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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176033
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】自律掃除ロボット
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A47L9/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179520
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2023037706の分割
【原出願日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2022051371
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】照本 進
(72)【発明者】
【氏名】白井 信人
(57)【要約】
【課題】保管スペースの圧迫が小さい自律掃除ロボットを提供する。
【解決手段】旋回キャスタにて床面を走行可能な事業用掃除機本体100と、吸引ノズル20が設けられた自律走行する走行台車10と、を備え、走行台車100は外装80を備え、外装80で事業用掃除機本体100を覆うと共に、事業用掃除機本体100は排気口115を備え、排気口115が外装80の外部に位置して配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回キャスタにて床面を走行可能な事業用掃除機本体と、吸引ノズルが設けられた自律走行する走行台車と、を備え、
前記走行台車は、外装を備え、前記外装で前記事業用掃除機本体を覆うと共に、
前記事業用掃除機本体は、排気口を備え、
前記排気口が前記外装の外部に位置して配置されることを特徴とする自律掃除ロボット。
【請求項2】
前記事業用掃除機本体は、集塵部にアクセス可能な取出口を備え、前記取出口が前記外装の外部に位置して配置されることを特徴とする請求項1に記載の自律掃除ロボット。
【請求項3】
前記事業用掃除機本体は、吸引用モータの内蔵部が前記外装の外部に露出して配置されることを特徴とする請求項2に記載の自律掃除ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行可能な自律掃除ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス、商業施設、宿泊施設等において、衛生管理の一環として掃除機を用いて床面に落ちている塵埃を捕集する掃除が行われている。近年では、人件費高騰、人材不足等の要因により、作業者に掛かる負担を軽減するべく、塵埃を吸引させながら床面を自律走行させることを可能とした自律掃除ロボットに対する需要が高まってきている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される自律掃除ロボットは、本体底部に設けられる吸引ノズルと、吸引ノズルとホースにより接続される筐体と、筐体内に配置され塵埃が捕集される集塵部と、筐体内を吸引する吸引用ファンと、吸引用ファンを駆動する吸引用モータと、複数の車輪のうち本体後方に設けられる左右一対の車輪を独立して駆動する一対の走行用モータと、本体の方向を計測する方向計測装置と、障害物を検出する障害物検知装置と、バッテリーと、を備えている。吸引用ファンの作動により、吸引ノズルの吸引口を通じて塵埃が吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-16190号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような自律掃除ロボットは、床面の掃除を行うものであり、階段や段差部分の掃除を行うことができず、清掃作業者が手動で操作する掃除機も併用されることになる。そのため、これら掃除ロボットと通常の掃除機とをそれぞれ収容できるだけの広い保管スペースが必要になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、保管スペースの圧迫が小さい自律掃除ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の自律掃除ロボットは、
旋回キャスタにて床面を走行可能な事業用掃除機本体と、吸引ノズルが設けられた自律走行する走行台車と、を備え、
前記走行台車は、外装を備え、前記外装で前記事業用掃除機本体を覆うと共に、
前記事業用掃除機本体は、排気口を備え、
前記排気口が前記外装の外部に位置して配置されることを特徴としている。
前記事業用掃除機本体は、集塵部にアクセス可能な取出口を備え、前記取出口が前記外装の外部に位置して配置されることを特徴としている。
前記事業用掃除機本体は、吸引用モータの内蔵部が前記外装の外部に露出して配置されることを特徴としている。
手段1は、事業用掃除機本体と、
吸引ノズルが設けられた走行台車と、
からなることを特徴としている。
この特徴によれば、単体でも利用可能な事業用掃除機本体のみを走行台車に搭載させ、事業用掃除機本体の吸引機能を用いて走行台車側の吸引ノズルで床面を掃除することができ、自立掃除ロボットと通常の事業用掃除機をそれぞれ用意しなくともよく、保管スペースの圧迫を小さくできる。
【0008】
手段2は、手段1において、前記吸引ノズルが前記走行台車に固定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、事業用掃除機本体の着脱時において走行台車に対して吸引ノズルが位置ずれせず、所定の掃除運転を行うことができる。
【0009】
手段3は、手段2において、前記吸引ノズルの前記走行台車への固定が、該走行台車の左右いずれか一方側であることを特徴としている。
この特徴によれば、吸引ノズルを大型化することなく、壁際まで吸引ノズルを近付けて掃除することができる。
【0010】
手段4は、手段1~3のいずれか一つにおいて、前記事業用掃除機本体が前記走行台車に対して着脱可能であることを特徴としている。
この特徴によれば、故障など起きた場合に事業用掃除機本体のみを簡単に交換することができる。
【0011】
手段11は、事業用掃除機本体と、
吸引ノズルが設けられた走行台車と、
からなり、
前記走行台車は、走行方向前方側に距離検出部を備えており、
前記事業用掃除機本体の吸引用の差込口と前記走行台車の吸引ノズルとは、前記距離検出部よりも後方側を通る接続管により接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、接続管が距離検出部の走査を阻害することがなく、水平方向に広範囲でセンシングを行うことができる。
【0012】
手段12は、手段11において、前記距離検出部は前記吸引ノズルと前記事業用掃除機本体の吸引用の差込口との上下方向の間に位置しており、
前記接続管は前記距離検出部の背後位置に起立していることを特徴としている。
この特徴によれば、接続管が起立して距離検出部の背後に位置されるため、距離検出部は水平方向に広い範囲で走査を行うことができる。
【0013】
手段13は、手段12において、前記接続管は、前記走行台車の台車本体の上部に設けられた開口部を介して前記吸引ノズルと前記差込口とに接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、接続管は開口部を通る箇所で位置が規制されるため、起立する接続管の距離検出部の走査範囲内への移動が防止される。
【0014】
手段14は、手段11~13のいずれか一つにおいて、前記距離検出部は、外装により覆われた内部空間に設置され、前記内部空間は前記吸引ノズルが配置される空間と連通している。
この特徴によれば、事業用掃除機本体の稼働により吸引ノズルから吸引が行われることに起因して、ノズルが配置される空間に連通する距離検出部が設置された内部空間内の空気が循環され、距離検出部周辺に埃が堆積しにくくなり、距離検出部の検出精度を維持することができる。
【0015】
手段15は、手段11~14のいずれか一つにおいて、前記距離検出部は前記吸引ノズルを上方から覆う下部外装と、該下部外装の上方に配置される上部外装との間の内部空間に配置され、
前記接続管は前記下部外装に形成された連通部を介して前記内部空間内に延びており、
前記距離検出部は前記上部外装と下部外装との間の隙間から走査可能に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、事業用掃除機本体の稼働により吸引ノズルから吸引が行われると、連通部を介して吸引ノズル側と連通する内部空間が相対的に負圧となることで、上部外装と下部外装との間に形成される隙間から空気が引き込まれてこの空気の流れにより内部空間内での空気が効果的に循環され、距離検出部周辺に埃が堆積しにくく、距離検出部の検出精度を維持することができる。
【0016】
手段21は、事業用掃除機本体と、
吸引ノズルが設けられた走行台車と、
からなり、
前記事業用掃除機本体は、該事業用掃除機本体を構成する筐体の下部に設けられた少なくとも4つの旋回キャスタにて床面を走行可能となっており、
