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特開2023-176024液滴のマイクロドーズストリームとして眼にアトロピンを送達するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176024
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】液滴のマイクロドーズストリームとして眼にアトロピンを送達するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A61F9/007 170
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178052
(22)【出願日】2023-10-16
(62)【分割の表示】P 2020539222の分割
【原出願日】2019-01-17
(31)【優先権主張番号】62/618,348
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514266389
【氏名又は名称】アイノビア,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トソンチョ・イアンチュレブ
(72)【発明者】
【氏名】ルーク・クロウソン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液滴のマイクロドーズストリームとして、アトロピンを含む組成物を必要とする被験体の眼に当該組成物を送達する方法を提供する。
【解決手段】組成物を送達する方法は、(a)圧電液滴送達装置を介してアトロピンを含む組成物を含む液滴のマイクロドーズストリームを生成し、ここで、液滴のマイクロドーズストリームは、15ミクロンを超える平均放出液滴直径を有する工程、および(b)液滴のマイクロドーズストリームを被験体の眼に送達する工程、を含む。組成物を送達する方法は、近視の治療を必要とする被験体において、近視、特に成人および小児における進行性近視(近視)を治療する。具体的には、投与される溶液中に比較的高濃度のアトロピンを利用するが、はるかに少ない用量を被験体に送達し、それによって、過剰な液が標的組織によって吸収されないことを低減し、さらには防止する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴のマイクロドーズストリームとして、アトロピンを含む組成物を必要とする被験体の眼に前記組成物を送達する方法であって、
前記方法は、(a)圧電液滴送達装置を介してアトロピンを含む組成物を含む液滴のマイクロドーズストリームを生成し、ここで、液滴のマイクロドーズストリームは、15ミクロンを超える平均放出液滴直径を有する工程と、
(b)前記被験体の眼に液滴のマイクロドーズストリームを送達する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記方法が、それを必要とする被験体において近視を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体の眼に送達される液滴のマイクロドーズストリームが13マイクロリットル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体の眼に送達される液滴のマイクロドーズストリームが10マイクロリットル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体の眼に送達される液滴のマイクロドーズストリームが5マイクロリットル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体の眼に送達される液滴のマイクロドーズストリームが3から7マイクロリットルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
液滴のマイクロドーズストリームが少なくとも約3m/sの平均初期放出速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
