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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176057
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】薬液投与装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A61M5/145 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088128
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE06
4C066EE14
4C066FF03
4C066GG01
4C066GG12
4C066GG15
4C066HH03
4C066HH05
4C066HH12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】衝撃が加わった場合等に部品のガタツキを抑制可能な改良された薬液投与装置を提供する。
【解決手段】薬液投与装置10は、薬液を収容したシリンジ12と、シリンジ12の薬液を押し出す押し子と、押し子を前進させる駆動機構26と、シリンジ12と、押し子と、駆動機構26とを保持するシャーシ部材28と、シャーシ部材28と、シリンジ12と、押し子と、駆動機構26とを収容するハウジング34と、を備え、シャーシ部材28は、押し子及び駆動機構26を支持するベースプレートと、ベースプレートから上方に向けて突出した壁部と、を有し、壁部の上端は、ハウジング34に係合するリブを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を収容したシリンジと、
前記シリンジの薬液を押し出す押し子と、
前記押し子を前進させる駆動機構と、
前記シリンジと、前記押し子と、前記駆動機構とを保持するシャーシ部材と、
前記シャーシ部材と、前記シリンジと、前記押し子と、前記駆動機構とを収容するハウジングと、を備え、
前記シャーシ部材は、前記押し子及び前記駆動機構を支持するベースプレートと、前記ベースプレートから上方に向けて突出した壁部と、を有し、
前記壁部の上端は、前記ハウジングに係合するリブを有する、
薬液投与装置。
【請求項2】
請求項1記載の薬液投与装置であって、前記ハウジングは、軸線方向に延び且つ前記リブを保持する溝部が形成されたレール部を有し、前記シャーシ部材は前記レール部を介して前記ハウジングに保持される、薬液投与装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薬液投与装置であって、さらに、前記駆動機構を制御する制御基板を有し、前記シャーシ部材は、上部に前記制御基板を位置決めして保持する基板保持部を有する、薬液投与装置。
【請求項4】
請求項3記載の薬液投与装置であって、前記制御基板は、前記押し子及び前記駆動機構の上方に配置される、薬液投与装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の薬液投与装置であって、前記壁部は、前記ベースプレートの側部に位置する側壁部を含み、前記側壁部は上端に前記リブを有する、薬液投与装置。
【請求項6】
請求項5に記載の薬液投与装置であって、前記シャーシ部材は、前記リブの下方であって、前記側壁部から外方に突出し且つ軸線方向に延びた第2リブを有し、前記ハウジングは前記軸線方向に延び且つ前記第2リブを保持する第2溝部が形成された第2レール部を有する、薬液投与装置。
【請求項7】
請求項5に記載の薬液投与装置であって、前記シャーシ部材は、前記リブの下方であって、軸線方向に延びた第2溝部が形成された第2レール部を前記側壁部に有し、前記ハウジングは、前記側壁部に向けて突出し、前記軸線方向に延び、且つ前記第2溝部に保持される第2リブを有する、薬液投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動機構によりシリンジから薬液を押し出し、薬液を生体に投与するための薬液投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、薬液を充填したシリンジを、押し子で押圧して生体内に投与するシリンジポンプ型の薬液投与装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この薬液投与装置は、シリンジと駆動機構とをハウジングと別体のシャーシに搭載する。