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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175960
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】皮膚症状の改善剤及び改善方法
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/02 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A61H33/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174441
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2021184083の分割
【原出願日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020189883
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】316018199
【氏名又は名称】レネロファーマ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520445510
【氏名又は名称】株式会社カモス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】靜 良治
(57)【要約】      (修正有)
【課題】皮膚症状の改善剤及び改善方法を提供する。
【解決手段】浴槽に貯留した水にバブリングにより供給されたオゾン含有気体を有効成分とする、アレルギー性皮膚炎、慢性脂漏性皮膚炎、又は被毛の光沢、脱毛、及び落屑から選ばれた少なくとも1種の症状の改善のために用いられる改善剤である。また、浴槽に水を貯留する水貯留工程と、前記浴槽に貯留された前記水にオゾンを含む気体をバブリングにより供給するオゾン供給工程と、皮膚疾患を患う動物(但し、人間を除く)の患部を前記浴槽に貯留された前記水に浸漬する浸漬工程と、を含む、アレルギー性皮膚炎、慢性脂漏性皮膚炎、又は被毛の光沢、脱毛、及び落屑から選ばれた少なくとも1種の症状の改善に適用される改善方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンを含む気体を生成するオゾン生成部と、
水を貯留可能に形成されている浴槽部と、
前記浴槽部に貯留されている前記水に前記オゾン生成部が生成した前記オゾンを含む気体を供給するオゾン供給部と、を備え、
前記浴槽部は、皮膚炎又は皮膚状態の改善が望まれる患部を前記浴槽部に貯留されている水に浸漬可能な構造をなしていることを特徴とする皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置。
【請求項2】
アレルギー性皮膚炎の改善のために用いられる請求項1に記載の皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置。
【請求項3】
慢性脂漏性皮膚炎の改善のために用いられる請求項1に記載の皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置。
【請求項4】
被毛の光沢、脱毛、落屑、体臭及び、脂性と乾燥のバランスから選ばれた少なくとも1種の症状の改善のために用いられる請求項1に記載の皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置。
【請求項5】
浴槽部に水を貯留する水貯留工程と、
貯留された水にオゾンを含む気体を供給するオゾン供給工程と、
皮膚炎又は皮膚状態の改善が望まれる動物(但し、人間を除く)の患部を前記浴槽部の水に浸漬する浸漬工程と、
を含むことを特徴とする皮膚炎及び皮膚状態改善方法。
【請求項6】
前記皮膚炎は、アレルギー性皮膚炎である請求項5に記載の皮膚炎及び皮膚状態改善方法。
【請求項7】
前記皮膚炎は、脂漏性皮膚炎である請求項5に記載の皮膚炎及び皮膚状態改善方法。
【請求項8】
