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特開2023-175969経皮挿入するための先端装填型マイクロニードルアレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175969
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】経皮挿入するための先端装填型マイクロニードルアレイ
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A61M37/00 530
A61M37/00 505
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023175104
(22)【出願日】2023-10-10
(62)【分割の表示】P 2021148376の分割
【原出願日】2013-05-01
(31)【優先権主張番号】61/641,209
(32)【優先日】2012-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】506339556
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】University of Pittsburgh - Of the Commonwealth System of Higher Education
【住所又は居所原語表記】1st Floor Gardner Steel Conference Center,130 Thackeray Avenue,Pittsburgh,PA 15260(US)
(71)【出願人】
【識別番号】502064461
【氏名又は名称】カーネギーメロン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Carnegie Mellon University
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ディー. ファロ ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ゲーザ エルドス
(72)【発明者】
【氏名】オー. ブラック オズドガンラー
(57)【要約】
【課題】1種または複数種の生物活性成分を有するマイクロニードルアレイを形成するステップを含みうるマイクロニードルアレイを形成する方法を提供すること。
【解決手段】マイクロニードルアレイは、基部、および基部から延在する複数のマイクロニードルを含むことができ、1種または複数種の生物活性成分は、基部より複数のマイクロニードル内での方が高い濃度で存在する。本明細書に開示されるシステムおよび方法は、ヒト皮膚への生物学的に活性な分子の効率的で正確で再現可能な送達をもたらしうる溶解可能マイクロニードルアレイに基づく皮膚送達プラットフォームを含む。マイクロニードルアレイ送達プラットフォームは、患者に広い範囲の生物活性成分を送達するのに使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書および図面に記載の物、方法またはシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2012年5月1日に出願された米国仮特許出願第61/641,209号の利益を主張し、この米国仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
分野
本開示は、経皮薬物送達のためのシステムおよび方法、特に、溶解可能マイクロニードルアレイを作製および使用するためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
政府支援の承認
本発明は、国立衛生研究所により授与された認可番号EB012776、AI076060、およびCA121973の下での政府支援で行われた。政府は、本発明におけるある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景
皮膚の際立った物理的バリア機能は、経皮薬物送達に対する重要な課題を有する。この課題に対処するために、様々なマイクロニードルアレイベース薬物送達デバイスが開発されてきた。例えば、一従来法は、活性成分をまったく含まない固体または中空マイクロニードルアレイを使用する。このようなマイクロニードルアレイは、生物製剤担体または伝統的なパッチを局部適用する前に経皮的薬物浸透を増強するために、角質層および表皮の上層を穿孔することによって皮膚を前処理することができる。この方法は、皮膚の浸透性を著しく増大させることが示されているが、送達される薬物またはワクチンの投与量および量を制御するのに限られた能力しかもたらさない。
【0005】
別の従来法は、薬物で表面被覆された固体マイクロニードルを使用する。この方法は、いくぶん良好な投与量制御をもたらすが、送達される薬物の量を大いに制限する。この欠点は、この手法の広範な適用を制限しており、例えば、ワクチン適用における抗原および/または補助剤の組合せの最適量の同時送達を妨げる。
【0006】
別の従来法は、生物製剤のリザーバーに取り付けられた中空マイクロニードルを使用することを含む。これらのアレイのシリンジ針型特徴は、送達の速度および精度、ならびに送達されるカーゴの量を著しく増大させることができる。しかし、複雑な製作手順および特殊な適用設定は、このようなリザーバーベースマイクロニードルアレイの適用性を制限する。
【0007】
さらに別の従来法は、生分解性および溶解可能である固体マイクロニードルアレイを使用することを含む。溶解可能ポリマーベースマイクロニードルの現在の製作手法は一般に、マイクロキャスティングプロセスを使用する。しかし、このような従来のプロセスは、アレイ中に包埋されうる活性成分に制限され、また、活性成分がマイクロニードルおよびこれらの支持構造体に均質的に包埋されることを必要とするため無駄が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、マイクロニードルアレイベースデバイスを使用する生物製剤の経皮送達は、普及している経口および針ベース薬物送達法に比べて魅力的な理論的利点を提供するが、相当な実用的な限定事項が、従来のプロセスを使用して構築されるマイクロニードルアレイに関連した設計および製作において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
要旨
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、ヒト皮膚への生物学的に活性な分子の効率的で正確で再現可能な送達をもたらしうる溶解可能マイクロニードルアレイに基づく皮膚送達プラットフォームを含む。マイクロニードルアレイ送達プラットフォームは、患者に広い範囲の生物活性成分を送達するのに使用することができる。
【0010】
開示される実施形態の前述および他の目的、フィーチャおよび利点は、添付の図面を参照して進行する以下の詳細な説明からより明らかとなる。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
患者に経皮挿入するための溶解可能マイクロニードルアレイであって、
1種または複数種の生物活性成分、
基部、および
前記基部から延在する複数のマイクロニードル
を含み、
前記1種または複数種の生物活性成分は、前記基部内より前記複数のマイクロニードル内での方が高い濃度で存在する、溶解可能マイクロニードルアレイ。
(項目2)
前記1種または複数種の生物活性成分の実質的にすべてが、前記基部がいずれの生物活性成分もその中に含有せずに実質的に形成されるように、前記複数のマイクロニードル内に位置している、項目1に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目3)
前記1種または複数種の生物活性成分が、前記1種または複数種の生物活性成分が、前記マイクロニードルアレイのそれぞれのマイクロニードルの上半分のみに一般に存在するように前記複数のマイクロニードル内に局所的に集中している、項目2に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目4)
前記複数のマイクロニードルが、頂部に第1の断面寸法、底部に第2の断面寸法、および中間部に第3の断面寸法を含む形状を有するように事前形成されており、前記中間部が、前記頂部と前記底部の間に位置しており、前記第3の断面寸法が、前記第1および第2の断面寸法より大きい、項目2に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目5)
前記1種または複数種の生物活性成分が、前記中間部における領域またはそれより上の領域内に実質的に集中している、項目4に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目6)
各マイクロニードルが一般に、前記中間部より上である点へと先細になっており、各マイクロニードルが一般に、前記中間部より下でより小さい断面寸法へと先細になっている、項目5に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目7)
各マイクロニードルが、溶解性生体適合性材料の複数の層を含む、項目2に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目8)
前記溶解性生体適合性材料がカルボキシメチルセルロースである、項目7に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目9)
前記1種または複数種の生物活性成分が、少なくとも2種の異なる生物活性成分を含む、項目2に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目10)
前記少なくとも2種の異なる生物活性成分が、化学療法剤、アジュバント、およびがん化学免疫療法適用のための化学誘引物質からなる群から選択される、項目9に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目11)
前記生物活性成分が、抗原、およびワクチン適用のためのアジュバントを含む、項目9に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目12)
前記1種または複数種の生物活性成分が、少なくとも1種のウイルスベクターを含む、項目2に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目13)
前記少なくとも1種のウイルスベクターがアデノベクターを含む、項目12に記載のマイクロニードルアレイ。
(項目14)
マイクロニードルアレイを製作する方法であって、
1種または複数種の生物活性成分をその中に含有する溶解性生体適合性材料の第1の溶液をマイクロニードルアレイ製造用金型に塗布するステップと、
1種または複数種の活性成分を含有しない溶解性生体適合性材料の第2の溶液を前記マイクロニードルアレイ製造用金型に塗布するステップと、
前記第1および第2の溶液を乾燥させて、基部、および前記基部から延在する複数のマイクロニードルを含む固体マイクロニードルアレイを形成するステップとを含み、
前記1種または複数種の活性成分は、前記複数のマイクロニードル内に実質的に集中している、方法。
(項目15)
前記1種または複数種の生物活性成分が、前記マイクロニードルアレイのそれぞれのマイクロニードルの上半分に実質的に集中している、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記第1の溶液の前記1種または複数種の生物活性成分が、少なくとも1種のウイルスベクターを含む、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記少なくとも1種のウイルスベクターがアデノベクターを含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
マイクロニードルアレイを形成する方法であって、
複数の層を有する材料のシートを形成するステップであって、前記複数の層の少なくとも1つが少なくとも1種の生物活性成分を含む、ステップと、
基部、および前記基部から延在する複数のマイクロニードルを有するマイクロニードルアレイが形成されるまで、前記材料のシートから諸部分を除去するステップとを含み、
前記シートアレイからの諸部分の前記除去は、前記1種または複数種の生物活性成分が、前記マイクロニードルアレイのそれぞれの前記マイクロニードル内に集中しており、かつ、前記1種または複数種の生物活性成分は、前記基部には実質的に存在しないように、前記マイクロニードルアレイを形成することを含む、方法。
(項目19)
前記材料のシートを形成する方法が、前記材料のシート全体にわたって前記少なくとも1種の生物活性成分を空間的に分布させることを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記空間的に分布した生物活性成分が、前記マイクロニードルアレイを形成するために前記材料のシートから諸部分を除去する前に、溶解性生体適合性材料の後続の層で覆われる、項目19に記載の方法。
(項目21)
