実
施形態において、N末端及びC末端の両方が、記載のように短縮されていてもよい。
【0032】
NKG2Dの細胞外部分が、ホモ二量体の形成に寄与し、リガンド結合部位を形成すること
が示されている。したがって、NKG2Dの細胞内部分の一部又はすべてが欠失し、それでも
なお、そのリガンドと結合する能力を維持することが可能である。例えば、本開示に記載
の二量体NKG2D-Fcキメラは、NKG2D受容体の細胞外断片を、主に含有していてもよい。構
造解析は、ヒトNKG2D配列の78~216番目のアミノ酸残基が、リガンド結合部位を含有する
、NKG2Dの細胞外部分に相当することを明らかにした。マウスの対応物については、細胞
外ドメインは、78~232番目、94~232番目又は92~232番目のアミノ酸残基である。
【0033】
したがって、いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcコンストラクトのそれぞれ
のNKG2Dは、NKG2D配列の細胞外部分、例えば、ヒトNKG2Dの78~216番目のアミノ酸残基;
マウスNKG2Dの78~232番目、94~232番目又は92~232番目のアミノ酸残基を含む。いくつ
かの実施形態において、二量体NKG2D-Fcコンストラクトは、細胞外ドメインの部分を含む
。したがって、二量体NKG2D-Fcコンストラクトの細胞外ドメインは、N末端、C末端又はそ
の両方で、短縮されていてもよい。例えば、二量体NKG2D-Fcを発生させるために使用され
る細胞外ドメインのN末端は、ポリペプチドの細胞外の全部分に関して、1つ又は複数のア
ミノ酸残基、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、1
8、19、20、約30、約40、約50、約60等のアミノ酸残基が短縮されていてもよい。NKG2D-F
cを発生させるために使用される細胞外ドメインのC末端は、ポリペプチドの細胞外の全部
分に関して、1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
、12、13、14、15、16、17、18、19、20、約30、約40、約50、約60等のアミノ酸残基が短
縮されていてもよい。一例としてヒトNKG2Dを使用すると、二量体NKG2D-Fcコンストラク
トは、ドメインのN末端が、79、80、81、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100
、約110、約120、約130、約140又は約150番目のアミノ酸残基で始まる、細胞外ドメイン
の断片を含有していてもよい。同様に、二量体NKG2D-Fcコンストラクトは、ドメインのC
末端が、231、230、229、228、227、226、225、224、223、222、221、220、219、218、21
7、216、215、214、213、212、211、210、209、208、207、206、205番目等のアミノ酸残
基で終了する、細胞外ドメインの断片を含有していてもよい。NKG2D配列の細胞外ドメイ
ンのそれぞれの末端でのこのような欠失は、組み合わされていてもよい。
【0034】
当業者は、本開示によって記載される二量体NKG2D-Fcキメラが、2つの同じNKG2D断片、
又は2つの異なるNKG2D断片を含んでいてもよいことを認識する。例えば、いくつかの実施
形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、ヒトNKG2Dの78~216番目のアミノ酸残基に相当
する、2つのNKG2D断片を含む。いくつかの他の実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラ
は、2つのNKG2D断片を含み、第1の断片が、ヒトNKG2Dの78~216番目のアミノ酸残基に相
当し、第2の断片が、NKG2D細胞外ドメインの異なる部分(例えば、ヒトNKG2Dの140~210番
目のアミノ酸の位置)に相当する。
【0035】
NKG2D-リガンド結合の界面で、コンストラクトのNKG2D部分において1つ又は複数の変異
を含む、二量体NKG2D-Fc誘導体も考えられる。特に、特定の変異が、NKG2D受容体及びそ
のリガンド(例えば、MICA)の間の結合親和性に影響を及ぼすことは公知である。例えば、
Lengyelら、2007年、J.Biol.Chem.、282巻:30658~666頁を参照のこと。NKG2D及びMICAの
間の複合体の3次元構造が記載されている。したがって、当業者は、そのリガンドとの相
互作用に寄与するNKG2Dのアミノ酸残基を決定し得、重要な残基を体系的に変化させるこ
とによって変異の効果を試験し得る。いずれかの実施形態において、生じる二量体NKG2D-
Fcキメラは、リガンドと結合する能力を有する。受容体-リガンドの接触に関与するアミ
ノ酸残基の網羅的な概説については、例えば、Strong及びMcFarland、2004年、Advances
in Protein Chemistry、68巻:281~213頁を参照のこと。発表された研究によれば、リガ
ンドとの相互作用において重要であると考えられる重要な残基は、ヒトNKG2Dの約150~20
7番目のアミノ酸残基に位置し、これは、マウスNKG2Dの約166~223番目の残基に相当する
。したがって、本発明の二量体NKG2D-FcコンストラクトのそれぞれのNKG2D断片は、好ま
しくは、これらの残基(例えば、ヒトNKG2Dの150~207番目の残基)の少なくともほとんど
におよぶ断片を含む。同様に、これらの領域外の保存的置換、欠失又は変異が、多くの例
において、容易に許容される可能性があり得ることが理解されるであろう。
【0036】
いくつかのアミノ酸残基は、リガンド結合を媒介するために特に重要であることが特定
されている。具体的には、MICAと結合するために重要なヒトNKG2Dの残基としては、Y152
、Q185、K197、Y199、E201及びN207が挙げられる。ULBP3と結合するために重要なヒトNKG
2Dの残基としては、I182、Y199及びY152が挙げられる。RAE-1βと結合するために重要な
マウスNKG2Dの残基としては、K166、Y168、Y215、K213、E217及びN223が挙げられる。し
たがって、好ましい実施形態において、(相当する二量体NKG2Dコンストラクトの)これら
の残基のほとんど又はすべては、複数のリガンドについて広く許容される(例えば、特異
的に)ことが望ましい位置で、変異又は欠失なく、維持される。しかしながら、選択的リ
ガンド認識及び結合を与える、これらの重要な残基の1つ又は複数で、変異を戦略的に導
入することによって、1つのリガンドが、別のリガンドよりも優先的に結合する二量体NKG
2D-Fcコンストラクトを設計することも可能である。一方、特定のアミノ酸残基は、様々
なリガンドの結合に関与する。例えば、マウスの対応物において、それぞれY168及びY215
と等価である、ヒトNKG2DにおけるY152及びY199は、MICA及びULBP3の結合に寄与する。し
たがって、いくつかの実施形態において、これらの残基は、広範なリガンド特異性を維持
するように、修飾されない。
【0037】
下記に提供する実施例では、代表的な二量体NKG2D-Fcキメラを示し、それぞれのNKG2D
断片は、ヒトNKG2Dの78~216番目のアミノ酸残基に相当する。しかしながら、同じアプロ
ーチを、がんが発生することが公知の任意の他の種に由来するNKG2D配列について使用し
てもよいことが理解されるべきである。例えば、二量体NKG2D-FcのNKG2D断片は、二量体N
KG2D-Fcが、そのリガンド結合活性を維持している限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
又はそれ以上のアミノ酸の変更、例えば、欠失、挿入及び置換を有していてもよい。
【0038】
本発明は、二量体NKG2D-Fcキメラが、その天然の1つのリガンド又は複数のリガンドに
結合する程度で、1つ又は複数の上記に記載のアミノ酸の変更を含有する、二量体NKG2D-F
cコンストラクトの変異体を含む。特定の変異を含有する二量体NKG2D-Fc変異体が、リガ
ンド結合活性を維持しているか否かを決定するために、特定の二量体NKG2D-Fcキメラのそ
のリガンドへの結合親和性及び/又は結合能力を評価し得る、結合アッセイを行うことが
できる。受容体-リガンド相互作用を測定し得る、多くの方法が、当技術分野において公
知である。リガンド結合をアッセイするためのこれらの方法としては、限定されないが、
ELISA、表面プラズモン共鳴分析、CD分析、蛍光消光、サイズ排除結合アッセイ及び等温
滴定熱量測定が挙げられる。これらのアッセイの簡潔な説明については、例えば、Lengye
lら(2007年)を参照のこと。
【0039】
Fc断片
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、免疫グロブリンの断片結晶性
領域(Fc)を含む。免疫グロブリンのFc領域は、免疫防御の媒介において重要な役割を果た
す。FcγRは、マクロファージ、NK細胞、樹状細胞、B細胞、好中球及びマスト細胞を含む
、多くの細胞種上で、膜貫通糖タンパク質として、広く発現する。Fcが媒介する活性とし
ては、Fc-FcγR相互作用を介するエフェクター細胞の動員が挙げられる。機能的に区別す
ることができるFc受容体の2つのクラス:活性化Fc受容体クラス及び阻害性Fc受容体クラス
がある。活性化Fc受容体としては、ヒトFcγRIA、FcγRIIA及びFcγRIIIA、並びにそれら
のマウスのオルソログ、すなわち、FcγRI、FcγRIII、FcγRIVが挙げられる。活性化Fc
γRはADCC及びADCPを媒介し、抗原提示をもたらす免疫複合体のエンドサイトーシスを誘
導し、サイトカイン及び炎症誘発性因子の産生及び放出に寄与する。IgGの構造及び作用
機序の一般的な概説については、Liuら(2008年;Immunological Reviews、222巻:9~27頁)
を参照のこと。本明細書においてより詳細に記載するように、二量体NKG2D-FcのFc部分は
、活性化Fc受容体と結合するドメイン、好ましくは、活性化FcIgドメインであり、二量化
を可能にするヒンジ領域を含む。
【0040】
本開示のために有用な二量体NKG2DキメラのFc部分は、種特異的にするために、容易に
適合させることができる。マウスの系、例えば、マウスに由来する細胞における使用のた
めには、二量体NKG2D-Fcを発生させるために使用されるFc断片は、好ましくは、マウス起
源のものである。いくつかの実施形態において、マウスIgG2aのFc断片が好ましい。
【0041】
例えば、がんの処置のためのヒト対象における使用のためには、二量体NKG2D-Fcを発生
させるために使用されるFc断片は、好ましくは、ヒト起源のものである。特に好ましい実
施形態において、NKG2D-Fcは、活性化Fc Igドメインを含む。4つのヒトIgGアイソタイプ
のうち、IgG1の活性化Fcドメインが、二量体NKG2D-Fcの調製のために好ましい。したがっ
て、いくつかの実施形態において、Fcは、ヒト免疫グロブリン(IgG)の断片結晶性領域(Fc
)を含む。いくつかの実施形態において、ヒト免疫グロブリンは、IgG1である。ヒトIgG1
のFc領域を含有するキメラコンストラクトに関する実験データを、実施例項において提供
する。
【0042】
当技術分野では、異なる抗体アイソタイプが、インビボで、異なる程度の細胞傷害能を
有することが理解されている(例えば、Nimmerjahn F.及びRavetch JV.、2006年、Immunit
y、24巻:19~28頁を参照のこと)。例えば、マウスIgG2a及びIgG2bアイソタイプは、それ
らのIgG1又はIgG3対応物よりも、細菌感染及びウイルス感染等の感染の排除において、並