被毛の光沢、脱毛、落屑、体臭及び、脂性と乾燥のバランスから選ばれた少なくとも1種の症状の改善に適用される請求項5に記載の皮膚炎及び皮膚状態改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー性皮膚炎等の皮膚炎の炎症や皮膚状態の改善をするのに有効な皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置及び皮膚炎及び皮膚状態改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚炎の治療においては、抗アレルギー剤等を含む外用剤を用いて治療が行われている。例えば、特許文献1においては、ジホモ-γ-リノレン酸(DGLA)を有効成分として含む、炎症性疾患の痒みを抑制するための皮膚外用組成物であって、炎症性疾患の発症部位にジホモ-γ-リノレン酸(DGLA)を0.01~50重量%含有する製剤を、少なくとも14日間以上継続して塗布するものであることを特徴とする、皮膚外用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-178165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、薬剤においては、強力な抗炎症作用を示すものの、副作用が懸念される。従って、薬剤の有する副作用の面などから、より安全性の高い炎症の改善手段及び皮膚状態の改善手段の登場が期待されている。
【0005】
よって、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、副作用の発現の恐れが少なく、皮膚炎の炎症を緩和することが可能な皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置、皮膚炎及び皮膚状態改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置は、オゾンを含む気体を生成するオゾン生成部と、水を貯留可能に形成されている浴槽部と、前記浴槽部に貯留されている前記水に前記オゾン生成部が生成した前記オゾンを含む気体を供給するオゾン供給部と、を備え、前記浴槽部は、皮膚炎又は皮膚状態の改善が望まれる患部を前記浴槽部に貯留されている水に浸漬可能な構造をなしていることを特徴とする。
【0007】
本発明の皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置によれば、浴槽部に貯留された水に対してバブリングを行いながらオゾンを含む気体を供給することが可能となる。その結果、浴槽部に貯留された水にオゾンを含有させることができる。そして、ユーザは、患部を浴槽部に貯留された水に浸漬することによって皮膚炎を改善させることが可能となる。
【0008】
本発明の皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置においては、アレルギー性皮膚炎改善のために用いられることが好ましい。
【0009】
本発明の皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置においては、慢性脂漏性皮膚炎改善のために用いられることが好ましい。
【0010】
本発明の皮膚炎及び皮膚状態改善用オゾンバブリング装置においては、被毛の光沢、脱毛、落屑、体臭及び、脂性と乾燥のバランスから選ばれた少なくとも1種の症状の改善のために用いられることが好ましい。
【0011】
本発明の皮膚炎及び皮膚状態改善方法は、浴槽部に水を貯留する水貯留工程と、貯留された水にオゾンを含む気体を供給するオゾン供給工程と、皮膚炎又は皮膚状態の改善が望まれる動物(但し、人間を除く)の患部を前記浴槽部の水に浸漬する浸漬工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の皮膚炎及び皮膚状態改善方法によれば、浴槽部に貯留された水に対してバブリングを行いながらオゾンを含む気体を供給することが可能となる。その結果、浴槽部に貯留された水にオゾンを含有させることができる。そして、ユーザは、患部を浴槽部に貯留された水に浸漬することによって皮膚炎を改善させることが可能となる。
【0013】
本発明の皮膚炎及び皮膚状態改善方法において、前記皮膚炎は、アレルギー性皮膚炎であることが好ましい。
【0014】
本発明の皮膚炎及び皮膚状態改善方法において、前記皮膚炎は、慢性脂漏性皮膚炎であることが好ましい。
【0015】
本発明の皮膚炎及び皮膚状態改善方法において、被毛の光沢、脱毛、落屑、体臭及び、脂性と乾燥のバランスから選ばれた少なくとも1種の症状の改善に適用されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】皮膚炎改善用オゾンバブリング装置の概念図である。
図2図1のオゾン発生部のブロック図である。
図3図1のオゾン供給部の平面図である。
図4図3のオゾン供給部の拡大平面図である。
図5】皮膚炎改善方法のフロー図である。
図6】皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による処置を行う前の前頸部の状態を示した図である。
