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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176056
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】添加剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/65 20060101AFI20231206BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20231206BHJP
   C07C 69/618 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C07C69/65
C09K3/00 104Z
C07C69/618
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088125
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 大介
(72)【発明者】
【氏名】金子 恒太郎
(72)【発明者】
【氏名】河合 功治
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB92
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM71
4H006BM72
4H006KA31
4H006KC14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】UV-B領域(280~320nm)を効率よく吸収するために極大吸収波長を280~310nmに有し、加熱時の着色が抑制され、加熱時の分解開始温度が高く耐熱性に優れる添加剤を提供する。
【解決手段】具体的には、例えば下記構造式で表される添加剤が示される。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される添加剤:
【化1】
(式中、R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルコキシ基を示すか、又は2価の基と結合して環を形成する。R3~R7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、硫黄含有基、窒素含有基、及びハロゲンから選ばれる少なくとも1種を示すか、又はR3~R7のうちいずれか2つが2価の基と結合して環を形成する。)。
【請求項2】
紫外線吸収剤である請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
100μM溶液における極大吸収波長が300nm以下にある請求項2に記載の添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機材料、無機材料に様々な機能を付与するため多くの添加剤が使用されている。例えば、有機材料、無機材料に添加して特定の波長の光をカットするため、紫外線を吸収し樹脂等有機材料の耐光性を向上させるための紫外線吸収剤等が知られている。有機化合物の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、マロン酸誘導体などが用いられている。紫外線の中でも短波長のUV-B領域を吸収する紫外線吸収剤としてマロン酸誘導体が知られている(特許文献1~3等参照)が、より効率的にUV-B領域を吸収し、例えば、樹脂に添加し、その樹脂を熱加工する際に、着色が抑制され、加熱時の分解開始温度が高い紫外線吸収剤、すなわち耐熱性に優れ、外観が良好で紫外線吸収能が損なわれない紫外線吸収剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-052594号公報
【特許文献2】特開2021-181528号公報
【特許文献3】特開昭50-008844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、UV-B領域(280~320nm)を効率よく吸収するために極大吸収波長を280~310nmに有し、加熱時の着色が抑制され、加熱時の分解開始温度が高く耐熱性に優れる添加剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の添加剤は、下記一般式(1)で表されることを特徴としている。
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルコキシ基を示すか、又は2価の基と結合して環を形成する。R3~R7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、硫黄含有基、窒素含有基、及びハロゲンから選ばれる少なくとも1種を示すか、又はR3~R7のうちいずれか2つが2価の基と結合して環を形成する。)。
本発明の紫外線吸収剤は、上記一般式(1)で表される添加剤であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の添加剤は、極大吸収波長を280~310nmに有するためUV-B領域を効率よく吸収でき、更に加熱時の着色が抑制され、加熱時の分解開始温度が高く耐熱性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の具体的な実施形態を説明する。