液滴のマイクロドーズストリームが、約4m/sから約12m/sの平均初期放出速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が少なくとも0.5重量%の濃度のアトロピンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が少なくとも0.8重量%の濃度のアトロピンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が1重量%以上の濃度のアトロピンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、0.5~1.2重量%の濃度のアトロピンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記液滴のマイクロドーズストリームが、80ms未満で被験体の眼に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記液滴のマイクロドーズストリームが、20から60ミクロンの平均放出液滴直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記圧電液滴送達装置が、液滴のマイクロドーズストリームの生成および送達の間に水平に対して25°以内に指向される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記圧電液滴送達装置は、放出機構を含み、前記放出機構は、発生器プレートと圧電アクチュエータとを含み、前記発生器プレートは、その厚さにわたって形成された複数の開口部を含み、前記圧電アクチュエータは、前記低投与容量薬剤組成物の液滴の指向された流れを発生させる周波数で、前記発生器プレートを直接又は間接的に振動させるように作動可能である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液滴送達装置、投与方法およびそれらの使用、特に眼への液滴の投与に関する。
【背景技術】
【0002】
アトロピン製剤は、瞳孔散大および弱視治療のために眼科で使用されている。さらに、最近の研究では、近視の治療にアトロピンが使用される可能性が示唆されている。最近の学術研究では、標準1%濃度の使用に伴う何らかの副作用は、有効成分よりも低い濃度を用いることで回避できる可能性が示唆されている。これらの試験から、1%アトロピン点眼剤は、低濃度、例えば0.1%および0.01%ほど忍容性が良好ではないことが示されている。より低濃度の製剤は、通常、1%アトロピン溶液を単に希釈することによって調製される。しかしながら、これらの低容量溶液は、典型的には長期使用に対して不安定である。
【0003】
さらに、点眼瓶によって調剤される典型的な医療用液滴は、流体の粘度および表面張力に依存して、変化し得る。1滴に投与される活性成分の量を制御するために、活性成分の濃度は容量によって調節される。濃度が定義されると、正しい投与量が1滴以上必要となることがある。しかしながら、ヒトの眼は、典型的には、一度にわずか7μlの液体を保持することができるだけなので、たとえ単一の医療用液滴であっても、眼からの薬剤のオーバーフローおよび一部の喪失をもたらすおそれがある。反復点眼投与は、しばしば眼内への薬物貯留の問題を悪化させる。被験者は、典型的には、1回で投与に必要な全ての液滴を投与するであろう。これは、問題を悪化させ、薬物の50~90%が溢流し、眼から漏出するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在の眼科送達の上記および他の限界を考慮すると、アトロピンのような薬剤を含む溶液を含む、眼に対する溶液のための効率的な送達システムの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の態様において、開示は、液滴のマイクロドーズストリーム(極小投薬流)として、アトロピンを含む組成物を必要とする被験体の眼にアトロピンを含む組成物を送達する方法を提供する。この方法は、一般に、(a)圧電液滴送達装置を介してアトロピンを含む組成物の液滴のマイクロドーズストリームを生成し、ここで、液滴のマイクロドーズストリームは、15ミクロンを超える平均放出液滴直径を有する工程;および(b)液滴のマイクロドーズストリームを被験体の眼に送達する工程、を含む。特定の実施形態では、この方法は、近視の治療を必要とする被験体において、近視、特に成人および小児における進行性近視(近視)を治療する。
【0006】
ある態様では、圧電液滴送達装置は、放出機構を含み、該放出機構は、発生器プレートと圧電アクチュエータとを含み、該発生器プレートは、その厚さにわたって形成された複数の開口部を含み、該圧電アクチュエータは、低投与量薬剤組成物の液滴の指向された流れを発生させる周波数で、発生器プレートを直接又は間接的に振動させるように動作可能である。
【0007】
