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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175889
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】外科手術ロボットアームの移動制御
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20231205BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170217
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2021552229の分割
【原出願日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】2002643.1
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516210894
【氏名又は名称】シーエムアール・サージカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CMR SURGICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】ヘアーズ・ルーク・デイビット・ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ・ポール・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーチ・グラハム・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・ゴードン・トーマス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外科手術ロボットシステム用の制御システムを提供する。
【解決手段】外科手術ロボットシステムは、遠隔外科医コンソール501と、基部から関節式に連結された外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイントを含む、関節式に連結された外科手術ロボットアームとを備える。制御システムは、外科手術ロボットアームのアームコントローラ503、504、505に通信可能に結合され、かつこれから遠隔に位置する中央コントローラ502を備え、中央コントローラは、外科医コンソールの外科医入力装置にも通信可能に結合される。中央コントローラは、外科手術器具の遠位端の所望の位置を示すコマンドを外科医入力装置から受信し、遠位端の所望の位置を、(i)外科手術ロボットアームの手首の位置、および(ii)器具駆動ジョイント位置、に変換し、所望の手首位置および器具駆動ジョイント位置をアームコントローラに送信する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術ロボットシステム用の制御システムであって、前記外科手術ロボットシステムが、遠隔外科医コンソールと、基部から関節式に連結された外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイントを含む、関節式に連結された外科手術ロボットアームと、を備え、前記制御システムが、
前記外科手術ロボットアームのアームコントローラであって、前記アームコントローラが、前記外科手術ロボットアームと同じ場所に位置する、アームコントローラと、
前記アームコントローラに通信可能に結合され、かつそれから遠隔に位置する、中央コントローラであって、前記中央コントローラが、前記外科医コンソールの外科医入力装置にも通信可能に結合される、中央コントローラと、を備え、前記中央コントローラが、
前記外科手術器具の遠位端の所望の位置を示すコマンドを前記外科医入力装置から受信し、
前記遠位端の前記所望の位置を、(i)前記外科手術ロボットアームの手首の所望の手首位置、および(ii)前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動する前記外科手術ロボットアームのジョイントに対する所望の器具駆動ジョイント位置、に変換し、
前記所望の手首位置および前記所望の器具駆動ジョイント位置を前記アームコントローラに送信するように構成される、制御システム。
【請求項2】
前記外科手術ロボットアームの前記手首が、前記外科手術ロボットアーム上の、前記外科手術ロボットアームの遠位ジョイントのセットの回転軸が交差する、および/または前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントの回転軸が交差する所に位置しており、前記外科手術ロボットアームの前記遠位ジョイントのセットが、前記基部の遠位に位置しており、任意選択的に、前記遠位ジョイントのセットが、順番に、ロールジョイント、ピッチジョイント、ヨージョイント、およびさらなるロールジョイントからなる、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記関節式に連結された外科手術器具の前記所望の位置が、前記遠位端の位置および前記遠位端の配向を含む、請求項1または2のいずれかに記載の制御システム。
【請求項4】
前記外科手術器具が、外科用内視鏡である、または前記外科手術器具が、組織を操作するように構成され、前記外科手術器具の前記遠位端が、エンドエフェクタであり、前記関節式に連結された外科手術器具の前記所望の位置が、前記エンドエフェクタの二つのエンドエフェクタ要素の広がりをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の制御システム。
【請求項5】
前記器具駆動ジョイントが、前記外科手術ロボットアームの前記末端部の近位に位置している、請求項1~4のいずれかに記載の制御システム。
【請求項6】
前記器具駆動ジョイントが、三つのジョイントのみからなる、請求項1~5のいずれかに記載の制御システム。
【請求項7】
中央コントローラが、前記アームコントローラから仮想ピボット点を受信するように構成され、前記仮想ピボット点が、患者の体内にあるときに前記外科手術器具が常に通過する、ポート内の位置である、請求項1~6のいずれかに記載の制御システム。
【請求項8】
前記中央コントローラが、前記アームコントローラから、前記外科手術ロボットアームの周囲環境に対する前記外科手術ロボットアームの配向の表示を受信するように構成される、請求項1~7のいずれかに記載の制御システム。
【請求項9】
前記中央コントローラが、前記受信した仮想ピボット点および前記受信した前記外科手術ロボットアームの前記配向の表示を使用して、前記遠位端の前記所望の位置を、前記外科手術ロボットアームの基準フレーム内の前記所望の手首位置および前記所望の器具駆動ジョイント位置に変換する、請求項7に従属する請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
外科手術用のアームコントローラであって、前記外科手術ロボットアームが、遠隔外科医コンソールと、中央コントローラと、外科手術ロボットアームとを備える外科手術ロボットシステムの一部を形成し、前記外科手術ロボットアームが、基部から関節式に連結された外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイントを含み、前記アームコントローラが、前記外科手術ロボットアームと同じ場所に位置し、かつ、
前記外科手術ロボットアームの手首の所望の手首位置、および前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動する前記外科手術ロボットアームのジョイントに対する所望の器具駆動ジョイント位置を受信することと、
前記外科手術ロボットアームの前記残りのジョイントについて、前記外科手術ロボットアームの前記手首に前記所望の手首位置を取らせるように、ジョイント位置を決定することであって、前記外科手術ロボットアームの前記残りのジョイントが、前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動しないジョイントである、決定することと、
制御信号を前記外科手術ロボットアームのジョイントコントローラに送信して、前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントを前記受信した所望の器具駆動ジョイント位置および前記決定されたジョイント位置に駆動することと、を行うように構成される、アームコントローラ。
【請求項11】
前記残りのジョイントが、少なくとも七つのジョイントを含み、任意選択的に、前記残りのジョイントが、八つの連続したジョイントを含み、前記八つの連続したジョイントが、前記基部から順番に、ロールジョイント、ピッチジョイント、ロールジョイント、ピッチジョイント、ロールジョイント、ピッチジョイント、ヨージョイント、およびロールジョイントである、請求項10に記載のアームコントローラ。
【請求項12】