図7】皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による1回目の処置を行った後の前頸部の状態を示した図である。
図8】皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による2回目の処置を行った後の前頸部の状態を示した図である。
図9】皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による3回目の処置を行った後の前頸部の状態を示した図である。
図10】皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による処置を行う前の尾側腹部の状態を示した図である。
図11】1回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による処置を行った後の尾側腹部の状態を示した図である。
図12】2回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による処置を行った後の尾側腹部の状態を示した図である。
図13】3回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による処置を行った後の尾側腹部の状態を示した図である。
図14】1回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による処置を行った後の前頸部状態を示した図である。
図15】21回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による処置を行った後の前頸部状態を示した図である。
図16】56回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置による処置を行った後の前頸部状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、皮膚炎改善用オゾンバブリング装置(以下、オゾンバブリング装置とも称する)100の斜視図である。図1に示すように、オゾンを含む気体を生成するオゾン生成部10と、水を貯留可能に形成されている浴槽部20と、浴槽部20に貯留されている水にオゾン生成部10が生成したオゾンを含む気体を供給するオゾン供給部30と、を有する。
【0018】
オゾン生成部10は、オゾンを含む気体を生成し、オゾン供給部30に当該気体を送り出す装置である。
【0019】
浴槽部20は、皮膚炎を有する患部を浴槽部20に貯留されている水に浸漬可能な構造をなしている。浴槽部20は、本実施形態においては、箱状に形成されている。浴槽部20は、貯留されている水に患部を水に浸漬可能であり、かつオゾン供給部30を収容可能であればよく、例えば、水槽、風呂桶等であってもよい。また、浴槽部20は、箱状に限られず袋状のものであってもよい。
【0020】
オゾン供給部30は、オゾン生成部10と接続部材40によって接続されている。オゾン供給部30は、オゾン生成部10から送り出されたオゾンを含む空気を浴槽部20の内部に供給する。
【0021】
接続部材40は、オゾン生成部10及びオゾン供給部30を接続する配管部材である。接続部材40は、気体の通路となる部材であればよく、特には限定されないが、例えば、環状のゴムホースを用いることができる。
【0022】
図2は、オゾン生成部10の構成を示している。図2に示すように、オゾン生成部10は、筐体11を有する。筐体11は、例えば、箱状に形成される。
【0023】
筐体11には、筐体11の外部から空気を取り込んで加圧された空気を排出するポンプ12が格納されている。ポンプ12は、外部からの電源の供給を受けて、一定量の空気を排出する。
【0024】
また、筐体11には、酸素を含む空気からオゾンを生成するオゾン発生器13が収容されている。オゾン発生器13は、例えば、酸素を含む空気に対して高電圧を印加して放電させることによってオゾンガスを発生(生成)させる無声放電方式の装置である。
【0025】
尚、オゾン発生器13は、オゾン発生器13は、無声放電方式の装置に限られず、例えば、電気分解方式の装置や、紫外線ランプ方式の装置であってもよい。
【0026】
オゾン発生器13は、接続部材50によってポンプ12と接続されている。接続部材50は、オゾン発生器13及びポンプ12を接続する配管部材である。接続部材50は、気体の通路となる部材であればよく、特には限定されないが、例えば、環状のゴムホースを用いることができる。
【0027】
したがって、オゾン生成部10は、オゾン発生器13が生成したオゾン及びポンプ12から送り出された空気を混合してオゾンを含む気体を生成可能である。