びに腫瘍細胞の死滅において、より効率的である。これは、少なくとも部分的に、インビ
ボで存在する活性化FcR対阻害性FcRの比率が異なることに起因し得る。同様に、ヒトIgG
アイソタイプに関して、IgG1及びIgG3は、IgG2又はIgG4よりも、FcRとの強い相互作用を
有する。更に、所与のアイソタイプの特定の多型性のアロタイプは、Fc受容体に対する親
和性に影響を及ぼし得る。実際に、特定の抗体アイソタイプに対する親和性に著しい影響
を及ぼすであろう活性化FcRの対立形質の変異体が存在する。例えば、FcγRIIIa受容体15
8Vアロタイプは、ヒトIgG1に対してより高い親和性を示し、抗体依存性の細胞傷害活性を
増大させる(Cartron G.ら、2002年、Blood、99巻:754~758頁)。
【0043】
任意の特定の理論に縛られることを望まないが、二量体NKG2D-FcキメラのFc部分と、そ
の対応するFc受容体の間の相互作用を、二量体NKG2D-Fcキメラを調製するために使用され
るFcアレルを戦略的に選択又は修飾することによって、最適化することが可能である。し
たがって、本発明は、Fc断片の変異又はアロタイプを使用することを検討する。Fcドメイ
ン内の多くの有用な変異が記載されており、これは、Fc及びその受容体の相互作用、Fcの
エフェクター機能、並びにFcを含有する分子の半減期に影響を及ぼし得る。これらは、Fc
中の糖部分に、特定のアミノ酸の置換及び/又は修飾を含む。概説については、例えば、L
iuら、2008年、Immunological Reviews、222巻:9~27頁;Nimmerjahn及びRavetch、2007年
、Curr.Opin.Immunol.、19巻(2号):239~45頁を参照のこと。
【0044】
通常、Fc断片の構造は、当技術分野において公知である。簡潔には、典型的なIgG分子
のFc領域は、重鎖のカルボキシ末端部分の対称性ホモ二量体であり、CH2及びCH3ドメイン
で構成され、これは、可動性のヒンジ領域によってFabから隔てられる。Fc領域は、ドメ
イン間の非共有結合性の相互作用によって安定化される。Fc領域は、FcRと相互作用して
、エフェクター機能に影響を及ぼすか、又はIgGの異化を制御する。重鎖の定常領域(Cγ2
及びCγ3)、並びに可変ドメイン及び定常領域の間に位置するヒンジ領域が、C1q及びFc受
容体(FcR)と相互作用する。したがって、IgG分子の重鎖の定常領域は、それらが、異なる
エフェクター細胞上に、補体のため及びFcRのための結合部位を含むので、そのエフェク
ター機能の原因となる。したがって、エフェクター細胞の動員は、Fc-FcγR相互作用を介
して媒介される。
【0045】
一般に、抗体と補体の相互作用は、補体依存性細胞傷害(CDC)を惹起し、FcγR相互作用
は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)及び抗体依存性細胞捕食(ADCP)を媒介する。古典的なCDC
の活性化経路は、経路の最初の構成要素であるC1が、抗原-抗体複合体中で、IgGのヒンジ
-Fc部分と結合すると、作動する。その後の補体カスケードの活性化は、最終的に、標的
細胞の死をもたらすC5~C9膜攻撃複合体の形成を誘導する。一方、ADCCは、自然免疫系の
FcγRを有する細胞(例えば、NK細胞、単球、マクロファージ及び顆粒球)の能力に依存し
て、標的細胞に結合する抗体のFcドメインを認識する。この認識は、エフェクター細胞を
作動させて、標的細胞のアポトーシス及び溶解を誘導する、細胞質性のパーフォリン、グ
ラニュライシン並びにグランザイムを放出する。ADCCにおける主要なエフェクター細胞は
、NK細胞であり、これは、IgG1及びIgG3サブクラスを認識する種類のFcγRを発現し、イ
ンビボで、細胞毒性効果を引き起こす。
【0046】
本発明の文脈において、実施例で実証するように、本明細書に記載の二量体NKG2D-Fcキ
メラは、そのリガンドを、特異的であるが、広範に認識及び結合することができる二量体
NKG2D部分とカップリングされた機能的Fc部分を有するという長所によって、同等の細胞
効果を媒介する能力を有する。
【0047】
述べたように、活性化受容体(FcγRI、FcγRIIA及びFcγRIII)及び阻害性(FcγRIIB)受
容体が存在する。一般に、IgGと活性化FcγRの相互作用は、細胞の活性化を阻害するFcγ
RIIBとの相互作用の間に、細胞の活性化を引き起こす。B細胞及びNK細胞を除いて、活性
化及び阻害性FcγRは、同じエフェクター細胞上で共発現し、それによって、細胞の活性
化のための閾値を生じさせる。B細胞は、阻害性FcγRIIBのみを発現し、したがって、生
理学的条件下、内因性IgGによって活性化され得ない。NK細胞は、予備活性化(又はプライ
ミング)とは独立して、標的細胞を死滅させることができるように、活性化FcγRIIIを発
現する。
【0048】
FcγRIIA及びFcγRIII(CD16)は、単量体IgGに対して低い親和性を有し、エフェクター
機能を引き起こし、抗腫瘍活性をもたらすために重大な意味を持つと考えられる。したが
って、活性化FcγRIIIに対する親和性が増大し、阻害性FcγRIIBに対する親和性が減少す
るように遺伝子組換えが行われる形で二量体NKG2D-Fcを設計することが可能である。
【0049】
したがって、より下部のヒンジ領域に主に位置し、Cγ2領域と隣接するFcγRとの直接
的な相互作用に寄与する二量体NKG2D-Fc分子のアミノ酸残基は、修飾されてもよく、この
ような変異体は、本発明に包含される。IgGの234~237番目のアミノ酸残基に相当する領
域が、FcγRと結合するために必要であることが示されている。加えて、IgG-FcγR相互作
用において重要である他の残基は、Cγ2ドメインに位置することが示されており、Asp265
、Asp270、Ala327、Pro329及びLys338が挙げられる。
【0050】
増強された活性を有する二量体NKG2D-Fcキメラを発生させるために、いくつかの戦略が
考えられる。増強されたADCC能を有する二量体NKG2D-Fcを設計するために、少なくとも2
つのアプローチが考えられる。第1は、活性化及び阻害性FcγRと結合するために重大な意
味を持つことが特定されたIgG1中のアミノ酸残基に基づいて、本発明は、それらの受容体
に対する親和性を、それぞれ増強又は低減する、二量体NKG2D-Fcキメラの変異体を提供す
る。したがって、1つの実施形態において、それぞれの残基の位置が、IgG1に基づく、3組
のアミノ酸置換であるSer298Ala/Glu333Ala/Lys334Alaが提供される。この3組の変異を含
有する二量体NKG2D-Fcは、FcγRIIIAに対しては高い親和性を示すはずであるが、FcγRII
Bに対してはそうではなく、それによって、ADCCを促進する。同様に、別の実施形態にお
いて、Fc中に2組の変異であるSer239Asp/Ile332Gluを含有する二量体NKG2D-Fc変異体は、
改善されたADCCを示すと予想される。ADCCを増強するための他の変異としては、限定され
ないが、Ser239Asp/Ala330Leu/Ile332Glu及びSer239Asp/Ser298Ala/Ile332Alaが挙げられ
る。同様に、いくつかの実施形態において、FcγRIIIA(例えば、活性化受容体)との結合
の増加及びFcγRIIBとの結合の低減を組み合わせた変異が考えられる。このようなFc変異
の例としては、限定されないが、Phe243Leu/Arg292Pro/Tyr300Leu/Val305Ile/Pro396Leu
が挙げられる(残基の位置は、IgG1に基づく)。
【0051】
第2のアプローチは、いくつかの修飾が、FcγRに対するFcの親和性に顕著な影響を及ぼ
すという観察に基づいて、Fc中の糖部分を修飾することに関する。Fcドメインが、2つの
アスパラギンのN連結オリゴ糖部分を含有することが示されている(Liuら、2008年で概説)
。ADCCは、特定のオリゴ糖の存在を必要とし、オリゴ糖の構造の変化に依存する。特に、
以前の研究は、二分岐の複合体型オリゴ糖の最内側のGlcNAcに付加されているフコース部
分の除去が、CDCの活性を損なうことなく、FcとFcγRIIIAの結合を改善することによって
、ADCCを著しく増大させることを示している。この観察に基づいて、1つの実施形態にお
いて、本発明は、フコース欠失二量体NKG2D-Fcを提供する。いくつかの実施形態において
、キメラは、完全にフコース部分が欠如している(すなわち、非フコシル化)。他の実施形
態において、キメラは、低フコシル化(hypofucosylated)される。
【0052】
修飾された糖を含有する二量体NKG2D-Fcを作成するために、宿主細胞は、所望の修飾を
触媒する酵素を発現するために設計されてもよい。例えば、宿主細胞、例えば、チャイニ
ーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、酵素であるβ-(1,4)-N-アセチルグルコサミン転移酵素
III(GnT-III)で遺伝子導入してもよく、これは、二分岐された非フコシル化オリゴ糖のレ
ベルを上昇させる。これらの宿主細胞から発生したNKG2D-Fc産物は、著しく増強されたAD
CC活性を有することができる。加えて、いくつかの実施形態において、NKG2D-Fc中のフコ
ースの含量は、コア-フコシル基転移酵素活性を欠く、α-1,6-フコシル基転移酵素(FUT8)
ノックアウト細胞によって操作し得る。或いは、低分子干渉RNAを使用して、FUT8酵素の
発現を恒常的に阻害して、同じ効果を達成してもよい。いくつかの実施形態において、グ
アノシン二リン酸(GDP)-マンノース4,6-脱水酵素(GMD)を欠く宿主細胞を使用して、非フ
コシル化NKG2D-Fcを得てもよい。
【0053】
次に、増強された補体活性を有する二量体NKG2D-Fcを設計するために、Fcドメインにお
ける様々な変異が考えられる。一般に、補体は、少なくとも3つの経路によって活性化す
ることができ、標的細胞の細胞膜中で細孔を形成し、それらの溶解を引き起こす膜付着複
合体(membrane attach complex)C5b-9の形成をもたらす。FcドメインへのC1qの結合は、
このプロセスにおける重要なステップである。ヒトIgGサブクラスのうち、IgG1及びIgG3
のみが、補体カスケードを惹起することができる。いくつかの実施形態において、変異は
、C1qの動員及びC1q-Fc相互作用を促進するために、二量体NKG2D-FcのFcドメインに導入
される。そのような変異の標的となるFcの残基としては、限定されないが、Asp270、Lys3
22、Pro329及びPro331が挙げられる。これらの変異は、非極性の中性アミノ酸、例えば、
Ala、Met又はTrpを有する対応する残基との置換を含む。特定の実施形態において、二量
体NKG2D-Fcは、Lys326Trp、Clu333Ser、又は両方の変異を含有する。
【0054】
増加したC1q結合及び増強されたCDCを達成するために、本発明のいくつかの実施形態は
、ヒトIgG1のヒンジ領域の特定の残基に、1つの変異又は複数の変異を導入することを含
む。このような変異の非限定的な例としては、Lys222Trp/Thr223Trp、Cys220Asp/Asp221C
ys、Cys220Asp/Asp221Cys/Lys222Trp/Thr223Trp、Lys222Trp/Thr223Trp/His224Trp及びAs
p221Trp/Lys222Trpが挙げられる。
【0055】
加えて、人工配列及び活性を有する融合タンパク質を治療薬剤として使用する場合、状
況次第で、そのような融合タンパク質で処置される患者が、望まない免疫応答、例えば、
薬剤に対する抗体の発生を引き起こすことに留意すべきである。Fc断片の特定の構造的な