前記走行台車は、前記旋回キャスタが載置される載置部と、該載置部上において前記掃除機本体の水平方向の移動を規制する規制手段と、を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、規制手段により走行台車に対して事業用掃除機本体を所定位置に配置させることができ、走行台車に載せた事業用掃除機本体と走行台車の吸引ノズルとの接続を容易かつ確実に行うことができる。
【0017】
手段22は、手段21において、前記筐体は外方に凸設されたバンパー部を有し、
前記規制手段は、前記バンパー部に複数箇所で当接可能な規制部であることを特徴としている。
この特徴によれば、筐体の外方に凸設されたバンパー部が規制部に当接するため、筐体自体の破損を防止することができる。
【0018】
手段23は、手段22において、前記事業用掃除機本体は、少なくとも互いに平行な側面を有するバンパー部を有しており、前記規制部は前記側面に対してそれぞれ面で当接する面部を有することを特徴としている。
この特徴によれば、バンパー部の側面と規制部の面部とが面で当接するため事業用掃除機本体の回転移動も規制することができる。
【0019】
手段24は、手段23において、前記バンパー部は、前記側面の下縁部に面取部を有することを特徴としている。
この特徴によれば、事業用掃除機本体を載置部上に配置させる際には、規制部にバンパーの面取部がそれぞれ案内されるため事業用掃除機本体の配置作業を容易に行うことができる。
【0020】
手段25は、手段23または24において、前記規制部は、前記載置部の前後に独立して設けられ、各規制部は前記載置部の上に起立する板状の面部を有し、該面部の自由端側が前記バンパー部の側面に当接することを特徴としている。
この特徴によれば、事業用掃除機本体の移動による外力は規制部の面部の弾性変形によって吸収され、規制部及びバンパー部の破損を効果的に防止できる。
【0021】
手段26は、手段21~25のいずれか一つにおいて、前記規制手段は、前記載置部の前記旋回キャスタに当接可能な規制部からなることを特徴としている。
この特徴によれば、事業用掃除機本体の旋回キャスタは事業用掃除機本体の重量を支えるべく高い耐久性を備えるものであることから、この旋回キャスタが当接可能な規制部を設けることにより事業用掃除機本体の特に筐体の破損を防止しながら、事業用掃除機本体の水平方向の移動を規制することができる。
【0022】
手段27は、手段26において、前記規制部は、前記載置部の上面に立設されて前記旋回キャスタがそれぞれ当接可能な直交する2つの面部により構成される角部を4つ備え、これら角部の内側に前記旋回キャスタがそれぞれ配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、規制部が備える直交する2つの面部に、事業用掃除機本体の旋回キャスタがそれぞれ当接可能であるため、前後左右の移動規制に加えて事業用掃除機本体の回転移動も規制することができる。
【0023】
手段28は、手段26または27において、前記事業用掃除機本体の旋回キャスタは、該事業用掃除機本体の筐体の底部に少なくとも4つ設けられ、水平面である前記載置部の上面に該事業用掃除機本体の水平姿勢を維持して載置されることを特徴としている。
この特徴によれば、旋回キャスタが少なくとも4つ設けられ、水平面である載置部の上面に直接載置されることで、載置部に事業用掃除機本体からのほぼすべての荷重が作用し規制部に作用する外力を一層小さくできるとともに単体で使用する際の事業用掃除機本体の姿勢と同様の水平姿勢で事業用掃除機本体を稼働させることができる。
【0024】
手段31は、下部に設けられた旋回キャスタにて床面を走行可能な事業用掃除機本体と、吸引ノズルが設けられた自律走行する走行台車と、を備え、
前記走行台車は、
前記事業用掃除機本体の前後のいずれかに配置され前記事業用掃除機本体に交流電流を供給するインバータを収納するとともに少なくとも前記事業用掃除機本体の下部を覆う外装と、
前記事業用掃除機本体の前記旋回キャスタが載置される載置部と、
前記事業用掃除機本体の下部に外方凸設された矩形のバンパー部の前後に当接可能な規制手段と、
を備え、
前記事業用掃除機本体は前記規制手段により前記外装の上方に設けられた開口との前後方向の間に隙間が確保されて配置され、さらに前事業用記掃除機本体の排気口が前記開口の上方に位置している。
この特徴によれば、既存の事業用掃除機本体と走行台車との合体部分を外装により覆うことにより自律掃除ロボットの一体感を演出できるとともに、走行台車の走行に伴う事業用掃除機本体の前後方向への相対移動が規制手段により規制されて事業用掃除機本体と開口との前後の隙間が確保されるため、外装内の空間のインバータの排熱が隙間から外装外排出され、外装内の空間に熱がさらに籠りにくい。更に、事業用掃除機本体の排気口からの排気の熱が外装の内部に位置するインバータに影響を与えない。
【0025】
手段32は、手段31において、前記外装の前方には、該外装の内部空間に繋がる連部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、走行台車の走行時に連通部から内部空間に外気が取り込まれ、外装の内部空間の熱を開口と事業用掃除機本体との隙間から効率よく排出できる。
【0026】
手段41は、吸引ノズルと、自律走行可能に制御する制御手段と、を有する自律掃除ロボットであって、
前記制御手段は、走行操作手段によって記憶させた掃除ルートに基づき自律掃除ロボットを自律走行させるモードを備え、
前記走行操作手段は、前記自律掃除ロボットを任意の一方向に移動動作させる動作指示と、複数方向への移動動作の所定の組み合わせから成るパターン動作指示とをそれぞれ選択できることを特徴としている。
この特徴によれば、作業者は任意の一方向に移動動作させる動作指示に加えて、複雑な移動動作が必要な箇所はパターン動作指示によって自動で移動動作させることができ、作業者に高い操作技術を必要とせずに、短時間で容易に掃除ルートを記憶させることができる。
【0027】
手段42は、手段41において、前記パターン動作指示は、直線移動と方向転換との組み合わせから成ることを特徴としている。
この特徴によれば、特に高い操作技術を必要とする方向転換を自律掃除ロボットに自動で行わせることができ、吸引ノズルの未通過領域を少なくすることができる。
【0028】
手段43は、手段42において、前記制御手段は、前記パターン動作指示に基づき、前記自律掃除ロボットを所定距離で左右方向に直線移動させ、次に所定距離で後方に直線移動させ、前記吸引ノズルを中心に180度方向転換させることを特徴としている。
この特徴によれば、後方に直線移動することにより壁などの掃除区画の境界部分から衝突の虞がない十分に離れた状態で吸引ノズルを中心に方向転換させることができる。
【0029】
手段44は、手段42または43において、前記制御手段は、前記パターン動作指示に基づき、前記自律掃除ロボットを前記吸引ノズルが掃除区画の境界線に到達するまで前方に直線移動させ、前記吸引ノズルが前記境界に沿うように左右方向に直線移動させ、次に前記吸引ノズルが前記境界線から離れるように後方に直線移動させ、前記吸引ノズルを中心に方向転換させることを特徴としている。
この特徴によれば、パターン動作指示では、制御手段が掃除区画の境界線を基準として自律掃除ロボットを正確に動作させるため、吸引ノズルの未通過領域を確実に少なくすることができる。
【0030】
手段45は、手段42~44のいずれか一つにおいて、前記制御手段は、前記パターン動作指示に基づき、前記自律掃除ロボットを前記吸引ノズルが掃除区画の境界線に到達するまで前方に直線移動させ、前記吸引ノズルが前記境界線に沿うように左右方向に直線移動させ、次に前記吸引ノズルが前記境界線から離れるように後方に直線移動させ、前記吸引ノズルの長手方向と掃除区画の境界線とが直交するまで前記自律掃除ロボットを方向転換させ、次に前記境界線に所定距離離間して近接するまで左右方向に直線移動させることを特徴としている。
この特徴によれば、後方に直線移動することにより境界線から十分に離れ、その状態で吸引ノズルを中心に方向転換することにより、境界線を越えることがなく、かつ自律掃除ロボットを掃除区画の境界線に対して左右方向に直線移動させることで、自律掃除ロボットの方向転換に伴い外径側に生じる境界線近傍の未通過領域が少ない掃除運転が可能となる。
【0031】
手段46は、手段42~45のいずれか一つにおいて、前記制御手段は、前記パターン動作指示に基づき、前記自律掃除ロボットを掃除区画の角部において、境界線に向けて前方に直線移動させ、該境界線と所定距離近づいた時点で前記吸引ノズルの長手方向と掃除区画の境界線とが直交するまで前記自律掃除ロボットを方向転換させ、次に前記境界線に所定距離離間して近接するまで左右方向に直線移動させることを特徴としている。
この特徴によれば、特に高い操作技術を必要とする掃除区画の角部における方向転換を自律掃除ロボットに自動で行わせることができ、吸引ノズルの未通過領域を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施例1における自律掃除ロボットを示す斜視図である。
図2】自律掃除ロボットを示す左側面図である。
図3】自律掃除ロボットを示す右側面図である。
図4】自律掃除ロボットを示す上面図である。
図5】自律掃除ロボットの電気系統を示す概略図である。
図6】自律掃除ロボットの掃除機本体について説明するための斜視図である。
