IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジンナイの特許一覧 ▶ 株式会社セフト研究所の特許一覧

<>
  • 特開-空調衣服の服本体及び空調衣服 図1
  • 特開-空調衣服の服本体及び空調衣服 図2
  • 特開-空調衣服の服本体及び空調衣服 図3
  • 特開-空調衣服の服本体及び空調衣服 図4
  • 特開-空調衣服の服本体及び空調衣服 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175913
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】空調衣服の服本体及び空調衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20231205BHJP
   A41D 1/02 20060101ALI20231205BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20231205BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D1/02
A41D1/00 E
A41D27/28 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172542
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2019151014の分割
【原出願日】2019-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】502402881
【氏名又は名称】株式会社ジンナイ
(71)【出願人】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】杉本 公太
(57)【要約】
【課題】ファンを取り外した状態で、通常の上衣として使用し易い空調衣服の服本体及び空調衣服を提供する。
【解決手段】通気性のない又はファン2による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地Cによって、少なくとも着用者の胴部を覆う形状に形成され、ファン2を取り付けるためのファン取付孔13と、ファン2によって導入された空気を排出する空気排出部15と、を備えた服本体1であって、服本体1の外面側からファン取付孔13を覆い、ファン取付孔13へと通じる開口部183が形成された形状変更可能なファンカバー18を備え、開口部183は、ファンカバー18の形状変更によって開口面積を変更可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性のない又は空気導入手段による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地によって、少なくとも着用者の胴部を覆う形状に形成され、
前記空気導入手段を取り付けるための取付孔と、
前記空気導入手段によって導入された空気を排出する空気排出部と、
を備えた空調衣服の服本体であって、
当該空調衣服の服本体の外面側から前記取付孔を覆い、前記取付孔へと通じる開口部が形成された形状変更可能なファンカバーを備え、
前記開口部は、前記ファンカバーの形状変更によって開口面積を変更可能であることを特徴とする空調衣服の服本体。
【請求項2】
前記ファンカバーは、シート状部材によって形成されたファンカバー本体を、前記取付孔の左右及び上方において前記服地に接続するようにして形成され、
前記取付孔下方の前記服地と前記ファンカバー本体との間に、前記開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空調衣服の服本体。
【請求項3】
前記ファンカバーは、前記ファンカバーの立体形状を維持し、前記開口部を開放状態とする着脱自在な補強部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の空調衣服の服本体。
【請求項4】
前記ファンカバー本体は、前記服地と対向する面に備えられた裏地と、前記裏地と反対側の面に備えらえた表地とを有し、前記裏地と前記表地との間に収納空間が形成され、
前記補強部材は可撓性を有する材料によって板状に形成され、前記収納空間に収納されることを特徴とする請求項3に記載の空調衣服の服本体。
【請求項5】
前記ファンカバー本体は、前記収納空間を開閉自在とする開閉手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の空調衣服の服本体。
【請求項6】
前記ファンカバーの下端部近傍を前記服地に着脱自在に接続可能とする開口部固定手段を備えることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項7】