修飾は、治療的融合タンパク質の免疫原性を低減させることが示されている。例えば、参
照により本明細書に組み込まれる、Gilliesらによる米国特許第6,992,174B2号;Liuら、20
08年、Immunological Reviews、222巻:9~27頁を参照のこと。このような修飾は、本開示
に記載の二量体NKG2D-Fcの効果的な設計に有用であり得る。
【0056】
リンカー
本開示の方法において使用される二量体NKG2D-Fcコンストラクトは、第1のNKG2D部分(
例えば、NKG2D1)を第2のNKG2D部分(例えば、NKG2D2)と、NKG2D部分(例えば、NKG2D1又はN
KG2D2)をFc断片と、及び/又はFc断片を薬物部分と連結する、少なくとも1つの連結部分を
更に含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、連結部分(例えば、連結分子)は、
X1、X2又はX3と称する。場合によっては、Fc融合タンパク質分子のヒンジ領域は、Fc領域
及び融合ペプチド(例えば、可溶性受容体)の間のスペーサーとしての機能を果たし、これ
らの分子の2つの部分が別々に機能することを可能にする(例えば、Ashkenaziら、1997年
を参照のこと)。
【0057】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの連結部分(例えば、連結分子)はNKG2D1
、NKG2D2、Fc又は薬物部分の隣接部分ではなく、NKG2D1のアミノ酸をNKG2D2のアミノ酸と
、NKG2D2のアミノ酸をFcのアミノ酸と、又はFcのアミノ酸を薬物部分と、共有結合的に連
結する。本明細書で使用される場合、「隣接部分ではない」連結分子とは、キメラの、そ
れぞれの、NKG2D部分(例えば、NKG2D1及びNKG2D2)、NKG2D部分及びFc部分、並びに/又はF
c部分及び薬物部分が、NKG2D又は免疫グロブリン又は薬物部分の一部ではない追加の要素
であって、それが連結するキメラの部分と実際は隣接しており、リンカーとして機能する
追加の要素を介して連結されることを意味する。NKG2D、Fc又は薬物分子のいずれかの隣
接部分ではない、連結分子の非限定的な例を以下に記載する。
【0058】
連結分子は、ペプチドリンカーであってもよい。いくつかの実施形態において、ペプチ
ドリンカーは、約2~約25アミノ酸の長さの範囲である。いくつかの実施形態において、
ペプチドリンカーは、20アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、ペプチド
リンカーは、約4~約16アミノ酸の長さの範囲である。いくつかの実施形態において、ペ
プチドリンカーは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19
、20、21、22、23、24又は25アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、ペプ
チドリンカーは、25アミノ酸の長さよりも長い。リンカーがペプチドリンカーである場合
、二量体NKG2D-Fcキメラは、従来の分子生物学/組換えDNA法を使用して、単一の組換えポ
リペプチドとして産生されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、プロテアーゼ依存性の切断可能部
位を提供する。プロテアーゼ切断可能ペプチドリンカーの例としては、限定されないが、
MMP感受性リンカーであるGGPLGLWAGG(配列番号6)及びXa因子感受性リンカーであるIEGR(
配列番号7)が挙げられる。当技術分野では、本明細書に提供される方法のために使用し得
る、様々な切断可能な配列、例えば、Chenら、Adv.Drug Deliv.Rev.(2013年)、65巻(10号
):1357~69頁に記載されているものが知られている。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態において、可動性ペプチドリンカーが使用される。可動性
ペプチドリンカーは、好ましくは、約25以下のアミノ酸の長さである。いくつかの実施形
態において、可動性ペプチドリンカーは、20アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態
において、ペプチドリンカーは、約20以下のアミノ酸残基、例えば、2、3、4、5、6、7、
8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20のアミノ酸残基を含有する。いく
つかの実施形態において、ペプチドリンカーは、約12以下のアミノ酸残基、例えば、3、4
、5、6、7、8、9、10、11及び12のアミノ酸残基を含有する。場合によっては、ペプチド
リンカーは、2つ以上の以下のアミノ酸:グリシン、セリン、アラニン及びトレオニンを含
む。いくつかの実施形態において、可動性ペプチドリンカーは、グリシン-セリンリンカ
ーである。
【0061】
いくつかの実施形態において、グリシン-セリンリンカーは、式(GS)n(式中、nは、1、2
、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である)によって表される。いくつかの実施形態に
おいて、グリシン-セリンリンカーは、式(GGGGS)n(配列番号2)(式中、nは、1、2、3、4又
は5である)によって表される。
【0062】
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、3つの連結分子X1、X2及びX3
を含み、X1が、NKG2D1のアミノ酸をNKGD2のアミノ酸と共有結合的に連結し;X2が、NKGD2
のアミノ酸をFcのアミノ酸と共有結合的に連結し;及び、X3が、Fcのアミノ酸を薬物部分
と共有結合的に連結する。いくつかの実施形態において、X1は、(GS)3(配列番号4)であり
、X2、X3及びX4は、それぞれ、(GGGGS)4(配列番号3)である。
【0063】
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、IEGR(配列番号7)ペプチドリ
ンカーを含有する。
【0064】
或いは、連結分子は、非ペプチドリンカーであってもよい。本明細書で使用される場合
、「非ペプチドリンカー」は、互いに連結した2つ以上の繰り返し単位を含む生体適合性
ポリマーである。非ペプチドポリマーの例としては、限定されないが、ポリエチレングリ
コール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、co-ポリ(エチレン/プロピレン)グリコー
ル、ポリオキシエチレン(POE)、ポリウレタン、ポリホスファゼン、多糖、デキストラン
、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアク
リルアミド、ポリアクリレート、ポリシアノアクリレート、脂質ポリマー、キチン、ヒア
ルロン酸及びヘパリンが挙げられる。Fc融合分子のために有用な非ペプチドリンカーのよ
り詳細な説明については、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、国際公開第WO
2006/107124号パンフレットを参照のこと。典型的には、このようなリンカーは、具体的
なリンカーに応じて、約1kDa~50kDaの範囲の分子量を有する。例えば、典型的なPEGは、
約1~5kDaの分子量を有し、ポリエチレングリコールは、約5kDa~50kDa、より好ましくは
、約10kDa~40kDaの分子量を有する。
【0065】
薬物部分
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、薬物部分を更に含む。本明細
書で使用される場合、「薬物部分」とは、標的細胞(例えば、がん細胞)への送達を目的と
する治療薬剤を指す。一般に、薬物部分は、二量体NKG2D-Fcキメラのカルボキシ末端と結
合(例えば、直接又は間接的な共有結合)される。しかしながら、当業者であれば、いくつ
かの実施形態において、薬物部分が、二量体NKG2D-Fcキメラのアミノ末端と結合されるこ
とを認識する。「薬物部分」の例としては、薬物(例えば、小分子)、毒素(例えば、リン
ホトキシンファミリーの分子)、放射性核種、酵素、サイトカイン、ケモカイン、活性化
された化合物又は血管新生を阻害する化合物若しくは実質的に任意の抗腫瘍化合物に対す
る一本鎖抗体可変断片が挙げられる。
【0066】
いくつかの実施形態において、薬物部分は、サイトカイン又はその機能部分を含む。サ
イトカインは、免疫細胞の機能を調節する能力を有するタンパク質及びペプチドである。
サイトカインの「機能部分」は、免疫細胞の機能(例えば、1つ又は複数のサイトカイン受
容体と結合する)を調節する能力を維持した、サイトカイン断片である。サイトカインの
例としては、限定されないが、インターフェロンアルファ(IFN-α)、インターフェロンベ
ータ(IFN-β)及びインターフェロンガンマ(IFN-γ)、インターロイキン(例えば、IL-1~I
L-29、特に、 IL-2、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15及びIL-18)、腫瘍壊死因
子(例えば、TNF-アルファ及びTNF-ベータ)、エリスロポエチン(EPO)、MIP3a、単球走化性
タンパク質(MCP)-1、細胞内接着分子(ICAM)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)並びに顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)
が挙げられる。いくつかの実施形態において、薬物部分は、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18
、IL-21及びIFN-αからなる群から選択されるサイトカインを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、薬物部分は、サイトカイン/サイトカイン受容体ヘテロ
複合体を含む。サイトカイン/サイトカイン受容体ヘテロ複合体は、当技術分野において
公知であり、例えば、Rowleyら、Eur J Immunol.2009年2月;39巻(2号):491~506頁に記載
されている。いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、IL-15(例えば、Ge
nBank AAX37025)/IL-15Ra(例えば、GenBank AAP69528.1)ヘテロ複合体を含む薬物部分を
含む。いくつかの実施形態において、薬物部分は、IL-15(GenBank AAX37025)の22~135番
目のアミノ酸と融合した、ヒトIL-15受容体アルファ(hIL15Ra、GenBank AAP69528.1)の31
~107番目のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、IL-15及びIL-15Raは、リン
カー、例えば、20アミノ酸の(G4S)4(配列番号3)リンカーによって、隔てられている。IL-
15/IL-15Raヘテロ複合体を含む二量体NKG2D-Fcキメラは、実施例項において更に記載する
。いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、IL-12p35及びIL-12p40のヘテ
ロ複合体を含む薬物部分を含む。いくつかの実施形態において、IL-12p35及びIL-12p40は
、リンカー、例えば、20アミノ酸の(G4S)4(配列番号3)リンカーによって、隔てられてい