シリンジと駆動機構とは、シャーシを通じてハウジングの内部に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/168988号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬液投与装置は、駆動機構を備える精密機器であるため、衝撃が加わった場合等に故障の一因となる内部の部品のガタツキを抑制可能な構造が求められる。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点は、薬液を収容したシリンジと、前記シリンジの薬液を押し出す押し子と、前記押し子を前進させる駆動機構と、前記シリンジと、前記押し子と、前記駆動機構とを保持するシャーシ部材と、前記シャーシ部材と、前記シリンジと、前記押し子と、前記駆動機構とを収容するハウジングと、を備え、前記シャーシ部材は、前記押し子及び前記駆動機構を支持するベースプレートと、前記ベースプレートから上方に向けて突出した壁部と、を有し、前記壁部の上端は、前記ハウジングに係合するリブを有する、薬液投与装置にある。
【発明の効果】
【0008】
上記観点の薬液投与装置は、内部の部品のガタツキを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る薬液投与装置の使用状態の説明図である。
図2図2は、図1の薬液投与装置の分解斜視図である。
図3図3Aは、図1のハウジングの本体部を開口部側から見て示す図であり、図3Bは蓋部の内側の図である。
図4図4Aは、シリンジ、押し子及び駆動機構を組み付けたシャーシ部材の斜視図であり、図4Bはシャーシ部材のみの斜視図である。
図5図5Aは、シリンジ、押し子、及び駆動機構の接続関係を示す説明図であり、図5B図4Aのシャーシ部材の下面側の斜視図である。
図6図6は、図7のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図7は、図1のVII-VII線に沿った断面図である。
図8図8Aは、図2のVIIIA-VIIIA線に沿った断面図であり、図8Bは制御基板の斜視図である。
図9図9Aは、実施形態の第1変形例に係るシャーシ部材の斜視図であり、図9Bは第1変形例に係るハウジングと図9Aのシャーシ部材との連結構造を示す断面図である。
図10図10は、実施形態の第2変形例に係るハウジングとシャーシ部材との連結構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る薬液投与装置10は、図1に示すように、シリンジ12の内部に充填された薬液Mを生体Lの内部に投与するために使用される。薬液投与装置10は、薬液Mを、比較的長い時間をかけて持続的に生体Lに投与する。なお、薬液投与装置10は、薬液Mを間欠的な投与動作で生体Lに投与することもできる。薬液Mは、特に限定されないが、例えば、たんぱく質製剤、麻薬性鎮痛剤、利尿薬が挙げられる。
【0011】
使用状態において、投与ライン14が薬液投与装置10に接続される。投与ライン14は、例えば、パッチ式の針付きチューブ16である。針付きチューブ16は、コネクタ18と、送液チューブ20と、パッチ部22とを有する。パッチ部22は、針24を生体Lの皮膚に穿刺した状態で生体Lに固定される。薬液投与装置10の薬液Mは、投与ライン14を通じて生体Lに投与される。なお、投与ライン14は、針付きチューブ16に限定されず、ポート12aに直接接続される針部材等でもよい。
【0012】
以下、薬液投与装置10について、さらに詳しく説明する。
【0013】
図2に示すように、薬液投与装置10は、シリンジ12と、駆動機構26と、シャーシ部材28と、制御基板30と、ハウジング34と、を有する。ハウジング34は、シリンジ12と、駆動機構26と、シャーシ部材28と、制御基板30と、電池32(図4A参照)と、押し子70(図4A参照)とを収容する。
【0014】
ハウジング34は、本体部36と、蓋部38とを有する。図1に示すように、本体部36は、平面視で略矩形状を有する。図2に示すように、本体部36は、内部の空洞部36dが軸線方向に延びる筒形状を有する。本体部36は、先端に先端壁36aを有する。先端壁36aは、空洞部36dの先端を部分的に閉塞する。先端壁36aは、シリンジ12の先端(ポート12a)が挿通する挿通部36bを有する。挿通部36bは、内周部にシリンジ12の外周面12bと密着するシール部材36cを有する。シール部材36cは、シリンジ12の外周面12bと密着して挿通部36bとシリンジ12との隙間を液密に封止することで、ハウジング34の内部への水や埃の侵入を阻止する。