特定の実施形態では、被験体の眼に送達される液滴のマイクロドーズストリームは、13マイクロリットル未満、10マイクロリットル未満、5マイクロリットル未満、3~7マイクロリットルなどである。他の実施形態では、マイクロドーズストリームの液滴は、少なくとも約3m/s、4m/s~約12m/sなどの平均初期放出速度を有する。他の実施形態では、液滴のマイクロドーズストリームは、少なくとも15ミクロン、20~60ミクロンなどの平均放出液滴直径を有する。さらに他の実施形態では、液滴のマイクロドーズストリームは、80ms未満で被験体の眼に送達される。
【0008】
特定の態様においては、組成物が少なくとも0.5重量%、少なくとも0.8重量%、1重量%以上、0.5~1.2重量%等の濃度のアトロピンを含む。
【0009】
さらに他の態様では、圧電液滴送達装置は、液滴のマイクロドーズストリームの生成および送達の間、水平に対して25°以内に配向される。
【0010】
これらの特徴および他の特徴は、以下の好適な実施形態、クレームおよび図の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、アトロピンを眼に送達するための従来技術の方法およびデバイスを改善する方法およびデバイスを提供する。具体的には、本開示は、現在の傾向に反して、投与される溶液中に比較的高濃度のアトロピンを利用するが、はるかに小さな用量を被験体に送達し、それによって、過剰な液体が標的組織によって吸収されないことを減少させ、さらには防止する。投与される溶液中でより高い濃度のアトロピンを維持することによっても、より低い濃度の溶液の不安定性さに関する問題を低減するか、または回避することができる。
【0012】
特定の態様において、本開示は、液滴のマイクロドーズストリームとして、アトロピンを含む組成物を必要とする被験体の眼にアトロピンを含む組成物を送達する方法を提供する。この方法は、一般に、(a)圧電液滴送達装置を介してアトロピンを含む組成物を含む液滴のマイクロドーズストリームを生成し、ここで、液滴のマイクロドーズストリームは、15ミクロンを超える平均放出液滴直径を有する工程;および(b)液滴のマイクロドーズストリームを被験体の眼に送達する工程を含む。特定の実施形態では、方法は、近視の治療を必要とする被験体において、近視、特に成人および小児における進行性近視(近視)を治療する。
【0013】
特定の態様において、本方法および装置は、現在好まれている低濃度製剤の安定性の問題を回避するために、比較的高濃度のアトロピンを利用する。
【0014】
特定の実施形態では、本開示は、従来の点眼器よりも何倍も正確なマイクロドージングを達成するように構成された圧電液滴送達装置を提供する。ある態様において、マイクロドージングは、6~8μLの用量を標的様式で送達し、被験体の眼の結膜ではなく、角膜表面(眼球内の80%に薬物が浸透する)を直接被覆する。
【0015】
理論によって制限されることを意図しないで、被験体の眼に投与される活性剤のかなりの部分(すなわち、50%、60%、70%、80%、などを超える)を、結膜よりもむしろ角膜表面に直接的に焦点を当てることにより、側副組織曝露が減少すると考えられる。この点に関して、角膜表面への直接投与は、活性薬剤の可能性のある全身被爆の75%超を減少させ、それによって毒性を減少させ、潜在的により穏やかでより忍容性の高い治療をもたらすと考えられる。他の態様では、本開示のミクロ治療アプローチはまた、従来の点眼薬に関連する廃棄物を減少させる。
【0016】
さらに他の態様において、本開示のマイクロドージングアプローチの利点は、以下を含む。
【0017】
用量減少:マイクロドーズは、例えば、過量投与、眼毒性および血漿中への浸透性の浸出、をもたらす30~50μLの点眼剤ピペットマクロ用量と比較した場合、涙液層の生理的能力である6~8μLを送達するマイクロリットルレベルで正確な容量制御を達成する。。。
【0018】
標的用量液滴下:本明細書に記載される圧電液滴送達装置は、結膜の行き止まりを回避して、眼表面および角膜への標的送達を可能にする。圧電振動によって作り出された液滴マイクロジェットは、円柱化され、焦点を合わせられ、眼球浸透の大部分が起こる角膜表面への正確な送達を提供する。さらに、特定の実施形態では、本装置は、適切な位置決めおよび客観的な整列を可能にするために、LED標的設定機構を含むことができる。
【0019】
送達速度:単純なエアロゾル化機構とは異なり、圧電液滴送達装置は、80ミリ秒未満で眼表面に放出された液滴を提供する、速く標的を絞ったマイクロジェット送達を作り出すマイクロ液滴放出制御を提供し、眼の100ミリ秒瞬目反射を拍動させる。
【0020】