第1の溶液または懸濁物の前記少なくとも1種の生物活性成分が、少なくとも1種のウイルスベクターを含む、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記少なくとも1種のウイルスベクターがアデノベクターを含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
マイクロニードルアレイを形成する方法であって、
複数の層を有する材料のシートを形成するステップであって、前記複数の層の少なくとも1つは少なくとも1種の生物活性成分を含む、ステップと、
前記材料のシートをマイクロミリングして、基部、および前記基部から延在する複数のマイクロニードルを含む、マイクロニードルアレイを形成するステップとを含み、
前記少なくとも1種の生物活性成分は、前記マイクロニードルアレイのそれぞれの前記マイクロニードル内に集中しており、かつ、前記少なくとも1種の生物活性成分は、前記基部には実質的に存在しない、方法。
(項目24)
複数の層を有する材料のシートを形成する行為が、
実質的に均一な厚さを有するベース層を作るために、カルボキシメチルセルロースのヒドロゲルの層を準備することと、
前記ベース層が実質的に固体になるまで前記ベース層を乾燥させることと、
前記ベース層の上に1つまたは複数の活性層を設けることであって、前記1つまたは複数の活性層は、実質的に均一な厚さを有し、かつカルボキシメチルセルロースのヒドロゲルおよび生物活性成分を含む、ことと、
前記1つまたは複数の活性層が実質的に固体になるまで、前記1つまたは複数の活性層を乾燥させることと
を含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記材料のシートをマイクロミリングする行為が、
前記材料のシートをマイクロミリングして、形状がほぼピラミッド形である複数のマイクロニードルを形成することを含む、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記材料のシートをマイクロミリングする行為が、
各マイクロニードルが、頂部に第1の断面寸法、底部に第2の断面エリア、および中間部に第3の断面寸法を含むように、前記マイクロニードルアレイを形成することを含み、前記中間部が、前記頂部と前記底部の間に位置しており、前記第3の断面寸法が、前記第1および第2の断面寸法より大きく、前記少なくとも1種の生物活性成分が、前記中間部において、またはその上に集中している、項目23に記載の方法。
(項目27)
前記少なくとも1種の生物活性成分が、2種以上の異なる生物活性成分を含む、項目23に記載の方法。
(項目28)
前記2種以上の異なる生物活性成分が、化学療法剤、アジュバント、およびがん化学免疫療法適用のための化学誘引物質からなる群から選択される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記2種以上の異なる生物活性成分が、少なくとも1種の抗原、および少なくとも1種のワクチン適用のためのアジュバントを含む、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記少なくとも1種の生物活性成分が、少なくとも1種のウイルスベクターを含む、項目23に記載の方法。
(項目31)
前記少なくとも1種のウイルスベクターがアデノベクターを含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
標的組織内にマイクロニードルアレイを送達するための装置であって、
前記マイクロニードルアレイの構造支持体の面にほぼ垂直である力を印加するための、マイクロニードルアレイと係合するようにサイズ決めされたアプリケーターヘッド、
電源、
前記電源に結合した電磁オシレータ、および
前記電磁オシレータに結合したオシレータエネルギー変換器
を備え、
前記オシレータエネルギー変換器は、前記電磁オシレータによって生成される電磁振動を、前記アプリケーターヘッドの機械的運動に変換するように構成されている、装置。
(項目33)
前記アプリケーターヘッドが、前記装置に着脱可能に結合している、項目32に記載の装置。
(項目34)
前記アプリケーターヘッドが、オートクレーブによる滅菌に耐えうる材料を含む、項目32に記載の装置。
(項目35)
前記電源が、前記装置に着脱可能に結合している、項目33に記載の装置。
(項目36)
前記電磁オシレータが、前記装置に着脱可能に結合しており、その流体滅菌を可能にするように完全に密閉されている、項目33に記載の装置。
(項目37)
前記アプリケーターヘッドが、前記マイクロニードルアレイの前記構造支持体の前記面にほぼ垂直である面内で運動し、前記マイクロニードルアレイの前記構造支持体の前記面に平行な面内での前記アプリケーターヘッドの運動が実質的に制限されている、項目33に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、例示的なマイクロニードルおよびこれらの寸法を示す図である。
図2図2は、例示的なマイクロニードルアレイおよびその寸法を示す図である。
図3図3Aおよび図3Bは、活性成分が先端に装填された例示的なマイクロニードルを示す図である。
図4図4Aおよび図4Bは、活性成分が先端に装填された例示的なマイクロニードルを示す図である。
図5図5Aおよび図5Bは、活性成分が先端に装填された例示的なマイクロニードルを示す図である。
図6図6Aおよび図6Bは、活性成分が先端に装填された例示的なマイクロニードルを示す図である。
図7図7は、マイクロニードルマスター金型を製作するのに使用されるミニチュア精密マイクロミリングシステムを示す図である。
図8図8は、ピラミッド針を有するマイクロミリング(micromill)されたマスター金型のSEM画像である。
図9図9は、ピラミッド製造用金型(production mold)のSEM画像である。
図10図10は、画像の中心にピラミッド針成形ウェルを示す、製造用金型の拡大セグメントのSEM画像である。
図11図11A図11Dは、例示的なCMC固体および包埋された活性成分を示す図である。
図12図12A図12Bは、例示的なCMC固体および包埋された活性成分を示す図である。
図13図13は、例示的な垂直多層堆積構造およびこれを製作する方法の略図である。
図14図14は、包埋される活性成分の層化および空間分布技法を使用して製作される例示的なマイクロニードルアレイの略図である。
図15図15は、空間的に制御された様式で製作される例示的なマイクロニードルアレイの略図である。
図16A図16Aは、複数のピラミッド型成形マイクロニードルのSEM画像である。
図16B図16Bは、単一のピラミッド型成形マイクロニードルのSEM画像である。
図17図17は、柱型成形マイクロニードルのSEM画像である。
図18図18は、ピラミッド型成形マイクロニードルの顕微鏡写真である。
図19図19は、柱型成形マイクロニードルの顕微鏡写真である。
図20図20は、マイクロミリングされたマスター金型を使用して、または材料のブロックを直接マイクロミリングすることによって形成することができる様々なマイクロニードル幾何形状を示す図である。
図21図21は、破壊試験およびピアシング試験を実施するための試験装置を示す図である。
図22図22は、柱型マイクロニードル(左)およびピラミッド型マイクロニードル(右)の力-変位曲線を示す図である。
図23図23は、柱型マイクロニードル(左)およびピラミッド型マイクロニードル(右)のマイクロニードルのたわみの有限要素モデルを示す図である。
図24図24は、皮膚外植片におけるピラミッド(A、C、E)および柱(B、D、F)型マイクロニードルの貫通の様々なステレオ顕微鏡写真を示す図である。
図25図25A図25B、および図25Cは、皮膚外植片を貫通することにおけるマイクロニードルアレイの有効性を示す図である。
図26図26Aおよび図26Bは、マイクロニードルアレイ免疫化マウスの皮膚流入領域リンパ節への粒状物のin vivo送達を示す図である。
図27図27は、マイクロニードル送達されるモデル抗原の免疫原性を示す棒グラフである。
図28図28は、貯蔵におけるCMCマイクロニードルアレイの活性カーゴの安定性を示す棒グラフである。
図29図29Aおよび図29Bは、マイクロニードルアレイによってCytoxan(登録商標)(シクロホスファミド)を送達された表皮細胞内のアポトーシスの誘導を示す図である。
図30図30は、材料のブロックを直接マイクロミリングすることによって形成することができるマイクロニードルの幾何形状を示す図である。
図31図31は、直接製作された固体CMCマイクロニードルアレイのステレオ顕微鏡画像である。
図32図32は、図31のマイクロニードルアレイの一部のステレオ顕微鏡画像である。
図33図33は、直接マイクロミリング用材料のブロックまたはシートを作るための鋳型アセンブリーの模式的な断面図である。
図34図34は、直接マイクロミリング用材料のブロックまたはシートを乾燥させるのに使用することができる乾燥装置の模式的な断面図である。
図35図35は、GFP発現標的293T細胞のフローサイトメトリー分析の図である。
図36図36は、貯蔵の数日後のマイクロニードルに包埋されたウイルスの安定性を示す図である。
図37図37は、マイクロニードルアレイで送達されたアデノベクターの発現および免疫原性を示す図である。
図38図38は、標的組織内にマイクロニードルを挿入するためのアプリケーターを示す図である。
図39図39は、図38に示したアプリケーターとともに使用するためのアプリケーターヘッドの設計を示す図である。
図40図40は、アプリケーターヘッドの次元的な移動の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
以下の記載は、性質上例示的であり、開示される実施形態の範囲、適用性または構成を限定することは何ら意図されていない。記載した実施形態に対する様々な変更を、本開示の範囲から逸脱することなく本明細書に記載のエレメントの機能および配置において行うことができる。
【0013】
本願および特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、脈絡により別段に明らかに要求されていない限り、複数形を含む。さらに、用語「含む(includes)」は、「含む(comprises)」を意味する。本明細書において、用語「生物製剤」、「活性成分」、「生物活性成分」、「生物活性材料」または「カーゴ」は、医薬活性剤、例えば、鎮痛剤、麻酔剤、抗喘息薬、抗生物質、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗真菌剤、降圧剤、抗炎症剤、抗新生物薬、抗不安剤、酵素的に活性な作用物質、核酸コンストラクト、免疫賦活剤、免疫抑制剤、ワクチンなどを指す。生物活性材料は、溶解性材料、不溶性であるが分散性の材料、天然のもしくは製剤化されたマクロ、ミクロおよびナノ粒状物、ならびに/または溶解性材料、分散性不溶性材料ならびに天然のおよび/もしくは製剤化されたマクロ、ミクロおよびナノ粒状物の2種以上の混合物を含みうる。
【0014】
本明細書において、用語「事前形成された」は、構造またはエレメントが使用前に、特定の形状または構成に作製、構築および/または形成されていることを意味する。したがって、事前形成されたマイクロニードルアレイの形状または構成は、患者にマイクロニードルアレイのマイクロニードルの1つまたは複数を挿入する前のそのマイクロニードルアレイの形状または構成である。
【0015】
開示される方法の例示的な実施形態の操作は、好都合な提示のために、特定の逐次の順序で記載される場合があるが、開示した実施形態は、開示した特定の逐次の順序以外の操作の順序を包含しうることが理解されるべきである。例えば、逐次的に記載された操作は、いくつかの場合では、再配列されるまたは同時に実施することができる。さらに、一特定の実施形態に関連して示された記載および開示は、その実施形態に限定されず、開示される任意の実施形態に適用されうる。
【0016】
さらに、簡潔にするために、添付の図面は、開示されたシステム、方法および装置を、他のシステム、方法および装置と組み合わせて使用することができる、様々な様式(当業者によって、本開示に基づいて容易に識別できる)を示していない場合がある。さらに、本記載は、開示される方法を記載するのに「生成する」および「提供する」などの用語を時折使用する。これらの用語は、実施することができる実際の操作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の操作は、特定の実施に応じて変更することができ、本開示に基づいて、当業者によって容易に認識可能である。
【0017】
先端装填マイクロニードルアレイ
溶解可能マイクロニードルアレイは、皮膚および粘膜表面への効率的で安全な薬物およびワクチンの送達を可能にする。しかし、従来のマイクロニードルアレイ製作の均質な性質からは、非効率な薬物送達が生じうる。患者に送達される薬物または他のカーゴは一般に、マイクロニードルアレイマトリックス全体に組み込まれているが、実際には、マイクロニードルのみが皮膚に入り、したがって、個々の針の体積内に含有されたカーゴのみが送達可能である。したがって、非針コンポーネント(例えば、アレイの支持構造)に局在している薬物または他のカーゴの大部分は、患者に決して送達されず、一般に、廃棄物として廃棄される。
【0018】
