(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175835
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】錠剤印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231205BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 125
B41J2/01 305
A61J3/06 Q
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150775
(22)【出願日】2023-09-19
(62)【分割の表示】P 2022152724の分割
【原出願日】2018-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2018177708
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】中野 信行
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 和人
(57)【要約】
【課題】フィルムコーティング錠や糖衣錠等のような、表面の撥液性が高く、液体が染み込みにくい錠剤にインク滴を吐出する場合でも、その後にインクが錠剤から剥がれることを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】この錠剤印刷装置1は、錠剤9の表面に画像を印刷する装置であって、第1印刷部40と、第1プレヒート部と、第2印刷部50と、第2プレヒート部と、を有する。第1印刷部40は、第1搬送コンベア41により搬送される錠剤9の一方の面に画像を印刷する。第1プレヒート部は、第1印刷部40よりも搬送経路の上流側において、錠剤9を加熱する。第2印刷部50は、第1搬送コンベア41から受け渡されて第2搬送コンベア51により搬送される錠剤9の他方の面に画像を印刷する。第2プレヒート部は、第1印刷部40よりも搬送経路の下流側、かつ、第2印刷部50よりも搬送経路の上流側において、錠剤9を加熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤の表面に画像を印刷する錠剤印刷装置であって、
錠剤の他方の面を保持しつつ搬送する第1搬送コンベアと、
前記第1搬送コンベアにより搬送される錠剤の一方の面に画像を印刷する第1印刷部と、
前記第1印刷部よりも搬送経路の上流側において、錠剤を加熱する第1プレヒート部と、
前記第1搬送コンベアから受け渡された錠剤の前記一方の面を保持しつつ搬送する第2搬送コンベアと、
前記第2搬送コンベアにより搬送される錠剤の前記他方の面に画像を印刷する第2印刷部と、
前記第1印刷部よりも前記搬送経路の下流側、かつ、前記第2印刷部よりも前記搬送経路の上流側において、錠剤を加熱する第2プレヒート部と、
を有する、錠剤印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の錠剤印刷装置であって、
前記第1プレヒート部または前記第2プレヒート部は、錠剤に向けて温風または熱風を供給することにより、錠剤を加熱する、錠剤印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の錠剤印刷装置であって、
前記第1プレヒート部または前記第2プレヒート部は、錠剤に向けて遠赤外線を放射することにより、錠剤を加熱する、錠剤印刷装置。
【請求項4】
請求項2に記載の錠剤印刷装置であって、
前記温風または熱風の温度は、40℃以上かつ140℃以下である、錠剤印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の錠剤印刷装置であって、
前記第1印刷部および前記第2印刷部は、錠剤の表面にインク滴を吐出することによって、画像を印刷し、
吐出される前記インク滴は、顔料インクの液滴である、錠剤印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品である錠剤には、製品を識別するための文字やコードが印刷される。このような文字やコードは、刻印により記録される場合もあるが、刻印では視認性が低いという問題があった。特に、近年では、後発医薬品の普及により錠剤の種類が多様化している。このため、錠剤を確実に識別できるように、錠剤の表面に鮮明な印字を行うことが求められている。また、錠剤は圧力に弱いため、印字の際に錠剤に加わる圧力は、小さくすることが好ましい。これらの事情から、近年、錠剤にインクジェット方式で画像を印刷する技術が注目されている。
【0003】
錠剤にインクジェット方式で画像を印刷する従来の印刷装置については、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-143539号公報
【特許文献2】特開2017-534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の固形製剤印刷装置は、固形製剤(200)の回収前に固形製剤(200)に転写されたインクを十分に乾燥させるためのヒータや温風乾燥器等(180)を有する。また、特許文献2の錠剤印刷装置(1)は、錠剤(T)に塗布されたインクを乾燥させるための、放射熱を供給するヒータ、あるいは、温風や熱風を供給する送風機を有する。
