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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175850
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】蓋付き断熱カバー
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20231205BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B65D81/38 R
F16L59/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023158210
(22)【出願日】2023-09-22
(62)【分割の表示】P 2019106133の分割
【原出願日】2019-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】船戸 利恭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭一郎
(57)【要約】
【課題】優れた断熱性能を有する蓋付き断熱カバーを提供する。
【解決手段】バッテリーB等の断熱対象物を収容可能な箱状部12と、箱状部12に設けられてバッテリーBの上部を覆うように開閉可能な蓋部30とを備える。箱状部の断熱壁部14には、断熱性を有する肉厚壁部16と、肉厚壁部14より厚みの薄い肉薄壁部18と、肉薄壁部の内側空間12a側に位置するよう設けられた凹状部20と、凹状部20の上部側に設けられて内側空間12a側に突出する抜け止め部22とを備えるようにすると共に、蓋部30には、厚み方向に弾性変形可能な断熱性を有する凸状部40を備えおり、蓋部30を閉じた状態で、凸状部40が凹状部20に嵌まり込んで凸状部40が抜け止め部22で抜け止めされるようにする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱壁部で囲まれた内側空間に断熱対象物を収容可能な箱状部と、前記箱状部に設けられて前記内側空間の上部を覆うように開閉可能な蓋部とを備えた蓋付き断熱カバーであって、
前記箱状部の断熱壁部は、
断熱性を有する肉厚壁部と、
前記肉厚壁部より厚みの薄い肉薄壁部と、
前記肉薄壁部の前記内側空間側に位置するよう設けられた凹状部と、
前記凹状部の上部側に設けられて前記内側空間側に突出する抜け止め部とを備え、
前記蓋部は、
前記箱状部の内側空間に挿入可能な延出部と、
前記延出部に設けられて当該延出部を前記内側空間に挿入した状態で前記断熱壁部と対向する面側に位置し、厚み方向に弾性変形可能な断熱性を有する凸状部とを備え、
前記延出部を前記内側空間に挿入するよう前記蓋部を閉じた状態で、前記凸状部が前記凹状部に嵌まり込むと共に、当該凸状部が前記抜け止め部により抜け止めされるよう構成されている
ことを特徴とする蓋付き断熱カバー。
【請求項2】
前記延出部は、前記蓋部における開閉の基端となる縁部と反対側に位置する開閉の先端側の縁部に設けられ、
前記蓋部を閉じた状態で前記蓋部の先端側の縁部が近接する断熱壁部に前記凹状部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の蓋付き断熱カバー。
【請求項3】
前記延出部は、前記蓋部における開閉の基端となる縁部に連なる両側縁部から延出するよう設けられ、
前記蓋部を閉じた状態で前記蓋部の両側縁部が近接する断熱壁部に前記凹状部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の蓋付き断熱カバー。
【請求項4】
前記蓋部は、前記延出部が連なる位置よりも先端側に、当該蓋部の折り曲げ変位を許容する折曲部許容部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の蓋付き断熱カバー。
【請求項5】
前記箱状部の断熱壁部には、前記蓋部を前記内側空間と反対側に折り返した際に前記凸状部と対応する位置に、当該凸状部を収容可能な退避部が形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の蓋付き断熱カバー。
【請求項6】