図1および図2は、マイクロニードルおよびマイクロニードルアレイの例示的な寸法を示す。図1および図2に示した例示的なサイズに基づくと、アレイ全体にわたって均質的に分布した活性成分を含むマイクロニードルアレイは、40パーセント超の活性成分廃棄物を呈する。例えば、アレイの全面積が61mmであり、マイクロニードルアレイの面積が36mmである場合、活性成分の利用率は、60パーセント未満である。図1および図2に反映された寸法は、マイクロニードルの特定のサイズのアレイおよび形状を示すが、同様の廃棄物が、アレイのサイズまたは関与するマイクロニードルの形状にかかわらず、活性成分がアレイ全体にわたって均質的に分布した任意の他のサイズのマイクロニードルアレイに存在することが理解されるべきである。
【0019】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、広い範囲のタンパク質および/または小分子の医薬およびワクチンを含めた広い範囲の活性成分の有効な送達を可能にする、完全に溶解可能なマイクロニードルアレイ基板および独特のマイクロニードル幾何形状を利用する新規のマイクロニードルアレイ製作技術を提供する。
【0020】
本明細書により詳細に記載するように、いくつかの実施形態では、本技術は、多機能性薬物送達のために複数の化学的に異なる作用物質の同時共送達もユニークに可能にすることができる。これらのデバイスの有用性の例としては、例えば、(1)感染症予防およびがん療法に関連した多価免疫応答を生じさせるための複数の抗原およびアジュバントの同時送達、(2)同時の補助剤腫瘍療法を可能にするための化学療法剤、免疫刺激剤、アジュバントおよび抗原の共送達、ならびに(3)多種多様な皮膚疾患を処置するための全身曝露を伴わない複数の治療剤の局所的皮膚送達がある。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のシステムおよび方法は、様々な活性成分を針先に組み込むことを可能にする新規製作技術に関する。したがって、このようにして活性成分を局在化させることによって、マイクロニードルアレイ体積の残りを、非活性であり、一般に安全と見なされるより安価なマトリックス材料を使用して調製することができる。最終的な結果は、(1)マイクロニードルアレイの非針部分に組み込まれた送達可能でない活性成分の廃棄物の低減、および(2)皮膚を貫通する針先中のより高い薬物濃度に基づいた、薬物送達の大いに改善された効率である。この技術的進歩は、薬物カーゴのコストに比例した経済的実現可能性を劇的に改善し、これらの新規マイクロニードルアレイの針1本当たりの有効なカーゴ送達能力を増大させる。
【0022】
図3A図3B図4Aおよび図4Bは、活性成分がそれぞれのアレイのマイクロニードル先端に集中している、マイクロニードルアレイの様々な実施形態を示す。したがって、従来のマイクロニードルアレイと対照的に、支持基本構造に活性成分がほとんど、またはまったく存在しないので、活性成分は、マイクロニードルアレイ全体にわたって一様な濃度で存在しない。さらに、いくつかの実施形態では(例えば、図3A図3B図4Aおよび図4Bに示したように)、支持構造に活性成分がほとんど、またはまったく存在しないだけでなく、活性成分の位置は、アレイの個々のマイクロニードルの上半分に集中している。
【0023】
図5Aおよび図5Bは、個々のマイクロニードルの上半分に集中した活性成分を含有するマイクロニードルアレイのマイクロニードルの例示的な画像を示す。活性成分は、マイクロニードルの先端に集中している蛍光粒子として示されており、先端は、狭小化および/または先細化の様式で基部から延在するマイクロニードルの範囲によって画定される。基部はさらには、アレイの支持構造から延在する。
【0024】
図6Aおよび図6Bは、個々のマイクロニードルの上半分に集中した活性成分を含有するマイクロニードルアレイのマイクロニードルの追加の例示的な画像を示す。図6Aでは、活性成分は、マイクロニードルの先端に集中しており、BSA-FITCである。図6Bでは、活性成分は、やはりマイクロニードルの先端に集中しており、OVA-FITCである。
【0025】
上述したように、いくつかの実施形態では、個々のマイクロニードルは、マイクロニードルの上半分のみに活性成分を含みうる。他の実施形態では、個々のマイクロニードルは、マイクロニードルの先端または先端付近の狭小化部分のみに活性成分を含みうる。さらに他の実施形態では、個々の針は、支持構造から延在するマイクロニードル部分全体にわたって活性成分を含みうる。
【0026】
以下の実施形態では、それぞれのマイクロニードルアレイのマイクロニードルの上半分および/または先端に集中した1種または複数種の活性成分を含むマイクロニードルアレイを製作するための様々な例示的な方法を記載する。
【0027】
逐次マイクロ成形法およびスピン乾燥法によって製作されるマイクロニードルアレイ
以下のステップは、逐次マイクロ成形およびスピン乾燥を使用してマイクロニードルアレイを製作する例示的な方法を記載する。活性成分/カーゴは、適合性溶媒中で、所望の有用な濃度で調製することができる。本明細書に記載するように、活性成分(複数可)の溶媒は、カーゴ特異的であり得、例えば、水、有機極性および/または無極性液体を含めた広い範囲の液体を含みうる。活性成分の例は、以下でより詳細に論じられており、様々なマイクロニードルアレイの試験された最大装填能力を含めたこれらの活性成分についての様々な情報も、以下でより詳細に論じられている。
【0028】
必要に応じて、特定の用途に必要な場合、より高い活性カーゴ装填を実現するために、複数の装填サイクルを実施することができる。さらに、複数の活性カーゴを、個々のカーゴの特定のカーゴ適合性要件によって、複合溶液として単一装填サイクルで、または複数のサイクルにおいて(例えば、以下に記載する装填サイクルを繰り返して)単一溶液として装填することができる。また、粒状物カーゴ(ナノサイズおよびマイクロサイズの幾何形状を有するものを含む)を、所望の粒子数/体積密度で懸濁物として調製することができる。
【実施例0029】
(実施例1)
a)マイクロミリングの実施形態において以下でより詳細に記載するように、活性カーゴの作業用ストック溶液/懸濁物を、例えば、表面積1cm当たり約40μlで、マイクロニードルアレイ製造用金型の表面に塗布することができる。
【0030】
b)マイクロニードルアレイ製造用金型の針をワーキングカーゴストックで満たすために、活性カーゴ(複数可)を含むマイクロニードルアレイ製造用金型を4500rpmで10分間、遠心機にかけることができる。
【0031】
c)過剰のカーゴ溶液/懸濁物を除去することができ、マイクロニードルアレイ製造用金型の表面を、金型表面積1cm当たりリン酸緩衝生理食塩水(PBS)100μl、または活性カーゴの作業用ストックを調製するのに使用した溶媒で洗浄することができる。
【0032】
d)針の空洞に活性カーゴストック溶液/懸濁物を含有するマイクロニードルアレイ製造用金型を、0~50L/分で遠心機にパージガスを連続的に流しながら要求温度で、3500rpmで30分間スピン乾燥させることによって針先端に乾燥中の活性カーゴ(複数可)を集中させるのを促進することができる。パージガスは、管状入口を通じて遠心機チャンバー内に導入することができる。水分含量は、要求温度に調節された除湿機を使用して低減し、遠心機チャンバー内に再循環することができる。パージガスは、特定のカーゴ(複数可)の必要に応じて、空気、窒素、二酸化炭素、または別の不活性もしくは活性ガスとすることができる。流量は、流量計によって測定され、循環ポンプデバイスによって制御される。
【0033】
e)マイクロニードルアレイ製造用金型面積1cm当たりHO中の20%のCMC90ヒドロゲル100μlを、マイクロニードルアレイ製造用金型の表面に添加して、マイクロニードルアレイデバイスの構造コンポーネントに装填することができる。
【0034】
f)マイクロニードルアレイ製造用金型を、遠心機チャンバー内でバージガス交換をすることなく、要求温度で、4500rpmで10分間遠心機にかけて、マイクロニードルアレイ製造用金型の針の空洞にCMC90ヒドロゲルを満たすことができる。この後、30分のインキュベーション期間を続けて、マイクロニードルアレイ先端に以前に堆積させた活性カーゴ(複数可)の再水和を可能にすることができる。
【0035】
g)マイクロニードルアレイ製造用金型を、遠心機チャンバーに0~50L/分の一定のパージガスを流しながら要求温度で、3500rpmで3時間以上遠心機にかけて、MNAデバイスを5%未満の水分含量にスピン乾燥させることができる。
【0036】
h)次いで乾燥したマイクロニードルアレイデバイスをマイクロニードルアレイ製造用金型から分離して、所望の条件下で貯蔵することができる。いくつかの実施形態では、CMC90ベースデバイスは、約50℃~-86℃の間で貯蔵可能でありうる。
【0037】
製作された先端に装填された活性カーゴを担持するマイクロニードルアレイの例は、図3A図6Bに見ることができる。
【0038】
マイクロミリングされたマスター金型およびスピン成形されたマイクロニードルアレイ
以下の実施形態では、マイクロミリングステップを実施して、様々な仕様のマイクロニードルアレイを作る。しかし、以下の実施形態は、先の実施例で上述したプロセスを含めて、マイクロミリングステップを伴わないマイクロニードルアレイ製作のプロセスに適用可能でありうるマイクロニードルアレイ製作のある特定の詳細を記載していることが理解されるべきである。
【0039】
以下の実施形態では、マイクロミリング技法によって形成されたマスター金型を使用して溶解可能マイクロニードルアレイを製作するための装置および方法が記載されている。例えば、マイクロニードルアレイは、マスター金型(ポジティブ)~製造用金型(ネガティブ)~アレイ(ポジティブ)方法論に基づいて製作することができる。マイクロミリング技術は、金属、ポリマーおよびセラミックの部品を含めた実質的に任意のタイプの材料に様々なマイクロスケール幾何形状を生成するのに使用することができる。様々な形状および構成のマイクロミリングされたマスター金型は、複数の同一の雌型製造用金型を生成するのに有効に使用することができる。次いで雌型製造用金型は、様々なマイクロニードルアレイをマイクロキャスティングするのに使用することができる。
【0040】
図7は、マイクロニードルマスター金型を製作するのに使用することができる精密マイクロミリングシステムの例を示す。機械的マイクロミリングは、精密コンピューター制御ミニチュア工作機械プラットフォーム内でマイクロスケール(例えば、10μmという小ささ)フライス工具を使用する。このシステムは、マイクロ工具によって切断されている工作物の表面を見るための顕微鏡を含みうる。マイクロ工具は、所望の形状を作るために、超高速(200,000rpm)で回転させて工作物を切断することができる。上述したように、マイクロミリングプロセスは、多くの種類の材料を用いて複雑な幾何的フィーチャを作るのに使用することができる。例えば、炭化物マイクロ工具を含めた様々なタイプの成形用具を、マイクロミリングプロセスで使用することができる。しかし、好適な実施形態では、マスター金型上でマイクロニードルアレイを製作するのに、ダイヤモンド工具を使用することができる。ダイヤモンド成形用具は、炭化物などの従来の材料より硬く、工作物の表面上によりきれいなカットをもたらすことができるので、他のタイプの成形用具より好ましい場合がある。
【0041】
マスター金型は、例えば、例示的な実施形態に記載のマスター金型材料であるCirlex(登録商標)(DuPont、Kapton(登録商標)ポリイミド)を含めた、様々な材料からマイクロミリングすることができる。マスター金型は、以下の例示的な実施形態に記載の生産材料であるSYLGARD(登録商標)184(Dow Corning)などの適当な材料から柔軟な製造用金型を製作するのに使用することができる。マスター金型は、多数の製造用金型を製作するのに単一のマスター金型を繰り返して使用することができるように、再使用されうる材料で形成されていることが望ましい。同様に、各製造用金型は、複数のマイクロニードルアレイを製作することができるのが望ましい。
【0042】
マスター金型は、マイクロミリング技術を使用して相対的に急速に作ることができる。例えば、100個のマイクロニードルを伴う10mm×10mmのアレイを含むマスター金型は、マイクロミリングするのに2時間未満、いくつかの実施形態では、約30分未満を要しうる。したがって、短いランプアップ時間により、異なる幾何形状を急速に製作することが可能になり、それにより、マイクロニードルアレイの急速な開発が可能になり、また、様々なマイクロニードルパラメータの実験および研究が促進される。
【0043】
マスター金型材料は、製造用金型材料からきれいに分離されうることが好ましく、好ましくは、製造用金型材料を硬化するのに必要となりうる任意の上昇した硬化温度に耐えることができる。例えば、示した実施形態では、シリコーン系化合物SYLGARD(登録商標)184(Dow Corning)が製造用金型材料であり、その材料は一般に、セ氏約80~90度の硬化温度を必要とする。
【0044】
マスター金型は、様々なサイズで作ることができる。例えば、例示的な実施形態では、マスター金型は、1.8mm厚のCirlex(登録商標)(DuPont、Kapton(登録商標)ポリイミド)および5.0mm厚のアクリルシートで作られた。各シートをマイクロミリング工具によって最初に平らにすることができ、マイクロニードルが作られる位置を表面の残部から上昇させることができる。マイクロニードルのフィーチャ(例えば、マスター金型によって画定される)を作るために、マイクロ工具を数値制御マイクロミリングマシン(図1)と併せて使用することができる。その様式で、マイクロミリングプロセスは、マイクロニードルの寸法、鋭さおよび空間分布の完全制御をもたらすことができる。
