(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175808
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】リアルタイム電池故障検出及び健全性状態監視
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231205BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231205BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20231205BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20231205BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20231205BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20231205BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20231205BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20231205BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20231205BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/3828
G01R31/385
G01R31/387
G01R31/389
G01R31/392
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149077
(22)【出願日】2023-09-14
(62)【分割の表示】P 2022549359の分割
【原出願日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】62/988,853
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/196,848
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520504231
【氏名又は名称】ウィスク アエロ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホム、ルイス ロメオ
(57)【要約】
【課題】電池の健全性及び動作の様々な態様をリアルタイム自動監視する方法。
【解決手段】本発明は、電池セルの状態を監視するための方法であって、電池セルの1つ又は複数の健全性状態パラメータの現在値を決定するステップと、電池セルの複数の動作状態パラメータの値を測定するステップと、現在値よりも良好な健全性状態に対応する楽観値に基づいて楽観的電位を計算するステップと、現在値よりも悪い健全性状態に対応する悲観値に基づいて悲観的電位を計算するステップと、電池セルの実際の電位が楽観的電位及び悲観的電位によって定義される包絡線内に実質的にあるかどうかを決定するステップと、実際の電位が包絡線内に実質的にない場合にモデル故障通知を生成するステップとを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルの状態を監視するための方法であって、
電池セルの1つ又は複数の健全性状態パラメータの現在値を決定するステップと、
前記電池セルの実際の電位を測定するステップを含み、前記電池セルの複数の動作状態パラメータの値を測定するステップと、
セル状態モデル、前記動作状態パラメータの第1のサブセットの前記測定値、及び前記1つ又は複数の健全性状態パラメータの、前記現在値よりも良好な健全性状態に対応する楽観値に基づいて楽観的電位を計算するステップと、
前記セル状態モデル、前記動作状態パラメータの第1のサブセットの前記測定値、及び前記1つ又は複数の健全性状態パラメータの、前記現在値よりも悪い健全性状態に対応する悲観値に基づいて悲観的電位を計算するステップと、
前記電池セルの前記実際の電位が前記楽観的電位及び前記悲観的電位によって定義される包絡線内に実質的にあるかどうかを決定するステップと、
前記実際の電位が前記包絡線内に実質的にない場合にモデル故障通知を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記電池セルが負荷に電力供給している間に前記方法がリアルタイムで実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電池セルが充電している間に前記方法がリアルタイムで実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電池セルがアクティブに使用されている間に前記モデル故障通知がリアルタイムで生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動作状態パラメータが、前記電池セルを通る電流及び前記電池セルの温度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ又は複数の健全性状態パラメータが、
前記電池セルの内部抵抗と、
前記電池セルの充電容量とを
含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
電池がアクティブに使用されている間に前記健全性状態パラメータの1つ又は複数の値を推定するステップと、
前記推定値を前記健全性状態パラメータの前記現在値として記憶するステップと
を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記セル状態モデルが等価セル回路モデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
セル状態モデル、前記動作状態パラメータの第1のサブセットの前記測定値、及び前記1つ又は複数の健全性状態パラメータの前記現在値に基づいて、前記電池セルの予測電位を計算するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
電池監視システムであって、
電池セルの電池センサからセンサデータを受信する電池インタフェースと、
出力データを制御システムに提供するための制御システムインタフェースと、
メモリと、
前記メモリ、前記電池インタフェース、及び前記制御システムに結合されたプロセッサであって、
電池セルの1つ又は複数の状態パラメータの現在値を決定し、
前記電池セルの、実際の電位を含む複数の動作状態パラメータの値を含むセンサデータを受信し、
セル状態モデル、前記動作状態パラメータの第1のサブセットの前記値、及び前記1つ又は複数の健全性状態パラメータの、前記現在値よりも良好な健全性状態に対応する楽観値に基づいて楽観的電位を計算し、
前記セル状態モデル、前記動作状態パラメータの第1のサブセットの前記値、及び前記1つ又は複数の健全性状態パラメータの、前記現在値よりも悪い健全性状態に対応する悲観値に基づいて悲観的電位を計算し、
前記電池セルの前記実際の電位が前記楽観的電位及び前記悲観的電位によって定義される包絡線内に実質的にあるかどうかを決定し、
前記実際の電位が前記包絡線内に実質的にない場合にモデル故障通知を生成する
ように構成されたプロセッサと
を備える、電池監視システム。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記センサデータを受信し、前記楽観的電位を計算し、前記悲観的電位を計算し、前記電池セルの前記実際の電位が実質的に前記包絡線内にあるかどうかを決定し、前記電池セルがアクティブに使用されている間にリアルタイムで前記モデル故障通知を生成するように構成される、請求項10に記載の電池監視システム。
【請求項12】
前記センサデータが、前記電池セルを通る電流と前記電池セルの温度とを含む、請求項10に記載の電池監視システム。
【請求項13】
前記1つ又は複数の健全性状態パラメータが、
前記電池セルの内部抵抗と
前記電池セルの充電容量と
を含む、請求項10に記載の電池監視システム。
【請求項14】
前記プロセッサが、前記電池セルが負荷に電力を供給している間に前記センサデータを使用して1つ又は複数の前記状態パラメータの値を推定し、前記推定値を前記状態パラメータの前記現在値として記憶するように更に構成される、請求項13に記載の電池監視システム。
【請求項15】
電池監視システム内のプロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
電池セルの1つ又は複数の健全性状態パラメータの現在値を決定するステップと、
前記電池セルの実際の電位を測定するステップを含み、前記電池セルの複数の動作状態パラメータの値を測定するステップと、
セル状態モデル、前記動作状態パラメータの第1のサブセットの前記値、及び前記1つ又は複数の健全性状態パラメータの、前記現在値よりも良好な健全性状態に対応する楽観値に基づいて楽観的電位を計算するステップと、
前記セル状態モデル、前記動作状態パラメータの第1のサブセットの前記値、及び前記1つ又は複数の健全性状態パラメータの、前記現在値よりも悪い健全性状態に対応する悲観値に基づいて悲観的電位を計算するステップと、
前記電池セルの前記実際の電位が前記楽観的電位及び前記悲観的電位によって定義される包絡線内に実質的にあるかどうかを決定するステップと、
前記実際の電位が前記包絡線内に実質的にない場合にモデル故障通知を生成するステップと
を含む方法を実行させるプログラム命令をその中に記憶している、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記電池セルがアクティブに使用されている間に前記方法がリアルタイムで実行される、請求項55に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記1つ又は複数の健全性状態パラメータが、
前記電池セルの内部抵抗と、
前記電池セルの充電容量と
を含む、請求項15に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記方法が、
電池がアクティブに使用されている間に健全性状態パラメータの1つ又は複数の値を推定するステップと、
前記推定値を前記健全性状態パラメータの前記現在値として記憶するステップと
