IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社半導体エネルギー研究所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175961
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10B 12/00 20230101AFI20231205BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231205BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231205BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20231205BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231205BHJP
   H10B 41/70 20230101ALI20231205BHJP
【FI】
H10B12/00 801
H10B12/00 671Z
H01L29/78 371
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 H
H01L27/092 G
H01L27/092 K
H01L29/78 613B
H01L29/78 618B
H01L29/78 618F
H10B41/70
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174472
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2022053511の分割
【原出願日】2010-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2009249330
(32)【優先日】2009-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2010012619
(32)【優先日】2010-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電力の供給がない場合であっても、極めて長期にわたり記憶内容を保持する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1の配線~第4の配線と、第1のゲート電極、第1のソース電極および第1のドレイン電極を有する第1のトランジスタ160と、第2のゲート電極、第2のソース電極および第2のドレイン電極を有する第2のトランジスタ162と、を有し、第1のトランジスタは、半導体材料を含む基板に設けられ、第2のトランジスタは酸化物半導体層を含んで構成され、第1のゲート電極と、第2のソース電極または第2のドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第1の配線と、第1のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線と、第1のドレイン電極とは、電気的に接続され、第3の配線と、第2のソース電極または第2のドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線と、第2のゲート電極とは、電気的に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の回路を有し、
前記回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタは、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタは、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第1のチャネル形成領域は、シリコンを有し、
前記第2のチャネル形成領域は、酸化物半導体を有し、
前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極として機能する第1の導電層は、前記第1のトランジスタのゲート電極として機能する第2の導電層の上面と接する領域を有し、
平面視において、前記容量素子は、前記第1のトランジスタの前記第1のチャネル形成領域と重なる領域を有する、半導体装置。
【請求項2】
マトリクス状に配置された複数の回路を有し、
前記回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタは、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタは、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第1のチャネル形成領域は、シリコンを有し、
前記第2のチャネル形成領域は、酸化物半導体を有し、
前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極として機能する第1の導電層は、前記第1のトランジスタのゲート電極として機能する第2の導電層の上面と接する領域を有し、
平面視において、前記容量素子は、前記第1のトランジスタの前記第1のチャネル形成領域と重なる領域を有する、
前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ及び前記容量素子上に、配線として機能する第3の導電層が設けられ、
前記第3の導電層は、前記第1のトランジスタの前記第1のチャネル形成領域と電気的に接続されている半導体装置。
【請求項3】
マトリクス状に配置された複数の回路を有し、
前記回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタは、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタは、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第1のチャネル形成領域は、シリコンを有し、
前記第2のチャネル形成領域は、酸化物半導体を有し、
前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極として機能する第1の導電層は、前記第1のトランジスタのゲート電極として機能する第2の導電層の上面と接する領域を有し、
平面視において、前記容量素子は、前記第1のトランジスタの前記第1のチャネル形成領域と重なる領域を有する、
前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ及び前記容量素子上に、配線として機能する第3の導電層が設けられ、
前記第3の導電層は、前記第1のトランジスタの前記第1のチャネル形成領域と電気的に接続され、
平面視において、前記第3の導電層は、前記第2のトランジスタの前記第2のチャネル形成領域と重なる領域を有する半導体装置。
【請求項4】
マトリクス状に配置された複数の回路を有し、
前記回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタは、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタは、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第1のチャネル形成領域は、シリコンを有し、
前記第2のチャネル形成領域は、酸化物半導体を有し、
前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極として機能する第1の導電層は、前記第1のトランジスタのゲート電極として機能する第2の導電層の上面と接する領域を有し、
平面視において、前記容量素子は、前記第1のトランジスタの前記第1のチャネル形成領域と重なる領域を有する、
前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ及び前記容量素子上に、配線として機能する第3の導電層が設けられ、
前記第3の導電層は、前記第1のトランジスタの前記第1のチャネル形成領域と電気的に接続され、
平面視において、前記第3の導電層は、前記第2のトランジスタの前記第2のチャネル形成領域と重なる領域を有し、
平面視において、前記第1のトランジスタのゲート電極は、前記第2のトランジスタのゲート電極と重なりを有さない、半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項において、
前記第1のチャネル形成領域は半導体層に形成される、半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項において、
前記第2のトランジスタは、オフ電流が1×10-13A以下である、半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項において、
前記酸化物半導体は、二次イオン質量分析法で測定した水素濃度が5×1019atoms/cm以下である、半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、
前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極は、前記酸化物半導体と接する領域を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する発明は、半導体素子を利用した半導体装置およびその作製方法に関するものであ
る。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を利用した記憶装置は、電力の供給がなくなると記憶内容が失われる揮発性記
憶装置と、電力の供給がなくなっても記憶内容は保持される不揮発性記憶装置とに大別さ
れる。
【0003】
揮発性記憶装置の代表的な例としては、DRAM(Dynamic Random Ac
cess Memory)がある。DRAMは、記憶素子を構成するトランジスタを選択
してキャパシタに電荷を蓄積することで、情報を記憶する。
【0004】
上述の原理から、DRAMでは、情報を読み出すとキャパシタの電荷は失われることにな
るため、データの読み込みの度に、再度の書き込み動作が必要となる。また、記憶素子を
構成するトランジスタにはリーク電流が存在し、トランジスタが選択されていない状況で
も電荷が流出、または流入するため、データの保持期間が短い。このため、所定の周期で
再度の書き込み動作(リフレッシュ動作)が必要であり、消費電力を十分に低減すること
は困難である。また、電力の供給がなくなると記憶内容が失われるため、長期間の記憶の
保持には、磁性材料や光学材料を利用した別の記憶装置が必要となる。
【0005】
揮発性記憶装置の別の例としてはSRAM(Static Random Access
Memory)がある。SRAMは、フリップフロップなどの回路を用いて記憶内容を
保持するため、リフレッシュ動作が不要であり、この点においてはDRAMより有利であ
る。しかし、フリップフロップなどの回路を用いているため、記憶容量あたりの単価が高
くなるという問題がある。また、電力の供給がなくなると記憶内容が失われるという点に
ついては、DRAMと変わるところはない。
【0006】
不揮発性記憶装置の代表例としては、フラッシュメモリがある。フラッシュメモリは、ト
ランジスタのゲート電極とチャネル形成領域との間にフローティングゲートを有し、当該
フローティングゲートに電荷を保持させることで記憶を行うため、データの保持期間は極
めて長く(半永久的)、揮発性記憶装置で必要なリフレッシュ動作が不要であるという利
点を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、書き込みの際に生じるトンネル電流によって記憶素子を構成するゲート絶縁層が
劣化するため、書き込みを何度も繰り返すことで、記憶素子が機能しなくなるという問題
が生じる。この問題を回避するために、例えば、各記憶素子の書き込み回数を均一化する
手法が採られるが、これを実現するためには、複雑な周辺回路が必要になってしまう。そ
して、このような手法を採用しても、根本的な寿命の問題が解消するわけではない。つま
り、フラッシュメモリは、情報の書き換え頻度が高い用途には不向きである。
【0008】
また、フローティングゲートに電荷を注入し、または、その電荷を除去するためには、高
い電圧が必要である。さらに、電荷の注入、または除去のためには比較的長い時間を要し
、書き込み、消去の高速化が容易ではないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭57-105889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の問題に鑑み、開示する発明の一態様では、電力が供給されない状況でも記憶内容の
保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い、新たな構造の半導体装置を提供する
ことを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、酸化物半導体を用いて形成されるトランジスタと、それ以外の材料を
用いて形成されるトランジスタとの積層構造に係る半導体装置である。例えば、次のよう
な構成を採用することができる。
【0012】
本発明の一態様は、第1の配線(ソース線)と、第2の配線(ビット線)と、第3の配線
(第1信号線)と、第4の配線(第2信号線)と、第1のゲート電極、第1のソース電極
、および第1のドレイン電極を有する第1のトランジスタと、第2のゲート電極、第2の
ソース電極、および第2のドレイン電極を有する第2のトランジスタと、を有し、第1の
トランジスタは、半導体材料を含む基板に設けられ、第2のトランジスタは酸化物半導体
層を含んで構成され、第1のゲート電極と、第2のソース電極または第2のドレイン電極
の一方とは、電気的に接続され、第1の配線(ソース線)と、第1のソース電極とは、電
気的に接続され、第2の配線(ビット線)と、第1のドレイン電極とは、電気的に接続さ
れ、第3の配線(第1信号線)と、第2のソース電極または第2のドレイン電極の他方と
は、電気的に接続され、第4の配線(第2信号線)と、第2のゲート電極とは、電気的に
接続された半導体装置である。
【0013】
上記において、第1のトランジスタは、半導体材料を含む基板に設けられたチャネル形成
領域と、チャネル形成領域を挟むように設けられた不純物領域と、チャネル形成領域上の
第1のゲート絶縁層と、第1のゲート絶縁層上の第1のゲート電極と、不純物領域と電気
的に接続する第1のソース電極および第1のドレイン電極と、を有する。
【0014】
また、上記において、第2のトランジスタは、半導体材料を含む基板上の第2のゲート電
極と、第2のゲート電極上の第2のゲート絶縁層と、第2のゲート絶縁層上の酸化物半導
体層と、酸化物半導体層と電気的に接続する第2のソース電極および第2のドレイン電極
と、を有する。
【0015】
また、上記において、半導体材料を含む基板としては、単結晶半導体基板またはSOI基
板を採用するのが好適である。特に、半導体材料はシリコンとするのが好適である。
【0016】
また、上記において、酸化物半導体層は、In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体材料を
含むことが好適である。特に、酸化物半導体層は、InGaZnOの結晶を含むこ
とが好適である。さらに、酸化物半導体層の水素濃度は5×1019atoms/cm
以下とすることが好適である。また、第2のトランジスタのオフ電流は1×10-13
以下とすることが好適である。また、第2のトランジスタのオフ電流は1×10-20
以下とするとより好適である。
【0017】
また、上記において、第2のトランジスタは、第1のトランジスタと重畳する領域に設け
られた構成とすることができる。
【0018】
なお、本明細書において「上」や「下」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」ま
たは「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電
極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外
しない。また、「上」「下」という用語は説明の便宜のために用いる表現に過ぎず、特に
言及する場合を除き、その上下を入れ替えたものも含む。
【0019】
また、本明細書において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的に
限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり
、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電極」
や「配線」が一体となって形成されている場合などをも含む。
【0020】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や
、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため
、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いること
ができるものとする。
【0021】
なお、本明細書において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」
を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」
は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0022】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線はもちろんのこと、トラ
ンジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機
能を有する素子などが含まれる。
【0023】
また、一般に「SOI基板」は絶縁表面上にシリコン半導体層が設けられた構成の基板を
いうが、本明細書においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体層が設け
られた構成の基板をも含む概念として用いる。つまり、「SOI基板」が有する半導体層
は、シリコン半導体層に限定されない。また、「SOI基板」における基板は、シリコン
ウェハなどの半導体基板に限らず、ガラス基板や石英基板、サファイア基板、金属基板な
どの非半導体基板をも含む。つまり、絶縁表面を有する導体基板や絶縁体基板上に半導体
材料からなる層を有するものも、広く「SOI基板」に含まれる。さらに、本明細書にお
いて、「半導体基板」は、半導体材料のみからなる基板を指すに留まらず、半導体材料を
含む基板全般を示すものとする。つまり、本明細書においては「SOI基板」も広く「半
導体基板」に含まれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様では、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタを有し、上部
に酸化物半導体を用いたトランジスタを有する半導体装置が提供される。
【0025】
酸化物半導体を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、これを用いることに
より極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動
作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となる
ため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても
、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0026】
また、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。さらに、トラ
ンジスタのオン状態、オフ状態の切り替えによって、情報の書き込みが行われるため、高
速動作も容易に実現しうる。また、トランジスタに入力する電位を制御することで情報の
書き換えが可能であるため、情報を消去するための動作が不要であるというメリットもあ
る。
【0027】
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、酸化物半導体を用いたトランジ
スタと比較して、さらなる高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の
読み出しを高速に行うことが可能である。
【0028】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタと、酸化物半導体を用いたト
ランジスタとを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】半導体装置を説明するための回路図
図2】半導体装置を説明するための断面図および平面図
図3】半導体装置の作製工程を説明するための断面図
図4】半導体装置の作製工程を説明するための断面図
図5】半導体装置の作製工程を説明するための断面図
図6】半導体装置を説明するための断面図
図7】半導体装置を説明するための断面図
図8】半導体装置を説明するための断面図
図9】半導体装置を説明するための断面図
図10】半導体装置を用いた電子機器を説明するための図
図11】酸化物半導体を用いた逆スタガー型のトランジスタの縦断面図
図12図11のA-A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)
図13】(A)ゲート(GE1)に正の電位(+V)が与えられた状態を示し、(B)ゲート(GE1)に負の電位(-V)が与えられた状態を示す図
図14】真空準位と金属の仕事関数(φ)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係を示す図
図15】半導体装置を説明するための回路図
図16】半導体装置を説明するための回路図
図17】半導体装置を説明するための回路図
図18】半導体装置を説明するための回路図
図19】半導体装置を説明するための回路図
図20】電位の関係を示すタイミングチャート
図21】半導体装置を説明するための回路図
図22】半導体装置を説明するための断面図および平面図
図23】半導体装置を説明するための断面図
図24】半導体装置を説明するための断面図
図25】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図
図26】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性評価用回路図
図27】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性評価用タイミングチャート
図28】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図
図29】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図
図30】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図
図31】メモリウィンドウ幅の調査結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および
詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下
に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0031】