図7】自律掃除ロボットの上部外装の取り付け構造を示す分解斜視図である。
図8】掃除機本体の取り付け態様を示す分解斜視図である。
図9】本発明の実施例2における自律掃除機の取り付け態様を示す分解斜視図である。
図10】本発明の実施例2における自律掃除ロボットを示す斜視図である。
図11】掃除機本体の取り付け態様を示す上面図である。
図12】載置部に設けられた規制片および載置部に載置された掃除機本体の関係を示すイメージ図である。
図13】規制片と掃除機本体のバンパー部との関係を示すイメージ図であり、(a)はバンパー部が規制部に案内される状態を示し、(b)掃除機本体の所定位置での仮保持状態を示す。
図14】本発明の実施例3における自律掃除ロボットの走行台車を示す斜視図である。
図15】本発明の実施例3における自律掃除ロボットの走行台車を示す上面図である。
図16】旋回キャスタの構造を示す図である。
図17】本発明の実施例3における掃除機本体の前後左右の旋回キャスタ同士の位置関係を示す変形例をしめす掃除機本体の下面図である。
図18】本発明の実施例4における掃除区画における自律掃除ロボットの移動軌跡を示す図である。
図19】走行操作手段を示す図である。
図20】境界原点ボタンによるパターン動作指示を構成する自律掃除ロボットの前方への直線移動を示す図である。
図21】境界原点ボタンによるパターン動作指示を構成する自律掃除ロボットの方向転換を示す図である。
図22】境界原点ボタンによるパターン動作指示を構成する自律掃除ロボットの右方向への直線移動を示す図である。
図23】左反転ボタンによるパターン動作指示を構成する自律掃除ロボットの前方への直線移動を示す図である。
図24】左反転ボタンによるパターン動作指示を構成する自律掃除ロボットの右方向への直線移動を示す図である。
図25】左反転ボタンによるパターン動作指示を構成する自律掃除ロボットの後方への直線移動を示す図である。
図26】左反転ボタンによるパターン動作指示を構成する自律掃除ロボットの方向転換を示す図である。
図27】コントローラボタンによる動作指示に基づく自律掃除ロボットの前方への直線移動を示す図である。
図28】角左方向転換ボタンによるパターン動作指示を構成する自律掃除ロボットの前方への直線移動を示す図である。
図29】角左方向転換ボタンによるパターン動作指示を構成する自律掃除ロボットの左方向への直線移動を示す図である。
図30】角左方向転換ボタンによるパターン動作指示を構成する自律掃除ロボットの方向転換と左方向への直線移動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る自律掃除ロボットを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0034】
実施例1に係る自律掃除ロボットにつき、図1から図8を参照して説明する。以下、図1の紙面左下側を自律掃除ロボットの正面側(前方側)として説明する。
【0035】
自律掃除ロボットは、オフィス、商業施設、宿泊施設等において、人の手を借りずに床面を自律走行しながら床面に落ちている塵埃を吸引・捕集することにより掃除を行うものである。
【0036】
図1図4に示されるように、自律掃除ロボット(以下、「掃除ロボット」という。)1は、前方下部に吸引ノズル20が取り付けられた電動走行台車(以下、「走行台車」という。)10と、走行台車10の後方上部に載置された事業用掃除機本体(以下、単に「掃除機本体」という。)100と、から主に構成されている。尚、本実施例では、吸引ノズル20は、走行台車10よりも左右方向の幅が小さく、前進方向右側に偏らせて配置されているが、吸引ノズル20の幅や左右位置は自由に構成されてよい。事業用掃除機本体は、有底筒状に形成されている本体部111と、本体部111の上部開口により形成される取出口111aを閉塞するための蓋部112と、から構成される筐体110を備え、蓋部112には吸引用ファン140と、吸引用モータ150が内蔵され、外部に開放する排気口115が形成されており、大容量の集塵容量を有する本体部111の底部に少なくとも4つの旋回キャスタ103により、本体部111の姿勢が維持されたまま水平方向に移動可能であり、いわゆる家庭用掃除機本体のように縦方向にのみ回転可能な2つの車輪と補助ローラを有し、不使用時には補助ローラが床から離れるように立位姿勢となるものとは異なる。尚、本実施例における事業用掃除機本体とは、4つ以上のキャスタがあれば、そのキャスタのすべてが旋回するものに限られず、縦方向にのみ回転可能なものが混在してもよい。
【0037】
まず、走行台車10について説明する。走行台車10は、台車本体11と、吸引ノズル20と、台車本体11の前方側部に設けられる左右一対の車輪30R,30Lおよび台車本体11の後方側部に設けられる左右一対の車輪40R,40Lと、これらの車輪30R,30L,40R,40Lと個別に接続される4つの走行用モータ50(図5参照)と、制御装置60(図5参照)と、台車本体11の外周を覆う下部外装90(外装)と、から主に構成されており、走行用モータ50等に電力を供給可能な3本の走行用バッテリー70(図3参照)が搭載されている。
【0038】
図2図3に示されるように、車輪30R,30L,40R,40Lは、複数のローラ31またはローラ41を有する、所謂メカナムホイールである。
【0039】
図5に示されるように、制御装置60は、センサ(距離検出部)61,61(図2も参照)からの距離情報およびマップデータに対応した位置情報や4つの走行用モータ50に接続される図示しないロータリエンコーダからの回転数等の情報等に基づいて、4つの走行用モータ50に対する印加電圧の大きさおよび入力方向を個別に切り替えることにより、車輪30R,30L,40R,40Lの回転速度および回転方向を個別に制御することができる。
【0040】
尚、図5では、太実線を電力供給線、点線を信号供給線として図示している。また、本実施例において、センサ61,61は、レーザセンサ、超音波センサ等の非接触式センサにより構成されている。
【0041】
これによれば、掃除ロボット1は、制御装置60により個別に制御される走行用モータ50による車輪30R,30L,40R,40Lの駆動と、床面に接触しているローラ31,41の転動とを組み合わせて、前後左右と共に全方向へスムーズに移動可能となっている。
【0042】
また、制御装置60は、インバータ72の制御を行うことで、吸引用バッテリー71(バッテリー)から供給される直流電流を交流電流に変換して掃除機本体100を駆動させることができる。吸引用バッテリー71は、走行用バッテリー70とは独立しており、掃除機本体100に電力を供給するためのバッテリーである。尚、3本の走行用バッテリー70および4本の吸引用バッテリー71は、いずれも同一規格として、互いに互換・兼用することができるが、それに限らない。
【0043】
また、本実施例では、吸引用バッテリー71が満充電から供給不能な所定電圧に至るまでに掃除機本体100を駆動可能な時間よりも、走行用バッテリー70が満充電から所定電圧に至るまでに走行台車10を走行させることが可能な時間の方が長くなっている。これにより、例えば掃除ロボット1を原点位置等のあらかじめ設定した位置に確実に帰還させることができる。
【0044】
図5図7を参照して、走行台車10には、掃除機本体100が載置される載置部12と、4本の吸引用バッテリー71を一方側(図3参照)から装着可能なバッテリーケース17と、インバータ72と、上部外装80(外装)が積載されている。尚、掃除機本体100は、図示しない固定具(本保持手段)、例えばバンド等によって載置部12に取り付けられる。尚、側部外装80Rを取り外すことで、吸引用バッテリー71の電極を接続するための4つのコネクタ(図示略)を露出させ、吸引用バッテリー71の脱着させることができる。
【0045】
また、掃除機本体100は、商用電源にて動作する業務用(事業用)掃除機であり、集塵部としての紙パック101(図6参照)が収容される筐体110(図6図7参照)と、吸引用ファン140(図5参照)と、吸引用ファン140を回転させるための吸引用モータ150(図5参照)と、インバータ72に電気的に接続される差込プラグ付コード(図示略)とを備えている。
【0046】
図6に示されるように、筐体110は、有底筒状に形成されている本体部111と、本体部111の上部開口により形成される取出口111aを閉塞するための蓋部112(モータ内蔵部)と、から構成されている。また、本体部111の内部には、紙パック101を取り付け可能となっている。蓋部112には、吸引用ファン140と、吸引用モータ150が内蔵されており、外部に開放する排気口115が形成されている。排気口115は筐体110の外周側面に向けて排気するように蓋部112の下縁に渡って形成されており、排気口115からは上部外装80へ向けて全方位均等に排気する構成となっている。このように、掃除機本体100は、蓋部112に内蔵される吸引用モータ150を駆動して吸引用ファン140を回転させることにより、筐体110内の空気を排気口115から外部に排出し、筐体110内を相対的に負圧とすることで、吸引ノズル20の吸引口からノズルホース120を介して紙パック101内に塵埃を吸引・捕集できるようになっている。なお、掃除機本体は紙パックを用いることなく筐体内に塵埃を吸引・捕集できるものであってもよい。
【0047】