前記凹状部に嵌まり込んだ前記凸状部の突出端が、前記肉薄壁部の壁面に接するよう構成されていることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の蓋付き断熱カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッテリーなどの断熱対象物の側面全周と上面とを覆うように装着可能な蓋付き断熱カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、エンジンの始動やランプ類等の各種電装品への電力供給のためにバッテリーがエンジンルーム等の所定場所に設置されている。このエンジンルームは、エンジンの運転による温度上昇や外気温の影響を受けて温度変化し易く、高温環境での過放電や低温環境での起電力の低下といったバッテリーの性能の低下を招くことが知られている。そこで、バッテリーを断熱カバーで覆って、バッテリーに熱的環境が与える影響を抑制することが行われている。このような断熱カバーとしては、例えば、特許文献1のように、バッテリー等の断熱対象物の外側面全周を断熱性の壁で覆うようにしたものや、特許文献2,3のように断熱対象物の外側面全周を覆うと共に上面を蓋で覆うようにしたものがある。断熱対象物の上面を蓋で覆うタイプの断熱カバーは、断熱対象物の温度変化を効果的に抑制することができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6063819号公報
【特許文献2】実開昭58-188984号公報
【特許文献3】特表2017-527488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2や特許文献3のような蓋付きの断熱カバーは、蓋を閉じた状態で止めるために面ファスナーやクリップ状の留め具を別途設ける必要があり、断熱カバーの製造工数が嵩む欠点がある。特に特許文献3のようにクリップ状の留め具を設ける場合には、留め具を差し込むための開口を断熱カバーに設ける必要があり、断熱カバーの断熱性能が低下する難点がある。
【0005】
すなわち本発明は、優れた断熱性能を有する蓋付き断熱カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第1の手段は、
断熱壁部で囲まれた内側空間に断熱対象物を収容可能な箱状部と、前記箱状部に設けられて前記内側空間の上部を覆うように開閉可能な蓋部とを備えた蓋付き断熱カバーであって、
前記箱状部の断熱壁部は、
断熱性を有する肉厚壁部と、
前記肉厚壁部より厚みの薄い肉薄壁部と、
前記肉薄壁部の前記内側空間側に位置するよう設けられた凹状部と、
前記凹状部の上部側に設けられて前記内側空間側に突出する抜け止め部とを備え、
前記蓋部は、
前記箱状部の内側空間に挿入可能な延出部と、
前記延出部に設けられて当該延出部を前記内側空間に挿入した状態で前記断熱壁部と対向する面側に位置し、厚み方向に弾性変形可能な断熱性を有する凸状部とを備え、
前記延出部を前記内側空間に挿入するよう前記蓋部を閉じた状態で、前記凸状部が前記凹状部に嵌まり込むと共に、当該凸状部が前記抜け止め部により抜け止めされるよう構成されていることを要旨とする。
このように、蓋部の延出部を箱状部の内側空間に挿入するよう閉じた状態で、蓋部の凸状部が箱状部の凹状部に嵌まり込んで抜け止め部により抜け止めされるから、蓋部を閉じた状態で保持するための部材を別途設ける必要がなく、蓋付きの断熱カバーの製造工数を簡略化することができる。また、箱状部の断熱壁部に開口を形成することなく蓋部を閉じた状態に保持できるから、優れた断熱性能を実現できる。更に、断熱性を有する凸状部が箱状部の凹状部に嵌まり込むことで、凹状部の形成により箱状部側の断熱性能が低下した場合でも断熱カバー全体としての断熱性能を損なうのを防止できる。
【0007】
第2の手段は、
前記延出部は、前記蓋部における開閉の基端となる縁部と反対側に位置する開閉の先端側の縁部に設けられ、
前記蓋部を閉じた状態で前記蓋部の先端側の縁部が近接する断熱壁部に前記凹状部が形成されていることを要旨とする。
このように、蓋部における開閉の基端となる縁部と反対側に位置する開閉の先端側の縁部に凸状部を形成した延出部を設けるようにすることで、蓋部を閉じた状態に安定して保持することができると共に、内側空間内への凸状部の挿脱作業性を高めて、蓋部の開閉を容易に行うことができる。
【0008】
第3の手段は、
前記延出部は、前記蓋部における開閉の基端となる縁部に連なる両側縁部から延出するよう設けられ、