【0006】
しかしながら、例えば、フィルムコーティング錠(FC錠)や糖衣錠等のような、表面の撥液性が高く、液体が染み込みにくい錠剤の場合、錠剤に塗布されるインクの表面張力が大きい場合、またはインクが乾燥しにくい性質を有する場合には、錠剤にインクを塗布した後に、塗布されたインクが表面積を最小化するように錠剤の表面を流動する現象(バルジ現象)が生じる虞がある。この場合、その後に錠剤を乾燥させ、さらにコーティング処理等を施した場合であっても、インクが錠剤に定着しにくく、擦れ等の僅かな接触によりインクが錠剤から剥がれる虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、フィルムコーティング錠(FC錠)や糖衣錠等のような、表面の撥液性が高く、液体が染み込みにくい錠剤にインク滴を吐出する場合でも、その後にインクが錠剤から剥がれることを抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、錠剤の表面に画像を印刷する錠剤印刷装置であって、第1搬送コンベアと、第1印刷部と、第1プレヒート部と、第2搬送コンベアと、第2印刷部と、第2プレヒート部と、を有する。前記第1搬送コンベアは、錠剤の他方の面を保持しつつ搬送する。前記第1印刷部は、前記第1搬送コンベアにより搬送される錠剤の一方の面に画像を印刷する。前記第1プレヒート部は、前記第1印刷部よりも搬送経路の上流側において、錠剤を加熱する。前記第2搬送コンベアは、前記第1搬送コンベアから受け渡された錠剤の前記一方の面を保持しつつ搬送する。前記第2印刷部は、前記第2搬送コンベアにより搬送される錠剤の前記他方の面に画像を印刷する。前記第2プレヒート部は、前記第1印刷部よりも前記搬送経路の下流側、かつ、前記第2印刷部よりも前記搬送経路の上流側において、錠剤を加熱する。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の錠剤印刷装置であって、前記第1プレヒート部または前記第2プレヒート部は、錠剤に向けて温風または熱風を供給することにより、錠剤を加熱する。
【0010】
本願の第3発明は、第1発明の錠剤印刷装置であって、前記第1プレヒート部または前記第2プレヒート部は、錠剤に向けて遠赤外線を放射することにより、錠剤を加熱する。
【0011】
本願の第4発明は、第2発明の錠剤印刷装置であって、前記温風または熱風の温度は、40℃以上かつ140℃以下である。
【0012】
本願の第5発明は、第1発明から第4発明までのいずれか1発明の錠剤印刷装置であって、前記第1印刷部および前記第2印刷部は、錠剤の表面にインク滴を吐出することによって、画像を印刷し、吐出される前記インク滴は、顔料インクの液滴である。
【発明の効果】
【0013】
本願の第1発明~第5発明によれば、錠剤を加熱した後に錠剤の表面にインク滴を吐出することにより、錠剤の表面におけるインクの定着性が向上する。この結果、その後にインクが錠剤から剥がれることを抑制できる。
【0014】
特に、本願の第2発明または第4発明によれば、複数の錠剤を均一に加熱しやすい。また、錠剤の過加熱を防止しやすい。さらに、従来の錠剤印刷装置の構成を大きく変更することなく、錠剤を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】制御部と錠剤印刷装置内の各部との接続を示したブロック図である。
【
図5】制御部の機能の一部を概念的に示したブロック図である。
【
図6】第1搬送コンベアにより搬送される複数の錠剤の上面図である。
【
図8】腸溶性フィルムコーティング錠である錠剤にインク滴を吐出する前に錠剤を加熱することによる効果を検証した結果を示す図である。
【
図9】糖衣錠である錠剤にインク滴を吐出する前に錠剤を加熱することによる効果を検証した結果を示す図である。
【
図10】素錠である錠剤にインク滴を吐出する前に錠剤を加熱することによる効果を検証した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、複数の錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ水平な方向を「幅方向」と称する。
【0017】
<1.錠剤印刷装置の構成>
本発明の一実施形態に係る錠剤印刷装置1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る錠剤印刷装置1の構成を示した図である。本実施形態の錠剤印刷装置1は、複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像をインクジェット方式で印刷する装置である。
【0018】
本実施形態の錠剤9には、例えば、表面にコーティングが施された撥液性の高い腸溶性フィルムコーティング錠(腸溶性FC錠)が用いられる。ただし、錠剤9は、糖衣錠であってもよく、口腔内崩壊錠(OD錠)または素錠(裸錠)等の非コーティング錠であってもよい。また、錠剤9は、硬カプセル剤および軟カプセル剤を含むカプセル剤であってもよい。また、本発明における「錠剤」は、医薬品としての錠剤に限らず、健康食品としての錠剤や、ラムネ等の錠菓であってもよい。また、本実施形態の錠剤9は、例えば、後述する