【0015】
図3Aに示すように、本体部36は、内部にシャーシ部材28(図2参照)を収容する空洞部36dを有する。空洞部36dは、軸線方向に延び、本体部36の基端に開口部36eを形成する。図2に示すように、シャーシ部材28は、開口部36eから本体部36の空洞部36dに挿入される。図3Aに示すように、本体部36は、空洞部36dに向けて突出したレール部40を有する。
【0016】
本実施形態において、レール部40は、本体部36の上面部36fに位置する。上面部36fは、操作ボタン42を有する面である。レール部40は、本体部36の軸線方向に延在する。レール部40は、軸線方向に延びる溝部41が形成されており、シャーシ部材28の後述するリブ44を溝部41で保持することで、シャーシ部材28の幅方向及び回転方向に対するガタツキを抑制する。また、シャーシ部材28をハウジング34の本体部36に収容する際、レール部40の溝部41にリブ44をスライドさせて挿入することができるため、薬液投与装置10の組立が容易となる。図示の例ではレール部40の配置数は2つであるが、レール部40の配置数はこれに限られず、本体部36に1又は複数(3以上)設けられてもよい。
【0017】
レール部40は、シャーシ部材28の先端への移動を阻止する段差部40a及び端面40bを有してもよい。段差部40a及び端面40bは、後述するシャーシ部材28のストッパ板部54gと当接して、シャーシ部材28の先端への変位を阻止する。なお、ストッパ板部54gと当接する構造は、本体部36のレール部40以外の部位に配置されてもよい。この場合には、レール部40は、シャーシ部材28の先端への移動を阻止する構造を有しなくてもよい。
【0018】
本体部36は、上面部36fの反対側に位置する底面部36iで、シャーシ部材28の後述するベースプレート46と当接してシャーシ部材28を保持する。シャーシ部材28は、本体部36のレール部40と底面部36iとの間に挟まれることで、本体部36の内部に保持される。
【0019】
図2に示すように、ハウジング34の蓋部38は、本体部36の開口部36eを覆うことで、空洞部36dを閉塞する。蓋部38と本体部36との嵌合部には、ゴム素材のパッキン37が配置されており、蓋部38は空洞部36dを液密に封止する。蓋部38は、本体部36の先端壁36aとの間で、シャーシ部材28を挟み込んで軸線方向のガタツキを阻止する。蓋部38は、さらに嵌合構造38aを有する。嵌合構造38aは、本体部36の爪部35(図6参照)に嵌合する係止片39を備える。蓋部38は、嵌合構造38aを通じて本体部36に固定される。
【0020】
特に限定されるものではないが、蓋部38は透明な樹脂素材で一体的に形成されてもよい。この場合には、図3Bに示すように、蓋部38は、導光部48と、発光部50とを有してもよい。発光部50は、制御基板30の発光素子86(図8B参照)から導かれた光を放つことで、薬液投与装置10の作動状態を使用者に伝える表示部として機能する。導光部48は、蓋部38から空洞部36dに向けて突出したリブ状の構造物である。導光部48は、第1端部48aと第2端部48bとを有する。第1端部48aは、発光素子86に向かい合う部分に位置する。第2端部48bは、蓋部38の外表面の発光部50の内側に位置する。導光部48は、制御基板30の発光素子86の光を発光部50に導く。発光部50は、光を外部に効率よく放出するための凹凸構造50aを有している。図示の例では、発光部50は蓋部38の角部に一対配置されている。
【0021】
図2図4A及び図5Bに示すように、シャーシ部材28は、シリンジ12と、駆動機構26と、制御基板30と、電池32と、押し子70とを保持する。図4B及び図5Bに示すように、シャーシ部材28は、ベースプレート46と、壁部54とを有する。壁部54は、ベースプレート46と一体的に形成されている。壁部54は、全体が1つに繋がった枠状の構造でもよい。また、壁部54は、分離した複数の板状の部分によって枠状に構成された構造でもよい。図示の例では、壁部54は、複数の板状の部分を含んだ構造を有する。シャーシ部材28は、電池保持部56と、基板保持部58と、シリンジ保持部60と、駆動機構保持部62と、押し子保持部64と、を有する。電池保持部56、基板保持部58、シリンジ保持部60、駆動機構保持部62及び押し子保持部64は、壁部54によって形成される。
【0022】