前記決定されたジョイント位置が、前記外科手術ロボットアームが最適な構成を取るように決定され、前記最適な構成が、(i)前記残りのジョイントのうちの任意の一つのジョイントがジョイント限界の近位となることを回避する、および/または(ii)前記外科手術ロボットアームがジョイント特異性に近くなることを回避するようなものである、請求項10または11のいずれかに記載のアームコントローラ。
【請求項13】
請求項10~12のいずれかに記載のアームコントローラであって、
仮想ピボット点を決定することであって、患者の体内にあるときに前記外科手術器具が常に通過する、ポート内に位置している前記仮想ピボット点を決定することと、
前記仮想ピボット点を前記中央コントローラに送信することと、を行うように構成される、アームコントローラ。
【請求項14】
前記外科手術ロボットアームの周囲環境に対する前記外科手術ロボットアームの前記配向の表示を前記中央コントローラに送信するように構成される、請求項10~13のいずれかに記載のアームコントローラ。
【請求項15】
外科手術ロボットシステムであって、
外科手術ロボットアームであって、
基部から関節式に連結された外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイント、および、
前記外科手術ロボットアームと同じ場所に位置するアームコントローラを備える、外科手術ロボットアームと、
外科医入力装置を含む遠隔外科医コンソールと、
前記遠隔外科医コンソールおよび前記外科手術ロボットアームの前記アームコントローラに通信可能に結合された中央コントローラと、を備え、前記中央コントローラが、
前記外科手術器具の遠位端の所望の位置を示すコマンドを前記外科医入力装置から受信し、
前記遠位端のその所望の位置を、(i)前記外科手術ロボットアームの手首の所望の手首位置、および(ii)前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動する前記外科手術ロボットアームのジョイントに対する所望の器具駆動ジョイント位置に変換し、
前記所望の手首位置および所望の器具駆動位置をアームコントローラに送信するように構成され、
前記アームコントローラが、
前記所望の手首位置および前記所望の器具駆動ジョイント位置を受信することと、
前記外科手術ロボットアームの前記残りのジョイントについて、前記外科手術ロボットアームの前記手首に前記所望の手首位置を取らせるように、ジョイント位置を決定することであって、前記外科手術ロボットアームの前記残りのジョイントが、前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動しないジョイントである、決定することと、
前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントを前記受信した所望の器具駆動ジョイント位置および前記決定されたジョイント位置に駆動することと、を行うように構成される、外科手術ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
外科手術を補助および実施するためにロボットを使用することが知られている。図1は、典型的な外科手術ロボットシステムを例示する。外科手術ロボット100は、基部102、アーム104、および器具106からなる。基部は、ロボットを支持し、それ自体が、例えば、手術室の床、手術室の天井、またはカートにしっかりと取り付けられ得る。アームは、基部と器具との間に延在する。アームは、その長さに沿って、外科手術器具を患者に対して所望の位置に位置特定するために使用される複数の可撓性ジョイント108によって関節式に連結される。外科手術器具は、ロボットアームの遠位端に取り付けられる。外科手術器具は、外科手術部位にアクセスするように、ポートで患者の身体を貫通する。外科手術器具は、接合された関節によって遠位エンドエフェクタ110に接続されたシャフトを備える。エンドエフェクタは、外科手術手技に従事する。図1では、例示のエンドエフェクタは、一対の顎である。外科医は、遠隔外科医コンソール112を介して外科手術ロボット100を制御する。外科医コンソールは、一つ以上の外科医入力装置114を備える。これらは、ハンドコントローラまたはフットペダルの形態をとり得る。外科医コンソールはまた、ディスプレイ116を備える。
【0002】
制御システム118は、外科医コンソール112を外科手術ロボット100に接続する。制御システムは、外科医入力装置から入力を受信し、これらをロボットアーム104のジョイントおよびエンドエフェクタ110を移動させるための制御信号に変換する。制御システムは、これらの制御信号をロボットに送信し、それに応じて、対応するジョイントが駆動される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の態様によれば、外科手術ロボットシステム用の制御システムが提供され、外科手術ロボットシステムは、遠隔外科医コンソールと、基部から関節式に連結された外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイントを含む、関節式に連結された外科手術ロボットアームと、を備え、制御システムは、外科手術ロボットアームのアームコントローラに通信可能に結合され、かつそこから遠隔に位置する中央コントローラを備え、中央コントローラは、外科医コンソールの外科医入力装置にも通信可能に結合されており、中央コントローラは、外科手術器具の遠位端の所望の位置を示すコマンドを外科医入力装置から受信し、遠位端の所望の位置を、(i)外科手術ロボットアームの手首の所望の手首位置、および(ii)関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動する外科手術ロボットアームのジョイントに対する所望の器具駆動ジョイント位置、に変換し、所望の手首位置および所望の器具駆動ジョイント位置をアームコントローラに送信するように構成される。
【0004】
外科手術ロボットアームの手首は、外科手術ロボットアーム上の、外科手術ロボットアームの遠位ジョイントのセットの回転軸が交差する、および/または関節式に連結された外科手術器具のジョイントの回転軸が交差する所に位置しており、外科手術ロボットアームの遠位ジョイントのセットは、基部の遠位に位置している。
【0005】
遠位ジョイントのセットは、順番に、ロールジョイント、ピッチジョイント、ヨージョイント、およびさらなるロールジョイントからなり得る。
【0006】
関節式に連結された外科手術器具の所望の位置は、遠位端の位置および遠位端の配向を含み得る。
【0007】
外科手術器具は、外科用内視鏡であってもよい。
【0008】
外科手術器具は、組織を操作するよう構成されてもよく、外科手術器具の遠位端は、エンドエフェクタであってもよい。
【0009】
関節式に連結された外科手術器具の所望の位置は、エンドエフェクタの二つのエンドエフェクタ要素の広がりをさらに含み得る。
【0010】
器具駆動ジョイントは、外科手術ロボットアームの末端部の近位に位置し得る。
【0011】
器具駆動ジョイントは、三つのジョイントのみからなってもよい。
【0012】
中央コントローラは、アームコントローラから仮想ピボット点を受信するように構成されてもよく、仮想ピボット点は、患者の体内にあるときに外科手術器具が常に通過するポート内に位置する位置である。
【0013】
中央コントローラは、アームコントローラから、外科手術ロボットアームの周囲環境に対する外科手術ロボットアームの配向の表示を受信するように構成されてもよい。
【0014】
中央コントローラは、受信した仮想ピボット点および受信した外科手術ロボットアームの配向の表示を使用して、遠位端の所望の位置を、外科手術ロボットアームの基準フレーム内の所望の手首位置および所望の器具駆動ジョイント位置に変換し得る。
【0015】
本発明の態様によれば、外科手術ロボットアーム用のアームコントローラが提供され、外科手術ロボットアームは、遠隔外科医コンソール、中央コントローラ、および外科手術ロボットアームを備える外科手術ロボットシステムの一部を形成しており、外科手術ロボットアームは、基部から関節式に連結された外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイントを備え、アームコントローラは、外科手術ロボットアームの手首の所望の手首位置、および関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動する外科手術ロボットアームのジョイントに対する、および外科手術ロボットアームの残りのジョイントに対する所望の器具駆動ジョイント位置を受信することと、外科手術ロボットアームの手首に所望の手首位置を取らせるように、ジョイント位置を決定することであって、外科手術ロボットアームの残りのジョイントは、関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動しないジョイントである、決定することと、制御信号を外科手術ロボットアームのジョイントコントローラに送信して、外科手術ロボットアームのジョイントを所望の器具駆動ジョイント位置および決定されたジョイント位置に駆動させることと、を行うように構成される。
【0016】
外科手術ロボットアームの手首は、外科手術ロボットアーム上の、外科手術ロボットアームの遠位ジョイントのセットの回転軸が交差する、および/または関節式に連結された外科手術器具のジョイントの回転軸が交差する所に位置しており、外科手術ロボットアームの遠位ジョイントのセットは、基部の遠位に位置している。