前記蓋部を閉じた状態で前記蓋部の両側縁部が近接する断熱壁部に前記凹状部が形成されていることを要旨とする。
このように、蓋部における開閉の基端となる縁部に連なる両側縁部に凸状部を形成した延出部を設けるようにすることで、蓋部の両側部に位置する凸状部が箱状部の凹状部に係合して蓋部を閉じた状態に安定して保持することができる。
【0009】
第4の手段は、
前記蓋部は、前記延出部が連なる位置よりも先端側に、当該蓋部の折り曲げ変位を許容する折曲部許容部が形成されていることを要旨とする。
このように、延出部が連なる位置よりも先端側に蓋部の折り曲げ変位を許容する折り曲げ部を設けることで、蓋部を閉じた状態で部分的に開閉することができる。これにより、断熱対象物の上面側を断熱した状態のまま断熱対象物に対する作業が可能になる。すなわち断熱対象物がバッテリーのような構成物である場合には、その配線接続作業やバッテリー液の補充作業等を、バッテリーの上面を断熱したまま行うことができる。
【0010】
第5の手段は、
前記箱状部の断熱壁部には、前記蓋部を前記内側空間と反対側に折り返した際に前記凸状部と対応する位置に、当該凸状部を収容可能な退避部が形成されていることを要旨とする。
このように、蓋部を内側空間と反対側に折り返した際に、当該蓋部の凸状部を箱状部の断熱壁部に形成した収容凹部に収容されるようにすることで、凸状部により蓋部の全体的な厚みが嵩高くなった状態でも、断熱カバーをコンパクトに折り畳むことができる。
【0011】
第6の手段は、
前記凹状部に嵌まり込んだ前記凸状部の突出端が、前記肉薄壁部の壁面に接するよう構成されていることを要旨とする。
このように、凸状部の突出端を肉薄壁部の壁面に接するようすることで、箱状部の断熱性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓋付き断熱カバーの断熱性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る断熱カバーをバッテリーに装着する状態を示す概略斜視図である。
図2】断熱カバーを展開した展開パネル体の内面側を示す説明図である。
図3】(a)は図2のA-A線断面図であり、(b)は図2のB-B線断面図である。
図4】(a)は蓋体を開放した状態での断熱カバーの断面図であり、(b)は蓋体を閉じた状態での断熱カバーの断面図である。
図5図4の要部拡大図であって、断熱カバーの内側空間にバッテリーを収容した状態を示す。
図6】断熱カバーの製造工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る蓋付き断熱カバーにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、断熱対象物として、自動車等の車両のエンジンルームなどに設置されるバッテリーを挙げて説明する。
【0015】
図1に示すように、実施例に係る断熱カバー10は、バッテリーBを収容可能な内側空間12aを形成した箱状部12と、当該内側空間12aの上部を覆うように箱状部12に設けられた蓋部30とを備えている。この箱状部12は、バッテリーBの四方の側面に対応する4面の断熱壁部14により上下に開口する角筒状に形成されている。また蓋部30は、箱状部12の1つの面を形成する断熱壁部14の上端部に、当該断熱壁部14に対して屈曲可能に連設されており、当該断熱壁部14との連設縁部を中心として内側空間12aを開閉し得るように構成されている(図4参照)。このように、この断熱カバー10は底のない箱状に形成されて、内側空間12aに収容したバッテリーBの外周面を断熱壁部14で囲むように覆うと共にバッテリーBの上面を蓋部30で覆ったバッテリーBを、エンジンルーム等に設置した架台に設置し得るようになっている。これにより、断熱カバー10とバッテリーBとの間の隙間に入り込んだ異物や漏洩した充填液が断熱カバー10内に滞留し難くしてある。
【0016】