本体部111は、前方側側壁にノズルホース(接続管)120を接続可能な差込口102を備えており、掃除機本体100を単体で使用する際には、この差込口102に手持ち用の吸引ノズルのホースを差し込む。本実施例では、掃除機本体100の差込口102には、走行台車10に備えられた吸引ノズル20と接続するための走行台車用のノズルホース120(図7参照)が差し込まれて利用される。
【0048】
ノズルホース120は、可撓性を有する合成樹脂製のホース部120aと、差込口102に接続されるホース部120aよりも硬質の合成樹脂からなる挿口部120bとから構成されている。
【0049】
このように、掃除機本体100は、蓋部112に内蔵される吸引用モータ150を駆動して吸引用ファン140を回転させることにより、筐体110内の空気を排気口115(図6参照)から外部に排出し、筐体110内を相対的に負圧とすることで、走行台車10側に備えられた吸引ノズル20aの吸引口からノズルホース120を介して紙パック101内に塵埃を吸引・捕集できるようになっている。
【0050】
図7に示されるように、載置部12は、台車本体11に固定される前フレーム13及び後フレーム14と、前フレーム13,後フレーム14の上端に固定されている基台15と、から構成されている。
【0051】
基台15は、平面視平板状に形成されており、上端面には、上方側に開放されて、下方側に向かって平面視矩形状に凹設されている左右一対の凹部15aが、前後方向に3組設けられている(図8も参照)。凹部15aは、掃除機本体100の下部に取り付けられた旋回キャスタ103の下端部を落とし込めるように形成されている。
【0052】
本実施例では、掃除機本体100の下部には4つ、水平方向に360度旋回可能な旋回キャスタ103が取り付けられており、水平面である基台15の上端面に4つの旋回キャスタ103が直接載置されて掃除機本体100の水平姿勢が維持されている。そして、これら旋回キャスタ103は、4つの凹部15aにそれぞれ落とし込まれることで水平方向に移動規制される。そのため、単体で使用する際の掃除機本体100の姿勢と同様の水平姿勢で掃除機本体100を走行台車10で稼働させることができる。尚、業務用掃除機である掃除機本体の下部に設けられた旋回キャスタが5つである場合には、少なくとも4つ以上の旋回キャスタが移動規制されればよいため、その場合には凹部15aは少なくとも4つ設けられればよく、更に凹部は少なくとも4つ以上の旋回キャスタを収容可能な1つの凹部であってもよいし、複数の旋回キャスタを収容可能な複数の凹部であってもよい。
【0053】
また、基台15の上端面には、左右一対の凹部15aよりも外側に左右一対の取付フレーム18,19が固定されている。
【0054】
また、インバータ72を左右に挟んでハンドル73が台車本体11に固定されている。ハンドル73は上部が後述する後部外装80Bに形成された孔(図示略)より外方に突き出て配置されている。後部外装80Bはインバータ72に上方から被覆されている。
【0055】
また、台車本体11と基台15との間には、バッテリーケース17が設けられている。バッテリーケース17は、台車本体11の中央のフレームに、ボルトナットによって固定されている。
【0056】
また、バッテリーケース17の壁部17aの内面には、吸引用バッテリー71の電極を接続するための4つのコネクタ(図示略)が設けられている。また、図7に示されるように、バッテリーケース17の壁部17aの外面には、吸引用バッテリー71の充電に用いられる充電用コネクタ17bと、走行用バッテリー70の充電に用いられる充電用コネクタ17cと、が設けられている。側部外装80Lを取り外すことで、バッテリーケース17の壁部17aが露出し、充電用コネクタ17bと充電用コネクタ17cとに充電用のケーブルを接続させることができる。
【0057】
これにより、吸引用バッテリー71を、右側から左側に向かってバッテリーケース17のレールに沿って挿入することで、吸引用バッテリー71をコネクタに接続することが可能となっている。また、コネクタに接続されている吸引用バッテリー71を右方に向かって引っ張ることで、吸引用バッテリー71とコネクタの接続が外れ、吸引用バッテリー71をバッテリーケース17から引き抜くことが可能となっている。これにより、吸引用バッテリー71の交換をはじめとしたバッテリー関連のメンテナンスが容易である。
【0058】
走行用バッテリー70についても、吸引用バッテリー71と同様に、走行用バッテリー70用のバッテリーケースに対して右側から着脱可能である。尚、着脱方向は適宜に設定可能であり、用途ごとに別の方向とすることも可能である。
【0059】
また、載置部12と、バッテリーケース17とは、直接連結されておらず、それぞれ個別に台車本体11に固定されているため、吸引用モータ150の駆動に伴い生じる振動が吸引用バッテリー71に作用しにくくなっている。これにより、吸引用バッテリー71とコネクタとの接続状態を保ちやすい。
【0060】
また、本実施例において、3本の走行用バッテリー70は並列に接続されており、4本の吸引用バッテリー71も並列に接続されている。加えて、走行用バッテリー70および吸引用バッテリー71は、互いに互換・兼用可能であることから、例えば4本の吸引用バッテリー71のいずれもが掃除機本体100に対して供給不能な残量となった場合に、3本の走行用バッテリー70のうち残量があるいずれか一本を、吸引用バッテリー71のいずれか一本と差し替えることで、掃除機本体100を駆動させることが可能である。
【0061】
また、走行台車10は、走行台車10に載置された掃除機本体100や吸引用バッテリー71等を覆う上部外装80と、台車本体11や走行用バッテリー70等を覆う下部外装90を備えている。尚、上部外装80および下部外装90は、内部の部品や通電箇所に外部から人や物が接触することを防止するために設けられる。また、上部外装80および下部外装90により、内部の通電箇所に塵埃等が入り込みにくく、短絡故障が生じにくい。また、上部外装80と下部外装90との間に形成される隙間G1から台車本体11の前後に設けられるセンサ61,61(図2および図3参照)がセンシング可能となっている。また、上部外装80と下部外装90との間に形成される隙間G1の奥側にセンサ61,61が配置されるため、センサ61,61を保護することができる。
【0062】
上部外装80は、主に前部外装80Fと、後部外装80Bと、左右の側部外装80R,80Lとに四分割されている。上部外装80には掃除機本体100の外縁に沿う形状の開口81と、ノズルホース120を挿通可能なホース開口82が形成されている。
【0063】
掃除機本体100は、本体部111の上部および蓋部112全体を上部外装80の開口81から外部に露出して配置されており、ホース開口82からノズルホース120が外方に引き出されて配置される。詳しくは、ノズルホース120を差し込む差込口102の下端縁よりも下方に上部外装80の開口81が位置するように掃除機本体100が走行台車10に搭載されている。言い換えると、掃除機本体100は、差込口102を側面に備えており、かつ搭載時には走行台車10を構成する外装(上部外装)80に下部の一部が被覆されるようになっており、ノズルホース120の一部と差込口102とが上部外装80の外部に露出して配置されている。このように、掃除機本体100の差込口102は外部に露出していることから、ノズルホース120と掃除機本体100の差込口102とが正確に接続されているか否かを目視することができ、掃除ロボット1に常に所定の吸引力を発揮させることができる。
【0064】
また、掃除機本体100の蓋部112に内蔵される吸引用モータ150と、本体部111の内部に取り付けられる紙パック101にアクセス可能な取出口111aが上部外装80の開口81から外部に露出して配置される。そのため、走行台車に搭載されている掃除機の特に故障しやすい吸引用モータ150周りのメンテナンスや、紙パック101の交換を、掃除機本体100を取り外すことなく簡単に行うことができる。
【0065】
そのため、適宜に別の掃除機を取付けることも可能となっている。
【0066】
以上説明したように、本実施例における掃除ロボット1は、単体でも利用可能な掃除機本体100のみを走行台車10に搭載させ、走行台車10に備えられたノズルホース120を掃除機本体100の差込口102に接続するだけで、掃除機本体100の吸引機能を用いて走行台車10側の吸引ノズル20で床面を掃除することができる。言い換えると、掃除ロボット1は吸引ノズル20とノズルホース120とを備えた走行台車10に、集塵部としての紙パック101と吸引用ファン140と吸引用モータ150とを筐体110に収めるとともに吸引用の差込口102を備えた掃除機本体100を着脱可能に搭載して掃除運転可能となっている。そのため、掃除ロボット1と通常の掃除機をそれぞれ用意しなくともよく、保管スペースの圧迫を小さくすることができる。
【0067】
また、掃除機本体100を走行台車10から取り外すことで、メンテナンスを容易に行うことができることから、メンテナンス実施する頻度が低下することを防ぎ、掃除ロボット1の吸引力を維持することができる。加えて、仮に掃除機本体100が故障した場合には、掃除機本体のみを交換するだけで済むため、修理コストを抑えることができ、かつ別の掃除機にすぐに交換して対応できるために掃除ができない時間を減らすことができる。
【0068】