る。いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、IL-23p19及びIL-23p40のヘ
テロ複合体を含む薬物部分を含む。いくつかの実施形態において、IL-23p19及びIL-23p40
は、リンカー、例えば、20アミノ酸の(G4S)4(配列番号3)リンカーによって、隔てられて
いる。いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、IL-27p28及びEB1のヘテ
ロ複合体を含む薬物部分を含む。いくつかの実施形態において、IL-27p28及びEB1は、リ
ンカー、例えば、20アミノ酸の(G4S)4(配列番号3)リンカーによって、隔てられている。
いくつかの実施形態において、サイトカイン/サイトカイン受容体ヘテロ複合体のそれぞ
れのサブユニットは、二量体NKG2D-Fcキメラの異なる鎖上にある。
【0068】
いくつかの実施形態において、薬物部分は、一本鎖抗体可変断片(ScFv)である。本明細
書で使用される場合、「一本鎖抗体可変断片」は、短いリンカーペプチドで連結された、
免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を指す。ScFvタンパ
ク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異
性を維持している。いくつかの実施形態において、ScFvは、免疫チェックポイントタンパ
ク質(例えば、PD1又はCTLA4)と結合する。いくつかの実施形態において、ScFvは、(例え
ば、VEGF等の血管新生の制御因子と結合して)血管新生を妨げる。
【0069】
いくつかの実施形態において、薬物部分は、ケモカインである。本明細書で使用される
場合、「ケモカイン」は、白血球の動員を刺激する、低分子質量のタンパク質を指す。一
般に、ケモカインは、インターロイキン-1(IL-1)又は腫瘍壊死因子(TNF)等の一次炎症性
メディエーターによって誘導される、二次炎症性メディエーターである。ケモカインは、
CCケモカイン(例えば、CCL1~CCL-28)、CXC(例えば、CXCL1~CXCL17)、C(例えば、XCL1、
XCL2)、及びCX3C(CX3CL1)の4つのファミリーに分類することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、薬物部分は、小分子である。本明細書で使用される場合
、「小分子」は、実験室で合成されたか、又は天然で見出されたかのいずれかの、非ペプ
チドで、非オリゴマーの有機化合物を指す。小分子薬物の非限定的な例としては、小分子
の、キナーゼ阻害剤(例えば、エベロリムス、ゲフィチニブ、イマチニブ等)、ブロモドメ
イン阻害剤(例えば、JQ1、I-BET 151、RVX-208等)、抗生物質(例えば、カナマイシン、ネ
オマイシン、シプロフロキサシン等)及び抗ウイルス剤(例えば、リバビリン、リマンタジ
ン、ジドブジン等)が挙げられる。いくつかの実施形態において、小分子は、抗腫瘍化合
物である。抗腫瘍化合物は、本開示の別の箇所で更に詳細に述べる。
【0071】
いくつかの実施形態において、薬物部分は、放射性核種である。本明細書で使用される
場合、「放射性核種」は、医学的に有用な放射性核種を指す。放射性核種の例としては、
99mTc、188Re、186Re、153Sm、166Ho、90Y、89Sr、67Ga、68Ga、111In、183Gd、59Fe、22
5Ac、212Bi、211At、45Ti、60Cu、61Cu及び67Cuが挙げられる。
【0072】
他の部分
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法のために有用な二量体NKG2D-Fcキ
メラは、1つ又は複数の付属部分、例えば、タグ配列及びシグナル配列を更に含んでいて
もよい。例えば、タグ配列は、ポリペプチドを検出及び/又は単離するために使用するこ
とができる。タグの例としては、限定されないが、HA、Flag、Myc、Glu、His及びマルト
ース塩基性タンパク質が挙げられる。タグ配列は、そのようなタグの存在が、二量体NKG2
D-Fc分子の機能を妨げないならば、アミノ末端、カルボキシル末端に位置していてもよく
、又は、二量体NKG2D-Fcキメラ分子の中ほどのどこかに位置していてもよい。場合によっ
ては、タグ配列は、切断可能である。
【0073】
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラは、任意選択で、シグナル配列を
含んでいてもよい。シグナル配列は、翻訳後のポリペプチドの輸送に向かわせる短い(典
型的には、約3~60アミノ酸長の)ペプチド鎖であり、それによって、ポリペプチドのより
高い収率を可能にする。シグナル配列のアミノ酸配列は、特定の細胞内の区画、例えば、
細胞小器官に、(サイトゾルで合成される)ポリペプチドを向かわせる。シグナル配列は、
標的シグナル、シグナルペプチド、輸送ペプチド又は局在化シグナルとも称する。いくつ
かの実施形態において、シグナル配列は、ポリペプチドが輸送された後、シグナルペプチ
ダーゼによって、ポリペプチドから切断される。
【0074】
いくつかの実施形態において、二量体NKG2Dキメラは、IL-2シグナル配列で修飾されたN
末端を含有し、これは、NKG2D-Fcコンストラクトの最適な発現及び分泌を可能にする。例
えば、Zhangら、2004年、J.Gene Med.、7巻:354~65頁を参照のこと。いくつかの実施形
態において、二量体NKG2Dキメラは、CD33のポリペプチド配列に由来するシグナルペプチ
ドを含有する。例えば、CD33シグナルペプチドは、CD33ポリペプチド配列の1~16番目の
アミノ酸残基に相当し得る。当業者であれば、本開示において提供される方法を実施する
ために使用し得る多くの他の適切なシグナルペプチド配列が存在することを理解するであ
ろう。加えて、NKG2Dキメラ中に存在するシグナルペプチドがある場合、追加のアミノ酸
残基、例えば、スペーサーが、キメラのN末端シグナルペプチド及びFc部分の間に、任意
選択で、挿入されていてもよい。いくつかの実施形態において、例えば、シグナル配列の
後にMet-Aspジペプチドスペーサーが続く。
【0075】
二量体NKG2D-Fcの調製
当技術分野では、所望の特徴を有する二量体NKG2D-Fcキメラを調製するための分子生物
学的及び生化学的な技術がよく知られている。好ましくは、二量体NKG2D-Fcキメラコンス
トラクトは、従来の組換えDNA法によって産生される。好ましい実施形態において、二量
体NKG2D-Fcキメラは、単一の(例えば、切れ目のない)組換えポリペプチドとして産生する
。他の実施形態において、二量体NKG2D-Fcの2つ以上の部分は、別々の断片として産生さ
れ、続いて、一緒に連結されて、二量体NKG2D-Fc分子が得られる。例えば、キメラのそれ
ぞれのNKG2D部分(例えば、NKG2D1、NKG2D2)及び二量体NKG2D-FcのFc部分を、別々の組換
えポリペプチドとして、それぞれ産生させ、次いで、化学的連結手段によって、一緒に融
合させて、二量体NKG2D-Fcが得られる。この産生の方法論は、非ペプチド連結分子が使用
される場合において、特に好ましくあり得る。同様に、この産生の方法論は、単一の切れ
目のないポリペプチドとして作成された場合、二量体NKG2D-Fcキメラが、正しく折り畳ま
れていない(例えば、リガンドと適切に結合しない)場合にも好ましくあり得る。
【0076】
組換えポリペプチドの産生のために、様々な宿主生物を使用してもよい。適切な宿主と
しては、限定されないが、E.coli(大腸菌)等の細菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞及び
哺乳類細胞が挙げられる。適切な宿主生物の選択は、二量体NKG2D-Fcキメラの特定の適用
に依存するだろう。当業者であれば、組換えポリペプチドを産生するための適切な宿主の
選択において、特定の基準を考慮に入れる方法を理解するであろう。適切な宿主の選択に
影響を及ぼす因子としては、例えば、翻訳後の修飾、例えば、リン酸化及びグリコシル化
のパターン、並びに技術的な因子、例えば、一般的に予想される収率及び精製の容易さが
挙げられる。インビボで使用する二量体NKG2D-Fcの宿主特異的な翻訳後の修飾は、特定の
宿主(post-)特異的な修飾が、高度の免疫原性(抗原性)であることが公知であるので、注
意深く考慮しなければならない。
【0077】
産生されると、二量体NKG2D-Fcは、任意の適切な手段、例えば、当業者に公知のクロマ
トグラフ法によって精製することができる。クロマトグラフ法の例としては、ゲルろ過ク
ロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Caineら、Protein Expr.Purif.、1996年、8巻:
159~66頁を参照のこと。いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcは、タンパク質A
免疫親和性クロマトグラフィーによって精製される。
【0078】
当業者によって認識されるように、二量体NKG2Dキメラ部分は、別々に調製及び単離し
、化学合成によって連結することもできる。
【0079】
NKG2D受容体リガンド
本開示に記載するいずれかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcは、NKG2D受容体の内
因性リガンドと結合する能力を有する。公知のヒトのNKG2Dリガンドとしては、MICA、MIC
B、RAET-1G、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5及びULBP6が挙げられる。好ましくは、
本開示に記載の二量体NKG2D-Fcキメラは、NKG2D受容体リガンドの2種類以上と結合する能
力を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcキメラ分子は、10-4M以下、10-7M以下の
高い親和性で、又は、nM以下、例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1n
M又はそれ以下の親和性で、リガンドと結合する。いくつかの実施形態において、二量体N
KG2D-Fc分子の、そのリガンドに対する結合親和性は、少なくとも5×106Ka、少なくとも1
×107Ka、少なくとも2×107Ka、少なくとも1×108Ka、又はそれ以上である。
【0081】
いくつかの実施形態において、NKG2D-Fcは、NKG2D受容体リガンドのサブセットと、(例
えば、高い親和性で)優先的に結合する。突然変異分析と組み合わせた3次元構造データは
、NKG2Dが、その内因性リガンドの多様なアレイの認識及び結合において許容的であるこ
とを明らかにした。
【0082】
NKG2Dのためのリガンドは、細胞表面上で発現してもよい。或いは、NKG2Dのためのリガ
ンドは、細胞表面から「脱落」していてもよく、可溶性リガンドとして存在する。MICA等
のNKG2Dリガンドが、過剰発現し、場合によっては、例えば、血清に可溶性の形態で、血
流又は組織の周囲に、放出(例えば、脱落)されることが、特定のがんにおいて公知である
。これは、少なくとも部分的に、がんの発病及び/又は進行に寄与すると考えられる。し
たがって、二量体NKG2D-Fcは、中和剤として機能することによって、異常に上昇したレベ
ルで存在するリガンドの発現と均衡して、細胞表面上に、又は放出された形態としてのい
ずれかで存在する、そのようなリガンドと結合するために有用である。
【0083】
NKG2Dリガンドが、対象のがん細胞の表面上で発現している場合、本開示に記載の二量
体NKG2D-Fcは、対象に投与された場合に、細胞表面のリガンドに結合する。二量体NKG2D-