【0017】
遠位ジョイントのセットは、順番に、ロールジョイント、ピッチジョイント、ヨージョイント、およびさらなるロールジョイントからなり得る。
【0018】
残りのジョイントは、少なくとも七つのジョイントを含み得る。
【0019】
残りのジョイントは、八つの連続したジョイントを含んでもよい。
【0020】
八つの連続したジョイントは、基部から順番に、ロールジョイント、ピッチジョイント、ロールジョイント、ピッチジョイント、ロールジョイント、ピッチジョイント、ヨージョイント、およびロールジョイントであり得る。
【0021】
決定されたジョイント位置は、外科手術ロボットアームが最適な構成を取るように決定されてもよく、最適な構成は、(i)残りのジョイントのうちの任意の一つのジョイントがジョイント限界の近位となることを回避する、および/または(ii)外科手術ロボットアームがジョイント特異性に近くなることを回避するようなものである。
【0022】
アームコントローラは、仮想ピボット点を決定することであって、仮想ピボット点は、患者の体内にあるときに外科手術器具が常に通過するポート内に位置している、決定することと、仮想ピボット点を中央コントローラに送信することと、を行うように構成され得る。
【0023】
アームコントローラは、外科手術ロボットアームの周囲環境に対する外科手術ロボットアームの配向の表示を中央コントローラに送信するように構成されてもよい。
【0024】
本発明の態様によれば、外科手術ロボットシステムが提供され、外科手術ロボットシステムは、基部から関節式に連結された外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイント、およびアームコントローラを含む外科手術ロボットアームと、外科医入力を含む遠隔外科医コンソールと、遠隔外科医コンソールおよび外科手術ロボットアームのアームコントローラに通信可能に結合される中央コントローラと、を備え、中央コントローラは、外科手術器具の遠位端の所望の位置を示すコマンドを外科医入力装置から受信し、その遠位端の所望の位置を、(i)外科手術ロボットアームの手首の所望の手首位置、および(ii)関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動する外科手術ロボットアームのジョイントに対する所望の器具駆動ジョイント位置に変換し、所望の手首位置および所望の器具駆動位置をアームコントローラに送信するように構成され、アームコントローラは、所望の手首位置および所望の器具駆動ジョイント位置を受信することと、外科手術ロボットアームの残りのジョイントに対して、外科手術ロボットアームの手首に所望の手首位置を取らせるように、ジョイント位置を決定することであって、外科手術ロボットアームの残りのジョイントは、関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動しないジョイントである、決定することと、外科手術ロボットアームのジョイントを、受信した所望のジョイント位置および決定されたジョイント位置に駆動するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
ここで、添付図面を参照して、本発明を例として説明する。図は、以下の通りである。
【0026】
図1図1は、外科手術手技を実施するための外科手術ロボットシステムを例示する。
図2図2は、外科手術ロボットを例示する。
図3図3は、図2の外科手術ロボットアームのジョイントの分解図を例示する。
図4図4は、外科医コンソールの例示的なハンドコントローラを例示する。
図5図5は、外科手術ロボットシステムの制御システムを例示する概略図である。
図6図6は、アームコントローラの制御方法を例示するフローチャートである。
図7図7は、二つの外科手術ロボットアームの配向インターフェースを例示する概略図である。
図8図8は、中央コントローラの制御方法を例示するフローチャートである。
図9図9は、アームコントローラの制御方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、外科手術ロボットアームおよび取り付けられた外科手術器具の制御を説明する。制御システムは、分散されており、外科手術ロボットアームと同じ場所に位置するアームコントローラと、外科手術ロボットアームから遠隔に位置する中央コントローラとを有する。外科手術ロボットアームおよび外科手術器具は、図1に例示されるタイプの遠隔外科医コンソールとともに、外科手術ロボットシステムの一部を形成する。外科手術ロボットシステムは、二つ以上の外科手術ロボットアームを備えてもよく、各ロボットアームは、取り付けられた外科手術器具および同じ場所に位置するアームコントローラを有する。
【0028】
以下に記載される制御システムおよび方法は、外科手術部位で患者の組織を操作するためのエンドエフェクタをその遠位端に有する外科手術器具を保持する外科手術ロボットアームに対してそのように行われる。エンドエフェクタは、例えば、一対の顎、メス、縫合針などであってもよい。しかしながら、同じ外科手術ロボットアーム、制御システムおよび方法は、外科手術部位のビデオフィードをキャプチャするためのカメラをその遠位端に有する内視鏡である外科手術器具に等しく適用される。
【0029】
図2は、例示的な外科手術ロボット200を例示する。ロボットは、外科手術手技が実施されるときに定位置に固定される基部201を備える。好適には、基部201は、シャーシに装着される。図2では、シャーシはカートである。このカートは、ロボットをベッドの高さに装着するためのベッドサイドカートであってもよい。代替的に、シャーシは、天井に装着された装置、またはベッドに装着された装置であってもよい。
【0030】
ロボットアーム202は、ロボットの基部201から外科手術器具204に取り付けるための末端部203まで延在する。アームは、可撓性である。アームは、その長さに沿って複数の可撓性ジョイント205によって関節式に連結される。ジョイント間にあるのは、剛性アームリンク206である。好適には、ジョイントは外旋ジョイントである。ロボットアームは、基部と末端部との間に少なくとも七つのジョイントを有する。図2に例示されるロボットアーム200は、基部201と末端部203との間に合計で八つのジョイントを有する。図2に例示されるロボットアームは、基部と末端部との間に八つのジョイントのみを有する。ジョイントは、一つ以上のロールジョイント(ジョイントのいずれかの側上のアームリンクの長手方向に沿った回転軸を有する)、一つ以上のピッチジョイント(前のアームリンクの長手方向に対して横方向の回転軸を有する)、および一つ以上のヨージョイント(また、前のアームリンクの長手方向に対して横方向であり、かつ同じ場所に位置するピッチジョイントの回転軸に対しても横方向の回転軸を有する)を含む。図2の実施例では、ジョイント205a、205c、205eおよび205hはロールジョイントであり、ジョイント205b、205dおよび205fはピッチジョイントであり、ジョイント205gはヨージョイントである。ロボットアームの基部201からロボットアームの末端部203までの連続的なジョイントの順番は、ロール、ピッチ、ロール、ピッチ、ロール、ピッチ、ヨー、ロールである。図2には介在するジョイントはない。
【0031】
図2の外科手術ロボットアームのジョイントを図3に例示する。ロボットアームは、肩部分301、肘部分302、および手首部分303によって関節式に連結される。肩部分301は、基部201に隣接し、基部201に隣接するロールジョイントJ 205a、およびそれに続くピッチジョイントJ 205bからなる。ピッチジョイントJは、ロールジョイントJの回転軸に対して垂直な回転軸を有する。肘部分302は、肩部分301と手首部分303との間にある。肘部分302は、肩部分301のピッチジョイントJに隣接するロールジョイントJ 205cと、それに続くピッチジョイントJ 205dからなる。ピッチジョイントJは、ロールジョイントJの回転軸に対して垂直な回転軸を有する。手首部分303は、肘部分302に隣接している。手首部分303は、肘部分302のピッチジョイントJに隣接するロールジョイントJ 205e、それに続くピッチジョイントJ205fおよびヨージョイントJ 205g、およびそれに続くロールジョイントJ 205hからなる。ピッチジョイントJおよびヨージョイントJは、図3に例示するように、球面ジョイントであってもよい複合ジョイントを形成する。ピッチジョイントJおよびヨージョイントJは、交差する回転軸を有する。
【0032】
基部の遠位にあるロボットアームの端部は、アームのジョイントのうちの一つ以上の移動によって基部に対して関節式に連結され得る。手首部分303内の遠位ジョイントJ、J、JおよびJのセットの回転軸は、すべて外科手術ロボットアーム上の点で交差する。本明細書の記載は、手首を指す。好適には、手首は、器具がロボットアームに取り付けられるときに、その器具の遠位端にしっかりと結合される、ロボットアームの一部分である。手首は、位置および配向を有する。例えば、手首の位置は、J、J、JおよびJの回転軸の交点であってもよい。代替的に、手首の位置は、器具の一つ以上のジョイントの回転軸の交点であってもよい。代替的に、手首の位置は、ロボットアームの一つ以上の遠位ジョイントの回転軸と、器具の一つ以上のジョイントの回転軸との交点であってもよい。図2および3に例示される外科手術ロボットアームは、冗長ジョイントを有する。外科手術ロボットアームの基部に対する手首の所与の位置に対して、二つ以上のジョイントJ1~の構成がある。したがって、外科手術ロボットアームは、同じ手首位置を維持しながら、異なる姿勢を取ることができる。