前記開口部固定手段は、前記開口部が残存した状態で、前記ファンカバーの下端部近傍を前記服地に接続することを特徴とする請求項6に記載の空調衣服の服本体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体と、
前記空調衣服の服本体の内部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段に電力を供給する電源手段と、
を備えることを特徴とする空調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調衣服の服本体及び空調衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、身体を冷却する空調衣服が実用化され、急速に普及しつつある。従来の空調衣服は、通気性の低い素材で形成された服本体と、服本体の後側の下方に取り付けられた2つのファンと、2つのファンに電力を供給するための電源装置と、電源装置と2つのファンとを電気的に接続するための電源ケーブルと、を備える。
【0003】
ファンを作動させると、大量の空気がファンから服本体内に取り込まれ、取り込まれた空気の圧力により服本体と着用者の身体との間に空気流通路が自動的に形成される。取り込まれた空気は、形成された空気流通路を着用者の身体又は下着の表面に沿って流通し、例えば、襟部や袖部の開口部に形成された空気排出部から外部に排出される。
そして、取り込まれた空気が、服本体と着用者の身体又は下着との間の空気流通路を流通する間に、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体が冷却される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような空調衣服は、雨天の場合に使用されることも想定されるところ、ファンに雨水が入ると、故障の原因となる可能性がある。そこで、服本体の外面側に、下方に開口部を残しつつファンを覆うカバー(通気ダクト)が備えられた空調衣服が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/063065号
【特許文献2】特許第4996305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空調衣服は、冬季等の空調衣服が必要とされない時期には、ファンを取り外した上で、その服本体を、空調衣服としての機能を有しない通常の上衣として使用することが考えられる。
しかし、空調衣服の服本体には、ファンを取り付けるために形成された取付孔が形成され、衣服の内部の空間と外部の空間とが繋がれている。したがって、ファンを取り外した場合、このような取付孔から外気が侵入してしまうため、保温性の確保が難しく、通常の上衣としての使用には適さなかった。
この点は、ファン覆うカバー(通気ダクト)を備えた特許文献2に記載の空調衣服においても、通気ダクトには固定的に開口部が形成されていることから、同様であった。
【0007】
本発明の課題は、ファンを取り外した状態で、通常の上衣として使用し易い空調衣服の服本体及び空調衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
通気性のない又は空気導入手段による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地によって、少なくとも着用者の胴部を覆う形状に形成され、
前記空気導入手段を取り付けるための取付孔と、
前記空気導入手段によって導入された空気を排出する空気排出部と、
を備えた空調衣服の服本体であって、
当該空調衣服の服本体の外面側から前記取付孔を覆い、前記取付孔へと通じる開口部が形成された形状変更可能なファンカバーを備え、
前記開口部は、前記ファンカバーの形状変更によって開口面積を変更可能であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空調衣服の服本体において、
前記ファンカバーは、シート状部材によって形成されたファンカバー本体を、前記取付孔の左右及び上方において前記服地に接続するようにして形成され、
前記取付孔下方の前記服地と前記ファンカバー本体との間に、前記開口部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空調衣服の服本体において、
前記ファンカバーは、前記ファンカバーの立体形状を維持し、前記開口部を開放状態とする着脱自在な補強部材を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の空調衣服の服本体において、
前記ファンカバー本体は、前記服地と対向する面に備えられた裏地と、前記裏地と反対側の面に備えらえた表地とを有し、前記裏地と前記表地との間に収納空間が形成され、
前記補強部材は可撓性を有する材料によって板状に形成され、前記収納空間に収納されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の空調衣服の服本体において、