Fcキメラのそのリガンドへの結合は、NK細胞上に存在する内因性NKG2D受容体の活性化を
妨げ得る。NKG2Dリガンドが、がん細胞から「脱落する」、例えば、対象の血流中に放出
される場合、本明細書に記載の二量体NKG2D-Fcは、可溶性のリガンドと結合し、さらなる
作用からそれを隔離する。
【0084】
治療適用
通常、NKG2Dリガンドの発現は、胃腸上皮に限られていると思われる。わずかな発現が
、静止状態の上皮細胞で観察されるが、より高いレベルの発現は、急速に増殖する細胞で
起こる。NKG2Dリガンドの発現はまた、様々な形質転換細胞、特に、上皮起源のものにお
いて、上方制御される。したがって、対象におけるがん又はがんの症状を処置するための
方法を本明細書に提供する。本方法は、インビボでNKG2Dリガンドと結合する二量体NKG2D
-Fcの治療的有効量を、対象に投与することを含む。
【0085】
がん治療の文脈における「処置すること」、「処置」及び「処置する」等の用語は、が
んを有する対象への、本明細書に記載の二量体NKG2D-Fcを含む組成物の投与を指す。組成
物は、治療的に有効な量で、対象に投与される。本明細書で使用される場合、治療的有効
量は、疾患又は障害、例えば、特定の種類のがんを有する対象に対して、統計学的有意性
を伴って有益な効果をもたらすと考えられる、治療的な量を指す。一般に、治療的有効量
は、組成物を、特定の状態(例えば、疾患の進行又は段階)の対象の集団に投与して、応答
の結果を評価することによって決定される。本明細書で使用される場合、治療的処置とし
ては、例えば、完全な予防、又は疾患の症状の消失、疾患の症状の発症の遅延、若しくは
疾患の重症度の軽減が挙げられるだろう。
【0086】
がん
二量体NKG2D-Fcキメラは、対象において、1つ又は複数のNKG2Dリガンドの発現が上昇し
ている場合に、幅広い種類のがんに対する免疫療法のために、広く有用であると考えられ
る。がんは、形質転換された細胞が関与する増殖性の疾患を広く指し、前がん性及び悪性
の障害の両方を含む。本発明は、1つ又は複数のNKG2Dリガンドの過剰発現によって特徴づ
けられるがんを有する対象を処置するために有用である。いくつかの実施形態において、
がんは、1つ(又は主に1つ)のNKG2D受容体のリガンドの過剰発現によって特徴づけられる
。他の実施形態において、がんは、2つ以上のNKG2Dリガンドの過剰発現によって特徴づけ
られる。
【0087】
本明細書に開示の方法は、悪性腫瘍に進行する危険性をもたらす前がん性の障害の処置
のための有用な治療法である。
【0088】
このような障害の例としては、限定されないが、異形成、過形成、並びに意義不明の単
クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)及びくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)等の形質細胞
の障害が挙げられる。いくつかの実施形態において、がんは、メラノーマ、肺、乳房、腎
臓、卵巣、前立腺、膵臓、胃及び結腸のがん腫、リンパ腫又は白血病である。いくつかの
実施形態において、がんはメラノーマである。いくつかの実施形態において、がんは、形
質細胞の悪性腫瘍、例えば、多発性骨髄腫(MM)又は形質細胞の前がん状態である。いくつ
かの実施形態において、がんは、メラノーマ、肺がん、形質細胞がん、白血病、リンパ腫
、卵巣がん、結腸がん、膵臓がん又は前立腺がんである。いくつかの実施形態において、
対象は、がんを有していると診断されているか、又はがんの素因がある。したがって、本
明細書に開示の方法は、転移を有し、したがって、ぶり返し又は再発の影響を受けやすい
対象を処置するためにも有用である。本方法は、例えば、がん若しくは転移した腫瘍の家
族歴を有するか、又はがんの転移のための遺伝的な素因を示す、危険性が高い個体におい
て、特に有用である。具体的には、本方法は、NKG2Dリガンドの発現が関与するがんの処
置を対象とする。いくつかの実施形態において、NKG2Dリガンドは、MICAである。したが
って、いくつかの実施形態において、がんは、MICAが関連する腫瘍を引き起こす。
【0089】
特定の対象(例えば、患者)が、NKG2D-Fcを含むがん治療を受けるべきか否かは、対象に
おける1つ以上のNKG2Dリガンドの異常な発現について試験することによって決定すること
ができる。対象における「1つ以上のNKG2Dリガンドの異常な発現」は、対象から得た生体
試料中のリガンドの過剰発現を意味する。いくつかの実施形態において、生体試料として
は、がんに罹った疑いのある対象の組織から取り出された生検試料が挙げられ得る。例え
ば、場合によっては、生体試料は、悪性腫瘍についての試験のために固形腫瘍から採取さ
れる。他の場合において、生体試料は、血液試料、例えば、血清、糞便試料、尿試料等で
構成されてもよい。生体試料は、疾患、例えば、がんの診断又は進行について試験する目
的で、対象から採取された、任意の細胞又は組織試料であってもよい。
【0090】
当業者であれば、生体試料中に存在する1つ又は複数のマーカーの存在及びレベルにつ
いてアッセイするために使用される、様々な実験技術及び手順をよく知っている。対象が
、NKG2Dリガンドの過剰発現に関連するがんを有するか否かを決定するためには、典型的
には、免疫親和性アッセイが行われる。特定の状況において、利用可能な生体試料の種類
に応じて、免疫組織学的又は免疫細胞化学的な分析が実施され得る。多くの抗体が、これ
らの分析を行うために、市販されている。この目的のために使用される一般的な方法とし
ては、限定されないが、ELISA、免疫ブロット法及び免疫組織化学的検査が挙げられる。
【0091】
対象
本明細書に開示の方法は、がんが発生することが公知の、広範囲の種、例えば、ヒト、
非ヒト霊長類(例えば、サル)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、シカ、エルク、ヤギ、イヌ、
ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット及びマウスに適用することができる。し
たがって、本明細書において使用される「対象」は、少なくとも1つのNKG2Dリガンドの異
常な発現が関連する疾患、例えば、がんを、有しているか、又は発症する危険性を有する
、哺乳類の対象である。好ましい実施形態において、対象は、1つ又は複数のNKG2Dリガン
ドのレベルの上昇を示すがんを有するヒト対象である。いくつかの実施形態において、NK
G2Dリガンドは、MICAを含む。
【0092】
対象が、1つ又は複数のNKG2Dリガンドを上昇したレベルで発現することを示している場
合、対象は、本明細書に記載の方法で処置され得る。状況次第で、対象は、別のがん治療
を、受けたか、又は受けている。いくつかの実施形態において、がんは、寛解していても
よい。場合によっては、対象は、再発、例えば、転移を有する危険性がある。いくつかの
実施形態において、1つ又は複数のNKG2Dリガンドの過剰発現は、がん細胞、例えば、腫瘍
に限定される。いくつかの実施形態において、がん細胞によって発現した少なくとも1つ
のNKG2Dリガンドは、血流中に脱落し、したがって、対象の血清中で検出可能である。
【0093】
特定のがんの表現型に応じて、他のリガンドよりも過剰発現される(腫瘍細胞によって
発現される)1つ又は複数のリガンドを標的とすることが可能であり得、その発現は、有意
に影響を受けない。
【0094】
作用機序
本発明は、部分的に、2つのNKG2D断片及びFc断片を含むキメラ分子(例えば、二量体NKG
2D-Fcキメラ)が、1つ又は複数のNKG2Dリガンドと結合する能力を有し、単一のNKG2D断片
及びFc断片を含むキメラ分子(例えば、単量体NKG2D-Fcキメラ)と比較して、改善された有
効性で、腫瘍細胞死を誘導するという驚くべき発見に基づく。
【0095】
任意の特定の理論によって限定されることなく、二量体NKG2D-Fcキメラは、免疫系の2
つの主要な要素である自然免疫及び適応免疫を通して機能することができると思われる。
本明細書で使用される場合、自然免疫又は自然免疫系は、外来性の病原体に対する、非特
異的宿主防御機構を指す。自然免疫としては、物理的バリア(例えば、皮膚、胃酸、粘液
又は涙液、並びに細胞)、並びにNK細胞、食細胞及び補体系等の能動機構の両方が挙げら
れる。NK細胞は、自然免疫系の主要な構成要素となる。NK細胞は、細胞傷害性であり、例
えば、微生物に感染した細胞、及びいくつかの種類の腫瘍細胞を攻撃することができる。
NK細胞の細胞障害活性は、MHCクラスIアレルを認識する、細胞表面受容体を通して媒介さ
れる。多くの受容体の種類が当技術分野において公知であり、1つの受容体サブタイプで
あるNKG2Dを含む。食細胞としては、好中球、単球、マクロファージ、好塩基球及び好酸
球が挙げられる。補体系は、宿主生物からの病原体を除去するのを助ける、免疫系の生化
学的カスケードである。
【0096】
一般に、適応免疫又は適応免疫系は、抗原特異的な、抗体が媒介する免疫応答を指す。
適応免疫は、通常、Bリンパ球によって産生される特異的抗体、及び抗原特異的なTリンパ
球の活動を介して媒介される。Bリンパ球によって媒介される液性応答は、他の特殊な細
胞及びタンパク質による破壊のために外来細胞及び分子をマークする循環抗体の産生を通
して、主として細胞外の病原体に対する防御を行う。Tリンパ球によって媒介される細胞
応答は、冒された細胞に直接結合及び破壊することによって、主に細胞内の病原体及びが
ん細胞に対する防御を行う。本開示によれば、非抗体分子である二量体NKG2D-Fcは、特異
的抗体の通常の機能であるものを機能的にミミックすると考えられる。
【0097】
したがって、本発明は、二量体NKG2D-Fcが、細胞表面上でNKG2Dリガンドを発現する腫
瘍細胞に直接結合する、がんの処置のための方法を検討する。この作用機序において、二
量体NKG2D-Fcは、NKG2Dリガンドを過剰発現する腫瘍細胞を破壊するが、NKG2Dリガンドを
過剰発現しない健康な細胞は破壊しないために、特異的に特定することができる。
【0098】
二量体NKG2D-Fcは、少なくとも2つの方法で、ヒト腫瘍細胞上で発現する、いずれか又
はすべてのNKG2Dリガンドを標的とすることができる。腫瘍細胞の破壊を媒介する1つの機
構は、補体溶解のプロセス(補体依存性溶解、補体依存性細胞毒性又はCDCとも称する)に
よる。腫瘍細胞の破壊を媒介する2つめの方法は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を引き起こ
すことによる。
【0099】
いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcは、オプソニン化剤としての機能を果た
す。オプソニン化は、細胞又は粒子が、他の細胞上、例えば、樹状細胞又は食細胞上の受
容体に結合して、取り込みを促進させる分子で被覆されるプロセスである。樹状細胞及び
マクロファージ等の抗原提示細胞のために、オプソニン化は、抗原の効率的な処理及び提
示を促進する。標的(例えば、リガンド)、並びに内部移行及び次の抗原処理を媒介するこ
とができる抗原提示細胞上の特定の受容体(例えば、FcR)の両方に、特異的に結合する能
力を有するオプソニン化剤が、特に有用である。
【0100】
細胞表面上でNKG2D受容体の1つ又は複数のリガンドを発現する腫瘍細胞は、オプソニン
化され得、例えば、二量体NKG2D-Fc分子で被覆され得る。例えば、キメラのNKG2D部分は
、キメラのFc部分を露出させたままで、腫瘍細胞の表面上でリガンドと結合することがで
きる。樹状細胞は、FcγRを有し、したがって、腫瘍抗原(例えば、NKG2Dリガンド)と結合
及び内部移行することができ、これは、次いで、CD8+T細胞としても公知の細胞傷害性T細