を更に含む、請求項17に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記方法が、セル状態モデル、前記動作状態パラメータの第1のサブセットの前記測定値、及び前記1つ又は複数の健全性状態パラメータの前記現在値に基づいて、前記電池セルの予測電位を計算するステップを更に含む、請求項15に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記動作状態パラメータが、前記電池セルを通る電流及び前記電池セルの温度を含む、請求項15に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月12日に出願された米国仮出願第62/988,853号及び2021年3月9日に出願された米国特許出願第17/196,848号の優先権を主張し、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、電池監視に関し、特に、電池の健全性及び性能をリアルタイムで監視するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電池は、蓄えられた化学エネルギーを電気エネルギーに変換することができる電気化学装置である。リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池、ニッケルカドミウム電池、アルカリ電池などを含む電池技術の多数の例がこの技術分野で公知である。電池は、多くのサイズと様々な動作特性(例えば、電圧(又は電位)、最大電流、充電容量など)を持つものが作られている。高電圧や大充電容量に対応するため、複数の電池セルを電気的に直列及び/又は並列接続することによって電池パックを作ることができる。技術によっては、充電電流源に接続することで充電できるタイプの電池もある。
【0004】
電池(特にリチウムイオン電池)は、自動車、航空機、船舶などのビークルのモータを駆動させるためのポータブル電源としてなど、多種多様な用途に利用されている。場合によっては、電池又は電池パックがビークルの唯一の電源である場合がある。電池電力のみで駆動するビークルは、電池が故障した場合、その駆動力を突然失う可能性がある。電池が故障したときのビークルの状態によって、その結果は不便なことから悲惨なことまで影響が及ぶ可能性がある。したがって、電池性能を監視し、問題を示唆する状態を検出し、電池が故障する前に修理や交換ができるようにすることが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、電池の健全性及び動作の様々な態様のリアルタイムの自動監視を提供することができる電池監視システム及び方法の例(又は実施形態)を説明する。様々な実施形態では、電池の健全性及び動作の異なる態様を監視することができる。例えば、電池監視システムは、等価セル回路モデルを使用して、実際の動作条件(例えば、特定の負荷電流又は特定の温度での充電電流)下での電池セルの予想される挙動(例えば、セルの電位又は電圧)を定義する範囲(又は「包絡線」)をリアルタイムで予測することができる。予測値をセルの実際の挙動(例えば、セルの測定された電位)と比較して、本明細書では「モデル故障」状態と呼ばれる潜在的な問題が存在するかどうかを決定することができる。別の例として、電池監視システムは、充電容量や内部抵抗などの電池の健全性状態パラメータの推定値を維持することができ、これらの推定値は、電池が放電及び/又は充電されている間にリアルタイムで更新され、健全性状態パラメータの異常な変動は、「疑わしいパラメータ」故障を示唆することができる。電池監視システムは、検出された故障をリアルタイムで通知することができ、迅速な是正措置が可能となる。
【0006】
いくつかの実施形態によれば、電池セルの充電容量を監視するための方法は、電池セルがアイドル状態にある間に電池セルの初期充電状態を決定するステップと、その後、電池セルがアクティブ状態である間に電池セルから又は電池セルに移動する総電荷量を監視するステップ(例えば、電池セルから負荷に電荷が移動する放電状態、又は、外部電源から電池セルに電荷が移動する充電状態)と、電池セルが前記アイドル状態に戻った後に電池セルの最終充電状態を決定するステップと、初期充電状態、最終充電状態、及び移動した総電荷量を使用して、フィルタリングされていない充電容量値を計算するステップと、フィルタリングされていない充電容量値を使用して充電容量推定値を更新するステップとを含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、前の推定値に対する充電容量推定値の変化の大きさを計算することができ、充電容量の変化の大きさが閾値を超えた場合、セル容量故障通知を生成することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、初期充電状態を決定するステップは、電池セルが初期アイドル状態にある間に電池セルの初期セル電位及び初期セル温度を測定するステップと、初期セル電位及び初期セル温度を使用して等価セル回路モデルに基づいて電池セルの充電状態を計算するステップとを含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、最終充電状態を決定するステップは、電池セルがアイドル状態に戻ったときに電池セルの最終セル電位及び最終セル温度を測定するステップと、最終セル電位及び最終セル温度を使用して等価セル回路モデルに基づいて電池セルの充電状態を計算するステップとを含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、電池セルがアクティブ状態にある間に移動した総電荷量を監視するステップは、電池セルを通る電流を一定の時間間隔で測定するステップと、測定された電流と一定の時間間隔によって定義される時間ステップとの積を移動した電荷の累積値に加算するステップとを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、充電容量推定値を更新するステップは、フィルタリングされていない充電容量値及び前に記憶された充電容量推定値に無限インパルス応答フィルタを適用するステップを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、電池セルの内部抵抗を監視するための方法は、電池セルのアイドル状態からアクティブ状態への移行(これは、例えば、充電状態又は放電状態であり得る)の検出に応答して、記憶された値を使用して内部抵抗のランニング推定値を初期化するステップと、電池セルがアクティブ状態にある間に電池セルの電位、電流、及び温度を測定するステップと、測定された電位、電流、及び温度に基づいて内部抵抗のランニング推定値を反復的に更新するステップと、電池セルのアクティブ状態からアイドル状態への移行の検出に応答して、記憶された値とランニング推定値の最終値とに基づいて内部抵抗の変化を計算するステップと、ランニング推定値の最終値を使用して記憶された値を更新するステップとを含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、内部抵抗の変化が閾値を超えた場合、セル抵抗故障通知を生成することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、測定された電位、電流、及び温度に基づいて内部抵抗のランニング推定値を反復的に更新するステップは、反復更新毎に、測定された電位、電流、及び温度が所定の有効範囲内にあるかどうかを決定するステップを含むことができる。測定された電位、電流、及び温度が所定の有効範囲内にある場合、等価セル回路モデルに基づいて内部抵抗の生の推定値を計算することができ、生の推定値及び直前の時間ステップの前のランニング推定値を使用してランニング推定値を更新することができる。いくつかの実施形態では、生の推定値は、妥当な値の範囲と比較され、生の推定値が妥当と思われる値の範囲内にある場合にのみランニング推定値を更新するために使用される。測定された電位、電流、又は温度のうちの1つ又は複数が所定の有効範囲内にない場合、本方法は、ランニング推定値を更新せずに次の時間ステップを待つステップを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、ランニング推定値を更新するステップは、生の推定値及び前のランニング推定値に無限インパルス応答フィルタを適用するステップを含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、電池セルの状態を監視するための方法は、電池セルの1つ又は複数の健全性状態パラメータ(例えば、電池セルの内部抵抗、電池セルの充電容量)の現在値を決定するステップと、電池セルの実際の電位を測定することを含み、電池セルの複数の動作状態パラメータ(例えば、電池セルを通る電流、電池セルの温度)の値を測定するステップと、セル状態モデル(例えば、等価セル回路モデル)、動作状態パラメータの第1のサブセットの測定値、及び1つ又は複数の健全性状態パラメータの、現在値よりも良好な健全性状態に対応する楽観値に基づいて楽観的電位を計算するステップと、セル状態モデル、動作状態パラメータの第1のサブセットの測定値、及び1つ又は複数の健全性状態パラメータの、現在値よりも悪い健全性状態に対応する悲観値に基づいて悲観的電位を計算するステップと、電池セルの実際の電位が楽観的電位及び悲観的電位によって定義される包絡線内に実質的にあるかどうかを決定するステップと、実際の電位が包絡線内に実質的にない場合、モデル故障通知を生成するステップとを含むことができる。様々な実施形態では、本方法は、電池セルが負荷に電力供給している間及び/又は電池セルが充電している間にリアルタイムで実行することができる。モデル故障通知は、電池がアクティブに使用されている(負荷に電力供給している、及び/又は充電している)間にリアルタイムで生成することができる。いくつかの実施形態では、電池セルの予測電位は、セル状態モデル、動作状態パラメータの第1のサブセットの測定値、及び1つ又は複数の健全性状態パラメータの現在値に基づいて計算することもできる。
【0017】
いくつかの実施形態では、電池セルの充電容量及び/又は内部抵抗の推定値は、本明細書に記載の技術に従って電池がアクティブに使用されている間に決定することができ、これらの推定値は状態監視方法で使用することができる。
【0018】
上記又は他の方法のいずれか又は全て、又はこれらの任意の組合せは、電池が負荷に電力供給している間及び/又は電池が充電している間を含み、電池がアクティブに使用されているかどうかに拘わらず動作することができる、(ハードウェア、ソフトウェア/ファームウェア、又はこれらの任意の組合せを使用した)リアルタイム電池監視システムで実装することができる。いくつかの実施形態では、電池監視システムは、上記又は他の方法のいずれかの結果に基づいて、警告を生成するか、又は他のアクションを実行することができる。