また、掃除機本体100に接続される吸引ノズル20は走行台車10に固定されているため、掃除機本体100の着脱時において走行台車10に対して吸引ノズル20が位置ずれせず、掃除機本体の形態に影響されることもなく、所定の掃除運転を行うことができる。加えて、ノズルホース120が可撓性を有して構成されており変形可能に走行台車10に配置されていることから搭載した掃除機本体100に簡単に接続させることができる。
【0069】
また、吸引ノズル20は、その横幅が走行台車10の前面の横幅より短寸であり、走行台車10の前面の前進方向右側に偏在して固定されている。これによれば、壁際の掃除しづらい箇所に対しても、吸引ノズル20を大型化しないことで十分な吸引力を確保しながら、壁際まで吸引ノズル20を近付けて掃除を行うことができる。なお、吸引ノズル20が走行台車10の前面の前進方向左側に偏在して固定されていてもよい。
【0070】
また、掃除機本体100は床面を走行可能な複数の旋回キャスタ103を備え、単体での掃除を行う際には床面を走行させることが可能であり、走行台車10は基台15に旋回キャスタ103の下端部が落とし込まれる凹部15aを備え、旋回キャスタ103がそれぞれ保持される。言い換えると、掃除機本体100は床面を走行可能な旋回キャスタ103を備え、走行台車10は旋回キャスタ103をそれぞれ保持する保持手段(規制部)である凹部15aを有しているため、走行台車10に対して掃除機本体100を常に定位置に配置でき、ノズルホース120を確実に差込口102に接続することができる。
【0071】
また、掃除機本体100の蓋部112が上部外装80の開口81から外部に露出して配置されているため、上部外装80を取り外すことなく、蓋部112を着脱して吸引用モータ150等の機械部のメンテナンスを行いやすい。
【0072】
また、掃除機本体100の本体部111の内部に取り付けられる紙パック101にアクセス可能な取出口111aが上部外装80の開口81から外部に露出して配置されているため、蓋部112を取り外すことにより塵埃が溜まった紙パック101を取出口111aから容易に取り出し、新しい紙パックと交換することができる。
【0073】
ところで、最近ではSDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))への関心が高まっており、筐体、吸引用ファン、吸引用モータが据え付けられているような特許文献1の掃除ロボットを新たに導入するのではなく、手持ちの掃除機を自律走行させたいという気運が高まってきている。本発明の掃除ロボット1であれば、手持ちの掃除機を自律走行させることができるため、SDGsの「つくる責任 つかう責任」の目標に寄与することができる。
【実施例0074】
次に、実施例2に係る自律掃除ロボットにつき、図9から図13を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0075】
図9に示されるように、載置部22を構成する矩形状の基台25の左右には、基台25の両側面に沿って板状の壁部26が配置されている。また基台25の前方には、インバータ72が縦置きで配置されている。
【0076】
台車本体11の走行方向前方には、センサである距離検出部61が設けられ、この距離検出部61は本実施例においては光を用いて距離を測定するLiDARである。距離検出部61は、水平方向における広範囲に亘ってセンシング可能であり、前述した上部外装80と下部外装90との間に形成される隙間G1(図2参照)から、およそ0.5m以上10m以下のセンシング範囲内にある障害物との距離を測定することが可能である。なお、距離検出部61は、3次元的に測定可能であってもよい。また、検出可能な範囲については、角度、近距離、遠距離ともに適宜変更されてもよい。
【0077】
走行台車10の制御装置60(図5参照)は、室内を清掃する前に、距離検出部61が測定した室内の壁、柱などの障害物までの距離情報および相対的な位置情報に基づいてマッピングを行う。また、制御装置60は、室内を掃除する際に、距離検出部61が測定した距離情報および位置情報や4つの走行用モータ50に接続される図示しないロータリエンコーダからの回転数等の情報に基づいて現在位置を特定する。そして、制御装置はマッピングしたマップに現在の自己位置を照会して現在の自己位置から先に算出された走行ルートに基づいた次の目標位置及び、走行台車の向きを達成するように走行用モータ毎に印加電圧の大きさを制御する。
【0078】
図9図11に示されるように、走行台車10側に固定された吸引ノズル20と掃除機本体100とを繋ぐノズルホース(接続管)120は、前方の距離検出部61より前方に配置された吸引ノズル20に一方端が固定されており、前方の距離検出部61の背後に回り込んだ位置で上方に起立して、掃除機本体100の吸引用の差込口102に他方端が接続されている。言い換えると、距離検出部61は吸引ノズル20と掃除機本体100の吸引用の差込口102との上下方向の間に位置しており、ノズルホース120は距離検出部61の背後位置に起立している。
【0079】
インバータ72より前方かつノズルホース120より後方には、載置部22から延びる板部28が配設されており、この板部28によりインバータ72とノズルホース120の接触が防止されている。
【0080】
ノズルホース120は、台車本体11の前方側における上部に形成された開口29、ここでは矩形フレームによって形成された開口29に挿通されている。つまり、ノズルホース120は、台車本体11側を覆う下部外装90の内側の空間において、この開口29より下方に配される吸引ノズル20から、開口29を介して掃除機本体100の吸引用の差込口102に接続されている。この開口29によりノズルホース120の移動は規制されており、距離検出部61の走査範囲内へ移動しないようになっている。開口29の大きさはノズルホース120の外形よりも僅かに大きいことが好ましい。
【0081】
尚、ノズルホース120の起立部分を構成するホース部120aは、前方壁部である板部28にここでは図示しない保持手段、例えばバンドなどにより取り付けられ、前後左右に移動不能に保持されてもよい。
【0082】
図11にて一点鎖線で挟まれた略250度の範囲、かつ網掛けして示す距離検出部61から半径0.5m以上の範囲が、実際に障害物などを検出可能なセンシング範囲S1である。一方、残りの110度の範囲や距離検出部61から半径0.5m未満はセンシング外である。
【0083】
このように、掃除機本体100の吸引用の差込口102と走行台車10の吸引ノズル20とは、距離検出部61よりも後方側を通る接続管であるノズルホース120により接続されていることから、ノズルホース120が距離検出部61の走査を阻害することがなく、水平方向におけるセンシング範囲を広げることができる。尚、インバータ72は、距離検出部61の走査範囲よりも上方に配置されており、距離検出部61の走査を阻害することがない。
【0084】
また、距離検出部61は吸引ノズル20よりも後方に離間して配置されている。これによれば、吸引ノズル20から距離検出部61を検出範囲となる半径0.5m以上離間させた位置に配置させ、吸引ノズル20近傍の障害物を検出できる。この配置関係は、特に本実施例のように吸引ノズル20が台車本体11よりも右側方に突出している構成で有効である。
【0085】
また、ノズルホース120は一部に可撓性を有するホース部120aを備えているため、ホース部120aの曲げの範囲で挿口部120bを前後に移動可能であり、載置部22に設置された掃除機本体100の吸引用の差込口102に対して、簡便に挿口部120bを挿入することができる。
【0086】
また、ノズルホース120が起立して距離検出部61の背後に位置されるため、距離検出部61は水平方向に広い範囲で走査を行うことができる。加えて、このノズルホース120の一部が移動して距離検出部61の走査範囲に張り出すことがなく、距離検出部61の走査が阻害されない。
【0087】
また、図9から図11に示されるように、距離検出部61は、下部外装90から上方に露出した位置に配置されているが、上から上部外装80に覆われることで、埃がかかりにくく、また上部外装80の内部で形成される前方の大きな内部空間S内に周囲に前後左右に余裕を持って配置されることから、距離検出部61の近傍に埃などが詰まりにくく、走査が阻害されることを防止できる。
【0088】
また、図9から図11に示されるように、ノズルホース120は、下部外装90に上方から覆われた吸引ノズル20から、下部外装90に形成された連通部90aに通じる前述の開口29を通って内部空間Sを通過している。連通部90aの前端側からは距離検出部61が内部空間S側に露出し、ノズルホース120は連通部90aにおける距離検出部61より後方を通過している。そのため、掃除機本体100を稼働させて、吸引ノズル20から吸引が行われると、特に下部外装90の内部における吸引ノズル20周辺、連通部90a、内部空間S、が相対的に負圧となり、上部外装80と下部外装90との間に形成される隙間G1から空気が引き込まれる。これによれば、隙間G1から吸い込まれた空気の流れが内部空間Sの空気を循環させるため、距離検出部61周辺に埃が堆積しにくい状態となり、高い検出精度を維持することができる。
【0089】
また、掃除機本体100の稼働により隙間G1から吸い込まれた空気が、ノズルホース120の背後に設置されたインバータ72を空冷することができる。さらに、隙間G1は前方に開放されていることから、自律掃除ロボット1の前進時に相対的な負圧によって隙間G1から空気を一層吸い込みやすくなっており、掃除機本体100を連続的に稼働させる前進時にインバータ72を確実に冷却できる。