図4Bに示すように、ベースプレート46は、シャーシ部材28の下部に位置し、板状に形成されている。図5Bに示すように、ベースプレート46の下面には、ハウジング34の底面部36iに当接する当接面部46aが形成されている。当接面部46aは、軸線方向に延びる平板状の部分及びリブ状の部分を有する。当接面部46aは、ハウジング34の底面部36iの内面の湾曲形状に沿った湾曲面を有し、底面部36iと面接触する。当接面部46aは、底面部36iと当接することで、シャーシ部材28の下方への変位(ガタツキ)を阻止する。
【0023】
シャーシ部材28は、さらにシャーシ側当接部46bを有する。シャーシ側当接部46bは、蓋部38の蓋側当接部38bに当接する部分である。シャーシ側当接部46bは、蓋部38に当接することで、シャーシ部材28の軸線方向の基端への変位(ガタツキ)を阻止する。本実施形態の例では、シャーシ側当接部46bは、ベースプレート46の基端側の段差部分として構成される。
【0024】
図4Aに示すように、ベースプレート46は、シリンジ12と駆動機構26とを下から支持する。電池保持部56は、ベースプレート46から先端に向けて突出して形成される。すなわち、ベースプレート46は、電池保持部56には形成されていない。壁部54は、ベースプレート46から上方に向けて壁状に突出する複数の板状の部分を有する。壁部54を構成する板状の部分は、樹脂素材よりなり、ベースプレート46と一体的に繋がって形成されている。壁部54は、枠状に形成されている。壁部54の一部は、ベースプレート46よりも先端に向けて突出して電池保持部56を形成する。壁部54は、電池保持部56と、シリンジ保持部60と、駆動機構保持部62と、押し子保持部64と、を仕切る。
【0025】
壁部54は、上端付近に支持面54aを有する。支持面54aは、複数の壁部54に形成される。複数の支持面54aは、同一の高さに位置する。シャーシ部材28は、制御基板30を位置決め(上下方向及び/又は面内方向)して保持する基板保持部58を有する。支持面54aは、上下方向において制御基板30を支持する基板保持部58の一部を構成する。支持面54aは、駆動機構26、シリンジ12及び電池保持部56よりも高い位置に位置するため、制御基板30は駆動機構26、シリンジ12及び電池保持部56よりも高い位置に保持される。制御基板30は、図2に示すように、駆動機構26、シリンジ12及び電池保持部56の上方に重なるように配置されることで、ハウジング34の内部にコンパクトに収容できる。
【0026】
ベースプレート46の幅方向の一方の側部及び他方の側部の壁部54は、側壁部54bとなっている。側壁部54bは、軸線方向に延びる。側壁部54bは、高さ方向の上端付近に支持面54aを有している。また、側壁部54bは、支持面54aよりも高い位置にまで突出するリブ44を有する。側壁部54bのリブ44は、支持面54aの幅方向の外側に位置する。リブ44は、制御基板30を両側部から挟み込んで保持することで制御基板30を面内方向に位置決めし、制御基板30の面内方向のガタツキを抑制する基板保持部58を構成する。すなわち、壁部54の上部が基板保持部58を構成し、リブ44の少なくとも一部が基板保持部58を兼ねている。リブ44は、支持面54aよりも高い位置に突出し、ハウジング34のレール部40に係合する。側壁部54bの下端はベースプレート46の側部に繋がる。シャーシ部材28は、側壁部54bの下端(ベースプレート46の側部)において、ハウジング34の底面部36iに当接する。シャーシ部材28は、側壁部54bの上端及び下端でハウジング34に当接してガタツキなく収容される。
【0027】
なお、図4Bに示すように、側壁部54bは、制御基板30を保持する保持構造55を有する。保持構造55はリブ44の一態様であり、また、本実施形態において基板保持部58に含まれる。保持構造55は、側壁部54bに形成され制御基板30の係合片30aを収容する係合孔55aを有する。係合孔55aは、支持面54aの高さと同じ高さに位置する。また、保持構造55は、係合孔55aと制御基板30を挟んで向かい合う部位に、制御基板30を上方から抑え込む爪部55bを有している。図2に示すように、係合孔55a及び爪部55bを有する保持構造55は、制御基板30を保持し、制御基板30のシャーシ部材28に対する浮き上がりを阻止する。
【0028】
さらに、側壁部54bは、幅方向の側方に突出したストッパ板部54gを有する。ストッパ板部54gは、幅方向の一方の側壁部54b及び他方の側壁部54bにそれぞれ配置される。ストッパ板部54gは、レール部40の段差部40a又は端面40bに当接することで、シャーシ部材28のハウジング34に対する軸線方向の先端への変位を阻止する。
【0029】