【0019】
以下の詳細な説明は、添付の図面と共に、特許請求された発明の性質及び利点のより良い理解を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】いくつかの実施形態による電池監視のための動作環境の高レベルのブロック図である。
【
図2】いくつかの実施形態による電池バンクの簡略概略図である。
【
図3】いくつかの実施形態による電池監視システムの一例を示す。
【
図4】いくつかの実施形態による、セル挙動をモデル化し、モデル故障を検出するためのプロセスのフロー図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、航空機に電力供給するために使用される電池セルの、時間の関数としてのセル電位の例示的なプロットを示す。
【
図6】いくつかの実施形態による、放電事象に基づいてセルの充電容量を推定するためのプロセスのフロー図である。
【
図7】いくつかの実施形態による、放電事象に基づいてセルの内部抵抗を推定するためのプロセスのフロー図である。
【
図8】いくつかの実施形態による、内部抵抗のランニング推定値を反復的に更新するためのプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の例示的な実施形態の以下の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。網羅的であること、又は特許請求される発明を説明された正確な形態に限定することは意図されておらず、当業者は、多くの修正及び変形が可能であることを理解するであろう。実施形態は、本発明の原理及びその実用的用途を最もよく説明し、それによって当業者が、企図される特定の用途に適した様々な実施形態で、及び様々な修正を伴って、本発明を最もよく利用するために選択及び説明されている。
【0022】
システム概要
図1は、いくつかの実施形態による電池監視のための動作環境100の高レベルのブロック図を示す。環境100は、例えば、航空機、船舶、鉄道、自動車、トラック、オフロードビークルなどの電動ビークルとすることができる。環境100は、電気負荷104に電力供給する電池102を含む。電池102は、リチウムイオン電池、鉛電池、ニッケル水素電池などを含む任意のタイプの電池とすることができる。電池102は、単一の電池セルとして、又は必要に応じて直列及び/又は並列に互いに接続された複数の電池セルを含む電池パックとして実装することができる。(本明細書で使用される場合、「電池セル」又は「セル」という用語は、独立型電池、又は電池パックの場合では電池パック内のいくつかの独立した交換可能な電池ユニットのうちの1つを含むものとして理解することができる。)電気負荷104は、例えば、ビークルのモータ(又はエンジン)、又は任意の他の電池駆動の機構もしくは装置を含むことができる。電気負荷104は、異なる時間に電池102から様々な量の電力を引き出すことができる。例えば、ビークルのモータは、ビークルが静止しているときや一定速度で移動しているときよりも、ビークルが加速しているときに多くの動力を消費する可能性がある。
【0023】
制御システム106は、負荷104と通信する。例えば、制御システム106は、例えば、モータ速度を増減させるために、又は任意の電力消費する構成要素の動作状態を有効化、無効化、又は変更するために、負荷104に命令を送信することができる。制御システム106はまた、その動作状態、発生する可能性のある異常状態などを示唆するフィードバックを負荷104から受信することもできる。制御システム106はまた、表示画面、表示灯、スピーカ、人間が操作可能な制御装置(例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン又はタッチパッド、ジョイスティック、制御ホイール、フットペダルなど)などの人間インタフェース構成要素を含むこともできる。制御システム106は、負荷104に対して局所的であり(例えば、負荷104がモータを含むビークル内にある)、又は負荷104から遠隔に位置し、短距離又は長距離ネットワーク接続を含む適切な接続を介して通信することができる。いくつかの実施形態では、制御システム106は、局所的要素と遠隔要素の両方を含むことができる。例えば、環境100は、動作する場所以外の場所から監視及び誘導される自律型又は遠隔操縦ビークルとすることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、電池102は、電池102を充電器110などの充電電源に接続することによって充電することができる充電式電池である。充電器110は、電池102によって蓄えられる電力(又は充電)を外部供給源(例えば、標準的な壁面コンセント又は電池102の外部の任意の他の電源)から供給することができる任意のシステム又は装置を含むことができ、多数の例が当技術分野で知られている。充電器110はまた、いつ、どのくらいの電力を供給するかを含む、充電器110の動作を制御する制御回路を含むこともできる。いくつかの実施形態では、電池102は、特定の時間に充電器110に結合され、他の時間に充電器110から切り離すことができるので、充電器110は破線を使用して示されている。実施態様によっては、電池102は、充電器110から電力を受け取りながら、負荷104に電力供給することができても、できなくてもよい。いくつかの実施形態では、制御システム106は、充電器110の動作を電池102の負荷-電力供給動作と調整することができる。
【0025】
電池監視システム108は、電池102、制御システム106、及び充電器110に結合することができる。電池102には、電位、電流(電池が充電されているか放電されているかに応じて、いずれの方向にも流れることができる)、及び動作温度など、電池又は個々のセルの様々な状態パラメータを測定するためのセンサを装備することができる。電池監視システム108は、リアルタイムで(例えば、負荷104が電池102から電力を引き出している間に)電池102から測定された状態パラメータを受信することができる。状態パラメータに基づいて、電池監視システム108は、電池又は個々のセルの健全性状態パラメータ(例えば、充電容量及び/又は内部抵抗)の値を決定するために、及び/又は電池性能が予想される挙動と一致するかどうかを検出するために、様々な計算を実行することができる。電池監視システム108で実装可能な計算の例を以下に説明する。計算結果に基づいて、電池監視システム108は、電池状態情報を制御システム106及び/又は充電器110に提供することができる。電池状態情報は、例えば、電池102から報告された測定状態パラメータ、電池監視システム108によって計算された健全性状態パラメータの値、実際の電池挙動を予想される電池挙動のモデルと比較する情報、電池性能のいくつかの態様が予想から逸脱したことを示唆する「故障」通知、及び/又は電池監視システム108で利用可能な他の任意の情報の任意の組合せを含むことができる。制御システム106及び/又は充電器110は、この情報を使用して、環境100のオペレータに対して警告を生成し、電池状態情報に基づいて負荷104の動作を変更し、電池状態情報に基づいて充電器110の動作(例えば、電池102に充電電力が供給される速度)を変更し、電池102の電池履歴情報を維持し、及び/又は制御システム106にプログラムされ得る他の応答動作を行うことができる。
【0026】
一具体例では、動作環境100は、局所的制御下又は遠隔制御下で飛行することができる電池駆動航空機に対応する。負荷104は航空機のモータを含むことができ、電池102はモータ用電源とすることができる。このような環境では、電池102の信頼性は、航空機が安全に飛行を完了することを可能にするために重要である。高い信頼性で必要な量の電力を供給するために、電池102は、並列に配置された(冗長性を提供することができる)複数の電池パックで構成された高電圧電池バンクを含むことができ、各電池パックは、直列及び/又は並列に配置された複数のセルを組み込んでいる。電池監視システム108は、例えばセル毎に、又はセルのグループについて、各電池パックの状態に関するリアルタイム情報を提供することができ、電池故障が発生する前に問題を検出し対処することを可能にする。例えば、電池監視システム108が故障の通知を生成すると、サービス技術者に通知することができ、次の飛行の前に電池102を修理又は交換することができる。この例では、電池102を飛行の間の再充電のために充電器110に結合することができ、電池監視システム108は、充電中に各電池パックの状態に関する情報を提供し続けることができる。
【0027】
動作環境100は例示的なものであり、限定的なものではないことを理解されたい。任意のタイプの負荷を駆動する任意のタイプの電池(任意の数及び配置の電池セルを含む)は、本明細書に記載の種類のシステム及び方法を使用して監視することができる。
【0028】
図2は、いくつかの実施形態による電池バンク200の簡略概略図を示す。電池バンク200は、電池バンク内に組込みシステムとして電池監視システムを組み込んでいる。電池バンク200は、上記の動作環境100などの動作環境において、電池102として使用することができる。この例では、電池バンク200は、端子204(負荷に接続することができる)と接地点206との間に並列に接続された3つの高電圧(HV)電池パック202a~202cを含む。電池パック202a~202cは充電可能であり、各電池パック202a~202cを充電器に接続するための充電端子208が設けられている。
【0029】
電池パック202a~202cの各々は、並列に接続された2つのHV電池210a~210bを含む。各HV電池210a~210bは、個々の電池セル212を含み、これらは、例えば、リチウムイオン電池であり得る。例えば、各セルは、3~5Vの動作電圧、1~50mΩの内部抵抗、0~200mAの動作電流範囲を有し得るが、これらのパラメータは変更することができる。セル212の数は、非常に多い可能性がある。この例では、各HV電池210a~210b内の電池セル212は、直列に接続されて多数のセル212(例えば、ストリング当たり144セル)を有するストリングを形成し、3つの直列ストリングは、各HV電池210a~210b内で互いに並列に接続されている。電池バンク200は、セル212のいくつかが故障しても電池バンク200が電力供給し続けることができるように、高い動作電圧(例えば、約400~800Vの範囲の全体システム電圧)と高レベルの冗長性の両方を提供することができる。
【0030】
各HV電池210はまた、