ここで、この実施形態では、矩形状をなすバッテリーBの四方の側面の内で、幅広になっている側面(長手面)の一方を覆う断熱壁部14の上端部に蓋部30が連なるよう設けられている。なお、以下の説明において、蓋部30が連設されている断熱壁部を第1の長手壁部14Aとし、第1の長手壁部14Aと対向位置する断熱壁部を第2の長手壁部14Bとし、当該第1の長手壁部14Aおよび第2の長手壁部10Bに連設されている一対の断熱壁部を短手壁部14Cとして区別する場合がある。このような断熱カバー10は、個別に形成した箱状部12の各断熱壁部14や蓋部30の対応する縁部を夫々接合するようにして形成しても良く、また図2に示すように、箱状部12の4つ角の内の1つの角で断熱壁部14を分離した状態で展開した展開パネル体Pの状態で成形した後に、分離している断熱壁部14の縁部同士を接合して環状にするように形成してもよい。なお、断熱カバー10の製造方法に関しては後述する。この図2の例では、第1の長手壁部14Aの両側縁部に短手壁部14Cが連設すると共に、一方の短手壁部14C(図2では左側)の側縁部に第2の長手壁部14Bが連設するように展開した状態の展開パネル体Pを示している。
【0017】
また、箱状部12の断熱壁部14同士が連設する連設縁部や、断熱壁部14と蓋部30との連設縁部には、折曲許容部Lが形成されており、当該折曲許容部Lにおいて屈曲させるようにして断熱カバー10を変形させ得るようになっている。この折曲許容部Lは、断熱壁部14や蓋部の外面と内面の夫々に、熱圧縮成形により各連設縁部の全長に亘って筋状の溝を形成することにより構成されている(図2図3参照)。なお、折曲許容部Lを形成する溝は、外面および内面の両面に形成する構成に限らず、一方の面にのみ形成するようにしてもよく、また、連続する線状に溝を形成した構成に限らず、断続的に溝を形成したものであってもよい。
【0018】
ここで、断熱カバー10の箱状部12(断熱壁部14)および蓋部30は、基本構成を共通にする複層構造体であって、弾力性を有する発泡体50と、この発泡体50の両面を覆うように設けられて発泡体50を保護する表皮材52とを備え、厚み方向に弾性変形可能に構成されている。すなわち、箱状部12(断熱壁部14)および蓋部30の夫々は、バッテリーB側に対向する内面と、バッテリーBと反対側を向く外面の夫々に表皮材52を有している。また、断熱カバー10は、通気性が低く形成される。なお、エンジンルームに配設される断熱カバー10は、難燃性を有していることが望ましい。
【0019】
この断熱層は、軟質ポリウレタンフォームや、ポリエチレンフォーム、EVAフォーム等の従来公知の各種発泡体50を用いることができる。また、発泡体50は、1種類の発泡体50から構成してもよく、複数の発泡体50を積層して構成するようにしてもよい。また、発泡体50としては、そのクッション性や耐久性に優れ、また熱圧縮成形することができる軟質ポリウレタンフォームを用いることが好適である。このような軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、ポリイソシアネート、適宜の添加剤(難燃剤、エステル系添加剤等)を含むポリウレタン原料を、攪拌機で混合して反応させて発泡させる公知の方法によって形成される。また、発泡体50は、通気性が低い独立気泡構造のものが好ましく、非圧縮状態において、その通気性(JIS K 6400-7)が、1.0ml/cm・s~80ml/cm・sの範囲であるものが好適である。このような通気性の発泡体50により断熱層を構成することで、断熱カバー10の内外の空気移動による熱移動を抑えることができ、断熱性を高めるのに寄与する。また、発泡体50は、非圧縮状態において、その密度が11kg/m~30kg/mの範囲にあるものが好ましく、このような密度範囲の発泡体50から断熱層を構成することで、断熱カバー10の軽量化を図り得る。
【0020】
また、発泡体50の厚みは、特に限定されるものではないが、5~30mm程度の厚みに形成することが好適である。特には、発泡体50を10mm以上の厚みとすることで、熱圧縮成形した際に優れた断熱性を実現できる。例えばこのような発泡体50としての軟質ポリウレタンフォームは、ポリウレタン原料の発泡を常温、大気圧下で行うことで得られる軟質スラブ発泡体50を所定厚みに裁断して形成することができる。このような軟質スラブ発泡体50を所定厚みに裁断することで、効率良く発泡体50が得られる。
【0021】
表皮材52は、断熱層の弾性変形に追従して変形する柔軟性、撥水性および耐磨耗性を有している。表皮材52は、不織布や織物などの布、または合成樹脂のフィルム材等から構成され、この中でも不織布が好適である。不織布としては、ニードルパンチ法、スパンボンド法およびサーマルボンド法などの何れの方法から得られるものであってもよい。
【0022】