スマートエレクトロニクス:特定の実施形態において、圧電液滴送達装置は、スマートエレクトロニクスを含み、移動型Eヘルス技術は、患者が治療を行う時期を追跡するように設計される。これにより、医師は患者のコンプライアンスを正確にモニタリングすることができる。特定の態様において、この技術は、より知的で個別化された治療パラダイムのための動的な、リアルタイムモニタリングおよびコンプライアンスデータへのアクセスを患者および医師に可能にすることにより、コンプライアンスおよび慢性疾患管理を改善するであろう。
【0021】
他の態様では、本開示は、一般に、例えば、眼科的使用のための、より具体的には眼科的流体の眼への送達において使用するための、液滴の指向ストリームの送達において有用な圧電液滴送達装置に関する。液滴は、放出機構に結合されたリザーバ内に含まれる流体からの放出機構によって形成されてもよい。本明細書に記載されている場合を除き、放出機構およびリザーバは使い捨てであっても再利用可能であってもよく、構成要素は放出装置のハウジング内に包装されていてもよい。
【0022】
特定の実施形態では、治療に有効な組成物の低容量のマイクロドーズを所望の標的(標準的な点眼剤使用および用量体積と比較した場合に、例えば、当該治療を必要とする被験体の眼)に再現可能に送達するためのデバイスが提供され、方法が記載される。ある態様では、組成物の低容量マイクロドーズは、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、1重量%等の濃度のアトロピンを含む。特定の態様において、その装置および方法は、近視、特に成人および小児における進行性近視(近視)の治療用である。特定の態様において、治療に有効な組成物の低容量マイクロドーズは、標準的な点眼剤容量の、例えば、3/4、1/2、1/4、1/6、1/8、(例えば、0.02~0.75)等の容量で、眼に送達され得る。一例として、特定の実施形態では、標準的な点眼器による約25μl~約70μlと比較して、0.5μl~15μl、3μl~8μl、7μl~8μl、15μl未満、13μl未満、10μl未満、8μl未満、5μl未満などの組成物のマイクロドーズが送達される一方、同等または改善された治療効力を得ることができる
【0023】
また、投与戦略には、治療を開始する、治療を中止する、治療を切り替える、および異なる被験体状態に反応するための様々なアプローチが組み込まれ得る。投与モードまたは投与戦略の例としては、1日1回投与、1日2回投与、1日3回投与、連続投与、ボーラス投与、週1回投与、月1回投与、漸減投与、ニーズに基づく投与、および医師、提供者、被験者または家族によるフィードバック投与が挙げられる。さらに、投与計画には、必要に応じて、眼ごとの投与を含めてもよい。これらを使用できる臨床シナリオには、慢性疾患、疾患増悪、抑制治療の必要性、再発治療の必要性、または薬剤耐性のような治療の状態が含まれる。
【0024】
1つの実施形態は、標準的な点眼器の投与量体積と比較して、例えば、成人および小児における近視、特に進行性近視(近視)の治療のために、組成物の治療上有効な低容量マイクロドーズを、近視の治療を必要とする被験体の眼に送達する方法を開示し、その方法は、(a)組成物の低容量マイクロドーズの液滴の指向された流れを生成し、ここで、液滴は所望の平均液滴サイズおよび平均初期放出速度を有する工程;および(b)組成物の低容量マイクロドーズの液滴の治療上有効な量を、被験体の眼に送達し、ここで、液滴は、液滴の放出された質量の所望の割合を、眼に送達する工程を含む。また、ある態様では、組成物の低容量マイクロドーズは、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、1重量%、0.5~1.2重量%の濃度のアトロピンを含む。
【0025】
本明細書には、治療上有効な低容量マイクロドーズの組成物を眼に提供し、送達することができるデバイスが記載されている。一例として、液滴送達装置は、放出機構と流体連通した流体リザーバを含むハウジングを含むことができる。液滴の指向された流れは、放出機構を介して発生されてもよく、放出機構は、発生器プレートと圧電アクチュエータとを含み、発生器プレートは、その厚さにわたって形成された複数の開口部を含む。圧電アクチュエータは、低容量マイクロドーズ組成物の液滴の指向された流れを生成する周波数で、発生器プレートを直接または間接的に振動させるように作動可能とすることができる。
【0026】
限定するものではないが、液滴送達装置は、それらの全体について参考として本明細書に組み込まれている米国特許8,684,980出願明細書または国際公開第2018/227190号に記載されているようにしてもよい。
【0027】
1つの実施形態では、装置はさらに、液滴の流れの放出を容易にするための流体エンクロージャシステムを含む。このような実施形態では、眼に送達される流体は、エンクロージャによって規定されたチャンバ内で投薬される流体を保持するエンクロージャ内に含まれる。エンクロージャは、短時間で流体が放出され、残液量がほとんど残らないように、放出機構の発生器プレートの開口部に近接して流体の投与量を保持する。