【0033】
外科手術ロボットアームは、図2および図3に例示されるものとは別様に接合されてもよい。例えば、アームは、八つより少ないかまたは八つより多いジョイントを有する場合がある。アームは、ジョイント、例えば、テレスコピックジョイントのそれぞれの側面の間の回転以外の動きを許容するジョイントを含み得る。
【0034】
図2に戻ると、外科手術ロボットアームは、モータ207のセットを備える。各モータ207は、ジョイント205のうちの一つ以上を駆動する。各モータ207は、ジョイントコントローラによって制御される。ジョイントコントローラは、モータ207と同じ場所に位置してもよい。ジョイントコントローラは、モータ207のうちの一つ以上を制御し得る。ロボットアームは、一連のセンサ208、209を備える。これらのセンサは、ジョイントごとに、ジョイントの位置を検知するための位置センサ208、およびジョイントの回転軸の周りに加えられたトルクを検知するためのトルクセンサ209を備える。ジョイントの位置センサおよびトルクセンサのうちの一方または両方を、そのジョイントのモータと一体化させることができる。センサの出力は、制御システムに渡される。
【0035】
外科手術器具204は、ロボットアーム203の末端部で駆動アセンブリに取り付けられる。この取付点は、常に患者の外部にある。外科手術器具204は、細長いプロファイルを有し、ロボットアームに取り付けられるその近位端と患者体内の外科手術部位にアクセスするその遠位端との間にシャフトの広がりがある。外科手術器具は、アームのジョイント205hの回転軸と直線的に平行に延在するように構成されてもよい。例えば、外科手術器具は、アームのジョイント205hの回転軸と一致する軸に沿って延在してもよい。
【0036】
外科手術器具の近位端および器具シャフトは、互いに対して剛性であり、ロボットアームの遠位端に取り付けられたとき、ロボットアームの遠位端に対して剛性であってもよい。ポートが挿入される切開部が患者の体内に作られる。外科手術器具は、外科手術部位にアクセスするように、ポートを通して患者の身体を貫通し得る。代替的に、外科手術器具は、身体の自然なオリフィスを通して身体を貫通して、外科手術部位にアクセスしてもよい。器具の近位端で、シャフトは器具インターフェースに接続されている。器具インターフェースは、ロボットアームの遠位端で駆動アセンブリと係合する。具体的には、器具インターフェースの個々の器具インターフェース要素は各々、駆動アセンブリのそれぞれの個々の駆動アセンブリインターフェース要素と係合する。器具インターフェースは、駆動アセンブリと取り外し可能に係合可能である。器具は、ツールを必要とせずに、手動でロボットアームから取り外され得る。これにより、手術中に器具を駆動アセンブリから迅速に取り外し、別の器具を取り付けることが可能になる。
【0037】
外科手術器具の遠位端では、器具シャフトの遠位端は、関節式に連結されたカップリングによってエンドエフェクタに接続される。エンドエフェクタは、外科手術部位で外科手術手技に従事する。エンドエフェクタは、例えば、一対の顎、一対の単極はさみ、針ホルダ、有窓把持器、またはメスであってもよい。関節式に連結されたカップリングは、数個のジョイントを含む。これらのジョイントは、エンドエフェクタの姿勢を、器具シャフトの方向に対して変更することを可能にする。エンドエフェクタ自体もまた、ジョイントを含んでもよい。図2および図3に例示されるエンドエフェクタは、一対の対向するエンドエフェクタ要素307、308の対を有する。エンドエフェクタのジョイントは、ピッチジョイント304、ヨージョイント305、およびピンチジョイント306として図3に例示されている。ピッチジョイント304は、器具のシャフトに隣接し、器具シャフトの長手方向軸に対して垂直な軸を中心として回転する。ヨージョイント305は、ピッチジョイント304の回転軸に対して垂直な回転軸を有する。ピンチジョイント306は、エンドエフェクタ要素の広がりを決定する。実際には、ピンチジョイント306は、ヨージョイント305と同じ回転軸を有する別のヨージョイントであってもよい。二つのヨージョイント305、306の独立した動作は、エンドエフェクタ要素を、互いに対して同時にヨーさせ、および/または開閉させ得る。
【0038】
駆動は、ロボットアームからエンドエフェクタまで任意の好適な様式で伝達される。例えば、器具のジョイントは、ケーブル、プッシュロッドまたはプッシュ/プルロッドなどの駆動要素によって駆動されてもよい。これらの駆動要素は、器具の近位端で器具インターフェースと係合する。ロボットアームの末端部にある駆動アセンブリは、駆動を、上述のそれぞれのインターフェース要素を介して外科手術ロボットアームから器具インターフェースに、そしてそれによって器具ジョイントに伝達する器具駆動ジョイントを備える。これらの器具駆動ジョイントは、ジョイントJ、J10およびJ11として図3に示される。図3は、三つの器具駆動ジョイントを例示しており、器具駆動ジョイントの各々は、器具の三つのジョイントのうちの一つを駆動する。
【0039】
好適には、器具駆動ジョイントは、それによって駆動が器具ジョイントに伝達される唯一の手段である。ロボットアームは、三つより多いか三つより少ない器具駆動ジョイントを有してもよい。外科手術器具は、三つより多いか三つより少ないジョイントを有してもよい。器具駆動ジョイントは、図3に示すように、駆動する器具ジョイントに対して一対一のマッピングを有し得る。代替的に、器具駆動ジョイントは、二つ以上の器具ジョイントを駆動してもよい。
【0040】
外科医コンソールは、外科手術ロボットシステムの一つ以上の外科手術ロボットアームから遠隔に位置する。外科医コンソールは、一つ以上の外科医入力装置およびディスプレイを備える。各外科医入力装置により、外科医は制御入力を制御システムに提供することが可能になる。外科医入力装置は、例えば、ハンドコントローラ、ペダルなどのフットコントローラ、指もしくは身体の別の部分によって制御されるタッチセンサ式入力、音声制御入力装置、視線制御入力装置、またはジェスチャ制御入力装置であってもよい。外科医入力装置は、外科医が個別に操作できる数個の入力を提供し得る。
【0041】
図4は、例示的なハンドコントローラ400を例示する。ハンドコントローラは、例えばジンバル配置(図示せず)によって外科医コンソールに接続される。これにより、ハンドコントローラを外科医コンソールに対して3度の並進自由度で移動させることが可能になる。こうした移動は、器具のエンドエフェクタの対応する移動を命令するために使用され得る。ハンドコントローラはまた、外科医コンソールに対して回転されてもよい。こうした移動は、器具のエンドエフェクタの対応する回転を命令するために使用され得る。
【0042】
示されるハンドコントローラは、右手による保持を意図するものである。鏡像ハンドコントローラは、左手によって保持され得る。ハンドコントローラは、手で掴むのに好適な本体401を備える。ハンドコントローラは、例えば、ボタン、スイッチ、レバー、スライド入力、またはトラックパッド403などの静電容量センサ入力などの追加の入力を備えてもよい。図4のハンドコントローラは、トリガ402を備える。トリガ402は、本体401に対して移動可能である。示されるハンドコントローラでは、トリガ402は、本体401に対して回転可能である。代替的に、または追加的に、トリガは、本体401に対して直線的に並進運動してもよい。本体401に対するトリガ402の移動は、器具のエンドエフェクタ要素の開閉を命令するために使用され得る。ハンドコントローラは、二つのトリガを備えてもよく、各トリガは、エンドエフェクタ要素の単一の異なる一つを独立して制御するためのものである。
【0043】
外科医コンソールは、二つ以上の外科医入力装置を備えてもよい。各外科医入力装置は、異なる外科手術器具を制御するために使用され得る。したがって、外科医は、自身の左手でハンドコントローラを使用して一つの外科手術器具を制御し、自身の右手でハンドコントローラを使用して別の外科手術器具を制御し得る。
【0044】
制御システムは、外科医コンソールを一つ以上の外科手術ロボットに接続する。こうした制御システムを図5に例示する。外科医コンソール501は、中央コントローラ502への双方向通信リンクによって接続される。具体的には、外科医コンソール501の外科医入力装置(複数可)は、中央コントローラ502に通信可能に結合される。中央コントローラ502は、外科手術ロボットシステムの各外科手術ロボットアームのアームコントローラ503、504、505への双方向通信リンクによって接続される。各アームコントローラは、外科手術ロボットアームと同じ場所に位置する。アームコントローラは、外科手術ロボットアームを支持するシャーシ内、例えば、アームのカート内に位置し得る。中央コントローラは、外科手術ロボットアームのうちの少なくとも一つから遠隔に位置する。好適には、中央コントローラは、外科手術ロボットシステム内のすべての外科手術ロボットアームから遠隔に位置する。中央コントローラは、外科医コンソールに位置してもよい。代替的に、中央コントローラは、アームコントローラのうちの一つと同じ場所に位置してもよい。中央コントローラは、外科医コンソールおよびすべてのアームコントローラの両方から遠隔に位置してもよい。