【0045】
図8は、複数のピラミッド針を伴うマイクロミリングされたマスター金型の構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)からの画像である。図8に示したように、円形の溝をマスター金型のマイクロニードルアレイの周囲に形成して、製造用金型内に環状の(例えば、円形の)壁セクションを生成することができる。製造用金型の円形壁セクションは、以下で論じるスピンキャスティングプロセスを促進することができる。図9に示されている壁セクションおよび図8に示したそれぞれのマスター金型構造は、円形であるが、他の幾何形状の壁セクションまたは収容手段をもたらすことができることが理解されるべきである。例えば、どの形状がマイクロニードルアレイデバイスに望まれるかに応じて、収容手段は、例えば、正方形、矩形、台形、多角形、または様々な不ぞろいな形を含めた様々な形状で形成することができる。
【0046】
上記に論じたように、製造用金型は、SYLGARD(登録商標)184(Dow Corning)から作製することができ、これは、SYLGARD(登録商標)と硬化剤との比が10:1で混合されうる2成分透明硬化性シリコーンエラストマーである。この混合物を、約10分間脱ガスし、マスター金型に塗布してでおよそ8mmの層を形成し、引き続いて約30分間再び脱ガスし、85℃で45分間硬化させることができる。室温まで冷却した後、マスター金型を硬化したシリコーンから分離することができ、シリコーン製造用金型を、アレイを囲繞する円形壁セクションの縁部までトリミングした(図9)。単一のマスター金型から、多数の製造用金型(例えば、100以上)を生産することができ、Cirlex(登録商標)またはアクリルマスター金型の明らかな劣化は、もしあれば非常にわずかである。
【0047】
図9は、上述したように作ったピラミッド製造用金型のSEM画像である。図10は、画像の中央にピラミッド針成形ウェルを有する製造用金型の拡大セグメントを示す。成形ウェルは、成形ウェルによって画定される外側形状を有するマイクロニードルを形成するための基材(および基材に添加される任意の成分)を受け入れるように構成されている。
【0048】
マイクロニードルアレイを構築するために、基材を使用して、生物活性成分を有する各マイクロニードルの部分およびそれを有さない部分を形成することができる。上記に論じたように、各マイクロニードルは、マイクロニードルにのみ、またはいくつかの実施形態では、マイクロニードルの上半分のみに、または他の実施形態では、先端付近で先細化するマイクロニードルの部分にのみ生物活性成分を含みうる。したがって、生物活性成分(複数可)の送達を制御し、マイクロニードルアレイのコストを制御するために、各マイクロニードルは、生物活性成分を含む部分および生物活性成分を含まない部分を有することが好ましい。本明細書に記載の実施形態では、生物活性成分を含まない部分は、マイクロニードルアレイの支持構造、およびいくつかの実施形態ではアレイの各マイクロニードルの基部(例えば、下半分)を含む。
【0049】
様々な材料をマイクロニードルアレイの基材として使用することができる。生分解性固体マイクロニードルの構造基板は、最も一般には、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)またはカルボキシメチルセルロース(CMC)系配合物を含むが、他のベースも使用することができる。
【0050】
CMCは、本明細書に記載のマイクロニードルアレイの基材としてPLGAより一般に好ましい。PLGA系デバイスは、製作に要求される相対的に高い温度(例えば、セ氏135度以上)および真空に起因して、薬物送達およびワクチン用途を制限する場合がある。対照的に、CMC系マトリックスは、単純なスピンキャスティングおよび乾燥プロセスで、室温で形成することができ、CMCマイクロニードルアレイを、感受性の生物製剤、ペプチド、タンパク質、核酸、および他の様々な生物活性成分の組込みに関してより望ましくする。
【0051】
CMCヒドロゲルは、滅菌したdHO中の、活性成分を伴うまたは伴わない(以下に記載するように)CMCの低粘度ナトリウム塩から調製することができる。例示的な実施形態では、CMCは、約25wt%のCMC濃度を実現するように滅菌蒸留水(dHO)および活性成分と混合することができる。得られた混合物は、均質になるまで撹拌し、セ氏約4度で24時間平衡化することができる。この期間の間に、CMCおよび任意の他の成分は、水和され得、ヒドロゲルが形成されうる。ヒドロゲルを、真空下で約1時間脱ガスし、約20,000gで1時間、遠心機にかけて、CMCマイクロニードルアレイのスピンキャスティング/乾燥プロセスを妨害しうる、残留するマイクロサイズの気泡を除去することができる。ヒドロゲルの乾物含量は、ヒドロゲルの画分(10g)をセ氏85度で約72時間乾燥することによって試験することができる。すぐに使えるCMCヒドロゲルは、使用するまでセ氏約4度で貯蔵されることが望ましい。
【0052】
活性成分は、スピンキャスティングプロセスの前に、相対的に高い(20~30%)CMC乾燥生物製剤重量比でCMCのヒドロゲルに組み込むことができる。アレイは、室温でスピンキャスティングされ、プロセスを、構造的に広い範囲の生物活性成分の機能安定性と両立させることができる。マスター金型および製造用金型は、多数の製作サイクルに再使用可能でありうるので、製作コストは、大いに低減されうる。得られる脱水されたCMCマイクロニードルアレイは、室温またはわずかにより低い温度(セ氏約4度など)で一般に安定であり、組み込まれた生物製剤の活性を保存し、容易な低コストの貯蔵および流通を促進する。
【0053】
例示的な実施形態では、製造用金型の表面を、CMCヒドロゲル約50μl(直径11mmの金型について)で覆い、2,500gで約5分間、遠心法によってスピンキャスティングすることができる。初期のCMCヒドロゲル層の後、別の50μlのCMCヒドロゲルを金型に層化し、2,500gで約4時間遠心機にかけることができる。乾燥プロセスの最後に、CMCマイクロニードルアレイを、金型から分離し、縁部の過剰材料からトリミングし、収集し、セ氏(Celsuis)約4度で貯蔵することができる。製造用金型は、マイクロニードルアレイのさらなるキャスティングのために浄化および再使用することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、CMC固体は、活性成分を含有しない層、および活性成分を含有する層で形成することができる。図11A図11Dは、異なる形状(図11Aおよび図11B)、ならびにマイクロミリング後に活性成分を含むマイクロニードルの部分になる上層の包埋された活性カーゴを有するCMC固体を示す。図11Cは、非活性成分含有層の表面に層化されたミクロンサイズの蛍光粒子を示し、図11Dは、非活性成分含有層の表面に層化されたトルイジンブルーの例を示す。
【0055】
図12Aおよび図12Bも、異なる形状を有するCMC固体を示し、図12Bは、正方形形状を示し、図12Bは、矩形状を示す。両CMC固体は、本明細書に記載するさらなる加工のための寸法にミリングすることができる。本明細書に示した幾何形状および活性カーゴは、例示的な実施形態に限定されることは意図されていないことが理解されるべきである。
【0056】
(実施例2)
CMC固体は、規定された幾何形状、および調製された構造の1つまたは複数の層中の活性カーゴ含量を用いて調製することができる。CMC固体に統合された活性カーゴの例は、本明細書でより詳細に記載されている。CMC固体の少なくとも1つの層に含有された包埋された活性カーゴを含むCMC固体を構築した後、CMC固体を、プロジェクト固有の寸法にミリングし、マイクロミリングして本明細書に記載のマイクロニードルデバイスを製作することができる。
【0057】
(実施例3)
別の実施形態では、活性カーゴの1つまたは複数の層を、マイクロニードルアレイを直接マイクロミリングするためにCMC固体に包埋することができる。図13は、MNAデバイスを直接マイクロミリングするための垂直多層堆積およびCMC固体上の活性カーゴのCMC包埋の代表サンプルを示す。
【0058】
一例示的方法では、マイクロニードルアレイは、規定された幾何形状を有し、いずれの活性カーゴも中に含有しないCMC固体を調製することによって製作することができる。次いで、ブランクCMC固体を所望の寸法にミリングすることができる。
【0059】
図13に示したように、マイクロミリングされたMNAデバイスの先端に特異的に活性カーゴ(複数可)を含めるために、プロジェクト固有の幾何学的パターンで、活性カーゴ(複数可)をCMC固体に堆積することができる。
【0060】
CMC固体ブランクに活性カーゴを堆積する方法として、例えば、
1)マイクロノズル支援液滴堆積を用いた直接印刷、
2)事前印刷されたマトリックスからの移動、
3)コンピューター制御ロボットシステムを用いた液滴堆積
を挙げることができる。
【0061】
図14は、CMC固体ブロック中の包埋された活性カーゴの層化および空間分布を示す。第1の層が堆積された後(A)、これをCMC層で覆うことができ(B)、このCMC層は、活性カーゴを引き続いて堆積するための表面をもたらす(C)。すべての所望の層が堆積され、マイクロミリングプロセスに適した固体CMCブロック内に包まれるまで、このプロセスを繰り返すことができる(D~F)。
【0062】
図15は、空間的に制御された様式で活性カーゴの堆積物を包んでいるCMCブロックの断面の概略図を示す(A)。この方法は、MNAデバイスにおいてマイクロミリングした後、活性成分の3次元制御および配置を可能にする(B)。図15のパネル(B)では、活性カーゴの配置が活性カーゴの幹で示されているが、ミリングプロセスの制御によって、配置は、マイクロニードルの先端からベースまで垂直に制御することができる。色は、異なる活性成分、または同じ材料の異なる量/濃度を表す。
【0063】
したがって、互いに接触して、またはCMCの層によって分離されてCMC固体の表面に逐次的に1つまたは複数の活性カーゴを堆積させることによって、マイクロニードルに活性カーゴを垂直に層化して堆積する方法が提供される。いくつかの実施形態では、活性カーゴの水平パターン堆積により、カーゴを空間的に分離することができる。活性カーゴ堆積の垂直および水平パターンを組み合わせることによって、規定された活性成分のそれぞれの3次元送達および分配を実現し、マイクロニードルアレイを製作する間の活性成分の浪費をさらに低減することができる。
【0064】
マイクロニードル統合アデノベクター
以下の実施形態は、マイクロニードルアレイの溶解可能マトリックス中に感染性ウイルスベクターを組み込む、本明細書に記載のものなどの溶解可能マイクロニードルアレイを対象とする。この技術を使用して、初めて、生きているウイルスベクターをマイクロニードルアレイに組み込むことができる。本明細書に記載するように、開示したマイクロニードルアレイ内にウイルスベクターを組み込むと、ウイルスベクターが安定化し、その結果、これらは、組込み後および長期の貯蔵後に、その感染力を維持する。マイクロニードルアレイ統合アデノベクター(MIA)を皮膚に適用すると、皮膚細胞がトランスフェクトされる。ワクチンの場面では、本発明者らは、HIV抗原をコードするMIAを皮膚に適用すると、強力なHIV特異的免疫応答がもたらされることを実証した。これらの結果を、以下の実施例で詳細に記載する。
【0065】
(実施例4)
本明細書に記載のマイクロニードル統合アデノベクターの調製法は、調製中および乾燥貯蔵中にアデノウイルス粒子の生存能を保存する。これらのステップは、CMCマイクロニードルアレイの物理的および化学的性質に基づいて特別に設計した。CMCマイクロニードルアレイ中のウイルス生存能は、
- 2.5%の最終濃度で低粘度カルボキシメチルセルロース(CMC90)を含めること(ステップ2)によって、および
- マイクロニードルアレイデバイスの先端におけるアデノウイルス粒子の時限および温度制御スピン乾燥集中(ステップ6)、
- 針先端装填アデノウイルス粒子の制御された部分的再水和(ステップ8)によって実現した。
【0066】
先端装填マイクロニードル統合アデノベクター(MIA)の調製:
1)トレハロース貯蔵緩衝液(storage buffer)(5%のトレハロース
Sigma-Aldrich USA、20mMのTris pH7.8、75mMのNaCl、2mMのMgCl、0.025%のTween80)中に2×10粒子/mlの密度でアデノウイルス粒子を再懸濁する。
2)再懸濁したウイルスストックを、トレハロース貯蔵緩衝液中に調製した等体積の5%のCMC90と混合し、1×10粒子/mlの密度のアデノウイルス作業用ストックをもたらす。
3)アデノウイルス作業用ストック懸濁物を、表面積1cm当たり40μlで、マイクロニードルアレイ製造用金型の表面に添加する(本明細書の他の実施形態で詳細に記載したように)。
4)金型を、22℃で、4500rpmで10分間遠心機にかけて、針先にアデノウイルス作業用ストックを満たす。
5)過剰のウイルスストックを除去し、金型の表面を、金型表面積1cm当たりリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液100μlで洗浄する。
6)針の空洞内にのみアデノウイルスストック溶液を含有するマイクロニードルアレイ金型を、22℃で、3500rpmで10分間、部分的にスピン乾燥させる。