【0028】
エンクロージャには、発生器プレートに隣接して配置されたリップがある。リップは、発生器プレートに取り付けられていなくてもよいが、依然として発生器プレートと接触しているか、または表面張力がチャンバ内の流体を保持するように、短い距離だけ離間して配置されてもよい。発生器プレートは、振動したときの比較的小さな最大振幅を有し、この振幅は、リップと発生器プレートとの間の平均離隔距離より小さいか、またはリップと発生器プレートとの間の最小離隔距離より小さい。
【0029】
また、エンクロージャは、発生器プレートの開口部近傍でのキャピラリ供給を回避するために、発生器プレートと協働するように成形されてもよい。このために、エンクロージャは、少なくとも75%、少なくとも95%、またはすべて、の開口部が、エンクロージャの最も近い部分から少なくとも0.014離間するように、発生器プレートから離間されてもよい。また、エンクロージャは、流体の全てが短時間で発生器プレートの開口部に到達することができるように成形されてもよい。エンクロージャは、内部表面の少なくとも75%、少なくとも95%、または全てであっても、発生器プレートの複数の開口部のうち最も近いものから0.060インチ以下、または0.040インチ以下であるように、流体と接触する内部
表面形状で構成されてもよい。別の言い方をすれば、エンクロージャは、チャンバが内部表面の少なくとも75%、少なくとも95%、または全てが、発生器プレートの少なくとも1つの開口部に対して直視線を有するように形成される、ような形状の内部表面を有する。エンクロージャの内面は、流体と接触する内面の少なくとも70%にわたって疎水性であってもよい。
【0030】
リップは、振動を過度に減衰させない間に流体が流出するのを防止するために、適度な力で発生器プレートに対してバイアスをかけることができる。リップは、振動要素の中心軸の方向で測定した振動要素に3グラム重以下の力を作用させることができる。また、リップは、発生器プレートにバネ荷重を加えて、衝撃(落下)による温度、圧力、または衝撃によるわずかな変位にも対応できるようにしてもよい。また、ばね荷重は、リップによって発生器プレートに加えられる荷重に影響を及ぼす製造公差に対処するのに役立つ場合がある。リップは、0.050mmまでの変位に対して60グラム重/mm以下の平均バネ定数で発生器プレートにバネ荷重を加えることができる。エンクロージャ自体は、柔軟性を提供するために比較的薄い壁を有するテーパ部分を有するエンクロージャの壁と共に弾性であってもよい。壁のテーパ部は、少なくとも1対3、少なくとも1対2の半径方向変位と縦方向変位の比を有し、この比は少なくとも1対1であってもよい。別の方法では、テーパ部はまた、エンクロージャの開放端部の有効半径の少なくとも半分については、エンクロージャの開放端部に対して半径方向に延在する。リップおよび/または振動要素は、他方に隣接してPTFE被膜を有し、それらの間の摩擦を減少させることができる。その被膜は、中心軸に沿って見ると、少なくとも270度の周りに伸びることができる。
【0031】
エンクロージャは、発生器プレートの開口部を通して、および/またはリップと発生器プレートとの間で、空気を放出された流体に置き換えることを可能にし、専用の通気開口部を含まなくてもよい。最大振幅は幾分小さくてもよく、この最大振幅により、チャンバから流体を逃がさないようにしながら、空気がチャンバに入ることが可能となる。発生器プレートのインターフェースに対してエンクロージャは、囲まれた境界(発生器プレートまたはエンクロージャのいずれかによって定義され得る)を規定し、当該境界は、囲まれた給電区域の有効半径の少なくとも0.3倍に放射状外側に伸びる過剰な区域を有する開口部の範囲よりもいくぶん大きい。
【0032】
エンクロージャは、壁を通してチャンバを露出させる壁を貫通する壁開口部を含んでもよい。壁開口部は、流体が放出されるときに空気が入ることを可能にしながら、流体を逃がすことなく、壁を通してチャンバを露出させるために壁を通って延在する。壁開口部は、リップから中心軸の方向に測定される縦方向寸法と、中心軸に対して半径方向に測定される半径方向寸法とを有する。エンクロージャは、発生器プレートの開口部に対向する側面を持つ内壁も有する。壁開口部の長手方向寸法は、発生器プレートと開口部に対向するエンクロージャの側面との間の離隔距離の少なくとも80%である。壁開口部の半径方向寸法は、リップの外周の10%以下、または5%以下とすることができる。
【0033】