【0028】
また、オゾン発生器13は、接続部材40に接続されている。したがって、オゾン生成部10は、接続部材40を介してオゾン供給部30にオゾンを含む気体を送り出すことが可能である。
【0029】
オゾン発生器13は、タイマー(図示せず)を有する。オゾン発生器13は、タイマーでカウントされた時間に応じて、オゾンを発生させるようにしてもよい。例えば、オゾンバブリング装置100を所定時間稼働させる場合、オゾン発生器13を稼働させる時間をタイマーによって制御するようにしてもよい。
【0030】
尚、オゾン発生器13の稼働の制御は、このようなタイマーによるものに限られず、例えば、浴槽部20にオゾン濃度を検出する検出器を設け、浴槽部20のオゾン濃度に応じて制御してもよい。すなわち、オゾン発生部10から送出される空気のオゾン濃度を、浴槽部20のオゾン濃度に応じて調整するようにしてもよい。
【0031】
尚、筐体11には、例えば、ポンプ12及びオゾン生成器13の稼働のON又はOFFを切り替えるスイッチ(図示せず)、オゾンバブリング装置100に電源を供給する電源部(図示せず)が配されていてもよい。また、筐体11には、ポンプ12の風量を調整する調整ボタンが設けられていてもよい。
【0032】
筐体11の外部の空気を筐体11の内部に取り入れることが可能な通気孔(図示せず)を設けるとよい。当該通気孔には、空気中の埃等の不純混入を取り除くために、フィルターを設けるとよい。
【0033】
図3は、オゾン供給部30の平面を示している。図3に示すように、オゾン供給部30は、接続部材40と接続可能に形成されている接続部31及び接続部31に接続されオゾンを含む気体を放出可能な放出部32を有する。
【0034】
接続部31は、例えば、ゴムホース等の柔軟性を有する管状部材によって形成されている。接続部31は、接続部材40に接続可能な先端部31a及び放出部32に接続可能な基端部31bを有する。
【0035】
放出部32は、矩形の板状に形成されている。放出部32は、接続部31から送出されたオゾンを含む気体を供給可能な複数の供給部33を一の面(上面)に有する。
【0036】
供給部33の各々は、中空の円筒状に形成されている。供給部33の各々は、一の面上において互いに間隔を有して配されている。供給部33の各々は、本実施形態においては、7行10列に配されている。
【0037】
図4は、放出部32の拡大平面を示している。図4に示すように、供給部33の各々の一方の面には、当該一方の面を貫通する4つの貫通孔34が形成されている。従って、放出部32の内部空間は、4つの貫通孔34によって放出部32の外部と連通している。
【0038】
隣り合って配される供給部33の各々は、複数の配管35によって互いに接続されている。配管35は、接続部31の基端部31aに接続されている。したがって、接続部31からオゾンを含む気体が送出されると、当該気体は、配管35を通って複数の供給部33の貫通孔34から放出される。
【0039】
尚、放出部32の表面の裏側の面(底面)には、浴槽部20の底面に放出部32を固定可能な固定部材(図示せず)が設けられていてもよい。固定部材には、例えば、吸盤、マグネット、両面テープ、面ファスナ等を用いてもよい。
【0040】
以上で説明したオゾンバブリング装置100を用いた皮膚炎改善方法について説明する。図5は、皮膚炎改善方法の工程を示している。図5に示すように、オゾンバブリング装置100の浴槽部20に水を貯留する貯留工程が行われる(ステップS01)。
【0041】
ステップS01において、浴槽部20の底部にオゾン供給部30が配置した状態で水を貯留するとよい。水の貯留は、患部を水に浸漬させる際に十分な量があればよく特には限定されない。また、オゾンを含む気体を水に供給する観点から、水は、少なくともオゾン供給部30を覆う程度貯留するとよい。尚、水は、冷水に限られず適当な温度に調整するとよい。
【0042】
浴槽部20に貯留された水に対してオゾン供給部30からオゾンを含む気体を供給する供給工程が行われる(ステップS02)。
【0043】
ステップS02において、オゾン生成部10の筐体11に配されているスイッチを入れることにより、ポンプ12及びオゾン発生器13が稼働される。ポンプ12及びオゾン発生器13が稼働されると、オゾン生成部10からオゾンを含む気体が接続部材40を介してオゾン供給部30に送出される。
【0044】
オゾン供給部30は、オゾン生成部10から送出されたオゾンを含む気体を放出部32から放出する。水にオゾンを含む気体が供給されると、予め定めた所定の濃度に至るまでオゾンを含む気体が供給される。当該水にオゾンをバブリングさせた際に、そのオゾンに基づいて生成された過酸化水素の濃度は、0.010~0.100ppmとするとよく、0.030~0.070ppm、さらに好ましくは、0.034-0.068ppmとするとよい。