図8~
図10に示すとおり、扁平球型の立体形状を有する。ただし、錠剤9の形状は、これに限定されない。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、ホッパー10、フィーダ部20、プレヒート部25、搬送ドラム30、第1印刷部40、第2印刷部50、搬出コンベア60、および制御部70を有する。ホッパー10、フィーダ部20、搬送ドラム30、第1印刷部40の第1搬送コンベア41、第2印刷部50の第2搬送コンベア51、および搬出コンベア60によって、錠剤9を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送機構が形成されている。
【0020】
ホッパー10は、多数の錠剤9を一括して装置内に受け入れるための投入部である。ホッパー10は、錠剤印刷装置1の筐体100の最上部に配置されている。ホッパー10は、筐体100の上面に位置する開口部11と、下方へ向かうにつれて徐々に収束する漏斗状の傾斜面12とを有する。開口部11へ投入された複数の錠剤9(腸溶性フィルムコーティング錠)は、傾斜面12に沿って直進フィーダ21へ流れ込む。
【0021】
フィーダ部20は、ホッパー10へ投入された複数の錠剤9を、搬送ドラム30まで搬送する機構である。本実施形態のフィーダ部20は、直進フィーダ21、回転フィーダ22、および供給フィーダ23を有する。直進フィーダ21は、平板状の振動トラフ211を有する。ホッパー10から振動トラフ211に供給された複数の錠剤9は、振動トラフ211の振動によって、回転フィーダ22側へ搬送される。回転フィーダ22は、円盤状の回転台221を有する。振動トラフ211から回転台221の上面に落下した複数の錠剤9は、回転台221の回転による遠心力で、回転台221の外周部付近へ集まる。
【0022】
供給フィーダ23は、回転台221の外周部から搬送ドラム30まで、鉛直下向きに延びる複数の筒状部231を有する。
図2は、搬送ドラム30付近の斜視図である。
図2に示すように、複数(
図2の例では8本)の筒状部231は、互いに平行に配列されている。回転台221の外周部へ搬送された複数の錠剤9は、それぞれ、複数の筒状部231のいずれか1つに供給され、筒状部231内を落下する。そして、各筒状部231内に、複数の錠剤9が積層される。このように、複数の錠剤9は、複数の筒状部231に分散供給されることによって、複数の搬送列に整列される。そして、各搬送列の複数の錠剤9が、下端のものから順に搬送ドラム30へ供給される。
【0023】
回転フィーダ22の上方には、プレヒート部25が設けられている。プレヒート部25は、錠剤印刷装置1の筐体100に固定されている。プレヒート部25は、回転台221の上面にて搬送される錠剤9に向けて、例えば、温風または熱風を供給することにより、錠剤9を加熱する機構である。錠剤9は、回転台221の上面にて搬送される過程で、プレヒート部25からの温風または熱風によって、数秒~数分程度加熱される。これにより、複数の錠剤9をほぼ均一に加熱することができる。また、プレヒート部25から錠剤9へ向けて供給される温風または熱風の温度は、例えば、40℃以上かつ140℃以下である。これにより、錠剤9の過加熱を抑制することができる。また、プレヒート部25には、例えば、市販のヒータまたはドライヤー等が用いられる。ただし、プレヒート部25には、遠赤外線を放射することによって錠剤9を加熱する装置(例えば、加熱器等)等が用いられてもよい。このような構成により、従来の錠剤印刷装置の構成を大きく変更することなく、錠剤9にインク滴を吐出する箇所(後述する第1ヘッド431および第2ヘッド531)よりも搬送経路の上流側において錠剤9を加熱することができる。
【0024】
プレヒート部25によって加熱された複数の錠剤9は、供給フィーダ23および搬送ドラム30を通って、第1印刷部40および第2印刷部50へ到達する。上述のとおり、本実施形態のプレヒート部25は、錠剤9にインク滴を吐出する後述する第1ヘッド431および第2ヘッド531から離れた位置に配置される。これにより、プレヒート部25からの熱が第1ヘッド431および第2ヘッド531に悪影響を及ぼすことを抑制できる。ただし、プレヒート部25が設けられる位置は、第1印刷部40の後述する第1ヘッドユニット43よりも搬送経路の上流側であればよく、本実施形態のような回転フィーダ22の上方には限定されない。なお、プレヒート部25によって、錠剤9の表面にインク滴が吐出される前に錠剤9を加熱することによる効果については、詳細を後述する。
【0025】
搬送ドラム30は、供給フィーダ23から第1搬送コンベア41へ、複数の錠剤9を受け渡す機構である。搬送ドラム30は、略円筒形状の外周面を有する。搬送ドラム30は、図示を省略したモータから得られる動力により、幅方向に延びる回転軸を中心として、
図1および
図2中の矢印の方向へ回転する。
図2に示すように、搬送ドラム30の外周面には、複数の保持部31が設けられている。保持部31は、搬送ドラム30の外周面から内側へ向けて凹む凹部である。複数の保持部31は、上述した複数の搬送列の各々に対応する幅方向位置において、搬送ドラム30の外周面に、周方向に沿って配列されている。また、各保持部31の底部には、吸着孔32が設けられている。
【0026】