7)金型面積1cm当たり、HO中の20%の構造的非カーゴ含有CMC90ヒドロゲル100μlをマイクロニードルアレイ金型の表面に添加して、MIAデバイスの構造を形成する。
8)22℃で、4500rpmで10分間遠心機にかけて針の空洞を20%のCMC90で満たし、先端内で乾燥されたアデノウイルス粒子を再水和するために30分インキュベートさせる(ステップ3~6、上記)。
9)遠心機にかけることによって、遠心機チャンバーに10L/分の一定の空気を流しながら、22℃で、3500rpmで3時間、MIAデバイスを5%未満の水分含量にスピン乾燥させる。
10)乾燥したMIAデバイスをデモールドし、4℃または-80℃で貯蔵する。
【0067】
(実施例5)
本発明者らは、MNA組込み組換えアデノウイルス粒子の効力および安定性を評価した。Ad5.EGFPをCMCヒドロゲルMNAに組み込んで、1010ウイルス粒子/MNAを含有した最終製品を製作した。対照ブランクMNAを、まったく同様であるが、ウイルス無しで調製した。Ad5.EGFP MNAおよび対照MNAのバッチをRT、4℃、および-86℃で貯蔵し、ウイルスの安定性を感染アッセイで評価した。MNA組込みAd5.EGFPウイルスの特異的トランスダクション活性を、293T細胞を使用してin vitroで評価した。6ウェルプレートに2×10/ウェルで細胞を蒔き、指定した時間にわたってRT、4℃、および-86℃で貯蔵した希釈したウイルス懸濁物、懸濁物+空のMNA(対照)、またはAd5.EGFP MNAを用いて、二通りにトランスダクションした。陰性対照として、トランスダクションしていないウェルを含めた。最初に、細胞集団を、GFP発現についてフローサイトメトリーによって24時間後に分析した(代表的なヒストグラムを図35に示す)。
【0068】
図35に示したように、MNAにAd5.EGFPを組み込んでも、トランスダクション効率は低減されない。懸濁物中のまたはCMCパッチに組み込まれた同一の力価のAd5.EGFPでトランスダクションして24時間後のGFP発現標的293T細胞対トランスフェクトされていない対照細胞のフローサイトメトリー分析。図36は、MNA包埋Ad5.EGFPウイルスの安定性を示す。GFP遺伝子発現を、図37のようにフローサイトメトリーによってアッセイし、-86℃保存Ad5.EGFP懸濁物の感染効率に対して正規化した。
【0069】
MNA Ad5.EGFPウイルスを使用する感染効率は、87.92±4.5%であったことが判明し、これは、伝統的な-86℃保存Ad5.EGFP懸濁物で観察されるものと同様であり(図35および図36)、製造プロセスは、Ad-EGFPウイルス粒子のトランスダクション効率に悪影響しないことを示唆する。経時的な感染力を評価するために、新たに調製した-86℃保存Ad5.EGFP懸濁物のトランスフェクション効率を、RT、4℃、または-86℃で長時間貯蔵したMNA組込みAd5.EGFPの効率と比較した。最大365日の貯蔵期間にわたる感染力(Ad5.EGFP懸濁物+空のCMCパッチに対して正規化した)を報告する(図36)。これらの結果は、MNA Ad5.EGFPの感染性は、4℃または-86℃のいずれにおける貯蔵でも際立って安定であり、RTで最大30日間いくぶん安定であることを示唆する。
【0070】
これらの結果は、マイクロニードルアレイ送達Ad導入遺伝子が皮膚内で発現され、強力な細胞性免疫応答を誘導することを実証する。in vivoで遺伝子発現を具体的に評価するために、本発明者らは、伝統的な皮内注射(I.D.)またはマイクロニードルアレイ媒介皮内送達の後の皮膚内のGFP発現を判定した。本発明者らは、ID注射によって、または単一マイクロニードルアレイ適用を介して局部的に10個のAd5.GFPウイルス粒子を送達した(図37)。皮膚を48時間後に回収し、凍結切片化し、青色蛍光性DAPIを使用して対比染色して細胞核を同定し、次いで蛍光顕微鏡法によって画像化した。有意な細胞GFP発現がI.D.およびマイクロニードルアレイ送達の両方の後に観察された。免疫原性を評価するために、本発明者らは、ブースティング無しの単一I.D.またはマイクロニードルアレイ免疫化の後に、in vivoで抗原特異的溶解活性を評価した。この目的のために、本発明者らは、コドン最適化SIVmac239 gag全長、またはSIVmac239 gag p17抗原(Ad5.SIV gag、Ad5.SIV gag p17)をコードするE1/E3欠失Ad5ベースベクターでマウスの群を免疫した。空ベクターを対照として使用した(Ad5)。本発明者らは、Ad5.SIV gagまたはAd5.SIV gag p17を用いたI.D.またはマイクロニードルアレイ免疫化の後に、支配的なSIVgag p17由来ペプチドKSLYNTVCV(SIVmac239 gag 76-84)に特異的な、強力で同様のレベルのin vivo溶解活性を観察した(図37、CTL)。
【0071】
本明細書に開示のマイクロニードルアレイ技術は、臨床遺伝子療法も促進することができる。これは、例えば、従来の手法の少なくとも2つの主要な限定事項に対処する。第1に、これは、長時間にわたる組換えウイルスベクターの安定化および貯蔵を可能にする。生ウイルスベクターを、凍結液体製剤に対する証明された血清等価物(seroequivalence)と共に、高温および低温に対して耐性にすることによって、マイクロニードルアレイ安定化は、「コールドチェーン」に関係した圧力を緩和することになる。さらに、マイクロニードルアレイに統合すると、従来法によって実現可能でないウイルスベクターの正確で一貫した再現可能な投薬が可能になる。最後に、ウイルスベクターは、唯一必要な送達デバイス、皮膚の表層に正確に送達を向ける生体適合性で完全に使い捨てのマイクロニードルアレイ内に再梱包される。
【0072】
このような遺伝子送達プラットフォームは、患者に優しい臨床遺伝子療法をもたらすことに有用である。これらのマイクロニードルアレイは、血管または神経の構造の深さまで貫通しないように操作されているので、ヒト皮膚への遺伝子送達は、無痛性および非観血的の両方となる。さらに、製作プロセスは、柔軟であり、効率的なスケールアップの潜在性とともに、単純で迅速な低コスト生産を可能にする。また、最終製品であるMIAデバイスとして、これは、室温で安定であり、輸送および貯蔵するのに安価である。組み合わせると、これらの構造的利点および製造利点は、広い、迅速な臨床展開を可能にし、この遺伝子送達技術を、広い範囲のヒト疾患の予防および/または処置に容易に適用可能にすることができる。さらに、この手法を、現在同じ限定事項によって制限されている他のベクターベースワクチンプラットフォーム(例えば、ワクシニアウイルス、AAVなど)に拡張することができる。少なくともこれらの理由で、開示したマイクロニードルアレイおよびこれを使用する方法は、組換え遺伝子療法分野を著しく進歩させる。
【0073】
マイクロニードルアレイ - 例示的な活性成分
様々な活性成分を以下に詳細に記載する。便宜上、以下の実施例は、6.3×6.3mmであるマイクロニードルアレイに基づく。このサイズ、したがってカーゴ送達は、2~100倍増減することによって変更されうる。
【0074】
最大活性カーゴ量についての一般的な考慮事項としては、例えば、アレイ中の総針体積、および溶媒中の活性成分(複数可)の溶解度(一般に50%未満であると予期される)がある。
【化1】

【化2】

【化3】
【0075】
生アデノウイルスの先端装填は、一般に、以下の改変を含む:
a)先端装填用ヒドロゲル懸濁物中に5%のトレハロースおよび2.5%のCMC90の存在。
b)プロセスの温度が22℃で維持される。
【0076】
さらに、レンチウイルスベクターは、一般に、4℃のプロセシングおよび蒸気トラップベース湿度制御を必要とする。また、短いエピトープペプチドは一般に、DMSO中に可溶化されており、先端装填中の溶媒の蒸発時間は4時間である。
【0077】
マイクロニードルの構造および形状
以下の実施形態のそれぞれについて、活性成分の1つまたは複数の層は、上述したマイクロニードルアレイのマイクロニードル中に提供されうることが理解されるべきである。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、活性成分は、図15に示したものなど、アレイの構造支持体内でないマイクロニードルの範囲内にのみ提供される。さらに、他の実施形態では、活性成分は、図3A図4Bに示したマイクロニードルの先端など、マイクロニードルの上半分に集中している。
【0078】
図16Aおよび図16Bは、複数のピラミッドの突起(すなわち、マイクロニードル)で形成されたCMCマイクロニードルアレイのSEM画像である。図16Aに示したピラミッド針の平均先端直径は、約5~10μmである。図16Bに示したように、ピラミッド針の側部は、皮膚に挿入するのを促進することができる曲面および/または弓状面で形成することができる。
【0079】
図17は、マイクロニードルアレイの単一の針の別のSEM画像である。図17に示したマイクロニードルは、ベース延在柱型成形CMCマイクロニードルである。ベース延在柱型マイクロニードルは、断面が一般に多角形(polyagonal)(例えば矩形)である基部、および基部から延在する突起部を含む。突起部は、実質的に矩形である下部、および一般にある点へと先細りする先端部を有する。先端部は一般に、形状がピラミッドであり、ピラミッドの露出面は、平らまたは弓状でありうる。突起部は、針の全長の半分以上でありうる。
【0080】
図18および図19は、ピラミッド(図18)および柱型(図19)成形CMCマイクロニードルの顕微鏡写真を示す。ピラミッド針は、針先から針ベースまで連続して増大する断面プロファイル(寸法)を有するので、針が皮膚に入る際、皮膚内にピラミッド針を押し続けるのに必要とされる力が増大する。対照的に、柱型針は、突出部の一般に矩形部分に到達すると、一般に連続的な断面プロファイル(寸法)を有する。したがって、柱型針は、より小さい力で皮膚内への針の導入を可能にしうるので、ピラミッド型針より好ましい場合がある。
【0081】
図20は、マイクロミリングによって形成されるマスター金型に材料をスピンキャスティングすることによる製作に一般に適しているマイクロニードルの形状および構造の略図を示す。図20に示した形状および構造は、いずれのアンダーカットも含有しないので、これらは一般に、成形/デモールディングプロセスを妨害しない。図20の構造は、(a)ほぼピラミッド形のマイクロニードル、(b)「鋭い」柱型マイクロニードル(図8のベースメンバーを含まない)、(c)「広い」柱型マイクロニードル、(d)「短い」柱型マイクロニードル(短い柱セクションおよびより長い尖ったセクションを有する)、および(e)「フィレットされた」柱型マイクロニードルを含む。
【0082】
ピラミッドマイクロニードルの体積は、柱型マイクロニードルの体積より大きい場合があるが、これらの漸増断面プロファイル(寸法)は、漸増挿入力を必要とする。したがって、ピラミッドマイクロニードルの幾何形状は、挿入深度を低減し、有効送達体積を低減することができる。一方、柱マイクロニードルのより小さい断面積およびより大きいアスペクト比は、破壊力限界をより低くさせうる。頂角αが小さいほど、マイクロニードルの先端は、「鋭い」。しかし、頂角を小さくしすぎると(例えば、約30度未満)、得られるマイクロニードル体積および機械的強度は、望ましくないレベルに低減されうる。
【0083】
マイクロニードルの貫通力は、マイクロニードルの鋭さに反比例し、これは、マイクロニードルの含まれる(頂)角だけでなく、マイクロニードル先端の半径によっても特徴付けられる。頂角は、マスター金型幾何形状によって定められるが、先端の鋭さは、金型の信頼性にも依存する。本明細書に記載のマスター金型をマイクロリミングすると、金型幾何形状の精度を増大させることが可能になり、それによりひいては、得られる製造用金型、および製造用金型によって形成されるマイクロニードルアレイの精度および信頼性が増大する。
【0084】
マイクロミリングの精度が増大すると、より正確で緻密なエレメントを金型設計に含めることが可能になる。例えば、以下の次セクションで論じるように、柱型マイクロニードルのベースにフィレットを形成すると、マイクロニードルの構造的完全性を著しく増大させることができ、それにより、マイクロニードルが、皮膚に衝突する際、破壊または破損する可能性が低減される。これらのフィレットは、マイクロニードルの強度を著しく増大させることができるが、マイクロニードルの機能的要件(例えば、貫通深度および生物製剤の体積)を妨害しない。このようなフィレットは、従来の技法によって形成されるマスター金型で作ることが困難でありうる非常に小さいフィーチャである。しかし、上述したマイクロミリング技法は、ほとんど、またはまったく困難を伴うことなく、このような小さいフィーチャを含めることを可能にする。
【0085】
機械的完全性および貫通能力
マイクロニードルアレイは、そのカーゴ(例えば、生物製剤または生物活性成分)を表皮および/または真皮に送達するために角質層を貫通する一方、神経終末および血管を含有しうるより深い層への貫通を防止することによって痛みおよび出血を最小限にするように構成されていることが好ましい。製作したマイクロニードルアレイの機械的バイアビリティーを評価するために、アレイ幾何形状の代表的な変形としてピラミッドおよび柱型マイクロニードルアレイ(例えば、図7Bおよび図8に示した)に対して試験を実施した。第1のセットの試験は、マイクロニードルの破壊限界を示し、一定の接近速度で固体アクリル表面に対してマイクロニードルアレイを押し、一方、破壊が起こるまでの力および変位を同時に測定することを含む。第2のセットの試験は、ヒト皮膚外植片に対するマイクロニードルの穿孔能力を示す。