シャーシ部材28において、シリンジ保持部60は、シリンジ12の基端部を保持する。シリンジ保持部60は、シリンジ12の基端のフランジ12dを収容するフランジ収容溝60aを有する。フランジ収容溝60aには、ロック片66が嵌合する。ロック片66をフランジ収容溝60aに嵌合すると、シリンジ12のフランジ12dがフランジ収容溝60aに固定され、シリンジ12がシリンジ保持部60に固定される。
【0030】
押し子保持部64は、シリンジ保持部60の基端側に位置する。押し子保持部64は、軸線方向に延在して形成される。押し子保持部64には、図6に示すように、シリンジ12のガスケット68に接続された押し子70が収容される。
【0031】
図4Aに示すように、駆動機構保持部62は、モータ収容部62aと、ギヤ収容部62bとを有する。モータ収容部62aは、モータ72を収容する部分である。本実施形態では、モータ収容部62aは、軸線方向に長く延びており、軸線方向に長い小型のモータ72を収容できる。モータ72の回転軸は、軸線方向を向いている。本実施形態では、モータ収容部62aは、押し子保持部64の幅方向の側部に並列に配置される。この配置は、シャーシ部材28の軸線方向の寸法を抑制でき、シャーシ部材28の小型化に好適である。
【0032】
ギヤ収容部62bは、モータ72の回転力を、シャフト70bに伝達するギヤ機構74を収容する。ギヤ収容部62bは、モータ収容部62a及び押し子保持部64の基端側に位置する。ギヤ収容部62bは、幅方向に延在し、複数枚(図示の例では3枚)のギヤ(75a、75b、75c)を収容する。図4Bに示すように、ギヤ収容部62bは、ギヤ75を支持する軸受けを有する。
【0033】
電池保持部56は、図5Bに示すように、シャーシ部材28の下側に向けて開口し、下側から電池32を収容する。電池32は、例えばボタン電池である。電池保持部56は、1又は複数の電池32を収容する。電池保持部56には、電極端子57が配置される。電極端子57は、制御基板30とはんだ付けにより電気的及び機械的に接続されている。
【0034】
シャーシ部材28は、以上のように構成される。次に、シリンジ12、駆動機構26、及び制御基板30について説明する。
【0035】
図5Aに示すように、シリンジ12は、中空円筒状の形状を有する。図6に示すように、シリンジ12は、内部に薬液Mが充填された薬室12cを有する。シリンジ12は、ポート12aとガスケット68と、フランジ12dとを有する。ポート12aは、シリンジ12の先端に位置する。ポート12aは、ゴム素材の栓体を有し、薬室12cの先端を封止する。ガスケット68は、シリンジ12の内部に配置され、薬室12cの基端を封止する。ガスケット68は、押し子70によって先端に向けて前進し、薬室12cの薬液Mを押し出す。フランジ12dは、シリンジ12の基端に位置し、シャーシ部材28に保持される。ロック片66は、フランジ12dとフランジ収容溝60aとの隙間に嵌合して、シャーシ部材28からのシリンジ12の脱落を阻止する。
【0036】
図5Aに示すように、駆動機構26は、押し子70と、モータ72と、ギヤ機構74とを有する。押し子70は、シリンジ12の基端に配置される。図6に示すように、押し子70は、シャフト70bと押圧部70cとを有する。シャフト70bは、軸線方向に延びる棒状部材である。シャフト70bは、外周部にネジ溝70aを有すると共に、軸線方向の回転軸回りに回転可能である。押圧部70cは、シャフト70bの外側に配置され、軸線方向に延びた板状部材である。押圧部70cは、ネジ溝70aと螺合している。シャフト70bが回転すると、押圧部70cはネジ溝70aによって軸線方向に移動する。押圧部70cは、先端側に変位することでシリンジ12のガスケット68を先端に向けて押圧する。
【0037】
モータ72は、押し子70の幅方向の側部に位置する。モータ72の回転軸は、軸線方向の基端を向き、軸線回りに回転する。モータ72は、制御基板30からの駆動電流によって回転する。ギヤ機構74は、モータ72の回転運動をシャフト70bに伝達する。本実施形態では、ギヤ機構74は、3枚のギヤ75(第1ギヤ75a、第2ギヤ75b及び第3ギヤ75c)を有する。第1ギヤ75aは、モータ72の駆動軸に連結されている。第3ギヤ75cは、シャフト70bに連結されている。第2ギヤ75bは、第1ギヤ75aと第3ギヤ75cとの間に配置され、これらの間で回転力を伝達する。第1ギヤ75aは、エンコーダ板75dが接続されている。エンコーダ板75dは、制御基板30のエンコーダ78(図8B参照)の検出位置を通過するように配置される。エンコーダ板75dは、制御基板30によるモータ72の回転数の検出を可能とする。
【0038】