なお、本発明において、炭素数の数値は整数を示す。
(添加剤)
本発明の添加剤は、上記一般式(1)で表される。
上記式(1)においてR1、R2はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルコキシ基を示すか、又は2価の基と結合して環を形成する。好ましくは、R1、R2は炭素数1~10のアルコキシ基である。
【0010】
前記アルコキシ基を形成する炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。また直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
前記アルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、1-メチルエトキシ基、ブトキシ基、2-メチル-1-プロポキシ基、2-メチル-2-プロポキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デカニルオキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基は炭素数1~4が好ましく、その中でもメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、1-メチルエトキシ基、ブトキシ基、2-メチル-1-プロポキシ基、2-メチル-2-プロポキシ基がより好ましく、炭素数1~3のメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、1-メチルエトキシ基が更に好ましく、炭素数1のメトキシ基が特に好ましい。
【0011】
前記環を形成する2価の基としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基等が挙げられる。
【0012】
炭化水素基としては、例えば、下記にR3~R7の1価炭化水素基として挙げたものから水素原子を1つ取り除いた基が挙げられる。その中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。また直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0013】
酸素含有基は、例えば、炭素数が1~10である。炭素数が1~10の酸素含有基としては、例えば、エーテル基含有基、エステル基含有基、カルボニル基含有基、カルボキシ基含有基等が挙げられる。
【0014】
窒素含有基は、例えば、炭素数が1~10である。炭素数が1~10の窒素含有基としては、例えば、1級、2級、又は3級アミノ基(2価の基の末端を含む部位で前記結合によりアミド基(-NHCO-)、イミド基(-CONRCO-)、又は尿素基(-NHCONH-)となるものを含む。)アミド基含有基、イミド基含有基、尿素基含有基、ウレタン基含有基等が挙げられる。
【0015】
硫黄含有基は、例えば、炭素数が1~10である。炭素数が1~10の硫黄含有基としては、例えば、チオエーテル基含有基、スルフィド基含有基、ジスルフィド基含有基、チオエステル基含有基、チオアミド基含有基、スルホニル基含有基、チオカルボニル基含有基、チオ尿素基含有基、チオカルバメート基含有基、ジチオカルバメート基含有基等が挙げられる。
【0016】
これらの中でも、炭素数1~5でかつ2価の基の末端を含む部位で前記結合によりアミド基、イミド基、又は尿素基となる基が好ましく、前記結合により尿素基となる基がより好ましい。
【0017】
上記式(1)においてR3~R7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、硫黄含有基、窒素含有基、及びハロゲンから選ばれる少なくとも1種を示すか、又はR3~R7のうちいずれか2つが2価の基と結合して環を形成する。
【0018】
炭化水素基としては、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、これらの中でも、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好まし
い。直鎖又は分岐のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エタン-1-イル基、プロパン-1-イル基、1-メチルエタン-1-イル基、ブタン-1-イル基、1-メチルプロパン-1-イル基、2-メチルプロパン-1-イル基、2-メチルプロパン-2-イル基、ペンタン-1-イル基、ペンタン-2-イル基、ヘキサン-1-イル基、ヘプタン-1-イル基、オクタン-1-イル基、ノナン-1-イル基、デカン-1-イル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数3~10、より好ましくは3~6であり、特に限定されないが、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基やこれらを骨格として含む基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環を含み、炭素数が好ましくは6~10である。芳香族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基やこれらの骨格を含む基等が挙げられる。
【0019】