図1の電池監視システム108の構成要素とすることができる電池監視システム(BMS)基板220を含む。各BMS基板220は、HV電池210内の1つ又は複数のセルの状態を監視するように構成された回路を有するプリント回路基板とすることができる。いくつかの実施形態では、BMS基板220は、各HV電池210の全てのセルを監視することができる。例えば、各HV電池210は、12個のBMS基板220を含むことができ、各BMS基板は36個のセルを監視することができる。以下、BMS基板220に実装可能な構成要素及び動作の例について説明する。
【0031】
電池バンク200は例示的なものであり、限定的なものではないことを理解されたい。電池システムは、任意の数の電池を含むことができ、各電池は、任意の数のセルを含むことができる。本明細書に説明の電池監視は、個々のセルのレベルで実行することができ、又はセルのグループは、必要に応じてユニットとして監視することができる。
【0032】
図3は、いくつかの実施形態による電池監視システム300の一例を示す。電池監視システム300は、例えば、
図1の電池監視システム108を実装するために使用することができる。いくつかの実施形態では、
図2の電池バンク200の各BMS基板220は、電池監視システム300の構成要素の1つ又は複数のインスタンスを含むことができる。
【0033】
電池監視システム300は、プロセッサ302と、メモリ304と、電池インタフェース306と、制御システムインタフェース308とを含む。プロセッサ302は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は本明細書に記載の論理演算を実装する他の回路であり得る。いくつかの実施形態では、電池監視システム300は、組込みシステムとすることができ、以下に説明するように、計算は、小型の低電力プロセッサを使用してリアルタイムで実行できる方法で実施することができる。メモリ304は、半導体ベースのメモリ(例えば、DRAM、SRAM)、フラッシュメモリ、磁気記憶装置、光学記憶装置、又は他のコンピュータ可読記憶媒体を含むことができる。メモリ304は、電池監視システム300が監視する各電池セルに関する情報を記憶することができる。例えば、メモリ304は、セル構成パラメータ310及びセル状態パラメータ312を記憶することができる。セル構成パラメータ310は、特定のセルの寿命にわたって静的又は徐々に変化するパラメータを含む可能性があり、セル状態パラメータ312は、電池が使用されるにつれて動的に変化するパラメータを含む可能性がある。メモリ304はまた、反復的にセルの状態パラメータを予測するために使用することができるセル状態モデル(例えば、等価セル回路モデル)を記憶することもできる。例えば、セル状態モデルは、前の時間ステップにおける消費電流、温度、内部抵抗、充電容量、及び充電状態に基づいて、所与の時間ステップにおけるセルの充電状態及び分極状態(又は電圧)を予測することができる。いくつかの実施形態では、同じセル状態モデルが全てのセルに適用されるが、異なるセルの予測は、構成パラメータ値及び/又は状態パラメータ値に関するセル間の差異のために異なる可能性がある。別の例として、セル状態モデルを使用して、充電容量及び内部抵抗などの時間の経過と共に変化し得るセル構成パラメータを推定することができる。以下に具体例を示す。
【0034】
電池インタフェース306は、プロセッサ302が電池インタフェース306に接続されたセル(又は電池)のセンサから状態情報を取得することを可能にするハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素を含むことができる。状態情報は、例えば、セルの電流、電位、及び動作温度の測定値を含むことができる。いくつかの実施形態では、電池インタフェース306は、一定の時間間隔で状態情報を提供する。必要に応じて、この間隔は、現在の動作モードに応じて変えることができる。例えば、状態情報は、電池がアクティブに使用されている間に毎秒1回又は2回、また電池がアイドル状態のときに1時間に3回又は4回提供され得る。いくつかの実施形態では、電池インタフェース306は、所望の間隔で状態情報の要求を電池に送信することができる。代替的に、電池セルは、(例えば、アナログ信号として)データを連続的に提供するセンサを有していてもよく、電池インタフェース306は、適切な時間にアナログ信号をサンプリングしてデジタル化することができる。プロセッサ302は、このようにして得られたセンサデータを使用して、例えば、以下に説明するように、様々な状態パラメータ値を計算することができる。
【0035】
制御システムインタフェース308は、プロセッサ302が制御システム(例えば、
図1の制御システム106)に電池状態情報を提供することを可能にするハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素を含むことができる。様々な実施形態において、電池状態情報は、電池セルから受信したデータ、データから計算された状態パラメータ、データから計算された構成パラメータ、及び/又は故障通知もしくは他の警告を含むことができ、その例を以下に説明する。
【0036】
電池監視システム300は例示的なものであり、変形及び修正が可能であることを理解されたい。いくつかの実施形態では、電池監視システム300は、監視されている各セルについてその構成要素の別個のインスタンスを含むことができ、又は関連するメモリ装置(複数可)を有する単一のプロセッサを使用して複数のセルを監視することができる。本明細書で説明の例では、電池監視は、セルに対して実行されるが、より高いレベル(例えば、直列接続されたセルのグループ、又は電池パックもしくは電池バンク全体)での電池監視は排除されない。電池監視システム300は、以下に説明する例のいずれか1つ又は複数を含むがこれらに限定されない、任意の数及び組合せの監視動作を実装することができる。いくつかの実施形態では、電池監視システムはまた、較正、自己試験などの他の電池管理動作も対応することができる。
【0037】
動作中、電池監視システム300などの電池監視システムは、電池状態を監視し、電池(又は特定のセル)の自然な経年劣化(徐々に性能低下させる可能性がある)及び電池性能に影響を与える他の考慮事項を考慮して、電池状態をリアルタイムで評価して、電池(又は特定のセル)が予想通りに動作しているかどうかを決定することができる。次に、電池監視プロセスの一例について説明する。
【0038】
モデル故障検出
1つのタイプの電池監視プロセスは、通常使用中の電池セル挙動の予測及び観察に基づくことができる。電池セルは、一般に、本質的に電気化学的であり、特定の条件、例えば、電流の関数としての電位又は所与の動作電位における電流に対するセルの応答は、等価セル回路モデルなどを使用して定量的にモデル化することができる。したがって、電池監視システムのいくつかの実施形態は、電池動作中の任意の所与の時間におけるセル電位を予測するために、監視されているセルの定量的モデル(本明細書では「セル状態モデル」と呼ばれる)から導出される予測関数を使用することができる。実際の(測定された)セル電位を予測と比較することができ、実際のセル電位が予測と一致しない場合、「モデル故障」通知を生成することができる。
【0039】
図4は、いくつかの実施形態による、セル挙動をモデル化し、モデル故障を検出するためのプロセス400のフロー図である。プロセス400は、例えば、電池監視システム300又は上記の他の電池監視システムにおいて実装することができる。プロセス400は、セル状態を監視し、セル状態がセル状態モデルの予測と一致するかどうかを決定するためにリアルタイムで動作することができる。いくつかの実施形態では、プロセス400は、電池から受信した測定データに基づいて一定の時間間隔で動的に更新される各セルの推定(又は予測)セル状態を維持する。セル状態は、表1で定義された変数を使用して定義及び監視することができ、下付き文字kは時間ステップを示す。
【表1】
【0040】
いくつかの実施形態では、表1の表記法を使用して、セル状態モデル更新関数は、以下のように定義される。
[μk、Vpred、k]=modelUpdate(μk-1、Ik、C0、Ri、Tk、dt) (1)
modelUpdate()関数は、前のセル状態、測定された電流及び温度、充電容量C0及び内部抵抗Riの推定値、ならびに時間ステップに基づいて、時間ステップkに対するセルのSOC及び予測電位を計算する。modelUpdate()関数は、等価セル回路モデルを使用する従来のセル挙動モデルに基づくことができる。このようなモデルの例は当技術分野で知られており、特定のタイプのセルに基づいて適切なモデルを選択することができる。
【0041】
時間ステップdtは、セルの現在の動作状態に基づいて選択されてもよい。例えば、セルは、以下の状態を含む有限状態モデルを有することができる。これらの状態とは、「放電中」(電流は電池から引き出されている)と、「充電中」(電池を再充電するために電流が印加されている)と、「緩和」(電池から出る(又は電池へ入る)電流が、不活性を示唆する閾値を下回っている)と、「アイドル」(電流が不活性閾値を下回ったままで、かつ電圧が長時間、例えば、少なくとも15分間にわたって安定したままである場合、緩和状態から入る)である。いくつかの実施形態では、プロセス400は、放電、充電、又は緩和状態にあるときはより高速(例えば、dt~1秒)で、アイドル状態にあるときはより低速(例えば、dt~900秒)で、電池状態を更新することができる。他の状態モデルも使用することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、等価セル回路モデルは、充電容量C0及び内部抵抗Riなどの健全性パラメータの状態に依存する。これらのパラメータは、セルが老朽化するにつれて時間の経過と共に劣化し、最大充電容量が徐々に減少し、内部抵抗が徐々に増加することが予想される。いくつかの実施形態では、電池監視システムは、セルセンサデータに基づく受動的リアルタイムプロセスを使用してC0及びRiを推定することができ、このようなプロセスの例を以下に説明する。他の実施形態では、C0及びRiは、時々(例えば、電池が長時間にわたってアイドル状態であると予想されるときに試験手順を実行することによって)測定され、測定と測定との間で定数として扱うことができる。
【0043】
プロセス400は、ブロック402における初期化から開始することができる。初期化は、例えば、電池管理システムの電源がオン又はリセットされると、又は電池がアイドル状態から任意の他の状態に移行するときに行われ得る。初期化は、初期化が行われるときはセルが使用されていないという仮定に基づいて、セル状態モデルの様々なパラメータの初期値を設定することを含み得る。例えば、Vpを0に初期化することができる。C0及びRiは、最後の測定値又は推定値に基づいて初期化することができる。SOC0を最後の推定SOCに初期化することができ、又は初期化中に電池が分極されていない場合、SOC0は、等価セル回路モデルに基づいてセルの電位及び温度の関数としてセル充電状態を計算するgetSOC(V、T)関数を使用して、Vactual、0及びT0の測定値から計算することができる。いくつかの実施形態では、リアルタイム計算を容易にするために、電位値及び温度値の離散的なセットに対して事前にgetSOC()を計算し、ルックアップテーブルに記憶することができる。他のパラメータ及びフラグも初期化することができる。例えば、Qdischarge、0を0に初期化することができる。