【0090】
尚、ノズルホース120のホース部120aは、可撓性を有する構造に限らず、例えば挿口部120b近傍にのみ可撓性を備え、それ以外の部位については前方の距離検出部61の後方側にて上方に起立する形状を備えて、走行台車10側に取り付けられていてもよい。この場合には、バンドなどの保持手段を用いずに距離検出部61の走査を阻害しない位置にノズルホース120の姿勢を維持することができる。
【0091】
次いで、載置部22における掃除機本体100の移動を規制する規制の構成について説明する。図9から図12に示されるように、載置部22の基台25は、平面視平板状に形成されており、上面25aには、その前方側と後方側とに、上方に起立する規制片(規制部)55,55がそれぞれ設けられている。規制片55は、金属板をL字状に略直角に屈曲させて形成されており、一方の面部55aが上面25aにネジにより固定され、他方の面部55bが上面25aに対して略直角に起立している。また、前後の規制片55は、起立する面部55b同士が平行に対向するように設置されている。
【0092】
図11に示されるように、掃除機本体100における筐体110の本体部111の下端には、その周囲を取り囲むようにバンパー部113が形成されている。バンパー部113は本体部111を形成する合成樹脂成型品に比べて柔らかいすなわちヤング率が小さい部材、例えばゴム等の合成樹脂素材の成型品である。バンパー部113は、平面視で略矩形状を成し、走行台車10の走行方向の前後及び左右に互いに平行な側面113aを有している。
【0093】
規制片55の起立する面部55bは、基台25に旋回キャスタ103で載置された掃除機本体100のバンパー部113に当接可能な上下寸法で形成されている。
【0094】
また、前後の規制片55,55は、対向する面部55b,55b同士の離間寸法L1が、掃除機本体100のバンパー部113の前後寸法L2と略同寸法となるように基台25の上面25aに固定されている。
【0095】
このように、規制片55,55で構成される規制手段により、走行台車10の載置部22上において掃除機本体100を定位置に配置させて、掃除機本体100と走行台車10との接続を容易かつ確実に行うことができる。詳しくは、掃除機本体100を、差込口102が走行台車10の走行方向における前方向を向いた所定位置に位置決めし、この位置にて仮保持することができる。掃除機本体100と走行台車10とは、図9に示されるようなゴムバンド45にて本保持される。
【0096】
ゴムバンド45は、走行台車10の基台25の左右の壁部26に両端が固定されるものであり、本実施例では、載置部22の前後に2つのゴムバンド45,45が配置されている。前方に配されたゴムバンド45は掃除機本体100の後方側においてバンパー部113の上方に、後方に配されたゴムバンド45は掃除機本体100の前方側においてバンパー部113の上方に、それぞれ伸張された状態でかけられる。これによれば、2つのゴムバンド45が前後方向に引き合い、テンションが維持されることで、掃除機本体100の移動を確実に抑制することができる。また、バンパー部113の上方に位置することで、掃除機本体100の上方への移動も効果的に規制することができる。更に、図10に示されるように、ゴムバンド45は上部外装80に覆われて外部に露出せず美観に優れる。尚、掃除機本体100と走行台車10とを本保持する本保持手段としては、種々考えられるが、本実施例のゴムバンド45のように弾性を有する構造とすることで掃除機本体100の振動を走行台車10に伝えにくいことに加え、走行時における掃除機本体100のがたつきによる異音の発生や、相対的な衝撃の緩和が図れるため、好ましい。
【0097】
また、重量があり、かつ旋回キャスタ103により円滑な移動を可能とする業務用掃除機である掃除機本体100が規制片55,55に当接するものの、規制片55,55は、筐体110の外方に凸設された比較的柔らかいバンパー部113に当接することから、筐体110の破損を防止することができる。
【0098】
また、バンパー部113は走行台車10の走行方向の前後に互いに平行な側面113aを有しており、規制片55,55が前後の側面113aにそれぞれ面で当接している。これによれば、規制片55,55により掃除機本体100の回転も防止することができる。
【0099】
また、図13(a),(b)に示されるように、バンパー部113は、側面113aの下縁に面取部113bを有しており、掃除機本体100を載置部22上に配置させる際には規制片55,55が面取部113bにそれぞれ案内されるため、重量のある業務用掃除機である掃除機本体100の配置作業を容易に行うことができる。
【0100】
また、各規制片55,55は、載置部22の基台25の上面25aに起立する板状の面部55bを有し、これら面部55bの自由端側がバンパー部113の側面113aに当接するようになっている。これによれば、規制片55の面部55bの自由端側がバンパー部113の側面113aに当接するため、掃除機本体100の移動による外力は面部55bの弾性変形によって吸収され、規制片55及びバンパー部113の破損を防止できる。加えて規制片55の弾性変形によって掃除機本体100の運転時における振動が吸収され、走行台車10への振動の伝播が少なく、走行時の制御精度が高い。
【0101】
尚、規制手段としては、規制片55は基台25の前後にそれぞれ独立して設けられる構成に限らず、例えば規制片が前後の代わりに左右にそれぞれ独立して設けられてもよいし、規制片が前後左右にそれぞれ独立して設けられてもよいし、前後左右の規制片が辺によって連続した平面視で矩形枠状の形状であってもよい。
【0102】
また、規制手段としては、載置部22の基台25の上面25aに起立する規制片55の構造に限らず、例えば台車本体11から起立して基台25の上方に上面25aとは離間して設けられる構成等であってもよい。
【実施例0103】
次に、実施例3に係る自律掃除ロボットにつき、図14から図17を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0104】
図14図15に示されるように、載置部22の基台25は、平面視矩形の平板状に形成されており、上面25aには、その前後左右に平面視L字状の規制片(規制部)65がそれぞれ設けられている。規制片65は、金属板を屈曲させて、前後方向に延びる面部65aと左右方向に延びる面部65bとが略直角を成すように形成されている。
【0105】
ここで、掃除機本体100の旋回キャスタ103は、図16に示されるように、掃除機本体100における筐体110の本体部111の底部に固定される略方形の取付座104、取付座104に対してセンターピン105により水平方向に枢着されたフォーク106、フォーク106に対してシャフト107によって走行方向に回転可能に枢支された車輪108を有して構成されている。シャフト107はフォーク106に対して偏って配置されており、車輪108はフォーク106が取付座104に対して水平方向に旋回する際に、走行時の回転中心がセンターピン105の外側周りを周回するようになっている。
【0106】
図15に戻って、前後に隣接する規制片65,65の左右方向に延びる面部65b,65b同士は平行であり、また同様に左右に隣接する規制片65,65の前後方向に延びる面部65a,65a同士は平行である。
【0107】
また、掃除機本体100の旋回キャスタ103は、業務用掃除機の重量を支えるべく高い耐久性・剛性を備えるものであり、この旋回キャスタ103が当接可能な規制片65を設けることにより、掃除機本体100の特に筐体110の破損を防止しながら、掃除機本体100の水平方向の移動を規制することができる。
【0108】
また、規制片65が載置部22の上面25aに立設されて旋回キャスタ103がそれぞれ当接可能な直交する2つの面部65a,65bにより構成される角部を4つ備え、これら角部の内側に旋回キャスタ103がそれぞれ配置されていることから、規制片65が備える直交する2つの面部65a,65bに、掃除機本体100の旋回キャスタ103がそれぞれ当接することで、前後左右の移動規制に加えて掃除機本体100の回転移動も規制することができる。
【0109】
上記したように、掃除機本体100は、旋回キャスタ103に当接可能な規制片65によって、差込口102が走行台車10の走行方向における前方向を向いた所定位置にて仮保持できる。尚、掃除機本体100が走行台車10にゴムバンド45(図9参照)にて本保持された状態にあっては、旋回キャスタ103と規制片65の面部65a,65bとは、それぞれ離間していてもよい。
【0110】
尚、前後に隣接する規制片65,65の左右方向に延びる面部65b,65b同士の離間寸法L3と、図17に示されるように前後に隣接する旋回キャスタ103、103の車輪108,108が、センターピン105の前後方向内側にそれぞれ位置し、かつこれら車輪108,108が掃除機本体100の前後走行方向にそれぞれ向いている状態における前方の車輪108の前端と後方の車輪108の後端との離間寸法L5とを略同寸法としてもよい。また同様に、左右に隣接する規制片65,65の前後方向に延びる面部65a,65a同士の離間寸法L4と、図15に示されるように前後に隣接する旋回キャスタ103、103の車輪108,108が、センターピン105の前後方向内側にそれぞれ位置し、かつこれら車輪108,108が掃除機本体100の前後走行方向にそれぞれ向いている状態において、左右に隣接する旋回キャスタ103、103の車輪108,108の外端同士の離間寸法L6とを略同寸法としてもよい。これによれば、規制片65の内側に配置された旋回キャスタ103はその旋回が規制され、掃除機本体100を定位置にて水平方向に移動不能に保持することができる。例えばこの場合には、前述した載置部に掃除機本体100を取り付ける本保持手段としてのゴムバンド45(図9参照)等を省略することもできる。