胞に対する抗原提示をもたらす。これを、クロスプライミングと称する。同様に、オプソ
ニン化は、MHCクラスII拘束性のCD4+T細胞応答の発生をもたらす。したがって、オプソニ
ン化を通して、NKG2D-Fcキメラは、樹状細胞による、効率的な交差提示(例えば、プライ
ミング)を促進することができ、腫瘍に対する強いT細胞応答の誘導をもたらす。
【0101】
がん患者は、しばしば、免疫抑制を患っている。場合によっては、免疫抑制は、少なく
とも部分的に、障害性のNKG2D受容体シグナル伝達によって引き起こされ得ると考えられ
る。支配的なモデルに基づくと、例えば、脱落したMICAは、リンパ球上でNKG2D受容体分
子の内部移行を誘導することによって、宿主防御を損なう。したがって、このモデルによ
れば、腫瘍細胞のMICAの脱落は、NKG2Dの表面発現の下方制御を通して免疫抑制をもたら
す。
【0102】
したがって、本明細書で提供される方法は、特に、患者が、可溶性(すなわち、脱落し
た)NKG2Dリガンド又は血清中で検出可能なリガンドのレベルの上昇を示す状況で、二量体
NKG2D-Fcを含む組成物を投与することによって、免疫抑制に対抗又は軽減するために有用
である。作用機序は、患者に投与されたNKG2D-Fcが、腫瘍から脱落した、過剰のNKG2Dの
可溶性リガンドに結合し(従って、隔離される)、それによって、免疫抑制をもたらす細胞
表面上のNKG2D受容体の下方発現を元に戻す。
【0103】
したがって、二量体NKG2D-Fcキメラは、腫瘍細胞によって脱落した可溶性リガンドを中
和すること、細胞表面リガンドを発現する腫瘍細胞においてADCC及び/又はCDCを促進する
こと、並びにCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)及び腫瘍特異的抗体を産生するB細胞を含む適
応免疫系の交差提示及びプライミングを媒介することを含む、複数の治療機能を有するこ
とができる。
【0104】
投与
二量体NKG2D-Fc組成物は、対象に直接投与することができる。対象は、好ましくは、哺
乳動物である。「投与」及び「投与する」という用語は、医薬品が、その標的細胞、例え
ば、がん細胞と、インビボで、すなわち、対象の体内で、接触するように、対象に医薬品
を提供する手段を指す。いくつかの実施形態において、NKG2D-Fcを含む組成物は、対象に
、全身的に投与される。好ましい実施形態において、全身投与は、静脈注射を介して送達
される。いくつかの実施形態において、二量体NKG2D-Fcを含む組成物は、局所的に投与さ
れる。例えば、場合によっては、組成物は、固形腫瘍に直接的に、又は固形腫瘍の極近傍
に送達されてもよい。
【0105】
薬学的に許容される担体
いくつかの態様において、本開示は、本文書によって記載される二量体NKG2D-Fcキメラ
、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。一般に、二量体NKG2D-Fcを含む
組成物は、薬学的に許容される担体(例えば、生理的食塩水)に懸濁することができる。こ
のような担体としては、限定されないが、無菌の、水溶液又は非水溶液、懸濁液及びエマ
ルジョンを挙げることができる。非水性溶媒の例としては、例えば、鉱油、プロピレング
リコール、ポリエチレングリコール、植物油及び注射可能な有機エステルが挙げられる。
水性担体としては、限定されないが、水、アルコール、生理食塩水及び緩衝溶液が挙げら
れる。保存剤、香味剤、及び、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等の
他の添加剤等も存在していてもよい。哺乳動物に投与されるべき本明細書に記載の任意の
物質が、1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含有することができることは、理解さ
れるであろう。
【0106】
投与経路
本明細書に記載の任意の組成物は、様々な投与経路を介して対象の身体の任意の部分に
投与することができる。組成物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、筋肉内、直腸内、膣
内、髄腔内、気管内、皮内若しくは経皮注射によって、経口若しくは経鼻投与によって、
吸入によって、又は経時的に徐々に灌流することによって、投与することができる。組成
物は、特定の組織に送達することができる。例えば、組成物は、限定されないが、哺乳動
物の、関節、鼻粘膜、血液、肺、腸、筋肉組織、皮膚又は腹腔に送達することができる。
さらなる例において、組成物のエアロゾル製剤を、吸入によって、対象に投与することが
できる。
【0107】
用量
必要な用量は、投与経路、製剤の性質、患者の疾病の性質、対象のサイズ、体重、表面
積、年齢及び性別、投与されている他の薬物、並びに主治医の判断に依存する。適切な用
量は、典型的には、0.01~1,000μg/kgの範囲である。必要とされる用量の幅広い変動が
、様々な利用可能な二量体NKG2D-Fc組成物及び様々な投与経路の異なる効率性の観点から
、予期される。これらの用量レベルにおける変動は、当技術分野でよく理解されているよ
うに、最適化のための標準的な、経験に基づいた所定の方法を使用して、調整することが
できる。投与は、単回又は複数回(例えば、2倍若しくは3倍、4倍、6倍、8倍、10倍、20倍
、50倍、100倍、150倍又はそれ以上)であってもよい。適切な送達媒体中への組成物のカ
プセル化(例えば、ポリマー微小粒子又は埋め込み型デバイス)は、送達の効率性を向上さ
せ得る。
【0108】
処置レジメン
本明細書に提供される任意の組成物による処置の期間は、1日程度から宿主の生存期間(
例えば、長年)の、任意の長さの時間であり得る。例えば、二量体NKG2D-Fc組成物は、月
に1回で3カ月間、又は年に1回で10年間、投与することができる。処置の頻度は、変更可
能であることにも留意されたい。例えば、二量体NKG2D-Fc組成物は、毎日、毎週、毎月又
は毎年、1回(又は、2回、3回等)、投与することができる。二量体NKG2D-Fc組成物は、1つ
又は複数の他のがん治療と、一緒に、例えば、同じ時点で、又は連続して、投与すること
ができる。例えば、患者は、数時間、数日、数カ月又は数年の間隔で、別々に、自己腫瘍
細胞ワクチン、続いて、抗CTL4抗体、続いて、二量体NKG2D-Fcの治療を受けることができ
る。
【0109】
有効量
本明細書に記載の任意の組成物の有効量を、対象に投与することができる。本明細書で
使用される「有効」という用語は、対象に著しい毒性を誘導することなく、所望の治療効
果、例えば、免疫応答を誘導する任意の量を指す。そのような量は、公知の量の特定の組
成物を投与した後、対象の生物学的反応、例えば免疫応答、及び症状の改善を評価するこ
とによって、決定することができる。加えて、もしあるならば、毒性のレベルは、公知の
量の特定の組成物を投与する前及び後に、対象の臨床症状を評価することによって、決定
することができる。対象に投与される特定の組成物の有効量は、所望の結果、並びに宿主
の応答及び毒性のレベルに従って、調整することができることに留意されたい。著しい毒
性は、個々の宿主それぞれによって異なり得、限定されないが、対象の病状、年齢及び疼
痛への耐性を含む、複数の因子に依存する。
【0110】
組み合わせ治療
いくつかの実施形態において、がんの処置を必要とする対象は、追加のがん治療と組み
合わせて、本明細書に記載の二量体NKG2D-Fc組成物で処置される。いくつかの実施形態に
おいて、追加のがん治療としては、細胞傷害性薬剤及び/又は非細胞傷害性薬剤が挙げら
れる。「細胞傷害性薬剤」は、細胞の機能を阻害若しくは妨げるか、及び/又は細胞の破
壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位元素(例えば、131I、125I、90Y及び
186Re)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素、又
は合成毒素若しくはそれらの断片等の毒素を含むことを意図とする。非細胞傷害性薬剤は
、細胞の機能を阻害若しくは妨げないか、及び/又は細胞の破壊を引き起こさない物質を
指す。「非細胞傷害性薬剤」としては、細胞傷害性になるように活性化することができる
薬剤が挙げられ得る。非細胞傷害性薬剤としては、ビーズ、リポソーム、マトリックス又
は粒子が挙げられ得る(例えば、米国特許公開第2003/0028071号及び米国特許公開第2003/
0032995号を参照のこと、これらは、参照により、本明細書に組み込まれる)。このような
薬剤は、本明細書に記載の二量体NKG2D-Fc組成物と、抱合、カップリング、連結、又は会
合させてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、従来のがんの医薬は、本明細書に記載の組成物とともに
投与される。場合によっては、がんの処置を必要とする対象は、がん細胞を標的とする1
つ又は複数の追加の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載の二量体NKG2D-Fc組成物で処置
される。非常に適切な薬剤としては、DNAの損傷を促進する薬剤、例えば、がん細胞内の
細胞DNAを壊す二本鎖が挙げられる。当業者に公知の任意の形態のDNA損傷剤を使用するこ
とができる。DNA損傷は、典型的には、放射線治療及び/又は化学療法によって、引き起こ
され得る。DNA損傷剤は、遺伝毒性剤とも称する。本明細書で使用される場合、「と組み
合わせて」とは、二量体NKG2D-Fcが、1つ又は複数の追加の治療と同時的に(同時に、若し
くは別々であるが、極めて接近して、のいずれかで)、1つ又は複数の追加の治療の投与の
前又は後に、対象に投与されることを意味するものとする。
【0112】
放射線治療の例としては、限定されないが、外部放射線治療及び内部放射線治療(密封
小線源治療ともいう)が挙げられる。外部放射線治療のためのエネルギー源としては、X線
、ガンマ線及び粒子線が挙げられ、内部放射線において使用されるエネルギー源としては
、放射性ヨード(ヨウ素125又はヨウ素131)、ストロンチウム89、又は、放射性同位元素の
亜リン酸、パラジウム、セシウム、インジウム、ホスフェート若しくはコバルトが挙げら
れる。放射線治療を投与する方法は、当業者には周知である。
【0113】
特に有用であり得るDNAを損傷する化学療法剤の例としては、限定されないが、ブスル
ファン(ミレラン)、カルボプラチン(パラプラチン)、カルムスチン(Carmustme)(BCNU)、
クロラムブシル(ロイケラン)、シスプラチン(プラトモル(Platmol))、シクロホスファミ
ド(シトキサン、ネオサル(Neosar))、ダカルバジン(Dacarbazme)(DTIC-Dome)、イホスフ
ァミド(イフェックス(Ifex))、ロムスチン(Lomustme)(CCNU)、メクロレタミン(Mechloret
hamme)(ナイトロジェンマスタード、ムスタルゲン(Mustargen))、メルファラン(アルケラ
ン(Alkeran))及びプロカルバジン(マツラン(Matulane))が挙げられる。
【0114】
多くの他の化学療法剤もまた、本明細書に記載の方法のために、単独又は組み合わせて
のいずれかで、使用してもよい。これらとしては、メトトレキサート、ビンクリスチン、
アドリアマイシン、シスプラチン、糖不含有クロロエチルニトロソウレア、5-フルオロウ
ラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソー
ル、フラジリン(fragyline)、メグルミン(Meglamine)GLA、バルルビシン、カルムスチン(
carmustaine)及びポリフェルポサン(poliferposan)、MMI270、BAY 12-9566、RASファルネ