なお、図面において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解を容易にするため、
実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。よって、必ずしも、図面に開
示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0032】
なお、本明細書における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同を
避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の構成および作製方法につい
て、図1乃至図9を参照して説明する。
【0034】
<半導体装置の回路構成>
図1には、半導体装置の回路構成の一例を示す。当該半導体装置は、酸化物半導体以外の
材料(例えばシリコン)を用いたトランジスタ160と酸化物半導体を用いたトランジス
タ162によって構成される。なお、以下において、図1に示す半導体装置をメモリセル
と呼ぶ場合がある。
【0035】
ここで、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはド
レイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の配線(1st Line
:ソース線SLとも呼ぶ)とトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、
第2の配線(2nd Line:ビット線BLとも呼ぶ)とトランジスタ160のドレイ
ン電極とは、電気的に接続されている。そして、第3の配線(3rd Line:第1信
号線S1とも呼ぶ)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、
電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2信号線S2とも呼ぶ)と、トラ
ンジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。
【0036】
酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160は、酸化物半導体を用いたトランジ
スタと比較して、さらなる高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の
読み出しなどを高速に行うことが可能である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタ
162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ1
62をオフ状態とすることで、トランジスタ160のゲート電極の電位を極めて長時間に
わたって保持することが可能である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタ162で
は、短チャネル効果が現れにくいというメリットもある。
【0037】
ゲート電極の電位を保持することができるという特徴を生かすことで、次のように、情報
の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0038】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、ト
ランジスタ162がオン状態となる電位として、トランジスタ162をオン状態とする。
これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極に与えられる(書き
込み)。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位として
、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極の
電位が保持される(保持)。
【0039】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいから、トランジスタ160のゲート電極の
電位は長時間にわたって保持される。例えば、トランジスタ160のゲート電極の電位が
トランジスタ160をオン状態とする電位であれば、トランジスタ160のオン状態が長
時間にわたって保持されることになる。また、トランジスタ160のゲート電極の電位が
トランジスタ160をオフ状態とする電位であれば、トランジスタ160のオフ状態が長
時間にわたって保持される。
【0040】
次に、情報の読み出しについて説明する。上述のように、トランジスタ160のオン状態
またはオフ状態が保持された状態において、第1の配線に所定の電位(低電位)が与えら
れると、トランジスタ160のオン状態またはオフ状態に応じて、第2の配線の電位は異
なる値をとる。例えば、トランジスタ160がオン状態の場合には、第1の配線の電位の
影響を受けて、第2の配線の電位が低下することになる。逆に、トランジスタ160がオ
フ状態の場合には、第2の配線の電位は変化しない。
【0041】
このように、情報が保持された状態において、第2の配線の電位を所定の電位と比較する
ことで、情報を読み出すことができる。
【0042】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込みおよび
保持と同様に行われる。つまり、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態と
なる電位として、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位
(新たな情報に係る電位)が、トランジスタ160のゲート電極に与えられる。その後、
第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位として、トランジスタ1
62をオフ状態とすることにより、新たな情報が保持された状態となる。
【0043】
このように、開示する発明に係る半導体装置は、再度の情報の書き込みによって直接的に
情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされ
る消去動作が不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。
つまり、半導体装置の高速動作が実現される。
【0044】
酸化物半導体を用いた書き込み用トランジスタ162のオフ電流は極めて小さく、トラン
ジスタ160のゲート電極の電位は長時間にわたって保持される。このため、例えば、従
来のDRAMで必要とされたリフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動
作の頻度を極めて低く(例えば、一ヶ月~一年に一回程度)することが可能である。この
ように、開示する発明の半導体装置は、実質的な不揮発性記憶装置としての特徴を備えて
いる。
【0045】
また、開示する発明の半導体装置は従来のDRAMとは異なり、読み出しによって情報が
失われることがないため、読み出しの度に再び情報を書き込む必要もない。このように、
DRAMと比較して情報の書き込みの頻度を著しく低減することができるため、消費電力
を十分に抑制することが可能である。
【0046】
また、開示する発明の半導体装置は、半導体装置への再度の情報の書き込みによって直接
的に情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要と
される消去動作が不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができ
る。つまり、半導体装置の高速動作が実現される。また、従来のフローティングゲート型
トランジスタで書き込みや消去の際に必要とされた高い電圧を必要としないため、半導体
装置の消費電力をさらに低減することができる。
【0047】
また、開示する発明に係る半導体装置は、書き込み用トランジスタと読み出し用トランジ
スタと、を少なくとも含んでいればよく、1メモリセルあたり6つのトランジスタを必要
とするSRAMなどと比較して、メモリセルあたりの面積を十分に小さくすることが可能
である。このため、半導体装置を高密度に配置することができる。
【0048】
また、従来のフローティングゲート型トランジスタでは、書き込み時にゲート絶縁膜(ト
ンネル絶縁膜)中を電荷が移動するために、当該ゲート絶縁膜(トンネル絶縁膜)の劣化
が不可避であった。しかしながら、本発明の一態様に係るメモリセルにおいては、書き込
み用トランジスタのスイッチング動作により情報の書き込みがなされるため、従来問題と
されていたゲート絶縁膜の劣化を解消することができる。これは、原理的な書き込み回数
の制限が存在せず、書き換え耐性が極めて高いことを意味するものである。例えば、1×
10回(10億回)以上の書き込み後であっても、電流-電圧特性に劣化が見られない
【0049】
なお、酸化物半導体を用いた書き込み用トランジスタ162の電界効果移動度は、オン状
態において、3cm/Vs以上250cm/Vs以下、好ましくは5cm/Vs以
上200cm/Vs以下、より好ましくは10cm/Vs以上150cm/Vs以
下とする。また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、サブスレッショルドスイング値
(S値)が0.1V/dec.以下となるようにする。このようなトランジスタを用いる
ことにより、情報の書き込みに要する時間を十分に短くすることができる。
【0050】
また、酸化物半導体を用いた書き込み用トランジスタ162のチャネル長Lは10nm以
上400nm以下とするのが好ましい。このようなチャネルサイズとすることで、トラン
ジスタの動作の高速化、低消費電力化、高集積化など、様々な効果を得ることができる。
【0051】
なお、読み出し用トランジスタ160には、結晶性のシリコンを用いたトランジスタを適
用するのが好ましい。特に、読み出し動作の高速化の観点からは、単結晶シリコンを用い
たnチャネル型のトランジスタを用いるのがよい。このような単結晶シリコントランジス
タは、例えば、バルクシリコン(いわゆるシリコンウェハ)を用いて形成することができ
る。
【0052】
なお、上記説明は、n型トランジスタ(nチャネル型トランジスタ)を用いる場合につい
てのものであるが、n型トランジスタに代えて、p型トランジスタを用いることができる
のはいうまでもない。
【0053】
<半導体装置の平面構成および断面構成>
図2は、上記半導体装置の構成の一例である。図2(A)には、半導体装置の断面を、図
2(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図2(A)は、図2(B)
の線A1-A2および線B1-B2における断面に相当する。図2(A)および図2(B
)に示される半導体装置は、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160
を有し、上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ162を有するものである。なお、ト
ランジスタ160およびトランジスタ162は、いずれもn型トランジスタとして説明す
るが、p型トランジスタを採用しても良い。特に、トランジスタ160は、p型とするこ
とが容易である。
【0054】
トランジスタ160は、半導体材料を含む基板100に設けられたチャネル形成領域11
6と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域114および高濃度不
純物領域120(これらをあわせて単に不純物領域とも呼ぶ)と、チャネル形成領域11
6上に設けられたゲート絶縁層108と、ゲート絶縁層108上に設けられたゲート電極
110と、不純物領域114と電気的に接続するソース電極またはドレイン電極130a
、ソース電極またはドレイン電極130bを有する。
【0055】
ここで、ゲート電極110の側面にはサイドウォール絶縁層118が設けられている。ま
た、基板100の、断面図に示すように、サイドウォール絶縁層118と重ならない領域
には、高濃度不純物領域120を有し、高濃度不純物領域120上には金属化合物領域1
24が存在する。また、基板100上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁
層106が設けられており、トランジスタ160を覆うように、層間絶縁層126および
層間絶縁層128が設けられている。ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電
極またはドレイン電極130bは、層間絶縁層126および層間絶縁層128に形成され
た開口を通じて、金属化合物領域124と電気的に接続されている。つまり、ソース電極
またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電極130bは、金属化合物領
域124を介して高濃度不純物領域120および不純物領域114と電気的に接続されて
いる。また、ゲート電極110には、ソース電極またはドレイン電極130aやソース電
極またはドレイン電極130bと同様に設けられた電極130cが電気的に接続されてい
る。
【0056】
トランジスタ162は、層間絶縁層128上に設けられたゲート電極136dと、ゲート
電極136d上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上に設けられた
酸化物半導体層140と、酸化物半導体層140上に設けられ、酸化物半導体層140と
電気的に接続されているソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレ
イン電極142bと、を有する。
【0057】
ここで、ゲート電極136dは、層間絶縁層128上に形成された絶縁層132に、埋め
込まれるように設けられている。また、ゲート電極136dと同様に、ソース電極または
ドレイン電極130aに接して電極136aが、ソース電極またはドレイン電極130b
に接して電極136bが、電極130cに接して電極136cが、それぞれ形成されてい
る。
【0058】
また、トランジスタ162の上には、酸化物半導体層140の一部と接するように、保護
絶縁層144が設けられており、保護絶縁層144上には層間絶縁層146が設けられて
いる。ここで、保護絶縁層144および層間絶縁層146には、ソース電極またはドレイ
ン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bにまで達する開口が設けられて
おり、当該開口を通じて、電極150d、電極150eが、ソース電極またはドレイン電
極142a、ソース電極またはドレイン電極142bに接して形成されている。また、電
極150d、電極150eと同様に、ゲート絶縁層138、保護絶縁層144、層間絶縁
層146に設けられた開口を通じて、電極136a、電極136b、電極136cに接す
る電極150a、電極150b、電極150cが形成されている。
【0059】
ここで、酸化物半導体層140は水素などの不純物が十分に除去され、高純度化されてい
るものであることが望ましい。具体的には、酸化物半導体層140の水素濃度は5×10
19atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望
ましくは5×1017atoms/cm以下とする。これにより、一般的なシリコンウ
ェハ(リンやボロンなどの不純物元素が微量に添加されたシリコンウェハ)におけるキャ
リア濃度(1×1014/cm程度)と比較して、十分に小さいキャリア濃度の値(例
えば、1×1012/cm未満、あるいは、1.45×1010/cm未満)となる
。このように、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、真性化(i型化)または実質
的に真性化(i型化)された酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ電流特性の
トランジスタ162を得ることができる。例えば、トランジスタ162の室温(25℃)
でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は、10zA/μm(
1zA(ゼプトアンペア)は1×10-21A)以下、望ましくは、1zA/μm以下と
なる。また、85℃では、100zA/μm(1×10-19A/μm)以下、好ましく
は10zA/μm(1×10-20A/μm)以下となる。このように、水素濃度が十分
に低減され、真性化または実質的に真性化された酸化物半導体層140を適用し、トラン
ジスタ162のオフ電流を低減することにより、新たな構成の半導体装置を実現すること
ができる。なお、上述の酸化物半導体層140中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(
SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で測定
したものである。
【0060】
また、層間絶縁層146上には絶縁層152が設けられており、当該絶縁層152に埋め
込まれるように、電極154a、電極154b、電極154c、電極154dが設けられ
ている。ここで、電極154aは電極150aと接しており、電極154bは電極150
bと接しており、電極154cは電極150cおよび電極150dと接しており、電極1
54dは電極150eと接している。
【0061】
つまり、図2に示される半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極110と、ト
ランジスタ162のソース電極またはドレイン電極142aとが、電極130c、電極1
36c、電極150c、電極154cおよび電極150dを介して電気的に接続されてい
る。
【0062】
<半導体装置の作製方法>
次に、上記半導体装置の作製方法の一例について説明する。以下では、はじめに下部のト
ランジスタ160の作製方法について図3を参照して説明し、その後、上部のトランジス
タ162の作製方法について図4および図5を参照して説明する。
【0063】
<下部のトランジスタの作製方法>
まず、半導体材料を含む基板100を用意する(図3(A)参照)。半導体材料を含む基
板100としては、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板
、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができ
る。ここでは、半導体材料を含む基板100として、単結晶シリコン基板を用いる場合の
一例について示すものとする。
【0064】
基板100上には、素子分離絶縁層を形成するためのマスクとなる保護層102を形成す
る(図3(A)参照)。保護層102としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン、
窒化酸化シリコンなどを材料とする絶縁層を用いることができる。なお、この工程の前後
において、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純
物元素やp型の導電性を付与する不純物元素を基板100に添加してもよい。半導体がシ
リコンの場合、n型の導電性を付与する不純物としては、例えば、リンや砒素などを用い
ることができる。また、p型の導電性を付与する不純物としては、例えば、硼素、アルミ
ニウム、ガリウムなどを用いることができる。
【0065】
次に、上記の保護層102をマスクとしてエッチングを行い、保護層102に覆われてい
ない領域(露出している領域)の基板100の一部を除去する。これにより分離された半
導体領域104が形成される(図3(B)参照)。当該エッチングには、ドライエッチン
グを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエ
ッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0066】
次に、半導体領域104を覆うように絶縁層を形成し、半導体領域104に重畳する領域
の絶縁層を選択的に除去することで、素子分離絶縁層106を形成する(図3(B)参照
)。当該絶縁層は、酸化シリコンや窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを用いて形成さ
れる。絶縁層の除去方法としては、CMPなどの研磨処理やエッチング処理などがあるが
、そのいずれを用いても良い。なお、半導体領域104の形成後、または、素子分離絶縁
層106の形成後には、上記保護層102を除去する。
【0067】
次に、半導体領域104上に絶縁層を形成し、当該絶縁層上に導電材料を含む層を形成す
る。
【0068】
絶縁層は後のゲート絶縁層となるものであり、CVD法やスパッタリング法等を用いて得
られる酸化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニ
ウム、酸化タンタル等を含む膜の単層構造または積層構造とすると良い。他に、高密度プ
ラズマ処理や熱酸化処理によって、半導体領域104の表面を酸化、窒化させることによ
り、上記絶縁層を形成してもよい。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、
Xeなどの希ガスと、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを用いて
行うことができる。また、絶縁層の厚さは特に限定されないが、例えば、1nm以上10
0nm以下とすることができる。
【0069】
導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料
を用いて形成することができる。また、導電材料を含む多結晶シリコンなどの半導体材料
を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、C
VD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。
なお、本実施の形態では、導電材料を含む層を、金属材料を用いて形成する場合の一例に
ついて示すものとする。
【0070】
その後、絶縁層および導電材料を含む層を選択的にエッチングして、ゲート絶縁層108
、ゲート電極110を形成する(図3(C)参照)。
【0071】
次に、ゲート電極110を覆う絶縁層112を形成する(図3(C)参照)。そして、半
導体領域104にリン(P)やヒ素(As)などを添加して、基板100との浅い接合深
さの不純物領域114を形成する(図3(C)参照)。なお、ここではn型トランジスタ
を形成するためにリンやヒ素を添加しているが、p型トランジスタを形成する場合には、
硼素(B)やアルミニウム(Al)などの不純物元素を添加すればよい。なお、不純物領
域114の形成により、半導体領域104のゲート絶縁層108下部には、チャネル形成
領域116が形成される(図3(C)参照)。ここで、添加する不純物の濃度は適宜設定
することができるが、半導体素子が高度に微細化される場合には、その濃度を高くするこ
とが望ましい。また、ここでは、絶縁層112を形成した後に不純物領域114を形成す
る工程を採用しているが、不純物領域114を形成した後に絶縁層112を形成する工程
としても良い。
【0072】
次に、サイドウォール絶縁層118を形成する(図3(D)参照)。サイドウォール絶縁
層118は、絶縁層112を覆うように絶縁層を形成した後に、当該絶縁層に異方性の高
いエッチング処理を適用することで、自己整合的に形成することができる。また、この際
に、絶縁層112を部分的にエッチングして、ゲート電極110の上面と、不純物領域1
14の上面を露出させると良い。
【0073】