【0044】
ブロック404において、(時間ステップkにおける)プロセス400の各反復に対して、セルの状態パラメータの新しい値が決定される。いくつかの実施形態では、新しい状態パラメータを決定することは、引き出されている電流(Ik)、セル全体の実際の電位(Vactual、k)、及びセル温度(Tk)を測定し、式(1)を適用してSOCkと予測電位Vp、Vpred、kを決定することを含むことができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、新しい状態パラメータを決定するステップはまた、セルエネルギー(U
k)及びセル放電Q
discharge、kを推定するステップを含むことができる。例えば、以下の式を使用することができる。
【数1】
Q
discharge、k=Q
discharge、k-1+I
kdt、 (3)
式(2)のgetOCV(SOC、T)は、getSOC(V、T)を補完する関数であり、等価セル回路モデルに基づいてSOC及びセル温度の関数としてセル電位(具体的には開回路電圧)を計算する。getSOC()関数と同様に、リアルタイム計算を容易にするために、SOC及び温度値の離散セットに対してgetOCV()を事前に計算し、ルックアップテーブルに記憶することができる。U
kは、各反復で計算され、積分を一連の時間ステップとして近似することができることを理解されたい。
【0046】
ブロック406において、ブロック404で決定された状態パラメータが、「楽観的な」セルパラメータのセット及び「悲観的な」セルパラメータのセット、特に、楽観的セル電位(Vopt)及び悲観的セル電位(Vpess)を計算するために使用される。楽観的なセルパラメータは、(C0及びRiの電流推定値と比較して)充電容量が増加し内部抵抗が減少した仮想的なセルの状態パラメータを表し、モデル化されたセルと同じ充電事象又は放電事象が発生する。逆に、悲観的なセルパラメータは、(やはり、現在のC0及びRiの推定値と比較して)充電容量が減少し内部抵抗が増加した仮想的なセルの状態パラメータを表し、モデル化されたセルと同じ充電事象又は放電事象が発生する。いくつかの実施形態では、楽観的及び悲観的なセルパラメータは、ブロック404で決定された状態パラメータの周りの固定的な許容誤差として定義されず、代わりに、それらはセル状態モデルを使用して動的に計算される。
【0047】
実例として、いくつかの実施形態では、セルの最大充電容量C
0はK
C0、opt量だけ過小評価される、セルの内部抵抗R
iはK
Ri、opt量だけ過大評価される、セルの過電圧はスケーリング係数K
η、optによってオフになるという仮定に基づいて、楽観的セル電位V
optが定義される。この仮定に基づいて、以下の計算を使用してV
optを決定することができる。
C
0、opt=C
0+K
C0、opt (4)
C
init、opt=C
0、optSOC
0 (5)
C
opt、k=C
init、opt-Q
discharge、k (6)
【数2】
η
ec、opt=K
η、opt(V
c+V
e) (8)
R
i、opt、k=(R
i-K
Ri、opt)exp(-E
Ro(T
k-T
ref)) (9)
V
opt、k=getOCV(SOC
opt、k、T
k)-η
ec、opt-I
kR
i、opt、k (10)
ここで、E
R0は活性化エネルギーである。K係数は、例えば、良好に挙動するセルの設計仕様から、セル間変動の経験的観察に基づいて、必要に応じて選択することができる。
図2を参照して上で説明した種類の電池バンクのいくつかの実施形態では、K
C0、opt~0.1Ah(例えば、0.2Ah)、K
Ri、opt~0.0001Ω(例えば、0.0003Ω)、及びK
η、opt~0.7(例えば、0.75)である。
【0048】
同様に、いくつかの実施形態では、セルの最大充電容量C
0はK
C0、pessの量だけ過大評価される、セルの内部抵抗R
iはK
Ri、pessの量だけ過小評価される、セルの過電圧はK
η、pessのスケーリング係数によってオフになるという仮定に基づいて、悲観的セル電位V
pessが定義される。この仮定に基づいて、以下の計算を使用してV
pessを決定することができる。
【数3】
C
0、pess=C
0+K
C0、pess (12)
C
init、pess=C
0、pessSOC
0 (13)
C
pess、k=C
init、pess-Q
discharge、k (14)
【数4】
η
ec、pess=K
η、pess(V
c+V
e) (16)
R
i、pess、k=(R
i+K
Ri、pess)exp(-E
Ro(T
k-T
ref)) (17)
V
pess、k=getOCV(SOC
pess、k、T
k)-CF
*(η
ec、pess-I
kR
i、pess、k) (18)
楽観的セルと同様に、悲観的セルのK係数は、セルパラメータ(及びその変動性)の経験的観察に基づいて、及び/又は電気的故障を示唆する特定の変化に基づいて、必要に応じて選択することができる。
図2を参照して上で説明した種類の電池バンクのいくつかの実施形態では、K
C0、pess~-0.1Ah(例えば、0.2Ah)、K
Ri、pess~0.0003Ω(例えば、0.0001Ω)及びK
η、pess~0.7(例えば、0.75)である。式(11)及び式(18)において、CFは、セルが充電しているときにセルの全過電圧に適用されるスケーリング係数であり、充電中のセル電位の変動性の増加を説明する。(明らかになるように、スケーリング係数を悲観的電位推定値にのみ、又は楽観的電位推定値にのみ適用することは、セルが充電しているときに許容可能な電位の包絡線を広げる効果を有する。)
【0049】
「楽観的」及び「悲観的」というラベルは、Vopt、k>Vpess、kを意味することを意図しておらず、そうである必要はないことに留意されたい。例えば、式(4)~式(10)及び式(11)~式(18)により、セルが放電しているときはVopt、k>Vpess、kであるが、セルが充電しているときはVpess、k>Vopt、kであるという結果になる。いくつかの実施形態では、包絡線が少なくとも最小幅を有することを保証するために、パディング電位Vpadを使用してVopt、k及びVpess、kを微調整することができる。例えば、Vopt、k>Vpess、kの場合、微調整には以下の式を使用することができる。
Vopt、k=Vopt、k+Vpad (19)
Vpess、k=Vpess、k-Vpad (20)
同様に、Vpess、k≧Vopt、kの場合、微調整には以下の式を使用することができる。
Vopt、k=Vopt、k-Vpad (21)
Vpess、k=Vpess、k+Vpad (22)
Vpadは、必要に応じて選択することができ、例えば、Vpad=0.01Vである。
【0050】
ブロック408において、楽観的パラメータ及び悲観的パラメータを使用して、許容可能な電位範囲など許容可能な電池性能の包絡線を定義する。例えば、Vopt、k>Vpess、kの場合、包絡線は、
Vopt、k≧Vk≧Vpess、k (23)
のように定義することができ、
Vpess、k≧Vopt、kの場合、包絡線は、
Vpess、k≧Vk≧Vopt、k (24)
のように定義することができ、ここで、Vkは時間ステップkにおけるセル電位である。
【0051】
ブロック410において、セル両端の実際の電位Vactual、kが測定される。いくつかの実施形態では、測定は、ブロック404においてセルの状態パラメータを決定するステップの一部として行うことができる。
【0052】
ブロック412において、測定された電位Vactual、kが、例えば、必要に応じて、式(23)又は式(24)のいずれかを使用して、許容可能な電池性能の範囲内にあるかどうかを決定することができる。いくつかの実施形態では、追加の条件を適用してもよい。例えば、包絡線を定義するために使用される等価セル回路モデルは、セルSOCkが閾値(例えば、0.1)を下回った場合、又は電流Ikが閾値(例えば、あるタイプのセルについては70A)を超えている場合、信頼できなくなる可能性がある。セル状態モデルが信頼できない条件では、セル状態モデルによって定義された包絡線は無視することができる(例えば、測定されたVactual、kは、常に包絡線内にあるものとして扱うことができる)。
【0053】
包絡線の外側にある測定された電位V
actual、kは、セルの問題を示唆する可能性があり、モデル故障通知を生成することになり得る。いくつかの実施形態では、包絡線の外側にある測定された電位V
actual、kの任意のインスタンスは、モデル故障通知を生成することになり得る。他の実施形態では、包絡線の外側の過渡的な変動は、実質的でない変動として無視され、包絡線の外側の変動が実質的に包絡線の外側にあるとみなされるときを決定するために故障カウンタを使用することができる。したがって、ブロック414において、測定された電位が包絡線内にない場合、故障カウンタの値を増やすことができ、ブロック416において、測定された電位が包絡線内にある場合、故障カウンタをリセットすることができる。ブロック418において、故障カウンタが閾値を超えたかどうかが決定され、超えた場合、ブロック420においてモデル故障通知が生成される。いくつかの実施形態では、
図1の電池管理システム108などの電池管理システムにおいてモデル故障通知を生成するステップは、制御システム106(及び/又は必要に応じて他のシステム構成要素)に通知を送信するステップを含むことができる。様々な実施形態では、モデル故障通知は、電池搭載の故障表示灯を点灯させること、次の機会に電池の整備を依頼するために保守サービスにメッセージを送信することなど、他のアクションを含むことができる。
【0054】
モデル故障通知を生成するためのカウンタ閾値は、感度(問題の検出能力)と特異性(実際の問題がない場合には故障通知の生成を回避する)との間のトレードオフに基づいて定義される定数とすることができる。一例では、実際のセル電位が包絡線内にあるかどうかの決定は1Hzの速度で実行され、故障カウンタの閾値は30に設定され、その結果、実際の電位が包絡線の外側に30秒以上残っている場合、モデル故障事象が生成される。他の閾値も選択することができる。
【0055】
プロセス400の動作を更に説明するために、