シル基転移酵素阻害剤、ファルネシル基転移酵素阻害剤、MMP、MTA/LY231514、LY264618/
ロメテレキソール(Lometexol)、グラモレク(Glamolec)、CI-994、TNP-470、ハイカムチン
/トポテカン、PKC412、バルスポダール/PSC833、ノバントロン/ミトキサントロン(Mitrox
antrone)、メタレット(Metaret)/スラミン、バチマスタット、E7070、BCH-4556、CS-682
、9-AC、AG3340、AG3433、インセル(Incel)/VX-710、VX-853、ZD0101、ISI641、ODN 698
、TA 2516/マルミスタット、BB2516/マルミスタット、CDP 845、D2163、PD183805、DX895
1f、レモナールDP 2202、FK 317、ピシバニール/OK-432、AD 32/バルルビシン、メタスト
ロン/ストロンチウム誘導体、テモダール/テモゾロマイド、エバセット(Evacet)/リポソ
ームドキソルビシン、ユータキサン(Yewtaxan)/パクリタキセル、タキソール/パクリタキ
セル、ゼローダ(Xeload)/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、シクロパックス
/経口パクリタキセル、経口タキソイド、SPU-077/シスプラチン、HMR 1275/フラボピリド
ール、CP-358(774)/EGFR、CP-609(754)/RAS癌遺伝子阻害剤、BMS-182751/経口白金、UFT(
テガフール/ウラシル)、エルガミゾール(Ergamisol)/レバミゾール、エニルウラシル/776
C85/5FUエンハンサー、カンプト/レバミゾール、カンプトサール/イリノテカン、ツモデ
ックス(Tumodex)/ラルチトレキセド(Ralitrexed)、ロイスタチン/クラドリビン、パキセ
クス(Paxex)/パクリタキセル、ドキシル/リポソームドキソルビシン、ケリックス(Caelyx
)/リポソームドキソルビシン、フルダラ/フルダラビン、ファルモルビシン(Pharmarubici
n)/エピルビシン、DepoCyt、ZD1839、LU 79553/ビス-ナフタルイミド、LU 103793/ドラス
タイン(Dolastain)、カエチクス(Caetyx)/リポソームドキソルビシン、ジェムザール/ゲ
ムシタビン、ZD 0473/アノーメッド(Anormed)、YM 116、ヨウ素種(lodine seeds)、CDK4
及びCDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/デキシフォサミド(Dexifosamide)、アイフェス(Ife
s)/メスネックス(Mesnex)/イフォサミド(Ifosamide)、ブモン(Vumon)/テニポシド、パラ
プラチン/カルボプラチン、プランチノール(Plantinol)/シスプラチン、ベペシド(Vepesi
de)/エトポシド、ZD 9331、タキソテール/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロド
ラッグ、タキサンアナログ、ニトロソウレア、メルフェラン(melphelan)及びシクロホス
ファミド等のアルキル化剤、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カ
ルボプラチン、クロラムブシル(Chlorombucil)、シスプラチン、シタラビンHCl、ダクチ
ノマイシン、ダウノルビシンHCl、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エトポシド(VP16
-213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5-FU)、フルタミド、ヒドロキシウレア(ヒ
ドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンアルファ-2a、アルファ-2b、
ロイプロリドアセテート(LHRH-放出因子アナログ)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンH
Cl(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン(o.p'-DDD)、ミト
キサントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾ
シン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、アムサ
クリン(m-AMSA)、アザシチジン、エリスロポエチン(Erthropoietin)、ヘキサメチルメラ
ミン(HMM)、インターロイキン2、ミトグアゾン(メチル-GAG;メチルグリオキサールビス-
グアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2'デオキシコホルマイシン)、セムスチン(
メチル-CCNU)、テニポシド(VM-26)及び硫酸ビンデシンが挙げられるが、これらに限定さ
れない。
【0115】
加えて、以下の薬剤も、本発明に有用であり得る:アルキル化剤、例えば、カルボプラ
チン及びシスプラチン、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤、ニトロソウレアアルキ
ル化剤、例えば、カルムスチン(BCNU)、代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート、フォリ
ン酸、プリンアナログ代謝拮抗剤、メルカプトプリン、ピリミジンアナログ代謝拮抗剤、
例えば、フルオロウラシル(5-FU)及びゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))、抗腫瘍性
ホルモン剤、例えば、ゴセレリン、ロイプロリド及びタモキシフェン、天然抗悪性腫瘍剤
、例えば、アルデスロイキン、メテルロイキン(mterleukin)-2、ドセタキセル、エトポシ
ド(VP-16)、インターフェロンアルファ、パクリタキセル(タキソール(登録商標))及びト
レチノイン(ATRA)、抗生物質天然抗悪性腫瘍剤、例えば、ブレオマイシン、ダクトモマイ
シン(dactmomycin)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン及びマイトマイ
シンCを含むマイトマイシン、並びにビンカアルカロイド天然抗悪性腫瘍剤、例えば、ビ
ンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ヒドロキシウレア、アセトン、アドリアマ
イシン、イホスファミド、エノシタビン、エピチオスタノール、アクラルビシン、アンシ
タビン、ニムスチン、プロカルバジン塩酸塩、カルボコン、カルボプラチン、カルモフー
ル、クロモマイシンA3、抗腫瘍性多糖類、抗腫瘍性血小板因子、シクロホスファミド(シ
トキサン(登録商標))、シゾフィラン、シタラビン(シトシンアラビノシド)、ダカルバジ
ン、チオモシン(thiomosine)、チオテパ、テガフール、ドラスタチン、ドラスタチンアナ
ログ、例えば、オウリスタチン(auristatin)、CPT-11(イリノテカン)、ミトザントロン(m
itozantrone)、ビノレルビン、テニポシド、アミノプテリン、カルボマイシン、エスペラ
ミシン(例えば、米国特許第4,675,187号を参照のこと、これは、参照により、本明細書に
組み込まれる)、ネオカルチノスタチン、OK 432、ブレオマイシン、フルツロン、ブロク
スウリジン(broxundine)、ブスルファン、ホンバン、ペプロマイシン、ベスタチン(ウベ
ニメクス(登録商標))、インターフェロン-β、メピチオスタン、ミトブロニトール(mitob
romtol)、メルファラン、ラミニンペプチド、レンチナン、カワラタケ(Coriolus versico
lor)抽出物、テガフール/ウラシル、エストラムスチン(エストロゲン/メクロレタミン)、
サリドマイド及びレナリドミド(レブリミド(Revlmid)(登録商標))。
【0116】
他の適切な化学療法剤としては、プロテアソームを阻害する薬剤が挙げられる。プロテ
アソーム阻害剤は、タンパク質、特に、細胞の維持、成長、分裂及び細胞死に関わる、短
命のタンパク質を分解する細胞複合体であるプロテアソームの作用を遮断する。プロテア
ソーム阻害剤の例としては、ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標))、ラクタシスチン(AG
Scientific, Inc社、San Diego、CA)、MGl 32(Biomol International社、Plymouth Meeti
ng、PA)、PS-519、エポネマイシン、エポキソマイシン(epoxomycin)、アクラシノマイシ
ンA、ジペプチドベンズアミド、CVT-63417及びビニルスルホントリペプチドプロテアソー
ム阻害剤が挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、がん免疫療法を含む、1つ又
は複数の他のがんの処置と組み合わせて使用される。がん免疫療法は、がんを拒絶するた
めの免疫系の使用である。主な前提は、疾患の原因である腫瘍細胞を攻撃するために、対
象の免疫系を刺激することである。これは、対象の免疫化を通して、又は薬物療法、例え
ば、抗体の、薬物としての投与を通して、のいずれかであり得、前者の場合、対象自身の
免疫系が、腫瘍細胞を、破壊する標的として認識し、後者の場合、対象の免疫系が、治療
薬剤による腫瘍細胞の破壊のために動員される。がん免疫療法としては、抗体に基づく治
療及びサイトカインに基づく治療が挙げられる。
【0118】
多くの治療的モノクローナル抗体が、ヒトにおける使用のためにFDAによって承認され
ており、更に多くが進行中である。がん免疫療法のためにFDAが承認したモノクローナル
抗体としては、CD52、CD33、CD20、ErbB2、血管内皮増殖因子及び上皮性増殖因子受容体
に対する抗体が挙げられる。したがって、1つ又は複数のがんに関連する抗原を標的とす
る、これらの抗体及び他の抗体は、二量体NKG2D-Fcと組み合わせて投与される組み合わせ
治療における使用のために適切である。がん治療のためにFDAによって承認されたモノク
ローナル抗体の例としては、限定されないが、リツキシマブ(リツキサン(商標)として入
手可能)、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標)として入手可能)、アレムツズマブ(キャン
パス-IH(商標)として入手可能)、セツキシマブ(エルビタックス(商標)として入手可能)、
ベバシズマブ(アバスチン(商標)として入手可能)、パニツムマブ(ベクティビックス(商標
)として入手可能)、ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ(商標)として入手可能)、
イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン(商標)として入手可能)及びトシツモマブ(ベクザ
ー(商標)として入手可能)が挙げられる。米国で、がん治療のためのヒト臨床試験が現在
進行中のモノクローナル抗体の例としては、限定されないが、WX-G250(レンカレックス(R
encarex)(商標)として入手可能)、イピリムマブ(MDX-010として入手可能)、ザノリムマブ
(HuMax-CD4として入手可能)、オファツムマブ(Ofatunumab)(HuMax-CD20として入手可能)
、ch14.18、ザルツムマブ(HuMax-EGFrとして入手可能)、オレゴボマブ(B43.13、オーバル
レックス(OvalRex)(商標)として入手可能)、エドレコロマブ(IGN-101、パノレックス(Pan