【0111】
また、規制片65は基台25の四隅にそれぞれ独立して設けられる構成に限らず、例えばこれらが辺によって連続する平面視で矩形枠状の形状であってもよい。
【実施例0112】
次に、実施例4に係る自律掃除ロボットにつき、図18から図30を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0113】
掃除ロボット1の制御装置(制御手段)60は、図示しない記憶部に、掃除区画における掃除ルートが記憶されており、それぞれの掃除ルートに沿って掃除運転を行う。掃除ルートは、掃除区画毎に事前に設定され、記憶部に記憶される。掃除ルートは、実施例1のように、掃除区画の形状から掃除ルートを掃除ロボット1が自動生成するモードと、本実施例のように、作業者が掃除ロボット1を走行させて記憶させるモードとのいずれかによって設定される。以下、作業者が実際に掃除ロボット1を走行させることで、その移動軌跡を掃除ルートとして設定する場合を例にとり説明する。図18に示される掃除区画は、ここでは室内空間である。
【0114】
掃除ロボット1は、掃除ロボット1の制御装置60に対して移動操作に関する指示を入力できる複数の操作ボタンからなる走行操作手段160を備えている。図19に示されるように、走行操作手段160を構成する移動操作に関するボタンとして、以下のものがある。走行操作手段160は、それぞれ1つの方向への移動である直線移動と旋回移動を指示できるコントローラボタン161と、左反転ボタン162、右反転ボタン163、境界原点ボタン164、角左方向転換ボタン165、角右方向転換ボタン166、動作ボタン167を備えている。また、移動操作に関する指示ではないボタンとして、開始ボタン168a、終了ボタン168b、地点ボタン169a、訂正ボタン169b、を更に備えている。
【0115】
制御装置60は、走行操作手段160の各種操作に関するボタンの操作に基づき掃除ロボット1を走行操作するとともに、走行時の移動経路をロータリエンコーダからの回転数等の情報等に基づいて、記憶できるようになっている。
【0116】
作業者は掃除区画毎の掃除ルートの記憶を開始させる際には、開始ボタン168aを選択し、掃除ルートの記憶を終わらせる際には終了ボタン168bを選択する。このとき、掃除区画を区別する区画名称などを任意に設定することができ、後に掃除ロボット1に自律走行させて掃除作業をさせる際には、この区画名称を指定することで、記憶した掃除ルートを呼び出すことができる。
【0117】
本実施例では、図18に示されるように、部屋である掃除区画の輪郭であり境界線である、ここでは部屋を区画する壁W(境界線SB)の内側を、主に掃除ロボット1を左右にずらしながら直線的に往復動させることで、掃除区画を一筆書きで隈なく走行させて、掃除ルートを記憶させる例について説明する。まず、作業者は壁W(境界線SB)のいずれかに沿うように、掃除ロボット1を移動させる。この境界線SBに近接させる動作を行わせるために、作業者は境界原点ボタン164を選択する。
【0118】
制御装置60には、複数方向への移動動作の所定の組み合わせから成るパターン動作が予め複数記憶されており、パターン動作はそれぞれ左反転ボタン162、右反転ボタン163、境界原点ボタン164、角左方向転換ボタン156、角右方向転換ボタン166に対応し、それぞれ異なるパターン動作指示を選択できる。そのため、作業者によって境界原点ボタン164が選択されると、制御装置60は境界原点ボタン164に対応する複数方向への移動動作の所定の組み合わせから成るパターン動作を開始する。
【0119】
詳しくは、制御装置60は車輪30R,30L,40R,40Lを全て前方へ駆動させることにより、図20に示されるように、位置P0から境界線SBと所定距離で近接する位置P1まで前方へ直線移動させる。この前方への直線移動において制御装置60は、後述する回転移動における台車本体11の前方端の軌跡に境界線SBが重ならないように、台車本体11の前端と境界線SBが所定距離離間した位置まで移動させる。
【0120】
位置P0から境界線SBと所定距離で近接する位置P1までの移動が完了すると、制御装置60は、次いで車輪30R,40Rを前方へ駆動させ、かつ車輪30L,40Lを後方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を台車本体11の車輪30R,30Lと車輪40R,40Lとの前後左右方向の中心を回転中心として位置P1から位置P2まで反時計回りに回転移動(方向転換)させる(図21参照)。このとき制御装置60はセンサ61,61からの距離情報に基づき、台車本体11を境界線SBと平行に、換言すると吸引ノズル20の長手方向と境界線SBとが直交するまで(本実施例では90度)掃除ロボット1を回転移動させる。
【0121】
次に、制御装置60は、車輪30L,40Rを前方へ駆動させ、かつ車輪30R,40Lを後方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を吸引ノズル20が境界線SBに向けて位置P2から位置P3まで左右方向に直線移動させる(図22参照)。尚、制御装置60は吸引ノズル20と境界線SBとの離間距離が10mmになるまで左右方向の直線移動を行い、境界原点ボタン164によるパターン動作指示に基づく動作を終了する。
【0122】
このように、掃除ロボット1を確実かつ容易に、掃除区画の境界線SBに対して沿わせた状態、つまり掃除ルートを開始する基準となる位置に移動させることができる。
【0123】
作業者は、この状態からコントローラボタン161を操作することで、境界線SBに沿って前方への直線移動を行うことができる(図18参照)。本実施例において直線移動とは、1つの方向への単純な移動だけでなく、斜め方向の動作や、移動軌跡が曲線を成す旋回動作などを伴って直線的に移動することも含まれる。尚、本実施例においては、動作ボタン167とコントローラボタン161との同時操作時にのみ制御装置60には一方向への移動動作の動作指示が入力されるようになっている。
【0124】
直線的に往復動を行う際、作業者はコントローラボタン161を用いた動作指示により往路の直線移動を行い、折り返しさせる位置の近傍にて停止させ、掃除ロボット1を180度方向転換させるために、左反転ボタン162または右反転ボタン163を選択する。ここでは左反転ボタン162が選択された場合を例にとり説明する。
【0125】
左反転ボタン162が選択されると、制御装置60は、車輪30R,30L,40R,40Lを全て前方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を、開始位置P0から吸引ノズル20が掃除区画の境界線SBに到達する位置P1まで前方へ直線移動させる(図23参照)。
【0126】
次に、図24に示されるように、制御装置60は、車輪30L,40Rを前方へ駆動させ、かつ車輪30R,40Lを後方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を、吸引ノズル20が境界線SBに沿うように位置P1から位置P2まで左右方向へ直線移動させる。尚、この左右方向への直線移動の移動量は、吸引ノズル20における吸引口21の幅以内であることが好ましく、本実施例では、吸引口21の幅と略同一距離を右方向へ移動する。すなわち、位置P1と位置P2において、吸引ノズル20における吸引口21の通過領域が連続するように重なっている。
【0127】
次に、図25に示されるように、制御装置60は、車輪30R,30L,40R,40Lを全て後方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を、吸引ノズル20が境界線SBから離れるように位置P2から位置P3まで後方へ直線移動させる。尚、この後方へ直線移動の移動量は、掃除ロボット1の前後長さ以上であることが好ましく、本実施例では、掃除ロボット1の前後長さよりも僅かに長い距離を直線移動する。
【0128】
次に、図26に示されるように、制御装置60は、車輪30R,40Rを前方へ駆動させ、かつ車輪30L,40Lを後方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を、吸引ノズル20を中心に位置P3から位置P4まで反時計回りに方向転換させて、左反転ボタン162によるパターン動作指示に基づく動作を終了する。尚、本実施例では、吸引ノズル20における吸引口21の幅の左右中心Cを中心として180度の旋回移動が行われている。このように、後方に直線移動することにより壁などの掃除区画の境界部分から衝突の虞がない十分に離れた状態で吸引ノズル20を中心に方向転換させることができる。
【0129】
また、左反転ボタン162によるパターン動作指示では、制御装置60が掃除区画の境界線を基準として掃除ロボット1を正確に動作させるため、吸引ノズル20の未通過領域を確実に少なくすることができる。
【0130】