図5は、いくつかの実施形態による、航空機に電力供給するために使用される電池セルの時間の関数としてのセル電位の例示的なプロットを示す。この例では、航空機は、航空機が巡航高度まで上昇して巡航を開始する時刻1000秒の少し前までアイドル状態である。時間3000秒の少し前に、航空機は下降する。実線502は、測定されたセル電位V
actual、kに対応する。線504は、実際のセルパラメータに適用されるセル状態モデルを使用して予測された予測電位V
pred、kに対応する。(この例では、線504は、測定された電位を忠実に追跡している。)
【0056】
線506は、上記のように(線504と同じセル状態モデルを用いて)楽観的なセルパラメータを用いて予測された予測電位Vopt、kに対応し、線508は、上記のように(線504と同じセル状態モデルを用いて)悲観的なセルパラメータを用いて予測された予測電位Vpess、kに対応する。図から分かるように、線506、線508によって画定される包絡線の幅は、時間の関数として変化する。その幅は、現在のセル挙動(例えば、どれだけの電流が引き出されているか)及びヒステリシスの影響を受ける。この例では、実際の電位(線502)は、線506、線508によって定義される包絡線内又は測定された持続時間内に留まっているので、モデル故障事象は生成されない。
【0057】
プロセス400は例示的なものであり、その変形及び修正が可能であることが理解されよう。論理が許す限り、順次にと説明された動作を並列に実行することも、又は動作を異なる順序で実行することもできる。具体的に説明していない他の動作を実行することも、必要であれば、具体的に説明した動作を省略することも可能である。セル状態モデル及び他のパラメータ値(例えば、楽観的電位及び悲観的電位を決定するためのパラメータ)は、電池セルのタイプ及び特性ならびに所望の特定の感度及び特異性に基づいて、特定の実施態様のために最適化することができる。監視プロセスは、任意の数のセルについて並列に又は順次に実行することができる。プロセス400又は同様のプロセスを使用した監視は、電池が任意の状態にある間に実行することができる。代替的に、必要であれば、監視は、特定の状態にある間にのみ(例えば、放電事象中にのみ、又は充電事象中にのみ)実行することができる。
【0058】
セルの健全性状態の推定
上記の通り、モデル故障検出は、アクティブに使用中の電池又はセルの異常な挙動の検出に関するものである。異常は別として、電池又は電池セル(特に、充電式電池又はセル)の全体的な性能は、電気化学及び熱力学に起因して、時間の経過と共に徐々に劣化し、電池又は電池セルが使用不可能な点に達することが予想され得る。したがって、異常な挙動を検出することに加えて、又はその代わりに、電池監視システムのいくつかの実施形態は、電池又はマルチセル電池の個々のセルの「健全性状態」を監視することもできる。本明細書の例では、健全性状態は、セルの最大充電容量C0及びセルの内部抵抗Riによって特徴付けられる。セルの劣化に伴い、最大充電容量が減少する一方、内部抵抗が増加する傾向がある。他の実施形態では、他のパラメータを、C0及びRiに加えて又はその代わりに、健全性状態に関連付けてもよい。
【0059】
いくつかのシステムでは、C0及びRiの監視は、電池がアイドル状態で充電器又は負荷に接続されている間に実行されるアクティブな試験プロセスの一部とすることができる。このようなアクティブな試験プロセスの例は、当技術分野で公知である。しかしながら、アクティブな試験プロセスは、典型的には、電池が長期間(数時間になり得る)アイドル状態であり充電器又は負荷に接続されたままであることを必要とする。高デューティサイクルで動作する電池の場合、代替プロセスが好ましい場合がある。
【0060】
したがって、電池監視システムのいくつかの実施形態は、「受動的」プロセスを使用して、セルのC0及びRiを監視することができる。受動的プロセスは、電圧、電流、及び温度(上記のモデル故障検出プロセス中に測定されるのと同じ状態パラメータ)のリアルタイム監視に依存し、C0及びRiは、測定されたパラメータから定量的に推定することができる。いくつかの実施形態では、C0及びRiを推定することはまた、フィルタリング関数(例えば、移動平均)を使用して推定値の変動を平滑化することを含むことができる。このプロセスは、電池の性能に影響を与えることなく、電池の使用中に実行できるため、「受動的」と呼ばれる。ここで、C0及びRiを推定するための受動的プロセスの例について説明する。
【0061】
本明細書に説明の例では、C
0は、セルが基準電流(例えば、1A)及び基準温度(例えば、T
ref=25℃)で放電することができる最大充電量として定義される。いくつかの実施形態では、放電事象がC
0推定値の信頼性及び安定性に関する特定の基準を満たす場合、放電事象の終了時に生の充電容量値C
0、rawを計算することができる。例えば、放電事象の生のC
0、rawは、以下のように定義することができる。
【数5】
ここで、Q
dischargeは、放電事象中にセルから放電された総電荷量であり、ΔSOCは、放電事象中のセルの充電状態の変化である。式(25)の生の値をフィルタリングして(例えば、移動平均又は他のフィルタ関数を使用して)、C
0の推定値を得ることができる。
【0062】
図6は、いくつかの実施形態による、放電事象に基づいてセルのC
0を推定するためのプロセス600のフロー図である。プロセス600は、例えば、電池監視システム300又は上記の他の電池監視システムにおいて実装することができる。プロセス600は、電池がアイドル状態にある間にC
0推定を実行することができる。プロセス600は、通常動作(すなわち、負荷への電力供給及び/又は充電)以外の電池活動を含まないため、受動的監視プロセスの一例である。
【0063】
プロセス600は、電池がアイドル状態にある間に開始することができる。ブロック602において、プロセス600は、セルの初期SOC(SOC
init)を決定することができる。いくつかの実施形態では、初期SOCは、以下のように計算することができる。
SOC
init=getSOC(V
h、T
h) (26)
ここで、V
hは初期化時の測定されたセル電位であり、T
hは初期化時の測定された温度であり、getSOC()は
図4を参照して上で説明した関数と同じ関数である。
【0064】
いくつかの実施形態では、SOCinitは、セル電位Vh及び温度Thが特定の範囲内にある場合にのみ確立される。この範囲は、getSOC()関数がセル挙動の信頼できるモデルであるための電位及び温度の範囲に基づいて選択することができる。Vh又はThが適切な範囲外にある場合、SOCinitは確立されない。
【0065】
SOCinitを確立することに加えて、ブロック602における処理はまた、C0監視に使用される他のパラメータを初期化することを含むことができる。例えば、セルから放電された電荷の累積値(上で定義したQdischarge、k)を0に初期化することができ、C0監視に関連するランタイムパラメータ(trun、C0)を0にリセットすることもできる。
【0066】
ブロック604において、電池は放電状態に入り、プロセス600は放電事象を監視することができる。(プロセス400が実装される場合にも、この監視は、ブロック404における状態パラメータの決定の一部として行うことができる。)例えば、放電された総電荷量Qdischarge、kは、上記の式(3)に従って各時間ステップ毎(例えば、1秒毎)に更新され、ランタイムパラメータtrun、C0を時間ステップ毎に増分することができる。ブロック606において、放電事象は終了し、電池は再びアイドル状態に入る(その時点で、Qdischarge、k及びランタイムパラメータtrun、C0の更新を停止することができる)。
【0067】
ブロック608において、プロセス600は、セルの最終SOC(SOCfinal)を確立することができる。いくつかの実施形態では、最終SOCは、以下のように計算することができる。
SOCfinal=getSOC(Vl、Tl) (27)
ここで、Vlは放電事象の終了時に測定されたセル電位であり、Tlは放電事象の終了時に測定された温度である。放電後測定値のVl及び/又はTlは、一般に、放電前測定値のVh及びThとは異なるので、式(26)及び式(27)の結果は、一般に、互いに異なる。
【0068】
ブロック610において、プロセス600は、SOCfinalが信頼できると考えられるような範囲内に全ての測定値があるかどうかを決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、SOCfinalは、セル電位Vl及び温度Tlが特定の範囲内にある場合にのみ確立される。この範囲は、getSOC()関数がセル挙動の信頼できるモデルであるための電位及び温度の範囲に基づいて選択することができる。Vl又はTlが適切な範囲外にある場合、SOCfinalは確立されず、代わりに、ブロック612において計算をリセットすることができ、プロセス600はブロック602に戻ってやり直すことができる。
【0069】
SOCfinalの信頼性に関する他の要件も適用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ランタイムパラメータtrun、C0が上限を超えている場合、結果は(例えば、電流センサのオフセット誤差を積分するQdischarge、kに起因して)信頼できなくなる可能性があり、プロセス600はブロック612で停止し、ブロック602に戻ってやり直すことができる。
【0070】
別の例として、ブロック610は、以下のように定義されるSOCの変化が、
ΔSOC=|SOCinit-SOCfinal| (28)
信頼性の最小閾値を超えることを要求することができる。閾値は、放電事象がセルの充電容量のかなりの割合を消費することを要求するように選択することができ、例えば、閾値は0.4又は0.5などにすることができる。そうでない場合、ブロック612において計算をリセットすることができ、プロセス600はブロック602に戻ってやり直すことができる。
【0071】
ブロック614において、プロセス600は、式(25)に従ってフィルタリングされていないC0値(C0、raw)を計算することができ、ここで、Qdischargeはブロック604における放電事象からのQdischarge、kの最終値であり、ΔSOCは式(25)で与えられる。ブロック616において、プロセス600は、移動平均を近似する無限インパルス応答フィルタを使用して、フィルタリングされたC0値を計算することができる。
C0、filt=γC0、raw+(1-γ)C0、prev (29)