【0045】
水にオゾンをバブリングした際に、当該水に含有されているオゾンの量を測定する方法は確立されていない。一方で、当該オゾンに由来する過酸化水素の量を測定することは可能である。そこで、水の過酸化水素の含有量を測定することにより、水のオゾンの含有量を推定する。尚、学術上、オゾンに由来する過酸化水素と同等以上のオゾンの量が水に含まれていると考えられている。
【0046】
過酸化水素の量の測定には、例えば、アズワン 分光光度計ASV11D-Hを使用することができる。尚、当該水にけるオゾンの濃度(過酸化水素の濃度)が所定の濃度に達した際には、上述のオゾンの濃度(過酸化水素の濃度)を調整するために、オゾンの供給量を調整する制御を行うようにするとよい。
【0047】
皮膚炎を有する動物(但し、人間を除く)の患部を浴槽部20の水に浸漬する浸漬工程が行われる(ステップS03)。
【0048】
患部を水に浸漬させる時間は、当該水のオゾンの濃度及び患部の皮膚の状態応じて変更するとよい。例えば患部を水に浸漬させる時間は、1~60分、好ましくは、5~30分、より好ましくは、10~20分とするとよい。
【0049】
尚、頭部等の水に浸漬し続けることが困難な部位に患部がある場合には、オゾンを含む気体が供給された水を当該患部にかけるようにしてもよい。例えば、オゾンを含む気体を含む水をシャワー、手桶等によって患部にかけるようにしてもよい。
【0050】
本発明の皮膚炎改善方法は、アレルギー性皮膚炎及び脂漏性皮膚炎に対して特に有効である。
【0051】
以上のように、本発明のオゾンバブリング装置100によれば、浴槽部20に貯留された水に対してバブリングを行いながらオゾンを含む気体を供給することが可能となる。その結果、浴槽部20に貯留された水にオゾンを含有させることができる。
【0052】
また、本発明の皮膚炎改善方法及び皮膚状態の改善方法によれば、ユーザは、患部を浴槽部20に貯留された水に浸漬することによって皮膚炎及び皮膚状態を改善させることが可能となる。
【実施例0053】
[試験例1](アレルギー性皮膚炎に対する効果の検証)
マルチーズが患っているアレルギー性皮膚炎に対する効果を検証した。
【0054】
皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100にアレルギー性皮膚炎の患部を10~20分間浸漬させる処置を定期的に行い、その患部の経過を観察した。尚、オゾンバブリング装置が発生するオゾンガスの濃度は1.25~1.50ppmとした。
【0055】
図6は、皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行う前の患部(右側頸部)の状態を示している。図7は、1回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行った後の患部(右側頸部)状態を示している。図8は、2回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行った後の患部(右側頸部)状態を示している。図9は、3回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行った後の患部(右側頸部)状態を示している。尚、図中の数字は、撮影した日時を表している。
【0056】
図6乃至9に示すように、右側頸部のアレルギー性皮膚炎は、処置の回数が増すごとに患部の領域が狭くなっていることから、症状が緩和されていることが確認された。また、
患部周辺においては、処置後から徐々に被毛の発現が確認された。
【0057】
図10は、皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行う前の患部(尾側腹部)の状態を示している。図11は、1回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行った後の患部(尾側腹部)状態を示している。図12は、2回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行った後の患部(尾側腹部)状態を示している。図13は、3回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行った後の患部(尾側腹部)状態を示している。尚、図中の数字は、撮影した日時を表している。
【0058】
図10乃至13に示すように、尾側腹部のアレルギー性皮膚炎は、処置の回数が増すごとに患部の領域が狭くなっていることから、症状が緩和されていることが確認された。また、患部周辺においては、処置後から徐々に被毛の発現が確認された。