搬送ドラム30の内部には、図示を省略した吸引機構が設けられている。吸引機構を動作させると、複数の吸着孔32のそれぞれに、大気圧よりも低い負圧が生じる。保持部31は、当該負圧によって、供給フィーダ23から供給される錠剤9を、1つずつ吸着保持する。また、搬送ドラム30の内部には、図示を省略したブロー機構が設けられている。ブロー機構は、搬送ドラム30の内側から後述する第1搬送コンベア41側へ向けて、局所的に加圧された気体を吹き付ける。これにより、第1搬送コンベア41に対向しない保持部31においては、錠剤9の吸着状態を維持しつつ、第1搬送コンベア41に対向する保持部31のみにおいて、錠剤9の吸着が解除される。搬送ドラム30は、このように、供給フィーダ23から供給される複数の錠剤9を吸着保持しつつ回転し、それらの錠剤9を、第1搬送コンベア41へ受け渡すことができる。
【0027】
搬送ドラム30の外周面と対向する位置には、第1状態検出カメラ33が設けられている。第1状態検出カメラ33は、搬送ドラム30に保持された錠剤9の状態を撮影する撮像部である。第1状態検出カメラ33は、搬送ドラム30により搬送される錠剤9を撮影し、得られた画像を制御部70へ送信する。制御部70は、受信した画像に基づいて、各保持部31における錠剤9の有無や、保持部31に保持された錠剤9の表裏および回転角度を検出する。
【0028】
第1印刷部40は、錠剤9の一方の面に画像を印刷するための処理部である。
図1に示すように、第1印刷部40は、第1搬送コンベア41、第2状態検出カメラ42、第1ヘッドユニット43、第1検査カメラ44、および第1アフターヒート部45を有する。
【0029】
第1搬送コンベア41は、一対の第1プーリ411と、一対の第1プーリ411の間に掛け渡された環状の第1搬送ベルト412とを有する。第1搬送ベルト412は、その一部分が、搬送ドラム30の外周面に近接して対向するように配置される。一対の第1プーリ411の一方は、図示を省略したモータから得られる動力で回転する。これにより、第1搬送ベルト412が、
図1および
図2中の矢印の方向へ回動する。このとき、一対の第1プーリ411の他方は、第1搬送ベルト412の回動に伴い従動回転する。
【0030】
図2に示すように、第1搬送ベルト412には、複数の保持部413が設けられている。保持部413は、第1搬送ベルト412の外側の面から内側へ向けて凹む凹部である。複数の保持部413は、複数の搬送列の各々に対応する幅方向位置において、搬送方向に配列されている。すなわち、複数の保持部413は、幅方向および搬送方向に、それぞれ間隔をあけて配列されている。第1搬送ベルト412における複数の保持部413の幅方向の間隔は、搬送ドラム30における複数の保持部31の幅方向の間隔と等しい。
【0031】
各保持部413の底部には、吸着孔414が設けられている。また、第1搬送コンベア41は、第1搬送ベルト412の内側に、図示を省略した吸引機構を有する。吸引機構を動作させると、複数の吸着孔414のそれぞれに、大気圧よりも低い負圧が生じる。保持部413は、当該負圧によって、搬送ドラム30から渡される錠剤9を、1つずつ吸着保持する。これにより、第1搬送コンベア41は、複数の錠剤9を、幅方向に間隔をあけた複数の搬送列に整列された状態で保持しつつ、搬送する。さらに、第1搬送ベルト412には、図示を省略したブロー機構が設けられている。ブロー機構を動作させると、後述する第2搬送コンベア51に対向する保持部413において、吸着孔414が大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該保持部413における錠剤9の吸着が解除され、第1搬送コンベア41から第2搬送コンベア51へ、錠剤9が受け渡される。なお、錠剤9は、第1搬送コンベア41から第2搬送コンベア51へ受け渡される際に、表裏が反転する。
【0032】
第2状態検出カメラ42は、第1ヘッドユニット43よりも搬送方向の上流側において、第1搬送コンベア41に保持された錠剤9の状態を撮影する撮像部である。第1状態検出カメラ33と第2状態検出カメラ42とは、錠剤9の互いに反対側の面を撮影する。第2状態検出カメラ42において得られた画像は、第2状態検出カメラ42から制御部70へ送信される。制御部70は、受信した画像に基づいて、各保持部413における錠剤9の有無や、保持部413に保持された錠剤9の表裏および回転角度を検出する。
【0033】
第1ヘッドユニット43は、第1搬送コンベア41により搬送される錠剤9の表面に向けてインク滴を吐出する、インクジェット方式のヘッドユニットである。第1ヘッドユニット43は、搬送方向に沿って配列された4つの第1ヘッド431を有する。4つの第1ヘッド431は、錠剤9の表面に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインク滴を吐出する。これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤9の表面に、多色画像が印刷される。なお、各第1ヘッド431から吐出されるインクには、日本薬局方、食品衛生法等で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。また、本実施形態において第1ヘッド431および後述する第2ヘッド531から吐出されるインク滴は、非水溶性の顔料インクの液滴である。ただし、第1ヘッド431および後述する第2ヘッド531から吐出されるインク滴は、水溶性の染料インクの液滴であってもよい。