【0086】
図21は、機能試験のために設計された試験装置を示す。試料(すなわち、マイクロニードルアレイ)を治具に取り付け、これを、コンピューター制御移動ステージ(ES14283-52 Aerotech,Inc.)を使用して約10mm/秒の速度の一定速度で固定されたアクリル人工物(PMMA表面)に向かって進めた。アクリル人工物を受容した3軸ダイナモメーター(9256C1、Kistler,Inc.)が、力の高感度測定を可能にした。
【0087】
図22は、破壊試験中に測定されたデータの力-変位曲線を示す。左の曲線は、柱マイクロニードル試料の試験から得たデータを表し、右の曲線は、ピラミッドマイクロニードルの試験から得たデータを表す。図22に見られるように、マイクロニードルのこれらの2種類の破壊は、著しく異なり、ピラミッドアレイは、塑性変形する(曲がる)一方、柱型アレイは、そのベースでの柱の破損を呈する。この異なる破壊挙動は、相当に異なる変位-力データと結びつく。破壊(破損)イベントは、図に示したように、変位-力データから容易に識別することができる。得られたデータに基づいて、柱型マイクロニードルの破壊点は、平均で100mNであると分かった。わずか約40mNの力が角質層を貫通するのに必要とされるので、マイクロニードルは、破壊することなくヒト皮膚を貫通するのに十分強い。さらに、マイクロニードル先端とアクリル人工物との間の類似は、完全に確立することはできないので、実際の破壊限界は、100mNよりおそらくかなり高いであろう(すなわち、マイクロニードルは、ほとんど/すべてのマイクロニードルの同時破損ではなく、連続的な様式で破損した)。
【0088】
ピラミッドマイクロニードルは、破壊点の明らかな徴候をまったく伴わない連続的に増大する力シグネチャー(force signature)を提示した。ピラミッドマイクロニードルの破壊限界を同定するために、中断試験を行い、そこで、マイクロニードルをある特定の量によって、人工物中に進め、後退させ、光学顕微鏡画像によって検査した。このプロセスを、破壊が観察されるまで継続した。この目的のために、破壊を、15度を超えるピラミッドマイクロニードルの屈曲として定義した。
【0089】
マイクロニードルの破壊をさらに分析するために、図23に示したマイクロニードルアレイの有限要素モデル(FEM)を開発した。CMC材料の機械的性質(弾性係数および強度限界)を得るために、一連のナノインデンテーション試験(Hysitronナノインデンターを使用)。CMC材料(調製されたままの)の平均弾性係数および降伏強度は、それぞれ10.8GPaおよび173MPaであった。これは、調製したCMC材料が、PMMA(弾性係数:3.1GPa、降伏強度:103MPa)およびポリカーボネート(弾性係数:2.2GPa、降伏強度:75MPa)の両方より高い弾性係数および降伏強度を有し、他のポリマーに対してCMC材料の優れた強度および剛性を示すことを示す。
【0090】
このデータを使用して、一連のFEMシミュレーションを行った。高さ600μm、頂角30度、フィレット半径20μmを有するピラミッドおよび鋭い柱(幅=134μm)のマイクロニードルの破壊限界は、非対称装填(5度の装填方位差)について、400mN(ピラミッド)および290mN(鋭い柱)であることがFEMモデルから予測された。最小穿孔力要件が、約40mNであることを考慮すると、ピラミッドおよび鋭い柱マイクロニードルは、それぞれ約10および7.25の安全性の係数を有するはずである。
【0091】
フィレット半径が40μmに倍増される場合、柱の破壊荷重は、350mNに増大し、フィレット半径が5μmに低減される場合、破壊荷重は、160mNに低減した。これは、実験的に判定された破壊負荷に近い。柱の高さおよび幅は、破壊荷重に対して有意な効果を有した。例えば、幅100μmの柱について、高さを500μmから1000μmに増大させると、破壊荷重が230mNから150mNに低減した。高さ750μmの柱について幅を75μmに低減すると、破壊荷重は、87mNであると分かった。
【0092】
貫通能力を評価するために、ピラミッドおよび鋭い柱マイクロニードルアレイを、水ベースモデル弾性基板および全層ヒト皮膚に対する穿孔について試験した。図24は、モデル弾性材に曝露して4分後のピラミッド(パネルA、CおよびE)ならびに柱型マイクロニードルアレイ(B、DおよびF)のステレオ顕微鏡写真を示す。特に、ピラミッドまたは柱型マイクロニードルアレイを適用した後のモデル弾性基板(パネルCおよびD)または新たに切り取った全層ヒト皮膚外植片(パネルEおよびF)にトルエンブルートレーサー色素を堆積させた。
【0093】
モデル弾性基板は、セ氏約4度で約24時間以上ゲル化したPBS中に約10%のCMCおよび約10%のブタゼラチンを含んでいた。弾性材の表面を、厚さ約100μmのパラフィルムで覆うことによって、針先端およびパッチ材料の水ベースモデル弾性材との即時の接触を防止した。ステレオ顕微鏡イメージングを可能にするために、トリパンブルートレーサー色素(Sigma Chem.、カタログ番号T6146)を、0.1%の濃度でCMCヒドロゲル中に組み込んだ。パッチを、バネ仕掛けのアプリケーターを使用して適用し、約4分の曝露後に分析した。標的基板中の色素の物理的知見に基づくと、2つの異なる幾何形状のマイクロニードルの溶解は、著しく異なっていた。
【0094】
モデル弾性基板に適用された鋭い柱針は、ピラミッド設計で観察されたものより実質的に多いトレーサー色素をゲルマトリックスに放出した(図24、C対D)。回収したパッチの画像(図24、A対B)は、この知見と一致し、その理由は、鋭い柱針の分解は、ピラミッド針の分解より進んでいたためである。より臨床的に関連するモデルにこの分析を外挿するために、ピラミッドおよび柱型マイクロニードルアレイを、バネ仕掛けのアプリケーターからの同じ力を使用して、新たに切り取った全層ヒト皮膚外植片に適用した。弾性モデルからの結果と一致して、ピラミッドマイクロニードルアレイは、鋭い柱マイクロニードルアレイより明白に少ないトレーサー色素を堆積させた(図24、E対F)。
【0095】
貫通をさらに評価し、ヒト皮膚への送達有効性を評価するために、CMCマイクロニードルアレイを、BioMag(Polysciences,Inc.、カタログ番号84100)ビーズまたは蛍光粒状物トレーサー(Fluoresbrite YG 1μm、Polysciences Inc.、カタログ番号15702)を用いて製作した。蛍光粒状物または固体粒状物を含有するピラミッドCMCマイクロニードルアレイを、以前に記載した、生きているヒト皮膚外植片に適用した。適用して5分後に、表面残留物を除去し、皮膚試料を凍結切片化し、次いで光学顕微鏡(図25Aおよび図25B)、または蛍光顕微鏡法(図25C)によるイメージングのためにトルエンブルーで対比染色した。
【0096】
ピラミッドCMCマイクロニードルは、個々の針の挿入点に対応する貫通空洞に並ぶBiomagビーズの堆積によって立証されるように、生きているヒト皮膚外植片の角質層、表皮および真皮を有効に貫通した(図25Aおよび図25Bに示した代表的な切片)。特に、秩序立った空洞(図25A、1~4の番号が付いた空洞、トルエンブルー対比染色、10×)、および貫通空洞に並ぶBioMag粒子(褐色)の堆積は明白であり(図25B、40×)、マイクロニードルがヒト皮膚を貫通したことを示した。さらに、細胞核を同定するためのDAPIおよびMHCクラスII+抗原提示細胞を同定するための抗HLA-DRで染色した、生きているヒト外植片からの切片を分析すると、クラスII+抗原提示細胞と共局在化したいくつかの粒子を含めて、表在性表皮および真皮に堆積した高密度蛍光粒状物が明らかになった(図25C、DAPI(青色)、HLA-DR+(赤色)、および蛍光粒子(緑色)、40×)。
【0097】
これらの結果は、本明細書に記載のCMCマイクロニードルアレイが、ヒト皮膚を有効に貫通し、不溶性粒状物を含めた、統合されているカーゴ(生物活性成分)を送達することができることをさらに実証する。これらは、合理的なワクチン設計の現在の主要目的である、ヒト皮膚における粒子状抗原の抗原提示細胞への有効な送達と一致する。
【0098】
in vivoでのマイクロニードルアレイ送達にさらに対処するために、in vivoでの粒子状抗原の皮膚送達を、麻酔したマウスの耳の背側面に蛍光粒子含有アレイを同様に適用することによってモデル化した。5分後、パッチを除去し、マウスは、その正常な活動を再開した。3時間または3日、耳の皮膚および流入領域リンパ節を、蛍光粒子の存在について分析した。ヒト皮膚の知見と一致して、粒状物がアレイ適用部位から切り取った皮膚において明白であった(データを示さず)。さらに、3日の時点で、相当な数の粒子が、流入領域リンパ節内で明白であった。図26Aおよび図26Bは、粒状物が内部移行したリンパ節常在抗原提示細胞の存在を示唆する、クラスII+細胞に密接に付随した粒状物のクラスターを含めて(図26B、60×)、流入領域リンパ節内で明白であった相当な数の粒子(図26A、10×)を示す。
【0099】
マイクロニードルアレイを使用するカーゴ送達に対する針の幾何形状の効果を定量的に評価するために、Hトレーサー標識CMCマイクロニードルアレイを構築した。CMCヒドロゲルを、5%wtのオボアルブミンを用いて、25wt%の最終乾燥重量含量(5g/95gのOVA/CMC)のモデル活性成分として調製し、0.1wt%のトリパンブルー、およびH-チミジン(ICN Inc.、カタログ番号2406005)の形態での0.5×10dpm/乾燥重量1mgのHトレーサーで微量標識した。標識CMCヒドロゲル調製の単一バッチから、ピラミッドおよび鋭い柱の針の幾何形状のいくつかの個々のパッチを含有する、4つのバッチのH-CMCマイクロニードルアレイを製作した。パッチをヒト皮膚外植片に上述したように適用し、30分曝露した後除去した。パッチ処置範囲をテープストリップして表面残屑を除去し、10mmの生検パンチを使用して切断した。切り取ったヒト皮膚外植片ディスクのH含量を、シンチレーション計数によって判定した。H-CMCマイクロニードルパッチ材料の比活性を判定し、72,372cpm/乾燥重量1mgであると計算された。この比活性を使用して、皮膚に到達され、保持されたオボアルブミンの量を間接的に判定した。得られたデータを、以下の表1に要約する。
【0100】
試験したタイプのパッチは、マイクロニードルアレイ間(平均標準偏差24~35%)およびバッチ間(平均標準偏差7~19%)で一貫していた。両針幾何形状のバッチ内ばらつきは、インバッチ値(in-batch value)未満であり、挿入プロセスおよび標的の特徴が、順調な経皮材料送達および保持において主要な役割をおそらく果たすことを示した。パッチ材料保持データは、経皮カーゴ送達におけるマイクロニードル幾何形状が第1に重要であることを明らかに実証する。柱型針幾何形状は、ピラミッド針のものより、全体的に3.89倍大きいH標識針材料の堆積をもたらした。堆積した放射性材料に基づくと、ピラミッド針は、深さ約200μm挿入され、一方、柱型は、約400μm以上挿入されたと推定される。
【0101】
表4.2.5.ピラミッドおよび柱型針によるヒト皮膚外植片へのH標識CMCマイクロニードル材料の移動
【表1】
【0102】
望ましくは、本明細書に記載のマイクロニードルアレイは、皮膚免疫化に使用することができる。抗原およびアジュバントを有効に送達するためのストラテジーの開発は、ワクチン設計の主要な目的であり、皮膚樹状細胞を標的にする免疫化ストラテジーは、伝統的なワクチンに対して様々な利点を有する。
【0103】
本明細書に記載のマイクロニードルアレイは、化学療法および免疫化学療法用途にも有効でありうる。皮膚腫瘍を含めた腫瘍への化学療法剤の有効で特異的な送達は、最新の腫瘍療法の主要な目的である。しかし、化学療法剤の全身送達は、複数の十分に確立した毒性によって制限される。皮膚由来腫瘍(基底細胞、扁平細胞、メルケル細胞および黒色腫など)、ならびに皮膚に転移性の腫瘍(乳がん、黒色腫など)を含めた皮膚腫瘍の場合では、局部送達が有効でありうる。局部送達の現在の方法は一般に、クリームの塗布または局所注射の繰り返しを必要とする。これらの手法の有効性は、現在、皮膚内への活性剤の限定された浸透、非特異性、および望まれない副作用によって制限されている。
【0104】
本開示のマイクロニードルアレイは、伝統的な局部的な化学療法手法の代替として、またはそれに加えて使用することができる。本開示のマイクロニードルアレイは、皮膚の外層を貫通し、真皮および表皮中の生細胞に活性生物製剤を有効に送達することができる。化学療法剤が送達されると、皮膚細胞のアポトーシスおよび死がもたらされる。
【0105】
さらに、複数の生物活性剤を、単一のマイクロニードルアレイ(パッチ)で送達することができる。これは、細胞傷害性剤の免疫刺激剤(アジュバント)との共送達に基づく免疫化学療法手法を可能にする。アジュバントによって作られる免疫原性環境では、死にかけている腫瘍細胞からの腫瘍抗原放出が免疫系に提示され、処置の部位における、かつ体全体にわたる腫瘍細胞を拒絶することができる局所的および全身性の抗腫瘍免疫応答を誘導する。
【0106】
例示的な実施形態では、生物学的に活性な小分子の送達を試験した。特に、CMCマイクロニードルアレイで皮膚に送達された化学療法剤Cytoxan(登録商標)の活性を試験した。Cytoxan(登録商標)を使用すると、皮膚悪性腫瘍の範囲の局所処置に潜在的な臨床的有用性を有する作用物質のクラスを代表して、生物活性(皮膚におけるCytoxan(登録商標)誘導アポトーシス)の直接測定が可能になる。