箱状部12の各断熱壁部14および蓋部30は、バッテリーBに対して弾力的に当接可能な肉厚壁部16と、当該肉厚壁部16より厚みが薄く形成されてバッテリーBに対して離間するように位置する肉薄壁部18とを備えている。この肉薄壁部18は、各断熱壁部14や蓋部30の外周部に位置するよう形成され、当該肉薄壁部18で囲まれた内側の大部分が肉厚壁部16をなすよう形成されている。すなわち、肉厚壁部16により箱状部12や蓋部30の基本的な断熱性を確保すると共に、肉薄壁部18により剛性を高めて箱状部12や蓋部30の形状安定性を確保するようにしてある。
【0023】
ここで、各断熱壁部14や蓋部30毎に全体で1つの肉厚壁部16を設けるようにしてもよく、また、各断熱壁部14や蓋部30毎に肉厚壁部16を複数設けるようにしてもよい。なお、この実施形態では、各断熱壁部14に肉厚壁部16を上下に並ぶよう2つ設けると共に、蓋部30における箱状部12との連設基端側と先端側とに並ぶよう2つ設けてある。また各断熱壁部14および蓋部30の肉厚壁部16の間は、各断熱壁部14の幅方向に延在する肉薄壁部18により区切られている。なお、断熱壁部14の幅方向は、断熱壁部14毎の上端部の延在方向であり、また蓋部30の幅方向は、断熱壁部14との連設縁部の延在方向である。また、各断熱壁部14および蓋部30に設けた複数の肉厚壁部16の厚みは、同じ厚みであっても異なる厚みであってもよく、この実施形態では各断熱壁部14および蓋部30毎の肉厚壁部16の厚みにしてある。各断熱壁部14に厚みの異なる肉厚壁部16を複数設ける場合は、断熱壁部14の上部側に位置する肉厚壁部16の厚みを大きくすることで、断熱カバー10の下方の開口からバッテリーBを挿入して装着する際の装着性を高めることができる。なお、各断熱壁部14の同じ高さ位置に設ける肉厚壁部16は、同じ厚みになるよう形成することが好ましい。また、各断熱壁部14の肉厚壁部16の厚みと、蓋部30の肉厚壁部16の厚みとの関係についても同様に、同じ厚みであっても異なる厚みであってもよい。
【0024】
また、蓋部30の肉厚壁部16の間の肉薄壁部18には、蓋部30の幅方向の全幅に亘って折曲許容部Lが形成されている。すなわち、蓋体は、折曲許容部Lにより第1の長手壁部14Aに連設する第1の蓋体32と、当該第1の蓋体32に対して折曲許容部Lで連設する第2の蓋体34とに区切られており、当該折曲許容部Lを中心にして第1の蓋体32に対して第2の蓋体34を屈曲させ得るようになっている。この折曲許容部Lは、前述した断熱壁部14同士の連設縁部等の折曲許容部Lと同様に、蓋部30の外面と内面の夫々に、熱圧縮成形により形成した筋状の溝により構成されている(図3参照)。なお、折曲許容部Lの構成としては、前述と同じく蓋部30の途中位置で折り曲げ可能な形態であれば良い。
【0025】
また、断熱壁部14の内面側には、図2図5に示すように、肉厚壁部16の上部位置に、箱状部12が形成する内側空間12aの内側および上側に向けて開口する凹状部20が形成されている。この実施形態では、箱状部12に対して蓋部30を閉じた状態で、当該蓋部30に設けた後述する凸状部40の形成位置に対応するように、一対の短手壁部14Cの夫々と第2の長手壁部14Bとに凹状部20が1箇所ずつ形成してある。なお、短手壁部14Cの凹状部20は、第1の長手壁部14A側に偏った位置に設けられると共に、第2の長手壁部14Bの凹状部20は、当該第2の長手壁部14Bの幅方向の中間位置に設けるようにしてある。この凹状部20は、肉厚壁部16の上縁側の一部を断熱壁部14の外周を形成する肉薄壁部18と同様の厚みとなるよう断熱層を熱圧縮成形することで形成されており、凹状部20の底を肉薄壁部18が形成している。すなわち、肉薄壁部18の内側空間12a側に位置するよう凹状部20が設けられている。
【0026】
そして、凹状部20を形成した断熱壁部14には、内側空間12a側に突出する抜け止め部22が当該凹状部20の上部側に形成されている。この抜け止め部22は、前述した肉厚壁部16と同様に、断熱層を熱圧縮して形成されており、厚み方向に弾力的に変形し得るようになっている。この抜け止め部22は、少なくとも凹状部20の上方の開口位置に合わせて形成されており、蓋部30に設けた凸状部40を凹状部20に臨ませた状態で、抜け止め部22により凸状部40の上方への抜け止めがなされるようになっている。なお、この実施形態では、凹状部20を形成した断熱壁部14の幅方向の略全幅に亘って抜け止め部22が形成されており、肉厚壁部16と同様に抜け止め部22が断熱機能を具有するようなっている。この抜け止め部22の肉薄壁部18からの突出高さは、凹状部20に臨ませた凸状部40の上部に引っ掛かり得る寸法であればよい。