前記ファンカバー本体は、前記収納空間を開閉自在とする開閉手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体において、
前記ファンカバーの下端部近傍を前記服地に着脱自在に接続可能とする開口部固定手段を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の空調衣服の服本体において、
前記開口部固定手段は、前記開口部が残存した状態で、前記ファンカバーの下端部近傍を前記服地に接続することを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、空調衣服において、
請求項1から7のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体と、
前記空調衣服の服本体の内部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段に電力を供給する電源手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ファンを取り外した状態で、通常の上衣として使用し易い空調衣服の服本体及び空調衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る空調衣服の第一開閉手段を開いた状態における正面図である。
図2】実施形態に係る空調衣服の第一開閉手段を閉じた状態における背面図である。
図3】実施形態に係る空調衣服の第一開閉手段を閉じた状態における側面図である。
図4】実施形態に係る空調衣服の第一開閉手段を閉じた状態における底面図である。
図5図2のV-V部における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態である空調衣服について、図1から図5に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
なお、以下においては、着用者が空調衣服100を着用した状態を基準として、着用者の前側を前、着用者の後側を後、着用者の上側を上、着用者の下側を下、着用者の右手側を右、着用者の左手側を左と定めて説明する。
【0019】
[実施形態の構成]
実施形態に係る空調衣服100は、図1に示すように、服本体1と、服本体1内部に空気を導入するファン2と、ファン2に電力を供給する電源部3と、電源部3とファン2とを接続する接続ケーブル4と、を備え、ファン2によって服本体1内に取り込まれた空気を、着用者の身体又は下着の表面に沿って流通させることで、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体を冷却するものである。
【0020】
{服本体}
服本体1は、図1から図5に示すように、通気性のない又はファン2による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地Cによって、着用者の胴部及び腕部を覆う形状に形成されている。図1から図5においては、服本体1を、フードを有するレインコート型の上衣の形状に形成しているが、服本体1の形状はこれに限られず、例えば着用者の胴部のみを覆うベスト型に形成してもよい。なお、服本体1をレインコートとしても使用可能とするためには、服本体1の服地Cは防水性を有する必要があるが、空調衣服として使用するのみであれば、防水性までは要しない。
服本体1は、第一開閉手段11と、空気漏れ防止手段12と、ファン取付孔13と、取付孔補強部材14と、空気排出部15と、電源部保持手段16と、ケーブル保持手段17と、ファンカバー18と、開口部固定手段19と、を備え、ファン取付孔13からファン2によって取り込まれた外気が、空気排出部15から排出されるように構成されている。
【0021】
(第一開閉手段)
第一開閉手段11は、服本体1を前開きとし、空調衣服100を着用する際に、服本体1の前部を開閉するためのものであり、図1及び図3から図5に示すように、服本体1の前身頃を左右に分割すると共に、その両側に例えば線ファスナー等を備えて、当該分割部分を着脱自在とすることにより形成されている。
【0022】
(空気漏れ防止手段)
空気漏れ防止手段12は、図1から図4に示すように、服本体1下部に備えられた、服本体1と着用者の身体との間の空間内の空気が服本体1の裾部から外部に漏れることを防止するための手段であり、例えば、服本体1の下部の端部付近に、ゴム紐等の伸縮性のある部材を、着用者の身体を周回するように備えることによって形成される。空調衣服100の着用時においては、空気漏れ防止手段12によって、服本体1の裾部が絞り込まれて着用者の身体に密着し、服本体1下部から空気が外部に漏れることを防止することができる。
なお、服本体1が、裾部が絞り込まれた形状に形成された場合や、服本体1の裾部をズボンに入れて使用する場合等、裾部からの空気の流出量が僅かである場合には、必ずしも空気漏れ防止手段12を備えずともよい。
【0023】
(ファン取付孔)
ファン取付孔13は、図1に示すように、服本体1を形成する服地の着用者の腰の左右に対応する位置に形成された、空調衣服100の着用時において、服本体1と着用者の身体との間の空間と、服本体1の外部の空間と、を繋ぐこととなる円形の孔部である。