硫黄含有基としては、特に限定されないが、例えば、チオフェン基含有基、チアゾール基含有基、チオール基含有基、チオエーテル基含有基、チオアルコキシ基含有基、スルホ基含有基、スルフィド基含有基、ジスルフィド基含有基、チオエステル基含有基、チオアミド基含有基、スルホニル基含有基、チオカルボニル基含有基、チオ尿素基含有基、チオカルバメート基含有基、ジチオカルバメート基含有基等が挙げられ、炭素数が好ましくは0~10である。
【0020】
窒素含有基としては、特に限定されないが、例えば、シアノ基含有基、シアネート基含有基、イソシアネート基含有基、ニトロ基含有基、ニトロアルキル基含有基、アミド基含有基、尿素基含有基、ウレタン基含有基、イミド基含有基、カルボジイミド基含有基、アゾ基含有基、ピリジン基含有基、イミダゾール基含有基、アミノ基含有基(1級アミノ基含有基、2級アミノ基含有基、3級アミノ基含有基)、アミノアルキル基含有基等が挙げられ、炭素数が好ましくは0~10である。
【0021】
ハロゲンとしては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0022】
これらの中でもR3~R7は、水素原子、炭化水素基、ハロゲンが好ましい。特に、水素原子と炭化水素基、水素原子とハロゲンの組み合わせが好ましい。
【0023】
また、炭化水素基の中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。その炭化水素基の炭素数は1~10であり、1~8が好ましく、1~5がより好ましい。
【0024】
3~R7のうちいずれか2つが2価の基と結合して環を形成する場合、環を形成する2価の基としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基等が挙げられる。具体的には、R1、R2が結合して環を形成する2価の基として示した前記の記載が参照される。
【0025】
本発明の添加剤は、UV-B領域を効率よく吸収できる点から、100μM溶液における極大吸収波長が280~310nmにあることが好ましく、280~300nmにあることがより好ましく、280~290nmにあることが更に好ましい。極大吸収波長は、例えばクロロホルム、ジメチルスルホキシドを溶媒として測定される。
特に好ましい一例では、本発明の添加剤は、100μM溶液における極大吸収波長が300nm以下にある。
この点から、本発明の添加剤においてR3~R7は、水素原子、炭化水素基、ハロゲンが好ましい。その炭化水素基の中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。その炭化水素基の炭素数は1~10であり、1~8が好ましく、1~5がより好ましい。ハロゲンは、塩素原子、フッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。また少なくともR5がハロゲンであることが好ましい。
更に、R3~R7は、水素原子及び炭化水素基からなり、少なくとも1つは水素原子で少なくとも1つは炭化水素基であるか、水素原子及びハロゲンからなり、少なくとも1つは水素原子で少なくとも1つはハロゲンであることが好ましく、水素原子及びハロゲンからなり、少なくとも1つは水素原子で少なくとも1つはハロゲンであることがより好ましい。
【0026】
本発明の添加剤は、加熱時の酸素雰囲気下の酸化、熱が起因する着色及び窒素雰囲気下の熱のみが起因する分解(分解開始温度)の双方の観点から耐熱性が優れる。
本発明の添加剤は、加熱時の着色を抑制する(耐熱性)点で、R3~R7は、水素原子、炭化水素基、ハロゲンが好ましく、水素原子、ハロゲンがより好ましい。ハロゲンは、塩素原子、フッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。また少なくともR5がハロゲンであることが好ましい。
更に、R3~R7は、水素原子及び炭化水素基からなり、少なくとも1つは水素原子で少なくとも1つは炭化水素基であるか、水素原子及びハロゲンからなり、少なくとも1つは水素原子で少なくとも1つはハロゲンであることが好ましく、水素原子及びハロゲンからなり、少なくとも1つは水素原子で少なくとも1つはハロゲンであることがより好ましい。
【0027】
本発明の添加剤は、耐熱性の観点から加熱時の分解開始温度は、190℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、210℃以上が更に好ましい。この点から、R3~R7は、水素原子、炭化水素基、ハロゲンが好ましい。特に、R3~R7は、水素原子及び炭化水素基からなり、少なくとも1つは水素原子で少なくとも1つは炭化水素基であるか、水素原子及びハロゲンからなり、少なくとも1つは水素原子で少なくとも1つはハロゲンであることが好ましい。その炭化水素基の中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。その炭化水素基の炭素数は1~10であり、1~8が好ましく、1~5がより好ましく、2~5が更に好ましい。
【0028】
本発明の添加剤は、25℃での状態が固体であっても、液体であってもよいが、25℃で固体であると樹脂に添加、混合する際に扱いやすく、好ましい。
この点から、R3~R7は、水素原子、炭化水素基、ハロゲンが好ましい。特に、R3~R7は、水素原子及び炭化水素基からなり、少なくとも1つは水素原子で少なくとも1つは炭化水素基であるか、水素原子及びハロゲンからなり、少なくとも1つは水素原子で少なくとも1つはハロゲンであることが好ましい。その炭化水素基の中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。R3~R7の炭化水素基が四級炭素を有するか、あるいはR3~R7のうち3個以上が炭化水素基であるのが好ましい。