orex)(商標)として入手可能)、131I-chTNT-I/B(コタラ(Cotara)(商標)として入手可能)、
ペムツモマブ(R-1549、セラギン(Theragyn)(商標)として入手可能)、リンツズマブ(SGN-3
3として入手可能)、ラベツズマブ(hMN14、CEAcide(商標)として入手可能)、カツマキソマ
ブ(レモバブ(商標)として入手可能)、CNTO 328(cCLB8として入手可能)、3F8、177Lu-J591
、ニモツズマブ、SGN-30、チシリムマブ(CP-675206として入手可能)、ダクリズマブ(ゼナ
パックス(商標)として入手可能)、エプラツズマブ(hLL2、リンホサイド(LymphoCide)(商
標)として入手可能)、90Y-エプラツズマブ、ガリキシマブ(IDEC-114として入手可能)、MD
X-060、CT-011、CS-1008、SGN-40、マパツムマブ(TRM-Iとして入手可能)、アポリズマブ(
HuID10、レミトゲン(商標)として入手可能)及びボロシキシマブ(M200として入手可能)が
挙げられる。
【0119】
がん免疫療法としては、サイトカインに基づく治療も挙げられる。サイトカインに基づ
くがん治療は、対象の免疫応答を調節する、1つ又は複数のサイトカインを利用する。が
んの処置において有用なサイトカインの非限定的な例としては、インターフェロン-α(IF
N-α)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及
びインターロイキン-12(IL-12)が挙げられる。
【0120】
本出願を通して引用した、すべての参考文献(文献参照、発行された特許、公開された
特許出願及び同時係属の特許出願を含む)の全内容は、参照によって、本明細書により、
明示的に組み込まれる。
【実施例0121】
コンストラクト
hIgG1
このコンストラクトは、親のpFUSE-hIgG1ベクター(Invivogen社)からのhIgG1部分であ
る。
【0122】
hNKG2Dx2-hIgG1
それらの間にアミノ酸スペーサーを有するヒトNKG2D(F78-V216)の2つのコピーを、5'の
pFUSE-hIgG1ベクター(Invivogen社)の制限なしクローニングを介してクローニングした。
このコンストラクトの概略図を、図1の左側パネルに表す。
【0123】
hNKG2D、RefSeq NP_031386.2、78~216番目のアミノ酸:
FLNSLFNQEVQIPLTESYCGPCPKNWICYKNNCYQFFDESKNWYESQASCMSQNASLLKVYSKEDQDLLKLVKSYHWMGL
VHIPTNGSWQWEDGSILSPNLLTIIEMQKGDCALYASSFKGYIENCSTPNTYICMQRTV(配列番号1)
【0124】
hIgG1-X又はhNKG2Dx2-hIgG1-X
上記に記載した、hIgG1ベクター又はhNKG2Dx2-hIgG1親ベクターのいずれかを使用して
、様々なコンストラクトを、3'のhIgG1セグメントにクローニングした(上記「X」によっ
て示す)。これらのコンストラクトを以下に記載する。
【0125】
hIL15/hIL15Ra
ヒトIL-15受容体アルファの部分のコドン最適化バージョン(hIL15Ra、GenBank AAP6952
8.1、31~107番目のアミノ酸)を、IL-15のコドン最適化バージョン(IL15、GenBank AAX37
025、22~135番目のアミノ酸)と融合した。このhIL15Ra及びhIL-15は、20アミノ酸(G4S)4
(配列番号3)リンカーによって隔てられた。アミノ酸配列を以下に示す。
【0126】
hIL15Ra、GenBank AAP69528.1、31~107番目のアミノ酸:
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPP(配
列番号8)
【0127】
IL15、GenBank AAX37025、22~135番目のアミノ酸:
NWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNV
TESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS(配列番号9)
【0128】
aPD1
抗マウスPD1のためのScFvを、hIgG1ベクター又はhNKG2Dx2-hIgG1ベクター中の3'のhIgG
1セグメントにクローニングした。
【0129】
aCTLA4
抗マウスCTLA4のためのScFvを、hIgG1ベクター又はhNKG2Dx2-hIgG1ベクター中の3'のhI
gG1セグメントにクローニングした。
【0130】
異種発現及び精製
示した融合コンストラクトを、コンストラクトをコードするプラスミドのリン酸カルシ
ウム法によって、293FT細胞中で、産生させた。上清を回収し、融合コンストラクトを、
プロテインAクロマトグラフィーによって精製した。1μgのそれぞれのコンストラクト(2-
メルカプトエタノールで還元し、70℃で10分間加熱したか、又はしていない)を、8~10%
のSDS-PAGEゲル上に置き、100Vで60~120分間作動させ、タンパク質を、クーマシーブル
ー染色で可視化した。図2は、hNKG2Dx2-hIgG1-hIL15/Raが、単一の融合タンパク質として
産生し、タンパク質Aによって容易に精製されることを示す。
【0131】
増殖アッセイ
ヒトNK細胞を、RosetteSep(StemCell Technologies社)を使用して、正常ドナーから単
離した。NK細胞を、5μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)(I
nvitrogen社)で標識化した。次いで、細胞を、IL-15コンストラクト(hIgG1-hIL15/Ra又は
hNKG2Dx2-20AA-hIgG1-hIL15/Ra)又はIL-15の様々な希釈物とともに、RPMI+10%FBS中で、4
日間培養し、CFSE希釈物を、FACSCanto(BD社)を使用して、測定した。図3は、hNKG2Dx2-h
IgG1-IL15/Raを用いるインキュベーションが、IL-15を用いるインキュベーションと同様
に、ヒトNK細胞の増殖を促進することを示す結果を提供する。
【0132】
死滅アッセイ
ヒトNK細胞を、RosetteSep(StemCell Technologies社)を使用して、正常なドナーから
単離し、BamBanker(Wako社)中で凍結した。NK細胞を解凍し、RPMI+10%FBS+200IU/mLのhIL
-2中で、終夜、回復させた。次いで、細胞を、PBSで3回洗浄し、CFSE(Invitrogen社)であ
らかじめ標識化した様々な腫瘍の標的に添加した。細胞を、1000rpmで1分間、遠心分離し
、加湿されたCO2インキュベーター中で、37℃で5時間、共培養した。4時間後、7-アミノ
アクチノマイシンD(7-AAD)を添加し、腫瘍標的細胞死を分析した。
【0133】
図4は、hNKG2Dx2-hIgG1-IL15/Raが、複数の細胞株の強力な死滅を促進し、適度なリガ
ンド発現を伴う細胞株において、hNKG2Dx2-hIgG1よりも優れていることを示す。パネルA
は、コンストラクトが、NG2D-Lを発現していないB16腫瘍細胞株の死滅を促進しないこと
を示す。hNKG2Dx2-hIgG1及びhNKG2Dx2-hIgG1-IL15/Raコンストラクトは両方とも、高レベ
ルのNKG2Dリガンドを発現する合成B16腫瘍細胞株の死滅を等しく促進する(図4、パネルB)
。様々な腫瘍が、NKG2D融合タンパク質の結合によって測定される、異なるレベルのNKG2D
リガンドを、それらの細胞表面上で発現する(図4、パネルC)。hNKG2Dx2-hIgG1及びhNKG2D
x2-hIgG1-IL15/Raコンストラクトは、高レベルのNKG2Dリガンドを天然に発現する腫瘍(K5
62)の死滅も促進するが、hNKG2Dx2-hIgG1-IL15/Raコンストラクトは、NKG2Dリガンドの発
現と逆相関した段階的な様式で、優れた死滅に至らせる(図4、パネルD)。
【0134】
IFNγ ELISA
ヒトNK細胞を、NK細胞の終夜の回復期間がなく(例えば、RPMI+10% FBS+200IU/mLのhIL-
2)、腫瘍標的を、CFSEで標識化していない以外は、上記に記載のようにして、単離し、凍
結し、腫瘍標的に添加した。24時間の共培養後、プレートを遠沈し、上清を、IFNγのELI
SA(Becton Dickinson社)による分析のために、吸引した。
【0135】
図5は、休止NK細胞が、融合タンパク質によって活性化されて、IFN-γを産生するが、
最大産生には、NKG2D、hIgG1及びIL-15の3つの成分のすべてを必要とすることを示す。N2
97Qは、CD16(NK上で発現する)が、hIgG1と結合するのを妨げる、hIgG1における変異であ
ることに留意されたい。
【0136】
CD16及びIL-15の活性化
図6は、予備活性化されたNK細胞(例えば、hIL-2とともに終夜インキュベートされた)が
、標的細胞を死滅させるためにCD16結合を必要とするが、IL-15は必要としないことを示
す。
【0137】
ヒトNK細胞を、上記に記載のようにして、単離し、凍結し、腫瘍標的に添加した。NK細
胞の終夜の回復期間はとらなかった。腫瘍標的は、CFSEで標識化した。図7は、休止NK細
胞の最適な活性化及び休止NK細胞による死滅が、CD16結合及びIL-15活性化を必要とする
ことを示す。
【0138】
二量体NKG2D-Fcコンストラクトの改善された特徴
NKG2DリガンドであるMICAとの複合体中のNKG2Dx2-hIgG1を示すタンパク質モデルを、図
13に示す。NKG2Dx2-hIgG1及びhNKG2Dx1-hIgG1コンストラクトと、MICA*008の結合を、ELI
SA及びフローサイトメトリーによって、アッセイした。図8は、NKG2Dx2-hIgG1が、hNKG2D
x1-hIgG1と比較して、改善されたアビディティーで、MICA*008と結合することを実証する
、ELISAデータを示す。図9は、hNKG2Dx2-hIgG1が、hNKG2Dx1-hIgG1と比較して、改善され
たアビディティーで、NKG2Dリガンドを発現する細胞と結合することを示す、フローサイ
トメトリーデータを表す。
【0139】
図10は、NKG2D-Fcが、リガンド陽性(例えば、NKG2Dリガンドを発現する)標的のNK細胞
を死滅に至らせることを示す。特に、hNKG2Dx2-20AA-hIgG1は、hNKG2Dx1-20AA-hIgG1より
も、著しく高いB16細胞の死滅を媒介した。
【0140】
図11は、hNKG2Dx2-hIgG1が、hNKG2Dx1-hIgG1と比較して、NKG2Dリガンドを発現する細
胞の死滅を改善することを示す。B16-ULBP2OE及びHeyA8細胞を試験した。
【0141】
腫瘍は、免疫応答を更に損なう、それらのNKG2Dリガンドを脱落させ得る。この課題に
対する1つの可能性がある解決手段は、免疫系の機能を元に戻すために、可溶性NKG2Dリガ
ンド(例えば、可溶性MICA)を「スポンジのように吸収する」ことである。図12は、可溶性
MICAのNKG2Dx2-hIgG1中和が、NKG2Dx1-hIgG1よりも優れていることを示す。
【0142】
均等物
当業者であれば、わずかな所定の実験を使用して、本明細書に記載の本発明の特定の実
施形態の多くの均等物を、認識し、又は確認することができるだろう。このような均等物
を、以下の特許請求の範囲によって、包含することを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2023175799000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書記載の発明。