次に、ゲート電極110、不純物領域114、サイドウォール絶縁層118等を覆うよう
に、絶縁層を形成する。そして、当該絶縁層が不純物領域114と接する領域に、リン(
P)やヒ素(As)などを添加して、高濃度不純物領域120を形成する(図3(E)参
照)。その後、上記絶縁層を除去し、ゲート電極110、サイドウォール絶縁層118、
高濃度不純物領域120等を覆うように金属層122を形成する(図3(E)参照)。当
該金属層122は、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法
を用いて形成することができる。金属層122は、半導体領域104を構成する半導体材
料と反応して低抵抗な金属化合物となる金属材料を用いて形成することが望ましい。この
ような金属材料としては、例えば、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、コバル
ト、白金等がある。
【0074】
次に、熱処理を施して、上記金属層122と半導体材料とを反応させる。これにより、高
濃度不純物領域120に接する金属化合物領域124が形成される(図3(F)参照)。
なお、ゲート電極110として多結晶シリコンなどを用いる場合には、ゲート電極110
の金属層122と接触する部分にも、金属化合物領域が形成されることになる。
【0075】
上記熱処理としては、例えば、フラッシュランプの照射による熱処理を用いることができ
る。もちろん、その他の熱処理方法を用いても良いが、金属化合物の形成に係る化学反応
の制御性を向上させるためには、ごく短時間の熱処理が実現できる方法を用いることが望
ましい。なお、上記の金属化合物領域は、金属材料と半導体材料との反応により形成され
るものであり、十分に導電性が高められた領域である。当該金属化合物領域を形成するこ
とで、電気抵抗を十分に低減し、素子特性を向上させることができる。なお、金属化合物
領域124を形成した後には、金属層122は除去する。
【0076】
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、層間絶縁層126、層間絶縁層
128を形成する(図3(G)参照)。層間絶縁層126や層間絶縁層128は、酸化シ
リコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タ
ンタル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。また、ポリイミド、
アクリル樹脂等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。なお、ここでは、層
間絶縁層126と層間絶縁層128の二層構造としているが、層間絶縁層の構成はこれに
限定されない。層間絶縁層128の形成後には、その表面を、CMPやエッチング処理な
どによって平坦化しておくことが望ましい。
【0077】
その後、上記層間絶縁層126、128に、金属化合物領域124にまで達する開口を形
成し、当該開口に、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン
電極130bを形成する(図3(H)参照)。ソース電極またはドレイン電極130aや
ソース電極またはドレイン電極130bは、例えば、開口を含む領域にPVD法やCVD
法などを用いて導電層を形成した後、エッチング処理やCMPといった方法を用いて、上
記導電層の一部を除去することにより形成することができる。
【0078】
なお、上記導電層の一部を除去してソース電極またはドレイン電極130aやソース電極
またはドレイン電極130bを形成する際には、その表面が平坦になるように加工するこ
とが望ましい。例えば、開口を含む領域にチタン膜や窒化チタン膜を薄く形成した後に、
開口に埋め込むようにタングステン膜を形成する場合には、その後のCMPによって、不
要なタングステン膜、チタン膜、窒化チタン膜などを除去すると共に、その表面の平坦性
を向上させることができる。このように、ソース電極またはドレイン電極130a、ソー
ス電極またはドレイン電極130bを含む表面を平坦化することにより、後の工程におい
て、良好な電極、配線、絶縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0079】
なお、ここでは、金属化合物領域124と接触するソース電極またはドレイン電極130
aやソース電極またはドレイン電極130bのみを示しているが、この工程において、ゲ
ート電極110と接触する電極(例えば、図2における電極130c)などをあわせて形
成することができる。ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイ
ン電極130bとして用いることができる材料について特に限定はなく、各種導電材料を
用いることができる。例えば、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、
アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの導電性材料を用いることができる。
【0080】
以上により、半導体材料を含む基板100を用いたトランジスタ160が形成される。な
お、上記工程の後には、さらに電極や配線、絶縁層などを形成しても良い。配線の構造と
して、層間絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用することにより、高
度に集積化した半導体装置を提供することができる。
【0081】
<上部のトランジスタの作製方法>
次に、図4および図5を用いて、層間絶縁層128上にトランジスタ162を作製する工
程について説明する。なお、図4および図5は、層間絶縁層128上の各種電極や、トラ
ンジスタ162などの作製工程を示すものであるから、トランジスタ162の下部に存在
するトランジスタ160等については省略している。
【0082】
まず、層間絶縁層128、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはド
レイン電極130b、電極130c上に絶縁層132を形成する(図4(A)参照)。絶
縁層132はPVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコ
ン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタ
ル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0083】
次に、絶縁層132に対し、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極または
ドレイン電極130b、および、電極130cにまで達する開口を形成する。この際、後
にゲート電極136dが形成される領域にも併せて開口を形成する。そして、上記開口に
埋め込むように、導電層134を形成する(図4(B)参照)。上記開口はマスクを用い
たエッチングなどの方法で形成することができる。当該マスクは、フォトマスクを用いた
露光などの方法によって形成することが可能である。エッチングとしては、ウェットエッ
チング、ドライエッチングのいずれを用いても良いが、微細加工の観点からは、ドライエ
ッチングを用いることが好適である。導電層134の形成は、PVD法やCVD法などの
成膜法を用いて行うことができる。導電層134の形成に用いることができる材料として
は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジ
ム、スカンジウムなどの導電性材料や、これらの合金、化合物(例えば窒化物)などが挙
げられる。
【0084】
より具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CV
D法により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形
成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、下
部電極(ここではソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電
極130b、電極130cなど)の表面の酸化膜を還元し、下部電極との接触抵抗を低減
させる機能を有する。また、その後に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑
制するバリア機能を備える。また、チタンや、窒化チタンなどによるバリア膜を形成した
後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0085】
導電層134を形成した後には、エッチング処理やCMPといった方法を用いて導電層1
34の一部を除去し、絶縁層132を露出させて、電極136a、電極136b、電極1
36c、ゲート電極136dを形成する(図4(C)参照)。なお、上記導電層134の
一部を除去して電極136a、電極136b、電極136c、ゲート電極136dを形成
する際には、表面が平坦になるように加工することが望ましい。このように、絶縁層13
2、電極136a、電極136b、電極136c、ゲート電極136dの表面を平坦化す
ることにより、後の工程において、良好な電極、配線、絶縁層、半導体層などを形成する
ことが可能となる。
【0086】
次に、絶縁層132、電極136a、電極136b、電極136c、ゲート電極136d
を覆うように、ゲート絶縁層138を形成する(図4(D)参照)。ゲート絶縁層138
は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層
138は、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化
ハフニウム、酸化タンタルなどを含むように形成するのが好適である。なお、ゲート絶縁
層138は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。例えば、原料ガスとして
、シラン(SiH)、酸素、窒素を用いたプラズマCVD法により、酸化窒化珪素でな
るゲート絶縁層138を形成することができる。ゲート絶縁層138の厚さは特に限定さ
れないが、例えば、10nm以上500nm以下とすることができる。積層構造の場合は
、例えば、膜厚50nm以上200nm以下の第1のゲート絶縁層と、第1のゲート絶縁
層上の膜厚5nm以上300nm以下の第2のゲート絶縁層の積層とすると好適である。
【0087】
なお、不純物を除去することによりi型化または実質的にi型化された酸化物半導体(高
純度化された酸化物半導体)は、界面準位や界面電荷に対して極めて敏感であるため、こ
のような酸化物半導体を酸化物半導体層に用いる場合には、ゲート絶縁層との界面は重要
である。つまり、高純度化された酸化物半導体層に接するゲート絶縁層138には、高品
質化が要求されることになる。
【0088】
例えば、μ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVD法は、緻密で絶縁耐圧の
高い高品質なゲート絶縁層138を形成できる点で好適である。高純度化された酸化物半
導体層と高品質ゲート絶縁層とが接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好
なものとすることができるからである。
【0089】
もちろん、ゲート絶縁層として良質な絶縁層を形成できるものであれば、高純度化された
酸化物半導体層を用いる場合であっても、スパッタリング法やプラズマCVD法など他の
方法を適用することができる。また、形成後の熱処理によって、膜質や酸化物半導体層と
の界面特性が改質される絶縁層を適用しても良い。いずれにしても、ゲート絶縁層138
としての膜質が良好であると共に、酸化物半導体層との界面準位密度を低減し、良好な界
面を形成できるものを形成すれば良い。
【0090】
不純物が酸化物半導体に含まれている場合、強い電界や高い温度などのストレスにより、
不純物と酸化物半導体の主成分との結合が切断され、生成された未結合手はしきい値電圧
(Vth)のシフトを誘発する。
【0091】
酸化物半導体の不純物、特に水素や水などの不純物を極力除去し、かつ、上記のようにゲ
ート絶縁層との界面特性を良好にすることにより、強電界や高温などのストレスに対して
も安定なトランジスタを得ることが可能である。
【0092】
次いで、ゲート絶縁層138上に、酸化物半導体層を形成し、マスクを用いたエッチング
などの方法によって当該酸化物半導体層を加工して、島状の酸化物半導体層140を形成
する(図4(E)参照)。
【0093】
酸化物半導体層としては、In-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn-O系、In-A
l-Zn-O系、Sn-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-Al-Zn
-O系、In-Zn-O系、Sn-Zn-O系、Al-Zn-O系、In-O系、Sn-
O系、Zn-O系の酸化物半導体層、特に非晶質酸化物半導体層を用いるのが好適である
。本実施の形態では、酸化物半導体層としてIn-Ga-Zn-O系の酸化物半導体成膜
用ターゲットを用いて、非晶質の酸化物半導体層をスパッタ法により形成することとする
。なお、非晶質の酸化物半導体層中にシリコンを添加することで、その結晶化を抑制する
ことができるから、例えば、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用
いて酸化物半導体層を形成しても良い。
【0094】
酸化物半導体層をスパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、酸化
亜鉛を主成分とする酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることができる。また、In、
Ga、およびZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲット(組成比として、In:G
:ZnO=1:1:1[mol比])などを用いることもできる。また、In、
Ga、およびZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲットとして、In:Ga
:ZnO=1:1:2[mol比]、またはIn:Ga:ZnO=1:1:
4[mol比]の組成比を有するターゲットなどを用いても良い。酸化物半導体成膜用タ
ーゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上(例えば99.9%
)である。充填率の高い酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることにより、緻密な酸化
物半導体層が形成される。
【0095】
酸化物半導体層の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、ま
たは、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である。具体
的には、例えば、水素、水、水酸基を有する化合物、または水素化物などの不純物の濃度
が数ppm程度(望ましくは数ppb程度)にまで除去された高純度ガスを用いるのが好
適である。
【0096】
酸化物半導体層の形成の際には、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板温
度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加熱
しながら酸化物半導体層を形成することにより、酸化物半導体層に含まれる不純物濃度を
低減することができる。また、スパッタリングによる酸化物半導体層の損傷が軽減される
。そして、処理室内の残留水分を除去しつつ水素および水が除去されたスパッタガスを導
入し、金属酸化物をターゲットとして酸化物半導体層を形成する。処理室内の残留水分を
除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポン
プ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることができる。また、排気手
段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポ
ンプを用いて排気した成膜室は、例えば、炭素原子を含む化合物に加え、水素原子、水(
O)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で形成した酸化物半
導体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0097】
形成条件としては、例えば、基板とターゲットの間との距離が100mm、圧力が0.6
Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素流量比率100%)雰囲気、
といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜
時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も小さくな
るため、好ましい。酸化物半導体層の厚さは、2nm以上200nm以下、好ましくは5
nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚さは異な
るから、その厚さは用いる材料に応じて適宜選択すればよい。
【0098】
なお、酸化物半導体層をスパッタ法により形成する前には、アルゴンガスを導入してプラ
ズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層138の表面に付着しているゴミを除
去するのが好適である。ここで、逆スパッタとは、通常のスパッタにおいては、スパッタ
ターゲットにイオンを衝突させるところ、逆に、処理表面にイオンを衝突させることによ
ってその表面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法としては
、アルゴン雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、基板付近にプラズマを生成す
る方法などがある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気、酸素雰
囲気などを用いても良い。
【0099】
上記酸化物半導体層のエッチングには、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれ
を用いても良い。もちろん、両方を組み合わせて用いることもできる。所望の形状にエッ
チングできるよう、材料に合わせてエッチング条件(エッチングガスやエッチング液、エ
ッチング時間、温度等)を適宜設定する。
【0100】
ドライエッチングに用いるエッチングガスには、例えば、塩素を含むガス(塩素系ガス、
例えば塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)、塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(
CCl)など)などがある。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭
素(CF)、弗化硫黄(SF)、弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF
)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やア
ルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いても良い。
【0101】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etch
ing)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導
結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるよ
うに、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される
電力量、基板側の電極温度等)は適宜設定する。
【0102】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液など
を用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)などを用いてもよい。
【0103】
次いで、酸化物半導体層に第1の熱処理を行うことが望ましい。この第1の熱処理によっ
て酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うことができる。第1の熱処理の温度は、
300℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。例えば、
抵抗発熱体などを用いた電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層140に対して窒素雰囲
気下450℃において1時間の熱処理を行う。この間、酸化物半導体層140は、大気に
触れないようにし、水や水素の再混入が行われないようにする。
【0104】
なお、熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または
熱輻射によって、被処理物を加熱する装置であっても良い。例えば、GRTA(Gas
Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid
Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Ann
eal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライド
ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水
銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置で
ある。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。気体としては、ア
ルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性
気体が用いられる。
【0105】
例えば、第1の熱処理として、650℃~700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板
を投入し、数分間加熱した後、当該不活性ガス中から基板を取り出すGRTA処理を行っ
てもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、短時間の
熱処理であるため、基板の歪み点を超える温度条件であっても適用が可能となる。
【0106】
なお、第1の熱処理は、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分
とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気で行うことが望ましい。例えば
、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、
6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち
、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0107】
第1の熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体層が結晶化