【0034】
図3は、1つの第1ヘッド431の下面図である。
図3には、第1搬送ベルト412と、第1搬送ベルト412に保持された複数の錠剤9とが、二点鎖線で示されている。
図3中に拡大して示したように、第1ヘッド431の下面には、インク滴を吐出可能な複数のノズル430が設けられている。本実施形態では、第1ヘッド431の下面に、複数のノズル430が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各ノズル430は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のノズル430を二次元的に配置すれば、各ノズル430の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のノズル430は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0035】
ノズル430からのインク滴の吐出方式には、例えば、ピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル430内のインクを加圧して吐出させる、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してノズル430内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0036】
図1に戻る。第1検査カメラ44は、第1ヘッドユニット43による印刷結果を確認するための撮像部である。第1検査カメラ44は、第1ヘッドユニット43よりも搬送方向の下流側において、第1搬送ベルト412に搬送される錠剤9を撮影する。また、第1検査カメラ44は、得られた画像を制御部70へ送信する。制御部70は、受信した画像に基づいて、各錠剤9の表面に印刷された画像に、位置ずれやドット欠けなどの印刷欠陥が無いかどうかを検査する。
【0037】
第1アフターヒート部45は、第1ヘッド431よりも搬送経路の下流側において搬送される錠剤9を加熱する機構である。第1アフターヒート部45には、例えば、第1搬送コンベア41により搬送される錠剤9へ向けて、熱風を吹き付ける熱風乾燥式のヒータが用いられる。錠剤9が第1アフターヒート部45付近を通過することによって、第1ヘッドユニット43において錠剤9の表面に吐出されたインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面に定着する。なお、本実施形態では、第1検査カメラ44よりも搬送方向の下流側に、第1アフターヒート部45が配置されている。ただし、第1ヘッドユニット43と第1検査カメラ44との間に、第1アフターヒート部45が配置されていてもよい。
【0038】
第2印刷部50は、第1印刷部40による印刷後に、錠剤9の他方の面に画像を印刷するための処理部である。
図1に示すように、第2印刷部50は、第2搬送コンベア51、第3状態検出カメラ52、第2ヘッドユニット53、第2検査カメラ54、第2アフターヒート部55、および欠陥品回収部56を有する。第2搬送コンベア51は、第1搬送コンベア41から受け渡された複数の錠剤9を保持しつつ搬送する。第3状態検出カメラ52は、第2ヘッドユニット53よりも搬送方向の上流側において、第2搬送コンベア51により搬送される複数の錠剤9を撮影する。第2ヘッドユニット53は、第2搬送コンベア51により搬送される錠剤9の表面に向けてインク滴を吐出する。第2検査カメラ54は、第2ヘッドユニット53よりも搬送方向の下流側において、第2搬送コンベア51により搬送される複数の錠剤9を撮影する。第2アフターヒート部55は、第2ヘッド531よりも搬送経路の下流側において搬送される錠剤9を加熱する。これにより、第2ヘッドユニット53において錠剤9の表面に吐出されたインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面に定着する。
【0039】
第2搬送コンベア51、第3状態検出カメラ52、第2ヘッドユニット53、第2検査カメラ54、および第2アフターヒート部55の各々の詳細については、上述した第1搬送コンベア41、第2状態検出カメラ42、第1ヘッドユニット43、第1検査カメラ44、および第1アフターヒート部45と同等であるため、重複説明を省略する。
【0040】
欠陥品回収部56は、上述の5つのカメラ33,42,44,52,54から得られた撮影画像に基づいて、欠陥品と判断された錠剤9を回収する。欠陥品回収部56は、第2搬送コンベア51の内側に配置されたブロー機構(図示省略)と、回収箱561とを有する。欠陥品と判断された錠剤9が、欠陥品回収部56まで搬送されると、ブロー機構は、第2搬送コンベア51の内側から、当該錠剤9に向けて、加圧された気体を吹き付ける。これにより、当該錠剤9が、第2搬送コンベア51から脱落して、回収箱561に回収される。
【0041】