【0027】
また、蓋部30の縁部には、図1図2に示すように、当該蓋部30を閉じた状態で箱状部12の内側空間12aに挿入可能な延出部36,38が形成されると共に、この延出部36,38には、当該延出部36,38を内側空間12aに挿入した状態で断熱壁部14と対向する面側(外面側)に、厚み方向に弾性変形可能な断熱性を有する凸状部40が設けられている。この蓋部30と延出部36,38との境界に折曲許容部Lが形成されており、当該折曲許容部Lを中心にして蓋部30に対して延出部36,38を屈曲させ得るようになっている。
【0028】
ここで、蓋部30には、蓋部30の先端側の縁部に設けられた第1の延出部36と、当該蓋部30の両側縁部に設けられた第2の延出部38との3つの延出部が設けられており、各延出部36,38に1つの凸状部40が設けられている。すなわち、図4図5に示すように、蓋部30を閉じた状態で、第1の延出部36に設けた凸状部40が箱状部12の第2の長手壁部14Bに形成した凹状部20に臨んで抜け止めされると共に、第2の延出部38に設けた凸状部40が箱状部12の対応する短手壁部14Cの凹状部20に臨んで抜け止めされるようになっている。ここで、第2の延出部38は、当該蓋部30の第1の蓋体32の両側縁部に連設する一方で、第2の蓋体34の縁部に連設しないよう設けられている。すなわち、第1の蓋体32を閉じた状態(第2の延出部38に設けた凸状部40が箱状部12の対応する短手壁部14Cの凹状部20に臨んで抜け止めした状態)で、第2の蓋体34だけを開閉し得るようになっている。
【0029】
この延出部36,38は、前述した肉薄壁部18と略同じ厚みとなるよう形成されている(図3図4参照)。また、凸状部40は、蓋部30を閉じた状態で突出端部が凹状部20の底(断熱壁部14の肉薄壁部18)に当接するよう形成するのが好ましい。そして、凸状部40は、蓋部30を閉じた状態で凸状部40の外周面が凹状部20の内周面に当接するよう形成するのが好ましい(図5参照)。このように、凸状部40の突出端部を凹状部20の底に当接するよう構成したり、凸状部40の外周面が凹状部20の内周面に当接するよう構成することで、凹状部20を埋めるように凸状部40が嵌まり込んで、箱状部12の断熱性を高めることができる。
【0030】
断熱壁部14の外面側には、図3,図4に示すように、箱状部12を折り畳んだ状態で蓋部30の外面と第1の長手壁部14Aの外面とを重ね合わせるように蓋部30を外側に折り曲げた際に、各凸状部40が対応する位置に退避部24が外側に開口するよう形成されている。この実施形態では、第1の長手壁部14Aの外面の下部側に第1の延出部36の凸状部40を収容可能な退避部24が形成され、各短手壁部14Cの外面における第1の長手壁部14Aとの連設縁部側に、第2の延出部38の凸状部40を収容可能な退避部24が形成されている。このように、退避部24を形成することで、外側に折り曲げた蓋部30の各凸状部40が断熱壁部14の外面に干渉することなく対応の退避部24に収容されて、断熱カバー10を厚みの薄いコンパクトな状態に折り畳むことを可能にしており、これにより断熱カバー10の運搬性や収納性を高めることができる。
【0031】
次に、実施例に係る断熱カバー10の製造方法について説明する。
【0032】
本実施形態の断熱カバー10の製造方法は、表皮材52を発泡体50に積層した積層体55を形成する積層体形成工程と、積層体55を熱圧縮して箱状部12の断熱壁部14および蓋部30を展開した展開パネル体Pを成形する熱圧縮成形工程と、当該展開パネル体Pの断熱壁部14の縁部同士を接合して箱状部12を形成する接合工程とを備えている。
【0033】
積層体形成工程では、図6に示すように、表皮材52を発泡体50に重ねて積層した積層体55を形成する。この積層体55形成工程では、フレームラミネート、接着剤を用いるラミネート等のような公知の一体化方法によって、発泡体50の両面に表皮材52を一体化するようにしてもよい。ここで、フレームラミネートは、発泡体50の表面を火炎バーナーの照射等によって溶融し、該溶融面に表皮材52を積層して溶着する方法である。火炎バーナー等の温度は600~1300℃程度が一般的である。また接着剤を用いるラミネートは、発泡体50と表皮材52の少なくとも一方の接着面に接着剤を塗布し、接着剤塗布面を挟むようにして発泡体50と表皮材52を重ね、接着する方法である。接着剤としては、ホットメルト接着剤等を用いることができる。
【0034】