【0059】
以上のように、皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置は、その患部の位置によらずアレルギー性皮膚炎の症状が緩和されることが確認された。
[試験例2](脂漏性皮膚炎に対する効果の検証)
シーズーが患っている脂漏性皮膚炎に対する効果を検証した。
【0060】
皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100に脂漏性皮膚炎の患部を10分間浸漬させる処置を定期的に行い、その患部の経過を観察した。尚、水のオゾンを含む気体の濃度は、0.1ppm未満とした。また、当該水の温度は35~37℃とした。
【0061】
尚、この処置は、1週間に1回の頻度で行い、30回実施後に処置を停止した。その後、数か月間は洗浄のみを行う経過観察した後に、再度この処置を1週間に1回の頻度で行った。
【0062】
図14は1回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行った後の患部(左前腕部)状態を示している。図15は、21回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行った後の患部(左前腕部)状態を示している。図16は、56回目の皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100による処置を行った後の患部(左前腕部)状態を示している。尚、図中の数字は、撮影した日時を表している。
【0063】
図14乃至16に示すように、左前腕部の脂漏性皮膚炎は、処置の回数が増すごとに患部の領域が狭くなっていることから、症状が緩和されていることが確認された。また、患部周辺においては、処置後から徐々に被毛の発現が確認された。
【0064】
また、観察者の記録によると、この処置を実施した直後から腹部を中心とした患部のかゆみが減少した。実施を10回行った頃においては、患部の脂漏と鱗屑に顕著な改善がみられた。
【0065】
これに対して、処置の実施を停止すると、脂漏の悪化がみられ、かつかゆみが増加した。処置の再開後であって、処置を10回実施した後においては、患部の脂漏が改善し、鱗屑が消退した。処置の再開後であって、処置を30回実施した後においては、皮疹が略治した。
【0066】
以上のように、皮膚炎改善用オゾンバブリング装置100及び皮膚炎改善方法は、アレルギー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎をはじめとする皮膚炎に対して症状を緩和する効果が確認された。
[試験例3](皮膚状態に対する効果の検証) 皮膚疾患を患っている犬に対して、オゾンバブリング装置を用いて施術を行い、施術前後の皮膚状態の観察を行った。尚、施術については、試験例2と同一の条件であるので説明を省略する。
【0067】
試験の対象は、6歳から15歳の14頭の犬とした。試験対象の犬の性別は、雄が5頭(うち2頭が未去勢)、雌が9頭(うち2頭が未避妊)であった。試験対象の犬種は、シーズー、トイプードル、パグ、柴犬、チワワ、フレンチブルドッグ、及びミニチュアダックスフンドであった。
【0068】
試験の対象の犬は、14頭のうちの10頭が脂漏性皮膚炎を患い、6頭が膿皮症を患い、14頭のうちの2頭が脂漏性皮膚炎及び膿皮症の両方を患っていた。
【0069】
試験の評価は、施術前、施術直後、および施術7日経過後において、被毛の光沢、脱毛、落屑、体臭及び、皮膚バランスの項目について主治医が評価した。被毛の光沢、脱毛、落屑、体臭及び、皮膚バランスの項目ついては、以下の指標によって評価した。尚、これらの評価項目は、皮膚炎の状態(症状の度合い)に相関関係があり、皮膚炎の改善と共にこれらの評価項目についても改善される傾向がある。
[被毛の光沢]
被毛の光沢について、以下の基準にしたがって評価を行った。点数が高くなるほど、被毛の光沢の状態は良好である。
【0070】
評価基準
1: 非常にくすんでいる
2: くすんでいる
3: ややくすんでいる
4: 正常
5: やや光沢がある
6: 光沢がある
7: 非常に光沢がある
[脱毛]
脱毛の度合いについて、以下の基準にしたがって評価を行った。点数が高くなるほど、脱毛の度合いが軽度となる。
【0071】
評価基準
1: 非常に重度
2: 重度
3: やや重度
4: 中程度
5: 軽度
6: 少ない
7: なし
[落屑]
いわゆる「フケ」である落屑の度合いについて、以下の基準にしたがって評価を行った。点数が高くなるほど、落屑の度合いが軽度となる。
【0072】
評価基準
1: 非常に重度
2: 重度
3: やや重度