し、微結晶または多結晶となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上、または80
%以上の微結晶の酸化物半導体層となる場合もある。また、第1の熱処理の条件、または
酸化物半導体層の材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物半導体層となる場
合もある。
【0108】
また、非晶質の酸化物半導体(例えば、酸化物半導体層の表面)に微結晶(粒径1nm以
上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体層となる
場合もある。
【0109】
また、非晶質の領域中に微結晶を配列させることで、酸化物半導体層の電気的特性を変化
させることも可能である。例えば、In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体成膜用ターゲ
ットを用いて酸化物半導体層を形成する場合には、電気的異方性を有するInGa
nOの結晶粒が配向した微結晶部を形成することで、酸化物半導体層の電気的特性を変
化させることができる。
【0110】
より具体的には、例えば、InGaZnOのc軸が酸化物半導体層の表面に垂直な
方向をとるように配向させることで、酸化物半導体層の表面に平行な方向の導電性を向上
させ、酸化物半導体層の表面に垂直な方向の絶縁性を向上させることができる。また、こ
のような微結晶部は、酸化物半導体層中への水や水素などの不純物の侵入を抑制する機能
を有する。
【0111】
なお、上述の微結晶部を有する酸化物半導体層は、GRTA処理による酸化物半導体層の
加熱によって形成することができる。また、Znの含有量がInまたはGaの含有量より
小さいスパッタターゲットを用いることで、より好適に形成することが可能である。
【0112】
酸化物半導体層140に対する第1の熱処理は、島状の酸化物半導体層140に加工する
前の酸化物半導体層に行うこともできる。その場合には、第1の熱処理後に、加熱装置か
ら基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行うことになる。
【0113】
なお、上記第1の熱処理は、酸化物半導体層140に対する脱水化、脱水素化の効果があ
るから、脱水化処理、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。このような脱水化処理、脱
水素化処理は、酸化物半導体層の形成後、酸化物半導体層140上にソース電極またはド
レイン電極を積層させた後、ソース電極またはドレイン電極上に保護絶縁層を形成した後
、などのタイミングにおいて行うことが可能である。また、このような脱水化処理、脱水
素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0114】
次に、酸化物半導体層140に接するように、ソース電極またはドレイン電極142a、
ソース電極またはドレイン電極142bを形成する(図4(F)参照)。ソース電極また
はドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bは、酸化物半導体層1
40を覆うように導電層を形成した後、当該導電層を選択的にエッチングすることにより
形成することができる。
【0115】
導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用
いて形成することができる。また、導電層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、
タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分
とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウ
ム、トリウムから選択されたいずれか一または複数の材料を用いてもよい。また、アルミ
ニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジ
ウムから選ばれた元素を単数、または複数組み合わせた材料を用いてもよい。導電層は、
単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含む
アルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン
膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。
【0116】
ここで、エッチングに用いるマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArF
レーザ光を用いるのが好適である。
【0117】
トランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極またはドレイン電極142aの下端部と
、ソース電極またはドレイン電極142bの下端部との間隔によって決定される。なお、
チャネル長(L)が25nm未満において露光を行う場合には、数nm~数10nmと極
めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いてマスク形
成の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に
形成されるトランジスタのチャネル長(L)を10nm以上1000nm以下とすること
も可能であり、回路の動作速度を高速化できる。さらにオフ電流値が極めて小さいため、
消費電力が大きくならずに済む。
【0118】
なお、導電層のエッチングの際には、酸化物半導体層140が除去されないように、それ
ぞれの材料およびエッチング条件を適宜調節する。なお、材料およびエッチング条件によ
っては、当該工程において、酸化物半導体層140の一部がエッチングされ、溝部(凹部
)を有する酸化物半導体層となることもある。
【0119】
また、酸化物半導体層140とソース電極またはドレイン電極142aの間や、酸化物半
導体層140とソース電極またはドレイン電極142bの間には、酸化物導電層を形成し
てもよい。酸化物導電層と、ソース電極またはドレイン電極142aやソース電極または
ドレイン電極142bを形成するための金属層は、連続して形成すること(連続成膜)が
可能である。酸化物導電層はソース領域またはドレイン領域として機能しうる。このよう
な酸化物導電層を設けることで、ソース領域またはドレイン領域の低抵抗化を図ることが
できるため、トランジスタの高速動作が実現される。
【0120】
また、上記マスクの使用数や工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光
マスクである多階調マスクによってレジストマスクを形成し、これを用いてエッチング工
程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは、複数の厚みを有す
る形状(階段状)となり、アッシングによりさらに形状を変形させることができるため、
異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。つまり、一枚の
多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマス
クを形成することができる。よって、露光マスク数を削減することができ、対応するフォ
トリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が図れる。
【0121】
なお、上述の工程の後には、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理
を行うのが好ましい。当該プラズマ処理によって、露出している酸化物半導体層の表面に
付着した水などが除去される。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を
行ってもよい。
【0122】
次に、大気に触れさせることなく、酸化物半導体層140の一部に接する保護絶縁層14
4を形成する(図4(G)参照)。
【0123】
保護絶縁層144は、スパッタ法など、保護絶縁層144に水、水素等の不純物を混入さ
せない方法を適宜用いて形成することができる。また、その厚さは、1nm以上とする。
保護絶縁層144に用いることができる材料としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪
素、窒化酸化珪素などがある。また、その構造は、単層構造としても良いし、積層構造と
しても良い。保護絶縁層144を形成する際の基板温度は、室温以上300℃以下とする
のが好ましく、雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、または希
ガス(代表的にはアルゴン)と酸素の混合雰囲気とするのが好適である。
【0124】
保護絶縁層144に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入や、水素によ
る酸化物半導体層中の酸素の引き抜き、などが生じ、酸化物半導体層のバックチャネル側
が低抵抗化してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、保護絶縁層1
44はできるだけ水素を含まないように、形成方法においては水素を用いないことが重要
である。
【0125】
また、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層144を形成することが好ましい。酸
化物半導体層140および保護絶縁層144に水素、水酸基または水が含まれないように
するためである。
【0126】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。
例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが
好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであ
ってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(H
O)など水素原子を含む化合物等が除去されているため、当該成膜室で形成した保護絶縁
層144に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0127】
保護絶縁層144を形成する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基を含む
化合物、または水素化物などの不純物の濃度が数ppm程度(望ましくは数ppb程度)
にまで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0128】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の熱処理(好ましくは20
0℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行うのが望ましい。例えば
、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の熱処理を行う。第2の熱処理を行うと、トラ
ンジスタの電気的特性のばらつきを低減することができる。
【0129】
また、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下の熱処理を行っても
よい。この熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以
上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえし
て行ってもよい。また、この熱処理を、保護絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。
減圧下で熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。なお、当該減圧下での熱処
理は、上記第2の熱処理に代えて行っても良いし、第2の熱処理の前後などに行っても良
い。
【0130】
次に、保護絶縁層144上に、層間絶縁層146を形成する(図5(A)参照)。層間絶
縁層146はPVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコ
ン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタ
ル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。層間絶縁層146の形成
後には、その表面を、CMPやエッチングなどの方法によって平坦化しておくことが望ま
しい。
【0131】
次に、層間絶縁層146、保護絶縁層144、およびゲート絶縁層138に対し、電極1
36a、電極136b、電極136c、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース
電極またはドレイン電極142bにまで達する開口を形成し、当該開口に埋め込むように
導電層148を形成する(図5(B)参照)。上記開口はマスクを用いたエッチングなど
の方法で形成することができる。当該マスクは、フォトマスクを用いた露光などの方法に
よって形成することが可能である。エッチングとしてはウェットエッチング、ドライエッ
チングのいずれを用いても良いが、微細加工の観点からは、ドライエッチングを用いるこ
とが好適である。導電層148の形成は、PVD法やCVD法などの成膜法を用いて行う
ことができる。導電層148の形成に用いることができる材料としては、モリブデン、チ
タン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムな
どの導電性材料や、これらの合金、化合物(例えば窒化物)などが挙げられる。
【0132】
具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD法
により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成す
る方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、下部電
極(ここでは、電極136a、電極136b、電極136c、ソース電極またはドレイン
電極142a、ソース電極またはドレイン電極142b)の表面に生じる酸化膜を還元し
、下部電極との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、その後の形成される窒化チタ
ン膜は、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備える。また、チタンや、窒化チタン
などによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0133】
導電層148を形成した後には、エッチングやCMPといった方法を用いて導電層148
の一部を除去し、層間絶縁層146を露出させて、電極150a、電極150b、電極1
50c、電極150d、電極150eを形成する(図5(C)参照)。なお、上記導電層
148の一部を除去して電極150a、電極150b、電極150c、電極150d、電
極150eを形成する際には、表面が平坦になるように加工することが望ましい。このよ
うに、層間絶縁層146、電極150a、電極150b、電極150c、電極150d、
電極150eの表面を平坦化することにより、後の工程において、良好な電極、配線、絶
縁層などを形成することが可能となる。
【0134】
さらに、絶縁層152を形成し、絶縁層152に、電極150a、電極150b、電極1
50c、電極150d、電極150eにまで達する開口を形成し、当該開口に埋め込むよ
うに導電層を形成した後、エッチングやCMPなどの方法を用いて導電層の一部を除去し
、絶縁層152を露出させて、電極154a、電極154b、電極154c、電極154
dを形成する(図5(D)参照)。当該工程は、電極150a等を形成する場合と同様で
あるから、詳細は省略する。
【0135】
上述のような方法でトランジスタ162を作製した場合、酸化物半導体層140の水素濃
度は5×1019atoms/cm以下となり、また、トランジスタ162のオフ電流
は100zA/μm以下となる。このような、水素濃度が十分に低減されて高純度化され
た酸化物半導体層140を適用することで、優れた特性のトランジスタ162を得ること
ができる。また、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160を有し、上
部に酸化物半導体を用いたトランジスタ162を有する優れた特性の半導体装置を作製す
ることができる。
【0136】
なお、酸化物半導体との比較対象たり得る半導体材料としては、炭化珪素(例えば、4H
-SiC)がある。酸化物半導体と4H-SiCはいくつかの共通点を有している。キャ
リア密度はその一例である。常温での酸化物半導体の真性キャリアは10-7/cm
度と見積もられるが、これは、4H-SiCにおける6.7×10-11/cmと同様
、極めて低い値である。シリコンの真性キャリア密度(1.4×1010/cm程度)
と比較すれば、その程度が並はずれていることが良く理解できる。
【0137】
また、酸化物半導体のエネルギーバンドギャップは3.0~3.5eVであり、4H-S
iCのエネルギーバンドギャップは3.26eVであるから、ワイドギャップ半導体とい
う点においても、酸化物半導体と炭化珪素とは共通している。
【0138】
一方で、酸化物半導体と炭化珪素との間には極めて大きな相違点が存在する。それは、プ
ロセス温度である。炭化珪素は一般に1500℃~2000℃の熱処理を必要とするから
、他の半導体材料を用いた半導体素子との積層構造は困難である。このような高い温度で
は、半導体基板や半導体素子などが破壊されてしまうためである。他方、酸化物半導体は
、300℃~500℃(ガラス転移温度以下、最大でも700℃程度)の熱処理で作製す
ることが可能であり、他の半導体材料を用いて集積回路を形成した上で、酸化物半導体に
よる半導体素子を形成することが可能となる。
【0139】
また、炭化珪素の場合と異なり、ガラス基板など、耐熱性の低い基板を用いることが可能
であるという利点を有する。さらに、高温での熱処理が不要という点で、炭化珪素と比較
してエネルギーコストを十分に低くすることができるという利点を有する。
【0140】
なお、酸化物半導体において、物性研究は多くなされているが、エネルギーギャップ中の
局在準位そのものを十分に減らすという思想を含まない。開示する発明の一態様では、局
在準位の原因たり得る水や水素を酸化物半導体中より除去することで、高純度化した酸化
物半導体を作製する。これは、エネルギーギャップ中の局在準位そのものを十分に減らす
という思想に立脚するものである。そして、これによって極めて優れた工業製品の製造を
可能とするものである。
【0141】
さらに、酸素欠乏により発生する金属の未結合手に対して酸素を供給し、酸素欠陥による
局在準位を減少させることにより、いっそう高純度化された(i型の)酸化物半導体とす
ることも可能である。たとえば、チャネル形成領域に接して酸素過剰の酸化膜を形成し、
当該酸化膜から酸素を供給して、酸素欠陥による局在準位を減少させることが可能である
【0142】
酸化物半導体の欠陥は、過剰な水素による伝導帯下の浅い準位や、酸素の不足による深い
準位、などに起因するものとされている。これらの欠陥を無くすために、水素を徹底的に
除去し、酸素を十分に供給する。
【0143】
〈酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構〉
次に、酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構につき、図11乃至図14を用いて
説明する。なお、以下の説明では、理解の容易にするため理想的な状況を仮定している。
【0144】
図11は、酸化物半導体を用いた逆スタガー型のトランジスタの断面図である。ゲート電
極層(GE1)上にゲート絶縁層(GI)を介して酸化物半導体層(OS)が設けられ、
その上にソース電極(S)及びドレイン電極(D)が設けられている。
【0145】
図12(A)、図12(B)には、図11のA-A’上におけるエネルギーバンド構造の
模式図を示す。図12(A)は、ゲート電極層に電圧が印加されず(V=0)、かつ、
ドレイン電極、ソース電極のいずれにも電圧を印加しない、または、同じ電圧が印加され
る場合である(V=V=0、またはV=V)。図12(B)は、ドレイン電極に
正の電圧(V>0)を印加した上で、破線はゲート電極層に電圧を印加しない場合(V
=0)、実線はゲート電極層に正の電圧(V>0)を印加した場合を示す。ゲート電
極層に電圧を印加しない場合は高いポテンシャル障壁のためにソース電極から酸化物半導
体側へキャリア(電子)が注入されず、電流を流さないオフ状態を示す。一方、ゲート電
極層に正の電圧を印加するとポテンシャル障壁が低下し、電流を流すオン状態を示す。
【0146】
図13(A)、図13(B)には、図11のB-B’の断面におけるエネルギーバンド図
(模式図)を示す。図13(A)は、ゲート電極層(GE1)に正の電位(V>0)が
与えられた状態であり、ソース電極とドレイン電極との間にキャリア(電子)が流れるオ
ン状態を示している。また、図13(B)は、ゲート電極層(GE1)に負の電位(V
<0)が印加された状態であり、オフ状態(少数キャリアは流れない状態)である場合を
示す。
【0147】
図14は、真空準位と金属の仕事関数(φ)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係
を示す。
【0148】
金属は縮退しており、フェルミ準位は伝導帯内に位置する。一方、従来の酸化物半導体は
n型であり、そのフェルミ準位(E)は、バンドギャップ中央に位置する真性フェルミ
準位(E)から離れて、伝導帯寄りに位置している。なお、酸化物半導体において水素
の一部はドナーとなり、n型化する要因の一つであることが知られている。また、酸素欠
損もn型化する一つの要因であることが知られている。
【0149】
これに対して開示する発明の一態様に係る酸化物半導体は、n型化の要因である水素を酸
化物半導体から除去し、酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれな
いように高純度化し、かつ、酸素欠損を除去することにより真性(i型)とし、または真
性に近づけた酸化物半導体である。すなわち、不純物元素を添加してi型化するのでなく
、水素や水等の不純物や酸素欠損を極力除去することにより、高純度化されたi型(真性
半導体)またはそれに近づけることを特徴としている。これにより、フェルミ準位(E
)は真性フェルミ準位(E)と同程度とすることができる。
【0150】
酸化物半導体のバンドギャップ(E)は3.15eVで、電子親和力(χ)は4.3e
Vと言われている。ソース電極やドレイン電極を構成するチタン(Ti)の仕事関数は、
酸化物半導体の電子親和力(χ)とほぼ等しい。この場合、金属-酸化物半導体界面にお
いて、電子に対してショットキー型の障壁は形成されない。
【0151】
金属の仕事関数(φ)と酸化物半導体の電子親和力(χ)が等しい場合、両者が接触す
ると図12(A)で示すようなエネルギーバンド図(模式図)が得られる。
【0152】
図12(B)において黒丸(●)は電子を示す。ドレイン電極に正の電位が与えられると
、電子はバリア(h)をこえて酸化物半導体に注入され、ドレイン電極に向かって流れる
。バリア(h)の高さは、ゲート電圧(V)に依存して変化するが、正のドレイン電圧
がドレイン電極に印加される場合には、電圧印加のない図12(A)のバリアの高さ、す