熱圧縮成形工程は、表皮材52と発泡体50とを積層した積層体55を、断熱カバー10の外面および内面の形状に合わせた凹凸形状が形成された加熱圧縮装置100で熱圧縮する。この加熱圧縮装置100は、図6に示すように、展開パネル体Pの外面形状に合わせた凹凸形状が形成された第1成形型101と、展開パネル体Pの内面形状に合わせた凹凸形状が形成された第2成形型102との間に、当該第1成形型101および第2成形型102に表皮材52を向けた姿勢で積層体55を配置する。具体的に、第1成形型101には、蓋部30の凸状部40の形成位置に合わせた凹部104と、断熱壁部14の退避部24の形成位置に合わせた凸部106とが形成される。そして、第2成形型102には、蓋部30および断熱壁部14の肉厚壁部16の形成位置に合わせた凹部104が形成される。また、第2成形型102には、蓋部30および断熱壁部14の肉薄壁部18の形成位置に合わせた凸部106が形成されている。更に、第1成形型101および第2成形型102の夫々には、蓋部30の第1の蓋体32と第2の蓋体34との間の折曲許容部L、第1の蓋体32と第2の延出部38との間の折曲許容部L、第2の蓋体34と第1の延出部36との間の折曲許容部L、および各断熱壁部14の間の折曲許容部Lの形成位置に合わせて突条部108が形成されている。
【0035】
そして、図示しない電熱線等の加熱手段により第1成形型101および第2成形型102を加熱しながら積層体55を挟むように熱圧縮することで、第1成形型101および第2成形型102の端面の間に挟まれた位置に肉薄壁部18が形成され、第1成形型101の凹部104の形成位置に凸状部40が形成され、第1成形型101の凸部106の形成位置に退避部24が形成されると共に、第2成形型102の凹部104の形成位置に肉厚壁部16が形成され、更に、第1成形型101および第2成形型102の突条部108の形成位置に折曲許容部Lが形成された圧縮成形体を形成する。その後、圧縮成形体の外縁の余剰部分を図示しないカッター等の切断手段により切断することで展開パネル体Pを形成する。第1成形型101および第2成形型102の加熱温度は、特に限定されるものではないが、170~210℃とすることが好ましい。
【0036】
次いで接合工程において、展開パネル体Pの分離した断熱壁部14の縁部同士を接合して箱状体を形成する。この断熱壁部14の縁部は、互いに重ね合わせた状態で超音波溶着したり、接着剤により接着固定することで接合することができる。これにより、4面の断熱壁部14が連設した筒状の箱状部12が形成される。
【0037】
前述した蓋付き断熱カバー10は、バッテリーBに対して箱状部12を上方から被せて、箱状部12の断熱壁部14でバッテリーBの側面を覆うように装着すると共に、箱状部12の断熱壁部14とバッテリーBの側面との間に差し込むように蓋部30の延出部36,38を箱状部12の内側空間12aに挿入することで、バッテリーBの上面を蓋部30で覆うことができる。このとき、延出部36,38の凸状部40や、箱状部12の抜け止め部22は、発泡体50を基材として厚み方向に弾性変形可能に構成されているから、延出部36,38を挿入する際に、凸状部40や抜け止め部22が弾性変形したり、同じく発泡体50を基材とする断熱壁部14の弾性的な変形を伴って箱状部12の凹状部20に凸状部40が嵌まり込むように係合し、これにより蓋部30が閉じた状態で保持される。また延出部36,38を箱状部12の内側空間12aから引き上げるようにすることで、凸状部40や抜け止め部22の弾性変形や、断熱壁部14の弾性的な伸び変形により凸状部40を凹状部20から抜き出すことができ、蓋部30をこれにより蓋部30を開放することができる。
【0038】
このように、蓋部30の延出部36,38を箱状部12の内側空間12aに挿入するよう閉じた状態で、蓋部30の凸状部40が箱状部12の凹状部20に嵌まり込んで抜け止め部22により抜け止めされるから、蓋部30を閉じた状態で保持するための部材を別途設ける必要がなく、蓋付きの断熱カバー10の製造工数を簡略化することができる。また、箱状部12の断熱壁部14に開口を形成することなく蓋部30を閉じた状態に保持できるから、優れた断熱性能を実現できる。更に、発泡体50から構成されて断熱性を有する凸状部40が箱状部12の凹状部20に嵌まり込むことで、凹状部20の形成により箱状部12(断熱壁部14)の断熱性能が低下したとしても場合でも、当該凹状部20に位置する凸状部40の断熱性により断熱カバー10全体としての断熱性能が損なわれるのを防止できる。