壁の開口部は、リップから近位に向かって伸びるにつれて先細りする。壁開口部は、リップから近位に延び、壁開口部がリップから近位に延びるにつれて、壁開口部の円周方向寸法がテーパーダウンする。壁開口部は、中心軸に沿って見たときにエンクロージャへの流体注入口の方向にテーパ形状が指向されるようにテーパが付けられる。壁開口部はまた、壁の円錐台部分を通って延在してもよく、円錐台部分の長さの少なくとも80%にわたってリップから近位に延在してもよい。
【0034】
流体は、迅速かつ比較的高い速度および圧力で送達され、流体の全てがチャンバ内に集まることを促すことができる。チャンバを隔離するポンプまたは弁からの流体経路の全下流容量は、流体がある程度エンクロージャ内を移動し、表面張力のために単一の液滴に融合することを可能にする容量よりもいくぶん大きいサイズであってもよい。液体の容量は、下流の総容量の40%~70%であってもよい。
【0035】
また、エンクロージャは、流体を少なくとも2つの(そして3つ、4つ以上とすることができる)流入口に分けることができる。注入口の各々は、発生器プレートの複数の開口部で液体を導く前に、側壁で流体を導く。エンクロージャは、流れを中心軸から30度以内の方向に向ける主注入口を有する一方、チャンバへの注入口は中心軸から60~90度に向けられ、側壁に向けられる。エンクロージャは、チャンバを規定する一体的に形成された構造であってもよい。
【0036】
ポンプは、単一サイクルで、貯蔵位置から前進行程位置を往復して当該貯蔵位置に戻る第1の部分および第2の部分を有してもよい。流体が引き出され、その後チャンバ内に排出される2つの部分間に空洞が形成される。また、空気補給チャンバをポンプに連結して、各サイクルの間、空気を強制的に流体リザーバに押し込み、流体リザーバを積極的に通気してもよい。
【0037】
液滴送達装置は、無数の異なる組合せで再利用可能な部分と使い捨て可能な部分に分離されていた可能性があることが理解される。例えば、エンクロージャは、放出機構と共に再利用可能な装置の一部を構成してもよいし、本発明の範囲から逸脱することなくリザーバと共に使い捨てであってもよい。
【0038】
特定の態様では、液滴の流れは、個々の分布が平均的な液滴サイズを有する、液滴サイズの制御可能な分布で、本明細書に記載される装置によって生成され得る。特定の実施形態では、平均液滴サイズは、少なくとも約15ミクロン、約15ミクロン~約100ミクロン、約20ミクロン~約100ミクロン、20ミクロン超~約100ミクロン、約20ミクロン~約80ミクロン、約25ミクロン~約75ミクロン、約30ミクロン~約60ミクロン、約35ミクロン~約55ミクロンなどの範囲とすることができる。
【0039】
また、この装置は、液が標的組織に「固着」するのを助ける比較的速い速度で流体を送達することができ、この場合、標的組織は角膜組織であり、その結果、流体による直接的な角膜表面被膜が生じる。一方、点眼器は、眼の特定の領域を標的とし、流体を高速で送達する能力を持たない。点眼器は、送達後に移動して望ましくない部位に浸出するのに十分な大きさである。この点で、液滴は、約0.5m/s~約20m/s、例えば約0.5m/s~約15m/s、約0.5m/s~約10m/s、約1m/s~約10m/s、約4m/s~約12m/s、約1m/s~約5m
/s、約1m/s~約4m/s、少なくとも約2m/s、少なくとも約3m/s、少なくとも約4m/s、少なくとも約5m/s等の平均初期放出速度を有していてもよい。本明細書で使用されるように、放出サイズおよび放出初期速度は、液滴が放出プレートから離れるときの液滴のサイズおよび速度である。標的に向けられた液滴の流れにより、所定の組成を含む液滴のうち一定の割合のかたまりが所望の位置へ沈着することとなる。
【0040】
開示の特定の態様において、放出装置は、実質的な蒸発、空気の同調、または標的表面(例えば、眼の表面)からの偏向を伴わずに液滴を放出し、これにより、一貫した投与が容易となる。平均放出液滴サイズおよび平均初期放出速度は、流体粘度、表面張力、放出プレート特性、形状、および寸法を含む因子、ならびにその駆動周波数を含む圧電アクチュエータの動作パラメータに依存する。いくつかの実施形態では、液滴の放出されたかたまりの約60%~約100%、約65%~約100%、約75%~約100%、約80%~約100%、約85%~約100%、約90%~約100%、約95%~約100%などが眼の表面に沈着し、そのような沈着は操作および使用条件とは無関係に繰り返し可能である。
【0041】