搬出コンベア60は、良品と判断された複数の錠剤9を、錠剤印刷装置1の筐体100の外部へ搬出する機構である。搬出コンベア60の上流側の端部は、第2搬送コンベア51の第2プーリ511の下方に位置する。搬出コンベア60の下流側の端部は、筐体100の外部に位置する。搬出コンベア60には、例えば、ベルト搬送機構が用いられる。欠陥品回収部56を通過した複数の錠剤9は、吸着孔の吸引が解除されることによって、第2搬送コンベア51から搬出コンベア60の上面に落下する。そして、搬出コンベア60によって、複数の錠剤9が、筐体100の外部へ搬出される。
【0042】
制御部70は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。
図4は、制御部70と、錠剤印刷装置1内の各部との接続を示したブロック図である。
図4中に概念的に示したように、制御部70は、CPU等のプロセッサ701、RAM等のメモリ702、および、ハードディスクドライブ等の記憶装置703を有するコンピュータにより構成される。記憶装置703内には、印刷処理および検査処理を実行するためのコンピュータプログラムPおよびデータDが、記憶されている。
【0043】
また、
図4に示すように、制御部70は、上述した直進フィーダ21、回転フィーダ22、プレヒート部25、搬送ドラム30(モータ、吸引機構、およびブロー機構を含む)、第1状態検出カメラ33、第1搬送コンベア41(モータ、吸引機構、およびブロー機構を含む)、第2状態検出カメラ42、第1ヘッドユニット43(各第1ヘッド431の複数のノズル430を含む)、第1検査カメラ44、第1アフターヒート部45、第2搬送コンベア51、第3状態検出カメラ52、第2ヘッドユニット53(各第2ヘッド531の複数のノズル430を含む)、第2検査カメラ54、第2アフターヒート部55、欠陥品回収部56、および搬出コンベア60と、それぞれ通信可能に接続されている。
【0044】
制御部70は、記憶装置703に記憶されたコンピュータプログラムPおよびデータDをメモリ702に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、プロセッサ701が演算処理を行うことにより、上述の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9に対する印刷処理が進行する。
【0045】
<2.制御部内のデータ処理>
図5は、制御部70の機能の一部を概念的に示したブロック図である。
図5に示すように、本実施形態の制御部70は、角度認識部71、ヘッド制御部72、および検査部73を有する。これらの各部の機能は、制御部70の記憶装置703に記憶されたコンピュータプログラムPおよびデータDをメモリ702に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、プロセッサ701が演算処理を行うことによって、実現される。
【0046】
角度認識部71は、搬送される各錠剤9の回転角度を認識するための機能である。角度認識部71は、第1状態検出カメラ33および第2状態検出カメラ42の撮影画像を取得し、当該撮影画像に基づいて、第1搬送コンベア41により搬送される各錠剤9の回転角度を認識する。また、角度認識部71は、第3状態検出カメラ52の撮影画像を取得し、当該撮影画像に基づいて、第2搬送コンベア51により搬送される各錠剤9の回転角度を認識する。
【0047】
図6は、第1搬送コンベア41により搬送される複数の錠剤9の上面図である。
図6の例では、錠剤9として、割線91を有する割線錠が搬送されている。このような割線錠には、割線91の向きに応じた回転角度で印刷を行う必要がある。このため、角度認識部71は、第1状態検出カメラ33および第2状態検出カメラ42から得られる撮影画像に基づいて、錠剤9毎に、第1ヘッドユニット43を通過するときの回転角度(割線91の向き)を認識する。同様に、角度認識部71は、第3状態検出カメラ52から得られる撮影画像に基づいて、錠剤9毎に、第2ヘッドユニット53を通過するときの回転角度(割線91の向き)を認識する。
【0048】
なお、本実施形態の錠剤9は、表裏面である第1面および第2面のうち、第1面のみに割線91を有する。また、搬送される複数の錠剤9の表裏は一定ではない。このため、
図6のように、第1面を上側に向けた状態で保持される錠剤9と、第2面を上側に向けた状態で保持される錠剤9とが、混在して搬送される場合がある。このような場合には、角度認識部71は、一部の錠剤9については、第1状態検出カメラ33から得られる撮影画像に基づいて、第1ヘッドユニット43を通過するときの回転角度を認識し、他の錠剤9については、第2状態検出カメラ42から得られる撮影画像に基づいて、第1ヘッドユニット43を通過するときの回転角度を認識すればよい。また、一部の錠剤9については、第3状態検出カメラ52から得られる撮影画像に基づいて、第2ヘッドユニット53を通過するときの回転角度を認識し、他の錠剤9については、第2状態検出カメラ42から得られる撮影画像に基づいて、第2ヘッドユニット53を通過するときの回転角度を認識すればよい。ただし、割線91は、錠剤9の第1面および第2面の両方に形成されていてもよい。
【0049】
ヘッド制御部72は、第1ヘッドユニット43および第2ヘッドユニット53を動作制御するための機能である。
図5に示すように、ヘッド制御部72は、第1記憶部721を有する。第1記憶部721の機能は、例えば、上述した記憶装置703により実現される。第1記憶部721には、印刷画像データD1が記憶される。