なわちバンドギャップ(E)の1/2、より低くなる。
【0153】
このとき電子は、図13(A)で示すように、ゲート絶縁層と高純度化された酸化物半導
体との界面付近(酸化物半導体のエネルギー的に安定な最低部)を移動する。
【0154】
また、図13(B)に示すように、ゲート電極(GE1)に負の電位が与えられると、少
数キャリアであるホールは実質的にゼロであるため、電流は限りなくゼロに近い値となる
【0155】
例えば、室温(25℃)におけるオフ電流が、10zA/μm(1×10-20A/μm
)以下、あるいは1zA/μm(1×10-21A/μm)以下であり、このため、サブ
スレッショルドスイング値(S値)が0.1V/dec.のトランジスタが得られる。
【0156】
このように、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように酸化物半導体を
高純度化させることにより、トランジスタの動作を良好なものとすることができる。
【0157】
<変形例>
図6乃至図9には、半導体装置の構成の変形例を示す。なお、以下では、変形例として、
トランジスタ162の構成が上記とは異なるものについて説明する。つまり、トランジス
タ160の構成は上記と同様である。
【0158】
図6には、酸化物半導体層140の下にゲート電極136dを有し、ソース電極またはド
レイン電極142aや、ソース電極またはドレイン電極142bが、酸化物半導体層14
0の下側表面において酸化物半導体層140と接する構成のトランジスタ162を有する
例を示す。なお、平面の構造は、断面に対応して適宜変更すればよいから、ここでは、断
面についてのみ示すこととする。
【0159】
図6に示す構成と図2に示す構成の大きな相違点として、ソース電極またはドレイン電極
142aや、ソース電極またはドレイン電極142bと、酸化物半導体層140との接続
の位置がある。つまり、図2に示す構成では、酸化物半導体層140の上側表面において
、ソース電極またはドレイン電極142aや、ソース電極またはドレイン電極142bと
接するのに対して、図6に示す構成では、酸化物半導体層140の下側表面において、ソ
ース電極またはドレイン電極142aや、ソース電極またはドレイン電極142bと接す
る。そして、この接触の相違に起因して、その他の電極、絶縁層などの配置が異なるもの
となっている。各構成要素の詳細は、図2と同様である。
【0160】
具体的には、層間絶縁層128上に設けられたゲート電極136dと、ゲート電極136
d上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上に設けられた、ソース電
極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bと、ソース電極
またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bの上側表面に接す
る酸化物半導体層140と、を有する。
【0161】
ここで、ゲート電極136dは、層間絶縁層128上に形成された絶縁層132に、埋め
込まれるように設けられている。また、ゲート電極136dと同様に、ソース電極または
ドレイン電極130aに接して電極136aが、ソース電極またはドレイン電極130b
に接して電極136bが、電極130cに接して電極136cが、それぞれ形成されてい
る。
【0162】
また、トランジスタ162の上には、酸化物半導体層140の一部と接するように、保護
絶縁層144が設けられており、保護絶縁層144上には層間絶縁層146が設けられて
いる。ここで、保護絶縁層144および層間絶縁層146には、ソース電極またはドレイ
ン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bにまで達する開口が設けられて
おり、当該開口を通じて、電極150d、電極150eが、ソース電極またはドレイン電
極142a、ソース電極またはドレイン電極142bに接して形成されている。また、電
極150d、電極150eと同様に、ゲート絶縁層138、保護絶縁層144、層間絶縁
層146に設けられた開口を通じて、電極136a、電極136b、電極136cに接す
る電極150a、電極150b、電極150cが形成されている。
【0163】
また、層間絶縁層146上には絶縁層152が設けられており、当該絶縁層152に埋め
込まれるように、電極154a、電極154b、電極154c、電極154dが設けられ
ている。ここで、電極154aは電極150aと接しており、電極154bは電極150
bと接しており、電極154cは電極150cおよび電極150dと接しており、電極1
54dは電極150eと接している。
【0164】
図7は、酸化物半導体層140の上にゲート電極136dを有する構成の例である。ここ
で、図7(A)は、ソース電極またはドレイン電極142aや、ソース電極またはドレイ
ン電極142bが、酸化物半導体層140の下側表面において酸化物半導体層140と接
する構成の例であり、図7(B)は、ソース電極またはドレイン電極142aや、ソース
電極またはドレイン電極142bが、酸化物半導体層140の上側表面において酸化物半
導体層140と接する構成の例である。
【0165】
図2図6に示す構成と図7に示す構成の大きな相違点は、酸化物半導体層140の上に
ゲート電極136dを有する点である。また、図7(A)に示す構成と図7(B)に示す
構成の大きな相違点は、ソース電極またはドレイン電極142aや、ソース電極またはド
レイン電極142bが、酸化物半導体層140の下側表面または上側表面のいずれにおい
て接触するか、という点である。そして、これらの相違に起因して、その他の電極、絶縁
層などの配置が異なるものとなっている。各構成要素の詳細は、図2などと同様である。
【0166】
具体的には、図7(A)では、層間絶縁層128上に設けられたソース電極またはドレイ
ン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bと、ソース電極またはドレイン
電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bの上側表面に接する酸化物半導体
層140と、酸化物半導体層140上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層
138上の酸化物半導体層140と重畳する領域のゲート電極136dと、を有する。
【0167】
また、図7(B)では、層間絶縁層128上に設けられた酸化物半導体層140と、酸化
物半導体層140の上側表面に接するように設けられたソース電極またはドレイン電極1
42a、ソース電極またはドレイン電極142bと、酸化物半導体層140、ソース電極
またはドレイン電極142a、および、ソース電極またはドレイン電極142b上に設け
られたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上の酸化物半導体層140と重畳する
領域のゲート電極136dと、を有する。
【0168】
なお、図7に示す構成では、図2に示す構成などと比較して、構成要素が省略できる場合
がある(例えば、電極150aや、電極154aなど)。この場合、作製工程の簡略化と
いう副次的な効果も得られる。もちろん、図2などに示す構成においても、必須ではない
構成要素を省略できることはいうまでもない。
【0169】
図8は、素子のサイズが比較的大きい場合であって、酸化物半導体層140の下にゲート
電極136dを有する構成の例である。この場合、表面の平坦性やカバレッジに対する要
求は比較的緩やかなものであるから、配線や電極などを絶縁層中に埋め込むように形成す
る必要はない。例えば、導電層の形成後にパターニングを行うことで、ゲート電極136
dなどを形成することが可能である。なお、ここでは図示しないが、トランジスタ160
についても、同様に作製することが可能である。
【0170】
図8(A)に示す構成と図8(B)に示す構成の大きな相違点は、ソース電極またはドレ
イン電極142aや、ソース電極またはドレイン電極142bが、酸化物半導体層140
の下側表面または上側表面のいずれにおいて接触するか、という点である。そして、これ
らの相違に起因して、その他の電極、絶縁層などの配置が異なるものとなっている。各構
成要素の詳細は、図2などと同様である。
【0171】
具体的には、図8(A)では、層間絶縁層128上に設けられたゲート電極136dと、
ゲート電極136d上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上に設け
られた、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142
bと、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142b
の上側表面に接する酸化物半導体層140と、を有する。
【0172】
また、図8(B)では、層間絶縁層128上に設けられたゲート電極136dと、ゲート
電極136d上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上のゲート電極
136dと重畳する領域に設けられた酸化物半導体層140と、酸化物半導体層140の
上側表面に接するように設けられたソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極
またはドレイン電極142bと、を有する。
【0173】
なお、図8に示す構成においても、図2に示す構成などと比較して、構成要素が省略でき
る場合がある。この場合も、作製工程の簡略化という効果が得られる。
【0174】
図9は、素子のサイズが比較的大きい場合であって、酸化物半導体層140の上にゲート
電極136dを有する構成の例である。この場合にも、表面の平坦性やカバレッジに対す
る要求は比較的緩やかなものであるから、配線や電極などを絶縁層中に埋め込むように形
成する必要はない。例えば、導電層の形成後にパターニングを行うことで、ゲート電極1
36dなどを形成することが可能である。なお、ここでは図示しないが、トランジスタ1
60についても、同様に作製することが可能である。
【0175】
図9(A)に示す構成と図9(B)に示す構成の大きな相違点は、ソース電極またはドレ
イン電極142aや、ソース電極またはドレイン電極142bが、酸化物半導体層140
の下側表面または上側表面のいずれにおいて接触するか、という点である。そして、これ
らの相違に起因して、その他の電極、絶縁層などの配置が異なるものとなっている。各構
成要素の詳細は、図2などと同様である。
【0176】
具体的には、図9(A)では、層間絶縁層128上に設けられたソース電極またはドレイ
ン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bと、ソース電極またはドレイン
電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bの上側表面に接する酸化物半導体
層140と、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極1
42b、酸化物半導体層140上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層13
8上の酸化物半導体層140と重畳する領域に設けられたゲート電極136dと、を有す
る。
【0177】
また、図9(B)では、層間絶縁層128上に設けられた酸化物半導体層140と、酸化
物半導体層140の上側表面に接するように設けられたソース電極またはドレイン電極1
42a、ソース電極またはドレイン電極142bと、ソース電極またはドレイン電極14
2a、ソース電極またはドレイン電極142b、酸化物半導体層140上に設けられたゲ
ート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上の酸化物半導体層140と重畳する領域に設
けられたゲート電極136dと、を有する。
【0178】
なお、図9に示す構成においても、図2に示す構成などと比較して、構成要素が省略でき
る場合がある。この場合も、作製工程の簡略化という効果が得られる。
【0179】
以上に示したように、開示する発明の一態様によって、新たな構成の半導体装置が実現さ
れる。本実施の形態では、トランジスタ160とトランジスタ162を積層して形成する
例について説明したが、半導体装置の構成はこれに限られるものではない。また、本実施
の形態では、トランジスタ160とトランジスタ162のチャネル長方向が互いに垂直と
なる例を説明したが、トランジスタ160とトランジスタ162の位置関係などはこれに
限られるものではない。さらに、トランジスタ160とトランジスタ162とを重畳して
設けても良い。
【0180】
また、本実施の形態では理解の簡単のため、最小記憶単位(1ビット)の半導体装置につ
いて説明したが、半導体装置の構成はこれに限られるものではない。複数の半導体装置を
適当に接続して、より高度な半導体装置を構成することもできる。例えば、上記半導体装
置を複数用いて、NAND型やNOR型の半導体装置を構成することが可能である。配線
の構成も図1に限定されず、適宜変更することができる。
【0181】
本実施の形態に係る半導体装置は、トランジスタ162の低オフ電流特性により、極めて
長時間にわたり情報を保持することが可能である。つまり、DRAMなどで必要とされる
リフレッシュ動作が不要であり、消費電力を抑制することができる。また、実質的な不揮
発性の半導体装置として用いることが可能である。
【0182】
また、トランジスタ162のスイッチング動作によって情報の書き込みなどを行うため、
高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。さらに、トランジスタのオン、オフに
よって、情報の書き込みや消去が行われるため、高速動作も容易に実現しうる。また、ト
ランジスタに入力する電位を制御することで直接情報を書き換えることが可能であるため
、情報を消去するための動作が不要であるというメリットもある。
【0183】
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、酸化物半導体を用いたトランジ
スタと比較して、さらなる高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の
読み出しを高速に行うことが可能である。
【0184】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0185】
(実施の形態2)
本実施の形態では、開示する発明の別の一態様に係る半導体装置の構成および作製方法に
ついて、図15を参照して説明する。
【0186】
図15(A)には、半導体装置の回路構成の一例を示す。図1との相違は、容量素子16
4の有無である。すなわち、図15(A)において、トランジスタ162のソース電極ま
たはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ160のゲー
ト電極と、は電気的に接続されている。また、第1の配線(1st Line:ソース線
BLとも呼ぶ)とトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線
(2nd Line:ビット線BLとも呼ぶ)とトランジスタ160のドレイン電極とは
、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line:第1の信号線S1と
も呼ぶ)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接
続され、第4の配線(4th Line:第2の信号線S2とも呼ぶ)と、トランジスタ
162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、第5の配線(5th Li
ne:ワード線WLとも呼ぶ)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されてい
る。なお、図15においては、酸化物半導体を用いたトランジスタであることを示すため
に、OSの符号を併せて付している。
【0187】
ここで、トランジスタ162には、上述の酸化物半導体を用いたトランジスタが適用され
る。酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特徴を有して
いる。このため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、トランジスタ160のゲ
ート電極の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子
164を有することにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷の保持が
容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。
【0188】
なお、トランジスタ160については特に限定されない。情報の読み出し速度を向上させ
るという観点からは、例えば、単結晶シリコンを用いたトランジスタなど、スイッチング
速度の高いトランジスタを適用するのが好適である。
【0189】
図15(A)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極の電位が保持可能
という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である
【0190】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、ト
ランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。
これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極、および容量素子1
64に与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極には、所定の電荷が与え
られる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位を与える電荷(以下、低電位を与える
電荷を電荷Q、高電位を与える電荷を電荷Qという)のいずれかがトランジスタ16
0のゲート電極に与えられるものとする。なお、異なる三つまたはそれ以上の電位を与え
る電荷を適用して、記憶容量を向上させても良い。その後、第4の配線の電位を、トラン
ジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることに
より、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0191】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいから、トランジスタ160のゲート電極の
電荷は長時間にわたって保持される。
【0192】
次に、情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状
態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲー
ト電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジ
スタ160をnチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極にQが与えられ
ている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ160のゲート電極にQ
与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見
かけのしきい値電圧とは、トランジスタ160を「オン状態」とするために必要な第5の
配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_L
の中間の電位Vとすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷
を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Qが与えられていた場合には、第5の配線
の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ160は「オン状態」となる。Q
が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、ト
ランジスタ160は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ること
で、保持されている情報を読み出すことができる。
【0193】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合には、所望のメモリセルの情報のみを
読み出せることが必要になる。このように、所定のメモリセルの情報を読み出し、それ以
外のメモリセルの情報を読み出さない場合には、読み出しの対象ではないメモリセルの第
5の配線に対して、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オフ状態」と
なるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を与えればよい。または、ゲート電
極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オン状態」となるような電位、つまり、V
th_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
【0194】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込みおよび
保持と同様に行われる。つまり、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態と
なる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位
(新たな情報に係る電位)が、トランジスタ160のゲート電極および容量素子164に
与えられる。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位に
して、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電
極は、新たな情報に係る電荷が与えられた状態となる。
【0195】
このように、開示する発明に係る半導体装置は、再度の情報の書き込みによって直接的に
情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされ
る高電圧を用いてのフローティングゲートからの電荷の引き抜きが不要であり、消去動作
に起因する動作速度の低下を抑制することができる。つまり、半導体装置の高速動作が実
現される。
【0196】
なお、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極は、トランジスタ160のゲ
ート電極と電気的に接続されることにより、不揮発性メモリ素子として用いられるフロー
ティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用を奏する。このため
、図中、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極とトランジスタ160のゲ
ート電極が電気的に接続される部位をフローティングゲート部FGと呼ぶ場合がある。ト
ランジスタ162がオフの場合、当該フローティングゲート部FGは絶縁体中に埋設され
たと見ることができ、フローティングゲート部FGには電荷が保持される。酸化物半導体