【0107】
CMCマイクロニードルアレイ組込み抗原の免疫原性を直接評価するために、十分に特徴付けられたモデル抗原オボアルブミンを使用した。ピラミッドアレイを、可溶性オボアルブミン(sOVA)、粒状オボアルブミン(pOVA)を組み込んで製作し、またはCpGとともにpOVAを両方含有するアレイを製作した。CpGのアジュバント効果は、動物モデルで十分に特徴付けられており、ヒトにおけるこれらのアジュバント活性は、臨床試験で現在評価中である。
【0108】
免疫化は、上述したように、バネ仕掛けのアプリケーターを使用して麻酔したマウスの耳に抗原含有CMCマイクロニードルアレイを適用し、その後、適用して5分後にアレイを除去することによって実現した。これらのピラミッドマイクロニードルアレイは、CMC中の約5wt%のOVA、および約0.075wt%(20μM)のCpGを含有していた。陽性対照として、OVAをコードするプラスミドDNAを使用する遺伝子銃ベース遺伝子免疫化ストラテジーを使用した。遺伝子銃免疫化は、マウスモデルにおいてCTL媒介免疫応答を誘導するための最も強力で再現可能な方法の1つであり、その使用をこれらのアッセイにおける比較のための「ゴールドスタンダード」として示唆している。
【0109】
マウスを免疫し、1週間後にブーストし、次いでin vivoでOVA特異的CTL活性についてアッセイした。特に、少量のOVAおよびCpGを含有するアレイを用いた免疫化は、遺伝子銃免疫化によって観察されたものと同様に、高レベルのCTL活性を誘導した(図27)。有意なOVA特異的CTL活性が、粒状および可溶性アレイ送達OVA抗原の両方で、アジュバントの非存在下でさえ誘発された。伝統的な針注射によって送達される場合、同様の応答には、実質的により高い用量の抗原が必要となることが十分に確立されている。
【0110】
製作したアレイの安定性を評価するために、アレイのバッチを製作し、貯蔵し、次いで長時間にわたって使用した。図28に示したように、最大80日(評価した最長の時点)に及ぶ貯蔵期間にわたって、免疫原性の有意な劣化はまったく観察されなかった。したがって、CMCマイクロニードルアレイおよびこの送達技術は、抗原特異的免疫を誘発するための抗原およびアジュバントの有効な皮膚送達を可能にすることができる。
【0111】
生物学的活性小分子の送達を評価するために、低分子量化学療法剤Cytoxan(登録商標)(シクロホスファミド)、または対照としてFluoresBrite緑色蛍光粒子を含むピラミッドCMCマイクロニードルアレイを製作した。Cytoxan(登録商標)を、5mg/CMC1gの濃度で統合し、アレイ1つ当たりおよそ約140μgの送達を可能にした。これは、標的にされる皮膚の面積に基づいて治療的に妥当な濃度であるが、全身性毒性に関連したレベルの十分下である。生きているヒト皮膚の器官培養を使用して、Cytoxan(登録商標)の細胞傷害性(cytotoxicty)を評価した。Cytoxan(登録商標)は、本発明者らが以前に記載したように、皮膚外植片にアレイを適用することによって送達した。適用して5分後、および72時間の曝露後に、アレイおよび残留材料を除去し、培養した生きている皮膚外植片を凍結切片化し、固定した。緑色蛍光TUNELアッセイ(In Situ Cell Death Detection Kit、TMR Green、Roche、カタログ番号:11-684-795-910)を使用してアポトーシスを評価した。図29Aに示したように、ヒト皮膚切片の蛍光顕微鏡画像解析により、Cytoxan(登録商標)で処置した皮膚において表皮細胞の広範なアポトーシスが明らかになった。図29Bに示したように、蛍光粒子で処置した皮膚において目に見えるアポトーシスはまったく観察されなかったが、これらの粒子は、明白であり、観察された範囲がマイクロニードルアレイによって正確に標的にされたことをバリデートした。
【0112】
直接製作したマイクロニードルアレイ
上述したマスター金型のマイクロミリングは、様々な幾何形状を有するマイクロニードルアレイの生産を可能にする。別の実施形態では、乾燥CMCシートなどの様々な材料を直接マイクロミリングすることによってマイクロニードルアレイを製作するためのシステムおよび方法が提供される。マスター金型のマイクロミリングに関して上述した同じ一般的な成形用具を、マイクロニードルアレイを直接マイクロミリングするのに使用することができる。
【0113】
マイクロニードルアレイの直接マイクロミリングは、成形ステップの必要性を排除し、大規模臨床用途に適合性となる単純化された、スケーラブルな、かつ正確に再現可能な生産ストラテジーを可能にする。さらに、マイクロミリングによってマイクロニードルアレイを直接製作することにより、マイクロニードル幾何形状のより優れた制御が可能になる。例えば、マイクロミリングは、成形プロセスを使用して実現することができない、アンダーカットおよび/またはベベルなどのフィーチャを保持するマイクロニードルを含めることを可能にする。
【0114】
マイクロニードルアレイの直接ミリングの再現性は、特に有益である。すなわち、直接マイクロミリングでは、マイクロニードルのすべてがミリング製作プロセスの結果として同一である。成形操作では、いくつかの針が、金型からこれらを物理的に分離するプロセスの結果として、所与のパッチから欠損または破損することは、珍しくない。ある特定の医療用途で使用するために、アレイ中の生物活性成分の量の再現性は、プロセスにわたる適切なレベルの「品質管理」をもたらすのに非常に重要であり、その理由は、パッチ間の針の変則性は、送達される薬物/ワクチンの用量のばらつきをおそらくもたらすためである。もちろん、再現性はまた、FDA認可を必要とする任意の用途に重要な利点となる。スピンキャスティング/成形されたパッチは、一貫した薬物送達のために許容される均一性を保証するために、特別なプロセスを必要とするはずである。この品質管理はまたおそらく、この放出試験に「不合格になる」ある特定のパーセンテージのパッチをもたらし、生産プロセスに廃棄物を導入することにもなる。直接マイクロミリングは、これらの潜在的な問題を排除し、または少なくとも有意に低減する。
【0115】
成形プロセスはまた、ウェルまたは凹面を満たし、そのウェルまたは凹面から硬化した成形部品を取り出すことができる必要性のために固有の限定事項を有する。すなわち、金型の幾何形状のために、アンダーカットは、部品を成形するとき一般に回避されなければならず、さもなければ部品は、金型から取り出し可能でなくなる。すなわち、成形されるマイクロニードルアレイなどの成形部品の幾何学的限定事項は、頂点により近く位置した任意のフィーチャが、ベースに向かって位置した任意のフィーチャより狭くなければならないことである。
【0116】
したがって、これらの限定事項を考慮して、図20は、成形による製作に一般に適したマイクロニードルの形状および構造の略図を示す。すなわち、図20に示した形状および構造は、部品(すなわちマイクロニードル)が製造用金型から取り出されるのを妨げるいずれのアンダーカットも含有しない。対照的に、図30は、本明細書に記載の様式で成形することができない斜めのアンダーカットされたマイクロニードル形状を示す。
【0117】
この幾何形状は、提案したマイクロミリング技術を使用して、直接製作によってのみ作ることができる。負の(ベベル)角度は、組織内のマイクロニードルのより良好な保持を促進する。さらに、図30のマイクロニードルは、下部(より小さい断面寸法を伴う)の上により広い中間部(より大きい断面寸法を伴う)を有するので、皮膚内に保持されるように構成されているより広いセクションに生物活性材料を保有または貯蔵するようにマイクロニードルを構成することによって、より多い量の生物活性材料を送達することができる。したがって、中間部のより大きい断面寸法は、生物活性成分のバルクを「担持する」ことができる。下部は、より狭い断面寸法に向かって先細になるので、より広い中間部は、皮膚層内に生物活性成分を送達するための良好な貫通を得ることになる。中間部の上の部分は、皮膚層内へのマイクロニードルの侵入を促進するために、先に行くほど細くなることが望ましい。
【0118】
成形部品の別の限定事項は、金型の非常に小さいセクションを正確に満たすことが困難でありうることである。マイクロニードルアレイ用製造用金型は、多数の非常に小さいセクションを含むので、各ウェルを正確に満たすことが困難でありうる。これは、金型が異なる材料、例えば、生物活性成分を含有する材料、および生物活性成分を含有しない材料などで満たされなければならないとき、特に問題となりうる。したがって、製造用金型が層で満たされる場合、各マイクロニードルに関連したとても小さいウェルを正確に満たすことが困難でありうる。マイクロニードルは、1種または複数種の生物活性成分を送達するように意図されているので、このような再現性は、特に重要である。したがって、製造用金型を満たすのに使用される生物活性成分の量のわずかな変動でさえ、非常に望ましくない場合がある。
【0119】
また、マイクロミリングされうるシートまたはブロックを形成するために積層構造を使用することによって、様々な活性成分を、垂直層化によって単一マイクロニードル内に統合することができる。例えば、例示的な実施形態では、CMCヒドロゲルおよびCMC-sOVAヒドロゲル(80%のCMC/20wt%のOVA)を層化してシートまたはブロックの形態にした。この複合材シートは、本明細書に記載の直接マイクロミリング技法を使用して微細機械切削することができる。
【0120】
図31は、マイクロニードルアレイ全体のステレオ顕微鏡画像解析である。マイクロニードルは、10×10アレイのマイクロニードルを含む。図32は、図31のマイクロニードルアレイの拡大セグメントである。2種の成分の層化が図32に示されており、これは、先端部のマイクロニードルのより暗い範囲および基部のマイクロニードルのより明るい範囲を示す。先端におけるより暗い層は、生物活性成分、この場合、CMC層に含有された可溶性オボアルブミンを含む層を表す。
【0121】
活性材料(例えば、抗原)を含有する層の形成、ならびにこの層(および任意の他の隣接する層)の後続のマイクロミリングは、相対的に大量の活性材料の使用を必要としうるが、材料は、取り出し(例えば、チップの形態で)、回収し、再利用することができる。直接機械切削技術は、成形/デモールディング手法から生じる幾何学的束縛によって制限されず、したがって、より画期的な針設計(例えば、図30)を作ることができ、それは、皮膚内での保持される針の体積および針の保持時間を著しく改善することができる。
【0122】
複数の層を形成することによってシートまたはブロックを生産すると、マイクロ機械切削することができ、生物活性成分を有する1つまたは複数の層を含みうる固体材料をもたらすことができる。例えば、十分に画定された、制御された寸法を有する溶解性固体カルボキシメチルセルロースポリマー系ブロックまたはシートを、積層プロセスによって製作することができる。得られるシートまたはブロックは、プラスチックまたは金属シートまたはブロックの機械切削と同様に、完全に機械切削可能である。本明細書に記載するように、この製作プロセスは、マトリックス内に生物活性成分を、これらの活性レベルを著しく低減することなく組み込むことに適している場合がある。
【0123】
以下に記載するように、材料(CMCベース材料など)の製作されたシートは、皮膚を通じて活性構成要素を送達するのに適した1つまたは複数のマイクロニードルアレイを生産するために、直接マイクロ機械切削/マイクロミリングすることができる。この溶解性生体適合性CMCブロック材料は、体表に適用するために持続放出様式で可溶性または不溶性および粒状作用物質を送達するのに使用することができる。
【0124】
生体適合性材料は、足場材料の溶解が必要とされ、有用である場合、より深い軟組織または硬組織内のインプラントに適している場合がある。
【0125】
以下の方法は、12.5%の濃度にカルボキシメチルセルロース(CMC)ポリマー低粘度ヒドロゲルを調製するのに使用することができる。12.5%のカルボキシメチルセルロース(CMC)低粘度ヒドロゲルは、水または(それだけに限らないが)PBSもしくはHBSなどの他の生体適合性緩衝液中で調製することができる。ポリマー溶液を調製する間に、可溶性作用物質(核酸、ペプチド、タンパク質、脂質、または他の有機および無機の生物学的活性成分など)、ならびに粒状物を添加することができる(例えば、オボアルブミン、可溶性作用物質)。CMCの20w/w%で活性構成要素を担持する第一鉄粒状物を使用することができる。
【0126】
活性成分をまったく含まない滅菌した12.5%のCMCヒドロゲル1000gの調製は、以下の通り実現することができる:
1)CMC 125gを測定し、水または他の水ベース溶媒875gを添加する。
2)オーバーヘッドミキサーで均質になるまで撹拌する。
3)ホモジネートをセ氏121度で1時間オートクレーブして滅菌する(オートクレーブステップにより粘度を低減して層化を改善することができる)。
4)セ氏22度に冷却する。
5)得られた材料を10トルおよびセ氏22度で1時間真空処理して、捕捉されたマイクロバブルを除去する。
6)真空チャンバー付き遠心機で生成物を25,000gで1時間遠心機にかける(残留するマイクロバブルを浮かせ、さらに除去するため)。
7)CMCヒドロゲル生成物をセ氏4度で貯蔵する。
【0127】
滅菌した12.5w/w%の乾燥含量の20/80%のオボアルブミン/CMCヒドロゲル1000gの調製は、以下の通り実現することができる:
1)CMC100gを測定し、水または他の水ベース溶媒650gを添加する。
2)オーバーヘッドミキサーで均質になるまで撹拌する。
3)ホモジネートをセ氏121度で1時間オートクレーブして滅菌する(このオートクレーブステップにより粘度を低減して層化を改善することができる)。
4)セ氏22度に冷却する。
5a)オボアルブミン25gを水225gに溶解させる。
5b)0.22μmの孔サイズのフィルターでオボアルブミン溶液を滅菌濾過する。
6)CMCヒドロゲル750gを滅菌したオボアルブミン溶液250gと滅菌条件下で均質になるまで混合する。
7)得られた材料を10トルおよびセ氏22度で1時間真空処理して、捕捉されたマイクロバブルを除去する。
8)真空チャンバー付き遠心機で生成物を25,000gで1時間遠心機にかける(残留するマイクロバブルを浮かせ、さらに除去するため)。
9)セ氏4度でCMCヒドロゲル生成物を貯蔵する。
【0128】
滅菌した12.5w/w%の乾燥含量の20/80%の粒状オボアルブミン/CMCヒドロゲル100gの調製は、以下の通り実現することができる:
1)CMC10gを測定し、水または他の水ベース溶媒87.5gを添加する。
2)オーバーヘッドミキサーで均質になるまで撹拌する。
3)ホモジネートをセ氏121度で1時間オートクレーブして滅菌する(このオートクレーブステップにより粘度を低減して層化を改善することができる)。
4)セ氏22度に冷却する。
5)粒状オボアルブミン2.5gをセ氏22度のCMCヒドロゲル97.5g中に分散させ、滅菌条件下で均質になるまで混合する。
6)得られた材料を10トルおよびセ氏22度で2時間真空処理して、捕捉されたマイクロバブルを除去する。
7)真空チャンバー付き遠心機で生成物を3,000gで1時間遠心機にかける(残留するマイクロバブルを浮かせ、さらに除去するため)。
8)セ氏4度でCMCヒドロゲル生成物を貯蔵する。
【0129】
本実施例では、粒状オボアルブミンは、オボアルブミンへの活性化した鉄ビーズの反応から調製されることに留意されたい。しかし、上記記載は、例示的な実施形態であるだけであり、他の化合物および活性構成要素も使用されうることに留意されるべきである。
【0130】
固体ブロック/シートのカルボキシメチルセルロース(CMC)は、上述した低粘度CMCヒドロゲルを使用して、以下の様式で製作することができる。
【0131】
この製作プロセスは、規定された厚さでポリマーを層状拡散させること、およびポリマー層の表面に滅菌乾燥空気流を使用して約5%未満の含水量まで層化ポリマーを乾燥させることを含みうる。上記2つの行為は、所望のブロック厚が実現されるまで繰り返すことができる。
【0132】
鋳型アセンブリーに規定された厚さの層状CMCヒドロゲル層化を実現する方法を、図33を参照して説明する。図33は、(a)キャスティングベッド;(b)調節可能なキャスティングベッド壁;(c)キャスティングベッド深度調整アセンブリー;および(d)アクリル散布機を含む鋳型アセンブリーの断面図を示す。図33は、一定の縮尺で描かれておらず、または他の方法で適切な比率でのエレメントで示されていないことに留意されるべきである。
【0133】
鋳型アセンブリーは、アクリル(プレキシグラス)から構築することができ、キャスティングベッドベースユニット、垂直に調節可能な疎水性キャスティングベッド壁、およびキャスティングベッド調整機構を含みうる。キャスティングベッドベースユニット(a1)は、セルロース層(a3)が取り付けられた着脱可能/交換式キャスティングベッドトッププレート(a2)を含みうる。セルロース層は、厚さ約0.5mmとすることができる。垂直に調節可能な疎水性キャスティングベッド壁(b)は、リードスクリュー(c1)およびレベル調整つまみ(c2)から成り立ちうるキャスティングベッド深度調整機構を使用して調整することができる。示した実施形態では、このつまみを4分の1回転させると、ベッド壁を0.5mm持ち上げることができる。
【0134】
最初に、調節可能なキャスティングベッド壁は、アクリル散布機とベッドのセルロース層との間の距離が、散布機が適切な位置にあるとき約1mmである高さに設定することができる。既定の体積(例えば、約0.1ml/cm)の12.5%のCMCヒドロゲルを添加し、層化することができる。調節可能なキャスティング壁の上面でアクリル散布機(d)をスライドさせることによって層をならし、または平坦化して、CMCヒドロゲルの約1mmのならされた層を得ることができる。層化CMCヒドロゲルは、図34に示し、以下でより詳細に記載される乾燥装置で乾燥させて固相にすることができる。
【0135】
層化および乾燥ステップは、所望の層状構造(シート)が実現されるまで繰り返すことができる。キャスティングベッド壁は、各層を添加する間に適切な量によって上昇させることができる。例えば、各層を添加した後、ベッド壁を、約0.5mm上昇させ、または持ち上げることができる。したがって、上述したサイクルは、約0.5mmの固体CMC層を堆積することができる。このプロセス(例えば、材料の層化、ベッド壁の上昇など)は、所望のブロック厚が実現されるまで繰り返すことができる。
【0136】
層化CMCヒドロゲルポリマーは、様々な様式で乾燥させることができる。例えば、図34は、シート材料の様々な堆積層を乾燥させるのに使用されうる乾燥装置を示す。図34は、一定の縮尺で描かれておらず、または他の方法で適切な比率でのエレメントで示されていないことに留意されるべきである。ファンは、鋳型アセンブリー内で層化したCMCヒドロゲル上に連続的なガス流(例えば、空気または窒素などの他の不活性ガス)をもたらすことができる。ガス流は、CMCヒドロゲル層を穏やかに脱水する。固体CMC製品中のガス封入(例えば、気泡)を防止または低減するのに、乾燥速度を調整することができる。層上の高湿度の空気は、乾燥剤(例えば、空気乾燥機または除湿機)で乾燥させ、温度を調整し、速度制御されたファンによってヒドロゲル上に再び戻すことができる。乾燥プロセスの状態を表示するために、湿度計をチャンバーの高湿度側に適所配置することができる。湿度計によって示される場合、所定の乾燥が実現された後、乾燥プロセスを終えることができる。
【0137】
乾燥速度に影響を与えるように気流を調整することができる。例示的な実施形態では、気流は、約0.1~2.0m/秒の間に制御され、温度は、周囲温度とセ氏約50度の間である。これらの構成を使用して、単層CMCヒドロゲルの乾燥時間は、気流および設定温度に応じて約0.5~4時間とすることができる。
【0138】
純粋なCMCベース製品は、透明、淡オフホワイト、または琥珀色でありうる。その比重は、約1.55~1.58g/mlでありうる。製品は、マイクロバブルを含まず、さもなければミクロンスケール物体を製作するのに適していることが望ましい。最終的なブロック/シート製品の物理的特徴付け(硬度、引張強度など)は様々となりうるが、一般に、マイクロミリングに関連した物理的ストレスに耐えることができるべきである。
【0139】
上述したように、本明細書に開示のマイクロニードルアレイは、様々な生物活性成分の信頼できる、正確な送達法を提供することができる。上述したマイクロニードルアレイに特徴的な構造、製造および流通の利点は、ワクチンの送達に使用するのに特に適用可能でありうる。これらのマイクロニードルアレイの利点としては、(1)ワクチン送達のための針または生きているベクターの使用を不要にする安全性、(2)安価な生産、製品の安定性および流通の容易さに起因する経済性、ならびに3)多様な抗原およびアジュバント製剤と適合性の送達プラットフォームを介した多様性がある。
【0140】
さらに、マイクロニードルアレイによる皮膚の免疫化は、免疫原性における重要な利点を有する。皮膚は、容易にアクセス可能な樹状細胞(DC)に富み、ワクチン送達の高度に免疫原性の標的として長い間見なされている。これらの樹状細胞集団は、これまで同定された最も強力な抗原提示細胞(APC)の構成要素となる。例えば、皮膚を遺伝子免疫化すると、マウスおよびヒト皮膚の樹状細胞がトランスフェクトおよび活性化され、これらのトランスフェクトされた樹状細胞は、トランスジェニック抗原を合成し、皮膚流入領域リンパ節に遊走し、MHCクラスI拘束性経路によってこれらの抗原を効率的に提示してCD8+T細胞を刺激する。皮膚由来DCによって誘導される免疫応答は、他の免疫化手法によって誘導されるものと比較して、際立って強力で持続性である。最近の臨床試験では、従来のワクチンでさえ、標準的な筋肉内針注射よってではなく、皮内に送達されるとき著しくより強力であることが実証されている。したがって、マイクロニードルアレイは、抗原およびアジュバントの両方を効率的および同時に送達することができ、同じ送達プラットフォームを使用して、DCのターゲティングおよび免疫応答のアジュバントエンジニアリングの両方を可能にする。
【0141】
高周波数電磁振動アプリケーター
マイクロニードルアレイデバイスは、ヒトの圧力による(例えば、指もしくは親指で押すこと)またはバネ仕掛けのデバイスを用いた自己適用または支援適用を含めた様々な方法によってヒト皮膚に適用することができる。先端装填マイクロニードルアレイを含めたマイクロニードルアレイデバイスの送達の容易さおよび再現性を促進するために、アプリケーターデバイスを本明細書に記載する。アプリケーターデバイスは、高周波数電磁振動をアクティブヘッドの単方向機械的共振に変換するように構成されている。これはひいては、複数の再現可能な低振幅および高周波数圧力ストロークを可能にし、このストロークは、ヒト皮膚を含めた組織内へのマイクロニードルアレイのマイクロニードルの挿入を促進する。
【0142】
図38に示したように、アプリケーターは、アプリケーターヘッド、オシレータ-エネルギー変換器、電磁オシレータおよび電源を備えることができる。必要に応じて、これらの4つのエレメントの1つまたはすべては、アプリケーターデバイスから分離可能でありうる。
【0143】
アプリケーターヘッドは、異なるサイズおよび形状の組織表面積に適応し、作用するように互換性とすることができる。図39に示したように、様々なアプリケーターヘッドの幾何形状を、本明細書に記載のアプリケーターと組み合わせて利用することができる。アプリケーターヘッドは、ステンレス鋼または他の化学的および物理的耐性の材料で互換可能に作製されている。必要に応じて、アプリケーターヘッドは、滅菌性のためにオートクレーブし、かつ/またはアルコールもしくは他の化学物質によって滅菌することができる。代替としてまたは追加的に、ガス滅菌(エチレンオキシド)が可能である。
【0144】
適用特異的幾何形状は、迅速に設計し、製作することができる。例えば、この実施例における単一適用の面積は、アクティブヘッドの幾何形状に応じて5mm~250mmの範囲となりうる。ヘッドの幾何形状の単純な構造的バリエーションによって広い範囲を実現することができる。
【0145】
オシレータエネルギー変換器ユニットは、電磁振動をアプリケーターヘッドの機械的運動に変換するように構成することができる。方向Zのアプリケーターヘッドの振幅は、0.5~2.5mmの間に制御されうる(図40;A)。いくつかの実施形態では、方向X-Yのヘッドの運動は、無視できる、すなわち0.2mm未満であるように構成することができる(図40;B)。方向Zのエネルギー変換から生じる機械的運動の周波数は、500~25000rpmの間に制御されうる。必要に応じて、オシレータエネルギー変換器ユニットは、分離可能であり得、必要な場合処分または滅菌することができる。
【0146】
電磁(EM)オシレータは、3つのサブユニットからできている場合がある。これらのサブユニットは、(1)制御装置および高周波数EMオシレータ用の電圧および電力を生成する調整電源、(2)EMオシレータ用高周波数信号および要求電流を生成する制御装置-レギュレーター、ならびに(3)EMオシレータを含むことができる。出力周波数は、ユーザーによって制御することができる(例えば、100~500Hzなどの範囲内で)。いくつかの実施形態では、EMオシレータは、完全に密閉されている場合があり、アルコール溶液または他の化学剤によって滅菌することができる。
【0147】
電源ユニットも、異なる取り付け可能な電源、例えば:
a.通常の使い捨てのアルカリまたは任意の他のタイプの電池、
b.内蔵の誘導充電器を有する充電式NiCadまたはLi酸化物電池、
c.100~240Vの電子電源アダプター
などに適応するように分離可能でありうる。
【0148】
アプリケーターは、マイクロニードルアレイ適用とともに、いくつかの利益をもたらすことができる。例えば、アプリケーターは、組織内へのマイクロニードルアレイ挿入に必要な機械的力を最小限にすることができる。アプリケーターは、既存のバネ仕掛けのアプリケーターと比較して痛みの効果を低減することもできる。さらに、アプリケーターは、携帯型とすることができ、アプリケーターのコンポーネントは、分離可能および互換性でありうる。最後に、アプリケーターは、これが無菌使用のために滅菌されうるように構成することができる。
【0149】
開示した実施形態の原理が適用されうる多くの可能な実施形態を考慮すると、示した実施形態は、好適な例にすぎず、保護の範囲を限定するものとして解釈されるべきでないことが認識されるべきである。むしろ、保護の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって本発明者らは、これらの特許請求の範囲および趣旨に入るすべてについて、特許請求する。
図1
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図40
【外国語明細書】