【0045】
中央コントローラは、プロセッサ506およびメモリ507を備える。メモリ507は、プロセッサ506によって実行され得るソフトウェアコードを非一時的な方法で記憶して、プロセッサに、本明細書に記載の様式で外科医コンソールおよび一つ以上の外科手術ロボットアームを制御させる。
【0046】
アームコントローラの各々は、プロセッサ508およびメモリ509を備える。メモリ509は、プロセッサ508によって実行され得るソフトウェアコードを非一時的な方法で記憶して、プロセッサに、本明細書に記載の様式で外科医コンソールおよび一つ以上の外科手術ロボットアームを制御させる。
【0047】
中央コントローラ502は、外科医入力装置(複数可)からコマンドを受信する。一つの外科医入力装置からのコマンドは、外科手術器具の遠位端の所望の位置を示す。外科手術器具の遠位端の所望の位置は、エンドエフェクタの位置を含む。遠位端の所望の位置はまた、遠位端の配向を含み得る。遠位端の所望の位置はまた、または代替的に、エンドエフェクタの二つの対向するエンドエフェクタ要素の広がりを含んでもよい。外科医入力装置からのコマンドは、エンドエフェクタの所望の絶対位置および/または配向および/または広がりを示し得る。代替的に、外科医入力装置からのコマンドは、エンドエフェクタの絶対位置および/または配向および/または広がりの所望の変化を示し得る。
【0048】
制御システムは、外科医入力装置から受信したコマンドを、その関連する外科手術ロボットアームの駆動ジョイントおよび/または外科手術器具を駆動するための駆動信号に変換する。ジョイントは、それによって、遠位端に外科医入力装置によって命令された所望の位置を取らせるよう駆動される。それによって、外科手術器具の操作は、外科医入力装置の操作に応答して制御システムによって制御される。
【0049】
外科医入力装置から受信したコマンドを外科手術ロボットアームのジョイントを駆動するための駆動信号に処理することは、中央コントローラ502とその外科手術ロボットアームのアームコントローラ503との間で分散される。以下でより詳細に説明するように、中央コントローラ502は、外科手術ロボットアームの手首位置および器具駆動ジョイント位置を決定する。中央コントローラ502は、これらをアームコントローラに渡す。次いで、アームコントローラは、所望の手首位置を達成するために、残りのジョイントのジョイント位置を決定する。アームコントローラは、アームに分散されたジョイントコントローラにコマンドを送信する。次いで、ジョイントコントローラは、ジョイントモータを制御してアームのジョイントを駆動し、決定されたジョイント位置に移動させる。
【0050】
図6は、その外科手術ロボットアームのセットアップモード中にアームコントローラによって行われ得るステップを示すフローチャートである。ステップ601で、アームコントローラは、患者の体内における外科手術器具の仮想ピボット点を決定する。仮想ピボット点は、器具が患者の体内を移動する際の、剛性シャフトを有するその器具の回転の自然な中心である。ポートは、患者の腹壁内に挿入される。ポートは、約2~10cmの長さである。器具は、ポートを通して患者の体内に挿入される。仮想ピボット点は、ポートの長さに沿って置かれる。仮想ピボット点の正確な位置は、患者の解剖学的構造に依存し、したがって患者ごとに異なっている。仮想ピボット点は、以下の方法を使用して決定され得る。
【0051】
器具がポート内に位置する状態で、オペレータは、ロボットアームの遠位端を、器具シャフトに対して概して横方向に移動させる。この動きにより、ポートに、ポートを通過する所で器具シャフト上に横方向の力を加え、その結果、器具は、その軸が器具シャフトの長手方向軸に対して横方向であるアームのジョイント(この場合、ジョイントJ 205fおよびJ 205g)にトルクを加える。各アームジョイントの位置は、その関連する位置センサ208によって測定され、この検知された位置は、アームコントローラに出力される。各アームジョイントのトルクは、その関連するトルクセンサ209によって測定され、この検知されたトルクはアームコントローラに出力される。したがって、オペレータがロボットアームの遠位端を横方向に移動させるにつれて、アームコントローラは、アームジョイント上の位置および力を示す検知された入力を受信する。その情報により、コントローラは、(a)固定された基部に対するロボットの遠位端の位置、および(b)ロボットの遠位端に対する器具シャフトのベクトルを推測することができる。器具シャフトはポートの通路を通過するため、ポートの通路はそのベクトルに沿って置かれる。ロボットアームの遠位端が移動するにつれて、コントローラは、遠位端位置および器具シャフトベクトルの複数の対を計算する。これらのベクトルはすべて、それぞれの遠位端位置から、ポートの通路にある仮想ピボット点の位置上に収束する。一連のそれらのデータ対を収集し、次いで、器具シャフトベクトルが収束する平均位置を解くことによって、アームコントローラは、基部に対する仮想ピボット点を決定する。
【0052】
ロボットアームの基準フレーム内の、すなわち、ロボットアームの固定された基部に対する仮想ピボット点を決定すると、アームコントローラは、ステップ602で、その仮想ピボット点を中央コントローラに送信する。ロボットの基部が同じ固定された位置に留まり、かつ患者がロボットの基部に対して同じ位置に留まる間、患者の体内の器具の回転の自然な中心は、同じままである。したがって、アームコントローラは、外科手術手技が行われる前のロボットアームのセットアップ中の較正モードで仮想ピボット点を決定し、この時点で、仮想ピボット点を中央コントローラに一回だけ送信し得る。代替的に、アームコントローラは、手術中にロボットアームが移動するにつれてセンサからアームコントローラに渡される知覚データから、外科手術手技中に仮想ピボット点を連続的または定期的に再計算してもよい。これらのセンサは、センサ208および209などの、ロボットアーム上のセンサ、ならびに器具および/またはポート上のセンサなどの、ロボットアームの外部にあるセンサ、のうちの任意の一つまたは組み合わせであってもよい。ロボットアームの外部にあるセンサは、知覚データをアームコントローラに無線で送信し得る。次いで、アームコントローラは、外科手術手技中に、再計算された仮想ピボット点を中央コントローラに継続的または定期的に送信し得る。仮想ピボット点を定期的に再計算する理由は、外科手術手技中、ロボットアームの基部は固定されたままであるが、例えば、呼吸の結果として、ロボットアームの基部に対する患者の位置が、ベッド上の患者の移動によって変化し、ひいては、器具の自然な回転の中心が経時的にシフトする場合があるからである。ロボットアームの基部が移動した場合、例えば、器具が本体から除去され、ロボットアームが装着されたカートが患者のベッドサイドの異なる位置に動かされた場合、新しい仮想ピボット点を解明するために、上記の方法が再度実施される。
【0053】
ステップ603で、アームコントローラは、任意選択的に、アーム配向データを中央コントローラに送信してもよい。外科手術ロボットシステムが二つ以上のロボットアームを有する場合、制御システムが、同じ基準フレーム内のロボットアームを評価することが有用である。例えば、ロボットアームが移動するにつれて、それらのロボットアーム間の衝突を回避することを目的とする。または、内視鏡からのビデオフィードに示されるように、ハンドコントローラの基準フレーム内の左右の方向、および左右のエンドエフェクタの移動をマッピングすることを目的とする。
【0054】
ロボットアームの基部、またはロボットアームが固定されているシャーシは、オペレータが操作して、ロボットアームの周囲環境に対するロボットアームの配向を識別することができる配向インターフェースを有してもよい。図7は、ロボットアーム702の配向インターフェース701およびロボットアーム704の配向インターフェース703を例示する。ロボットアーム702および704は、患者ベッド705の両側に位置する。配向インターフェースは、例えば、ベッドサイドチームのメンバーなどのオペレータがアクセスできるボタンまたはボタンのセットであってもよい。各配向インターフェースは、図7に示すように、四つのボタンを備えてもよく、各ボタンは、四つの方向のうちの一つを示している。これら四つの方向は等間隔であり、各方向間は90°、すなわち、0°、90°、180°、および270°である。代替的に、任意の数の方向が示されてもよい。例えば、インターフェースは、1°の増分でオペレータによって回転され得るダイヤルを備えてもよい。オペレータは、周囲環境に対する各ロボットアームの配向を識別するために、各ロボットアームの配向インターフェースに入力を提供し得る。一例として、オペレータは、ロボットアームの各々から共通の方向を識別してもよい。例えば、オペレータは、各ロボットアーム上の壁706に面するボタンを作動させることによって、手術室の壁706の方向を識別してもよい。図7の場合、これは、配向インターフェース701上のボタンCを作動させ、そして配向インターフェース703上のボタンBを作動させることにより得る。別の実施例として、オペレータは、各ロボットアーム上のボタンを作動させることによって、内視鏡を保持するロボットアームの方向を識別してもよい。アームコントローラは、配向インターフェースから周囲環境に対する外科手術ロボットアームの配向を示す入力を受信し、この表示を中央コントローラに送信する。