液滴ストリームの流れの方向は、水平であってもよく、または使用中に作動機構を狙ってユーザが選択する任意の方向であってもよい。特定の態様において、この装置は、ほぼ水平、例えば水平に対して5°以内、10°以内、15°以内、20°以内、25°以内等に指向されてもよく、使用者が装置の照準を合わせるのを支援することができる。例えば、光、鏡または他の視覚的整列機構を、当該技術分野で知られているように使用することができる。また、整列についての支援による水平送達は、「照準」機構を持たず、かつ、液滴が大きすぎて角膜組織のみを標的とすることができない点眼器と比較して、使い易さと再現性を改善することができる。この点に関して、水平照準による角膜送達および被膜によって、同量の薬物が、点眼器に与えられる同量の薬物と比較して、より高い薬力学的効果を達成することが見出されている。
【0042】
液滴性能は一般に粒子径に関係する。限定されることを意図せずに、放出された液滴は空気による障害によって、停止する(すなわち、放出された液滴の停止距離)まで遅くなる。放出された液滴も重力により鉛直に落ちる。短い加速時間の後、液滴は抗力が重力に等しい終末速度に達する。放出された液滴は自身とともに空気を運び、これにより同調した気流が生じ、それが放出された液滴を計算された停止距離を超えて運ぶ助けとなる。しかしながら、同調した空気のレベルが増加すると、同調した気流がそのような表面で90度回転しなければならないため、放出された液滴が衝撃面(例えば、眼表面)を横切って流れることがある。小さく放出された液滴(例えば、平均直径が約17ミクロン未満、約15ミクロン未満など)は、気流によって眼の表面に沿って運ばれ、表面に影響を与えないことがある。これとは対照的に、より大きな放出液滴は、より小さな液滴の等価なかたまりよりも同調した空気を作り出しにくく、表面に衝撃を与えるのに十分な運動量を有している。放出された液滴の停止距離は、この効果の尺度である。
【0043】
本明細書中に記載されるものを含む多くの因子は、所望の投与量に影響し得る。一旦所望の投与量が決定されると、また、必要で所望の頻度があれば、そのような投与量を送達することができる。投与の頻度は、回数、周期性、またはその両方によって変化し得る。
【0044】
用語「治療に有効である」量は、同定された眼の状態(例えば、疾患または障害)を治療、改善、予防、または排除するために、または検出可能な治療または予防効果を示すために、使用される活性剤の量を意味する。効果は、例えば、化学的マーカー、抗原レベル、または罹病率または死亡率のような測定可能な事象までの時間によって検出することができる。被験体に対する正確な有効量は、被験体の体重、大きさ、および健康状態;状態の性質および程度;ならびに投与のために選択される治療薬または治療薬の組み合わせに依存する。ある状況に対する効果的な量は、臨床医の技能および判断の範囲内である日常的な実験によって決定することができる。いずれの薬剤も有効量で提供することができる。
【0045】
一態様では、医薬中の活性成分の濃度は、溶液中の活性成分のパーセンテージとして測定される。一態様では、活性成分の濃度は約0.0001%~約5%の範囲である。別の態様では、医薬品中の活性成分の濃度は、約0.05%~約1%の範囲である。他の態様において、活性成分の濃度は、溶液の重量パーセンテージとして測定される約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.75%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約4%、約5%の範囲である。しかしながら、本開示の方法により得られる投与量が少ないことを考慮すると、使用目的に応じて、より高い濃度を使用してもよい。
【0046】
本発明は、特定の実施形態を参考にして記載されているが、本発明の特徴および態様から逸脱することなく、様々な改変がなされてもよい。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電液滴送達装置であって、
(a)発生器プレート及び圧電アクチュエータであって、
前記発生器プレートは、その厚さにわたって形成された複数の開口部を含み、
前記液滴を生成するための前記圧電液滴送達装置の動作方法は、前記圧電アクチュエータを動作させて、所定の周波数で前記発生器プレートを直接的又は間接的に振動させることで、前記複数の開口部を通して前記液滴を生成することを含む、
前記発生器プレート及び前記圧電アクチュエータ、
(b)前記発生器プレートに隣接して配置され、かつ、前記発生器プレートに対し、該発生器プレートの中心軸方向へ荷重を与えるように構成された、リップであって、前記圧電アクチュエータは、前記リップによって前記荷重が与えられている前記発生器プレートを振動させる、前記リップ、
(c)組成物を含む流体リザーバ
を備える、前記圧電液滴送達装置。
【請求項2】
前記発生器プレートに対して流体側に隣接して配置されたエンクロージャをさらに備え、