図7は、印刷画像データD1により表される印刷画像Iの例を示した図である。印刷画像データD1は、錠剤9の第2面に印刷すべき印刷画像Iを表すデータである。当該画像は、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等であり、例えば、アルファベットと数字とを含む文字列で形成される。ただし、当該画像は、文字列以外のマークやイラストであってもよい。さらに、当該画像は、錠剤9の第2面に、第1面の割線91に沿って印刷される。ただし、画像は、錠剤9の第1面に、割線91に沿って印刷されてもよい。印刷画像データD1は、このような、錠剤9における画像の印刷位置および印刷の向きを指定する情報も含む。
【0050】
製品としての錠剤9の表面に印刷を行うときには、ヘッド制御部72は、第1記憶部721から印刷画像データD1を読み出す。また、ヘッド制御部72は、読み出された印刷画像データD1を、角度認識部71において認識された回転角度に応じて回転させる。そして、ヘッド制御部72は、回転された印刷画像データD1に基づいて、第1ヘッド431または第2ヘッド531を制御する。これにより、錠剤9の表面に、割線91に沿って、印刷画像データD1が表す画像が印刷される。
【0051】
検査部73は、第1搬送コンベア41によって搬送される錠剤9の表面および第2搬送コンベア51によって搬送される錠剤9の表面に印刷された画像の欠陥を検出するための機能である。
図5に示すように、検査部73は、第2記憶部731を有する。第2記憶部731の機能は、例えば、上述した記憶装置703により実現される。第2記憶部731には、検査画像データD2が記憶される。検査画像データD2は、印刷画像データD1に基づいて生成される。
【0052】
印刷後の錠剤9を検査するときには、検査部73が、第2記憶部731から検査用の検査画像データD2を読み出す。そして、検査部73は、読み出された検査画像データD2を、角度認識部71において認識された回転角度に応じて回転させる。また、検査部73は、第1検査カメラ44から、印刷後の錠剤9の撮影画像データDpを取得する。検査部73は、回転された検査用の検査画像データD2と、第1検査カメラ44から取得した撮影画像データDpとを、比較することによって、錠剤9の表面に印刷された画像の欠陥を検出する。具体的には、検査画像データD2と撮影画像データDpとの間に、予め設定された閾値以上の差異があると、当該箇所を欠陥として検出する。同様に、検査部73は、回転された検査用の検査画像データD2と、第2検査カメラ54から取得した撮影画像データDpとを、比較することによって、錠剤9の表面に印刷された画像の欠陥を検出する。この結果、すべての錠剤9の印刷状態の検査が完了する。
【0053】
<3.プレヒートによる効果>
上述のとおり、本実施形態の錠剤印刷装置1において、第1ヘッド431は、第1搬送コンベア41により搬送される錠剤9の表面にインク滴を吐出し、第2ヘッド531は、第2搬送コンベア51により搬送される錠剤9の表面にインク滴を吐出する。また、錠剤印刷装置1は、第1搬送コンベア41および第2搬送コンベア51よりも搬送経路の上流側において、錠剤9を供給するフィーダ部20を有する。そして、プレヒート部25は、フィーダ部20において錠剤9を加熱する。すなわち、本実施形態の錠剤印刷装置1において実行される錠剤印刷処理は、a)錠剤9を加熱する工程と、b)工程a)の後に、加熱された錠剤9の表面にインク滴を吐出する工程と、を有する。このように、プレヒート部25によって、錠剤9の表面にインク滴が吐出される前に錠剤9を加熱することによる効果を検証した結果について、以下に記載する。
【0054】
図8は、本実施形態において、腸溶性フィルムコーティング錠である錠剤9の印刷処理を行う前にプレヒート部25において錠剤9を加熱した場合と、印刷処理を行う前に錠剤9を加熱しなかった場合とで、最終的に良品として錠剤印刷装置1の外部へ搬出された錠剤9を指で数回擦った際の状態の違いを検証した結果を示す。
図8において、左側は錠剤9に印刷処理を行う前に錠剤9を加熱した場合を示し、右側は錠剤9に印刷処理を行う前に錠剤9を加熱しなかった場合を示している。また、
図8において、上側は顔料インクを用いて印刷処理を行った場合を示し、下側は染料インクを用いて印刷処理を行った場合を示している。
【0055】
図8に示すとおり、錠剤9の印刷処理を行う前にプレヒート部25において錠剤9を加熱した場合(左側)の方が、印刷処理を行う前に錠剤9を加熱しなかった場合(右側)よりも、印刷処理後に錠剤9からインクが剥がれにくい(薄くなりにくい)ことが目視結果として確認された。すなわち、錠剤9の印刷処理を行う前にプレヒート部25において錠剤9を加熱した場合、印刷処理後に錠剤9の表面におけるインクの定着性が向上することが確認された。また、顔料インクを用いて印刷処理を行った場合(上側)のみならず、染料インクで印刷処理を行った場合(下側)でも、同様の結果が確認された。
【0056】
図9は、変形例として、糖衣錠であるである錠剤9の印刷処理を行う前にプレヒート部25において錠剤9を加熱した場合と、印刷処理を行う前に錠剤9を加熱しなかった場合とで、最終的に良品として錠剤印刷装置1の外部へ搬出された錠剤9を指で数回擦った際の状態の違いを検証した結果を示す。