制御基板30は、図2に示すように上面にタクトスイッチ80を有する。タクトスイッチ80は、ハウジング34の上面部36fに形成された操作ボタン42の内側に位置する。タクトスイッチ80は、操作ボタン42を介して使用者の操作入力を受け付ける。制御基板30は、図8Bに示すように、駆動機構26に向かい合う下面に接触スイッチ84と、エンコーダ78と、発光素子86を有する。
【0039】
接触スイッチ84は、押し子70の押圧部70cと当接可能な部分に位置し、押圧部70cの位置を検出する。エンコーダ78は、エンコーダ板75dの通過位置に配置される。エンコーダ78は、受発光部の間にエンコーダ板75dを挟み込んでおり、モータ72の回転数を検出する。発光素子86は、例えばフルカラーLED素子であり、色及び点滅パターンで薬液投与装置10の動作状態を報知する。発光素子86は、導光部48の第1端部48aに向かい合う部分に位置する。発光素子86から出射された光は、導光部48を介して蓋部38の発光部50から外部に向けて放出される。制御基板30は、特に図を参照して説明はしないが、薬液投与装置10の各部の動作を制御する制御回路を含む。
【0040】
本実施形態の薬液投与装置10は以上のように構成され、以下その作用について説明する。
【0041】
図6に示すように、薬液投与装置10のハウジング34は、筒状の本体部36と、本体部36の基端を蓋部38で塞いでいる構造を有している。シャーシ部材28は、本体部36の内部に収容される。シャーシ部材28は、シリンジ12、駆動機構26、制御基板30及び電池32を一体的に収容することにより、これらの部材を、ハウジング34の変形の影響から保護する。
【0042】
シャーシ部材28は、図7に示すように、底面側の当接面部46aがハウジング34の底面部36iと当接することで、下方への変位が阻止される。また、シャーシ部材28は、図8Aに示すように、側壁部54bの上端に設けられたリブ44が、本体部36のレール部40に形成された溝部41に係合する。このリブ44とレール部40により、シャーシ部材28の幅方向及び回転方向への変位(ガタツキ)が阻止される。また、リブ44は、ハウジング34の上面部36fにも当接しており、リブ44によって、シャーシ部材28の上方への変位が阻止される。リブ44は、シャーシ部材28の剛性を高め、補強効果を与える壁部54に配置されているため、外力や衝撃によるシャーシ部材28の変形を抑制でき、駆動機構26への影響を抑制できる。
【0043】
図4Bに示す側壁部54bに設けられたストッパ板部54gは、レール部40の段差部40a及び端面40bに当接して、シャーシ部材28の軸線方向の先端への変位を阻止する。図7に示すように、ベースプレート46に設けられたシャーシ側当接部46bは、蓋部38の蓋側当接部38bに当接することで、シャーシ部材28の軸線方向の基端への変位を阻止する。
【0044】
以上の構造により、シャーシ部材28がハウジング34の内部でガタつくことを抑制することができる。
【0045】
(実施形態の第1変形例)
図9A及び図9Bに示すように、第1変形例の薬液投与装置10Aにおいて、シャーシ部材28Aは、側壁部54bに、外側方に向けて延び出るように形成された第2リブ45Aをさらに有する点で、図4Bに示すシャーシ部材28と異なる。なお、本変形例は、実施形態と同様の構成についての説明を省略する。
【0046】
第2リブ45Aは、ベースプレート46が側壁部54bから外側方(側壁部54bの壁厚方向)に延在するように突出して形成される。第2リブ45Aは、側壁部54bから外方に短く突出すると共に、軸線方向に長く延びる。第2リブ45Aは、リブ44よりも下方であって、側壁部54bの上下方向中央よりも下端寄りに位置する。第2リブ45Aは、シャーシ部材28Aの下端に形成されてもよい。
【0047】
図9Bに示すように、第2リブ45Aは、本変形例に係るハウジング34Aの本体部36Aに収容される。本体部36Aは、内方に向けて突出した第2レール部43Aを側面部36g及び36hに有する。第2レール部43Aは、第2リブ45Aに対応する部分に位置し、軸線方向に延びる第2溝部47Aを有し、第2溝部47Aで第2リブ45Aと係合してシャーシ部材28Aを保持する。
【0048】
本変形例では、第2リブ45Aを介してシャーシ部材28Aをハウジング34Aに固定できるため、薬液投与装置10Aの内部の部品のガタツキをさらに効果的に抑制できる。
【0049】
(実施形態の第2変形例)