前記エンクロージャ及び前記発生器プレートが、チャンバを形成し、
該エンクロージャが、前記発生器プレートに対して流体側に隣接して配置されたリップを含む壁を有し、
前記リップが、前記複数の開口部の周囲で延在し、
前記エンクロージャ及び前記発生器プレートが一緒に、前記チャンバを画定する、
請求項1に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項3】
前記発生器プレートに対して流体側に隣接して配置された前記リップが、分離された用量の前記組成物が前記リップと前記発生器プレートとの間の前記チャンバから流出するのを防止する一方、該チャンバに空気が流入するのを許容する、請求項2に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項4】
前記チャンバに流体的に接続された流出口を含むポンプをさらに備え、
前記ポンプが、前記流体リザーバから、体積変化可能な空洞へ、前記分離された用量の前記組成物を引き出し、該分離された用量を、前記液滴として投薬するために、該空洞から前記チャンバへ放出するように構成されている、
請求項3に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項5】
前記体積変化可能な空洞が、前記ポンプの第1の部分及び第2の部分との間に形成され、前記第1の部分及び前記第2の部分が、互いに対して往復動し、前記体積変化可能な空洞のサイズを変化させ、
前記第1の部分及び前記第2の部分が、貯蔵位置及び前進行程位置の間を往復動し、単一サイクルで該貯蔵位置に戻るように構成されている、請求項4に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項6】
前記圧電液滴送達装置が、15ミクロンを超える平均直径を有する液滴を生成し、前記液滴が、前記組成物を含む、請求項1、2、3、4、または5に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項7】
前記液滴が、20ミクロンから100ミクロンの平均直径を有する、請求項6に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項8】
前記液滴が、3マイクロリットルから10マイクロリットル未満の体積を有する、請求項6に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項9】
前記液滴が、3マイクロリットルから8マイクロリットルの体積を有する、請求項8に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項10】
前記液滴が、少なくとも3m/秒の平均初期放出速度を有する、請求項6に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項11】
前記液滴が、1m/sから10m/sの平均初期放出速度を有する、請求項10に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項12】
前記流体リザーバが、0.0001重量%から5重量%のアトロピンを含む組成物を含む、請求項1、2、3、4、または5に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項13】
前記組成物が、0.1重量%のアトロピンを含む、請求項12に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項14】
前記組成物が、0.01重量%のアトロピンを含む、請求項12に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項15】
前記液滴が、
(i)20ミクロンから100ミクロンの平均直径を有し、
(ii)3マイクロリットルから10マイクロリットル未満の体積を有し、
(iii)1m/sから10m/sの平均初期放出速度を有し、
(iv)前記組成物を含む、
請求項1、2、3、4、または5に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項16】
前記流体リザーバが、0.0001重量%から5重量%のアトロピンを含む組成物を含む、請求項15に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項17】
前記組成物が、0.1重量%のアトロピンを含む、請求項16に記載の圧電液滴送達装置。
【請求項18】
前記組成物が0.01重量%のアトロピンを含む、請求項16に記載の圧電液滴送達装置。