を用いたトランジスタ162のオフ電流は、シリコン半導体などで形成されるトランジス
タの10万分の1以下であるため、トランジスタ162のリークによる、フローティング
ゲート部FGに蓄積される電荷の消失を無視することが可能である。つまり、酸化物半導
体を用いたトランジスタ162により、電力の供給が無くても情報の保持が可能な不揮発
性の記憶装置を実現することが可能である。
【0197】
例えば、トランジスタ162の室温(25℃)でのオフ電流が10zA(1zA(ゼプト
アンペア)は1×10-21A)以下であり、容量素子164の容量値が10fF程度で
ある場合には、少なくとも10秒以上のデータ保持が可能である。なお、当該保持時間
が、トランジスタ特性や容量値によって変動することはいうまでもない。
【0198】
また、この場合、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて指摘されているゲ
ート絶縁膜(トンネル絶縁膜)の劣化という問題が存在しない。つまり、従来問題とされ
ていた、電子をフローティングゲートに注入する際のゲート絶縁膜の劣化を解消すること
ができる。これは、原理的な書き込み回数の制限が存在しないことを意味するものである
。また、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて書き込みや消去の際に必要
であった高電圧も不要である。
【0199】
図15(A)に示す半導体装置は、当該半導体装置を構成するトランジスタなどの要素が
抵抗および容量を含むものとして、図15(B)のように考えることが可能である。つま
り、図15(B)では、トランジスタ160および容量素子164が、それぞれ、抵抗お
よび容量を含んで構成されると考えていることになる。R1およびC1は、それぞれ、容
量素子164の抵抗値および容量値であり、抵抗値R1は、容量素子164を構成する絶
縁層による抵抗値に相当する。また、R2およびC2は、それぞれ、トランジスタ160
の抵抗値および容量値であり、抵抗値R2はトランジスタ160がオン状態の時のゲート
絶縁層による抵抗値に相当し、容量値C2はいわゆるゲート容量(ゲート電極と、ソース
電極またはドレイン電極との間に形成される容量、及び、ゲート電極とチャネル形成領域
との間に形成される容量)の容量値に相当する。
【0200】
トランジスタ162がオフ状態にある場合のソース電極とドレイン電極の間の抵抗値(実
効抵抗とも呼ぶ)をROSとすると、トランジスタ162のゲートリークが十分に小さい
条件において、R1およびR2が、R1≧ROS、R2≧ROSを満たす場合には、電荷
の保持期間(情報の保持期間ということもできる)は、主としてトランジスタ162のオ
フ電流によって決定されることになる。
【0201】
逆に、当該条件を満たさない場合には、トランジスタ162のオフ電流が十分に小さくと
も、保持期間を十分に確保することが困難になる。トランジスタ162のオフ電流以外の
リーク電流(例えば、ソース電極とゲート電極の間において生じるリーク電流等)が大き
いためである。このことから、本実施の形態において開示する半導体装置は、上述の関係
を満たすものであることが望ましいといえる。
【0202】
一方で、C1とC2は、C1≧C2の関係を満たすことが望ましい。C1を大きくするこ
とで、第5の配線によってフローティングゲート部FGの電位を制御する際(例えば、読
み出しの際)に、第5の配線の電位の変動を低く抑えることができるためである。
【0203】
上述の関係を満たすことで、より好適な半導体装置を実現することが可能である。なお、
R1およびR2は、トランジスタ160のゲート絶縁層や容量素子164の絶縁層によっ
て制御される。C1およびC2についても同様である。よって、ゲート絶縁層の材料や厚
さなどを適宜設定し、上述の関係を満たすようにすることが望ましい。
【0204】
本実施の形態で示す半導体装置においては、フローティングゲート部FGが、フラッシュ
メモリ等のフローティングゲート型のトランジスタのフローティングゲートと同等の作用
をするが、本実施の形態のフローティングゲート部FGは、フラッシュメモリ等のフロー
ティングゲートと本質的に異なる特徴を有する。フラッシュメモリでは、コントロールゲ
ートに印加される電圧が高いため、その電位の影響が、隣接するセルのフローティングゲ
ートにおよぶことを防ぐために、セルとセルとの間隔をある程度保つ必要が生じる。この
ことは、半導体装置の高集積化を阻害する要因の一つである。そして、当該要因は、高電
界をかけてトンネル電流を発生させるというフラッシュメモリの根本的な原理に起因する
ものである。
【0205】
また、フラッシュメモリの上記原理によって、絶縁膜の劣化が進行し、書き換え回数の限
界(10~10回程度)という別の問題も生じる。
【0206】
開示する発明に係る半導体装置は、酸化物半導体を用いたトランジスタのスイッチングに
よって動作し、上述のようなトンネル電流による電荷注入の原理を用いない。すなわち、
フラッシュメモリのような、電荷を注入するための高電界が不要である。これにより、隣
接セルに対する、コントロールゲートによる高電界の影響を考慮する必要がないため、高
集積化が容易になる。
【0207】
また、トンネル電流による電荷の注入を用いないため、メモリセルの劣化の原因が存在し
ない。つまり、フラッシュメモリと比較して高い耐久性および信頼性を有することになる
【0208】
また、高電界が不要であり、大型の周辺回路(昇圧回路など)が不要である点も、フラッ
シュメモリに対するアドバンテージである。
【0209】
なお、C1を構成する絶縁層の比誘電率εr1と、C2を構成する絶縁層の比誘電率εr
2とを異ならせる場合には、C1の面積S1と、C2の面積S2とが、2・S2≧S1(
望ましくはS2≧S1)を満たしつつ、C1≧C2を実現することが容易である。具体的
には、例えば、C1においては、酸化ハフニウムなどのhigh-k材料でなる膜、また
は酸化ハフニウムなどのhigh-k材料でなる膜と酸化物半導体でなる膜との積層構造
を採用してεr1を10以上、好ましくは15以上とし、C2においては、酸化シリコン
を採用して、εr2=3~4とすることができる。このような構成を併せて用いることで
、開示する発明に係る半導体装置の高集積化が可能である。
【0210】
なお、上記説明は、n型トランジスタ(nチャネル型トランジスタ)を用いる場合につい
てのものであるが、n型トランジスタに代えて、p型トランジスタを用いることができる
のはいうまでもない。
【0211】
以上示したように、開示する発明の一態様の半導体装置は、オフ状態でのソースとドレイ
ン間のリーク電流(オフ電流)が少ない書き込み用トランジスタ、当該書き込み用トラン
ジスタと異なる半導体材料を用いた読み出し用トランジスタ及び容量素子を含む不揮発性
のメモリセルを有している。
【0212】
書き込み用トランジスタのオフ電流は、室温(例えば、25℃)で100zA(1×10
-19A)以下、好ましくは10zA(1×10-20A)以下、さらに好ましくは、1
zA(1×10-21A)以下である。通常のシリコン半導体では、上述のように低いオ
フ電流を得ることは困難であるが、酸化物半導体を適切な条件で加工して得られたトラン
ジスタにおいては達成しうる。このため、書き込み用トランジスタとして、酸化物半導体
を含むトランジスタを用いることが好ましい。
【0213】
さらに酸化物半導体を用いたトランジスタはサブスレッショルドスイング値(S値)が小
さいため、比較的移動度が低くてもスイッチング速度を十分大きくすることが可能である
。よって、当該トランジスタを書き込み用トランジスタとして用いることで、フローティ
ングゲート部FGに与えられる書き込みパルスの立ち上がりを極めて急峻にすることがで
きる。また、オフ電流が小さいため、フローティングゲート部FGに保持させる電荷量を
少なくすることが可能である。つまり、酸化物半導体を用いたトランジスタを書き込み用
トランジスタとして用いることで、情報の書き換えを高速に行うことができる。
【0214】
読み出し用トランジスタとしては、読み出しの速度を高くするために、高速で動作するト
ランジスタを用いるのが望ましい。例えば、読み出し用トランジスタとしてスイッチング
速度が1ナノ秒以下のトランジスタを用いるのが好ましい。
【0215】
メモリセルへの情報の書き込みは、書き込み用トランジスタをオン状態とすることにより
、書き込み用トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子の電極の
一方と、読み出し用トランジスタのゲート電極とが電気的に接続されたフローティングゲ
ート部FGに電位を供給し、その後、書き込み用トランジスタをオフ状態とすることによ
り、フローティングゲート部FGに所定量の電荷を保持させることで行う。ここで、書き
込み用トランジスタのオフ電流は極めて小さいため、フローティングゲート部FGに供給
された電荷は長時間にわたって保持される。オフ電流が例えば実質的に0であれば、従来
のDRAMで必要とされたリフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作
の頻度を極めて低く(例えば、一ヶ月乃至一年に一度程度)することが可能となり、半導
体装置の消費電力を十分に低減することができる。
【0216】
また、メモリセルへの再度の情報の書き込みによって直接的に情報を書き換えることが可
能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされる消去動作が不要であり、
消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。つまり、半導体装置の高速
動作が実現される。また、従来のフローティングゲート型トランジスタで書き込みや消去
の際に必要とされた高い電圧を必要としないため、半導体装置の消費電力をさらに低減す
ることができる。本実施の形態に係るメモリセルに印加される電圧(メモリセルの各端子
に同時に印加される電位の最大のものと最小のものの差)の最大値は、2段階(1ビット
)の情報を書き込む場合、一つのメモリセルにおいて、5V以下、あるいは3V以下にす
ることができる。
【0217】
開示する発明に係る半導体装置に配置されるメモリセルは、書き込み用トランジスタと、
読み出し用トランジスタと、を少なくとも含んでいればよいため、例えば、1メモリセル
あたり6つのトランジスタを必要とするSRAMと比較して、メモリセルあたりの面積を
十分に小さくすることが可能である。つまり、半導体装置においてメモリセルを高密度に
配置することができる。
【0218】
また、従来のフローティングゲート型トランジスタでは、書き込み時にゲート絶縁膜(ト
ンネル絶縁膜)中を電荷が移動するために、当該ゲート絶縁膜(トンネル絶縁膜)の劣化
が不可避であった。しかしながら、本発明の一態様に係るメモリセルにおいては、書き込
み用トランジスタのスイッチング動作により情報の書き込みがなされるため、ゲート絶縁
膜の劣化の問題がない。これは、原理的な書き込み回数の制限が存在せず、書き換え耐性
が極めて高いことを意味するものである。例えば、本発明の一態様に係るメモリセルは、
1×10回(10億回)以上の書き込み後であっても、電流-電圧特性に劣化が見られ
ない。
【0219】
さらに、メモリセルの書き込み用トランジスタとして酸化物半導体を用いたトランジスタ
を用いる場合、酸化物半導体は一般にエネルギーギャップが大きく(例えば、In-Ga
-Zn-O系の場合3.0~3.5eV)熱励起キャリアが極めて少ないこともあり、例
えば、150℃もの高温環境下でもメモリセルの電流-電圧特性に劣化が見られない。
【0220】
上述のような優れた特性を有するトランジスタをメモリセルの書き込み用トランジスタと
して適用することで、従来にない特徴を有する半導体装置を提供することができる。
【0221】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0222】
(実施の形態3)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の応用例について、図16
図21を用いて説明する。
【0223】
図16には、本実施の形態にかかる半導体装置の概略を示す。
【0224】
図16は、図1または図15(A)に示す半導体装置(以下、メモリセル1200とも記
載する。)を複数用いて形成される半導体装置の回路図の例である。
【0225】
図16に示す半導体装置は、複数のメモリセル1200がマトリクス状に配置されたメモ
リセルアレイと、第1の駆動回路1211と、第2の駆動回路1212と、第3の駆動回
路1213と、第4の駆動回路1214と、第1の駆動回路1211と電気的に接続され
た、複数の配線L1と、第2の駆動回路1212と電気的に接続された、複数の配線L2
と、第3の駆動回路1213と電気的に接続された、複数の配線L3と、第4の駆動回路
1214と電気的に接続された、複数の配線L4と、を有する。
【0226】
図16に示すように、各メモリセル1200には、配線L1、配線L2、配線L3および
配線L4が電気的に接続される。これにより、各メモリセル1200を第1の駆動回路1
211、第2の駆動回路1212、第3の駆動回路1213および第4の駆動回路121
4を用いて、メモリセルの動作を制御することができる。また、各メモリセル1200を
マトリクス状に配置し、各配線L1、L2、L3、L4を行方向または列方向の格子状に
設けることにより、半導体装置の書き込み動作および読み出し動作を、メモリセル120
0の行ごとまたは列ごとに行うこともできる。
【0227】
なお、図16に示すメモリセル1200は、第1の駆動回路1211乃至第4の駆動回路
1214からそれぞれ一本ずつ配線が電気的に接続されているが、開示する発明はこれに
限定されない。いずれか一、または複数の駆動回路から複数本の配線がメモリセル120
0に電気的に接続されていても良い。また、いずれか一、または複数のメモリセル120
0に、いずれか一、または複数の駆動回路の配線が電気的に接続されないような構成とし
ても良い。
【0228】
また、図16に示す半導体装置では、第1の駆動回路1211、第2の駆動回路1212
、第3の駆動回路1213、第4の駆動回路1214は、それぞれ独立に設けているが、
開示する発明はこれに限定されない。いずれか一、または複数の機能を有する駆動回路を
用いても良い。なお、駆動回路は、十分な動作速度を確保するために、単結晶系の半導体
材料を用いて形成されることが望ましい。例えば、バルクシリコン(いわゆるシリコンウ
ェハ)を用いたものにすると良い。
【0229】
次に、より具体的な構成例について説明する。
【0230】
図17(A)および図17(B)は、図15(A)に示す半導体装置(以下、メモリセル
400とも記載する。)を複数用いて形成される半導体装置の回路図の例である。図17
(A)は、メモリセル400が直列に接続された、いわゆるNAND型の半導体装置の回
路図であり、図17(B)は、メモリセル400が並列に接続された、いわゆるNOR型
の半導体装置の回路図である。
【0231】
図17(A)に示す半導体装置は、ソース線SL、ビット線BL、第1信号線S1、複数
本の第2信号線S2、複数本のワード線WL、複数のメモリセル400を有する。図17
(A)では、ソース線SLおよびビット線BLを1本ずつ有する構成となっているが、こ
れに限られることなく、ソース線SLおよびビット線BLを複数本有する構成としてもよ
い。
【0232】
各メモリセル400において、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162
のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方とは、電気的に
接続されている。また、第1信号線S1とトランジスタ162のソース電極またはドレイ
ン電極の他方とは、電気的に接続され、第2信号線S2と、トランジスタ162のゲート
電極とは、電気的に接続されている。そして、ワード線WLと、容量素子164の電極の
他方は電気的に接続されている。
【0233】
また、メモリセル400が有するトランジスタ160のソース電極は、隣接するメモリセ
ル400のトランジスタ160のドレイン電極と電気的に接続され、メモリセル400が
有するトランジスタ160のドレイン電極は、隣接するメモリセル400のトランジスタ
160のソース電極と電気的に接続される。ただし、直列に接続された複数のメモリセル
のうち、一方の端に設けられたメモリセル400が有するトランジスタ160のドレイン
電極は、ビット線BLと電気的に接続される。また、直列に接続された複数のメモリセル
のうち、他方の端に設けられたメモリセル400が有するトランジスタ160のソース電
極は、ソース線SLと電気的に接続される。
【0234】
図17(A)に示す半導体装置では、行ごとの書き込み動作および読み出し動作を行う。
書き込み動作は次のように行われる。書き込みを行う行の第2の信号線S2にトランジス
タ162がオン状態となる電位を与え、書き込みを行う行のトランジスタ162をオン状
態にする。これにより、指定した行のトランジスタ160のゲート電極に第1の信号線S
1の電位が与えられ、当該ゲート電極に所定の電荷が与えられる。このようにして、指定
した行のメモリセルにデータを書き込むことができる。
【0235】
また、読み出し動作は次のように行われる。まず、読み出しを行う行以外のワード線WL
に、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷によらず、トランジスタ160が
オン状態となるような電位を与え、読み出しを行う行以外のトランジスタ160をオン状
態とする。それから、読み出しを行う行のワード線WLに、トランジスタ160のゲート
電極が有する電荷によって、トランジスタ160のオン状態またはオフ状態が選択される
ような電位(読み出し電位)を与える。そして、ソース線SLに定電位を与え、ビット線
BLに接続されている読み出し回路(図示しない)を動作状態とする。ここで、ソース線
SL-ビット線BL間の複数のトランジスタ160は、読み出しを行う行を除いてオン状
態となっているため、ソース線SL-ビット線BL間のコンダクタンスは、読み出しを行
う行のトランジスタ160の状態(オン状態またはオフ状態)によって決定される。読み
出しを行う行のトランジスタ160のゲート電極が有する電荷によって、トランジスタの
コンダクタンスは異なるから、それに応じて、ビット線BLの電位は異なる値をとること
になる。ビット線BLの電位を読み出し回路によって読み出すことで、指定した行のメモ
リセルから情報を読み出すことができる。
【0236】
図17(B)に示す半導体装置は、ソース線SL、ビット線BL、第1信号線S1、第2
信号線S2、およびワード線WLをそれぞれ複数本有し、複数のメモリセル400を有す
る。各トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレ
イン電極の一方と、容量素子164の電極の一方とは、電気的に接続されている。また、
ソース線SLとトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、ビット線BL
とトランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第1信号線
S1とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続さ
れ、第2信号線S2と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている
。そして、ワード線WLと、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0237】
図17(B)に示す半導体装置では、行ごとの書き込み動作および読み出し動作を行う。
書き込み動作は、上述の図17(A)に示す半導体装置と同様の方法で行われる。読み出
し動作は次のように行われる。まず、読み出しを行う行以外のワード線WLに、トランジ
スタ160のゲート電極に与えられた電荷によらず、トランジスタ160がオフ状態とな
るような電位を与え、読み出しを行う行以外のトランジスタ160をオフ状態とする。そ
れから、読み出しを行う行のワード線WLに、トランジスタ160のゲート電極が有する
電荷によって、トランジスタ160のオン状態またはオフ状態が選択されるような電位(
読み出し電位)を与える。そして、ソース線SLに定電位を与え、ビット線BLに接続さ
れている読み出し回路(図示しない)を動作状態とする。ここで、ソース線SL-ビット
線BL間のコンダクタンスは、読み出しを行う行のトランジスタ160の状態(オン状態
またはオフ状態)によって決定される。つまり、読み出しを行う行のトランジスタ160
のゲート電極が有する電荷によって、ビット線BLの電位は異なる値をとることになる。
ビット線BLの電位を読み出し回路によって読み出すことで、指定した行のメモリセルか
ら情報を読み出すことができる。
【0238】
なお、上記においては、各メモリセル400に保持させる情報量を1ビットとしたが、本
実施の形態に示す記憶装置の構成はこれに限られない。トランジスタ160のゲート電極
に与える電位を3以上用意して、各メモリセル400が保持する情報量を増加させても良
い。例えば、トランジスタ160のゲート電極にあたえる電位を4種類とする場合には、
各メモリセルに2ビットの情報を保持させることができる。
【0239】
次に、図17に示す半導体装置などに用いることができる読み出し回路の一例について図
18を用いて説明する。
【0240】
図18(A)には、読み出し回路の概略を示す。当該読み出し回路は、トランジスタとセ
ンスアンプ回路を有する。
【0241】
読み出し時には、端子Aは読み出しを行うメモリセルが接続されたビット線BLに接続さ
れる。また、トランジスタのゲート電極にはバイアス電位Vbiasが印加され、端子A
の電位が制御される。
【0242】
メモリセル400は、格納されるデータに応じて、異なる抵抗値を示す。具体的には、選
択したメモリセル400のトランジスタ160がオン状態の場合には低抵抗状態となり、
選択したメモリセル400のトランジスタ160がオフ状態の場合には高抵抗状態となる
【0243】
メモリセルが高抵抗状態の場合、端子Aの電位が参照電位Vrefより高くなり、センス
アンプは端子Aの電位に対応する電位を出力する。一方、メモリセルが低抵抗状態の場合
、端子Aの電位が参照電位Vrefより低くなり、センスアンプ回路は端子Aの電位に対
応する電位を出力する。
【0244】
このように、読み出し回路を用いることで、メモリセルからデータを読み出すことができ
る。なお、本実施の形態の読み出し回路は一例である。他の回路を用いても良い。また、
読み出し回路は、プリチャージ回路を有しても良い。参照電位Vrefの代わりに参照用
のビット線BLが接続される構成としても良い。
【0245】
図18(B)に、センスアンプ回路の一例である差動型センスアンプを示す。差動型セン
スアンプは、入力端子Vin(+)とVin(-)と出力端子Voutを有し、Vin(
+)とVin(-)の電位の差を増幅する。Vin(+)の電位がVin(-)の電位よ
りも高ければVoutは、High信号を出力し、Vin(+)の電位がVin(-)よ
りも低ければVoutは、Low信号を出力する。当該差動型センスアンプを読み出し回
路に用いる場合、Vin(+)とVin(-)の一方は端子Aと接続し、Vin(+)と
Vin(-)の他方には参照電位Vrefを与える。
【0246】
図18(C)に、センスアンプ回路の一例であるラッチ型センスアンプを示す。ラッチ型
センスアンプは、入出力端子V1およびV2と、制御用信号Sp、Snの入力端子を有す
る。まず、信号SpをHigh、信号SnをLowとして、電源電位(Vdd)を遮断す
る。そして、比較を行う電位V1inとV2inをV1とV2にそれぞれ与える。その後
、信号SpをLow、信号SnをHighとして、電源電位(Vdd)を供給すると、比
較を行う電位V1inとV2inがV1in>V2inの関係にあれば、V1の出力はH