図10に示すように、本変形例の薬液投与装置10Bでは、シャーシ部材28Bに第2レール部43Bが設けられ、ハウジング34Bの本体部36Bに第2リブ45Bが設けられる。シャーシ部材28Bの第2レール部43Bは、側壁部54bから外方に短く突出すると共に、軸線方向に長く延びる。第2レール部43Bは、リブ44よりも下方であって、側壁部54bの上下方向中央よりも下端寄りに位置する。第2レール部43Bは、シャーシ部材28Bの下端に形成されてもよい。シャーシ部材28Bの第2レール部43Bは、軸線方向に延びる第2溝部47Bを有する。第2レール部43Bは第2溝部47Bで、ハウジング34Bの第2リブ45Bに係合する。
【0050】
ハウジング34Bは、側壁部54bに向けて突出した第2リブ45Bを有する。第2リブ45Bは、第2レール部43Bに対応する部分に位置し、軸線方向に延びる。ハウジング34Bの第2リブ45Bは、シャーシ部材28Bの第2レール部43Bと係合する。
【0051】
本変形例によっても、図9A及び図9Bを参照した変形例に係る薬液投与装置10Aと同様の効果が得られる。
【0052】
本実施形態をまとめると以下の通りである。
【0053】
薬液投与装置(10)は、薬液(M)を収容したシリンジ(12)と、前記シリンジの薬液を押し出す押し子(70)と、前記押し子を前進させる駆動機構(26)と、前記シリンジと、前記押し子と、前記駆動機構とを保持するシャーシ部材(28)と、前記シャーシ部材と、前記シリンジと、前記押し子と、前記駆動機構とを収容するハウジング(34)と、を備え、前記シャーシ部材は、前記押し子及び前記駆動機構を支持するベースプレート(46)と、前記ベースプレートから上方に向けて突出した壁部(54)と、を有し、前記壁部の上端は、前記ハウジングに係合するリブ(44)を有する。
【0054】
上記の薬液投与装置は、リブでハウジングの内部にガタつくことなくシャーシ部材を保持できる。この薬液投与装置のリブは、シャーシ部材の中で強固な壁部に設けられているため、外力や衝撃によるシャーシ部材の変形を抑制でき、内部の部品のガタツキを抑制できる。
【0055】
上記の薬液投与装置において、前記壁部は、前記ベースプレートの側部に位置する側壁部(54b)を含み、前記側壁部は上端に前記リブを有してもよい。この薬液投与装置は、ベースプレートの幅方向の外側に設けられた側壁部にリブを設けることにより、シャーシ部材のガタツキを一層効果的に抑制できる。
【0056】
上記の薬液投与装置において、前記ハウジングは、軸線方向に延び且つ前記リブを保持する溝部(41)が形成されたレール部(40)を有し、前記シャーシ部材は前記レール部を介して前記ハウジングに保持されてもよい。このようなレール部は、シャーシ部材とハウジングとの組立性と、シャーシ部材のガタツキの抑制とを両立できる。
【0057】
上記の薬液投与装置において、さらに、前記駆動機構を制御する制御基板(30)を有し、前記シャーシ部材は、上部に前記制御基板を位置決めして保持する基板保持部(58)を有してもよい。この基板保持部は、シャーシ部材への制御基板の保持を可能とすることで、制御基板をシャーシ部材と一体化できる。この薬液投与装置は、制御基板をシャーシ部材で保護できる。また、制御基板がシャーシ部材と一体化した構造は、製造工程での組立を容易にする。
【0058】
上記の薬液投与装置において、前記シャーシ部材は、前記リブの下方であって、前記側壁部から外方に突出し且つ軸線方向に延びた第2リブ(45A)を有し、前記ハウジングは前記軸線方向に延び且つ前記第2リブを保持する第2溝部(47A)が形成された第2レール部(43A)を有してもよい。この薬液投与装置は、内部の部品のガタツキをさらに効果的に抑制できる。
【0059】
上記の薬液投与装置において、前記シャーシ部材は、前記リブの下方であって、軸線方向に延びた第2溝部(47B)が形成された第2レール部(43B)を前記側壁部に有し、前記ハウジングは、前記側壁部に向けて突出し、前記軸線方向に延び、且つ前記第2溝部に保持される第2リブ(45B)を有してもよい。この薬液投与装置は、内部の部品のガタツキを効果的に抑制できる。
【0060】
上記の薬液投与装置において、前記制御基板は、前記押し子及び前記駆動機構の上方に配置されてもよい。この薬液投与装置は、制御基板をハウジングの内部にコンパクトに収容することができるため、ハウジングの小型化を可能とする。
【0061】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0062】
10、10A、10B…薬液投与装置 12…シリンジ
26…駆動機構 28、28A、28B…シャーシ部材
30…制御基板 34、34A、34B…ハウジング
36、36A、36B…本体部 36a…先端壁
36e…開口部 38…蓋部
40…レール部 44…リブ
46…ベースプレート 54…壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10