【0029】
本発明の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンジリデンマロン酸ジアルキル系化合物、ベンジリデンバルビツール酸系化合物等が挙げられる。ベンジリデンマロン酸ジアルキル系化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-(4-クロロベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-フルオロベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-エチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-イソプロピルベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-tert-ブチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-イソブチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(2,4,6-トリメチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-イソプロピルベンジリデン)マロン酸ジイソプロピル、2-(3,4-(メチレンジオキシ)ベンジリデン)マロン酸ジイソプロピル等が挙げられる。ベンジリデンバルビツール酸系化合物としては、特に限定されないが、例えば、5-(4-クロロベンジリデン)バルビツール酸等が挙げられる。これらの中でもUV-B領域(280~320nm)の効率的な吸収、及び耐熱性の点で、ベンジリデンマロン酸ジアルキルが好ましく、2-(4-クロロベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-フルオロベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-エチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-イソプロピルベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-tert-ブチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-イソブチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(2,4,6-トリメチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、2-(4-イソプロピルベンジリデン)マロン酸ジイソプロピルがより好ましい。
【0030】
(紫外線吸収剤)
本発明の添加剤は、樹脂の劣化の原因とされる紫外線の中でも特にUV-B領域(280~320nm)を効率よく吸収できる点で、紫外線吸収剤として有用である。本発明の紫外線吸収剤は、280~310nmに極大吸収波長を有し、280~300nmに極大吸収波長を有することが好ましく、280~290nmに極大吸収波長を有することがより好ましい。
【0031】
(添加剤の製造方法)
本発明の添加剤の製造方法は、特に限定されないが、マロン酸ジエステルやバルビツール酸等の2個のカルボニル炭素に挟まれた、酸性度の高い水素原子を持つ炭素原子を有する化合物と、ベンズアルデヒド誘導体を縮合反応させる方法等が挙げられる。
【0032】
(添加剤の使用)
本発明の添加剤は、有機材料、無機材料等に添加することができる。有機材料としては、特に限定されないが、例えば、樹脂、動植物由来の材料、原油由来の材料等の有機化合物等が挙げられ、無機材料としては、特に限定されないが、例えば、ゾルゲル法によるシリカ質材料、ガラス、水ガラス、低融点ガラス、石英、シリコン樹脂、アルコキシシラン、シランカップリング剤、金属、金属酸化物、鉱物等の無機化合物等が挙げられる。これらの中でも、UV-B領域を吸収、又は透過を抑制する用途に好適に使用することができ、例えば、樹脂の耐光性向上、劣化防止の点、ガラスや樹脂等の透明部材のUV-B領域の透過抑制の点で有用である。
【0033】
本発明の添加剤は、樹脂に添加して使用する際に、加熱下において揮発、分解が少ない点に優れる。本発明の添加剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
添加剤の樹脂への添加方法としては、一般的な方法が適用できる。特に限定されないが、例えば、樹脂の溶液に添加剤を混合する方法、樹脂を溶融させ添加剤を混合する方法、樹脂の原料モノマーに添加剤を混合した後に樹脂化する方法等が適用できる。
すなわち本発明の添加剤を樹脂に添加して、樹脂組成物とすることができる。
【0035】
本発明の添加剤を添加する樹脂としては、特に限定されないが、従来公知のものを広く使用することができ、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、それぞれ1種の繰り返し単位を有する重合体、複数の繰り返し単位を含む共重合体が含まれる。
【0036】