図9において、左側は錠剤9に印刷処理を行う前に錠剤9を加熱した場合を示し、右側は錠剤9に印刷処理を行う前に錠剤9を加熱しなかった場合を示している。また、
図9において、上側は顔料インクを用いて印刷処理を行った場合を示し、下側は染料インクを用いて印刷処理を行った場合を示している。
【0057】
図9に示すとおり、錠剤9が糖衣錠であっても、錠剤9の印刷処理を行う前にプレヒート部25において錠剤9を加熱した場合(左側)の方が、印刷処理を行う前に錠剤9を加熱しなかった場合(右側)よりも、印刷処理後に錠剤9からインクが剥がれにくい(薄くなりにくい)ことが目視結果として確認された。すなわち、錠剤9の印刷処理を行う前にプレヒート部25において錠剤9を加熱した場合、印刷処理後に錠剤9の表面におけるインクの定着性が向上することが確認された。また、顔料インクを用いて印刷処理を行った場合(上側)のみならず、染料インクで印刷処理を行った場合(下側)でも、同様の結果が確認された。
【0058】
図10は、変形例として、素錠であるである錠剤9の印刷処理を行う前にプレヒート部25において錠剤9を加熱した場合と、印刷処理を行う前に錠剤9を加熱しなかった場合とで、最終的に良品として錠剤印刷装置1の外部へ搬出された錠剤9を指で数回擦った際の状態の違いを検証した結果を示す。
図10において、左側は錠剤9に印刷処理を行う前に錠剤9を加熱した場合を示し、右側は錠剤9に印刷処理を行う前に錠剤9を加熱しなかった場合を示している。
図10に示すとおり、錠剤9が素錠であっても、僅かではあるが、錠剤9の印刷処理を行う前にプレヒート部25において錠剤9を加熱した場合(左側)の方が、印刷処理を行う前に錠剤9を加熱しなかった場合(右側)よりも、印刷処理後に錠剤9からインクが剥がれにくい(薄くなりにくい)ことが目視結果として確認された。
【0059】
錠剤9の事前加熱によりインクの定着性が向上する理由としては、種々の理由が考えられる。例えば、錠剤9の事前加熱によって、錠剤9の表面が改質され、上述したバルジ現象が抑制されることが、1つの理由として考えられる。また、第1アフターヒート部45および第2アフターヒート部55は、錠剤9の外側からインクを加熱するものであるが、これに加えて、錠剤9の表面に付着したインクが、内側に位置する錠剤9からも熱を受けることも、定着性が向上する理由として考えられる。また、錠剤9の表面にインク滴が吐出されたときに、直ちにインクが錠剤9から熱を受けて、インクの定着が開始されることも、定着性が向上する理由として考えられる。
【0060】
<4.変形例>
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0061】
上述の実施形態では、錠剤印刷装置1の搬送経路上の1箇所のみに、プレヒート部25が設けられていた。しかしながら、錠剤印刷装置1の搬送経路上の複数箇所に、プレヒート部25が設けられていてもよい。例えば、上述の実施形態のプレヒート部25に加えて、第1ヘッドユニット43と第2ヘッドユニット53との間の搬送経路上に、追加のプレヒート部が設けられていてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、錠剤9の回転角度に応じて、検査部73が、検査画像データD2を回転させていた。しかしながら、第2記憶部731に、予め回転角度の異なる複数の検査画像データD2(例えば、回転角度が1°ずつ異なる360個の検査画像データD2)を記憶させておいてもよい。そして、検査部73は、角度認識部71の認識結果に応じた回転角度の検査画像データD2を、第2記憶部731から読み出して、検査を行ってもよい。このようにすれば、検査画像データD2を錠剤9毎に1つ1つ回転させる場合よりも、検査部73の演算負担を軽減できる。したがって、印刷画像の検査を迅速に実行できる。
【0063】
また、上述の錠剤印刷装置1は、第1印刷部40および第2印刷部50によって、錠剤9の両面に印刷を行う装置であった。しかしながら、本発明の錠剤印刷装置は、錠剤9の片面のみに印刷を行う装置であってもよい。
【0064】
また、上述の実施形態では、第1印刷部40および第2印刷部50に、それぞれ4つのヘッドが設けられていた。しかしながら、各印刷部40,50に含まれるヘッドの数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0065】
また、錠剤印刷装置1の細部の構成については、本願の各図と相違していてもよい。また、上述の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 錠剤印刷装置
9 錠剤
10 ホッパー
20 フィーダ部
22 回転フィーダ
25 プレヒート部
30 搬送ドラム
33 第1状態検出カメラ
40 第1印刷部
41 第1搬送コンベア
42 第2状態検出カメラ
43 第1ヘッドユニット
44 第1検査カメラ
45 第1アフターヒート部
50 第2印刷部
51 第2搬送コンベア
52 第3状態検出カメラ
53 第2ヘッドユニット
54 第2検査カメラ
55 第2アフターヒート部
56 欠陥品回収部
60 搬出コンベア
70 制御部
91 割線
100 筐体
221 回転台
411 第1プーリ
412 第1搬送ベルト
431 第1ヘッド
511 第2プーリ
512 第2搬送ベルト
531 第2ヘッド
D1 印刷画像データ
D2 検査画像データ
Dp 撮影画像データ
I 印刷画像