ファン取付孔13を挿通するようにしてファン2を取り付けることで、ファン取付孔13を介して、外部の空気を服本体1内に取り込むことができる。
なお、ファン取付孔13が形成される位置としては、上記の位置に限られず、服本体1の側面、前面等に形成することも可能である。また、ファン取付孔13が形成される個数は、2個に限られず、これより少数又は多数のファン取付孔13を形成し、これに対応した数のファン2を取り付けてもよい。
【0024】
(取付孔補強部材)
取付孔補強部材14は、図1に示すように、例えばプラスチック等によって形成された扁平な環状の部材であり、中心にファン取付孔13と大きさが略一致する孔部141を有する。取付孔補強部材14は、孔部141がファン取付孔13に重なるように、服本体1の内面側に取り付けられる。これによって、服本体1のファン取付孔13周辺が補強され、ファン2をファン取付孔13に取り付け易くなり、また、取り付けられたファン2が外れ難くなる。
取付孔補強部材14は、服本体1を形成する服地に対し、縫合、接着等任意の方法によって取り付けることができる。また、取付孔補強部材14を服本体1の内面側から覆う裏地が備えられていてもよい。
なお、ファン2の取り付けの容易性及びファン2の外れ難さは低下するものの、取付孔補強部材14を備えない構成とすることも可能である。
【0025】
(空気排出部)
空気排出部15は、ファン2によってファン取付孔13から導入された空気を、着用者の身体又は下着に沿って流通させた後に排出するための開口部であり、図1から図5に示すように、着用者の首と服本体1の襟部の端部との間の開口部(着用者が服本体1のフードを着用した場合には、着用者の頭部とフードの端部との間の開口部)と、着用者の腕と服本体1の袖部の端部との間の開口部と、に形成される。
なお、空気排出部は、ファン2によってファン取付孔13から導入された空気を、着用者の身体又は下着に沿って流通させた後に排出できるものであればよく、その形成位置は、襟部及び袖部に限定されない。
【0026】
(電源部保持手段)
電源部保持手段16は、図1及び図5に示すように、服本体1の内面側に形成されたポケットであり、電源部3が収納される。図1及び図5においては、電源部保持手段16が、服本体1の前身頃の左側の下方の位置に備えられた場合について図示したが、これに限られず、服本体1の内面側の任意の位置に備えることが可能である。
なお、電源部保持手段16としては、必ずしもポケットを用いる必要はなく、電源部3を服本体1に装着することが可能であれば、任意の構成を採用することができる。さらに、服本体1に電源部保持手段16を備えず、例えば着用者のズボンのベルト等に電源部3をクリップ等を用いて取り付けることにより、電源部3が服本体1に装着されないようにすることも可能である。
【0027】
(ケーブル保持手段)
ケーブル保持手段17は、図1及び図5に示すように、接続ケーブル4を、服本体1の内面側に保持するための手段であり、例えば、接続ケーブル4を挿通可能な開口部を有するリング状に形成され、当該開口部に接続ケーブル4を挿通させることによって、これを保持することができるように構成されている。
【0028】
ケーブル保持手段17としては、接続ケーブル4を服本体1内面側において所定の位置に保持することができれば、種々の形状及び材料のものを使用可能であり、例えば、一般的なベルト通しのように、上下方向に長い布を上下2か所において縫い付けることにより形成することができる。また、配置位置も、図1及び図5に示すものに限られない。
【0029】
(ファンカバー)
ファンカバー18は、図2から図5に示すように、2か所のファン取付孔13のそれぞれを覆うようにして、服本体1の服地Cの外面側に取り付けられたファンカバー本体181と、ファンカバー本体181に着脱自在に取り付けられ、これを補強する補強部材182と、を備え、下側にファン取付孔13へと通じる開口部183が形成されている。
【0030】
(ファンカバー本体)
ファンカバー本体181は、図2及び図3に示すように、シート状部材を、ファン取付孔13周囲の服地Cに対し、ファン取付孔13の左右及び上方において接続するようにして形成され、シート状部材が服地Cに接続されていないファン取付孔13下方の服地Cとファンカバー本体181との間に、開口部183が形成されている。
ファンカバー本体181がシート状部材から形成されていることで、ファンカバー18は、補強部材182を取り外すことで形状変更可能であり、かつ形状変更に伴って、下方に形成された開口部183の開口面積を変更することができる。
例えば、ファンカバー本体181が広がって立体的形状となった状態では開口部183の開口面積は広くなり、ファンカバー本体181が潰れて服地Cに近接した状態では、開口部183の開口面積は狭くなる。