上記樹脂の中でも熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、特に限定されない。重合体としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、エーテル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリマレイミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。共重合体としては、例えば、ブタジエン-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン系共重合体、スチレン-アクリル酸系共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-アクリロニトリル系共重合体等が挙げられる。
その中でも、(メタ)アクリル系樹脂(アクリル樹脂等)、スチレン系樹脂(ポリスチレン等)、エステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂等)、エーテル系樹脂(ポリアセタール等)、ポリカーボネート系樹脂(ポリカーボネート等)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド等)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂(シクロオレフィンポリマー等)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂等)が好ましい。
【0037】
添加剤を、樹脂をはじめとする有機物及び無機物と加熱下で混合、混練する場合や、添加剤を含む樹脂部材を加熱により加工、成形する場合、添加剤の耐熱性が低いと熱分解、熱変性等を生じ、紫外線吸収の効果を十分発揮できず、装置を汚染し、樹脂が透明である場合、透明性を損失する。また、熱分解、熱変性等により可視光領域の透過率が減少し、着色する。そのため、加熱時の着色が抑制され、加熱時の分解開始温度が高く耐熱性に優れる添加剤が望ましい。
本発明の添加剤は、耐熱性(加熱時の着色が抑制され、加熱時の分解開始温度が高い)に優れ、高温下での着色、添加剤の機能低下が抑制され、100℃以上、更には200℃以上の熱成形温度、熱硬化温度を持つ樹脂に、又は、それらの温度で製造、使用するのに好ましく用いることができる。従って本発明の添加剤は、熱可塑性樹脂の重合体、共重合体に好ましく使用でき、特に、上記の熱成形温度を有する熱可塑性樹脂の重合体、共重合体に好ましく使用できる。
例えば、熱可塑性樹脂の重合体の中でもスチレン系樹脂(ポリスチレン:PS、成形温度100℃)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、成形温度160℃)、シクロオレフィン系樹脂(成形温度100℃)、ポリカーボネート系樹脂(ポリカーボネート:PC、成形温度200℃以上)、エステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート:PET、成形温度200℃以上)に好ましく使用できる。
また、熱可塑性樹脂の共重合体の中でもアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体:ABS、成形温度200℃以上)に好ましく使用できる。
【0038】
本発明の添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲内において、その他の成分を添加してもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、溶媒、光安定化剤、酸化防止剤、pH調整剤等が挙げられる。
【実施例0039】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.添加剤化合物の合成
化合物1~8は以下の方法で合成した。
<化合物1>(MYUA-1M)
【化2】
【0040】
4-クロロベンズアルデヒド(7.03g)、マロン酸ジメチル(6.61g)、ピペリジン(421mg)、酢酸(605mg)をトルエン20mL中、反応生成水を留去しながら水の生成が確認できなくなるまで還流撹拌した。反応終了後、有機層を水洗し、カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物1を得た。
IR (ATR): 1726 cm-1(C=O伸縮)
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): 7.72(s,1H), 7.36(s,4H), 3.85(s,3H), 3.85(s,3H)
13CNMR (CDCl3, 400 MHz): 166.9, 164.3, 141.6, 141.4, 131.3, 130.8, 130.4, 129.4, 129.0, 126.1, 53.3, 52.4
【0041】
<化合物2>
【化3】
【0042】
4-フルオロベンズアルデヒド(6.21g)、マロン酸ジメチル(6.61g)、ピペリジン(421mg)、酢酸(605mg)をトルエン20mL中、反応生成水を留去しながら水の生成が確認できなくなるまで還流撹拌した。反応終了後、有機層を水洗し、カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物2を得た。
IR (ATR): 1729 cm-1(C=O伸縮)
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): 7.73(s,1H), 7.43(q,2H), 7.08(t,2H), 3.85(s,3H), 3.85(s,3H)