ここで、C0、prevは、C0の記憶された推定値(例えば、プロセス600の前の反復から)であり、γは、更新値に対する所望の感度に基づいて選択することができるフィルタ減衰定数である。一例では、γ=0.05であるが、他の値を選択することもできる。移動平均、加重移動平均(より新しい推定値により大きな重みが与えられる)、再帰移動平均などを含む、新たに計算されたC0、rawをC0の前の推定値と組み合わせるための他の技術を使用することができる。いくつかの実施形態では、セルに対する最近のC0の推定値の分布の統計分析を実行して、例えば、最も最近のC0、raw値が予想される分布からどの程度外れているかを決定し、ランダム測定ノイズを平滑化するようにすることができる。いくつかの実施形態では、新しいセルに対するプロセス600の最初の反復の前に、セルの試験中に測定された充電容量、公称値(例えば、セルの設計仕様に基づく)、又は必要に応じて別の値を使用してC0、prevを初期化することができる。
【0072】
ブロック618において、プロセス600は、例えば、C0、filtを閾値と比較することによって、C0、filtが信じられない程に大きいかどうかを決定することができる。この閾値は、セルが有すると予想され得る最大充電容量に対応する(又はそれを超える)ように設定することができる。いくつかの実施形態では、最大充電容量は、セルの設計仕様に基づいて、設計よりも優れた性能をある程度許容して決定することができる。他の実施形態では、特定のセルの最大充電容量は、セルの充電容量が使用に伴って増えないと仮定して、設置前試験中にセルの充電容量を積極的に測定することによって決定することができる。C0、filtが閾値を超えている場合、ブロック620において、C0、filtは破棄され、プロセス600はリセットすることができ、ブロック602に戻る。いくつかの実施形態では、信じられない程に大きいC0、filtは数値アーチファクトであると仮定され、単に無視される。他の実施形態では、プロセス600は、C0誤差通知を生成することができる。更に他の実施形態では、プロセス600は、信じられない程に大きいC0、filtが繰り返し発生するかどうかを追跡し、そうである場合、C0誤差通知を生成することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、C0推定値C0、filtを使用して、セル容量故障通知をトリガすることができる。例えば、C0は時間の経過と共に徐々に変化すると予想され、予想外に急激な変化は問題を示唆している可能性がある。したがって、ブロック622において、プロセス600は、例えば、以下を使用して、
ΔC0=|C0、prev-C0、filt| (30)
C0の変化を計算することができ、ΔC0が閾値を超えた場合、その結果は疑わしいものとして扱われる。例えば、ブロック624において、プロセス600は、「セル容量故障」通知を生成することができる。いくつかの実施形態では、閾値(複数可)を定義することができ、どの閾値を超えたかに基づいて異なる故障通知を生成することができる。例えば、ΔC0が第1の閾値(例えば、0.4Ah)を超える場合、「セル容量が疑わしい」故障通知を生成することができ、ΔC0が第2のより大きい閾値(例えば、0.8Ah)を超えた場合、「セル容量が非常に疑わしい」故障通知を生成することができる。ブロック624においてセル容量故障通知が生成されると、プロセス600はリセットし、C0計算の結果を破棄し、ブロック602に戻ることができる。
【0074】
ブロック626において、記憶されたC0、prev値は、例えば、記憶された値をブロック616において計算されたC0、filtで置き換えることによって更新することができる。更新されたC0、prev値は、制御システム106又は他のシステム構成要素に報告することができる。いくつかの実施形態では、制御システム106は、(例えば、サービス技術者によるレビューのために)推定された充電容量を電池状態レポートに組み込むことができる。
【0075】
プロセス600は、電池が放電事象と放電事象との間にアイドル状態に入ると仮定して、放電事象毎に繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、電池がアイドル状態に入るたびに、電池管理システムは、有効なSOChighが現在記憶されているかどうかを決定することができる。そうでない場合、ブロック602を実行することができ、そうである場合、ブロック608及び後続のブロックを実行することができる。いくつかの実施形態では、プロセス600又は同様のプロセスを使用して、充電事象中の測定値に基づいてC0を推定することもできる。(これは、例えば、電流又は他の関連パラメータの測定値が放電事象中よりも充電事象中の方が信頼性が低いような電池システム設計の場合、望ましくない可能性がある。)
【0076】
プロセス600は例示的なものであり、変形及び修正が可能であることが理解されよう。論理が許す限り、順次にと説明された動作を並列に実行することも、又は動作を異なる順序で実行することもできる。具体的に説明していない他の動作を実行することも、必要であれば、具体的に説明した動作を省略することも可能である。例えば、説明された例では、現在の推定値と前の推定値を表す単一の値が使用されるが、他の実施態様では、プロセス600の複数の反復からの前の推定値を記憶することができ、推定値の集合の統計的分析を実行することができる。(このような統計分析は、精度を高め、変動を低減することができるが、前の推定値を記憶するために必要なメモリ量も増える。)特定の実施態様におけるセル状態モデル及び他のパラメータ値は、電池セルのタイプと特性、及び所望の特定の感度及び特異性に基づいて、最適な結果を得るために選択することができる。C0推定プロセスは、任意の数のセルについて並列に又は順次に実行することができる。いくつかの実施形態では、推定されたC0(フィルタリング後)が下限を下回る場合、低C0故障通知を生成することができるが、これは、セルが交換時期であるという示唆である可能性がある。
【0077】
いくつかの実施形態では、セルの内部抵抗Riは、C0に加えて、又はC0の代わりに推定することができる。内部抵抗Riは、標準的なSOC、電流、及び温度での、及びセル分極なしでのセルのインピーダンスの抵抗(オーム)成分として定義することができる。インピーダンスの抵抗成分は、電流に対する電位の瞬間的な変化として理解することができるが、変化の瞬間的な測定は、動作セルにとって実用的ではない場合がある。また、内部抵抗は一般的にSOC、温度、放電電流に依存するため、単にΔV/ΔIを短時間で測定しただけでは信頼性の高い推定値が得られない可能性がある。したがって、いくつかの実施形態は、Ri推定値を改善するための補償係数を導入する。
【0078】
図7は、いくつかの実施形態による、放電事象に基づいてセルのR
iを推定するためのプロセス700のフロー図である。プロセス700は、例えば、電池監視システム300又は上記の他の電池監視システムにおいて実装することができる。プロセス700は、電池がアクティブに動作(例えば、放電状態又は充電状態)している間に反復(ランニング)R
i計算を行うことができ、電池がアイドル状態に入るときにランニング計算を使用してR
i推定値を更新することができる。プロセス700は、通常動作以外に電池の活動を含まない受動的監視プロセスの別の例である。
【0079】
プロセス700は、ブロック702において、電池がアイドル状態からアクティブ状態(例えば、充電状態又は放電状態)に移行するときに開始することができる。移行に応答して、ブロック704において、プロセス700は、内部抵抗のランニング推定値(Ri、run)を初期化することができる。例えば、ランニング推定値は、プロセス700の前の実行から決定されたRi値に初期化することができる。いくつかの実施形態では、新しいセルに対するプロセス700の最初の反復中に、Ri、runをセルの試験中に測定された内部抵抗、公称値(例えば、セルの設計仕様に基づく)、又は必要に応じて別の値に基づいて、初期化することができる。
【0080】
ブロック706において、電池がアクティブ状態のままである限り、R
i、runが反復的に更新される。(プロセス400も実装される場合、この更新は、ブロック404における状態パラメータの決定の一部として行うことができる。)
図8は、いくつかの実施形態による、R
i、runを反復的に更新するためのプロセス800のフロー図を示す。プロセス800は、例えば、プロセス700のブロック704を実装するために使用することができ、プロセス800は、電池がアクティブ状態にある間に一定の時間間隔(時間インデックスk)で実行することができる。
【0081】
ブロック802において、プロセス800は、セルの電流(I
k)、電位(V
k)、及び温度(T
k)を測定することができる。ブロック804において、プロセス800は、電流、電位及び温度に関する信頼性条件が満たされているかどうかをチェックすることができる。例えば、以下の信頼性条件を適用することができる。
|I
k-I
k-1|>ΔI
min (31)
|V
k-V
k-1|>ΔV
min (32)
T
max≧mean(T
k、T
k-1)≧T
min (33)
式(31)及び式(32)は、ある時間ステップから次の時間ステップにおける電位及び電流の変化が、測定するのに十分大きいことを要求している。式(33)は、温度が、R
i、runを更新するために使用する抵抗挙動モデルが信頼できると考えられる範囲内にあることを要求している。制限パラメータΔI
min、ΔV
min、T
max、及びT
minは、特定のシステムに対して必要に応じて選択することができる。
図2の電池バンク200の実施態様を使用する一例では、ΔI
min=2A、ΔV
min=0.010V、T
max=50℃、及びT
min=20℃である。他の条件、例えば、電流及び/又は電位の変化の上限、及び温度の変化の制限を適用することもできる。
【0082】
ブロック806において、ブロック804の信頼性条件のうちの少なくとも一方が満たされない場合、プロセス800は、ブロック808において次の時間ステップを待ち再試行することができる。ブロック806において、全ての信頼性条件が満たされた場合、ブロック810において、プロセス800は、時間ステップkに対して生の推定値R
i、rawを計算することができる。いくつかの実施形態では、以下の計算を使用することができる。
【数6】
ここで、SOC
kは、式(26)を参照して上記の関数getSOC(V
k、T
k)関数を使用して決定することができ、IRComp()は、SOC、電流、温度に依存する内部抵抗補償係数を返す関数である。例えば、IRComp()は、以下のように定義することができる。
IRComp(SOC、I、T)=calcRI(SOC
ref、I
ref、T
ref)-calcRI(SOC、I、T) (35)
関数calcRI()は、以下のように定義することができ、
【数7】