また、ファンカバー本体181は、ファン取付孔13右側におけるファンカバー本体181と服地Cとの接続部と、ファン取付孔13左側におけるファンカバー本体181と服地Cとの接続部との間のシート状部材の幅が、少なくともファンカバー本体181の下端部からファン取付孔13と対向する部分までの間において、ファン取付孔13右側におけるファンカバー本体181と服地Cとの接続部と、ファン取付孔13左側におけるファンカバー本体181と服地Cとの接続部との間の服地Cの幅よりも広くなるように形成されている。これによって、図4及び図5に示すように、ファンカバー18と、これと対向する服地Cとの間に、開口部183からファン取付孔13へと通じる空気流通路が形成され易くなる。
【0031】
ファンカバー本体181を形成するシート状部材は、図5に示すように、外面側に備えられた表地1811と、内面側(服本体1の服地Cと対向する側)に備えられた裏地1812とを備え、表地1811と裏地1812との間に、補強部材182を収納することができる収納空間1813が形成されている。表地1811及び裏地1812の材料としては、例えば服本体1の服地Cと同一の材料とすればよい。
【0032】
また、ファンカバー本体181の下端部付近には、表地1811と裏地1812とを着脱自在に接続し、収納空間1813を開閉自在とする第二開閉手段1814が備えられている。
図2から図4においては、第二開閉手段1814が、表地1811と裏地1812との両者の下端部付近を接続するように備えられた線ファスナーである場合について図示しているが、第二開閉手段1814の構成はこれに限られず、後述の補強部材182が落下しないように収納空間1813を閉塞可能であればよく、例えば、面ファスナーやボタン等を用いてもよい。
【0033】
(補強部材)
補強部材182は、可撓性を有する材料によって形成された略矩形状の板状の部材であり、ファンカバー本体181の収納空間1813に収納されることによって、ファンカバー本体181に着脱自在に取り付けられる。補強部材182の材料としては、例えば樹脂材料が用いられるが、可撓性を有し、これを湾曲させつつ収納空間1813に挿入可能であるとともに、補強部材182が収納空間1813に収納された状態で、その湾曲形状が維持され、ファンカバー18の立体形状を維持できる程度の強度を有するものであれば、任意の材料を用いることができる。
補強部材182は、その右端部から左端部までの幅が、ファン取付孔13右側におけるファンカバー本体181と服地Cとの接続部と、ファン取付孔13左側におけるファンカバー本体181と服地Cとの接続部との間の収納空間1813の幅と同一か、僅かに短くなるように形成されている。これによって、補強部材182を収納空間1813に収納した際に、図3から図5に示すように、ファンカバー本体181が持ち上げられ、ファンカバー18の立体形状が維持され、ファンカバー18とファン取付孔13との間に間隙が形成されると共に、開口部183が開放状態となる。
補強部材182の上下方向の長さは、収納空間1813に収納可能な長さであればよいが、ファン取付孔13から開口部183までの空気流通路を強固に形成するため、ファンカバー18の下端部から、ファン取付孔13と対向する位置まで達する長さを有することが望ましい。
【0034】
(開口部固定手段)
開口部固定手段19は、ファンカバー18の開口部183の開口面積が縮小された状態で、これを固定するための手段であり、例えばスナップボタンを用い、図4に示すように、一方をファンカバー本体181の裏地1812下端部付近の服地Cに対抗する面に備え、他方をこれと対向する位置の服地Cに備えることで、ファンカバー本体181の下端部付近を服地Cに着脱自在に接続可能とすることによって形成されている。
なお、開口部固定手段19は、スナップボタンには限られず、ファンカバー本体181の裏地1812下端部付近と、これと対向する位置の服地Cとを着脱自在に接続可能であれば、任意の構成を採用可能である。例えば、面ファスナー等を用いてもよい。
なお、開口部固定手段19としては、開口部183を完全に閉塞するものであってもよいが、スナップボタンのように、開口部固定手段19の左右に僅かに開口部が残存するものであることが、服本体1内の蒸れを防止する上では望ましい。
【0035】
{ファン}
ファン2は、図1に示すように、ファン取付孔13を挿通するようにして服本体1に取り付けられ、ファン取付孔13を通して、服本体1と着用者の身体との間の空間に空気を導入するためのものである。ファン2には、電源部3より、接続ケーブル4を通じて必要な電力が供給される。
ファン2としては、ファン取付孔13を挿通するようにして服本体1に取り付けられ、服本体1内部に空気を導入できるものであれば、任意の構成を採用可能である。
【0036】
{電源部}
電源部3は、ファン2に電力を供給するための部材であり、例えば、安全保護回路が付加されたリチウムイオン組電池が内蔵され、接続ケーブル4を通じてファン2と接続される。
電源部3は、ファン2に電力を供給することができるものであれば、その具体的な構成は任意である。
【0037】
{接続ケーブル}
接続ケーブル4は、電源部3とファン2とを接続するケーブルであり、接続ケーブル4を通じて、電源部3からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力が供給される。