igh、V2の出力はLowとなり、V1in<V2inの関係にあれば、V1の出力は
Low、V2の出力はHighとなる。このような関係を利用して、V1inとV2in
の差を増幅することができる。当該ラッチ型センスアンプを読み出し回路に用いる場合、
V1とV2の一方は、スイッチを介して端子Aおよび出力端子と接続し、V1とV2の他
方には参照電位Vrefを与える。
【0247】
図19は、図15(A)に示す半導体装置を複数用いて形成される半導体装置の回路図の
例である。図19に示す半導体装置は、m×nビットの記憶容量を有している。
【0248】
図19に係る半導体装置は、m本のワード線WL、及びm本の第2の信号線S2と、n本
のビット線BL、n本のソース線SL、及びn本の第1の信号線S1と、複数のメモリセ
ル1100が縦m個(行)×横n個(列)(m、nは自然数)のマトリクス状に配置され
たメモリセルアレイと、第1の駆動回路1111、第2の駆動回路1112、第3の駆動
回路1113、第4の駆動回路1114、といった周辺回路によって構成されている。こ
こで、メモリセル1100としては、先の実施の形態において説明した構成(例えば、図
15(A)に示される構成)が適用される。
【0249】
つまり、各メモリセル1100は、第1のトランジスタ160、第2のトランジスタ16
2、容量素子164をそれぞれ有している。第1のトランジスタ160のゲート電極と、
第2のトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の
電極の一方とは、接続され、ソース線SLと、第1のトランジスタ160のソース電極と
は、接続され、ビット線BLと、第1のトランジスタ160のドレイン電極とは、接続さ
れ、第1の信号線S1と、第2のトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の
他方とは、接続され、第2の信号線S2と、第2のトランジスタ162のゲート電極とは
、接続され、ワード線WLと、容量素子164の電極の他方とは、接続されている。
【0250】
また、メモリセル1100は、ソース線SLとビット線BLとの間に、並列に接続されて
いる。例えば、i行j列のメモリセル1100(i,j)(iは1以上m以下の整数、j
は1以上n以下の整数)は、ソース線SL(j)、ビット線BL(j)、第1の信号線S
1(j)、ワード線WL(i)、第2の信号線S2(i)、にそれぞれ接続されている。
【0251】
ソース線SL及びビット線BLは、第1の駆動回路1111と接続されており、第1の信
号線S1は、第2の駆動回路1112と接続されており、第2の信号線S2は、第3の駆
動回路1113と接続されており、ワード線WLは、第4の駆動回路1114と接続され
ている。なお、ここでは、第1の駆動回路1111、第2の駆動回路1112、第3の駆
動回路1113、第4の駆動回路1114は、それぞれ独立に設けているが、開示する発
明はこれに限定されない。いずれか一、または複数の機能を有するデコーダを用いても良
い。
【0252】
次に、図20に示すタイミングチャートを用いて、図19に示す半導体装置の書き込み動
作および読み出し動作について説明する。
【0253】
ここでは、簡単のため、2行×2列の半導体装置の動作について説明することとするが、
開示する発明はこれに限定されない。
【0254】
図20は、図19に示す半導体装置の動作を説明するための図である。図20において、
S1(1)およびS1(2)は、それぞれ第1の信号線S1の電位、S2(1)およびS
2(2)は、それぞれ第2の信号線S2の電位、BL(1)およびBL(2)は、それぞ
れビット線BLの電位、WL(1)およびWL(2)は、ワード線WLの電位、SL(1
)およびSL(2)は、それぞれソース線SLの電位に相当する。
【0255】
まず、1行目のメモリセル(1,1)、およびメモリセル(1,2)への書き込み、1行
目のメモリセル(1,1)、およびメモリセル(1,2)からの読み出しを行う場合につ
いて説明する。なお、以下では、メモリセル(1,1)へ書き込むデータを”1”とし、
メモリセル(1,2)へ書き込むデータを”0”とする場合について説明する。
【0256】
はじめに、書き込みについて説明する。1行目書き込み期間において、1行目の第2の信
号線S2(1)に電位VHを与え、1行目の第2のトランジスタ162をオン状態とする
。また、2行目の第2の信号線S2(2)に0Vを与え、2行目の第2のトランジスタ1
62をオフ状態とする。
【0257】
次に、1列目の第1の信号線S1(1)に電位V2、2列目の第1の信号線S1(2)に
電位0Vを与える。
【0258】
その結果、メモリセル(1,1)のフローティングゲート部FGには電位V2が、メモリ
セル(1,2)のフローティングゲート部FGには0Vが与えられる。ここでは、電位V
2は第1のトランジスタ160のしきい値電圧より高い電位とする。そして、1行目の第
2の信号線S2(1)の電位を0Vとして、1行目の第2のトランジスタ162をオフ状
態とすることで、書き込みを終了する。
【0259】
なお、ワード線WL(1)、WL(2)は0Vとしておく。また、1列目の第1の信号線
S1(1)の電位を変化させる前に1行目の第2の信号線S2(1)を0Vとする。書き
込み後の、ワード線WLに接続される端子を制御ゲート電極、第1のトランジスタ160
のソース電極をソース電極、第2のトランジスタ162のドレイン電極をドレイン電極、
とそれぞれ見なした記憶素子のしきい値は、データ”0”ではVw0、データ”1”では
Vw1となる。ここで、メモリセルのしきい値とは、第1のトランジスタ160のソース
電極とドレイン電極の間の抵抗が変化する、ワード線WLに接続される端子の電圧をいう
ものとする。なお、Vw0>0>Vw1とする。
【0260】
次に、読み出しについて説明する。1行目の読み出し期間において、1行目のワード線W
L(1)に0Vを与え、2行目のワード線WL(2)には電位VLを与える。電位VLは
しきい値Vw1より低い電位とする。WL(1)を0Vとすると、1行目において、デー
タ”0”が保持されているメモリセル(1,2)の第1のトランジスタ160はオフ状態
、データ”1”が保持されているメモリセル(1,1)の第1のトランジスタ160はオ
ン状態となる。WL(2)を電位VLとすると、2行目において、データ”0”、”1”
のいずれが保持されているメモリセルであっても、第1のトランジスタ160はオフ状態
となる。
【0261】
次に、1列目のソース線SL(1)、2列目のソース線SL(2)に電位0Vを与える。
【0262】
その結果、ビット線BL(1)-ソース線SL(1)間はメモリセル(1,1)の第1の
トランジスタがオン状態であるため低抵抗となり、ビット線BL(2)-ソース線SL(
2)間はメモリセル(1,2)の第1のトランジスタ160がオフ状態であるため、高抵
抗となる。ビット線BL(1)、ビット線BL(2)に接続される読み出し回路は、ビッ
ト線の抵抗の違いから、データを読み出すことができる。
【0263】
また、第2の信号線S2(1)には0Vを、第2の信号線S2(2)には電位VLを与え
、第2のトランジスタ162を全てオフ状態としておく。1行目のフローティングゲート
部FGの電位は0VまたはV2であるから、第2の信号線S2(1)を0Vとすることで
1行目の第2のトランジスタ162を全てオフ状態とすることができる。一方、2行目の
フローティングゲート部FGの電位は、ワード線WL(2)に電位VLが与えられると、
書き込み直後の電位より低い電位となってしまう。これにより、第2のトランジスタ16
2がオン状態となることを防止するために、第2の信号線S2(2)をワード線WL(2
)と同じ低電位とする。以上により、第2のトランジスタ162を全てオフ状態とするこ
とができる。
【0264】
次に、読み出し回路として、図21に示す回路を用いる場合の出力電位について説明する
。ビット線BL(1)-ソース線SL(1)間は低抵抗であるため、クロックドインバー
タには低電位が入力され、出力D(1)はHighとなる。ビット線BL(2)-ソース
線SL(2)間は高抵抗であるため、クロックドインバータには高電位が入力され、出力
D(2)はLowとなる。
【0265】
動作電圧は、例えば、VDD=2V、V2=1.5V、VH=2V、VL=-2Vとする
ことができる。
【0266】
以上、本実施の形態において示すように、メモリセルを複数設けることで、半導体装置の
記憶容量を増加させることができる。なお、メモリセルの数や配置、配線の数や配置、駆
動回路の数や配置、などは適宜設計することができるから、上述の構成に限定されるもの
ではない。
【0267】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0268】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2とは異なる、開示する発明の一態様
に係る半導体装置の構成およびその作製方法について、図22乃至図24を参照して説明
する。なお、本実施の形態において説明するトランジスタ260は、先の実施の形態にお
ける回路図中のトランジスタ160として、トランジスタ262は、先の実施の形態にお
ける回路図中のトランジスタ162として、容量素子264は、先の実施の形態における
回路図中の容量素子164として用いることが可能である。
【0269】
〈半導体装置の断面構成および平面構成〉
図22は、上記半導体装置の構成の一例である。図22(A)には、半導体装置の断面を
図22(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図22(A)は、図
22(B)のC1-C2およびD1-D2における断面に相当する。図22(B)の平面
図においては、煩雑になることを避けるため、ソース電極またはドレイン電極254や、
配線256など、構成要素の一部を省略している。図22(A)および図22(B)に示
される半導体装置は、下部に酸化物半導体以外の半導体材料を用いたトランジスタ260
を有し、上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ262を有するものである。酸化物半
導体以外の半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物
半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0270】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明す
るが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、開示
する発明の技術的な本質は、情報を保持するために酸化物半導体をトランジスタ262に
用いる点にあるから、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない
【0271】
図22に示される半導体装置は、トランジスタ262および容量素子264が、トランジ
スタ260と重畳するように設けられている。図22(B)に示すような、平面レイアウ
トを採用することにより、高集積化が可能である。例えば、最小加工寸法をFとして、メ
モリセルの占める面積を15F~25Fとすることが可能である。
【0272】
図22に示される半導体装置と、先の実施の形態に示される半導体装置の相違の一は、ト
ランジスタ260におけるサイドウォール絶縁層の有無である。つまり、図22に示され
る半導体装置は、サイドウォール絶縁層を有しない。また、サイドウォール絶縁層を形成
しないことにより、不純物領域114(例えば、図2参照)が形成されていない。このよ
うに、サイドウォール絶縁層を設けない場合は、サイドウォール絶縁層を設ける場合と比
較して集積化が容易である。また、サイドウォール絶縁層を設ける場合と比較して、作製
工程を簡略化することが可能である。
【0273】
図22に示される半導体装置と、先の実施の形態に示される半導体装置の相違の他の一は
、トランジスタ260における層間絶縁層である。つまり、図22に示される半導体装置
では、水素を含む層間絶縁層225がトランジスタ260の金属化合物領域224と接す
る。水素を含む層間絶縁層225を金属化合物領域224と接するように設けることで、
トランジスタ260に対して水素を供給しトランジスタ260の特性を向上させることが
可能である。このような層間絶縁層225としては、例えば、プラズマCVD法により形
成された水素を含む窒化シリコン層などがある。さらに、層間絶縁層226として、水素
濃度が低い絶縁層を適用することで、トランジスタ262の特性を悪化させるおそれがあ
る水素の、トランジスタ262への混入を防ぐことが可能である。このような層間絶縁層
226としては、例えば、水素の非存在下でのスパッタ法により形成された窒化シリコン
層などがある。このような構成を採用することにより、トランジスタ260とトランジス
タ262の特性を十分に高めることが可能できる。なお、図22において、基板200は
実施の形態1の基板100に、素子分離絶縁層206は実施の形態1の素子分離絶縁層1
06に、ゲート絶縁層208は実施の形態1のゲート絶縁層108に、ゲート電極210
は実施の形態1のゲート電極110に、チャネル形成領域216は実施の形態1のチャネ
ル形成領域116に、高濃度不純物領域220は実施の形態1の高濃度不純物領域120
に、金属化合物領域224は実施の形態1の金属化合物領域124に、それぞれ対応する
【0274】
図22に示される半導体装置と、先の実施の形態に示される半導体装置の相違の他の一は
、トランジスタ262において、絶縁層243aおよび絶縁層243bが酸化物半導体層
244とソース電極またはドレイン電極242aの間、および酸化物半導体層244とソ
ース電極またはドレイン電極242bの間に設けられている点である。このように、絶縁
層243aおよび絶縁層243bを設けることにより、ゲート電極248aと、ソース電
極またはドレイン電極242a(または、ゲート電極248aと、ソース電極またはドレ
イン電極242b)が形成するいわゆるゲート容量を低減し、トランジスタ262の動作
速度を向上させることができる。
【0275】
なお、実施の形態1と同様、下部のトランジスタ260と上部のトランジスタ262は、
ゲート電極210上にソース電極またはドレイン電極242aが直接形成されることで電
気的に接続されている。このような構成とすることで、電極や配線を別途設ける場合と比
較して、集積度が向上する。また、作製工程が簡略化される。
【0276】
なお、本実施の形態では、上述の相違点を一体に有する構成を示しているが、当該相違点
のいずれか一のみを有する構成を採用しても良い。
【0277】
〈半導体装置の作製方法〉
次に、上記半導体装置の作製方法の一例について説明する。以下では、下部のトランジス
タ260を形成した後の工程、上部のトランジスタ262の作製方法について図23およ
図24を参照して説明する。下部のトランジスタ260については、実施の形態1で示
した方法と同様の方法で作製することができる。詳細については、実施の形態1の記載を
参酌できる。なお、本実施の形態では、容量素子264が、設けられているものとする。
また、本実施の形態では、トランジスタ260を覆うように層間絶縁層225、層間絶縁
層226、層間絶縁層228、の三種類の層間絶縁層が形成されるものとする。また、本
実施の形態では、トランジスタ260の作製工程において、実施の形態1におけるソース
電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電極130bを形成しない
が、ソース電極またはドレイン電極130aおよびソース電極またはドレイン電極130
bが形成されていない状態であっても、便宜上、トランジスタ260と呼ぶことにする。
【0278】
まず、実施の形態1に示す方法で下部のトランジスタ260を形成した後、トランジスタ
260のゲート電極210の上面より上部を除去する。当該除去工程には、CMP(化学
的機械的研磨)などの研磨処理を適用すればよい。これにより、ゲート電極210上面よ
り上の、層間絶縁層225、層間絶縁層226、層間絶縁層228は除去される。なお、
研磨処理に係る表面を十分に平坦化することにより、後の工程において、良好な電極、配
線、絶縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0279】
次に、ゲート電極210、層間絶縁層225、層間絶縁層226、層間絶縁層228上に
導電層を形成し、当該導電層を選択的にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極
242a、ソース電極またはドレイン電極242bを形成する(図23(A)参照)。こ
こで、ソース電極またはドレイン電極242aは、ゲート電極210と直接接続されるよ
うに形成する。
【0280】
ソース電極またはドレイン電極242a、ソース電極またはドレイン電極242bを形成
するための導電層は、実施の形態1で示したソース電極またはドレイン電極142a、ソ
ース電極またはドレイン電極142bの材料と同様の材料を用いて形成することができる
。また、導電層のエッチングについても、実施の形態1で示した方法と同様の方法を用い
て行うことができる。詳細については、実施の形態1の記載を参酌することができる。
【0281】
次に、ソース電極またはドレイン電極242a、ソース電極またはドレイン電極242b
を覆うように絶縁層を形成し、当該絶縁層を選択的にエッチングして、ソース電極または
ドレイン電極242a上に絶縁層243aを、ソース電極またはドレイン電極242b上
に絶縁層243bを、それぞれ形成する(図23(B)参照)。
【0282】
当該絶縁層243a、絶縁層243bを設けることにより、後に形成されるゲート電極2
48aと、ソース電極またはドレイン電極242a、および、ソース電極またはドレイン
電極242bとの間の寄生容量を低減することが可能である。
【0283】
次に、ソース電極またはドレイン電極242a、ソース電極またはドレイン電極242b
を覆うように酸化物半導体層244を形成し、酸化物半導体層244上にゲート絶縁層2
46を形成する(図23(C)参照)。
【0284】
酸化物半導体層244は、実施の形態1で示した酸化物半導体層140の材料、方法によ
り形成することができる。また、酸化物半導体層244に対しては、熱処理(第1の熱処
理)を行うことが望ましい。詳細については、実施の形態1の記載を参酌することができ
る。
【0285】
ゲート絶縁層246は、実施の形態1で示したゲート絶縁層138の材料、方法により形
成することができる。また、ゲート絶縁層246の形成後には、不活性ガス雰囲気下、ま
たは酸素雰囲気下で熱処理(第2の熱処理)を行うのが望ましい。詳細については、実施
の形態1の記載を参酌することができる。
【0286】
次に、ゲート絶縁層246上において、トランジスタ262のチャネル形成領域となる領
域と重畳する領域にゲート電極248aを形成し、ソース電極またはドレイン電極242
aと重畳する領域に電極248bを形成する(図23(D)参照)。
【0287】
ゲート電極248aおよび電極248bは、ゲート絶縁層246上に導電層を形成した後
に、当該導電層を選択的にエッチングすることによって形成することができる。ゲート電
極248aおよび電極248bとなる導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、
プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。詳細は、ソース電極ま
たはドレイン電極242aなどの場合と同様であり、これらの記載を参酌できる。
【0288】
次に、ゲート絶縁層246、ゲート電極248a、および電極248b上に、層間絶縁層
250および層間絶縁層252を形成する(図24(A)参照)。層間絶縁層250およ
び層間絶縁層252は、実施の形態1で示した保護絶縁層144および層間絶縁層146
の材料、方法により形成することができる。詳細については、実施の形態1の記載を参酌
することができる。
【0289】
なお、上記層間絶縁層252は、その表面が平坦になるように形成することが望ましい。
表面が平坦になるように層間絶縁層252を形成することで、半導体装置を微細化した場
合などにおいても、層間絶縁層252上に、電極や配線などを好適に形成することができ
るためである。なお、層間絶縁層252の平坦化は、CMP(化学的機械的研磨)などの
方法を用いて行うことができる。
【0290】
次に、層間絶縁層225、層間絶縁層226、層間絶縁層228、酸化物半導体層244
、ゲート絶縁層246、層間絶縁層250、層間絶縁層252を選択的にエッチングして
、トランジスタ260の金属化合物領域224にまで達する開口を形成する(図24(B
)参照)。エッチングとしては、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれを用い
ても良いが、微細化の観点からは、ドライエッチングを用いるのが望ましい。
【0291】
そして、上記開口に埋め込むように、ソース電極またはドレイン電極254を形成する。
そして、ソース電極またはドレイン電極254と接続する配線256を形成する(図24
(C)参照)。
【0292】
ソース電極またはドレイン電極254は、例えば、開口を含む領域にPVD法やCVD法
などを用いて導電層を形成した後、エッチング処理やCMPといった方法を用いて、上記
導電層の一部を除去することにより形成することができる。より具体的には、例えば、開
口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD法により窒化チタン膜を薄
く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成する方法を適用することが
できる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜
など)を還元し、下部電極など(ここでは金属化合物領域224)との接触抵抗を低減さ
せる機能を有する。また、その後に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制
するバリア機能を備える。また、チタンや、窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後
に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0293】
配線256は、ソース電極またはドレイン電極254に接する導電層を形成した後に、当
該導電層を選択的にエッチングすることによって形成することができる。当該導電層は、
スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成す
ることができる。詳細は、ソース電極またはドレイン電極242aなどの場合と同様であ
る。
【0294】
以上により、トランジスタ260、トランジスタ262および容量素子264を有する半
導体装置が完成する。
【0295】
本実施の形態で示す半導体装置は、トランジスタ262および容量素子264が、トラン
ジスタ260と重畳する構成を備えていること、トランジスタ260がサイドウォール絶
縁層を有しないこと、ゲート電極210上にソース電極またはドレイン電極242aが直
接形成さていること、などにより高集積化が可能になっている。また、作製工程が簡略化
されている。
【0296】
また、本実施の形態で示す半導体装置は、層間絶縁層225として、水素を含む絶縁層を
適用し、層間絶縁層226として、水素濃度の低い絶縁層を適用することで、トランジス
タ260およびトランジスタ262の特性が高められている。また、絶縁層243aおよ
び絶縁層243bを有することで、いわゆるゲート容量が低減され、トランジスタ262
の動作速度が向上している。
【0297】
本実施の形態に示す上述の特徴により、きわめて優れた特性の半導体装置を提供すること
が可能である。