ここで、A()及びB()は、制御された条件下で所与の設計仕様の多数のセルを試験することによって経験的に定義することができる関数である。いくつかの実施態様では、経験的分析を使用して、SOCとIの様々な組合せに対応するA()及びB()の値をルックアップテーブルに追加することができる。式(35)において、SOC
ref、I
ref、及びT
refは、SOC、電流、及び温度の一定の基準値であり、式(36)の関数A()及びB()の定義に関連して予め選択することができる。例えば、SOC
ref=1、I
ref=22A、T
ref=25℃という参照値を選択することができる。
【0083】
ブロック812において、プロセス800は、ブロック810で計算されたRi、rawが妥当と思われる範囲内にあるかどうかを決定することができる。一例では、妥当と思われる範囲は、0.005Ω~0.03Ωであると定義されているが、セルの設計に応じて、他の範囲を使用することができる。Ri、rawが妥当と思われる範囲内にない場合、ブロック814において、プロセス800は、計算されたRi、raw値を破棄又は無視し、次の時間ステップを待ち再試行することができる。他の実施形態では、プロセス800は、Ri誤差通知を生成することができる。更に他の実施形態では、プロセス800は、信じられない程のRi、rawが繰り返し発生するかどうかを追跡し、そうである場合、Ri誤差通知を生成することができる
【0084】
Ri、rawが妥当と思われる範囲内にある場合、ブロック816において、プロセス800は、移動平均を近似する無限インパルス応答フィルタを使用してRi、runを更新することができる。
Ri、run=γRi、raw+(1-γ)Ri、run (37)
ここで、γは、更新値に対する所望の感度に基づいて選択することができるフィルタ減衰定数である。一例では、γ=0.01であるが、他の値を選択することもできる。プロセス600及びプロセス800の両方を実装する実施形態では、式(37)中のRi推定の減衰定数は、式(29)中のC0推定の減衰定数と同じ値を有することができるが、そうである必要はない。移動平均、加重移動平均(より新しい推定値により大きな重みが与えられる)、再帰移動平均などを含む、新たに計算されたRi、rawをRiの前の推定値と組み合わせるための他の技術を使用することができる。いくつかの実施形態では、セルに対する最近のRiの推定値の分布の統計的分析を実行して、例えば、最も最近のRi、raw値が予想分布からどの程度外れているかを決定し、ランダム測定ノイズを平滑化するようにすることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、(プロセス700のブロック704に対応する)プロセス800は、電池がアクティブ状態のままである限り、繰り返し実行することができる。再び
図7を参照すると、ブロック708において、電池はアイドル状態に移行する。電池がアイドル状態に入った後、(プロセス800からの)R
i、runの最終値を新しいR
i推定値として使用することができる。いくつかの実施形態では、R
i推定値を使用して故障通知をトリガすることができる。例えば、R
iは時間の経過と共に徐々に変化すると予想され、予想外に急激な変化は問題を示唆している可能性がある。したがって、ブロック710において、プロセス700は、例えば、以下を使用してR
iの変化を計算することができる。
ΔR
i=|R
i、run-R
i| (38)
ここで、R
iはブロック702からのR
i値である。ΔR
iが閾値を超えた場合、その結果は疑わしいものとして扱われる。例えば、ブロック714において、プロセス700は、「セル抵抗故障」通知を生成することができる。いくつかの実施形態では、閾値(複数可)を定義することができ、どの閾値を超えたかに基づいて異なる故障通知を区別することができる。例えば、ΔR
iが第1の閾値(例えば、0.002Ω)を超えた場合、「セル抵抗が疑わしい」故障通知を生成することができ、ΔR
iが第2のより大きい閾値(例えば、0.01Ω)を超えた場合、「セル抵抗が非常に疑わしい」故障通知を生成することができる。ブロック714においてセル抵抗故障通知が生成されると、プロセス700は、結果として生じるR
i、run値を破棄し、ブロック702に戻って次のアクティブ状態への移行を待つことができる。
【0086】
ブロック716において、例えば、記憶されたRi値をRi、runに置き換えることによって、記憶されたRi値を更新することができる。更新されたRi値は、制御システム106又は他のシステム構成要素に報告することができる。いくつかの実施形態では、制御システム106は、(例えば、サービス技術者によるレビューのために)推定された内部抵抗を電池状態レポートに組み込むことができる。
【0087】
プロセス700は、電池がアクティブ状態に入るたびに(例えば、プロセス800を用いて)新しいRi、runを計算し、電池がアイドル状態にあるときに(条件が満たされれば)Riを更新し、これを繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、プロセス700又は同様のプロセスを使用して、充電事象又は放電事象のいずれかに基づいてRiを推定することができ、あるいは必要に応じて、プロセス700を放電事象に関連してのみ(又は充電事象に関連してのみ)選択的に呼び出してもよい。
【0088】
プロセス700及びプロセス800は例示的なものであり、変形及び修正が可能であることが理解されよう。論理が許す限り、順次にと説明された動作を並列に実行することも、又は動作を異なる順序で実行することもできる。具体的に説明していない他の動作を実行することも、必要であれば、具体的に説明した動作を省略することも可能である。例えば、説明された例では、現在の推定値及び前の推定値を表す単一の値が使用されるが、他の実施態様では、プロセス800の複数の反復からの前の推定値を記憶することができ、推定値の集合の統計的分析を実行することができる。(このような統計分析は、精度を高め、変動を低減することができるが、前の推定値を記憶するために必要なメモリ量も増える。)特定の実施態様におけるセル状態モデル及び他のパラメータ値は、電池セルのタイプと特性、及び所望の特定の感度及び特異性に基づいて、最適な結果を得るために選択することができる。Ri推定プロセスは、任意の数のセルについて並列に又は順次に実行することができる。いくつかの実施形態では、推定されたRiが上限を超えて上昇した場合、高Ri故障通知を生成することができるが、これは、セルが交換時期であることを示すものである可能性がある。
【0089】
追加の実施形態
本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、本開示にアクセスする当業者であれば、変形及び修正が可能であることを理解するであろう。本明細書に説明の種類の電池監視システム及びプロセスは、任意の数の電池又は任意の数の電池セルを監視するために使用することができ、システム及びプロセスは、様々な電池技術を使用して実装されたセルに適合させることができる。電池監視中に生成される通知は、上記の例に限定されず、通知の使用は、上記の使用事例に限定されない。監視プロセスの任意の組合せを、上記のプロセスのうちの任意の1つ又は複数を含む特定のシステムで実装することができる。セル状態モデル(例えば、等価セル回路モデル)に基づくものとして説明された関数は、セル状態パラメータの測定の分解能(例えば、電位、電流、温度センサの分解能)に基づく適切な精度で、関数の入力にキーとなるルックアップテーブルを提供することによって、実装することができる。いくつかの実施形態では、監視パラメータの決定は、関数への入力がルックアップテーブルによってカバーされる範囲内にあることを条件とすることができる。
【0090】
本明細書に説明の種類の計算演算は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、モバイル装置(例えば、スマートフォン)などの一般的に従来の設計のコンピュータシステムに実装することができる。このようなシステムは、プログラムコードを実行する1つ又は複数のプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU)として使用可能な汎用マイクロプロセッサ、及び/又は拡張された並列処理能力を提供することができるグラフィックプロセッサ(GPU)などの専用プロセッサ)、プログラムコード及びデータを記憶するメモリ及び他の記憶装置、ユーザ入力装置(例えば、キーボード、マウス又はタッチパッドなどのポインティング装置、マイクロフォン)、ユーザ出力装置(例えば、ディスプレイ装置、スピーカ、プリンタ)、複合入出力装置(例えば、タッチスクリーンディスプレイ)、信号入出力ポート、ネットワーク通信インタフェース(例えば、イーサネットインタフェースなどの有線ネットワークインタフェース及び/又はWi-Fiなどの無線ネットワーク通信インタフェース)などを含むことができる。特許請求される発明の様々な特徴を組み込んだコンピュータプログラムは、符号化され、様々なコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよく、適切な媒体としては、磁気ディスク又はテープ、コンパクトディスク(CD)又はDVD(デジタル多用途ディスク)などの光記憶媒体、フラッシュメモリ、及び他の非一時的な媒体が挙げられる。(データの「記憶」は、搬送波などの一時的媒体を使用したデータの伝播とは異なることを理解されたい。)プログラムコードを符号化したコンピュータ可読媒体は、互換性のあるコンピュータシステム又は他の電子装置と共にパッケージ化されてもよく、又はプログラムコードは、電子装置とは別に(例えば、インターネットダウンロードを介して、又は別個にパッケージ化されたコンピュータ可読記憶媒体として)提供されてもよい。
【0091】
本明細書で使用される全ての数値は例示を目的としており、変更され得ることを理解されたい。また、規模感を出すために範囲を定めている場合があるが、開示された範囲外の数値も排除していない。
【0092】
本明細書の全ての図は概略図であることも理解されたい。特に明記しない限り、図面は、そこに示された要素の特定の物理的配置を示唆するものではなく、又は示された全ての要素が必要であることを意味するものでもない。本開示にアクセスする当業者は、本開示において図面に示されているか又は他の方法で説明されている要素を修正又は省略することができ、図示又は説明されていない他の要素を追加することができることを理解するであろう。
【0093】
上記の説明は例示であり、限定的なものではない。本発明の多くの変形例は、本開示を検討することにより当業者に明らかになるであろう。したがって、特許保護の範囲は、上記の説明を参照して決定されるべきではなく、その代わりに、その全範囲又は均等物と共に以下の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。