【0055】
ステップ603は任意である。配向データは、他の手段によって中央コントローラによって取得されてもよい。例えば、ロボットアームが所定の配向に位置付けられるために、例えば、ロボットアームが所定の配向で患者のベッドに取り付けられる場合に、それらの外科手術ロボットアームの相対的配向が既知である場合であり得る。
【0056】
図8は、外科手術ロボットアームの動作中に中央コントローラによって行われ得るステップを示すフローチャートである。ステップ801で、中央コントローラは、アームコントローラから仮想ピボット点を受信する。ステップ802で、中央コントローラは、アームコントローラから配向データを受信してもよい(任意選択的に)。ステップ803で、中央コントローラは、外科手術器具の遠位端の所望の位置を示すコマンドを外科医入力装置(複数可)から受信する。上述のように、この所望の位置は、エンドエフェクタの所望の位置および/または配向および/または広がりを含み得る。
【0057】
ステップ804で、中央コントローラは、以下のとおり、遠位端の所望の位置を、所望の手首位置および所望の器具駆動ジョイント位置に変換する。
【0058】
アームコントローラから受信される仮想ピボット点は、ロボットアームの基準フレーム内、すなわち、ロボットアームの基部に対するものである。中央コントローラは、配向データを使用して、仮想ピボット点をロボットアームの基準フレームから共通設置の基準フレームに回転させる。この配向データは、上述のように、アームコントローラから受信されるものであってもよい。代替的に、配向データは、上述のように、予め定められてもよく、中央コントローラのパラメータ値ストアから取得されてもよい。
【0059】
図8は、制御ループを例示する。制御ループの各反復において、中央コントローラは、外科医入力装置から外科手術器具の遠位端の所望の位置を示すコマンドを受信する。中央コントローラは、コマンドを使用して、制御ループの以前の反復で計算したロボットアームの一つ以上のパラメータを更新する。更新されたパラメータのすべてまたはサブセットは、ストア807に記憶され、次いで、制御ループの次の反復でストア807から取得される。これらのパラメータは、共通接地の基準フレーム内の遠位端の所望の位置、所望の手首位置、および所望の器具駆動ジョイント位置を含み得る。
【0060】
所望の手首位置は、手首の位置を含む。所望の手首位置はまた、手首の配向を含み得る。
【0061】
ステップ804で所望の手首位置および所望の器具駆動ジョイント位置を決定するために、中央コントローラは、まず、外科医入力装置からのコマンドを使用して、共通接地の基準フレームに対する器具の遠位端の所望の位置を決定し得る。好適には、中央コントローラは、共通接地の基準フレームに対する遠位端の最新の所望の位置をストア807から取得することによってこれを行う。次いで、共通接地の基準フレームに対する遠位端のその最新の所望の位置が、外科医入力装置からのコマンドを使用して更新される。例えば、図4のハンドコントローラを用いて、中央コントローラは、ハンドコントローラの検出された並進運動をエンドエフェクタの並進運動に、ハンドコントローラの検出された回転をエンドエフェクタの回転に、そしてハンドコントローラのトリガの検出された角度をエンドエフェクタのエンドエフェクタ要素の広がり角に、変換し得る。
【0062】
中央コントローラは、外科医入力装置から受信したコマンドを使用して外科手術器具の遠位端の所望の位置を更新する際に、メモリに記憶されたパラメータ値を使用し得る。例えば、中央コントローラは、現在の内視鏡位置を、内視鏡を保持するロボットアームのアームコントローラから中央コントローラによって受信された位置知覚データから受信したものとして識別する記憶されたパラメータ値を使用し得る。外科医は、コンソールディスプレイ上で見えるように、内視鏡からの視界に応答して外科医入力装置を操作する。したがって、中央コントローラは、外科医が見たエンドエフェクタの視認方向を考慮するように、外科医入力装置の外科医の操作によって命令された移動を回転および/または並進運動させる。より具体的には、中央コントローラは、内視鏡の配向と外科手術器具の配向との間の相対的配向を使用して、ハンドコントローラの移動とエンドエフェクタの移動との間の回転を決定する。
【0063】
中央コントローラは、外科医入力装置と外科手術器具の遠位端との間のマッピングを識別する記憶されたパラメータ値を使用し得る。例えば、中央コントローラは、以下の、外科医のハンドコントローラの並進運動移動とエンドエフェクタの並進運動移動との比率、外科医のハンドコントローラの回転移動とエンドエフェクタの回転移動との比率、およびトリガの位置をエンドエフェクタ要素の角度広がりにマッピングする関係、のうちの一つ以上を識別する記憶されたパラメータを有し得る。中央コントローラは、外科医入力装置からの入力を外科手術器具の遠位端の更新された所望の位置に変換する際に、これらのマッピングを適用する。
【0064】
中央コントローラは、エンドエフェクタの所望の位置を更新する際に、クラッチモデルを使用し得る。クラッチモードを使用して、外科医入力装置を再配置することが可能になる。これは、外科医入力装置が人間工学的に不良な位置にある場合、または外科医入力装置が運動範囲の限界に達した場合に望ましい場合がある。外科医がクラッチモードに係合すると、外科医入力装置は、外科手術ロボットアームの制御から係合解除される。係合クラッチモード中の外科医入力装置の移動は、エンドエフェクタの移動に変換されない。外科医がクラッチモードを係合解除すると、外科医入力装置は、外科手術ロボットアームの制御を再係合する。中央コントローラは、現在のエンドエフェクタ位置との再係合後に外科医入力装置から受信した第一の命令されたエンドエフェクタ位置を同期することによって、クラッチの使用に応答する。したがって、外科医入力装置が、クラッチされている間に外科医入力装置のワークスペースにわたって並進運動または回転された場合、クラッチモードが係合されたときからそれが係合解除されたときまでの外科医入力装置の位置の変化を取るような、エンドエフェクタの突然の移動をもたらさない。
【0065】
中央コントローラは、エンドエフェクタの所望の位置を更新する際に、同期モデルを使用し得る。同期モデルは、外科手術ロボットアームのジョイントまたは器具がジョイント限界に達する場合、または手首が仮想ピボット点に近すぎる場合を考慮するように使用される。同期モデルは、中央コントローラが、現在のエンドエフェクタ位置との同期モデルの使用後に外科医入力装置から受信した第一の命令されたエンドエフェクタ位置を同期することによって同期関数の使用に応答するという点で、クラッチモデルと同様である。
【0066】
中央コントローラが、外科医入力装置からのコマンドおよび上述のパラメータのうちの一つ以上を使用して、共通接地の基準フレームに対する外科手術器具の遠位端の所望の位置を決定したら、中央コントローラは、外科手術器具の遠位端の所望の位置を、共通接地の基準フレームからロボットアームの基準フレームに回転させる。
【0067】
次に、中央コントローラは、逆運動学を使用して、ロボットアームの基準フレーム内の外科手術器具の遠位端の所望の位置を達成するために、器具駆動ジョイント位置および手首位置を決定する。当技術分野で公知の任意の適切な逆運動学方程式を使用してもよい。
【0068】
外科手術ロボットアームの手首の位置は、ロボットアームの基準フレーム内の外科手術器具の遠位端の位置に対して固定されている。器具は剛性であり、手首の位置(上記に定義されるような)は、器具シャフトの長手方向軸上にある点である。外科手術器具の遠位端と手首の位置との間の距離は既知であり、それは手首とアームの末端部との間の長さに、器具の長さを足して、アームおよび器具のオーバーラップ部分を引いた長さである。器具シャフトは、器具が患者の体内にあるとき、常に仮想ピボット点を通過する。仮想ピボット点は既知であるため、外科手術器具位置の所与の遠位端に対して、固有の手首位置がある。したがって、遠位端位置と手首位置との間に一対一の関係がある。したがって、中央コントローラは、ロボットアームの基準フレーム内の遠位端の所望の位置、既知の仮想ピボット点、および遠位端の位置と手首との間の既知の距離から、ロボットアームの基準フレーム内の所望の手首位置を決定する。
【0069】
中央コントローラは、エンドエフェクタの決定された回転およびエンドエフェクタ要素の決定された広がりを、所望の器具駆動ジョイント位置に変換する。これを行うために、中央コントローラは、器具の各ジョイントの移動とその器具ジョイントを駆動するロボットアームの器具駆動ジョイントの移動との間の記憶されたマッピングを使用する。このマッピングは、手術手技の前または最中の、駆動アセンブリの較正中に変更され得る。図3の例示的なロボットについて、中央コントローラは、三つの器具駆動ジョイント位置を決定する。
【0070】
ステップ806で、中央コントローラは、所望の手首位置および所望の器具駆動ジョイント位置をアームコントローラに送信する。
【0071】
次いで、制御ループはステップ803に戻り、中央コントローラが外科医入力装置から次のコマンドを受信する。