接続ケーブル4は、電源部3からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力を供給できるものであればよく、その具体的な構成は任意である。また、接続ケーブル4を備えることなく、ファン2と電源部3とが直接接続される構成とすることも可能である。また、ファン2と電源部3とを一体化してもよい。
【0038】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る空調衣服100によれば、ファン取付孔13がファンカバー18によって覆われている。これによって、雨天の際にも、ファン取付孔13に取り付けられたファン2に雨水が入り難くなる。
【0039】
また、ファンカバー18は、シート状部材で形成されたファンカバー本体181を、ファン取付孔13周囲の服地Cに対し、ファン取付孔13の左右及び上方において接続するようにして形成され、ファンカバー本体181が服地Cに接続されていない下方に、ファン取付孔13へと通じる開口部183が形成されていることから、ファンカバー18を備えたことによって、空調衣服としての機能が損なわれることもない。
【0040】
また、ファンカバー本体181が、シート状部材によって形状変更可能に形成され、かつ、補強部材182は、ファンカバー本体181の収納空間1813に収納されるようにして、ファンカバー本体181に対して着脱自在に取り付けられていることから、補強部材182を取り外すことで、ファンカバー18の立体形状が維持されなくなり、その形状変更が可能となる。そして、その形状変更に伴って、開口部183の開口面積を変更することができる。
これによって、例えば、ファンカバー本体181を広げて立体的形状とした状態とすれば、開口部183の開口面積は広くなり、ファンカバー本体181を潰して服地Cに近接した状態とすれば、開口部183の開口面積は狭くなる。
したがって、開口部183を縮小し、服本体1内から漏れる空気を少なくすることができることから、服本体1を、ファン2並びにこれに電力を供給するための電源部3及び接続ケーブル4を取り外して、空調衣服としての機能を有しない通常の上衣、本実施形態においてはレインコートとして使用し易くなる。なお、本実施形態ではレインコートを例として説明したが、服本体1の、空調衣服としての機能を有しない通常の上衣としての用途は、これに限られない。
【0041】
また、服本体1が、ファンカバー本体181の裏地1812下端部付近と、これと対向する位置の服地Cとを着脱自在に接続可能とする開口部固定手段19を備えることで、ファンカバー本体181の下端部付近が服地Cに近接し、開口部183が縮小した状態でこれを固定することができ、さらに服本体内から漏れる空気を少なくすることができる。これによって、服本体1を、空調衣服としての機能を有しない通常の上衣としてさらに使用し易くなる。
【0042】
また、服本体1に、ファン2並びにこれに電力を供給するための電源部3及び接続ケーブル4が取り付けられた状態で、空調衣服100として使用する際には、補強部材182を収納空間1813に収納し、ファンカバー18を立体形状として使用することで、開口部183の開口面積が広がった状態でこれを固定することができ、ファンカバー18を備えたことによる空調衣服としての冷却効果の低下を抑制できる。
【0043】
なお、補強部材182を備えない場合も、ファン2によってファン取付孔13を介して空気が排出された場合、排出された空気によってファンカバー本体181が膨らみ、開口部183からファン取付孔13へと続く空気流通路が自動的に形成されることから、空調衣服として使用することは可能であるが、ファンカバー18がさらに補強部材182を備えることによって、予めファンカバー18を立体形状として、開口部183からファン取付孔13へと続く空気流通路を形成しておくことができることから、さらにファンカバー18によってファン2による空気の排出が阻害され難くなる。
【0044】
また、開口部固定手段19が、上記のようなスナップボタン等であれば、開口部固定手段19によって、ファンカバー本体181の下端部付近を服地Cに接続した際にも、開口部固定手段19の左右に僅かに開口部を残すことができる。したがって、ファン取付孔13によって過度に服本体1の密閉性が失われることを防止ししつつ、適度な空気流通路を残すことで、十分な保温性を確保しつつ、衣服内の蒸れを防ぐことができ、服本体1を、空調衣服としての機能を有しない通常の上衣として、より快適に使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
100 空調衣服
1 服本体
13 ファン取付孔(取付孔)
15 空気排出部
18 ファンカバー
181 ファンカバー本体
1811 表地
1812 裏地
1813 収納空間
1814 第二開閉手段(開閉手段)
182 補強部材
183 開口部
19 開口部固定手段
2 ファン(空気導入手段)
3 電源部(電源手段)
4 接続ケーブル(電源手段)
C 服地
図1
図2
図3
図4
図5