【0039】
そして、このような凸状部40を、蓋部30の先端側の縁部に設けた第1の延出部36に形成することで、蓋部30を閉じた状態に安定して保持することができるだけでなく、内側空間12a内への凸状部40の挿脱作業性を高めることができ、蓋部30の開閉を容易に行うことができるようになる。また、この凸状部40を蓋体の両側縁部に設けた第2の延出部38に形成することで、第1の延出部36に設けた凸状部40よりも内側空間12a内への挿脱作業性を低くすることができるから、蓋部30の両側部に位置する凸状部40が箱状部12の凹状部20に係合することで蓋部30を閉じた状態に安定して保持することができる。このため、車両の走行時等の振動により蓋部30が不用意に外れて開放するのを防止することができる。
【0040】
更に、第2の延出部38を蓋部30の第1の蓋体32に設けると共に、蓋部30において第2の延出部38が連なる位置よりも先端側(第1の蓋体32と第2の蓋体34の間)に、蓋部30の折り曲げ変位を許容する折曲許容部Lを設けることで、蓋部30を閉じた状態で第2蓋体のみを部分的に開閉することができる。これにより、バッテリーBの上面側を第1の蓋体32で断熱した状態のままバッテリーBに対する作業が可能になる。すなわち、例えば所謂バッテリー上がり時におけるジャンパー線の接続等の配線接続作業や、バッテリー液の残量確認・補充作業等を、バッテリーBの上面を断熱したまま行うことができる。
【0041】
また、蓋部30の外面側に凸状部40を形成することで、このような凸状部40を設けていない状態と比べると蓋部30の全体的な厚みが嵩高くなることは避けられない。ここで、本実施形態の断熱カバー10は、第1の長手壁部14Aの外面の下部側に退避部24を設けると共におよび各短手壁部14Cの外面における第1の長手壁部14Aとの連設縁部側に退避部24を設けるようにしてある。このため、蓋部30の外面と第1の長手壁部14Aの外面とを重ね合わせるように蓋部30を外側(内側空間12aと反対側)に折り曲げた際に、断熱壁部14(第1の長手壁部14Aや短手壁部14C)に形成した退避部24に凸状部40を収容することができるから、蓋部30の厚みが嵩高くなった状態でも、断熱カバー10をコンパクトに折り畳むことができる。また、各短手壁部14Cの外面に退避部24を形成することで、第1の長手壁部14Aの何れの側縁部を折り曲げるようにして断熱カバー10を折り畳んだ場合でも、第2の延出部38の凸状部40を短手壁部14Cに干渉しないように収容することができる。
【0042】
(変更例)
前述した実施例の構成に限定されず、例えば以下のように変更することができる。
(1) 実施例では、バッテリーBの四方の側面の内で、幅広になっている側面(長手面)のを覆う断熱壁部14(第1の長手壁部14A)の上端部に蓋部30が連なるよう設けたが、側面の内で幅の狭い側面(短手面)を覆う断熱壁部14(短手壁部14C)の上端部に蓋部30が連なるよう設けても良い。
(2) 実施例では、蓋部30の先端側の縁部に第1の延出部36を設けると共に、当該蓋部30の両側縁部に第2の延出部38を設けるようにしたが、これに限られるものではなく、第1の延出部36および第2の延出部38の一方のみを設けるようにしてもよい。
(3) 実施例では、蓋部30の1つの縁部に延出部を1つ設けるようにしたが、複数の延出部を同じ縁部に設けるようにしてもよい。すなわち、断熱対象物の大きさや形状等に応じて延出部の形成数を適宜に決定することが得きる。
(4) また1つの延出部に対する凸状部の形成数に関しても同様に、複数の凸状部を同じ延出部に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 断熱カバー,12 箱状部,12a内部空間,14 断熱壁部,16 肉厚壁部
18 肉薄壁部,20 凹状部,22 抜け止め部,30蓋部,
36 第1の延出部(延出部),38 第2の延出部(延出部)
40 凸状部 ,L 折曲許容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱壁部で囲まれた内側空間に断熱対象物を収容可能な箱状部と、前記箱状部に設けられて前記内側空間の上部を覆うように開閉可能な蓋部とを備えた蓋付き断熱カバーであって、
前記箱状部の断熱壁部は、前記内側空間側に位置するよう設けられた凹状部を備え、
前記蓋部は、凸部を備え、
記蓋部を閉じた状態で、前記凸状部が前記凹状部に嵌まり込
ことを特徴とする蓋付き断熱カバー。