13CNMR (CDCl3, 400 MHz): 167.0, 164.4, 141.6, 141.4, 131.5, 129.0, 129.0, 125.3, 116.5, 115.9, 53.1, 52.4
【0043】
<化合物3>
【化4】
【0044】
4-エチルベンズアルデヒド(6.71g)、マロン酸ジメチル(6.61g)、ピペリジン(421mg)、酢酸(605mg)をトルエン20mL中、反応生成水を留去しながら水の生成が確認できなくなるまで還流撹拌した。反応終了後、有機層を水洗し、カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物3を得た。
IR (ATR): 1735 cm-1(C=O伸縮)
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): 7.75(s,1H), 7.35(d,2H), 7.21(d,2H), 3.86(s,3H), 3.84(s,3H), 2.66(q, 2H), 1.24(t,3H)
13CNMR (CDCl3, 400 MHz): 167.4, 164.7, 147.6, 143.0, 130.1, 129.8, 129.5, 128.7, 128.3, 124.3, 53.0, 52.3, 28.8, 15.2
【0045】
<化合物4>
【化5】
【0046】
クミンアルデヒド(4.97g)、マロン酸ジメチル(4.43g)、ピペリジン(282mg)、酢酸(406mg)をトルエン20mL中、反応生成水を留去しながら水の生成が確認できなくなるまで還流撹拌した。反応終了後、有機層を水洗し、カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物4を得た。
IR (ATR): 1729 cm-1(C=O伸縮)
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): 7.74(s,1H), 7.36(d,2H), 7.24(d,2H), 3.87(s,3H), 3.84(s,3H), 2.92(m,1H), 1.25(s,3H), 1.24(s,3H)
13CNMR (CDCl3, 400 MHz): 167.4, 164.7, 152.2, 142.9, 130.2, 129.7, 129.3, 127.3, 126.9, 124.3, 53.0, 52.3, 34.1, 24.0, 23.4
【0047】
<化合物5>
【化6】
【0048】
4-tert-ブチルベンズアルデヒド(8.12g)、マロン酸ジメチル(6.61g)、ピペリジン(421mg)、酢酸(605mg)をトルエン20mL中、反応生成水を留去しながら水の生成が確認できなくなるまで還流撹拌した。反応終了後、有機層を水洗し、カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物5を得た。
IR (ATR): 1726 cm-1(C=O伸縮)
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): 7.74(s,1H), 7.36-7.42(m,4H), 3.87(s,3H), 3.84(s,3H), 1.32(s,9H)
13CNMR (CDCl3, 400 MHz): 167.5, 164.7, 154.5, 142.8, 129.8, 129.7, 129.4, 126.1, 125.8, 124.3, 53.7, 53.0, 52.3, 35.0, 31.3, 30.8
【0049】
<化合物6>
【化7】
【0050】
4-イソブチルベンズアルデヒド(8.11g)、マロン酸ジメチル(6.61g)、ピペリジン(421mg)、酢酸(605mg)をトルエン20mL中、反応生成水を留去しながら水の生成が確認できなくなるまで還流撹拌した。反応終了後、有機層を水洗し、カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物6を得た。
IR (ATR): 1738 cm-1(C=O伸縮)
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): 7.75(s,1H), 7.34(d,2H), 7.16(d,2H), 3.86(s,3H), 3.84(s,3H), 2.49(d,2H), 1.87(m,1H), 0.91(s,3H), 0.89(s,3H)
13CNMR (CDCl3, 400 MHz): 167.4, 164.7, 145.2, 143.0, 130.1, 130.0, 129.6, 129.5, 129.3, 124.2, 53.0, 52.3, 45.3, 30.2, 22.6, 22.1
【0051】
<化合物7>
【化8】
【0052】
メシトアルデヒド(7.41g)、マロン酸ジメチル(6.61g)、ピペリジン(421mg)、酢酸(605mg)をトルエン20mL中、反応生成水を留去しながら水の生成が確認できなくなるまで還流撹拌した。反応終了後、有機層を水洗し、カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物7を得た。
IR (ATR): 1738 cm-1(C=O伸縮)
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): 7.90(s,1H), 6.83(s,2H), 3.87(s,3H), 3.57(s,3H), 2.26(s,3H), 2.16(s,6H),