4: 中程度
5: 軽度
6: 少ない
7: なし
[体臭]
体臭の度合いについて、以下の基準にしたがって評価を行った。点数が高くなるほど体臭の度合いが良好となる。
【0073】
評価基準
1: 非常に受け入れられない
2: 受け入れられない
3: 受け入れられる
4: なし
5: やや快いにおい
6: 快いにおい
7: 非常に快いにおい
[皮膚バランス(脂性と乾燥のバランス)]
皮膚の状態について、脂性と乾燥のバランスの観点から評価した。点数が高くなるほど、皮膚の状態のバランスがよい。
【0074】
評価基準
1: 非常に脂性又は、非常に乾燥
2: 脂性又は、乾燥
3: やや脂性又は、やや乾燥
4: 正常
各々の評価項目の平均点を表1に示す。
【0075】
【表1】
表1に示されるように、被毛の光沢、脱毛、落屑、体臭及び、皮膚バランスの全ての項目において、施術直後は施術前よりも高い評価が得られた。また、施術7日経過後においても、施術前よりも高い評価が得られた。
【0076】
表1の各評価の平均値について、下記式によって表される最高値比(%)を求めた。最高値比(%)は、最も高い評価点に対する平均値の比を百分率で表したものである。言い換えれば、各項目の評価の幅を示す指標であり、最高値比が高いほど、評価のばらつきが少ないと評価できる。各最高値比(%)については、表2に示す。
最高値比(%)=(平均値/最高値)×100
【0077】
【表2】
表2に示されるように、皮膚バランスについては、施術直後及び施術7日経過後の最高値比(%)が非常に高く、数値のばらつきの少ないデータであると評価できる。言い換えれば、特に、皮膚バランスについては皮膚状態の改善効果が個体差によらず得ることができる。
【0078】
表1の各評価について、下記式によって表される皮膚状態の改善の度合いを示す改善率(%)を求めた。改善率(%)は、施術前を基準として施術直後の改善の度合い及び、施術7日経過後の改善の度合いを百分率で表したものである。
【0079】
施術直後: 100×(施術直後の平均値-施術前平均値)/施術前平均値
施術7日経過後: 100×(施術7日経過後の平均値-施術前平均値)/施術前平均値
【0080】
【表3】
表3に示されるように、被毛の光沢、脱毛、落屑、体臭及び、皮膚バランスの全ての項目において、施術直後において改善傾向が見られた。また、被毛の光沢、落屑、体臭及び、皮膚バランスの評価は、施術7日経過後において、施術直後よりも改善率が低下するものの、改善傾向がみられていた。特に、体臭及び、皮膚バランスの項目は、施術から時間が経過しても高い改善率(%)を維持しているといえ、持続効果が高いといえる。また脱毛の施術7日経過後の改善率(%)は、施術直後よりも高い。したがって、脱毛については、施術から一定期間経過後に効果が表れやすい傾向が見られた。なお、有害事象は1例もなく、試験を中止した症例もなかった。以上により、本実施形態のオゾンバブリング装置を術に用いることにより、皮膚状態の改善効果が期待できるといえる。
【符号の説明】
【0081】
100 皮膚炎改善用オゾンバブリング装置
10 オゾン生成部
20 浴槽部
30 オゾン供給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に貯留した水にバブリングにより供給されたオゾン含有気体を有効成分とするアレルギー性皮膚炎の改善剤
【請求項2】
浴槽に貯留した水にバブリングにより供給されたオゾン含有気体を有効成分とする慢性脂漏性皮膚炎の改善剤
【請求項3】
浴槽に貯留した水にバブリングにより供給されたオゾン含有気体を有効成分とする被毛の光沢、脱毛、及び屑から選ばれた少なくとも1種の症状の改善のために用いられる改善剤
【請求項4】
槽に水を貯留する水貯留工程と、
前記浴槽に貯留された前記水にオゾンを含む気体をバブリングにより供給するオゾン供給工程と、
アレルギー性皮膚炎を患う動物(但し、人間を除く)の患部を前記浴槽部に貯留された前記水に浸漬する浸漬工程と、
を含むことを特徴とするアレルギー性皮膚炎の改善方法。
【請求項5】
浴槽に水を貯留する水貯留工程と、
前記浴槽に貯留された前記水にオゾンを含む気体をバブリングにより供給するオゾン供給工程と、
慢性脂漏性皮膚炎を患う動物(但し、人間を除く)の患部を前記浴槽に貯留された前記水に浸漬する浸漬工程と、
を含むことを特徴とする慢性脂漏性皮膚炎の改善方法
【請求項6】
浴槽に水を貯留する水貯留工程と、
前記浴槽に貯留された前記水にオゾンを含む気体をバブリングにより供給するオゾン供給工程と、
皮膚疾患を患う動物(但し、人間を除く)の患部を前記浴槽に貯留された前記水に浸漬する浸漬工程と、
を含むことを特徴とする被毛の光沢、脱毛、及び屑から選ばれた少なくとも1種の症状の改善に適用される改善方法。