作業者はパターン動作指示に基づく動作の完了後に、コントローラボタン161を操作することで、復路の直線移動を行うことができる(図27参照)。上記したコントローラボタン161、境界原点ボタン164、左反転ボタン162を用いて図18のような掃除ルートで掃除ロボット1を走行操作させた後、終了ボタン168bを選択する。終了ボタン168bの入力に基づき制御装置60は、この掃除ルートを記憶する。
【0131】
また、上記した動作とは異なるパターン動作指示の説明として、角左方向転換ボタン165または角右方向転換ボタン166を選択することで、吸引ノズル20を掃除区画の別の境界線SBと対向し境界線SBとともに角部を構成する次の境界線SB2に沿わせる位置まで到達させることができる。
【0132】
図28に示されるように、例えば、掃除ロボット1が境界線SB2に近接した状態で、角左方向転換ボタン165が選択されると、制御装置60は、まず境界線SB2との離間距離が10mmになる位置P1まで前方へ直進移動させる。次に制御装置60は、車輪30L,40Rを後方へ駆動させ、かつ車輪30R,40Lを前方へ駆動させることにより、図29に示されるように、掃除ロボット1を次の境界線SB2に沿うように左方向へ吸引ノズル20の幅以内の距離、直進移動させる(P2まで)。この左方向への直進移動においては境界線SB2との離間距離が10mmに保たれる。
【0133】
次に、制御装置60は、車輪30R,30L,40R,40Lを全て後方へ駆動させることにより境界線SB2から吸引ノズル20の幅以上の距離となる位置P3まで後方へ直線移動させる。
【0134】
後方への直線移動が完了した後、制御装置60は車輪30L,40Rを後方へ駆動させ、かつ車輪30R,40Lを前方へ駆動させることにより、掃除ロボット1の台車本体11を次の境界線SB2と平行になるまで掃除ロボット1を方向転換させ(図示略)、次いで境界線SB2へ右方向の直線移動を行う。制御装置60は、境界線SB2に平行に近接した位置(P4)への移動の完了により角左方向転換ボタン165によるパターン動作指示に基づく動作を終了する。
【0135】
このように、特に高い操作技術を必要とする掃除区画の角部における方向転換及び角部にそって掃除ロボット1を自動的に移動させることができ、吸引ノズル20の未通過領域を少なくすることができる。
【0136】
また上記したように、走行操作手段160は掃除ロボット1を任意の一方向に移動動作させる動作指示と、複数方向への移動動作の所定の組み合わせから成るパターン動作指示とをそれぞれ選択できる。そのため、複雑な移動動作が必要な箇所はパターン動作指示によって自動で移動動作させることができ、作業者に高い操作技術を必要とせずに、短時間で容易に掃除ルートを記憶させることができる。
【0137】
また、パターン動作指示は、直線移動と方向転換との組み合わせから成るため、特に高い操作技術を必要とする方向転換を掃除ロボット1に自動で行わせることができ、吸引ノズルの未通過領域を少なくすることができる。
【0138】
尚、本実施例において、パターン動作指示では、境界線SBを基準として動作させており、この場合には、境界線SBの位置をセンサ61やロータリエンコーダによって特定することができるが、これに限らず、例えば境界線SBの位置を基準とせず、作業者が左反転ボタン162、右反転ボタン163、境界原点ボタン164、角左方向転換ボタン156、角右方向転換ボタン166のいずれかを選択した位置から、所定距離の複数の直線移動と所定角度の方向転換を行う構成としてもよい。このとき、例えば折り返し地点などで地点ボタン169aを選択すると、その地点を境界線SBに代わる基準点として走行ルートに記憶させることができる。
【0139】
また、コントローラボタン161の操作を間違えた際には、訂正ボタン169bを選択することで、記憶させる動作を適宜訂正することもできる。
【0140】
また、パターン動作指示は、上述した左反転ボタン162、右反転ボタン163、境界原点ボタン164、角左方向転換ボタン156、角右方向転換ボタン166及び、これらに対応する複数方向への移動動作の所定の組み合わせから成るパターン動作に限らず、様々な移動動作の組み合わせから成るパターン動作を適宜設定することができる。
【0141】
また、走行操作手段160は掃除ロボット1に設けられる構成に限らず、例えば掃除ロボット1には通信部を配し、走行操作手段160をタブレット端末等の通信端末に表示させ、掃除ロボット1に対して遠隔で動作指示とパターン動作指示とを入力できるようにしてもよい。
【0142】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における追加や変更があっても、本発明に含まれる。
【0143】
例えば、前記実施例では、掃除機本体100は、載置部12に載置されている構成として説明したが、これに限られず、台車本体11に直接載置されていてもよい。
【0144】
また、前記実施例では、基台15は、平面視平板状である構成として説明したが、これに限らず、枠状であってもよく、その形状は適宜変更されてもよい。
【0145】
また、前記実施例では、車輪30L,30R,40L,40Rはメカナムホイールである構成として説明したが、これに限らず、進路方向を変更可能であれば、適宜変更されてもよい。
【0146】
また、前記実施例では、吸引ノズル20は、走行台車10よりも左右方向の幅が小さい構成について説明したが、これに限らず、吸引ノズル20の左右方向の幅は、走行台車10の左右方向の幅と同一であってもよいし、大きくてもよい。尚、吸引ノズル20の左右方向の幅は、走行台車10に載置される掃除機本体100の掃除能力を維持できる大きさの吸引口が形成可能な範囲であればよい。
【0147】
また、前記実施例において吸引ノズル20は、その横幅が走行台車10の前面の横幅より短寸であり、走行台車10の前面の前進方向右側に偏在して固定されている構成で説明したが、これに限らず、走行台車10の前面の前進方向左側に偏在して固定されている構成であってもよい。更に、吸引ノズル20は、走行台車10の前面の中央に固定されていてもよく、これによれば、走行台車10の車輪30L,30R及び車輪40L,40Rと吸引ノズル20とが走行台車10の前後方向に揃えられ、前後方向に走行中に吸引ノズル20が床面に接触した抵抗で走行台車10が予期せず回動してしまうことが防止される。
【0148】
また、吸引ノズル20を走行台車10に対して着脱可能に固定させ、その走行台車10の前面の左右方向における取り付け位置を、例えば左側、中央、右側から選択できるようにしてもよく、これにより部屋の形状や壁の構造に合わせて適宜吸引ノズル20の位置を変更することができる。
【0149】
また、吸引ノズル20とノズルホース120とを着脱自在にすることで、用途に応じて、または破損時などに吸引ノズル20のみを交換できるようにしてもよい。
【0150】
また、前記実施例では、吸引ノズル20は、下部外装90の前端よりも前方、かつ側端よりも右方に突出して配置されている(図1図4参照)が、左方に突出してもよいし、また吸引ノズル20に接触センサを設けることにより、センサ(距離検出部)61により検知できなかった障害物等との接触を検知できるようになっていてもよい。
【0151】
また、前記実施例では、掃除機本体100を構成する筐体110の蓋部112に吸引用モータ150が内蔵されている構成について説明したが、これに限らず、例えば吸引用モータ150は筐体110の本体部111に内蔵されていてもよい。この場合、例えば上部外装80の開口81を本体部111において少なくとも吸引用モータ150が内蔵される箇所が外部に露出するように形成するなどし、蓋部112が開閉可能な構造であればその構造は限定されない。
【0152】
また、掃除機本体100の形状は上記説明した形状に限られず、例えば、全体形状略円柱かつ平面視略円形であったり、全体形状が平面視で略卵状等であってもよい。
【0153】
また、前記実施例では、上部外装80が主に前部外装80Fと、後部外装80Bと、左右の側部外装80R,80Lとに四分割されている構成として説明したが、これに限らず、例えば上部外装は前後の二分割であってもよいし、適宜の数に分割されていてもよく、あるいは一体に形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0154】
1 自律掃除ロボット
10 走行台車
20 吸引ノズル
29 開口部
30L,30R,40L,40R 車輪
50 走行用モータ
55 規制片(規制部・規制手段)
55b 面部
65 規制片(規制部・規制手段)
65a,65b 面部
61 距離検出部
80 上部外装(外装)
81 開口
82 ホース開口
90 下部外装(外装)
90a 連通部
100 掃除機本体
101 紙パック(集塵部)
102 差込口
103 旋回キャスタ
110 筐体
111 本体部
112 蓋部(モータ内蔵部)
113 バンパー部
113a 側面
113b 面取部
115 排気口
120 ノズルホース(接続管)
140 吸引用ファン
150 吸引用モータ
160 走行操作手段
161 コントローラボタン
162 左反転ボタン
163 右反転ボタン
164 境界原点ボタン
165 角左方向転換ボタン
166 角右方向転換ボタン
167 動作ボタン
G1,G2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図28
図29
図30