【0072】
図9は、外科手術ロボットアームを制御して、外科医入力装置によって命令されるように移動させるためにアームコントローラによって実施される制御ループを例示する。ステップ901で、アームコントローラは、中央コントローラから所望の手首位置および所望の器具駆動ジョイント位置を受信する。
【0073】
ステップ902で、アームコントローラは、器具のジョイント、すなわち、J~Jを含むジョイントを駆動しない、ロボットアームの残りのジョイントのジョイント位置を決定する。決定されたジョイント位置は、手首が、中央コントローラから受信された所望の位置を有するようなものである。既知の固定された基部位置および所望の手首位置を考慮して、アームコントローラは、逆運動学方法を使用して、アームの残りのジョイントJ1~に対するジョイント位置を決定する。当技術分野で公知の任意の適切な逆運動学法を使用してもよい。アームコントローラは、既知のパラメータ値903を使用してジョイント位置を決定する。これらの既知のパラメータ値には、ロボットアームの既知の構造、ロボットアームの各リンクおよびジョイントの既知の寸法および質量、取り付けられた外科手術器具の既知の寸法および質量、ならびにジョイントの慣性が含まれる。ジョイントの慣性は、ジョイント加速度から計算される。ジョイント加速度は、以前の反復から記憶されたジョイント位置および位置が計算される度数を使用して決定され得る。ジョイント加速度は、記憶されたジョイント速度およびジョイント位置が計算される度数を使用して決定され得る。
【0074】
ロボットアームが、所望の手首位置を達成するために必要とされるよりも多くのジョイントを有する場合、アームは、冗長性を有すると言われる。これは、手首に所望の手首位置を有させる、二つ以上のアームジョイントの構成があることを意味する。この場合、アームコントローラは、ロボットアームに最適な構成を有させる、ロボットアームに対するジョイント位置のセットを決定する。最適な構成は、以下の基準のうちの任意の一つまたは組み合わせによって画定され得る:
- 一つ以上のアームジョイントがジョイント限界に近くなることを回避する構成。
- 外科手術ロボットアームがジョイント特異性に近くなることを回避する構成。外科手術ロボットアームの特定の姿勢が特異なものになり得ることは、有限のジョイント速度を有する全方向におけるエンドエフェクタの後続の移動を得ることが不可能であることを意味する。
- 外科手術ロボットアームのワークスペース内における別の物体との衝突を回避する構成。
- 手術室スタッフにとってより望ましい構成。例えば、冗長性により、肘部分302は、同じ手首位置に対して一つ以上の位置を取ることが可能になり得る。肘部分の一つの位置は、ベッドサイドチームが患者の部位により容易にアクセスすることが可能となるように、別の位置よりも好ましい場合がある。
【0075】
アームコントローラがロボットアームの残りのジョイントのすべてのジョイント位置を決定すると、ステップ904に進む。ステップ904で、アームコントローラは制御信号をジョイントコントローラに送信して、ジョイントモータを制御し、ロボットアームのジョイントを所望の器具駆動ジョイント位置および残りのジョイントに対する決定されたジョイント位置に駆動する。アームコントローラによってジョイントコントローラに送信される制御信号は、要求されたジョイントトルクを含み得る。各ジョイントコントローラは、ジョイントに対して要求されたジョイントトルクを、そのジョイントにおける物理的トルクに変換する。ジョイントコントローラは、ジョイントを駆動するためにそれに取り付けられたブラシレスDCモータの閉ループ電流制御を使用して、これを実施し得る。ジョイントコントローラは、まず、モータ電流を決定し、要求されたトルクを送達する。この決定は、ジョイントのモータタイプおよびギヤボックスに関連する記憶されたパラメータに基づいて行われる。ジョイントコントローラはまた、モータの各相で流れる電流も測定し、モータの閉ループトルク制御への入力として使用される。
【0076】
次いで、制御ループはステップ901に戻り、アームコントローラは、中央コントローラから所望の手首位置および所望の器具駆動ジョイント位置の次のセットを受信する。
【0077】
上述の制御方法では、外科医入力装置からのコマンドを外科手術ロボットアームのジョイントの駆動信号に処理することは、中央コントローラとアームコントローラとの間に分散される。
【0078】
中央コントローラは、器具駆動ジョイント位置および手首の位置を決定する。器具駆動ジョイント位置および手首位置を決定するためには、器具の構成およびその長さを知る必要がある。本明細書に記載されるように処理を分散することによって、アームコントローラは、取り付けられた器具の細部を維持する必要はない。したがって、器具をその寸法または機能が変更されるようにアップグレードする場合、または新しい器具をシステムに追加する場合、ソフトウェアアップグレードは、中央コントローラのみに対して必要となる。これは、器具自体上のメモリからの更新された器具データのダウンロードを介して行うことができ得る。代替的に、更新された器具寸法を視覚的に測定し、中央コントローラに入力してもよい。システムのすべての外科手術ロボットアーム上のアームコントローラは、ソフトウェアアップグレードを必要としない。したがって、本明細書に記載の中央コントローラとアームコントローラとの間の制御機能を分割することは、全体としての外科手術ロボットシステムに対するより効率的な保守レジームにつながる。
【0079】
本明細書に記載されるように処理を分散することによって、アームコントローラは、より少ない計算を実施し、したがって、より低いレベルの処理能力を消費する。これは、アームコントローラが本明細書に記載されるすべての処理を実施する場合と比較して、アームコントローラによって生成される熱を低減する。手術手技中に外科手術ロボットアームの表面が達することが許容される温度は、安全性の理由から厳密に制限される。外科手術ロボットアームは、無菌性の理由から手技中にドレープで覆われているため、アームの表面温度は、ジョイントモータおよびアームの内部にある他の回路からの熱損失の結果として上昇する。本明細書に記載される中央コントローラとアームコントローラとの間の制御機能を分割することによって、アームコントローラは、より少ない処理能力を消費することができ、ひいては熱損失を少なくし、それによってアームの表面の加熱へのその寄与を低減することができる。
【0080】
中央コントローラは、外科手術ロボットシステム内の各ロボットアームに通信可能に結合される。個々のアームコントローラは、互いに通信可能に結合されていない。したがって、各アームコントローラは、システム内の任意の他のロボットアームの位置または存在に関する知識を有さない。中央コントローラに、システム内の各ロボットアームの手首位置を決定させることによって、二つの隣接するロボットアームのワークスペースのオーバーラップを識別し、それゆえ、二つのロボットアーム間の潜在的な衝突を識別できる。
【0081】
アームコントローラは、ロボットアームのジョイントを駆動すること、ジョイントセンサから知覚データを受信すること、ロボットアームの外部にある実体と通信すること、ロボットアームへの電力の印加を制御すること、ロボットアーム内の障害検出を含む、他の事項に対する高い計算負荷を有する。一方で、中央コントローラは、大きな計算負荷を有さない。ジョイント位置の計算の一部を行う中央コントローラは、アームコントローラの計算要件を低減し、それゆえ、アームコントローラが、処理能力、ひいては速度をその他の事項に専念させることを可能にする。中央コントローラがアームコントローラに手首位置および器具駆動ジョイント位置を提供するように、作業負荷を分割することを選択することは、アームコントローラがロボットアームの基準フレーム内で計算を実施することのみが必要があることを意味する。アームコントローラは、座標変換を行う必要がない。これらはすべて中央コントローラによって実施される。
【0082】
本明細書に記載のロボットは、外科手術以外の目的のために使用され得る。例えば、ポートは、自動車エンジンなどの製造品内の検査ポートであってもよく、ロボットは、エンジン内部を見るための視認ツールを制御し得る。
【0083】
本明細書によって、本出願人は、本明細書に説明される各個々の特徴および二つ以上のかかる特徴の任意の組み合わせを、かかる特徴または組み合わせが、当業者に共通する一般知識に照らして、全体として本明細書に基づいて行うことができるような程度まで、かかる特徴または特徴の組み合わせが、本明細書に開示する任意の問題を解決するかにかかわらず、かつ特許請求の範囲を限定することなく、分離して開示する。本出願人は、本発明の態様が、任意のかかる個々の特徴または特徴の組み合わせからなり得ることを示している。前述の説明を考慮すると、本発明の範囲内で様々な修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
[態様1]
外科手術ロボットシステム用の制御システムであって、前記外科手術ロボットシステムが、遠隔外科医コンソールと、基部から関節式に連結された外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイントを含む、関節式に連結された外科手術ロボットアームと、を備え、前記制御システムが、