13CNMR (CDCl3, 400 MHz): 165.6, 164.2, 146.4, 146.2, 137.9, 135.0, 130.2, 128.4, 127.7, 124.2, 52.9, 52.3, 20.2, 19.9
【0053】
<化合物8>
【化9】
【0054】
クミンアルデヒド(14.8g)、マロン酸ジイソプロピル(18.8g)、ピペリジン(850mg)、酢酸(1.21g)をトルエン40mL中、反応生成水を留去しながら水の生成が確認できなくなるまで還流撹拌した。反応終了後、有機層を水洗し、カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物8を得た。
IR (ATR): 1739 cm-1(C=O伸縮)
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): 7.65(s,1H), 7.41(d,2H), 7.22(d,2H), 5.27(m,1H), 5.15(m,1H), 2.91(m,1H), 1.31(d,12H), 1.24(d,6H)
13CNMR (CDCl3, 400 MHz): 166.5, 163.9, 151.8, 141.4, 130.5, 129.9, 129.6, 127.1, 126.7, 125.9, 69.2, 69.1, 34.2, 24.0, 23.4, 22.1, 21.8, 21.5, 21.3
【0055】
<化合物9>
2-(4-メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチルは、東京化成製工業(株)の試薬を使用した。
【0056】
2.紫外線吸収波長の測定
化合物1~9は、各化合物の100μMクロロホルム溶液を調製し、紫外可視赤外分光光度計(日立ハイテクサイエンス製UH4150V)を用いて吸収スペクトルを測定し、極大吸収波長を確認した(表1)。
【0057】
表1に示した極大吸収波長から、実施例の化合物1~8の添加剤は、UV-B領域(280~320nm)の中でも280~310nmに極大吸収波長を有し、効率よくUV-B領域を吸収できる点で比較例の化合物9より優れることが確認された。
【0058】
このことから、本発明の添加剤は、紫外線吸収剤として有用であり、特にR3~R7に水素原子、炭化水素基又はハロゲンを有する実施例の化合物1~8は、280~300nmに極大吸収波長を有することから、有用であることが示唆された。さらにR3~R7に水素原子とハロゲンを有する実施例の化合物1、2は、280~290nmに極大吸収波長を有することから、特に有用であることが示唆された。
【0059】
3.25℃の状態
化合物1~9の25℃での状態を目視にて観察し、表1に固体、液体を記載した。実施例1、2からR5が塩素、フッ素であると固体であることが観察された。このことから、R5がハロゲンであると25℃で固体の状態になることが示唆された。
【0060】
また、実施例5から、より嵩高い官能基である2-メチルプロパン-2-イル基のような四級炭素を有するか、実施例7からR3~R7に3つ以上の炭化水素基を有する場合に25℃で固体の状態となることが示唆された。
【0061】
4.耐熱性試験(1)
化合物1~8(1mmol)を30mLのサンプル瓶中に入れ、大気中、300℃に設定したマッフル炉内で10分加熱した。放冷後10mLのクロロホルムを加え、目視にて着色の有無を観察し、以下のように評価し、結果を表1に記載した。
加熱後に着色なし :◎
加熱後にわずかに着色した:〇
加熱後に褐色に着色した :△
加熱後に黒色に着色した :×
【0062】
試験結果より、化合物1~8の対比において、R3~R7にハロゲン(化合物1、2)を有すると、炭化水素基(化合物3~8)に比べて加熱後の着色が抑制され、特にハロゲンが塩素原子であると耐熱性に優れていることが確認された。
【0063】
これらの結果よりR3~R7が水素原子とハロゲンから構成される場合と、水素原子と炭化水素基から構成される場合では分解機構が異なり、水素原子とハロゲンから構成される場合には着色分解物を生じにくいことが示唆された。
【0064】
5.耐熱性試験(2)
本発明の化合物1~8について、示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス製STA7200)を用いて、昇温温度:10℃/min、窒素雰囲気下、測定範囲:25℃~550℃で重量変化の測定を行い、示差熱分析(DTA)の吸熱ピークから分解開始温度を算出し、結果を表1に記載した。
【0065】
化合物1~8はいずれも分解開始温度が190℃以上であり耐熱性に優れることが確認された。特に、化合物1、3~6、8は210℃以上となり、耐熱性により優れる結果となった。
【0066】
6.加熱時のUV-B領域(300nm)の透過率の変化
化合物1、9(0.1mmol)をそれぞれ30mLサンプル瓶中に入れ、300℃に設定したマッフル炉内で10分間加熱した。放冷後10mLのクロロホルムを加え、300nmの透過率を測定した。化合物1、9の加熱前の透過率から、各波長の透過率変化を算出し比較した。
【0067】
加熱前の300nmの透過率は化合物1、9ともに0%であったが、加熱後に化合物1は0%で変化が無かったのに対し、化合物9の透過率は47%であった。
化合物9は加熱後に紫外線吸収能が低下したのに対し、化合物1は、加熱後も紫外線吸収能が損なわれないことが確認された。
このことから、本発明の添加剤は、加熱による紫外線吸収能の損失が抑えられる点で耐熱性に優れることが示唆された。
【0068】
【表1】