【0298】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0299】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態で得られる半導体装置を搭載した電子機器の例につい
図10を用いて説明する。先の実施の形態で得られる半導体装置は、電力の供給がない
場合でも、情報を保持することが可能である。また、書き込み、消去に伴う劣化が生じな
い。さらに、その動作も高速である。このため、当該半導体装置を用いて新たな構成の電
子機器を提供することが可能である。なお、先の実施の形態に係る半導体装置は、集積化
されて回路基板などに実装され、各電子機器の内部に搭載されることになる。
【0300】
図10(A)は、先の実施の形態に係る半導体装置を含むノート型のパーソナルコンピュ
ータであり、本体301、筐体302、表示部303、キーボード304などによって構
成されている。
【0301】
図10(B)は、先の実施の形態に係る半導体装置を含む携帯情報端末(PDA)であり
、本体311には表示部313と、外部インターフェイス315と、操作ボタン314等
が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス312がある。
【0302】
図10(C)には、先の実施の形態に係る半導体装置を含む電子ペーパーの一例として、
電子書籍320を示す。電子書籍320は、筐体321および筐体323の2つの筐体で
構成されている。筐体321および筐体323は、軸部337により一体とされており、
当該軸部337を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、電子書
籍320は、紙の書籍のように用いることが可能である。
【0303】
筐体321には表示部325が組み込まれ、筐体323には表示部327が組み込まれて
いる。表示部325および表示部327は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異
なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば
右側の表示部(図10(C)では表示部325)に文章を表示し、左側の表示部(図10
(C)では表示部327)に画像を表示することができる。
【0304】
また、図10(C)では、筐体321に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐
体321は、電源331、操作キー333、スピーカー335などを備えている。操作キ
ー333により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポ
インティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部
接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSBケーブルなど
の各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい
。さらに、電子書籍320は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0305】
また、電子書籍320は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電
子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも
可能である。
【0306】
なお、電子ペーパーは、情報を表示するものであればあらゆる分野に適用することが可能
である。例えば、電子書籍以外にも、ポスター、電車などの乗り物の車内広告、クレジッ
トカード等の各種カードにおける表示などに適用することができる。
【0307】
図10(D)は、先の実施の形態に係る半導体装置を含む携帯電話機である。当該携帯電
話機は、筐体340および筐体341の二つの筐体で構成されている。筐体341は、表
示パネル342、スピーカー343、マイクロフォン344、ポインティングデバイス3
46、カメラ用レンズ347、外部接続端子348などを備えている。また、筐体340
は、当該携帯電話機の充電を行う太陽電池セル349、外部メモリスロット350などを
備えている。また、アンテナは筐体341内部に内蔵されている。
【0308】
表示パネル342はタッチパネル機能を備えており、図10(D)には映像表示されてい
る複数の操作キー345を点線で示している。なお、当該携帯電話は、太陽電池セル34
9で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路を実装している。ま
た、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置などを内蔵した構成とすること
もできる。
【0309】
表示パネル342は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル3
42と同一面上にカメラ用レンズ347を備えているため、テレビ電話が可能である。ス
ピーカー343およびマイクロフォン344は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再
生などが可能である。さらに、筐体340と筐体341はスライドし、図10(D)のよ
うに展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可
能である。
【0310】
外部接続端子348はACアダプタやUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であ
り、充電やデータ通信が可能になっている。また、外部メモリスロット350に記録媒体
を挿入し、より大量のデータの保存および移動に対応できる。また、上記機能に加えて、
赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0311】
図10(E)は、先の実施の形態に係る半導体装置を含むデジタルカメラである。当該デ
ジタルカメラは、本体361、表示部(A)367、接眼部363、操作スイッチ364
、表示部(B)365、バッテリー366などによって構成されている。
【0312】
図10(F)は、先の実施の形態に係る半導体装置を含むテレビジョン装置である。テレ
ビジョン装置370では、筐体371に表示部373が組み込まれている。表示部373
により、映像を表示することが可能である。なお、ここでは、スタンド375により筐体
371を支持した構成を示している。
【0313】
テレビジョン装置370の操作は、筐体371が備える操作スイッチや、別体のリモコン
操作機380により行うことができる。リモコン操作機380が備える操作キー379に
より、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部373に表示される映像を操作
することができる。また、リモコン操作機380に、当該リモコン操作機380から出力
する情報を表示する表示部377を設ける構成としてもよい。
【0314】
なお、テレビジョン装置370は、受信機やモデムなどを備えた構成とするのが好適であ
る。受信機により、一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して
有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信
者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うこ
とが可能である。
【0315】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる
【実施例0316】
本実施例では、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流を求めた結
果について説明する。
【0317】
まず、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流が十分に小さいこと
を考慮して、チャネル幅Wが1mと十分に大きいトランジスタを用意してオフ電流の測定
を行った。チャネル幅Wが1mのトランジスタのオフ電流を測定した結果を図25に示す
図25において、横軸はゲート電圧VG、縦軸はドレイン電流IDである。ドレイン電
圧VDが+1Vまたは+10Vの場合、ゲート電圧VGが-5Vから-20Vの範囲では
、薄膜トランジスタのオフ電流は、検出限界である1×10-13A以下であることがわ
かった。また、トランジスタのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの
値)は1aA/μm(1×10-18A/μm)以下となることがわかった。
【0318】
次に、高純度化された酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタのオフ電流をさらに正確に
求めた結果について説明する。上述したように、高純度化された酸化物半導体を用いたト
ランジスタのオフ電流は、測定器の検出限界である1×10-13A以下であることがわ
かった。そこで、特性評価用素子を作製し、より正確なオフ電流の値(上記測定における
測定器の検出限界以下の値)を求めた結果について説明する。
【0319】
はじめに、電流測定方法に用いた特性評価用素子について、図26を参照して説明する。
【0320】
図26に示す特性評価用素子は、測定系800が3つ並列に接続されている。測定系80
0は、容量素子802、トランジスタ804、トランジスタ805、トランジスタ806
、トランジスタ808を有する。トランジスタ804、トランジスタ805、トランジス
タ806には、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタを適用した。
【0321】
測定系800において、トランジスタ804のソース端子およびドレイン端子の一方と、
容量素子802の端子の一方と、トランジスタ805のソース端子およびドレイン端子の
一方は、電源(V2を与える電源)に接続されている。また、トランジスタ804のソー
ス端子およびドレイン端子の他方と、トランジスタ808のソース端子およびドレイン端
子の一方と、容量素子802の端子の他方と、トランジスタ805のゲート端子とは、接
続されている。また、トランジスタ808のソース端子およびドレイン端子の他方と、ト
ランジスタ806のソース端子およびドレイン端子の一方と、トランジスタ806のゲー
ト端子は、電源(V1を与える電源)に接続されている。また、トランジスタ805のソ
ース端子およびドレイン端子の他方と、トランジスタ806のソース端子およびドレイン
端子の他方とは、接続され、出力端子となっている。
【0322】
なお、トランジスタ804のゲート端子には、トランジスタ804のオン状態と、オフ状
態を制御する電位Vext_b2が供給され、トランジスタ808のゲート端子には、ト
ランジスタ808のオン状態と、オフ状態を制御する電位Vext_b1が供給される。
また、出力端子からは電位Voutが出力される。
【0323】
次に、上記の特性評価用素子を用いた電流測定方法について説明する。
【0324】
まず、オフ電流を測定するために電位差を付与する初期期間の概略について説明する。初
期期間においては、トランジスタ808のゲート端子に、トランジスタ808をオン状態
とする電位Vext_b1を入力して、トランジスタ804のソース端子またはドレイン
端子の他方と接続されるノード(つまり、トランジスタ808のソース端子およびドレイ
ン端子の一方、容量素子802の端子の他方、およびトランジスタ805のゲート端子に
接続されるノード)であるノードAに電位V1を与える。ここで、電位V1は、例えば高
電位とする。また、トランジスタ804はオフ状態としておく。
【0325】
その後、トランジスタ808のゲート端子に、トランジスタ808をオフ状態とする電位
Vext_b1を入力して、トランジスタ808をオフ状態とする。トランジスタ808
をオフ状態とした後に、電位V1を低電位とする。ここでも、トランジスタ804はオフ
状態としておく。また、電位V2は電位V1と同じ電位とする。以上により、初期期間が
終了する。初期期間が終了した状態では、ノードAとトランジスタ804のソース端子及
びドレイン端子の一方との間に電位差が生じ、また、ノードAとトランジスタ808のソ
ース端子及びドレイン端子の他方との間に電位差が生じることになるため、トランジスタ
804およびトランジスタ808には僅かに電荷が流れる。つまり、オフ電流が発生する
【0326】
次に、オフ電流の測定期間の概略について説明する。測定期間においては、トランジスタ
804のソース端子またはドレイン端子の一方の端子の電位(つまりV2)、および、ト
ランジスタ808のソース端子またはドレイン端子の他方の端子の電位(つまりV1)は
低電位に固定しておく。一方、測定期間中は、上記ノードAの電位は固定しない(フロー
ティング状態とする)。これにより、トランジスタ804に電荷が流れ、時間の経過と共
にノードAに保持される電荷量が変動する。そして、ノードAに保持される電荷量の変動
に伴って、ノードAの電位が変動する。つまり、出力端子の出力電位Voutも変動する
【0327】
上記電位差を付与する初期期間、および、その後の測定期間における各電位の関係の詳細
(タイミングチャート)を図27に示す。
【0328】
初期期間において、まず、電位Vext_b2を、トランジスタ804がオン状態となる
ような電位(高電位)とする。これによって、ノードAの電位はV2すなわち低電位(V
SS)となる。その後、電位Vext_b2を、トランジスタ804がオフ状態となるよ
うな電位(低電位)として、トランジスタ804をオフ状態とする。そして、次に、電位
Vext_b1を、トランジスタ808がオン状態となるような電位(高電位)とする。
これによって、ノードAの電位はV1、すなわち高電位(VDD)となる。その後、Ve
xt_b1を、トランジスタ808がオフ状態となるような電位とする。これによって、
ノードAがフローティング状態となり、初期期間が終了する。
【0329】
その後の測定期間においては、電位V1および電位V2を、ノードAに電荷が流れ込む、
またはノードAから電荷が流れ出すような電位とする。ここでは、電位V1および電位V
2を低電位(VSS)とする。ただし、出力電位Voutを測定するタイミングにおいて
は、出力回路を動作させる必要が生じるため、一時的にV1を高電位(VDD)とするこ
とがある。なお、V1を高電位(VDD)とする期間は、測定に影響を与えない程度の短
期間とする。
【0330】
上述のようにして電位差を与え、測定期間が開始されると、時間の経過と共にノードAに
保持される電荷量が変動し、これに従ってノードAの電位が変動する。これは、トランジ
スタ805のゲート端子の電位が変動することを意味するから、時間の経過と共に、出力
端子の出力電位Voutの電位も変化することとなる。
【0331】
得られた出力電位Voutから、オフ電流を算出する方法について、以下に説明する。
【0332】
オフ電流の算出に先だって、ノードAの電位Vと、出力電位Voutとの関係を求めて
おく。これにより、出力電位VoutからノードAの電位Vを求めることができる。上
述の関係から、ノードAの電位Vは、出力電位Voutの関数として次式のように表す
ことができる。
【0333】
【数1】
【0334】
また、ノードAの電荷Qは、ノードAの電位V、ノードAに接続される容量C、定
数(const)を用いて、次式のように表される。ここで、ノードAに接続される容量
は、容量素子802の容量と他の容量の和である。
【0335】
【数2】
【0336】
ノードAの電流Iは、ノードAに流れ込む電荷(またはノードAから流れ出る電荷)の
時間微分であるから、ノードAの電流Iは次式のように表される。
【0337】
【数3】
【0338】
このように、ノードAに接続される容量Cと、出力端子の出力電位Voutから、ノー
ドAの電流Iを求めることができる。
【0339】
以上に示す方法により、オフ状態においてトランジスタのソースとドレイン間を流れるリ
ーク電流(オフ電流)を測定することができる。
【0340】
本実施例では、チャネル長L=10μm、チャネル幅W=50μmの高純度化した酸化物
半導体を用いてトランジスタ804、トランジスタ805、トランジスタ806、トラン
ジスタ808を作製した。また、並列された各測定系800において、容量素子802a
~802cの容量値をそれぞれ、容量素子802aを100fF、容量素子802bを1
pF、容量素子802cを3pFとした。
【0341】
なお、本実施例に係る測定では、VDD=5V、VSS=0Vとした。また、測定期間に
おいては、電位V1を原則としてVSSとし、10~300secごとに、100mse
cの期間だけVDDとしてVoutを測定した。また、素子に流れる電流Iの算出に用い
られるΔtは、約30000secとした。
【0342】
図28に、上記電流測定に係る経過時間Timeと、出力電位Voutとの関係を示す。
図28より、時間の経過にしたがって、電位が変化している様子が確認できる。
【0343】
図29には、上記電流測定によって算出された室温(25℃)におけるオフ電流を示す。
なお、図29は、ソース-ドレイン電圧Vと、オフ電流Iとの関係を表すものである。図
29から、ソース-ドレイン電圧が4Vの条件において、オフ電流は約40zA/μmで
あることが分かった。また、ソース-ドレイン電圧が3.1Vの条件において、オフ電流
は10zA/μm以下であることが分かった。なお、1zAは10-21Aを表す。
【0344】
さらに、上記電流測定によって算出された85℃の温度環境下におけるオフ電流について
図30に示す。図30は、85℃の温度環境下におけるソース-ドレイン電圧Vと、オフ
電流Iとの関係を表すものである。図30から、ソース-ドレイン電圧が3.1Vの条件
において、オフ電流は100zA/μm以下であることが分かった。
【0345】
以上、本実施例により、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタでは、オフ電
流が十分に小さくなることが確認された。
【実施例0346】
開示する発明の一態様にかかる半導体装置の書き換え可能回数につき調査した。本実施例
では、当該調査結果につき、図31を参照して説明する。
【0347】
調査に用いた半導体装置は、図15(A)に示す回路構成の半導体装置である。ここで、
トランジスタ162に相当するトランジスタには酸化物半導体を用い、容量素子164に
相当する容量素子としては、0.33pFの容量値のものを用いた。
【0348】
調査は、初期のメモリウィンドウ幅と、情報の保持および情報の書き込みを所定回数繰り
返した後のメモリウィンドウ幅とを比較することにより行った。情報の保持および情報の
書き込みは、図15(A)における第3の配線に相当する配線に0V、または5Vのいず
れかを与え、第4の配線に相当する配線に、0V、または5Vのいずれかを与えることに
より行った。第4の配線に相当する配線の電位が0Vの場合には、トランジスタ162に
相当するトランジスタ(書き込み用トランジスタ)はオフ状態であるから、ノードFGに
与えられた電位が保持される。第4の配線に相当する配線の電位が5Vの場合には、トラ
ンジスタ162に相当するトランジスタはオン状態であるから、第3の配線に相当する配
線の電位がノードFGに与えられる。
【0349】
メモリウィンドウ幅とは、記憶装置の特性を示す指標の一つである。ここでは、異なる記
憶状態の間での、第5の配線に相当する配線の電位Vcgと、トランジスタ160に相当
するトランジスタ(読み出し用トランジスタ)のドレイン電流Idとの関係を示す曲線(
Vcg-Id曲線)の、シフト量ΔVcgをいうものとする。異なる記憶状態とは、ノー
ドFGに0Vが与えられた状態(以下、Low状態という)と、ノードFGに5Vが与え
られた状態(以下、High状態という)をいう。つまり、メモリウィンドウ幅は、Lo
w状態とHigh状態において、電位Vcgの掃引を行うことで確認できる。
【0350】
図31に、初期状態におけるメモリウィンドウ幅と、1×10回の書き込みを行った後
のメモリウィンドウ幅の調査結果を示す。なお、図31において、横軸はVcg(V)を
示し、縦軸はId(A)を示す。図31から、1×10回の書き込み前後において、メ
モリウィンドウ幅が変化していないことが確認できる。1×10回の書き込み前後にお
いてメモリウィンドウ幅が変化しないということは、少なくともこの間は、半導体装置が
劣化しないことを示すものである。
【0351】
上述のように、開示する発明の一態様に係る半導体装置は、保持および書き込みを1×1
回もの多数回繰り返しても特性が変化せず、書き換え耐性が極めて高い。つまり、開
示する発明の一態様によって、極めて信頼性の高い半導体装置が実現されるといえる。
【符号の説明】
【0352】
100 基板
102 保護層
104 半導体領域
106 素子分離絶縁層
108 ゲート絶縁層
110 ゲート電極
112 絶縁層
114 不純物領域
116 チャネル形成領域
118 サイドウォール絶縁層
120 高濃度不純物領域
122 金属層
124 金属化合物領域
126 層間絶縁層
128 層間絶縁層
130a ソース電極またはドレイン電極
130b ソース電極またはドレイン電極
130c 電極
132 絶縁層
134 導電層
136a 電極
136b 電極
136c 電極
136d ゲート電極
138 ゲート絶縁層
140 酸化物半導体層
142a ソース電極またはドレイン電極
142b ソース電極またはドレイン電極
144 保護絶縁層
146 層間絶縁層
148 導電層
150a 電極
150b 電極
150c 電極
150d 電極
150e 電極
152 絶縁層
154a 電極
154b 電極
154c 電極
154d 電極
160 トランジスタ
162 トランジスタ
164 容量素子
200 基板
206 素子分離絶縁層
208 ゲート絶縁層
210 ゲート電極
216 チャネル形成領域
220 高濃度不純物領域
224 金属化合物領域
225 層間絶縁層
226 層間絶縁層
228 層間絶縁層
242a ソース電極またはドレイン電極
242b ソース電極またはドレイン電極
243a 絶縁層
243b 絶縁層
244 酸化物半導体層
246 ゲート絶縁層
248a ゲート電極
248b 電極
250 層間絶縁層
252 層間絶縁層
254 ソース電極またはドレイン電極
256 配線
260 トランジスタ
262 トランジスタ
264 容量素子
301 本体
302 筐体
303 表示部
304 キーボード
311 本体
312 スタイラス
313 表示部
314 操作ボタン
315 外部インターフェイス
320 電子書籍
321 筐体
323 筐体
325 表示部
327 表示部
331 電源
333 操作キー
335 スピーカー
337 軸部
340 筐体
341 筐体
342 表示パネル
343 スピーカー
344 マイクロフォン
345 操作キー
346 ポインティングデバイス
347 カメラ用レンズ
348 外部接続端子
349 太陽電池セル
350 外部メモリスロット
361 本体
363 接眼部
364 操作スイッチ
365 表示部(B)
366 バッテリー
367 表示部(A)
370 テレビジョン装置
371 筐体
373 表示部
375 スタンド
377 表示部
379 操作キー
380 リモコン操作機
400 メモリセル
800 測定系
802 容量素子
802a 容量素子
802b 容量素子
802c 容量素子
804 トランジスタ
805 トランジスタ
806 トランジスタ
808 トランジスタ
1100 メモリセル
1111 駆動回路
1112 駆動回路
1113 駆動回路
1114 駆動回路
1200 メモリセル
1211 駆動回路
1212 駆動回路
1213 駆動回路
1214 駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31