前記外科手術ロボットアームのアームコントローラであって、前記アームコントローラが、前記外科手術ロボットアームと同じ場所に位置する、アームコントローラと、
前記アームコントローラに通信可能に結合され、かつそれから遠隔に位置する、中央コントローラであって、前記中央コントローラが、前記外科医コンソールの外科医入力装置にも通信可能に結合される、中央コントローラと、を備え、前記中央コントローラが、
前記外科手術器具の遠位端の所望の位置を示すコマンドを前記外科医入力装置から受信し、
前記遠位端の前記所望の位置を、(i)前記外科手術ロボットアームの手首の所望の手首位置、および(ii)前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動する前記外科手術ロボットアームのジョイントに対する所望の器具駆動ジョイント位置、に変換し、
前記所望の手首位置および前記所望の器具駆動ジョイント位置を前記アームコントローラに送信するように構成される、制御システム。
[態様2]
前記外科手術ロボットアームの前記手首が、前記外科手術ロボットアーム上の、前記外科手術ロボットアームの遠位ジョイントのセットの回転軸が交差する、および/または前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントの回転軸が交差する所に位置しており、前記外科手術ロボットアームの前記遠位ジョイントのセットが、前記基部の遠位に位置している、態様1に記載の制御システム。
[態様3]
前記遠位ジョイントのセットが、順番に、ロールジョイント、ピッチジョイント、ヨージョイント、およびさらなるロールジョイントからなる、態様2に記載の制御システム。
[態様4]
前記関節式に連結された外科手術器具の前記所望の位置が、前記遠位端の位置および前記遠位端の配向を含む、態様1~3のいずれかに記載の制御システム。
[態様5]
前記外科手術器具が、外科用内視鏡である、態様1~4のいずれかに記載の制御システム。
[態様6]
前記外科手術器具が、組織を操作するように構成され、前記外科手術器具の前記遠位端が、エンドエフェクタであり、前記関節式に連結された外科手術器具の前記所望の位置が、前記エンドエフェクタの二つのエンドエフェクタ要素の広がりをさらに含む、態様1~4のいずれかに記載の制御システム。
[態様7]
前記器具駆動ジョイントが、前記外科手術ロボットアームの前記末端部の近位に位置している、態様1~6のいずれかに記載の制御システム。
[態様8]
前記器具駆動ジョイントが、三つのジョイントのみからなる、態様1~7のいずれかに記載の制御システム。
[態様9]
中央コントローラが、前記アームコントローラから仮想ピボット点を受信するように構成され、前記仮想ピボット点が、患者の体内にあるときに前記外科手術器具が常に通過するポート内に位置する位置である、態様1~8のいずれかに記載の制御システム。
[態様10]
前記中央コントローラが、前記アームコントローラから、前記外科手術ロボットアームの周囲環境に対する前記外科手術ロボットアームの配向の表示を受信するように構成される、態様1~9のいずれかに記載の制御システム。
[態様11]
前記中央コントローラが、前記受信した仮想ピボット点および前記受信した前記外科手術ロボットアームの前記配向の表示を使用して、前記遠位端の前記所望の位置を、前記外科手術ロボットアームの基準フレーム内の前記所望の手首位置および前記所望の器具駆動ジョイント位置に変換する、態様9に従属する態様10に記載の制御システム。
[態様12]
外科手術用のアームコントローラであって、前記外科手術ロボットアームが、遠隔外科医コンソールと、中央コントローラと、外科手術ロボットアームとを備える外科手術ロボットシステムの一部を形成し、前記外科手術ロボットアームが、基部から関節式に連結された外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイントを含み、前記アームコントローラが、前記外科手術ロボットアームと同じ場所に位置し、かつ、
前記外科手術ロボットアームの手首の所望の手首位置、および前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動する前記外科手術ロボットアームのジョイントに対する所望の器具駆動ジョイント位置を受信することと、
前記外科手術ロボットアームの前記残りのジョイントについて、前記外科手術ロボットアームの前記手首に前記所望の手首位置を取らせるように、ジョイント位置を決定することであって、前記外科手術ロボットアームの前記残りのジョイントが、前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動しないジョイントである、決定することと、
制御信号を前記外科手術ロボットアームのジョイントコントローラに送信して、前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントを前記所望の器具駆動ジョイント位置および前記決定されたジョイント位置に駆動することと、を行うように構成される、アームコントローラ。
[態様13]
前記外科手術ロボットアームの前記手首が、前記外科手術ロボットアーム上の、前記外科手術ロボットアームの遠位ジョイントのセットの回転軸が交差する、および/または前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントの回転軸が交差する所に位置しており、前記外科手術ロボットアームの前記遠位ジョイントのセットが、前記基部の遠位に位置している、態様12に記載のアームコントローラ。
[態様14]
前記遠位ジョイントのセットが、順番に、ロールジョイント、ピッチジョイント、ヨージョイント、およびさらなるロールジョイントからなる、態様13に記載のアームコントローラ。
[態様15]
前記残りのジョイントが少なくとも七つのジョイントを含む、態様12~14のいずれかに記載のアームコントローラ。
[態様16]
前記残りのジョイントが、八つの連続したジョイントを含み、前記八つの連続したジョイントが、前記基部から順番に、ロールジョイント、ピッチジョイント、ロールジョイント、ピッチジョイント、ロールジョイント、ピッチジョイント、ヨージョイント、およびロールジョイントである、態様15に記載のアームコントローラ。
[態様17]
前記決定されたジョイント位置が、前記外科手術ロボットアームが最適な構成を取るように決定され、前記最適な構成が、(i)前記残りのジョイントのうちの任意の一つのジョイントがジョイント限界の近位となることを回避する、および/または(ii)前記外科手術ロボットアームがジョイント特異性に近くなることを回避するようなものである、態様12~16のいずれかに記載のアームコントローラ。
[態様18]
態様12~17のいずれかに記載のアームコントローラであって、
仮想ピボット点を決定することであって、前記仮想ピボット点が、患者の体内にあるときに前記外科手術器具が常に通過するポート内に位置している、決定することと、
前記仮想ピボット点を前記中央コントローラに送信することと、を行うように構成される、アームコントローラ。
[態様19]
前記外科手術ロボットアームの周囲環境に対する前記外科手術ロボットアームの前記配向の表示を前記中央コントローラに送信するように構成される、態様12~18のいずれかに記載のアームコントローラ。
[態様20]
外科手術ロボットシステムであって、
外科手術ロボットアームであって、
基部から関節式に連結された外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイント、および、
前記外科手術ロボットアームと同じ場所に位置するアームコントローラを備える、外科手術ロボットアームと、
外科医入力装置を含む遠隔外科医コンソールと、
前記遠隔外科医コンソールおよび前記外科手術ロボットアームの前記アームコントローラに通信可能に結合された中央コントローラと、を備え、前記中央コントローラが、
前記外科手術器具の遠位端の所望の位置を示すコマンドを前記外科医入力装置から受信し、
前記遠位端のその所望の位置を、(i)前記外科手術ロボットアームの手首の所望の手首位置、および(ii)前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動する前記外科手術ロボットアームのジョイントに対する所望の器具駆動ジョイント位置に変換し、
前記所望の手首位置および所望の器具駆動位置をアームコントローラに送信するように構成され、
前記アームコントローラが、
前記所望の手首位置および前記所望の器具駆動ジョイント位置を受信することと、
前記外科手術ロボットアームの前記残りのジョイントについて、前記外科手術ロボットアームの前記手首に前記所望の手首位置を取らせるように、ジョイント位置を決定することであって、前記外科手術ロボットアームの前記残りのジョイントが、前記関節式に連結された外科手術器具のジョイントを駆動しないジョイントである、決定することと、
前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントを前記受信した所望のジョイント位置および前記決定されたジョイント位置に駆動することと、を行うように構成される、外科手術ロボットシステム。
図1
図2
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図9